JP2013042752A - 干し柿の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】従来のように紐等に連吊りした剥皮柿を屋外に吊り干して熟成乾燥させるのではなく,剥皮した原料柿を屋内に平置きして熟成乾燥を達成できる新規な干し柿の製造方法を提供する。
【解決手段】剥皮した原料柿を屋内に平置きして熟成乾燥を行う場合であっても,剥皮柿10aを通気性の良いメッシュ材21の上に載置し,かつ,室内の温度を30℃〜40℃,湿度を30%〜60%,及び風速を2m/秒〜7m/秒となるよう管理することにより,柿表皮をメッシュ材に密着させずに干し柿を製造することができるという知見を得た。このように,剥皮柿を室内に平干して熟成乾燥を達成することができれば,従来製造法の作業負担や,怪我・事故のリスクを一気に解消することができる。
【選択図】図3

Description

本発明は,干し柿の製造方法に関する。
従来から,平核無柿,蜂屋柿,西条柿,及び市田柿に代表される原料柿を熟成乾燥させて,干し柿を製造する方法が知られている。従来の干し柿の製造方法で,まず,収穫した原料柿を追熟させて,剥皮する。その後,剥皮した原料柿を紐等に吊るして連吊りにし,殺菌処理,酸化防止処理,及び塵芥除去処理を施した後,風通しの良い小屋や軒下等の屋外に吊るして熟成乾燥させる。その後,屋外から室内搬送され,再度室内にて仕上げの乾燥処理が行われる。このような工程を経て製造された干し柿は,選果,包装,及び検査を経へて出荷される。このような干し柿の製造・出荷工程が,現在では一般的になっている(例えば,特許文献1)。
特開2006−217852号公報
しかしながら,従来の製造方法のように,複数の剥皮柿を紐等に連吊りにして,屋外に吊り干しする工程は,干し柿の生産者の身体的疲労や危険な事故を招くものであった。すなわち,原料柿の吊り干し作業は立ち作業となるが,一般的に,干し柿の生産農家には,高齢者(特に高齢の女性)が多いため,原料柿の吊り干し作業は,干し柿生産者の腰痛や身体的疲労の原因となっている。また,一般的に,連吊り用の紐には,平均200g〜250gの剥皮柿を15個〜20個程度連吊りするため,連吊りされた剥皮柿の持ち運び作業が重労働となる。さらに,連吊りした一連の剥皮柿を屋外に吊り干しするに際しては,3kg〜5kg程度となった紐をU字型又はI字型として,家屋の軒下等に吊るすこととなるが,この吊り干し作業においては,幅狭の踏み板や梯子から足を踏み外し,怪我をするというケースが頻発している。このため,干し柿加工の作業する者が,年々減少しているという問題があった。
また,従来の製造方法において,連吊りした剥皮柿の吊り干し作業は屋外で行われるが,干し柿生産の最盛期は,11月中旬から12月中旬であるため,寒風中での作業は高齢者にとって過酷な重労働となっている。また,剥皮柿を外干しすると,外気中の塵芥が,熟成途中の柔らかい柿表皮に付着し,柿の洗浄作業が必要となったり,生産された干し柿を出荷できないという問題があった。
上記問題を解決するために,剥皮した柿を,平置きして室内にて熟成乾燥させるという手段が考えられる。しかしながら,剥皮柿を室内に平置きすると,柿の熟成が進むにつれ,柔らかくなった柿表皮が,平置きした台座等に密着して,剥がれ難くなる。また,台座等に密着した柿を無理に剥がそうとすると,柿表皮ごと剥離してしまい,損傷した箇所はカビ発生の原因となる。このため,作業負担が大きく,また怪我のリスクが高くとも,剥皮柿を紐等に連吊りして屋外に吊り干しするという干し柿の製造方法が最も現実的であるとされていた。
