JP2013031667A - ストレッチ補助クッション - Google Patents
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Abstract
【課題】骨盤を十分に前傾させた適切で効果的な開脚ストレッチを行なうことができ、かつ製造コストが低く、取り扱い易いストレッチ補助クッションを提供する。
【解決手段】股関節周辺のストレッチを含む各種ストレッチに用いるクッション2であって、直接またはカバー部材8を介してクッション2の座面10を構成する上面8aを備えた、弾性材料からなる上側部材4と、上側部材4の下側に配置され、直接またはカバー部材8を介してクッションの底面12を構成する下面8aを備えた、上側部材4よりも硬い材料からなる下側部材6と、を含み、底面12が床面に接するようにクッション2を設置したとき、座面10が床面に対して所定の傾斜角θを有し、かつ、下側部材6によって、床面に対して傾斜角θを有する座面10の最下点と床面との間に所定の距離Hが確保されるストレッチ補助クッション2を提供する。
【選択図】図1
【解決手段】股関節周辺のストレッチを含む各種ストレッチに用いるクッション2であって、直接またはカバー部材8を介してクッション2の座面10を構成する上面8aを備えた、弾性材料からなる上側部材4と、上側部材4の下側に配置され、直接またはカバー部材8を介してクッションの底面12を構成する下面8aを備えた、上側部材4よりも硬い材料からなる下側部材6と、を含み、底面12が床面に接するようにクッション2を設置したとき、座面10が床面に対して所定の傾斜角θを有し、かつ、下側部材6によって、床面に対して傾斜角θを有する座面10の最下点と床面との間に所定の距離Hが確保されるストレッチ補助クッション2を提供する。
【選択図】図1
Description
本発明は、各種ストレッチを行なうときに用いるクッションであって、特に、股関節周辺のストレッチを行なうのに適したストレッチ補助クッションに関する。
健康志向ブームを反映して、現在、スポーツクラブ、トレーニングジム、または家の中で、各種ストレッチを行なうことが広く普及している。その中でも、特に、老化防止にも有効であって、股関節周辺の柔軟性強化に適した、開脚による股関節周辺のストレッチが広く行なわれている。
この開脚による股関節周辺のストレッチを、床の上や従来の平坦なストレッチ用マット/クッションの上で行なう場合には、骨盤が後傾し易く、背面部に負担がかかって脊椎が曲がるため、適切なストレッチが行なえないのが実情である。特に、これは体の硬い人や年配者にとっては深刻な問題となっている。
一方、ストレッチ用の器具ではないが、椅子の座面に設置して、座った人の骨盤を前傾位置に保つ腰椎座位簡易矯正具が提案されており(例えば、特許文献1参照)、上述のようなストレッチ時の骨盤後傾の問題に対処するため、例えば、特許文献1に記載の腰椎座位簡易矯正具を用いて、ストレッチを行なうことが考えられる。
特許文献1に記載の腰椎座位簡易矯正具は、楔形をした傾斜面を有するほぼ棒状の本体部から構成され、この腰椎座位簡易矯正具を椅子の座面においてその上に座ることにより、矯正具の傾斜角によって骨盤を前傾させることができる。しかし、この矯正具を床面に置いて、開脚による股関節周辺のストレッチを行なう場合、下記の理由にて、適正な開脚ストレッチを行なうとはできないと考えられる。
もし、特許文献1に記載の腰椎座位簡易矯正具を床面に置いて、開脚ストレッチを行なう場合には、座面と床面との間の距離が非常に僅かであり、特に、傾斜した座面の先端部は床面と同じほぼ高さになるので、使用者の骨盤を十分に前傾させることができず、適切で効果的な開脚ストレッチを行なうことは困難である。
一方、床面からの座面の高さを確保するため、この腰椎座位簡易矯正具を平坦なストレッチ用マット/クッションの上に置いてストレッチを行なうことも考えられるが、下に置いたストレッチ用マット/クッションは柔らかいため、座面が傾いて不安定になり、骨盤を十分に前傾させるような傾斜角を保つことができない。また、ストレッチ中に腰椎座位簡易矯正具が、下のストレッチ用マット/クッションに対して位置ずれを起こし、ストレッチを継続することが困難になる。
従って、本発明の目的は、上述の問題を解決して、骨盤を十分に前傾させた適切で効果的な開脚ストレッチを行なうことができ、かつ製造コストが低く、取り扱い易いストレッチ補助クッションを提供することにある。
上述の課題を解決するため、本発明のストレッチ補助クッションの1つの実施態様は、股関節周辺のストレッチを含む各種ストレッチに用いるクッションであって、直接またはカバー部材を介してクッションの座面を構成する上面を備えた、弾性材料からなる上側部材と、前記上側部材の下側に配置され、直接またはカバー部材を介してクッションの底面を構成する下面を備えた、前記上側部材よりも硬い材料からなる下側部材と、を含み、前記底面が床面に接するように前記クッションを設置したとき、前記座面が前記床面に対して所定の傾斜角を有し、かつ、前記下側部材によって、前記床面に対して前記所定の傾斜角を有する前記座面の最下点と前記床面との間に所定の距離が確保されるストレッチ補助クッションである。
ここで、「座面」とは、ストレッチを行なう者(以下、「使用者」という)が座る面、つまり使用者の臀部が載る面をいう。「底面」とは、ストレッチ補助クッションを用いる場合に、床面と接する面である。
また、「直接またはカバー部材を介してクッションの座面を構成する上面」とは、上側部材がカバー部材に覆われていない場合には、上側部材の上面自体が座面となり、上側部材がカバー部材に覆われている場合には、上側部材の上面を覆うカバー部材が座面となることを意味する。同様に、「直接またはカバー部材を介してクッションの底面を構成する下面」とは、下側部材がカバー部材に覆われていない場合には、下側部材の下面自体が底面となり、下側部材がカバー部材に覆われている場合には、下側部材の下面を覆うカバー部材が底面となることを意味する。
上側部材及び下側部材の形状としては、例えば、上側部材が、所定の傾斜角を有する楔形の形状を有し、下側部材が平坦な形状(例えば、矩形)を有することが考えられる。また、その他、上側部材を平坦な形状(例えば、矩形)を有し、下側部材が、所定の傾斜角を有する楔形を有するようにすることもできるし、上側部材及び下側部材の両方が、傾斜角を有するようにすることもできる。
本実施態様によれば、座面が床面に対して所定の傾斜角を有するので、座面に座った使用者の骨盤を前傾させることができ、かつ、座面の最下点と床面との間に所定の距離が確保されているので、使用者が座面のどの位置に座っても、適切な床からの座面の高さを得ることができ、適切で効果的なストレッチを行なうことができる。また、下側部材が上側部材よりも硬い材料からなるので、座面がぐらつくことがなく、クッションの安定性を確保することができる。
