JP5427111B2 - ポリ乳酸樹脂組成物、並びにこのポリ乳酸樹脂を成形して得られる成形品、電気製品用筐体、及び電気製品用内部部品 - Google Patents

ポリ乳酸樹脂組成物、並びにこのポリ乳酸樹脂を成形して得られる成形品、電気製品用筐体、及び電気製品用内部部品 Download PDF

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Description

本発明は、ポリ乳酸樹脂組成物、並びにこのポリ乳酸樹脂を成形して得られる成形品、電気製品用筐体、及び電気製品用内部部品に関する。
芳香族ポリカーボネート樹脂は、優れた機械特性、熱的性質を有しているため工業的に広く利用されている。また、芳香族ポリカーボネート樹脂の流動性を改善するため、芳香族ポリカーボネート樹脂と他の熱可塑性樹脂とのポリマーアロイも開発されている。特に芳香族ポリカーボネート樹脂とABS樹脂とのポリマーアロイは、OA機器分野、電子電気機器分野、自動車分野などに広く利用されている。
これらの用途においては、近年、成形品に高い難燃性が望まれている。更にこれらの用途においては、地球環境問題への関心の高まりから、石油資源に過度に依存することなく、しかも生分解性を有しているプラスチック材料の利用も望まれている。このようなプラスチック材料の候補の一つとしてポリ乳酸がある。ポリ乳酸はこれまでの石油由来の樹脂に較べて機械特性等が充分とはいえず、このため、さまざまな取り組みがされている。
例えば特許文献1では、芳香族ポリカーボネート樹脂と、ポリ乳酸と、ガラス転移温度が10℃以下のゴム成分のコアに特定のビニル化合物から選択されたモノマーのシェルがグラフト共重合されたコア−シェル型グラフト共重合体と、リン系安定剤とを、特定の比率で溶融混練することで、ポリ乳酸を含有する芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を得ることが提案されている。この従来技術では、ポリ乳酸を含有する芳香族ポリカーボネート樹脂組成物への、芳香族ポリカーボネート樹脂とABS樹脂とのポリマーアロイに匹敵する耐衝撃性や成形加工性(流動性)の付与と、高度な難燃性の付与とが、試みられている。
特開2007−269821号公報
近年、各種製品の薄肉軽量化の進展により、特にOA機器分野、電子電気機器分野、自動車分野などにおいては、成形品の更なる薄型化が要請されている。このため成形用の樹脂組成物中にポリ乳酸を含有させる場合にも、樹脂組成物が高い成形性(流動性)を有すると共に、得られる成形品が薄型であっても高い機械的強度と難燃性とを兼ね備えることが要請されている。
しかし、特許文献1に示されるような従来技術では、ポリ乳酸を含有する樹脂組成物においては、成形性を維持しつつこのような高いレベルでの成形品の機械的強度と難燃性の両立化を達成することはできないものであった。
本発明は上記事由に鑑みてなされたものであり、成形品の難燃性と機械的強度がより改善されるポリ乳酸樹脂組成物を提供することを課題とする。
本発明は前記ポリ乳酸樹脂組成物を成形して得られる、難燃性と機械的強度がより改善された成形品、電気製品用筐体、及び電気製品用内部部品を提供することも課題とする。
第一の発明に係るポリ乳酸樹脂組成物は、下記(A)乃至(D)成分をそれぞれ下記の割合で含有することを特徴とする;
(A)ポリ乳酸25〜45質量%;
(B)下記構造式(1)に示される有機リン系難燃剤1〜30質量%;
(C)含フッ素滴下防止剤0.2〜3質量%;及び
(D)前記各成分に含まれない熱可塑性樹脂15〜70.8質量%。
及びRはそれぞれ独立にアリール基又は末端に不飽和結合を有する(メタ)アクリル酸エステル基であり、R及びRは同じであっても異なっていてもよい。nは、3〜25の整数である。
第一の発明に係るポリ乳酸樹脂組成物は、前記(D)成分の少なくとも一部として、ポリカーボネート樹脂を含有してもよい。
第一の発明においては、前記(A)成分が、温度190℃、荷重21.2Nでのメルトフローインデックスが1〜10g/10分のポリ−L−乳酸を含んでもよい。
第一の発明に係るポリ乳酸樹脂組成物は、厚み1.5mmに成形された場合にUL94 HB規格以上を満足することが好ましい。
第一の発明に係るポリ乳酸樹脂組成物は、厚み1.5mmに成形された場合にUL94 V−2規格以上を満足することが好ましい。
第一の発明に係るポリ乳酸樹脂組成物は、厚み1.5mmに成形された場合にUL94 V−1規格以上を満足することが好ましい。
第一の発明に係るポリ乳酸樹脂組成物は、厚み1.5mmに成形された場合にUL94 V−0規格を満足することが好ましい。
第二の発明に係る成形品は、第一の発明に係るポリ乳酸樹脂組成物を成形することで得られることを特徴とする。
第三の発明に係る電気製品用筐体は、第一の発明に係るポリ乳酸樹脂組成物を成形することで得られることを特徴とする。
第四の発明に係る電気製品用内部部品は、第一の発明に係るポリ乳酸樹脂組成物を成形することで得られることを特徴とする。
本発明によれば、成形品の難燃性と機械的強度がより改善されるポリ乳酸樹脂組成物が得られる。
また、本発明によれば、前記ポリ乳酸樹脂組成物が成形されることで、難燃性と機械的強度がより改善された成形品、電気製品用筐体、及び電気製品用内部部品が得られる。
本実施形態に係るポリ乳酸樹脂組成物は、下記(A)乃至(D)成分をそれぞれ下記の含有量で含有する。
(A)ポリ乳酸25〜45質量%;
(B)有機リン系難燃剤1〜15質量%;
(C)含フッ素滴下防止剤0.2〜3質量%;及び
(D)前記各成分に含まれない熱可塑性樹脂15〜70.8質量%。
[(A)成分]
(A)成分(ポリ乳酸)としては、乳酸の単独重合体と、乳酸と乳酸以外のヒドロキシカルボン酸との共重合体とが挙げられる。ポリ乳酸は、例えばトウモロコシなどの植物から得られたデンプンを発酵させて乳酸を得た後、この乳酸を化学合成によりポリマー化することで得ることができる。
乳酸としては、L−乳酸、D−乳酸、乳酸の二量体であるラクトン等が挙げられる。
乳酸以外のヒドロキシカルボン酸であって乳酸と共重合可能なものとしては、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシカプロン酸等が挙げられる。これらのヒドロキシカルボン酸を一種のみ用い、或いは二種以上を併用することができる。
(A)成分は、L−乳酸の重合体であるポリ−L−乳酸と、ステレオコンプレックス型ポリ乳酸との少なくとも一方を含んでいることが好ましい。特に(A)成分がステレオコンプレックス型ポリ乳酸のみからなり、或いはポリ−L−乳酸とステレオコンプレックス型ポリ乳酸のみからなることが好ましい。
ステレオコンプレックス型ポリ乳酸は、光学異性体であるポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とが混合したものであり、これらが対となることでステレオコンプレックス結晶を生成している(Macromolecules 1987,20,904−906参照)。このステレオコンプレックス型ポリ乳酸は、ポリ−L−乳酸と比較して格段に高い融点を有する結晶性樹脂であり、ポリ−L−乳酸よりも格段に優れた特性が期待できる。
ポリ−L−乳酸及びポリ−D−乳酸は、実質的にそれぞれ下記式(2)で表されるL−乳酸単位及びD−乳酸単位からなる。
ステレオコンプレックス型ポリ乳酸を構成するポリ−L−乳酸は、好ましくは90〜100モル%、より好ましくは95〜100モル%、さらに好ましくは99〜100モル%のL−乳酸単位から構成される。他の単位としては、D−乳酸単位、乳酸以外の単位が挙げられる。D−乳酸単位、乳酸以外の単位は、好ましくは0〜10モル%、より好ましくは0〜5モル%、さらに好ましくは0〜1モル%である。
ステレオコンプレックス型ポリ乳酸を構成するポリ−D−乳酸は、好ましくは90〜100モル%、より好ましくは95〜100モル%、さらに好ましくは99〜100モル%のD−乳酸単位から構成される。他の単位としては、L−乳酸単位、乳酸以外の単位が挙げられる。L−乳酸単位、乳酸以外の単位は、0〜10モル%、好ましくは0〜5モル%、さらに好ましくは0〜1モル%である。
乳酸以外の単位としては、2個以上のエステル結合形成可能な官能基を持つジカルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン等由来の単位、及びこれら種々の構成成分からなる各種ポリエステル、各種ポリエーテル、各種ポリカーボネート等由来の単位が例示される。
ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等が挙げられる。多価アルコールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、グリセリン、ソルビタン、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の脂肪族多価アルコール等あるいはビスフェノールにエチレンオキシドを付加させたものなどの芳香族多価アルコール等が挙げられる。ヒドロキシカルボン酸として、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ安息香酸等が挙げられる。ラクトンとしては、グリコリド、ε−カプロラクトングリコリド、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、δ−ブチロラクトン、β−またはγ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトン等が挙げられる。
ステレオコンプレックスポリ乳酸は、ポリ−L−乳酸及びポリ−D−乳酸の混合物であり、ステレオコンプレックス結晶を形成し得る。ポリ−L−乳酸の重量平均分子量は、好ましくは15万〜21万である。ポリ−D−乳酸の重量平均分子量は、好ましくは13万〜16万である。このように、重量平均分子量に差をつけることによって、ステレオコンプレックス化が容易となり、より高分子量の均一なステレオコンプレックスを形成し易くなる。
ステレオコンプレックス型ポリ乳酸を構成するポリ−L−乳酸及びポリ−D−乳酸は、公知の方法で製造することができる。例えば、L−またはD−ラクチドを金属重合触媒の存在下、加熱し開環重合させ製造することができる。また、金属重合触媒を含有する低分子量のポリ乳酸を結晶化させた後、減圧下または不活性ガス気流下で加熱し固相重合させ製造することができる。さらに、有機溶媒の存在/非存在下で、乳酸を脱水縮合させる直接重合法で製造することができる。
重合反応は、従来公知の反応容器で実施可能であり、例えばヘリカルリボン翼等、高粘度用攪拌翼を備えた縦型反応器あるいは横型反応器を単独、または並列して使用することができる。また、回分式あるいは連続式あるいは半回分式のいずれでも良いし、これらを組み合わせてもよい。
重合開始剤としてアルコールを用いてもよい。このアルコールとしては、ポリ乳酸の重合を阻害せず不揮発性であることが好ましく、例えばデカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノールなどを好適に用いることができる。
固相重合法では、前述した開環重合法や乳酸の直接重合法によって得られた、比較的低分子量の乳酸ポリエステルをプレポリマーとして使用する。プレポリマーは、そのガラス転移温度(Tg)以上融点(Tm)未満の温度範囲にて予め結晶化させることが、融着防止の面から好ましい形態と言える。結晶化させたプレポリマーは固定された縦型或いは横型反応容器、またはタンブラーやキルンの様に容器自身が回転する反応容器(ロータリーキルン等)中に充填され、プレポリマーのガラス転移温度(Tg)以上融点(Tm)未満の温度範囲に加熱される。重合温度は、重合の進行に伴い段階的に昇温させても何ら問題はない。また、固相重合中に生成する水を効率的に除去する目的で前記反応容器類の内部を減圧することや、加熱された不活性ガス気流を流通する方法も好適に併用される。
ステレオコンプレックス型ポリ乳酸におけるポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸との割合は、質量比で90:10〜10:90の範囲であることが好ましく、75:25〜25:75の範囲であればより好ましく、60:40〜40:60の範囲であれば更に好ましく、またこの割合が50:50に近いほど好ましい。
また、このステレオコンプレックス型ポリ乳酸の重量平均分子量は、10万〜50万の範囲であることが好ましく、10万〜30万の範囲であれば更に好ましい。この重量平均分子量は、溶媒(移動相)としてクロロホルムを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより求められる、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
ステレオコンプレックスポリ乳酸は、ポリ−L−乳酸及びポリ−D−乳酸からなりステレオコンプレックス結晶を形成していることが好ましい。ステレオコンプレックス結晶の含有率は、好ましくは80〜100%、より好ましくは95〜100%である。本発明でいうステレオコンプレックスポリ乳酸は、示差走査熱量計(DSC)測定において、昇温過程における融解ピークのうち、195℃以上の融解ピークの割合が好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である。融点は、195〜250℃の範囲、より好ましくは200〜220℃の範囲である。融解エンタルピーは、20J/g以上、好ましくは30J/g以上である。具体的には、示差走査熱量計(DSC)測定において、昇温過程における融解ピークのうち、195℃以上の融解ピークの割合が90%以上であり、融点が195〜250℃の範囲にあり、融解エンタルピーが20J/g以上であることが好ましい。
また、このステレオコンプレックス型ポリ乳酸のステレオ化度は、90%以上であることが好ましく、100%であれば更に好ましい。ステレオ化度(S)は、DSC測定において融点のエンタルピーを比較することによって下記式によって決定することができる。
S=[(ΔHms/ΔHms)/(ΔHmh/ΔHmh+ΔHms/ΔHms)]
(ただし、ΔHms=203.4J/g、ΔHmh=142J/g、ΔHmsはステレオコンプレックス融点の融解エンタルピー、ΔHmhはホモ結晶の融解エンタルピーである。)
