JP2017054009A - 空間光変調器 - Google Patents

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大典 加藤
慎太郎 麻生
Shintaro Aso
慎太郎 麻生
秀和 金城
Hidekazu Kinjo
秀和 金城
信彦 船橋
Nobuhiko Funabashi
信彦 船橋
賢一 青島
Kenichi Aoshima
賢一 青島
町田 賢司
Kenji Machida
賢司 町田
久我 淳
Atsushi Kuga
淳 久我
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Hiroshi Kikuchi
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【課題】スピン注入磁化反転素子からなる光変調素子の設けられていない領域からの出射光による明暗の中間状態を排除して、コントラストを向上させた空間光変調器を提供する。【解決手段】空間光変調器10は、金属電極材料からなる下部電極6の上に、下から磁化固定層3、中間層2、磁化自由層11の順に積層してなる光変調素子1を2次元配列して備え、光変調素子1の上に接続された上部電極5を透過して入射した光を、θP,θAPのいずれかの角度で旋光した出射光LP,LAPとして出射する。光変調素子1は、磁化固定層3が磁化自由層11よりも平面視形状が大きく、磁化自由層11を透過せずに下部電極6で反射して出射した出射光Lneが、下部電極6の上の磁化固定層3により角度θPと略一致して旋光しているため、出射光LPと共に偏光子PFoで遮光され、明暗の中間状態に表示されることがなく、良好なコントラストで表示される。【選択図】図3

Description

本発明は、入射した光を磁気光学効果により光の位相や振幅等を空間的に変調して出射する空間光変調器に関する。
空間光変調器は、画素として光学素子(光変調素子)を用い、これをマトリクス状に2次元配列して光の位相や振幅等を空間的に変調するものであって、ディスプレイ技術や記録技術等の分野で広く利用されている。空間光変調器として、従来より液晶が用いられているが、近年では、高速処理かつ画素の1μm以下の微細化の可能性が期待される磁気光学材料を用いた磁気光学式空間光変調器の開発が進められている。
磁気光学式空間光変調器においては、磁性体に入射した光が透過または反射する際にその偏光の向きを変化(旋光)させて出射するファラデー効果(反射の場合はカー効果)を利用している。すなわち磁気光学式空間光変調器(以下、空間光変調器)は、選択された画素(選択画素)における光変調素子の磁化方向とそれ以外の画素(非選択画素)における光変調素子の磁化方向を異なるものとして、選択画素から出射した光と非選択画素から出射した光で、その偏光の回転角(旋光角)に差を生じさせた2値の光に変調する。空間光変調器により変調された2値の光は、その一方の偏光の向きの光を完全に遮光するフィルタ(偏光子)により遮光されて、他方の光のみが取り出されることにより、明/暗(白/黒)に表示される。このような光変調素子の磁化方向を変化させる方法として、光変調素子に磁界を印加する磁界印加方式(例えば、特許文献1)や、光変調素子に電流を供給する、磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)にも適用されているスピン注入方式(例えば、特許文献2,3)がある。
特許文献1に記載された磁界印加方式の空間光変調器は、光変調素子が磁性ガーネット膜のような磁性膜で形成され、2次元配列した光変調素子に磁界を画素毎に印加するために、各光変調素子の周縁に沿って一周する向きに電流が流れる配線を設けている。この空間光変調器は、印加磁界により隣の画素の光変調素子が追随して磁化反転しないように、磁性膜(光変調素子)が画素毎に間隔を空けて分離されているために、数μm以下の微細な画素を形成することは困難である。また、この空間光変調器は、光変調素子の周縁に設けられた配線に供給された電流による合成磁界を利用するために、さらなる画素の微細化を行うと隣の画素へのクロストークが大きくなるという問題がある。
一方、スピン注入方式の空間光変調器は、CPP−GMR(Current Perpendicular to the Plane Giant MagnetoResistance:垂直通電型巨大磁気抵抗効果)素子や、TMR(Tunnel MagnetoResistance:トンネル磁気抵抗効果)素子等のスピン注入磁化反転素子が光変調素子として搭載される。一般的に、スピン注入磁化反転素子は、非磁性膜または絶縁膜(中間層)を挟んだ2つの磁性膜からなる少なくとも3層の積層構造で、膜面に垂直に電流を供給することにより電子のスピンが注入されて、磁性膜の一方が磁化自由層としてその磁化方向が変化する。すなわち、この磁化自由層が前記磁界印加方式の光変調素子に相当する。スピン注入磁化反転素子は、上下面に一対の電極を接続するので、磁界印加方式の光変調素子のように、電極を画素に対して極度に細い配線として形成しなくてよく、配線幅による素子サイズの制約が少ない。さらに、スピン注入磁化反転素子は、駆動電流が膜面での電流密度によるため、素子サイズ(面積)が小さい程電流が低減される上、容易に磁化反転させるために1辺が500nm程度以下、好ましくは100〜300nm程度に形成される。このようなスピン注入磁化反転素子を搭載した空間光変調器は、一対の電極の、少なくともスピン注入磁化反転素子の光の入出射側に接続する電極を構成する配線を透明電極材料で形成して、スピン注入磁化反転素子に光が入射するように構成される。また、スピン注入磁化反転素子は、光変調素子として2次元配列して空間光変調器を構成する場合に、上に接続する配線(電極)と下に接続する配線(電極)とを平面視で互いに直交するストライプ状に形成すればよいので、磁界印加方式よりも画素のいっそうの微細化を可能とする。一方で、スピン注入方式の空間光変調器は、スピン注入磁化反転素子の光変調素子に相当する磁化自由層が、その膜厚が薄く、1回の反射や透過では旋光角が小さいため、誘電体多層膜等を設けて、多重反射により旋光角を増幅させるように構成されることが好ましい(例えば、特許文献4,5)。また、誘電体膜(絶縁膜)に限られず、高屈折率の透明電極材料からなる上側の電極で多重反射させる空間光変調器が開示されている(例えば、特許文献6)。
例えば図8に示すように、スピン注入方式の空間光変調器100は、スピン注入磁化反転素子を光変調素子101として2次元配列して搭載し、その上下に接続する一対の電極として、平面視で互いに直交する配線状の上部電極5および下部電極6が設けられる。隣り合う光変調素子101,101は、それぞれに接続する電極5,6と共に電気的に短絡しないように、また、その磁化自由層11が光変調素子101毎に独立して安定して磁化反転するように、加工精度等にもよるが200nm程度以上の間隔を空けられている。このような空間光変調器100は、光変調素子101,101間、上部電極5,5間および下部電極6,6間のそれぞれに絶縁材料(絶縁層108)が設けられる。絶縁層108は、光変調素子101の各層を構成する磁性膜等と同様に物理蒸着(PVD)法で成膜可能な、SiO2,Al23,Si窒化物等の無機材料が適用され、これらの材料は光を透過させる。空間光変調器100に入射した光L0は、透明電極材料からなる上部電極5を透過して光変調素子101に到達して、当該光変調素子101またはその下の金属電極材料からなる下部電極6で反射して、再び上部電極5を透過して出射する。空間光変調器100からの出射光は、光変調素子101の磁気光学効果により2値の偏光の光LP,LAPに変調され、偏光子(検光子)PFoにより一方の出射光LPが遮光され、他方の出射光LAPが透過して検出器PDに入射する。その結果、検出器PDにおいて、出射光LAPが明表示され(図中、白く表す)、出射光LPが暗表示される(図中、黒く塗り潰して表す)。なお、図8は模式図であり、空間光変調器100については、下部電極6の延設方向に沿った部分断面図で、光路を見易く表すために、上部電極5および絶縁層108にはハッチングを付さず、また、光変調素子101の磁化自由層11および磁化固定層3にその磁化方向を表す黒塗り矢印を付す。
ここで、スピン注入方式の空間光変調器100は、その入射面から見て、前記の通り光変調素子101が間隙を空けて配列されているので、入射光L0のうちの相当量が光変調素子101,101間を埋める絶縁層108に進入する。このような入射光L0がその下の下部電極6で、あるいは下部電極6,6間の絶縁層108と基板109との界面(図8では図示せず)等で反射して出射すると、このような出射光Lneは、変調されていないので偏光の向きが入射光L0と同じであり、光変調素子101から出射した2値の光LP,LAPのいずれとも異なる偏光の向きの光であるため、偏光子PFoで完全には遮光されず、かつ、明表示される光変調素子101からの出射光LAPよりも少ない光量で偏光子PFoを透過する。したがって、変調されていない出射光Lneは、検出器PDで明表示よりも暗い中間調を示し(図中、検出器PDにハッチングを付して表す)、表示のコントラストが低下し、また、このような空間光変調器100をホログラムに使用すると、出射光Lneがノイズとなって像の再生が困難になる。このような出射光Lneを排除するために、例えば絶縁層108において低屈折率材料の層の下に設けた高屈折率材料の層内で光を多重反射させて減衰させる技術が開示されている(特許文献7)。
特許第4596468号公報 特許第4829850号公報 特許第5001807号公報 特開平5−89520号公報 特開平6−111374号公報 特許第4764397号公報 特開2013−45091号公報