更に、本実施態様はシンプルな構造を有するので、製造コストも低く、軽量で取り扱い易いストレッチ補助クッションを提供することができる。
本発明のストレッチ補助クッションのその他の実施態様は、前記所定の傾斜角が15°〜25°の範囲にあるストレッチ補助クッションである。
本実施形態のように、傾斜角を15°〜25°の範囲に設定することによって、臀部が座面を滑り落ちる恐れが少なく、かつ骨盤を十分に前傾させることができるので、適切で効果的な股関節周辺のストレッチを行なうことができる。
本発明のストレッチ補助クッションのその他の実施態様は、前記上側部材が、JISK6400−2に基づく200N〜500Nの範囲の硬度を有するストレッチ補助クッションである。
本実施形態では、上側部材が、JISK6400−2に基づく200N〜500Nの範囲の硬度を有するので、使用者が座面に座ったとき、座面が沈み込み過ぎることなく、かつ臀部が座面を滑り落ちる恐れが少ないストレッチ補助クッションを提供することができる。
本発明のストレッチ補助クッションのその他の実施態様は、前記上側部材が、JISK6400−2に基づく350N〜450Nの範囲の硬度を有するストレッチ補助クッションである。
本実施形態では、上側部材が、JISK6400−2に基づく350N〜450Nの範囲の硬度を有するので、座面の沈み込み及び座面からの滑り落ちの観点において、幅広い使用者に適したストレッチ補助クッションを提供することができる。
本発明のストレッチ補助クッションのその他の実施態様は、前記床面に対して前記所定の傾斜角を有する前記座面の最下点と前記床面との間の距離が、5mm〜100mmの範囲にあるストレッチ補助クッションである。
本実施態様においては、前記座面の最下点と前記床面との間の距離が、5mm〜100mmの範囲にあるので、使用者が座面の最下点近傍に座ってストレッチを行なった場合でも、適切で効果的なストレッチを行なうことができる。
本発明のストレッチ補助クッションのその他の実施態様は、前記上側部材が、ポリウレタン、ゴム類、ポリエチレン、ポリプロピレンを含む合成樹脂の発泡体または軟質発泡材からなるストレッチ補助クッションである。
本実施態様のような材料を用いることによって、軽量で適切な弾性を有する上側部材を低い製造コストで得ることができる。
本発明のストレッチ補助クッションのその他の実施態様は、前記上側部材が、JIS K6400−3に基づく20%〜60%の範囲の反発弾性を有するストレッチ補助クッションである。
上側部材が、本実施形態に示すような反発弾性を有することによって、使用者が座面に座ったとき、座面が沈み込み過ぎることなく、かつ臀部が座面を滑り落ちる恐れが少ないストレッチ補助クッションを提供することができる。
本発明のストレッチ補助クッションのその他の実施態様は、前記上側部材が、長方形または正方形の平面形状、及び三角または台形の側面形状を有し、前記下側部材が、長方形または正方形の平面形状、及び長方形の側面形状を有するストレッチ補助クッションである。
本実施態様によれば、適切な形状の上側部材と下側部材とを組み合わせることによって、ストレッチ効果の高いストレッチ補助クッションを低い製造コストで提供することができる。
本発明のストレッチ補助クッションのその他の実施態様は、前記底面が床面に接するように前記クッションを設置したとき、前記座面の最上部が前記クッションの後端部に位置する場合と、前記座面の最上部が前記クッションの後端部よりも手前に位置する場合とがあるストレッチ補助クッションである。
本発明のストレッチ補助クッションクッションを用いてストレッチを行なう場合、使用者は、傾斜した座面の高さが高い方向を背にして座ることになるが、クッションの「後端部」とは、ストレッチを行なう使用者の背中側のクッション端部を意味する。本実施態様では、傾斜した座面の最上部がクッションの後端部に位置する場合と、クッションの後端部よりも手前に位置する場合とがある。座面の最上部がクッションの後端部に位置する場合には、形状もシンプルであり、座面の高さを高く取ることができる。しかし、クッションの前後の寸法が小さい場合には、使用者が座面の最上部に座ったときに、後ろにひっくり返る恐れがある。このような場合には、座面の最上部の位置をクッションの後端部よりも手前にすることによって、後ろにひっくり返ることを防止することができる。従って、本実施態様では、クッションの大きさや使用状況に応じて、最適な形状を選択することができる。
本発明のストレッチ補助クッションのその他の実施態様は、平面形状において、縦300mm〜500mm及び横300mm〜500mmの寸法を有するストレッチ補助クッションである。
本実施態様によれば、使用者にとって、扱い易く、軽量で、保管が容易なストレッチ補助クッションを提供することができる。
本発明のストレッチ補助クッションのその他の実施態様は、前記座面及び/または前記底面に、摩擦係数を増加させるための処理が施されているストレッチ補助クッションである。
本実施態様によれば、座面及び/または底面に、摩擦係数を増加させるための処理が施されているので、臀部が座面を滑り落ちる恐れを感じずに、適切で効果的なストレッチを行なうことができる。
本発明のストレッチ補助クッションのその他の実施態様は、前記底面が前記床面に接するように前記クッションを設置したとき、前記床面に対して前記所定の傾斜角を有する前記座面の各領域に同一の荷重をかけたとき、前記床面からより高い領域の沈み込み量が、より低い領域の沈み込み量よりも大きいストレッチ補助クッションである。
使用者が、所定の傾斜角の付いた座面の最下点近傍に座ったときには、座面と床面との間の距離が比較的小さいので、座ったときの沈み込み量が大きいと、座面が低すぎでストレッチが困難であると感じ易い。一方、使用者が、所定の傾斜角の付いた座面の最高点近傍に座ったときには、座面と床面との間の距離が比較的大きいので、沈み込み量が少ないと、臀部が傾斜した座面を滑り落ちる恐れを感じ易い。
従って、本実施形態のように、座面の床面からより高い領域の沈み込み量が、より低い領域の沈み込み量よりも大きいようにすることによって、使用者の感覚に適合した取り扱い易いストレッチ補助クッションを提供することができる。
本発明のストレッチ補助クッションのその他の実施態様は、同一の荷重をかけたときの前記座面の各領域の沈み込み量が、前記床面からの高さの変化量に対して概略比例して変化するストレッチ補助クッションである。
本実施態様によれば、座面の各領域の沈み込み量が、床面からの高さの変化量に対して概略比例して変化するので、使用者の感覚により適合した取り扱い易いストレッチ補助クッションを提供することができる。また、本実施態様は、例えば、上側部材を楔形に形成し、下側部材を矩形に形成することによって実現することができるので、製造コストの低いシンプルな構造で実現することができる。
本発明のストレッチ補助クッションのその他の実施態様は、前記上側部材が、前記床面に対して前記所定の傾斜角を有する前記座面の最上点近傍に座ったとき、前記座面の沈み込み量が10mm〜30mmとなる程度の硬度を有するストレッチ補助クッション。