ステレオコンプレックス型ポリ乳酸は、例えばポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とが所定の質量比で共存する状態で混合されることで得られる。混合は溶媒の存在下でおこなわれる。この溶媒としては、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸が溶解するのであれば特に制限されないが、例えばクロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、フェノール、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、ブチロラクトン、トリオキサン、ヘキサフルオロイソプロパノール等が挙げられる。これらの溶媒は一種のみ用いられ、或いは複数種が併用される。
ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とが溶媒の非存在下で混合されることでステレオコンプレックス型ポリ乳酸が得られてもよい。この場合、例えばポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とを溶融混練する方法や、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸のうち一方を溶融させた後、これに他方を加えて混練する方法などが、採用される。
ステレオコンプレックス型ポリ乳酸として、ポリ−L−乳酸セグメントとポリ−D−乳酸セグメントが結合している構造を有するステレオブロックポリ乳酸も、好適に用いられる。ステレオブロックポリ乳酸が前記のような基本的構成を有するブロック共重合体であれば、ステレオブロックポリ乳酸の製造方法は特に制限されない。ステレオブロックポリ乳酸の製造方法としては、ポリ−L−乳酸セグメントとポリ−D−乳酸セグメントが分子内で結合している構造を有するブロック重合体である。このようなブロック重合体は、たとえば、逐次開環重合によって製造する方法、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を重合しておいて後で鎖交換反応や鎖延長剤で結合する方法、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を重合しておいてブレンド後固相重合して鎖延長する方法、立体選択開環重合触媒を用いてラセミラクチドから製造する方法などが挙げられる。但し、逐次開環重合によって得られる高融点のステレオブロック重合体、及び固相重合法によって得られるステレオブロック重合体は、製造が容易である点で好ましい。
ステレオコンプレックス型ポリ乳酸には、ステレオ化度の向上のために、特定の添加物が添加されることが好ましい。この添加物の好ましい例として、下記式(3)に示されるリン酸金属塩が挙げられる。
式中、Rは水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基を示す。アルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。R乃至Rはそれぞれ独立に水素原子または炭素原子数1〜12のアルキル基を示す。アルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等が挙げられる。
はアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、亜鉛原子またはアルミニウム原子を示す。Mとして、Na、K、Al、Mg、Caが挙げられ、特に、K、Na、Alを好適に用いることができる。nは、Mがアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子または亜鉛原子のときは0であり、Mがアルミニウム原子のときは1または2である。
これらのリン酸金属塩は、ステレオコンプレックス型ポリ乳酸に対して、好ましくは質量割合で10ppmから2%、より好ましくは50ppmから0.5%、さらに好ましくは100ppmから0.3%用いることが好ましい。少なすぎる場合には、ステレオ化度を向上する効果が小さく、多すぎると樹脂自体を劣化させるので好ましくない。
また、ポリ乳酸樹脂組成物の耐熱性を向上させるために、さらにケイ酸カルシウムを添加することが好ましい。ケイ酸カルシウムとしては、例えば、六方晶を含むものを用いることができ、その粒子径は低いほうが好ましい。例えば、平均一次粒子径は0.2〜0.05μmの範囲であるとポリ乳酸樹脂組成物に適度に分散するので、ポリ乳酸樹脂組成物の耐熱性は良好なものとなる。また、添加量はポリ乳酸樹脂組成物を基準として、0.01〜1質量%の範囲であることが好ましく、さらに好ましいのは0.05〜0.5質量%の範囲である。多すぎる場合には、外観が悪くなりやすく、少なければ特段の効果を示さないので好ましくない。
また、ポリ乳酸樹脂組成物に対する、ステレオコンプレックス型ポリ乳酸のカルボキシル末端基濃度が15eq/ton以下であることが好ましい。この範囲内にある時には、溶融安定性、湿熱耐久性が良好な組成物を得ることができる。15eq/ton以下にする場合には、具体的には、ポリエステルにおいて公知のカルボキシル末端基濃度の低減方法をいずれも採用することができ、例えば、末端封止剤の添加、具体的には、オキサゾリン類、エポキシ化合物等の添加や、モノカルボジイミド類、ジカルボジイミド類、ポリカルボジイミド類などの縮合剤の添加または、末端封止剤、縮合剤を添加せず、アルコール、アミンによってエステルまたはアミド化することもできる。
(A)成分がポリ−L−乳酸を含む場合には、ポリ−L−乳酸としては、上記ステレオコンプレックス型ポリ乳酸の製造に用いられるポリ−L−乳酸を使用することができ、また市販のものを適宜使用することができる。ステレオコンプレックス型ポリ乳酸とポリ−L−乳酸とが併用される場合の、ポリ−L−乳酸の含有量は、ポリ乳酸樹脂全量に対して30質量%以下であることが好ましい。この含有量が30質量%を超えると、ステレオコンプレックス型ポリ乳酸を含有することによる成形品の剛性の改善が充分に達成されなくなるおそれがある。このポリ−L−乳酸の分子量は特に制限されないが、物理的、熱的特性の面より、その重量平均分子量が1万以上、より好ましくは3万以上であることが好ましい。
(A)成分がポリ−L−乳酸を含む場合には、特にメルトフローインデックス(MFI)1〜10g/10分のポリ−L−乳酸を含むことが好ましい。この場合、ポリ乳酸樹脂組成物の成形性(流動性)が特に向上する。このようなMFIを有するポリ−L−乳酸とし、例えばネイチャーワークス社、海生生物社などから提供されている市販品を使用することができる。
ポリ乳酸樹脂組成物中の(A)成分の含有量は25〜45質量%の範囲とする。この含有量が25質量%以上であることで、ポリ乳酸樹脂組成物から形成された成形品の機械的強度を十分に改善することができる。更に、ポリ乳酸樹脂組成物中の(A)成分の含有量を充分に多くして、石油資源の使用量を充分に削減し、CO排出量の削減に大きく寄与することができる。尚、バイオマス成分である(A)成分が25質量%以上であることで日本バイオプラスチック協会によるバイオマスプラ識別表示を受けることも可能となる。また(A)成分の含有量が45質量%以下であることでポリ乳酸樹脂組成物の加水分解による成形品の耐水性の低下を抑制することができる。
[(B)成分]
(B)成分(構造式(1)に示される有機リン系難燃剤)は、成形品の難燃性の向上のために用いられる。ポリ乳酸樹脂組成物中の(B)成分の含有量は、1〜30質量%の範囲であり、特に3〜12質量%の範囲であることが好ましい。このような範囲において、ポリ乳酸樹脂組成物から形成される成形品の難燃性が向上する。
(B)成分として、適宜の市販品が使用されてもよく、例えば大塚化学株式会社製の品番SPB100、SPB100L、株式会社伏見製薬所製の商品名ラビトルFP−100などが使用されてもよい。
この(B)成分は液状であることが特に好ましい。この場合、ポリ乳酸樹脂組成物中での(B)成分の分散性が向上し、成形品の難燃性が特に向上する。また、(B)成分の含有量を低減しつつ、成形品の難燃性を向上することもできる。特に液状の(B)成分として大塚化学株式会社製の品番SPB100Lが使用されることが好ましい。
ポリ乳酸樹脂組成物は、(B)成分に加えて、(B)成分以外の有機リン系難燃剤を含有してもよい。この場合、ポリ乳酸樹脂組成物中の有機リン系難燃剤全体の含有量は、1〜30質量%の範囲であることが好ましく、特に3〜12質量%の範囲であることが好ましい。
(B)成分以外の有機リン系難燃剤として、下記式(4)で表されるリン酸エステル化合物が挙げられる。このようなリン酸エステル化合物が使用されると、成形品の高い耐衝撃性が維持されながら、この成形品の難燃性が大きく向上する。
式(4)中のnは、0〜5の整数を示す。この式(6)に示されるリン酸エステル化合物は、異なるn数を有する化合物の混合物であってもよい。リン酸エステル化合物が前記のような混合物である場合、平均のn数は好ましくは0.5〜1.5、より好ましくは0.8〜1.2、更に好ましくは0.95〜1.15、特に好ましくは1〜1.14の範囲である。
上記式(4)中のXは、ハイドロキノン、レゾルシノール、ビスフェノールA、及びジヒドロキシジフェニルよりなる群より選ばれるジヒドロキシ化合物から水酸基が除去された二価の基を示す。Xは特にレゾルシノール、ビスフェノールA、又はジヒドロキシジフェニルから誘導される二価の基であることが好ましい。
上記式(4)中のR、R、R、及びRはそれぞれ独立して、炭素数6〜12のアリール基を表す。このR、R、R、及びRとしては、具体的にはフェノール、クレゾール、キシレノール、イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、p−クミルフェノールなどのヒドロキシ化合物から誘導される、一価の基が例示される。中でもR、R、R、及びRがフェニル基、又は2,6−ジメチルフェニル基であることが好ましい。
尚、このフェニル基はハロゲン原子を有する置換基を有してもよい。このフェニル基から誘導される基を有するホスフェート化合物の具体例としては、トリス(2,4,6−トリブロモフェニル)ホスフェート、トリス(2,4−ジブロモフェニル)ホスフェート、トリス(4−ブロモフェニル)ホスフェートなどが例示される。
一方、ハロゲン原子を有する置換基を有しないホスフェート化合物の具体例としては、トリフェニルホスフェート、トリ(2,6−キシリル)ホスフェート等のモノホスフェート化合物;レゾルシノールビスジ(2,6−キシリル)ホスフェート)を主体とするホスフェートオリゴマー;4,4−ジヒドロキシジフェニルビス(ジフェニルホスフェート)を主体とするホスフェートオリゴマー;ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)を主体とするリン酸エステルオリゴマー等が、好適である。ここで主体とするとは、重合度の異なる他の成分を少量含んでよいことであり、より好適には上記式(6)におけるn=1の成分が80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは90質量%以上含有されることである。
リン酸エステル化合物の酸価は、0.2mgKOH/g以下が好ましく、より好ましくは0.15mgKOH/g以下であり、更に好ましくは0.1mgKOH/g以下であり、特に好ましくは0.05mgKOH/g以下である。この酸価の下限は実質的に0とすることも可能であり、実用上0.01mgKOH/g以上が好ましい。ポリ乳酸樹脂が式(6)で示され酸価が0.2mgKOH/g以下であるリン酸エステル化合物を含有すると、ポリ乳酸樹脂組成物の熱安定性が特に高くなり、またポリ乳酸樹脂組成物の耐加水分解性が向上して成形品の耐水性が高くなる。リン酸エステル化合物中のハーフエステルの含有量は1.1質量%以下がより好ましく、0.9質量%以下が更に好ましい。下限としては実用上0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましい。酸価が0.2mgKOH/gを超える場合、またはハーフエステル含有量が1.5mgを超える場合には、成形時の熱安定性に劣るようになり、芳香族ポリカーボネートの分解に伴いポリ乳酸樹脂組成物の耐加水分解性が低下する。
このようなリン酸エステル化合物の具体例としては、大八化学工業株式会社製、品番PX202が挙げられる。
(B)成分以外の有機リン系難燃剤として、リン酸アンモニウムも挙げられる。リン酸アンモニウムの具体例としては、クラリアントジャパン株式会社製の品番AP422が挙げられる。このようなリン酸アンモニウムが使用される場合も、成形品の高い耐衝撃性が維持されながら、この成形品の難燃性が大きく向上する。
[(C)成分]
含フッ素滴下防止剤は、成形品の燃焼時の溶融滴下を防止して難燃性を更に向上させるために使用される。
ポリ乳酸樹脂組成物中の(C)成分の含有量は、0.2〜3質量%の範囲とする。この含有量は特に0.2〜1質量%の範囲であることが好ましい。このような範囲において、成形品の高い機械的強度と高い難燃性とを両立させることができる。
含フッ素滴下防止剤として、フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が好ましく使用される。フィブリル形成能を有するPTFEは極めて高い分子量を有し、せん断力などの外的作用によりPTFE同士を結合して繊維状になる傾向を示す。PTFEの、標準比重から求められる数平均分子量は、100万〜1000万の範囲が好ましく、200万〜900万の範囲であれば更に好ましい。このPTFEは、固体形状であっても、水性分散液形態であってもよい。分散性の向上と成形品の更なる難燃性及び機械的特性の向上を目的として、PTFEが他の樹脂と混合されることでPTFE混合物を構成していてもよい。フィブリル形成能を有するPTFEの市販品としては例えば三井・デュポンフロロケミカル株式会社製のテフロン(登録商標)6J、ダイキン化学工業株式会社製のポリフロンMPA FA500,F−201Lなどが挙げられる。PTFEの水性分散液の市販品としては、旭アイシーアイフロロポリマーズ株式会社製のフルオンAD−1、AD−936、ダイキン工業株式会社製のフルオンD−1、D−2、三井・デュポンフロロケミカル株式会社製のテフロン(登録商標)30Jなどが代表として挙げられる。
混合形態のPTFEを得る方法としては、
(1)PTFEの水性分散液と有機重合体の水性分散液または溶液とを混合し共沈殿を行い共凝集混合物を得る方法(特開昭60−258263号公報、特開昭63−154744号公報などに記載された方法);
