図1は、本発明を適用可能な印刷システムの一例を示す模式図である。なお、図1や以下の図面では必要に応じて、装置各部の配置関係を明確にするために、Z軸を鉛直軸とするXYZ直交座標が併記されている。以下の説明では、各座標軸(の矢印)が向く方向を正方向とし、その反対方向を負方向とし、Z軸の正側を上側とし、Z軸の負側を下側として適宜取り扱う。
印刷システム100は、パーソナルコンピューター等の外部装置から受信した画像データに基づいて印刷データを生成するホスト装置200と、ホスト装置200から受信した印刷データに基づいて画像を印刷するプリンター300とを備える。このプリンター300は、ロール状に巻かれた長尺なシートSを繰り出しつつ、このシートSに対してインクジェット方式を用いて画像を印刷するものである。
図1に示すように、プリンター300は、略直方体形状を有する本体ケース1を備える。本体ケース1内部には、シートSを巻いたロールR1からシートSを繰り出す繰出部2と、繰り出されたシートSにインクを噴射して印刷を行う印刷室3と、インクが付着したシートSを乾燥させる乾燥部4と、乾燥後のシートSをロールR2として巻き取る巻取部5とが配置されている。
より詳しくは、本体ケース1内は、XY平面に平行に(すなわち水平に)配置された平板状の基台6によってZ軸方向へ上下に区画されており、基台6の上側が印刷室3となっている。印刷室3内の略中央部では、プラテン30が基台6の上面に固定されている。プラテン30は矩形状を有しており、XY平面に平行なその上面によって、シートSを下側から支持する。そして、記録ユニット31が、プラテン30上に支持されたシートSに対して印刷を行う。
一方、基台6の下側には、繰出部2、乾燥部4および巻取部5が配置されている。繰出部2は、プラテン30に対してX軸負方向の下側(図1の左斜め下)に配置されており、回転自在な繰出軸21を備えている。そして、この繰出軸21にシートSが巻きつけられて、ロールR1が支持されている。一方、巻取部5は、プラテン30に対してX軸正方向の下側(図1の右斜め下)に配置されており、回転自在な巻取軸51を備えている。そして、この巻取軸51にシートSが巻き取られて、ロールR2が支持されている。また、乾燥部4は、X軸方向における繰出部2と巻取部5との間で、プラテン30の直下に配置されている。なお、乾燥部4は、繰出部2および巻取部5に対してはやや上側にある。
そして、繰出部2から巻取部5へと搬送されるシートSが、7本のローラー71〜77により案内されながら、印刷室3と乾燥部4とを順番に通過する。つまり、繰出部2が備える繰出軸21のX軸正方向にはローラー71が配置されており、繰出軸21からX軸正方向に繰り出されたシートSは、ローラー71に巻き掛けられて上へと案内される。
ローラー71の上側であって印刷室3の内部には、後述するコロナ処理機8のアース電極ローラー81と2本のローラー72、73がX軸正方向にこの順に並んでいる。アース電極ローラー81は、2本のローラー72、73に対してやや下側にある。そのため、ローラー71から上へと案内されたシートSは、アース電極ローラー81に巻き掛けられて斜め上へと向きを変えた後に、2本のローラー72、73へ巻き掛けられる。
これらローラー72、73は、プラテン30を挟むようにしてX軸方向にまっすぐ並んで(すなわち水平に)配置されており、それぞれの頂部がプラテン30の上面(シートSを支持する面)と同一の高さとなるように位置調整されている。したがって、ローラー72に巻き掛けられたシートSは、ローラー73に到るまでの間、プラテン30の上面に摺接しつつ水平(X軸方向)に移動する。そして、ローラー73に巻き掛けられたシートSは、下へと案内される。
ローラー73の下側(基台6より下側)には、2本のローラー74、75がX軸負方向にこの順に並んでいる。ローラー74とローラー75とに巻き掛けられたシートSは、両ローラー74、75の間においてX軸方向に平行に(すなわち水平に)案内される。また、ローラー74、75の間には乾燥部4が配置されている。したがって、ローラー74に巻き掛けられたシートSは、X軸負方向に向きを変えるとともに、ローラー75に到るまでの間に乾燥部4の内部を通過する。
ローラー75の下側では、2本のローラー76、77がX軸正方向にこの順に並んでいる。そして、ローラー76に巻き掛けられたシートSは、X軸正方向に向きを変えてローラー77に到る。また、ローラー77に巻き掛けられたシートSは、ローラー77のX軸正方向に配置された巻取部5の巻取軸51に巻き取られる。
