第1実施形態
図1は、本発明を適用可能な印刷システムの一例を示す模式図である。なお、図1や以下の図面では必要に応じて、装置各部の配置関係を明確にするために、Z軸を鉛直軸とするXYZ直交座標が併記されている。以下の説明では、各座標軸(の矢印)が向く方向を正方向とし、その反対方向を負方向とし、Z軸の正側を上側とし、Z軸の負側を下側として適宜取り扱う。
印刷システム100は、パーソナルコンピューター等の外部装置から受信した画像データに基づいて印刷データを生成するホスト装置200と、ホスト装置200から受信した印刷データに基づいて画像を印刷するプリンター300とを備える。このプリンター300は、ロール状に巻かれた長尺なシートSを繰り出しつつ、このシートSに対してインクジェット方式を用いて画像を印刷するものである。
図1に示すように、プリンター300は、略直方体形状を有する本体ケース1を備える。本体ケース1内部には、シートSを巻いたロールR1からシートSを繰り出す繰出部2と、繰り出されたシートSにインクを噴射して印刷を行う印刷室3と、インクが付着したシートSを乾燥させる乾燥部4と、乾燥後のシートSをロールR2として巻き取る巻取部5とが配置されている。
より詳しくは、本体ケース1内は、XY平面に平行に(すなわち水平に)配置された平板状の基台6によってZ軸方向へ上下に区画されており、基台6の上側が印刷室3となっている。印刷室3内の略中央部では、プラテン30が基台6の上面に固定されている。プラテン30は矩形状を有しており、XY平面に平行なその上面によって、シートSを下側から支持する。そして、記録ユニット31が、プラテン30上に支持されたシートSに対して印刷を行う。
一方、基台6の下側には、繰出部2、乾燥部4および巻取部5が配置されている。繰出部2は、プラテン30に対してX軸負方向の下側(図1の左斜め下)に配置されており、回転自在な繰出軸21を備えている。そして、この繰出軸21にシートSが巻きつけられて、ロールR1が支持されている。一方、巻取部5は、プラテン30に対してX軸正方向の下側(図1の右斜め下)に配置されており、回転自在な巻取軸51を備えている。そして、この巻取軸51にシートSが巻き取られて、ロールR2が支持されている。また、乾燥部4は、X軸方向における繰出部2と巻取部5との間で、プラテン30の直下に配置されている。なお、乾燥部4は、繰出部2および巻取部5に対してはやや上側にある。
そして、繰出部2から巻取部5へと搬送されるシートSが、7本のローラー71〜77により案内されながら、印刷室3と乾燥部4とを順番に通過する。つまり、繰出部2が備える繰出軸21のX軸正方向にはローラー71が配置されており、繰出軸21からX軸正方向に繰り出されたシートSは、ローラー71に巻き掛けられて上へと案内される。
ローラー71の上側であって印刷室3の内部には、後述するコロナ処理機8のアース電極ローラー81と2本のローラー72、73がX軸正方向にこの順に並んでいる。アース電極ローラー81は、2本のローラー72、73に対してやや下側にある。そのため、ローラー71から上へと案内されたシートSは、アース電極ローラー81に巻き掛けられて斜め上へと向きを変えた後に、2本のローラー72、73へ巻き掛けられる。
これらローラー72、73は、プラテン30を挟むようにしてX軸方向にまっすぐ並んで(すなわち水平に)配置されており、それぞれの頂部がプラテン30の上面(シートSを支持する面)と同一の高さとなるように位置調整されている。したがって、ローラー72に巻き掛けられたシートSは、ローラー73に到るまでの間、プラテン30の上面に摺接しつつ水平(X軸方向)に移動する。そして、ローラー73に巻き掛けられたシートSは、下へと案内される。
ローラー73の下側(基台6より下側)には、2本のローラー74、75がX軸負方向にこの順に並んでいる。ローラー74とローラー75とに巻き掛けられたシートSは、両ローラー74、75の間においてX軸方向に平行に(すなわち水平に)案内される。また、ローラー74、75の間には乾燥部4が配置されている。したがって、ローラー74に巻き掛けられたシートSは、X軸負方向に向きを変えるとともに、ローラー75に到るまでの間に乾燥部4の内部を通過する。
ローラー75の下側では、2本のローラー76、77がX軸正方向にこの順に並んでいる。そして、ローラー76に巻き掛けられたシートSは、X軸正方向に向きを変えてローラー77に到る。また、ローラー77に巻き掛けられたシートSは、ローラー77のX軸正方向に配置された巻取部5の巻取軸51に巻き取られる。
このように、繰出部2から繰り出されたシートSは、印刷室3や乾燥部4を通過して巻取部5に巻き取られる。そして、このシートSに対して、印刷室3での印刷処理や乾燥部4の乾燥処理が施される。
印刷室3での印刷処理は、プラテン30の上側に配置された記録ユニット31により実行される。この記録ユニット31は、印刷室3内のX軸負方向の端部(図1の左端部)に配置されたインクカートリッジCRから図示しないインク供給機構によって供給されたインクを、インクジェット方式によりシートSに噴射して印刷を行う。具体的には、この記録ユニット31は、キャリッジ32と、キャリッジ32の下面に取り付けられた平板状の支持板33と、支持板33の下面に取り付けられた複数の記録ヘッド34とを備える。
図2は、記録ユニットの構成を部分的に示す平面図である。図2に示すように、支持板33の下面では、15個の記録ヘッド34がY軸方向に等ピッチで2行千鳥で並んでいる。これらの記録ヘッド34は、ノズル35からインクを噴射するものであり、互いに同一の構成を備えている。そこで以下では、1つの記録ヘッド34で代表して、その構成の詳細について説明する。
記録ヘッド34の下面では、複数(例えば180個)のノズル35がY軸方向に等ピッチ(=P35)で直線状に並んで1つのノズル列35Lが構成されるとともに、複数のノズル列35LがX軸方向に等ピッチで並んでいる。記録ヘッド34の下面で並ぶ複数のノズル列35Lは、互いに異なるインク色に対応しており、例えば8色のインクを用いた場合は、8列のノズル列35Lが記録ヘッド34の下面に並ぶ。そして、同じノズル列35Lに属するノズル35は互いに同じ色のインクを噴射する一方、異なるノズル列35Lに属するノズル35は互いに異なる色のインクを噴射する。なお、ノズル35は、インクの詰まった微細管に取り付けられたピエゾ素子に電圧を印加して変形させることで、インクを管外に噴射するピエゾ方式によるものである。
そして、このような記録ヘッド34が3個ないし4個集まって、1つのヘッドユニット34uを構成している。その結果、3個の記録ヘッド34からなる1つのヘッドユニット34uと、4個の記録ヘッド34からなる3つのヘッドユニット34uが、この順番でY軸正方向に並んで配置されている。
