JP2015173186A - スピン注入磁化反転素子 - Google Patents

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秀和 金城
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賢司 町田
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Daisuke Kato
大典 加藤
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Kenichi Aoshima
賢一 青島
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淳 久我
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Abstract

【課題】磁気光学効果が高く、垂直磁気異方性を有するが、保磁力の小さいGd−Fe合金の保磁力を大きくして、磁化反転動作の安定したスピン注入磁化反転素子を提供する。【解決手段】スピン注入磁化反転素子5は、磁化固定層3、MgOからなる障壁層2、GdFe層11を備える磁化自由層1を順に積層してなり、磁化自由層1のGdFe層11は、MgOからなる障壁層2の上に成膜されることにより保磁力が大きくなる。【選択図】図1

Description

本発明は、入射した光を磁気光学効果により光の位相や振幅等を空間的に変調して出射する空間光変調器に用いる光変調素子に好適なスピン注入磁化反転素子に関する。
スピン注入磁化反転素子は、2層以上の磁性体膜(磁性膜)を備え、上下に接続された電極(配線)から膜面に垂直に電流を供給されることで、スピン注入磁化反転により一部の磁性膜(磁化自由層)の磁化方向が180°回転(反転)し、磁化方向が変化しない別の磁性膜(磁化固定層)と同じ方向または反対方向になる。このスピン注入磁化反転素子は、磁性膜同士の磁化方向が同じである状態と異なる方向の状態とで上下に接続した電極間の抵抗が変化するため、磁気抵抗効果素子として1ビットのデータの書込み/読出しを行うことができる。すなわち、スピン注入磁化反転素子は、これを備えたメモリセルをマトリクス状に配列して磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)を構成することができる。スピン注入磁化反転素子は、その寸法が極めて小さい上、磁化反転の動作が高速である。そのため、スピン注入磁化反転素子、ならびに大容量磁気メモリとしてこれを用いたMRAMの研究・開発が進められている。
スピン注入磁化反転素子としては、CPP−GMR(Current Perpendicular to the Plane Giant MagnetoResistance:垂直通電型巨大磁気抵抗)素子やTMR(Tunnel MagnetoResistance:トンネル磁気抵抗)素子が知られている。さらに近年では、MRAMのさらなる大容量化および省電力化のために、膜面に垂直な磁化方向を示す(垂直磁気異方性を有する)磁性材料がスピン注入磁化反転素子に適用されている。このような磁性材料で形成された、すなわち垂直磁気異方性を有するスピン注入磁化反転素子は、いっそうの微細化が可能で、かつ磁化反転に要する電流(反転電流)を低減することができる。
磁気抵抗効果素子用には、CPP−GMR素子よりも磁気抵抗比(MR比)の高いTMR素子が特に研究されている。TMR素子は、2枚の磁性膜の間に、トンネル障壁または障壁層と呼ばれる極めて薄い絶縁膜を挟んだ構造を有する。TMR素子の障壁層の材料には、磁化反転に要する電流をいっそう低減できる酸化マグネシウム(MgO)が好適とされる。特に、TMR素子は、2つの磁性膜の少なくとも一方が、MgOからなる障壁層との界面にCo−FeやCo−Fe−B等の磁性金属の薄膜を備えることで、スピン注入効率が向上し、反転電流が低減することが知られている(非特許文献1〜5参照)。
また、スピン注入磁化反転素子の別の用途に、空間光変調器の画素に搭載される光変調素子が挙げられる。光変調素子用のスピン注入磁化反転素子は、磁性膜で反射または透過した光の偏光の向きが変化する(旋光する)磁気光学効果により、磁性膜の磁化方向を反転させて光の偏光の向きを2値に変化させるものである。空間光変調器においても、従来の液晶に代わる材料として、MRAMと同様に高精細化および高速化のために、スピン注入磁化反転素子の研究・開発が進められている(例えば、特許文献1〜3参照)。光変調素子においても、空間光変調器を高精細化するべく画素数を増大しても好適に駆動し、かつ省電力化のために反転電流を低減できるTMR素子を適用することが望ましい。また、いっそう反転電流を低減するために、磁化自由層の両面のそれぞれに中間層や障壁層を挟んで磁化固定層を2つ備えたデュアルピン構造のスピン注入磁化反転素子を備える磁気抵抗効果素子や光変調素子(特許文献4,5参照)、さらに、前記2つの磁化固定層を共に磁化自由層の一面側に設けることにより、光の入出射側に電極を接続しない並設デュアルピン構造のスピン注入磁化反転素子が開発されている(特許文献6,7参照)。
光変調素子に使用するスピン注入磁化反転素子は、偏光の向きの変化が大きい(光変調度が大きい)ことが望ましい。そのため、光変調素子においても、垂直磁気異方性を有するスピン注入磁化反転素子を用いて、膜面にほぼ垂直に光を入射することにより、極カー効果で光変調度を大きくすることが望ましい(例えば、非特許文献6、特許文献2,3参照)。このような垂直磁気異方性を有し、かつ磁気光学効果の大きい磁性材料として、Gd−Fe系合金が知られ、光変調素子用のスピン注入磁化反転素子の磁化自由層に好適である(例えば、特許文献3参照)。
特許第4829850号公報 特開2011−2522号公報 特開2012−103634号公報 特許第3824600号公報 特許第4939502号公報 特開2012−78579号公報 特開2013−195593号公報
S. S. P. Parkin, C. Kaiser, A. Panchula, P. M. Rice, B. Hughes, M. Samant, S. H. Yang, "Giant tunnelling magnetoresistance at room temperature with MgO (100) tunnel barriers", Nature Materials, vol.3, p.862, Dec. 2004 Shinji Yuasa, Taro Nagahama, Akio Fukushima, Yoshishige Suzuki, Koji Ando, "Giant room-temperature magnetoresistance in single-crystal Fe/MgO/Fe magnetic tunnel junctions", Nature Materials, vol.3, p.868, Dec. 2004. M. Nakayama, T. Kai, N. Shimomura, M. Amano, E. Kitagawa, T. Nagase, M. Yoshikawa, T. Kishi, S. Ikegawa, H. Yoda, "Spin transfer switching in TbCoFe/CoFeB/MgO/CoFeB/TbCoFe magnetic tunnel junctions with perpendicular magnetic anisotropy", Journal of Applied Physics, vol.103, 07A710 (2008) 久保田均,他,"MgOバリアを用いたMTJにおけるスピン注入磁化反転",日本応用磁気学会研究会資料145巻,p.43−48,2006.01.30 D. D. Djayaprawira, et. al, "230% room-temperature magnetoresistance in CoFeB/MgO/CoFeB magnetic tunnel junctions", Appl. Phys. Lett. 86, 092502 (2005) K. Aoshima et. al, "Spin transfer switching in current-perpendicular-to-plane spin valve observed by magneto-optical Kerr effect using visible light", Applied Physics Letters, vol.91, 052507 (2007)
スピン注入磁化反転素子は、保磁力が大小2種類の磁性膜とその間の非磁性金属または絶縁体の膜とを少なくとも備え、さらに下地への密着性を付与する下地膜や製造工程におけるダメージから最上層を保護する保護膜も含めて、各層の材料を連続的に成膜して積層して製造される。このような積層構造は、一般的に、各層に対応した複数のターゲット(スパッタ源)をスパッタ装置に装着して、ターゲットを切り替えて順次成膜することにより得られる。また、合金膜は、合金を構成する2種以上の金属ターゲットを同時に使用して形成することもできる。したがって、スピン注入磁化反転素子の製造には、各層の材料の種類分のターゲットを装着することのできるスパッタ装置を要する。さらに、デュアルピン構造のスピン注入磁化反転素子(特許文献4〜7参照)は、2つの磁化固定層が互いに逆向きの磁化方向に固定されるために、保磁力の大きさが異なる磁性膜を適用する等、材料の種類がさらに多くなる。そして、スピン注入磁化反転素子は、2以上の層で共通の材料が適用されていれば、ターゲットの装着数の少ないスパッタ装置で製造することができる。
しかし、光変調素子に好適な磁性材料であるGd−Fe合金は、保磁力が小さく、また垂直磁気異方性が比較的弱く、組成を調整することである程度保磁力を大きくしてスピン注入磁化反転素子の磁化自由層に適用することはできる(特許文献3参照)。それでも、特に微細化されたスピン注入磁化反転素子に適用するには、保磁力が十分であるとはいえず、さらに補償組成に近付けると、安定した磁気特性のGd−Fe合金膜を得ることが困難になる。また、スピン注入磁化反転素子の磁化固定層は、磁化自由層に対して保磁力が十分に大きくないと磁化反転動作が安定しない。したがって、従来のスピン注入磁化反転素子において、Gd−Fe合金は磁化自由層にしか適用することができず、磁化固定層には異なる磁性材料を適用する必要がある。
本発明は前記問題点に鑑み創案されたもので、Gd−Fe合金を適用して、安定した垂直磁気異方性のスピン注入磁化反転素子を提供することが課題である。
Gd−Fe合金のような遷移金属と希土類金属との合金は、成膜環境により磁気特性が変化する場合がある。このことから、本願発明者らは鋭意研究の結果、MgO膜上にGd−Fe合金膜を成膜した場合に、このGd−Fe合金膜の保磁力が大きくなることを見出した。
すなわち、本発明に係るスピン注入磁化反転素子は、それぞれが垂直磁気異方性を有する磁化固定層と磁化自由層の間に中間層を積層してなり、前記磁化固定層および前記磁化自由層の少なくとも一方がGd−Feからなる層を備え、前記Gd−Feからなる層がMgO膜に積層されていることを特徴とする。
かかる構成により、電極材料等の導電体上に形成された場合には保磁力が小さく、垂直磁気異方性が弱いGd−Fe合金を適用しても、十分な保磁力で安定した垂直磁気異方性を示すスピン注入磁化反転素子となる。
本発明に係るスピン注入磁化反転素子によれば、磁化固定層にGd−Fe合金を適用することができ、磁化自由層との材料の共通化により生産性を向上させることができる。
本発明の第1実施形態に係るスピン注入磁化反転素子を備えた光変調素子の構成を示す断面図である。 図1に示す光変調素子の製造方法を説明する模式図であり、(a)〜(d)は光変調素子を配列した空間光変調器の部分拡大図に相当する。 本発明の第1実施形態に係るスピン注入磁化反転素子の動作を説明する模式図であり、(a)、(b)はスピン注入磁化反転を、(c)、(d)は光変調素子および磁気抵抗効果素子としての動作を説明する図である。 本発明の第1実施形態の変形例に係るスピン注入磁化反転素子を備えた光変調素子の構成を示す断面図である。 本発明の第2実施形態に係るスピン注入磁化反転素子を備えた光変調素子の構成を示す模式図であり、(a)は断面図、(b)は底面図である。 本発明の第2実施形態の変形例に係るスピン注入磁化反転素子を備えた光変調素子の構成を示す断面図である。 図6に示す光変調素子の製造方法を説明する模式図であり、(a)〜(d)は光変調素子を配列した空間光変調器の部分拡大図に相当する。 本発明の第3実施形態に係るスピン注入磁化反転素子を備えた磁気抵抗効果素子の構成を示す断面図である。 図8に示す磁気抵抗効果素子の製造方法を説明する模式図であり、(a)〜(d)は磁気抵抗効果素子を配列した磁気ランダムアクセスメモリの部分拡大図に相当する。 図8に示す磁気抵抗効果素子の製造方法を説明する模式図であり、(a)〜(c)は磁気抵抗効果素子を配列した磁気ランダムアクセスメモリの部分拡大図に相当する。 本発明の第4実施形態に係るスピン注入磁化反転素子を備えた光変調素子の構成を示す断面図である。 (a)、(b)は、本発明の第4実施形態に係るスピン注入磁化反転素子のスピン注入磁化反転動作を説明する模式図である。 本発明の第5実施形態に係るスピン注入磁化反転素子を備えた磁気抵抗効果素子の構成を示す断面図である。 中間層にMgO膜を有し、その上にGd−Feからなる層を備えるスピン注入磁化反転素子のサンプルの、カー回転角の磁場依存性で表した磁化曲線であり、(a)はMgO膜厚1.5nm、(b)はMgO膜厚2.0nm、(c)はMgO膜厚5.0nm、(d)はMgO膜厚10nmである。 中間層に厚さ1.5nmのMgO膜を有し、その上下それぞれにGd−Feからなる層を備えるスピン注入磁化反転素子のサンプルの、カー回転角の磁場依存性で表した磁化曲線である。 熱酸化Si基板にGd−Feからなる層を成膜したサンプルの、カー回転角の磁場依存性で表した磁化曲線である。 熱酸化Si基板にGd−Feからなる層を成膜したサンプルの、カー回転角の磁場依存性で表した磁化曲線であり、(a)は厚さ5nmのMgO膜、(b)は厚さ3nmのRu膜を、Gd−Feからなる層の下地に備えたサンプルである。 Gd−Feからなる層の保磁力のMgO膜厚依存性のグラフであり、(a)はGd:20at%、Fe:80at%、(b)はGd:25at%、Fe:75at%の組成である。
以下、本発明に係るスピン注入磁化反転素子を実現するための形態について、図を参照して説明する。
〔第1実施形態〕
本発明の第1実施形態に係るスピン注入磁化反転素子は、上下に一対の電極を接続されて、空間光変調器の画素(空間光変調器による表示の最小単位での情報(明/暗)を表示する手段)を構成する光変調素子に適用される。このような光変調素子は、上方から入射した光を反射させて異なる2値の光(偏光成分)に変調し、上方へ出射する。以下、本発明の第1実施形態に係るスピン注入磁化反転素子、およびこれを備えた光変調素子について説明する。
本発明の第1実施形態に係るスピン注入磁化反転素子5は、図1に示すように、磁化固定層3、障壁層(中間層)2、磁化自由層1の順に積層された構成であり、一対の電極である上部電極7と下部電極6(以下、適宜まとめて、電極6,7)に上下で接続されて、光変調素子10を構成する。スピン注入磁化反転素子5は、磁化方向が一方向に固定された磁化固定層3および磁化方向が回転可能な磁化自由層1を、MgOからなる障壁層2(MgO膜)を挟んで積層してなるトンネル磁気抵抗(TMR)素子である。さらにスピン注入磁化反転素子5は、最上層にすなわち磁化自由層1の上に保護膜43を備え、また、必要に応じて最下層にすなわち磁化固定層3の下に下地金属膜41を備える。詳しくは後記製造方法にて説明するように、スピン注入磁化反転素子5を構成するこれらの各層は、例えばスパッタリング法や分子線エピタキシー(MBE)法等の公知の方法で、連続的に成膜されて積層される。
