JP2013045091A - 空間光変調器 - Google Patents

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Abstract

【課題】光変調しない画素有効領域外からの出射光を抑制して、コントラストを向上させた反射型の空間光変調器を提供する。
【解決手段】基板7上に2次元配列された画素4からなる空間光変調器の画素アレイ40は、各画素4の光変調素子同士を絶縁する素子間絶縁層5を、光の入射される側から順に低屈折率絶縁層52およびそれよりも屈折率の高い高屈折率絶縁層51の少なくとも2層を積層して備える。光が高屈折率絶縁層51の上下界面で多重反射して閉じ込められることにより減衰して、出射光が抑制される。
【選択図】図4

Description

本発明は、入射した光を磁気光学効果により光の位相や振幅等を空間的に変調して出射する空間光変調器に関する。
空間光変調器は、画素として光学素子(光変調素子)を用い、これをマトリクス状に2次元配列して光の位相や振幅等を空間的に変調するものであって、ディスプレイ技術や記録技術等の分野で広く利用されている。空間光変調器として、従来より液晶が用いられているが、近年では、高速処理かつ画素の1μm以下の微細化の可能性が期待される磁気光学材料を用いた磁気光学式空間光変調器の開発が進められている。
磁気光学式空間光変調器においては、磁性体に入射した光が透過または反射する際にその偏光の向きを変化(旋光)させて出射するファラデー効果(反射の場合はカー効果)を利用している。すなわち、選択された画素(選択画素)における光変調素子の磁化方向とそれ以外の画素(非選択画素)における光変調素子の磁化方向を異なるものとして、選択画素から出射した光と非選択画素から出射した光で、その偏光の回転角(旋光角)に差を生じさせた2値の光に変調する。このような光変調素子の磁化方向を変化させる方法として、光変調素子に磁界を印加する磁界印加方式の他に、近年では光変調素子に電流を供給することでスピンを注入するスピン注入方式(例えば、特許文献1,2)がある。
スピン注入方式の光変調素子は、具体的には、TMR(Tunnel MagnetoResistance:トンネル磁気抵抗効果)素子やCPP−GMR(Current Perpendicular to the Plane Giant MagnetoResistance:垂直通電型巨大磁気抵抗効果)素子等の、磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)にも適用されるスピン注入磁化反転素子が適用される。スピン注入磁化反転素子は素子サイズ(面積)および厚さが小さいほど小さい電流で容易に磁化反転し、このようなスピン注入磁化反転素子を適用した光変調素子は、磁界を発生させるために各光変調素子の外周に沿って電極(配線)を備える磁界印加方式よりもいっそうの微細化を可能とする。
図1に示すように、スピン注入磁化反転素子を光変調素子1として2次元配列して空間光変調器10を構成する場合、光変調素子1は各々が独立して磁化反転するように2次元における行、列それぞれに離間して配列される。さらに所望の光変調素子1を磁化反転させるために、電流を光変調素子1毎に供給可能するべく、その上下に接続される配線間(上部電極3,3間、下部電極2,2間)も絶縁材料(絶縁層63,62)を介して離間して設けられる。したがって、空間光変調器の受光部である2次元配列された画素4(画素アレイ40)は、その全面を光変調素子1が占めることはなく一部にすぎない。ここで、画素アレイ40の光変調素子1,1間等を埋める絶縁材料は、スピン注入磁化反転素子の磁性膜と同様に、スパッタリング法等で薄膜を厚さの精度よく成膜することができる、SiO2,Si34,MgOのような酸化物や窒化物等が適用され、これらは透光性の材料である。
図2に示すように、偏光の向きを変化させる磁気光学式空間光変調器(以下、空間光変調器)から、選択画素(または非選択画素)からの出射光のみを取り出してスクリーン等の検出器PDに投影する表示装置とするためには、空間光変調器10の画素アレイ40の出射側に特定の1つの偏光成分の光を遮光する偏光フィルタPFoを配置する。なお、偏光フィルタPFoで非選択画素(または選択画素)からの出射光を完全に遮光するために、各画素4からの出射光はそれぞれが1つの偏光成分の光(偏光の向き)でなくてはならないので、空間光変調器10へ照射する光も、別の偏光フィルタPFiを透過させた1つの偏光成分の光(図2中の入射光L0)である。なお、図2においては、破断線の左側に図1のA−A断面図、右側に図1のB−B断面図を表す。
空間光変調器10からの出射光が、光変調素子1によって変調した2値の光のみであれば、偏光フィルタPFoを透過して検出器PDに投影される光は、選択画素(または非選択画素)からの出射光に限定される。しかしながら、前記した通り、画素アレイ40における光変調素子1の配置された領域(画素有効領域4ef、図3参照)は一部にすぎず、この領域外に入射した光は、上部電極3,3間、光変調素子1,1間の絶縁層5,63を透過して下部電極2の表面で反射し、あるいはさらに下部電極2,2間の絶縁層62を透過して基板7の反射面で反射して、再びこれらの絶縁層を透過して画素アレイ40から出射する。このような出射光(図2の出射光L1,L2,L3)は、入射光L0に対して旋光していないので、2値の光以外の光すなわちノイズとなる。
偏光フィルタ(偏光子)は、特定の1つの偏光成分の光のみを遮光し、それ以外の光については、遮光される偏光成分に対して差(偏光の向きの角度差)が大きくなるにしたがい透過させる光の光量が多くなり、差が90°の光について最も多く(100%とする)透過させる。光変調素子1による旋光角が±θkである場合、空間光変調器は入射光L0を+θk,−θkいずれかの角度に旋光させた2値の光に変調して出射するので、偏光フィルタPFoで正規に取り出される出射光は、偏光フィルタPFoに入射した光の(sin2θk)×100%の光量である。一方、旋光していない出射光も、(sinθk)×100%の光量、すなわち約半分の光量で偏光フィルタPFoを透過して、光変調素子1からの出射光と共に検出器PDに到達する。
このように、空間光変調器(画素アレイ)において光変調素子1が配置された領域(画素有効領域4ef)以外の領域からも光が出射すると、選択画素と非選択画素とのコントラストが低下する。さらに、スピン注入磁化反転素子で構成された光変調素子1は、旋光角θkが小さく光変調度が比較的低いため、検出器PDで所望の選択画素または非選択画素からの出射光を的確に取り出すことが困難になる。そこで、近年、空間光変調器は、当該光変調素子1で光変調した光について、偏光フィルタPFoを透過する絶対量を多くするため、極カー効果でより大きな旋光角θkが得られる垂直磁気異方性を有する光変調素子1を適用している(例えば特許文献2)。そして、空間光変調器は、2次元配列された光変調素子1を備える画素アレイ40上において、画素有効領域4ef以外の領域には塗膜等で光を吸収する光吸収膜を設けて、入出射光を遮光することが一般的である。あるいは、特許文献3のような固体撮像素子を被覆して受光部以外における反射光を抑制する透光性の反射防止膜を設けることもできる。この反射防止膜は、その材料の屈折率と膜厚とから、位相反転させて反射させることで、反射光を減衰させる構成である。
特開2008−83686号公報 特開2010−49043号公報 特開2011−40468号公報
光変調素子の光変調度を高くしても、ノイズとなる非旋光(非変調)の出射光は、変調した2値の光のほぼ中間の偏光成分であるため残存する。また、空間光変調器(画素アレイ)上に光吸収膜を設けると、画素アレイ上に光変調素子の各々の配置および形状に合わせて孔を形成する必要があり、光変調素子と同様に微細な加工となる。反射防止膜を設ける場合も同様に、光変調素子に合わせた形状に加工するか、あるいは、光変調素子上においては位相反転しない膜厚となるように調整する必要がある。
本発明は前記問題点に鑑み創案されたもので、画素に微細な光変調素子を備え、画素有効領域外からの出射光を抑制してコントラストを向上させた空間光変調器を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、本発明者らは、光変調素子同士を絶縁する絶縁材料により、反射防止膜を構成することとし、全体で十数〜数十nm程度の厚さのスピン注入磁化反転素子と同程度の膜厚であっても、屈折率の異なる絶縁材料を積層することで、これらの絶縁材料の界面にて光を多重反射させて減衰させて出射光を抑制することに想到した。
すなわち、本発明に係る空間光変調器は、基板と、入射した光をその偏光方向を特定の方向に変化させて出射する光変調素子およびこの光変調素子に接続された一対の電極を備えた複数の画素と、前記複数の画素から1つ以上の画素を選択する画素選択手段と、この画素選択手段が選択した画素に所定の電流を供給する電流供給手段と、を備えて、前記基板上に2次元配列された前記複数の画素に入射した光を反射させて出射する。そして、空間光変調器は、前記複数の画素において隣り合う前記光変調素子間を絶縁する素子間絶縁層を備え、前記素子間絶縁層が、前記光の入射される側から順に、屈折率の低い絶縁材料からなる低屈折率絶縁層、前記絶縁材料よりも屈折率の高い絶縁材料からなる高屈折率絶縁層の少なくとも2層を積層してなる。
かかる構成により、高屈折率の絶縁層に入射した光は、下面で反射して出射しようとする際にその上の低屈折率の絶縁層との界面で再び反射し、これを繰り返すため、その度に光が吸収されて段階的に減衰し、最終的な出射光の光量が抑制される。そして、空間光変調器において、このような積層構造の絶縁層は光変調素子のない領域に限定して設けられるので、この領域からの出射光のみが抑制され、コントラストが良好となる。
前記光変調素子がスピン注入磁化反転素子であるとき、前記一対の電極は、前記光変調素子の上下に接続され、光の入射される側に接続された一方が透明電極材料を備えて光を透過させ、他方が金属電極材料で形成される。そして、前記素子間絶縁層は、金属電極材料で形成された他方の電極に前記高屈折率絶縁層を積層するように設けられる。また、このような空間光変調器は、前記金属電極材料で形成された電極同士の間を絶縁する電極間絶縁層をさらに備え、この電極間絶縁層は、少なくとも前記光の入射される側に、前記高屈折率絶縁層よりも屈折率の低い絶縁材料からなる層を備えることが好ましい。
あるいは、前記光変調素子が、光の入射される側から磁化自由層、中間層、および磁化固定層の順に積層したスピン注入磁化反転素子構造を備え、前記磁化固定層は同一平面上に分離して互いに反平行な方向の磁化に固定された2つを前記磁化自由層の1つあたりにそれぞれ前記中間層を挟んで積層される構成としてもよい。このとき、前記一対の電極は、金属電極材料で形成され、その一方と他方とを前記光変調素子の2つの磁化固定層の一方と他方とにそれぞれ接続され、前記素子間絶縁層は、前記一対の電極の前記光の入射される側に設けられた一方に前記高屈折率絶縁層を積層するように設けられる。また、このような空間光変調器は、前記光の入射される側に設けられた電極同士の間を絶縁する電極間絶縁層をさらに備え、この電極間絶縁層は、少なくとも前記光の入射される側に、前記高屈折率絶縁層よりも屈折率の低い絶縁材料からなる層を備えることが好ましい。
かかる構成により、光変調素子が微細で薄膜からなるスピン注入磁化反転素子であっても、容易に素子間絶縁層が形成される。そして、素子間絶縁層の高屈折率絶縁層の光の入射側(出射側)に低屈折率絶縁層が積層される一方、反対側には金属電極または金属電極同士を絶縁する屈折率の低い絶縁材料からなる層が設けられるため、高屈折率絶縁層に光が閉じ込められて多重反射することにより、出射光が抑制される。
さらに、前記高屈折率絶縁層は、屈折率をn、厚さをdで表し、入射した光の波長がλ、当該高屈折率絶縁層を透過する光の進行方向の膜面垂直方向に対する角度がαであるとき、n・d・cosα=λ・(2N−1)/8(N=1,2,3,…)が成立することが好ましい。