このように、繰出部2から繰り出されたシートSは、印刷室3や乾燥部4を通過して巻取部5に巻き取られる。そして、このシートSに対して、印刷室3での印刷処理や乾燥部4の乾燥処理が施される。
印刷室3での印刷処理は、プラテン30の上側に配置された記録ユニット31により実行される。この記録ユニット31は、印刷室3内のX軸負方向の端部(図1の左端部)に配置されたインクカートリッジCRから図示しないインク供給機構によって供給されたインクを、インクジェット方式によりシートSに噴射して印刷を行う。具体的には、この記録ユニット31は、キャリッジ32と、キャリッジ32の下面に取り付けられた平板状の支持板33と、支持板33の下面に取り付けられた複数の記録ヘッド34とを備える。
図2は、記録ユニットの構成を部分的に示す平面図である。図2に示すように、支持板33の下面では、15個の記録ヘッド34がY軸方向に等ピッチで2行千鳥で並んでいる。これらの記録ヘッド34は、ノズル35からインクを噴射するものであり、互いに同一の構成を備えている。そこで以下では、1つの記録ヘッド34で代表して、その構成の詳細について説明する。
記録ヘッド34の下面では、複数(例えば180個)のノズル35がY軸方向に等ピッチで直線状に並んで1つのノズル列35Lが構成されるとともに、複数のノズル列35LがX軸方向に等ピッチで並んでいる。各ノズル35は、インクの詰まった微細管に取り付けられたピエゾ素子に電圧を印加して変形させることで、インクを管外に噴射するピエゾ方式によるものである。
このようにして、記録ヘッド34の下面で並ぶ複数のノズル列35Lは、互いに異なるインク色に対応しており、例えば8色のインクを用いた場合は、8列のノズル列35Lが記録ヘッド34の下面に並ぶ。そして、同じノズル列35Lに属するノズル35は互いに同じ色のインクを噴射する一方、異なるノズル列35Lに属するノズル35は互いに異なる色のインクを噴射する。
ただし、この実施形態では、オーバープリント用のOP(オーバープリント)液を噴射するためのノズル列35Lも別途設けられている。このOP液は、色材を実質的に含有しないインクであり、樹脂インクと同様の性質を有する。ここで、「色材を実質的に含有しない」とは、色材を用いる意義を十分に発揮する量を意図的に混入させない場合を指し、例えばインク中の色材の含有量が0.05質量%未満であること、いっそう好ましくは0.01質量%未満、さらに好ましくは0.005質量%未満、最も好ましくは0.001質量%未満であることを言う。このOP液も、その他の有色のインクと同様にして、インクカートリッジCRから記録ヘッド34へ供給される。ちなみに、OPインクは熱可塑性樹脂を含有している。この熱可塑性樹脂としては、インクジェット記録方式によって当該インク組成物の液滴を吐出できる範囲内で任意のものを用いることができ、例えば、(メタ)アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、ロジン変性樹脂、フェノール樹脂、テルペン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂、セルロースアセテートブチレート等の繊維素系樹脂、ビニルトルエン−α−メチルスチレン共重合体樹脂等の単独、またはそれらの共重合体を挙げることができる。そして、第1熱可塑性樹脂としては、これらの樹脂の混合物であってもよい。これら例示した樹脂のうち、熱可塑性樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂、すなわち、アクリル樹脂またはメタクリル樹脂であることが好ましく、メチルメタクリレート単独の重合体もしくはメチルメタクリレートとブチルメタクリレートとの共重合体が更に好ましい。
図1に戻って説明を続ける。上述のように構成された記録ユニット31のキャリッジ32は、支持板33および記録ヘッド34と一体的に移動自在となっている。具体的には、印刷室3内には、X軸方向に延びる第1ガイドレール36が設けられており、キャリッジ32は、第1CRモーターMx(図3)の駆動力を受けると、第1ガイドレール36に沿ってX軸方向に移動する。さらに、印刷室3内には、Y軸方向に延びる第2ガイドレール(図示省略)が設けられており、キャリッジ32は、第2CRモーターMy(図3)の駆動力を受けると、第2ガイドレールに沿ってY軸方向に移動する。