図1に戻って説明を続ける。上述のように構成された記録ユニット31のキャリッジ32は、支持板33および記録ヘッド34と一体的に移動自在となっている。具体的には、印刷室3内には、X軸方向に延びる第1ガイドレール36が設けられており、キャリッジ32は、第1CRモーターMx(図5)の駆動力を受けると、第1ガイドレール36に沿ってX軸方向に移動する。さらに、印刷室3内には、Y軸方向に延びる第2ガイドレール(図示省略)が設けられており、キャリッジ32は、第2CRモーターMy(図5)の駆動力を受けると、第2ガイドレールに沿ってY軸方向に移動する。
そして、プラテン30の上面で停止するシートSに対して、記録ユニット31のキャリッジ32をXY面内で二次元的に移動させて、印刷が実行される。具体的には、記録ユニット31は、キャリッジ32をX軸方向(主走査方向)に移動させつつ記録ヘッド34の各ノズル35からシートSにインクを噴射する動作(主走査)を実行する。この主走査では、1つのノズルが噴射するインクにより形成されたX軸方向に延びる1ライン分の画像(ライン画像)が、Y軸方向に間隔を空けつつ複数並んで、二次元の画像が印刷される。そして、この主走査と、キャリッジ32をY軸正方向(副走査方向)に移動させる副走査とが交互に実行されて、複数回の主走査が実行される(ラテラルスキャン方式)。
つまり、記録ユニット31は1回の主走査を完了すると、副走査を行なってキャリッジ32をY軸正方向に移動させる。続いて、記録ユニット31は、この副走査によって移動した位置から、キャリッジ32をX軸方向(の先程の主走査とは反対向き)に移動させる。これによって、先程の主走査により既に形成された複数のライン画像それぞれの間に、新たな主走査によるライン画像が形成される。そして、これら主走査と副走査とが交互に実行される。つまり、このプリンター300では、キャリッジ32をX軸方向に移動させつつノズル35からインクを噴射して、複数のライン画像からなる中間生成画像を形成する動作(主走査)を、Y軸方向への位置を変えながら(副走査)、複数回数実行することで、中間生成画像を重ね合わせた画像が形成される。
このように、複数回の主走査を実行することで、1回の印刷が実行される。ここで、1回の主走査を「パス」と称することとし、複数回のパスにより実行される1回の印刷を「フレーム」と称することとする。また、1回のパスでシートSに形成される中間生成画像を「1パス画像」と称することとする。
この実施形態では、1フレームを4パス、6パス、8パス、16パスで形成する4種類の印刷モードが用意されており、これらから選択した1の印刷モードで印刷を実行することができる。これらのうち、4〜8パスの印刷モードは、主として解像度調整のために設けられている。つまり、M回のパスを実行して、M個の1パス画像を重ね合わせることで、1パス画像のM倍の解像度を有する1フレーム分の画像を得ることが可能となる。また、16パスの印刷モードは、8パスの印刷モードと解像度は同じであるが、8パスの印刷モードと異なる態様で印刷を実行することで、より高画質での印刷を実現するものである。これら各印刷モードの詳細は、図6〜図9を用いて後に詳述する。
ちなみに、キャリッジ32は、X軸方向に往復移動可能である。そこで、記録ユニット31は、キャリッジ32の往路および復路のそれぞれでパスを実行することで、複数のパスを効率的に実行している。同様に、キャリッジ32はY軸方向にも往復移動可能である。ただし、1フレーム分の印刷中に実行される各副走査では、キャリッジ32は、Y軸正方向にのみ移動する。これによって、キャリッジ32の移動制御の簡素化が図られている。
上述のような1フレームの印刷は、シートSをX軸方向に間欠的に移動させながら繰り返し実行される。具体的には、プラテン30の上面のほぼ全域にわたる所定範囲が印刷領域となっている。そして、この印刷領域のX軸方向への長さに対応する距離(間欠搬送距離)を単位として、シートSをX軸方向へ間欠的に搬送するとともに、間欠搬送中にプラテン30の上面に停止するシートSに対して1フレームの印刷が行われる。具体的に言えば、プラテン30に停止するシートSに1フレームの印刷が終わると、シートSが間欠搬送距離だけX軸方向に搬送されて、シートSの未印刷の面がプラテン30に停止する。続いて、この未印刷面に新たに1フレームの印刷が実行され、これが完了すると、再びシートSが間欠搬送距離だけX軸方向に搬送される。そして、これら一連の動作が繰り返し実行される。
なお、間欠搬送中にプラテン30の上面に停止しているシートSを平坦に保つために、プラテン30は、その上面に停止しているシートSを吸引する機構を備える。具体的には、プラテン30の上面には、図示しない多数の吸引孔が開口するとともに、プラテン30の下面には、吸引部37が取り付けられている。そして、吸引部37が動作することで、プラテン30の上面の吸引孔に負圧が発生して、シートSがプラテン30の上面に吸引される。そして、吸引部37は、印刷のためにシートSがプラテン30上に停止している間は、シートSを吸引することで、シートSを平坦に保つ一方、印刷が終了すると、シートSの吸引を止めて、シートSのスムーズな搬送を可能とする。
さらに、プラテン30の下面には、ヒーター38が取り付けられている。このヒーター38は、プラテン30を所定温度(例えば45度)に加熱するものである。これにより、シートSは、記録ヘッド34から印刷処理を受けるのと並行して、プラテン30の熱によって1次乾燥されることとなる。そして、この1次乾燥により、シートSに着弾したインクの乾燥が促進される。
こうして、プラテン30の上面において、1フレームの印刷を受けるとともに1次乾燥されたシートSは、シートSの間欠搬送に伴って移動して乾燥部4へ到達する。この乾燥部4は、乾燥用に加熱した空気により、シートSに着弾したインクを完全に乾燥させる乾燥処理を実行する。そして、この乾燥処理を受けたシートSは、シートSの間欠搬送に伴って巻取部5に到達して、ロールR2として巻き取られる。
以上のようにして、記録ユニット31および乾燥部4によって、シートSに対して印刷・乾燥処理が施される。また、プリンター300は、上述した記録ユニット31や乾燥部4ほかに、コロナ処理機8やメンテナンスユニット9といった機能部を備える。続いて、これらの構成および動作の詳細について説明する。
コロナ処理機8は、プラテン30に対してシートSの搬送方向の上流側に配置されており、プラテン30に進入する前のシートSの表面を改質するものである。具体的には、このコロナ処理機8は、ローラー72に対してシートSの搬送方向の上流側でシートSを巻き掛けるアース電極ローラー81と、シートSを挟んでアース電極ローラー81に対向するコロナ放電電極82と、コロナ放電電極82を覆う電極カバー83とを備える。コロナ放電電極82は、放電バイアス発生部84(図5)から放電バイアスの印加を受けて、コロナ放電を起こす。このコロナ放電によって、シートSの表面が改質されて、インクに対するシートSの濡れ性が向上する。このように印刷処理に先立ってシートSに表面改質を施しておくことで、印刷処理におけるシートSへのインクの定着性を高めることができる。
