第1実施形態
図1は、本発明を適用可能な印刷システムの一例を示す模式図である。なお、図1や以下の図面では必要に応じて、装置各部の配置関係を明確にするために、Z軸を鉛直軸とするXYZ直交座標が併記されている。以下の説明では、各座標軸(の矢印)が向く方向を正方向とし、その反対方向を負方向とし、Z軸の正側を上側とし、Z軸の負側を下側として適宜取り扱う。
印刷システム100は、パーソナルコンピューター等の外部装置から受信した画像データに基づいて印刷データを生成するホスト装置200と、ホスト装置200から受信した印刷データに基づいて画像を印刷するプリンター300とを備える。このプリンター300は、ロール状に巻かれた長尺なシートSを繰り出しつつ、このシートSに対してインクジェット方式を用いて画像を印刷するものである。
図1に示すように、プリンター300は、略直方体形状を有する本体ケース1を備える。本体ケース1内部には、シートSを巻いたロールR1からシートSを繰り出す繰出部2と、繰り出されたシートSにインクを噴射して印刷を行う印刷室3と、インクが付着したシートSを乾燥させる乾燥部4と、乾燥後のシートSをロールR2として巻き取る巻取部5とが配置されている。
より詳しくは、本体ケース1内は、XY平面に平行に(すなわち水平に)配置された平板状の基台6によってZ軸方向へ上下に区画されており、基台6の上側が印刷室3となっている。印刷室3内の略中央部では、プラテン30が基台6の上面に固定されている。プラテン30は矩形状を有しており、XY平面に平行なその上面によって、シートSを下側から支持する。そして、記録ユニット31が、プラテン30上に支持されたシートSに対して印刷を行う。
一方、基台6の下側には、繰出部2、乾燥部4および巻取部5が配置されている。繰出部2は、プラテン30に対してX軸負方向の下側(図1の左斜め下)に配置されており、回転自在な繰出軸21を備えている。そして、この繰出軸21にシートSが巻きつけられて、ロールR1が支持されている。一方、巻取部5は、プラテン30に対してX軸正方向の下側(図1の右斜め下)に配置されており、回転自在な巻取軸51を備えている。そして、この巻取軸51にシートSが巻き取られて、ロールR2が支持されている。また、乾燥部4は、X軸方向における繰出部2と巻取部5との間で、プラテン30の直下に配置されている。なお、乾燥部4は、繰出部2および巻取部5に対してはやや上側にある。
そして、繰出部2から巻取部5へと搬送されるシートSが、7本のローラー71〜77により案内されながら、印刷室3と乾燥部4とを順番に通過する。つまり、繰出部2が備える繰出軸21のX軸正方向にはローラー71が配置されており、繰出軸21からX軸正方向に繰り出されたシートSは、ローラー71に巻き掛けられて上へと案内される。
ローラー71の上側であって印刷室3の内部には、後述するコロナ処理機8のアース電極ローラー81と2本のローラー72、73がX軸正方向にこの順に並んでいる。アース電極ローラー81は、2本のローラー72、73に対してやや下側にある。そのため、ローラー71から上へと案内されたシートSは、アース電極ローラー81に巻き掛けられて斜め上へと向きを変えた後に、2本のローラー72、73へ巻き掛けられる。
これらローラー72、73は、プラテン30を挟むようにしてX軸方向にまっすぐ並んで(すなわち水平に)配置されており、それぞれの頂部がプラテン30の上面(シートSを支持する面)と同一の高さとなるように位置調整されている。したがって、ローラー72に巻き掛けられたシートSは、ローラー73に到るまでの間、プラテン30の上面に摺接しつつ水平(X軸方向)に移動する。そして、ローラー73に巻き掛けられたシートSは、下へと案内される。
ローラー73の下側(基台6より下側)には、2本のローラー74、75がX軸負方向にこの順に並んでいる。ローラー74とローラー75とに巻き掛けられたシートSは、両ローラー74、75の間においてX軸方向に平行に(すなわち水平に)案内される。また、ローラー74、75の間には乾燥部4が配置されている。したがって、ローラー74に巻き掛けられたシートSは、X軸負方向に向きを変えるとともに、ローラー75に到るまでの間に乾燥部4の内部を通過する。
ローラー75の下側では、2本のローラー76、77がX軸正方向にこの順に並んでいる。そして、ローラー76に巻き掛けられたシートSは、X軸正方向に向きを変えてローラー77に到る。また、ローラー77に巻き掛けられたシートSは、ローラー77のX軸正方向に配置された巻取部5の巻取軸51に巻き取られる。
このように、繰出部2から繰り出されたシートSは、印刷室3や乾燥部4を通過して巻取部5に巻き取られる。そして、このシートSに対して、印刷室3での印刷処理や乾燥部4の乾燥処理が施される。
印刷室3での印刷処理は、プラテン30の上側に配置された記録ユニット31により実行される。この記録ユニット31は、印刷室3内のX軸負方向の端部(図1の左端部)に配置されたインクカートリッジCRから図示しないインク供給機構によって供給されたインクを、インクジェット方式によりシートSに噴射して印刷を行う。具体的には、この記録ユニット31は、キャリッジ32と、キャリッジ32の下面に取り付けられた平板状の支持板33と、支持板33の下面に取り付けられた複数の記録ヘッド34とを備える。
図2は、記録ユニットの構成を部分的に示す平面図である。図2に示すように、支持板33の下面では、15個の記録ヘッド34がY軸方向に等ピッチで2行千鳥で並んでいる。これらの記録ヘッド34は、ノズル35からインクを噴射するものであり、互いに同一の構成を備えている。そこで以下では、1つの記録ヘッド34で代表して、その構成の詳細について説明する。
記録ヘッド34の下面では、複数(例えば180個)のノズル35がY軸方向に等ピッチで直線状に並んで1つのノズル列35Lが構成されるとともに、複数のノズル列35LがX軸方向に等ピッチで並んでいる。記録ヘッド34の下面で並ぶ複数のノズル列35Lは、互いに異なるインク色に対応しており、例えば8色のインクを用いた場合は、8列のノズル列35Lが記録ヘッド34の下面に並ぶ。そして、同じノズル列35Lに属するノズル35は互いに同じ色のインクを噴射する一方、異なるノズル列35Lに属するノズル35は互いに異なる色のインクを噴射する。なお、ノズル35は、インクの詰まった微細管に取り付けられたピエゾ素子に電圧を印加して変形させることで、インクを管外に噴射するピエゾ方式によるものである。
