JP2018205515A - 光変調素子、空間光変調器、および空間光変調システム - Google Patents

光変調素子、空間光変調器、および空間光変調システム Download PDF

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Abstract

【課題】開口率の高い微細な画素による多階調表示が可能な空間光変調器を提供する。【解決手段】光変調素子1は、強磁性強誘電体層2が、その上下に設けられた電極3,4から電界を垂直に印加されると、磁化が向きと共に電界の強さに応じた大きさの磁化M1,M2に変化する。したがって、空間光変調器10は、入射した光L0を、光変調素子1毎に、強磁性強誘電体層2の磁化の向きと大きさに対応した旋光角±θK1,±θK2で偏光の向きを回転させて光L1,L2,L3,L4として出射し、偏光子PFoを透過する光量が0(黒)と1(白)の2値のみならず、2つの中間調で表示される。【選択図】図8

Description

本発明は、入射した光を磁気光学効果により光の位相や振幅等を空間的に変調して出射する空間光変調器の光変調素子、この光変調素子を用いた空間光変調器、およびこの空間光変調器を駆動する空間光変調システムに関する。
空間光変調器は、画素として光学素子(光変調素子)を用い、これをマトリクス状に二次元配列して光の位相や振幅等を空間的に変調するものであって、ディスプレイ技術や記録技術等の分野で広く利用されている。空間光変調器として、従来より液晶が用いられ、近年では画素(ピッチ)が数μm程度まで微細化されているが、さらに1μm以下の微細化かつ高速処理の可能性が期待される磁気光学材料を用いた磁気光学式空間光変調器の開発が進められている。
磁気光学式空間光変調器においては、磁性体に入射した光が透過または反射する際にその偏光の向きを変化(旋光)させて出射するファラデー効果(反射の場合はカー効果)を利用している。すなわち磁気光学式空間光変調器(以下、適宜、空間光変調器)は、磁性膜を備える光変調素子の磁化を画素毎に異なる向きに変化させて、それぞれの磁化方向の光変調素子によって、偏光の向きの異なる光に変調され、出射光のうちの特定の向きの偏光の光を偏光フィルタで取り出す。このような光変調素子の磁化方向を変化させる方法として、光変調素子に磁界を印加する磁界印加方式(例えば、特許文献1)や、光変調素子に電流を供給することでスピンを注入するスピン注入方式(例えば、特許文献2〜6)がある。
特許文献1に記載された磁界印加方式の空間光変調器は、光変調素子が磁性ガーネット膜のような磁性膜で形成され、2次元配列した光変調素子に磁界を画素毎に印加するために、各光変調素子の周縁に沿って一周する向きに電流が流れる配線を設けている。この空間光変調器は、印加磁界により隣の画素の光変調素子が追随して磁化反転しないように、磁性膜(光変調素子)が画素毎に間隔を空けて分離されているために、1μm以下のピッチの微細な画素を形成することは困難である。また、この空間光変調器は、光変調素子の周縁に設けられた配線に供給された電流による合成磁界を利用するために、さらなる画素の微細化を行うと隣の画素へのクロストークが大きくなるという問題がある。
これに対して、スピン注入方式の空間光変調器は、光変調素子として、磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)のメモリセルに搭載されるCPP−GMR(Current Perpendicular to the Plane Giant MagnetoResistance:垂直通電型巨大磁気抵抗効果)素子や、TMR(Tunnel MagnetoResistance:トンネル磁気抵抗効果)素子のようなスピン注入磁化反転素子が適用される。これらのスピン注入磁化反転素子は、少なくとも2層の磁性膜を積層して備え、電流を膜面に垂直に供給されることにより、磁性膜の一つの磁化方向が180°変化(磁化反転)する。電流を垂直に供給されるために、スピン注入磁化反転素子は上下面に一対の電極が接続される。したがって、スピン注入方式の空間光変調器は、磁界印加方式のように電極が画素サイズに対して極度に細い配線に形成されなくてよく、配線幅による素子サイズの制約が少なく、画素の微細化が容易である。MRAMのような複数の磁化方向を情報とするメモリセルを二次元配列した不揮発性メモリについては、新たな材料の一つとして、強誘電性、圧電性、誘電性、強磁性のうちの2以上の性質を併せ持つマルチフェロイック材料が研究されている(例えば、非特許文献1〜4)。
スピン注入方式の空間光変調器の光変調素子は、その磁化方向が磁化容易軸に沿った2方向、すなわち垂直磁気異方性であれば上向きおよび下向きに限定されるため、液晶と異なり、2値の光にしか変調することができない。そこで、階調表示をするために複数の光変調素子を1画素に備えて、電流の大きさを変えて画素に供給することにより、光変調素子が個別に駆動するスピン注入方式の磁気光学式空間光変調器が開発されている(特許文献3,4参照)。
特許第4596468号公報 特許第5001807号公報 特許第4939149号公報 特許第4939477号公報 特許第4764397号公報 特許第5852363号公報
D. H. Wang, W. C. Goh, M. Ning, C. K. Ong, "Effect of Ba doping on magnetic, ferroelectric, and magnetoelectric properties in mutiferroic BiFeO3 at room temperature", Applied Physics Letters 88, 212907, May 2006 木村 秀夫, Zhenxiang Cheng, Hongyang Zhao, Xiaolin Wang,"ビスマス−鉄系マルチフェロイック薄膜の特性改善への材料学的アプローチ",まてりあ第49巻,第8号,p.364-370,2010 芦 佳,江川 元太,木下 幸則,吉村 哲,齊藤 準,"交番力顕微鏡を用いた(Bi0.6Ba0.4)FeO3マルチフェロイック薄膜の電場・磁場の同時イメージング",第61回応用物理学会春季学術講演会講演予稿集,2014 藤沢 浩訓,八木 達也,清水 勝,丹生 博彦,"圧電応答顕微鏡による強誘電体Pb(Zr,Ti)O3薄膜の分極反転過程の観察",社団法人日本材料学会,材料,Vol.51,No.9, pp.975-978, 2002
特許文献3,4に記載したような磁気光学式空間光変調器は、多階調化すると、1画素あたりの光変調素子の個数が多くなるので、スピン注入磁化反転素子が微細であっても画素の微細化が困難である。また、スピン注入磁化反転素子は、互いに間隔を空けて設けられるので、画素の大型化と共に開口率が低くなる。
本発明は前記問題点に鑑み創案されたもので、開口率の高い微細な画素による多階調表示が可能な空間光変調器、およびその光変調素子を提供することを課題とする。
マルチフェロイック材料の一つに、磁気秩序と強誘電秩序が共存する材料があり、誘電分極(電気分極)と磁化(磁気分極)とが結び付いている(非特許文献1〜3)。このようなマルチフェロイック材料(強磁性強誘電体と称する)は、電界、磁界のいずれか一方を外部から印加されると、印加の向きに合わせて誘電分極と磁化が共に回転する。また、マルチフェロイック材料は、逆向きの誘電分極が、電界を印加されたほぼ瞬間に印加された領域全体で急激に反転するのではなく、一部から徐々に広がってある程度の時間を要して全体が反転に至るため、領域全体における誘電分極を計測すると、印加された向きに徐々に大きくなる(非特許文献4)。また、印加した電界の強さが不足していても、誘電分極の反転が全体までに至らず、全体を反転させる電界の強さまではこれに依存して、領域全体における誘電分極が大きくなる(非特許文献1,2,4)。このことから、本願発明者らは電界の強さや印加時間を調整することにより、強磁性強誘電体の磁化の向きだけでなく大きさを制御し、偏光の向きの回転角(旋光角)を2値以外の所望の段階の中間値とすることに想到した。