メンテナンスユニット9は、プラテン30からX軸負方向に外れた位置に設けられており、非印刷時にホームポジション(メンテナンスユニットの直上位置)に退避する記録ヘッド34に対してメンテナンスを行う。このメンテナンスユニット9は、特開2010−142981号公報と同様の構成を備えており、具体的には、次に示す図4および図5のような構成を備える。
図3は、メンテナンスユニットの構成を模式的に示す部分断面図である。図4は、メンテナンスユニットの構成を模式的に示す部分平面図である。なお、図3では、メンテナンスユニット9と記録ヘッド34との関係を示すために、メンテナンスユニット9と一緒に記録ヘッド34等も併記されている。
メンテナンスユニット9は、メンテナンス部材91を支持する可動プレート93と、可動プレート93を昇降させるカム95を、メンテナンスキャップ90の中に保持した概略構成を備える。このメンテナンスキャップ90は上方に開口しており、その底部には保湿液が供給されている。また、メンテナンスキャップ90は、その下部に設けられた昇降部97の動作によって昇降することで、ホームポジションにある記録ヘッド34に近接してメンテナンスを行うメンテナンス位置と、記録ヘッド34から離れた退避位置との間を移動可能である。なお、図3では、メンテナンスキャップ90がメンテナンス位置にある状態が示されている。
図4に示すように、メンテナンスユニット9では、15個のメンテナンス部材91がY軸方向に千鳥状に配列されている。こうして、15個の記録ヘッド34に一対一で対応して15個のメンテナンス部材91が配置される。各メンテナンス部材91は、対応する記録ヘッド34へのメンテナンスを実行するために、キャップ91aおよびワイパー91bを具備している。そして、各メンテナンス部材91は、カム95の回転に伴って可動プレート93と一体的に図3の位置から上昇して、キャップ91aやワイパー91bにより所定のメンテナンス(クリーニング、ワイピング)を実行する。
具体的には、キャップ91aは、記録ヘッド34のノズル35に対するクリーニングに用いられる。このクリーニングは、キャップ91aを図3の位置から上昇させて、キャップ91aにより記録ヘッド34を覆った状態で、キャップ91a内部に負圧を発生させて、ノズル35から強制的にインクを排出させるものである。このクリーニングにより、粘性が増大したインクやインク中の気泡等をノズル35から除去することができる。
また、ワイパー91bは、記録ヘッド34においてノズル35の開口が並ぶ面(ノズル開口形成面)を拭くワイピングに用いられる。このワイピングは、ワイパー91bを図3の位置から上昇させて、ワイパー91bをノズル開口形成面に当接させた状態で、キャリッジ32をX方向に往復移動させて、ワイパー91bでノズル開口形成面を摺接するものである。このワイピングにより、記録ヘッド34のノズル35の開口から汚れを拭き取ることができる。なお、ワイパー91bとノズル開口形成面との摩擦を減少させてワイピングを円滑に行うために、ワイピングはノズル35からインクを流出させながら実行される。
ところで、上述した通りこの実施形態では、3個ないし4個の記録ヘッド34が集まって構成されたヘッドユニット34uが、Y軸方向に4つ並んでいる。そして、この実施形態では、ヘッドユニット34u毎に選択的にメンテナンスを実行できるように構成されている。
具体的には、4つのヘッドユニット34uに一対一で対応する4つのメンテナンス部材群91Gに、15個のメンテナンス部材91が振り分けられている。これによって、3個ないし4個のメンテナンス部材91から構成されるメンテナンス部材群91Gが、Y軸方向に4つ並ぶこととなる。具体的には、4枚の可動プレートがY軸方向に並んで設けられており、各可動プレート93にメンテナンス部材群91Gを構成する3個ないし4個のメンテナンス部材91が配置されている。
また、4枚の可動プレート93それぞれの下側にはカム95が設けられている。こうして、4枚の可動プレート93に一対一で対応する4個のカム95がY軸方向に並んで配置される。4個のカム95のそれぞれは、互いに所定角度(例えば45度)ずつ傾いた状態で共通のカム回転軸95Aに取り付けられている。したがって、カム回転軸95Aの回転角を調整することで、4枚の可動プレート93のうちの1枚を選択的に上昇させることができる。そして、この上昇させた可動プレート93に設けられたメンテナンス部材群91Gにより、ヘッドユニット34uに対するメンテナンスを実行することができる。こうして、ヘッドユニット34u毎に選択的にメンテナンスを実行することが可能となっている。
以上が、印刷システム100が備える装置構成の概要である。続いて、上述した図1に図5を加えて、図1の印刷システムが備える電気的構成について詳述する。ここで、図5は、図1の印刷システムが備える電気的構成を模式的に示すブロック図である。
上述したとおり、印刷システム100は、プリンター300のほか、これを制御するホスト装置200を備える。このホスト装置200は、例えばパーソナルコンピューターにより構成されており、プリンター300の動作を制御するプリンタードライバー210を内蔵するほか、プリンター300との通信機能を司る転送制御部220を備える。なお、プリンタードライバー210は、ホスト装置200の備えるCPU(Central Processing Unit)がプリンタードライバー210用のプログラムを実行することで構築される。
また、ホスト装置200は、プリンタードライバー用のプログラムが記憶されたメディア230にアクセスして、当該プログラムを読み出すメディア駆動部240を備える。このメディア230としては、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、USB(Universal Serial Bus)メモリー等の種々のメディアを用いることができる。
さらに、ホスト装置200は、作業者とのインターフェースとして、液晶ディスプレイ等で構成されるモニター250と、キーボードやマウス等で構成される操作部260とを備える。なお、タッチパネル式のディスプレイをモニター250として用いて、このモニター250のタッチパネルで操作部260を構成しても良い。モニター250には、印刷対象の画像のほかにメニュー画面が表示されている。したがって、作業者は、モニター250を確認しつつ操作部260を操作することで、メニュー画面から印刷設定画面を開いて、印刷媒体の種類、印刷媒体のサイズ、印刷品質、版数等の各種の印刷条件を設定することができる。