さらに,原料柿を剥皮する従来の工程においては,第1段階として,原料柿の堅いガクの部分を残しつつ,ヘタを中心として360度丸輪状に皮を剥くこととしている。そして,第2段階として,剥皮された部分を真空皮剥器の吸着部に吸着させた後,原料柿又は真空皮剥器の刃を回転させて,原料柿全体の剥皮を実行する。
このような従来の剥皮工程は,原料柿の剥皮作業が2段階となるばかりか,真空皮剥器の吸着部に原料柿をしっかりと吸着させるためにヘタ周辺の皮剥きの修正を行う作業が多発し,作業能率が上がらないという問題があった。また,従来の剥皮工程においては,ガク周辺の果肉部に発生する裂果である「ヘタすき」を発見することが困難となっている。ヘタすき果は,ヘタすきが原因となってカビが発生しやすく,干し柿として加工しても,出荷できないという問題や,誤って出荷した場合に顧客からのクレーム要因となるという問題があった。さらに,ヘタを残したまま原料柿を加工すると,加工品である干し柿にもヘタが残存したままとなるため,干し柿を食べづらくなったり,干し柿を食べ終わるとヘタがゴミになるという問題があった。
このため,現在では,従来のように紐等に連吊りした剥皮柿を屋外に吊り干して熟成乾燥させるのではなく,剥皮した原料柿を屋内に平置きし熟成乾燥を達成することができる干し柿の製造方法が求められている。さらに,カビの原因となるヘタすきを効果的に発見でき,かつ,干し柿の食べ終わりのゴミが少ない干し柿の製造方法が求められている。
本発明は,上記問題点のうちいずれか一つ以上を解決することを目的としている。
すなわち,本発明の発明者は,上記の従来の問題点を解決するために試作を繰り返し,試験データを積み重ねた結果,剥皮した原料柿を屋内に平置きして熟成乾燥を行う場合であっても,剥皮柿を通気性の良いメッシュ材の上に載置し,かつ,室内の温度を30℃〜40℃,湿度を30%〜60%,及び風速を2m/秒〜7m/秒となるよう管理することにより,柿表皮をメッシュ材に密着させずに干し柿を製造することができるという知見を得た。このように,剥皮柿を室内に平干して熟成乾燥を達成することができれば,従来製造法の作業負担や,怪我・事故のリスクを一気に解消することができる。
また,剥皮柿を室内に平置きすることが可能となれば,原料柿には紐等に括るためのヘタが不要となるため,剥皮の段階でヘタを切り落とすことができる。ヘタの除去作業においては,原料柿のヘタ周辺が切り落とされるため,原料柿にヘタすきが存在している場合には確実に発見できる。また,剥皮作業においてヘタが除去されるため,完成した干し柿も食べやすくなる。
本発明は,基本的にこのような知見に基づくものである。
以下,本発明の加工工程について,具体的に説明する。
本発明は,干し柿の製造方法に関するものである。
本発明においては,まず,原料柿を剥皮する。
次に,剥皮した原料柿(以下,剥皮柿ともいう)を,通気性を有するメッシュ材の上に載置し,室内において,脱渋,熟成,及び乾燥させる管理工程を行う。メッシュ材としては,網や簀子を採用することができる。
そして,この管理工程においては,剥皮柿を静置した室内が,室内温度30℃〜40℃,室内湿度30%〜60%となり,かつ,剥皮した原料柿に直接当たる風の風速が2m/秒〜7m/秒となるように管理する。
上記工程により干し柿を製造すれば,従来のように屋外での吊り干しにより熟成乾燥を行う干し柿の製造方法ではなく,室内での平干しで熟成乾燥を達成できる新規な干し柿の製造方法を提供できる。すなわち,本発明では,原料柿の脱渋,熟成,及び乾燥を行う工程において,室内の温度を30℃〜40℃,湿度を30%〜60%,風速を2m/秒〜7m/秒に管理することにより,熟成途中の原料柿の表皮が,網や簀子のようなメッシュ材から無傷で剥がれるようになる。このため,本発明によれば,室内での平干しで原料柿の熟成乾燥を達成できるため,従来問題とされていた干し柿製造の作業負担及び,作業時の事故・怪我のリスクを解消することができる。