かかる構成により、空間光変調器は、高屈折率絶縁層における反射回数の異なる出射光同士が相殺されて、出射光が抑制される。
本発明に係る空間光変調器によれば、光変調素子に公知のスピン注入磁化反転素子構造を適用して、容易にコントラストに優れた空間光変調器とすることができる。
本発明の第1実施形態に係る空間光変調器の構成を説明する平面図である。 本発明の第1実施形態に係る空間光変調器を用いた表示装置の模式図であり、図1の部分断面図である。 本発明の第1実施形態に係る空間光変調器の画素の構成を説明する模式図であり、図1の断面図の要部拡大図である。 本発明に係る空間光変調器に入射した光の経路を説明する断面図である。 本発明の第1実施形態に係る空間光変調器の光変調素子の断面図で、磁化反転および光変調の動作を説明する模式図である。 本発明に係る空間光変調器の絶縁層による光の干渉を説明するためのモデルの断面図である。 本発明に係る空間光変調器に絶縁層における光の位相ずれを説明する模式図であり、(a)は固定端反射における1/4波長ずれ、(b)は固定端反射における同位相、(c)は自由端反射における同位相の場合を示す。 本発明に係る空間光変調器に絶縁層における光の位相ずれを説明する模式図であり、(a)は自由端反射における1/4波長ずれ、(b)は固定端反射における1/2波長ずれの場合を示す。 本発明の第1実施形態の変形例に係る空間光変調器の画素の構成を説明する模式図であり、(a)は平面図、(b)は図1の断面図に相当する要部拡大図である。 本発明の第2実施形態に係る空間光変調器の画素の構成を説明する模式図であり、(a)は底面図、(b)は図1の断面図に相当する要部拡大図である。 本発明の第3実施形態に係る空間光変調器の構成を説明する底面図である。 本発明の第3実施形態に係る空間光変調器を用いた表示装置の模式図であり、図11の部分断面図である。 本発明の第3実施形態に係る空間光変調器の画素の構成を説明する模式図であり、図11のC−C断面の要部拡大図である。 本発明の第3実施形態に係る空間光変調器の画素の構成を説明する模式図であり、(a)は図11のD−D断面の要部拡大図、(b)は図11のE−E断面の要部拡大図である。 本発明の第3実施形態に係る空間光変調器の光変調素子の断面図で、磁化反転動作を説明する模式図である。 空間光変調器の画素のサンプルの素子間絶縁層における分光反射率曲線である。
本発明に係る空間光変調器は、画素(空間光変調器による表示の最小単位での情報(明/暗)を表示する手段を指す。)として、入射した光を異なる2値の光(偏光成分)に変調して出射する光変調素子を備える。以下、本発明に係る空間光変調器を実現するための形態について図を参照して説明する。
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態に係る空間光変調器10は、図1および図2に示すように、基板7上に2次元配列された画素4からなる画素アレイ40を備え、さらに画素アレイ40から1つ以上の画素4を選択して駆動する電流制御部90を備える。本実施形態における平面(上面)は空間光変調器10の光の入射面であり、空間光変調器10は画素4(画素アレイ40)に上方から入射した光を反射してその光を変調して上方へ出射する反射型の空間光変調器である。
画素アレイ40は、平面視でY方向(図1における縦方向)に延設されたストライプ状の下部電極2,2,…と、同じくストライプ状で、平面視で下部電極2と直交するX方向(図1における横方向)に延設された上部電極3,3,…と、を備え、下部電極2と上部電極3との交点毎に1つの画素4が形成される。本実施形態では、画素アレイ40は、4行×4列の16個の画素4からなる構成で例示される。なお、下部電極2と上部電極3は、適宜、両者をまとめて電極2,3と称する。そして、画素4のそれぞれは、当該画素4における一対の電極としての下部電極2および上部電極3と、これらの電極2,3に上下から挟まれた光変調素子1を備える。後記するように、本実施形態においては、画素4は、略垂直に光を入射されることから、平面視において光変調素子1の配された領域が画素有効領域4ef(図3参照)となり、この領域から出射した光が光変調する。また、隣り合う光変調素子1,1間は素子間絶縁層5で、下部電極2,2間および上部電極3,3間は絶縁層62,63でそれぞれ埋められている。
図1に示すように、電流制御部90は、下部電極2を選択するX電極選択部92と、上部電極3を選択するY電極選択部93と、これらの電極選択部92,93を制御する画素選択部(画素選択手段)94と、電極2,3に電流を供給する電源(電流供給手段)91と、を備える。これらはそれぞれ公知の手段でよく、光変調素子1を磁化反転させるために適正な電圧・電流を供給するものとする。
次に、本発明の第1実施形態に係る空間光変調器の画素を構成する各要素の詳細を、図1〜3を参照して説明する。なお、図2は、破断線の左側に図1のA−A断面図、右側に図1のB−B断面図を表す。図3は、破断線の左側に図1のB−B断面図、右側に図1のA−A断面図を表す。このように、本実施形態においては、1つの断面図に下部電極2,2間と上部電極3,3間とにおけるそれぞれの絶縁層6(62,63)を示す。
(電極)
下部電極2は、図2に示すように基板7上、光変調素子1の下に配され、図1に示すように縦方向に帯状に延設される。1本の下部電極2は、縦1列に配置された複数の画素4,4,…のそれぞれの光変調素子1に接続される。一方、上部電極3は、光変調素子1の上に配され、横方向に帯状に延設される。1本の上部電極3は、横1行に配置された複数の画素4,4,…のそれぞれの光変調素子1に接続される。したがって、光変調素子1は、平面視で下部電極2と上部電極3の重なる部分に配され、画素4毎に異なる組合せの電極2,3により電流を供給される。上部電極3は、光変調素子1への入射光および出射光を遮らないように、透明電極材料を備える。一方、下部電極2は、導電性に優れた一般的な金属電極材料で形成され、上方(上部電極3側)から光変調素子1を透過して到達した光を反射して再び上方へ出射させる。
下部電極2は、例えば、Cu,Al,Au,Ag,Ta,Cr等の金属やその合金のような一般的な電極用金属材料からなる。そして、スパッタリング法等の公知の方法により成膜、フォトリソグラフィ、およびエッチングまたはリフトオフ法等によりストライプ状に加工される。
上部電極3は、図3に示すように、透明電極材料からなる透明電極31で主に形成され、この透明電極31と光変調素子1との間に光を遮らない程度の膜厚の金属膜32を積層してさらに備える。このように、透明電極材料で形成された電極(配線)においては、当該電極に接続する光変調素子1との間に金属膜を設けることが好ましい。透明電極31と光変調素子1との間に金属膜32を介在させることで、金属電極材料より抵抗が大きい透明電極材料を主とする上部電極3においても、光変調素子1との接触抵抗を低減させて応答速度を上げることができる。
透明電極31は、例えば、インジウム亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide:IZO)、インジウム−スズ酸化物(Indium Tin Oxide:ITO)、酸化スズ(SnO2)、酸化アンチモン−酸化スズ系(ATO)、酸化亜鉛(ZnO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化インジウム(In23)等の公知の透明電極材料からなる。特に、比抵抗と成膜の容易さとの点からIZOが最も好ましい。これらの透明電極材料は、スパッタリング法、真空蒸着法、塗布法等の公知の方法により成膜される。
金属膜32は、例えば、Au,Ru,Ta、またはこれらの金属の2種以上からなる合金等を用いることができ、これらの金属はスパッタリング法等の公知の方法により成膜される。そして、金属膜32とその上の透明電極31とは、互いの密着性をよくして接触抵抗をさらに低減するため、それぞれの材料すなわち金属材料および透明電極材料は、連続的に真空処理室にて成膜されることが好ましい。金属膜32の厚さは、1nm未満であると連続した(ピンホールのない)膜を形成し難く、一方、10nmを超えると光の透過量を低下させるため、1〜10nmとすることが好ましい。
(光変調素子)
光変調素子1は、図3に示すように、上部電極3と下部電極2とに上下で接続させて設けられ、下地膜14、磁化固定層11、中間層12、磁化自由層13、保護膜15の順に積層された構成である。光変調素子1は、磁化が一方向に固定された磁化固定層11および磁化の方向が回転可能な磁化自由層13を、非磁性または絶縁体である中間層12を挟んで備えたCPP−GMR(Current Perpendicular to the Plane Giant Magneto-Resistance:垂直通電型巨大磁気抵抗効果)素子やTMR(Tunnel MagnetoResistance:トンネル磁気抵抗効果)素子等のスピン注入磁化反転素子である。光変調素子1はさらに、下部電極2との密着性や酸化防止等のために、必要に応じて下地膜14や保護層15を備える。これらの各層14,11,12,13,15は、例えばスパッタリング法や分子線エピタキシー(MBE)法等の公知の方法で連続的に成膜されて積層され、電子線リソグラフィおよびイオンビームミリング法等で所望の平面視形状に加工される。光変調素子1は、好適にスピン注入磁化反転するように、平面視で各辺が100〜500nm程度の矩形またはそれに相当する面積となる形状が好ましく、本実施形態においては図1に示すように、光変調素子1は平面視正方形である。また、光変調素子1は画素4毎に1個設けられているが、これに限定されるものではない(第2実施形態(図10)参照)。そして、光変調素子1は、上下に接続された上部電極3と下部電極2を一対の電極として、膜面に垂直方向に正負反転可能に電流を供給される。
磁化固定層11および磁化自由層13は磁性体であり、磁化固定層11は磁化方向が固定されているのに対し、磁化自由層13はスピン注入によって磁化を容易に反転(180°回転)させることができる。そして、画素アレイ40のすべての光変調素子1において、磁化固定層11は磁化を同一方向に固定され、磁化自由層13は共通の一方向またはその反対方向のいずれかの磁化を示す。磁化自由層13がスピン注入磁化反転するのであれば、磁化固定層11、磁化自由層13は、それぞれ面内磁気異方性、垂直磁気異方性のいずれでもよく、例えば一方が面内磁気異方性で、他方が垂直磁気異方性であってもよい。特に磁化自由層13は、容易に磁化方向に平行に近い入射角で光を入射することができて、極カー効果で旋光角θkが大きくなる垂直磁気異方性材料を適用することが好ましい。本実施形態においては、磁化固定層11および磁化自由層13は共に垂直磁気異方性であり、磁化固定層11の磁化は上向きに固定されている。
このような磁化固定層11および磁化自由層13は、垂直磁気異方性を有するCPP−GMR素子やTMR素子等に用いられる公知の磁性材料にて構成することができ、具体的には、Fe,Co,Ni等の遷移金属とPd,Pt,Cuとを繰り返し積層したCo/Pd多層膜のような多層膜、Tb−Fe−Co,Gd−Fe等の希土類金属と遷移金属との合金(RE−TM合金)、L10系の規則合金としたFePt, FePd等が挙げられる。また、磁化固定層11の磁化のみが固定されるように、磁化固定層11は磁化自由層13よりも保磁力が大きくなるように材料を選択したり層を厚く形成される。具体的には、磁化固定層11の厚さは1〜50nmの範囲、磁化自由層13の厚さは1〜20nmの範囲において設計されることが好ましい。さらに磁化自由層13は、入射光の波長において磁気光学効果の大きい材料を選択することが好ましい。例えば、短波長域(400nm近傍)はCo/Pt多層膜、長波長域(700nm近傍)はGd−Fe合金が好適である。