本実施態様にように、座面の最上点近傍に座ったとき、座面の沈み込み量が10mm〜30mmとなるような硬度を有することによって、座面が沈み込み過ぎず、かつ臀部が座面を滑り落ちる恐れが少ないストレッチ補助クッションを提供することができる。
本発明のストレッチ補助クッションのその他の実施態様は、使用者の身長をLとすると、前記床面に対して前記所定の傾斜角を有する前記座面の最下点と前記床面との間の距離が、0.4×L×Sin3°〜0.5×L×Sin6°の範囲にあるストレッチ補助クッション。
本実施態様では、前記座面の最下点と前記床面との間の距離を、使用者の体格に応じて定めることによって、様々な体格の使用者が座面の最下点近傍に座ってストレッチを行なった場合でも、適切で効果的なストレッチを行なうことができる。
本発明のストレッチ補助クッションのその他の実施態様は、前記クッションの硬度を変更する手段を備えたストレッチ補助クッションである。
ここで、「クッションの硬度を変更する手段」としては、例えば、後述するように、中空構造にして、内部に空気等を充填させる方法も考えられるし、その他、温度等のパラメータの変化によって、硬化状態が変わるゲル状の物質を内部に充填させることも考えられる。また、その他のあらゆる硬度変更手段を用いることができる。
本実施態様においては、クッションの硬度を変更する手段を備えているので、使用者の体格や用途に応じて、最適な硬度を有するストレッチ補助クッションを提供することができる。
本発明のストレッチ補助クッションのその他の実施態様は、前記上側部材及び/または前記下側部材の内部に空気が充填され、充填する空気圧を調整して前記クッションの硬度を変更可能なストレッチ補助クッションである。
本実施態様では、クッションの上側部材及び下側部材の一方または両方の内部を中空構造にして、その内部に空気を充填させ、その内部圧力を調整することによって、硬度を変更することができる。なお、本実施態様では空気を充填させているが、これに限られるものではなく、不活性ガスや液体等のその他の流体を充填することも考えられる。
本発明のストレッチ補助クッションのその他の実施態様は、前記上側部材及び/または前記下側部材の内部に更に合成樹脂の発泡体が備えられ、内部に充填された空気及び該発泡体の組み合わせにより前記クッションの硬度を変更可能なストレッチ補助クッションである。
本実施態様では、空気及び発泡体を組み合わせることにより、使用者が快適にストレッチを行なうことができる硬度を有し、かつ、個々の使用者または使用状況に合わせて硬度を調整することができるストレッチ補助クッションを提供することができる。
本発明のストレッチ補助クッションのその他の実施態様は、前記床面に対して前記所定の傾斜角を有する前記座面の最下点と前記床面との間の距離を変更する手段を備えたストレッチ補助クッションである。
ここで、「座面の最下点と床面との間の距離を変更する手段」としては、例えば、高さ調整用の部材を、ストレッチ補助クッションの底面に着脱可能に取り付けられるようにすることが考えられる。また、その他、下側部材の内部を中空構造にして、その内部に充填する流体の量を調整することによって、高さを変更することも考えられし、機械的に高さを変更する機構を備えることも考えられる。更に、その他のあらゆる高さ変更手段を用いることができる。
本実施形態では、傾斜した座面の最下点と床面との間の距離を変更する手段を備えているので、使用者の体格や体の硬さに応じて調整することによって、常に適切な座面の高さを確保することができる。
以上のように、本発明のストレッチ補助クッションにおいては、座面が床面に対して所定の傾斜角を有するので、座面に座った使用者の骨盤を前傾させることができ、かつ、座面の最下点と床面との間に所定の距離が確保されているので、使用者が座面のどの位置に座っても、適切な床からの座面の高さを得ることができ、適切で効果的なストレッチを行なうことができる。また、下側部材が上側部材よりも硬い材料からなるので、座面がぐらつくことがなく、クッションの安定性を確保することができる。
更に、本実施態様はシンプルな構造を有するので、製造コストも低く、軽量で取り扱い易いストレッチ補助クッションを提供することができる。
また、座面の床面からより高い領域の沈み込み量が、より低い領域の沈み込み量よりも大きいようにすることによって、使用者の感覚に適合した取り扱い易いストレッチ補助クッションを提供することができる。
更に、上側部材が適切な硬度を有することによって、座面が沈み込み過ぎず、かつ臀部が座面を滑り落ちる恐れが少ないストレッチ補助クッションを提供することができる。
本発明のストレッチ補助クッションの実施形態について、以下に図面を用いながら詳細に説明する。
(ストレッチ補助クッション全体の説明)
まず、本発明のストレッチ補助クッションの1つの実施形態について、その全体構造を説明する。図1は、本発明のストレッチ補助クッションの1つの実施形態の概要を示す斜視図である。また、図2(a)は、図1の矢印Cから見た横側からの側面図であり、図2(b)は、図1の矢印Dから見た前側からの側面図である。また、図3は、図1の矢印Eから見た側面断面図である。
まず、本発明のストレッチ補助クッションの1つの実施形態について、その全体構造を説明する。図1は、本発明のストレッチ補助クッションの1つの実施形態の概要を示す斜視図である。また、図2(a)は、図1の矢印Cから見た横側からの側面図であり、図2(b)は、図1の矢印Dから見た前側からの側面図である。また、図3は、図1の矢印Eから見た側面断面図である。
本実施形態のストレッチ補助クッション2は、上面4aを備えた楔形の形状を有する上側部材4と、上側部材4の下側に配置され、下面6aを備えた矩形の形状を有する下側部材6と、上側部材4及び下側部材6の外側を覆うカバー部材8と、から主に構成される。また、上側部材4は弾性を有する材料からなり、一方、下側部材6は、上側部材4よりも硬い材料からなる。また、本実施形態では、接触面4b及び接触面6b(図3参照)を介して、上側部材4と下側部材6とが接合されている。
カバー部材8の上面4aを覆う部分を上面カバー8aといい、使用時においては、使用者がその上に座る、つまり使用者の臀部と接触するクッションの座面10を構成する。また、カバー部材8の下面6aを覆う部分を下面カバー8bといい、使用時においては、床面と接する接触するクッションの底面12を構成する。
カバー部材8の上面4aを覆う部分を上面カバー8aといい、使用時においては、使用者がその上に座る、つまり使用者の臀部と接触するクッションの座面10を構成する。また、カバー部材8の下面6aを覆う部分を下面カバー8bといい、使用時においては、床面と接する接触するクッションの底面12を構成する。
