JP2013012354A - 超電導線の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】原料コストを抑制しつつ、磁場中の臨界電流特性をさらに向上する。
【解決手段】1層あたりの熱容量が0.4J/h以上2.0J/h以下となるように、長尺状の基材11を加熱する加熱工程と、CVD法を用いて加熱状態の基材11上に酸化物超電導体を成膜する成膜工程と、基材11を冷却する冷却工程とを順に繰り返して、多層膜の超電導層13を形成する。
【選択図】図2

Description

本発明は、超電導線の製造方法に関する。
近年、特許文献1に示すような、長尺状の基材上に、中間層及び超電導層を順次成膜して、超電導線を製造する方法が、電力ケーブルやSMES(超電導エネルギー貯蔵装置)、マグネット、限流器、変圧器、NMR、核融合、加速器、リニアモーターカー等への応用のため期待されている。
これらの機器等を稼動させる際には、超電導層に高電流が流れるため、これに伴って磁場が発生する。このため、超電導線としては、磁場中での特性も重要な要求仕様となる。このような超電導層に磁場を印加すると、磁場はひも状の量子化磁束に分割されて超電導層に侵入する。これら量子化磁束は電流が流れない場合は静止しているが、ひとたび電流が流されると動き出して超電導層のゼロ抵抗状態を壊してしまう。このため、磁場がかかる状態で使用すると、電流値の低下が大きいという問題点があった。
そこで、特許文献2には、超電導層内にZrを含む酸化物粒子を不純物として添加することにより、磁場中でも量子化磁束を固定させる所謂人工ピンを導入して、磁場中の臨界電流特性を向上させる技術が開示されている。
特開2006−233266号公報 特開2009−164010号公報
しかしながら、新たに不純物を添加する方法では、当然原料コストも高くなり、酸化物超電導体の構成元素と不純物元素の反応によって人工ピン物質を形成するため(例えば、特許文献2では、BaとZrの反応によりBaZrOを形成)、成長条件の制御が難しくなるという問題点がある。
また、CVD法などの化学気相成長法では、人工ピンとして導入した不純物の結晶が超電導結晶のc軸方向に沿って成長していくため、c軸方向(基板面に垂直な方向)に磁場がかかる場合は効果が出るが、それ以外の方向では効果が出ないという所謂磁場印加角度依存性の問題がある。
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、原料コストを抑制しつつ、磁場中の臨界電流特性をさらに向上する超電導線の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の上記課題は下記の手段によって解決された。
<1>1層あたりの熱容量が0.4J/h以上2.0J/h以下となるように、長尺状の基材を加熱する加熱工程と、化学気相成長法を用いて加熱状態の前記基材上に酸化物超電導体を成膜する成膜工程と、前記基材を冷却する冷却工程とを順に繰り返して、多層膜の超電導層を形成する、超電導線の製造方法。
<2>1層あたりの熱容量が0.7J/h以上1.5J/h以下となるように、前記成膜工程及び冷却工程を行う、<1>に記載の超電導線の製造方法。
<3>1層あたりの熱容量が0.7J/h以上1.2J/h以下となるように、前記成膜工程及び冷却工程を行う、<2>に記載の超電導線の製造方法。
<4>前記加熱工程及び成膜工程での成膜温度と前記冷却工程での冷却温度との温度差を制御して、前記熱容量を調整する、<1>〜<3>の何れか1つに記載の超電導線の製造方法。
<5>前記冷却工程では、1000℃/m以上3000℃/m以下の冷却環境とする、<4>に記載の超電導線の製造方法。
<6>前記成膜工程での1層あたりの超電導層の膜厚を制御して、前記熱容量を調整する、<1>〜<5>の何れか1つに記載の超電導線の製造方法。
<7>前記超電導層の1層あたりの膜厚が、20nm以上80nm以下となるように前記成膜工程を行う、<1>〜<6>の何れか1つに記載の超電導線の製造方法。
<8>前記酸化物超電導体の一部の元素を他の元素に置換することによって、前記熱容量を調整する、<1>〜<7>の何れか1つに記載の超電導線の製造方法。
<9>前記酸化物超電導体は、RE系超電導体であって、前記REは単一の希土類元素又は複数の希土類元素である、<1>〜<8>の何れか1つに記載の超電導線の製造方法。