中間層12は、磁化固定層11と磁化自由層13との間に設けられ、光変調素子1がTMR素子であれば絶縁体、CPP−GMR素子であれば非磁性の導体で形成される。光変調素子1をTMR素子構造とする場合、中間層12は、MgO,Al23,HfO2のような絶縁体や、Mg/MgO/Mgのような絶縁体を含む積層膜からなり、その厚さは0.1〜2nmとすることが好ましい。また、光変調素子1をCPP−GMR素子構造とする場合、中間層12は、Cu,Ag,Alのような非磁性金属からなり、その厚さは1〜10nmとすることが好ましい。特に中間層12は、Agを適用して厚さ6nm以上とした場合、光変調素子1に入射した光を高反射率で反射するため、画素有効領域4efから出射する光の量が多くなってコントラストが向上するので好ましい。
下地膜14は、光変調素子1(磁化固定層11)の下部電極2への密着性を得るために必要に応じて設けられ、Ta,Ru,Cu等の非磁性金属材料で形成される。下地膜14の厚さは、1nm未満であると連続した膜を形成し難く、一方、10nmを超えて厚くしても密着性が飽和するため、1〜10nmが好ましく、3〜5nmがより好ましい。ただし、下地膜14は、後記するように素子間絶縁層5を十分な厚さに形成するために厚膜化されてもよい。また、下地膜14にCuを適用したり、あるいはさらにAg,Au等からなる反射膜が積層されてもよい(図示省略)。これらの金属膜は、光変調素子1に入射した光を高反射率で反射するため、画素有効領域4efから出射する光の量が多くなってコントラストが向上するので好ましい。このような反射膜は、十分な効果を得るために、厚さは6nm以上が好ましい。
保護膜15は、光変調素子1の加工時のダメージから磁化自由層13等を保護するために、また特に磁化自由層13が酸化し易いRE−TM合金を含む場合、表面(上面)の酸化を防止するために必要に応じて設けられ、Ta,Ru,Cuの単層、またはCu/Ta,Cu/Ruの2層等の金属膜で形成される。前記の2層の金属膜とする場合は、いずれもCuを磁化自由層13の側(下層)とする。保護膜15は、厚さが1nm未満であると連続した膜を形成し難く、一方、10nmを超えて厚くしても効果がそれ以上には向上しない上、光の透過が妨げられるので好ましくない。したがって、保護膜15の厚さは1〜10nmが好ましく、3〜5nmがより好ましい。
(絶縁層)
画素アレイ40は、図3に示すように、基板7上の下部電極2と同じ高さ領域に設けられて、下部電極2,2間を絶縁する絶縁層62と、上部電極3と同じ高さ領域に設けられて、上部電極3,3間を絶縁する絶縁層63と、を備える(適宜まとめて絶縁層6という)。さらに画素アレイ40は、光変調素子1と同じ積層(高さ)領域に設けられて、隣り合う光変調素子1,1間を絶縁し、かつ画素4内での下部電極2−上部電極3間を絶縁する素子間絶縁層5を備える。これらの絶縁層5,62,63は、光変調素子1の各層や電極2,3と同様にスパッタリング法等で薄膜を厚さの精度よく成膜することができる、二酸化ケイ素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al23)、酸化マグネシウム(MgO)、フッ化マグネシウム(MgF2)、窒化ケイ素(Si−N、主な組成:Si34)のような酸化物や窒化物等が適用できる。ただし、素子間絶縁層5については、光変調素子1にRE−TM合金を備える場合、磁化固定層11や磁化自由層13のRE−TM合金を含む層の側面にSiO2等の酸化物が接触しないように、MgF2,Si−Nのような非酸化物を適用することが好ましい。さらに本発明に係る空間光変調器においては、光変調素子1に入射しない光、すなわち素子間絶縁層5を透過、さらに絶縁層6を透過する光を界面で多重反射させて減衰させるため、光の屈折率の異なる2種以上の材料を積層して形成する。
具体的には、ある絶縁層に対して、光の入出射側すなわち上に相対的に低い屈折率の材料からなる絶縁層を積層する。本実施形態に係る空間光変調器10においては、素子間絶縁層5が、下層に高屈折率絶縁材料からなる高屈折率層51を、その上に低屈折率絶縁材料からなる低屈折率層52を積層して備える。画素アレイ40において光の入出射側から最も浅い(近い)位置の反射面である下部電極2の上面に高屈折率層51を接触させて配し、その上に低屈折率層52を積層することで、図4の左側に太線で示すように、素子間絶縁層5に進行して下部電極2で反射した光は、高屈折率層51から低屈折率層52への界面で再び反射して高屈折率層51内で閉じ込められて多重反射を繰り返すことで、出射光が抑制される。高屈折率層51および低屈折率層52の厚さは、その合計の厚さすなわち素子間絶縁層5の厚さは光変調素子1の全体の厚さにより決定されるが、光の媒質として好適に作用するためにはそれぞれの層51,52が10nm以上であることが好ましい。また、高屈折率層51の厚さは、後記する厚さに設計して、多重反射した光同士を相殺してさらに出射光を抑制することが好ましく、その設計した厚さに応じて低屈折率層52の厚さも決定される。
さらに、素子間絶縁層5の下の下部電極2の配されていない領域すなわち下部電極2,2間に配される絶縁層62は、高屈折率層51に対して相対的に低い屈折率の材料で形成されることが好ましい。これにより、図4の右側に太線で示すように、高屈折率層51から絶縁層62への界面でも光が反射し易く、下部電極2の配されている領域と同様に高屈折率層51内で多重反射を繰り返して出射光が抑制される。このような低屈折率材料の層は、絶縁層62における少なくとも素子間絶縁層5(高屈折率層51)に接触する部分すなわち上部に設けられればよい。また、絶縁層62は、後記の基板7表面の絶縁部71と屈折率が近似する材料を適用した場合、絶縁部71と一体の媒質として作用する(図4参照)。このような、高屈折率層51に対して相対的に低い屈折率の材料で形成され、一体の媒質として作用する絶縁層62および絶縁部71の2層の積層体を、適宜、第2低屈折率層71/62と称する。また、区別のため、素子間絶縁層5の低屈折率層52を、適宜、第1低屈折率層52と称する。
絶縁層5,6に適用する材料の屈折率の高低は相対的なものとする。屈折率の差が小さく互いに近似する透光性材料同士を積層しても、図4における絶縁層63と低屈折率層52のように、光は界面でほぼ直進して透過するため、反射させる効果はほとんどないが、一体の媒質とする場合は好適である。これらの絶縁層5,6は、一般的な光学材料として用いられる公知の誘電体材料を適用できる。低屈折率層52や絶縁層62等に好適な屈折率が低い材料としては、例えばMgF2(屈折率1.38)、SiO2(屈折率1.46)、CaF2(屈折率1.39)、BaF2(屈折率1.49)、LiF(屈折率1.39)、NaCl(屈折率1.49)、KBr(屈折率1.52)、KCl(屈折率1.45)が挙げられ、屈折率1.4以下のものが特に好ましい。一方、高屈折率層51に適用できる屈折率が高い材料としては、屈折率が2以上の材料が好ましく、例えばSi−N(屈折率2.0〜2.6、組成により変化)、TiO2(屈折率2.5)、ZrO(屈折率2.4)が挙げられる。また、絶縁層5,6においては、積層する他の材料との屈折率の差に応じて、Al23(屈折率1.76)やMgO(屈折率1.72)を適用することもできる。さらに絶縁層5,6の各層、特に高屈折率層51の厚さを制御することで、反射光をいっそう抑制することができる(詳しくは後記する)。
(基板)
基板7は、画素4を2次元配列するための土台であり、光変調素子1を製造するための広義の基板であり、公知の基板材料が適用できる。具体的には表面を熱酸化してSiO2膜を形成されたSi基板が好適である。あるいは、透明な基板材料として公知の、GGG(ガドリニウムガリウムガーネット)基板、SiC(シリコンカーバイド)基板、MgO(酸化マグネシウム)基板、Ge(ゲルマニウム)単結晶基板等の絶縁性の基板7A(図10(b)参照)を適用することができる。このように、基板7は、少なくとも表面は絶縁体(絶縁部71)として、上に形成される下部電極2,2間が短絡しないようにする。基板表面の熱酸化膜等の膜厚が不十分であれば、絶縁層6等と同様の絶縁材料を成膜して用いてもよい。基板7の絶縁部71は、後記するように、下部電極2,2間の絶縁層62との合計の厚さを調整することにより、画素アレイ40の下部電極2,2間を進行する光の、基板7の反射部72(例えばSi母材)との界面で反射して出射する光を抑えることが好ましい。
次に、光変調素子の磁化反転の動作を、図5を参照して説明する。なお、図5において下地膜14および保護膜15は図示を省略する。光変調素子1は一般的なスピン注入磁化反転素子であり、逆方向のスピンを持つ電子を注入することにより、磁化自由層13の磁化方向を反転(スピン注入磁化反転、以下、適宜磁化反転という)させて、磁化固定層11の磁化方向と同じ方向または180°異なる方向にする。具体的には、図5(a)に示すように、上部電極3を「+」、下部電極2を「−」にして磁化自由層13側から電流を供給する、すなわち磁化固定層11側から電子を注入すると、磁化固定層11により当該磁化固定層11と逆方向の下向きのスピンを持つ電子が弁別されて下部電極2からは上向きのスピンを持つ電子のみが注入される。この上向きのスピンを持つ電子が注入されることにより、磁化自由層13は磁化固定層11の磁化方向と同じ上向きの磁化を示す。以下、この状態をスピン注入磁化反転素子の磁化が平行である(P:Parallel)という。反対に、図5(b)に示すように、上部電極3を「−」、下部電極2を「+」にして磁化固定層11側から電流を供給する、すなわち磁化自由層13側から電子を注入すると、磁化固定層11により下向きのスピンを持つ電子が弁別されて磁化自由層13に留まる。注入される電子のうち、下向きのスピンを持つ電子のみが留まることにより、磁化自由層13は磁化固定層11の磁化方向と逆の下向きの磁化を示す。以下、この状態をスピン注入磁化反転素子の磁化が反平行である(AP:Anti-Parallel)という。
このように、スピン注入磁化反転素子は、膜面垂直方向に電流を供給されることで磁化自由層13の磁化方向を変化させる(磁化反転させる)ことができるので、一般的に上下に電極材料を積層することで一対の電極2,3を接続する。また、スピン注入磁化反転素子の磁化が平行、反平行いずれかの磁化を示していれば、その磁化を反転させる電流が供給されるまでは、磁化自由層13の保磁力により磁化が保持される。そのため、スピン注入磁化反転素子に供給する電流としては、パルス電流のように、磁化方向を反転させる電流値に一時的に到達する電流を用いることができる。
このようなスピン注入磁化反転素子を光変調素子に適用する場合、1つの偏光成分(偏光の向き)の光を入射する。この光は、磁性体である磁化自由層13で反射して出射すると、カー効果(磁気カー効果)により、その偏光の向きが回転する(旋光する)。さらに、図5(a)、(b)にそれぞれ示すように、磁化が平行、反平行な光変調素子1にそれぞれ入射した光は、磁化自由層13の磁化方向が180°異なるため、同じ大きさの旋光角すなわち磁化自由層13のカー回転角θkで互いに逆方向に回転した2値(+θk,−θk)の偏光成分の光となって出射する。そして、光変調素子1からの出射光は、供給される電流の向きに応じて2値の偏光成分のいずれかの光になることで空間光変調器の画素(光変調素子1)として機能する。
(空間光変調器の光変調動作)
本発明に係る空間光変調器の光変調動作を、図2を参照して、この空間光変調器を用いた表示装置にて説明する。表示装置は、前記した従来のスピン注入磁化反転素子を光変調素子としたものと同様の構成とすればよい。本実施形態に係る空間光変調器10は反射型であり、また、その光変調部となる光変調素子1の磁化自由層13が垂直磁気異方性材料からなり磁化方向が上向きまたは下向きを示すため、表示装置は以下の構成とすることが好ましい。空間光変調器10の画素アレイ40の上方には、画素アレイ40に向けて光(レーザー光)を照射する光源等を備える光学系OPSと、光学系OPSから照射された光を画素アレイ40に入射する前に1つの偏光成分の光(以下、入射光)にする偏光フィルタPFiと、この上方から画素アレイ40に入射した入射光が画素アレイ40で反射して出射した出射光から特定の偏光成分の光を遮光する偏光フィルタPFoと、偏光フィルタPFoを透過した光を検出する検出器PDとが配置される。
