JP2014038894A - マルチフェロイック薄膜及びそれを用いたデバイス - Google Patents

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Hiroshi Naganuma
博 永沼
Ara Begum Husne
アラ ベガン フスネ
Miho Kubota
美穂 窪田
Takashi Sato
敬 佐藤
Mikihiko Okane
幹彦 大兼
Yasuo Ando
康夫 安藤
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Abstract

【課題】キュリー温度が室温以上で磁化の大きいマルチフェロイック薄膜及びマルチフェロイック薄膜を用いたデバイスを提供する。
【解決手段】マルチフェロイック薄膜は、Bi(Fe1-xCox)O3薄膜(ここで組成xは、0<x<1)からなり、厚さが1.8nm以下で、かつ、室温において、30emu/cm3以上の磁化と100μC/cm2以上の自発分極とを有している。Bi(Fe1-xCox)O3薄膜は、正方晶、菱面体晶、単斜晶の何れかの結晶構造を有している。Bi(Fe1-xCox)O3薄膜は、Bi(Fe0.9Co0.1)O3からなる。マルチフェロイック薄膜を用いたデバイスとして、スピンフィルタ素子1は、非磁性層2からなる第1の電極2aと、第1の電極2a上に形成されるBi(Fe1-xCox)O3からなるマルチフェロイック薄膜3と、該マルチフェロイック薄膜3上の強磁性層4からなる第2の電極4aと、を含んで構成される。
【選択図】図14

Description

本発明はマルチフェロイック薄膜及びそれを用いたデバイスに関する。
不揮発性で高速動作が可能な次世代メモリとして、強磁性体を記録媒体とするMRAM(Magnetic Random Access Memory)や、強誘電体を記録媒体とする誘電体メモリが開発されている。
強磁性体と強誘電体との二つの性質を有している材料は、マルチフェロイック材料と呼ばれている。マルチフェロイック材料は、例えば従来のMRAMをさらに高機能にする材料として研究されている。
BiやFeを含有するBiFeO3という材料がマルチフェロイック材料として研究されている。BiFeO3はBFOとも呼ばれ、室温(RT)以上で種々の性質を有している。BiFeO3は、1100Kという遷移温度(TC)を有し、100〜150μC/cm2という大きな自発分極を有している。BiFeO3は、反強磁性体が常磁性体となるネール温度(TN)が653Kである。しかしながら、BiFeO3は、反強磁性のG型スピン構造に基づいて自発磁化は非常に小さい。BiFeO3の反強磁性のスピン配置は、微視的に磁性を無くすので磁性応用には適していない。
近年、BiFeO3のFeの一部をCoに置換した材料が、BiFeO3と比較すると室温において大きな飽和磁化を示すことが報告された。BiFeO3のFeの一部をCoに置換した材料は、組成がBi(FexCoy)O3で表され、BFCOとも呼ばれている(非特許文献1参照)。
非特許文献2には、La0.1Bi0.9MnO3(LBMOと呼ぶ。)からなるマルチフェロイック材料を、トンネル障壁としたスピンフィルタ効果素子が報告されている
図22は、非特許文献2で報告されたスピンフィルタ効果素子の図であり、(a)は断面図を、(b)はスピンフィルタ効果素子に電圧を印加したときのバンド図を、(c)は磁気抵抗曲線を示している。図22(a)に示すように、スピンフィルタ効果素子は、SrTiO3基板上に、La1-xSrxMnO3(LSMOと呼ばれている。)からなる強磁性層と、トンネル障壁となる厚さが4nmのLa0.1Bi0.9MnO3薄膜と、非磁性の金(Au)層が積層された構造を有している。
スピンフィルタ効果素子では、LSMOからなる強磁性層の磁化を外部磁界で反転させることによって磁気抵抗効果を得ることができる。この場合の磁気抵抗変化率は、マルチフェロイック薄膜のエネルギー準位のスピン分裂に依存し(図22(b)参照)、それが大きいほどより大きなトンネル磁気抵抗が期待される。
図22(c)は、非特許文献2で報告されたスピンフィルタ効果素子の3Kにおけるトンネル磁気抵抗を示す図であり、2つの分極状態において外部磁場を印加したときの磁気抵抗曲線を示している。
特開2009−81390号公報
Husne Ara Begum, Hiroshi Naganuma, Mikihiko Oogane and Yasuo Ando, Materials, 4, 1087, 2011 Martin Gajek et al., Nature Mat., 6, 296,2007 Dan Xie et al., Appleid Physics Letters, 97, 172901, 2010 Hiroshi Naganuma and Soichiro Okamura, Journal of Applied Physcis, 101, 09M103, 2007
非特許文献2で報告されているLa0.1Bi0.9MnO3(LBMOと呼ぶ。)からなるマルチフェロイック材料は、キュリー温度が非常に低いので室温で動作しない。
従来のLBMOからなるマルチフェロイック薄膜では、極薄膜にしたときに磁化の増大が得られないという課題があった。
本発明は上記課題に鑑み、キュリー温度が室温以上で磁化の大きいマルチフェロイック薄膜を提供することを第1の目的とし、マルチフェロイック薄膜を用いたデバイスを提供することを第2の目的としている。
本発明者らは、キュリー温度が室温以上のマルチフェロイック薄膜を得るために鋭意研究を行った結果、基板上にスパッタリング法で良好な膜を形成することにより、厚さが数nm以下でキュリー温度が室温以上で、かつ、磁化が大きいマルチフェロイック薄膜を形成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
上記第1の目的を達成するため、本発明のマルチフェロイック薄膜は、Bi(Fe1-xCox)O3薄膜(ここで組成xは、0<x<1)からなり、厚さが1.8nm以下で、かつ、室温において、30emu/cm3以上の磁化と100μC/cm2以上の自発分極とを有している。
上記構成において、Bi(Fe1-xCox)O3薄膜は、好ましくは、正方晶、菱面体晶、単斜晶の何れかの結晶構造を有している。このBi(Fe1-xCox)O3薄膜は、好ましくは、Bi(Fe0.9Co0.1)O3からなる。