印刷媒体(すなわちシートS)の種類は、紙系とフィルム系に大別される。具体例を挙げると、紙系には上質紙、キャスト紙、アート紙、コート紙等があり、フィルム系には合成紙、PET(Polyethylene terephthalate)、PP(polypropylene)等がある。印刷媒体のサイズとしては、シートSの幅(Y軸方向の幅)が設定される。印刷品質は、上述の複数の印刷モード(4、6、8および16パス)から1つの印刷モードを選択することで、設定することができる。版数は、印刷媒体の同一エリアに複数の版(画像)を重ねて印刷する際に設定されるものであり、具体的には、重ねて印刷する版の数が設定される。ちなみに、複数の版が設定されている場合は、モニター250に版毎の画像を表示することができる。
そして、プリンタードライバー210は、上述のような、モニター250の表示や、操作部260からの入力の処理を制御するホスト制御部211を備える。つまり、ホスト制御部211は、メニュー画面や印刷設定画面等の各種画面をモニター250表示させるともに、各種画面において操作部260から入力された内容に応じた処理を行う。これにより、ホスト制御部211は、作業者からの入力に応じてプリンター300を制御するために必要な制御信号を生成する。
また、プリンタードライバー210は、外部装置から受信した画像データに対して画像処理を施して、印刷データを生成する画像処理部213を備える。具体的には、解像度変換処理、色変換処理、ハーフトーン処理等といった画像処理が実行される。
そして、ホスト制御部211で生成された制御信号や、画像処理部213で生成された印刷データは転送制御部220を介して、プリンター300の本体ケース1内に設けられたプリンター制御部400に転送される。この転送制御部220は、プリンター制御部400との間で双方向のシリアル通信が可能となっており、プリンター制御部400に制御信号や印刷データを転送するとともに、その応答信号をプリンター制御部400から受信してホスト制御部211に送信する。
プリンター制御部400は、ヘッドコントローラー410、メカコントローラー420およびメモリー430を備える。このメモリー430は、メディア230から読み出したプログラム440等の種々の情報を記憶する機能を果たす。したがって、ヘッドコントローラー410およびメカコントローラー420は、このメモリー430から必要な情報を読み出して、各種制御を行なうことができる。これらコントローラー410、420の詳細は次のとおりである。
ヘッドコントローラー410は、プリンタードライバー210から送信されてきた印刷データに基づいて、記録ヘッド34を制御する機能を司る。具体的には、ヘッドコントローラー410は、記録ヘッド34のノズル35からのインク噴射を、印刷データに基づいて制御する。この際、ノズル35からインクを噴射するタイミングは、キャリッジ32のX軸方向への移動に基づいて制御される。つまり、印刷室3内には、キャリッジ32のX軸方向の位置を検出するリニアエンコーダーE32が設けられている。そして、ヘッドコントローラー410は、リニアエンコーダーE32の出力を参照することで、キャリッジ32のX軸方向への移動に応じたタイミングで、ノズル35からインクを噴射させる。
一方、メカコントローラー420は、シートSの間欠搬送やキャリッジ32の駆動を制御する機能を主として司る。具体的には、メカコントローラー420は、繰出部2、ローラー71〜77および巻取部5で構成されるシート搬送系を駆動する搬送モーターMsを、搬送モーターMsの回転を検出するエンコーダーEmcの出力に基づいて制御して、シートSの間欠搬送を実行する。また、メカコントローラー420は、第1CRモーターMxを制御することで、主走査のためのX軸方向への移動をキャリッジ32に実行させるとともに、第2CRモーターMxを制御することで、副走査のためのY軸方向への移動をキャリッジ32に実行させる。
そして、ヘッドコントローラー410とメカコントローラー420とが同期を取りつつ、これらの制御を適宜実行することで、間欠搬送されるシートSに対して、設定された印刷モードに応じたパスが実行されて、1フレーム分の印刷が実行される。これにより、1フレーム分の画像がシートSに印刷される。
また、メカコントローラー420は、印刷処理のための上記制御のほかに種々の制御を実行できる。具体的には、メカコントローラー420は、電源スイッチSWのオン/オフを検出して、電源スイッチSWがオンした場合には、プリンター300の各部の起動処理を実行する。また、メカコントローラー420は、プラテン30上面の温度を検出する温度センサーS30の出力に基づいて、ヒーター38をフィードバック制御したり、乾燥部4の内部の温度を検出する温度センサーS4の出力に基づいて、乾燥部4をフィードバック制御したりといった温度制御を実行する。さらに、メカコントローラー420は、吸引部37を制御してプラテン30の吸引孔に発生する負圧を調整したり、メンテナンスユニット9の各部(昇降部97、カム回転軸95A、キャップ91内の負圧発生機構等)を制御して所定のメンテナンスを実行したり、放電バイアス発生部84を制御して放電バイアスの値を調整したりといった各動作を実行可能である。
以上が、図1の印刷システムが備える電気的構成の概要である。続いて、この実施形態で実行される各印刷モード(4、6、8および16パス)の詳細について説明する。これら4種類のパスはいずれも、主走査と副走査を交互に実行することでY軸方向に並ぶ複数のライン画像を形成して1フレーム分の印刷を実行する点で共通するが、次の点で2つに大別される。つまり、4および6パスの印刷モードは、Y軸方向に隣接するライン画像を同一のノズル35で連続して形成する印刷モード(第1印刷モード)である。一方、8および16パスの印刷モードは、Y軸方向に隣接するライン画像を異なるノズル35で連続して形成する印刷モード(第2印刷モード)である。
図6は、第1印刷モードで実行される4および6パスの印刷モードの動作を示す模式図である。同図において、符号ErはシートSが有する印刷領域IRのY軸正方向の上流側エッジを指しており、符号Erが付された破線より紙面下側が印刷領域IRとなる。また、同図では、1列のノズル列35Lを構成する複数のノズル35が、Y軸正方向から順に括弧書きの番号「n」でラベルされて示されている。同図の左右各欄(「1パス目」「2パス目」)では、表記されたパスを開始する時点におけるノズル35の位置が記載されており、この位置から各ノズル35が表記されたパスを開始して一点・二点鎖線で図示されたライン画像LI(1)、LI(2)を形成する。なお、図示の都合上、同図では1列分のみのノズル35が記載されている。また、各ライン画像LI(1)、LI(2)に対しては、当該ライン画像を形成するノズル35の番号(「n」等)が添えられている。