光変調素子10は、空間光変調器の画素とするために、基板9上に、膜面方向において2次元アレイ状に配列されて(図示省略)、一対の電極6,7の一方を行方向に、他方を列方向に、それぞれ延設する。図1においては、下部電極6が手前−奥方向(紙面垂直方向)に、上部電極7が左右方向に、それぞれ延設された帯状に形成され、複数の光変調素子10に共有される。そのため、光変調素子10を配列した空間光変調器においては、光変調素子10,10間に、具体的にはスピン注入磁化反転素子5,5間、電極6,7間、下部電極6,6間および上部電極7,7間(配線間)のそれぞれに、絶縁層8が充填される。スピン注入磁化反転素子5は、平面視が例えば矩形であり(図示省略)、好適に磁化反転するためには、300nm×400nm相当の面積以下とすることが好ましく、一方、光変調のために、一辺の長さを少なくとも入射光の回折限界(波長の1/2程度)以上とする。
本実施形態に係るスピン注入磁化反転素子5は、磁化自由層1および磁化固定層3が、障壁層2との界面に、Co−FeまたはCo−Fe−Bからなる磁性金属膜13,33(まとめてCoFe膜13,33と称する)を備える。また、磁化自由層1が、GdFe層(Gd−Feからなる層)11を主たる要素として備えると共に、GdFe層11とCoFe膜13の間に、Gd膜12を備える。一方、磁化固定層3が、主たる要素として磁性層30を備える。すなわち、スピン注入磁化反転素子5は、下から、下地金属膜41、磁性層30、CoFe膜33、障壁層2、CoFe膜13、Gd膜12、GdFe層11、保護膜43、を順に積層してなる。以下、スピン注入磁化反転素子5を構成する要素について詳しく説明する。
(磁化自由層)
磁化自由層1は光変調素子10における光変調層であり、本実施形態に係るスピン注入磁化反転素子5において障壁層2の上に設けられ、前記した通り、障壁層2の側、すなわち下から、CoFe膜13/Gd膜12/GdFe層11の3層構造を有する。
GdFe層11は、磁化自由層1の主たる要素であり、垂直磁気異方性を有する磁性材料である遷移金属(TM)と希土類金属(RE)との合金(RE−TM合金)の一種で、特に磁気光学効果の高いGd−Fe合金で形成される。Gd−Fe合金においては、遷移金属であるFeが一方向(+z方向とする)の磁気モーメントを有するのに対し、希土類金属であるGdは、この一方向の逆方向(−z方向)の磁気モーメントを有する。RE−TM合金はフェリ磁性体の一種であり、スピン注入磁化反転素子の磁性材料に適用される場合には、例えばTb−Fe−Co合金は、TM,REのそれぞれの磁気モーメントが相殺される組成(補償組成)に対して僅かにREが多い組成にして、当該RE−TM合金全体として飽和磁化の小さい−z方向の磁気モーメントを有するようにして、容易に垂直磁気異方性を示すようにし、かつ必要な保磁力を確保している。一方、Gd−Fe合金は、このような補償組成付近では、他のRE−TM合金と比較して保磁力が小さく、さらに保磁力に対して、磁化自由層に適用した場合の反転電流が小さくはないことから、一般的に、Feの含有率が高い組成にして、全体として+z方向の磁気モーメントを有するようにして磁性材料に適用される。具体的には、Gd−Fe合金は、Gd:19〜27at%(Fe:73〜81at%)の範囲の組成であることが好ましく、この範囲よりもFeが不足するとフェリ磁性体として機能しない(特許文献3参照)。所望の組成のGd−Fe合金を得るために、GdFe層11は、前記組成に対応したスパッタ源(ターゲット)を使用したり、所望の組成よりもGdの多いGd−Fe合金のスパッタ源とFeスパッタ源とをそれぞれの出力を調整して、同時にスパッタリングすることで成膜される。
Gd−Fe合金は、前記した通り、垂直磁気異方性および高い磁気光学効果を有しているので、光変調素子の光変調層(磁化自由層)に好適である。しかし一方で、スピン注入磁化反転素子の磁化自由層としての必要な保磁力を有しているものの、特に微細化したスピン注入磁化反転素子において、磁化方向を安定して保持するためには保磁力がさらに大きいことが好ましい。そこで、本実施形態に係るTMR素子5は、磁化自由層1が障壁層2の上に設けられ、すなわちGdFe層11がMgO膜の上に設けられる。このように、Gd−Fe合金は、MgO膜上に成膜されることにより保磁力が大きくなる。GdFe層11は、厚いほど磁気光学効果が高くなるが、一方で厚くなると障壁層2(MgO膜)から離れた上層部分でMgO膜による保磁力を増大させる効果が低下して、さらに過剰に厚膜化されると垂直磁気異方性を示し難くなるため、一般的なTMR素子の磁化自由層と同様に、厚さを1〜20nmの範囲とすることが好ましく、10nm以下がより好ましい。
また、Gd−Fe合金は、スピン偏極率が低いため、TMR素子の磁性層に適用されても、当該TMR素子が本来の高いMR比を実現できず、また、反転電流が低減されない。TMR素子は、MR比を向上させるために、磁化自由層や磁化固定層が、MgOからなる障壁層との界面に、Co−FeまたはCo−Fe−Bからなる磁性金属膜を備えることが好ましい(非特許文献1〜5参照)。ところが、Gd−Fe合金は、Co−FeやCo−Fe−Bと組み合わされると、垂直磁気異方性を示さずに、Co−Fe等と同じ面内磁気異方性を示すようになる。これは、Co−Fe等のFeによって、Gd−Fe合金におけるFeの反磁界成分の影響が強くなることによると考えられる。そこで、本実施形態に係るスピン注入磁化反転素子5は、磁化自由層1が、Co−FeまたはCo−Fe−Bからなる磁性金属膜13(まとめてCoFe膜13と称する)を備える場合には、GdFe層11との間にGd膜12をさらに備える。このような構成により、Gd膜12がCoFe膜13によるFeの影響を相殺し、GdFe層11(磁化自由層1)が垂直磁気異方性を示すようになる。
Co−FeやCo−Fe−Bはスピン偏極率が高いため、CoFe膜13が設けられることにより、磁化自由層1と障壁層2の界面でのスピン偏極率を高くして、障壁層2を介して磁化自由層1(GdFe層11)に注入されるスピンによるスピントルクが増大する。これにより、磁化自由層1の多くを占めるGdFe層11のスピン偏極率が低くても、TMR素子5は、反転電流が低減され、MR比がTMR素子本来の高いものとなる。このような効果を十分に得るために、CoFe膜13は、厚さを0.1nm以上とすることが好ましい。なお、Co−FeやCo−Fe−Bは、本来は面内磁気異方性を有するが、相対的に厚さを抑えて、垂直磁気異方性を示す磁性体(GdFe層11)に、影響を与えないようにGd膜12を介して積層されることで、この磁性体と一体に垂直磁気異方性を示す。Co−FeやCo−Fe−Bは一般的には厚さを2nm以下とするが(例えば、後記の磁化固定層3のCoFe膜33)、Gd−Fe合金は保磁力および垂直磁気異方性が小さいため、CoFe膜13の厚さが0.3nmを超えると、磁化自由層1(GdFe層11)が面内磁気異方性を示すようになる場合がある。したがって、CoFe膜13は、厚さを0.3nm以下とすることが好ましく、これにより、磁化自由層1は、CoFe膜13がGdFe層11と一体になって垂直磁気異方性を示す。
Gd膜12は、CoFe膜13とGdFe層11の間に設けられ、CoFe膜13(Fe)のGdFe層11への影響を相殺して、GdFe層11が本来の垂直磁気異方性を示すように作用する。Gd膜12は、GdFe層11やCoFe膜13の厚さに応じて、GdFe層11が垂直磁気異方性を示すように、厚さを設定される。具体的には、Gd膜12は、厚さを0.1nm以上とすることが好ましく、Gd原子1個分(0.18nm)相当の0.2nm以上とすることがより好ましく、また、2nm以下とすることが好ましい。言い換えると、磁化自由層1は、CoFe膜13との界面でGd−richとなるGd−Fe合金の層を備える。
(障壁層)
本実施形態に係るスピン注入磁化反転素子5において、障壁層2はMgOで形成される。障壁層2がMgOで形成されることにより、スピン注入磁化反転素子5は反転電流が低減されたTMR素子になると同時に、障壁層2の上に成膜される磁化自由層1(GdFe層11)の保磁力が大きくなって、磁化反転動作が安定する。障壁層2は、一般的なTMR素子と同様に、厚さを0.1〜2nmの範囲とすることが好ましく、厚くなるにしたがい、上に設けたGdFe層11の保磁力が大きくなる傾向があり、効果を十分なものにするために、厚さを1nm以上とすることがより好ましく、1.5nm超とすることがさらに好ましい。また、障壁層2は、特に(001)面配向のMgOとすることが好ましい。MgOのこのような結晶構造により、スピン注入磁化反転素子5において電子が散乱せずに注入されて、コヒーレントなトンネル電流が流れることにより、スピン注入磁化反転素子5の反転電流をいっそう低減させることができる。特に本実施形態に係るスピン注入磁化反転素子5においては、GdFe層11の保磁力を大きくするために障壁層2が比較的厚いことが好ましく、その結果、反転電流が大きくなるので、障壁層2をこのような結晶構造のMgOに形成することが好ましい。そのために、一例として、下地となる磁化固定層3(磁性層30)を非晶質構造とし、さらに障壁層2との界面にCo−FeまたはCo−Fe−B(CoFe膜33)を設けることが挙げられる。
(磁化固定層)
前記した通り、磁化固定層3は、下すなわち下部電極6の側から、磁性層30/CoFe膜33の2層構造を有する。スピン注入磁化反転素子5が安定した磁化反転動作をするために、磁化固定層3は、保磁力が磁化自由層1(GdFe層11)に対して十分に大きく、具体的には0.5kOe以上の差となることが好ましい。
磁性層30は垂直磁気異方性を有するTMR素子の磁化固定層として公知の磁性材料にて形成することができる。具体的には、Fe,Co,Ni等の遷移金属とPt,Pd等の貴金属とを含む、例えば[Co/Pt]×n、[Co/Pd]×nの多層膜、あるいは前記遷移金属とNd,Gd,Tb,Dy,Ho等の希土類金属との合金(RE−TM合金)、L10系の規則合金としたFePt, FePd等が挙げられる。さらに、磁性層30は、前記した通り十分な大きさの保磁力になるように、磁化自由層1に応じて、厚さを3〜50nmの範囲で設定されることが好ましい。また、磁性層30は、障壁層2として磁化固定層3の上に形成されるMgOを(001)面配向とすることを妨げないように、非晶質であることが好ましいため、RE−TM合金が好適で、保磁力の大きいTb−Fe−Coが特に好ましい。
CoFe膜33は、磁化自由層1におけるCoFe膜13と同様に、磁化固定層3と障壁層2の界面でのスピン偏極率を高くするので、磁化自由層1だけでなく磁化固定層3にも設けられることで、障壁層2を介して磁化自由層1へ注入するスピンによるスピントルクが増大して、スピン注入磁化反転素子5の反転電流がいっそう低減される。CoFe膜33は、その効果を十分に得るために、かつ、磁化固定層3全体を垂直磁気異方性にするために、厚さを0.1〜2nmの範囲とすることが好ましい。また、Co−FeやCo−Fe−Bは、前記した通り、(001)面配向の結晶のMgOとの格子整合がよく、特に成膜時において非晶質のCo−Fe−Bを適用することで、その上に成膜されるMgO(障壁層2)が(001)面配向の結晶構造になり易い。
(下地金属膜)
下地金属膜41は、スピン注入磁化反転素子5の最下層すなわち磁化固定層3の下に、下部電極6への密着性を付与するために設けられる。下地金属膜41は、非磁性金属材料の中で、Ru,Taを適用することが好ましく、これらの金属膜であれば、磁化固定層3に非晶質の磁性層30を備えてその上に設けられる障壁層2とするMgOについて、(001)面配向とすることを妨げない。下地金属膜41は、厚さが1nm未満であると連続した(ピンホールのない)膜を形成し難く密着性を付与する効果が十分に得られ難く、一方、10nmを超えて厚くしても、密着性がそれ以上には向上しないので、厚さを1〜10nmとすることが好ましい。
(保護膜)
保護膜43は、最上層すなわち磁化自由層1の上に、当該スピン注入磁化反転素子5の各層、特に最上層の磁化自由層1のGdFe層11を、光変調素子10の製造工程におけるダメージから保護するために設けられる。製造工程におけるダメージとは、例えばレジストパターン形成時の現像液の含浸等が挙げられ、特に酸化し易いRE−TM合金であるGdFe層11を外部環境に曝さないように、保護膜43が設けられる。保護膜43は、Ru,Ta,Cu,Pt,Au等の非磁性金属材料からなる単層膜、またはCu/Ta,Cu/Ru等の異なる金属材料からなる金属膜を2層以上積層した積層膜から構成される。保護膜43は、下地金属膜41と同様に、厚さが1nm未満であると連続した(ピンホールのない)膜を形成し難いので、GdFe層11等を保護する効果が十分に得られ難く、一方、10nmを超えて厚くしても、前記効果がそれ以上には向上せず、また、光変調素子10の上方からの入射光の透過光量を減衰させる。したがって、保護膜43は、厚さを1〜10nmとすることが好ましい。
光変調素子10を構成するスピン注入磁化反転素子5以外の要素について、以下に説明する。
(下部電極)
下部電極6は、Cu,Al,Au,Ag,Ta,Cr等の金属やその合金のような一般的な金属電極材料で形成され、また、前記金属や合金の2種類以上を積層してもよい。このような金属電極材料は、スパッタリング法等の公知の方法により成膜され、フォトリソグラフィ、およびエッチングまたはリフトオフ法等によりストライプ状等の所望の形状に加工される。
(上部電極)
上部電極7は、光が透過するように透明電極材料で構成される。透明電極材料は、例えば、インジウム亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide:IZO)、インジウム−スズ酸化物(Indium Tin Oxide:ITO)、酸化スズ(SnO2)、酸化アンチモン−酸化スズ系(ATO)、酸化亜鉛(ZnO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化インジウム(In23)等の公知の透明電極材料からなる。これらの透明電極材料は、塗布法でも成膜されるが、後記するように下地に金属膜を設けて連続して成膜されることが好ましいため、連続的に成膜が可能なスパッタリング法や真空蒸着法等を適用することが好ましく、フォトリソグラフィおよびエッチング等でストライプ状等の所望の形状に一括に加工される。特に、上部電極7は、GdFe層11を含むスピン注入磁化反転素子5の上に形成されるため、無加熱(室温等)成膜で比較的良好な導電性が得られるIZOを適用することが好ましい。
電極(配線)を透明電極材料で構成する場合、電極とこの電極に接続するスピン注入磁化反転素子5との間に金属膜を設けることが好ましい。すなわち上部電極7は、下に金属膜74を設けて、その上に透明電極材料からなる層(透明電極層)73を積層した構造とすることが好ましい。スピン注入磁化反転素子5との間に金属膜74を介在させることで、金属電極材料よりも抵抗が大きい透明電極材料を主体として構成される上部電極7においても、上部電極7−スピン注入磁化反転素子5間の接触抵抗を低減させて応答速度を上げることができる。
透明電極層73とスピン注入磁化反転素子5を介在する金属膜74としては、例えば、Au,Ru,Ta、またはそれらの金属の2種以上からなる合金等を用いることができる。そして、金属膜74は、その上の透明電極層73との密着性をよくして接触抵抗をさらに低減するために、前記した通り、スパッタリング法等で、透明電極材料と連続的に真空処理室にて成膜されることが好ましい。金属膜74の厚さは、保護膜43と同様に、1nm未満であると連続した(ピンホールのない)膜を形成し難く、一方、10nmを超えると光の透過量を低下させるので、1〜10nmが好ましい。
(絶縁層)
絶縁層8は、2次元アレイ状に配列された光変調素子10,10間に、すなわちスピン注入磁化反転素子5,5間、電極6,7間(層間)、下部電極6,6間および上部電極7,7間(配線間)を、それぞれ絶縁するために設けられる。絶縁層8は、例えばSiO2やAl23等の酸化膜やSi窒化物(Si34)等の公知の絶縁材料を適用することができる。ただし、スピン注入磁化反転素子5が、GdFe層11のような極めて酸化し易いRE−TM合金からなる層を含むため、スピン注入磁化反転素子5に接触する部分(スピン注入磁化反転素子5,5間)に設けられる絶縁層8は、O(酸素)を浸入させ易いSiO2等の酸化物よりも、Si窒化物やMgF2等のOを含有しない非酸化物、あるいはOを放出し難いMgO等を適用することが好ましい。
(基板)