しかしながら、光変調素子101,101間に入射して絶縁層108から下部電極6に到達して反射した光Lneは、下部電極6が導電性に優れた金属電極材料からなり、また入射面から近距離(浅い位置)に設けられているために、高い反射率により出射し易い。さらに、スピン注入磁化反転素子からなる光変調素子101は全体の厚さが数十nm以下と薄く、下部電極6上の絶縁層108を特許文献7に開示されているような屈折率の異なる絶縁材料を積層した2層構造としても、光を十分に減衰させることが困難な場合がある。
本発明は前記問題点に鑑み創案されたもので、スピン注入磁化反転素子を光変調素子として搭載し、光変調素子同士の間隙からの電極で反射した出射光を抑制してコントラストを向上させた空間光変調器を提供することを課題とする。
前記課題を解決するために、本発明者らは、光変調素子に入射せずに下部電極で反射した光を変調させて、光変調素子から出射した2値の光の一方と同じ偏光の光として出射させることに想到した。すなわち、本発明に係る空間光変調器は、磁化固定層、中間層、磁化自由層の順に積層してなるスピン注入磁化反転素子を光変調素子として2次元配列して備え、さらに、一対の電極として前記光変調素子の上に接続した上部電極および下に接続した下部電極、ならびに、隣り合う前記光変調素子同士の間および前記電極間を埋める絶縁層を備えて、上方から前記光変調素子に入射した光の偏光方向を2値の角度に変化させた光を反射させて出射するものである。そして、前記空間光変調器は、前記下部電極の上に、前記光変調素子の磁化固定層が平面視で当該光変調素子の外側に拡張して形成され、前記光変調素子の外側に拡張して形成された磁化固定層に入射した光の偏光方向を、前記2値の角度の一方と20%以内の差の角度に変化させた光を反射させて出射することを特徴とする。
かかる構成により、空間光変調器は、光変調素子の配置されていない領域に入射した光が、この領域まで拡張して設けられた磁化固定層によって、光変調素子により変調した2値の光の一方の偏光の向きに略一致した光に変調されて出射する。その結果、出射光が、2値の光またはそれらに略一致した光のみとなって、偏光子により白と黒のみの2階調に表示することができてコントラストが向上する。
本発明に係る空間光変調器によれば、光変調素子にスピン注入磁化反転素子を適用して、容易にコントラストに優れた空間光変調器とすることができる。
本発明の第1実施形態に係る空間光変調器の構成を説明する模式図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−B−C−D−E線組合せ断面図である。 本発明の第1実施形態に係る空間光変調器に搭載された光変調素子の光変調動作を説明する模式図で、図1(a)のD−E線矢視断面図の拡大図である。 本発明の第1実施形態に係る空間光変調器を用いた表示装置の模式図であり、図1のA−B線断面およびD−E線断面における部分断面図に相当する。 本発明の第1実施形態に係る空間光変調器に搭載された別の光変調素子の光変調動作を説明する模式図で、図1(a)のD−E線矢視断面図の拡大図に相当する。 本発明の第1実施形態の変形例に係る空間光変調器の構成を説明する模式図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のF−F線矢視断面図である。 本発明の第2実施形態に係る空間光変調器に搭載された光変調素子の模式図で、光変調動作を説明する図であり、図1(a)のD−E線矢視断面図の拡大図に相当する。 本発明の第2実施形態に係る空間光変調器を用いた表示装置の模式図であり、図1のA−B線断面およびD−E線断面における部分断面図に相当する。 スピン注入磁化反転素子を光変調素子に適用した従来の空間光変調器を用いた表示装置の模式図であり、下部電極の延設方向に沿った部分断面図である。
本発明に係る空間光変調器を実現するための形態について図を参照して説明する。本発明に係る空間光変調器は、入射した光を異なる2値の光(偏光成分)に変調して出射する光変調素子を画素(空間光変調器による表示の最小単位での情報(明/暗)を表示する手段を指す。)とし、これを2次元配列して備える。以下、本発明に係る空間光変調器について、具体的に説明する。
〔第1実施形態〕
図1(a)、(b)に示すように、本発明の第1実施形態に係る空間光変調器10は、基板9と、その上に2次元配列された光変調素子1と、光変調素子1の上に接続されてY方向(図1(a)における縦方向)に延設された上部電極(電極)5と、光変調素子1の下に接続されて上部電極5と対をなす電極であって、X方向(図1(a)における横方向)に延設された下部電極(電極)6と、下部電極6,6間、光変調素子1,1間、および上部電極5,5間を埋める絶縁層8(図1(a)では省略、図1(b)ではハッチングを付さずに輪郭線のみを示す)と、を備える。
本実施形態に係る空間光変調器10は、上方から上部電極5を透過して光変調素子1に入射した光を変調して、上方へ反射させて出射する反射型の空間光変調器である。また、空間光変調器10は、上部電極5および下部電極6(以下、適宜まとめて、上下電極5,6)を配線(ビット線およびワード線)としたクロスポイント型のMRAMと同じ回路構造で、外部のパルス電流源(図示省略)から、選択された光変調素子1に上下電極5,6を経由して直流パルス電流が直接に供給される。なお、空間光変調器における平面(上面)は、光の入射面を指す。また、本実施形態では、空間光変調器10は、説明を簡潔にするために、4行×4列の16個の画素からなる構成で例示される。これは、後記の変形例および第2実施形態以降も同様とする。以下、本実施形態に係る空間光変調器を構成する各要素を詳細に説明する。
(光変調素子)
本実施形態に係る空間光変調器10に搭載された光変調素子1は、CPP−GMR素子であり、磁化方向が一方向に固定された磁化固定層3および磁化方向が回転可能な磁化自由層11を、非磁性金属からなる中間層2を挟んで備え、さらに必要に応じて、最下層に下地膜41を、最上層に保護膜42を、それぞれ備える(図1では省略)。詳しくは、図2に示すように、光変調素子1は、下から、下地膜41、磁化固定層3、中間層2、磁化自由層11、保護膜42が積層されてなる。光変調素子1のこれらの各層は、例えばスパッタリング法や分子線エピタキシー(MBE)法等の公知の方法で連続的に成膜されて積層され、電子線リソグラフィおよびイオンビームミリング法等で後記の平面視形状に加工される。光変調素子1は、膜面垂直方向に電流を供給されることにより、図2(a)、(b)に示すように、磁化自由層11の磁化方向が磁化固定層3と同じ向き(平行)または反対向き(反平行)になるように変化する。
本実施形態においては、図1(a)に示すように、光変調素子1は、平面視で、磁化自由層11およびその下の中間層2が同一形状の正方形に形成され、磁化固定層3がこの正方形よりも大きく、下部電極6に沿ってX方向に長い長方形に形成されている。すなわち、光変調素子1において、磁化固定層3は、磁化自由層11および中間層2の外側へ拡張して形成されている。磁化固定層3における拡張された領域を外部領域3exと称する(図2参照)。このような光変調素子1において、光変調素子として有効である(入射した光を所望の向きへ変調する)のは、磁化自由層11、中間層2、磁化固定層3の3層すべてが積層された平面視正方形の領域である。光変調素子1の有効な領域の平面視形状は、正方形に限られないが、好適にスピン注入磁化反転(磁化反転)させるために、各辺が300nm程度の矩形またはそれに相当する面積以下の形状に形成することが好ましく、かつ、1辺が空間光変調器10に入射する光(入射光)の回折限界(波長の1/2程度)以上とすることが好ましい。
一方、磁化固定層3は、外部領域3exの長さは特に規定されず、図1および図2では拡張した両側(左右)を同じ長さで示しているが、これに限られない(後記変形例参照)。ただし、共通の下部電極6上で隣り合う光変調素子1,1において、それぞれの磁化固定層3(外部領域3ex)同士の間隔が、入射光の回折限界未満であることが好ましい。なお、磁化固定層3は、Y方向(下部電極6の幅方向)においては、磁化自由層11等と同じ長さでもよいし、外側に拡張されて形成されていてもよい。ただし、いずれの場合も、下部電極6上の磁化固定層3の形成されていない領域の長さが入射光の回折限界未満であることが好ましい。
磁化固定層3および磁化自由層11は、CPP−GMR素子やTMR素子に用いられる公知の磁性材料であって、特に、極カー効果で旋光角が大きくなる垂直磁気異方性材料を適用することが好ましい。具体的には、Fe,Co,Ni等の遷移金属とPd,Ptのような貴金属とを繰り返し積層したCo/Pd多層膜のような多層膜、Tb−Fe−Co,Gd−Fe等の希土類金属と遷移金属との合金(RE−TM合金)、L10系の規則合金としたFePt,FePd等が挙げられる。磁化自由層11はさらに、入射光の波長における磁気光学効果の高い、すなわち旋光角θfree(0°<|θfree|≦45°)の大きい磁性材料を適用することが好ましい。ただし、後記製造方法で製造される場合には、磁化固定層3および磁化自由層11は、RE−TM合金よりも耐熱性に優れたCo/Pd多層膜等で形成されることが好ましい。図2(a)、(b)に示すように、光変調素子1に入射した光は、磁化自由層11またはその下の非磁性金属からなる中間層2で反射して出射するので、この出射光は、入射光に対して磁化自由層11の磁化方向に応じてその旋光角+θfreeまたは−θfreeで旋光した光になる。
また、電流供給により磁化自由層11を安定して磁化反転させるために、磁化固定層3は、その保磁力Hcpが磁化自由層11の保磁力Hcfよりも十分に大きくなるように、それぞれの材料を選択したり、磁化自由層11よりも厚く形成される。具体的には、磁化自由層11は、好適に磁化反転するように厚さが1〜20nmの範囲において設計されることが好ましく、磁化固定層3は、磁化自由層11の保磁力Hcfに対応した保磁力Hcpになるように厚さが3〜50nmの範囲において設計されることが好ましい。