そして、プラテン30の上面で停止するシートSに対して、記録ユニット31のキャリッジ32をXY面内で二次元的に移動させて、印刷が実行される。具体的には、記録ユニット31は、キャリッジ32をX軸方向(主走査方向)に移動させつつ記録ヘッド34の各ノズル35からシートSにインクを噴射する動作(主走査)を実行する。この主走査では、1つのノズルが噴射するインクにより形成されたX軸方向に延びる1ライン分の画像(ライン画像)が、Y軸方向に間隔を空けつつ複数並んで、二次元の画像が印刷される。そして、この主走査と、キャリッジ32をY軸方向(副走査方向)に移動させる副走査とが交互に実行されて、複数回の主走査が実行される(ラテラルスキャン方式)。
つまり、記録ユニット31は1回の主走査を完了すると、副走査を行なってキャリッジ32をY軸方向に移動させる。続いて、記録ユニット31は、この副走査によって移動した位置から、キャリッジ32をX軸方向(の先程の主走査とは反対向き)に移動させる。これによって、先程の主走査により既に形成された複数のライン画像それぞれの間に、新たな主走査によるライン画像が形成される。そして、これら主走査と副走査とが交互に実行される。つまり、このプリンター300では、キャリッジ32をX軸方向に移動させつつノズル35からインクを噴射して、複数のライン画像から成る中間生成画像を形成する動作(主走査)を、Y軸方向への位置を変えながら(副走査)、複数回数実行することで、中間生成画像を重ね合わせた画像が形成される。
このように、複数回の主走査を実行することで、1回の印刷が実行される。ここで、1回の主走査を「パス」と称することとし、複数回のパスにより実行される1回の印刷を「フレーム」と称することとする。また、1回のパスでシートSに形成される中間生成画像を「1パス画像」と称することとする。
このような主走査と副走査を交互に繰り返して行う理由は、解像度を向上させるためである。つまり、M回のパスを実行して、M個の1パス画像を重ね合わせることで、1パス画像のM倍の解像度を有する1フレーム分の画像を得ることが可能となる。そこで、記録ユニット31は、印刷すべき画像の解像度に応じた回数のパスを実行して1フレームの印刷を実行する。
ちなみに、キャリッジ32は、X軸方向に往復移動可能である。そこで、記録ユニット31は、キャリッジ32の往路および復路のそれぞれでパスを実行することで、複数のパスを効率的に実行している。
上述のような1フレームの印刷は、シートSをX軸方向に間欠的に移動させながら繰り返し実行される。具体的には、プラテン30の上面のほぼ全域にわたる所定範囲が印刷領域となっている。そして、この印刷領域のX軸方向への長さに対応する距離(間欠搬送距離)を単位として、シートSをX軸方向へ間欠的に搬送するとともに、間欠搬送中にプラテン30の上面に停止するシートSに対して1フレームの印刷が行われる。具体的に言えば、プラテン30に停止するシートSに1フレームの印刷が終わると、シートSが間欠搬送距離だけX軸方向に搬送されて、シートSの未印刷の面がプラテン30に停止する。続いて、この未印刷面に新たに1フレームの印刷が実行され、これが完了すると、再びシートSが間欠搬送距離だけX軸方向に搬送される。そして、これら一連の動作が繰り返し実行される。
なお、間欠搬送中にプラテン30の上面に停止しているシートSを平坦に保つために、プラテン30は、その上面に停止しているシートSを吸引する機構を備える。具体的には、プラテン30の上面には、図示しない多数の吸引孔が開口するとともに、プラテン30の下面には、吸引部37が取り付けられている。そして、吸引部37が動作することで、プラテン30の上面の吸引孔に負圧が発生して、シートSがプラテン30の上面に吸引される。そして、吸引部37は、印刷のためにシートSがプラテン30上に停止している間は、シートSを吸引することで、シートSを平坦に保つ一方、印刷が終了すると、シートSの吸引を止めて、シートSのスムーズな搬送を可能とする。
さらに、プラテン30の下面には、ヒーター38が取り付けられている。このヒーター38は、プラテン30を所定温度(例えば45度)に加熱するものである。これにより、シートSは、記録ヘッド34から印刷処理を受けるのと並行して、プラテン30の熱によって1次乾燥されることとなる。そして、この1次乾燥により、シートSに着弾したインクの乾燥が促進される。
こうして、プラテン30の上面において、1フレームの印刷を受けるとともに1次乾燥されたシートSは、シートSの間欠搬送に伴って移動して乾燥部4へ到達する。この乾燥部4は、乾燥用に加熱した空気により、シートSに着弾したインクを完全に乾燥させる乾燥処理を実行する。そして、この乾燥処理を受けたシートSは、シートSの間欠搬送に伴って巻取部5に到達して、ロールR2として巻き取られる。