光学系OPSは、例えばレーザー光源、およびこれに光学的に接続されてレーザー光を画素アレイ40の全面に照射する大きさに拡大するビーム拡大器、さらに拡大されたレーザー光を平行光にするレンズで構成される(図示省略)。光学系OPSから照射された光(レーザー光)は様々な偏光成分を含んでいるため、この光を画素アレイ40の手前の偏光フィルタPFiを透過させて、1つの偏光成分の光にする。偏光フィルタPFi,PFoはそれぞれ偏光板等であり、検出器PDはスクリーン等の画像表示手段である。
光学系OPSは、平行光としたレーザー光を、画素アレイ40へ照射する。ここで、光変調素子1の磁化自由層13の磁気光学効果は、前記したように光の入射角が磁化自由層13の磁化方向に平行に近いほど大きい。したがって、入射角α0は膜面に垂直すなわちα0=0°とすることが光変調度を最大とする上で望ましいが、このようにすると、出射光の光路が入射光の光路と一致する。そこで、入射角α0を少し傾斜させて(α0>0°)、偏光フィルタPFoおよび検出部PD、光学系OPSおよび偏光フィルタPFiが、それぞれ入射光および出射光の光路を遮らない配置となるようにする。具体的には、入射光の入射角α0は30°以下とすることが好ましい。レーザー光は偏光フィルタPFiを透過して1つの偏光成分の入射光となり、画素アレイ40の上方からすべての画素4に向けて入射する。それぞれの画素4において、入射光は、上部電極3を透過して光変調素子1で反射して、再び上部電極3を透過して当該画素4から出射光として出射する。
出射光は偏光フィルタPFoによって特定の1つの偏光成分の光、ここでは入射光L0に対して+θk旋光した光が遮光され、偏光フィルタPFoを透過した光が検出器PDに入射する。したがって、光変調素子1の磁化が平行(P)である画素4からの出射光Lpは偏光フィルタPFoで遮光されるため、この画素4は暗く(黒く)、検出器PDに表示される。一方、入射光L0に対して−θk旋光した光すなわち光変調素子1の磁化が反平行(AP)である画素4からの出射光Lapは、偏光フィルタPFoを透過して検出器PDに到達するため、この画素4は明るく(白く)検出器PDに表示される。
ここで、入射光L0に対して−θk旋光した光(出射光Lap)の他に、入射光L0に対して旋光しなかった光も偏光フィルタPFoを透過する。このような非旋光の光は、入射光L0が光変調素子1で反射しないで(光変調素子1に入射しないで)光変調素子1,1間すなわち素子間絶縁層5を透過して出射した光であり、画素アレイ40の光変調素子1の配されていない領域から出射する。具体的には、上部電極3,3間および光変調素子1,1間に進入して、下部電極2で反射して前記経路を逆進して出射した光(出射光L1)、上部電極3を透過して光変調素子1,1間および下部電極2,2間に進入してさらに基板7の絶縁部71を透過して、反射部72との界面で反射して前記経路を逆進して出射した光(出射光L2)、上部電極3を透過して光変調素子1,1間に進入して、下部電極2で反射して前記経路を逆進して出射した光(出射光L3)、そして、上部電極3,3間、光変調素子1,1間、下部電極2,2間に進入してさらに基板7の絶縁部71を透過して、反射部72との界面で反射して前記経路を逆進して出射した光(図示省略)が挙げられる。
本発明に係る空間光変調器10は、図4を参照して説明したように、素子間絶縁層5に高屈折率層51を備え、その上に低屈折率層52が積層されることで、高屈折率層51内で光が多重反射するため、当該層内透過時および界面での反射時に、光が吸収されて段階的に減衰し、最終的な出射光の光量が光変調素子1からの出射光よりも小さくなる。さらに多重反射によりいっそう光量を減衰させて0(出射せず)に近付けるため、絶縁層5,6は以下の構成とすることが好ましい。
絶縁層に入射した光の経路について、さらに図4を参照して詳細に説明する。画素アレイ40に所定の入射角で入射した光は、次のように多重反射して出射する。図4に示す断面図においては、上部電極3上すなわち絶縁層63上は、外部(大気)として説明し、また、反射は正反射とする。
図4の左側に示す入射角α0で入射した波長λの入射光L0は、絶縁層63を透過して直進し、さらに素子間絶縁層5の低屈折率層52、高屈折率層51を透過して、下部電極2との界面(下部電極2上面)に到達する。このとき光は、絶縁層63表面(界面)、絶縁層63と低屈折率層52との界面、および低屈折率層52と高屈折率層51との界面をそれぞれ通過する際に、屈折率の変化により屈折して進入する。なお、ここでは、絶縁層63と低屈折率層52は、互いの屈折率が近似する低屈折率材料からなり、一体の媒質として作用するものとし、両者の界面において光はほぼ直進する。ただし、いずれの媒質も外部の大気(屈折率n0=1とする)よりも屈折率が高いので、外部から絶縁層63に進入する入射光L0は表面で入射角α0よりも垂直に近い角度へ屈折する。ここで、絶縁層63等の媒質に進入する角度(膜面垂直方向に対する角度)を進入角という。一方、高屈折率層51は、低屈折率層52に対して屈折率n1がある程度の差を有して高いので、低屈折率層52から高屈折率層51へ進入する光は界面(界面52−51という)にてさらに垂直に近い角度へ屈折し、進入角α1で高屈折率層51を透過して進行する。
下部電極2は光を透過せず、かつ反射率が高いため、下部電極2上面に到達した光は、全反射して高屈折率層51を上方へ進行し、界面52−51に到達する。低屈折率層52は高屈折率層51よりも屈折率が低いため、低屈折率層52から高屈折率層51への進行と異なり、界面52−51において光の一部が反射して高屈折率層51を再び下方へ進行する。前記光の残りの一部は界面52−51を屈折して通過し、低屈折率層52を上方へ進行し、さらに絶縁層63を透過して外部へ出射する(出射光L11)。一方、前記界面52−51で反射した光は、再び下部電極2で反射して界面52−51に到達する。そして、界面52−51にて通過して上方へ出射する光と(出射光L12)、反射する光とに再び分岐する。
したがって、素子間絶縁層5を透過し、下部電極2で反射して出射した光(出射光L1とする)は、高屈折率層51において下部電極2および低屈折率層52のそれぞれとの界面で反射を1回または2回以上繰り返した光が混在する。図4の左側では、下部電極2で1回および2回反射した光を出射光L11,L12として示す。出射光L11,L12,…は界面52−51で分岐した光であるので、それぞれは元の入射光L0よりも光量が小さく、出射光L1はこれらの出射光L11,L12,…のすべてが合成された光である。
次に、図4の右側に示すように、光が下部電極2で反射しない、すなわち下部電極2,2間の絶縁層62に到達して出射する場合について説明する。図4の左側と同様に入射角α0で入射した波長λの入射光L0は、絶縁層63、素子間絶縁層5の低屈折率層52、高屈折率層51を、それぞれの界面で屈折しながら透過、進入し、絶縁層62との界面(界面51−62という)に到達する。絶縁層62は下部電極2と異なり透光性を有し、また高屈折率層51よりも屈折率n2が低い(n1>n2>1)材料からなるものとする。そのため、図4の左側と異なり、光の一部は界面51−62を屈折して通過し、残りの一部のみが反射して高屈折率層51を上方へ進行し、下部電極2で反射した光(図4の左側参照)と同様に界面52−51で通過と反射とに分岐して、低屈折率層52、絶縁層63を透過して出射し(出射光L21)、あるいは再び高屈折率層51を下方へ進行して界面51−62で反射してから出射する(出射光L22)。
一方、界面51−62を通過した光は、このとき水平に近い角度へ屈折して進入角α2(α0>α2>α1)で絶縁層62を透過して、さらに下方へ進入して基板7の絶縁部71へ進入する。ここでは、絶縁層62と絶縁部71は、互いの屈折率が近似する低屈折率材料からなり、一体の媒質(第2低屈折率層71/62)として作用するものとし、両者の界面において光は直進する。そして、光は、基板7の反射部72との界面で全反射して、絶縁部71を上方へ進行し、さらに絶縁層62、高屈折率層51、低屈折率層52、絶縁層63を透過して出射する(出射光L20)。なお、界面52−51において、出射光L22と同様に光の一部は反射して高屈折率層51を再び下方へ進行する。したがって、光が下部電極2,2間に進入する場合は、下方から界面52−51に到達する際に加えて、上方から界面51−62に到達する際にも分岐する。
したがって、素子間絶縁層5を透過して、下部電極2,2間に到達して絶縁層62や基板7(反射部72)で反射して出射した光(出射光L2とする)は、高屈折率層51において絶縁層62および低屈折率層52のそれぞれとの界面、ならびに基板7の絶縁部72で反射を1回または2回以上繰り返した光が混在する。図4の右側では、界面51−62で1回および2回反射した光を出射光L21,L22として、界面51−62を透過して反射部72で反射した光を出射光L20として示す。出射光L21,L22,L20は界面52−51や界面51−62で分岐した光であるので、それぞれは元の入射光L0よりも光量が小さく、出射光L2はこれらの出射光L21,L22,…,L20,…のすべてが合成された光である。
ここで、出射光L1は出射光L11,L12,…が同位相の光であるとき、出射光L2は出射光L21,L22,…,L20,…が同位相の光であるとき、それぞれが互いに干渉により強め合うことになって、光量が相加的に増大し、理論上、入射光L0と同じ光量となる。このような場合、多重反射による光の減衰は媒質や界面の吸収に留まり、効果が小さい。したがって、それぞれの出射光が同位相の光とならないことが好ましい。そこで、出射光L11と出射光L12、出射光L21と出射光L22が互いに同位相の光となる条件を検証する。
図6を参照して、高屈折率層51での1次反射による光の挙動をモデル化して説明する。図6では、高屈折率層51を模擬した透光性の媒質層M(屈折率n>1)が反射層Sに積層されている。また、媒質層M上の大気(屈折率n0=1とする)が低屈折率層52を模擬する。まず、図4の左側の出射光L11と出射光L12が同位相の光となる条件を検証するために、反射層Sが下部電極2を模擬するとして説明する。
波長λの光を媒質層Mへ、上方の大気中の点A,Hからそれぞれ入射角α0(0°≦α0<90°)で入射して、媒質層Mを透過して反射層Sとの界面で反射して、大気中の点Gへ出射した光について、反射層Sで1回反射した光(経路HDEFG)と、媒質層Mから大気中へ出射せずに表面で1回反射して再び反射層Sで反射した光(経路ABCDEFG)とが、出射光FGにおいて干渉するものとする。反射層Sで1回反射した光は出射光L11を、2回反射した光は出射光L12を模擬する。なお、ここでは、光の媒質層M等への吸収による減衰はないものとする。
2つの光の経路は、経路DEFGにおいて共通しているので、出射光FGにおいて干渉するということは、媒質層Mにおける透過光DE(経路ABCDEFGにおいては反射光DE、経路HDEFGにおいては屈折光DE)においても干渉する。2つの入射光AB,HDは、点B,Iにそれぞれ到達したとき、大気中の波面BIにおいて同位相である。そして、入射光ABが媒質層Mに進入して点Jに到達したとき、ならびに入射光HDが媒質層Mの表面の点Dに到達したとき、媒質層M中の波面JDにおいて同位相となる。この入射光HDと媒質層Mにおける屈折光BCとの位相差をもたらす道のり(経路長)の差をφとすると、φ=|JC|+|CD|である。点Dから下へ延長した垂線と屈折光BCの延長線との交点をQと表すと、|CD|=|CQ|より、φ=|JQ|=|DQ|・cosαで表せ、媒質層Mの厚さをdとすると|DQ|=2dより、φ=2d・cosαで表せる。αは媒質層Mにおける透過光の進入角で、n・sinα=sinα0から算出される。