本発明によれば、原料コストを抑制しつつ、磁場中の臨界電流特性をさらに向上する超電導線の製造方法を提供することができた。
図1は、本発明の実施形態に係る超電導線の積層構造を示す図である。 図2は、図1に示す超電導線の断面構造を示す図であって、特に超電導層の層構造を詳細化したものである。 図3は、加熱工程及び成膜工程、冷却工程の温度シーケンスを示す図である。 図4は、MOCVD装置の概要構成を示す図である。
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る超電導線の製造方法について具体的に説明する。なお、図中、同一又は対応する機能を有する部材(構成要素)には同じ符号を付して適宜説明を省略する。
<超電導線の構成>
まず、本発明の実施形態に係る超電導線の製造方法について説明する前に、当該製造方法により製造される超電導線について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る超電導線1の積層構造を示す図である。
図1に示すように、超電導線1は、長尺状の基材11上に中間層12、超電導層13、安定化層(保護層)14が順に形成された積層構造を有している。
基材11は、長尺状のものであれば、テープ状であってもその他の形状であってもよい。そして、この基材11は、低磁性の金属基材やセラミックス基材を用いる。金属基材としては、例えば、強度及び耐熱性に優れた、Cu、Ni、Ti、Mo、Nb、Ta、W、Mn、Fe、Ag等の金属又はこれらの合金を用いることができる。特に好ましいのは、耐食性及び耐熱性の点で優れているステンレス、ハステロイ(登録商標)、その他のニッケル系合金である。また、これら各種金属材料上に各種セラミックスを配してもよい。また、セラミックス基材としては、例えば、MgO、SrTiO、又はイットリウム安定化ジルコニア等を用いることができる。
基材11の厚みは、特に限定されないが、例えば1mmとされている。
中間層12は、超電導層13において高い面内配向性を実現するために基材11上に形成される層であり、単層膜で構成されていても多層膜で構成されていてもよい。中間層12の材料としては、特に限定されないが、単層膜又は多層膜の超電導層13側の層は、例えば自己配向性を有するCeO及びREMnOから選ばれる物質であり、好ましくはCeOである。
中間層12の膜厚は、特に限定されないが、例えば20nmとされている。
超電導層13は、中間層12上に形成され、酸化物超電導体を主成分として含有しており、さらに後述するように酸化物超電導体の構成元素の一部を含んだ不純物も含有している。なお、「主成分」とは、超電導層13に含まれる構成成分中で含有量が最も多いことを示し、好ましくは90%超であることを示している。
酸化物超電導体は、一般的に超電導特性が高いという観点から銅酸化物超電導体であることが好ましい。この銅酸化物超電導体としては、REBaCu7−δ(以下、RE系超電導体と称す),BiSrCaCu8+δ(BiサイトにPbドープしたものも含む),BiSrCaCu10+δ(BiサイトにPbドープしたものも含む),(La,Ba)CuO4−δ,(Ca,Sr)CuO2−δ[CaサイトはBaであってもよい],(Nd,Ce)CuO4−δ,(Cu,Mo)Sr(Ce,Y)CuO [(Cu,Mo)−12s2と称し、s=1、2、3,4である],Ba(Pb,Bi)O又はTlBaCan−1Cu2n+4(nは2以上の整数である)等の組成式で表される結晶材料を用いることができる。また、銅酸化物超電導体は、これら結晶材料を組み合わせて構成することもできる。
以上の結晶材料の中でも、超電導特性が良くて結晶構造が単純であるという理由から、RE系超電導体を用いることが好ましい。また、結晶材料は、多結晶材料であっても単結晶材料であってもよい。
なお、上記RE系超電導体中のREは、Y、Nd、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、YbやLuなどの単一の希土類元素又は複数の希土類元素であり、これらの中でも超電導転移温度Tcが高い等の理由でYであることが好ましい。また、RE系超電導体:REBaCu7−δのδは、酸素不定比量であり、例えば0以上1以下であり、超電導転移温度が高いという観点から0に近いほど好ましい。
また、RE系超電導体以外の結晶材料のδも酸素不定比量を表し、例えば0以上1以下である。
