JP2010090214A - 樹脂組成物および射出成形体 - Google Patents

樹脂組成物および射出成形体 Download PDF

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Abstract

【課題】優れた難燃性を有する樹脂組成物を提供する。
【解決手段】樹脂組成物は、芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)が50質量%以上、95質量%以下、及び、乳酸系樹脂(B)が5質量%以上、50質量%未満の割合で配合されてなる混合物100質量部に対して、ホスホニトリル酸フェニルエステル(C)を1質量部以上、10質量部以下、及び、膨張性黒鉛(D)を1質量部以上、30質量部以下の割合で添加してなる。
【選択図】なし

Description

本発明は優れた難燃性を有する樹脂組成物及び該樹脂組成物を用いて成る射出成形体に関するものである。
プラスチックは今や日常生活、産業等のあらゆる分野において広く浸透しており、全世界のプラスチックの年間生産量は約1億トンにも達している。この生産されたプラスチックの大半は使用後廃棄されており、これが地球環境を乱す原因の一つとして認識されるようになった。そのため、廃棄されても地球環境に悪影響を与えない材料が求められている。
また、通常のプラスチックの原料である石油等は枯渇性資源であるので、再生可能資源の活用が求められている。例えば、植物原料プラスチックは、再生可能な非枯渇性資源を利用して得られるので、石油等の枯渇性資源の節約を図ることができ、しかも、使用後は生分解して自然に戻り、優れたリサイクル性を備えている。
植物原料プラスチックの中でも乳酸系樹脂は、澱粉の発酵により得られる乳酸を原料とし、化学工学的に量産可能であり、かつ、透明性、剛性等に優れている。そのため、特に乳酸系樹脂は、ポリスチレンやABSの代替材料として、家電、OA機器、自動車部品等の射出成形分野において注目されている。
しかしながら、家電、OA機器、自動車部品等の用途に用いられる射出成形体には火災防止のため難燃性が要求されるが、乳酸系樹脂の難燃性は不十分である。そのため乳酸系樹脂の難燃化が要求されており、近年、様々な難燃化手法が検討されている。
例えば、特開平8−231756号公報には、炭素含有高分子材料に対して熱膨張性黒鉛及びリン化合物を配合してなる樹脂組成物が開示されており、特開平9−302237号公報には、熱可塑性重合体、膨張性黒鉛、及び、水不溶性改質ポリリン酸アンモニウムからなる重合体組成物が開示されており、特開平11−35833号公報には、熱可塑性樹脂、加熱膨張性黒鉛、及び、特定のリン化合物からなる樹脂組成物が開示されており、特開平11−217508号公報には、熱可塑性樹脂、加熱膨張性黒鉛、及び、特定の環状リン化合物からなる樹脂組成物が開示されているが、これらの公報に記載の技術を乳酸系樹脂、あるいは、乳酸系樹脂とその他の熱可塑性樹脂の混合物に適用した場合には、乳酸系樹脂の分解を生じたり(特にポリリン酸アンモニウムの場合)、耐熱性の低下を生じたりする上、十分な難燃性を付与することができない。
特開2004−190025号公報には、ポリ乳酸樹脂と、臭素系難燃剤、塩素系難燃剤、リン系難燃剤、窒素化合物系難燃剤、シリコーン系難燃剤およびその他の無機系難燃剤から選択される少なくとも2種類の難燃剤を含有してなる樹脂組成物が開示されている。かかる技術においては、シリコーン系難燃剤とポリ乳酸樹脂の組み合わせでは難燃性の向上効果はなく、また、ここに記載の縮合リン酸エステルのようなリン系難燃剤を添加した場合には、ポリ乳酸樹脂の耐熱性を著しく損なうため、実用上十分な技術とはいえない。
特開2004−190026号公報には、ポリ乳酸100質量部に対して、難燃剤100〜0.5質量部およびポリ乳酸以外の樹脂120〜0.5質量部を含有してなる樹脂組成物が開示されているが、難燃剤を1種類だけ用いた場合には、ポリ乳酸以外の樹脂を含有することによる難燃性の低下を生じるので、家電、OA機器、自動車部品等に広く用いるために必要なUL94垂直燃焼試験に基づく難燃性がV−0、または、V−1規格を満たすことができない。
特開2005−350537号公報には、ポリ乳酸と、リン系難燃剤と、脂肪酸マグネシウムと、ポリフェノールとを含有する難燃性樹脂組成物が開示されているが、ポリ乳酸に脂肪酸マグネシウムを配合した場合、成形時に著しい分解が生じ、また、それによって実用時における耐久性の低下を生じる。
特開2006−16446号公報には、ポリ乳酸樹脂100質量部に対して、難燃剤100〜0.5質量部およびエポキシ化合物10〜0.01質量部を配合してなる樹脂組成物が開示されているが、燃焼時におけるエポキシ化合物の分解、ガス化により、ポリ乳酸の難燃性が損なわれるため、実用上十分な技術とは言えない。
特開2006−16447号公報には、ポリ乳酸100質量部に対し、難燃剤100〜0.5質量部およびフッ素系樹脂3〜0.01質量部を配合してなる樹脂組成物が開示されているが、ポリ乳酸に難燃剤とフッ素樹脂を添加した場合には、フッ素樹脂によりポリ乳酸の粘度が増加して難燃剤の分散性が低下するため、ポリ乳酸の難燃性を著しく損なうこととなる。また、かかる技術では耐熱性についても家電製品、OA機器、自動車部品等に使用するには不十分である。
特開2006−182994号公報には、ポリ乳酸樹脂、芳香族ポリカーボネート樹脂、リン系難燃剤、タルク、フッ素系化合物からなる樹脂組成物が開示されているが、タルクを配合することにより樹脂組成物の難燃性が低下し、それを補うためにリン系難燃剤を多量に配合することが必要になる。これにより樹脂組成物の耐熱性が損なわれるだけでなく難燃性も不十分になり、実用上十分な技術であるとは言えない。