図6の「1パス目」の欄に示すように、「1パス目」の開始に際しては、キャリッジ32は印刷領域IRのX軸正方向の上流側端部に位置する。同時に、キャリッジ32に設けられた全ノズル35のうちY軸正方向の最下流にあるノズル35が、印刷領域IRのY軸正方向の下流側エッジに対して位置決めされる。なお、キャリッジ32においてノズル35が設けられている範囲は、Y軸方向においてシートSの印刷領域IRの範囲より広い。そのため、図6の「1パス目」の欄に示す例では、ノズル35(n)よりY軸正方向の上流側にあるノズル35(n-1)等(領域RPのノズル)が、印刷領域IRよりもY軸正方向の上流側に突出している。一方、ノズル35(n)とこれよりY軸正方向の下流側のノズル35(n+1)、35(n+2)、…が印刷領域IRに対向する。そして、この状態から「1パス目」が開始される。具体的には、キャリッジ32に伴ってノズル35(n)、35(n+1)、…がX軸正方向に移動しつつインクを噴射して(主走査)、1パス目のライン画像LI(1)が形成される。
この主走査に続く副走査では、図6の「2パス目」の欄に示すように、ノズル35(n)、35(n+1)、…が、キャリッジ32に伴って解像度に応じた距離PiだけY軸正方向に移動する。なお、解像度に応じた距離Piとは、Y軸方向に隣接して形成されるライン画像間のピッチである。そして、続く2パス目では、キャリッジ32に伴ってノズル35(n)、35(n+1)、…がX軸負方向に移動しつつインクを噴射して(主走査)、2パス目のライン画像LI(2)が形成される。こうして、ノズル35(n)、35(n+1)、…のそれぞれは、Y軸方向に隣接するライン画像LI(1)、LI(2)を連続してこの順番で形成する。そして、同様の動作が繰り返されて、4パスまたは6パスで構成される1フレーム分の印刷が完了する。このように、4パスまたは6パスの印刷モードでは、Y軸方向に隣接するライン画像を同一のノズル35で連続して形成する。
図7は、第2印刷モードで実行される8パスの印刷モードの動作を示す模式図である。図中の表記は図6と同様であるので、説明を省略する。図7の「1パス目」の欄に示すように、8パスの印刷モードにおいても、「1パス目」の開始に際しては、キャリッジ32は印刷領域IRのX軸正方向の上流側端部に位置する。同時に、キャリッジ32に設けられたノズル35のうちY軸正方向の最下流にあるノズル35が、印刷領域IRのY軸正方向の下流側エッジに対して位置決めされる。その結果、図7の「1パス目」の欄に示す例では、ノズル35(n)よりY軸正方向の上流側にあるノズル35(n-1)等(領域RPのノズル)が、印刷領域IRよりもY軸正方向の上流側に突出している。一方、ノズル35(n)とこれよりY軸正方向の下流側のノズル35(n+1)、35(n+2)、…が印刷領域IRに対向する。そして、この状態から「1パス目」が開始される。具体的には、キャリッジ32に伴ってノズル35(n)、35(n+1)、…がX軸正方向に移動しつつインクを噴射して(主走査)、1パス目のライン画像LI(1)が形成される。
この主走査に続く副走査では、キャリッジ32に伴って、ノズル35(n)、35(n+1)、…がY軸方向に移動する。ただし、8パスの印刷モードでは、ノズル35(n)、35(n+1)、…の移動量が4パスおよび6パスの印刷モードと異なっている。つまり、図7の「2パス目」の欄に示すように、この移動量は、解像度に応じた距離Piにノズル35の配列ピッチP35を加算した距離ΔP32(=P35+Pi)となっている。そして、この副走査に続いて2パス目が実行されて、キャリッジ32に伴ってノズル35(n)、35(n+1)、…がX軸負方向に移動しつつインクを噴射する(主走査)。こうして、2パス目のライン画像LI(2)が形成される。
このように、8パスの印刷モードでは、副走査におけるキャリッジ32の移動距離ΔP32が、解像度に応じた距離Piにノズル35の配列ピッチP35を加算したものとなっている。その結果、互いに隣接した状態で連続して形成される2本のライン画像LI(1)、LI(2)に注目したとき、1パス目のライン画像LI(1)を形成したノズル35よりもY軸正方向の上流側のノズル35によって、2パス目のライン画像LI(2)が形成される。例を挙げれば、1パス目でn番目のノズル35(n)が形成したライン画像LI(1)に隣接して、2パス目で(n−1)番目のノズル35(n-1)がライン画像LI(2)を形成する。そして、同様の動作が繰り返されて、8パスで構成される1フレーム分の印刷が完了する。
ここで、印刷領域IRのY軸正方向の上流側エッジEr近傍に注目すると、1パス目の開始時には、印刷領域IRから突出しており印刷に供しなかったノズル35(n-1)が、2パス目以後は、印刷領域IRに対向して印刷に供する(インクを噴射する)。また、印刷領域IRから突出しており印刷に供していなかったノズル35(n-2)、35(n-3)、…が、副走査の度に順次印刷領域IRに対向して印刷に供するようになる。このように、1パス目の開始時には、印刷領域IRから突出して印刷に供しなかったノズル35(n-1)、35(n-2)、…が、2パス目以降に液体を噴射して印刷に供するようになるという点でも、8パスの印刷モードでは4パスおよび6パスの印刷モードと異なっている。
ちなみに、上述の通り8パスの印刷モードでは、Y軸方向に隣接するライン画像が異なるノズル35で連続して形成される。その結果、8パスの印刷モードでは、例えば、液体を噴射する方向が各ノズル35の間でばらつくような場合であっても、同じノズル35が隣接してライン画像を形成することがないため、各ノズル35間の液体噴射方向のばらつきが画像に与える影響を抑えることが可能となっている。
図8および図9は、第2印刷モードで実行される16パスの印刷モードの動作を示す模式図である。図8中の表記は図6と同様であるので、説明を省略する。16パスの印刷モードも、8パスの印刷モードと同様に、Y軸方向に隣接するライン画像が異なるノズル35で連続して形成される。ただし、16パスの印刷モードは、2回の主走査で1本のライン画像を形成するとともに、この2回の主走査を1回の副走査と交互に繰り返し実行することにより、複数のライン画像をY軸方向に並べて形成するものであり、この点で8パスの印刷モードと異なる。以下に、この16パスの印刷モードについて詳述する。