すなわち本発明に係る光変調素子は、光変調層および前記光変調層の上下に設けられて垂直に電界を印加する一対の電極を備え、入射した光の偏光方向を、前記光変調層の磁化の向きおよび大きさに対応した角度で変化させて出射するものであって、前記一対の電極の少なくとも一方が光を透過し、前記光変調層が、強磁性と強誘電性とを有する層を含む構造とする。そして、前記光変調層は、電界を印加されると、前記電界と同じ向きの磁化を有する領域が、前記電界の強さまたは印加時間に対応して増加することにより、磁化の大きさが変化する。
かかる構成により、光変調素子は、電界を印加することにより、2値の光だけでなく、その中間の1以上の光に変調することができる。
本発明に係る空間光変調器は、前記光変調素子を二次元配列して備え、前記一対の電極の一方と他方が、前記二次元配列した光変調素子の行毎と列毎にそれぞれ延設されて、第1配線と第2配線を形成している。かかる構成により、空間光変調器は、1画素に1個の光変調素子を備えて、階調表示が可能である。
本発明に係る空間光変調システムは、前記空間光変調器を備え、前記第1配線と前記第2配線の間に、N通り(Nは2以上の自然数)の大きさの電圧をパルス出力するパルス電源を接続する。または、前記パルス電源は、一定の大きさの電圧をN通りのパルス幅でパルス出力する。かかる構成により、空間光変調システムは、1画素に1個の光変調素子を備える空間光変調器に、最多で2N階調表示させることが可能である。
本発明に係る光変調素子によれば、多階調表示が可能で開口率の高い微細な画素を形成することができる。本発明に係る空間光変調器によれば、高精細で多階調表示が可能になる。本発明に係る空間光変調システムによれば、簡易な構成で多階調表示が可能になる。
本発明の実施形態に係る空間光変調器の構造を説明する模式図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−B−C−D−E線組合せ断面図である。 マルチフェロイック膜の分極ヒステリシス曲線である。 分極の状態を説明するマルチフェロイック膜の断面のモデルであり、(a)は未分極、(b)は(a)から(c)への移行状態、(c)と(e)は飽和分極、(d)と(f)は残留分極である。 厚さ200nmのBiBaFeO3膜の磁化およびカー回転角を外部磁界依存性で表した磁化曲線であり、(a)は磁化を、(b)は波長405nmのレーザー光のカー回転角を示すグラフである。 印加電界の強さによる磁化の制御方法を説明する強磁性強誘電体膜のヒステリシス曲線である。 本発明の実施形態に係る空間光変調器の駆動方法を説明する図であり、図1のA−B線断面を含む断面図である。 本発明の実施形態に係る空間光変調器の駆動方法を説明する図であり、図1のA−B線断面を含む断面図である。 図1に示す空間光変調器を用いた表示装置の模式図で、光変調素子の磁化および光変調動作を説明する図であり、図1のA−B線断面を含む断面図に相当する。 強磁性強誘電体膜の分極(磁化)反転面積率の電界印加時間依存性を示すグラフである。 電界の印加時間による磁化の制御方法を説明する強磁性強誘電体膜のヒステリシス曲線である。
本発明に係る光変調素子および空間光変調器を実現するための形態について、図を参照して説明する。
本発明に係る光変調素子は、空間光変調器の画素として用いられて、入射した光を反射または透過して異なる偏光成分に変調して、または変調せずに出射する。画素とは、空間光変調器による表示の最小単位での情報(明(highlight)/暗(shadow))を表示する手段を指し、本発明においては、明と暗の間の1以上の中間調(mid-tone)を含む。
〔空間光変調器〕
本発明の実施形態に係る空間光変調器10は、図1に示すように、膜状に設けられた強磁性強誘電体層(光変調層)2、強磁性強誘電体層2を上下から挟む、X方向に延設する複数(図1では4本)の上部電極3(第1配線)とY方向に延設する複数(図1では4本)の下部電極4(第2配線)、上部電極3,3間を埋める絶縁層61、下部電極4,4間を埋める絶縁層62、およびこれらを支持する基板5を備える。言い換えると、空間光変調器10は、下から、基板5、下部電極4および絶縁層62、強磁性強誘電体層2、上部電極3および絶縁層61、の順に配置されている。なお、図1(a)では、強磁性強誘電体層2は透明として輪郭線のみを表し、基板5および絶縁層61,62を省略し、図1(b)では絶縁層61,62のハッチングを省略して示す。空間光変調器10において、互いに交差する一組の上部電極3と下部電極4(適宜まとめて、電極3,4)、およびそれらの交点で間に挟まれた強磁性強誘電体層2が、光変調素子1を構成する。空間光変調器10において、光変調素子1は1画素に1個設けられ、この光変調素子1の部分が入射した光を変調させる有効領域(画素の開口部)である。したがって、例えば電極3,4がそれぞれ幅の1/2の間隔を空けて並設されている場合、画素の開口率は4/9である。そして、空間光変調器10は、電極3,4を各4本備えるので、基板5上に、4行×4列の16個の光変調素子1を備える。このように、ここでは説明を簡潔にするために、空間光変調器は4行×4列の16個の画素からなる構成で例示する。また、空間光変調器10は、上方から入射された光の偏光の向きを変化させて反射して上方へ出射する反射型の空間光変調器である。以下、本実施形態に係る空間光変調器を構成する各要素を詳細に説明する。
〔光変調素子〕
(強磁性強誘電体層)
強磁性強誘電体層2は、強磁性と強誘電性とを有する材料(強磁性強誘電体)からなる。強磁性強誘電体は、マルチフェロイック材料の一種であり、強磁性体であるために、磁気光学効果により透過、反射する光の偏光の向きを変化させ、光変調素子1の光変調層として機能する。強磁性強誘電体は、一般式Labc(L:Bi,La,Tb,Pb,Y,Cr,Co,Ba,Lu,Yb,Euからなる群から選択される1〜3種(原子の合計数a)、M:Fe,Mn,Ni,Ti,Cr,Co,Vからなる群から選択される1〜3種(原子の合計数b)、a=1,2,3、b=1,2,3、c=3,4,5,6)で表される。具体的には、例えば、BiMnO3,TbMnO3,TbMn25,EuTiO3,CoCr24,Cr23,BiMn0.5Ni0.53,BiFe0.5Cr0.53,La0.1Ba0.9MnO3,La1-xBixNi0.5Mn0.53(0<x<1),Bi1-xBaxFeO3(0<x<1),(Bi,Ba,La)a(Fe,Mn)bc,(Bi,Ba,La)a(Fe,Mn,Ti)bcが挙げられる。これらの材料は、スパッタ、蒸着、塗布法等の公知の方法で成膜することができる。
強磁性強誘電体層2は、光変調素子1毎に分離して形成されなくてもよく、空間光変調器10においては一体に連続した膜として設けられる。また、強磁性強誘電体層2の厚さは、当該強磁性強誘電体層2を挟んだ電極3,4間にリーク電流が発生しない程度であれば特に規定されず、薄い方が誘電分極と共に磁化を反転させ易く、一方、厚い方が磁気光学効果が高い。ただし、強磁性強誘電体層2は、材料によっては厚くなると光を多く吸収して、出射光の光量が減少する。また、強磁性強誘電体層2が厚くなるにしたがい、空間光変調器10は、電極3,4から電界を印加するために、接続する電源(図示省略)の電位差を大きく設定する必要があるので、強磁性強誘電体層2の厚さは数百nm程度以下であることが好ましい。