特開2006−176731号公報には、バイオプラスチックに、表面処理されたポリリン酸アンモニウムと、難燃助剤とを配合した難燃樹脂組成物が開示されているが、ポリリン酸アンモニウムは表面処理を施すことで耐水性は改良されるが乳酸系樹脂の分解を促進することに変わりはなく、耐久性が必要とされる家電、OA機器、自動車部品等の用途へ広く用いることは困難である。
特開平8−231756号公報 特開平9−302237号公報 特開平11−35833号公報 特開平11−217508号公報 特開2004−190025号公報 特開2004−190026号公報 特開2005−350537号公報 特開2006−16446号公報 特開2006−16447号公報 特開2006−182994号公報 特開2006−176731号公報
このように従来の技術では、乳酸系樹脂を含有する樹脂組成物に対して、優れた難燃性を付与することは非常に困難であった。
本発明者らは、このような現状に鑑み、鋭意検討を重ねた結果、効果の高い本発明を完成するに至った。
本発明の樹脂組成物は、芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)が50質量%以上、95質量%以下、及び、乳酸系樹脂(B)が5質量%以上、50質量%未満の割合で配合されてなる混合物100質量部に対して、ホスホニトリル酸フェニルエステル(C)を1質量部以上、10質量部以下、及び、膨張性黒鉛(D)を1質量部以上、30質量部以下の割合で添加してなることを特徴とする。
本発明においては、温度230℃、せん断速度100(1/秒)における、前記芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)の粘度η(A)と、前記乳酸系樹脂(B)の粘度η(B)との比η(A)/η(B)が3以上、12以下の範囲にあることが好ましい。
本発明においては、前記芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)、及び、前記乳酸系樹脂(B)の混合物100質量部に対して、カルボジイミド化合物を0.1質量部以上、5質量部以下の割合で配合してなることができる。
本発明においては、前記芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)、及び、前記乳酸系樹脂(B)の混合物100質量部に対して、滴下抑制剤を0.1質量部以上、2質量部以下の割合で配合してなることができる。
本発明の射出成形体は、上記樹脂組成物のいずれかを用いて成ることを特徴とする。
本発明によれば、芳香族ポリカーボネート系樹脂と乳酸系樹脂の混合物に優れた難燃性を付与することができるので、家電、OA機器、自動車部品などの高度な難燃性が必要とされる分野に乳酸系樹脂を広く使用することができる。
以下、本発明にについて説明する。
本発明の樹脂組成物は、芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)、乳酸系樹脂(B)、ホスホニトリル酸フェニルエステル(C)、及び、膨張性黒鉛(D)を含有する。
(芳香族ポリカーボネート系樹脂)
本発明に用いられる芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)は、主成分が芳香族ポリカーボネートである樹脂を意味する。芳香族ポリカーボネート系樹脂としては、フェノールとアセトンから合成されるビスフェノールAを原料として界面重合法、エステル交換法、ピリジン法等によって製造されるもの、ビスフェノールAとジカルボン酸誘導体、例えば、テレ(イソ)フタル酸ジクロリド等との共重合により得られるポリエステルカーボネート、ビスフェノールAの誘導体、例えば、テトラメチレンビスフェノールA等の重合により得られるもの等が挙げられる。なお、本発明においては、芳香族ポリカーボネート系樹脂の機能を妨げない範囲で他の成分を含有することができる。
商業的に入手可能な芳香族ポリカーボネート系樹脂としては、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製の「ユーピロン」シリーズ、住友ダウ(株)製の「カリバー」シリーズ等が挙げられる。
本発明に用いられる芳香族ポリカーボネート系樹脂は、日本工業規格JIS K7210に基づいて、測定温度300℃、荷重1.2kgの条件により測定したメルトフローレート(MFR)が、10g/10min以上、50g/10min以下であることが好ましく、15g/10min以上、40g/10min以下であることが更に好ましい。芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)のメルトフローレート(MFR)が10g/10min未満の場合には、すなわち、芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)の分子量が大きい場合には、成形温度を高くする必要があるので、成形温度が乳酸系樹脂の分解温度以上になって成形時に乳酸系樹脂の分解が生じることがある。一方、芳香族ポリカーボネート系樹脂のメルトフローレートが50g/10minより高い場合には、すなわち、芳香族ポリカーボネート系樹脂の分子量が小さい場合には、芳香族ポリカーボネート系樹脂の耐衝撃性が低下するので、乳酸系樹脂および芳香族ポリカーボネート系樹脂の混合物の耐衝撃性が低下する恐れがある。
(乳酸系樹脂)
本発明に用いられる乳酸系樹脂(B)は、構造単位がL−乳酸であるポリ(L−乳酸)、構造単位がD−乳酸であるポリ(D−乳酸)、構造単位がL−乳酸及びD−乳酸である、ポリ(DL−乳酸)や、これらの混合体を主成分とする。本発明においては、D−乳酸の割合が、0.1%以上、3.0%未満であることが好ましく、0.5%以上、2.0%未満であることが更に好ましい。D−乳酸の割合が0.1%未満では生産性が低下することがあり、3%以上の場合には射出成形体の耐熱性が得られにくくなることがあって用途が制限されることがある。