本発明において,原料柿を剥皮する工程の前に,原料柿からガクと軸を含むヘタを切り落とす工程を含むことが好ましい。
上記工程により,原料柿からヘタを切り落とすことで,食べやすく,かつゴミの少ない干し柿を製造することができる。特に,果肉内に種のない平核無柿を原料とする干し柿では食べ終わりにゴミがほとんど発生しない。また,原料柿からヘタを切り落とすに際し,ヘタすきを有するヘタすき果を確実に発見できるため,干し柿にカビが発生することを防止でき,かつ良品出荷率を向上させることができる(消費者からのクレーム率が低下する)。
本発明において,管理工程は,剥皮した原料柿を室内のメッシュ材の上に載置してから2日〜4日間の脱渋工程と,脱渋工程終了時から2日〜4日間の熟成工程と,乾燥工程終了時から1日〜3日間の乾燥工程を含むことが好ましい。
上記脱渋工程においては,室内の温度を38℃〜40℃とし,湿度を50%〜60%とし,かつ,風速を2m/秒〜3m/秒に管理する。
また,上記熟成工程においては,室内の温度を30℃〜35℃とし,湿度を35%〜45%とし,かつ,風速を6m/秒〜7m/秒に管理する。
さらに,上記乾燥工程においては,室内の温度を30℃〜35℃とし,湿度を30%〜35%とし,かつ,風速を2m/秒〜4m/秒に管理する。
上記工程により,メッシュ材に載置した剥皮柿を,高温多湿の環境において2〜4日程度で一気に脱渋し(脱渋工程),風速6/秒〜7m/秒の強風を剥皮柿に当てながら室温35℃以下湿度45%以下に厳重に管理することで剥皮柿の熟成を促進し(熟成工程),その後,剥皮柿を徐々に乾燥させていく(乾燥工程)。特に,熟成工程においては,熟成中の原料柿表皮が決して粘つかず,網や簀子のようなメッシュ材から無傷で剥がれるように,風速6/秒〜7m/秒の強風を当て続ける。また,熟成工程においては,熟成過程の柔らかい柿にカビが発生することを防止するために,剥皮柿を静置する室内の環境を,室温35℃以下で湿度45%以下とすることを厳守する。これにより,ベタつきが少なく,かつカビの発生が抑制された干し柿を得ることができる。
なお,脱渋工程,熟成工程,及び乾燥工程は,柿の加工処理の説明のために区分したものであり,その工程が原料柿の脱渋,熟成,及び乾燥のいずれの処理を主眼としているかを基準として定義したものである。つまり,原料柿の脱渋,熟成,及び乾燥は,程度の差はあるものの,いずれの工程においても並行的に進行していくものである。
本発明において,メッシュ材は,その周縁部に一定の高さを有するストッパー部材を備えることが好ましい。また,本発明において,原料柿が載置されたメッシュ材には,剥皮した原料柿が載置される側の面の格子点に突起部を設けることとしてもよい。
本発明においては,上述したように,熟成工程において,メッシュ材に載置された原料柿に対して,風速6/秒〜7m/秒の強風を当て続ける。この際,メッシュ材の上に載置された原料柿が風の風力を受けて転がり,結果として,メッシュ材上から落下することが懸念される。そこで,本発明の好ましい形態においては,原料柿を載置するメッシュ材の周縁部にストッパー部材を設けるか,メッシュ材の格子点に突起部を設けることにより,原料柿の落下を防止することができる。また,原料柿を載置するメッシュ材に,ストッパー部材と突起部の両方を設けることとしてもよい。
本発明によれば,従来のように屋外での吊り干しにより熟成乾燥を行うのではなく,室内での平干しで熟成乾燥を達成できる新規な干し柿の製造方法を提供することができる。