図1に戻って説明を続ける。上述のように構成された記録ユニット31のキャリッジ32は、支持板33および記録ヘッド34と一体的に移動自在となっている。具体的には、印刷室3内には、X軸方向に延びる第1ガイドレール36が設けられており、キャリッジ32は、第1CRモーターMx(図3)の駆動力を受けると、第1ガイドレール36に沿ってX軸方向に移動する。さらに、印刷室3内には、Y軸方向に延びる第2ガイドレール(図示省略)が設けられており、キャリッジ32は、第2CRモーターMy(図3)の駆動力を受けると、第2ガイドレールに沿ってY軸方向に移動する。
そして、プラテン30の上面で停止するシートSに対して、記録ユニット31のキャリッジ32をXY面内で二次元的に移動させて、印刷が実行される。具体的には、記録ユニット31は、キャリッジ32をX軸方向(主走査方向)に移動させつつ記録ヘッド34の各ノズル35からシートSにインクを噴射する動作(主走査)を実行する。この主走査では、1つのノズルが噴射するインクにより形成されたX軸方向に延びる1ライン分の画像(ライン画像)が、Y軸方向に間隔を空けつつ複数並んで、二次元の画像が印刷される。そして、この主走査と、キャリッジ32をY軸方向(副走査方向)に移動させる副走査とが交互に実行されて、複数回の主走査が実行される(ラテラルスキャン方式)。
つまり、記録ユニット31は1回の主走査を完了すると、副走査を行なってキャリッジ32をY軸方向に移動させる。続いて、記録ユニット31は、この副走査によって移動した位置から、キャリッジ32をX軸方向(の先程の主走査とは反対向き)に移動させる。これによって、先程の主走査により既に形成された複数のライン画像それぞれの間に、新たな主走査によるライン画像が形成される。そして、これら主走査と副走査とが交互に実行される。つまり、このプリンター300では、キャリッジ32をX軸方向に移動させつつノズル35からインクを噴射して、複数のライン画像から成る中間生成画像を形成する動作(主走査)を、Y軸方向への位置を変えながら(副走査)、複数回数実行することで、中間生成画像を重ね合わせた画像が形成される。
このように、複数回の主走査を実行することで、1回の印刷が実行される。ここで、1回の主走査を「パス」と称することとし、複数回のパスにより実行される1回の印刷を「フレーム」と称することとする。また、1回のパスでシートSに形成される中間生成画像を「1パス画像」と称することとする。
このような主走査と副走査を交互に繰り返して行う理由は、解像度を向上させるためである。つまり、M回のパスを実行して、M個の1パス画像を重ね合わせることで、1パス画像のM倍の解像度を有する1フレーム分の画像を得ることが可能となる。そこで、記録ユニット31は、印刷すべき画像の解像度に応じた回数のパスを実行して1フレームの印刷を実行する。
ちなみに、キャリッジ32は、X軸方向に往復移動可能である。そこで、記録ユニット31は、キャリッジ32の往路および復路のそれぞれでパスを実行することで、複数のパスを効率的に実行している。
上述のような1フレームの印刷は、シートSをX軸方向に間欠的に移動させながら繰り返し実行される。具体的には、プラテン30の上面のほぼ全域にわたる所定範囲が印刷領域となっている。そして、この印刷領域のX軸方向への長さに対応する距離(間欠搬送距離)を単位として、シートSをX軸方向へ間欠的に搬送するとともに、間欠搬送中にプラテン30の上面に停止するシートSに対して1フレームの印刷が行われる。具体的に言えば、プラテン30に停止するシートSに1フレームの印刷が終わると、シートSが間欠搬送距離だけX軸方向に搬送されて、シートSの未印刷の面がプラテン30に停止する。続いて、この未印刷面に新たに1フレームの印刷が実行され、これが完了すると、再びシートSが間欠搬送距離だけX軸方向に搬送される。そして、これら一連の動作が繰り返し実行される。
なお、間欠搬送中にプラテン30の上面に停止しているシートSを平坦に保つために、プラテン30は、その上面に停止しているシートSを吸引する機構を備える。具体的には、プラテン30の上面には、図示しない多数の吸引孔が開口するとともに、プラテン30の下面には、吸引部37が取り付けられている。そして、吸引部37が動作することで、プラテン30の上面の吸引孔に負圧が発生して、シートSがプラテン30の上面に吸引される。そして、吸引部37は、印刷のためにシートSがプラテン30上に停止している間は、シートSを吸引することで、シートSを平坦に保つ一方、印刷が終了すると、シートSの吸引を止めて、シートSのスムーズな搬送を可能とする。
さらに、プラテン30の下面には、ヒーター38が取り付けられている。このヒーター38は、プラテン30を所定温度(例えば45度)に加熱するものである。これにより、シートSは、記録ヘッド34から印刷処理を受けるのと並行して、プラテン30の熱によって1次乾燥されることとなる。そして、この1次乾燥により、シートSに着弾したインクの乾燥が促進される。
こうして、プラテン30の上面において、1フレームの印刷を受けるとともに1次乾燥されたシートSは、シートSの間欠搬送に伴って移動して乾燥部4へ到達する。この乾燥部4は、乾燥用に加熱した空気により、シートSに着弾したインクを完全に乾燥させる乾燥処理を実行する。そして、この乾燥処理を受けたシートSは、シートSの間欠搬送に伴って巻取部5に到達して、ロールR2として巻き取られる。
以上のようにして、記録ユニット31および乾燥部4によって、シートSに対して印刷・乾燥処理が施される。また、プリンター300は、上述した記録ユニット31や乾燥部4ほかに、コロナ処理機8やメンテナンスユニット9といった機能部を備える。続いて、これらの構成および動作の詳細について説明する。
コロナ処理機8は、プラテン30に対してシートSの搬送方向Dsの上流側に配置されており、プラテン30に進入する前のシートSの表面を改質するものである。具体的には、このコロナ処理機8は、ローラー72に対してシートSの搬送方向Dsの上流側でシートSを巻き掛けるアース電極ローラー81と、シートSを挟んでアース電極ローラー81に対向するコロナ放電電極82と、コロナ放電電極82を覆う電極カバー83とを備える。電極カバー83は、アースまたは所定の電位に接地されている。コロナ放電電極82は、放電バイアス発生部84(図3)から放電バイアスの印加を受けて、電極カバー83との間にコロナ放電を起こす。そうすると、このコロナ放電により大気中のガスがイオン化したイオンは、コロナ放電電極82とアース電極ローラー81との間の電界に従い輸送され、シートSの表面に付着する。このコロナ放電によって、シートSの表面が改質されて、インクに対するシートSの濡れ性が向上する。この濡れ性は、インクの種類、インクの極性、シートの材質等に応じて最適な組合せがあるが、この最適な組合せに応じて調整すれば良い。具体的には、コロナ放電電極82への放電バイアス、電極カバー83への電位またはアース電極ローラー81の電位を調整すれば良い。このように印刷処理に先立ってシートSに表面改質を施しておくことで、印刷処理におけるシートSへのインクの定着性を高めることができる。