ここで、「主成分」とは、主成分となる樹脂の機能を妨げない範囲で他の成分を含有することを許容することを意味するものとし、特に主成分となる樹脂の含有割合を特定するものではないが、主成分となる樹脂は樹脂組成物(ここでは乳酸系樹脂)中、50質量%以上であり、好ましくは70質量%以上であり、特に好ましくは90質量%以上(100質量%を含む)である。なお、本発明において、上記以外でも「主成分」と表示した場合には、特にことわりがない限り上記と同様の意味を有するものとする。
乳酸系樹脂の重合法としては、縮重合法、開環重合法等の公知のいずれの方法でも採用することができる。例えば、縮重合法では、L−乳酸またはD−乳酸、あるいはこれらの混合物を直接脱水縮重合して任意の組成を有する乳酸系樹脂を得ることができる。
また、開環重合法では、適当な触媒を選択し、必要に応じて重合調整剤も用いて、乳酸の環状二量体であるラクチドから乳酸系樹脂を得ることができる。ラクチドには、L−乳酸の2量体であるL−ラクチド、D−乳酸の2量体であるD−ラクチド、さらにL−乳酸とD−乳酸からなるDL−ラクチドがあり、これらを必要に応じて混合して重合することにより、任意の組成、結晶性を有する乳酸系樹脂を得ることができる。
さらに、耐熱性を向上させる等の必要に応じて、乳酸系樹脂の本質的な性質を損なわない範囲で、例えば、乳酸系樹脂成分を90質量%以上含有する範囲内で、少量共重合成分を添加することができる、少量の共重合成分としては、テレフタル酸のような非脂肪族ジカルボン酸および/またはビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のような非脂肪族ジオール等を用いることができる。さらにまた、分子量増大を目的として、少量の鎖延長剤、例えば、ジイソシアネート化合物、エポキシ化合物、酸無水物等を使用することもできる。
乳酸系樹脂は、さらに、乳酸および/または乳酸以外のα−ヒドロキシカルボン酸等の他のヒドロキシカルボン酸単位との共重合体であっても、脂肪族ジオールおよび/または脂肪族ジカルボン酸との共重合体であってもよい。
他のヒドロキシカルボン酸単位としては、乳酸の光学異性体(L−乳酸に対してはD−乳酸、D−乳酸に対してはL−乳酸)、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−メチル乳酸、2−ヒドロキシカプロン酸等の2官能脂肪族ヒドロキシ−カルボン酸やカプロラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン等のラクトン類が挙げられる。
乳酸系樹脂に共重合される脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。また、上記脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸およびドデカン二酸等が挙げられる。
本発明に使用される乳酸系樹脂は、重量平均分子量が5万〜40万の範囲であることが好ましく、更に好ましくは10万〜25万である。乳酸系樹脂の重量平均分子量が5万より小さい場合には、機械物性や耐熱性等の実用物性がほとんど発現されず、40万より大きい場合には、溶融粘度が高すぎて成形加工性に劣ることがある。
商業的に入手可能な乳酸系樹脂の代表的なものとしては、三井化学(株)製の「レイシア」シリーズ、Nature Works社製の「Nature Works」シリーズ等が挙げられる。
上記芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)、及び、上記乳酸系樹脂(B)の混合物中に占める乳酸系樹脂(B)の割合は、5質量%以上、50質量%未満であることが重要であり、10質量%以上、40質量%未満であることが好ましく、20質量%以上、35質量%未満であることが更に好ましい。また、混合物中に占める芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)の割合は50質量%以上、95質量%以下である。混合物中に占める乳酸系樹脂(B)の割合が5質量%以上、50質量%未満であれば、芳香族ポリカーボネート系樹脂が有する優れた耐熱性を保持したまま、乳酸系樹脂が有する剛性及び成形性を付与することができる。
本発明においては、芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)の温度230℃、せん断速度100(1/秒)における粘度η(A)と、乳酸系樹脂(B)の温度230℃、せん断速度100(1/秒)における粘度η(B)の比[η(A)/η(B)]が、3以上、12以下の範囲にあることが好ましく、4以上、11以下の範囲にあることが更に好ましく、5以上、10以下の範囲にあることが特に好ましい。粘度比[η(A)/η(B)]が3〜12になるように、芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)及び乳酸系樹脂(B)の粘度を調整すれば、芳香族ポリカーボネート(A)中に乳酸系樹脂(B)を微分散することができるため、芳香族ポリカーボネート系樹脂が有する優れた耐熱性を保持したまま、乳酸系樹脂が有する剛性及び成形性を付与することができる。
なお、本発明において、粘度は、東洋精機社製キャピラリー式レオメーター・キャピログラフ1Bを用い、日本工業規格JIS K7199に基づき、長さ40mm、直径1mmのキャピラリーを使用して、温度230℃、せん断速度100(1/秒)にて測定を行った。