また、低屈折率媒質からの光の高屈折率媒質との界面での反射は固定端反射となるので、媒質層Mから反射層Sとの界面で反射した光CDは光BCから位相がπ(半波長分)だけずれる。一方、高屈折率媒質からの光の低屈折率媒質との界面での反射は自由端反射となるので、媒質層Mから大気との界面(媒質層Mの表面)で反射した光DEは光CDから位相がずれない。したがって、経路ABCDE(経路ABCDEFG)の光と、経路HDE(経路HDEFG)の光とでは、反射による位相の変化が半波長分ずれたものとなる。
これらから、経路長の差φが媒質層Mでの波長λn(=λ/n)の半分ずれた場合、すなわちφ=(N−1/2)・λnの場合に、経路ABCDEと経路HDEの光のそれぞれの透過光DEは同位相となる(N:自然数)。同位相の2つの光DE,DEは互いに干渉により強め合うことになって、出射光FGは光量が相加的に増大して最大となる。このとき、φ=2d・cosα=(N−1/2)・λnより、下記の条件式(1)が成立する。
n・d・cosα=(2N−1)/4・λ ・・・式(1)
このとき、媒質層M、反射層Sを図4の左側に示す高屈折率層51、下部電極2にそれぞれ当てはめると、図7(b)に示すように、高屈折率層51内で、下部電極2および界面52−51で多重反射しながら同位相の光が往復することになり、出射光L11,L12,…のすべてが同位相の光となって干渉により強め合う。一方、経路長の差φが整数倍(N倍)の場合、すなわちφ=N・λnの場合には、固定端反射の回数の差(有無の違い)により2つの光DE,DEが相殺するため、光量が0となる。このとき、下記の条件式(2)が成立する。
n・d・cosα=N/2・λ ・・・式(2)
したがって、出射光FGを図4の左側に示す出射光L1に当てはめてその光量を抑えるためには、条件式(1)の成立を避けることが好ましく、さらに条件式(2)が成立するような構成とすることが最も好ましいことになる。
しかし、条件式(2)が成立するような構成とするためには、媒質層Mの厚さdをある程度大きくする必要がある。ここで、厚さdが最小になるのは、条件式(2)においてN=1であり、媒質層Mの屈折率nが高く、入射光は波長λが短く、cosαが最大値1すなわち入射角αが0°の場合である。例えば、媒質層Mを比較的高屈折率の材料としてn=2.5、空間光変調器において短波長のλ=400nmの入射光とした場合、厚さdは80nmとなる。このような厚さの高屈折率層51とすると、光変調素子1の全体の厚さを超え得るため、さらに低屈折率層52を積層した素子間絶縁層5として光変調素子1,1間に設けることが困難である。
ここで、図4の右側の出射光L21と出射光L22が同位相の光となる条件を検証するために、反射層Sを下部電極2から絶縁層62に置き換えて模擬し、経路HDEと経路ABCDEの光のそれぞれの透過光DEの位相を比較する。絶縁層62は高屈折率層51よりも屈折率が低いため、媒質層Mから反射層Sとの界面では自由端反射となり、反射した光CDは光BCから位相がずれない。したがって、条件式(2)が成立するとき、媒質層M、反射層Sを図4の右側に示す高屈折率層51、絶縁層62にそれぞれ当てはめると、図7(c)に示すように、高屈折率層51内で、界面51−62および界面52−51で多重反射しながら同位相の光が往復することになり、出射光L21,L22,…のすべてが同位相の光となって干渉により強め合う。一方、条件式(1)が成立するとき、出射光L21と出射光L22は位相反転して相殺される。このように、高屈折率層51を透過した光は、下部電極2で反射するか絶縁層62(界面51−62)で反射するかによって、反射光の干渉と相殺が逆転する。
出射光L1,L2は、高屈折率層51を共通の媒質層Mとして、屈折率n1および厚さd1が一致するため、条件式(1)、(2)のいずれも成立しないことが好ましい。すなわち、高屈折率層51は、進入角をα1として、屈折率n1および厚さd1が下式(3)となることが好ましい。
1・d1・cosα1≠N/4・λ ・・・式(3)
さらに、条件式(1)、(2)の中間として、経路ABCDEFGと経路HDEFGとの経路長の差φが媒質層Mでの波長λnの1/4(π/2)の場合、すなわちφ=(N±1/4)・λnの場合の位相差を検証する。このとき、高屈折率層51について下記の条件式(4)が成立する。
1・d1・cosα1=(2N−1)/8・λ ・・・式(4)
条件式(4)が成立する場合の媒質層M、反射層Sを、図4の左側に示す高屈折率層51、下部電極2にそれぞれ当てはめると、経路長の差φがπ/2(波長λnの1/4)ずれ、さらに固定端反射の回数の差によりπ(半波長)ずれて、結果として図7(a)に示すように、出射光L11と出射光L12は位相が1/4波長ずれる。さらに下部電極2で固定端反射をした出射光L13は、出射光L11と位相が半波長ずれるため、位相反転して相殺される。
同様に、媒質層M、反射層Sを図4の右側に示す高屈折率層51、絶縁層62にそれぞれ当てはめた場合は、出射光L21と出射光L22の位相差は経路長の差φによるずれのみであるので、図8(a)に示すように1/4波長ずれる。さらに界面51−62で自由端反射をした出射光L23は、出射光L21と位相が半波長ずれるため、位相反転して相殺される。したがって、図4の左側に示す下部電極2、右側に示す下部電極2,2間(絶縁層62)のいずれに光が到達した場合も、光が高屈折率層51内で2往復する毎に位相反転して相殺されるため、合成された出射光L1,L2は減衰して光量が0に近付く。
高屈折率層51における進入角α1はn1・sinα1=sinα0から算出されるので、式(4)が成立するためには、入射光の波長λおよび入射角α0に応じて、高屈折率層51の屈折率n1および厚さd1を設計すればよい。ここで、高屈折率層51は、全体の厚さが10nm程度から数十nmの光変調素子1と同じ高さ領域に設けられる素子間絶縁層5の一部の層であるため、厚膜化は困難である。式(4)においてN=1のとき、厚さd1が最小のλ/(8n1・cosα1)となる。一方、厚さd1が特に大きくなる条件として、入射光L0を、光変調素子1の磁気光学効果が損なわれない程度に傾斜させた入射角α0=30°とし、さらに波長λを空間光変調器において最長とされる780nmとして、高屈折率層51が屈折率n1=2.0とする。この場合、sinα1=0.25よりcosα1≒0.968となり、厚さd1は約50nmとなる。
この程度の厚さd1の高屈折率層51であれば、素子間絶縁層5の一部として光変調素子1,1間に低屈折率層52と共に設けることができ、また厚さの精度よく成膜することが容易である。また、図3に示す光変調素子1の下地層14を厚膜化したり、下部電極2を光変調素子1の接続領域において底上げした構造として、素子間絶縁層5を光変調素子1よりも厚く形成できるようにしてもよい。高屈折率層51について、屈折率n1のより高い絶縁材料を選択すれば、厚さd1を小さく(薄く)することができる。また、入射光L0の波長λが短い場合も厚さd1が小さくなり、さらに略垂直で入射した(入射角α0≒0°)場合は、α1<α0よりα1≒0°であり、cosα1≒1と近似されて、厚さd1が最小となる。
さらに図6を参照して、図4の右側の出射光L21と出射光L20が同位相の光となる条件を検証する。この場合は、高屈折率層51から界面51−62で反射した出射光L21と、界面51−62を通過して基板7の反射部72で反射した出射光L20とを比較する。したがって、図6の反射層Sは反射部72を、媒質層Mは絶縁層62および基板7の絶縁部71の積層体である第2低屈折率層71/62を模擬し、また媒質層M上の大気が高屈折率層51を模擬する。したがって、図6における表示と異なり、媒質層Mと大気との屈折率の高低が逆であり、媒質層Mにおける進入角αは入射角(大気における進入角)α0よりも大きくなる。
波長λの光を媒質層Mへ、上方の大気中の点A,Hからそれぞれ入射角α0で入射して、媒質層Mを透過して反射層Sとの界面で反射した光(経路ABCDK)と、媒質層Mの表面で反射した光(経路HDK)とが、出射光DKにおいて干渉するものとする。反射層Sで反射した光は出射光L20を、媒質層Mの表面で反射した光は出射光L21を模擬する。
図6より、図4の左側の出射光L11と出射光L12との位相差と同様に、位相差をもたらす経路長の差φは、φ=2d・cosαで表せる。また、経路ABCDKについて、媒質層Mから反射層Sとの界面で反射した光CDは、固定端反射により光BCから位相がπ(半波長分)だけずれるのに対し、経路HDKについて、媒質層Mの表面で反射した光DKは入射光HDから位相がずれない。したがって、経路ABCDKの光と、経路HDKの光とでは、反射による位相の変化が半波長分ずれたものとなる。このことから、出射光L11と出射光L12との位相と同様に、条件式(1)が成立するとき、経路ABCDKと経路HDKの光のそれぞれの出射光DK,DKは同位相となって干渉により強め合う。一方、条件式(2)が成立するとき、2つの出射光DK,DKが相殺するため、光量が0となる。
条件式(2)より、絶縁層62および基板7の絶縁部71の屈折率をn2、合計の厚さをd2とし、光の進入角をα2(n2・sinα2=sinα0)で表したとき、下記条件式(5)が成立することが好ましく、このとき、図8(b)に示すように出射光L21と出射光L20は1/2波長ずれるため相殺する。
2・d2・cosα2=N/2・λ ・・・式(5)
式(5)は絶縁部71と絶縁層62の屈折率が同値(n2)の場合である。ここで、絶縁部71と絶縁層62について、それぞれの屈折率がn21,n22である場合は、光の進入角をα21,α22(n21・sinα21=n22・sinα22=sinα0)で表し、前記条件式(5)の左辺に下式(6)を導入して、それぞれの厚さd21,d22を設計すればよい。なお、屈折率n21,n22は、基板7の絶縁部71および絶縁層62が一体の媒質(第2低屈折率層71/62)として作用する程度に互いに近似した値とする。
21・d21・cosα21+n22・d22・cosα22≒n2・d2・cosα2 ・・・式(6)
このように、絶縁層62および基板7の絶縁部71を、屈折率が高屈折率層51よりも十分に低くかつ互いに近似した材料として、厚さを設計することにより、下部電極2,2間を進行する光についても、出射光を抑制することができる。なお、例えば絶縁層62の厚さd22が下部電極2の厚さにより決定される場合は、式(5)、(6)が成立するように絶縁部71の厚さd21を設計すればよい。
ただし、高屈折率層51が条件式(4)を満足していれば、界面51−62で反射した出射光L21,L22,…が1/4波長ずつ位相がずれた光であるため、これらの出射光から分岐して界面51−62を通過した出射光L20等も同様に1/4波長ずつ位相がずれるために相殺することになる。すなわち、絶縁層62および基板7の絶縁部71について条件式(5)が成立せず、出射光L21と出射光L20が互いに位相反転しなくても、合成された出射光L2は抑制された光量となる。
また、界面51−62で光の多くを反射させて高屈折率層51内での多重反射により減衰させるために、さらには高屈折率層51が条件式(4)を満足して、界面51−62で反射する光を下部電極2での反射する光と同様に相殺させるためには、高屈折率層51と接触する絶縁層62の少なくとも上層の厚さ(深さ)10nm程度について、低屈折率であればよい。すなわち絶縁層62の全体、さらには基板7の絶縁部71を一体の低屈折率の媒質としなくてよい。例えば、絶縁層62について、上層(絶縁層62sと称する)のみを低屈折率材料で形成し、この絶縁層62sの下に高屈折率材料からなる層を備える積層構造としてもよい(図示せず)。あるいは、絶縁層62は低屈折率材料で、絶縁部71は高屈折率材料で、それぞれ形成されてもよい。