図1〜図3に示す実施形態では、上側部材4と下側部材6とがカバー部材8で覆われているが、これに限られるものではなく、カバー部材8を備えずに、上側部材4及び下側部材6が、直接使用者の臀部や床面に接する実施形態も考えられる。従って、以下の説明においては、カバー部材8の有無にかかわらず、使用者の臀部と接する面(上側部材4の上面4aまたは上面カバー8a)をクッションの座面10といい、床面と接する面(下側部材6の下面6aまたは下面カバー8b)をクッションの底面12という。
なお、カバー部材8の厚みは非常に薄いので、以下の説明においては、カバー部材8の厚みは考慮せずに、上側部材4及び下側部材6の寸法、または両寸法を加算した値をもって、ストレッチ補助クッション全体の寸法とする。
図1〜図3に示すストレッチ補助クッション2の主要寸法に関しては、縦寸法Aが400mm、横寸法Bが400mm、そして、床面に対して傾斜角を有する座面10の最下点高さHが50mmである。なお、縦寸法A及び横寸法Bに関しては、用途に応じて任意の寸法を用いることができるが、標準的な使用者の体格、ストレッチ補助クッションの持ち運び易さ、保管のし易さ等を考慮すると、縦寸法Aが300mm〜500mm、横寸法Bが300mm〜500mmの範囲となる寸法が好ましいといえる。例えば、子供、青少年、女性向けのストレッチ補助クッションとして、縦寸法Aが325mmで横寸法Bが300mmのクッションを例示することができる。
また、使用者や使用状況に応じて、座面の最下点高さHの下限として、5mm以上、15mm以上、または30mm以上が好ましいと考えられる場合があり、座面の最下点高さHの上限として、100mm以下、150mm以下、または200mm以下が好ましいと考えられる場合がある。この好ましい座面の最下点高さHについては、以下に詳細に説明する。
また、座面10には傾斜角θが付けられており、図1〜図3に示す実施形態の傾斜角θは20°である。よって、底面12が床面に接するようにストレッチ補助クッション2を設置すると、座面10の床面からの高さは、図2(a)で紙面右側(以下、「先端側」という)の座面の最下点で50mm(=H)であり、図2(a)で図面左側(以下、「後端側」という)の座面の最上点で約200mm(=50mm+400mm×tan20°)である。従って、本実施形態では、座面10は、最下点であっても床面から所定の高さが確保されている。なお、好ましい傾斜角θについては、以下に詳細に説明する。
なお、図1〜図3に示す実施形態では、上側部材及び下側部材の平面形状が正方形であるが、長方形も好ましい。また、図1〜図3に示す実施形態では、上側部材の側面形状が三角形であるが、台形も好ましい。更に、図1〜図3に示す実施形態では、下側部材の側面形状が長方形であるが、傾斜角の付いた三角形や台形でもよい。
<上面側部材4の説明>
次に、上側部材4について、更に詳細に説明する。上側部材4は弾性を有する材料からなり、具体的には、図1〜図3に示す実施形態では、ポリウレタン発泡体が用いられている。ただし、上側部材4の材料はこれに限られるものではなく、その他、ゴム類、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂の発泡体または軟質発泡材を用いることができる。なお、弾性を有する上側部材4の硬度については、以下に詳細に説明する。
次に、上側部材4について、更に詳細に説明する。上側部材4は弾性を有する材料からなり、具体的には、図1〜図3に示す実施形態では、ポリウレタン発泡体が用いられている。ただし、上側部材4の材料はこれに限られるものではなく、その他、ゴム類、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂の発泡体または軟質発泡材を用いることができる。なお、弾性を有する上側部材4の硬度については、以下に詳細に説明する。
<底面側部材6の説明>
次に、下側部材6について、更に詳細に説明する。下側部材6は上側部材4よりも高い硬度を有する材料からなり、具体的な材料としては、図1〜図3に示す実施形態では、ポリエチレン発泡体が用いられている。なお、下側部材6の材料はこれに限られるものではなく、その他、上側部材4と同様に、ポリウレタン、ゴム類、ポリプロピレン等の合成樹脂発泡体や、チップウレタンを用いることができる。更に、木材、プラスチック、金属等を用いることも可能である。
次に、下側部材6について、更に詳細に説明する。下側部材6は上側部材4よりも高い硬度を有する材料からなり、具体的な材料としては、図1〜図3に示す実施形態では、ポリエチレン発泡体が用いられている。なお、下側部材6の材料はこれに限られるものではなく、その他、上側部材4と同様に、ポリウレタン、ゴム類、ポリプロピレン等の合成樹脂発泡体や、チップウレタンを用いることができる。更に、木材、プラスチック、金属等を用いることも可能である。
また、下側部材6の材料の硬度としては、上側部材4より硬ければ、幅広い範囲の硬度を適用することができるが、特に、使用者が座ったときの変形量が、極めて小さい硬度が好ましい。この上側部材4よりも硬い下側部材6によって、座ったときの荷重が分散され易く、ストレッチ補助クッション2に座ってストレッチを行なったときのクッションの安定性を確保することができる。
<上側部材4と下側部材6との接合方法の説明>
図1〜図3に示す実施形態では、図3に示すように、上側部材4と下側部材6とが、接合面4b及び接合面6bを介して接合され、具体的には、接着剤によって接合されている。ただし、上側部材4と下側部材6との接合方法はこれに限られるものではなく、例えば、弾性を有する上側部材4を、硬度のより高い下側部材6にはめ込むことによって接合することも考えられ、その他のあらゆる接合方法を用いることができる。
図1〜図3に示す実施形態では、図3に示すように、上側部材4と下側部材6とが、接合面4b及び接合面6bを介して接合され、具体的には、接着剤によって接合されている。ただし、上側部材4と下側部材6との接合方法はこれに限られるものではなく、例えば、弾性を有する上側部材4を、硬度のより高い下側部材6にはめ込むことによって接合することも考えられ、その他のあらゆる接合方法を用いることができる。
更に、カバー部材8の強度が許される場合には、上側部材4及び下側部材6は特別に接合せず、カバー部材8の強度によって、接合面4b及び接合面6bの接触状態を保つことも考えられる。
<カバー部材8の説明>
次に、カバー部材8について、更に詳細に説明する。カバー部材8の材料としては、図1〜図3に示す実施形態では、合成皮革が用いられている。ただし、カバー部材8の材料はこれに限られるものではなく、その他、天然皮革、合成樹脂、天然繊維、合成繊維等を用いることもできる。
次に、カバー部材8について、更に詳細に説明する。カバー部材8の材料としては、図1〜図3に示す実施形態では、合成皮革が用いられている。ただし、カバー部材8の材料はこれに限られるものではなく、その他、天然皮革、合成樹脂、天然繊維、合成繊維等を用いることもできる。