また,本発明の好ましい形態によれば,カビの原因となるヘタすきを効果的に発見でき,かつ,干し柿の食べ終わりのゴミが少ない干し柿の製造方法を提供することができる。
図1は,本発明の製造方法の工程を示すブロック図である。 図2は,原料柿の例を示す断面図である。 図3は,原料柿を載置する干棚の例を示す斜視図である。 図4は,原料柿を載置するメッシュ材の好ましい形態を示す斜視図である。 図5は,原料柿の脱渋,熟成,及び乾燥が行われる室内の例を示す図である。
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜修正したものも含む。
なお,本願において,「A〜B」とは,「A以上B以下」であることを意味する。
図1は,本発明に係る干し柿の製造方法の工程の例を示すブロック図である。図1に示されるように,本発明の実施形態は,収穫した原料柿の皮を剥く剥皮工程(ステップS1)と,剥皮された剥皮柿について,殺菌,酸化防止,及び塵芥等除去処理を行う殺菌・酸化防止・塵芥除去処理工程(ステップS2),剥皮柿を室内にて脱渋,熟成,及び乾燥させる管理工程を含む。図1に示されるように,この管理工程は,脱渋工程(S3),熟成工程(S4),及び乾燥工程(S5)を含む。本発明の実施形態は,これらの工程を経て,干し柿を製造する。以下,本発明の実施形態に含まれる各工程について説明する。
(1.剥皮工程)
剥皮工程(ステップS1)は,収穫した原料柿の皮を剥く工程である。また,剥皮工程(ステップS1)においては,原料柿を収穫後,水洗いし,追熟することとしてもよい。干し柿の製造に用いる原料柿としては,干し柿用の公知の柿を用いることができる。例えば,原料柿に用いる柿の種類の例としては,平核無柿,蜂屋柿,西条柿,及び市田柿が挙げられる。
図2は,原料柿の例を示す断面図である。図2(a)は,収穫された原料柿の断面図を示しており,図2(b)は,ヘタが切り落とされ,皮が剥かれた原料柿(剥皮柿)の断面図を示している。剥皮工程(ステップS1)においては,まず,原料柿10から,軸11及びガク12を含むヘタ13が切り落とされる。ヘタ13を切り落とすに際しては,ヘタ13のみをくり抜くこととしてもよいし,図2(b)に示されるように,ヘタ13部分を水平に切り落とすこととしてもよい。また,ヘタ13の切り落としは,包丁等の刃物を使用して人力により行うこととしてもよいし,公知の切断装置を利用して機械的に行うこととしてもよい。
上記のように,まず,原料柿10からヘタ13を切り落とすことにより,ヘタ13と果肉15の間に発生した裂果であるヘタすき16を確実(略100%)発見することができる。ヘタすき果は,裂果部分(ヘタすき16)からカビが発生するという問題があるが,上記方法によれば,干し柿の加工初期段階においてヘタすき果を発見できるため,良品出荷率が向上する。また,干し柿の加工段階で,ヘタ13を切り落とすことにより,干し柿の食後に発生するゴミを最小限とすることができる。また,ヘタ13を切り落とすに際しては,ヘタ13を含む果肉15を水平に切断し,廃棄部17は廃棄することが好ましい。これにより,水平に切断された切断面18には凹凸が生じず,公知である真空皮剥装置の吸引部に効果的に吸着させることができるため,皮剥きの効率が上がる。さらに,ヘタ13を水平に切り落とすことは,非常に容易であるため,剥皮工程(ステップS1)全体にかかる時間を短縮することもできる。
剥皮工程(ステップS1)においては,原料柿10からヘタ13を切り落とした後,例えば公知の真空剥皮装置(図示省略)を用いて,ヘタなしの原料柿10の皮14を剥く。例えば,新空剥皮装置としては,原料柿を吸引する吸引部と,吸引した原料柿の皮を剥く切断刃部を有するものを採用できる。剥皮装置の吸引部に,ヘタなしの原料柿10の切断面18を吸着させ,吸着した原料柿又は切断刃部を回転させることにより,原料柿の剥皮が行われる。また,例えば,原料柿の剥皮は,包丁やピーラのような刃物を使用して,人力により行うことしてもよい。