安定化層14は、超電導層13上に形成され、例えば銀等で構成されている。
なお、上述した中間層12や安定化層14は、適宜省略することが可能である。
図2は、図1に示す超電導線1の断面構造を示す図であって、特に超電導層13の層構造を詳細化したものである。
本実施形態では、図2に示すように、超電導層13は、n層(n≧2)の超電導薄膜、13−1、13−2、・・・13−nから構成されている。各薄膜の材料は、上述した酸化物超電導体で構成され、薄膜同士の原材料は同じであり、同じ酸化物超電導体を主成分としている。ただし、製造条件によって、各薄膜の不純物の比率や酸素不定比量δは異なる場合がある。
なお、超電導薄膜同士は、超電導線1の製造後には区別できない場合もあるが、以下で説明する製造方法の各段階では層や薄膜の区別ができるため、本実施形態では便宜上規定している。
<超電導線の製造方法>
次に、以上で説明した超電導線1の製造方法について説明する。
まず、本発明の実施形態に係る超電導線1の製造方法を想到するに当たって、本発明者は、1層あたりの熱容量が1.06J/hの多層膜の超電導層13をCVD法で成膜した試料と、1層あたりの熱容量が2.13J/hの多層膜の超電導層13をCVD法で成膜した試料の断面TEM写真を撮影した。
得られた断面TEM写真を見ると、1層あたりの熱容量が2.13J/hの場合の超電導層では積層界面にYの大きな結晶が確認できた。一方で、1層あたりの熱容量が1.06J/hの場合の超電導層では、Yの微細結晶が超電導層内に全体的に分布しているのが確認できた。この原因は次のように考えられる。
CVD法によるYBCOの生成モデルとして、以下の化学反応式(1)がある。
+BaCu10(液相)→2(YB1.5Cu3.56.5)・・・式(1)
そしてこの反応は、成膜後の冷却過程で液相から固相へ変化するときに、1層あたりの熱容量が2.13J/hのように熱容量が大きい場合は超電導層が徐々に冷えるため、徐々に反応することになり、徐々に反応している間に余ったYが軽いため表層付近で留まって大きな塊になるものと考えられる。
一方で、1層あたりの熱容量が1.06J/hのように熱容量が小さい場合は超電導層が急冷されるため、余った小さなYが超電導層内に閉じ込められるものと考えられる。
以上のことから、1層あたりで生成される超電導層をある範囲の熱容量で制御すれば、人工ピンとして寄与できるYの微細結晶を形成することが可能となる。
そして、この熱容量Qは、以下の式(2)で与えられる。
Q=Cp×M×ΔT・・・式(2)
ただし、Cpは酸化物超電導体の比熱であり、Mは超電導層の体積であり、ΔTは酸化物超電導体の液相の原料温度と個層になる時の超電導層の温度差である。
そこで、本発明の本実施形態では、1層あたりの超電導層の加熱工程や成膜工程、冷却工程を工夫(後述するΔTやCpなどを調整)して熱容量Qを制御することにより、酸化物超電導体の一部構成材料を含む不純物を人工ピンとして機能させて原料コストを抑制しつつ、磁場中の臨界電流特性をさらに向上する超電導薄膜の製造方法を提供する。
すなわち、本発明の実施形態に係る超電導線1の製造方法は、
1層あたりの熱容量が0.4J/h以上2.0J/h以下となるように、長尺状の基材11を加熱する加熱工程と、化学気相成長法を用いて加熱状態の前記基材11上に酸化物超電導体を成膜する成膜工程と、前記基材11を冷却する冷却工程とを順に繰り返して、多層膜の超電導層13を形成する、
超電導線1の製造方法である。
以下、各工程について具体的に説明する。図3は、加熱工程及び成膜工程、冷却工程の温度シーケンスを示す図である。
(加熱工程)
まず、上述した加熱工程を行う。
すなわち、基材11の温度TがTg(例えば700℃〜900℃)となるまでヒータ108で加熱を行う。
(成膜工程)
成膜工程では、図2に示すように、基材11の直上に或いは中間層12の直上に、化学気相成長法(CVD法)で用いて超電導層13を成膜する。CVD法には、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)やPCVD(Plasma-Enhanced Chemical Vapor Deposition)、熱CVD、光CVD等があるが、これらのうち何れを利用してもよい。ただし、これら成膜方法の中でも、高真空を必要としない、大面積、複雑な形状の基材11にも成膜可能、量産性に優れているという理由からMOCVD法を用いることが好ましい。