(ホスホニトリル酸フェニルエステル)
本発明の樹脂組成物は、リン含有化合物であるホスホニトリル酸フェニルエステル(C)を含有する。リン含有化合物としてホスホニトリル酸フェニルエステルを用いることにより、樹脂組成物の耐熱性を損なうことなく難燃性を付与することができる。例えば、リン化合物として、ホスホニトリル酸フェニルエステル以外のものを使用した場合には、例えば、リン酸エステル、縮合リン酸エステル等のリン系化合物を使用した場合には、乳酸系樹脂を可塑化することによる耐熱性の低下を生じる。商業的に入手可能なホスホニトリル酸フェニルエステルの代表的なものとしては、伏見製薬所製の「FP−100」等が挙げられる。なお、本発明においては、ホスホニトリル酸フェニルエステルの機能を妨げない範囲で他の成分を含有することを許容する。
ホスホニトリル酸フェニルエステル(C)の配合割合は、芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)、および、乳酸系樹脂(B)の混合物100質量部に対して、ホスホニトリル酸フェニルエステル(C)を1質量部以上、10質量部以下で配合することが重要であり、2質量部以上、8質量部以下で配合することが好ましい。ホスホニトリル酸フェニルエステル(C)の配合量が1質量部を下回る場合には、難燃性付与効果が十分ではなく、10質量部を上回る場合には、樹脂組成物の可塑化により耐熱性が低下する。
(膨張性黒鉛)
本発明の樹脂組成物は、ホスホニトリル酸フェニルエステル(C)の他にも、膨張性黒鉛(D)を含有する。芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)と乳酸系樹脂(B)を混合したものにホスホニトリル酸フェニルエステル(C)を配合した場合には、ホスホニトリル酸フェニルエステルが芳香族ポリカーボネート系樹脂中に偏在するため、乳酸系樹脂相の難燃性が不十分となる。ここに膨張性黒鉛を併用すれば、膨張性黒鉛が乳酸系樹脂相に存在し、燃焼時に断熱炭化層が形成され、より優れた難燃性を付与することができる。
膨張性黒鉛(D)としては、天然リンペン状黒鉛を無機酸と強酸化剤とで処理して黒鉛層間化合物を形成したものに、さらに、アンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等で中和処理したものを用いることが好ましい。なお、本発明においては、膨張性黒鉛の機能を妨げない範囲で他の成分を含有することができる。商業的に入手可能な膨張性黒鉛(D)の具体例としては、例えば、東ソー(株)製の「GREP−EG」、エア・ウォーター社製の「モエヘンZ」シリーズ等が挙げられる。
上記膨張性黒鉛(D)の配合量としては、芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)、及び、乳酸系樹脂(B)の混合物100質量部に対して、膨張性黒鉛(D)を1質量部以上、30質量部以下の割合で配合することが重要であり、5質量部以上、20質量部以下の割合で配合することが好ましく、7質量部以上、15質量部以下の割合で配合することが更に好ましい。膨張性黒鉛(D)の配合量が1質量部を下回る場合には、難燃性付与効果が十分ではなく、30質量部を上回る場合には、機械物性の低下を生じる。
(カルボジイミド化合物)
本発明においては、得られる射出成形体の耐久性を更に向上させるために、カルボジイミド化合物を配合することができる。本発明に用いられるカルボジイミド化合物としては、下記一般式に示す基本構造を有するものが好ましいものとして挙げられる。
−(N=C=N−R−)n−
(上記式中、Rは有機系結合単位を示し、例えば、脂肪族、脂環族または芳香族であることができる。nは1以上の整数を示し、通常は、1〜50の間で適宜決められる。nが2以上の場合に、2以上のRは同一でも異なっていてもよい。)
具体的には、例えば、ビス(ジプロピルフェニル)カルボジイミド、ポリ(4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(p−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(m−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリルカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(メチル−ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)等、および、これらの単量体がカルボジイミド化合物として挙げられる。これらのカルボジイミド化合物は、単独、または、2種以上組み合わせて用いることができる。
商業的に入手可能なカルボジイミド化合物の代表的なものとしては、日清紡績(株)製の「カルボジライト」シリーズ、ラインケミー社製の「スタバクゾール」シリーズが挙げられる。
カルボジイミド化合物の配合量は、芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)、及び、乳酸系樹脂(B)の混合物100質量部に対して、カルボジイミド化合物を0.1質量部以上、5質量部以下の割合で配合することが好ましく、0.5質量部以上、3質量部以下の割合で配合することが更に好ましい。カルボジイミド化合物の配合割合が0.1質量部以上であれば、耐久性の向上効果が得られ、5質量部以下であれば、カルボジイミド化合物の可塑化効果により射出成形体の耐熱性が低下したり、あるいは、過度の分子量向上による粘度上昇が生じたりすることがないので、成形性の問題が生じない。
(滴下抑制剤)