さらに本実施形態において、磁化固定層3は、入射光の波長において、反射光の旋光角θpinが絶対値で磁化自由層11の旋光角θfreeと略一致する、具体的には20%以内の差(||θpin|−|θfree||/θfree≦0.20)に、最も好ましくは同値になるように磁性材料や厚さが設計される。図2では、磁化自由層11と磁化固定層3は、同じ磁化方向で同じ向きに旋光させるものとする(+θpin≒+θfree)。ただし、磁化固定層3においてそのような旋光角θpinを示すのは、外部領域3exのみでもよい。したがって、磁化固定層3は、旋光角θpinを調整すると十分な保磁力Hcpが確保されない厚さになる場合には、外部領域3exの厚さが、他の領域(中間層2および磁化自由層11が積層された、光変調素子1の有効な領域)よりも薄い(上面が低い)段差のある形状に形成されてもよい。図2(a)、(b)に示すように、磁化固定層3の外部領域3exに入射した光は、当該磁化固定層3またはその下の下部電極6で反射して出射するので、この出射光は常に、入射光に対して磁化固定層3の旋光角+θpinで旋光した光となる。磁化固定層3をこのような構成とすることにより、後記するように、空間光変調器10は良好なコントラストを示す。
中間層2は、Cu,Ag,Alのような非磁性金属からなり、厚さは1〜10nmとすることが好ましい。中間層2は、特にAgを適用して厚さ6nm以上とすることが好ましく、このような構成とすることにより、光変調素子1(磁化自由層11)に入射した光が、当該中間層2で高反射率で反射して、光の取出し効率が向上する。
下地膜41は、磁化固定層3の下部電極6への密着性を得るために、必要に応じて設けられ、磁化固定層3を形成する磁性膜を連続して成膜する。したがって、下地膜41は、磁化固定層3と同一の平面視形状である。下地膜41は、Ta,Ru,Cu等の非磁性金属材料で形成される。下地膜41の厚さは、1nm未満であると連続した(ピンホールのない)膜を形成し難く、一方、10nmを超えて厚くしても密着性が飽和し、生産性が低下する。したがって、下地膜41の厚さは1〜10nmが好ましく、3〜5nmがより好ましい。
保護膜42は、光変調素子1において、その製造時におけるダメージから磁化自由層11を保護するために、最上層に設けられている。製造時におけるダメージとは、例えばレジスト形成時の現像液の含浸等、また、特に磁化自由層11が酸化し易いRE−TM合金で形成される場合には酸化が挙げられる。保護膜42は、磁化自由層11を形成する磁性膜に連続して成膜され、また、磁化自由層11と共に加工されるため、磁化自由層11と同一の平面視形状である。保護膜42は、Ta,Ru,Cuの単層、またはCu/Ta,Cu/Ruの2層(Cuが内側(下層))等から構成される。保護膜42の厚さは、1nm未満であると連続した膜を形成し難く、一方、10nmを超えて厚くしても、製造工程において磁化自由層11を保護する効果がそれ以上には向上しない上、光の透過が妨げられるので好ましくない。したがって、保護膜42の厚さは1〜10nmが好ましく、3〜5nmがより好ましい。
(電極)
上部電極5および下部電極6(以下、適宜まとめて、上下電極5,6)は、光変調素子1の上下面に接続して電流を供給する一対の電極であり、それぞれの材料の抵抗、および光変調素子1に供給する電流の大きさ等に応じて、厚さや幅が設定される。図1(a)に示すように、上下電極5,6はそれぞれ、平面視において、一様な幅に形成され、光変調素子1の配列に沿って互いに直交して延設される。
上部電極5は、光変調素子1に対して光の入出射側である上側に設けられるため、光を透過するように透明電極材料で形成される。具体的には、インジウム亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide:IZO)、インジウム−スズ酸化物(Indium Tin Oxide:ITO)、酸化スズ(SnO2)、酸化アンチモン−酸化スズ系(ATO)、酸化亜鉛(ZnO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化インジウム(In23)等の公知の透明電極材料からなる。特に、比抵抗と成膜の容易さとの点からIZOが最も好ましい。さらに、上部電極5は、下(光変調素子1の側)に金属膜を備えることが好ましく、すなわちこの金属膜52に、主要部材である透明電極材料からなる層(透明電極層51)が積層される。透明電極材料は金属電極材料よりも導電性に劣るため、上部電極5においては、光変調素子1との間の接触抵抗を低減させるために金属膜52が設けられる。金属膜52は、例えば、Au,Ru,Ta、またはそれらの金属の2種以上からなる合金等を用いることができる。金属膜52は、下地膜41等と同様に、厚さが1nm未満であると連続した膜を形成し難く、一方、10nmを超えると光の透過量を低下させるので、1〜10nmが好ましい。より好ましくは、金属膜52と保護膜42との合計の厚さが10nm以下になることである。また、金属膜52は、透明電極層51との密着性をよくして接触抵抗をさらに低減するために、スパッタリング法等で、透明電極材料と連続的に真空処理室にて成膜されることが好ましい。したがって、透明電極層51および金属膜52は、フォトリソグラフィおよびエッチング等でストライプ状等の所望の形状に一括に加工される。
下部電極6は、例えばCu,Al,Au,Ag,Ta,Cr等の金属やその合金のような一般的な金属電極材料で形成され、スパッタリング法等の公知の方法により成膜され、フォトリソグラフィ、およびエッチングまたはリフトオフ法等により所望の形状に加工される。
(絶縁層)
絶縁層8は、例えばSiO2やAl23等の酸化膜やSi窒化物やMgF2等の公知の無機絶縁材料を適用することができ、光変調素子1の各層や上下電極5,6と同様に、スパッタリング法等の公知の方法により成膜される。また、絶縁層8は、下部電極6,6間、光変調素子1,1間、上部電極5,5間で、それぞれ異なる絶縁材料を適用してもよく、さらに光変調素子1,1間において、磁化固定層3と中間層2、磁化自由層11とのそれぞれに接する領域で異なる絶縁材料を適用してもよい。特に、絶縁層8は、下部電極6,6間および光変調素子1,1間において、屈折率が上部電極5(透明電極層51)と同等以上の絶縁材料を適用されることが好ましい。なお、透明電極層51や絶縁層8等の光透過性材料において、2種類の材料で屈折率が同等というのは、これらの2層が一体の媒質として作用する程度に屈折率が近似していることを指す(特許文献7参照)。このような構造により、上部電極5に沿って隣り合う光変調素子1,1間に進入した光が、上部電極5と絶縁層8の界面で反射せずに進入し易く、光変調していない反射光(出射光)によるコントラストの低下が抑制される。
(基板)
基板9は、光変調素子1および上下電極5,6を形成するための土台であり、公知の基板材料が適用できる。具体的には、SiO2(酸化ケイ素、ガラス)、MgO(酸化マグネシウム)、サファイア、GGG(ガドリニウムガリウムガーネット)、SiC(シリコンカーバイド)、Ge(ゲルマニウム)単結晶基板等が挙げられる。本実施形態に係る空間光変調器10においては、基板9は、屈折率が、下部電極6,6間の絶縁層8と同等以上の材料からなるものが好ましく、すなわち透明電極層51と同等以上の材料からなるものが好ましい。このような構造により、下部電極6,6間に進入した光が、基板9の上面(絶縁層8との界面)で反射せずに進入し易く、光変調していない反射光(出射光)によるコントラストの低下が抑制される。また、空間光変調器10において、基板9は、裏面(下面)に光を吸収する塗膜を被覆するように構成してもよい(図示せず)。
(空間光変調器の光変調動作)
第1実施形態に係る空間光変調器の光変調動作を、図3、適宜図2を参照して、この空間光変調器を用いた表示装置にて説明する。本発明に係る空間光変調器10は反射型であり、また、光変調素子1の磁化自由層11は垂直磁気異方性材料からなり磁化方向が上向きまたは下向きを示すため、表示装置は以下の構成とすることが好ましい。図3に示すように、表示装置は、空間光変調器10と、その上方に配置された、空間光変調器10に向けて光(レーザー光)を照射する光源等を備える光学系OPSと、光学系OPSから照射された光が空間光変調器10に入射される前に1つの偏光成分の光にする偏光子PFiと、この入射光が空間光変調器10で反射して出射した出射光から特定の偏光成分の光を遮光する偏光子(検光子)PFoと、偏光子PFoを透過した光を検出する検出器PDと、から構成される。なお、図3は模式図であり、空間光変調器10について、破断線の左側にY方向に沿った断面図を、右側にX方向に沿った断面図をそれぞれ表し、また、偏光子PFoおよび検出器PDと空間光変調器10との位置関係は、破断線を挟んで必ずしも整合するものではない。また、図3では、光路を見易く表すために、上部電極5、絶縁層8、および基板9にはハッチングを付さず、また、光変調素子1の磁化自由層11および磁化固定層3にその磁化方向を表す黒塗り矢印を付す。
光学系OPSは、例えばレーザー光源、およびこれに光学的に接続されてレーザー光を空間光変調器10の全面に照射する大きさに拡大するビーム拡大器、さらに拡大されたレーザー光を平行光にするレンズで構成される(図示省略)。偏光子PFi,PFoはそれぞれ偏光板等であり、特定の1つの偏光成分の光を完全に遮光する。光学系OPSから照射された光(レーザー光)は様々な偏光成分を含んでいるため、この光を空間光変調器10の手前の偏光子PFiを透過させて、1つの偏光成分(偏光子PFiで遮光される偏光成分と90°異なる偏光成分)の光にし、この光が入射光L0になる。検出器PDはスクリーン等の画像表示手段である。
