JP5950339B2 - ポリ乳酸樹脂組成物 - Google Patents
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〔1〕 ポリ乳酸樹脂(A)に、トリアリールホスフェート(B)及び分子中に2個のエステル基を有し、該エステルを構成するカルボン酸成分が炭素数4〜8の脂肪族ジカルボン酸であり、アルコール成分が水酸基1個当たり炭素数2〜3のアルキレンオキサイドを平均0〜2モル付加した化合物である可塑剤(C)を配合してなり、前記トリアリールホスフェート(B)と前記可塑剤(C)の質量比(可塑剤/トリアリールホスフェート)が0.1〜0.9である、ポリ乳酸樹脂組成物。
〔2〕 前記〔1〕記載のポリ乳酸樹脂組成物を射出成形して得られる成形体。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物におけるポリ乳酸樹脂(A)としては、市販されているポリ乳酸樹脂(例えば、三井化学社製、商品名:レイシアH−100、H−280、H−400、H−440等や、Nature Works社製、商品名:Nature Works PLA/NW3001D、NW4032D等)の他、乳酸やラクチドから公知の方法に従って合成したポリ乳酸樹脂が挙げられる。強度や耐熱性の向上の観点から、光学純度が好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上のポリ乳酸樹脂が好ましく、例えば、比較的分子量が高く、また光学純度の高いNature Works社製ポリ乳酸樹脂(NW4032D等)が好ましい。光学純度とは、ポリ乳酸樹脂中、L体又はD体の占めるモル%の割合のことである。
本発明で用いられるトリアリールホスフェート(B)は、難燃性、耐衝撃性、及び耐ブリード性の観点から、炭素数1又は2のアルキル基を有するアルキルアリール基を1つ以上含むトリアリールホスフェートが好ましく、なかでも、以下の一般式:
(R1R2ArO)x(ArO)3−xPO
(式中、Arはベンゼン環を示し、R1、R2は、同一又は異なって、水素原子あるいは炭素数1又は2のアルキル基を示すが、共に水素原子である場合は除き、xは1〜3の整数を示す)
で表される化合物が好ましい。
本発明で用いられている可塑剤(C)は、難燃性、耐衝撃性、及び耐ブリード性の観点から、分子中に2個のエステル基を有し、該エステルを構成するカルボン酸成分が炭素数4〜8の脂肪族ジカルボン酸であり、アルコール成分が水酸基1個当たり炭素数2〜3のアルキレンオキサイドを平均0〜2モル付加した化合物である。アルコール成分が水酸基1個当たり炭素数2〜3のアルキレンオキサイドを平均2モル以下で付加した化合物である場合には、耐ブリード性が良好である。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物には、耐衝撃性、耐ブリード性、難燃性の観点から、前記成分に加えて、カルボジイミド化合物をさらに配合することが好ましい。カルボジイミド化合物としては、モノカルボジイミド化合物や前記ポリ乳酸樹脂(A)の調製に用いたのと同様のポリカルボジイミド化合物が挙げられ、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
また、本発明のポリ乳酸樹脂組成物には、難燃性の観点から、前記成分に加えて、水酸化アルミニウム(E)をさらに配合することが好ましい。
また、本発明においては、ポリ乳酸樹脂の結晶化速度を向上させ、耐衝撃性を向上する観点から、以下の(a)〜(d)からなる群より選ばれる少なくとも1種の有機結晶核剤(F)を用いることができる。
(a)イソインドリノン骨格を有する化合物、ジケトピロロピロール骨格を有する化合物、ベンズイミダゾロン骨格を有する化合物、インジゴ骨格を有する化合物、フタロシアニン骨格を有する化合物、及びポルフィリン骨格を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の有機化合物〔有機結晶核剤(a)という〕
(b)カルボヒドラジド類、ウラシル類、及びN−置換尿素類からなる群より選ばれる少なくとも1種の有機化合物〔有機結晶核剤(b)という〕
(c)芳香族スルホン酸ジアルキルの金属塩、リン酸エステルの金属塩、フェニルホスホン酸の金属塩、ロジン酸類の金属塩、芳香族カルボン酸アミド、及びロジン酸アミドからなる群より選ばれる少なくとも1種の有機化合物〔有機結晶核剤(c)という〕
(d)分子中に水酸基とアミド基を有する化合物及びヒドロキシ脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の有機化合物〔有機結晶核剤(d)という〕
射出成形としては、公知の射出成形機を用いることができる。例えば、シリンダーとその内部に挿通されたスクリューを主な構成要素として有するもの〔J110AD−180H(日本製鋼所社製)等〕が挙げられる。なお、本発明のポリ乳酸樹脂組成物の原料をシリンダーに供給してそのまま溶融混練してもよく、予め溶融混練したものを射出成形機に充填してもよい。