メンテナンスユニット9は、プラテン30からX軸負方向に外れた位置に設けられており、非印刷時にホームポジション(メンテナンスユニットの直上位置)に退避する記録ヘッド34に対してメンテナンスを行う。このメンテナンスユニット9は、15個の記録ヘッド34に対して一対一の対応関係で設けられた15個のキャップ91と、キャップ91を昇降する昇降部93とを有する。
このメンテナンスユニット9で実行されるメンテナンスとしては、キャッピング、クリーニングおよびワイピングがある。キャッピングは、昇降部93によりキャップ91を上昇させて、ホームポジションにある記録ヘッド34をキャップ91で覆う処理である。このキャッピングにより、記録ヘッド34が有するノズル35内でインクの粘性が増大するのを抑制することができる。また、クリーニングは、記録ヘッド34をキャッピングした状態で、キャップ91内に負圧を発生させることにより、ノズル35から強制的にインクを排出する処理である。このクリーニングにより、粘性が増大したインクやインク中の気泡等をノズル35から除去することができる。ワイピングは、記録ヘッド34においてノズル35の開口が並ぶ面(ノズル開口形成面)を、図示しないワイパーにより拭く処理である。このワイピングにより、記録ヘッド34のノズル開口形成面からインクを拭き取ることができる。
以上が、印刷システム100が備える装置構成の概要である。続いて、上述した図1に図3を加えて、図1の印刷システムが備える電気的構成について詳述する。ここで、図3は、図1の印刷システムが備える電気的構成を模式的に示すブロック図である。
上述したとおり、印刷システム100は、プリンター300のほか、これを制御するホスト装置200を備える。このホスト装置200は、例えばパーソナルコンピューターにより構成されており、プリンター300の動作を制御するプリンタードライバー210を内蔵するほか、プリンター300との通信機能を司る転送制御部220を備える。なお、プリンタードライバー210は、ホスト装置200の備えるCPU(Central Processing Unit)がプリンタードライバー210用のプログラムを実行することで構築される。
また、ホスト装置200は、プリンタードライバー用のプログラムが記憶されたメディア230にアクセスして、当該プログラムを読み出すメディア駆動部240を備える。このメディア230としては、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、USB(Universal Serial Bus)メモリー等の種々のメディアを用いることができる。
さらに、ホスト装置200は、作業者とのインターフェースとして、液晶ディスプレイ等で構成されるモニター250と、キーボードやマウス等で構成される操作部260とを備える。なお、タッチパネル式のディスプレイをモニター250として用いて、このモニター250のタッチパネルで操作部260を構成しても良い。モニター250には、印刷対象の画像のほかにメニュー画面が表示されている。したがって、作業者は、モニター250を確認しつつ操作部260を操作することで、メニュー画面から印刷設定画面を開いて、印刷媒体の種類、印刷媒体のサイズ、印刷品質、版数等の各種の印刷条件を設定することができる。
印刷媒体(すなわちシートS)の種類は、紙系とフィルム系に大別される。具体例を挙げると、紙系には上質紙、キャスト紙、アート紙、コート紙等があり、フィルム系には合成紙、PET(Polyethylene terephthalate)、PP(polypropylene)等がある。印刷媒体のサイズとしては、シートSの幅(Y軸方向の幅)が設定される。印刷品質は、印刷する解像度に応じて用意された複数の印刷モードから1つの印刷モードを選択することで、設定することができる。例を挙げれば次のとおりである。つまり、上記プリンター300では、1フレームで実行されるパスの数を変えることで解像度を変化できる。そこで、1フレームで実行されるパスの数が異なる複数の印刷モードを用意しておき、印刷する解像度に応じたパス数の印刷モードを選択できるように構成すれば良い。これにより、選択した印刷モードのパス数に応じた解像度で印刷を実行することができる。なお、印刷モードに代えて解像度を直接入力することで、印刷品質を設定するように構成しても良い。版数は、印刷媒体の同一エリアに複数の版(画像)を重ねて印刷する際に設定されるものであり、具体的には、重ねて印刷する版の数が設定される。ちなみに、複数の版が設定されている場合は、モニター250に版毎の画像を表示することができる。
そして、プリンタードライバー210は、上述のような、モニター250の表示や、操作部260からの入力の処理を制御するホスト制御部211を備える。つまり、ホスト制御部211は、メニュー画面や印刷設定画面等の各種画面をモニター250表示させるともに、各種画面において操作部260から入力された内容に応じた処理を行う。これにより、ホスト制御部211は、作業者からの入力に応じてプリンター300を制御するために必要な制御信号を生成する。
また、プリンタードライバー210は、外部装置から受信した画像データに対して画像処理を施して、印刷データを生成する画像処理部213を備える。具体的には、解像度変換処理、色変換処理、ハーフトーン処理等といった画像処理が実行される。
そして、ホスト制御部211で生成された制御信号や、画像処理部213で生成された印刷データは転送制御部220を介して、プリンター300の本体ケース1内に設けられたプリンター制御部400に転送される。この転送制御部220は、プリンター制御部400との間で双方向のシリアル通信が可能となっており、プリンター制御部400に制御信号や印刷データを転送するとともに、その応答信号をプリンター制御部400から受信してホスト制御部211に送信する。
プリンター制御部400は、ヘッドコントローラー410とメカコントローラー420とを備える。ヘッドコントローラー410は、プリンタードライバー210から送信されてきた印刷データに基づいて、記録ヘッド34を制御する機能を司る。具体的には、ヘッドコントローラー410は、記録ヘッド34のノズル35からのインク噴射を、印刷データに基づいて制御する。この際、ノズル35からインクを噴射するタイミングは、キャリッジ32のX軸方向への移動に基づいて制御される。つまり、印刷室3内には、キャリッジ32のX軸方向の位置を検出するリニアエンコーダーE32が設けられている。そして、ヘッドコントローラー410は、リニアエンコーダーE32の出力を参照することで、キャリッジ32のX軸方向への移動に応じたタイミングで、ノズル35からインクを噴射させる。