また、カバー部材8の各面のうち、特に上面カバー8a及び下面カバー8bについては、使用者の臀部または床面との滑りを防止するため、摩擦係数を増す処理が施されている。図1〜図3に示す実施形態では、上面カバー8aには、粗面化処理、または細かい凹凸処理が施されており、上面カバー8aと使用者の臀部との間に、十分な摩擦力が生じるようになっている。同様に、カバー部材8の底面カバー8bにも、粗面化処理、または細かい凹凸処理が施されており、底面カバー8bと床面との間に、十分な摩擦力が生じるようになっている。なお、カバー部材8の表面の摩擦係数を高める手段はこれに限られず、摩擦係数を高めるあらゆる手段を用いることができる。
(座面の傾斜角θについての説明)
次に、本発明のストレッチ補助クッション2の座面10に付けられた傾斜角θについて、図4を参照しながら詳細に説明する。ここで、図4(a)は、床面に座って、または平坦なストレッチ用マット/クッションの上に座って、開脚ストレッチを行なうところを模式的に表した図である。一方、図4(b)は、本発明のストレッチ補助クッション2に座って、開脚ストレッチを行なうところを模式的に表した図である。
次に、本発明のストレッチ補助クッション2の座面10に付けられた傾斜角θについて、図4を参照しながら詳細に説明する。ここで、図4(a)は、床面に座って、または平坦なストレッチ用マット/クッションの上に座って、開脚ストレッチを行なうところを模式的に表した図である。一方、図4(b)は、本発明のストレッチ補助クッション2に座って、開脚ストレッチを行なうところを模式的に表した図である。
床面または平坦なマット/クッションの上に座って開脚ストレッチを行なう場合には、図4(a)の矢印Fに示すように、骨盤が後傾し、つまり骨盤の角度が床面に対して90度を超える体勢になるので、背面部に負担がかかって脊柱が曲がるため、満足のいく股関節周辺のストレッチを行なうことが困難である。
一方、本発明のストレッチ補助クッション2に座って開脚ストレッチを行なう場合には、図4(b)に示すように、重力による使用者の垂直方向の荷重Wは、座面10に沿った(つまり、傾斜角θに沿った)分力W1と、座面10に垂直な分力W2とに分解することができる。また、分力W1は、水平方向(床面と水平な方向)の分力W1hを含む。
これを数式で表せば、
W1 = W × sinθ
で表され、
W1h = W × sinθ × cosθ
で表される。
これを数式で表せば、
W1 = W × sinθ
で表され、
W1h = W × sinθ × cosθ
で表される。
よって、図4(b)の矢印Gに示すように、水平分力W1hによって骨盤を前傾させ、つまり骨盤の床面に対する角度を90°以下にすることができる。
この傾斜角θは、小さ過ぎると水平方向の分力W1hが小さすぎで、骨盤を前傾させることが不十分になる。一方、傾斜角θが大き過ぎると、座面に沿った分力W1が大きくなり過ぎて、使用者の臀部が座面を滑り落ちる恐れが高くなる。また、上式から明らかなように、傾斜角θが大きくなるにつれて、W1とW1hの値の差が大きくなるので、傾斜角θが大きくなりすぎると、骨盤を前傾させる水平方向の力に比べて、臀部を滑らせる力の方が相対的に大きくなり、安定してストレッチを行なうのに好ましくない状態となる。
実際に様々な傾斜角θを有する試作品を作成して、性別、年齢、体格等が異なる複数の被験者に依頼して行なった試験の結果によれば、傾斜角θの範囲としては、10°〜30°が好ましく、15°〜25°がより好ましいことが判明した。
ここで、傾斜角θが20°の場合において、標準的な女性が座った場合の荷重Wを400N、標準的な男性が座った場合の荷重を550N、大柄な男性が座った場合の荷重を700Nと仮定すれば、骨盤を前傾させる水平方向の分力W1h、及び臀部が座面から滑り落ちるようにかかる座面方向の分力W1は、下表に示す値になる。
また、使用者の臀部が座面を滑り落ちることを防ぐためには、座面の摩擦係数が高くなることが好ましく、上述のように、図1〜3に示す実施形態の上面カバー8a及び底面カバー8bには、滑り止めの処理が施されている。
もし、座面10が全く変形しないとすれば、臀部が傾斜角θの座面10を滑り落ちないためには、座面と臀部との間の摩擦係数がtanθより大きくなる必要があり、傾斜角θが20°であれば、摩擦係数は約0.37より大きい値をとる必要がある。
ただし、図1〜図3に示す実施形態では、弾性を有する上面側部材4が人の重みで適度に沈み込むことによって、上述の摩擦力と協働して、臀部が座面を滑り落ちるのを防止する大きな要素になっている。
(上側部材4の硬度に関する詳細な説明)
次に、上側部材4の好ましい硬度について詳細に説明する。上側部材4の硬度としては、柔らかすぎると、臀部が沈み込み過ぎてストレッチの補助になりにくく、硬すぎると、臀部が座面を滑り落ちる恐れが高くなる。
次に、上側部材4の好ましい硬度について詳細に説明する。上側部材4の硬度としては、柔らかすぎると、臀部が沈み込み過ぎてストレッチの補助になりにくく、硬すぎると、臀部が座面を滑り落ちる恐れが高くなる。
そこで、様々な硬度を有する上側部材4を試作して、性別、年齢、体格が異なる様々な被験者に依頼して行なった試験の結果、上側部材4の硬度として、JISK6400−2に基づく200N〜500Nの範囲の硬度を有することが好ましいことが判明した。具体的には、一辺が380mmの正方形で厚さ50mmの試験片において、25%圧縮時に200N〜500Nの力を示す硬度を有することが好ましいといえる。上述の試験の結果を更に詳細に述べれば、通常の大人の使用者において、JISK6400−2に基づく350N〜450Nの硬度がより好ましいことが判明した。
同様に、反発弾性が小さすぎる場合には、臀部が沈み込み過ぎてストレッチの補助にはなりにくく、反発弾性が大きすぎる場合には、臀部が座面を滑り落ちる恐れが高い。従って、上面側部材4の反発弾性としては、JIS K6400−3に基づく20%〜60%の範囲の反発弾性を有することが好ましいことが判明した。
また、上述の様々な硬度を有する試作品を用いた試験において、座面の沈み込み量に着目すると、上述の好ましい硬度では、被験者が座面の最高点近傍に座ったとき、座面が概ね10mm〜30mm沈み込んでいると推定され、座面の最高点近傍の沈み込み量が、10mm〜30mmの範囲となる硬度が好ましいと考えられる。
そこで、次に、200N〜500Nの範囲の好ましい硬度と、10mm〜30mmの範囲の好ましい沈み込み量との間の関係を、図5を参照しながら理論的に検討する。
使用者の臀部によって上側部材4に荷重Wが加えられ、図5の斜線部Jが一様に沈み込んだ場合を仮定する。斜線部Jの形状を長軸a=400mm、短軸b=300mmの楕円形と仮定すると、斜線部Jの面積JA= 400×300×π =377,000 mm2 となる。また、斜線部Jにかかる圧縮応力σ = W/JAとなる。
0〜25%の圧縮の範囲では、上側部材4は圧縮応力にほぼ比例して変形する(沈み込む)と仮定すれば、歪εは、ε = σ/E (E:縦弾性係数)となる。例えば、上側部材4のJISK6400−2に基づく硬度が300Nの場合には、