空間光変調器10のすべての光変調素子1は、予め磁化固定層3が同じ磁化方向に固定され(初期設定)、ここでは上向きに固定されている。このような空間光変調器10に入射した入射光L0のうち、上部電極5を透過して光変調素子1に入射した入射光L0は、光変調素子1で反射して、再び上部電極5を透過して出射する。この出射した光(出射光)LP,LAPは、磁化自由層11の磁化方向に応じて、入射光L0に対して角度θP,θAPで旋光した光である。光変調素子1において、入射光L0は磁化自由層11またはその下の中間層2で反射して出射するため、出射光LP,LAPは、入射光L0に対して磁化自由層11の旋光角+θfreeまたは−θfreeで旋光した光である。ここでは、磁化自由層11の磁化方向が上向きのときに角度+θfreeで旋光するので、θP=+θfree、θAP=−θfreeで表される(図2参照)。
また、上部電極5を透過して光変調素子1,1間の絶縁層8に入射した入射光L0は、さらに下部電極6,6間も含め絶縁層8を透過し、基板9に入射し、裏面へ通り抜け(基板9の裏面に塗膜が被覆されている場合は塗膜に吸収され)、空間光変調器10の上面からは出射しない。上部電極5,5間から光変調素子1,1間、下部電極6,6間の絶縁層8に入射した入射光L0も同様である。
一方、下部電極6上で隣り合う光変調素子1,1間の絶縁層8に入射した入射光L0は、下部電極6上の磁化固定層3(外部領域3ex)に到達し、この磁化固定層3またはその下の下部電極6で反射して出射する。この出射光Lneは、上向きの磁化方向に固定された磁化固定層3によって、入射光L0に対して角度+θpinで旋光した光である(図2参照)。なお、下部電極6上の磁化固定層3の形成されていない領域においては、磁化固定層3,3間(外部領域3ex,3ex間)の距離が入射光L0の回折限界未満になるように形成されて、光が絶縁層8から直接に下部電極6に入射、反射しないように構成されている。したがって、空間光変調器10では、光が変調せずに下部電極6で反射して出射することがない。
以上の通り、本実施形態に係る空間光変調器10から出射する光は、下部電極6に沿った、光変調素子1および光変調素子1,1間からの出射光LP,LAP,Lneであり、空間光変調器10から出射して偏光子PFoへ進入する。偏光子PFoは、入射光L0に対して角度θP(=+θfree)で旋光した光を完全に遮光するように配置されている。したがって、磁化方向が平行な光変調素子1で反射した出射光LPは、偏光子PFoで遮光されて検出器PDに到達せず、その結果、検出器PDに暗表示される(図中、黒く塗り潰して表す)。これに対して、磁化方向が反平行な光変調素子1で反射した出射光LAPは、出射光LPとの偏光の向きの差(|θAP−θP|=2θfree)に対応した光量で偏光子PFoを透過して、検出器PDに入射し、明表示される(図中、白く表す)。一方、出射光Lneは、+θpin≒+θfreeであるから、出射光LPと同様に、偏光子PFoで遮光されて検出器PDに暗表示される。
このように、本実施形態に係る空間光変調器10により、検出器PDに入射する出射光は、磁化方向が反平行な光変調素子1に入射して反射した出射光LAPに限定され、光変調素子1,1間に入射した光は、空間光変調器10から出射しない、または偏光子PFoで遮光されて検出器PDに到達しない。したがって、本実施形態に係る空間光変調器10は、光変調素子1の設けられていない領域から、明/暗(白/黒)の中間状態も含めて光が検出器PDに入射せず、コントラストが良好である。
なお、磁化自由層11と磁化固定層3が、同じ磁化方向で互いに逆向きに旋光させる場合は(+θpin≒−θfree)、+θpin≒θAPであるので、偏光子PFoが、入射光L0に対して角度θAP(=−θfree)で旋光した光を完全に遮光するように配置されていればよい。したがって、磁化方向が平行な光変調素子1で反射した出射光LPが、検出器PDに明表示される。このように、空間光変調器10においては、磁化固定層3(外部領域3ex)の旋光角+θpinを、光変調素子1の旋光角θP,θAPの一方と略一致するように設計される。
また、図3においては、入射光L0と出射光LP,LAP,Lneとの経路が異なるように入射光L0の入射角を傾斜させて示しているが、入射角が大きいほど極カー効果が低下してコントラストが低下するため、30°以内とすることが好ましく、膜面に垂直に入射、すなわち入射角を0°にすることが最も好ましい。入射角を0°にする場合は、入射光と出射光の光路が一致するため、例えば入射側の偏光子PFiと空間光変調器10との間にハーフミラーを配置して、出射光のみを側方へ反射させてもよく、反射させた先に出射側の偏光子PFoおよび検出器PDを配置する(図示せず)。
〔空間光変調器の製造方法〕
第1実施形態に係る空間光変調器の製造方法について、その一例を説明する。本実施形態に係る空間光変調器10は、光変調素子1の成形(加工)を2回に分けて行う以外は、従来のスピン注入方式の空間光変調器の製造方法と同様に製造することができる。
(下部電極形成工程)
まず、下部電極6および下部電極6,6間の絶縁層8を形成する。基板9の表面に、SiO2等の絶縁膜を下部電極6の厚さに成膜する。この絶縁膜の上に、下部電極6が形成される領域を空けたレジストマスクを形成し、絶縁膜をエッチングして絶縁層8を成形して基板9を露出させる。この上から金属電極材料を成膜して、絶縁層8のエッチング跡に下部電極6を形成する。そして、レジストマスクをその上の金属電極材料ごと除去する。
(光変調素子形成工程)
次に、光変調素子1および光変調素子1,1間の絶縁層8を形成する。下部電極6および下部電極6,6間の絶縁層8が形成された上に、光変調素子1の各層を構成する下地膜41、磁化固定層3、中間層2、磁化自由層11、保護膜42のそれぞれを形成するための金属膜や磁性膜を連続して成膜、積層する。次に、保護膜42(金属膜)の上に、磁化固定層3が形成される領域を被覆するレジストマスクを形成し、保護膜42から下地膜41までをエッチングする。この上から絶縁膜を光変調素子1の厚さに成膜して、エッチング跡に埋め込み、レジストマスクをその上の絶縁膜ごと除去する。これらの工程により、光変調素子1のすべての層が磁化固定層3の外部領域3exを含めた平面視形状(図1(a)参照)に成形され、その周囲が絶縁膜で平坦に埋められる。次に、保護膜42(金属膜)の上に、磁化自由層11を形成される領域を被覆するレジストマスクを形成し、保護膜42、磁化自由層11、および中間層2、あるいはさらに磁化固定層3の上層部までを、周囲の絶縁膜と共にエッチングして、周囲に磁化固定層3を外部領域3exとして残存させた光変調素子1を成形する。この上から再び絶縁膜を光変調素子1の上面(保護膜42)の高さまで成膜して、エッチング跡に埋め込んで絶縁層8を形成し、レジストマスクをその上の絶縁膜ごと除去する。
(上部電極形成工程)
次に、上部電極5および上部電極5,5間の絶縁層8を形成して、空間光変調器10が製造される。光変調素子1および光変調素子1,1間の絶縁層8が形成された上に、金属膜、透明電極材料を連続して成膜、積層する。次に、上部電極5が形成される領域を被覆するレジストマスクを形成し、透明電極材料をエッチングして透明電極層51を成形し、引き続いて金属膜をエッチングして金属膜52を成形する。この上から絶縁膜を成膜して、透明電極層51等のエッチング跡に埋め込んで絶縁層8を形成し、レジストマスクをその上の絶縁膜ごと除去する。
(初期設定)
前記したように、空間光変調器10は、初期設定として、すべての光変調素子1の磁化固定層3が同じ磁化方向に揃えられる。磁化固定層3は電流供給で磁化方向を変化させることができないので、空間光変調器10に外部から磁界を上向きまたは下向きに印加することにより、磁化固定層3を所望の磁化方向にする。この初期設定は、完成した(製造後の)空間光変調器10に限られず、その製造工程途中において、磁化固定層3を構成する磁性膜を成膜した後以降であれば、どの段階であっても実施することができる。
(空間光変調器の製造方法の別の例)
前記の空間光変調器10の製造方法においては、光変調素子形成工程にて光変調素子1の各層を構成する材料を成膜した後に2回のエッチングにて成形したが、下部電極6の形成のように、先に絶縁膜(絶縁層8)を成膜、エッチングして、その後に光変調素子1の各層を構成する材料を成膜してもよい。詳しくは、下部電極6および下部電極6,6間の絶縁層8を形成した上に、SiO2等のエッチングレートの比較的速い絶縁膜を光変調素子1の厚さに成膜し、この絶縁膜の上に磁化固定層3が形成される領域を空けたレジストマスクを形成して、絶縁膜をエッチングして下部電極6を露出させる。そして、光変調素子1の各層を構成する材料を連続して成膜して、絶縁膜のエッチング跡に埋め込み、レジストマスクをその上の磁性膜等ごと除去する。その後、前記光変調素子形成工程の2段目の加工(磁化自由層11および中間層2の成形)を行う。なお、絶縁膜のエッチングは、例えば反応性イオンエッチング(RIE)のようなエッチング選択性の高い方法で行い、絶縁膜を完全に除去しつつ、その下の下部電極6までエッチングされない(オーバーエッチングされない)ような条件に設定されることが好ましい。
また、下部電極形成工程において、はじめに、基板9上に下部電極6が形成される領域を空けたレジストマスクを形成し、その上に金属電極材料を成膜してリフトオフにて下部電極6を形成してもよい。この場合は、その後、全面に絶縁膜を成膜し、化学的機械研磨(CMP)等で研削、研磨して、下部電極6を露出させる。同様に、上部電極形成工程においても、透明電極材料等を成膜する前に、上部電極5が形成される領域を空けたレジストマスクを形成し、リフトオフにて上部電極5を形成してもよい。