一方、メカコントローラー420は、シートSの間欠搬送やキャリッジ32の駆動を制御する機能を主として司る。具体的には、メカコントローラー420は、繰出部2、ローラー71〜77および巻取部5で構成されるシート搬送系を駆動する搬送モーターMsを、搬送モーターMsの回転を検出するエンコーダーEmcの出力に基づいて制御して、シートSの間欠搬送を実行する。また、メカコントローラー420は、第1CRモーターMxを制御することで、主走査のためのX軸方向への移動をキャリッジ32に実行させるとともに、第2CRモーターMxを制御することで、副走査のためのY軸方向への移動をキャリッジ32に実行させる。
そして、ヘッドコントローラー410とメカコントローラー420とが同期を取りつつ、これらの制御を適宜実行することで、間欠搬送されるシートSに対して、解像度に応じた回数のパスが実行されて、1フレーム分の印刷が実行される。これにより、所望の解像度を有する1フレーム分の画像がシートSに印刷される。
また、メカコントローラー420は、印刷処理のための上記制御のほかに種々の制御を実行できる。具体的には、メカコントローラー420は、電源スイッチSWのオン/オフを検出して、電源スイッチSWがオンした場合には、プリンター300の各部の起動処理を実行する。また、メカコントローラー420は、プラテン30上面の温度を検出する温度センサーS30の出力に基づいて、ヒーター38をフィードバック制御したり、乾燥部4の内部の温度を検出する温度センサーS4の出力に基づいて、乾燥部4をフィードバック制御したりといった温度制御を実行する。さらに、メカコントローラー420は、吸引部37を制御してプラテン30の吸引孔に発生する負圧を調整したり、メンテナンスユニット9を制御して所定のメンテナンスを実行したり、放電バイアス発生部84を制御して放電バイアスの値を調整したりといった各動作を実行可能である。
以上が、図1の印刷システムが備える電気的構成の概要である。ところで、上述のプリンター300には、シートSに表面改質処理を実行するコロナ処理機8が設けられている。そこで、この実施形態は、印刷処理に先立って表面改質処理をシートSに実行するといった構成を備える。しかも、この実施形態は、表面改質処理でシートSに与えるエネルギーを調整するエネルギー調整処理を実行して、表面改質処理でのエネルギーを最適化するといった構成をさらに備える。そこで、続いては、この実施形態で実行される印刷処理、表面改質処理およびエネルギー調整処理の詳細について説明する。
図4は、第1実施形態で実行可能な1フレーム分の印刷処理を例示する模式図である。同図に示すように、この1フレーム分の印刷処理は、シートSのうちプラテン30上面に支持されるX軸方向に所定長さLfの有効印刷領域IRに対して実行される。同図の例では、有効印刷領域IRに対して、1フレーム分の画像を4パスで印刷する動作が示されている。なお、「1パス目」〜「4パス目」の各欄にて、破線で示したキャリッジ32はパスの開始地点にあるキャリッジ32を表しており、実線で示したキャリッジ32はパスの終了地点にあるキャリッジ32を表している。同図に示すように、有効印刷領域IRのX軸負方向の外側とX軸正方向の外側の間で、キャリッジ32を(記録ヘッド34と一体的に)2往復させることで、4パスが実行されて、1フレーム分の画像が印刷される。
同図の「1パス目」の欄に示すように、1パス目では、キャリッジ32がシートSの有効印刷領域IRの上側をX軸正方向へ通過するとともに、記録ヘッド34の各ノズル35から液体(インク)が噴射される。これによって、シートSでは、複数のライン画像L1がY軸方向に間隔を空けて並ぶ。こうして1パス目の主走査が完了すると、副走査が実行されて、キャリッジ32がY軸正方向へ移動距離Y32だけ移動する。
この副走査が完了すると、同図の「2パス目」の欄に示すように、キャリッジ32がシートSの有効印刷領域IRの上側をX軸負方向へ通過するとともに、記録ヘッド34の各ノズル35から液体が噴射される。これによって、シートSでは、1パス目に形成された複数のライン画像L1それぞれの間に新たなライン画像L2が1本ずつ形成される。こうして2パス目の主走査が完了すると、副走査が実行されて、キャリッジ32がY軸正方向へ移動距離Y32だけ移動する。続いて、「1パス目」「2パス目」と同じ要領で「3パス目」「4パス目」が実行されて、有効印刷領域IRに1フレーム分の画像が印刷される。
このように4パスを実行することで、1本のノズル35が4本のライン画像L1〜L4をY軸方向に隣接して形成する。そして、この動作を複数のノズル35のそれぞれが実行することで、ライン画像L1〜L4がY軸方向に繰り返し並んで形成される。こうして、シートSの有効印刷領域に対して1フレーム分の画像を印刷する1フレーム印刷処理(画像記録処置)が実行される。
ところで、この実施形態では、印刷処理において形成されるライン画像L1〜L4のY軸方向への幅(線幅)を調整するために、コロナ処理機8による表面改質処理が適当なタイミングで実行される。具体的には、ロール状にシートSを巻いたロールR1が交換された場合や、所定数のフレーム分の印刷処理(画像記録処理)が実行される度に、表面改質処理が実行される。しかも、この実施形態では、表面改質処理でシートSに与えるエネルギーが、シートSに形成されたマークMのY軸方向への幅(線幅)に基づいて調整される(エネルギー調整処理)。続いて、これら一連の動作について詳述する。
図5は、第1実施形態で実行される動作のフローを示す模式図である。同図では、シートSおよびその周辺部が、X軸方向に平行なシートSの搬送方向Dsに展開されて示されている。図5の「エネルギー調整処理」の欄に示すように、表面改質処理を実行する場合は、これに先立って、線幅検出用のマークMが、シートSのうちプラテン30上面で支持される有効印刷領域IRに形成される。このマークMは、X軸方向に延びるライン形状を有しており、記録ヘッド34が1本のノズル35から液体を噴射しつつX軸方向に移動することで形成される。したがって、このマークMは、1本のノズル35が形成する1本のライン画像L1〜L4に相当する線幅を有することとなる。