E = σ/ε = 300N/(380mm×380mm)/0.25
= 0.0083 N/mm2
となる。
E = σ/ε = 300N/(380mm×380mm)/0.25
= 0.0083 N/mm2
となる。
また、変形量Xは、X = ε × H1(H1:楔形の上側部材4の最大高さ、図5参照)となる。ここで、図1〜3に示す実施形態においては、上側部材4の最大高さH1は、約150mm(=400mm×tan20°)となる。
以上に基づき、JIS K6400−2に基づく硬度が、各々200N、300N、400N、500Nの場合において、標準的な女性が座った場合を想定したW=400N、標準的な男性が座ったと場合を想定したW=550N、及び大柄な男性が座った場合を想定した700Nをかけた場合の座面の最上点近傍における変形量Xを計算すると、下表に示すようになる。
表2に示す計算結果を検討すると、JIS K6400−2に基づく硬度が200N〜500Nの場合において、標準的な女性(W=400N)の場合では、歪εが0.08〜0.19の範囲であって、変形量Xが12mm〜29mmの範囲にある。従って、500Nの硬さでは、若干硬目と感じられるかもしれない。しかし、大半の硬さの範囲において、歪εは、概ねクッションが良好な弾性を示す範囲に収まり、変形量Xも、概ね臀部が座面を滑りことなく、かつ沈み込み過ぎることのない適切な「臀部とのフィット感」が得られる範囲にあると考えられる。
また、標準的な男性(W=550N)の場合では、歪εが0.11〜0.26の範囲であって、変形量Xが16mm〜39mmの範囲にある。従って、200Nの硬さ(変形量X=39mm)では、沈み込み量が大きすぎて、柔らかすぎると考えられる。なお、その他の硬さの範囲については、歪εは、概ねクッションが良好な弾性を示す範囲に収まり、変形量Xも、概ね臀部が座面を滑りことなく、かつ沈み込み過ぎることのない適切な「臀部とのフィット感」が得られる範囲にあると考えられる。
また、大柄な男性(W=700N)では、歪εが0.14〜0.34の範囲であって、変形量が21mm〜50mmの範囲にある。従って、200N(変形量X=50mm)及び300N(変形量X=34mm)の硬さでは、沈み込み量が大きすぎて、柔らかすぎると考えられる。なお、その他の硬さの範囲については、歪εは、概ねクッションが良好な弾性を示す範囲に収まり、変形量Xも、概ね臀部が座面を滑りことなく、かつ沈み込み過ぎることのない適切な「臀部とのフィット感」が得られる範囲にあると考えられる。
次に、JIS K6400−2に基づく200N〜500Nの硬度の範囲の中で、上述の何れの使用者にも適した硬度の範囲、つまり、より好ましい硬度の範囲を考察する。この場合、例えば、硬度が350N〜450Nの範囲を考えると、歪εは、0.09(標準的女性の場合)〜0.19(大柄な男性の場合)の範囲となり、変形量Xは、13mm(標準的女性の場合)〜29mm(大柄な男性の場合)の範囲となる。従って、350N〜450Nの範囲の硬度であれば、歪εが25%以内の適切な範囲内に収まり、変形量Xが10mm〜30mmの適切な範囲に収まる。従って、350N〜450Nの範囲の硬度であれば、幅広い使用者において、より良好な弾性が得られ、臀部が座面を滑り落ちることなく、かつ沈み込み過ぎることのない適切なフィット感が得られることが理論的にも裏付けられた。
(座面の高さ応じた好ましい沈み込み量の説明)
本発明のストレッチ補助クッション2では、使用者は、座面10における着座位置を変更することによって、例えば、図1〜3の実施形態であれば、50mm〜200mmの範囲において所望の座面の高さでストレッチを行なうことができる。この場合、注目すべき点は、座ったときの臀部の高さによって、使用者が好ましく感じる座面の沈み込み量が異なることである。
本発明のストレッチ補助クッション2では、使用者は、座面10における着座位置を変更することによって、例えば、図1〜3の実施形態であれば、50mm〜200mmの範囲において所望の座面の高さでストレッチを行なうことができる。この場合、注目すべき点は、座ったときの臀部の高さによって、使用者が好ましく感じる座面の沈み込み量が異なることである。
使用者が、座面10の先端側の最下点付近に座ったときには、座面10と床面との間の距離が小さいので、座ったときの沈み込み量が大きいと、座面が低すぎでストレッチ補助が困難であると感じ易い。よって、この場合では、比較的沈み込み量が少ない、つまり比較的硬めに感じる方が好ましいといえる。
一方、使用者が、座面10の後端側の最高点付近に座ったときには、座面と床面との間の距離が大きいので、沈み込み量が少ないと、臀部が座面を滑り落ちる恐れを感じ易い。よって、この場合には、低い着座位置に比べれば沈み込み量が大きい、つまり比較的柔らかめに感じる方が好ましいといえる。
図1〜図3に示す実施形態では、上側部材4が同一の弾性を有する材料で構成されているので、座面10の各領域に同一の荷重Wをかけた場合、各領域の沈み込み量は、座面の高さの増加量に概略比例して増加することになる。同様に、各領域の沈み込み量は、座面の高さの減少量に概略比例して減少することになる。また、上側部材4が一定の傾斜角θを有する楔形なので、座面の先端側から後端側にいくにつれて高さが線形的に増加していく。同様に、座面の後端側から先端側にいくにつれて高さが線形的に減少していく。
以上のように、図1〜図3に示す実施形態では、使用者は、低い座面位置では比較的硬く感じ、高い座面位置では比較的柔らかく感じるので、使用者の感覚に適合した扱い易いストレッチ補助クッション2を得ることができる。
(座面の最下点高さHに関する詳細な説明)
上述のように、使用者は、座面10の着座位置を選択することによって、図1〜図3に示す実施形態であれば、50mm〜約200mmの範囲において、所望の座面の高さを得ることができ、最適な臀部の高さで開脚ストレッチを行なうことができる。従って、適切な傾斜角θ及び座面10の最下点高さHの確保によって、開脚ストレッチの補助に一番重要な「骨盤を前傾し易くし、臀部を高い位置に固定すること」を実現することができる。
上述のように、使用者は、座面10の着座位置を選択することによって、図1〜図3に示す実施形態であれば、50mm〜約200mmの範囲において、所望の座面の高さを得ることができ、最適な臀部の高さで開脚ストレッチを行なうことができる。従って、適切な傾斜角θ及び座面10の最下点高さHの確保によって、開脚ストレッチの補助に一番重要な「骨盤を前傾し易くし、臀部を高い位置に固定すること」を実現することができる。
一方、ストレッチ補助マット2の横側からの側面形状が台形でなく、三角形であれば(つまり、楔形の上側部材4だけであれば)、使用者が座面10の先端側に座った場合に、臀部の床面からの高さは限りなくゼロに近くなり、ストレッチ補助機能が失われてしまう。また、多少先端部から下がった位置に座ったとしても、上側部材4は弾性を有するので沈み込み、臀部の床面からの高さはゼロに近くなってしまう。