図8の「1パス目+2パス目」の欄に示すように、16パスの印刷モードにおいても、「1パス目」の開始に際しては、キャリッジ32は印刷領域IRのX軸正方向の上流側端部に位置する。同時に、キャリッジ32に設けられたノズル35のうちY軸正方向の最下流にあるノズル35が、印刷領域IRのY軸正方向の下流側エッジに対して位置決めされる。その結果、図8の「1パス目+2パス目」の欄に示す例では、ノズル35(n)よりY軸正方向の上流側にあるノズル35(n-1)等(領域RPのノズル)が、印刷領域IRよりもY軸正方向の上流側に突出している。一方、ノズル35(n)とこれよりY軸正方向の下流側のノズル35(n+1)、35(n+2)、…が印刷領域IRに対向する。
そして、この状態から「1パス目」および「2パス目」が副走査を挟むことなく続けて実行される(図8の「1パス目+2パス目」の欄)。具体的には、1パス目では、キャリッジ32に伴ってノズル35(n)、35(n+1)、…がX軸正方向に移動しつつインクを噴射する(主走査)。ただし、この1パス目では、複数のドットdt(1)が1ドット置きに形成される(図9の「1パス目」の欄)。そして、続く2パス目で、キャリッジ32に伴ってノズル35(n)、35(n+1)、…がX軸負方向に移動しつつインクを噴射して(主走査)、1パス目で形成された複数のドットdt(1)それぞれの間にドットdt(2)が形成される(図9の「2パス目」の欄)。こうして、2回の主走査により、ドットdt(1)、dt(2)からなるライン画像LI(1)が形成される(図8の「1パス目+2パス目」の欄)。
このライン画像LI(1)が形成されると、副走査が実行されて、キャリッジ32に伴いノズル35(n)、35(n+1)、…がY軸方向に移動する。このときの移動量は、8パスの印刷モードでのそれと同じである。そして、この副走査に続いて、3および4パス目が、1および2パス目と同じ要領で実行されて(図9の「3パス目」「4パス目」の欄)、ライン画像LI(2)が形成される(図8の「3パス目+4パス目」の欄)。こうして、16パスの印刷モードにおいても、8パスの印刷モードと同様に、Y軸方向に隣接するライン画像LI(1)、LI(2)が異なるノズル35で連続して形成される。そして、同様の動作が繰り返されて、16パスで構成される1フレーム分の印刷が完了する。
ここで、印刷領域IRのY軸正方向の上流側エッジEr近傍に注目すると、8パスの印刷モードと同様に、印刷領域IRから突出して印刷に供していなかったノズル35(n-1)、35(n-2)、…が、副走査が実行される度に順次印刷領域IRに対向して印刷に供するようになる。このように、16パスの印刷モードにおいても、1パス目の開始時には、印刷領域IRから突出して印刷に供しなかったノズル35(n-1)、35(n-2)、…が2パス目以降に液体を噴射して印刷に供するという点で、4パスおよび6パスの印刷モードと異なっている。
ちなみに、16パスの印刷モードにおいても、Y軸方向に隣接するライン画像が異なるノズル35で連続して形成されるため、8パスの印刷モードと同様に各ノズル35間の液体噴射方向のばらつきが画像に与える影響を抑えることが可能となる。また、16パスの印刷モードでは、隣接するドットが時間を置いて形成される。したがって、先に形成されたドットを構成するインクがシートSに十分吸収された状態で、このドットに隣接するドットを形成することができる。その結果、より高画質に画像を記録することが可能となる。
このようにプリンター300は、第1印刷モード(4パス、6パス)と、第2印刷モード(8パス、16パス)とを実行可能である。そして、上記説明から判るように、第1印刷モードと第2印刷モードでは、1フレーム分の印刷を行うにあたって、インクを噴射するノズル35の組み合わせが互いに異なる。そこで、ヘッドコントローラー410(図5)は、印刷モードに応じて記録ヘッド34を制御するために、印刷においてインクを噴射するノズル35を印刷モードに基づいて選択する。
この際、シートSのY軸方向への幅に応じた範囲に印刷を実行する必要もあるため、ヘッドコントローラー410は、印刷においてインクを噴射するノズル35を、シートSの幅も考慮して選択する。すなわち、ヘッドコントローラー410は、作業者により選択・設定された印刷モードとシートSの幅を確認し、これらに応じて、印刷においてインクを噴射するノズル35を選択する。この動作について具体例を挙げて説明すると次のとおりである。
図10は、第1印刷モードにおけるノズルの選択動作の説明図である。図11は、第2印刷モードにおけるノズルの選択動作の説明図である。これらの図では、幅の狭い幅狭シートSに対してノズルを選択する場合と、幅の広い幅広シートSに対してノズルを選択する場合とが、図中の欄内に示されている。また、各欄では、1パス目を開始する際における各記録ヘッド34とシートSとの位置関係が示されている。なお、実際には、平面視において各記録ヘッド34がキャリッジ32に隠れて見えないことを考慮して、これらは破線で示されている。また、図示の都合上、一部の記録ヘッドに対してのみ符号34が付されている。
印刷モードが第1印刷モードの場合は、1パス目の開始時点でシートSの印刷領域IRに対向するノズル35が、印刷でインクを噴射するノズル35として選択される。図10の「幅狭シート」および「幅広シート」の欄の比較から判るように、シートSの幅の違いに応じて、選択されるノズル35が異なる。そして、選択されたノズル35がシートSの印刷領域IRにインクを噴射して、シートSの印刷領域IRに印刷が実行される。
一方、上述した通り、第2印刷モードにおいては、1パス目の開始時には印刷領域IRから突出して印刷に供しなかったノズル35が、2パス目以降に液体を噴射して印刷に供するようになる。したがって、印刷モードが第2印刷モードの場合には、1パス目の開始時点で印刷領域IRに対向するノズル35のみならず、印刷領域IRから突出した領域RPに位置するノズル35の一部(領域αにあるノズル35)も、印刷でインクを噴射するノズル35として選択される。図11の「幅狭シート」および「幅広シート」の欄の比較から判るように、第2印刷モードにおいても、シートSの幅の違いに応じて、選択されるノズル35が異なる。そして、選択されたノズル35がシートSの印刷領域IRにインクを噴射して、シートSの印刷領域IRに印刷が実行される。
このように、印刷モードおよびシートSの幅によって、印刷のためにインクを噴射するノズル35が異なる。したがって、印刷実行前のメンテナンス処理では、その後の印刷で実際にインクを噴射するノズル35に対してメンテナンスを実行すれば足りる。そこで、この実施形態は、次に示すようにして、メンテナンスを効率的に実行している。
図12は、本発明の実施形態の一例を示すフローチャートである。なお、図12のフローチャートの動作は、メモリー430に記憶されたプログラム440に従って、ヘッドコントローラー410およびメカコントローラー420が協働して実行する。