(電極)
上部電極3および下部電極4は、強磁性強誘電体層2に垂直両方向(上向きと下向き)に所望の強さの電界を印加するために設けられ、光変調素子1を2次元配列した空間光変調器10においては、当該空間光変調器10の配線として、配列の一方向と他方向とにそれぞれ延設されたストライプ状に形成される。さらに、下部電極4は、光反射膜として、材料にもよるが光透過率の高い強磁性強誘電体層2を透過した光を反射させる。空間光変調器10において、上部電極3および下部電極4は、後記するそれぞれの材料の抵抗や印加する電界の強さ等に応じて、厚さおよび幅、ならびに間隔に形成される。特に間隔については、それぞれ隣り合う上部電極3,3間、下部電極4,4間における抵抗が、強磁性強誘電体層2を挟んだ電極3,4間よりも十分な差で高くなるように、絶縁層61,62の材料と併せて設計されることが好ましい。空間光変調器10を駆動する際に、隣り合う下部電極4,4(または上部電極3,3)に異なる電位が接続された場合に、一対の電極3,4から印加される電界の強さに影響しないためである。
上部電極3は、強磁性強誘電体層2に光が入射するように、光を透過する透明電極材料で構成される。透明電極材料は、例えば、インジウム亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide:IZO)、インジウム−スズ酸化物(Indium Tin Oxide:ITO)、酸化スズ(SnO2)、酸化アンチモン−酸化スズ系(ATO)、酸化亜鉛(ZnO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化インジウム(In23)等の公知の透明電極材料からなる。特に、比抵抗と成膜の容易さとの点からIZOが最も好ましい。これらの透明電極材料は、スパッタリング法、真空蒸着法、塗布法等の公知の方法により成膜される。また、上部電極3は、強磁性強誘電体層2との密着性をよくするために、下地として金属膜を設けてもよい。このような金属膜は、厚さが1nm未満であると連続した(ピンホールのない)膜を形成し難く、一方、10nmを超えて厚くすると、透過する光を減衰させるので、厚さ1〜10nmとすることが好ましい。
下部電極4は、Cu,Al,Au,Ag,Ta,Cr,Pt,Ru等の金属やその合金のような一般的な金属電極材料で形成され、また、前記金属や合金の2種類以上を積層してもよい。特に、強磁性強誘電体層2に接触する最上層は、強磁性強誘電体層2との密着性のよい材料を適用することが好ましい。また、下部電極4は、上方から入射した光に対して反射率が高くなるように、光反射率の高い材料を十分な厚さで備えることが好ましく、その上に必要に応じて厚さ1〜10nmの密着性のよい材料を積層してもよい。金属電極材料は、スパッタリング法等の公知の方法により成膜、フォトリソグラフィ、およびエッチングまたはリフトオフ法等により光変調素子1に対応した形状に加工される。
(絶縁層)
絶縁層61は、強磁性強誘電体層2上に上部電極3と共に設けられて、隣り合う上部電極3,3間を絶縁する。絶縁層62は、基板5上に下部電極4と共に設けられて、隣り合う下部電極4,4間を絶縁する。絶縁層61,62は、半導体素子等に設けられる公知の無機絶縁材料が適用でき、具体的には、SiO2やAl23等の酸化膜やSi34やMgF2等が挙げられる。なお、絶縁層61と絶縁層62とで異なる材料を適用されてもよい。また、下部電極4,4間においては、絶縁層62に代えて絶縁材料からなる基板5が設けられるように、基板5を加工して形成された平行な直線状の溝に下部電極4が埋め込まれてもよい。
(基板)
基板5は、電極3,4や強磁性強誘電体層2等を形成するための、また、空間光変調器10全体を支持するための土台である。基板5は、少なくとも表層が絶縁性の公知の基板材料が適用でき、具体的には、表面に熱酸化膜を形成されたSi(シリコン)基板、SiO2(酸化ケイ素、ガラス)、MgO(酸化マグネシウム)、サファイア、GGG(ガドリニウムガリウムガーネット)、SiC(シリコンカーバイド)、SrTiO3(チタン酸ストロンチウム)、Ge(ゲルマニウム)単結晶基板等を適用することができる。
(空間光変調器の製造方法)
本実施形態に係る空間光変調器の製造方法について、その一例を説明する。まず、基板5上に、絶縁層62を構成する絶縁膜を成膜する。この絶縁膜の上に、下部電極4を形成する領域を空けたレジストマスクを形成し、エッチングにて絶縁膜を除去して、絶縁層62を成形する。そして、金属電極材料を絶縁層62と同じ厚さに成膜してエッチング跡に埋め込んで下部電極4を形成し、レジストマスクを除去する。これにより、基板5上に下部電極4と絶縁層62が上面を平坦な状態として形成されるので、これらの上に強磁性強誘電体層2を成膜する。この強磁性強誘電体層2の上に、上部電極3を形成する領域を空けたレジストマスクを形成する。そして、透明電極材料を成膜して上部電極3を形成し、レジストマスクを除去する。最後に絶縁膜を成膜して上部電極3,3間に埋め込んで絶縁層61を形成し、空間光変調器10が得られる。また、空間光変調器10は、使用(画素の書込)前に初期設定として、全体に外部磁界を上向きまたは下向きに印加されて、強磁性強誘電体層2の磁化および誘電分極を印加方向に揃えられる。この初期設定による強磁性強誘電体層2の磁化等の向きについては後記する。初期設定は、完成した空間光変調器10に対して行ってもよいし、空間光変調器10の製造工程途中において強磁性強誘電体層2を成膜した後以降であれば、どの段階であっても実施することができる。
(強磁性強誘電体層の磁気電気特性)
強磁性強誘電体層2を構成する強磁性強誘電体の磁気電気特性について、図2および図3を参照して説明する。マルチフェロイック材料の一種である強磁性強誘電体は、誘電分極(電気分極)と磁化(磁気分極)とが結び付いていて、電界(E)、磁界(H)のいずれか一方を外部から印加されると、印加の向きに合わせて誘電分極(P)と磁化(M)が共に反転する。この誘電分極と磁化の電界、磁界依存性は、図2に太い実線で示すヒステリシス曲線を描く。図2の原点oにおける強磁性強誘電体は、外部から電界、磁界のいずれも印加される前の(E=0、H=0)、誘電分極、磁化のいずれも方向性を有さない未分極状態(P=0、M=0)である。このような強磁性強誘電体は、図3(a)に示すように、誘電分極および磁化(図中、まとめて太矢印で表す)が様々な向きの領域が混在し、全体では均衡して分極の方向性を有さない。この誘電分極等の向きで区切られた領域を分域(ドメイン)と称し、特に多結晶構造の強磁性強誘電体においては、結晶粒で分域が生成し易い。また、未分極状態における誘電分極と磁化は、結晶粒毎の分極容易軸(磁化容易軸)に沿った向きを示すことが多い。
この未分極状態の強磁性強誘電体に、電界または磁界を漸増させながら上向き(+方向)に印加すると、それに伴い誘電分極および磁化が+方向に漸増する(図2の点o→a)。これは、各分域の誘電分極と磁化が印加方向(図3では白矢印で表す)へ回転して、上向きの分域が拡張し、多結晶構造の場合は図3(b)に示すように上向きの結晶粒の数が増加することによる。そして、電界または磁界がある強さ(図2に示す電界Es)に到達すると、図3(c)に示すように、すべての結晶粒すなわち印加された領域全体において誘電分極と磁化が上向きを示す単分域状態になる。強磁性強誘電体は、単分域状態になると、より強い電界または磁界を印加しても、誘電分極および磁化がそれよりも大きくなることがない。この図2の点aにおける誘電分極が飽和分極Ps、磁化が飽和磁化Msである。飽和分極Ps、飽和磁化Msに到達した強磁性強誘電体は、上向きの電界または磁界を弱くすると、誘電分極、磁化が漸減するが、図2の点a→oよりも緩やかであり、さらに印加を停止しても(E=0、H=0)大きく+側で保持される(図2の点a→b)。この図2の点bにおける誘電分極が残留分極Pr(<Ps)、磁化が残留磁化Mr(<Ms)である。なお、図2の縦軸において、PsとMs、PrとMr、−Prと−Mr、−Psと−Msはそれぞれ一致し、図2では分極のみを表す。