上記第2の目的を達成するため、本発明のスピンフィルタ素子は、非磁性層からなる第1の電極と、第1の電極上に形成されるBi(Fe1-xCox)O3からなる上記の何れかに記載のマルチフェロイック薄膜と、マルチフェロイック薄膜上の強磁性層からなる第2の電極と、含んでいる。
本発明によれば、上記記載のスピンフィルタ素子を不揮発性メモリ素子とするメモリが提供できる。
上記構成において、スピンフィルタ素子は、好ましくは、マトリクス状に配設されている。さらに、書き込み及び読み出し回路を備えていてもよい。
本発明の磁壁移動を用いた記憶素子は、非磁性層からなる第1の電極と、第1の電極上に形成されるBi(Fe1-xCox)O3からなる上記の何れかに記載のマルチフェロイック薄膜と、マルチフェロイック薄膜上に形成される強磁性層からなる第2の電極と、マルチフェロイック薄膜に形成される第1の制御電極及び第2の制御電極と、を含み、第1の制御電極及び第2の制御電極によりマルチフェロイック薄膜中に形成される磁壁を移動する。
本発明によれば、上記記載の磁壁移動を用いた記憶素子を不揮発性メモリ素子とするメモリが提供できる。上記構成において、スピンフィルタ素子は、好ましくは、マトリクス状に配設されている。さらに、書き込み及び読み出し回路を備えていてもよい。
本発明によれば、上記何れかに記載のマルチフェロイック薄膜を用いた光スイッチを提供することができる。
本発明のマルチフェロイック薄膜によれば、極薄膜においてキュリー温度が室温以上であり、室温において大きな磁化が得られる。
本発明のスピンフィルタ効果素子によれば、上述のマルチフェロイック薄膜をトンネル障壁に用いることで、室温かつ低外部磁界で非常に大きなTMRを得ることができる。
本発明の磁壁移動を用いた記憶素子によれば、上記のマルチフェロイック薄膜をトンネル障壁に用い、この膜内の磁壁移動により、室温かつ低外部磁界で非常に大きなTMRを得ることができる。
本発明のマルチフェロイック薄膜を用いたセンサによれば、室温で高速の光スイッチが得られる。
Bi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜の厚さをそれぞれ、0.6nm〜7.2nmとしたときの300Kにおける磁化特性を示す図である。 Bi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜の厚さに対する磁化の関係を示す図でありる。 Bi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜の厚さに対する単位面積当たりの磁化の関係を示す図である。 厚さが0.6〜60nmのBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜のXRDパターンを示す図である。 厚さが0.6、1.2、1.8、2.4nmのBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜のXRDパターンを示す図である。 厚さが2.4〜7.2nmのBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜のXRDパターンにおけるBFCO(003)からの回折ピークの半値幅(FWHM)を示す図である。 厚さが2.4〜7.2nmのBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜の結晶のグレインサイズを示す図である。 厚さが1.2〜7.2nmのBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜の格子定数を示す図である。 (a)〜(d)は、厚さが1.2nm及び4.8nmのBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜及び従来法によるBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜の表面のAFM(原子間力顕微鏡)像を示す図である。 厚さが0.6nm〜7.2nmのBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜の表面粗さの関係を示す図である。 厚さが1.2nmのBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜の断面の透過電子顕微鏡(TEM)像を示す図である。 厚さが1.2nmのBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜の断面の高分解能透過電子顕微鏡(TEM)像を示す図である。 厚さが1.2nmのBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜の断面の格子を模式的に示す図である。 本発明のスピンフィルタ効果素子の構成を示す断面図である。 本発明のスピンフィルタ効果素子を用いた強磁性体共鳴発振器の構成を示す模式図である。 本発明のスピンフィルタ効果素子を用いた強磁性体共鳴発振器の動作を説明する図である。 本発明の磁気抵抗素子を記憶素子としたメモリの構成を模式的に示す図である。 本発明の磁壁移動を用いた記憶素子の構成を示す断面図である。 本発明の磁気抵抗素子を記憶素子としたメモリの構成を模式的に示す図である。 本発明のBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜を用いた光スイッチの構成を示す模式断面図である。 本発明のBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜を用いた光スイッチの磁場制御を示す模式図である。 非特許文献1で報告されたスピンフィルタ効果素子の図で、(a)は断面図、(b)はスピンフィルタ効果素子に電圧を印加したときのバンド図、(c)は磁気抵抗曲線を示す図である。
以下、本発明によるマルチフェロイック薄膜及びそれを用いたデバイスの実施の形態を図面により詳細に説明する。
本発明のマルチフェロイック薄膜は、Bi(Fe1-xCox)O3薄膜(ここで組成xは、0<x<1)からなり、厚さが1.8nm以下で、かつ、室温において、30emu/cm3以上の磁化と100μC/cm2以上〜150μC/cm2の自発分極とを有している。
Bi(Fe1-xCox)O3からなるマルチフェロイック薄膜の結晶構造は、正方晶に限らず、菱面体晶、単斜晶であってもよい。