基板9は、光変調素子10を配列するための土台であり、公知の基板材料が適用でき、例えば表面を熱酸化したSi基板やガラス等の公知の基板が適用できる。
(光変調素子の製造方法)
次に、スピン注入磁化反転素子5を備える光変調素子10の製造方法について、その一例を、図2を参照して説明する。光変調素子10は、前記したように、基板9上に2次元配列された空間光変調器として製造される。一般的に、スピン注入磁化反転素子は、磁性膜等の各材料を成膜、積層して、イオンミリング法等のエッチング異方性の高いエッチングで加工されて製造されることが多いが、本実施形態に係るスピン注入磁化反転素子5は、耐熱性に劣るGd−Feからなる層(GdFe層11)を備えることから、以下の方法で製造されることが好ましい。
まず、図2(a)に示すように、下部電極6および下部電極6,6間を埋める絶縁層8を形成する。基板9の表面に、SiO2等の絶縁膜を下部電極6の厚さに合わせて成膜する。この絶縁膜の上に、下部電極6を形成する領域を空けたレジストパターンを形成し、絶縁膜をエッチングして基板9を露出させる。この上から金属電極材料を成膜して、絶縁膜(絶縁層8)のエッチング跡に埋め込んで下部電極6を形成し、レジストパターンを除去する(リフトオフ)。
次に、スピン注入磁化反転素子5を形成する。下部電極6および絶縁層8の上に、Si窒化物等の非酸化物の絶縁膜(図中、加工後における絶縁層8と同じ符号(8)で表す。第2実施形態以降も同様。)を、スピン注入磁化反転素子5(下地金属膜41〜保護膜43)の厚さに合わせて成膜する。この絶縁膜の上に、スピン注入磁化反転素子5を形成する領域を空けたレジストパターンPRを形成し(図2(b))、絶縁膜をエッチングして下部電極6を露出させる(図2(c))。このとき、反応性イオンエッチング(RIE)のような加工ダメージの比較的少ない方法を適用し、Ru等の金属材料(下部電極6の表面における材料)に対して絶縁膜(Si窒化物)のエッチング選択性の高い条件でエッチングすることが好ましい。このような方法により、図2(c)に示すようにエッチングで形成される絶縁層8の側壁の立ち上がりに丸みが残らないようにオーバーエッチングを施しても、エッチング面(下部電極6の表面)が粗くならず、下部電極6上に形成されるスピン注入磁化反転素子5の各層の特性が劣化しない。この上から、下地金属膜41、磁性層30、CoFe膜33、障壁層2、CoFe膜13、Gd膜12、GdFe層11、保護膜43の各材料を連続して成膜して、絶縁層8に形成された孔に埋め込んでスピン注入磁化反転素子5を形成し、レジストパターンPRをその上の材料ごと除去する(リフトオフ、図2(d))。
次に、上部電極7を形成する。スピン注入磁化反転素子5(保護膜43)および絶縁層8の上に、上部電極7を形成する領域を空けたレジストパターンを形成し、この上から金属膜、透明電極材料を連続して成膜して、レジストパターンを除去し(リフトオフ)、下部電極6と直交するストライプ状の上部電極7とする。そして、上部電極7,7間にSiO2等の絶縁膜を堆積して絶縁層8とし、光変調素子10が得られる。
このように、スピン注入磁化反転素子5を構成する材料に対してエッチングによる加工を行わずに成形することで、特にGdFe層11へのダメージが抑えられ、また、図2(d)に示すように、GdFe層11等が成膜と同時に側面(端面)を絶縁層8で封止されるので、特性の劣化を防止することができる。さらに、スピン注入磁化反転素子5の後に形成される上部電極7についても、透明電極材料等のエッチングではなく、リフトオフ法で形成することで、GdFe層11等のスピン注入磁化反転素子5の各層へのダメージを避けることができる。
なお、下部電極6を、基板9上に絶縁膜(絶縁層8)を成膜する前に形成することもできる。具体的には、まず、基板9の表面に、下部電極6を形成する領域を空けたレジストパターンを形成し、この上から金属電極材料を成膜して、レジストパターンを除去し(リフトオフ)、下部電極6が形成される。この上から、Si窒化物等の絶縁膜(絶縁層8)を堆積させて、下部電極6,6間を埋め、さらにスピン注入磁化反転素子5の厚さ以上に形成する。そして、この絶縁膜の表面を、化学的機械研磨(CMP)等で研削、研磨して、下部電極6上の絶縁膜の厚さをスピン注入磁化反転素子5の厚さに調整する。その後は、絶縁膜の上に、レジストパターンPRを形成し(図2(b))、前記と同様に、スピン注入磁化反転素子5、上部電極7を形成する。
(空間光変調器の初期設定)
空間光変調器におけるすべての画素の光変調素子10のスピン注入磁化反転素子5は、磁化固定層3の磁化方向が同じ向きに固定されている必要がある。磁化固定層3は電極6,7を介した電流供給では磁化反転しないので、外部から磁化固定層3の保磁力よりも大きな磁界を印加して、磁化固定層3の磁化方向を、例えば上向きに(図3参照)揃える初期設定を行う。この初期設定は、完成した、すなわち製造後の光変調素子10(空間光変調器)に限られず、製造工程途中において磁化固定層3(磁性層30/CoFe膜33)用の磁性材料を成膜した後以降であれば、どの段階であっても実施することができる。
(磁化反転動作)
スピン注入磁化反転素子5の磁化反転動作を、図3(a)、(b)を参照して、光変調素子10にて説明する。なお、図3において、下地金属膜41および保護膜43は図示を省略する。スピン注入磁化反転素子5は、磁化自由層1が逆向きのスピンを持つ電子を注入されることにより、その磁化方向が反転(スピン注入磁化反転、以下、適宜磁化反転という)する。具体的には、図3(a)に示すように、上部電極7を「+」、下部電極6を「−」にして、スピン注入磁化反転素子5に、磁化自由層1側から磁化固定層3へ電流Iwを供給して、磁化固定層3側から電子を注入する。すると、磁化方向を上向きに固定された磁化固定層3により当該磁化固定層3の磁化方向と向きの異なる下向きのスピンを持つ電子dDが弁別されて、磁化自由層1は上向きのスピンを持つ電子dUが偏って注入されて、磁化方向が上向きに反転する。反対に、図3(b)に示すように、上部電極7を「−」、下部電極6を「+」にして、スピン注入磁化反転素子5に、磁化固定層3側から磁化自由層1へ電流Iwを供給して、磁化自由層1側から電子を注入する。すると、下向きのスピンを持つ電子dDが磁化固定層3により弁別されて磁化自由層1に留まるため、磁化自由層1の磁化方向は下向きに反転する。
このように、スピン注入磁化反転素子5は、上下面に接続した一対の電極7,6で膜面垂直方向に電流を供給されることで、磁化自由層1の磁化方向が磁化固定層3と同じ方向(平行)または180°異なる方向(反平行)になる。また、スピン注入磁化反転素子5において、磁化自由層1の磁化方向が平行、反平行のいずれかを示していれば、その磁化方向を反転させる大きさの電流(Iw)が供給されるまでは、当該磁化自由層1の保磁力により磁化方向が保持される。そのため、スピン注入磁化反転素子5に供給する電流としては、パルス電流のように、磁化方向を反転させる電流値に一時的に到達する電流(直流パルス電流)を用いることができる。
(光変調動作)
本実施形態に係るスピン注入磁化反転素子を備える光変調素子の動作を、図3(c)、(d)を参照して説明する。上方から光変調素子10に入射した光は、上部電極7を透過してスピン注入磁化反転素子5に到達し、スピン注入磁化反転素子5や下部電極6で反射して、再び上部電極7を透過して上方へ出射する。その際、磁性体である磁化自由層1の磁気光学効果により、光はその偏光面が回転(旋光)して出射する。さらに、磁性体の磁化方向が180°異なると、当該磁性体の磁気光学効果による旋光の向きは反転する。したがって、図3(c)、(d)にそれぞれ示す、磁化自由層1の磁化方向が互いに180°異なるスピン注入磁化反転素子5における旋光角は−θk,+θkで、互いに逆方向に偏光面が回転する。スピン注入磁化反転素子5の磁化反転動作は、前記の通りである。したがって、光変調素子10は、その出射光の偏光の向きを、電極6,7から電流Iwの向き(正負)を入れ替えて供給することで変化させる。なお、旋光角−θk,+θkは、磁化自由層1での1回の反射による旋光(カー回転)に限られず、例えばスピン注入磁化反転素子5における多重反射により累積された角度も含める。
光変調素子10は、画素として2次元配列して、公知の反射型の空間光変調器(例えば、特許文献2参照)と同様に動作させることができる。このような空間光変調器は、所望の画素(光変調素子10)について、そのスピン注入磁化反転素子5を磁化反転動作させるために、電流供給源(電流源)と、それぞれ並設された下部電極6および上部電極7から選択的に、特定のスピン注入磁化反転素子5に接続する電極6,7を前記電流源に接続するスイッチを備える(図示省略)。空間光変調器(光変調素子10)への入射光は、例えばレーザー光源から偏光子を透過させた特定の1つの偏光成分の光であり、出射光は、別の偏光子により前記入射光に対して−θk,+θkの一方に旋光した光を遮光して、他方に旋光した光が透過して取り出される(図示省略)。
図3(c)、(d)においては、入射光と出射光の経路を識別し易くするために、入射光の入射角を傾斜させて示しているが、磁化自由層1の極カー効果でカー回転角を大きくするために、膜面により垂直に入射、すなわち入射角を0°に近付けることが好ましく、具体的には入射角を30°以内にすることが好ましい。最も好ましくは、膜面に垂直に入射、すなわち入射角を0°とすることであり、この場合は入射光と出射光の経路が一致するため、光変調素子10の上(入射光用の偏光子との間)にハーフミラーが配置され、出射光のみを側方へ反射させて、反射させた先に出射光用の偏光子が配置される。
第1実施形態に係るスピン注入磁化反転素子5を備える光変調素子10は、基板9をガラス等の透明基板に、また、下部電極6を上部電極7と同様に透明電極材料で形成して、透過型の空間光変調器の光変調素子に適用することもできる(図示せず)。これら光を透過する基板および下部電極については、後記第1実施形態の変形例(図4参照)にて説明する。
以上のように、本発明の第1実施形態に係るスピン注入磁化反転素子は、磁化自由層に垂直磁気異方性を有し、かつ磁気光学効果の高いGd−Fe合金が適用されているので、光変調度が大きく、コントラストのよい空間光変調器を構成することができ、さらに磁化自由層の保磁力が大きく、安定した動作とすることができる。
〔第1実施形態の変形例〕
第1実施形態においては、MgO膜からなる障壁層の上に設けたGd−Fe合金を磁化自由層に適用したが、Gd−Fe合金の組成により、さらに保磁力を大きくして磁化固定層に適用することもできる。以下、第1実施形態の変形例に係るスピン注入磁化反転素子、およびこれを備えた光変調素子について説明する。第1実施形態(図1〜3参照)と同一の要素については同じ符号を付し、説明を省略する。
図4に示すように、本発明の第1実施形態の変形例に係るスピン注入磁化反転素子5Aは、磁化自由層1A、障壁層(中間層)2、磁化固定層3Aの順に積層された構成であり、一対の電極である上部電極7Aと下部電極6A(以下、適宜まとめて、電極6A,7A)に上下で接続されて、光変調素子10Aを構成する。光変調素子10Aは、第1実施形態に係るスピン注入磁化反転素子5を備える光変調素子10(図1参照)の、積層順を逆にした構造であり、反射型の空間光変調器の画素として透明な基板9A上に2次元配列されて、下方から入射した光を反射させて下方へ出射する。
本変形例に係るスピン注入磁化反転素子5Aは、磁化自由層1A、磁化固定層3Aがそれぞれ、GdFe層(Gd−Feからなる層)11,31を主たる要素として備える。磁化自由層1Aおよび磁化固定層3Aはさらに、障壁層2との界面にCo−FeまたはCo−Fe−Bからなる磁性金属膜13,33A(まとめてCoFe膜13,33Aと称する)を備えると共に、GdFe層11とCoFe膜13の間、GdFe層31とCoFe膜33Aの間に、Gd膜12,32を備える。さらにスピン注入磁化反転素子5Aは、最上層に保護膜43Aを備え、また、必要に応じて最下層に下地金属膜41Aを備える。すなわち、スピン注入磁化反転素子5Aは、下から、下地金属膜41A、GdFe層11、Gd膜12、CoFe膜13、障壁層2、CoFe膜33A、Gd膜32、GdFe層31、保護膜43A、を順に積層してなる。以下、スピン注入磁化反転素子5Aを構成する要素について詳しく説明する。
(磁化自由層)
磁化自由層1Aは、スピン注入磁化反転素子5Aにおいて障壁層2の下に設けられ、第1実施形態に係るスピン注入磁化反転素子5の磁化自由層1と同様に、障壁層2の側(障壁層2との界面)にCoFe膜13を備える。すなわち磁化自由層1Aは、下から、GdFe層11/Gd膜12/CoFe膜13の3層構造を有する。GdFe層11、Gd膜12、CoFe膜13の各層の構成は、第1実施形態にて説明した通りである。ただし、本変形例に係るスピン注入磁化反転素子5Aにおいては、磁化自由層1A(GdFe層11)は、障壁層2すなわちMgO膜の上に設けられず、下地金属膜41A、または後記するように下部電極6Aの金属膜64の上に設けられているため、保磁力が増大せず、組成や厚さで調整される。
(障壁層)
障壁層2は、第1実施形態と同様の構成であり、特に本変形例においては、この上に成膜される磁化固定層3A(GdFe層31)の保磁力を十分に大きくするために、厚さを0.1〜2nmの範囲において、反転電流が過大にならない程度により厚くすることが好ましい。また、障壁層2は、下地となる磁化自由層1Aに、非晶質構造であるRE−TM合金の一種のGdFe層11が適用され、さらに当該障壁層2との界面にCo−FeまたはCo−Fe−B(CoFe膜13)が設けられることにより、(001)面配向のMgOになり易い。MgOのこのような結晶構造により、障壁層2が比較的厚く形成されていても、反転電流の増大が抑えられる。
(磁化固定層)
磁化固定層3Aは、本変形例に係るスピン注入磁化反転素子5Aにおいて障壁層2の上に設けられ、前記した通り、障壁層2の側、すなわち下から、CoFe膜33A/Gd膜32/GdFe層31の3層構造を有する。スピン注入磁化反転素子5Aが安定した磁化反転動作をするために、第1実施形態と同様に、磁化固定層3Aは、保磁力が磁化自由層1A(GdFe層11)に対して十分に大きく、具体的には0.5kOe以上の差となることが好ましい。
GdFe層31は、磁化自由層1AにおけるGdFe層11と同様に、磁化固定層3Aの主たる要素である。第1実施形態にて説明した通り、Gd−Fe合金は、他のRE−TM合金と比較して保磁力が小さいが、第1実施形態に係るスピン注入磁化反転素子5の磁化自由層1(GdFe層11)と同様に、MgO膜からなる障壁層2の上に成膜されることにより保磁力が大きくなる。また、Gd−Fe合金は、前記のGd:19〜27at%(Fe:73〜81at%)の範囲の組成において、Feの組成を少なくする(Gdの組成を多くする)と保磁力が大きくなり、補償組成近傍で極大となる。したがって、GdFe層31は、磁化固定層として十分な大きさの保磁力にするために、GdFe層11よりも前記のFeの範囲の下限73at%に近い組成にすることが好ましい。
磁性膜は厚膜化するにしたがい保磁力が大きくなる傾向があり、一般的なスピン注入磁化反転素子の磁化固定層は、厚さが3〜50nmの範囲で設定される。しかし、本変形例においては、GdFe層31は、厚くなると障壁層2(MgO膜)から離れた上層部分でMgO膜による効果が低下して保磁力が小さくなり、さらに垂直磁気異方性を維持することが困難になるため、厚さを20nm以下とすることが好ましい。
磁化自由層1Aと同様にGdFe層31を主たる要素とする磁化固定層3Aは、障壁層2との界面すなわち最下層に、Co−FeまたはCo−Fe−Bからなる磁性金属膜33A(まとめてCoFe膜33Aと称する)を備えることが好ましく、その場合にはGdFe層31との間にGd膜32をさらに備えることが好ましい。Gd膜32は、磁化自由層1のGd膜12と同様の構成とすることができる。CoFe膜33Aは、磁化自由層1のCoFe膜13と同様に、厚さ0.1nm以上とすることが好ましく、一方、GdFe層31への障壁層2(絶縁膜)の影響を妨げないために、連続した膜を形成しないように厚さを1nm未満とすることが好ましく、1原子膜相当の0.3nm以下とすることがより好ましい。
(下地金属膜、保護膜)