このように、強磁性強誘電体が電界または磁界の印加を停止されると、誘電分極と磁化が印加時よりも小さくなるのは、誘電分極と磁化が、印加方向である上向きから、分極容易軸(磁化容易軸)に沿った両方向(一方向とその逆方向)の近い方(上向き寄り)まで自発的に回転することによると考えられる。あるいはさらに、少数の(全体の1/2以上を占めない)結晶粒において、誘電分極と磁化が、前記両方向の下向き寄りまで回転する場合があると考えられる。すなわち、強磁性強誘電体は、図3(d)に示すように、結晶粒毎の誘電分極と磁化が、図3(a)に示す未分極状態における向きと同じまたは180°回転(反転)した様々な向きであって、少なくとも1/2超(図3(d)では右下の1つを除いたすべて)において上向き寄りの向きを示す。したがって、このときの強磁性強誘電体は、全体で、誘電分極および磁化が上向きを示し、ただし、前記電界または磁界の印加時(飽和分極Ps、飽和磁化Ms)よりも小さい。
次に、強磁性強誘電体に、電界または磁界を漸増させながら今度は下向き(−方向)に印加すると、それに伴い、誘電分極と磁化が下向きの分域が拡張することにより、+方向の誘電分極および磁化が漸減(−方向に漸増)して、P=0、M=0になる。P=0、M=0になるときの印加電界が抗電界−Ec、印加磁界が保磁力−Hcである(図2では−Ecのみを表す)。さらに電界または磁界を−方向に漸増させると、図3(e)に示すようにすべての結晶粒において誘電分極と磁化が下向きを示し、飽和分極−Ps、飽和磁化−Msに到達する(図2の点b→c)。その後、電界または磁界の下向きの印加を停止すると、誘電分極が残留分極−Prに、磁化が残留磁化−Mrに、−側に減少する(図2の点c→d)。これは、図3(d)に示す+側と同様、誘電分極と磁化が、下向きから、図3(f)に示すように、結晶粒毎に分極容易軸(磁化容易軸)に沿った向きまで回転し、少数(図3(f)では左下の1つ)の結晶粒を除いて下向き寄りになって、強磁性強誘電体の全体で下向きを示すことによると考えられる。また、次に再び電界または磁界を上向き(+方向)に印加すると、図2の点d→aの挙動を示す。
このように、強磁性強誘電体は、誘電分極と磁化とが結び付いて、これら両方が電界および磁界のいずれの印加によっても変化すること以外は、一般的な強誘電体の誘電分極、強磁性体の磁化と同様、図2の点a→b→c→d→aの非可逆的なループ(ヒステリシスループ)を描いて変化する。また、強誘電体および強磁性体は、飽和分極Ps,−Ps、飽和磁化Ms,−Msに到達しない程度の強さの電界(Es未満)または磁界を印加された場合は、誘電分極や磁化が、到達した最大値(絶対値)に比例するように小さなヒステリシスループを描いて変化する。なお、単結晶構造では、図2に破線で示すように、抗電界Ec、保磁力Hcで急激に誘電分極および磁化が反転する傾向があり、また、飽和分極Ps、飽和磁化Msからの減りの小さい残留分極Pr、残留磁化Mrになり易い。
また、強磁性強誘電体は、一般的な強磁性体と同様、磁化の方向に応じた角度で透過または反射した光の偏光の向きを変化させる。強磁性強誘電体としてBiBaFeO3膜について、図4に示すように、磁化とカー回転角をそれぞれ測定して両者の相関を観察した。測定用のサンプルは、光変調素子1を模擬し、熱酸化Si基板上に下部電極4としてTa/Pt積層膜を成膜し、さらにその上に強磁性強誘電体層2として厚さ200nmのBiBaFeO3をスパッタ法で成膜して作製した。サンプルに、膜面に垂直方向に外部磁界Hを0Oeから20kOe超まで漸増させて印加しながら、試料振動型磁力計(VSM)で磁化Mを測定し、次に、外部磁界Hの印加方向を反転させて再び同様に磁化Mを測定した。得られたM−H曲線を図4(a)に示す。また、サンプルに外部磁界Hを0Oeから7kOeまでの範囲で前記と同様に印加しながら、波長405nmのレーザー光を入射角0°で入射して、サンプルからの反射光の偏光の向き(カー回転角)を、垂直磁界Kerr効果測定装置で測定し、得られた曲線を図4(b)に示す。
BiBaFeO3膜は、カー回転角が、図4(b)に示すように、図4(a)に示すM−H曲線と同様にヒステリシス曲線を描き、磁化の向きおよび大きさの変化に伴って、カー回転角の回転の向きおよび角度が変化する。すなわち、本実施形態に係る空間光変調器10は、光変調素子1毎に、電極3,4から電界を上向きや下向きに印加することにより、強磁性強誘電体層2の磁化を制御して、スピン注入方式の空間光変調器等と同様、入射した光の偏光の向きを少なくとも2値の角度で回転させて出射することができる。
ここで、空間光変調器10による光変調は、すべての電極3,4からの電界印加を停止している状態で実行される。したがって、光変調のために強磁性強誘電体層2が示し得る磁化は−Mr〜Mrの範囲である。そして、図2を参照して説明したように、強磁性強誘電体層2は、電界や磁界を印加されていない時、その前に印加されていた電界または磁界と同じ向きで、かつ絶対値で印加時よりも減少した大きさの磁化を示す。そこで、空間光変調器10は、以下の方法により、印加停止時における磁化をMr,−Mrの2値のみならずこの2値の1以上の中間値に変化させることができる。
(空間光変調器の駆動方法の実施形態)
本実施形態に係る空間光変調器10の駆動方法(画素の書込方法)、詳しくは当該空間光変調器10における光変調素子1毎の強磁性強誘電体層2の磁化の向きと大きさを変化させる方法を、図5、図6および図7を参照して説明する。前記したように、強磁性強誘電体層2が電界の印加停止時に示し得る磁化は−Mr〜Mrの範囲である。そこで、本実施形態に係る空間光変調器10は、図5に示す、M1,M2,−M2,−M1(0<M2<M1=Mr)の4段階の磁化に設定することとし、図6および図7に示す一列の光変調素子1の群を空間光変調器10から選択して、光変調素子1毎に左から順に、強磁性強誘電体層2の磁化を−M2,−M1,M2,M1に設定する手順を説明する。
また、ここでは、空間光変調器10は、表示する動画の1フレーム毎に、すべての画素すなわち光変調素子1について書換え(リフレッシュ)を繰り返すこととする。そこでまず、書換開始処理として、図6(a)に示すように、すべての上部電極3(1本のみを示す)を電圧V1の電源の「+」に、すべての下部電極4を同電源の「−」にそれぞれ接続して、すべての光変調素子1における強磁性強誘電体層2に、電界E1を下向きに印加する(下向きの電界−E1を印加する)。電界E1は、図5に示すように、誘電分極と磁化を飽和分極−Ps、飽和磁化−Msに到達させる電界Es(図2参照)以上であればよい(E1≧Es)。上部電極3の正(+)の電荷、下部電極4の負(−)の電荷により、強磁性強誘電体層2は、印加前の分極にかかわらず、電極3,4に挟まれた領域全体において誘電分極が下向きになり、これに伴い磁化も下向きになる。その後、電界の印加を停止する。なお、図6および図7では、基板5および絶縁層61,62を省略する。また、図6および図7において、強磁性強誘電体層2における誘電分極(分極)は縦長の楕円の中の「+−」で表され、磁化は太矢印で表される。また、強磁性強誘電体層2は、電界または磁界を印加されてその後停止した時、少数の結晶粒において誘電分極と磁化が反転して逆向きを示す傾向があるが(図3(d)、(f)参照)、図6および図7においてはこのような逆向きの誘電分極と磁化は省略する。