(2)PTFEの水性分散液と乾燥した有機重合体粒子とを混合する方法(特開平4−272957号公報に記載された方法);
(3)PTFEの水性分散液と有機重合体粒子溶液を均一に混合し、この混合物からそれぞれの媒体を同時に除去する方法(特開平06−220210号公報、特開平08−188653号公報などに記載された方法);
(4)PTFEの水性分散液中で有機重合体を形成する単量体を重合する方法(特開平9−95583号公報に記載された方法);
(5)PTFEの水性分散液と有機重合体分散液を均一に混合後、更に該混合分散液中でビニル系単量体を重合し、その後混合物を得る方法(特開平11−29679号などに記載された方法)等が、挙げられる。
混合形態のPTFEの市販品としては、三菱レイヨン株式会社の「メタブレン A3800」(商品名)、GEスペシャリティーケミカルズ社製の「BLENDEX B449」(商品名)などが挙げられる。
混合形態のPTFEの場合、PTFE混合物100質量%中のPTFEの割合は1〜60質量%が好ましく、より好ましくは5〜55質量%である。PTFEの割合が前記範囲にある場合は、PTFEの良好な分散性を達成することができる。
[(D)成分]
(D)成分(前記各成分に含まれない熱可塑性樹脂)は、種々の熱可塑性樹脂を含み得る。ポリ乳酸樹脂組成物中の(D)成分の含有量は、15〜70.8質量%の範囲である。この含有量が70.8質量%を超えると樹脂成分全体に対するポリ乳酸樹脂の比率が下がってしまい、ポリ乳酸樹脂の特徴である生分解性が低下するおそれがある。(D)成分に含まれ得る好ましい成分について説明する。
((D1)ポリカーボネート樹脂)
ポリ乳酸樹脂組成物が、(D)成分の少なくとも一部としてポリカーボネート樹脂を含有すると、成形品の耐水性が更に向上する。ポリ乳酸樹脂組成物中のポリカーボネート樹脂の含有量は10質量%以上であることが好ましい。この含有量が10質量%未満では成形品の耐水性の向上はあまり期待できない。
ポリカーボネート樹脂としては、例えば二価フェノールとカーボネート前駆体とが反応することで得られる芳香族ポリカーボネート樹脂が挙げられる。反応の方法としては界面重縮合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、環状カーボネート化合物の開環重合法などが挙げられる。
二価フェノールの代表的な例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ビフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エステル、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンなどが、挙げられる。好ましい二価フェノールは、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカンであり、なかでも成形品の靭性を向上させることができる点でビスフェノールA(BPA)が特に好ましい。
カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、炭酸ジエステル、ハロホルメートなどが挙げられる。具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネート、二価フェノールのジハロホルメートなどが挙げられる。
二価フェノールとカーボネート前駆体から界面重合法によって芳香族ポリカーボネート樹脂を製造するに当たっては、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールが酸化するのを防止するための酸化防止剤などを使用してもよい。
(D1)成分には、三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂、芳香族または脂肪族(脂環式を含む)の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート樹脂、二官能性アルコール(脂環式を含む)を共重合した共重合ポリカーボネート樹脂、並びにこの二官能性カルボン酸及び二官能性アルコールを共に共重合したポリエステルカーボネート樹脂などが含まれていてもよい。また、(D1)成分には2種以上のポリカーボネート樹脂が含まれていてもよい。
分岐ポリカーボネート樹脂は、ポリ乳酸樹脂組成物の溶融張力を増加させ、この特性に基づいて押出成形、発泡成形、ブロー成形等における成形加工性が改善される。結果として寸法精度により優れた成形品が得られる。分岐ポリカーボネート樹脂を得るために使用される三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキジフェニル)ヘプテン−2、2,4,6−トリメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、4−{4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン}−α,α−ジメチルベンジルフェノール等のトリスフェノールが好適に例示される。その他の多官能性芳香族化合物としては、フロログルシン、フロログルシド、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)ケトン、1,4−ビス(4,4−ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼン、並びにトリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、及びこれらの酸クロライド等が例示される。中でも1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、及び1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタンが好ましく、特に1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。
分岐ポリカーボネート樹脂における多官能性芳香族化合物から誘導される構成単位は、二価フェノールから誘導される構成単位とこの多官能性芳香族化合物から誘導される構成単位との合計100モル%中、0.03〜1モル%、好ましくは0.07〜0.7モル%、特に好ましくは0.1〜0.4モル%である。また、この分岐構造単位は、多官能性芳香族化合物から誘導されるだけでなく、溶融エステル交換反応時の副反応の如き、多官能性芳香族化合物を用いることなく誘導されるものであってもよい。尚、この分岐構造の割合についてはH−NMR測定により算出することが可能である。
一方、脂肪族の二官能性のカルボン酸は、α,ω−ジカルボン酸が好ましく、その具体例としては、セバシン酸(デカン二酸)、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、イコサン二酸等の直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸並びにシクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸が挙げられる。二官能性アルコールとしては脂環族ジオールが好適であり、例えば、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、トリシクロデカンジメタノール等が例示される。さらに、ポリオルガノシロキサン単位を共重合したポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体の使用も可能である。
(D1)成分は、二価フェノール成分が異なるポリカーボネート、分岐成分を含有するポリカーボネート、各種のポリエステルカーボネート、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体等を2種以上含んでいてもよい。さらに、製造法の異なるポリカーボネート、末端停止剤の異なるポリカーボネート等を2種以上含んでいてもよい。
ポリカーボネート樹脂の製造方法である界面重合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、環状カーボネート化合物の開環重合法などの反応形式は、各種の文献及び特許公報などで良く知られている方法である。
(D1)成分は、バージン原料だけでなく、使用済みの製品から再生されたポリカーボネート樹脂、いわゆるマテリアルリサイクルされた芳香族ポリカーボネートを含んでいてもよい。使用済みの製品としては防音壁、ガラス窓、透光屋根材、自動車サンルーフなどに代表される各種グレージング材、風防や自動車ヘッドランプレンズなどの透明部材、水ボトルなどの容器、並びに光記録媒体などが好ましく挙げられる。これらは多量の添加剤や他樹脂などを含むことがなく、目的の品質が安定して得られやすい。殊に自動車ヘッドランプレンズや光記録媒体などは下記粘度平均分子量のより好ましい条件を満足するため好ましい態様として挙げられる。尚、上記のバージン原料とは、その製造後に未だ市場において使用されていない原料である。
(D1)成分の粘度平均分子量は、好ましくは1×10〜5×10、より好ましくは1.4×10〜3×10、更に好ましくは1.8×10〜2.5×10である。粘度平均分子量が1.8×10〜2.5×10の範囲においては、ポリ乳酸樹脂組成物が特に良好な流動性と成形品の耐衝撃性との両立に優れる。最も好適には、粘度平均分子量が1.9×10〜2.4×10の範囲である。尚、この粘度平均分子量は(D1)成分全体として満足すればよく、分子量の異なる2種以上の成分を含む(D1)成分全体がこの範囲を満足するものを含む。
粘度平均分子量の算出にあたっては、まず次式(a)にて算出される比粘度を、塩化メチレン100mlに(D1)成分0.7gを20℃で溶解して調製される試料溶液についてのオストワルド粘度計による測定結果から求める。次に得られた比粘度から、次式(b)〜(d)を用いて粘度平均分子量Mを求める。
比粘度(ηSP)=(t−t)/t …(a)
[tは塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
ηSP/c=[η]+0.45×[η]c(但し[η]は極限粘度) …(b)
[η]=1.23×10−40.83 …(c)
c=0.7 …(d)
((D2)コアシェルゴム)
(D)成分は、コアシェルゴムを含有してもよい。コアシェルゴムは、重合体で構成される最内層(コア層)と、それを覆うコア層とは異種の重合体から構成される1以上の層(シェル層)とを有する、多層構造の重合体である。
ポリ乳酸樹脂組成物はコアシェルゴムを一種のみ含有してもよく、二種以上含有してもよい。ポリ乳酸樹脂組成物がコアシェルゴムを含有する場合、その含有量の合計は3〜12質量%の範囲であることが好ましい。
コアシェルゴムとして、Siを含有するコアシェルゴムが挙げられる。Siを含有するコアシェルゴムが使用される場合、成形品の難燃性が更に向上する。Siを含有するコアシェルゴムには、コア層がSiを含む重合体から構成されているポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体とエポキシ変性シリコーン・アクリルゴムのうちの、少なくとも一方が含まれていることが好ましく、特にポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体が含まれていることが好ましい。
ポリ乳酸樹脂組成物がSiを含有するコアシェルゴムを含有する場合、その含有量は、3〜12質量%の範囲であることが好ましい。この範囲内において、ポリ乳酸樹脂組成物から形成される成形品の耐衝撃性、耐熱性、難燃性が優れたものとなる。
Siを含有するコアシェルゴムとして、ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体、エポキシ変性シリコーン・アクリルゴムなどが挙げられる。
ポリ乳酸樹脂組成物がポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体を含有すると、成形品の難燃性と耐衝撃性とが特に向上する。ポリ乳酸樹脂組成物がポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体を含有する場合、その含有量は、3〜12質量%の範囲であることが好ましい。
ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体は、次の(X)〜(Z)成分から得られる;
(X)ポリオルガノシロキサン粒子;
(Y)第1のビニル系単量体;
(Z)第2のビニル系単量体。
(Y)成分は、下記(Y−1)成分のみからなり、或いは下記(Y−1)成分及び(Y−2)成分からなると共にこれらの成分を下記の割合で含む;
(Y−1)多官能性単量体100〜50質量%;
(Y−2)その他の共重合可能な単量体0〜50質量%。
ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体は、(X)成分40〜90質量部の存在下で、(Y)成分0.5〜10質量部を重合し、更に、(Z)成分5〜50質量部を重合して得られる。前記の各成分の量は、(X)〜(Z)成分の合計量を100質量部とした場合の値である。
(X)成分は、トルエン不溶分量((X)成分0.5gをトルエン80mlに室温で24時間浸漬した場合のトルエン不溶分量)が95質量%以下、さらには50質量%以下、特には20質量%以下であることが、成形品の難燃性、耐衝撃性の向上のために好ましい。
(X)成分の具体例としては、ポリジメチルシロキサン粒子、ポリメチルフェニルシロキサン粒子、ジメチルシロキサン−ジフェニルシロキサン共重合体粒子などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(X)成分の一部又は全部は、ポリオルガノシロキサン以外の重合体を含む変性ポリオルガノシロキサンの粒子であってもよい。ポリオルガノシロキサン以外の重合体の具体例としては、ポリアクリル酸ブチル、アクリル酸ブチル−スチレン共重合体などが挙げられる。(X)成分中のポリオルガノシロキサン以外の重合体の含有量は低い方が好ましく、特に含有量が5質量%以下であることが好ましい。特に(X)成分が実質的にポリオルガノシロキサンのみからなる粒子であることが、成形品の難燃性向上のために好ましい。