下地金属膜41A、保護膜43Aは、それぞれ第1実施形態に係るスピン注入磁化反転素子5の下地金属膜41、保護膜43と同様の構成とすることができ、すなわち非磁性金属材料で形成され、厚さを1〜10nmとすることが好ましい。ただし、本変形例に係るスピン注入磁化反転素子5Aは下から光を入射されるので、透過光量を減衰させないために、下地金属膜41Aが厚くないことが好ましい。
以下に、光変調素子10Aを構成するスピン注入磁化反転素子5A以外の要素について説明する。
(電極)
光変調素子10Aは、第1実施形態の光変調素子10(図1参照)とは反対に下方から光を入出射させるので、下部電極6A、上部電極7Aの構成が、第1実施形態の下部電極6、上部電極7と逆になる。したがって、下部電極6Aは、光が透過するように、第1実施形態における上部電極7と同様に、透明電極材料で構成され、さらに、スピン注入磁化反転素子5Aとの間に金属膜を設けられることが好ましく、すなわち透明電極材料からなる層(透明電極層)63と、この上に積層した金属膜64とからなることが好ましい。透明電極層63、金属膜64は、それぞれ第1実施形態における上部電極7の透明電極層73、金属膜74と同様の構成にすることができる。さらに下部電極6Aは、GdFe層11,31を含むスピン注入磁化反転素子5Aの前に形成されるので、透明電極層63に、ポストアニール等により抵抗を低減することができるITO等の結晶性の透明電極材料を適用してもよい。また、後記製造方法にて説明するように、金属膜64が、下部電極6A上の絶縁膜(スピン注入磁化反転素子5A,5A間の絶縁層8)をエッチングするときのエッチングストッパ膜になる。一方、上部電極7Aは、第1実施形態における下部電極6と同様の金属電極材料を適用することができる。
(基板、絶縁層)
本変形例に係るスピン注入磁化反転素子5Aを備える光変調素子10Aは、基板9Aの側から光を入出射するので、基板9Aは光を透過させる材料からなる。このような基板9Aとして、公知の透明基板材料が適用でき、具体的には、SiO2(酸化ケイ素、ガラス)、MgO(酸化マグネシウム)、サファイア、GGG(ガドリニウムガリウムガーネット)、SiC(シリコンカーバイド)、Ge(ゲルマニウム)単結晶基板等を適用することができる。絶縁層8は、第1実施形態と同様の構成とすることができる。
(光変調素子の製造方法)
第1実施形態の変形例に係るスピン注入磁化反転素子5Aを備える光変調素子10Aは、積層順を入れ替えて、第1実施形態の光変調素子10と同様に製造することができる(図2参照)。本変形例においては、スピン注入磁化反転素子5Aの前に形成される下部電極6Aの透明電極層63については、例えばITO等の結晶性の透明電極材料を適用して、加熱成膜、あるいは成膜または成形の後のポストアニールにより抵抗を低減することができる。また、絶縁層8をエッチングして、スピン注入磁化反転素子5Aの各層を埋め込むための孔を形成する工程(図2(c)参照)では、下部電極6Aの表面の金属膜64が絶縁層8に対するエッチングストッパ膜になる。
(磁化反転動作、光変調動作)
本変形例に係るスピン注入磁化反転素子5Aは、磁化反転動作が、図3(a)、(b)に示す第1実施形態に係るスピン注入磁化反転素子5とは、上下電極7A,6A(7,6)から供給される電流Iwの向きと磁化自由層1A(1)の磁化方向との関係が逆になり、それ以外は同様である。また、スピン注入磁化反転素子5Aは、図3(c)、(d)に示す光変調素子10のスピン注入磁化反転素子5と同様に、旋光角−θk,+θkで光変調動作をする。ただし、スピン注入磁化反転素子5Aを備える光変調素子10Aは、磁化自由層1Aの側から光を入射させるので、下部電極6Aから光が入射する。
第1実施形態の変形例に係るスピン注入磁化反転素子5Aを備える光変調素子10Aは、上部電極7Aを上部電極7(図1参照)に置き換えて、透過型の空間光変調器の光変調素子とすることもできる(図示せず)。
第1実施形態の変形例に係るスピン注入磁化反転素子5Aは、磁化固定層3AにもGd−Fe合金(GdFe層31)が適用され、磁化自由層1A(GdFe層11)と材料を共通化されているが、これに限られず、磁化自由層について、垂直磁気異方性を有する公知の磁性材料を適用することができる。具体的には、Fe,Co,Ni等の遷移金属とPt,Pd等の貴金属とを含む、例えば[Co/Pt]×n、[Co/Pd]×nの多層膜、あるいは前記遷移金属とNd,Gd,Tb,Dy,Ho等の希土類金属との合金(RE−TM合金)が挙げられ、スピン注入磁化反転素子5Aへの電流供給により磁化反転可能な程度に保磁力の小さい材料が適用される。
以上のように、本発明の第1実施形態の変形例に係るスピン注入磁化反転素子は、磁化自由層と磁化固定層の両方にGd−Fe合金が適用されているので生産性がよく、また、磁化固定層の保磁力が十分に大きく、安定した動作とすることができる。さらに本変形例に係るスピン注入磁化反転素子は、第1実施形態と同様に、磁化自由層に垂直磁気異方性を有し、かつ磁気光学効果の高いGd−Fe合金が適用されているので、光変調度が大きく、コントラストのよい空間光変調器を構成することができる。
〔第2実施形態〕
本発明の第1実施形態およびその変形例に係るスピン注入磁化反転素子は、Gd−Fe合金がMgO膜の上に設けられるように、MgO膜を障壁層とするTMR素子としたが、CPP−GMR素子についても同様の効果を得ることができる。以下、第2実施形態に係るスピン注入磁化反転素子、およびこれを備えた光変調素子について説明する。第1実施形態およびその変形例(図1〜4参照)と同一の要素については同じ符号を付し、説明を省略する。
本発明の第2実施形態に係るスピン注入磁化反転素子5Bは、図5(a)に示すように、下から磁化自由層1B、中間層2A、磁化固定層3Bの順に積層された構成であり、非磁性金属からなる中間層2Aを備えるCPP−GMR素子である。スピン注入磁化反転素子5Bは、さらに、必要に応じて、最上層にすなわち磁化固定層3Bの上に保護膜43Aを備える。本実施形態に係るスピン注入磁化反転素子5Bは、MgO膜42の上に直接に設けられ、さらに一対の電極である上部電極7Aと下部電極6Bに上下で接続されて、光変調素子10Bを構成する。このように、スピン注入磁化反転素子5Bの下面には絶縁体であるMgO膜42が接触しているために、このMgO膜42が下部電極6Bに形成された貫通孔に設けられ、スピン注入磁化反転素子5Bは、下面(磁化自由層1B)が周縁のみで下部電極6Bに接続する。
光変調素子10Bは、スピン注入磁化反転素子5Bが、第1実施形態の変形例に係るスピン注入磁化反転素子5A(図4参照)と同様に磁化自由層1Bを下側に備えるため、下方から光が入出射され、反射型の空間光変調器の画素として透明な基板9A上に2次元配列される。また、下部電極6Bは、前記貫通孔により、スピン注入磁化反転素子5Bに入射する光を遮らないので、上部電極7Aと同様に、良導体である金属電極材料で形成することができる。
光変調素子10Bにおいては、MgO膜42の平面視形状に合わせて下部電極6Bに形成された貫通孔が空間光変調器の画素の開口部になる。したがって、本実施形態において、MgO膜42は、平面視の一辺の長さが少なくとも入射光の回折限界(波長の1/2程度)以上に形成される。ところが、このようなMgO膜42の上に設けられたスピン注入磁化反転素子5Bは、磁化自由層1BがMgO膜42の周囲に設けられた下部電極6Bと電気的に接続するために、MgO膜42の外側へ拡張した平面視形状にすると、大き過ぎて磁化反転し難くなる場合がある。そこで、本実施形態においては、図5(b)に示すように、スピン注入磁化反転素子5Bが2分割されて、すなわち2個のスピン注入磁化反転素子5B,5Bが光変調素子10Bに備えられる。言い換えると、1つの光変調素子10Bにおいて、2個のスピン注入磁化反転素子5B,5Bが、MgO膜42および電極6B,7Aを共有する。なお、図5(b)において、スピン注入磁化反転素子5B,5Bは網掛けを付した領域に形成され、また、基板9Aおよび絶縁層8B(絶縁層81,82、MgO膜42)は図示を省略する。このような構成とすることにより、光変調素子10Bは、下部電極6Bが十分な面積の開口部を有し、スピン注入磁化反転素子5Bが下部電極6Bに十分な面積で接続しつつ、平面視サイズを抑えられて好適に磁化反転する。なお、光変調素子10Bにおけるスピン注入磁化反転素子5B,5B間の距離は、入射光の回折限界未満とすることが好ましい。以下、スピン注入磁化反転素子5Bを構成する要素について詳しく説明する。
(磁化自由層)
磁化自由層1Bは、第1実施形態に係るスピン注入磁化反転素子5(図1参照)の磁化自由層1のGdFe層11からなる。GdFe層11の構成は、第1実施形態にて説明した通りであり、同様に厚さを1〜20nmの範囲とすることが好ましく、10nm以下がより好ましい。本実施形態に係るスピン注入磁化反転素子5Bにおいては、磁化自由層1B(GdFe層11)は、MgO膜42の上に直接に成膜されることにより保磁力が大きくなる。
また、磁化自由層1Bは、MgO膜42の周囲に設けられた下部電極6Bに電気的に接続されるように、平面視でMgO膜42の外側へ拡張して形成されている。本実施形態のおいては、図5(b)に示すように、1つのMgO膜42の上に、2つの磁化自由層1B,1B(スピン注入磁化反転素子5B,5B)が離間して設けられているので、磁化自由層1B,1B同士が対向する側を除く3辺近傍(周縁)で下部電極6Bに直接に接続している。したがって、磁化自由層1B(GdFe層11)は、下部電極6Bに接続する周縁の領域においては保磁力が小さいが、多くを占めるそれ以外の領域における保磁力が大きいことで、スピン注入磁化反転素子5Bにおいて、磁化方向を安定して保持することができる。なお、磁化自由層1Bは、下部電極6Bとの接続面積が確保されていればよく、例えば対向する2辺のみがMgO膜42の外側に形成される形状でもよい。
(中間層)
中間層2Aは、Cu,Ag,Al,Auのような非磁性金属やZnO等の半導体で形成され、その厚さを1〜10nmの範囲とすることが好ましい。中間層2Aは、光反射率の高いAgを適用して、厚さを6nm以上とすることが特に好ましい。このような中間層2Aを備えるスピン注入磁化反転素子5Bとすることで、光変調素子10Bは、磁化自由層1Bの側(下)から入射した光を効率よく反射させて、出射する光の量を多くすることができる。
(磁化固定層)
磁化固定層3Bは、第1実施形態に係るスピン注入磁化反転素子5(図1参照)の磁化固定層3の磁性層30からなる。
(保護膜)
保護膜43Aは、第1実施形態の変形例(図4参照)と同様の構成であり、本実施形態においては、磁化固定層3B(磁性層30)の材料に応じて設けられる。なお、本実施形態に係るスピン注入磁化反転素子5Bは、磁化自由層1B(GdFe層11)の保磁力を大きくするために、後記のMgO膜42の上に直接に設けられる。したがって、スピン注入磁化反転素子5Bは、最下層に、下地膜として一般的に適用されるRu等の金属膜(図4に示す下地金属膜41A)を備えない。
以下に、光変調素子10Bを構成するスピン注入磁化反転素子5B以外の要素について説明する。
(MgO膜)
MgO膜42は、第1実施形態およびその変形例に係るスピン注入磁化反転素子5,5A(図1、図4参照)における障壁層2(MgO膜)と同様に、厚くなるにしたがいGdFe層11の保磁力を大きくする。この効果を十分なものにするために、MgO膜42は厚さを1nm以上とすることが好ましく、1.5nm超とすることがより好ましく、2nm以上がさらに好ましい。一方、MgO膜42は5nmを超えて厚くなると、効果が低下するため、厚さを5nm以下とすることが好ましい。特に、本実施形態において、MgO膜42は、第1実施形態の障壁層2と異なり、厚くしてもスピン注入磁化反転素子5Bの磁化反転動作への影響がないので、GdFe層11の保磁力を所望の大きさにすることが容易である。また、密着性を得るために、MgO膜42の下に、Ru,Ta等の下地金属膜をさらに設けてもよい(図示せず)。
MgO膜42は、磁化自由層1B(GdFe層11)の保磁力を大きくするために、その下面全体に設けられていることが好ましい。しかし、光変調素子10Bにおいては、前記した通り、スピン注入磁化反転素子5Bが下面の一部で下部電極6Bに接続されるように、MgO膜42は、平面視でスピン注入磁化反転素子5Bの一部が当該MgO膜42からはみ出すように形成される。また、光変調素子10Bにおいては、MgO膜42の平面視形状が、空間光変調器の画素の開口部になる。
(電極)
上部電極7Aは、第1実施形態の変形例(図4参照)と同様の構成であり、金属電極材料を適用することができる。一方、下部電極6Bは、光の入出射側に設けられるが、前記した通り、スピン注入磁化反転素子5Bの下面が周縁でのみ接続し、光変調素子10Bにおける中央部には貫通孔が形成されて光を遮らないので、上部電極7Aと同様に金属電極材料を適用することができる。すなわち下部電極6Bは、空間光変調器において光変調素子10B毎に孔が開いた帯状に形成される。また、下部電極6Bは、光変調素子10B毎に形成された貫通孔により断面の狭い配線になるため、また、MgO膜42によりスピン注入磁化反転素子5Bとの接続面積が小さいため、透明電極材料よりも低抵抗な金属電極材料を適用することが好ましいといえる。下部電極6Bの孔は、光変調素子として必要な開口を有し、かつスピン注入磁化反転素子5B,5B(磁化自由層1B,1B)の下面と電気的な接続に必要な面積で接続(平面視で重複)する形状に設計される。
(絶縁層)
絶縁層8Bは、図5(a)に示すように、下部電極6B,6B間および下部電極6Bの孔においては、絶縁層81とMgO膜42の2層構造であり、スピン注入磁化反転素子5B,5B間および上部電極7A,7A間においては、絶縁層82が設けられる。絶縁層81は、MgO膜42を過剰に厚膜化することが好ましくないため、MgO膜42と合わせた2層で下部電極6Bの厚さになるように形成され、第1実施形態における絶縁層8と同様に、SiO2等の公知の絶縁材料を適用することができる。なお、MgO膜42は、下部電極6Bの孔に形成されていればよく、下部電極6B,6B間には絶縁層81のみが形成されていてもよい。絶縁層82も、第1実施形態における絶縁層8と同様に公知の絶縁材料を適用し、特にスピン注入磁化反転素子5B,5B間に設けられる部分にはSi窒化物等を適用することが好ましい。
(基板)
基板9Aは、第1実施形態の変形例(図4参照)と同様の構成である。
(光変調素子の製造方法)
第2実施形態に係るスピン注入磁化反転素子5Bを備える光変調素子10Bは、第1実施形態およびその変形例の光変調素子10,10Aと同様に製造することができる(図2参照)。本実施形態においては、下部電極6B、および絶縁層81/MgO膜42を形成する工程について、表面の下部電極6BとMgO膜42に段差がなく、かつMgO膜42が所望の厚さに制御されるように、例えば以下のように行う。
まず、基板9Aの表面に、SiO2等の絶縁膜(絶縁層81)、MgO膜を合計で下部電極6Bと同じ厚さになるように成膜する。このMgO膜の上に、下部電極6Bを形成する領域を空けたレジストパターンを形成し、MgO膜、SiO2膜をエッチングして基板9Aを露出させる。この上から金属電極材料を成膜して、SiO2膜/MgO膜(絶縁層81/MgO膜42)のエッチング跡に埋め込んで下部電極6Bを形成し、レジストパターンを除去する(リフトオフ)。
次に、第1実施形態(図2(b)〜(d)参照)と同様に、スピン注入磁化反転素子5B、およびスピン注入磁化反転素子5B,5B間の絶縁層82を形成する。絶縁層82(Si窒化物膜)をエッチングしてスピン注入磁化反転素子5Bを埋め込むための孔を形成するときには、MgO膜42および下部電極6Bがエッチングストッパ膜になるように、エッチング条件を設定する。また、このエッチング跡にスピン注入磁化反転素子5Bを構成する各層を成膜するとき、本実施形態では特に、第1実施形態やその変形例のように密着性を得るための下地金属膜41(41A)を設けることができないので、MgO膜42および下部電極6Bへの密着性を高くするために、スパッタ装置にて、GdFe層11(磁化自由層1B)を成膜する前に、Ar,Kr等のキャリアガスのイオンやプラズマによるクリーニングを、下部電極6B等の表面に行うことが好ましい。この上に、上部電極7Aを第1実施形態と同様に形成して、光変調素子10Bが得られる。