剥皮工程(ステップS1)においては,例えば,剥皮装置を用いてヘタ13を切り落とした原料柿を剥皮している間(5〜6秒)に,他の原料柿のヘタ13を切り落とす作業を行うことにより(1〜2秒),一人の作業員が,一時間あたり600個〜700個程度の原料柿の剥皮工程(ステップS1)を完了させることができる。従来の製造方法においては,原料柿のヘタを中心として360度丸輪状に皮を剥くことが必要であったため,一人の作業員が,一時間で剥皮工程を完了させることができる個数は,200個程度とされていた。このように,本発明によれば,従来方法の2倍〜3倍程度の作業効率で,原料柿の剥皮を完了させることが可能である。
(2.殺菌・酸化防止・塵芥除去処理工程)
次に,剥皮した剥皮柿10aに,殺菌,酸化防止,及び塵芥除去処理を施す(ステップS2)。剥皮柿10aの殺菌,酸化防止,及び塵芥除去処理については,公知の方法を採用することができる。例えば,剥皮柿10aを,二酸化硫黄で燻蒸することとしてもよいし,熱湯処理を施すこととしてもよい。特に,本発明においては,剥皮柿10aは,熱湯処理を行い殺菌,酸化防止,及び塵芥除去を同時に行うことが好ましい。剥皮柿10aの熱湯処理方法については,例えば,特許3162670号公報や,特開2003−158994号公報に開示されたものを採用することができる。すなわち,本発明の殺菌・酸化防止・塵芥除去処理工程(ステップS2)においては,80℃〜100℃の熱湯に剥皮柿を5秒〜10秒程度浸漬させるか,40℃〜60℃の熱湯に5分〜10分程度浸漬させて熱湯処理を行うこととしてもよい。これにより,肉眼や拡大鏡を介して発見困難であった微細な塵芥についても洗浄できるとともに,剥皮柿の殺菌・酸化防止処理を施すことができる。
(3.管理工程)
管理工程は,剥皮柿を,室内のメッシュ材の上に載置して,脱渋,熟成,及び乾燥するよう管理する工程である。図3には,複数の剥皮柿10aが,室内の干棚20に平置きされた状態の例が示されている。干棚20は,平滑性と通気性を兼備するメッシュ材21を,階層的に備えている。メッシュ材21としては,例えば,細竹や葦を編んで作った簀子や,樹脂,金属,又は繊維を格子状に編み込んだ網状部材,その他公知のメッシュ材を採用できる。また,図3に示されるように,メッシュ材21の上には,複数の剥皮柿10aが載置される。剥皮柿10aをメッシュ材21の上に載置する方法としては,剥皮柿10aの切断面18を上方向に向けて載置することとしてもよいし,剥皮柿10aの切断面18を横方向に向けて載置することとしてもよい。例えば,平核無柿のように横幅が比較的幅広の種類の柿については,切断面18を上方向に向けて載置することにより載置状態が安定する。また,蜂屋柿や,西条柿,市田柿のような横幅が比較的幅狭の種類の柿については,切断面を横方向に向けて載置することにより載置状態が安定する。また,干棚20には,地面接触部に適宜キャリーホイール22を取り付けることが好ましい。干棚20にキャリーホイール22を設け,干棚20の搬送を容易にすることにより,作業員の負担を減らすことができ,かつ一度の多量の剥皮柿10aを搬送することができる。