(X)成分の平均粒子径は特に制限されないが、光散乱法または電子顕微鏡観察から求められる数平均粒子径が0.008〜0.6μmであることが好ましく、0.01〜0.2μmであれば更に好ましく、0.01〜0.15μmであれば特に好ましい。この数平均粒子径が小さすぎる場合は生産が困難であり、逆に大きすぎると成形品の難燃性を充分に向上することができないおそれがある。成形品の外観の向上のためには、(X)成分の粒子径分布の変動係数(100×標準偏差/数平均粒子径(%))が10〜100%の範囲であることが好ましく、20〜60%であれば更に好ましい。
(X)成分の製造にあたってのモノマーの組み合わせとしては、オルガノシロキサンの単独重合;2官能シラン化合物の単独重合;オルガノシロキサンと2官能シラン化合物との共重合;オルガノシロキサンとビニル系重合性基含有シラン化合物との共重合;2官能シラン化合物とビニル系重合性基含有シラン化合物との共重合;オルガノシロキサン、2官能シラン化合物及びビニル系重合性基含有シラン化合物、或いは更にこれらの化合物と3官能以上のシラン化合物の共重合等が、挙げられる。
前記各化合物のうち、オルガノシロキサン又は2官能シラン化合物は、ポリオルガノシロキサン鎖の主骨格を構成する成分である。
オルガノシロキサンとしては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(a)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(b)、デカメチルシクロペンタシロキサン(c)、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン(d)、テトラデカメチルシクロヘプタシロキサン(e)、ヘキサデカメチルシクロオクタシロキサン(f)等が挙げられる。
2官能シラン化合物としては、ジエトキシジメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルメチルジメトキシシラン、トリフルオロプロピルメチルジメトキシシラン、オクタデシルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
特に経済性及び成形品の難燃性向上の観点から、(X)成分の製造に使用されるモノマー中の、(b)成分、(a)〜(e)成分の混合物、又は(a)〜(f)成分の混合物の割合が、70〜100質量%であることが好ましく、80〜100質量%であることが更に好ましい。残余の部分は、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等が0〜30質量%を占めることが好ましく、0〜20質量%を占めることが更に好ましい。
ビニル系重合性基含有シラン化合物は、オルガノシロキサン、2官能シラン化合物、3官能以上のシラン化合物などと共重合し、共重合体の側鎖または末端にビニル系重合性基を導入するための成分である。このビニル系重合性基は、後述する(Y)成分または(Z)成分から形成されるビニル系(共)重合体と化学結合する際のグラフト活性点として作用する。更にこのビニル系重合性基含有シラン化合物は、ラジカル重合開始剤の存在下でグラフト活性点間をラジカル反応させて架橋結合を形成させることができる。すなわちビニル系重合性基含有シラン化合物は架橋剤としても機能し得る。ラジカル重合開始剤として、後述のグラフト重合において使用され得るものと同じものが使用できる。尚、ビニル系重合性基含有シラン化合物を架橋剤として機能させても、その一部はグラフト活性点として残るため、グラフトは可能である。
ビニル系重合性基含有シラン化合物の具体例としては、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジエトキシメチルシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランなどの(メタ)アクリロイルオキシ基含有シラン化合物;p−ビニルフェニルジメトキシメチルシラン、p−ビニルフェニルトリメトキシシランなどのビニルフェニル基含有シラン化合物;ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのビニル基含有シラン化合物;メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルジメトキシメチルシランなどのメルカプト基含有シラン化合物などが、挙げられる。
これらのなかでは(メタ)アクリロイルオキシ基含有シラン化合物、ビニル基含有シラン化合物、メルカプト基含有シラン化合物から選択される少なくとも一種を用いることが、経済性の点から好ましい。尚、前記ビニル系重合性基含有シラン化合物がトリアルコキシシラン型である場合には、次に示す3官能以上のシラン化合物の役割も有する。
3官能以上のシラン化合物は、前記オルガノシロキサン、2官能シラン化合物、ビニル系重合性基含有シラン化合物などと共重合することにより、ポリオルガノシロキサンに架橋構造を導入して、(X)成分にゴム弾性を付与し得る。すなわち3官能以上のシラン化合物はポリオルガノシロキサンの架橋剤として用いられる。
3官能以上のシラン化合物としては、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシランなどの4官能、3官能のアルコキシシラン化合物等が挙げられる。このうちテトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシランの少なくとも一方を用いることが、架橋効率の高さの点から好ましい。
オルガノシロキサン、2官能シラン化合物、ビニル系重合性基含有シラン化合物、および3官能以上のシラン化合物の重合時の使用割合は適宜決定される。特にオルガノシロキサンと2官能シラン化合物との合計量の割合が50〜99.9質量%であることが好ましく、60〜99.5質量%であれば更に好ましい。尚、オルガノシロキサンと2官能シラン化合物との割合は、重量比で100/0〜0/100であることが好ましく、100/0〜70/30であれば更に好ましい。ビニル系重合性基含有シラン化合物の割合は0〜40質量%であることが好ましく、0.5〜30質量%であれば更に好ましい。3官能以上のシラン化合物の割合は0〜50質量%であることが好ましく、0〜39質量%であれば更に好ましい。ビニル系重合性基含有シラン化合物と3官能以上のシラン化合物とは、少なくとも一方を用いることが好ましく、特にビニル系重合性基含有シラン化合物と3官能以上のシラン化合物のうちの少なくとも一方の割合を0.1%以上とすることが好ましい。
オルガノシロキサン及び2官能シラン化合物の使用割合が少なすぎると、成形品が脆くなる傾向がある。逆に多すぎてもビニル系重合性基含有シラン化合物および3官能以上のシラン化合物の量が少なくなりすぎて、これらを使用する効果が発現されにくくなる傾向にある。
また、ビニル系重合性基含有シラン化合物あるいは前記3官能以上のシラン化合物の割合が少なすぎると、成形品の難燃性が充分に向上しないおそれがある。逆に多すぎても、成形品が脆くなる傾向がある。
(X)成分は、上記モノマーを乳化重合することにより製造することが好ましい。乳化重合は、例えば前記モノマーおよび水を乳化剤の存在下で機械的剪断により水中に乳化分散して酸性状態にすることで行なうことができる。この場合、機械的剪断により数μm以上の乳化液滴を調製した場合、重合後に得られる(X)成分の平均粒子径は使用する乳化剤の量により0.02〜0.6μmの範囲で制御することができる。また、(X)成分の粒子径分布の変動係数(100×標準偏差/平均粒子径)(%)を20〜70%の範囲に制御することができる。
また、0.1μm以下で粒子径分布の狭い(X)成分を製造する場合、多段階で重合することが好ましい。例えば前記モノマー、水および乳化剤を機械的剪断により乳化してえられた、数μm以上の乳化液滴からなるエマルションの1〜20%を先に酸性状態で乳化重合し、得られた(X)成分をシードとしてその存在下で残りのエマルションを追加して重合する。これより得られた(X)成分は、乳化剤の量により平均粒子径が0.02〜0.1μmで、かつ粒子径分布の変動係数が10〜60%に制御可能である。更に好ましい方法は、多段重合において、(X)成分のシードの代わりに、後述するグラフト重合時に用いるビニル系単量体(例えばスチレン、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチルなど)を通常の乳化重合法により(共)重合してなるビニル系(共)重合体を用いて、同様の多段重合を行なうことである。この場合、得られるポリオルガノシロキサン(変性ポリオルガノシロキサン)粒子の平均粒子径は乳化剤量により0.008〜0.1μmでかつ粒子径分布の変動係数が10〜50%に制御できる。前記数μm以上の乳化液滴は、ホモミキサーなど高速撹拌機を使用することにより調製することができる。
前記乳化重合では、酸性状態下で乳化能を失わない乳化剤が用いられる。具体例としては、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホン酸、アルキルスルホン酸ナトリウム、(ジ)アルキルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。特にアルキルベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホン酸、アルキルスルホン酸ナトリウム、(ジ)アルキルスルホコハク酸ナトリウムから選択される少なくとも一種を用いることが、エマルションの乳化安定性が比較的高いことから好ましい。更に、アルキルベンゼンスルホン酸およびアルキルスルホン酸はモノマーの重合触媒としても作用するので特に好ましい。
反応系の酸性状態は、この反応系に硫酸や塩酸などの無機酸やアルキルベンゼンスルホン酸、アルキルスルホン酸、トリフルオロ酢酸などの有機酸を添加することで達成される。反応系のpHは生産設備の腐食抑制や適度な重合速度の達成を考慮して1〜3に調整することが好ましく、1.0〜2.5に調整することがより好ましい。重合のための加熱は、適度な重合速度の達成のためは60〜120℃が好ましく、70〜100℃がより好ましい。
尚、酸性状態下では、ポリオルガノシロキサンの骨格を形成しているSi−O−Si結合が切断と生成の平衡状態にあり、この平衡は温度によって変化する。このため、ポリオルガノシロキサン鎖の安定化のためには、反応系に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムなどのアルカリ水溶液を添加して中和することが好ましい。更に前記の平衡は、低温になるほど生成側に寄り、高分子量または高架橋度の生成物が得られやすくなる。このため、高分子量または高架橋度の生成物を得るためには、モノマーの重合を60℃以上で進行させた後、反応系を室温以下に冷却して5〜100時間程度保持してから中和することが好ましい。
このようにして得られる(X)成分は、例えば、オルガノシロキサンあるいは2官能シラン化合物、更にこれらにビニル系重合性基含有シラン化合物を加えて重合し形成された場合、それらは通常ランダムに共重合してビニル系重合性基を有した重合体となる。また、3官能以上のシラン化合物を共重合した場合、架橋された網目構造を有したものとなる。また、後述するグラフト重合時に用いられるようなラジカル重合開始剤によってビニル系重合性基間をラジカル反応により架橋させた場合、ビニル系重合性基間が化学結合した架橋構造を有し、かつ一部未反応のビニル系重合性基が残存したものとなる。
(Y)成分は、(Y−1)成分からなり、或いは(Y−1)成分と(Y−2)成分とからなる。(Y−1)成分は分子内に重合性不飽和結合を2つ以上含む多官能単量体であり、(Y)成分における割合は100〜50質量%である。(Y−2)成分は(Y−1)成分以外のビニル系単量体であり、(Y)成分における割合は0〜50質量%である。(Y)成分を使用することは、成形品の難燃性及び耐衝撃性の向上に寄与する。
(Y)成分における(Y−1)成分の割合が50質量%以上であること、並びに(Y)成分における(Y−2)成分の割合が50質量%以下であることで、成形品の耐衝撃性が更に向上する。(Y)成分における(Y−1)成分の割合は、特に100〜80質量%であることが好ましく、100〜90質量%であれば更に好ましい。(Y)成分における(Y−2)成分の割合は特に0〜20質量%であることが好ましく、0〜10質量%の範囲であれば更に好ましい。
(Y−1)成分としては、メタクリル酸アリル、シアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリル、フタル酸ジアリル、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸1,3−ブチレングリコール、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。これらは単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。これらの中では、経済性および効果の点で特にメタクリル酸アリルの使用が好ましい。
(Y−2)成分としては、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、パラブチルスチレンなどの芳香族ビニル系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル系単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸ヒドロキシエチルなどの(メタ)アクリル酸エステル系単量体;イタコン酸、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸などのカルボキシル基含有ビニル系単量体等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
(Z)成分は、ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体と(A)成分や(D)成分との相溶性を確保し、ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体の分散性向上に寄与する。