下部電極6B、絶縁層81およびMgO膜42の形成においては、基板9A上にSiO2等の絶縁膜のみを下部電極6Bと同じ厚さに成膜して、前記と同様に下部電極6Bを形成することもできる。この場合は、その次に、下部電極6Bの孔の領域を空けたレジストパターンを形成し、下部電極6Bの孔のSiO2膜を所望の深さにエッチングして、その跡にMgO膜42を成膜して埋め込み、その後にレジストパターンを除去する。あるいは、下部電極6Bの孔のSiO2膜をすべて除去して、透明電極材料とMgO膜42を積層してもよい。すなわち、図5(a)に示す下部電極6Bの孔の絶縁層81に代えて、透明電極層63(第1実施形態の変形例参照)が設けられる(図示せず)。これらの場合は、下部電極6Bの孔の領域を空けたレジストパターンを形成する前に、CMP等で表面を平坦化、平滑化してもよく、したがって、金属電極材料(下部電極6B)を成膜する前にレジストパターンを除去することもできる。
(磁化反転動作、光変調動作)
スピン注入磁化反転素子5Bは、第1実施形態の変形例に係るスピン注入磁化反転素子5A(図4参照)と、積層順が同じ(磁化自由層が下側)であるので、磁化反転動作および光変調動作が同じになる。すなわち、磁化反転動作については、図3(a)、(b)に示す第1実施形態に係るスピン注入磁化反転素子5とは、上下電極7A,6B(7,6)から供給される電流Iwの向きと磁化自由層1B(1)の磁化方向との関係が逆になる。
第2実施形態に係るスピン注入磁化反転素子5Bを備える光変調素子10Bは、上部電極7Aを上部電極7(図1参照)に置き換えて、透過型の空間光変調器の光変調素子とすることもできる(図示せず)。この場合には、中間層2Aは、光透過性の比較的高い材料を適用されることが好ましい。
以上のように、本発明の第2実施形態に係るスピン注入磁化反転素子は、第1実施形態と同様に、磁化自由層に垂直磁気異方性を有し、かつ磁気光学効果の高いGd−Fe合金が適用されているので、光変調度が大きく、コントラストのよい空間光変調器を構成することができ、さらに磁化自由層の保磁力が大きく、安定した動作とすることができる。
〔第2実施形態の変形例〕
第2実施形態においては、下部電極に孔を空けてMgO膜を埋め込むことにより、スピン注入磁化反転素子において下側に設けられた磁化自由層のGd−Fe合金について保磁力を大きくすることができ、中間層(障壁層)がMgO膜に限定されないので、CPP−GMR素子とすることができる。第2実施形態に係るスピン注入磁化反転素子の積層順を入れ替えることにより、第1実施形態の変形例と同様に、Gd−Fe合金を磁化固定層に適用することもできる。以下、第2実施形態の変形例に係るスピン注入磁化反転素子、およびこれを備えた光変調素子について説明する。第1、第2実施形態(図1〜5参照)と同一の要素については同じ符号を付し、説明を省略する。
本発明の第2実施形態の変形例に係るスピン注入磁化反転素子5Cは、図6に示すように、下から磁化固定層3C、中間層2A、磁化自由層1Cの順に積層された構成であり、第2実施形態に係るスピン注入磁化反転素子5B(図5(a)参照)と同様に、非磁性金属からなる中間層2Aを備えるCPP−GMR素子である。スピン注入磁化反転素子5Cは、さらに、最上層にすなわち磁化自由層1Cの上に保護膜43を備える。本変形例に係るスピン注入磁化反転素子5Cは、MgO膜42の上に直接に設けられ、さらに一対の電極である下部電極6Cと上部電極7に接続されて、光変調素子10Cを構成する。このように、光変調素子10Cにおいては、スピン注入磁化反転素子5Cの下面には絶縁体であるMgO膜42が接触しているために、下部電極6Cには磁化固定層3C(GdFe層31)が側面で接続する。
光変調素子10Cは、スピン注入磁化反転素子5Cが、第1実施形態に係るスピン注入磁化反転素子5(図1参照)と同様に磁化自由層1Cを上側に備えるため、上方から光が入出射され、反射型の空間光変調器の画素として基板9上に2次元配列される。また、下部電極6Cは、前記したように磁化固定層3Cの側面に接続するために、スピン注入磁化反転素子5Cの下部(磁化固定層3C)をその下のMgO膜42と共に収容する穴が形成されている。以下、スピン注入磁化反転素子5Cを構成する要素について詳しく説明する。
(磁化自由層)
磁化自由層1Cは、第1実施形態の変形例に係るスピン注入磁化反転素子5A(図4参照)の磁化自由層1AのGdFe層11からなる。GdFe層11の構成は、第1実施形態とその変形例にて説明した通りであり、特に本変形例に係るスピン注入磁化反転素子5Cにおいては、第1実施形態の変形例と同様に、磁化自由層1C(GdFe層11)は、MgO膜の上に設けられていないため、保磁力が組成や厚さで調整される。
(中間層)
中間層2Aは、第2実施形態と同様の構成であり、特に、光反射率の高いAgを適用することが好ましく、このような構成により、光変調素子10Cは、磁化自由層1Cの側(上)から入射した光を効率よく反射させて、出射する光の量を多くすることができる。
(磁化固定層)
磁化固定層3Cは、第1実施形態の変形例に係るスピン注入磁化反転素子5A(図4参照)の磁化固定層3AのGdFe層31からなる。GdFe層31の構成は、第1実施形態の変形例にて説明した通りであり、同様に厚さを3〜20nmの範囲とすることが好ましい。本変形例に係るスピン注入磁化反転素子5Cにおいては、磁化固定層3C(GdFe層31)は、MgO膜42の上に直接に成膜されることにより保磁力が大きくなる。また、磁化固定層3C(GdFe層31)は、下面が全面でMgO膜42に接触しているので、光変調素子10Cにおいては、側面で下部電極6Cに接続するように構成される。
(保護膜)
保護膜43は、第1実施形態(図1参照)と同様の構成である。なお、本変形例に係るスピン注入磁化反転素子5Cは、第2実施形態に係るスピン注入磁化反転素子5B(図5(a)参照)と同様に、最下層にRu等の金属膜(図1に示す下地金属膜41)を備えない。
以下に、光変調素子10Cを構成するスピン注入磁化反転素子5C以外の要素について説明する。
(MgO膜)
MgO膜42は、第2実施形態と同様の構成であり、特に本変形例においては、この上に成膜される磁化固定層3C(GdFe層31)の全体の保磁力を大きくするために、磁化固定層3C等のスピン注入磁化反転素子5Cの各層と同一の平面視形状に形成され、さらに保磁力を十分に大きくするために、厚さを1〜5nmの範囲においてより厚くすることが好ましい。
(電極)
上部電極7は、第1実施形態(図1参照)と同様の構成であり、透明電極層73およびその下地の金属膜74からなる。一方、下部電極6Cは、金属電極材料からなり、下面をMgO膜42で被覆されている磁化固定層3Cに接続するために、スピン注入磁化反転素子5Cの平面視形状に上面で開口した穴を形成されて、図6に示す断面形状が凹字型となり、この穴の内壁で磁化固定層3Cの側面に接続する。このとき、下部電極6Cは、磁化固定層3C上の中間層2Aや磁化自由層1Cと短絡しないために、上面の位置が磁化固定層3Cの上面よりも低くなるように、穴の深さが制御される。そのために、下部電極6Cは、穴の側壁を構成する、スピン注入磁化反転素子5Cの平面視形状の貫通孔を形成された第2層62と、その下の、穴の底面を構成する第1層61とからなる。第2層62は、磁化固定層3AとMgO膜42の合計の厚さよりも薄く、好ましくは3nm以上薄く形成される。一方、第1層61は、下部電極6Cを十分に低抵抗とするために必要な厚さに形成される。下部電極6C(61,62)は、第1実施形態における下部電極6と同様の金属電極材料を適用することができ、特に第2層62が、第1層61に対してエッチング選択性が高くなるように金属材料を選択して適用することが好ましい。このような構成とすることで、後記製造方法にて説明するように、下部電極6Cは、第2層62の厚さと同じ深さの穴が形成され、この穴にスピン注入磁化反転素子5Cが埋め込まれて磁化固定層3Cが内壁で接続する。このとき、下部電極6Cは、上面が、磁化固定層3Cの上面(中間層2Aとの界面)から3nm以上低い位置になり、すなわち磁化固定層3C(GdFe層31)以外の導体(中間層2A等)に対して3nm以上の距離が空くので、リーク電流やトンネル電流が流れることがない。
(絶縁層、基板)
絶縁層8、基板9は、それぞれ第1実施形態と同様の構成である。
(光変調素子の製造方法)
第2実施形態の変形例に係るスピン注入磁化反転素子5Cを備える光変調素子10Cの製造方法について、その一例を、図7を参照して説明する。本変形例に係るスピン注入磁化反転素子5Cは、第1実施形態の変形例に係るスピン注入磁化反転素子5A(図4参照)と同様に耐熱性に劣るGdFe層11,31を備え、さらに磁化固定層3Cの側面に下部電極6Cが接続されることから、以下の方法で製造されることが好ましい。
まず、下部電極6Cを形成する。基板9の表面に、SiO2等の絶縁膜を、下部電極6Cの厚さに合わせて成膜する。この絶縁膜の上に、下部電極6Cを形成する領域を空けたレジストパターンを形成し、絶縁膜をエッチングしてストライプ状の溝を有する絶縁層8を形成する。この上に、2種類の金属電極材料を連続して成膜して、絶縁層8の溝に埋め込み、ストライプ状の第1層61/第2層62の2層膜(下部電極6C)を形成し、レジストパターンをその上の金属電極材料ごと除去する(リフトオフ、図7(a))。
次に、下部電極6Cを加工して穴を形成し、さらにスピン注入磁化反転素子5Cを形成する。下部電極6Cの第2層62および絶縁層8の上に、Si窒化物等の非酸化物の絶縁膜を、スピン注入磁化反転素子5Cの上面(保護膜43)の高さ位置に合わせた厚さに成膜する。この絶縁膜の上に、スピン注入磁化反転素子5Cを形成する領域を空けたレジストパターンPRを形成し(図7(b))、絶縁膜をエッチングし、引き続いて下部電極6Cの第2層62をエッチングして、第1層61の上面(第2層62と第1層61との界面)を底面とする穴を形成する(図7(c))。この上から、MgO膜42、磁化固定層3C(GdFe層31)、中間層2A、磁化自由層1C(GdFe層11)、保護膜43の各材料を連続して成膜して、絶縁層8から下部電極6Cの第2層62までに形成された孔に埋め込んでスピン注入磁化反転素子5Cを形成し、レジストパターンPRをその上の材料ごと除去する(リフトオフ、図7(d))。この上に、第1実施形態の光変調素子10と同様に上部電極7を形成して、光変調素子10Cが得られる。
このように、光変調素子10Cの製造において、スピン注入磁化反転素子5Cを構成する各層を、その側面に接触する絶縁層8および下部電極6Cを成形した後に成膜するため、GdFe層11,31等の特性の劣化を防止することができる。
(磁化反転動作、光変調動作)
スピン注入磁化反転素子5Cは、第1実施形態に係るスピン注入磁化反転素子5(図1参照)と積層順が同じ(磁化自由層1(1C)が上側)であるので、磁化反転動作および光変調動作が同じになる(図3参照)。
第2実施形態の変形例に係るスピン注入磁化反転素子5Cを備える光変調素子10C(図6参照)は、透明な基板9A上に配列して、透過型の空間光変調器の光変調素子に適用することもできる。このとき、下部電極6Cは、第1層61を透明電極材料で形成して、光が透過するように構成したり、あるいは、第2実施形態の下部電極6B(図5参照)のように貫通孔を形成する(図示せず)。また、この場合には、中間層2Aは、光透過性の比較的高い材料を適用されることが好ましい。
第2実施形態の変形例に係るスピン注入磁化反転素子5Cは、第1実施形態の変形例に係るスピン注入磁化反転素子5A(図4参照)と同様に、磁化自由層について、Gd−Fe合金(GdFe層11)以外の垂直磁気異方性を有する公知の磁性材料を適用することができる(図示せず)。
以上のように、本発明の第2実施形態の変形例に係るスピン注入磁化反転素子は、第1実施形態の変形例と同様に、磁化自由層と磁化固定層の両方にGd−Fe合金が適用されているので生産性がよく、また、磁化固定層の保磁力が十分に大きく、安定した動作とすることができる。さらに本変形例に係るスピン注入磁化反転素子は、第1、第2実施形態と同様に、磁化自由層に垂直磁気異方性を有し、かつ磁気光学効果の高いGd−Fe合金が適用されているので、光変調度が大きく、コントラストのよい空間光変調器を構成することができる。
第2実施形態およびその変形例に係るスピン注入磁化反転素子5B,5Cにおいて、中間層2Aは、GdFe層11,31(磁化自由層1B、磁化固定層3C)の下地ではなく、GdFe層11,31の保磁力に影響しないので、公知のスピン注入磁化反転素子の中間層や障壁層を適用することができる。したがって、スピン注入磁化反転素子5B,5Cは、CPP−GMR素子に限られず、中間層2AをMgO以外の絶縁膜(障壁層)としたTMR素子としてもよい。障壁層は、Al23,HfO2のような絶縁体や、Mg/MgO/Mgのような絶縁体を含む積層膜を適用することができる。また、磁化固定層、磁化自由層は、障壁層との界面に設けられる磁性金属膜は、Co−FeやCo−Fe−Bに限られず、Co,Fe,Ni,Ni−Fe,Co−Fe−Si等の遷移金属またはこれを含む合金を適用して、スピン偏極率を高くすることもできる。
〔第3実施形態〕
本発明の第1、第2実施形態およびそれぞれの変形例に係るスピン注入磁化反転素子は、MgO膜からなる障壁層の上に成膜したGd−Fe合金、または当該スピン注入磁化反転素子の下側に設けられたMgO膜の上に成膜したGd−Fe合金について、それぞれ保磁力を大きくすることができる。したがって、スピン注入磁化反転素子の磁化自由層および磁化固定層の両方について、Gd−Fe合金を備えて、さらにそれぞれの保磁力を大きくすることができる。以下、第3実施形態に係るスピン注入磁化反転素子、およびこれを備えた磁気抵抗効果素子について説明する。第1、第2実施形態(図1〜6参照)と同一の要素については同じ符号を付し、説明を省略する。
本発明の第3実施形態に係るスピン注入磁化反転素子5Dは、図8に示すように、下から、磁化固定層3D、障壁層2、磁化自由層1の順に積層された構成であり、第1実施形態に係るスピン注入磁化反転素子5(図1参照)と同様に、TMR素子である。スピン注入磁化反転素子5Dは、さらに、最上層に保護膜43Aを備える。本実施形態に係るスピン注入磁化反転素子5Dは、MgO膜42の上に直接に設けられ、さらに一対の電極である上部電極7Aと下部電極6Dに上下で接続されて、磁気抵抗効果素子10Dを構成する。このように、スピン注入磁化反転素子5Dの下面には絶縁体であるMgO膜42が接触しているために、その上の磁化固定層3Dが、下部電極6Dに電気的に接続するように、平面視形状をMgO膜42の外側へ拡張させて大きく形成されている。したがって、スピン注入磁化反転素子5Dは、第2実施形態に係るスピン注入磁化反転素子5B(図5(a)参照)と同様に、下面(本実施形態では磁化固定層3D)が周縁のみで下部電極6Dに接続する。また、スピン注入磁化反転素子5Dは、平面視で、磁化自由層1がMgO膜42と略同一形状に形成されているため、磁化固定層3Dおよびその上の障壁層2が、磁化自由層1の外側へも拡張して形成されている。
磁気抵抗効果素子10Dは、選択トランジスタ型のMRAMのメモリセルとして、下部電極6Dを経由してトランジスタ(図示省略)に接続され、光変調素子10(図1参照)等と同様に2次元配列され、上部電極7Aが面内における一方向(図8においては左右方向)に延設されてビット線として共有される。メモリセルのトランジスタは、例えばMOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)であり、下部電極6Dはドレインに接続され、ソースおよびゲートに、互いに直交する配線であるソース線とワード線(図示省略)がそれぞれ接続される。
スピン注入磁化反転素子5Dは、磁気抵抗効果素子10Dに適用されるので、第1、第2実施形態に係るスピン注入磁化反転素子5等とは異なり、光変調のための平面視の大きさ(一辺の長さ)の下限が規定されず、磁化自由層1の磁化方向が保持される面積であればよい。具体的には、スピン注入磁化反転素子5Dは、より好適に磁化反転するために、平面視が一般的なスピン注入磁化反転素子の大きさである300nm×100nm程度相当の面積であることが好ましい。なお、本明細書において、スピン注入磁化反転素子の平面視形状とは、磁化固定層、中間層(障壁層)、磁化自由層のすべてが積層された領域を指す。