Bi(Fe1-xCox)O3薄膜の組成は、例えばBi(Fe0.9Co0.1)O3である。以下のBi(Fe1-xCox)O3薄膜は、Bi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜として説明する。
本発明のBi(Fe0.9Co0.1)O3からなるマルチフェロイック薄膜は、格子定数がほぼ同じ基板、例えば(100)面を有しているSrTiO3基板上にスパッタ法等により形成することができる。SrTiO3はSTOとも呼ぶ。(100)面を有している例えば、正方晶のSrTiO3基板に形成したBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜は、エピタキシャル成長膜であり、SrTiO3基板と同様に(100)面を有している正方晶の薄膜である。Bi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜の厚さは、0.6〜60nmの厚さとすることができる。
Bi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜の厚さを0.6nm〜7.2nmとしたときの300Kの室温における磁化特性について説明する。
図1は、Bi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜の厚さを0.6nm〜7.2nmとしたときの300Kにおける磁化特性を示す図である。図1の横軸は磁場(kOe)を、縦軸は磁化(emu/cm3)を示している。磁化は、面内磁化である。磁化特性は、ジョセフソン接合からなるSQUID素子を用いたSQUID磁力計(カンタムデザイン社製、型式:MPMS)により測定した。
図1に示すように、Bi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜の厚さを7.2nm、6.0、4.8、2.4、1.8、1.2、0.6nmとした場合、Bi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜の飽和磁化(Ms)は、それぞれ、22、44、35、138、76、96、169emu/cm3である。さらに、残留磁化は、0.5emu/cm3程度と小さいことがわかった。これから、Bi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜の厚さが1.8nm以下で、磁化が大きくなり、30emu/cm3以上となることが分かる。Bi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜の磁化に関するキュリー温度は、500K〜600K程度であった。
図2は、Bi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜の厚さに対する磁化の関係を示す図で、横軸はBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜の厚さを、縦軸は磁化(emu/cm3)を示している。図2に示すように、Bi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜の磁化は、厚さが1.8nm以下で急激に大きくなることがわかる。
図3は、Bi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜の厚さに対する単位面積当たりの磁化の関係を示し、横軸はBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜の厚さ、縦軸は単位面積当たりの磁化(emu/cm2)を示している。図3に示すように、Bi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜の磁化は、厚さが1.2〜7.2nmでは、約2.6×10-5emu/cm2と一定であり、厚さが0.6nm以下で急激に大きくなることがわかる。
図2及び図3の結果から、室温におけるBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜の大きな磁化は、基板とBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜の界面に由来していると推定される。
〔Bi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜の製造方法〕
本発明のBi(Fe1-xCox)O3薄膜は、例えば基板上にスパッタ法、蒸着法、レーザアブレーション法、MBE法等の成膜方法により形成することができる。以下の説明では、Bi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜をスパッタ法により形成する方法について説明する。
〔厚さが60nmのBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜の成膜〕
Bi(Fe1-xCox)O3薄膜の組成は、用いるターゲットにより制御することができる。以下に、厚さが60nmのBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜をスパッタ法で成膜したときの条件の一例を示す。スパッタ成膜装置として、ANELVA社製(型式:SPF332H)の装置を使用した。
真空度:4×10-4Pa以下
タッゲート(焼結):Bi0.9(Fe0.9Co0.1)O3
スパッタ電力:10〜20W
ArとO2の圧力:0.1〜0.2Pa
Bi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜の厚さ:60nm
基板加熱温度:600℃
厚さが60nmの比較的厚いBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜は、基板加熱温度を400℃、500℃、600℃で成膜できるが、X線回折の半値幅(FWMH)が500℃以上で0.8度以下になるので、基板加熱温度を600℃とした。
Bi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜のグレインサイズは、基板加熱温が500℃〜600℃で、7.2〜8.4nmであった。
Bi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜の格子定数は、基板加熱温が500℃〜600℃でArとO2の圧力が、0.12〜0.14Paにおいて、0.395nm〜0.41nmとなった。