(Z)成分としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、スチレン、アクリロニトリル等の、上記(Y−2)成分と同じものを使用することができる。これらは単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
(Z)成分の溶解度パラメーターは、9.15〜10.15[(cal/cm1/2]であることが好ましく、9.17〜10.10[(cal/cm1/2]であればより好ましく、9.20〜10.05[(cal/cm1/2]であれば更に好ましい。溶解度パラメーターを前記範囲とすることにより、成形品の難燃性を更に向上することができる。尚、溶解度パラメーターは、John Wiley&Son社出版「ポリマーハンドブック」1999年、第4版、セクションVII第682〜685頁)に記載のグループ寄与法でSmallのグループパラメーターを用いて算出される値である。
ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体は、(X)成分40〜90質量部の存在下で、(Y)成分0.5〜10質量部を重合し、更に、(Z)成分5〜50質量部を重合して得られる。前記の各成分の量は、(X)〜(Z)成分の合計量を100質量部とした場合の値である。特に(X)成分の割合は60〜80質量部であることが好ましく、60〜75質量部であれば更に好ましい。(Y)成分の割合は1〜5質量部であることが好ましく、2〜4質量部であれば更に好ましい。(Z)成分の割合は15〜39質量部であることが好ましく、21〜38質量部であれば更に好ましい。
(X)成分の割合が少なすぎる場合および多すぎる場合は、いずれも成形品の難燃化効果が低くなる。(Y)成分が少なすぎる場合、成形品の難燃化効果および耐衝撃性改良効果が低くなり、多すぎる場合は成形品の耐衝撃性改良効果が低くなる。(Z)成分が少なすぎる場合および多すぎる場合は、いずれも成形品の難燃化効果が低くなる。
ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体は、公知のシード乳化重合により製造することができる。例えば、(X)成分のラテックス中で(Y)成分のラジカル重合を行い、更に、(Z)成分のラジカル重合を行うことができる。(Y)成分および(Z)成分は、いずれも1段階で重合させてもよく2段階以上で重合させてもよい。
前記ラジカル重合にあたっては、ラジカル重合開始剤を熱分解することにより反応を進行させる方法、還元剤を使用するレドックス系での反応など、適宜の方法が採用され得る。重合時の反応温度は30〜120℃が好ましい。
ラジカル重合開始剤としては、反応性の高さから、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシラウレイト、ラウロイルパーオキサイド、コハク酸パーオキサイド、シクロヘキサンノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイドなどの有機過酸化物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの無機過酸化物などを、使用することが好ましい。ラジカル重合開始剤の使用量は、(Y)成分あるいは(Z)成分100部に対して、0.005〜20部、さらには0.01〜10部であり、特に0.03〜5部であるのが好ましい。
一方、レドックス系で使用される還元剤としては、硫酸第一鉄/グルコース/ピロリン酸ナトリウム、硫酸第一鉄/デキストロース/ピロリン酸ナトリウム、硫酸第一鉄/ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート/エチレンジアミン酢酸塩などの混合物などが、挙げられる。
ラジカル重合の際に連鎖移動剤を使用してもよい。連鎖移動剤の具体例としては、t−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタンなどが挙げられる。連鎖移動剤を使用する場合の使用量は、(Y)成分あるいは(Z)成分100質量部に対して、0.01〜5質量部であることが好ましい。
前記重合では、(X)成分がビニル系重合性基を含有する場合には(Y)成分がラジカル重合開始剤によって重合する際に、(X)成分のビニル系重合性基と反応することにより、グラフトが形成される。(X)成分にビニル重合性基が存在しない場合、特定のラジカル開始剤、例えばt−ブチルパーオキシラウレートなどを用いれば、ケイ素原子に結合したメチル基などの有機基から水素を引き抜き、生成したラジカルによって(Y)成分が重合しグラフトが形成される。さらに(Z)成分がラジカル重合開始剤によって重合する際に、(Y)成分と同じように(X)成分と反応するだけでなく、(Y)成分によって形成された重合体中に存在する不飽和結合にも反応して(Z)成分によるグラフトが形成される。
乳化重合等によって得られたポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体は、ラテックスからポリマーを分離して使用してもよく、ラテックスのまま使用してもよい。ポリマーを分離する方法としては、通常の方法、例えば、ラテックスに塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウムなどの金属塩を添加することによりラテックスを凝固、分離、水洗、脱水し、乾燥する方法が挙げられる。また、スプレー乾燥法も使用できる。
尚、(X)成分の存在下での(Y)成分および(Z)成分の重合では、グラフト共重合体の枝にあたる部分(ここでは、(Y)成分および(Z)成分の重合体)が幹成分(ここでは(X)成分)にグラフトせずに枝成分だけで単独に重合して得られるいわゆるフリーポリマーも副生し、ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体とフリーポリマーの混合物として得られる。この両者を併せてポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体という。
ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体は、(X)成分に(Y)成分がグラフトし、さらに(Z)成分が(X)成分だけでなく(Y)成分によって形成された重合体にもグラフトした構造のものであるため、フリーポリマーの量が少なくなる。このポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体のアセトン不溶分量(ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体1gをアセトン80mlに室温で48時間浸漬した場合のアセトン不溶分量)は、80%以上、さらには85%以上であることが、成形品の難燃性向上のために好ましい。
このようなポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体は、市販品として入手可能であり、例えば株式会社カネカ製の商品名カネエースMR01、カネエースMR02等が挙げられる。
ポリ乳酸樹脂組成物がエポキシ変性シリコーン・アクリルゴムを含有する場合、その含有量は3〜12質量%の範囲であることが好ましい。
エポキシ変性シリコーン・アクリルゴムとしては、アクリル酸アルキル、シリル基末端ポリエーテル、及びグリシジル基含有ビニル系化合物の、重合体を用いることができる。このエポキシ変性シリコーン・アクリルゴムは、アクリル酸アルキルとシリル基末端ポリエーテルとの共重合体(シリコーンアクリル複合ゴム)と、グリシジルメタクリレート等のグリシジル基含有ビニル系化合物の重合体との複合物であってもよい。この場合、アクリル酸アルキルとシリル基末端ポリエーテルとの共重合体と、グリシジル基含有ビニル系化合物の重合体との全部若しくは一部が共重合していてもよい。
このエポキシ変性シリコーン・アクリルゴムのコア層はアクリル酸アルキルとシリル基末端ポリエーテルとの共重合体から構成され、シェル層はグリシジル基含有ビニル系化合物の重合体から構成される。この多層構造重合体は、例えばアクリル酸アルキルとシリル基末端ポリエーテルとの共重合体のラテックスにグリシジル基含有ビニル系化合物を添加し、グラフト重合させることで得ることができる。
アクリル酸アルキルとシリル基末端ポリエーテルとの共重合体(シリコーンアクリル複合ゴム)の代表的な一例の構造式を下記式(5)に示す。この構造式の左部分がアクリル酸アルキルに由来するアクリル酸アルキル単位であり、右側部分がシリル基末端ポリエーテルに由来するシリル基末端ポリエーテル単位である。
グリシジル基含有ビニル系化合物の代表的な一例の構造式を下記式(6)に示す。
アクリル酸アルキルとしては、具体的には、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸n−プロピル、メタアクリル酸n−ブチル、メタアクリル酸t−ブチル、メタアクリル酸n−ヘキシル、メタアクリル酸2−エチルヘキシル;メタアクリル酸シクロヘキシル、メタアクリル酸ステアリル、メタアクリル酸オクタデシル、メタアクリル酸フェニル、メタアクリル酸ベンジル、メタアクリル酸クロロメチル、メタアクリル酸2−クロロエチル、メタアクリル酸2−ヒドロキシエチル;メタアクリル酸3−ヒドロキシプロピル、メタアクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、メタアクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル;メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチルまたはメタクリル酸シクロヘキシルアミノエチルなどが挙げられる。これらの化合物は単独ないし2種以上を用いることができる。
シリル基末端ポリエーテルとしては、末端にシリル基を有するポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリエーテルが用いられる。前記シリル基としては、具体的には、メチルシリル基、エチルシリル基、プロピルシリル基、ブチルシリル基などのアルキルシリル基、3−クロロプロピルシリル基、3,3,3−トリフルオロプロピルシリル基などのハロゲン化アルキルシリル基、ビニルシリル基、アリルシリル基、ブテニルシリル基などのアルケニルシリル基、フェニルシリル基、トリルシリル基、ナフチルシリル基などのアリールシリル基、シクロペンチルシリル基、シクロヘキシルシリル基などのシクロアルキルシリル基、ベンジルシリル基、フェネチルシリル基などのアリール−アルキルシリル基などが挙げられる。このようなシリル基末端ポリエーテルは、一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
グリシジル基含有ビニル系化合物としては、メタアクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、イタコン酸ジグリシジル、アリルグリシジルエーテル、スチレン−4−グリシジルエーテルまたは4−グリシジルスチレンなどが挙げられる。これらの化合物は単独ないし2種以上を用いることができる。
このようなエポキシ変性シリコーン・アクリルゴムとしては、市販のものを適宜使用することができる。その具体例としては、グリシジルメタクリレートをシェルに含有するコアシェル構造体である三菱レイヨン株式会社製の商品名メタブレンS2200を挙げることができる。
ポリ乳酸樹脂組成物は、Siを含有するコアシェルゴム以外のコアシェルゴム、すなわちSiを含有しないコアシェルゴムを含有してもよい。Siを含有しないコアシェルゴムの例として、不飽和カルボン酸アルキルエステル−ジエン系ゴム−芳香族ビニルグラフト共重合体が挙げられる。
ポリ乳酸樹脂組成物に不飽和カルボン酸アルキルエステル−ジエン系ゴム−芳香族ビニルグラフト共重合体を含有させることで、Siを含有するコアシェルゴムの機能の一部を不飽和カルボン酸アルキルエステル−ジエン系ゴム−芳香族ビニルグラフト共重合体に代替させることができる。尚、この場合、コスト面でも有利となる。
不飽和カルボン酸アルキルエステル−ジエン系ゴム−芳香族ビニルグラフト共重合体を得るために用いられる不飽和カルボン酸アルキルエステルとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート等が挙げられる。ジエン系ゴム成分としては、例えばポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン等の、ガラス転移点が10℃以下のゴムが挙げられる。芳香族ビニルとしては、例えばスチレン、α−メチルスチレン及びp−メチルスチレン等の核置換スチレンが挙げられる。これら不飽和カルボン酸アルキルエステル、ジエン系ゴム、芳香族ビニルは、それぞれ1種または2種以上使用することができる。
この不飽和カルボン酸アルキルエステル−ジエン系ゴム−芳香族ビニルグラフト共重合体の代表例として、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS樹脂)が挙げられる。メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体は、ブタジエン・スチレン重合体で構成されるコア層と、メタクリル酸メチル重合体で構成されるシェル層とを備える多層構造重合体であることが好ましい。
ブタジエン・スチレン重合体の構造式を下記式(7)に示す。この構造式の左側部分がブタジエンに由来するブタジエン単位であり、右側部分がスチレンに由来するスチレン単位である。
シェル層を構成するメタクリル重合体の構造式を下記式(8)に示す。
不飽和カルボン酸アルキルエステル−ジエン系ゴム−芳香族ビニルグラフト共重合体の製造法としては、例えば塊状重合、懸濁重合、乳化重合などの各種方法が挙げられる、特に、乳化重合法が好適である。このようにして得られるコアシェルタイプグラフトゴム状弾性体は、前記ジエン系ゴム成分を50質量%以上含有していることが好ましい。
このようなメチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体としては、市販のものを適宜使用することができる。その好適な具体例としては、三菱レイヨン株式会社製の商品名メタブレンC−223A、メタブレンC−323A、メタブレンC−215A、メタブレンC−201A、メタブレンC−202、メタブレンC−102、メタブレンC−140A、メタブレンC−132等、株式会社カネカ製の商品名カネエースM−600、ローム・アンド・ハース株式会社製の商品名パラロイドEXL−2638等が挙げられる。