以下、MOCVD法を一例に挙げて、超電導層13を形成する具体的方法を説明するが、他の形成方法の場合も同様に行うことができる。
図4は、MOCVD装置100の概要構成を示す図である。
MOCVD装置100は、原料供給部101、気化器102、反応炉103、基材搬送部104、テープ巻き取り器105、キャリアガス供給部106、酸素ガス供給部107、ヒータ108及び急冷機構110を備えて構成される。
原料供給部101は、気化器102に原料溶液を供給し、キャリアガス供給部106は、気化器102にAr等のキャリアガスを供給する。原料溶液には、例えばY、Ba、及びCuの有機化合物原料(YBCO)をそれぞれ所望の比率に加えて、溶媒のTHF(テトラヒドロフラン)に溶かしたものを用いる。
気化器102は、供給されたキャリアガス中に原料溶液を噴霧して原料ガスを生成する。また、気化器102は、導入管を介して、生成した原料ガスと、酸素ガス供給部107から供給されるOとを反応炉103に導入する。
反応炉103は、基材11上に形成された中間層12の表面に、気化器102により導入された原料ガスを蒸着させて、超電導層13を成膜する。
基材搬送部104は、内部にテープ巻き取り器105を有し、テープ巻き取り器105,105を連動させることによって、反応炉103内において基材11を所定速度で移動させる。
ヒータ108は、基材11の温度を制御する。急冷機構110は、ヒータ108により加熱された基材11を、水等を用いて急冷する。
以上より、MOCVD装置100は、基材11の温度を制御しつつ移動させ、超電導層13を成膜する。
ここで、本実施形態では、1層あたりの熱容量が大きい場合に超電導層表面(界面)にY等の不純物が生成するのを抑制するために1層あたりの膜厚が厚くならないように、超電導層13はMOCVD装置100を用いて多数回にわたって成膜する。
具体的に、図3に示すように、基材11の温度TがTgに到達した時間tsから、温度Tgを保持しながら、気化器102により導入された原料ガスを基材11(又は中間層12)の表面に蒸着させて酸化物超電導体の成膜を開始し、超電導層13の目的とする1層の膜厚となるように時間teまで成膜を行う。ここで、成膜する酸化物超電導体がRE系超電導体の場合、基材11の温度が700℃未満の状態で成膜を行うと、超電導電流が流れない異方位結晶が主に成長し、超電導電流が流れない超電導層13が形成されるという問題がある。また、900℃よりも高温の状態で成膜を行った場合には、超電導層13と中間層12の反応が生じ、超電導特性が低下したり、成長温度が高温すぎることにより、超電導層13自体の形成が困難になったりするという問題がある。よって、RE系超電導体の成膜は、基材11の温度が700℃〜900℃の状態で行うことが好ましい。
(冷却工程)
時間te後は、冷却工程を行う。
この冷却工程は、急冷機構110により成膜領域から搬送される基材11の温度Tを温度Tgから少なくともTg未満に冷却する工程であるが、単に成膜領域から搬送される基材11を自然冷却する工程も含む。
そしてこれらの工程を、上述したように、1層あたりの熱容量が0.4J/h以上2.0J/h以下となるように順に繰り返して、多層膜の超電導層13を形成する。
2.0J/h以下としている理由は、1層あたりの熱容量が2.13J/hの超電導層で観察されたように超電導層13表面(界面)にY等の不純物が生成するのを抑制し、1層あたりの熱容量が1.06J/hの超電導層で観察されたように酸化物超電導体の一部構成元素を含むY等の不純物の微細結晶が超電導層内に全体的に分布させるためである。そして、不純物の微細結晶が超電導層内に全体的に分布させると、これらが人工ピンとして機能して臨界電流特性が、超電導層13表面(界面)にY等の不純物が生成したような従来構成に比べてさらに向上する。また、酸化物超電導体の一部構成材料を含む不純物を人工ピンとして機能させて原料コストを抑制もできる。
次に、0.4J/h以上としている理由は、1層あたりの超電導体の膜を均一に形成し、臨界電流特性の低下を抑制するためである。
この1層あたりの熱容量は、実用的な製造速度を得るという観点から0.7J/h以上1.5J/h以下となるように調整ことが好ましく、臨界電流値を高めるという観点から0.7J/h以上1.2J/h以下となるように調整することがより好ましい。
