JP5095481B2 - 難燃性ポリ乳酸樹脂組成物およびそれを成形してなる成形体 - Google Patents
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Description
剤を配合することによって、または、ポリ乳酸樹脂と(メタ)アクリル酸エステル化合物
と過酸化物とを溶融混練することによって、ポリ乳酸樹脂の結晶化を促進させ、そして、
この結晶化させたポリ乳酸樹脂に、特定の難燃剤、ホウ酸金属塩、ガラス繊維を配合して
得られる樹脂組成物が前記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明の要旨は、下記の通りである。
(1)ポリ乳酸樹脂(A)を主成分とし、難燃剤(B)と、ホウ酸金属塩(C)と、ガラス繊維(D)と、結晶核剤(X)と相溶化成分(E)を含有する樹脂組成物であって、難燃剤(B)の含有量が10〜40質量%、ホウ酸金属塩(C)の含有量が0.01〜10質量%、ガラス繊維(D)の含有量が5〜50質量%であり、相溶化成分(E)の含有量が0.5〜15質量%、結晶核剤(X)の含有量がポリ乳酸樹脂100質量部に対して0.03〜5質量部であり、難燃剤(B)がポリリン酸塩系難燃剤またはホスフィン酸塩系難燃剤であり、ホウ酸金属塩(C)が、ホウ酸亜鉛であり、相溶化成分(E)がポリオレフィン系ポリマーの主鎖にビニル系ポリマーの側鎖が結合したグラフトコポリマーであることを特徴とする難燃性ポリ乳酸樹脂組成物。
(2)架橋ポリ乳酸樹脂(A′)を主成分とし、難燃剤(B)と、ホウ酸金属塩(C)と、ガラス繊維(D)と相溶化成分(E)を含有する樹脂組成物であって、難燃剤(B)の含有量が10〜40質量%、ホウ酸金属塩(C)の含有量が0.01〜10質量%、ガラス繊維(D)の含有量が5〜50質量%、相溶化成分(E)の含有量が0.5〜15質量%であり、架橋ポリ乳酸樹脂(A′)が、ポリ乳酸樹脂(A)100質量部と、(メタ)アクリル酸エステル化合物(Y)0.01〜20質量部と、過酸化物(Z)0.1〜20質量部とを溶融混練してなる樹脂であり、難燃剤(B)がポリリン酸塩系難燃剤またはホスフィン酸塩系難燃剤であり、ホウ酸金属塩(C)が、ホウ酸亜鉛であり、相溶化成分(E)がポリオレフィン系ポリマーの主鎖にビニル系ポリマーの側鎖が結合したグラフトコポリマーであることを特徴とする難燃性ポリ乳酸樹脂組成物。
(3)加水分解抑制剤(F)を0.05〜8質量%含有することを特徴とする(1)〜(2)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(4)(1)〜(3)のいずれかに記載の樹脂組成物を成形してなる成形体。
本発明の樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂(A)を主成分とし、難燃剤(B)と、ホウ酸金属塩(C)と、ガラス繊維(D)と、結晶核剤(X)とを含有する樹脂組成物、または、架橋ポリ乳酸樹脂(A′)を主成分とし、難燃剤(B)と、ホウ酸金属塩(C)と、ガラス繊維(D)とを含有する樹脂組成物であり、前記架橋ポリ乳酸樹脂(A′)は、ポリ乳酸樹脂(A)と、(メタ)アクリル酸エステル化合物(Y)と、過酸化物(Z)とを溶融混練してなる樹脂である。
R1−(CONH−R2)a (1)
[式中、R1は炭素数2〜30の飽和あるいは不飽和の脂肪鎖、飽和あるいは不飽和の脂肪環、あるいは、芳香環を表す。R2は炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基あるいはシクロアルケニル基、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、あるいは、式(a)〜(d)のいずれかで表される基を表し、1つ以上の水素原子がヒドロキシル基で置換されてもよい。aは2〜6の整数を表す。]
R9−(NHCO−R10)f (2)
[式中、R9は炭素数2〜30の飽和あるいは不飽和の脂肪鎖、不飽和の脂肪環、あるいは、芳香環を表す。R10は前記のR2と同義である。fは2〜6の整数を表す。]
R11−(CONHNHCO−R12)h (3)
[式中、R11は炭素数2〜30の飽和あるいは不飽和の脂肪鎖、不飽和の脂肪環、あるいは、芳香環を表す。R12は前記のR2と同義である。hは2〜6の整数を表す。]