従って、本発明のストレッチ補助クッション2のように、上側部材4よりも固い下側部材6を備えた台形の側面形状を有することによって、始めて、使用者が座面10の先端部付近に座った場合であっても、座面の一定の高さを確保することができる。
なお、座面の最下点高さHに関しても、様々な寸法を有する上面側部材4を試作し、性別、年齢、体格が異なる様々な被験者に依頼して行なった試験の結果、上述のように、使用者や使用状況に応じて、座面の最下点高さHの下限として、5mm以上、15mm以上、または30mm以上が好ましいと考えられる場合があり、座面の最下点高さHの上限として、100mm以下、150mm以下、または200mm以下が好ましいと考えられる場合がある。
そこで、次に、座面の最下点高さHの好ましい値について、理論的に説明する。上述のように、図1〜図3に示す実施形態においては、20°の傾斜角が付いているので、床面から50mm〜約200mmの範囲において、所望の座面高さを得ることができる。
しかし、ストレッチのやり方によっては、座面の最下点であるストレッチ補助クッション2の先端部付近に座って、ストレッチを行なわなければならないときもあり、その場合であっても、効果的なストレッチが可能なように、適切な座面の最下点高さHを設定する必要がある。
被験者を用いた試験結果及び経験的にいって、床面に座って行なうのに比べて効果のあるストレッチを実施するためには、ストレッチを行なったとき、足先と床面との間に、少なくとも、3°〜6°程度の仰角が生じるように設定する必要があると考えられる。
このことを図6を用いて説明すると、3°〜6°程度が必要な仰角をβとし、使用者の脚の長さをYとすれば、
H = Y × Sinβ (β=3°〜6°)
で表され、また、使用者の身長をLとすると、身長Lと脚の長さYとの間の相対的な関係は、一般的に、
Y = 0.4〜0.5 × L
で表される。従って、座面の最下点高さHの好ましい範囲は、
H = 0.4 × L × Sin3° 〜 0.5 × L × Sin6°
の関係を有する。ここで、身長Lを1400mm〜1900mmとすれば、
H = 29.3mm 〜 99.3mm
となり、座面の最下点の高さHが30mm〜100mmの範囲にあることが好ましいことが、理論的に示された。
H = Y × Sinβ (β=3°〜6°)
で表され、また、使用者の身長をLとすると、身長Lと脚の長さYとの間の相対的な関係は、一般的に、
Y = 0.4〜0.5 × L
で表される。従って、座面の最下点高さHの好ましい範囲は、
H = 0.4 × L × Sin3° 〜 0.5 × L × Sin6°
の関係を有する。ここで、身長Lを1400mm〜1900mmとすれば、
H = 29.3mm 〜 99.3mm
となり、座面の最下点の高さHが30mm〜100mmの範囲にあることが好ましいことが、理論的に示された。
なお、上述の検討では、仰角βの範囲を3°〜6°とし、身長Lの範囲を1400mm〜1900mmとして計算しているが、仰角β、身長Lの範囲を更に広げた方が適切である場合も考えられる。その場合には、理論的な計算値Hについても、下限として5mm以上または15mm以上が適切であり、上限として150mm以下または200mm以下が適切であるこが示されることも考えられる。例えば、より体の柔らかい人や子供を含むより小柄な人も数値的に考慮することにより、座面の最下点の高さHが5mm〜100mmの範囲にあることが好ましいことが、理論的に示される場合もある。
(本発明のストレッチ補助クッションのその他の実施形態の説明)
次に、図7〜図9を用いて、本発明のストレッチ補助クッションのその他の実施形態の説明を行なう。
次に、図7〜図9を用いて、本発明のストレッチ補助クッションのその他の実施形態の説明を行なう。
<異なる形状の上側部材4、下側部材6を含む実施形態の説明>
まず、図7を用いて、図1〜図3に示す実施形態とは異なる形状を有する上側部材4及び下側部材6を含むストレッチ補助クッション2の実施形態の説明を行なう。
まず、図7を用いて、図1〜図3に示す実施形態とは異なる形状を有する上側部材4及び下側部材6を含むストレッチ補助クッション2の実施形態の説明を行なう。
図1〜図3に示す実施形態では、上側部材4が傾斜角を有する楔形の形状を有し、下側部材6が平坦な矩形の形状を有していたが、図7(a)に示す実施形態では、逆に、上側部材4が平坦な矩形の形状を有し、下側部材が傾斜角を有する楔形の形状を有している。また、図7(b)に示す実施形態では、上側部材4及び下側部材6共に、傾斜角が付いた台形の断面形状を有している。
図7(a)に示す実施形態では、上側部材4が平坦な矩形の形状を有しているので、上側部材4全体を同じ材質で形成し、下側部材6を比較的固い材料で形成した場合には、座面の各領域における座面の沈み込む量(変形量)はほぼ一定になる。また、図7(b)に示す実施形態では、座面の床面からの高さが増加すると、座面の高さの変化量に概略比例して、座面の沈み込み量(変化量)が増加するが、その変化の度合いは、図1〜図3に示す実施形態に比べて小さくなる。
なお、上側部材4の硬度を領域によって変更することによって、図7(a)や図7(b)の実施形態においても、図1〜図3に示す実施形態と同様な沈み込み量の分布を得ることも可能である。
<硬度を変更する手段を備えた上側部材4を含む実施形態の説明>
次に、上側部材4の硬度を変更する手段を備えたストレッチ補助クッション2の実施形態を、図8を参照しながら説明する。
次に、上側部材4の硬度を変更する手段を備えたストレッチ補助クッション2の実施形態を、図8を参照しながら説明する。
図8に示す実施形態では、上側部材4が中空構造を有しており、エアホース12aを介して、エアコンプレッサ12からこの内部空間に圧縮空気が供給されるようになっている。従って、上側部材4の内部空間の空気圧を調整することによって、所望の硬度を有する上側部材4を得ることができる。なお、エアコンプレッサのような装置は用いずに、人が息を吹き込んだり、簡易なフットポンプ等を用いて空気を充填することもできる。また、上側部材4の内部空間に充填する流体は、空気に限られるものではなく、窒素や、アルゴンといった不活性ガスを始めとする任意の気体を用いることができるし、また、水を始めとする任意の液体を用いることもできる。
なお、本実施形態では、上側部材4に硬度変更手段が設けられているが、更に、下側部材6にも同様な硬度変更手段を備えることもできるし、上側部材4の代わりに、下側部材6にだけ硬度変更手段を備えることもできる。また、空気を用いた硬度変更手段と、合成樹脂の発泡材等とを組み合わせて、クッションの硬度を変更することもできる。このとき用いる発泡体としては、通常の発泡体を用いることもできるし、軟質発泡体を用いることもできるし、それらの両方を組み合わせることもできる。空気と発泡材とを組み合わせることによって、使用者が快適にストレッチを行なうことができる硬度を有し、かつ、個々の使用者または使用状況に合わせて容易に硬度を調整することができるようになる。