スピン注入磁化反転素子5Dは、第1実施形態の変形例に係るスピン注入磁化反転素子5A(図4参照)と同様に、磁化自由層1、磁化固定層3Dがそれぞれ、GdFe層(Gd−Feからなる層)11,31を主たる要素として備え、MgOからなる障壁層2を備えるTMR素子である。したがって、磁化自由層1および磁化固定層3Dが、障壁層2との界面に、Co−FeまたはCo−Fe−Bからなる磁性金属膜13,33(まとめてCoFe膜13,33と称する)を備え、磁化自由層1が、GdFe層11とCoFe膜13の間にGd膜12を備える。すなわち、スピン注入磁化反転素子5Dは、下から、GdFe層31、CoFe膜33、障壁層2、CoFe膜13、Gd膜12、GdFe層11、保護膜43A、を順に積層してなり、また、最下層のGdFe層31がMgO膜42の上に直接に形成される。スピン注入磁化反転素子5Dの各要素は、第1実施形態やその変形例と同様の構成であり、また、MgO膜42は第2実施形態の変形例と同様の構成である。以下、スピン注入磁化反転素子5Dを構成する要素について詳しく説明する。
(磁化自由層)
磁化自由層1は、スピン注入磁化反転素子5Dにおいて障壁層2の上に設けられることも含めて、第1実施形態と同様の構成である。したがって、磁化自由層1(GdFe層11)は、障壁層2により保磁力が大きくなる。
(障壁層)
障壁層2は、第1実施形態と同様の構成であり、この上に成膜される磁化自由層1(GdFe層11)の保磁力を大きくする。さらに本実施形態においては、後記製造方法にて説明するように、障壁層2は、スピン注入磁化反転素子5Dの形成時における磁化固定層3Dの保護膜であり、かつ、当該障壁層2上の絶縁膜(磁化自由層1同士の間の絶縁層8)をエッチングするときのエッチングストッパ膜になる。そのために、図8に示すように、スピン注入磁化反転素子5Dにおいて、障壁層2は、その下の磁化固定層3Dと同一の平面視形状に形成され、また、厚さを1nm以上とすることが好ましい。
(磁化固定層)
磁化固定層3Dは、下すなわち下部電極6Dの側から、GdFe層31/CoFe膜33の2層構造を有し、これは、第1実施形態に係るスピン注入磁化反転素子5(図1参照)の磁化固定層3(磁性層30/CoFe膜33)の磁性層30を、第1、第2実施形態の各変形例の磁化固定層3A,3CのGdFe層31に置き換えたものといえる。CoFe膜33、GdFe層31の構成は、第1実施形態とその変形例にて説明した通りである。スピン注入磁化反転素子5Dにおいて、磁化固定層3D(GdFe層31)は、第2実施形態の変形例に係るスピン注入磁化反転素子5C(図6参照)における磁化固定層3Cと同様に、MgO膜42の上に直接に成膜されることにより保磁力が大きくなる。
前記したように、磁化固定層3Dは、MgO膜42の下の下部電極6Dに電気的に接続されるように、平面視でMgO膜42の外側へ拡張して大きく形成されているので、周縁を除く中央部でのみMgO膜42上に形成されている。したがって、磁化固定層3D(GdFe層31)は、下面が下部電極6Dに接続している周縁の領域においては、Gd−Fe合金本来の小さな保磁力を示す。そのため、スピン注入磁化反転素子5Dは、磁化固定層3Dのこの周縁の領域上には磁化自由層1を設けず、膜面垂直方向の電流経路が形成されないように、すなわちスピン注入磁化反転素子の領域外とする。このような構成とすることにより、スピン注入磁化反転素子5Dは、磁化固定層3Dの一部の保磁力が小さくても、磁化反転動作の安定性が阻害されない。なお、磁化固定層3Dは、下部電極6Dとの接続面積が確保されていれば、面内の四方すべてに拡張されてなくてもよく、例えば対向する2辺のみがMgO膜42の外側に形成される形状でもよい。
(保護膜)
保護膜43Aは、第1実施形態の変形例(図4参照)と同様の構成である。なお、本実施形態に係るスピン注入磁化反転素子5Dは、第2実施形態およびその変形例に係るスピン注入磁化反転素子5B,5C(図5(a)、図6参照)と同様に、最下層にRu等の金属膜(図1に示す下地金属膜41)を備えない。
以下に、磁気抵抗効果素子10Dを構成するスピン注入磁化反転素子5D以外の要素について説明する。
(MgO膜)
MgO膜42は、第2実施形態やその変形例と同様の構成であり、この上に成膜される磁化固定層3D(GdFe層31)の保磁力を大きくするために設けられる。前記した通り、スピン注入磁化反転素子5Dにおいては、磁化固定層3Dが、一部(周縁)でMgO膜42の上に形成されず、保磁力が大きくならない上、MgO膜42の厚みにより段差を有して局所的に磁気特性に変化を生じている場合がある。そこで、この磁化固定層3Dの、MgO膜42から外側にはみ出した領域がスピン注入磁化反転素子の領域外になるようにするために、スピン注入磁化反転素子5Dにおいて、MgO膜42は、平面視形状が磁化自由層1と同一または磁化自由層1よりも大きく形成される。
(電極)
磁気抵抗効果素子10Dは光を透過する必要がないので、上部電極7A、下部電極6D、ならびにソース線、ワード線(図示省略)は、第1実施形態の下部電極6等と同様の金属電極材料で形成される。
(絶縁層)
絶縁層8は、第1、第2実施形態と同様の構成とすることができる。ただし、スピン注入磁化反転素子5D,5D間に設けられる絶縁層8は、障壁層2およびMgO膜42とは異なるすなわちMgO以外の絶縁材料で形成され、特にMgOよりもエッチング選択性の高い材料、具体的にはSi窒化物で形成されることが好ましい。
(基板)
磁気抵抗効果素子10Dが形成される基板(図示省略)は、磁気抵抗効果素子10Dがトランジスタに接続されるために、表層にMOSFETを形成されたp型シリコン(Si)基板が適用される。
(磁気抵抗効果素子の製造方法)
第3実施形態に係るスピン注入磁化反転素子5Dは、MgOからなる障壁層2を境に、障壁層2およびその下の磁化固定層3Dと、これらとは平面視形状の異なる上側の磁化自由層1と、をそれぞれに接触する絶縁層8も含め、分けて形成することで製造することができる。また、スピン注入磁化反転素子5Dを備える磁気抵抗効果素子10Dは、前記したように、表層にMOSFETを形成されたSi基板上に、ソース線およびワード線を金属電極材料で形成された上に、絶縁膜を介して形成される。以下、磁気抵抗効果素子10Dの製造方法について、その一例を、図9および図10を参照して説明する。
MOSFETを形成したSi基板(図示省略)上に、このMOSFETと電気的に接続するソース線、ワード線、および下部電極6D、ならびにこれらの配線同士の間を埋める絶縁層8を形成して、表面に下部電極6Dを露出させ、また、下部電極6Dのない領域を絶縁層8で埋める。この下部電極6Dおよび絶縁層8の上にMgO膜を成膜し、レジストパターンを形成して、エッチングにてMgO膜42を成形し、レジストパターンを除去する(図9(a))。
次に、スピン注入磁化反転素子5Dを形成する。まず、磁化固定層3Dおよび障壁層2を形成する。図9(a)に示すMgO膜42、下部電極6D、および絶縁層8の上に、Si窒化物膜を、スピン注入磁化反転素子5D(磁化固定層3D〜保護膜43A)の厚さに合わせて成膜する。このSi窒化物膜の上に、磁化固定層3Dを形成する領域を空けたレジストパターンPR1を形成し(図9(b))、Si窒化物膜をエッチングして、MgO膜42およびその周囲の下部電極6Dを露出させる(図9(c))。このとき、第1実施形態(図2(c)参照)等と同様に、RIEのようなエッチング選択性の高い方法を適用して、MgO膜42や下部電極6Dがエッチングされないようにする。この上から、GdFe層31、CoFe膜33、障壁層2の各材料を連続して成膜して、Si窒化物膜(絶縁層8)に形成された孔に埋め込んで、磁化固定層3Dおよび障壁層2を形成する。引き続いて、障壁層2の上に、Si窒化物膜を、磁化自由層1と保護膜43Aの合計の厚さに合わせて成膜する。なお、GdFe層31を成膜する前に、第2実施形態と同様に、スパッタ装置にてキャリアガスのイオンやプラズマによるクリーニングを下部電極6D等の表面に行うことが好ましい。そして、レジストパターンPR1をその上の材料ごと除去する(リフトオフ)。これにより、図9(d)に示すように、MgO膜42の上にそれよりも大きな磁化固定層3Dおよび障壁層2が形成され、さらにその上に絶縁層8(Si窒化物膜)が全面を被覆して形成される。
次に、磁化自由層1を形成する。Si窒化物膜(絶縁層8)の上に、磁化自由層1(スピン注入磁化反転素子5D)を形成する領域を空けたレジストパターンPR2を形成する(図10(a))。そして、先のエッチングと同様に、エッチング選択性の高い方法により、障壁層2(MgO膜)をエッチングストッパ膜として絶縁層8(Si窒化物膜)をエッチングして、障壁層2を露出させる(図10(b))。障壁層2表面を磁化固定層3Dの形成時と同様にクリーニングして、続けて、CoFe膜13、Gd膜12、GdFe層11、保護膜43Aの各材料を連続して成膜して、絶縁層8に形成された孔に埋め込んで、障壁層2上に磁化自由層1および保護膜43Aを形成する。そして、レジストパターンPR2をその上の材料ごと除去する(リフトオフ)。これにより、図10(c)に示すように、スピン注入磁化反転素子5D、およびスピン注入磁化反転素子5D,5D間の絶縁層8が形成される。
次に、第1実施形態と同様に、上部電極7Aをリフトオフ法により形成し、上部電極7A,7A間の絶縁層8を形成して、磁気抵抗効果素子10Dが得られる。
このように、スピン注入磁化反転素子5Dを、磁化固定層3Dおよび障壁層2と、磁化自由層1と、に2段階(2層)に分けて形成する際に、絶縁層8の、磁化固定層3Dおよび障壁層2に接触する部分、あるいは磁化自由層1に接触する部分を成形してから、磁化固定層3D、磁化自由層1等の材料を成膜することにより、GdFe層31,11へのダメージが抑えられる。また、MgO膜である障壁層2が磁化固定層3Dの保護膜になって、磁化固定層3Dと磁化自由層1とで異なる平面視形状に形成することができる。さらに、磁化自由層1の側面に接触する絶縁層8を成形する際に、障壁層2をエッチングストッパ膜にすることで、比較的加工ダメージの少ない方法でエッチングすることができ、磁化固定層3D(GdFe層31)へのダメージが抑えられる。
(MRAMの初期設定)
磁気抵抗効果素子10Dを配列したMRAMについても、空間光変調器と同様に、すべてのメモリセルの磁気抵抗効果素子10Dが、スピン注入磁化反転素子5Dの磁化固定層3Dの磁化方向を同じ向きに固定されている必要がある。したがって、第1実施形態と同様に、外部から磁化固定層3Dの保磁力よりも大きな磁界を印加して、磁化固定層3Dの磁化方向を、例えば上向きに(図3参照)揃える初期設定を行う。
(抵抗変化)
スピン注入磁化反転素子5D(5)の磁化反転に伴う抵抗の変化を、図3(c)、(d)を参照して説明する。スピン注入磁化反転素子5は磁気抵抗効果素子であり、その積層方向における抵抗、すなわち上下に接続した電極7A,6D(7,6)間の抵抗が、磁化自由層1の磁化方向により変化する。詳しくは、スピン注入磁化反転素子5は、図3(c)に示す磁化方向が平行な状態における抵抗RPよりも、図3(d)に示す磁化方向が反平行な状態における抵抗RAPの方が高く(RP<RAP)、磁化反転しない大きさの電流Irを供給されたときに電流が流れ難い。
(磁気抵抗効果素子の動作)
メモリセルの書込みとして、磁気抵抗効果素子10Dにおけるスピン注入磁化反転素子5Dの磁化反転が行われる。スピン注入磁化反転素子5Dの磁化反転動作は、図3(a)、(b)に示すスピン注入磁化反転素子5と同様である。一方、メモリセルの読出しは、一般的な選択トランジスタ型のMRAMと同様に、スピン注入磁化反転素子5Dが磁化反転しない所定の大きさの電流Irを供給したときの電極6D,7A間の電圧の値から、スピン注入磁化反転素子5Dの抵抗がRP,RAPのいずれであるかを判定する。なお、図3(c)、(d)に示すスピン注入磁化反転素子5は、磁化固定層3側から磁化自由層1へ電流Irを供給されているが、電流Irの向きは逆でもよい。また、磁気抵抗効果素子10Dにおいて、下部電極6Dは、トランジスタを経由してソース線に接続し、この接続はワード線からの電流Irとは別の電流の供給によりON/OFFする。したがって、書込み、読出しの電流Iw,Irは、上部電極7A(ビット線)とソース線を一対の電極としてスピン注入磁化反転素子5Dに供給される。
磁気抵抗効果素子10Dは、MOSFETに代えて、ダイオードを接続されてメモリセルとしてもよい。ダイオードについても、MOSFETと同様に、Si基板の表層に形成することができる。あるいは、磁気抵抗効果素子10Dは、トランジスタに接続されずに、下部電極6D(下部電極6)をワード線とするクロスポイント型のMRAMのメモリセルとしてもよい(図示せず)。
本実施形態に係るスピン注入磁化反転素子5Dは、上部電極7Aを、第1実施形態に係るスピン注入磁化反転素子5(図1参照)と同様に上部電極7に置き換えて、上から光を入出射する光変調素子に適用することができる(図示せず)。この場合にも、磁気抵抗効果素子10Dと同様に、下部電極6Dにトランジスタを接続していることにより、漏れ電流(非選択の画素(光変調素子)への電流の回り込み)がなく、電流の消費が抑制された空間光変調器の光変調素子となる。あるいは、上部電極7と直交する下部電極6(図1参照)が接続されてもよい。
第3実施形態に係るスピン注入磁化反転素子5Dは、第1実施形態の変形例に係るスピン注入磁化反転素子5A(図4参照)と同様に、磁化自由層について、Gd−Fe合金(GdFe層11)以外の垂直磁気異方性を有する公知の磁性材料を適用することができる(図示せず)。
以上のように、本発明の第3実施形態に係るスピン注入磁化反転素子は、第1、第2実施形態の各変形例と同様に、磁化自由層と磁化固定層の両方にGd−Fe合金が適用されているので生産性がよく、また、磁化自由層、磁化固定層の保磁力がそれぞれ大きく、安定した動作とすることができる。
本発明の第1、第2実施形態、およびその各変形例に係るスピン注入磁化反転素子5,5A,5B,5Cは、第3実施形態に係るスピン注入磁化反転素子5D(図8参照)と同様に、MRAMのメモリセルの磁気抵抗効果素子に適用されてもよい。この場合、下部電極6と上部電極7Aのように、一対の電極の両方に金属電極材料を適用することができ、さらに、表層にMOSFETを形成されたSi基板上に形成されて、下部電極6等でトランジスタのドレインに接続してもよい(図示せず)。あるいは、スピン注入磁化反転素子5,5A,5B,5Cは、光変調素子に適用される場合においてもトランジスタを接続して、電流の消費が抑制された空間光変調器を構成することができる。ただし、スピン注入磁化反転素子5A,5Bは、下方から光を入射する光変調素子10A,10B(図4、図5(a)参照)に適用されるため、光変調素子10A,10Bを配列した基板9Aに、MOSFETやソース線等の配線を形成されたSi基板を、水酸基接合等の常温接合により貼り合わせて、上部電極7Aでトランジスタのドレインに接続する。また、光変調素子10等においても、メモリセルの読出しと同様に、一対の電極6,7間の抵抗RP,RAPにより(図3(c)、(d)参照)、磁化反転動作が正常に行われたかの書込みエラー検出を行うことができる。
〔第4実施形態〕
本発明の第1、第2、第3実施形態、およびそれぞれの変形例においては、磁化自由層、中間層(障壁層)、磁化固定層を1層ずつ備えるスピン注入磁化反転素子について説明したが、これに限られず、例えば、1つの磁化自由層の上に中間層または障壁層を介して2つの磁化固定層を設けた並設デュアルピン構造のスピン注入磁化反転素子(特許文献6,7参照)においても適用し得て、同様の効果を有する。以下、第4実施形態に係るスピン注入磁化反転素子、およびこれを備えた光変調素子について説明する。第1、第2、第3実施形態(図1〜10参照)と同一の要素については同じ符号を付し、説明を省略する。
本発明の第4実施形態に係るスピン注入磁化反転素子5Eは、図11に示すように、1つの磁化自由層1とその上に積層された障壁層2のさらに上に、膜面方向に離間した2つの磁化固定層3,3Aが積層された構成であり、2つの磁化固定層3,3A上に一対の電極である第1電極71と第2電極72が接続されて、光変調素子10Eを構成する。スピン注入磁化反転素子5Eは、さらに、磁化固定層3,3Aのそれぞれの上に保護膜43A,43Aを備える。本実施形態に係るスピン注入磁化反転素子5Eは、MgO膜42の上に直接に設けられ、すなわち磁化自由層1がMgO膜42の上に形成されている。スピン注入磁化反転素子5Eは、一対の電極71,72の両方が磁化固定層3,3A上に接続されて、磁化自由層1には電極が接続されないので、このように下側に絶縁体であるMgO膜42が設けられても電気的な接続が妨げられない。したがって、磁化自由層1(GdFe層11)の全体がMgO膜42の上に直接に成膜されることにより保磁力が大きくなる。さらに、障壁層2がMgOからなることにより、その上にGdFe層31を備えた磁化固定層3Aを適用することができる。