メラミン系化合物としては、種々のものを用いることができるが、結晶化促進効果の点から、メラミンシアヌレートを用いることが好ましい。
有機ホスホン酸塩としては、フェニルホスホン酸塩が、結晶化促進効果の点から好ましい。そのうち、特にフェニルホスホン酸亜鉛が好ましい。
結晶核剤(X)としては、これらのものを単独、あるいは、2種以上を併用して配合することができる。なお、これら有機系の結晶核剤に対して、無機系の各種結晶核剤を併用しても構わない。
難燃剤(B)としては、リン系難燃剤、金属系難燃剤、シリコン系難燃剤、窒素系難燃剤など、公知のあらゆるものを用いることができる。環境への影響から、ハロゲン元素を含まないものが望ましく、また難燃効果の観点から、リン系難燃剤を用いることが好ましい。リン系難燃剤としては、ポリリン酸塩系、ホスフィン酸塩系、リン酸エステル系、縮合リン酸エステル系、ホスファゼン系など、公知のあらゆるものを用いることができ、操業性の点から、ポリリン酸塩系難燃剤、ホスフィン酸塩系難燃剤を用いることが好ましい。
本発明の樹脂組成物において、難燃剤(B)の含有量は、10〜40質量%であることが必要である。含有量が10質量%未満では必要な難燃性が得られず、40質量%を超えて配合すると、得られる樹脂組成物は、耐衝撃性、耐久性に劣る。
ホウ酸金属塩(C)としては、亜鉛塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩など、種々のものを用いることができ、難燃効果促進作用の観点からホウ酸亜鉛を用いることが好ましい。
ホウ酸金属塩(C)の形状としては、特に限定されず、あらゆる形状のものを用いることができる。例えば、試薬として市販されているものや、ホウ酸金属塩系難燃剤として加工されているものなど、種々のものを用いることができる。なお、ポリ乳酸樹脂の劣化の防止の観点から、水溶液や水分散体など水分を含むものは避けることが望ましい。
本発明の樹脂組成物において、ホウ酸金属塩(C)の含有量は、0.01〜10質量%であることが必要である。含有量が0.01質量%未満では必要な難燃効果促進作用を得ることができず、10質量%を超えて配合すると、得られる樹脂組成物は、耐衝撃性、耐久性に劣る。
ガラス繊維(D)としては、あらゆる形状のものを用いることができる。
本発明の樹脂組成物において、ガラス繊維(D)の含有量は、5〜50質量%であることが必要である。含有量が5質量%未満では必要な燃焼粒滴下抑制効果や荷重たわみ抑制効果を得ることができず、50質量%を超えて配合すると、混練操業性に悪影響を与えることがある。
相溶化成分(E)としては、相溶化効果を持つ、あらゆるものを用いることができ、たとえば、ポリオレフィン系ポリマーの主鎖にビニル系ポリマーの側鎖が結合したグラフトコポリマーなどが挙げられ、日本油脂製『モディパー』シリーズとして市販されているものを使用することができる。
本発明の樹脂組成物において、相溶化成分(E)の含有量は0.5〜15質量%であることが好ましい。含有量が0.5質量%未満では、効果を得ることができず、15質量%を超えて配合すると、耐熱性を損なう場合がある。
カルボジイミド化合物を製造する方法としては、特に限定されず、イソシアネート化合物を原料に製造する方法など、多くの方法が挙げられる。
カルボジイミド化合物としては、イソシアネート基を分子内に有するカルボジイミド化合物、およびイソシアネート基を分子内に有していないカルボジイミド化合物のどちらも区別無く用いることができる。
カルボジイミド化合物のカルボジイミド骨格としては、N,N′−ジ−o−トリイルカルボジイミド、N,N′−ジオクチルデシルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,6−ジメチルフェニルカルボジイミド、N−トリイル−N′−シクロヘキシルカルボジイミド、N−トリイル−N′−フェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−p−ニトロフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−p−ヒドロキシフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N′−ジ−p−トリイルカルボジイミド、p−フェニレン−ビス−ジ−o−トリイルカルボジイミド、4,4′−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド、テトラメチルキシリレンカルボジイミド、N,N−ジメチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミドなど、多くのカルボジイミド骨格が挙げられる。