〔厚さが0.6〜60nmのBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜の成膜〕
以下に、厚さが0.6〜60nmのBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜をスパッタ法で成膜したときの条件の一例を示す。
真空度:4×10-4Pa以下
タッゲート(焼結):Bi0.9(Fe0.9Co0.1)O3
スパッタ電力:15W
ArとO2の圧力:0.12Pa
Bi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜の厚さ:0.6〜60nm
基板加熱温度:600℃
図4は、厚さが1.2〜7.2nmのBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜のX線回折(XRD)パターンを示し、横軸は角度(°)、即ちX線の原子面への入射角度θの2倍に相当する角度であり、縦軸はX線回折強度(任意目盛)を示している。X線回折パターンは、XRD装置(Bruker社製 型式:DiscoverD8)により測定した。図4に示すように、例えば2θが72°近傍のピークは、SrTiO3基板の(003)の回折ピークである。
図5は、厚さが0.6、1.2、1.8、2.4nmのBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜のXRDパターンを示す。横軸及び縦軸は図4と同じである。図5に示すように、2θが23°近傍におけるBFCO及びSTOの(001)回折が観測されていることが分かる。ここで、Bi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜の組成は、走査型電子顕微鏡に装着したエネルギー分散型のX線分析装置で調べた。Bi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜中の(Fe0.9Co0.1)のFeの組成xは、0.9±0.05程度である。
図6は、厚さが2.4〜7.2nmのBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜のXRDパターンにおけるBFCO(003)からの回折ピーフの半値幅(FWHM)を示し、横軸はBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜の厚さ(nm)、縦軸はFWMH(°)である。図6に示すように、半値幅は、Bi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜の厚さが7.2nmで0.8°であり、膜厚が薄くなると徐々に大きくなることが分かる。
図7は、厚さが2.4〜7.2nmのBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜の結晶のグレインサイズを示す図で、横軸はBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜の厚さ(nm)、縦軸はグレインサイズ(nm)である。図には、厚さが60nmのBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜のグレインサイズを点線で示している。図7に示すように、Bi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜のグレインサイズは、厚さが7.2nmで約12nmであり、厚さが2.4nmで約6nmとなり、膜厚が薄くなると徐々に小さくなることが分かる。膜厚とグレインサイズから、スパッタ法で成膜膜したBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜は、ほぼ単結晶であると推定される。
図8は、厚さが1.2〜7.2nmのBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜の格子定数を示す図で、横軸はBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜の厚さ(nm)、縦軸は格子定数(nm)である。図8には、STO基板、バルクBFO、厚さが60nmのBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜の格子定数を、それぞれ点線で示している。図8に示すように、厚さが1.2〜7.2nmのBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜の格子定数は、厚さが60nmのBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜の格子定数と同じであり、約0.41nm(4.1Å)であることが分かる。
図9(a)〜(d)は、厚さが1.2nm及び4.8nmのBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜及び従来法によるBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜の表面のAFM(原子間力顕微鏡)像を示す図である。図9には、有機金属ガスを用いた化学蒸気堆積法(MOCVD、非特許文献2参照)及び化学溶液堆積法(CSD、非特許文献3参照)の表面のAFM像も一緒に示している。原子間力顕微鏡は、セイコーインスツル株式会社(SII)製の装置(型番:SPI3800N)を用いた。
図9に示すように、厚さが4.8nm(図9(a)参照)及び1.2nm(図9(b)参照)のBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜の表面粗さは何れも0.4nmであった。有機金属ガスを用いたCVD法(MOCVD法)及び化学溶液堆積法(Chemical Solution Deposition、CSD法とも呼ぶ。)の表面粗さは、それぞれ6.3nm(図9(c)参照)、6.2nm(図9(d)参照)である。これから、本発明のBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜の表面粗さは、従来のMOCVD法及びCSD法で形成したBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜よりも著しく表面が平坦であることが判明した。