更に、温度等のパラメータの変化によって、硬化性が変わるゲル状の物質を内部に充填させることも考えられ、その他、硬度を変更するあらゆる手段を用いることができる。
<座面の最下点高さHを変更する手段を備えた実施形態の説明>
次に、座面の最下点の床面からの高さHを変更する手段を備えたストレッチ補助クッション2の実施形態を、図9を参照しながら説明する。
次に、座面の最下点の床面からの高さHを変更する手段を備えたストレッチ補助クッション2の実施形態を、図9を参照しながら説明する。
図9に示す実施形態では、高さ調整用の部材14が、ストレッチ補助クッション2の底面12に着脱可能に取り付けられるようになっている。高さ調整用の部材14を着脱可能に取り付ける手段としては、例えば、パイル状の布及び硬い鉤針状の糸が出ている布から構成される着脱テープを用いることが考えられ、その他、あらゆる着脱手段を用いることができる。
例えば、高さの異なる複数の高さ調整用の部材14を用意することによって、使用者は所望の高さHを得ることができる。また、複数の高さ調整用の部材14を組み合わせて用いることも考えられる。
この構成によって、使用者の体格や体の硬さに応じて、容易に座面の最下点高さHを変更することができ、常に適切な座面の高さを確保することができる。
座面の最下点高さHを変更する手段としては、上述の実施形態だけに限られず、例えば、下側部材6の内部を中空構造にして、充填する流体の量を調整することによって、高さHを変更することも考えられる。また、その他、機械的に高さを変更する機構を備えることもできる。
<その他の実施形態>
本発明のストレッチ補助クッションのその他の実施形態として、図10の側面図に示すような形状のクッションが考えられる。図10に示すクッションでは、傾斜した座面の最上部Pが、クッションの後端部Qの位置ではなく、クッションの後端部Qよりも手前に位置している。
本発明のストレッチ補助クッションのその他の実施形態として、図10の側面図に示すような形状のクッションが考えられる。図10に示すクッションでは、傾斜した座面の最上部Pが、クッションの後端部Qの位置ではなく、クッションの後端部Qよりも手前に位置している。
本発明のクッションを用いてストレッチを行なう場合、使用者は、通常、傾斜した座面の高さが高い方向を背にして座る。このとき、子供、青少年、女性用の小さなサイズのクッション(例えば、縦寸法300mm×横寸法325mmのクッション)を用いるとき、図2(a)に示すような、座面の最上部がクッションの後端部に位置する場合には、使用者が座面の最上部に座ったときに、後ろにひっくり返る恐れがある。このような場合には、図10に示すような座面の最上部Pがクッションの後端部Qよりも手前に位置する形状にすることによって、使用者は、後ろにひっくり返る恐れなく座面の最上部Pに座ることができる。
以上のように、図2(a)に示す形状及び図10に示す形状のうち、クッションの大きさや使用状況に合わせて、最適な形状を選択することができる。
本発明のストレッチ補助クッションは、上述の実施形態に限られるわけではなく、その他の様々な実施形態が考えられる。また、本発明のストレッチ補助クッションは、股関節周辺のストレッチだけでなく、例えば、背骨、腰骨、頚椎周辺を始めとする各部のストレッチに用いることができる。
(ストレッチ補助クッション2を用いた試験例の説明)
次に、複数の被験者が、本発明のストレッチ補助クッションを含む様々なストレッチ用クッションを用いて開脚ストレッチを行なった場合の試験結果を、以下に示す。この試験では、表3に示す構造のストレッチ用クッション(サンプル1〜4)用いて、または何も用いずに(サンプル5)、開脚ストレッチを行なった。
次に、複数の被験者が、本発明のストレッチ補助クッションを含む様々なストレッチ用クッションを用いて開脚ストレッチを行なった場合の試験結果を、以下に示す。この試験では、表3に示す構造のストレッチ用クッション(サンプル1〜4)用いて、または何も用いずに(サンプル5)、開脚ストレッチを行なった。
また、試験を行なった10人の被験者は、下表に示すような性別、年齢構成を有する。
以上のようにして、表4に示す被験者が、表3に示す条件下で開脚ストレッチを行なったときの開脚角度のデータを、下記の表5に示す。なお、各被験者は、クッションを用いる場合には、クッションの後端側に座ってストレッチを行なった。
上記の試験結果から明らかなように、サンプル1の本発明のストレッチ補助クッションを用いてストレッチを行なった場合には、全ての被験者において、開脚角度が最大となった。
また、本発明のストレッチ補助クッションを用いてストレッチを行なった場合(サンプル1)には、クッションを用いなかった場合(サンプル5)に比べて、平均で14.7°の開脚角度が改善された。更に、本発明のストレッチ補助クッションを用いてストレッチを行なった場合(サンプル1)には、その他の従来型の器具を用いた場合(サンプル2、3、及び4)に比べて、平均で9.3°の開脚角度が改善された。
また、数値化したデータを取ることはできないが、全ての被験者が、サンプル1の場合に股関節内側に最も大きな張りを感じ、強いストレッチ効果を感じていることが判明した。更に、各被験者にストレッチ効果及び使い易さに関して、5段階評価してもらった結果を下記の表6に示す。
以上のように、上述の試験によって、本発明のストレッチ補助クッションが、従来の平坦なストレッチ用クッションに比べて、開脚角度を改善させて、大きなストレッチ効果を奏することが実証された。
2 ストレッチ補助クッション
4 上側部材
4a 上面
4b 接触面
6 下側部材
6a 下面
6b 接触面
8 カバー部材
8a 上面カバー
8b 底面カバー
10 座面
12 底面
14 高さ調整用の部材
4 上側部材
4a 上面
4b 接触面
6 下側部材
6a 下面
6b 接触面
8 カバー部材
8a 上面カバー
8b 底面カバー
10 座面
12 底面
14 高さ調整用の部材
Claims (1)
- 股関節周辺のストレッチを含む各種ストレッチに用いるクッションであって、
直接またはカバー部材を介してクッションの座面を構成する上面を備えた、弾性材料からなる上側部材と、
前記上側部材の下側に配置され、直接またはカバー部材を介してクッションの底面を構成する下面を備えた、前記上側部材よりも硬い材料からなる下側部材と、
を含み、
前記底面が床面に接するように前記クッションを設置したとき、前記座面が前記床面に対して所定の傾斜角を有し、かつ、前記下側部材によって、前記床面に対して前記所定の傾斜角を有する前記座面の最下点と前記床面との間に所定の距離が確保されるストレッチ補助クッション。
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