また、空間光変調器10において電極3,4に挟まれていない、すなわち光変調素子1外の強磁性強誘電体層2は、電極3,4から電界を印加され得ない。そのため、強磁性強誘電体層2は、空間光変調器10の使用前の初期設定にて、予め全体に電界E1に相当する磁界を下向きに印加されていて、光変調素子1外においては常に下向きの残留磁化−Mrを示すものとする。
電界−E1を印加して停止したことにより、強磁性強誘電体層2はすべての光変調素子1において、図5の点c→dの挙動を示し、飽和磁化−Msから残留磁化−Mrに移行する。したがって、磁化を−Mrに設定する光変調素子1においては、以降は電極3,4から電界を印加しなければよい。一方、磁化をMrに設定する光変調素子1については、さらに電界E1を反対の上向きに印加して飽和磁化Msに到達させて、その後停止すればよい(図5の点d→a→b)。
これに対して、磁化を上向きのM2(<Mr)に設定する光変調素子1については、図6(a)に示す処理により残留磁化−Mr(図5の点d)とした強磁性強誘電体層2に、残留磁化Mrとする光変調素子1と同じく上向きに電界を印加して、その停止後に磁化がM2に移行するようにする。詳しくは、電界を上向きに印加した図5の点d→aの経路上で、印加を停止すると磁化がM2(図5の点e)に後退(減少)する点a’に到達させる強さの電界E2(Ec≦E2<Es)を印加して停止する(図5の点d→a’→e)。
同様に、磁化を下向きの−M2(図5の点f)に設定する光変調素子1については、前記のM2に設定する手順において極性を反転させればよい。そのために、電界E1を上向きに印加して飽和磁化Msに到達させた後に電界E1を停止して、一旦、上向きの残留磁化Mrとしてから(図5の点d→a→b)、電界−E2を印加して停止する(図5の点b→c’→f)。なお、電界E1を印加した後に、連続して、向きと強さを切り換えて電界−E2を印加してもよい。
これらのことから、図6(a)に示す書換開始処理によってすべて下向きの残留磁化−Mrとした一列の光変調素子1の群に対して、以下の手順で処理を行う。まず、電界E1を上向きに、前記したように上向きの残留磁化Mrに設定する右端の光変調素子1に印加し、同時に、下向きの磁化−M2に設定する左端の光変調素子1にも印加する。すなわち図6(b)に示すように、共通の上部電極3を電圧V1の電源の「−」に、両端の下部電極4,4を同電源の「+」にそれぞれ接続して、両端の光変調素子1,1の強磁性強誘電体層2に電界E1を上向きに印加して、その後停止する。このような処理により、一列の光変調素子1,1,1,1は左から順に、強磁性強誘電体層2の磁化がMr,−Mr,−Mr,Mrとなる。なお、前記したように、強磁性強誘電体層2は光変調素子1外においては、電界を印加されないので磁化が−Mrのままである。
また、左から3つ目の光変調素子1の強磁性強誘電体層2を、残留磁化−Mrから逆向きの磁化M2にする。図7(a)に示すように、上部電極3を電圧V2(<V1)の電源の「−」に、左から3本目の下部電極4を同電源の「+」にそれぞれ接続して、前記光変調素子1の強磁性強誘電体層2に電界E2を上向きに印加して、その後停止する。なお、図7においては、強磁性強誘電体層2の磁化M2,−M2の領域は、当該領域の中央部をその向きの誘電分極と磁化で、周縁部を逆向きの誘電分極と磁化で、それぞれ表す。
さらに、左端の光変調素子1の強磁性強誘電体層2を、残留磁化Mrから逆向きの磁化−M2にする。図7(b)に示すように、上部電極3を電圧V2の電源の「+」に、左端の下部電極4を同電源の「−」にそれぞれ接続して、前記光変調素子1の強磁性強誘電体層2に下向きの電界−E2を印加して、その後停止する。このように、図6および図7に示す一連の処理により、一列の光変調素子1,1,1,1に左から順に、強磁性強誘電体層2の磁化が−M2,−M1,M2,M1に設定される。
なお、図6(b)に示す強磁性強誘電体層2を上向きの残留磁化Mrにする処理(電界E1印加)の後に、図7(b)に示す下向きの磁化−M2にする処理(電界−E2印加)を実行する以外は、処理の順序は限定されない。すなわち、すべての光変調素子1について電界−E1を印加する書換開始処理(図6(a))後は、電界E1印加(図6(b))、電界−E2印加(図7(b))、電界E2印加(図7(a))の順で、または、電界E2印加(図7(a))、電界E1印加(図6(b))、電界−E2印加(図7(b))の順で実行してもよい。あるいは複数の電源を接続して、光変調素子1毎に異なる電界を同時に印加してもよい。例えば、図6(b)と図7(a)に示す電界E1,E2の印加を同時に実行すべく、2つの電源の「−」を同電位(0V)として上部電極3に接続し、両端の下部電極4,4には電位V1を、左から3本目の下部電極4には電位V2を、それぞれ接続する。そして、電界E1,E2の同時印加後、図7(b)に示す電界−E2の印加を実行する。図6および図7においては簡潔に説明するために、1回の処理で1つの強さと向きの電界を印加しているが、書換え時間を短縮するために、複数の電源を接続して異なる電界の印加を同時に行うことが好ましい。
なお、下向きの磁化−M2に設定する光変調素子1について、最後に下向きに電界E2を印加する前に、一旦、上向きの残留磁化Mrとするとしたが、下向きに電界を印加する前においては、磁化が下向きでなければ大きさは限定されず、磁化0でもよく、さらには、下向きであっても大きさ(絶対値)M2超でなければよい。例えば、磁化M2(<Mr)としてから、磁化−M2に変化させることもできる。ただし、そのために下向きに印加する電界の強さ(絶対値)が、残留磁化Mrから変化させる場合(E2)とは異なるので、電圧を別途設定する。また、強磁性強誘電体層2に設定される磁化の両方向における最大値(絶対値)M1,−M1は、残留磁化Mr,−Mrであることが好ましいが、これに限定されない。M1<Mrの場合、電界E1は飽和磁化Msに到達させる電界Es(図2参照)未満(E1<Es)に設定される。この場合、初期設定にて印加する磁界も、電界E1に相当する強さに設定されることが好ましい。
また、中間調を表示するための磁化をM2,−M2の2つとして説明したが、電界の強さ(絶対値)を階調の半数に細分化して設定することにより、所望の多階調表示とすることができる。具体的には、空間光変調器10において、光変調素子1毎に強磁性強誘電体層2の磁化をM1,M2,M3,・・・,MK,−MK,・・・,−M3,−M2,−M1(Mr≧M1>M2>M3>MK>0、K:4以上の自然数)に設定する場合、次の順序で処理を実行することができる。まず、書換開始処理として、すべての光変調素子1について電圧V1の電源で下向きの電界−E1を印加して、強磁性強誘電体層2の磁化を−M1(−Mr)とする(図6(a)参照)。次に、空間光変調器10から一列の光変調素子1の群を選択する。そして、強磁性強誘電体層2の磁化をM1、および−M2,−M3,・・・,−MKに設定する光変調素子1について電圧V1の電源で上向きの電界E1を印加する。同時に、M2,M3,・・・,MKに設定する光変調素子1について当該磁化とする強さの電界をそれぞれの電源で、いずれも上向きに印加する。次に、強磁性強誘電体層2の磁化を−M2,−M3,・・・,−MKに設定する光変調素子1について当該磁化とする強さの電界をそれぞれの電源で、いずれも下向きに同時に印加する。階調を増やしても、これら2回の処理によって、選択した一列における光変調素子1のすべてにおいて、それぞれの強磁性強誘電体層2が所望の磁化となる。以降は、新たな一列を空間光変調器10から選択して、同様の処理を実行する。