こうして形成されたマークMは、プラテン30の上面に対向して配置された光学センサーSoにより検出される。この光学センサーSoは、プラテン30に対する位置が固定された状態で本体ケース1により支持されたラインセンサーである。具体的には、光学センサーSoは、その検出領域Rsの長手方向がY軸方向と平行となるように位置決めされており、検出領域Rsにある検出対象物(すなわち、マークM)を検出する。そして、光学センサーSoは、マークMのY軸方向への幅(すなわち、線幅)に関する情報を、メカコントローラー420に送信する。これにより、メカコントローラー420は、シートS上に形成されたマークMの線幅を検出することができる。
メカコントローラー420は、こうして検出したマークMの線幅に基づいて、表面改質処理でのエネルギーを調整する(エネルギー調整処理)。このエネルギー調整は、放電バイアス発生部84がコロナ放電電極82に印加する放電バイアスの設定値を調整することで行う。つまり、検出した線幅が所定の範囲より狭い場合は、放電バイアスの設定値を上げて、表面改質処理のエネルギーを増大させる。また、検出した線幅が所定の範囲以内にある場合は、放電バイアスの設定値を維持して、表面改質処理でのエネルギーを変えない。また、検出した線幅が所定の範囲より広い場合は、放電バイアスの設定値を下げて、表面改質処理でのエネルギーを減少させる。
このようなエネルギー調整処理が完了すると、続いて、シートSに表面改質処理が実行される。具体的には、調整後の放電バイアスをコロナ放電電極82に印加した状態で、シートSを搬送方向Dsへ距離L82だけ搬送する。ここで、距離L82は、搬送方向D82において、コロナ放電電極82の対向位置からプラテン30上の有効印刷領域IRの下流端までのシートSの距離である。これにより、図5の「表面改質処理」の欄において、シートSのコロナ放電電極82から有効印刷領域IRの下流端までの範囲が表面改質処理済みとなる。このようにして、シートSが距離L82だけ搬送された時点で、コロナ放電電極82への放電バイアス印加が停止されるとともに、シート搬送が停止される。その結果、プラテン30上面には、シートSの表面改質処理済みの範囲F1が位置することとなる。
続いて、図5の「1フレーム分の印刷処理」の欄に示すように、シートSの範囲F1を有効印刷領域IRとして、1フレーム分の印刷処理が実行される(1フレーム印刷処理)。さらに、図5に示す例では、搬送方向Dsへ有効印刷領域IRの長さLfずつシートSが間欠搬送され。これにより、範囲F1に連なって後続するシートSの範囲F2、F3、…が順番に、プラテン30上面に送り出されて停止する。そして、プラテン30上面で停止するシートSの範囲F2、F3、…それぞれに対して、1フレーム分の印刷処理が実行される(1フレーム印刷処理)。
なお、このシートSの間欠搬送において、シートSが停止している間は、コロナ放電電極82への放電バイアス印加が停止される一方、シートSが移動している間は、コロナ放電電極82に調整後の放電バイアスが印加される。こうして、コロナ放電電極82は、間欠搬送に伴って搬送方向Dsに通過するシートSに対して調整後のエネルギーを与える。これによって、搬送方向Dsにおけるコロナ放電電極82の下流側には、表面改質処理済みのシートSが供給される。したがって、プラテン30上面にはシートSの表面改質処理済の範囲F2、F3、…が送り出されて、これらの範囲F2、F3、…に対して印刷処理が実行される。そして、所定数のフレーム分の印刷処理が実行される度に、再びエネルギー調整処理を実行して、表面改質処理のためにコロナ放電電極82に印加される放電バイアスの設定値が調整される。
以上のように、この実施形態では、X軸方向に延びる1ライン分のライン画像L1〜L4をY軸方向に複数並べて形成する1フレーム印刷処理(画像記録処理)が、シートSの所定の有効印刷領域IRに対して実行される。この際、有効印刷領域IRに対しては、表面改質処理が実行される。したがって、表面改質処理後の有効印刷領域IRに形成されるライン画像L1〜L4のY軸方向への幅(線幅)を、表面改質処理でシートSに与えられるエネルギーの大きさにより変化させることが可能となっている。しかも、この実施形態では、記録ヘッド34から液体を噴射させて形成したマークMのY軸方向の幅(線幅)を検出し、その結果に基づいて表面改質処理でのエネルギーが調整される(エネルギー調整処理)。つまり、実際にシートSに形成したマークMの線幅に基づいて、表面改質処理でのエネルギーが調整される。したがって、ライン画像L1〜L4の線幅を高精度に制御することができ、その結果、ライン画像L1〜L4間における隙間の発生を抑制することが可能となっている。
また、この実施形態では、X軸方向に平行な搬送方向Dsへ有効印刷領域Lfの長さLfずつシートSを間欠搬送するとともに、間欠停止の度にプラテン30で停止しているシートSの有効印刷領域IRに対して1フレーム印刷処理を実行する。そして、コロナ処理機8は、プラテン30に対して搬送方向Dsの上流側でシートSに対向しており、間欠搬送に伴って搬送方向Dsに通過するシートSに対してエネルギーを与えることで、以後の間欠停止において1フレーム印刷処理が実行される有効印刷領域IRに表面改質処理を実行している。したがって、シートSへの表面改質処理を、シートSの間欠搬送と並行して効率的に実行することが可能となっている。
また、この実施形態のプリンター300では、シートSをロール状に巻いて保持する繰出部2から引き出されたシートSがプラテン30にまで搬送される。このような画像記録装置では、交換される前後のシートSで表面状態が異なることに起因して、交換前ではライン画像L1〜L4間の隙間の発生が抑制されていても、交換後にライン画像L1〜L4間の隙間が発生してしまう場合がある。これに対して、この実施形態では、繰出部2に保持されるシートSが交換されると、エネルギー調整処理が実行されて、表面改質処理でのエネルギーが最適化される。これによって、シートSの交換後において、ライン画像L1〜L4の線幅を高精度に制御して、ライン画像L1〜L4間における隙間の発生を抑制することが可能となる。
第2実施形態
上述のように、プラテン30に対して搬送方向Dsの上流側にコロナ処理機8を設けることで、コロナ処理機8より搬送方向Dsの下流側に表面改質処理済みのシートSを供給することができる。その結果、プラテン30の位置で実行される印刷処理を、表面改質処理済みのシートSに対して確実に実行することができる。
なお、この印刷処理は、シートSを停止させた状態で実行される。この際、図5の「1フレーム分の印刷処理」の欄に示すように、印刷処理を受けている範囲(同欄の範囲F1)に後続する範囲(同欄の範囲F2)は、表面改質処理済みの部分とそうでない残りの部分とを有した状態で、実行中の印刷処理の完了を待つこととなる。そして、この印刷処理が完了すると、シートSの搬送開始と同時にコロナ処理機8が作動して、後続範囲(同欄の範囲F2)の表面改質処理が未実行の残りの部分にも表面改質処理が実行される。こうして、全面に表面改質処理が実行された後続範囲(同欄では範囲F2)がプラテン30の上面に搬送されて、1フレーム印刷処理を受ける。