また、前記の空間光変調器10の製造方法においては、光変調素子1を2段階に分けて加工、成形したが、2段目の加工(磁化自由層11および中間層2の成形)を上部電極5と同時に成形することもできる。具体的には、前記の光変調素子形成工程で、光変調素子1のすべての層が磁化固定層3の外部領域3exを含めた平面視形状に成形し、その周囲を絶縁膜で平坦に埋めた後に、上部電極5を構成する金属膜および透明電極材料を連続して成膜する。次に、金属膜の上に上部電極5が形成される領域を被覆するレジストマスクを形成し、透明電極層51、金属膜52、ならびに光変調素子1の保護膜42、磁化自由層11、中間層2をエッチングして成形し、光変調素子1とする。そして、この上から絶縁膜を上部電極5の上面の高さまで成膜して、エッチング跡に埋め込んで絶縁層8を形成し、レジストマスクをその上の絶縁膜ごと除去する。このような製造方法で製造された空間光変調器10は、平面視において、光変調素子1の磁化自由層11および中間層2が、磁化固定層3の長手方向(下部電極6の延設方向)長が、上部電極5の幅と同じ長さに形成される。
〔第1実施形態の変形例〕
空間光変調器10は、下部電極6上で隣り合う光変調素子1,1のそれぞれの磁化固定層3(外部領域3ex)同士の間隔が0、すなわち下部電極6上で光変調素子1毎に分離せずに連続して形成されていてもよい。磁化固定層3が下部電極6に沿って延設されて複数の光変調素子1で共有されていても、磁化自由層11および中間層2が光変調素子1毎に分離して形成されているので、光変調素子1の磁化反転動作に影響はない。このような空間光変調器10は、下部電極6の形成(下部電極形成工程)に連続して光変調素子1の各層の材料を成膜して製造することができる。
具体的には、はじめに、基板9上に、絶縁膜を下部電極6と光変調素子1の合計の厚さに成膜し、前記と同様に、下部電極6が形成される領域を空けたレジストマスクを形成して、絶縁膜をエッチングする。この絶縁膜(絶縁層8)のエッチング跡に金属電極材料を埋め込んで下部電極6を形成し、引き続いて、光変調素子1の各層を構成する下地膜41、磁化固定層3、中間層2、磁化自由層11、保護膜42のそれぞれを形成するための金属膜や磁性膜を連続して成膜、積層し、その後にレジストマスクを除去する。これらの工程により、下部電極6の上に、光変調素子1の各層が当該下部電極6と同一平面視形状で形成され、下部電極6,6間およびその上の光変調素子1の各層同士の間を絶縁膜(絶縁層8)で平坦に埋められている。その後、前記製造方法と同様に、保護膜42、磁化自由層11、および中間層2を加工して光変調素子1を成形し、上部電極5を形成して空間光変調器10が得られる。あるいはさらに、光変調素子1の磁化自由層11等の加工を、前記したように上部電極5と共に加工してもよい。
空間光変調器10は、透明基板からなる基板9上に、上部電極5、光変調素子1、下部電極6、の順に形成して製造されてもよい。このような製造方法で得られる空間光変調器10は、光変調素子1の磁化固定層3が、外部領域3exも含めて一様な厚さである。また、光変調素子1の各層の成膜順序も入れ替わるので、図2に示す金属膜41,42をそれぞれ保護膜41、下地膜42と称する。このような空間光変調器10の製造方法について、その一例を以下に説明する。
(上部電極形成工程)
まず、上部電極5および上部電極5,5間の絶縁層8を形成する。基板9の表面に、透明電極材料、金属膜を連続して成膜、積層する。次に、上部電極5が形成される領域を被覆するレジストマスクを形成し、金属膜および透明電極材料をエッチングして、金属膜52および透明電極層51を成形して上部電極5を形成する。この上から絶縁膜を成膜して、エッチング跡に埋め込んで絶縁層8を形成し、レジストマスクをその上の絶縁膜ごと除去する。なお、透明電極材料を成膜する前に、基板9への密着性を得るために、下地に、金属膜52のような光の入射を妨げない程度の薄い金属膜やMgO等の酸化物の膜を成膜してもよい。下地に金属膜を成膜した場合は、この金属膜を、透明電極材料(透明電極層51)と共にエッチングにて完全に除去するようにする。
(光変調素子形成工程、下部電極形成工程)
次に、光変調素子1、下部電極6、ならびに光変調素子1,1間、下部電極6,6間の絶縁層8を形成する。上部電極5および上部電極5,5間の絶縁層8が平坦に形成された上に、絶縁膜を、光変調素子1の下地膜42、磁化自由層11、中間層2の合計の厚さに成膜する。この絶縁膜の上に、磁化自由層11を形成される領域を空けたレジストマスクを形成して、絶縁膜をエッチングする。絶縁膜のエッチングは、上部電極5の金属膜52をエッチングストッパ膜にして、RIEのようなエッチング選択性の高い方法で行う。そして、下地膜42、磁化自由層11、中間層2のそれぞれを形成するための金属膜や磁性膜を連続して成膜して、絶縁膜のエッチング跡に埋め込み、レジストマスクをその上の磁性膜等ごと除去する。これらの工程により、光変調素子1の磁化自由層11および中間層2が形成され、その周囲が絶縁膜で平坦に埋められる。この上に、磁化固定層3を構成する磁性膜、および金属膜(保護膜41)を連続して成膜する。このとき、中間層2と磁化固定層3との密着性を得るために、スパッタ装置にて、磁性膜(磁化固定層3)を成膜する前に、Ar,Kr等のプロセスガスのイオンやプラズマによるクリーニングを中間層2の表面に行うことが好ましい。
金属膜の上に、下部電極6を形成される領域を空けたレジストマスクを形成して、この上から金属電極材料を成膜して下部電極6を形成し、レジストマスクをその上の金属電極材料ごと除去する。次に、下部電極6をマスクにして、金属膜、磁性膜を順次エッチングして、保護膜41および磁化固定層3を成形して光変調素子1が形成される。このとき、磁性膜(磁化固定層3)を完全に除去し、その下の中間層2,2間、さらには磁化自由層11,11間の絶縁層8まで除去してもよいが、上部電極5まで除去しないようにする。そして、絶縁膜を成膜して、エッチング跡および下部電極6,6間に埋め込んで絶縁層8を形成し、その後に必要に応じて、下部電極6上の絶縁膜をCMP等で研削、研磨して平坦化して空間光変調器10が得られる。
このような製造方法で製造された空間光変調器10は、磁化固定層3が光変調素子1毎に分離せずに連続して下部電極6に沿って延設された前記変形例になる。あるいは、磁化固定層3および保護膜41を構成する各材料を成膜した後、金属膜(保護膜41)上に、磁化固定層3を形成される領域を被覆するレジストマスクを形成し、金属膜および磁性膜をエッチングして光変調素子1毎に分離した磁化固定層3を成形することもできる。その後、絶縁膜を成膜してエッチング跡に絶縁層8を埋め込んで、レジストマスクを除去する。そして、下部電極6および下部電極6,6間の絶縁層8を形成して空間光変調器10が得られる。
このように、各層の成膜順序を入れ替えて、磁化固定層3を成膜する前に磁化自由層11および中間層2を成形する場合は、中間層2の上面(磁化固定層3の側)が一時的に露出するので、中間層2に非磁性金属の中でも酸化し難いCu等を適用することが好ましい。一方で、磁化自由層11を成形してから磁化固定層3を成膜することにより、磁化固定層3への加工ダメージが軽減される。また、光変調素子形成工程においてはじめに成膜される絶縁膜(中間層2,2間、磁化自由層11,11間の絶縁層8)に、Si窒化物やMgF2等の非酸化物を適用することにより、磁化自由層11や磁化固定層3にRE−TM合金を適用することができる。これは、磁化自由層11の側面、および磁化固定層3の外部領域3exにおける上面(製造時は下面)に、SiO2等の酸化膜が接触しないことによる。なお、磁化固定層3は、RE−TM合金を適用された場合には、Y方向(下部電極6の幅方向)にも、下部電極6の上において磁化自由層11の外側へ拡張して形成されることが好ましい。磁化固定層3が磁化自由層11の外側の四方すべてに拡張されていることにより、加工時において、また、側面に接触する絶縁層8がSiO2等の酸化膜であっても、磁化自由層11を積層した領域まで保磁力等の特性が劣化せず、光変調素子1の磁化反転動作に影響し難い。したがって、磁化固定層3,3間の絶縁層8にはSiO2等の酸化膜が適用されてもよい。また、光変調素子1の形成前(磁性膜の成膜前)であればポストアニール等の高温の熱処理を施すことができるので、透明電極層51にITO等の結晶性の透明電極材料を適用して、上部電極5の抵抗を低減することができる。
空間光変調器10は、基板9(光の入射面の反対側に設けられるもの)が透明基板に限られず、例えば表面を熱酸化したSi基板を適用されてもよい。この場合、下部電極6,6間の絶縁層8に入射した光が基板9(熱酸化膜)との界面、あるいは基板9表面の熱酸化膜(SiO2膜)とSi母材との界面で反射し易いため、絶縁層8を、下から、高屈折率材料、低屈折率材料を積層した2層構造として、光を高屈折率材料の層内で多重反射させて減衰させる(特許文献7参照)。このような2層構造は、下部電極6,6間に入射する光の光路に設けられていればよいので、下部電極6,6間の絶縁層8を前記2層構造としたり、あるいは下部電極6,6間の絶縁層8を高屈折率材料で形成して、光変調素子1,1間および上部電極5,5間を低屈折率材料で形成してもよい(図示省略)。基板9が低屈折率の透明基板で、表面で光が反射し易い場合も、同様に絶縁層8で多重反射させて減衰させることができる。
〔第1実施形態の光変調素子がTMR素子からなる変形例〕
また、本実施形態に係る空間光変調器は、光変調素子としてTMR素子を適用することもできる。図4に示すように、TMR素子からなる光変調素子1Aは、非磁性金属膜からなる中間層2に代えて、厚さ2nm以下の極めて薄い絶縁膜(障壁層2A)を備える。障壁層2Aは、詳しくは、その材料としてMgO,Al23,MgAl24,HfO2が挙げられ、厚さが0.6〜2nm程度に形成される。そのため、光変調素子1Aに入射した光は、磁化自由層11、障壁層2Aを透過してその下の磁化固定層3に入射し、磁化固定層3またはさらにその下の下部電極6で反射して出射する。したがって、光変調素子1Aからの出射光は、磁化自由層11だけでなく、磁化固定層3によっても変調され、その旋光角θP,θAPは、θP=+θfree+θpin、θAP=−θfree+θpinで表される。