図4には,メッシュ材21の好ましい態様が示されている。図4(a)には,メッシュ材21の周縁部に一定の高さを有するストッパー部材23が設けられた例が示されている。メッシュ材21にストッパー部材23を設けることにより,メッシュ材21の上に載置された剥皮柿10aが転がってメッシュ材21の周縁部に達したとしても,メッシュ材21から落下する事態を防止できる。ストッパー部材23の高さとしては,例えば,1cm〜6cm,2cm〜5cm,又は3cm〜4cmを採用することができる。ストッパー部材23の高さが1cm未満であると,剥皮柿10aがメッシュ材21から転落する事態を完全に防止できない。また,ストッパー部材23の高さが6cm超過であると,後述するように,剥皮柿10aに対して効率良く送風することができなくなる。このため,ストッパー部材23の高,1cm〜6cmであることが好ましい。
図4(b)には,メッシュ材21の各格子点に突起部24が設けられた例が示されている。複数の突起部24は,特に,メッシュ部材21に剥皮柿10aが載置される側の面に設けられる。メッシュ部材21に複数の突起部24を設けることにより,メッシュ部材21の上に載置された剥皮柿10aが転がることを防止できる。このため,剥皮柿10a同士の間隔を一定間隔に維持することができ,例えば剥皮柿10aの熟成過程において柿同士が接触しくっついてしまう事態を防止できる。突起部24の高としては,例えば0.5mm〜10mm,又は1mm〜5mmのものを採用できる。突起部24は,樹脂製,金属製,又は線維性紐を格子状に編みこんだ際の結び目であってもよいし,メッシュ材21の格子点に樹脂性の塊を固着させたものであってもよい。また,メッシュ材21の格子点に別部材で形成された突起部材を取り付けたものであってもよい。
管理工程においては,剥皮柿10aが静置された室内の環境を,温度30℃〜40℃,湿度30%〜60%,及び剥皮柿10aに直接当たる風の風速が2m/秒7m/秒となるように管理する。管理工程においては,上記環境の室内に,剥皮柿10aを,例えば5日〜11日間静置することが好ましく,6日〜10日間,又は7日〜9日間であってもよいし,8日間であることが特に好ましい。これらの条件から逸脱しないよう,室内の環境を厳重に管理することにより,メッシュ材21に載置して剥皮柿10aの熟成を促進したとしても,表皮がサラサラしてメッシュ材21に結着しない干し柿を得ることができる。
図5は,剥皮柿が静置される室内100の状態の例を示している。室内100には,例えば,剥皮柿10aを載置するための干棚20,室内の温度を管理するためのストーブ30(特に遠赤外線ストーブが好ましい),室内の湿度を管理するための除湿機40及び換気扇50,剥皮柿10aに直接当たる風を発生させるための扇風機60,室内の温度と湿度を測定するための湿温計70,及び剥皮柿10aに直接当たる風の風速を測定するための風速計80が備えられている。ただし,これらの装置は例であり,室内の温度,湿度,及び風速を調節管理できる装置であれば,公知となっている種々の装置を適宜採用することができる。
ここで,管理工程(ステップS3)においては,基本的に,脱渋,熟成,及び乾燥が並列的に進行するものの,その主眼とする処理に基づいて,脱渋工程(ステップS3),熟成工程(ステップS4),及び乾燥工程(ステップS5)に区分することができる。
(3−1.脱渋工程)
脱渋工程(ステップS3)は,剥皮柿10aをメッシュ材21の上に載置してから2日〜4日程度の期間において,剥皮柿10aの脱渋を急速に進行させることを目的とした工程である。脱渋工程(ステップS3)は,3日間であることが特に好ましい。脱渋工程(ステップS3)においては,剥皮柿10aの脱渋を一気に済ませるために,室内環境を,高温,多湿,かつ弱風に設定する。例えば,脱渋工程(ステップS3)においては,室内の温度を38℃〜40℃,湿度を50%〜60%,剥皮柿10aに直接当たる風の風速を2m/秒〜3m/秒となるように管理することが好ましい。
(3−2.熟成工程)