このような構成では、1フレーム印刷処理で同時に印刷処理を受ける1つの範囲において、表面改質処理の実行タイミングが異なる2つの部分が存在することとなる。その結果、これら2つの部分の間で表面エネルギーが異なって、形成されるライン画像L1〜L4の線幅が若干不均一になることが考えられる。そこで、第2実施形態に示すように、次のようなフローを実行しても良い。
図6は、第2実施形態で実行される動作のフローを示す模式図である。同図では、シートSおよびその周辺部が、X軸方向に平行なシートSの搬送方向Dsに展開されて示されている。なお、以下では、第1実施形態との差異を中心に説明する一方、共通部分については説明を適宜省略する。ただし、第1実施形態と共通する構成を備えることで、第2実施形態においても第1実施形態と同様の効果が奏されることは言うまでも無い。また、この点は、第2実施形態に続いて説明する第3〜第5実施形態についても同様である。
エネルギー調整処理は、第1実施形態と第2実施形態とで共通するので、説明を省略する。第2実施形態の第1実施形態との主な違いは、シートSの間欠搬送動作である。つまり、第1実施形態では、有効印刷領域IRの長さLfずつシートSを間欠搬送させていたのに対して、第2実施形態では、コロナ放電電極82の対向位置からプラテン30上の有効印刷領域IRの下流端までのシートSの距離L82ずつシートSを間欠搬送させている。
このように構成した場合、図6の「1フレーム分の印刷処理」の欄に示すように、先行範囲(同欄のF1)への印刷処理の実行中に、コロナ処理機8に対して搬送方向Dsの下流側にあったシートSは全て、この印刷処理後の間欠搬送によって、プラテン30に対して搬送方向Dsの下流側に送り出されることとなる。その結果、プラテン30の上面には、この間欠搬送に伴うタイミングで表面改質処理が施されたシートSの範囲(同欄の範囲F2)がプラテン30の上面に位置して、有効印刷領域IRとして次の印刷処理を受けることとなる。したがって、この印刷処理で形成されるライン画像L1〜L4の線幅を均一化することができる。
以上のように、この実施形態においても、実際にシートSに形成したマークMの線幅に基づいて、表面改質処理でのエネルギーを調整することで、ライン画像L1〜L4の線幅を高精度に制御することができる。その結果、ライン画像L1〜L4間における隙間の発生を抑制することが可能となる。
また、この実施形態では、X軸方向に平行な搬送方向Dsへ有効印刷領域Lf以上の長さL82ずつシートSを間欠搬送するとともに、間欠停止の度にプラテン30で停止しているシートSの有効印刷領域IRに対して1フレーム印刷処理を実行する。そして、コロナ処理機8は、プラテン30に対して搬送方向Dsの上流側でシートSに対向しており、間欠搬送に伴って搬送方向Dsに通過するシートSに対してエネルギーを与えることで、以後の間欠停止において1フレーム印刷処理が実行される有効印刷領域IRに表面改質処理を実行している。したがって、シートSへの表面改質処理を、シートSの間欠搬送と並行して効率的に実行することが可能となっている。
第3実施形態
上述してきた実施形態では、コロナ処理機8は、プラテン30に対してシートSの搬送方向Dsの上流側に配置されていた。しかしながら、コロナ処理機8の位置はこれに限られず、例えば、記録ヘッド34のキャリッジ32にコロナ処理機8を搭載しても良い。そこで、第3実施形態では、このような構成において実行可能な動作について説明する。
図7は、第3実施形態で実行される動作のフローを示す模式図である。同図では、シートSおよびその周辺部が、X軸方向に平行なシートSの搬送方向Dsに展開されて示されている。エネルギー調整処理は、第1実施形態と第2実施形態とで共通するので、説明を省略する。第2実施形態の第1実施形態との主な違いは、表面改質処理での動作である。
つまり、図7の「表面改質処理」の欄に示すように、この実施形態では、エネルギー調整処理が完了すると、調整後の放電バイアスをコロナ放電電極82に印加した状態で、コロナ処理機8と一体的にキャリッジ32をX軸方向に移動させる。これにより、コロナ処理機8が、プラテン30上面における有効印刷領域IRのX軸方向の一方外側から他方外側まで移動して、有効印刷領域IRの全面に表面改質処理が実行される。なお、図7の「表面改質処理」の欄において、破線で示したキャリッジ32は移動開始地点にあるキャリッジ32を表しており、実線で示したキャリッジ32は移動終了地点にあるキャリッジ32を表している。なお、この実施形態では、プラテン30が接地されて、コロナ放電のアース電極として機能する。
そして、表面改質処理が施されたシートSの有効印刷領域IRに対して1フレーム分の印刷処理が実行される。この印刷処理が完了すると、シートSが間欠搬送されて、新たなシートSの範囲F2、F3、…がプラテン30の上面に順次送り出されるとともに、プラテン30上面に順次停止する当該範囲F2、F3、…に対して、表面改質処理および1フレーム分の印刷処理が実行される。
以上のように、この実施形態においても、実際にシートSに形成したマークMの線幅に基づいて、表面改質処理でのエネルギーを調整することで、ライン画像L1〜L4の線幅を高精度に制御することができる。その結果、ライン画像L1〜L4間における隙間の発生を抑制することが可能となる。
第4実施形態
ところで、上述のようにコロナ処理機8をキャリッジ32に搭載した構成においては、次の図8に示すような動作を実行することもできる。図8は、第4実施形態で実行される動作のフローを示す模式図である。第4実施形態が第3実施形態と異なる点は、表面改質処理に並行して1フレーム印刷処理の1パス目を実行している点である。
図8の「表面改質処理」の欄に示すように、エネルギー調整処理が完了すると、調整後の放電バイアスをコロナ放電電極82に印加した状態で、コロナ処理機8と一体的にキャリッジ32を、有効印刷領域IRのX軸負方向の外側からX軸正方向の外側まで移動させる。なお、図7の「表面改質処理」の欄において、破線で示したキャリッジ32は移動開始地点にあるキャリッジ32を表しており、実線で示したキャリッジ32は移動終了地点にあるキャリッジ32を表している。こうして、キャリッジ32はコロナ処理機8と一緒に有効印刷領域IRの上方をX軸正方向に通過して、有効印刷領域IRの全面に表面改質処理を実行する。