このように絶縁層62または基板7の絶縁部71に高屈折率の層を備える場合は、係る層を、素子間絶縁層5の高屈折率層51と同様に屈折率等に基づいて厚さを設計することにより、絶縁層62を透過する光を相殺させて出射光をさらに抑制することができる。具体的には、条件式(2)の成立を避け、条件式(4)または条件式(1)が成立することが好ましく、反射部72上に形成される層については、条件式(1)の成立を避け、条件式(4)または条件式(2)が成立することが好ましい。また、絶縁層62さらには基板7の絶縁部71は全体を十分に厚く設けることができるので、前記の高屈折率の層を、低屈折率の層を挟んで2層以上備える積層構造としてもよい。
界面51−62で光を反射させない、すなわち絶縁層62または絶縁層62における上層(絶縁層62s)を高屈折率層51に対して低屈折率としない構成とすることもできる。例えば、絶縁層62sを高屈折率層51と屈折率が近似するまたは同一の材料で形成して、低屈折率材料からなる層に積層して絶縁層62とする(図示せず)。絶縁層62sを高屈折率層51と一体の高屈折率の媒質の層62s/51として光を多重反射させて減衰させ、さらに層62s/51の合計の厚さについて条件式(2)の成立を避け、条件式(4)または条件式(1)が成立するように設計することにより、下部電極2,2間に進入する光が相殺されて出射光を抑制することができる。さらに、絶縁層62および基板7の絶縁部71の全体を高屈折率層51と屈折率が近似するまたは同一の材料で形成して、高屈折率層51と一体の高屈折率の媒質の層71/62/51としてもよい。この場合は、層71/62/51を透過した光が基板7の反射部72で反射するので、層71/62/51の合計の厚さについて条件式(1)の成立を避け、条件式(4)または条件式(2)が成立するように設計すればよい。
あるいは、絶縁層62sまたは絶縁層62を高屈折率層51よりも屈折率がさらに高い材料で形成し、絶縁層62s(または絶縁層62)内で光を多重反射させる構成としてもよく、この場合は、絶縁層62s(または絶縁層62)単層について条件式(4)または条件式(1)が成立するように厚さを設計することにより反射光が相殺される。
また、基板7が反射部72を備えない、すなわち全体が透明な基板7A(図10(b)参照)を適用し、裏面(下面)全体に光を吸収するカーボン等の公知の黒色膜からなる光吸収膜を被覆して、界面51−62を通過した光が反射して上方へ出射しない構成としてもよい(図示せず)。さらに、絶縁層62および基板7Aについて、高屈折率層51と近似するまたはより高屈折率の材料を適用した場合は、下部電極2,2間に進入する光が界面51−62等で反射することなく基板7A裏面に到達するため、出射光が抑制される。
(変形例)
図9を参照して、第1実施形態の変形例に係る空間光変調器について説明する。なお、図9(b)は、破断線の左側が図1のB−B断面、右側が図1のA−A断面にそれぞれ相当する。本変形例に係る空間光変調器は、画素4A以外、すなわちその配列(画素アレイ40A)および電流制御部90は、前記第1実施形態に係る空間光変調器10と同様の構成であるので、説明を省略する。また、画素4Aにおいても第1実施形態と同じ要素については同じ符号を付し、説明を省略する。
本変形例においては、光を透過させる上部電極3Aについて、配線部分として金属電極33は下部電極2と同様に電極用金属材料で形成して、光変調素子1Aと平面視で重なる領域に孔を形成し、この孔の内部のみに透明電極31を設けている。このような電極3Aとすることで、低抵抗の金属材料を用いて光変調素子1Aに光を入射することができるので、配線抵抗による電圧降下を抑えて省電力化および画素間の動作ばらつきを低減できる。なお、金属電極33のように光の入出射側に設けられる電極に金属材料を備える場合は、その表面(上面)に、例えば第1実施形態にて基板裏面に被覆した光吸収膜を形成して、入射光の反射を抑えることが好ましい(図示省略)。光吸収膜は、金属電極33と同じパターンすなわち金属電極33上に限定して設ける場合、カーボン等の導電性材料からなる黒色膜を適用することができる。あるいは、特許文献3のような透光性の反射防止膜を設けてもよい。
また、このような上部電極3Aとすることで、非旋光の光は必ず上部電極3A,3A間(絶縁層63A)を通過するため、図9(b)に示すように、絶縁層63Aを素子間絶縁層5Aの一部とすることができる。したがって、光変調素子1Aの全体の厚さが条件式(4)を満足する高屈折率層51の厚さd1よりも薄くても、その上の低屈折率層52と共に備えることができる。
さらに、光変調素子1Aは、その全体を図9(a)に示す同じ平面視形状(正方形)に成形せず、図9(b)に示すように、最下層である磁化固定層11Cを下部電極2と同一の平面視形状とすることができる。同じ下部電極2に接続する光変調素子1A,1A,…同士であればこのように磁化固定層11Cを共有化してもよく、導電体である磁化固定層11Cは下部電極2と一体として電極の一方(配線)としても作用する。したがって、下部電極2,2間の絶縁層62Aは、下部電極2と磁化固定層11Cの合計厚さに形成される。光変調素子1Aをこのような構成とすることで、磁化固定層11Cの面積が大きくなり、保磁力を大きくすることができる。
光変調素子1Aにおいては、当該光変調素子1A,1A間のみを絶縁する絶縁層51aが形成される高さ領域は、磁化固定層11Cの上面から光変調素子1Aの上面(保護膜15)までの狭い(薄い)範囲に限定される。しかし、前記した通り、本変形例においては絶縁層63Aを素子間絶縁層5Aの一部とすることができるので、十分な厚さの高屈折率層51を備えることができる。なお、スピン注入磁化反転素子としては、磁化自由層13が積層された領域に限定されるので、磁化反転には影響せず、第1実施形態における光変調素子1と同様に動作させることができる(図5参照)。本変形例では、磁化固定層11Cのみを下部電極2と同一の平面視形状としたが、さらに中間層12も同形状としてもよい(図示せず)。
このような構造の光変調素子1Aを配列した画素アレイ40Aは、例えば、下部電極2用の金属電極材料および光変調素子1Aの各層の材料を成膜し、下部電極2の平面視形状に加工して、下部電極2,2間に絶縁層62Aを埋めるように成膜した後、光変調素子1Aの平面視形状に加工して、絶縁層51aを成膜して製造することができる。あるいは、下部電極2および磁化固定層11Cをストライプ状に形成した後、中間層12および磁化自由層13を光変調素子1Aの1個ずつ(正方形)に形成して製造することもできる。
光変調素子1,1Aは、磁化固定層11および磁化自由層13を面内磁気異方性としてもよい。この場合、磁化固定層11および磁化自由層13は、面内磁気異方性を有するCPP−GMR素子やTMR素子等に用いられる公知の磁性材料にて構成することができ、具体的にはNi,Fe,Coから選択される遷移金属やNi−Fe,Ni−Fe−Mo,Co−Cr,Co−Fe,Co−Fe−B等の遷移金属合金、あるいはCo−Pt等のPd,Pt,Cuとの合金が挙げられる。さらに磁化固定層11については、FM/PtMn、FM/Ru/FM/PtMn(シンセティックピン層、積層フェリ構造)のような多層膜、さらにIrMn等の磁化固着層を上層に設けたFM/IrMn、FM/Ru/FM/IrMn、ZnO:Mn、ZnO:Mn1-XFeX、ZnO:Cr1-XMnX等のZnOを母体とするもの、III-V族化合物半導体を母体とするもの、TiOを母体とするもの、II−VI族化合物半導体を母体とするものが挙げられる。磁化自由層13については、FM/Ru/FM(シンセティックフリー層、積層フェリ構造)、ZnO:Mn、ZnO:Mn1-XFeX、ZnO:Cr1-XMnX等のZnOを母体とする磁性半導体、III-V族化合物半導体やII−VI族化合物半導体を母体とするものが挙げられる。
このような面内磁気異方性の光変調素子1(1A)を備える空間光変調器において、磁化固定層11の磁化は画素アレイ40のすべての光変調素子1において面内の一方向に固定され、磁化自由層13の磁化は前記一方向と平行または反平行となる。そして、高い磁気光学効果を得るために、この磁化方向により近付けて入射光を画素アレイに入射することが好ましいが、面内に平行に近づけすぎるとすべての画素に入射光を入射することが困難になるため、入射角α0が80°程度以内となるようにする。したがって、光変調素子1が面内磁気異方性を有する空間光変調器においては、入射角α0を30°〜80°程度の範囲とすることが好ましく、表示装置に用いる際には入射光および出射光のそれぞれの光路に合わせて、図2に示すような光学系OPSや偏光フィルタPFi,PFo等が配置される(図示省略)。
以上のように、第1実施形態およびその変形例に係る空間光変調器によれば、公知のスピン注入磁化反転素子を光変調素子とし、当該光変調素子同士を絶縁する絶縁材料の積層構造を規制することで、光変調素子の微細パターンに対応した光吸収膜等の遮光手段を設けなくても、容易にコントラストを向上させた空間光変調器とすることができる。
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態に係る空間光変調器は、図10(b)に示すように、光を透過する基板7A上に画素4Bを2次元配列した画素アレイ40Bを備え、基板7A側(図10(b)における下)から光を入射する反射型の空間光変調器である。なお、図10(b)は、破断線の左側が図1のB−B断面、右側が図1のA−A断面にそれぞれ相当する。本実施形態に係る空間光変調器は、表示装置に用いる際には、後記の第3実施形態に係る空間光変調器10C(図12参照)と同様に、画素アレイ40Bの下方に光学系OPS等が配置される(図示省略)。したがって、画素アレイ40Bは、図3に示す第1実施形態に係る空間光変調器10の画素アレイ40を上下(表裏)反転した構造であり、下部電極3Bを透明電極として光を透過させ、上部電極2Bを金属電極として入射した光を反射させて下方へ出射する。また、図10(a)に示すように、1つの画素4Bは、平面視長方形の光変調素子1Bを短辺方向に2個並べて配置して備える。本実施形態に係る空間光変調器は、画素4Bの配列(4行×4列)および電流制御部90は、前記第1実施形態に係る空間光変調器10と同様の構成であるので、説明を省略する。また、画素4Bにおいても第1実施形態と同じ要素については同じ符号を付し、説明を省略する。
(電極)
上部電極2Bは、第1実施形態における下部電極2と同様に、一般的な電極用金属材料で形成される。一方、下部電極3Bは、第1実施形態における上部電極3と同様に、透明電極材料からなる透明電極31Bで主に形成され、この透明電極31Bと光変調素子1Bとの間に光を遮らない程度の膜厚の金属膜32Bを積層してさらに備える。
透明電極31Bは、第1実施形態における上部電極3の透明電極31と同様に公知の透明電極材料を適用できるが、特にITO、ガリウム−酸化亜鉛(Gallium Zinc Oxide:GZO)、酸化アルミニウム−酸化亜鉛(Aluminum oxide - Zinc Oxide:AZO)等の結晶性の透明電極材料が好ましい。結晶性材料を適用することで、加熱成膜または成膜後のポストアニールにより抵抗を低減することができる。これらの透明電極材料は、高温にてスパッタリング法や真空蒸着法等の公知の方法により成膜され、あるいは室温等の低温(無加熱)にて前記方法や塗布法等により成膜された後にポストアニールを施すことにより、抵抗を低減することができる。そして、フォトリソグラフィおよびエッチング等により下部電極3Bの形状すなわちストライプ状に加工される。
金属膜32Bは、第1実施形態における上部電極3の金属膜32と同様の金属材料および膜厚としてスパッタリング法等の同様の方法により成膜される。ただし、金属膜32Bとその上の層すなわち光変調素子1Bの最下層である磁化自由層13との密着性をよくして接触抵抗をさらに低減するため、金属膜32Bとなる金属膜は、磁化自由層13となる磁性材料と連続的に真空処理室にて成膜されることが好ましい。すなわち、金属膜32Bは、第1実施形態における光変調素子1の下地膜14を兼用するといえる。また、金属膜32Bは、金属膜32と同様に透明電極31Bと同じすなわち下部電極3Bの平面視形状に加工されてもよいが、光変調素子1Bと共に加工されて同じ平面視形状とすることが好ましい。このような構成であれば、画素有効領域4ef外において透明電極31Bを透過した入射光が、金属膜32Bで反射しないので素子間絶縁層5Bまで進行し易く、効率的に素子間絶縁層5Bで減衰させることができる。