本発明の樹脂組成物は、難燃性を更に向上させるために滴下抑制剤を配合することができる。滴下抑制剤の具体例としては、ポリテトラフルオロエチレン、シリコーンレジン、変性シリコーン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、タルク、マイカ、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコン、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸アンモニウム、酸化亜鉛、ホウ酸亜鉛、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。これらの中では、特にポリテトラフルオロエチレンを使用することが好ましく、ポリテトラフルオロエチレンを使用すれば、低添加量で優れた滴下抑制効果を付与することができる。なお、本発明においては、滴下抑制剤(例えば、ポリテトラフルオロエチレン等)の機能を妨げない範囲で他の成分を含有することができる。商業的に入手可能なポリテトラフルオロエチレンの代表的なものとしては、ダイキン工業(株)製の「ポリフロン」シリーズ等が挙げられる。
滴下抑制剤の配合量は、芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)、および、乳酸系樹脂(B)の混合物100質量部に対して、0.1質量部以上、2質量部以下の割合であることが好ましく、0.5質量%以上、1.5質量%以下の割合であることが更に好ましい。滴下抑制剤の配合割合が、0.1質量部以上であれば滴下抑制効果が得られ、2質量部以下であれば樹脂組成物の粘度上昇、外観不良等を生じることがない。
本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内で、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、結晶化促進剤、顔料、染料などの添加剤を配合することができる。
本発明の樹脂組成物は、フィルム、シート、または、射出成形体等に加工することができる。以下に、本発明の射出成形体を形成する方法について説明する。
芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)、乳酸系樹脂(B)、ホスホニトリル酸フェニルエステル(C)、膨張性黒鉛(D)、及び、その他添加剤などの各原料を、同一の押出機、射出成形機等に投入して直接混合し、射出成形することにより射出成形体を得ることができる。あるいは、ドライブレンドした原料を、二軸押出機を用いてストランド形状に押出してペレットを作製しておき、このペレットを射出成形機に入れて射出成形することにより射出成形体を形成することができる。
いずれの方法を採用するにしても、原料の分解による分子量の低下を考慮する必要があるが、各原料を均一に混合させるためには後者を選択することが好ましい。例えば、芳香族ポリエステル系樹脂(A)、乳酸系樹脂(B)、ホスホニトリル酸フェニルエステル(C)、膨張性黒鉛(D)、また、必要に応じてその他の添加剤を十分に乾燥して水分を除去した後、二軸押出機を用いて溶融混合し、ストランド形状に押出してペレットを作製する。なお、乳酸系樹脂はL−乳酸構造とD−乳酸構造の組成比によって融点が変化すること、芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)、乳酸系樹脂(B)、ホスホニトリル酸フェニルエステル(C)、膨張性黒鉛(D)等の混合割合によって混合樹脂の粘度が変化すること等を考慮して、溶融押出温度を適宜選択することが好ましい。実際には200℃以上、260℃以下の温度範囲が通常選択される。
上記方法にて作製したペレットを十分に乾燥して水分を除去した後、以下の方法で射出成形を行う。なお、本発明の樹脂組成物を用いて、フィルム、シート、プレート等を形成しても良い。本発明におけるフィルムの成形方法としては、ロール延伸、テンター延伸法、チューブラー法、インフレーション法等を採用することができる。また、シートまたはプレートの成形方法としては、一般的なTダイキャスト法、プレス法等を採用することができる。
射出成形方法としては、特に限定されるわけではないが、例えば熱可塑性樹脂を成形する場合に一般的に採用される射出成形法、ガスアシスト成形法、射出圧縮成形法等を採用することができる。また、その他目的に合わせて、上記の方法以外でもインモールド成形法、ガスプレス成形法、2色成形法、サンドイッチ成形法等を採用することもできる。
用いられる射出成形装置は、一般的な射出成形機、ガスアシスト成形機、射出圧縮成形機等と、これらの成形機に用いられる成形用金型及び付帯機器、金型温度制御装置、原料乾燥装置等から構成される。成形条件は射出シリンダー内での樹脂の熱分解を避けるため、溶融樹脂温度を200℃以上、260℃以下の範囲で成形することが好ましい。
次に、成形時の金型内、または/および、金型から取り出した後に結晶化処理を行う。このように結晶化処理を行うことにより、本発明の樹脂組成物から得られた射出成形体の耐熱性を向上させることができる。生産性の面から、射出成形体を形成する樹脂の結晶化速度が遅い場合は、金型から取り出した後に結晶化処理を行うことが好ましく、結晶化速度が速い場合には、金型内で結晶化を行うことが好ましい。
金型内で結晶化させる場合には、加熱した金型内に溶融樹脂を充填した後、一定時間金型内で保持する。金型温度は、80℃以上、130℃以下の範囲が好ましく、90℃以上、120℃以下の範囲が更に好ましい。結晶化処理時間(冷却時間)は、1秒以上、300秒以下の範囲が好ましく、5秒以上、60秒以下の範囲が更に好ましい。