以上のようにして、記録ユニット31および乾燥部4によって、シートSに対して印刷・乾燥処理が施される。また、プリンター300は、上述した記録ユニット31や乾燥部4ほかに、コロナ処理機8やメンテナンスユニット9といった機能部を備える。続いて、これらの構成および動作の詳細について説明する。
コロナ処理機8は、プラテン30に対してシートSの搬送方向の上流側に配置されており、プラテン30に進入する前のシートSの表面を改質するものである。具体的には、このコロナ処理機8は、ローラー72に対してシートSの搬送方向の上流側でシートSを巻き掛けるアース電極ローラー81と、シートSを挟んでアース電極ローラー81に対向するコロナ放電電極82と、コロナ放電電極82を覆う電極カバー83とを備える。コロナ放電電極82は、放電バイアス発生部84(図3)から放電バイアスの印加を受けて、アース電極ローラー81との間にコロナ放電を起こす。このコロナ放電によって、シートSの表面が改質されて、インクに対するシートSの濡れ性が向上する。このように印刷処理に先立ってシートSに表面改質を施しておくことで、印刷処理におけるシートSへのインクの定着性を高めることができる。
メンテナンスユニット9は、プラテン30からX軸負方向に外れた位置に設けられており、非印刷時にホームポジション(メンテナンスユニットの直上位置)に退避する記録ヘッド34に対してメンテナンスを行う。このメンテナンスユニット9は、15個の記録ヘッド34に対して一対一の対応関係で設けられた15個のキャップ91と、キャップ91を昇降する昇降部93とを有する。
このメンテナンスユニット9で実行されるメンテナンスとしては、キャッピング、クリーニングおよびワイピングがある。キャッピングは、昇降部93によりキャップ91を上昇させて、ホームポジションにある記録ヘッド34をキャップ91で覆う処理である。このキャッピングにより、記録ヘッド34が有するノズル35内でインクの粘性が増大するのを抑制することができる。また、クリーニングは、記録ヘッド34をキャッピングした状態で、キャップ91内に負圧を発生させることにより、ノズル35から強制的にインクを排出する処理である。このクリーニングにより、粘性が増大したインクやインク中の気泡等をノズル35から除去することができる。ワイピングは、記録ヘッド34においてノズル35の開口が並ぶ面(ノズル開口形成面)を、図示しないワイパーにより拭く処理である。このワイピングにより、記録ヘッド34のノズル開口形成面からインクを拭き取ることができる。
以上が、印刷システム100が備える装置構成の概要である。続いて、上述した図1に図3を加えて、図1の印刷システムが備える電気的構成について詳述する。ここで、図3は、図1の印刷システムが備える電気的構成を模式的に示すブロック図である。
上述したとおり、印刷システム100は、プリンター300のほか、これを制御するホスト装置200を備える。このホスト装置200は、例えばパーソナルコンピューターにより構成されており、プリンター300の動作を制御するプリンタードライバー210を内蔵するほか、プリンター300との通信機能を司る転送制御部220を備える。なお、プリンタードライバー210は、ホスト装置200の備えるCPU(Central Processing Unit)がプリンタードライバー210用のプログラムを実行することで構築される。
また、ホスト装置200は、プリンタードライバー用のプログラムが記憶されたメディア230にアクセスして、当該プログラムを読み出すメディア駆動部240を備える。このメディア230としては、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、USB(Universal Serial Bus)メモリー等の種々のメディアを用いることができる。
さらに、ホスト装置200は、作業者とのインターフェースとして、液晶ディスプレイ等で構成されるモニター250と、キーボードやマウス等で構成される操作部260とを備える。なお、タッチパネル式のディスプレイをモニター250として用いて、このモニター250のタッチパネルで操作部260を構成しても良い。モニター250には、印刷対象の画像のほかにメニュー画面が表示されている。したがって、作業者は、モニター250を確認しつつ操作部260を操作することで、メニュー画面から印刷設定画面を開いて、印刷媒体の種類、印刷媒体のサイズ、印刷品質、版数等の各種の印刷条件を設定することができる。