[充填材]
ポリ乳酸樹脂組成物は充填材を含有してもよい。この充填材としては、例えば、タルク、ワラストナイト、マイカ、クレー、モンモンリロナイト、スメクタイト、カオリン、ゼオライト(珪酸アルミニウム)、ゼオライトを酸処理及び加熱処理して得られる無水非晶質珪酸アルミニウムなどの無機充填材が挙げられる。特にタルク、ワラストナイトが好ましい。ポリ乳酸樹脂組成物にはこれらの充填材を一種のみ含有させても、二種以上を含有させてもよい。
タルクを使用する場合の、このタルクの平均粒子径は0.5〜30μmの範囲であることが好ましい。この平均粒子径はJIS M8016に従ってアンドレアゼンピペット法により測定した粒度分布から求められる、積重率50%時の粒子径である。タルクの粒子径は0.5〜10μmの範囲がより好ましく、0.5〜7μmの範囲が特に好ましく、0.5〜5μmの範囲が更に好ましい。タルクの平均粒子径が大きすぎる場合いは成形品の表面にタルクの浮きが発生し、外観が悪化するおそれがある。
タルクは層状構造を持った板状の粒子である。タルクは化学組成的には含水珪酸マグネシウムであり、一般的には化学式4SiO・3MgO・2HOで表され、通常SiOを56〜65質量%、MgOを28〜35質量%、HOを約5質量%程度含有する。タルクは他の少量成分としてFeを0.03〜1.2質量%、Alを0.05〜1.5質量%、CaOを0.05〜1.2質量%、KOを0.2質量%以下、NaOを0.2質量%以下などの範囲で含有する。タルクの比重は約2.7、モース硬度は1である。
原石を粉砕することによりタルクの粒子を得る際の製法に関しては特に制限はなく、軸流型ミル法、アニュラー型ミル法、ロールミル法、ボールミル法、ジェットミル法、容器回転式圧縮剪断型ミル法等を利用することができる。粉砕後のタルクの粒子は、各種の分級機によって分級処理することで、粒子径の分布を揃えることが好ましい。分級機としては特に制限はなく、インパクタ型慣性力分級機(バリアブルインパクターなど)、コアンダ効果利用型慣性力分級機(エルボージェットなど)、遠心場分級機(多段サイクロン、ミクロプレックス、ディスパージョンセパレーター、アキュカット、ターボクラシファイア、ターボプレックス、ミクロンセパレーター、スーパーセパレーターなど)などが挙げられる。更にタルクは、その取り扱い性等の点で凝集状態であることが好ましい。凝集状態のタルクの製法としては脱気圧縮による方法、集束剤を使用し圧縮する方法等がある。特に脱気圧縮による方法が簡便かつ不要の集束剤樹脂成分をポリ乳酸樹脂組成物中に混入させない点で好ましい。
充填材を用いる場合の、ポリ乳酸樹脂組成物中の充填材の含有量は、成形品の耐衝撃強度を維持するためには1〜20質量%の範囲が好ましい。
ポリ乳酸樹脂組成物は、充填材の折れを抑制するための折れ抑制剤を含有してもよい。折れ抑制剤はマトリックス樹脂と充填材との間の密着性を阻害し、溶融混練時に充填材に作用する応力を低減して充填材の折れを抑制する。
折れ抑制剤の効果としては、1)剛性向上(フィラーのアスペクト比が大きくなる)、2)靭性向上(マトリックス樹脂の靭性を発揮しやすい、特に靭性の良好な芳香族ポリカーボネート樹脂を主体とする場合に有効)、3)導電性の向上(導電性フィラーの場合)などが挙げられる。
折れ抑制剤として、具体的には、(i)樹脂との親和性の低い化合物を充填材の表面に直接被覆した場合のこの化合物、(ii)樹脂との親和性の低い構造を有し、かつ充填材の表面と反応可能な官能基を有する化合物などが、挙げられる。樹脂との親和性の低い化合物としては各種の滑剤を代表的に挙げることができる。滑剤としては例えば鉱物油、合成油、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、ポリオルガノシロキサン(シリコーンオイル、シリコーンゴムなど)、オレフィン系ワックス(パラフィンワックス、ポリオレフィンワックスなど)、ポリアルキレングリコール、フッ素化脂肪酸エステル、トリフルオロクロロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレングリコールなどのフッ素オイルなどが挙げられる。
樹脂との親和性の低い化合物を充填材の表面に直接被覆する方法としては、(1)樹脂との親和性の低い化合物を直接、またはこの化合物の溶液や乳化液を充填材に浸漬する方法、(2)樹脂との親和性の低い化合物の蒸気中または粉体中に充填材を通過させる方法、(3)樹脂との親和性の低い化合物の粉体などを充填材に高速で照射する方法、(4)樹脂との親和性の低い化合物と充填材とを擦り付けるメカノケミカル的方法などが挙げられる。
樹脂との親和性の低い構造を有し、かつ充填材の表面と反応可能な官能基を有する化合物としては、各種の官能基で修飾された上記の滑剤が挙げられる。このような官能基としては例えばカルボキシル基、カルボン酸無水物基、エポキシ基、オキサゾリン基、イソシアネート基、エステル基、アミノ基、アルコキシシリル基などが挙げられる。
折れ抑制剤としてより好ましいのは、カルボキシル基、及びカルボン酸無水物基から選択された少なくとも1種の官能基を有するポリオレフィンワックスである。ポリオレフィンワックスの重量平均分子量は500〜20,000が好ましく、より好ましくは1,000〜15,000である。このようなポリオレフィンワックスにおけるカルボキシル基及びカルボン酸無水物基の量は、ポリオレフィンワックス1g当り、0.05〜10meq/gの範囲が好ましく、0.1〜6meq/gの範囲がより好ましく、0.5〜4meq/gの範囲が更に好ましい。他の官能基の場合もカルボキシル基と同程度含まれていることが好ましい。
特に好ましい折れ抑制剤としてα−オレフィンと無水マレイン酸との共重合体が挙げられる。このような共重合体は、常法に従いラジカル触媒の存在下に、溶融重合あるいはバルク重合法で製造することができる。前記α−オレフィンの炭素数の平均値は10〜60の範囲が好ましく、16〜60の範囲がより好ましく、25〜55の範囲が更に好ましい。
ポリ乳酸樹脂組成物中の折れ抑制剤の含有量は0.01〜2質量%の範囲が好ましく、0.05〜1.5質量%がより好ましく、0.1〜0.8質量%の範囲が更に好ましい。
[他の成分]
ポリ乳酸樹脂組成物は、ポリカルボジイミド化合物やモノカルボジイミド化合物等のカルボジイミド化合物を含有してもよい。この場合、これらの化合物が、ポリ乳酸樹脂のカルボキシル基末端の一部または全部と反応して封鎖する働きを発揮し、これにより、成形品の耐水性が更に向上する。このため、成形品の高温高湿環境下での耐久性が向上する。
前記ポリカルボジイミド化合物としては、例えばポリ(4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン及び1,5−ジイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド等が挙げられる。また前記モノカルボジイミド化合物としては、例えばN,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド等が挙げられる。
このようなカルボジイミド化合物としては、市販品が適宜使用される。その具体例としては、日清紡績株式会社製の商品名カルボジライトLA−1(ポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド))等を挙げることができる。
カルボジイミド化合物を使用する場合、ポリ乳酸樹脂組成物中のカルボジイミド化合物の含有量は0.1〜3質量%の範囲内とすることが好ましい。この含有量が0.1質量%未満では前記耐久性の向上はあまり期待できず、3質量%を超えると成形品の機械的強度が低下する傾向が現れる場合がある。
カルボジイミド化合物を使用する場合、ポリ乳酸樹脂組成物の調製時にポリ乳酸とカルボジイミド化合物のみを予め混合してマスターバッチを調製すると、カルボジイミド化合物を使用することによる前記作用を効果的に発揮させることができる。
ポリ乳酸樹脂組成物には、成形加工時の分子量や色相を安定化させるために各種安定剤や着色剤を含有させてもよい。安定剤としては、リン系安定剤、ヒンダードフェノール系安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、帯電防止剤などが挙げられる。
リン系安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸、及びこれらのエステル(ホスファイト化合物、ホスフェート化合物、ホスホナイト化合物、ホスホネイト化合物等)、並びに第3級ホスフィンなどが例示される。
ホスファイト化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、トリス(ジエチルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−iso−プロピルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−n−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス{2,4−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェニル}ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジシクロヘキシルペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられる。
前記以外のホスファイト化合物として、二価フェノール類と反応し環状構造を有するホスファイト化合物も使用できる。例えば、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイトなどが例示される。
ホスフェート化合物としては、トリブチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクロルフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェートなどを挙げることができる。このうち好ましくはトリフェニルホスフェート、トリメチルホスフェートなどを使用することができる。
ホスホナイト化合物としては、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−n−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト等が挙げられる。このうちテトラキス(ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトが好ましく、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトがより好ましい。このようなホスホナイト化合物は上記アルキル基が2以上置換したアリール基を有するホスファイト化合物との併用が可能である点で好ましい。
ホスホネイト化合物としては、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられる。
第3級ホスフィンとしては、トリエチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリアミルホスフィン、ジメチルフェニルホスフィン、ジブチルフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィン、ジフェニルオクチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィン、トリナフチルホスフィン、ジフェニルベンジルホスフィンなどが例示される。特に好ましい第3級ホスフィンは、トリフェニルホスフィンである。
これらのリン系安定剤は、一種のみを使用しても、二種以上を併用してもよい。これらのリン系安定剤の中でも、ホスホナイト化合物もしくは下記一般式(9)で示されるホスファイト化合物が好ましい。
式(9)中、R10及びR11はそれぞれ独立に、炭素数6〜30のアルキル基または炭素数6〜30のアリール基をしめす。
このホスホナイト化合物としてはテトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイトが好ましい。このホスホナイト化合物を主成分とする安定剤として、Sandostab P−EPQ(商標、Clariant社製)、Irgafos P−EPQ(商標、CIBA SPECIALTY CHEMICALS社製)などが挙げられる。
上記式(9)に示すホスファイト化合物のうち、より好適な化合物として、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス{2,4−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェニル}ペンタエリスリトールジホスファイト等が、挙げられる。ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイトは、アデカスタブPEP−8(商標、旭電化工業株式会社製)、JPP681S(商標、城北化学工業株式会社製)として市販されている。ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトは、アデカスタブPEP−24G(商標、旭電化工業株式会社製)、Alkanox P−24(商標、Great Lakes社製)、Ultranox P626(商標、GE Specialty Chemicals社製)、Doverphos S−9432(商標、Dover Chemical社製)、Irgaofos126、126FF(商標、CIBA SPECIALTY CHEMICALS社製)などとして市販されており、いずれも利用できる。ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトはアデカスタブPEP−36(商標、旭電化工業株式会社製)として市販されており容易に利用できる。またビス{2,4−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェニル}ペンタエリスリトールジホスファイトは、アデカスタブPEP−45(商標、旭電化工業株式会社製)、Doverphos S−9228(商標、Dover Chemical社製)などとして市販されている。