そして、これらの熱容量の範囲は、以下のような方法で調整することができる。
具体的に、加熱工程及び成膜工程での成膜温度と冷却工程での冷却温度との温度差を調整して、上記式(2)のΔTを間接的に制御し、熱容量Qを調整することができる。この温度差は、例えば、冷却工程において急冷機構110によって基材11が急冷される程度の1000℃/m以上3000℃/m以下の冷却環境としたり、逆に成膜温度を高めたり低めたりして調整できる。
他にも、酸化物超電導体の一部の元素を他の元素に置換することによって、上記式(2)のCpを制御して、熱容量Qを調整することもできる。具体的に、例えば酸化物超電導体がYBCOである場合を例に挙げると、YサイトにGdやSmを置換したり、BaサイトやCuサイト、Oサイトに他の元素を置換したりすることができる。ただし、Cuサイトを他の元素に置換していくと、超電導特性を大きく劣化させてしまうため、他のサイト、特にYサイトを置換することが好ましい。
また、成膜工程での1層あたりの超電導層13の膜厚を調整して、熱容量Qを調整することもできる。具体的には、超電導層13の1層あたりの膜厚が、膜を確実に形成し且つ急冷し易いという観点から20nm以上80nm以下となるようにすることが好ましい。
なお、超電導層13の1層あたりの膜厚は、原料ガスの供給量及び/又は基材11の搬送速度を制御することで、変化させることができる。
<変形例>
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかであり、例えば上述の複数の実施形態は、適宜、組み合わされて実施可能である。また、以下の変形例を、適宜、組み合わせてもよい。
例えば、上記実施形態では、急冷機構110を用いる場合を説明したが、この急冷機構110は省略することもできる。また、1層あたりの超電導層が薄ければ、急冷機構110の代わりに徐冷機構を用いてもよい。
以下に、本発明に係る超電導線の製造方法について、実施例により説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
本発明の実施例に係る超電導線の製造方法では、まず、基材として100μm厚、幅10mmの無配向の金属基板を用意した。用意した金属基板上にIBAD(Ion Beam Assisted Deposition) 法と呼ばれる方法で、配向したMgO層を作製した。そして、このMgO層上に、金属基板からのNi等の拡散の防止のため、あるいは配向性をより向上させるため、CeOをスパッタ法によって成膜した。
次に、各酸化物層が成膜された金属基板をMOCVD装置内に導入して、ヒータで成膜温度となる900℃まで加熱した。そして、YとBaとCuの有機化合物原料(具体的にテトラメチルヘプタンジオネート化合物)を所望の比率で加えたものを、溶媒のTHF(テトラヒドロフラン)に溶かし、得られた溶液を気化器で気化させ、900℃の加熱状態にある金属基板上に供給してYBCO層を成膜した。なお、この成膜において、金属基板は、25m/hの速度で反応炉(ヒータ付近)内に連続的に供給した。また、このとき1層あたりのYBCO層の熱容量を、原料供給量(膜厚)や上記式(2)のΔT等を調整して以下の実施例1〜12毎に0.4J/h以上2.0J/h以下の範囲で変化させた。
そして、このYBCO層の成膜を複数回繰り返すことで、所望の厚さの超電導層を形成し、実施例に係る超電導線を作製した。
(比較例)
比較例では、上述した実施例と同様の方法で、1層あたりのYBCO層の熱容量を、以下の比較例1〜7毎に0.4J/h以上2.0J/h以下の範囲外で変化させて、比較例に係る超電導線を作製した。
以上の実施例1〜12及び比較例1〜7の製造条件(熱容量や上記式(2)のΔT等)を以下の表1及び表2にまとめて記載する。
なお、表1の実施例1〜7及び比較例1〜3では、冷却工程での条件(冷却環境が1500℃/m)を同一にして、多層膜の超電導層の一層あたりの膜厚を調整して、熱容量を変化させている。また、表2の実施例8〜12及び比較例4〜7では、多層膜の超電導層の一層あたりの膜厚を50nmに固定して、冷却工程での条件を調整して、熱容量を変化させている。
(評価)