印刷媒体(すなわちシートS)の種類は、紙系とフィルム系に大別される。具体例を挙げると、紙系には上質紙、キャスト紙、アート紙、コート紙等があり、フィルム系には合成紙、PET(Polyethylene terephthalate)、PP(polypropylene)等がある。印刷媒体のサイズとしては、シートSの幅(Y軸方向の幅)が設定される。印刷品質は、印刷する解像度に応じて用意された複数の印刷モードから1つの印刷モードを選択することで、設定することができる。例を挙げれば次のとおりである。つまり、上記プリンター300では、1フレームで実行されるパスの数を変えることで解像度を変化できる。そこで、1フレームで実行されるパスの数が異なる複数の印刷モードを用意しておき、印刷する解像度に応じたパス数の印刷モードを選択できるように構成すれば良い。これにより、選択した印刷モードのパス数に応じた解像度で印刷を実行することができる。なお、印刷モードに代えて解像度を直接入力することで、印刷品質を設定するように構成しても良い。版数は、印刷媒体の同一エリアに複数の版(画像)を重ねて印刷する際に設定されるものであり、具体的には、重ねて印刷する版の数が設定される。ちなみに、複数の版が設定されている場合は、モニター250に版毎の画像を表示することができる。
そして、プリンタードライバー210は、上述のような、モニター250の表示や、操作部260からの入力の処理を制御するホスト制御部211を備える。つまり、ホスト制御部211は、メニュー画面や印刷設定画面等の各種画面をモニター250表示させるともに、各種画面において操作部260から入力された内容に応じた処理を行う。これにより、ホスト制御部211は、作業者からの入力に応じてプリンター300を制御するために必要な制御信号を生成する。
また、プリンタードライバー210は、外部装置から受信した画像データに対して画像処理を施して、印刷データを生成する画像処理部213を備える。具体的には、解像度変換処理、色変換処理、ハーフトーン処理等といった画像処理が実行される。
そして、ホスト制御部211で生成された制御信号や、画像処理部213で生成された印刷データは転送制御部220を介して、プリンター300の本体ケース1内に設けられたプリンター制御部400に転送される。この転送制御部220は、プリンター制御部400との間で双方向のシリアル通信が可能となっており、プリンター制御部400に制御信号や印刷データを転送するとともに、その応答信号をプリンター制御部400から受信してホスト制御部211に送信する。
プリンター制御部400は、ヘッドコントローラー410とメカコントローラー420とを備える。ヘッドコントローラー410は、プリンタードライバー210から送信されてきた印刷データに基づいて、記録ヘッド34を制御する機能を司る。具体的には、ヘッドコントローラー410は、記録ヘッド34のノズル35からのインク噴射を、印刷データに基づいて制御する。この際、ノズル35からインクを噴射するタイミングは、キャリッジ32のX軸方向への移動に基づいて制御される。つまり、印刷室3内には、キャリッジ32のX軸方向の位置を検出するリニアエンコーダーE32が設けられている。そして、ヘッドコントローラー410は、リニアエンコーダーE32の出力を参照することで、キャリッジ32のX軸方向への移動に応じたタイミングで、ノズル35からインクを噴射させる。
一方、メカコントローラー420は、シートSの間欠搬送やキャリッジ32の駆動を制御する機能を主として司る。具体的には、メカコントローラー420は、繰出部2、ローラー71〜77および巻取部5で構成されるシート搬送系を駆動する搬送モーターMsを、搬送モーターMsの回転を検出するエンコーダーEmcの出力に基づいて制御して、シートSの間欠搬送を実行する。また、メカコントローラー420は、第1CRモーターMxを制御することで、主走査のためのX軸方向への移動をキャリッジ32に実行させるとともに、第2CRモーターMxを制御することで、副走査のためのY軸方向への移動をキャリッジ32に実行させる。
そして、ヘッドコントローラー410とメカコントローラー420とが同期を取りつつ、これらの制御を適宜実行することで、間欠搬送されるシートSに対して、解像度に応じた回数のパスが実行されて、1フレーム分の印刷が実行される。これにより、所望の解像度を有する1フレーム分の画像がシートSに印刷される。