また、金型から成形体を取り出した後に結晶化させる場合、熱処理温度は、60℃以上、130℃以下の範囲が好ましく、70℃以上、100℃以下の範囲が更に好ましい。熱処理温度が60℃より低い場合には、成形工程において結晶化が進行しないことがあり、130℃より高い場合には、成形体を冷却する時に変形や収縮が生じることがある。
結晶化処理時間(加熱時間)は、樹脂組成物の組成、熱処理温度等に応じて適宜設定されることが好ましいが、例えば、熱処理温度が70℃の場合には結晶化処理時間が15分以上、5時間以下の範囲であることが好ましい。また、熱処理温度が130℃の場合には結晶化処理時間が10秒以上、30分以下であることが好ましい。
結晶化処理(熱処理)の方法としては、熱風、蒸気、温水、遠赤外線ヒーター、IHヒーター等を用いることができる。結晶化処理を施す際には成形体を固定しないて行ってもよいが、成形体の変形を防止するためには、金型、樹脂型等で固定して行うことが好ましい。また、生産性を考慮して、梱包した状態で熱処理を行ってもよい。
本発明によれば、芳香族ポリカーボネート系樹脂および乳酸系樹脂の混合物に優れた難燃性を付与することができるので、家電、OA機器、自動車部品などの高度な難燃性が必要とされる分野に乳酸系樹脂を広く使用することができる。
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではなく、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲内で種々の応用が可能である。なお、各実施例および各比較例は以下の方法で評価および測定を行った。
(1)粘度
東洋精機社製キャピラリー式レオメーター・キャピログラフ1Bを用いて、日本工業規格JIS K7199に基づき、長さ40mm、直径1mmのキャピラリーを使用して、温度230℃、せん断速度100(1/秒)で測定を行った。
(2)難燃性
長さ135mm×幅13mm×厚さ1.5mmの試験片を用いて、Underwriters Laboratories社の安全標準UL94垂直燃焼試験の手順に基づき、n=5にて燃焼試験を実施した。UL94垂直燃焼試験(UL94V)の判定基準に基づき、V−0規格に準ずるものを合格とした。
(3)アイゾット衝撃強度
JIS K−7110に基づいて、2号A試験片(ノッチ付き、長さ64mm×幅12.7mm×厚さ4mm)を作製し、東洋精機製作所製JISL−Dを用いて23℃におけるアイゾット衝撃強度の測定を行った。アイゾット衝撃強度は輸送時、実用時における破損防止を考慮し、2kJ/m以上を合格とした。より好ましくは、3kJ/m以上である。
(4)荷重たわみ温度
耐熱性の指標として荷重たわみ温度の評価を行った。日本工業規格JIS K−7191のA法に基づいて、長さ120mm×幅11mm×厚さ3mmの試験片を作製し、東洋精器社製のS−3Mを用いて荷重たわみ温度の測定を行った。測定は、フラットワイズ方向、試験片に加える曲げ応力1.8MPaの条件で行った。荷重たわみ温度は実用時における熱変形の防止を考慮し、70℃以上を合格レベルとした。なお、より好ましくは80℃以上である。
(5)総合評価
各評価用サンプルについて、難燃性、アイゾット衝撃強度、荷重たわみ温度の3項目の評価に関し総合評価を行った。ただし、評価基準は以下のような4段階評価とした。
A:難燃性があり、品質が良好のもの
B:難燃性があり、要求される最低限の品質を有するもの
C:難燃性はあるが、要求される最低限の品質に達していないもの
D:難燃性はなく、要求される品質に達していないもの
(実施例1)
芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)として、芳香族ポリカーボネート(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製のユーピロンS2000、MFR=12g/10分)、乳酸系樹脂(B)として、Nature Works社製のNature Works 4032D(D乳酸の割合:1.4%、重量平均分子量:20万)、ホスホニトリル酸フェニルエステル(C)として、伏見製薬所製のFP−110、および、膨張性黒鉛(D)として、鈴裕化学(株)製のGREP−EGを用いた。Nature Works 4032D、ユーピロンS2000、FP−110、及び、GREP−EGを質量比80:20:5:5の割合でドライブレンドした後、三菱重工(株)製の40mmφの小型同方向二軸押出機を用いて230℃でコンパウンドし、ペレット形状にした。得られたペレットを東芝機械(株)製の射出成形機 IS50E(スクリュー径25mm)を用い、難燃性の評価用サンプルとして、長さ135mm×幅13mm×厚さ1.5mmの試験片、アイゾット衝撃強度の評価用サンプルとして、長さ64mm×幅12.7mm×厚さ4mmの試験片、荷重たわみ温度の評価用として、長さ120mm×幅11mm×厚さ3mmの試験片を射出成形した。得られた評価用サンプルを用いて、難燃性、アイゾット衝撃強度、及び、荷重たわみ温度の測定及び評価を行った。その結果を表1に示す。但し、主な成形条件は以下の通りである。
1)温度条件:シリンダー温度(230℃) 金型温度(50℃)
2)射出条件:射出圧力(115MPa) 保持圧力(55MPa)
3)計量条件:スクリュー回転数(65rpm) 背圧(15MPa)
(実施例2)
射出成形体の形成に用いられるペレットの各原料の配合量を、ユーピロンS2000、Nature Works 4032D、FP−110、及び、GREP−EGの質量比が、80:20:5:10の割合となるように変更してドライブレンドした以外は実施例1と同様の方法で、試験片を射出成形して評価用サンプルを作製した。得られた評価用サンプルについて、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
(実施例3)