図10は、厚さが0.6〜7.2nmのBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜の表面粗さの関係を示す図である。図10には、STO基板の表面粗さである0.2nmを点線で示している。図10に示すように、Bi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜の表面粗さは、膜厚が0.6〜7.2nmでは0.3〜0.4nmであり、厚さが7.2nmでは0.5nmと大きくなることが分かる。
図11は、厚さが1.2nmのBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜の断面の透過電子顕微鏡(TEM)像を示す図である。図11に示すように、厚さが1.2nmのBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜が、STO基板上に平坦に形成されていることが分かる。
図12は、厚さが1.2nmのBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜の断面の高分解能透過電子顕微鏡(TEM)像を示す図である。図12の左下に示す挿入図は、高分解能透過電子顕微鏡像から求めた高速フーリエ変換(FFT)像である。高分解能透過電子顕微鏡は、日本電子株式会社(JEOL)製の装置(型番:ARM200F)を用いた。
図12に示すように、厚さが1.2nmのBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜とSTO基板との格子の縁が明瞭に形成されていることが分かる。さらに、高速フーリエ変換(FFT)像からは、矢印で示す回折点が観察され、Bi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜が結晶であることが分かる。
図13は、厚さが1.2nmのBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜の断面の格子を模式的に示す図である。図13に示すように、SrTiO3基板上に厚さが0.6nm以下の歪んだBFCO層(歪みBFCO層)と、この層上にc/aの小さい正方晶のBFCO層が形成されている。ここで、aはa軸の格子定数であり、cはc軸の格子定数である。
次に、本発明のマルチフェロイック薄膜を用いたデバイスについて説明する。
〔スピンフィルタ効果素子〕
図14は本発明のスピンフィルタ効果素子1の構成を示す断面図である。図14に示すように、本発明のスピンフィルタ効果素子1は、基板2と、基板2上に形成されたBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜3と、Bi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜3上に形成された強磁性層4とを備えた構造を有している。基板2は、例えば導電性の基板であり、LaxSr1-xTiO3基板を使用することができる。導電性の基板2は非磁性電極2a(第1の電極)となり、強磁性層4は、強磁性電極4a(第2の電極)となる。強磁性層4の磁化は常に一定の方向に固定されている層である。強磁性層4は、固定層又は参照層と呼ばれている。
書き込み用直流電源5は、非磁性電極2aと強磁性電極4aとに印加され、電界により磁化方向を反転させるための書き込み用の直流電源となる。読み出し用直流電源6はスピンフィルタ効果素子1の抵抗を読み取るための電源であり、書き込み用直流電源5よりも電圧の低い直流電源である。外部磁界が例えば膜面内に平行に印加されていても良い。
本発明のスピンフィルタ効果素子1で使用するBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜3は図22の従来技術と同様な素子構造を有している。しかしながら、室温で磁化の大きなBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜3を用いているので、室温において分極と磁化をそれぞれ独立に制御する4値メモリとして使用できる。
Bi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜3の分極方向は、非磁性電極2aと強磁性電極4aとに印加される電界により制御される。つまり、分極方向は非磁性電極2aと強磁性電極4aとに印加される電界により反転することができ、この状態でスピンフィルタ効果素子1は、2通りの抵抗を示す。
さらに、Bi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜3の磁化方向は外部磁場により方向を制御する。つまり、Bi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜3の磁化方向は外部磁場によりその磁化方向を制御することができるので、この状態でスピンフィルタ効果素子1は、Bi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜3と強磁性層4との磁化方向が平行か反平行かにより2通りの抵抗を示す。これにより、本発明のスピンフィルタ効果素子1では、Bi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜3を用いることにより、上記4通りの何れの抵抗状態も室温で実現することができる。
ここで、Bi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜3は、上述したように室温で強磁性を有し、その厚さはトンネル現象が生起するように十分に薄く形成されている。書き込み用直流電源5は、非磁性電極2aからの電子が、Bi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜3中をトンネルして、強磁性電極4aへトンネルした電子を流す場合には、非磁性電極2a側を負とし、強磁性電極4aが正となるように接続される。
非磁性電極2aからの電子が、Bi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜3中をトンネルして、スピン電子のみをBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜3からなるトンネル障壁を介して強磁性電極4a側にトンネルすることができる。トンネル障壁となるBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜3がスピンに依存することで、非磁性金属電極2aからのトンネル電子による抵抗又はコンダクタンスはスピンに依存し、スピンに依存したトンネル現象を示す。すなわち、トンネル障壁はスピンフィルタとして働く。