空間光変調器10のこのような書込みは、例えば、階調と同数または半数の電源を、切換器(マトリクススイッチャ、階調の半数の電源を接続する場合は順逆切替えを含む)を介して電極3,4に接続した空間光変調システムとすることにより、実行することができる。電源はパルス電圧を出力することが好ましく、電界E1をピーク期間(パルス幅)で強磁性強誘電体層2に印加して飽和磁化Msにし、次のベース期間(停止時間)で残留磁化Mrになる。パルス電圧のパルス幅は、残留磁化−Mr,Mrである強磁性強誘電体層2に、それぞれ逆向きの電界Es,−Es(図2参照)を印加した時に、飽和磁化Ms,−Msに到達させる(図2の点d→a、点b→c)時間以上に設定される。パルス電圧のベース期間は特に規定されないが、ピーク期間と同程度(デューティ比50%程度)であれば十分である。また、パルス電圧の信号形状は、矩形波、三角波等を適用することができる。
書換開始処理として、空間光変調器10は、その全体に一様な磁界を垂直に印加するコイルまたはこれに芯(ヨーク)を備えた電磁石によって、すべての電極3,4から強磁性強誘電体層2に印加する電界−E1に代えて、これに相当する強さの磁界を印加してもよい。言い換えると、初期設定を、使用前に代えて書換毎(1フレーム毎)に実行する。
(空間光変調器の光変調動作)
本発明に係る空間光変調器の光変調動作を、図8を参照して、この空間光変調器を用いた表示装置にて説明する。本実施形態に係る空間光変調器10は反射型であり、また、光変調素子1の強磁性強誘電体層2は磁化が上向きまたは下向きを示すため、表示装置は以下の構成とすることが好ましい。空間光変調器10を用いた表示装置は、空間光変調器10の上方の出射光(L1,L2,L3,L4)の経路上に、出射側偏光子PFo、および出射側偏光子PFoを透過した光を検出する検出器PDが配置される。さらに、空間光変調器10の上方に、入射光L0を生成するための、レーザー光源、ビーム拡大器、コリメータレンズ、および入射側偏光子が配置される(図示省略)。入射側偏光子および出射側偏光子PFoは、それぞれ偏光板等であり、特定の偏光成分の光を遮光する。検出器PDはスクリーン等の画像表示手段である。なお、図8においては、入射光と出射光の経路を識別し易くするために、入射光の入射角を傾斜させて示す。
レーザー光源から照射されたレーザー光は、ビーム拡大器およびコリメータレンズを経由して平行光となり、さらに入射側偏光子を透過して1つの偏光成分の光からなる入射光L0になって、上方から略垂直(入射角≒0°)に空間光変調器10の全面に入射する。空間光変調器10に入射した入射光L0は、上部電極3および強磁性強誘電体層2を順次透過して下部電極4の上面で反射し、再び強磁性強誘電体層2および上部電極3を透過して、出射光L1,L2,L3,L4として空間光変調器10から上方へ出射する。
図8に示す空間光変調器10の一列の光変調素子1,1,1,1は、図6および図7に示す一連の処理によって、左から順に、強磁性強誘電体層2の磁化が−M2,−M1,M2,M1に設定されている。なお、図8において、これらの強磁性強誘電体層2の磁化を空間光変調器10の下側に付し、また、強磁性強誘電体層2に付した磁化方向を示す太矢印の大きさで磁化の大きさの違いを表す(0<M2<M1)。このような強磁性強誘電体層2により、それぞれの光変調素子1から出射した出射光L1,L2,L3,L4は、入射光L0に対して強磁性強誘電体層2の磁化−M2,−M1,M2,M1の向きと大きさに対応した向きと角度で偏光が回転した光であり、それぞれ、角度−θK2,−θK1,+θK2,+θK1回転した光とする(0°<θK2<θK1≦45°)。
出射光L1,L2,L3,L4は、出射側偏光子PFoに到達して、出射側偏光子PFoが遮光する偏光の向き(方位)に対する角度差に対応した光量が出射側偏光子PFoを透過して検出器PDに到達する。図8においては、出射側偏光子PFoは、入射光L0に対して偏光が−θK1回転した光を遮光する。そのため、出射光L2は出射側偏光子PFoに完全に遮光されて検出器PDにまったく到達せず、左から2つ目の光変調素子1からなる画素は検出器PDに最も暗く(黒く)表示され、これを「黒」と設定する。これに対して、入射光L0に対して偏光が+θK1回転した出射光L4は、出射側偏光子PFoが遮光する偏光の向きに対する角度差が最大であるため、最大の光量で出射側偏光子PFoを透過して検出器PDに到達し、右端の光変調素子1からなる画素は検出器PDに最も明るく表示され、これを「白」と設定する。また、出射光L1,L3は、出射光L4よりも暗くかつ互いに異なる明るさで検出器PDに表示される。詳しくは、光量がL4>L3>L1>L2(=0)の順に多く出射側偏光子PFoを透過して検出器PDに到達する。このように、本発明に係る空間光変調器10は、光変調素子1毎に、3以上(ここでは4)の異なる方位の偏光の光を出射することができ、1画素で白黒の2階調だけでなくその中間調(灰色)を表示することができる。
なお、空間光変調器10における光変調素子1外の領域から出射した光、例えば上部電極3,3間の絶縁層61に進入し、その直下の強磁性強誘電体層2を透過して下部電極4で反射して出射した光は、出射光L2と同じ、出射側偏光子PFoが遮光する向きの偏光であるため、出射側偏光子PFoで完全に遮光され、検出器PDに黒く表示される。下部電極4,4間の絶縁層62に進入して基板5で反射した光も同様である。あるいは絶縁層62に進入した光は、その下の基板5を透過または吸収して出射しないので、同じく検出器PDに黒く表示される。このように、空間光変調器10は、予め初期設定として外部磁界を下向きに印加されて、強磁性強誘電体層2全体が下向きの残留磁化−Mrとされていることにより、電極3,4から電界を印加されない光変調素子1外の領域である各画素の周縁部(開口部外)を常に黒く表示することができ、全体のコントラストを低下させない。
前記したように、図8においては、入射光L0と出射光L1,L2,L3,L4との経路が異なるように入射光L0の入射角を傾斜させているが、入射角が大きいほど極カー効果が低下して光変調度が低下するため、30°以内とすることが好ましく、膜面に垂直に入射、すなわち入射角を0°にすることが最も好ましい。入射角を0°にする場合は、入射光L0と出射光L1,L2,L3,L4は、空間光変調器10上で経路が一致するため、例えば入射側偏光子と空間光変調器10との間にハーフミラーを配置して、一方を反射させてもよい(図示せず)。
(空間光変調器の駆動方法の別の実施形態)
本実施形態に係る空間光変調器10の別の駆動方法を、図9、図10、図6および図7を参照して説明する。図5を参照して説明したように、強磁性強誘電体層2は、その誘電分極と逆向きの電界を印加されて、設定しようとする磁化よりも大きな所定の磁化に到達してから、電界印加を停止することにより、所望の磁化に設定することができる。この誘電分極および磁化の、電界印加時における大きさ、言い換えると、電界の印加方向に沿った向きを示す分域の占める割合(図3参照)は、電界の強さだけでなく、図9に示すように印加時間tにも依存する。なお、図9の縦軸において、PsとMs、−Psと−Msはそれぞれ一致し、図9では分極のみを表す。したがって、その後印加を停止した時の磁化も、印加時間tに依存する。このとき印加する電界は、飽和磁化Msに到達させる電界Es(図2参照)以上であることが好ましい。そこで、本実施形態に係る空間光変調器10は、一定の強さの電界E1(≧Es)を、印加時間tを調整して印加することにより、図10に示す、M1,M2,−M2,−M1(0<M2<M1=Mr)の4段階の磁化に設定することができる。図10は、図5に示す分極ヒステリシス曲線の横軸を電界印加時間に置き換えたものである。図10の横軸は、中心(0秒間)から右方向において上向きの電界E1の印加時間t(E1)を示し、中心から左方向において下向きの電界−E1の印加時間t(−E1)を示す。なお、図10において、横軸の長さは印加時間t(E1),t(−E1)に必ずしも対応するものではない。