本実施形態における光変調素子1Bは、光変調素子1と同様のスピン注入磁化反転素子であり、平面視形状を長方形として、1つの画素4Bに2個を備える。このような構成とすることで、光変調素子1Bの1個は磁化反転し易い小さな面積で、画素4Bにおける画有効領域4efを広くすることができる。また、光変調素子1Bは、基板7A側から光を入射されるため、磁化固定層11と磁化自由層13の積層順を入れ替えて、光の入射側に磁化自由層13を備える。したがって、光変調素子1Bの磁化反転動作は、第1実施形態に係る光変調素子1と同様であるが、磁化固定層11と磁化自由層13の積層順が逆であるので、上部電極2Bと下部電極3Bの「+」、「−」は逆となる。
また、前記した通り、下部電極3Bの金属膜32Bが光変調素子1Bの下地膜を兼用するが、別途下地膜を形成してもよい。ただし、光の透過を妨げないように、厚膜化せず、比較的透過率の高い金属膜とすることが好ましい。一方、保護膜15Bは、光変調素子1の下地膜14と同様に、Ag膜のような反射膜を積層することが好ましく、また、高屈折率層51を設けるために厚膜化して上部電極2Bの一部としてもよい。
(絶縁層)
第2実施形態に係る空間光変調器は、画素アレイ40Bの基板7A側が光の入出射側になるため、光変調素子1B,1B間に設ける素子間絶縁層5Bは、基板7A側から低屈折率層52、高屈折率層51の順に積層する。また、上部電極2B,2B間を絶縁する絶縁層62Bは、その少なくとも素子間絶縁層5B(高屈折率層51)に接触する部分すなわち下部に、高屈折率層51よりも低い屈折率の絶縁材料を備える。それぞれの絶縁層51,52,62B,63の材料は、第1実施形態において挙げた材料から屈折率に応じて選択すればよい。
基板7Aは、第1実施形態にて説明した公知の透明な基板材料を適用することができる。なお、上部電極2B上すなわち絶縁層62B上には、全面(上面全体)に、図示しない絶縁膜および光吸収膜を被覆して、高屈折率層51から絶縁層62Bへ透過した光を反射させない構成とすることが好ましい。あるいは、絶縁層62Bと屈折率が近似する絶縁膜と金属膜からなる反射膜とを積層して、絶縁層62Bおよび前記絶縁膜の屈折率と膜厚を制御して、反射膜から好適に位相反転させて光を下方へ反射させる構成としてもよい。すなわち、絶縁層62Bが第1実施形態における絶縁層62に、絶縁膜および反射膜が基板7の絶縁層71および反射部72に、それぞれ相当する。
以上のように、第2実施形態に係る空間光変調器によれば、積層順序を変えて透明基板の側から光を入射する態様としても、第1実施形態と同様にコントラストを向上させた空間光変調器とすることができる。
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態に係る空間光変調器10Cは、図11および図12に示すように、光を透過する基板7A上に2次元配列された画素4Cからなる画素アレイ40Cを備え、さらに画素アレイ40Cから1つ以上の画素4Cを選択して駆動する電流制御部90を備える。なお、図12においては、破断線の左側に図11のD−D断面図、右側に図11のC−C断面図を表す。本実施形態においては、第2実施形態と同様に、底面(下面)が空間光変調器10Cの光の入射面であり、空間光変調器10Cは画素4C(画素アレイ40C)に下方から入射した光を反射してその光を変調して下方へ出射する反射型の空間光変調器である。また、空間光変調器10Cの電流制御部90は、第1実施形態に係る空間光変調器10のものと同様の構成であるので、説明を省略する。
第3実施形態の画素4Cに備える光変調素子1Cは、デュアルピン構造のスピン注入磁化反転素子(例えば特開2010−60748号公報参照)について、1つの磁化自由層の上下に配置していた磁化固定層を2つ共、磁化自由層の同じ側の面に、面方向に離間して積層することにより、磁化自由層を底部として断面視U字型の電流経路を形成したものである。したがって、光変調素子1Cを駆動するための電流を供給する一対の電極は、2つの磁化固定層に接続されるため、電極を磁化自由層側に備える必要がなく、この側を光の入出射側とすることで、透明電極によらずに駆動することができる。以下、光変調素子1Cについて詳細に説明する。なお、光変調素子1Cおよび画素4Cにおいても、前記の実施形態と同じ要素については同じ符号を付し、説明を省略する。
(光変調素子)
光変調素子1Cは、図11に示すように平面(底面)視正方形で、図13,14に示すように、その全体に磁化自由層13Cを備え、その上の同じ高さ位置に、平面視長方形の2つの磁化固定層11a,11b(第1磁化固定層11a、第2磁化固定層11b)を、互いに離間して短辺方向に並べて、中間層12C,12Cを挟んで積層して備える。したがって、光変調素子1Cは、第1磁化固定層11a、中間層12C、磁化自由層13Cからなる第1のスピン注入磁化反転素子構造と、第2磁化固定層11b、中間層12C、磁化自由層13Cからなる第2のスピン注入磁化反転素子構造との2つを、面方向に並べて、磁化自由層13Cで接続して備えるといえる。光変調素子1Cはさらに、磁化自由層13Cの下に下地膜14Bを、磁化固定層11a,11bのそれぞれの上に保護層15B,15Bを必要に応じて備える。
磁化固定層11a,11b、磁化自由層13C、中間層12Cは、それぞれ第1実施形態における光変調素子1の磁化固定層11、磁化自由層13、中間層12と同様に、CPP−GMR素子やTMR素子等に用いられる公知材料にて構成することができる。なお、磁化固定層11a,11bは、それぞれの磁化を画素アレイ40Cのすべての光変調素子1Cにおいて一方向に固定されるが、第1磁化固定層11aと第2磁化固定層11bとは互いに反平行な方向とする。本実施形態において光変調素子1Cは、第1実施形態の光変調素子1と同様に垂直磁気異方性とし、第1磁化固定層11aの磁化は上向きに、第2磁化固定層11bの磁化は下向きに、それぞれ固定されている。さらに、下地膜14Bは、光変調素子1の下地膜14と同じ金属膜とすることができるが、光の入射側に設けられるため、光の透過を妨げないような構成とする。また、保護層15Bは第2実施形態における光変調素子1Bの保護層15Bと同じ金属膜とすることができる。
次に、本実施形態における光変調素子の磁化反転の動作を、図15を参照して説明する。なお、図15において下地膜14Bおよび保護膜15Bは図示を省略する。光変調素子1Cは前記した通り2つのスピン注入磁化反転素子構造を備え、そして、スピン注入磁化反転素子の磁化反転の動作は、第1実施形態にて図5を参照して説明した通りである。図15(a)に示すように、第1磁化固定層11aに接続したX電極2Cを「−」、第2磁化固定層11bに接続したY電極3Cを「+」にして第1磁化固定層11a側から電子を注入すると、第1磁化固定層11aにより当該第1磁化固定層11aと逆方向の下向きのスピンを持つ電子が弁別されてX電極2Cからは上向きのスピンを持つ電子のみが第1磁化固定層11aに、さらに磁化自由層13Cに注入される。磁化自由層13Cに注入された上向きのスピンを持つ電子は、第2磁化固定層11bにより弁別されるため磁化自由層13Cに留まり、その結果、磁化自由層13Cの磁化固定層11a,11bが積層されていない領域も含めた全体が、第1磁化固定層11aの磁化方向と同じ上向きの磁化を示す。反対に、図15(b)に示すように、X電極2Cを「+」、Y電極3Cを「−」にして第2磁化固定層11b側から電子を注入すると、磁化自由層13Cには下向きのスピンを持つ電子のみが注入されて留まることにより、磁化自由層13Cは第2磁化固定層11bの磁化方向と同じ下向きの磁化を示す。
このように、本実施形態における光変調素子1Cは、磁化自由層13Cの同じ側(上側)の面に中間層12C,12Cを挟んで積層された2つの磁化固定層11a,11bのそれぞれに一対の電極2C,3Cを接続されて電流を供給されることで、磁化自由層13Cの磁化方向を変化させる(磁化反転させる)ことができる。したがって、本実施形態における光変調素子1Cは、第1、第2のそれぞれのスピン注入磁化反転素子構造を、磁化反転に好適な小さな面積として、共有される磁化自由層13Cを大きな面積に形成することができるので、画素4Cにおける画素有効領域4efを広くすることができる。なお、光変調素子1Cは、磁化固定層11a,11b間で磁化自由層13Cを底部とした断面視U字型の電流経路が形成されればよいので、光変調素子1C(磁化自由層13C)および磁化固定層11a,11bの平面視形状は、本実施形態に限られない。また、磁化自由層13Cには直接に電極を接続する必要がなく、すなわち一対の電極2C,3Cが同じ一面側(磁化固定層11a,11b側)に設けられるため、その反対側である磁化自由層13Cの側を光の入出射側として、電極2C,3Cを共に導電性に優れた金属電極とすることができる。したがって、画素アレイ40Cは以下の構成となる。
図11に示すように、画素アレイ40Cは、平面(底面)視でY方向(図11における縦方向)に延設されたX電極2C,2C,…と、平面視でX電極2Cと直交するX方向(図11における横方向)に延設されたY電極3C,3C,…と、を備える。図11は基板7A側からの底面図であり、Y電極3CよりもX電極2Cが基板7A側、すなわち下に配され、さらにその下の基板7A上に光変調素子1Cが配される。画素アレイ40Cは、第1、第2実施形態と同様に、X電極2CとY電極3Cとの交点毎に1つの画素4Cを備え、4行×4列の16個の画素4Cからなる構成で例示される。なお、本実施形態の画素アレイ40Cは、X方向において、画素4Cを1つおきに左右反転させて配列する。したがって、画素アレイ40Cは、隣り合う光変調素子1C,1Cにおいて、第1磁化固定層11a,11a同士、第2磁化固定層11b,11b同士が隣り合う構成であるが、画素4Cの向きを揃えて配列してもよい。
第1、第2実施形態では、平面視で一対の電極が重なる領域に光変調素子を設けて、その上下面全体が電極に接続されるため、電極2,3は、同じ幅の配線を画素ピッチに合わせて配されるが、本実施形態では、電極2C,3Cは、それぞれ光変調素子1Cの面内における一部の領域であってY方向(縦方向)に長い長方形の2つの磁化固定層11a,11bに接続される。したがって、Y方向に延設されて第1磁化固定層11aに接続するX電極2Cは、第2磁化固定層11bや隣の(右側または左側の)光変調素子1Cの磁化固定層11a,11bに接触しないように幅狭の帯状の配線に形成され、図13に示すように光変調素子1C上に直接に接続する高さ位置に設けられる。一方、X方向に延設されて第2磁化固定層11bに接続するY電極3Cは、光変調素子1Cと同じまたはそれよりも幅の広い帯状の配線に形成され、第1磁化固定層11aとX電極2Cとの接続を妨げないように、かつX電極2Cと短絡しないように、X電極2Cの上(光変調素子1Cから離れた側)に層間絶縁層(絶縁層62C)を介して設けられ、第2磁化固定層11bの直上の領域において下方へ張り出して第2磁化固定層11bに接続する。このようなX電極2CおよびY電極3Cは、第1実施形態における下部電極2と同様に、一般的な電極用金属材料で形成することができる。したがって、導電性の優れた金属電極のみで光変調素子1Cを駆動することができる。
(絶縁層)