そこで、光変調素子1Aにおいては、磁化固定層3を外部領域3exにおいて薄く形成して、その旋光角θexを調整する。具体的には、磁化自由層11と磁化固定層3が、同じ磁化方向(平行)で同じ向きに旋光し、かつ磁化固定層3の方が旋光角が大きい場合(0°<+θfree<+θpin)において、0°<θAP<+θpin<θPであるから、磁化固定層3は、外部領域3exにおける旋光角+θexが旋光角θAP(=−θfree+θpin)に略一致するように(+θex≒=−θfree+θpin)薄く形成される。このように構成することで、空間光変調器10は、TMR素子からなる光変調素子1Aを搭載して、良好なコントラストを示す。
光変調素子1Aを搭載した空間光変調器10は、CPP−GMR素子からなる光変調素子1を搭載した場合と同様の構成である。ただし、絶縁層8が、光変調素子1A,1A間、少なくとも障壁層2A,2A間において、MgO等の障壁層2Aと同じ絶縁材料、または特に絶縁性の高いSiO2で形成されていることが好ましい。これは、磁化自由層11の端部から磁化固定層3に絶縁層8を介してリーク電流が流れることを抑制するためである。なお、磁化自由層11と磁化固定層3の旋光角の大きさが近い場合は(|θfree|≒|θpin|)、光変調素子1Aの旋光角θP,θAPのいずれか一方がほぼ0°になるため、磁化自由層11および磁化固定層3のいずれにも入射せずに下部電極6等で反射した、光変調していない出射光を、偏光子PFoで遮光することができる。
〔第1実施形態のトランジスタを備えた変形例〕
光変調素子(スピン注入磁化反転素子)毎にトランジスタを接続した、選択トランジスタ型のMRAMと同じ回路構造の空間光変調器についても、コントラストを向上させることができる。このような空間光変調器は、MRAMと同様、表層にMOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)を形成した基板の上に、トランジスタに接続する配線(ソース線、ワード線)を金属電極材料で形成し、さらにその上に、光変調素子およびその上下電極が設けられる。上部電極は、MRAMにおけるビット線に相当し、電流源から直接に光変調素子へ電流を供給するために配線状に形成されるが、下部電極は、光変調素子をトランジスタのドレインに接続するために、光変調素子毎に離間して設けられる。したがって、第1実施形態に係る空間光変調器とは異なり、下部電極が光変調素子同士の間に設けられていないので、光変調素子に入射せずに下部電極で反射する光は存在しないことになる。一方、下部電極の下方では、絶縁層を挟んで金属電極材料で多層配線(ソース線、ワード線)が設けられ、さらに基板は表層に結晶Si等でMOSFETが形成されているため、光が反射し易い。これらの反射光が出射することを抑制するためには、多層配線の層間絶縁膜や光変調素子同士の間の絶縁層を、下から高屈折率材料と低屈折率材料とを積層した2層構造にすること(特許文献7参照)が考えられるが、絶縁層の材料によらず、第1実施形態に係る空間光変調器と同様に、光変調素子の磁化固定層で光変調した光を出射させてもよい。以下、本発明の第1実施形態の変形例に係る空間光変調器について、図5を参照して説明する。第1実施形態および前記変形例(図1〜4参照)と同一の要素については同じ符号を付し、説明を省略する。
本発明の第1実施形態の変形例に係る空間光変調器10Aは、第1実施形態に係る空間光変調器空間光変調器10(図3参照)と同様に、光変調素子1を2次元配列した反射型の空間光変調器であり、上部電極5を透過して入射光L0が光変調素子1に入射、反射して出射する。空間光変調器10Aは、光変調素子1毎にトランジスタを接続した、選択トランジスタ型のMRAMと同じ回路構造であり、MRAMにおける選択したメモリセルへの書込みと同様に、所望の画素を選択して、光変調素子1の磁化自由層11の磁化方向を反転させる。このような構造の空間光変調器10Aは、図5に示すように、表層にMOSFETでトランジスタを形成した基板9Aを備え、その上方に光変調素子1が配列され、光変調素子1と前記トランジスタのドレイン9dとを接続する下部電極6Aが当該光変調素子1毎に設けられ、上部電極5が第1実施形態と同様に光変調素子1の上に接続されてY方向に延設されている。さらに、空間光変調器10Aは、トランジスタのソース9sに接続するソース線71と、ソース線71と直交してゲート9gに接続するゲート線(ワード線)72と、を備え、これらの間が光変調素子1,1間等と同様に絶縁層8で絶縁される。図5(a)では、ソース線71が空間光変調器10の下部電極6と同様にX方向に延設し、ゲート線72がY方向に延設し、それぞれ下部電極6Aと同様に金属電極材料で形成される。
(光変調素子)
光変調素子1は、図2に示す光変調素子1と同様の構造である。ただし、本変形例に係る空間光変調器10Aに搭載された光変調素子1は、図5(a)に示すように、平面視において、磁化固定層3が磁化自由層11および中間層2の外側の四方すべてに拡張され、X方向またはY方向に隣り合う磁化固定層3,3間(外部領域3ex,3ex間)の距離が入射光L0の回折限界未満になるように形成されている。このような構成により、光変調素子1(磁化自由層11)に入射しない光がすべて磁化固定層3(外部領域3ex)へ入射する。また、磁化固定層3は、下部電極6Aの最上層の部位である接続層6f(図5(b)参照)と同一平面視形状に形成され、接続層6fに合わせて左側に偏って長く形成されている。なお、空間光変調器10Aは、図4に示す光変調素子1Aを搭載することもできる。
(電極、配線)
上部電極5は、第1実施形態に係る空間光変調器10の上部電極5と同様の光を透過する配線で、選択トランジスタ型のMRAMにおけるビット線に相当する。下部電極6Aは、第1実施形態の下部電極6と同様に光変調素子1の下面に接続して上部電極5と対の電極として電流を供給する。下部電極6A、ならびにソース線71およびゲート線72(適宜まとめて、配線71,72)は、下部電極6と同様に一般的な金属電極材料で形成される。
下部電極6Aは、光変調素子1毎に設けられ、光変調素子1の直下から下側の絶縁層8を貫通して、基板9Aの表層に形成されたトランジスタのドレイン9dに接続する。この、下部電極6Aにおける光変調素子1に直接に接続する最上層の部位を接続層6fと称する(図5(b)参照)。接続層6fは、平面視で光変調素子1(磁化自由層11および中間層2)の外側に拡張して大きく形成され、特に左側に偏って長く形成されている。接続層6fのこのような形状は、下部電極6Aにおいて接続層6fの下に接続するコンタクト部が、光変調素子1の直下を避けて形成されているためであり、その結果、光変調素子1の形成される領域にコンタクト部(下部電極6A)と絶縁層8との境界の微小な段差がなく、光変調素子1の各層の界面の平滑性が損なわれず、磁化反転特性に影響しない。さらに、接続層6fは磁化固定層3と同一平面視形状であるため、X方向またはY方向に隣り合う光変調素子1,1のそれぞれに接続する接続層6f,6f間の距離が入射光の回折限界未満であることが好ましく、加工精度に応じて、短絡しない程度に離間して設けられる。一方、下部電極6Aの前記コンタクト部等の接続層6f以外の下層の部位は、配線71,72等に短絡しないような形状に形成される。
(絶縁層)
絶縁層8は、空間光変調器10Aの間隙を埋めるように、隣り合う光変調素子1,1間、上部電極5,5間、ならびに下部電極6Aや配線71,72の互いの間を絶縁するために設けられる。絶縁層8は、第1実施形態と同様、公知の無機絶縁材料を適用することができる。さらに、空間光変調器10Aにおいては、光変調素子1を形成する前(各層を構成する磁性膜等を成膜される前)に設けられる、配線71,72間等の絶縁層8は、半導体装置の層間絶縁膜に適用されるBPSG(Boron Phosphorus Silicon Glass)やPSG(Phosphorus Silicon Glass)を適用されてもよい。これらの絶縁膜は、熱処理(BPSGで約800℃)により平坦化(リフロー)されるので、配線71,72および下部電極6Aの形成における生産性が向上する。
(基板)
基板9Aは、光変調素子1等を形成するための土台であり、さらに空間光変調器10Aにトランジスタを備えるための基板である。このような基板9Aは、p型Si基板や結晶Si膜を成膜したガラス基板等に、公知の方法でMOSFETを形成したものである。
(空間光変調器の光変調動作)
第1実施形態の変形例に係る空間光変調器の光変調動作を説明する。本変形例に係る空間光変調器10Aを用いた表示装置(図示省略)は、図3に示す第1実施形態と同様の構成であり、光学系OPSおよび偏光子PFiにより、1つの偏光成分の入射光L0が空間光変調器10Aに上方から入射する。上部電極5を透過して光変調素子1に入射した入射光L0は、光変調素子1で反射して、磁化自由層11の磁化方向によって、入射光L0に対して角度θP(=+θfree)またはθAP(=−θfree)で旋光した光(出射光LP,LAP)となって出射する。一方、光変調素子1,1間の絶縁層8に入射した光は、上部電極5を透過したものも、上部電極5,5間の絶縁層8を透過したものも、下部電極6A上の磁化固定層3(外部領域3ex)に到達し、この磁化固定層3またはその下の下部電極6Aで反射して出射するため、入射光L0に対して角度+θpinで旋光した光(出射光Lne)となって出射する。なお、下部電極6A,6A間は、この距離が入射光L0の回折限界未満になるように形成されていることで、光が下部電極6A,6A間の絶縁層8に進入しない。
このように、本変形例に係る空間光変調器10Aから出射する出射光LP,LAP,Lneは、いずれも変調されて入射光L0に対して角度+θfree,−θfree,+θpin(≒+θfree)で旋光した光である。したがって、第1実施形態と同様に、入射光L0に対して角度+θfree(≒+θpin)で旋光した出射光LP,Lneを遮光する偏光子PFoにより、磁化方向が反平行な光変調素子1に入射して反射した出射光LAPのみが偏光子PFoを透過して検出器PDで明表示され、コントラストが良好である。