なお、ポリカルボジイミドにおいては、その分子の両端あるいは分子中の任意の部位が、イソシアネート基等の官能基を有する、あるいは、分子鎖が分岐しているなど他の部位と異なる分子構造となっていても構わない。
(1)難燃性:
UL94に準拠して測定した。試験片は1.5mm厚のものを用いた。難燃性は、V−0、または、V−1であることが求められる。
(2)耐衝撃性:
ASTM D256に準拠して測定したアイゾット衝撃強度が75J/mを超えるものを◎、60J/mを超え、75J/m以下のものを○、60J/m以下のものを×とした。
(3)耐熱性:
ISO 75に準拠し、荷重0.45MPaで熱変形温度を測定した。熱変形温度が120℃を超えるものを◎、100℃を超え、120℃以下のものを○、100℃以下のものを×とした。
(4)耐湿熱性:
試験片を60℃95%RHの高温高湿環境下に20日間曝した後、ISO178に準拠して曲げ強度を測定し、高温高湿環境下に曝す前の曲げ強度を基準にして、曲げ強度の保持率を算出した。保持率が60%を超えるものを○、50%を超え、60%以下のものを△、50%以下のものを×とした。
(5)操業性:
混練押出における樹脂の供給・吐出状態について下記のとおり評価した。
◎:樹脂の供給・吐出状態が安定し、ほとんど途切れなかった。
○:時々供給や吐出に乱れが生じたが、全体的には安定していた。
×:供給部の詰まりや吐出樹脂の乱れが頻発し、連続した操業が困難であった。
(1)ポリ乳酸樹脂(A):
・カーギルダウ製 『6201D』(D−乳酸含量1.4モル%、メルトフローレート(190℃、21.2N)10g/10分)
(2)架橋ポリ乳酸樹脂(A′):
二軸押出機(東芝機械社製TEM37BS)を用い、ポリ乳酸樹脂(A)100質量部をドライブレンドして押出機の根元供給口から供給し、バレル温度180℃、スクリュー回転数150rpm、吐出15kg/hの条件で、ベントを効かせながら押出しを実施した。さらに、(メタ)アクリル酸エステル化合物(日本油脂製 エチレングリコールジメタクリレート『ブレンマーPDE−50』)0.10質量部、および、過酸化物(日本油脂製 ジ−t−ブチルパーオキサイド『パーブチルD』)0.2質量部をシリンダ内に供給した。押出機先端から吐出された樹脂をペレット状にカッティングして、架橋ポリ乳酸樹脂(A′)のペレットを得た。
(3)難燃剤(B)
リン系難燃剤:
・大八化学製 芳香族系縮合リン酸エステル『PX200』
・クラリアント製 ポリリン酸アンモン『AP422』
・クラリアント製 ホスフィン酸塩系難燃剤『OP1312』
非リン系難燃剤:
・日産化学製 メラミンシアヌレート『MC4000』
(4)ホウ酸金属塩(C):
・キシダ化学製 ホウ酸亜鉛
・キシダ化学製 ホウ酸ナトリウム
(5)ホウ酸以外の金属塩:
・大日化学製 ステアリン酸マグネシウム『SMO』(StMg)
・日東化成工業製 ステアリン酸亜鉛(StZn)
(6)ガラス繊維(D):
・オーエンスコーニング製『FT592』
(7)相溶化成分(E):日本油脂製『モディパーA4200』
(8)加水分解抑制剤(F):
・日清紡製 イソシアネート変性カルボジイミド『LA−1』(イソシアネート基含有率1〜3%)、
・松本油脂製 カルボジイミド『EN160』
(9)結晶核剤(X):
・新日本理化製 トリシクロヘキシルトリメシン酸アミド『TF−1』
二軸押出機(東芝機械社製TEM37BS型)を用い、架橋ポリ乳酸樹脂(A′)48質量部と、難燃剤(AP422)31質量部と、ホウ酸亜鉛0,4質量部と、相溶化成分5質量部と、加水分解抑制剤(LA−1)2.5質量部とをドライブレンドして押出機の根元供給口から供給し、バレル温度180℃、スクリュー回転数150rpm、吐出15kg/hの条件で、ベントを効かせながら押出しを実施した。さらに、ガラス繊維13質量部を押出ノズル近傍シリンダ内に供給した。押出機先端から吐出された樹脂をペレット状にカッティングして樹脂組成物のペレットを得た。