一方、このキャリッジ32では、コロナ処理機8が記録ヘッド34のX軸正方向の下流側に配置されている。したがって、キャリッジ32のX軸正方向への移動の際、記録ヘッド34は、コロナ処理機8の少し後を追いかけて移動する。したがって、この表面改質処理に伴うキャリッジ32の移動中に、記録ヘッド34から液体を噴射した場合、この液体は表面改質処理済みのシートSに着弾することとなる。そこで、この実施形態では、表面改質処理と並行して1フレーム印刷処理の1パス目を実行して、表面改質処理が実行された有効印刷領域IRに1パス目の画像(ライン画像L1)を形成する。このように、この実施形態では、表面改質処理と1パス目とを並行して行うことで、表面改質処理を効率的に行うことが可能となっている。
そして、この1パス目に続いて2〜4パス目が実行されて、1フレーム分の印刷処理が完了する。この印刷処理が完了すると、シートSが間欠搬送されて、新たなシートSの範囲F2、F3、…がプラテン30の上面に順次送り出されるとともに、プラテン30上面に順次停止する当該範囲F2、F3、…に対して、表面改質処理とこれに並行する1パス目、および2〜4パス目が実行されて、1フレーム分の印刷処理が順次実行される。
以上のように、この実施形態においても、実際にシートSに形成したマークMの線幅に基づいて、表面改質処理でのエネルギーを調整することで、ライン画像L1〜L4の線幅を高精度に制御することができる。その結果、ライン画像L1〜L4間における隙間の発生を抑制することが可能となる。
第5実施形態
ところで、表面改質処理前においてシートSの表面エネルギーは一様とは限らず、Y軸方向への位置によって異なる場合がある。このような場合、シートSに形成されるライン画像L1〜L4の線幅もY軸方向への位置によってばらつくことも考えられる。そこで、第5実施形態では、このようなライン画像L1〜L4の線幅のばらつきを効果的に抑制するために、次に説明するような構成を備える。
つまり、第5実施形態では、複数のマークMがY軸方向において互いに異なる位置に形成されおり、これによって、Y軸方向への位置に依存したマークMの線幅のばらつきを、各マークMの線幅から検出することが可能となっている。さらに、このマークMの線幅を検出した結果に基づいて、Y軸方向の所定範囲毎に表面改質処理を実行できるように、コロナ処理機8が構成されている。具体的には、コロナ処理機8は複数のコロナ放電電極82をY軸方向に並べた構成を備えており、各コロナ放電電極82に対してマークMがk個ずつ形成される(図9)。ここで、図9は、第5実施形態でのコロナ処理機の構成とマークの形成位置との関係を示す模式図である。
これらY軸方向に並ぶ複数のマークMは、光学センサーSoにより検出される。そして、メカコントローラー420は、光学センサーSoが出力する信号に基づいてマークMの線幅を検出すつとともに、この検出結果に基づいて表面改質処理でのエネルギーを領域R82毎に調整する(エネルギー調整処理)。具体的には、メカコントローラー420は、領域R82毎に形成されたk個のマークMの線幅の平均値を算出する。こうして、複数の領域R82それぞれについて、k個のマークMの平均線幅が算出される。そして、メカコントローラー420は、各領域R82に表面改質処理を行うコロナ放電電極82に印加する印加バイアスを、当該領域R82でのマークMの平均線幅に基づいて設定する。こうして、複数のコロナ放電電極82のそれぞれに対して、マークMの線幅に基づいて調整された印加バイアスが設定される。
そして、複数のコロナ放電電極82に対して、それぞれの印加バイアスを印加して、シートSに表面改質処理が実行される。なお、この表面改質処理は、第1・第2実施形態のようにシートSを搬送方向Dsに移動させて実行しても良く、第3・第4実施形態のように、コロナ処理機8をX軸方向に移動させて実行しても良い。そして、上記実施形態と同様にして、シートSを搬送方向Dsに間欠搬送させつつ、表面改質処理が実行された有効印刷領域IRに対して1フレーム分の印刷処理を順次実行すれば良い。
以上のように、この実施形態においても、実際にシートSに形成したマークMの線幅に基づいて、表面改質処理でのエネルギーを調整することで、ライン画像L1〜L4の線幅を高精度に制御することができる。その結果、ライン画像L1〜L4間における隙間の発生を抑制することが可能となる。
また、この実施形態では、シートSのY軸方向に異なる領域R82毎に、表面改質処理でのエネルギーを調整可能となっている。このような構成は、シートSのY軸方向に異なる領域R82それぞれについて、表面改質処理でのエネルギーを調整して、ライン画像L1〜L4の線幅を制御することができるため、ライン画像L1〜L4間での隙間の発生を抑制するにあたって有利となる。
特に、この実施形態では、シートSのY軸方向に異なる領域R82毎にマークMが形成されるとともに、シートSのY軸方向に異なる複数の領域R82に与えるエネルギーがそれぞれの領域R82に形成されたマークMの線幅を検出した結果に基づいて調整される。このような構成では、実際にシートSに形成したマークMのY軸方向の幅に基づいて表面改質処理でのエネルギーを調整するといった動作を、各領域R82について行うことができる。したがって、シートSの各領域R82に対して、最適化されたエネルギーで表面改質処理を実行して、ライン画像L1〜L4のY軸方向への幅を高精度に制御することができる。その結果、ライン画像L1〜L4間における隙間の発生をより効果的に抑制することが可能となっている。
なお、この実施形態において、各領域R82に形成されるマークMの個数は1個以上であれば良く、また、領域R82毎に異なる個数のマークMを形成することもできる。
第6実施形態
上述の第5実施形態では、シートSのY軸方向に沿って、表面改質処理でのエネルギーを調整可能となっている。なお、続く第6実施形態では、シートSのY軸方向に沿って連続的に表面改質処理でのエネルギーを調整して、ラインL1〜L4の線幅を高精度に制御する構成について説明する。このように構成することで、ライン画像L1〜L4間における隙間の発生を抑制することができる。
具体的には、アース電極ローラー81の軸方向に対し、コロナ放電電極82とアース電極ローラー81を平行に(一定の距離で)配置するのではなく、Y軸方向に沿って距離が異なるように配置すれば良い(つまり、コロナ放電電極82をアース電極ローラー81に対して傾けて配置する)。また、コロナ放電電極82を2本設けて、一方はY軸の正の方向に対して距離が離れるように配置し、他方はY軸方向の負の方向に対して距離が離れるように配置することで、いずれかのコロナ放電電極82に放電バイアスを印加すれば良い。また、アース電極ローラー81の軸方向に対し、コロナ放電電極82とアース電極ローラー81を平行に(一定の距離で)配置し、外径を連続的に太い(または細い)コロナ放電電極82に放電バイアスを印加しても良い。換言すれば、Y軸方向の一方側に向けて外径が連続的に太くあるいは細く変化するコロナ放電電極82と、Y軸方向に外径が一様なアース電極ローラー81とを、互いの中心線が平行となるように対向させれば良い。