また、本発明のスピンフィルタ素子1では外部磁界を印加し、このスピンフィルタ効果を利用すると共に、外部磁界によりBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜3の磁化、即ちスピンを反転させることによって、大きなトンネル磁気抵抗効果(TMR)が得られる。これにより、本発明のスピンフィルタ素子1によれば、室温かつ低外部磁界で、非常に大きなTMRを得ることができる。
本発明のスピンフィルタ素子1では、トンネル層がBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜3からなるマルチフェロイック薄膜で構成されているので、従来の強磁性体からなるトンネル層から構成されるスピンフィルタ素子や3Kとういう極低温でしか動作しない非特許文献2のスピンフィルタ素子と比較すると、以下の特徴を有している。
特徴:
(1)電界により書き込むため、書き込み電力が不要か、著しく低減化できる。これ により、超低消費電力の不揮発性メモリを実現できる。
(2)電極以外の機能層が、Bi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜3及び強磁性層4の 2層しかないため、構造がシンプルで大量生産ができるという利点が生じる。
(3)磁化の向き、分極の向きから4つの電気抵抗状態が実現できる。これにより、 情報記録量の飛躍的な増大が図れる。
本発明のスピンフィルタ効果素子1は、例えば導電性の基板2であるLaxSr1-xTiO3基板を用い、この導電性基板上にBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜3と強磁性体層4とをスパッタ法、蒸着法、レーザアブレーション法、MB法で形成した後に、マスク工程等により所定の大きさの電極を形成することで作製することができる。
〔強磁性体共鳴発振器〕
図15は本発明のスピンフィルタ効果素子1を用いた強磁性体共鳴発振器10の構成を示す模式図である。
図15に示すように、本発明の本発明のスピンフィルタ効果素子1を用いた強磁性体共鳴発振器10は、スピンフィルタ効果素子1と、スピンフィルタ効果素子1の非磁性電極2aと強磁性電極4aとにスイッチ12を介して接続される交流電源14と、から構成されている。スピンフィルタ効果素子1に交流電源14から交流電界を印加すると、電気−磁気結合を介して強磁性体共鳴発振が生起する。交流電界のため、従来の交流電流によるスピントルクダイオード効果を用いた強磁性共鳴に比べて消費電力が低減できる。
図16は、本発明のスピンフィルタ効果素子1を用いた強磁性体共鳴発振器10の動作を説明する図である。交流電界を素子に印加することにより、Bi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜3からなるマルチフェロイック薄膜が有する電気−磁気結合を介して、Bi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜3の磁化方向が時間と共に交流の周期と同様に振動する。強磁性共鳴の周波数はBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜3の磁気異方性と飽和磁化に依存し、膜厚などで制御が可能である。
〔スピンフィルタ素子を用いたメモリ〕
本発明のスピンフィルタ素子1を記憶素子としたメモリ20について説明する。
図17は、本発明の磁気抵抗素子1を記憶素子としたメモリ20の構成を模式的に示す図である。
本発明のメモリ20は、上記構成の本発明のスピンフィルタ素子1(図14参照)を、図示しない基板上にX,Yのマトリクスとなるように格子状に多数配列した構成を有している。各スピンフィルタ素子1には、メモリセルの選択用トランジスタ22が配設されている。
X方向(行方向)には、スピンフィルタ素子1の一端に接続されるビット線24が配設されている。スピンフィルタ素子1の他端は、選択用トランジスタ22を介して接地されている。Y方向(列方向)には、選択用トランジスタ22のゲートに接続されるワード線26が配設されている。図示していない書き込み及び読み出し用の周辺回路を設ければ、大容量のメモリ20を構成することができる。選択用トランジスタ22及び周辺回路は、MOSトランジスタを用いて作製することができる。これらの回路は、低消費電力化のために相補型MOSからなる集積回路、所謂CMOS集積回路で構成してもよい。
図17のメモリ20では、任意のビット線24とワード線26を選択してこれらの交点にあるスピンフィルタ素子1に電圧を印加することにより、書き込みができる。この書き込み状態、つまり記憶の読み出しは、任意のビット線24とワード線26を選択してこれらの交点にあるスピンフィルタ素子1に分極や磁化反転が生じない電流を流すことにより電流値から抵抗を検出して行うことができる。
本発明のメモリ20によれば、記憶が磁化又は分極で行われるので不揮発性記憶が可能である。本発明のメモリ20において、磁化の向き又は分極の向きの切り換えは高速に行うことができるので、読み出し及び書き込みを高速で行うことができる。
本発明のメモリ20は、以下のようにして製作することができる。
最初に、Si等の基板上に選択用トランジスタ22及び周辺回路をCMOS工程で形成し、その後で、本発明の磁気メモリ20の各メモリセル1を形成すればよい。
具体的には、上記の工程で製作した選択用トランジスタ22及び周辺回路の全体をさらに絶縁膜で被覆し、スピンフィルタ素子1の各電極だけに接続される領域の窓開けを行い、スピンフィルタ素子1を形成する。次に、形成したスピンフィルタ素子1、各メモリセル、ビット線24、ワード線26等の配線を、層間絶縁層と電極配線による多層配線層で形成すればよい。
ここで、各材料の堆積には、スパッタ法以外には、CVD法、蒸着法、レーザアブレーション法、MBE法などの通常の薄膜成膜法を用いることができる。また、所定の形状の電極や集積回路の配線を形成するためのマスク工程には、光露光やEB露光などを用いることができる。
〔磁壁移動を用いた記憶素子〕