一方、ヒンダードフェノール系安定剤(酸化防止剤)としては、通常樹脂に配合される各種の化合物が使用できる。このようなヒンダードフェノール系安定剤としては、例えば、α−トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、シナピルアルコール、ビタミンE、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−tert−ブチル−6−(3’−tert−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(N,N−ジメチルアミノメチル)フェノール、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,2’−ジメチレン−ビス(6−α−メチル−ベンジル−p−クレゾール)、2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−ブチリデン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−N−ビス−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、1,6−へキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス[2−tert−ブチル−4−メチル6−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)フェニル]テレフタレート、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1,−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、4,4’−ジ−チオビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−トリ−チオビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2−チオジエチレンビス−[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、N,N’−ヘキサメチレンビス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナミド)、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス2[3(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチルイソシアヌレート、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリエチレングリコール−N−ビス−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、トリエチレングリコール−N−ビス−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)アセテート、3,9−ビス[2−{3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)アセチルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、テトラキス[メチレン−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]メタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)ベンゼン、トリス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)イソシアヌレートなどが例示される。これらの化合物の中でも、テトラキス[メチレン−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]メタン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、及び3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンが、好ましく使用される。特に3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンが好ましい。これらのヒンダードフェノール系安定剤は、一種のみを使用しても、二種以上を併用してもよい。
リン系安定剤及びヒンダードフェノール系安定剤は、少なくともいずれかが配合されることが好ましい。特にリン系安定剤が配合されることが好ましく、このうちトリオルガノホスフェート化合物が配合されることがより好ましい。ポリ乳酸樹脂組成物中のリン系安定剤及びヒンダードフェノール系酸化防止剤の含有量は、樹脂成分の合計量100質量部に対して、0.005〜1質量部の範囲が好ましく、0.01〜0.3質量部の範囲が更に好ましい。
ポリ乳酸樹脂組成物には、リン系安定剤及びヒンダードフェノール系安定剤以外の、熱安定剤を含有させてもよい。この熱安定剤は、リン系安定剤及びヒンダードフェノール系安定剤のいずれかと併用されることが好ましく、特に両者と併用されることが好ましい。この熱安定剤としては、例えば3−ヒドロキシ−5,7−ジ−tert−ブチル−フラン−2−オンとo−キシレンとの反応生成物に代表されるラクトン系安定剤が好適に例示される。ラクトン系安定剤の詳細は特開平7−233160号公報に記載されている。このようなラクトン系安定剤はIrganox HP−136(商標、CIBA SPECIALTY CHEMICALS社製)として市販されている。またラクトン系安定剤と各種のホスファイト化合物及びヒンダードフェノール化合物とを混合した安定剤として、Irganox HP−2921(商標、CIBA SPECIALTY CHEMICALS社製)が市販されている。このような予め複数成分が混合された安定剤も利用可能である。ポリ乳酸樹脂組成物中のラクトン系安定剤の含有量は、樹脂成分の合計量100質量部に対して、0.0005〜0.05質量部の範囲が好ましく、0.001〜0.03質量部の範囲が更に好ましい。
上記以外の安定剤としては、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、グリセロール−3−ステアリルチオプロピオネートなどの、イオウ含有安定剤が例示される。このような安定剤は、ポリ乳酸樹脂組成物が回転成形に適用される場合に特に有効である。ポリ乳酸樹脂組成物中のイオウ含有安定剤の含有量は、樹脂成分の合計量100質量部に対して、0.001〜0.1質量部の範囲が好ましく、0.01〜0.08質量部の範囲が更に好ましい。
ポリ乳酸樹脂組成物に紫外線吸収剤を含有させることも好ましい。この場合、ゴム成分や難燃剤の影響による成形品の耐候性の低下を抑制することができる。
使用可能な紫外線吸収剤としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホキシトリハイドライドレイトベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−5−ソジウムスルホキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンソフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノンなどの、ベンゾフェノン系の紫外線吸収剤;
2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)フェニルベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2,2’−メチレンビス(4−クミル−6−ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2’−p−フェニレンビス(1,3−ベンゾオキサジン−4−オン)、及び2−[2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5−メチルフェニル]ベンゾトリアゾ−ル、並びに2−(2’−ヒドロキシ−5−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールとこのモノマーと共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体、2−(2’―ヒドロキシ−5−アクリロキシエチルフェニル)―2H―ベンゾトリアゾールとこのモノマーと共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体などの2−ヒドロキシフェニル−2H−ベンゾトリアゾール骨格を有する重合体などの、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤;
2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシフェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−メチルオキシフェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−エチルオキシフェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−プロピルオキシフェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ブチルオキシフェノールなど、並びにこれらの化合物のフェニル基が2,4−ジメチルフェニル基となった化合物(2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシフェノールなど)などの、ヒドロキシフェニルトリアジン系の紫外線吸収剤;
2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(4,4’−ジフェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2,6−ナフタレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)などの、環状イミノエステル系の紫外線吸収剤;
1,3−ビス−[(2’−シアノ−3’,3’−ジフェニルアクリロイル)オキシ]−2,2−ビス[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル)プロパン、及び1,3−ビス−[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]ベンゼンなどのシアノアクリレート系の紫外線吸収剤が、挙げられる。
紫外線吸収剤は、ラジカル重合が可能な紫外線吸収性単量体と、ヒンダードアミン構造を有する光安定性単量体とのうちの少なくとも一方と、アルキル(メタ)アクリレートなどの単量体とを共重合して得られるポリマー型の紫外線吸収剤であってもよい。紫外線吸収性単量体としては、(メタ)アクリル酸エステルのエステル置換基中にベンゾトリアゾール骨格、ベンゾフェノン骨格、トリアジン骨格、環状イミノエステル骨格、シアノアクリレート骨格等を有する化合物が好適に例示される。これらのうち、紫外線吸収能を考慮するとベンゾトリアゾール骨格、ヒドロキシフェニルトリアジン骨格を有する化合物が好ましく、耐熱性や色相(透明性)を考慮すると環状イミノエステル骨格、シアノアクリレート骨格を有する化合物が好ましい。
これらの紫外線吸収剤は、一種のみを使用しても、二種以上を併用してもよい。
ポリ乳酸樹脂組成物中の紫外線吸収剤の含有量は、樹脂成分の合計量100質量部に対して、0.01〜2質量部の範囲が好ましく、0.03〜2質量部の範囲であればより好ましく、0.05〜0.5質量部の範囲であれば更に好ましい。
ポリ乳酸樹脂組成物を着色して成形品に多彩な意匠性を発現させるためには、ポリ乳酸樹脂組成物に着色剤として染料や顔料などを含有させることも好ましい。
染料としては、クマリン系蛍光染料、ベンゾピラン系蛍光染料、ペリレン系蛍光染料、アンスラキノン系蛍光染料、チオインジゴ系蛍光染料、キサンテン系蛍光染料、キサントン系蛍光染料、チオキサンテン系蛍光染料、チオキサントン系蛍光染料、チアジン系蛍光染料、ジアミノスチルベン系蛍光染料などの、蛍光染料(蛍光増白剤を含む);ペリレン系染料;クマリン系染料;チオインジゴ系染料;アンスラキノン系染料;チオキサントン系染料;紺青等のフェロシアン化物;ペリノン系染料;キノリン系染料;キナクリドン系染料;ジオキサジン系染料;イソインドリノン系染料;フタロシアニン系染料などが挙げられる。蛍光染料のうちでは、耐熱性が良好でポリカーボネート樹脂の成形加工時における劣化が少ないクマリン系蛍光染料、ベンゾピラン系蛍光染料、及びペリレン系蛍光染料が好適である。顔料としては、金属被膜または金属酸化物被膜を有する各種板状フィラーなどのメタリック顔料などが、使用可能である。
ポリ乳酸樹脂組成物中の着色剤の含有量は、樹脂成分の合計量100質量部に対して、0.00001〜1質量部の範囲が好ましく、0.00005〜0.5質量部の範囲であれば更に好ましい。
ポリ乳酸樹脂組成物に帯電防止剤を含有させることで、成形品に帯電防止性能を付与してもよい。
帯電防止剤としては、例えばドデシルベンゼンスルホン酸ホスホニウム塩に代表されるアリールスルホン酸ホスホニウム塩、及びアルキルスルホン酸ホスホニウム塩などの有機スルホン酸ホスホニウム塩、テトラフルオロホウ酸ホスホニウム塩などのホウ酸ホスホニウム塩などの、ホスホニウム塩が挙げられる。このようなホスホニウム塩のポリ乳酸樹脂組成物中の含有量は、樹脂成分の合計量100質量部に対して、5質量部以下が好ましく、0.05〜5質量部のであればより好ましく、1〜3.5質量部の範囲であれば更に好ましく、1.5〜3質量部の範囲であれば最も好ましい。