また、メカコントローラー420は、印刷処理のための上記制御のほかに種々の制御を実行できる。具体的には、メカコントローラー420は、電源スイッチSWのオン/オフを検出して、電源スイッチSWがオンした場合には、プリンター300の各部の起動処理を実行する。また、メカコントローラー420は、プラテン30上面の温度を検出する温度センサーS30の出力に基づいて、ヒーター38をフィードバック制御したり、乾燥部4の内部の温度を検出する温度センサーS4の出力に基づいて、乾燥部4をフィードバック制御したりといった温度制御を実行する。さらに、メカコントローラー420は、吸引部37を制御してプラテン30の吸引孔に発生する負圧を調整したり、メンテナンスユニット9を制御して所定のメンテナンスを実行したり、放電バイアス発生部84を制御して放電バイアスの値を調整したりといった各動作を実行可能である。
以上が、図1の印刷システムが備える電気的構成の概要である。続いて、図4を用いてこの印刷システムで実行される印刷動作の一例について詳述する。ここで、図4は、図1の印刷システムで実行可能な印刷動作の一例を示す模式図である。同図の左側では、各処理での動作示す平面図が記載される一方、同図の右側では、各処理での動作を示す断面図が示されている。
同図左側の「平面図」の「印刷処理」の欄に示すように、同図の例では、間欠停止中にシートSのうちプラテン30上に支持される印刷領域に対して、複数のラベル画像IMが印刷(面付け)される。また、同図右側の「断面図」の「印刷処理」の欄に示すように、同図の例において印刷処理が施されるシートSは積層構造を有する。具体的には、シートSは、フィルム状の透明な基材Sbの一方面にインク受容層Saを積層するとともに、この基材Sbの他方面に接着剤層Scを介してシールSdを貼り付けた構成を具備する。これらインク受容層Sa、接着剤層ScおよびシールSdはいずれも透明である。なお、インク受容層Saは、アルミナやシリカ等の多孔質無機粒子と、水溶性樹脂からなるバインダーとで構成することができる。
そして、メカコントローラー420は、内蔵するメモリー421に記憶されたプログラム422に従ってプリンター300の各部を制御して、同図に示す一連の処理を実行する。なお、このプログラム422は、メディア230からプリンタードライバー210を介して読み出されて、メカコントローラー420のメモリーに記憶されたものである(図3)。
メカコントローラー420は、印刷処理に先立って、当該印刷処理で各ラベル画像IMを形成する予定の各画像形成領域Riを求める。具体的には、メカコントローラー420は、ホスト装置200からプリンター制御部400に送られてきた印刷データを解析して、各画像形成領域Riを求める。さらに、メカコントローラー420は、これら画像形成領域Riの周縁の位置を特定する(エッジ特定処理)。
このエッジ特定処理により各画像形成領域Riの周縁の位置が特定されると、メカコントローラー420はヘッドコントローラー410と協働して、プラテン30上で間欠停止しているシートSに向けて記録ヘッド43からOP液Ioを噴射し、各画像形成領域Riの周縁にOP液Ioを打ち込む(前処理)。この際、図4の「前処理」の「断面図」の欄に示すように、各画像形成領域Riの周縁に打ち込まれたOP液Ioが、インク受容層Saの厚み全域に浸透するように、十分な量のOP液Ioを打ち込むことが好ましい。
この前処理が完了すると、メカコントローラー420はヘッドコントローラー410と協働して1フレーム分の印刷を行って、複数の画像形成領域Riそれぞれの内側にラベル画像IMを印刷する(印刷処理)。この印刷処理が終了すると、シートSが間欠搬送されて、シートSの新たな面に対してエッジ特定処理、前処理および印刷処理が施される。このような動作がシートSを間欠搬送しつつ繰り返されて、ラベル画像IMの印刷されたシートSがロールR2として巻き取られる。
このようにして、ラベル画像IMの印刷されたロールR2は、作業者によってプリンター300から取り出されて、プリンター300とは別の装置においてラミネート処理および裁断処理といった後加工を受ける。なお、この後加工を実行する装置としては、公知のものを採用することができ、例えば特開2006−213035号公報に記載されている装置を用いても良い。続いて、後加工で実行されるラミネート処理や裁断処理の詳細について説明する。
図5は、ラミネート処理および裁断処理の動作の一例を示す模式図である。同図に示すラミネート処理では、インク受容層Sa側からシートSの全面に対して、透明のラミネートフィルムLFが貼り合わされて透明接着剤により接着される。こうして、インク受容層SaがラミネートフィルムLFにより覆われて保護される。なお、このラミネート処理は、ラミネートフィルムの代わりに透明のラミネート液を、インク受容層Sa側からシートSの全面に塗布することで実行しても良い。