図18は、本発明の磁壁移動を用いた記憶素子30の構成を示す断面図である。この図に示すように、本発明の磁壁移動を用いた記憶素子30は、スピンフィルタ効果素子1のBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜3にさらに磁壁移動用書き込み電圧を印加する制御電極32,33を二つ設けた構造を有している。二つの制御電極32,33をそれぞれ第1の制御電極32と第2の制御電極33と呼ぶ。
Bi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜3上に形成される強磁性層4は、磁化が固定された層であり、固定層又は参照層と呼ばれている。
〔書き込み方法〕
Bi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜3は、第1及び第2の電極32,33に印加される電圧により、強誘電体の分域が移動することに伴って電気−磁気結合効果によって磁壁3aが移動する。Bi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜3の磁化方向は、磁壁3aの移動により固定層となる強磁性層4の磁化の向きに対して、平行又は反平行の状態にすることができる。
〔読み出し方法〕
記憶素子30の素子抵抗の読み出しには、電極4aと電極2aを用いて磁化方向の平行・反平行の抵抗を、スピンフィルタ素子1のスピンフィルタ効果により検出して行うことができる。基本動作原理はトンネル接合素子を用いた3端子のスピントランジスタと同じであるが、磁壁3aが移動する層にBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜3からなるマルチフェロイック薄膜を導入することにより、従来の素子(特許文献1参照)が磁壁の移動に電流を用いたのに比較して、本発明の磁壁移動を用いた記憶素子30では電界により磁壁3aを移動させる。これにより、書き込み時の動作電力を大幅に低減させることができる。
Bi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜3の磁化方向が、固定層の磁化の向きに対して平行の場合には、スピンフィルタ効果素子1の抵抗は小さい状態となる。この状態を「0」とする。一方、Bi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜3の磁化方向が、固定層の磁化の向きに対して反平行の場合には、スピンフィルタ効果素子1の抵抗は大きい状態となる。この状態を「1」とする。これにより、磁壁移動を用いた記憶素子30に「0」と「1」の状態を書き込むことができる。
スピンフィルタ効果素子1の上下の電極間に生じる抵抗を測定することにより、磁壁3aの位置による上記「0」又は「1」の書き込み状態を判別することができる。具体的には、スピンフィルタ効果素子1の上下の電極間に電圧を印加して、スピンフィルタ効果素子1に流れる電流の大小により「0」又は「1」に相当する抵抗を判別できる。
本発明の磁壁移動を用いた記憶素子30によれば、マルチフェロイック材料を利用することで、第1及び第2の制御電極32,33に電圧を印加して電界により情報を書き換えられる。従来の磁壁移動を用いた記憶素子によれば、電流により磁壁を駆動していたが、本発明の磁壁移動を用いた記憶素子30では、電界制御型スピントランジスタが実現可能となる。これにより、本発明の磁壁移動を用いた記憶素子によれば、マルチフェロイック薄膜をトンネル障壁に用い、この膜内の磁壁移動により、室温かつ低外部磁界で非常に大きなTMRを得ることができる。
〔磁壁移動を用いた記憶素子からなるメモリ〕
本発明の磁壁移動を用いた記憶素子30からなるメモリ40について説明する。
図19は、本発明の磁気抵抗素子1を記憶素子としたメモリ40の構成を模式的に示す図である。本発明のメモリ40は、上記構成の磁壁移動を用いた記憶素子30を、基板上にX,Yマトリクスとなるように格子状に多数配列した構成を有している。各磁壁移動を用いた記憶素子30は、トランジスタ構造を有しているので、図17のメモリ20とは異なり、各記憶素子30には選択用トランジスタ22が不要となる。
X方向(行方向)には、磁壁移動を用いた記憶素子30の一端に接続されるビット線44が配設されている。磁壁移動を用いた記憶素子30の他端は接地されている。
Y方向(列方向)には、磁壁移動を用いた記憶素子30の第1の制御電極32と第2の制御電極33にワード線46が接続されている。図示していないが書き込み及び読み出し用の周辺回路を設ければ、大容量のメモリ40を構成することができる。周辺回路は、MOSトランジスタを用いて作製することができる。これらの回路は、低消費電力化のために相補型MOSからなる集積回路、所謂CMOS集積回路で構成してもよい。
図19のメモリ40では、任意のビット線44とワード線46を選択してこれらの交点にある磁壁移動を用いた記憶素子30に電圧を印加することにより、書き込みができる。この書き込み状態、つまり記憶の読み出しは、任意のビット線44とワード線46を選択してこれらの交点にある磁壁移動を用いた記憶素子30に分極や磁化反転が生じない電流を流すことで、電流値から抵抗を検出して行うことができる。
本発明のメモリ40によれば、記憶が磁化又は分極で行われるので不揮発性記憶が可能である。本発明のメモリ40において、磁化の向き又は分極の向きの切り換えは高速に行うことができるので、読み出し及び書き込みを高速で行うことができる。
本発明のメモリ40は、上記したスピンフィルタ素子1を用いたメモリ20と同様の方法で製作することができる。
〔Bi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜を用いた光スイッチ〕
図20は、本発明のBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜3を用いた光スイッチ50の構成を示す模式図である。このBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜3を用いた光スイッチ50は、導電性の基板2と導電性の基板2上に形成されたBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜3と、Bi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜3上に形成された電極52とから構成されている。このBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜3を用いた光スイッチ50の一端に光54が入射される。