これらの構成では、アース電極ローラー81の表面とコロナ放電電極82の表面とが互いに傾いて対向する。したがって、表面改質処理においてシートSに付与されるエネルギーをY軸方向に沿って連続的に変化させることが可能となる。そして、実際にシートSに形成したマークMの線幅に基づいて、コロナ放電電極82への印加バイアスを調整することで、表面改質処理でのエネルギーをY軸方向に沿って連続的に調整することができ、ライン画像L1〜L4の線幅を高精度に制御することができる。その結果、ライン画像L1〜L4間における隙間の発生を抑制することが可能となる。
その他
以上のように、上記実施形態では、プリンター300が本発明の「画像記録装置」に相当し、シートSが本発明の「記録媒体」に相当し、インクが本発明の「液体」に相当し、プラテン30が本発明の「支持部材」に相当し、記録ヘッド34が本発明の「記録ヘッド」に相当し、ヘッドコントローラー410とメカコントローラー420とが協働して本発明の「制御部」として機能し、光学センサーSoとメカコントローラー420とが協働して本発明の「調整部」として機能し、放電バイアス発生部84とコロナ処理機8とが協働して本発明の「表面改質部」として機能し、X軸方向が本発明の「主走査方向」に相当し、Y軸方向が本発明の「副走査方向」に相当している。また、上記実施形態では、1フレーム印刷処理が本発明の「画像記録処理」に相当し、表面改質処理が本発明の「表面改質処理」に相当し、エネルギー調整処理が本発明の「調整処理」に相当している。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、エネルギー調整処理を実行するタイミングは上述のものに限られず、必要に応じて適宜エネルギー調整処理を実行すれば良い。つまり、所定時間が経過する毎にエネルギー調整処理を実行するように構成したり、装置の電源スイッチSW(図3)が投入されると、エネルギー調整処理を実行するように構成したりすることができる。
また、上記実施形態では、画像記録装置として、インクジェット式のプリンター300が採用されているが、インク以外の他の流体を噴射したり吐出したりする流体噴射装置を採用しても良い。また、微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置全般に本発明を適用可能である。この場合、液滴とは、液体噴射装置から吐出される液体の状態を指し、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含む。また、ここで言う液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であれば良い。例えば、液相の状態にある物質が液体に含まれ、粘性の高いあるいは低い液状態、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状体が液体に含まれる。また、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散あるいは混合されたものが液体に含まれる。また、液体の代表的な例としては、上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは、一般的な水性インク、油性インク、ジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。
また、上記実施形態では、1フレームで実行される各副走査ではいずれもY軸正方向にのみキャリッジ32を移動させて、4本のライン画像L1〜L4をこの順番でY軸正方向に並べて形成していた。しかしながら、副走査においてキャリッジ32が移動可能な方向はY軸正方向に限られない。すなわち、1フレームで実行される各副走査において、Y軸負方向にキャリッジ32を移動させて、4本のライン画像L1〜L4をこの順番でY軸負方向(つまり、上記実施形態と逆方向)に並べて形成しても良い。あるいは、Y軸正方向にキャリッジ32を移動させる副走査と、Y軸負方向にキャリッジ32を移動させる副走査の両方を1フレーム中に実行しても良い。具体例を挙げると次のとおりである。
つまり、1パス目のライン画像L1を形成した後に、3ライン分のライン画像の幅に相当する移動距離Y32だけY軸正方向にキャリッジ32を移動させる副走査を行って、2パス目のライン画像L2を形成する。これによって、例えば図4のライン画像L4に相当する位置に、2パス目のライン画像L2が形成される。その後、2パス目〜3パス目および3パス目〜4パス目のそれぞれで実行される副走査では、1ライン分のライン画像の幅に相当する移動距離Y32だけY軸負方向にキャリッジ32を移動させて、3パス目および4パス目を実行する。これによって最終的には、ライン画像L1、L4、L3、L2がこの順番でY軸正方向に並べて形成される。そして、このような印刷処理においても、副走査におけるキャリッジ32の移動距離Y32を、シートSに形成されたマークのY軸方向への変位に基づいて調整することで、上述の隙間の発生を抑制することが可能となる。
また、上記実施形態では、4パスで1フレームの印刷を実行する場合を主に例示して説明を行った。しかしながら、1フレームの印刷を構成するパスの数は複数であれば良く、4パスに限られない。
マークMの形状については、種々の態様のものを採用することができる。また、マークMの寸法についても適宜変更可能である。
また、上記実施形態では、検出部を構成するにあたりラインセンサーを用いていた。しかしながら、ラインセンサー以外のセンサーを用いて検出部を構成しても良い。要するに、シートSに形成されたマークMを検出できるものであれば足りる。
また、上記実施形態では、ピエゾ方式を用いたインクジェットプリンターに対して本発明を適用した場合について説明した。しかしながら、サーマル方式を用いたインクジェットプリンターに対しても本発明を適用可能であることは言うまでもない。
また、上記実施形態では、キャリッジ32をX軸方向に往復走査させて印刷動作を行う場合を例示して説明を行った。しかしながら、キャリッジ32をX軸方向の片方向にのみ走査させて印刷動作を行う構成に対しても、本発明を適用可能である。