光変調素子10Eは、スピン注入磁化反転素子5Eが下側に磁化自由層1を備え、さらにその下に電極が接続されていないため、第1実施形態の変形例の光変調素子10A(図4参照)と同様に、反射型の空間光変調器の画素として透明な基板9A上に2次元配列されて、下方から入射した光を反射させて下方へ出射する。光変調素子10Eにおいて、一対の電極71,72は、第1実施形態の光変調素子10における一対の電極6,7(図1参照)と同様に、一方を行方向に、他方を列方向に、それぞれ延設される。図11においては、磁化固定層3,3Aが左右方向に並んで設けられているため、下側(スピン注入磁化反転素子5Eに近い側)に設けられて磁化固定層3に接続する第1電極71は、手前−奥方向(紙面垂直方向)に延設された帯状に形成されている。一方、その上方で、第1電極71と直交して左右方向に延設された帯状に形成された第2電極72は、コンタクト部(第2電極72の帯状部分と第1電極71の層間部)を経由して磁化固定層3Aに接続する。
障壁層2は絶縁体であるMgOからなるので、スピン注入磁化反転素子5Eは、1つの磁化自由層1の上に、膜面方向に並んで2つの磁化固定層3,3Aがそれぞれ障壁層2,2を挟んで積層された構成であるといえる。また、スピン注入磁化反転素子5Eは、磁化自由層1/障壁層2/磁化固定層3、磁化自由層1/障壁層2/磁化固定層3Aの各3層からなる2つのスピン注入磁化反転素子(TMR素子)を磁化自由層1で接続した構成である。これら3層が積層された各領域がスピン注入磁化反転素子として機能するので、それぞれの平面視形状がスピン注入磁化反転素子として好適なものであればよく、磁化固定層3,3Aについては、例えば各100nm×300nmにすることができる。一方、磁化自由層1は、詳しくは後記するように、スピン注入磁化反転素子として機能する磁化固定層3,3Aが積層された2つの領域と、これら2つの領域に挟まれた領域とにおいて、磁化反転し、すなわち光変調素子として機能するので、これらを合わせた平面視サイズを例えば300nm×300nmにして、光変調素子に好適なサイズにすることができる。なお、磁化固定層3,3A間の距離については特に規定されない。
また、図11に示すように、スピン注入磁化反転素子5Eにおいて、磁化自由層1は、2つ並んだ磁化固定層3,3Aの外側へ張り出して拡張して形成されていることが好ましい。これは、後記製造方法にて説明するように、磁化自由層1と同一平面視形状に形成される障壁層2を、磁化固定層3,3Aを形成するためのエッチングストッパ膜にするためである。磁化自由層1は、この張り出した領域においては磁化反転しない。また、磁化自由層1の張り出した長さは特に規定されず、隣り合うスピン注入磁化反転素子5E,5E間で短絡しなければよいが、磁性膜は面積がある程度以上大きくなると保磁力が減少する傾向があるので、磁化自由層1の保磁力が減少しない程度にすることが好ましい。以下、スピン注入磁化反転素子5Eを構成する要素について詳しく説明する。
(磁化自由層)
磁化自由層1は、第1実施形態(図1参照)と同様の構成で、積層順を逆にしたものであり、第1実施形態の変形例(図4参照)と同じ積層順になる。ただし、本実施形態においては、GdFe層11が、第2実施形態に係るスピン注入磁化反転素子5B(図5(a)参照)における磁化自由層1Bと同様に、MgO膜42の上に直接に成膜されることにより保磁力が大きくなる。
(障壁層)
障壁層2は、第1実施形態やその変形例(図1、図4参照)と同様の構成であり、この上に成膜される磁化固定層3A(GdFe層31)の保磁力を大きくするものである。さらに本実施形態においては、後記製造方法にて説明するように、障壁層2は、第3実施形態と同様に、スピン注入磁化反転素子5Eの形成時における磁化自由層1の保護膜であり、かつ、当該障壁層2上の絶縁膜(磁化固定層3,3A間等の絶縁層8)をエッチングするときのエッチングストッパ膜になる。そのために、図11に示すように、スピン注入磁化反転素子5Eにおいて、障壁層2は、その下の磁化自由層1と同一の平面視形状に形成され、また、厚さを1nm以上とすることが好ましい。
(磁化固定層)
磁化固定層3および磁化固定層3Aは、第1実施形態およびその変形例(図1、図4参照)とそれぞれ同様の構成である。磁化固定層3は、障壁層2の上に設けられた磁化固定層3A(GdFe層31)よりも保磁力が大きくなるように、磁性層30の材料や厚さを設計する。
(保護膜)
保護膜43Aは第1実施形態の変形例(図4参照)と同様の構成であり、本実施形態においては、磁化固定層3Aの上にはGdFe層31の保護のために設けられ、磁化固定層3の上には磁性層30の材料に応じて設けられる。したがって、スピン注入磁化反転素子5Eにおいて、2つの保護膜43A,43Aは、材料や厚さが異なるものでもよい。
以下に、光変調素子10Eを構成するスピン注入磁化反転素子5E以外の要素について説明する。
(MgO膜)
MgO膜42は、第2実施形態(図5(a)参照)と同様に、磁化自由層1(GdFe層11)の保磁力を大きくするために設けられる。スピン注入磁化反転素子5Eにおいては、磁化自由層1が電極に接続されないので、MgO膜42は、磁化自由層1の下面の全体に形成することができ、ここでは磁化自由層1と同一の平面視形状に形成される。
(電極)
第1電極71および第2電極72は、いずれも光の入出射側と反対側に設けられるので、第1実施形態(図1参照)の下部電極6等と同様に、良導体の金属電極材料を適用することができる。
(絶縁層)
絶縁層8は、第3実施形態(図8参照)と同様の構成とすることが好ましい。すなわち、スピン注入磁化反転素子5E,5E間に設けられる絶縁層8は、Si窒化物で形成されることが好ましい。また、前記したように、スピン注入磁化反転素子5Eにおける障壁層2,2間には、障壁層2と同じMgO膜が設けられているといえる。
(基板)
基板9Aは、第1実施形態の変形例(図4参照)と同様の構成である。
(光変調素子の製造方法)
第4実施形態に係るスピン注入磁化反転素子5Eは、第3実施形態に係るスピン注入磁化反転素子5D(図8および図9〜10参照)と同様に、MgOからなる障壁層2を境に、障壁層2およびその下の磁化自由層1と、これらとは平面視形状の異なる上側の磁化固定層3,3Aと、をそれぞれに接触する絶縁層8も含め、分けて形成することで製造することができる。以下、スピン注入磁化反転素子5Eを備える光変調素子10Eの製造方法について、その一例を説明する。
まず、MgO膜42、ならびにスピン注入磁化反転素子5Eの磁化自由層1および障壁層2を形成する。基板9Aの表面に、Si窒化物膜を、MgO膜42、およびスピン注入磁化反転素子5E(磁化自由層1〜保護膜43A)の合計の厚さに合わせて成膜する。このSi窒化物膜の上に、磁化自由層1を形成する領域を空けたレジストパターンを形成し、Si窒化物膜をエッチングして、基板9Aを露出させる。この上から、MgO膜42、GdFe層11、Gd膜12、CoFe膜13、障壁層2の各材料を連続して成膜して、Si窒化物膜(絶縁層8)に形成された孔に埋め込んで、MgO膜42、磁化自由層1、および障壁層2を形成する。引き続いて、障壁層2の上に、Si窒化物膜を、磁化固定層3(3A)と保護膜43Aの合計の厚さに合わせて成膜する。そして、レジストパターンをその上の材料ごと除去する(リフトオフ)。これにより、MgO膜42、磁化自由層1および障壁層2が形成され、さらにその上に絶縁層8(Si窒化物膜)が全面を被覆して形成される。
次に、磁化固定層3,3Aを片方ずつ形成する。Si窒化物膜(絶縁層8)の上に、磁化固定層3Aを形成する領域を空けたレジストパターンを形成する。そして、障壁層2(MgO膜)をエッチングストッパ膜として絶縁層8(Si窒化物膜)をエッチングして、障壁層2を露出させる。障壁層2表面を第2、第3実施形態と同様にクリーニングして、続けて、CoFe膜33A、Gd膜32、GdFe層31、保護膜43Aの各材料を連続して成膜して、絶縁層8に形成された孔に埋め込んで、障壁層2上に磁化固定層3Aおよび保護膜43Aを形成する。そして、レジストパターンをその上の材料ごと除去する(リフトオフ)。同様に、磁化固定層3およびその上の保護膜43Aを形成する。これにより、スピン注入磁化反転素子5E、およびスピン注入磁化反転素子5E,5E間の絶縁層8が形成される。
次に、第1電極71および第2電極72を、一般的な多層配線と同様の方法で形成する。スピン注入磁化反転素子5E(保護膜43A,43A)および絶縁層8の上に、第1電極71を形成する領域、および第2電極72の磁化固定層3Aに接続する部分を形成する領域を空けたレジストパターンを形成し、この上から金属電極材料を成膜して、レジストパターンを除去する(リフトオフ)。これにより、帯状の第1電極71、および第2電極72の一部が形成される。この上にSiO2等の絶縁膜を堆積し、必要に応じて表面の絶縁膜を平坦化する。そして、この絶縁膜の上にレジストパターンを形成し、エッチングにて前記形成された第2電極72上にコンタクトホールを形成する。さらに、コンタクトホールに金属電極材料を埋め込み、その上に第1電極71と直交する第2電極72の帯状の部分を形成して、光変調素子10Eが得られる。
このように、スピン注入磁化反転素子5Eは、第3実施形態に係るスピン注入磁化反転素子5Dと同様に、GdFe層11,31へのダメージを抑えて形成することができる。特に、磁化自由層1がその上の障壁層2と共に平面視形状を大きく形成されていることにより、磁化固定層3,3Aの形成の際に障壁層2がエッチングストッパ膜として好適に作用する。
なお、スピン注入磁化反転素子5Eの磁化固定層3,3Aは、どちらを先に形成してもよい。また、MgO膜42は、空間光変調器全体(基板9A全面)に形成されていてもよい。この場合は、まず、基板9A上に、MgO膜42、およびスピン注入磁化反転素子5Eの厚さのSi窒化物膜を順次成膜し、Si窒化物膜のみをエッチングして磁化自由層1の平面視形状の孔を形成すればよい。
(空間光変調器の初期設定)
空間光変調器におけるすべての画素の光変調素子10Eのスピン注入磁化反転素子5Eは、第1実施形態等と同様に、磁化固定層3,3Aの磁化方向が同じ向きに固定されている必要がある。ただし、第1電極71側の磁化固定層3と第2電極72側の磁化固定層3Aとでは、磁化方向が互いに逆向きに固定される(図12参照)。そのために、まず、磁化固定層3の保磁力よりも大きな磁界を印加して、磁化固定層3,3Aの磁化方向を共に上向きに揃える。次に、磁化固定層3の保磁力よりは小さく、かつ磁化固定層3Aの保磁力よりも大きな磁界を逆向きに印加して、磁化固定層3Aの磁化方向のみを下向きにする。このように、大きさと向きを切り替えて、2回の磁界印加を行う。
(磁化反転動作)
スピン注入磁化反転素子5Eの磁化反転動作を、図12(a)、(b)を参照して、光変調素子10Eにて説明する。なお、図12において、MgO膜42および保護膜43Aは図示を省略し、また、磁化自由層1は、磁化固定層3,3Aが積層された領域とその間のみを示す。図12(a)に示すように、磁化固定層3に接続した第1電極71を「−」に、磁化固定層3Aに接続した第2電極72を「+」にして、磁化方向が上向きに固定された磁化固定層3の側から電子を注入する。すると、磁化固定層3で当該磁化固定層3の磁化方向と逆の下向きのスピンを持つ電子dDが弁別されて、第1電極71からは上向きのスピンを持つ電子dUが偏って磁化固定層3に注入され、さらに障壁層2を介して磁化自由層1に注入される。磁化自由層1においては、電子dUの上向きスピンによるスピントルクが作用することによって当該磁化自由層1の内部電子のスピンが反転し、磁化固定層3の直下の領域から磁化方向が上向きへ反転する。さらに、磁化自由層1に注入された電子dUは、磁化方向が逆の下向きに固定された磁化固定層3Aで弁別されるために磁化自由層1に留まり易く、その結果、磁化自由層1は、磁化固定層3,3Aが積層された領域だけでなく、これら2つの領域に挟まれた領域も含めて、磁化固定層3の磁化方向と同じ上向きの磁化方向を示す状態に変化(磁化反転)する。
反対に、磁化自由層1の磁化方向を下向きに反転させるためには、前記の図12(a)に示す動作とは反対に、図12(b)に示すように、第1電極71を「+」に、第2電極72を「−」にして、磁化方向が下向きに固定された磁化固定層3Aの側から電子を注入する。すると、磁化自由層1には下向きのスピンを持つ電子dDが偏って注入され、電子dDの下向きスピンによるスピントルクが作用することによって当該磁化自由層1の内部電子のスピンが反転し、磁化固定層3Aの直下の領域から全体に磁化方向が下向きへと反転(磁化反転)する。
このように、デュアルピン構造のスピン注入磁化反転素子であるスピン注入磁化反転素子5Eは、2つの磁化固定層3,3Aが互いに反対方向の磁化に固定されていることで、磁化固定層3,3Aのそれぞれに一対の電極71,72を接続して電流を供給して、磁化自由層1の全体の磁化方向を変化させる(磁化反転させる)ことができる。すなわちスピン注入磁化反転素子5Eは、通常の(シングルピン構造の)スピン注入磁化反転素子5(図3参照)等と同様に、一対の電極で磁化反転させることができる。なお、磁化自由層1の、磁化固定層3,3Aの外側へ張り出して形成された部分(図12においては省略)は、電流経路が形成されないので、磁化反転せず、初期設定により磁化固定層3Aと同じ下向きの磁化方向を維持する。
(光変調動作)
スピン注入磁化反転素子5Eは、第1実施形態に係るスピン注入磁化反転素子5(図3参照)等と同様に磁化自由層1が磁化反転するので、旋光角−θk,+θkで光変調動作をする。ただし、本実施形態においては、第1実施形態の変形例(図4参照)等と同様に、磁化自由層1が設けられた下側から光を入射させる。
(変形例)
第4実施形態に係るスピン注入磁化反転素子5Eは、Gd−Fe合金を適用した磁化固定層3Aと磁化自由層1の両方について、下にMgO膜(障壁層2、MgO膜42)を設けてGd−Fe合金(GdFe層31,11)の保磁力を増大させているが、MgO膜42を設けない構成にしてもよい。この場合、スピン注入磁化反転素子5Eは、最下層に下地金属膜41A(図4参照)を備えることが好ましい。このような構成では、スピン注入磁化反転素子5Eは、磁化自由層1(1A)の保磁力が減少して磁化固定層3Aとの差が大きくなることにより、磁化反転動作が安定する。
また、スピン注入磁化反転素子5Eは、磁化固定層の一方(磁化固定層3A)にGd−Fe合金(GdFe層31)が適用され、磁化自由層1(GdFe層11)と材料を共通化されているが、これに限られず、2つの磁化固定層の両方にGd−Fe合金以外の垂直磁気異方性材料を適用することができる。このとき、2つの磁化固定層の保磁力が互いに異なるように材料を選択する。あるいは、一方の磁化固定層に交換結合膜を積層して、初期設定における1回の外部磁界印加により他方の磁化固定層と逆向きの磁化方向に固定されるようにする(図示せず)。
第4実施形態に係るスピン注入磁化反転素子5Eは、図12に示すように、常に、磁化自由層1の磁化方向が磁化固定層3,3Aの一方と平行で他方と反平行である。そのため、光変調素子10Eは、電極71,72間の抵抗が実質的に変化せず(特許文献7参照)、前記抵抗に基づく書込みエラー検出を行うことが困難である。そこで、スピン注入磁化反転素子5Eについて、磁化固定層3AをGdFe層31のみからなる磁化固定層3C(図6参照)に置き換えてもよい(図示せず)。このような構成により、磁化自由層1/障壁層2/磁化固定層3CのMR比(抵抗変化率)が、障壁層2の両面側にCoFe層13,33を備える磁化自由層1/障壁層2/磁化固定層3よりも低くなる。その結果、磁化自由層1/障壁層2/磁化固定層3Cと磁化自由層1/障壁層2/磁化固定層3との2つのスピン注入磁化反転素子の抵抗の和である電極71,72間の抵抗が、磁化自由層1の磁化反転により変化する。したがって、図3(c)、(d)に示すスピン注入磁化反転素子5等と同様に、電極71,72間の抵抗により、磁化反転動作が正常に行われたかの書込みエラー検出を行うことができる。また、磁化固定層3Cにおいては、GdFe層31が直接に障壁層2上に形成されるので、保磁力がいっそう大きくなる。