帯電防止剤として、有機スルホン酸リチウム、有機スルホン酸ナトリウム、有機スルホン酸カリウム、有機スルホン酸セシウム、有機スルホン酸ルビジウム、有機スルホン酸カルシウム、有機スルホン酸マグネシウム、有機スルホン酸バリウムなどの、有機スルホン酸アルカリ(土類)金属塩も使用することができる。これらの金属塩は前述のとおり、難燃剤としても使用可能である。この金属塩のより具体的な例としては、ドデシルベンゼンスルホン酸の金属塩、パーフルオロアルカンスルホン酸の金属塩などが例示される。特にカリウム、セシウム、及びルビジウムなどのアルカリ金属塩が好適である。このような有機スルホン酸アルカリ(土類)金属塩のポリ乳酸樹脂組成物中の含有量は、樹脂成分の合計量100質量部に対して、0.5質量部以下が好ましく、0.001〜0.3質量部の範囲であればより好ましく、0.005〜0.2質量部の範囲であれば更に好ましい。
帯電防止剤として、アルキルスルホン酸アンモニウム塩、アリールスルホン酸アンモニウム塩などの、有機スルホン酸アンモニウム塩を使用してもよい。このような有機スルホン酸アンモニウム塩のポリ乳酸樹脂組成物中の含有量は、樹脂成分の合計量100質量部に対して、5質量部以下が好ましい。
帯電防止剤として、ポリエーテルエステルアミドなどのポリ(オキシアルキレン)グリコール成分をその構成成分として含有するポリマーを使用してもよい。このようなポリマーの、ポリ乳酸樹脂組成物中の含有量は、樹脂成分の合計量100質量部に対して、5質量部以下が好ましい。
ポリ乳酸樹脂組成物は、上記以外の熱可塑性樹脂、流動改質剤、抗菌剤、流動パラフィンなどの分散剤、光触媒系防汚剤、熱線吸収剤及びフォトクロミック剤などを、含有してもよい。
[ポリ乳酸樹脂組成物及び成形品]
ポリ乳酸樹脂組成物は、上記のようなポリ乳酸樹脂組成物の原料を任意の方法で混合、混練することによって調製することができる。前記混合、混練にあたっては、例えば、二軸押出機、バンバリーミキサー、加熱ロール等を用いることができるが、中でも二軸押出機による溶融混練が好ましい。
例えばポリ乳酸樹脂組成物の調製にあたって、ポリ乳酸樹脂組成物の原料を、それぞれ独立にベント式二軸押出機に代表される溶融混練機に供給する方法や、原料のうちの一部を予備混合した後、残りの成分と独立に溶融混練機に供給するようにしてもよい。また、原料の一部を溶融混練機に供給した後、残りの原料を溶融押出機の途中から供給するようにしてもよい。溶融混練に際しての加熱温度は、通常250〜300℃の範囲で選ばれる。
尚、原料中に液状の成分がある場合には、溶融押出機への液状の成分の供給の際に、いわゆる液注装置、液添装置等を使用してもよい。このような液注装置や液添装置には加温装置が設けられていることが好ましい。特に原料中に上記式(6)で示されるリン酸エステルオリゴマーが含まれている場合、このリン酸エステルオリゴマーは縮合度によっては液状となる。この液状のリン酸エステルオリゴマーを溶融押出機へ供給する際には、液注装置やまたは液添装置を使用することが好ましい。そのため溶融押出機は、液体注入用の原料供給口を持つことが好ましい。例えば溶融押出機へ液状のリン酸エステルオリゴマーを供給する際は、通常の溶融押出機のバレルに形成されているフィード口から液状のリン酸エステルオリゴマーを、ギアポンプ等の公知の液体運搬装置で、押溶融押出機内の吐出圧以上の圧力で供給することが好ましい。溶融押出機へのリン酸エステルオリゴマーの供給時には、リン酸エステルオリゴマーは20℃〜100℃に加熱されていることが好ましく、30℃〜90℃に加熱されていればより好ましく、40℃〜80℃に加熱されていれば更に好ましい。この温度が20℃以下ではリン酸エステルの粘度が高すぎて定量精度の高い添加が難しく、100℃以上では長期の製造においてリン酸エステルの揮発、分解、または劣化を引き起こすおそれがある。
ポリ乳酸樹脂組成物を必要に応じてペレット状に成形してもよい。例えば溶融押出機により押し出されたポリ乳酸樹脂組成物を直接切断してペレット化し、或いはこのポリ乳酸樹脂組成物のストランドを形成した後、このストランドをペレタイザー等で切断してペレット化することで、ペレット状のポリ乳酸樹脂組成物を得てもよい。ペレット化に際して外部の埃などの影響を低減する必要がある場合には、溶融押出機の周囲の雰囲気を清浄化することが好ましい。ペレット状のポリ乳酸樹脂組成物の形状は、円柱、角柱、球状などの一般的な形状でよいが、より好適には円柱状である。円柱状のポリ乳酸樹脂組成物の直径は好ましくは1〜5mm、より好ましくは1.5〜4mm、さらに好ましくは2〜3.3mmである。一方、円柱状のポリ乳酸樹脂組成物の長さは好ましくは1〜30mm、より好ましくは2〜5mm、さらに好ましくは2.5〜3.5mmである。
このポリ乳酸樹脂組成物は、成形時に高い流動性を発揮し、成形性が良好である。このため薄型の成形品を得ることも容易になる。このポリ乳酸樹脂組成物を成形することで、難燃性と機械的強度がより改善された成形品を得ることができる。このため、薄型の成形品であっても、高い難燃性と機械的強度を発揮し得る。例えば成形品の厚みが1.5mmの場合、この成形品の難燃性がUL94 HB規格以上を満足し、或いはV−2規格以上を満足し、更にV−1規格以上を満足し、更にUL94 V0規格を満足することも可能となる。
ポリ乳酸樹脂組成物から形成される成形品の具体的としては、OA機器や家庭用電気製品などの電気製品の筐体や内部部品が挙げられる。これらの電気製品としては、例えば携帯電話機、携帯電話機用卓上ホルダー、複写機、プリンター、液晶プロジェクターの筐体などが挙げられる。また、建材、サニタリー分野など、広範囲の分野に使用することもできる。
成形品には、各種の表面処理が施されてもよい。表面処理には、蒸着(物理蒸着、化学蒸着など)、めっき(電気めっき、無電解めっき、溶融めっきなど)、塗装、コーティング、印刷などの、成形品の表面上に新たな層を形成する処理が含まれる。表面処理の具体例としては、ハードコート、撥水・撥油コート、紫外線吸収コート、赤外線吸収コート、メタライジング(蒸着など)などが挙げられる。
ポリ乳酸樹脂組成物の成形法としては、射出成形、回転成形、ブロー成形、真空成形などの適宜の成形方法が採用され得る。特に射出成形が好ましい。この場合、特に(A)成分がステレオコンプレックス型ポリ乳酸を含有していると、(A)成分がポリ−L−乳酸のみを含有する場合と比べて、成形サイクルを短縮することができる。射出成形においては、通常の成形方法だけでなく、射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、発泡成形(超臨界流体を注入する方法を含む)、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、二色成形、サンドイッチ成形、超高速射出成形などが採用されてもよい。また成形にあたっては、コールドランナー方式及びホットランナー方式のいずれを選択してもよい。
ポリ乳酸樹脂組成物から、押出成形等により各種異形押出成形品、シート、フィルムなどの成形品を得ることもできる。シート、フィルム等を得るにあたっては、インフレーション法、カレンダー法、キャスティング法などの各種シート成形法が採用されてもよい。更に特定の延伸操作を用いることによりポリ乳酸樹脂組成物から熱収縮チューブを形成してもよい。
[製造例]
Dラクチド(株式会社武蔵野化学研究所製、光学純度99%以上)100重量部に対し、オクチル酸スズを0.006重量部、オクタデシルアルコール0.37重量部を加え、窒素雰囲気下、撹拌翼のついた反応機にて、190℃で2時間反応し、その後、エステル交換抑制剤(ジヘキシルホスホノエチルアセテートDHPA)0.01重量部を加えた後、減圧して残存するラクチドを除去し、チップ化し、ポリ−D−乳酸を得た。得られたポリ−D−乳酸の重量平均分子量は13万、ガラス転移点(Tg)60℃、融点は170℃であった。
このポリ−D−乳酸と、ポリ−L−乳酸(ネイチャーワークス社製の4042D、光学純度95%以上、融点150℃、重量平均分子量21万)とを、32mm径の二軸押出機(Coperion製、ZSK 32)を用い、シリンダー温度200℃〜250℃、回転数200rpmの条件で溶融混練を行い、ステレオコンプレックス型ポリ乳酸を得た。得られたステレオコンプレックス型ポリ乳酸の融点は213℃、ステレオ化度は100%であった。
[実施例及び比較例]
各実施例及び比較例について、表1に示す成分を用い、樹脂成分については予め乾燥処理を施した上で、これらの成分をタンブラーで10分間混合した。得られた混合物を二軸押出機で、ダイス付近温度190℃、投入口付近温度200℃の条件で押し出してストランドを得た。
このストランドを速やかに冷却槽で冷却した後、カッターで切断して、長さ2〜4mmのペレット状の樹脂組成物を得た。
この樹脂組成物を、除湿乾燥機にて120℃で4時間加熱することにより乾燥処理を施した後、100トン射出成形機及びISO準拠試験片金型(カラープレート、60mm×60mm×2mm、2個取り)を用い、シリンダーの温度をヘッド付近で230℃、材料投入口付近で220℃に設定すると共に、金型温度を110℃に設定して射出成形し、成形品を得た。
但し、ポリ乳酸Cを用いる場合には、上記方法において、二軸押出機におけるダイス付近温度及び投入口付近温度を225℃とし、射出成形時にはシリンダーの温度をヘッド付近で230℃、材料投入口付近で230℃に設定した。
[難燃性評価]
各実施例及び比較例における成形品の厚みを1.5mmとし、この成形品に対して、UL94 HB,V-0,V-1,V-2規格に従った燃焼試験をおこない、HB,V-0,V-1,V-2の判定をおこなった。いずれの規格も満たさない場合にはNGと評価した。
[耐衝撃性評価]
各実施例及び比較例における成形品の、ノッチ付きのシャルピー衝撃値を、ISO 179に従って測定した。
[耐熱性評価]
各実施例及び比較例における成形品の荷重たわみ温度を、ISO 75−1及び75−2に従って測定した。測定荷重は0.45MPaとした。
[成形サイクル評価]
各実施例及び比較例につき、樹脂組成物の射出成形時に、金型への樹脂組成物の射出後の冷却時間を15秒とした。金型は一点ゲートの金型を用い、成形品の寸法は60mm×60mm×1mmとした。この場合に、得られた成形品が金型より離型し且つこの成形品の形状が固定化されて変形が生じることなく取り出すことが可能であった場合を○、そうでない場合を×と評価した。
[耐久性評価]
各実施例及び比較例で得られた成形品を65℃、95%RHの雰囲気下に曝露した後、この成形品の引張強度を、ISO 179に従って測定した。この試験を曝露時間を変化させて実行することで、曝露後の成形品の引張強度が曝露前の成形品の引張り強度の90%以下に達する最短の曝露時間を特定し、これを耐久性の指標とした。
[評価結果]
以上の評価試験の結果を、各実施例及び比較例における配合組成と共に下記表1に示す。
表1に示される各成分の詳細は次の通りである。
・ポリ乳酸A:ポリ−L−乳酸樹脂(ネイチャワークス社製の品番Ingeo 3001D)、温度190℃、荷重21.2Nでのメルトフローインデックスが10g/10分。
・ポリ乳酸B:製造例で得られたステレオコンプレックス型ポリ乳酸。
・難燃剤A;下記構造式(10)に示す液状環状ホスファゼン化合物、大塚化学株式会社製、品番SPB100L。
・難燃剤B;構造式(1)に示される構造を有する固体環状ホスファゼン化合物、大塚化学株式会社製、品番SPB100。
・難燃剤C;構造式(1)に示される構造を有する固体環状ホスファゼン化合物、株式会社伏見製薬所製、商品名ラビトルFP−100。
・難燃剤D;4,4´−ビフェニレン−テトラキス(2,6−ジメチルフェニル)リン酸エステル、大八化学工業株式会社製、品番PX202。
・難燃剤E;リン酸アンモニウム、クラリアントジャパン株式会社、品番AP422。
・Si含有コアシェルゴム;ポリオルガノシロキサンコアグラフト共重合体(三菱レイヨン株式会社製、商品名メタブレンS2200)。
・含フッ素滴下防止剤;ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、旭硝子株式会社製の商品名ポリフロンMP MPA−500B。
・PC樹脂;芳香族ポリカーボネート樹脂、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製の商品名ユーピロンH4000。
・カルボジイミド;ポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)、日清紡績株式会社製の商品名カルボジライトLA−1。
この結果によれば、各実施例では、衝撃強度、耐熱性を低下させずに、UL94 HB、V−0、V−1に従った難燃性を大きく改善できることが確認できる。

Claims (9)

  1. 下記(A)乃至(D)成分をそれぞれ下記の割合で含有し、
    (A)ポリ乳酸25〜45質量%;
    (B)下記構造式(1)に示される有機リン系難燃剤1〜30質量%;
    (C)含フッ素滴下防止剤0.2〜3質量%
    (D)前記各成分に含まれない熱可塑性樹脂15〜70.8質量%
    更にカルボジイミド化合物を含有するポリ乳酸樹脂組成物
    1及びR2はそれぞれ独立にアリール基又は末端に不飽和結合を有する(メタ)アクリル酸エステル基であり、R1及びR2は同じであっても異なっていてもよい。nは、3〜25の整数である。
  2. 前記(D)成分の少なくとも一部として、ポリカーボネート樹脂を含有する請求項1に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
  3. 厚み1.5mmに成形された場合にUL94 HB規格以上を満足する請求項1又は2に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
  4. 厚み1.5mmに成形された場合にUL94 V−2規格以上を満足する請求項1又は2に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
  5. 厚み1.5mmに成形された場合にUL94 V−1規格以上を満足する請求項1又は2に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
  6. 厚み1.5mmに成形された場合にUL94 V−0規格を満足する請求項1又は2に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
  7. 請求項1乃至6のいずれか一項に記載のポリ乳酸樹脂組成物を成形することで得られる成形品。
  8. 請求項1乃至6のいずれか一項に記載のポリ乳酸樹脂組成物を成形することで得られる電気製品用筐体。
  9. 請求項1乃至6のいずれか一項に記載のポリ乳酸樹脂組成物を成形することで得られる電気製品用内部部品。
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