以上のように得られた実施例及び比較例に係る超電導線の超電導層について、断面TEM写真を撮影した。実施例1〜12に係る超電導線は、1層あたりの熱容量が1.06J/hの超電導層で観察された断面TEM写真と同様に、不純物の微細結晶が超電導層内に全体的に分布している結果となった。即ち、Yの微細結晶が超電導層内に全体的に分布しているのを確認した。一方、比較例1〜7に係る超電導線は、1層あたりの熱容量が2.13J/hの超電導層で観察された断面TEM写真と同様な結果となった。即ち、多層膜の超電導層の各積層界面(1層の超電導層と1層の超電導層の間の界面)にYの大きな結晶を確認した。
次に、実施例及び比較例に係る超電導線について、その磁場印加角度依存性、即ち、3Tの外部磁場を印加し、超電導層のab面に対する角度を変化させたときの臨界電流値Ic(77K)を測定した。そして、この測定結果から超電導層のab面に対する印加した外部磁場の角度θが0度のときのIcと、この0度のときのIcを基準として印加した外部磁場の角度θが20度のときのIcの比及び印加した外部磁場の角度θが90度のときのIcの比を求め、上記表1及び表2に記載した。
表1及び表2に示すように、実施例1〜12に係る超電導線は、1層あたりの熱容量が0.4J/h以上2.0J/h以下に調整されている。そして、この範囲内の超電導線では、上記熱容量の範囲外にある比較例1〜7に比べて、印加した外部磁場の角度θが0度のときのIcが235A以上の高い値となり、また印加した外部磁場の角度θが20度と90度のときのIcの比も、それぞれ、0.24以上の高い比となっていることが分かる。
この結果は、Yの微細結晶が超電導層内に全体的に分布していることに起因するものとだと考えられる。また、印加した外部磁場の角度θが20度と90度のときのIcの比が高いということは、磁場印加角度依存性が改善されていることを意味している。
また、実施例の中でも、実施例2〜5及び実施例9〜11では、1層あたりの熱容量が0.7J/h以上1.5J/h以下となっており、熱容量がこの範囲であるとIcが245Aとより高くなることが分かった。
また、実施例2〜4及び実施例9〜10では、1層あたりの熱容量が0.7J/h以上1.2J/h以下となっており、熱容量がこの範囲であると印加した外部磁場の角度θが20度と90度のときのIcの比が0.4を超え、磁場印加角度依存性が改善していることが分かった。
1 超電導線
11 基材
12 中間層
13 超電導層

Claims (9)

  1. 1層あたりの熱容量が0.4J/h以上2.0J/h以下となるように、長尺状の基材を加熱する加熱工程と、化学気相成長法を用いて加熱状態の前記基材上に酸化物超電導体を成膜する成膜工程と、前記基材を冷却する冷却工程とを順に繰り返して、多層膜の超電導層を形成する、
    超電導線の製造方法。
  2. 1層あたりの熱容量が0.7J/h以上1.5J/h以下となるように、前記成膜工程及び冷却工程を行う、
    請求項1に記載の超電導線の製造方法。
  3. 1層あたりの熱容量が0.7J/h以上1.2J/h以下となるように、前記成膜工程及び冷却工程を行う、
    請求項2に記載の超電導線の製造方法。
  4. 前記加熱工程及び成膜工程での成膜温度と前記冷却工程での冷却温度との温度差を制御して、前記熱容量を調整する、
    請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の超電導線の製造方法。
  5. 前記冷却工程では、1000℃/m以上3000℃/m以下の冷却環境とする、
    請求項4に記載の超電導線の製造方法。
  6. 前記成膜工程での1層あたりの超電導層の膜厚を制御して、前記熱容量を調整する、
    請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の超電導線の製造方法。
  7. 前記超電導層の1層あたりの膜厚が、20nm以上80nm以下となるように前記成膜工程を行う、
    請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の超電導線の製造方法。
  8. 前記酸化物超電導体の一部の元素を他の元素に置換することによって、前記熱容量を調整する、
    請求項1〜請求項7の何れか1項に記載の超電導線の製造方法。
  9. 前記酸化物超電導体は、RE系超電導体であって、前記REは単一の希土類元素又は複数の希土類元素である、
    請求項1〜請求項8の何れか1項に記載の超電導線の製造方法。
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