あるいは、スピン注入磁化反転素子5Eについて、磁化固定層3Aと磁化固定層3Cを備える構成としてもよい(図示せず)。前記した通り、磁化固定層3Cにおいては保磁力がいっそう大きくなって、同じ厚さのMgO膜(障壁層2)上の、さらに同一組成のGdFe層31であっても、磁化固定層3Aとの差が得られる。そして、磁化自由層1/障壁層2/磁化固定層3Cの方がMR比が低いので、磁化反転により電極71,72間の抵抗が変化する。さらに、磁化固定層3A,3Cおよび磁化自由層1の3つの磁性層のすべてにGd−Fe合金を適用することができる。
スピン注入磁化反転素子5Eを備える光変調素子10Eは、第3実施形態に係るスピン注入磁化反転素子5D(図8参照)と同様にトランジスタを接続して、電流の消費が抑制された空間光変調器を構成することができる。具体的には、光変調素子10Eを配列した基板9Aに、MOSFETやソース線等の配線を形成されたSi基板を、水酸基接合等の常温接合により貼り合わせて、第2電極72でトランジスタのドレインに接続する(図示せず)。
以上のように、本発明の第4実施形態に係るスピン注入磁化反転素子は、2つの磁化固定層および1つの磁化自由層の、保磁力の異なることを要する3つの磁性層を備えつつ、2以上の磁性層についてGd−Fe合金を適用することができるので、生産性がよく、また、Gd−Fe合金を適用した磁化自由層と磁化固定層の保磁力がそれぞれ大きく、安定した動作とすることができる。
〔第5実施形態〕
第4実施形態の並設デュアルピン構造のスピン注入磁化反転素子に限られず、磁化自由層の上下両面のそれぞれに中間層または障壁層を介して磁化固定層を設けたデュアルピン構造のスピン注入磁化反転素子(特許文献4,5参照)においても、MgO膜上にGd−Feからなる層を設けて、同様の効果が得られる。以下、第5実施形態に係るスピン注入磁化反転素子、およびこれを備えた磁気抵抗効果素子について説明する。第1〜第4実施形態(図1〜12参照)と同一の要素については同じ符号を付し、説明を省略する。
本発明の第5実施形態に係るスピン注入磁化反転素子5Fは、図13に示すように、下から磁化固定層3C、中間層2A、磁化自由層1A、障壁層2、磁化固定層3Aの順に積層された構成であり、さらに、最上層に保護膜43Aを備える。本実施形態に係るスピン注入磁化反転素子5Fは、MgO膜42の上に直接に設けられ、さらに一対の電極である下部電極6Fと上部電極7Aに接続されて、磁気抵抗効果素子10Fを構成する。磁気抵抗効果素子10Fは、磁気抵抗効果素子10D(図8参照)と同様に選択トランジスタ型のMRAMのメモリセルとして、下部電極6Fを経由してトランジスタ(図示省略)に接続される。また、このように、磁気抵抗効果素子10Fにおいては、第2実施形態の変形例(図6参照)と同様に、スピン注入磁化反転素子5Fの下面には絶縁体であるMgO膜42が接触しているために、下部電極6Fには磁化固定層3C(GdFe層31)が側面で接続する。
磁気抵抗効果素子10Fは、スピン注入磁化反転素子5Fの下側に同一平面視形状のMgO膜42を備え、下部電極6Fを磁化固定層3Cの側面に接続するので、下部電極6Fから上のスピン注入磁化反転素子5Fの磁化自由層1Aまで、詳しくはGdFe層11までが、第2実施形態の変形例に係るスピン注入磁化反転素子5Cを備える光変調素子10C(図6参照)と同じ構造である。一方、磁気抵抗効果素子10Fは、GdFe層11も含めて磁化自由層1Aから上の上部電極7Aまでが、第1実施形態の変形例に係るスピン注入磁化反転素子5Aを備える光変調素子10A(図4参照)と同じ構造である。したがって、スピン注入磁化反転素子5Fは、下側の磁化固定層3CがMgO膜42の上に、上側の磁化固定層3Aが障壁層2の上に、それぞれ設けられることにより、第1、第2実施形態の各変形例と同様に保磁力が増大する。また、MgO膜42が障壁層2よりも厚く形成され得て、さらにその上に磁化固定層3CのGdFe層31が直接に形成されているので、それぞれのGdFe層31の組成や厚さが同じであっても、磁化固定層3Cの方が磁化固定層3Aよりも保磁力が大きくなる。
本実施形態に係るスピン注入磁化反転素子5Fを構成する要素、ならびにMgO膜42および絶縁層8は、第1、第2実施形態、およびそれぞれの変形例にて説明した通りである。ただし、スピン注入磁化反転素子5Fは、磁気抵抗効果素子10Fに適用されるので、平面視サイズについては第3実施形態に係るスピン注入磁化反転素子5Dと同様である。また、磁気抵抗効果素子10Fを構成するスピン注入磁化反転素子5F以外の要素も、第3実施形態と同様である。なお、下部電極6Fは、トランジスタ(図示省略)のドレインに接続するように形成されていること以外は第2実施形態の変形例における下部電極6Cと同様に、第1層61と第2層62からなり、上面で開口した穴が形成されている。
(磁気抵抗効果素子の製造方法)
第5実施形態に係るスピン注入磁化反転素子5Fを備える磁気抵抗効果素子10Fは、第3実施形態の磁気抵抗効果素子10Dと同様に、MOSFETを形成したSi基板(図示省略)上にソース線等の配線を形成し、その後に、第2実施形態の変形例に係るスピン注入磁化反転素子5C(図7参照)と同様にスピン注入磁化反転素子5Fを形成して製造することができる。詳しくは、MOSFETを形成したSi基板上に、このMOSFETと電気的に接続するソース線、ワード線、および穴が形成されていない状態の下部電極6F、ならびにこれらの配線同士の間を埋める絶縁層8を形成して、表面に下部電極6Fの第2層62を露出させ、また、下部電極6F(第2層62)のない領域を絶縁層8で埋める。この状態が図7(a)に相当し、この第2層62および絶縁層8の上に、Si窒化物膜をスピン注入磁化反転素子5Fの上面(保護膜43A)の高さ位置に合わせた厚さに成膜する。以降、第2実施形態の変形例と同様に、Si窒化物膜および第2層62をエッチングして孔を形成し、MgO膜42およびスピン注入磁化反転素子5Fを埋め込んで形成する(図7(b)〜(d)参照)。さらに、上部電極7Aを形成して、磁気抵抗効果素子10Fが得られる。
(MRAMの初期設定)
MRAMにおけるすべてのメモリセルの磁気抵抗効果素子10Fについて、第4実施形態と同様に、スピン注入磁化反転素子5Fの2つの磁化固定層3C,3Aの磁化方向を互いに逆向きに固定するために、大きさと向きを切り替えて、2回の磁界印加を行う。
(磁化反転動作)
スピン注入磁化反転素子5Fの磁化反転動作は、第4実施形態に係るスピン注入磁化反転素子5Eと同様である(図12(a)、(b)参照)。例えば下側の磁化固定層3Cの磁化方向が上向き、上側の磁化固定層3Aの磁化方向が下向きに固定されている場合は、上部電極7Aを「+」に、下部電極6Fを「−」にして、磁化固定層3Cの側から電子を注入すると、磁化固定層3Cと同じ上向きに、磁化自由層1Aの磁化方向が反転する。
(抵抗変化)
スピン注入磁化反転素子5Fは、磁化固定層3C/中間層2A/磁化自由層1Aの3層からなるCPP−GMR素子と、磁化自由層1A/障壁層2/磁化固定層3Aの3層からなるTMR素子と、を磁化自由層1Aで接続して備えるデュアルピン構造のスピン注入磁化反転素子である。TMR素子の方がCPP−GMR素子よりもMR比が高いため、磁気抵抗効果素子10Fは、磁化自由層1Aの磁化反転により、電極6F,7A間の抵抗が変化する。
(変形例)
スピン注入磁化反転素子5Fは、MgOからなる障壁層2と非磁性金属からなる中間層2Aとを備えるデュアルピン構造のスピン注入磁化反転素子とすることにより、磁化反転で電極6F,7A間の抵抗が変化するが、中間層2Aを障壁層2に置き換えて2つの障壁層2,2を備える構成にしてもよい(図示せず)。このように、磁化自由層1A(1)の下にもMgOからなる障壁層2が設けられることにより、磁化自由層1の保磁力が増大する。また、この場合には、第4実施形態の変形例にて説明したように、上下いずれかの障壁層2について、界面のCoFe膜13,31の少なくとも一方を設けないことで、2つのTMR素子のMR比に差を生じて、電極6F,7A間の抵抗が変化する。また、スピン注入磁化反転素子5Fは、一方の磁化固定層について、Gd−Fe合金(GdFe層31)以外の垂直磁気異方性材料(磁性層30)を適用してもよい。例えば下側の磁化固定層(図13における磁化固定層3C)に磁性層30を適用した場合は、MgO膜42が不要になり、下部電極6F(6D)上に、下地金属膜41(図1参照)を介してスピン注入磁化反転素子5Fを設けることができる(図示せず)。
以上のように、本発明の第5実施形態に係るスピン注入磁化反転素子は、第4実施形態と同様に、2つの磁化固定層および1つの磁化自由層の、保磁力の異なることを要する3つの磁性層を備えつつ、2以上の磁性層についてGd−Fe合金を適用することができるので、生産性がよく、また、Gd−Fe合金を適用した磁化固定層の保磁力が大きく、安定した動作とすることができる。
以上、本発明を実施するための形態について述べてきたが、以下に、本発明の効果を確認した実施例を、本発明の要件を満たさない比較例と対比して具体的に説明する。
本発明に係るスピン注入磁化反転素子について、Gd−Fe合金からなる層(GdFe層)をMgO膜上に成膜した場合の保磁力への効果を確認するために、MgO膜を中間層(障壁層)とするTMR素子を模擬したサンプルを作製して、GdFe層の磁気特性および磁気光学効果を観察した。詳しくは、熱酸化Si基板に、表1および表2に示すように、下部電極を形成した上に、下地金属膜から保護膜までの材料を下から順にイオンビームスパッタリング法にて連続して成膜して積層し、成形加工せず、上部電極のないサンプルとした。
No.1,2,3,4は、障壁層(MgO膜)の下にTb−Fe−Co合金からなる層(TbFeCo層)を備えた磁化固定層を設けて、磁化自由層としてのGdFe層の保磁力を測定するためのサンプルであり、それぞれMgO膜の厚さを1.5nm、2.0nm、5.0nm、10nmとした。No.5は、障壁層の上下(表2では、下を磁化自由層、上を磁化固定層として示す。)に同じ厚さのGdFe層を備え、それぞれの保磁力を測定するためのサンプルである。GdFe層の組成は、Gd:20at%、Fe:80at%とした。また、MgO膜以外の絶縁膜上にGdFe層を成膜した比較例として、厚さ9.0nmのGdFe層を、熱酸化Si基板に直接に成膜したサンプルを作成した。
また、熱酸化Si基板に、厚さ5nmのMgO膜を成膜し、その上に組成がGd:25at%、Fe:75at%の厚さ9nmのGdFe層を成膜したサンプルを作製した。また、比較例として、MgO膜を厚さ3nmのRu膜に替えたサンプルを作製した。これらのサンプルについて、TMR素子のサンプル等と同様にカー回転角を測定し、印加磁界による磁化反転を観察した。
Figure 2015173186
Figure 2015173186
作製したTMR素子のサンプルのNo.1〜5、およびGdFe層単層の各サンプルについて、レーザー光を用いた偏光変調法にてカー回転角を測定し、印加磁界による磁化反転を観察した。詳しくは、まず、作製したサンプルに、初期化磁界−5kOeを印加して、全体(磁化固定層および磁化自由層)の磁化方向を下向きに揃えた。そして、波長780nmのレーザー光を入射角30°で入射して、サンプルからの反射光の偏光の向き(カー回転角)を、垂直磁界Kerr効果測定装置で測定しながら、初期化磁界と反対方向の磁界H(>0)をその大きさ(絶対値)を、漸増させながら印加して、偏光の向きの変化を観察した。さらに反対方向の磁界H(<0)を印加して、同様に偏光の向きの変化を観察した。
No.1,2,3,4について、カー回転角の磁場(印加磁界)依存性を、磁化曲線として図14(a)、(b)、(c)、(d)に示す。同様に、No.5の磁化曲線を図15に示す。また、熱酸化Si基板にGdFe層を成膜したサンプルの磁化曲線を図16に示す。GdFe層の下地にMgO膜を備えたサンプルの磁化曲線を図17(a)に、下地にRu膜を備えたサンプルの磁化曲線を図17(b)に、それぞれ示す。
磁化曲線から、偏光の向きが変化したときの正負それぞれの印加磁界Hの絶対値の平均を保磁力Hcとした。No.1〜4の各磁化自由層、およびNo.5の磁化固定層の保磁力Hcを、Gd20Fe80の保磁力HcのMgO膜厚依存性のグラフとして、図18(a)に示す。また、図18(a)において、No.5の磁化自由層(Ru膜上のGdFe層)の保磁力Hcを、MgO膜厚0nmとして示す。同様に、Ru膜およびMgO膜を下地に備えたGdFe層(単層)の保磁力Hcを、Gd25Fe75の保磁力HcのMgO膜厚依存性のグラフとして、図18(b)に示す。
図14、図15、および図18(a)に示すように、下地にMgO膜を設け、さらにその膜厚を厚くすると、GdFe層を備えた磁化自由層または磁化固定層の保磁力が増大した。特に、図15に示すNo.5のように、同一の積層構造であっても、Ru膜上とMgO膜とで、保磁力が明らかに相違した。ただし、MgO膜の厚さが10nmになると、MgO膜を設けない状態(厚さ0nm)に近い保磁力に低下した。また、図16に示すように、熱酸化Si基板すなわちSiO2上に成膜したGdFe層については、保磁力が、Ru膜上のもの(No.5の磁化自由層)と有意差が見られなかった。
図17、および図18(b)に示すように、組成を変えたGdFe層についても、下地にMgO膜を設けることにより、保磁力が増大した。
10,10A,10B,10C,10E 光変調素子
10D,10F 磁気抵抗効果素子
1,1A,1B,1C 磁化自由層
11 GdFe層(Gd−Feからなる層)
12 Gd膜
13 CoFe膜(磁性金属膜)
2 障壁層(中間層、MgO膜)
2A 中間層
3,3A,3B,3C,3D 磁化固定層
30 磁性層
31 GdFe層(Gd−Feからなる層)
32 Gd膜
33,33A CoFe膜(磁性金属膜)
41,41A 下地金属膜
42 MgO膜
43,43A 保護膜
5,5A,5B,5C,5D,5E,5F スピン注入磁化反転素子
6,6A,6B,6C,6D,6F 下部電極
7,7A 上部電極
8,8B 絶縁層
9,9A 基板

Claims (7)

  1. それぞれが垂直磁気異方性を有する磁化固定層と磁化自由層の間に、中間層を積層してなるスピン注入磁化反転素子であって、
    前記磁化固定層および前記磁化自由層の少なくとも一方は、Gd−Feからなる層を備え、前記Gd−Feからなる層がMgO膜に積層されていることを特徴とするスピン注入磁化反転素子。
  2. 前記MgO膜を前記中間層とすることを特徴とする請求項1に記載のスピン注入磁化反転素子。
  3. 前記中間層の上に設けられた前記磁化固定層または前記磁化自由層はさらに、前記中間層との界面にCo−FeまたはCo−Fe−Bからなる磁性金属膜を備え、前記磁性金属膜と前記Gd−Feからなる層との間にGd膜を備えることを特徴とする請求項2に記載のスピン注入磁化反転素子。
  4. 前記磁化自由層が前記Gd−Feからなる層を備え、
    前記磁化自由層上に、面内方向に互いに分離した2以上の前記磁化固定層がそれぞれ前記中間層を挟んで設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のスピン注入磁化反転素子。
  5. 前記中間層の下に設けられた前記磁化固定層または前記磁化自由層が、前記Gd−Feからなる層を備え、
    前記Gd−Feからなる層の側面が、一対の電極の一方に接続されることを特徴とする請求項1に記載のスピン注入磁化反転素子。
  6. 前記磁化固定層および前記磁化自由層は、Gd−Feからなる層を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のスピン注入磁化反転素子。
  7. 入射した光の偏光の向きを変化させて出射する光変調素子であることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載のスピン注入磁化反転素子。
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