〔空間光変調器の製造方法〕
第1実施形態の変形例に係る空間光変調器の製造方法について、その一例を説明する。本変形例に係る空間光変調器10Aは、第1実施形態に係る空間光変調器の製造方法の別の例として説明した、光変調素子の1段目の成形を下部電極(接続層)の成形と共に行って製造することができる。はじめに、トランジスタとしてMOSFETを備える基板9Aを製造する工程と、トランジスタに接続する配線71,72および下部電極6A(接続層6fを除く)を形成する工程について説明する。
(配線形成工程)
MOSFETを備える基板9Aは、半導体装置の形成と同様に得られ、Si基板の表層にMOSFETでトランジスタを形成して、基板9Aを製造する。一例としては、p型シリコン(Si)基板に、隣り合うトランジスタ間(ソース9sまたはドレイン9dとなるn+拡散層が形成される領域同士の間)を絶縁するSiO2の埋込みを行い、表面に薄い酸化膜(SiO2膜)を形成し、その上にpoly−Si膜を成膜してゲート9gを形成する。n型不純物イオンを注入して、ソース9sおよびドレイン9dとする。
基板9A上に、絶縁膜(絶縁層8)の成膜およびその加工、ならびに金属電極材料の成膜を交互に繰り返し行って、基板9Aに形成したトランジスタのソース9s、ゲート9g、ドレイン9dに接続するソース線71、ゲート線72、下部電極6A(接続層6fを除く)、およびこれらの間を埋める絶縁層8を形成する。そして、必要に応じてCMP等で研削、研磨して、下部電極6Aの接続層6fに接続するコンタクト部のみを露出させるように、絶縁層8を平坦に形成する。
(下部電極、光変調素子形成工程)
次に、下部電極6Aの接続層6fおよび光変調素子1の各層、ならびにこれらの間の絶縁層8を形成する。下部電極6Aのコンタクト部および絶縁層8の上に、厚さ1〜5nm程度のMgO等のエッチングレートの遅い絶縁膜(エッチングストッパ膜)と、前記エッチングストッパ膜よりもエッチングレートの速いSiO2等の絶縁膜を、これら2層で接続層6fと光変調素子1との合計の厚さに成膜する。この絶縁膜の上に、接続層6fおよび磁化固定層3が形成される領域を空けたレジストマスクを形成し、RIEのようなエッチング選択性の高い方法でSiO2膜を完全に除去した後、イオンビームミリング法等でMgO膜をエッチングして、下部電極6Aのコンタクト部を露出させる。この上から金属電極材料を成膜して、コンタクト部に接続する接続層6fを絶縁膜のエッチング跡に形成する。引き続いて、光変調素子1の各層を構成する下地膜41、磁化固定層3、中間層2、磁化自由層11、保護膜42(図2参照)のそれぞれを形成するための金属膜や磁性膜を連続して成膜、積層する。そして、レジストマスクをその上の金属電極材料等ごと除去する。これらの工程により、下部電極6Aが形成され、下部電極6Aの接続層6f上に、光変調素子1のすべての層が接続層6fと同一平面視形状に形成され、その周囲が絶縁膜で平坦に埋められる。
次に、第1実施形態と同様に、保護膜42(金属膜)の上の磁化自由層11を形成される領域を被覆するレジストマスクを形成し、保護膜42、磁化自由層11、中間層2、あるいはさらに磁化固定層3の上部までを、周囲の絶縁膜と共にエッチングして、光変調素子1を成形する。この上から絶縁膜を光変調素子1の上面(保護膜42)の高さまで成膜して、エッチング跡に埋め込んで絶縁層8を形成し、レジストマスクをその上の絶縁膜ごと除去する。
(上部電極形成工程)
第1実施形態と同様に、上部電極5および上部電極5,5間の絶縁層8を形成して、空間光変調器10Aが製造される。
このように、下部電極6Aの接続層6fと光変調素子1の磁化固定層3とが同一平面視形状に設計されることで、これらを同じレジストマスクで成形することができ、2段階で成形される光変調素子1を備える空間光変調器10Aを、工程数の増大を抑えて製造することができる。本変形例に係る空間光変調器10Aは、第1実施形態に係る空間光変調器10と同様に、外部磁界を印加して初期設定を行う。
あるいは、接続層6fを含めた下部電極6Aの全体を基板9A上に形成して、接続層6fを露出させて絶縁層8で平坦に形成し、この上に、第1実施形態に係る空間光変調器10の製造方法における光変調素子形成工程と同様に、光変調素子1および光変調素子1,1間の絶縁層8を形成することもできる。この場合、接続層6fと光変調素子1の磁化固定層3とは、平面視形状が一致しなくてもよい。あるいは、前記と同様に基板9A上に下部電極6Aの接続層6fを露出させて形成し、透明基板からなる別の基板9(図示せず)上に、上部電極5、光変調素子1、および下部電極6Aの接続層6fをこの順に形成したものを、接続層6f,6f同士が接合するように公知の方法で貼り合わせてもよい。基板9上に、上部電極5、光変調素子1、接続層6fの順に形成する製造方法は、前記の変形例の通りである。また、それぞれの要素を形成した基板9Aと基板9とを貼り合わせる方法は、Cu,Au等の金属電極材料同士による熱圧着、原子拡散接合、表面活性化接合が挙げられる。
以上のように、本発明の第1実施形態およびその変形例に係る空間光変調器によれば、光変調素子の磁化固定層を外側へ拡張させて、光を反射させ易い下部電極上に設けることにより、光変調素子同士の間に入射して下部電極で反射した光が、光変調素子で変調した出射光の偏光の向きに合わせて変調されるため、中間調の光が出射することなく、明暗のコントラストが良好である。
〔第2実施形態〕
第1実施形態およびその変形例においては、下部電極の上に拡張して形成された磁化固定層が、その旋光角を、光変調素子の2値の旋光角の一方に合わせるように設計されたが、2値の旋光角と異なる旋光角であっても、多重反射による増幅の程度を調整することによって、空間光変調器からの出射光において偏光の向きを合わせることができる。以下、本発明の第2実施形態に係る空間光変調器について、図6、図7を参照して説明する。第1実施形態およびその変形例(図1〜5参照)と同一の要素については同じ符号を付し、説明を省略する。
本発明の第2実施形態に係る空間光変調器10B(図7参照)は、光変調素子1に代えて光変調素子1Bを2次元配列し、絶縁層8に代えて絶縁層8Aが設けられている以外は、図1に示す第1実施形態に係る空間光変調器10と同じ構造である。すなわち空間光変調器10Bは、クロスポイント型のMRAMと同じ回路構造であり、また、反射型の空間光変調器で、上部電極5を透過して入射光L0が光変調素子1Bに入射、反射して出射する。以下、本実施形態に係る空間光変調器を構成する各要素を、特に第1実施形態およびその変形例と異なるものについて詳細に説明する。
(光変調素子)
光変調素子1BはTMR素子であり、図6に示すように、下から、磁化固定層3、障壁層2A、磁化自由層11が積層され、各層はそれぞれ第1実施形態およびその変形例に係る空間光変調器10に搭載された光変調素子1,1A(図2、図5参照)と同様の構成である。ただし、光変調素子1Bは、磁化固定層3が、外部領域3exも含めて一様な厚さであり、また、平面視において、障壁層2Aと磁化固定層3とが同一形状で、磁化自由層11の外側へ拡張して形成されている。また、磁化固定層3および障壁層2Aは、Y方向(下部電極6の幅方向)にも、下部電極6の上において磁化自由層11の外側へ拡張して形成されることが好ましい。
このように、光変調素子1Bにおいて、障壁層2Aが磁化固定層3と共に磁化自由層11の外側の四方すべてに拡張されていることにより、磁化自由層11の端部から磁化固定層3に絶縁層8Aを介してリーク電流が流れることを抑制することができる。また、第1実施形態の変形例にて説明したように、磁化固定層3がTbFeCo等の酸化し易い磁性材料を適用されても、加工時において、また、側面に接触する絶縁層8AがSiO2等の酸化膜であっても、磁化自由層11を積層した領域まで保磁力等の特性が劣化せず、光変調素子1Bの磁化反転動作に影響し難い。なお、磁化固定層3は、外部領域3exにおいて、上面が障壁層2Aに接触しているが、例えばMgOは酸化膜の中でも比較的O(酸素)を放出し難く、RE−TM合金で形成されている場合も劣化し難い。
(電極)
上部電極5および下部電極6は、それぞれ第1実施形態に係る空間光変調器10における上下電極5,6と同様の構成とすることができる。さらに本実施形態においては、高屈折率の透明電極層51を備える上部電極5について、上面でまたはその上に設けた低屈折率の絶縁材料からなる保護膜(図示省略)との界面で光変調素子1Bに多重反射させて、光変調素子1Bの旋光角が累積、増幅される構成にすることが好ましい(特許文献4,5,6参照)。
(絶縁層)
絶縁層8Aは、第1実施形態に係る空間光変調器10の絶縁層8と同様、公知の無機絶縁材料を適用することができる。さらに本実施形態においては、図7に示すように、絶縁層8Aは、上部電極5,5間からその下の光変調素子1B,1B間まで、詳しくは磁化自由層11,11間までにおいて、下から高屈折率層81、低屈折率層82の屈折率の異なる絶縁材料を積層した2層構造とすることが好ましい。例えば図7においては、下部電極6,6間および光変調素子1B,1B間に高屈折率層81を備え、上部電極5,5間に下から高屈折率層81、低屈折率層82を積層して備える。あるいは、上部電極5,5間および光変調素子1B,1B間の全体を高屈折率層81とし、空間光変調器10Bの上面に低屈折率の絶縁材料からなる保護膜を設けてもよい(図示せず)。このような構造により、後記するように、光変調素子1B,1B間から下部電極6上の磁化固定層3(外部領域3ex)に入射して反射した光が多重反射して出射する。
高屈折率層81としてはSi窒化物(Si34等、屈折率2.0〜2.6)、TiO2(屈折率2.5)、ZrO(屈折率2.4)等が、低屈折率層82としてはSiO2(屈折率1.46)、MgF2(屈折率1.38)等が、それぞれ挙げられるが、高屈折率層81と低屈折率層82の屈折率の差が十分に大きければよい。また、高屈折率層81、低屈折率層82はそれぞれ、一体の媒質として作用する程度に屈折率が近似している絶縁材料であれば、1種類の絶縁材料で形成されていなくてよい。