印加時間t1は、残留磁化−Mr,Mrである強磁性強誘電体層2に、それぞれ逆向きの電界E1,−E1を印加した時に、飽和磁化Ms,−Msに到達させる(図10の点d→a、点b→c)時間以上に設定される。印加時間t2は、同じく残留磁化−Mr,Mrである強磁性強誘電体層2に、それぞれ逆向きの電界E1,−E1を印加した時に、図10の点a’、点c’に到達させる(図10の点d→a’、点b→c’)時間に設定される。
本実施形態においても、まず、書換開始処理として、図6(a)に示すように、すべての上部電極3を電圧V1の電源の「+」に、すべての下部電極4を同電源の「−」にそれぞれ接続して、すべての光変調素子1における強磁性強誘電体層2に、下向きの電界−E1を印加する。この時の印加時間はt1とする。そして、図6(b)においては、上向きの電界E1を時間t1印加する。一方、図7(a)、(b)においては、電界E2,−E2に代えて電界E1,−E1を電圧V1の電源でそれぞれ時間t2印加する。このように、一定の強さの電界E1を、向きと印加時間とを切り換えて印加することにより、2以上の異なる強さの電界を印加した場合と同様に、強磁性強誘電体層2の磁化を−M2,−M1,M2,M1に設定することができる。なお、強磁性強誘電体層2に設定される磁化の両方向における最大値M1,−M1は、残留磁化Mr,−Mrでなくてもよく(M1<Mr)、磁化M1の大きさに対応した印加時間t1を設定することができる。また、電界E1は、Es以上が好ましいがこれに限られず、抗電界Ec超であればよい。向きと印加時間を切り換えての電界印加の順序、また、同時に異なる時間で印加することについては、電界の強さを調整した場合と同様である。
具体的には、電圧V1を周期T(>t1)、パルス幅(ピーク期間)t1で出力するパルス電源と、電圧V1を周期T、パルス幅t2で出力するパルス電源とを、順逆切替え可能な切換器を介して電極3,4に接続した空間光変調システムとすることにより、図6(b)と図7(a)に示す処理を同時に実行することができる。2つのパルス電源は、同じ周期Tで異なるパルス幅t1,t2に設定し、すなわちデューティ比を変えることにより、出力を同期させることができる。あるいは、パルス幅t1,t2のパルス電源の2つずつ計4つを、極性を入れ替えて切換器を介して電極3,4に接続してもよい。また、本実施形態においては、電界E1,−E1の印加時間を階調の半数に細分化して設定する、すなわち階調の半数通りのパルス幅でそれぞれ電圧V1を出力するパルス電源を接続することにより、所望の多階調表示とすることができる。
(空間光変調器、光変調素子の変形例)
本発明に係る空間光変調器10は、光変調素子1が、強磁性強誘電体層2の上や下に、絶縁層61,62に適用されるような絶縁膜をさらに積層して備える構造であってもよい。このような構造とすることにより、電極3,4間のリーク電流をより確実に抑制することができる。また、本発明に係る空間光変調器10は、基板5に透明な材料を適用し、上下を反転させて基板5を光の入出射側に向けて使用されてもよい。すなわち、透明な基板5上に、上部電極3、強磁性強誘電体層2、下部電極4の順に形成する。また、基板5に透明な材料を適用し、下部電極4に上部電極3と同様の透明電極材料を適用することにより、透過型の空間光変調器10とすることができる(以上、図示せず)。
反射型の空間光変調器10は、絶縁層61、あるいはさらに絶縁層62を、屈折率の異なる2種以上の絶縁膜を1層ずつまたは交互に繰り返し積層して、入射光L0の波長の光に対する反射防止膜としてもよい(例えば、特許文献6参照)。また、透過型の空間光変調器10は、絶縁層61,62を、屈折率の異なる2種以上の絶縁膜を交互に繰り返し積層して、入射光L0の波長の光を透過させない(カットする)光学フィルタとしてもよい。これらの構造とすることにより、空間光変調器10は、光変調素子1外の領域から光を出射しないので、この領域における強磁性強誘電体層2の磁化にかかわらずコントラストを低下させない。したがって、空間光変調器10は、強磁性強誘電体層2の初期設定として外部磁界印加を行わなくてもよい。
本発明に係る空間光変調器10は、光変調素子1が、磁気光学効果の高い磁気転写膜(図示せず)を、強磁性強誘電体層2に積層して備える構造であってもよい。磁気転写膜は、保磁力が小さく、垂直磁気異方性を示し得る磁性膜からなり、強磁性強誘電体層2に界面で磁気的に強く結合して、強磁性強誘電体層2の磁化の変化に追随して磁化が変化する。したがって、磁気転写膜は、強磁性強誘電体層2の磁気光学効果が高くない場合に、これを補って光変調度を大きくして空間光変調器10のコントラストを向上させる。
このような磁気転写膜として、具体的にはイットリウム鉄ガーネット(Y3Fe512:YIG)のような磁性ガーネット膜が挙げられ、特にビスマス置換磁性ガーネット(Y3-XBiXFe512:Bi−YIG)はファラデー回転角が大きいことから好ましい。磁性ガーネット膜からなる磁気転写膜は、強磁性強誘電体層2の上下いずれの側に積層されてもよく、あるいは両側(両面)に積層されてもよい。また、磁気転写膜は、強磁性強誘電体層2の磁化の変化に追随して磁化が変化させられる厚さであればよく、厚くするほど比例してファラデー回転角を大きくすることができるが、一方で保磁力が増大する。また、磁性ガーネット膜は絶縁体であるため、厚くなるにしたがい、電極3,4から電界を印加するために、接続する電源の電位差を大きく設定する必要がある。
あるいは磁気転写膜として、スピン注入磁化反転素子等に適用されるような公知の導電性の垂直磁気異方性材料を適用してもよい。具体的には、Fe,Co,Ni等の遷移金属とPd,Ptのような貴金属とを繰り返し積層したCo/Pd多層膜等の多層膜、Tb−Fe−Co,Gd−Fe等の希土類金属と遷移金属との合金(RE−TM合金)、FePt,FePd,CrPt3等のL10系の規則合金、MnN,FeN等の窒化物磁性体、MnBi合金、Mn/Bi多層膜、PtMnSb合金、Pt/MnSb多層膜等が挙げられる。特に、磁気光学効果が高く、組成を調整して保磁力を小さくすることのできるGd−Feが好ましい。これらの導電性の磁気転写膜は、厚膜化すると、保磁力が増大したり材料によっては垂直磁気異方性を示し難くなる上、特に透過型の空間光変調器10においては光を透過し難くなるので、厚さを40nm以下とすることが好ましく、20nm以下とすることがより好ましい。また、導電性の磁気転写膜と共に、磁気転写膜と強磁性強誘電体層2の間に、バッファ層として、Ta,Ru,Gd,W,Pt,Pd,Au,Ag等の金属膜をさらに積層してもよい。
導電性の磁気転写膜は、光変調素子1の平面視形状に分割、分離して形成されるか、接触する上部電極3または下部電極4の平面視形状に形成され、間隙に絶縁層61,62と同様の絶縁材料が設けられる。導電性の磁気転写膜は、磁性ガーネット膜と同様、強磁性強誘電体層2の上下いずれの側に積層されてもよい。ただし、反射型の空間光変調器10においては、光を遮らないように、強磁性強誘電体層2の下、すなわち下部電極4の上に積層されることが好ましく、さらに、前記したように下部電極4と同じ平面視形状に形成されることが好ましい。このような構造とすることにより、上部電極3,3間の絶縁層61に進入して下部電極4で反射、出射する光が、強磁性強誘電体層2のみによって相対的に小さな角度で旋光した光とならない。また、このような下部電極4の平面視形状の磁気転写膜を備えた反射型の空間光変調器10においては、下部電極4,4間の絶縁層62に進入した光が出射しないように、基板5が、光を下方へ透過させるか吸収することが好ましい。あるいは、反射型の空間光変調器10は、磁気転写膜の間隙に設けられる絶縁層や絶縁層61,62を、前記の反射防止膜として、光変調素子1外の領域から光を出射しない構造とすることが好ましい。同様に、透過型の空間光変調器10は、絶縁層61,62等を、入射光L0の波長の光を透過させない光学フィルタとすることが好ましい。