熟成工程(ステップS4)は,脱渋工程(ステップS3)の終了時から2日〜4日程度の期間において,剥皮柿10aの表皮がメッシュ材21に結着することを防ぎ,かつカビの発生を防止しながら,剥皮柿10aの熟成を促進することを目的とした工程である。熟成工程(ステップS4)は,3日間であることが特に好ましい。熟成工程(ステップS4)においては,剥皮柿10aの表皮の結着とカビの発生を防止するために,室内環境を,やや高温,やや少湿,かつ強風に設定する。具体的に,熟成工程(ステップS4)においては,室内の温度を35℃以下,湿度を45%以下に厳守しなければならない。例えば,室内の温度を30℃〜35℃とし,湿度を35%〜45%とし,かつ風速を6m〜7mの強風に設定することが好ましい。
(3−3.乾燥工程)
乾燥工程(ステップS5)は,熟成工程(ステップS4)の終了時から1日〜3日程度の期間において,熟成した剥皮柿10aの仕上げ乾燥を行うことを目的とした工程である。乾燥工程(ステップS5)は,2日間であることが特に好ましい。乾燥工程(ステップS5)においては,剥皮柿10aの仕上げ乾燥を行うために,室内環境を,やや高温,少湿,かつ中風に設定する。例えば,乾燥工程(ステップS4)においては,室内の温度を30℃〜35℃,湿度を30%〜35%とし,風速を2m/秒〜4m/秒に管理することが好ましい。
上記脱渋工程(ステップS3),熟成工程(ステップS4),及び乾燥工程(ステップS5)を経て,原料柿が脱渋,熟成,及び乾燥されて干し柿が製造される。本発明の製造方法では,上述したように,最短で5日,最長でも11日程度の期間で,干し柿の脱渋,熟成,及び乾燥を完了させることができる。一方,従来の一般的な干し柿の製造方法では,原料柿を室外に吊り干しして30日程度の期間をかけて脱渋と熟成を行い,その後ばんじゅう等に収納し,更に室内に吊り干しして熟成促進と乾燥を行っていた。このため,従来の製法においては,干し柿の脱渋,熟成,及び乾燥が30日〜40日程度の期間をかけて行われていた。この点,本発明によれば,従来製法と比較し,1/8〜1/3程度の期間で,干し柿の脱渋,熟成,及び乾燥を完了することができるため,干し柿の早期出荷を実現することが可能となる。
(4.その他出荷工程)
本発明においては,上記管理工程を室内にて行うため,製造された干し柿の選果,袋詰・包装,及び検査を,引き続き,当該室内にて行うことができる。本発明によれば,遠赤外線ヒータで温めた室内乾燥室で,選果,袋詰・包装,及び検査を順次行うため,製造された干し柿のベタつき感がなく,作業効率が非常に高くなる。選果,袋詰・包装,及び検査を経た干し柿は,順次出荷される。一般的に,干し柿の良品出荷率は85%前後とされているが,本発明においては,剥皮工程(ステップS1)において,原料柿のヘタを切り落とし,ヘタすき果を発見する作業を行っているため,良品出荷率を98%以上にまで高めることができる。
以下,表1を参照して,本発明の製造方法の実施例について説明する。
Figure 2013042752
上記表1は,本発明の管理工程の実施例を示している。本実施例においては,原料柿として,平核無柿を使用した。平核無柿については,管理工程の前に,ヘタが切り落し,剥皮を行った。平核無柿,剥皮後の重さが,230g〜250gであった。また,1つのメッシュ材に載置する原料柿の個数は,200個であった。また,本実施例においては,平成22年11月8日に干し柿の加工を開始し,15日に加工が終了した。
表1に示されるように,原料柿をメッシュ材に載置してから3日間を脱渋工程とした。また,脱渋工程終了後,3日間を熟成工程とした。さらに,熟成工程終了後,2日間を乾燥工程とした。従って,本実施例では,計8日間で,原料柿の脱渋,熟成,及び乾燥の処理を達成することができた。