また、画素アレイ40Cにおける隙間、すなわち隣り合う光変調素子1C,1C間、さらに光変調素子1Cにおける磁化固定層11a,11b間は素子間絶縁層5Bで埋められている。また、X電極2C,2C間、およびX電極2C−Y電極3C層間は絶縁層62Cで、Y電極3C,3C間は絶縁層61Cで、それぞれ埋められている(絶縁層61C,62Cを適宜まとめて絶縁層6Cと称する)。ここで、本実施形態に係る空間光変調器10Cは、第2実施形態と同様に画素アレイ40Cの基板7A側が光の入出射側になるため、光変調素子1C,1C間に設ける素子間絶縁層5Bは、基板7A側から低屈折率層52、高屈折率層51の順に積層する(図13参照)。そして、X電極2C,2C間に配される絶縁層62Cは、その少なくとも素子間絶縁層5B(高屈折率層51)に接触する部分すなわち下部に、高屈折率層51よりも低い屈折率の絶縁材料を備える。それぞれの絶縁層5B(51,52),62C,61Cの材料は、第1実施形態において挙げた材料から屈折率に応じて選択することができ、その屈折率および厚さについての詳細は後記する。
(基板)
基板7Aは、第2実施形態と同様に、公知の透明な基板材料を適用することができる。また、基板7Aは、素子間絶縁層5Bの低屈折率層52と屈折率が近似する材料が適用された場合、低屈折率層52と共に一体の媒質として作用し、低屈折率層52と基板7Aとの界面での多重反射を防止することができる。基板7Aは製品として厚さが固定されているために、低屈折率層52は、光変調素子1Cおよび高屈折率層51のそれぞれの厚さにより決定されるために、独立して厚さを設計することが困難であり、界面で多重反射した場合、出射光が増大する場合がある。あるいは、基板7A上に、任意の屈折率および厚さの絶縁膜を形成して、その上に光変調素子1Cおよび素子間絶縁層5Bを設けてもよい。また、基板7Aを低屈折率層52として、素子間絶縁層5B全体を高屈折率層51で形成してもよい。
本実施形態に係る空間光変調器10Cにおける出射光の経路について、図12を参照して、この空間光変調器10Cを用いた表示装置にて説明する。なお、空間光変調器10Cの光変調動作は、第1実施形態に係る空間光変調器10と同様であるので、説明を省略する。表示装置は、前記第1実施形態に係る空間光変調器10を用いたもの(図2参照)と同様の構成とすればよいが、第2実施形態に係る空間光変調器10Bと同様に、基板7A側を光の入出射とするため、表示装置は上下(表裏)を反転させて、空間光変調器10Cの画素アレイ40Cの下方に、光学系OPS、偏光フィルタPFi,PFo、および検出器PDが配置される。
画素アレイ40Cから出射した光のうち、入射光L0に対して旋光しなかった光は、第1実施形態と同様に、入射光L0が光変調素子1Cで反射しないで出射した、光変調素子1C,1C間すなわち素子間絶縁層5Bを透過した光であり、画素アレイ40Cの光変調素子1Cの配されていない領域から出射する。詳しくは、基板7Aを透過して光変調素子1C,1C間に進入して、X電極2Cで反射して前記経路を逆進して出射した光(出射光L4)、基板7Aを透過して光変調素子1C,1C間およびX電極2C,2C間に進入して、Y電極3Cで反射して前記経路を逆進して出射した光(出射光L5)、基板7Aを透過して光変調素子1C,1Cの第2磁化固定層2b,2b間に進入して、下方へ張り出したY電極3Cで反射して前記経路を逆進して出射した光(出射光L6)、そして、基板7Aを透過して光変調素子1C,1C間、X電極2C,2C間、Y電極3C,3C間に進入して、Y電極3C上の図示しない絶縁膜(保護膜)等の界面で反射して前記経路を逆進して出射した光(図12中図示省略、図14(b)参照)が挙げられる。
出射光L4および出射光L6は、素子間絶縁層5Bを透過して、X電極2CまたはY電極3Cで全反射するため、図4の左側に示す第1実施形態における出射光L1に相当し、X電極2C、Y電極3Cが下部電極2に相当する。一方、出射光L5は、素子間絶縁層5Bを透過して、X電極2C,2C間の絶縁層62Cとの界面に到達した際に、反射と通過とに分岐して、通過した光は絶縁層62Cを透過してY電極3Cで全反射する。すなわち、出射光L5は、図4の右側に示す第1実施形態における出射光L2に相当し、絶縁層62Cが絶縁層62および基板7の絶縁部71(第2低屈折率層71/62)に、Y電極3Cが基板7の反射部72にそれぞれ相当する。
したがって、素子間絶縁層5Bの高屈折率層51について、第1、第2実施形態と同様に、屈折率n1および厚さd1を式(3)、さらに式(4)に基づいて設計することにより、出射光L4,L5,L6は、それぞれ干渉して光が増大せず、さらには相殺して光量が抑えられる。
また、出射光L5について、素子間絶縁層5B(高屈折率層51)と絶縁層62Cとの界面を通過した光は、絶縁層62Cの屈折率をn2、厚さをd2として、式(5)に基づいて設計することにより、さらに出射光が抑えられる。ただし、絶縁層62Cの厚さは、X電極2Cの厚さおよびX電極2C−Y電極3C層間厚さにより決定されるため、独立して設計することが困難な場合がある。このような場合、絶縁層62Cを素子間絶縁層5Bと同様に、高屈折率層と低屈折率層の積層構造としてもよい(基板7A側に低屈折率層を配置、図示せず)。そして、高屈折率層について、素子間絶縁層5Bの高屈折率層51と同様に、屈折率n1および厚さd1を式(3)、さらに式(4)に基づいて設計することもできる。この場合、Y電極3C,3C間に配される絶縁層61Cは、その少なくとも絶縁層62Cに接触する部分すなわち下部に、前記高屈折率層よりも低い屈折率の絶縁材料を備えることがさらに好ましい。
なお、Y電極3C上すなわち絶縁層61C上には、全面(上面全体)に、図示しない絶縁膜および光吸収膜を被覆して、絶縁層61Cへ透過した光を反射させない構成とすることが好ましい。あるいは、絶縁層61Cと屈折率が近似する絶縁膜と金属膜からなる反射膜とを積層して、絶縁層61Cおよび前記絶縁膜の屈折率と膜厚を制御して、反射膜から好適に位相反転させて光を下方へ反射させる構成としてもよい。
以上のように、第3実施形態に係る空間光変調器によれば、光の入出射側の反対側に、2層の配線を備える構造としても、これらの異なる配線で反射して出射する光をいずれも抑えて、第1、第2実施形態と同様にコントラストを向上させた空間光変調器とすることができる。
以上、本発明の空間光変調器を実施するための各実施形態について述べてきたが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。
本発明の効果を確認するために、本発明の第1実施形態の変形例に係る空間光変調器の画素(図9参照)を模擬したサンプルを作製し、その反射率を評価した。光変調および磁化反転させる必要はないので、サンプルは上部電極を設けないものとした。詳しくは、熱酸化Si基板に、下部電極としてCu膜を成膜し、さらに反射膜・下地膜:Ru(3nm)/Ag(20nm)/Ru(3nm)、磁化固定層:TbFeCo(10nm)/CoFe(1nm)、中間層:Cu(6nm)、磁化自由層:GdFe(10nm)、保護膜:Ru(3nm)をDCマグネトロンスパッタリング法で連続して成膜して積層した(( )内は厚さ)。そして、イオンビームミリングにて、磁化固定層のTbFeCo膜が露出するまで加工して光変調素子を成形し、その側面に素子間絶縁層として、Si−N/SiO2を積層した。Si−Nの屈折率n1は2.0、SiO2の屈折率は1.46である。SiO2の厚さは13nmとし、Si−N膜の厚さd1を25,30,35,40nmの4段階で変化させたサンプルを作製した。
作製したサンプルの表面の素子間絶縁層に光を入射角5°以内で照射して、反射率を分光光度計で測定し、得られた分光反射率曲線を図16に示す。
図16に示すように、いずれのサンプルも入射光の波長の400nmから800nmまでの変化に伴い、反射率の低下と回復が観察されたが、高屈折率層(Si−N膜)の厚さによって反射率が変化するときの波長がシフトした。式(4)より、反射光が反射1回毎に1/4波長ずれる入射光の波長λを、入射角α0が5°以下であることからcosα1≒1と近似して算出すると(N=1)、400nm(d1=25nm)、480nm(d1=30nm)、560nm(d1=35nm)、640nm(d1=40nm)となり、それぞれの波長の近傍で反射率が5%以下の極小値となることが観察された。さらにd1=40nmのサンプルでは、反射光が干渉する式(1)が成立する入射光の波長320nmに近い、波長約360nmで反射率が約30%の極大値となることが観察された。これらの結果から、高屈折率層の厚さを規制して、その上に低屈折率層を積層することで、厚さ数十nmの絶縁層で反射率を抑えることが確認できた。
10,10C 空間光変調器
1,1A,1B 光変調素子
11,11C 磁化固定層
12 中間層
13 磁化自由層
1C 光変調素子
11a 第1磁化固定層(磁化固定層)
11b 第2磁化固定層(磁化固定層)
12C 中間層
13C 磁化自由層
2 下部電極(電極)
3,3A 上部電極(電極)
2B 上部電極(電極)
3B 下部電極(電極)
2C X部電極(電極)
3C Y電極(電極)
31 金属電極層
40,40A,40B,40C 画素アレイ
4,4A,4B,4C 画素
5,5A,5B 素子間絶縁層
51 高屈折率層
52 低屈折率層
6 絶縁層
62,62A,62B 絶縁層
63,63A 絶縁層
6C 絶縁層
61C 絶縁層
62C 絶縁層
7,7A 基板
91 電源(電流供給手段)
94 画素選択部(画素選択手段)

Claims (6)

  1. 基板と、入射した光をその偏光方向を特定の方向に変化させて出射する光変調素子および前記光変調素子に接続された一対の電極を備えた複数の画素と、前記複数の画素から1つ以上の画素を選択する画素選択手段と、この画素選択手段が選択した画素に所定の電流を供給する電流供給手段と、を備えて、前記基板上に2次元配列された前記複数の画素に入射した光を反射させて出射する空間光変調器であって、
    前記複数の画素において隣り合う前記光変調素子間を絶縁する素子間絶縁層を備え、前記素子間絶縁層が、前記光の入射される側から順に、屈折率の低い絶縁材料からなる低屈折率絶縁層、前記絶縁材料よりも屈折率の高い絶縁材料からなる高屈折率絶縁層の少なくとも2層を積層してなることを特徴とする空間光変調器。
  2. 前記光変調素子はスピン注入磁化反転素子であって、
    前記一対の電極は、前記光変調素子の上下に接続され、前記光の入射される側に接続された一方が透明電極材料を備えて光を透過させ、他方が金属電極材料で形成され、
    前記素子間絶縁層は、前記他方の電極に前記高屈折率絶縁層を積層するように設けられることを特徴とする請求項1に記載の空間光変調器。
  3. 前記他方の電極同士の間を絶縁する電極間絶縁層をさらに備え、前記電極間絶縁層は、少なくとも前記光の入射される側に、前記高屈折率絶縁層よりも屈折率の低い絶縁材料からなる層を備えることを特徴とする請求項2に記載の空間光変調器。
  4. 前記光変調素子は、前記光の入射される側から磁化自由層、中間層、および磁化固定層の順に積層したスピン注入磁化反転素子構造を備え、前記磁化固定層は同一平面上に分離して互いに反平行な方向の磁化に固定された2つを前記磁化自由層の1つあたりにそれぞれ前記中間層を挟んで積層され、
    前記一対の電極は、金属電極材料で形成され、その一方と他方とを前記光変調素子の2つの磁化固定層の一方と他方とにそれぞれ接続され、
    前記素子間絶縁層は、前記一対の電極の前記光の入射される側に設けられた一方に前記高屈折率絶縁層を積層するように設けられることを特徴とする請求項1に記載の空間光変調器。
  5. 前記一方の電極同士の間を絶縁する電極間絶縁層をさらに備え、前記電極間絶縁層は、少なくとも前記光の入射される側に、前記高屈折率絶縁層よりも屈折率の低い絶縁材料からなる層を備えることを特徴とする請求項4に記載の空間光変調器。
  6. 前記高屈折率絶縁層は、屈折率をn、厚さをdで表し、前記入射した光の波長がλ、当該高屈折率絶縁層を透過する光の進行方向の膜面垂直方向に対する角度がαであるとき、n・d・cosα=λ・(2N−1)/8(N=1,2,3,…)が成立することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の空間光変調器。
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