反射型の空間光変調器10は、光を多重反射させて強磁性強誘電体層2による旋光角を累積させて光変調度を大きくする構造としてもよい(特許文献5,6参照)。具体的には、例えば、屈折率が強磁性強誘電体層2よりも低い透明電極材料を上部電極3に適用して、上部電極3の下面と下部電極4の上面との間で光を多重反射させる。このとき、多重反射した光同士が同位相となって強め合うように、強磁性強誘電体層2の厚さを、当該強磁性強誘電体層2の屈折率、入射光L0の波長および入射角に基づいて設計することが好ましい。あるいは、強磁性強誘電体層2の上または下に、屈折率が強磁性強誘電体層2と近似する絶縁膜を積層して、合計の厚さで調整することもできる。または、屈折率が強磁性強誘電体層2と近似する透明電極材料を上部電極3に適用して、上部電極3の上面と下部電極4の上面との間で光を多重反射させてもよい。この他に、強磁性強誘電体層2の下に、屈折率が強磁性強誘電体層2よりも高い絶縁膜を積層して、強磁性強誘電体層2の下面と下部電極4の上面との間で光を多重反射させてもよい。なお、これらの構造において、上部電極3,3間の光変調素子1外の領域から出射した光についても同等の旋光角となるように、絶縁層61を、屈折率が上部電極3と近似する絶縁材料で形成したり、あるいは前記したように反射防止膜として、光変調素子1外の領域から光を出射しない構造とすることが好ましい。また、これらの構造に前記の磁気転写膜を組み合わせてもよく、光変調度をいっそう大きくすることができる。
反射型の空間光変調器10は、下部電極4が、光変調素子1の平面視形状に分割、分離して形成されて、光変調素子1毎に設けられたトランジスタに接続されてもよい(図示せず)。トランジスタは、例えばMOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)であり、基板5にSi基板を適用してその表層に形成される。空間光変調器10はさらに、X方向、Y方向にそれぞれ延設した金属電極材料からなる配線を備え、一方がトランジスタのゲートに接続するゲート線(第3配線)、他方がソースに接続するデータ線(第2配線)となり、また、ドレインに下部電極4が接続する。このような構造の空間光変調器10において、上部電極3は、強磁性強誘電体層2と同様、一体に連続した膜(第1配線)に形成することができる。すなわち、トランジスタを備えた空間光変調器10は、アクティブマトリクス駆動方式の液晶ディスプレイ(LCD)に類似した構成となる。また、配線等のパターニングされた部材が光路上にないので、特に画素が微細化されたときに、回折光によるノイズが発生し難い。そして、空間光変調器10を駆動するために、パルス電源を上部電極3とデータ線に接続し、さらに、トランジスタにゲート電圧を入力するための電源をゲート線に接続する。あるいは、ゲート電圧の方をパルス入力してもよい。なお、このような空間光変調器10においては、光変調素子1が、前記変形例に挙げたような絶縁材料を強磁性強誘電体層2(電極3,4間)に積層せず、磁気転写膜を設ける場合には導電性のものを適用する。
以上のように、本発明の実施形態に係る光変調素子によれば、一対の電極を備えて電気的に磁化を連続的に変化させることができるので、2値の光だけでなく中間の1以上の光に変調することができる。また、このような光変調素子を配列した本発明の実施形態に係る空間光変調器によれば、前記電極を行方向と列方向とに延設した配線で構成した簡素な構造とすることができ、さらに1画素に1個の光変調素子を備えて階調表示することができるので、高精細で画素の開口率が高く、多階調表示が可能になり、また、駆動する際に電流が流れないので省電力化することができる。
以上、本発明の光変調素子および空間光変調器を実施するための各実施形態について述べてきたが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。
10 空間光変調器
1 光変調素子
2 強磁性強誘電体層(強磁性と強誘電性とを有する層)
3 上部電極(電極)
4 下部電極(電極)
5 基板
61,62 絶縁層

Claims (7)

  1. 光変調層および前記光変調層の上下に設けられて垂直に電界を印加する一対の電極を備え、入射した光の偏光方向を、前記光変調層の磁化の向きおよび大きさに対応した角度で変化させて出射する光変調素子であって、
    前記一対の電極の少なくとも一方が光を透過し、
    前記光変調層は、強磁性と強誘電性とを有する層を含み、電界を印加されると、前記電界と同じ向きの磁化を有する領域が、前記電界の強さまたは印加時間に対応して増加することにより、磁化の大きさが変化することを特徴とする光変調素子。
  2. 請求項1に記載の光変調素子を二次元配列して備える空間光変調器であって、
    前記一対の電極の一方と他方が、前記二次元配列した光変調素子の行毎と列毎にそれぞれ延設されて、第1配線と第2配線を形成している空間光変調器。
  3. 請求項1に記載の光変調素子を二次元配列して備える空間光変調器であって、
    前記二次元配列した光変調素子の前記一対の電極の一方が、光を透過し、かつ互いに連結して一体の第1配線を形成し、
    前記光変調素子毎に、前記一対の電極の他方に接続するトランジスタを備え、
    前記トランジスタを経由して前記一対の電極の他方と接続する第2配線と、前記トランジスタのゲートに接続する第3配線と、が前記二次元配列した光変調素子の行毎と列毎とにそれぞれ延設されている空間光変調器。
  4. 請求項2または請求項3に記載の空間光変調器を備える空間光変調システムであって、
    N通り(Nは2以上の自然数)の大きさの電圧をパルス出力するパルス電源を、前記空間光変調器の前記第1配線と前記第2配線の間に接続して、最多で2N階調表示する空間光変調システム。
  5. 請求項2または請求項3に記載の空間光変調器を備える空間光変調システムであって、
    一定の大きさの電圧をN通り(Nは2以上の自然数)のパルス幅でパルス出力するパルス電源を、前記空間光変調器の前記第1配線と前記第2配線の間に接続して、最多で2N階調表示する空間光変調システム。
  6. 請求項3に記載の空間光変調器を備える空間光変調システムであって、
    N通り(Nは2以上の自然数)の大きさの電圧を出力する電源を、前記空間光変調器の前記第1配線と前記第2配線の間に接続し、電圧をパルス出力するパルス電源を前記空間光変調器の前記第3配線に接続して、最多で2N階調表示する空間光変調システム。
  7. 請求項3に記載の空間光変調器を備える空間光変調システムであって、
    一定の大きさの電圧を出力する電源を前記空間光変調器の前記第1配線と前記第2配線の間に接続し、N通り(Nは2以上の自然数)のパルス幅でパルス出力するパルス電源を、前記空間光変調器の前記第3配線に接続して、最多で2N階調表示する空間光変調システム。
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