工程(1):ポリ乳酸樹脂とポリカルボジイミドを180〜230℃で混練し、ポリ乳酸樹脂(A)を得る工程
工程(2):工程(1)で得られたポリ乳酸樹脂(A)とトリアリールホスフェート(B)及び可塑剤(C)とを含有し、前記トリアリールホスフェート(B)と前記可塑剤(C)の質量比(可塑剤/トリアリールホスフェート)が0.1〜0.9である原料を溶融混練してポリ乳酸樹脂組成物を調製する工程
工程(3):工程(2)で得られたポリ乳酸樹脂組成物を射出成形する工程
試料のポリ乳酸樹脂3gをクロロホルム100mLに溶解させ、そこにベンジルアルコール50mLと少量のフェノールフタレインエタノール溶液を加え、0.05Nの水酸化カリウムエタノール溶液で滴定することにより求める。
ポリ乳酸樹脂(a−1)(NatureWorks製、4032D、カルボキシル基末端濃度22mmol/kg)50部と、ポリ(ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)(日清紡ケミカル社製、カルボジライトLA−1)0.5部を、2軸押出機(池貝鉄工社製、PCM−45)にて、シリンダーの設定温度200℃、回転数100rpm、30kg/hの供給量で溶融混練し、溶融混練物のストランドカットを行い、ポリ乳酸樹脂とポリカルボジイミドが反応(架橋)したポリ乳酸樹脂(A)のペレット(径:3〜4mm)を得た。得られたポリ乳酸樹脂(A)(架橋ポリ乳酸樹脂)のカルボキシル基末端濃度7mmol/kgであった。
表1〜2に示す組成物原料を、同方向噛み合型二軸押出機(東芝機械社製 TEM−41SS)を用いて190℃で溶融混練し、ストランドカットを行い、ポリ乳酸樹脂組成物のペレットを得た。なお、得られたペレットは、110℃で2時間除湿乾燥し、水分量を500ppm以下とした。
〔ポリ乳酸樹脂(A)〕
架橋ポリ乳酸樹脂:製造例1で得られたポリ乳酸樹脂
NW4032D:Nature Works4032D(ネイチャーワークス社製)
〔有機結晶核剤〕
エコプロモート:無置換のフェニルホスホン酸亜鉛塩(日産化学工業社製)
〔トリアリールホスフェート〕
CDP:クレジルジフェニルホスフェート(大八化学工業社製)
レオフォス65:トリアリールホスフェートイソプロピル化物(味の素ファインテクノ社製)
〔難燃剤〕
CR−741:芳香族縮合リン酸エステル(大八化学工業社製)
B703:水酸化アルミニウム(日本軽金属社製)
〔可塑剤〕
成分A:Hexanedioic acid,1−[2−(2−methoxyethoxy)ethyl]6−(phenylmethyl)ester(合成:アジピン酸1.0モル、ベンジルアルコール1.1モル、メチルジグリコール1.1モルを加えた系にさらにパラトルエンスルホン酸、トルエンを仕込み、減圧下でエステル反応させることにより得られる。)
成分B:Hexanedioic acid,1,6−bis(phenylmethyl)ester
成分C:Hexanedioic acid,1,6−bis[2−(2−methoxyethoxy)ethyl]ester
成分D:メチルトリグリコールコハク酸ジエステル(特開2011−153296号公報の可塑剤製造例1)
PL−019:グリセリンジアセトモノカプレート、リケマールPL−019(理研ビタミン社製)
〔カルボジイミド化合物〕
スタバクゾールI LF:モノカルボジイミド(Rhein Chemie社製)
スタバクゾールP:ポリカルボジイミド(Rhein Chemie社製)
テストピース〔角柱状試験片(125mm×12mm×1.6mm)〕を用いて、Underwriters Laboratories社の安全標準UL94 垂直燃焼試験の手順に基づき、垂直に保持した試料の下端に10秒間ガスバーナーの炎を接炎させて、その後燃焼が30秒以内に止まったならば、さらに10秒間接炎させるという燃焼試験を5個の試料について実施した。UL94垂直燃焼試験(UL94V)の判定基準に基づき、V−2、V−1、V−0の判定を行った。判定基準を以下に示した。なお、これらの判定基準に当てはまらないものについては難燃性をNotとした。
・V−0
いずれの接炎の後も、10秒以上燃焼を続ける試料がない。
5個の試料に対する10回の接炎に対する総燃焼時間が50秒を超えない。
固定用クランプの位置まで燃焼する試料がない。
試料の下方に置かれた脱脂綿を発火させる、燃焼する粒子を落下させる試料がない。
2回目の接炎の後、30秒以上赤熱を続ける試料がない。
・V−1
いずれの接炎の後も、30秒以上燃焼を続ける試料がない。
5個の試料に対する10回の接炎に対する総燃焼時間が250秒を超えない。
固定用クランプの位置まで燃焼する試料がない。
試料の下方に置かれた脱脂綿を発火させる、燃焼する粒子を落下させる試料がない。
2回目の接炎の後、60秒以上赤熱を続ける試料がない。
・V−2
いずれの接炎の後も、30秒以上燃焼を続ける試料がない。
5個の試料に対する10回の接炎に対する総燃焼時間が250秒を超えない。