そして、このラミネート処理が完了すると、裁断処理が実行されて、ラベル画像IM毎にシートSが裁断される。つまり、各ラベル画像IMの周縁に沿ってシートSが裁断される。なお、上述のとおり、前処理を実行することで、ラベル画像IMの周縁にはOP液Ioが打ち込まれている。したがって、ラベル画像IMの周縁におけるインク受容層Saでは、OP液Ioが浸透した領域(換言すれば、OP液Ioに含有される材料が残存・付着した領域)が形成される。よって、同図の「裁断処理」の欄の「断面図」に示すように、シートSの裁断面にはOP液Ioの浸透した領域が現れる。換言すれば、インク受容層Saの裁断面がOP液Ioによりコートされる。
こうして裁断されたラベル画像IMを商品等に貼り付けるにあたっては、シールSdを剥がして露出した接着剤層Scを商品等に接着させれば良い。ちなみに、このシートSの基材Sbは透明であるため、シートSの接着剤層Sc側からラベル画像IMを視認することができる。そこで、商品等にラベル画像IMを貼り付けるにあたっては、シートSの接着剤層Sc側からラベル画像IMが視認可能であるように貼り付けても良い。
以上のように、この実施形態では、ラベル画像IMが形成される予定の画像形成領域Riの縁に、インク受容層Saよりも吸水性の低い材料を含有するOP液Ioを着弾させる前処理が実行される。そして、この前処理の実行された画像形成領域Riに対してラベル画像IMが形成される。したがって、シートS上のラベル画像IMの縁には、インク受容層Saよりも吸水性の低い領域(図4でOP液Ioが浸透した領域)が形成されることとなる。よって、その後の後加工において、シートSをラベル画像IM毎に裁断した場合であっても、裁断面には吸水性の低い領域が形成されているため、裁断面からの水分の浸入が抑制されて、インク受容体の濁り(例えば、白濁)を抑えることが可能となっている。
その他
以上のように、上記実施形態では、プリンター300が本発明の「画像記録装置」に相当し、プログラム422が本発明の「プログラム」に相当し、メディア230が本発明の「プログラム記録媒体」に相当し、メカコントローラー420が本発明の「コンピューター」に相当し、前処理が本発明の「第1工程」に相当し、印刷処理が本発明の「第2工程」に相当する。また、シートSが本発明の「記録媒体」に相当し、インク受容層Saが本発明の「液体受容層」に相当し、基材Sbが本発明の「基材」に相当する。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記実施形態では、前処理において、インク受容層Saの厚み全域に浸透するように、OP液Ioを画像形成領域Riの周縁に打ち込んでいた。しかしながら、OP液Ioをインク受容層Saの厚み全域に浸透させる必要は必ずしも無い。つまり、OP液Ioの浸透がインク受容層Saの厚みの途中までであっても、浸透部分については、裁断面からの水分の浸入を抑制するといった機能を発揮できる。
また、上記実施形態では、画像形成領域Riの周縁を縁取るようにしてOP液Ioを打ち込んでいた(言い換えれば、画像形成領域Riの周縁にのみOP液Ioを打ち込んでいた)。しかしながら、その周縁を含む画像形成領域Riの全面にOP液Ioを打ち込んでも良い。
また、上記実施形態では、シートSは、フィルム状の透明な基材Sbを用いたフィルム系のものであった。しかしながら、有色の基材Sbを用いたシートSに画像を記録するにあたっても本発明を適用することができる。この場合、前処理において画像形成領域Riの周縁に打ち込む液体としては、上述の透明なOPインクの他、基材Sbと同じ色のインクを用いても良い。具体例を挙げれば、白色の基材Sbに透明のインク受容層Saを形成した白色のシートSを用いた場合には、白インクを用いて上記の前処理を実行することができる。
ここで、白インクを構成する白色系の顔料とは、例えば、社会通念上「白」と称呼される色を記録できる顔料であり、微量着色されているものも含む。また、その顔料を含有するインク(インキ)が「白色インク(インキ)」、ホワイトインク(インキ)」などといった名称で称呼されるようになる顔料も含む。さらに、その顔料を含有するインク(インキ)が、エプソン純正写真用紙<光沢>(セイコーエプソン社製)に記録された場合に、インクの明度(L*)および色度(a*、b*)が、分光測光器Spectrolino(商品名、GretagMacbeth社製)を用いて、測定条件をD50光源、観測視野を2°、濃度をDIN NB、白色基準をAbs、フィルターをNo、測定モードをReflectance、として設定して計測した場合に、70≦L*≦100、−4.5≦a*≦2、−6≦b*≦2.5の範囲を示すものを含む。