射出成形体の形成に用いられるペレットの各原料の配合量を、ユーピロンS2000、Nature Works 4032D、FP−110、及び、GREP−EGの質量比が、80:20:5:25の割合となるように変更してドライブレンドした以外は実施例1と同様の方法で、試験片を射出成形して評価用サンプルを作製した。得られた評価用サンプルについて、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
(実施例4)
射出成形体の形成に用いられるペレットの各原料の配合量を、ユーピロンS2000、Nature Works 4032D、FP−110、及び、GREP−EGの質量比が、80:20:8:10の割合となるように変更してドライブレンドした以外は実施例1と同様の方法で、試験片を射出成形して評価用サンプルを作製した。得られた評価用サンプルについて、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
(実施例5)
射出成形体の形成に用いられるペレットの各原料の配合量を、ユーピロンS2000、Nature Works 4032D、FP−110、及び、GREP−EGの質量比が、70:30:5:10の割合となるようにドライブレンドした以外は実施例1と同様の方法で、試験片を射出成形して評価用サンプルを作製した。得られた評価用サンプルについて、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
(実施例6)
射出成形体の形成に用いられるペレットの各原料の配合量を、ユーピロンS2000、Nature Works 4032D、FP−110、及び、GREP−EGの質量比が、60:40:5:10の割合となるようにドライブレンドした以外は実施例1と同様の方法で、試験片を射出成形して評価用サンプルを作製した。得られた評価用サンプルについて、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
(実施例7)
射出成形体の形成に用いられるペレットの各原料の配合量を、ユーピロンS2000、Nature Works 4032D、FP−110、及び、GREP−EGの質量比が、51:49:5:10の割合となるようにドライブレンドした以外は実施例1と同様の方法で、試験片を射出成形して評価用サンプルを作製した。得られた評価用サンプルについて、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
(実施例8)
滴下抑制剤として、ダイキン工業(株)製のポリフロンMPA FA−500(ポリテトラフルオロエチレン)を用い、射出成形体の形成に用いられるペレットの各原料の配合量を、ユーピロンS2000、Nature Works 4032D、FP−110、GREP−EG、及び、FA−500の質量比が、70:30:5:10:0.5の割合でドライブレンドした以外は実施例1と同様の方法で、試験片を射出成形して評価用サンプルを作製した。得られた評価用サンプルについて、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
(実施例9)
芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)として、芳香族ポリカーボネート(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製のユーピロンS3000、MFR=16g/10分)を用い、射出成形体の形成に用いられるペレットの各原料の配合量を、ユーピロンS3000、Nature Works 4032D、FP−110、GREP−EG、及び、FA−500の質量比が、70:30:5:10:0.5の割合となるようにドライブレンドした以外は実施例8と同様の方法で、試験片を射出成形して評価用サンプルを作製した。得られた評価用サンプルについて、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
(実施例10)
芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)として、芳香族ポリカーボネート(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製のユーピロンH4000、MFR=72g/10分)を用い、射出成形体の形成に用いられるペレットの各原料の配合量を、ユーピロンH4000、Nature Works 4032D、FP−110、及び、GREP−EGの質量比が、70:30:5:10の割合となるようにドライブレンドした以外は実施例1と同様の方法で、試験片を射出成形して評価用サンプルを作製した。得られた評価用サンプルについて、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
(実施例11)
射出成形体の形成に用いられるペレットの各原料の配合量を、ユーピロンS2000、Nature Works 4032D、FP−110、及び、GREP−EGの質量比が、95:5:5:10の割合となるようにドライブレンドした以外は実施例1と同様の方法で、試験片を射出成形して評価用サンプルを作製した。得られた評価用サンプルについて、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
(比較例1)
射出成形体の形成に用いられるペレットの各原料の配合量を、ユーピロンS2000、及び、Nature Works 4032Dの質量比が、70:30の割合となるようにドライブレンドした以外は実施例1と同様の方法で、試験片を射出成形して評価用サンプルを作製した。得られた評価用サンプルについて、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表2に示す。