固定用クランプの位置まで燃焼する試料がない。
試料の下方に置かれた脱脂綿を発火させる、燃焼する粒子の落下が許容される。
2回目の接炎の後、60秒以上赤熱を続ける試料がない。
テストピース(63mm×13mm×6mm)を用いて、ASTM D256に基づき、Izod衝撃試験機(安田精機製作所社製)を使用して、n=10にて衝撃試験を実施してIzod衝撃強度(J/m)を測定し、それらの(数)平均値を示した。Izod衝撃強度(J/m)が高いほど耐衝撃性に優れることを示す。
テストピース(125mm×12mm×1.6mm)を温度60℃/湿度85%の条件で恒温室に1週間静置後、その表面外観における添加剤のブリードの有無を目視で観察し、かつ、テストピース表面を指でなぞることで確認し、下記の判定基準で耐ブリード性の評価を行った。ブリードが少ないほど、耐ブリード性に優れることを示す。
1:目視でも確認できず、指でなぞっても液体が付着しない。
2:目視では確認できないが、指でなぞると指にわずかに液体の付着感がある。
3:目視で成形体表面に小さな液滴が確認され、指でなぞると指に液体が付着し、成形体表面に液体の筋が生じる。
4:目視で成形体全体が濡れた状態を確認でき、指でなぞると指に液体が付着し、成形体表面は常に濡れた状態のままとなる。
Claims (9)
- ポリ乳酸樹脂(A)に、トリアリールホスフェート(B)、ならびに分子中に2個のエステル基を有し、該エステルを構成するカルボン酸成分が炭素数4〜8の脂肪族ジカルボン酸であり、アルコール成分が水酸基1個当たり炭素数2〜3のアルキレンオキサイドを平均0〜2モル付加した化合物であり、前記アルコール成分がポリエチレングリコールモノアルキルエーテル及び芳香族アルコールから選ばれる1種又は2種である化合物である可塑剤(C)を配合してなり、前記トリアリールホスフェート(B)と前記可塑剤(C)の質量比(可塑剤/トリアリールホスフェート)が0.1〜0.9である、ポリ乳酸樹脂組成物。
- トリアリールホスフェート(B)が炭素数1又は2のアルキル基を有するアルキルアリール基を1つ以上含む請求項1記載のポリ乳酸樹脂組成物。
- ポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して、トリアリールホスフェート(B)が10〜35質量部である、請求項1又は2記載のポリ乳酸樹脂組成物。
- ポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して、可塑剤(C)が2〜10質量部である、請求項1〜3いずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物。
- トリアリールホスフェート(B)が、トリキシレニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、ジキシレニルフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、及びクレジルジフェニルホスフェートからなる群から選ばれる一種以上である、請求項1〜4いずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物。
- ポリ乳酸樹脂(A)が、ポリ乳酸樹脂とポリカルボジイミドとを予め180〜230℃で混練して得られた架橋ポリ乳酸樹脂を含む、請求項1〜5いずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物。
- カルボン酸成分が、コハク酸、アジピン酸、及びスベリン酸からなる群から選ばれる一種以上の脂肪族ジカルボン酸である、請求項1〜6いずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物。
- 請求項1〜7いずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物を射出成形して得られる成形体。
- ポリ乳酸樹脂(A)に、トリアリールホスフェート(B)、ならびに分子中に2個のエステル基を有し、該エステルを構成するカルボン酸成分が炭素数4〜8の脂肪族ジカルボン酸であり、アルコール成分が水酸基1個当たり炭素数2〜3のアルキレンオキサイドを平均0〜2モル付加した化合物であり、前記アルコール成分がポリエチレングリコールモノアルキルエーテル及び芳香族アルコールから選ばれる1種又は2種である化合物である可塑剤(C)を配合し、その際に、前記トリアリールホスフェート(B)と前記可塑剤(C)の質量比(可塑剤/トリアリールホスフェート)が0.1〜0.9となる量で配合することを特徴とする、ポリ乳酸樹脂組成物の製造方法であって、前記ポリ乳酸樹脂(A)が、ポリ乳酸樹脂とポリカルボジイミドとを予め180〜230℃で混練して得られた架橋ポリ乳酸樹脂である、ポリ乳酸樹脂組成物の製造方法。
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