(空間光変調器の光変調動作)
第2実施形態に係る空間光変調器の光変調動作を、図7を参照して、この空間光変調器を用いた表示装置にて説明する。図7は模式図であり、空間光変調器10Bについて、図3と同様に、破断線の左側にY方向に沿った断面図を、右側にX方向に沿った断面図をそれぞれ表し、また、偏光子PFoおよび検出器PDと空間光変調器10Bとの位置関係は、破断線を挟んで必ずしも整合するものではない。また、図7では、光路を見易く表すために、上部電極5、絶縁層8A(81,82)、および基板9にはハッチングを付さず、また、光変調素子1Bの磁化自由層11および磁化固定層3にその磁化方向を表す黒塗り矢印を付す。
表示装置は、第1実施形態(図3参照)と同様の構成であり、光学系OPSおよび偏光子PFiにより、1つの偏光成分の入射光L0が空間光変調器10Bに上方から入射する。一方、偏光子PFoAは、入射光L0に対して角度θAPで旋光した光を完全に遮光するように配置される。上部電極5を透過して光変調素子1Bに入射した入射光L0は、光変調素子1Bまたはその下の下部電極6で反射して、再び上部電極5を透過して、磁化自由層11の磁化方向によって入射光L0に対して角度θPまたはθAPで旋光した光(出射光LP,LAP)となって、出射する。
光変調素子1Bでの1回の反射による旋光角は、第1実施形態の変形例における光変調素子1A(図4参照)と同様、(+θfree+θpin)または(−θfree+θpin)である。ただし、本実施形態においては、出射光LP,LAPは、上部電極5(透明電極層51)の上面と光変調素子1Bとの間で多重反射するため、光変調素子1Bによる旋光を1回および2、3、・・・、n回繰り返して出射したそれぞれの光が合成された光である。その結果、旋光角θP,θAPが光変調素子1Bの旋光角(+θfree+θpin)、(−θfree+θpin)のa倍(a>1)に増幅されている(特許文献6参照)。
一方、下部電極6上で隣り合う光変調素子1B,1B間の絶縁層8Aに入射した入射光L0は、下部電極6上の磁化固定層3(外部領域3ex)に到達し、この磁化固定層3またはその下の下部電極6で反射して出射する。磁化固定層3での1回の旋光角は(+θpin)であるが、出射光Lneは、上部電極5,5間または光変調素子1B,1B間における高屈折率層81と低屈折率層82の界面と磁化固定層3との間で多重反射するため、磁化固定層3による旋光を繰り返して出射した光が合成された光である。その結果、出射光Lneは、磁化固定層3の旋光角(+θpin)のb倍(b>1)の角度で旋光した光となる。
例えば磁化自由層11と磁化固定層3が、同じ磁化方向(平行)で同じ向きに旋光し、かつ磁化固定層3の方が旋光角が大きい場合(+θfree<+θpin)、0°<−θfree+θpin<+θpin<+θfree+θpinである。そこで、出射光Lneの偏光の向きを例えば出射光LAPに合わせるためには、θAP=a×(−θfree+θpin)≒b×(+θpin)を満足するa,b(a>b)になるように、空間光変調器10Bにおける上部電極5(透明電極層51)および絶縁層8A(高屈折率層81、低屈折率層82)のそれぞれの構造(屈折率、厚さ)が設計される。このような構成により、出射光Lneは、出射光LAPと同様に偏光子PFoAで遮光され、磁化方向が平行な光変調素子1Bに入射して反射した出射光LPのみが偏光子PFoAを透過して検出器PDに入射する。なお、光変調素子1Bからの出射光LP,LAPについては、多重反射による光量の減衰が抑制されるように、上部電極5が設計されることが好ましい。一方、出射光Lneは、旋光角が出射光LAPの旋光角θAPに略一致すればよく、光量は問わないが、旋光角θAPとの差が大きいほど減衰されている方がより好ましい(特許文献6,7参照)。
なお、上部電極5または上部電極5,5間の絶縁層8Aを透過して、光変調素子1B,1B間、さらに下部電極6,6間の絶縁層8Aに入射した入射光L0は、第1実施形態と同様に、絶縁層8Aから基板9に入射するため、空間光変調器10Bの上面からは出射しない。
空間光変調器10Bは、出射光Lneの偏光の向きを出射光LPに合わせるために、θP=a×(+θfree+θpin)≒b×(+θpin)を満足するa,b(a<b)になるように設計されてもよい。この場合、表示装置は、入射光L0に対して角度θPで旋光した光を完全に遮光する偏光子PFoが配置される。また、出射光Lneの偏光の向きが出射光LP,LAPのいずれか一方に略一致していれば、空間光変調器10Bは、出射光LP,LAPまたは出射光Lneについて、多重反射させない構成としてもよい(a=1またはb=1)。
〔空間光変調器の製造方法〕
第2実施形態に係る空間光変調器10Bは、第1実施形態に係る空間光変調器の製造方法と同様に製造することができる。ただし、光変調素子形成工程において、2段目の加工で保護膜42および磁化自由層11をエッチングして完全に除去するが、障壁層2Aはより多く残存させることが好ましい。磁化固定層3の外部領域3ex上における障壁層2Aの厚さが薄過ぎる(エッチング量が多い)と、磁化自由層11の側面に接する絶縁層8Aの材料によっては、磁化自由層11の端部から磁化固定層3にリーク電流が流れる虞がある。また、特に磁化固定層3が耐熱性に劣るRE−TM合金で形成されている場合は、障壁層2Aのエッチング量が多いほど、磁化固定層3(外部領域3ex)への加工ダメージが大きくなるので好ましくない。
〔第2実施形態の変形例〕
第2実施形態に係る空間光変調器10Bは、第1実施形態に係る空間光変調器10と同様に、基板9に表面を熱酸化したSi基板や低屈折率の透明基板を適用されてもよく、この場合は下部電極6,6間の絶縁層8A等を2層構造にして、光を多重反射させて減衰させる。また、空間光変調器10Bは、第1実施形態の変形例に係る空間光変調器10A(図5参照)と同様に、光変調素子1B毎にトランジスタを接続した選択トランジスタ型のMRAMと同じ回路構造の空間光変調器とすることができる。
第2実施形態に係る空間光変調器10Bは、CPP−GMR素子からなる光変調素子1(ただし、|θpin|≠|θfree|)を搭載してもよい。この場合は、θP=a×(+θfree)≒b×(+θpin)、またはθAP=a×(−θfree)≒b×(+θpin)を満足するa,bに設計される。また、磁化固定層3の外部領域3exから所定の旋光角(+θpin)で旋光した光を出射するように、光変調素子1の中間層2が、外部領域3ex上において光を十分に透過する厚さであることが好ましい。そのために、光変調素子形成工程において、2段目の加工で、保護膜42および磁化自由層11のエッチングに引き続いて、必要に応じて中間層2をエッチングして薄肉化する、または完全に除去する。
第2実施形態に係る空間光変調器10Bは、第1実施形態の変形例と同様、透明基板からなる基板9上に、上部電極5、光変調素子1B、下部電極6、の順に形成して製造されてもよい。このような製造方法で得られる空間光変調器10Bは、光変調素子1Bの障壁層2A(または中間層2)が磁化自由層11と同じ平面視形状になる(図示せず)。したがって、光変調素子1BにTMR素子を適用する場合、リーク電流が流れることを抑制するために、絶縁層8Aは、少なくとも障壁層2A,2A間において、SiO2、またはMgO等の障壁層2Aと同じ絶縁材料を適用することが好ましい。
以上のように、本発明の第2実施形態およびその変形例に係る空間光変調器によれば、第1実施形態と同様に明暗のコントラストが良好となり、さらに、光変調素子の磁化固定層のみの旋光角で調整されなくてよい。
第1実施形態およびその変形例に係る空間光変調器10,10Aについても、光変調素子1,1Aで反射した光を、多重反射により出射光の旋光角を増幅させる構成にしてもよい。この場合は、磁化固定層3(外部領域3ex)またはその下の下部電極6,6Aで反射した光についても、同等に増幅させる絶縁層8の構成にする。
以上、本発明の空間光変調器を実施するための各実施形態について述べてきたが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。
10,10A,10B 空間光変調器
1,1A,1B 光変調素子
11 磁化自由層
2 中間層
2A 障壁層
3 磁化固定層
5 上部電極(電極)
6,6A 下部電極(電極)
8,8A 絶縁層

Claims (3)

  1. 磁化固定層、中間層、磁化自由層の順に積層してなるスピン注入磁化反転素子を光変調素子として2次元配列して備え、さらに、一対の電極として前記光変調素子の上に接続した上部電極および下に接続した下部電極、ならびに、隣り合う前記光変調素子同士の間および前記電極間を埋める絶縁層を備えて、上方から前記光変調素子に入射した光の偏光方向を2値の角度に変化させた光を反射させて出射する空間光変調器であって、
    前記下部電極の上に、前記光変調素子の磁化固定層が、平面視で当該光変調素子の外側に拡張して形成され、
    前記光変調素子の外側に拡張して形成された磁化固定層に入射した光の偏光方向を、前記2値の角度の一方と20%以内の差の角度に変化させた光を反射させて出射することを特徴とする空間光変調器。
  2. 前記光変調素子の外側に拡張して形成された磁化固定層の上に設けられた前記絶縁層が、下から高屈折率材料と低屈折率材料との2層以上を積層されてなることを特徴とする請求項1に記載の空間光変調器。
  3. 隣り合う前記光変調素子のそれぞれの外側に拡張して形成された磁化固定層同士の間隔が、前記入射した光の回折限界よりも短いことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の空間光変調器。
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