白色系の顔料としては、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム等の金属酸化物粒子や中空構造を有する粒子が挙げられる。これらの中でも、白色度に優れているという観点から、二酸化チタンを粉末状にした二酸化チタン粒子を用いることが好ましい。
そして、白インクを用いて前処理を実行することで、ラベル画像IMの周縁には白インクが打ち込まれる。したがって、ラベル画像IMの周縁におけるインク受容層Saでは、白インクが浸透した領域(換言すれば、白インクに含有される材料が残存・付着した領域)が形成される。よって、後加工において裁断処理を行った場合には、シートSの裁断面には白インクの浸透した領域が現れる。換言すれば、インク受容層Saの裁断面が白インクによりコートされる。これによって、裁断面からの水分の浸入が抑制されて、インク受容体の濁り(例えば、白濁)を抑えることが可能となる。
また、上記実施形態では、接着剤層ScおよびシールSdを備えたシートSが用いられていた。しかしながら、本発明で使用可能なシートSはこれに限られず、接着剤層ScおよびシールSdを備えないシートSを用いることもできる。
また、上記実施形態では、後加工(ラミネート処理、裁断処理)をプリンター300の外部装置で行っていた。しかしながら、この後加工の一部(ラミネート処理)あるいは全部(ラミネート処理、裁断処理)を行う機構を、プリンター300に内蔵しても良い。
また、上記実施形態では、画像記録装置として、インクジェット式のプリンター300が採用されているが、インク以外の他の流体を噴射したり吐出したりする流体噴射装置を採用しても良い。また、微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置全般に本発明を適用可能である。この場合、液滴とは、液体噴射装置から吐出される液体の状態を指し、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含む。また、ここで言う液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であれば良い。例えば、液相の状態にある物質が液体に含まれ、粘性の高いあるいは低い液状態、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状体が液体に含まれる。また、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散あるいは混合されたものが液体に含まれる。また、液体の代表的な例としては、上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは、一般的な水性インク、油性インク、ジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。
また、上記実施形態では、1フレームで実行される各副走査ではいずれもY軸正方向にのみキャリッジ32を移動させていた。しかしながら、副走査においてキャリッジ32が移動可能な方向はY軸正方向に限られない。すなわち、1フレームで実行される各副走査において、Y軸負方向にキャリッジ32を移動させて、4本のライン画像をY軸負方向に並べて形成しても良い。あるいは、Y軸正方向にキャリッジ32を移動させる副走査と、Y軸負方向にキャリッジ32を移動させる副走査の両方を1フレーム中に実行しても良い。
また、上記実施形態では、4パスで1フレームの印刷を実行する場合を主に例示して説明を行った。しかしながら、1フレームの印刷を構成するパスの数は4パスに限られず、例えば、その他の複数パスあるいは1パスであっても良い。
また、上記実施形態では、ピエゾ方式を用いたインクジェットプリンターに対して本発明を適用した場合について説明した。しかしながら、サーマル方式を用いたインクジェットプリンターに対しても本発明を適用可能であることは言うまでもない。
また、上記実施形態では、キャリッジ32をX軸方向に往復走査させて印刷動作を行う場合を例示して説明を行った。しかしながら、キャリッジ32をX軸方向の片方向にのみ走査させて印刷動作を行う構成に対しても、本発明を適用可能である。