本実施例において,室内に配置された干棚の台数は2台であった。また,各工程において,室内温度を管理するために,大型の遠赤外線ストーブを1台使用した。また,室内湿度を管理するために,大型の除湿機を1台と,換気扇を2台使用した。さらに,原料柿に直接当たる風の風速を管理するために,大型の扇風機を2台使用した。
表1に示されるように,脱渋工程においては,室内温度を,40℃で一定に維持した。また,室内湿度を,一日目が60%,二日目が55%,及び三日目が50%となるよう管理した。また,風速は,2m/秒を維持した。
また,熟成工程においては,室内温度を,一日目が35℃,二日目が30℃,及び三日目が30℃となるように管理した。室内湿度は,一日目が45%,二日目が40%,及び三日目が35%となるように管理した。また,風速は,7m/秒の強風を維持した。
さらに,乾燥工程においては,室内温度を,30℃に維持した。また,室内湿度は,一日目が32%,及び二日目が30%となるように管理した。また,風速は,一日目が4m/秒であり,二日目が2m/秒となるように管理した。
このようにして加工された干し柿は,80g〜90gであった。また,選果及び検査工程を通過した干し柿の良品出荷率は,98%であった。
以上のように,本発明の実施例では,8日程度という短期間で,良品率が極めて高い干し柿を製造することができた。
本発明は,干し柿の製造方法に関する。従って,本発明は,干し柿の生産加工産業において好適に利用し得る。
10 原料柿
10a 剥皮柿
11 軸
12 ガク
13 ヘタ
14 皮
15 果肉
16 ヘタすき
17 廃棄部
18 切断面
20 干棚
21 メッシュ材
22 キャリーホイール
23 ストッパー部材
24 突起部
30 ストーブ
40 除湿機
50 換気扇
60 扇風機
70 湿温計
80 風速計
100 室内

Claims (5)

  1. 原料柿を剥皮する工程と,
    前記剥皮した原料柿を,メッシュ材の上に載置して,室内で,脱渋,熟成,及び乾燥させる管理工程を含み,
    前記管理工程は,前記室内の温度が30℃〜40℃,湿度が30%〜60%,及び前記剥皮した原料柿に直接当たる風の風速が2m/秒〜7m/秒となるように管理する工程である
    干し柿の製造方法。
  2. 前記原料柿を剥皮する工程の前に,
    前記原料柿からガクと軸を含むヘタを切り落とす工程を含む
    請求項1に記載の干し柿の製造方法。
  3. 前記管理工程は,前記剥皮した原料柿を前記室内のメッシュ材の上に載置してから2日〜4日間の脱渋工程と,前記脱渋工程終了時から2日〜4日間の熟成工程と,前記乾燥工程終了時から1日〜3日間の乾燥工程を含み,
    前記脱渋工程においては,
    前記温度を38℃〜40℃,前記湿度を50%〜60%,及び前記風速を2m/秒〜3m/秒に管理し,
    前記熟成工程においては,
    前記温度を30℃〜35℃,前記湿度を35%〜45%,及び前記風速を6m/秒〜7m/秒に管理し,
    前記乾燥工程においては,
    前記温度を30℃〜35℃,前記湿度を30%〜35%,及び前記風速を2m/秒〜4m/秒に管理する
    請求項1又は請求項2に記載の干し柿の製造方法。
  4. 前記メッシュ材は,その周縁部に,一定の高さを有するストッパー部材を備える
    請求項1から請求項3のいずれかに記載の干し柿の製造方法
  5. 前記メッシュ材は,前記剥皮した原料柿が載置される側の面の格子点に,突起部を有する
    請求項1から請求項4のいずれかに記載の干し柿の製造方法。
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