作業者が操作部260を介して印刷の開始をプリンター300に命じると、図12のフローがスタートする。具体的には、ヘッドコントローラー410(図5)が、作業者により設定された印刷モードとシートSの幅を確認し(ステップS100)、これらの確認結果に基づいて、以後に実行する印刷でインクを噴射させるノズル35を選択する(ステップS200)。なお、ヘッドコントローラー410によるこれらの動作は上述したとおりである。
続くステップS300では、カウンターのカウント値C1、C2が「0」にリセットされる(ステップS100)。ここで、カウント値C1は、1フレーム分の印刷が実行された回数をカウントするものである。また、カウント値C2は、直近のメンテナンス処理以後に1フレーム分の印刷が実行された回数をカウントするものである。
ステップ400において、カウント値C2が所定のカウント値Ct2と等しくないと判断された場合(ステップS400で「NO」の場合)は、ステップS700に進む。そして、ステップS700では、ステップS200で選択されたノズル35がインクを噴射して、1フレーム分の印刷が実行される。一方、ステップ400において、カウント値C2が所定のカウント値Ct2と等しいと判断された場合(ステップS400で「YES」の場合)は、メンテナンス処理S500が実行される。つまり、このフローでは、ステップS400の判断を行うことで、一定のフレーム数の印刷を行うたびに、メンテナンス処理を実行するように構成している。
図13は、メンテナンス処理のフローを示すフローチャートである。ステップS501では、メカコントローラー420(図5)が印刷モードとシートSの幅を確認する。続くステップS502で、メカコントローラー420は、ステップS501での確認結果に基づいて、以後に実行される印刷でインクを噴射するノズルを特定する。そして、メカコントローラー420は、メンテナンスユニット9等を制御することで、ステップS502で特定されたノズル35を有するヘッドユニット34uに対して、選択的にメンテナンス(クリーニング、ワイピング)を実行する(ステップS503)。
これらステップS501〜S503の動作を、上述の図10、図11の例を用いて具体的に説明すると次のとおりである。図10のように印刷モードが第1印刷モードの場合は、印刷領域IRに対向するノズル35が以後の印刷においてインクを噴射するノズル35と特定される。したがって、シートSが幅狭シートSである場合には、Y軸正方向の下流側の2つのヘッドユニット34uのノズル35が印刷領域IRに対向するため、これら2つのヘッドユニット34uに対してのみメンテナンスが実行され、他のヘッドユニット34uへはメンテナンスが実行されない。一方、シートSが幅広シートSである場合には、Y軸正方向の下流側の3つのヘッドユニット34uのノズル35が印刷領域IRに対向するため、これら3つのヘッドユニット34uに対してのみメンテナンスが実行され、他のヘッドユニット34uへはメンテナンスが実行されない。なお、ヘッドユニット34u毎の選択的なメンテナンスを実行する機構は、図3、図4を用いて上述したとおりである。
また、図11のように印刷モードが第2印刷モードの場合は、印刷領域IRと領域αに対向するノズル35が以後の印刷においてインクを噴射するノズル35と特定される。したがって、シートSが幅狭シートSである場合には、Y軸正方向の下流側の3つのヘッドユニット34uのノズル35が印刷領域IRおよび領域αに対向するため、これら2つのヘッドユニット34uに対してのみメンテナンスが実行され、他のヘッドユニット34uへはメンテナンスが実行されない。一方、シートSが幅広シートSである場合には、4つのヘッドユニット34uのノズル35が印刷領域IRおよび領域αに対向するため、4つのヘッドユニット34u全てに対してメンテナンスが実行される。以上が、図12のステップS500で実行されるメンテナンス処理の内容である。
メンテナンス処理が完了すると、ステップS600に進んでカウント値C2が「0」にリセットされる。そして、続くS700では、ステップS200で選択されたノズル35により1フレーム分の印刷が実行される。
このように、ステップS400の判断結果に基づいて、適宜必要なメンテナンス処理を実行した後に、1フレーム分の印刷が実行される(ステップS700)。そして、1フレーム分の印刷が完了すると、カウント値C1、C2が「1」だけインクリメントされる(ステップS800)。続くステップS900では、カウント値C1が所定のカウント値Ct1に等しいか否かを判断することで、必要なフレーム数の印刷が完了したか否かを判断する。そして、カウント値C1が所定のカウント値Ct1未満であって、必要なフレーム数の印刷が完了していない場合(ステップS900で「NO」の場合)は、ステップS400に戻る。一方、カウント値C1が所定のカウント値Ct1と等しく、必要なフレーム数の印刷が完了している場合(ステップS900で「YES」の場合)は、図12のフローを終了する。
以上のように、この実施形態では、キャリッジ32に保持された、Y軸方向に並ぶ複数のノズル35を用いて、Y軸方向へ幅を有するシートSに画像を記録する。具体的には、キャリッジ32をX軸方向に移動させつつノズル35からインクを噴射させる主走査が実行されて、シートSに画像が記録される(ステップS700、画像記録処理)。ちなみに、この画像記録処理は、インクを噴射するノズル35の組み合わせが互いに異なる第1印刷モードおよび第2印刷モードで実行可能となっている。そこで、画像記録処理では、当該画像記録処理を実行するものとして選択された印刷モードに応じてノズル35が選択され(ステップS100、S200)、これら選択されたノズルがインクを噴射して画像記録処理に供する(ステップS700)。さらに、印刷モードのみならず、シートSの幅にも対応するために、画像記録処理でインクを噴射するノズルの選択は、シートSの幅にも応じて実行される(ステップS100、S200)。
このように、この実施形態では、印刷モードおよびシートSの幅に応じて、画像記録処理でインクを噴射するノズル35が選択される。したがって、画像記録処理で、実際にインクを噴射するノズル35は、印刷モードやシートSの幅によって異なることとなる。一方、画像記録処理の開始前のメンテナンスは、この画像記録処理でインクを噴射するノズル35に対して行えば十分である。そこで、この実施形態は、画像記録処理でインクを噴射しないノズル35に対して、メンテナンスを行わないといった構成を備える(ステップS503)。これによって、画像記録処理でインクを噴射しないノズル35へのメンテナンスを控えて、メンテナンスによるインクの消費を抑制することが可能となっている。
その他