本発明のBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜3を用いた光スイッチ50は、導電性の基板2と電極52との間に直流電圧源56を印加していないとき(オフ状態)には光54が導波する(図20(a)参照)。
一方、導電性の基板2と電極52との間に直流電圧源56を印加する(オン状態)と、光54が導波しなくなる。オン状態では、Bi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜3の圧電効果で歪み、つまり、分極軸方向の変位により、屈折率等が変化し、光54が導波しなくなる(図20(b)参照)。Bi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜3は3程度の高い屈折率を有しているため、非常に高い効率の光スイッチ50が実現できる。
Bi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜3を用いた光スイッチ50の速度は、Bi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜3の分極の切り替え時間即ち、分極反転時間で決まり、ナノ秒以下となる。
〔Bi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜を用いた光スイッチの磁場による制御〕
図21は、本発明のBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜3を用いた光スイッチ60の磁場制御を示す模式図である。図21に示すように、本発明のBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜3を用いた光スイッチ60は、基板2と基板2上に形成されたBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜3とから構成されている。図20に示すBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜3を用いた光スイッチ50との違いは、Bi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜3上に電極52が形成されていない点である。Bi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜3を用いた光スイッチ60の一端に光64が入射される。光スイッチ60は外部磁場62により制御される。
本発明のBi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜3を用いた光スイッチ60は、外部磁場62が印加されない場合には、光64が導波し(図21(a)参照)、外部磁場62が印加されると光64が導波しなくなる(図21(b)参照)。ここで、外部磁場62は、光の伝搬方向に対して直交している必要はない。
Bi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜3を用いた光スイッチ60の速度は、Bi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜3の磁化の切り替え速度で決まり、ナノ秒程度となる。
本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれることはいうまでもない。
1:スピンフィルタ効果素子
2:基板
2a:非磁性電極
3:Bi(Fe0.9Co0.1)O3薄膜
3a:磁壁
4:強磁性層
4a:強磁性電極
5:書き込み用直流電源
6:読み出し用直流電源
10:強磁性体共鳴発振器
12:スイッチ
14:交流電源
20:メモリ
22:選択用トランジスタ
24、44:ビット線
26、46:ワード線
30:磁壁移動を用いた記憶素子
32:第1の制御電極
33:第2の制御電極
40:磁壁移動を用いた記憶素子からなるメモリ
50、60:光スイッチ
52:電極
54、64:光
62:外部磁場

Claims (12)

  1. Bi(Fe1-xCox)O3薄膜(ここで組成xは、0<x<1)からなり、厚さが1.8nm以下で、かつ、室温において、30emu/cm3以上の磁化と100μC/cm2以上の自発分極とを有している、マルチフェロイック薄膜。
  2. 前記Bi(Fe1-xCox)O3薄膜は、正方晶、菱面体晶、単斜晶の何れかの結晶構造を有している、請求項1に記載のマルチフェロイック薄膜。
  3. 前記Bi(Fe1-xCox)O3薄膜は、Bi(Fe0.9Co0.1)O3からなる、請求項1に記載のマルチフェロイック薄膜。
  4. 非磁性層からなる第1の電極と、
    該第1の電極上に形成されるBi(Fe1-xCox)O3からなる請求項1〜3の何れかに記載のマルチフェロイック薄膜と、
    該マルチフェロイック薄膜上の強磁性層からなる第2の電極と、
    を含む、スピンフィルタ効果素子。
  5. 請求項4に記載のスピンフィルタ効果素子を不揮発性メモリ素子とする、メモリ。
  6. 前記スピンフィルタ素子がマトリクス状に配設されている、請求項5に記載のメモリ。
  7. さらに、書き込み及び読み出し回路を備えている、請求項6に記載のメモリ。
  8. 非磁性層からなる第1の電極と、
    該第1の電極上に形成されるBi(Fe1-xCox)O3からなる請求項1〜3の何れかに記載のマルチフェロイック薄膜と、
    該マルチフェロイック薄膜上に形成される強磁性層からなる第2の電極と、
    上記マルチフェロイック薄膜に形成される第1の制御電極及び第2の制御電極と、
    を含み、
    上記第1の制御電極及び第2の制御電極により上記マルチフェロイック薄膜中に形成される磁壁を移動する、磁壁移動を用いた記憶素子。
  9. 請求項8に記載の磁壁移動を用いた記憶素子を不揮発性メモリ素子とする、メモリ。
  10. 前記スピンフィルタ素子がマトリクス状に配設されている、請求項8に記載のメモリ。
  11. さらに、書き込み及び読み出し回路を備えている、請求項8に記載のメモリ。
  12. 請求項1〜3の何れかに記載のマルチフェロイック薄膜を用いた、光スイッチ。
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