(比較例2)
射出成形体の形成に用いられるペレットの各原料の配合量を、ユーピロンS2000、Nature Works 4032D、及び、FP−110の質量比が、70:30:10の割合となるようにドライブレンドした以外は実施例1と同様の方法で、試験片を射出成形して評価用サンプルを作製した。得られた評価用サンプルについて、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表2に示す。
(比較例3)
射出成形体の形成に用いられるペレットの各原料の配合量を、ユーピロンS2000、Nature Works 4032D、及び、GREP−EGの質量比が、70:30:25の割合となるようにドライブレンドした以外は実施例1と同様の方法で、試験片を射出成形して評価用サンプルを作製した。得られた評価用サンプルについて、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表2に示す。
(比較例4)
射出成形体の形成に用いられるペレットの各原料の配合量を、ユーピロンS2000、Nature Works 4032D、FP−110、及び、GREP−EGの質量比が、70:30:25:10の割合となるようにドライブレンドした以外は実施例1と同様の方法で、試験片を射出成形して評価用サンプルを作製した。得られた評価用サンプルについて、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表2に示す。
(比較例5)
ホスホニトリル酸フェニルエステルの代わりに縮合リン酸エステル(大八化学工業(株)製のPX−200)を用い、射出成形体の形成に用いられるペレットの各原料の配合量を、ユーピロンS2000、Nature Works 4032D、PX−200、及び、GREP−EGの質量比が、70:30:5:10の割合となるようにドライブレンドした以外は実施例1と同様の方法で、試験片を射出成形して評価用サンプルを作製した。得られた評価用サンプルについて、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表2に示す。
(比較例6)
ホスホニトリル酸フェニルエステルの代わりにトリフェニルホスフェート(大八化学工業(株)製のTPP)を用い、射出成形体の形成に用いられるペレットの各原料の配合量を、ユーピロンS2000、Nature Works 4032D、TPP、及び、GREP−EGの質量比が、70:30:5:10の割合となるようにドライブレンドした以外は実施例1と同様の方法で、試験片を射出成形して評価用サンプルを作製した。得られた評価用サンプルについて、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表2に示す。
Figure 2010090214
Figure 2010090214
表1から明らかなように、芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)、乳酸系樹脂(B)、ホスホニトリル酸フェニルエステル(C)、および、膨張性黒鉛(D)を所定量で配合した樹脂組成物を用いてなる実施例1〜11の射出成形体は、難燃性がV−0規格を満たすものであり、かつ、耐衝撃性及び耐熱性に優れたものであることが分かった。
表2から明らかなように、比較例1〜3、5〜6の樹脂組成物を用いてなる射出成形体は、難燃性が不十分なものであり、比較例4は耐熱性に劣ったものであることが分かった。また、ホスホニトリル酸フェニルエステル以外のリン化合物を用いた比較例5〜6では、合格レベルの難燃性を得ることはできないことが分かった。
本発明の樹脂組成物は優れた難燃性を実現することができるので、家電、OA機器、自動車部品等の高度な難燃性が必要とされる分野に広く利用することができる。

Claims (5)

  1. 芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)が50質量%以上、95質量%以下、及び、乳酸系樹脂(B)が5質量%以上、50質量%未満の割合で配合されてなる混合物100質量部に対して、ホスホニトリル酸フェニルエステル(C)を1質量部以上、10質量部以下、及び、膨張性黒鉛(D)を1質量部以上、30質量部以下の割合で添加してなることを特徴とする樹脂組成物。
  2. 温度230℃、せん断速度100(1/秒)における、前記芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)の粘度η(A)と、前記乳酸系樹脂(B)の粘度η(B)との比η(A)/η(B)が3以上、12以下の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)、及び、前記乳酸系樹脂(B)の混合物100質量部に対して、カルボジイミド化合物を0.1質量部以上、5質量部以下の割合で配合してなることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
  4. 前記芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)、及び、前記乳酸系樹脂(B)の混合物100質量部に対して、滴下抑制剤を0.1質量部以上、2質量部以下の割合で配合してなることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  5. 請求項1から4に記載の樹脂組成物を用いて成ることを特徴とする射出成形体。
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