以上のように、上記実施形態では、プリンター300が本発明の「画像記録装置」に相当し、シートSが本発明の「記録媒体」に相当し、インクが本発明の「液体」に相当し、プラテン30が本発明の「支持部材」に相当し、キャリッジ32およびこれに保持される記録ヘッド34が本発明の「記録部」に相当し、ヘッドコントローラー410とメカコントローラー420とが協働して本発明の「制御部」として機能し、メカコントローラー420とメンテナンスユニット9が協働して本発明の「メンテナンス部」として機能している。また、第1印刷モード(4パス、6パス)が本発明の「第1記録モード」に相当し、第2印刷モード(8パス、16パス)が本発明の「第2記録モード」に相当している。また、1フレーム分の印刷が本発明の「画像記録処理」に相当し、X軸方向が本発明の「主走査方向」に相当し、Y軸方向が本発明の「副走査方向方」に相当し、Y軸正方向が本発明の「副走査方向の一方向」に相当している。また、ヘッドコントローラー410とメカコントローラー420とが協働して本発明の「コンピューター」として機能し、プログラム440が本発明の「プログラム」に相当し、メディア230が本発明の「プログラム記録媒体」に相当する。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記実施形態では、画像記録装置として、インクジェット式のプリンター300が採用されているが、インク以外の他の流体を噴射したり吐出したりする流体噴射装置を採用しても良い。また、微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置全般に本発明を適用可能である。この場合、液滴とは、液体噴射装置から吐出される液体の状態を指し、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含む。また、ここで言う液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であれば良い。例えば、液相の状態にある物質が液体に含まれ、粘性の高いあるいは低い液状態、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状体が液体に含まれる。また、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散あるいは混合されたものが液体に含まれる。また、液体の代表的な例としては、上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは、一般的な水性インク、油性インク、ジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。
また、上記実施形態では、ヘッドユニット34u毎にノズル35のメンテナンスを実行するように構成されている。しかしながら、メンテナンスを実行する単位は、ヘッドユニット34uに限られない。そこで、記録ヘッド34毎にノズル35のメンテナンスを実行するように構成しても良い。これについて、上述の図10、図11を用いて具体的に説明すると次のとおりである。
図10のように印刷モードが第1印刷モードの場合は、印刷領域IRに対向するノズル35が以後の印刷においてインクを噴射するノズル35と特定される。したがって、シートSが幅狭シートSである場合には、Y軸正方向の下流側の7つの記録ヘッド34のノズル35が印刷領域IRに対向するため、これら7つの記録ヘッド34に対してのみメンテナンスが実行され、他の記録ヘッド34へはメンテナンスが実行されない。一方、シートSが幅広シートSである場合には、Y軸正方向の下流側の11個の記録ヘッド34のノズル35が印刷領域IRに対向するため、これら11個の記録ヘッド34に対してのみメンテナンスが実行され、他の記録ヘッド34へはメンテナンスが実行されない。
また、図11のように印刷モードが第2印刷モードの場合は、印刷領域IRと領域αに対向するノズル35が以後の印刷においてインクを噴射するノズル35と特定される。したがって、シートSが幅狭シートSである場合には、Y軸正方向の下流側の9つの記録ヘッド34のノズル35が印刷領域IRおよび領域αに対向するため、これら9つの記録ヘッド34に対してのみメンテナンスが実行され、他の記録ヘッド34へはメンテナンスが実行されない。一方、シートSが幅広シートSである場合には、13個の記録ヘッド34のノズル35が印刷領域IRおよび領域αに対向するため、13個の記録ヘッド34に対してのみメンテナンスが実行され、他の記録ヘッド34へはメンテナンスが実行されない。
このように、記録ヘッド34単位で選択的にメンテナンスを行う構成においても、画像記録処理でインクを噴射しないノズル35に対して、メンテナンスを行わないことで、画像記録処理でインクを噴射しないノズル35へのメンテナンスを控えて、メンテナンスによるインクの消費を抑制することが可能となる。
また、上記実施形態では、8パス、16パスの印刷モードでは、副走査でのノズル35の移動量ΔP32を、解像度に応じた距離Piにノズル35の配列ピッチP35を加算した距離としていた。しかしながら、この移動量ΔP32を、ノズル35の配列ピッチP35に任意の整数を乗じたものに、距離Piを加算した距離としても良い(ΔP32=P35×k+Pi、kは正の整数)。このような構成においても、各ノズル35間の液体噴射方向のばらつきが画像に与える影響を抑えるといったことが可能となる。
また、上記実施形態では、4、6、8および16パスで1フレーム分の印刷が構成されていた。しかしながら、1フレーム分の印刷を構成するパス数はこれに限られず、適宜変更可能である。
また、上記実施形態は、4および6パスを第1印刷モードで実行し、8および16パスを第2印刷モードで実行していたが、4、6、8および16パスそれぞれをいずれの印刷モードで実行するかについては適宜変更可能である。したがって、6パスを第2印刷モードで実行したり、8パスを第1印刷モードで実行したりしても良い。
また、上記実施形態では、図3および図4で示した構成を用いて、複数の記録ヘッド34のうちから選択した記録ヘッドに対してメンテナンスを行うといった、選択的なメンテナンスが実行可能であった。ただし、この選択的なメンテナンスを実現する構成は、図3および図4に示したものに限られず、適宜変更可能である。
また、上記実施形態では、所定フレーム数の印刷毎にメンテナンスを行っていたが、メンテナンスを行うタイミングはこれに限られない。
また、キャリッジ32に搭載する記録ヘッド34の個数や配置についても種々の変形が可能である。
また、上記実施形態では、ピエゾ方式を用いたインクジェットプリンターに対して本発明を適用した場合について説明した。しかしながら、サーマル方式を用いたインクジェットプリンターに対しても本発明を適用可能であることは言うまでもない。