得られたペレットを70℃×24時間真空乾燥したのち、東芝機械社製IS−80G型射出成形機を用いて、金型表面温度を105℃に調整しながら、一般物性測定用試験片(ASTM型)を成形し、これを各種測定に供した。
ポリ乳酸樹脂、難燃剤、ホウ酸金属塩、ガラス繊維、結晶核剤、相溶化成分、加水分解
抑制剤の量や種類を変更した以外は実施例1と同様にして樹脂組成物ペレットを得て、こ
れを射出成形して試験片を作製し、各種物性を測定した。
また、実施例1、3、参考例5、7においては、難燃剤としてリン系難燃剤を用い、ホウ酸金属塩としてホウ酸亜鉛を用い、さらに、相溶化成分を配合したため、参考例2、4、6、8、9と比較して、難燃性において、より好適な結果が得られた。そのうち、特に、実施例1、3、7においては、リン系難燃剤としてポリリン酸塩系難燃剤あるいはホスフィン酸塩系難燃剤を用いたため、参考例5と比較して、操業性が良好であった。また、実施例1、3、参考例4、参考例6、7においては、加水分解抑制剤の配合量が適当であったため、耐久性や色調の点で、参考例2、5、8、9と比較して、良好な結果が得られた。
一方、比較例1においては、ホウ酸金属塩の配合量が少ないため、難燃性に劣る結果と
なった。比較例2、3においては、金属塩として、ホウ酸金属塩ではなく、ステアリン酸
マグネシウムやステアリン酸亜鉛が用いられているため、耐熱性は得られたものの、耐衝
撃性に劣る結果となった。比較例4においては難燃剤の配合量が少ないため、難燃性に劣
る結果となった。また、比較例5においては、難燃剤の配合量が多いため、操業性に劣る
結果となった。また、比較例6においては、ポリ乳酸樹脂に結晶化促進処方が施されてい
ないため、耐熱性に劣る結果となった。また、比較例7においては、ガラス繊維の配合量
が少ないため、難燃性、および、耐熱性に劣る結果となった。また、比較例8においては
、ホウ酸金属塩の配合量が多いため、耐衝撃性、耐久性に劣る結果となった。また、比較
例9および10においては、ホウ酸金属塩を多量に配合し、他の難燃剤を用いていないた
め、難燃性が得られず、また、耐衝撃性等に劣る結果となり、耐久性も悪い。
Claims (4)
- ポリ乳酸樹脂(A)を主成分とし、難燃剤(B)と、ホウ酸金属塩(C)と、ガラス繊維(D)と、結晶核剤(X)と相溶化成分(E)を含有する樹脂組成物であって、難燃剤(B)の含有量が10〜40質量%、ホウ酸金属塩(C)の含有量が0.01〜10質量%、ガラス繊維(D)の含有量が5〜50質量%であり、相溶化成分(E)の含有量が0.5〜15質量%、結晶核剤(X)の含有量がポリ乳酸樹脂100質量部に対して0.03〜5質量部であり、難燃剤(B)がポリリン酸塩系難燃剤またはホスフィン酸塩系難燃剤であり、ホウ酸金属塩(C)が、ホウ酸亜鉛であり、相溶化成分(E)がポリオレフィン系ポリマーの主鎖にビニル系ポリマーの側鎖が結合したグラフトコポリマーであることを特徴とする難燃性ポリ乳酸樹脂組成物。
- 架橋ポリ乳酸樹脂(A′)を主成分とし、難燃剤(B)と、ホウ酸金属塩(C)と、ガラス繊維(D)と相溶化成分(E)を含有する樹脂組成物であって、難燃剤(B)の含有量が10〜40質量%、ホウ酸金属塩(C)の含有量が0.01〜10質量%、ガラス繊維(D)の含有量が5〜50質量%、相溶化成分(E)の含有量が0.5〜15質量%であり、架橋ポリ乳酸樹脂(A′)が、ポリ乳酸樹脂(A)100質量部と、(メタ)アクリル酸エステル化合物(Y)0.01〜20質量部と、過酸化物(Z)0.1〜20質量部とを溶融混練してなる樹脂であり、難燃剤(B)がポリリン酸塩系難燃剤またはホスフィン酸塩系難燃剤であり、ホウ酸金属塩(C)が、ホウ酸亜鉛であり、相溶化成分(E)がポリオレフィン系ポリマーの主鎖にビニル系ポリマーの側鎖が結合したグラフトコポリマーであることを特徴とする難燃性ポリ乳酸樹脂組成物。
- 加水分解抑制剤(F)を0.05〜8質量%含有することを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の樹脂組成物。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物を成形してなる成形体。
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