JP2000302596A - 酸化物超電導導体およびその製造方法 - Google Patents

酸化物超電導導体およびその製造方法

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JP2000302596A
JP2000302596A JP11108611A JP10861199A JP2000302596A JP 2000302596 A JP2000302596 A JP 2000302596A JP 11108611 A JP11108611 A JP 11108611A JP 10861199 A JP10861199 A JP 10861199A JP 2000302596 A JP2000302596 A JP 2000302596A
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Kazutomi Kakimoto
一臣 柿本
Natsuo Yasuhara
夏朗 保原
Teruo Izumi
輝郎 和泉
Toru Shiobara
融 塩原
Yuichi Nakamura
雄一 中村
Kazuya Daimatsu
一也 大松
Kozo Fujino
剛三 藤野
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Fujikura Ltd
Railway Technical Research Institute
International Superconductivity Technology Center
Sumitomo Electric Industries Ltd
Tokyo Electric Power Company Holdings Inc
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Fujikura Ltd
Tokyo Electric Power Co Inc
Railway Technical Research Institute
International Superconductivity Technology Center
Sumitomo Electric Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、基材上に厚膜状酸化物超電導層を
備えた酸化物超電導導体の提供を目的とする。本発明の
製造方法は、基材上に厚膜状の酸化物超電導層を気相法
に比べて格段に大きな成膜レートで形成することができ
る方法の提供を目的とする。本発明の製造方法は、融液
により基材を損傷させないようにした製造方法の提供を
目的とする。 【解決手段】 本発明は、高融点金属からなる基材1
と、この基材上の少なくとも一面上に形成された酸化物
中間層2と、前記酸化物中間層2上に形成された酸化物
超電導体の種膜3と、前記酸化物中間層構成元素のうち
少なくとも1種を含み前記超電導体の種膜3上に液相エ
ピタキシー法により形成された超電導基材層5と、この
超電導基材層5上に形成された液相エピタキシー法によ
る厚膜状の酸化物超電導層6とを具備してなる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、超電導ケーブル、
超電導マグネットあるいは電流リード等に利用可能な超
電導導体とその製造方法に関し、液相エピタキシー法を
利用して基材上の中間層上に酸化物超電導層を形成した
ものとその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】酸化物超電導体はその結晶軸の特定の方
向に電気を流し易く、他の特定の方向に電気を流し難い
という電気的異方性を有しており、この電気的異方性を
有するが故に酸化物超電導体を用いて酸化物超電導導体
を構成する場合は酸化物超電導体の結晶を特定の電気を
流す方向に配向させなくてはならないという問題を有し
ている。また、酸化物超電導体はセラミックの1種であ
り、曲げや歪に弱いので、酸化物超電導体を超電導線材
などの超電導導体として利用しようとする場合、フレキ
シブルなテープ状などの金属基材の上に薄膜状の酸化物
超電導層を設けることがなされている。このような背景
から従来では、金属製のテープ状の基材上に酸化物超電
導層を成膜する手段の例として、テープ状の基材の上に
レーザ蒸着法あるいは化学気相蒸着法(CVD法)など
のような気相法により酸化物超電導層を成膜する方法が
なされている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら前述の気
相法による成膜方法は、結晶配向性に優れた酸化物超電
導層を製造できる手段ではあるものの、減圧雰囲気とし
たチャンバ等の成膜室の内部で結晶配向性に留意しつつ
酸化物超電導体の結晶を徐々に堆積させてゆくという方
法であるので、成膜レートが極めて悪い問題がある。例
えば、気相法の中でも成膜レートが比較的大きいとされ
ているCVD法にあっても、0.01μm/分程度の成
膜レートであるために長尺の酸化物超電導導体を安定し
て製造することが難しく、仮に成膜できたとしても製造
時間がかかり過ぎる問題があった。
【0004】また、酸化物超電導導体を導体としての実
用的な観点から見ると、高電流に耐える構造とする必要
があるが、先の気相法で製造し得る酸化物超電導層は薄
膜状であり、十分な厚さに製造することは困難であるの
で、高電流に耐え得る酸化物超電導層を形成することは
難しい問題を有していた。従って従来知られている気相
法では、酸化物超電導層の厚膜化が困難であり、厚膜化
による高電流化および高速成膜による高生産性を得るこ
とは困難な問題を有していた。
【0005】そこで近年、酸化物超電導層の厚膜を高速
成膜し得る方法の一例として、液相エピタキシー法が提
案されている。この液相エピタキシー法とは、目的とす
る酸化物超電導体の組成に近似する組成の融液を用い、
この融液に基材を浸漬し、基材を徐々に融液から引き上
げ、融液の液面から引き出される基材の表面部分に酸化
物超電導層を生成させようとする方法である。この液晶
エピタキシー法によれば、気相法で得られる薄膜の数1
0倍の厚さのものを早い成膜レートで形成できるとされ
ている。
【0006】ところがこの液相エピタキシー法によりテ
ープ状の基材に酸化物超電導層を形成するためにテープ
状の基材を融液に浸漬すると、テープ状の基材に耐熱性
の高い金属基材を用いていたとしても、金属基材が融液
の熱で損傷し易い問題を有していた。特に、金属製の基
材が融液の成分と反応し易いものであると、浸漬時に基
材が溶け出すおそれがあった。更に、上述の如く酸化物
超電導体はその結晶配向性に優れることが要求されるの
で、基材の構成成分が融液中に溶け出すようであると、
生成するべき酸化物超電導体に不要な元素が混入するお
それが生じ、酸化物超電導体の結晶構造を著しく損なう
おそれがある。
【0007】本発明は前述の背景に基づいてなされたも
ので、基材上に厚膜状の酸化物超電導層を備え、高い臨
界電流を有する酸化物超電導導体を提供することを目的
とする。本発明の製造方法は、基材上に厚膜状の酸化物
超電導層を気相法に比べて格段に大きな成膜レートで形
成することができる方法の提供を目的とする。また、本
発明の製造方法は、酸化物中間層を備えた基材を融液に
浸漬させて液相エピタキシー法により酸化物超電導素材
層を形成する場合、融液により基材を損傷させないよう
にして酸化物超電導素材層を形成できる方法の提供を目
的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は前記課題を解決
するために、高融点金属からなる基材と、この基材上の
少なくとも一面上に形成された酸化物中間層と、前記酸
化物中間層上に形成された酸化物超電導体の種膜と、前
記酸化物中間層構成元素のうち少なくとも1種を含み前
記超電導種膜上に形成された液相エピタキシー法による
酸化物超電導基材層と、この酸化物超電導基材層上に形
成された液相エピタキシー法による厚膜状の酸化物超電
導層とを具備してなることを特徴とする。本発明におい
て、前記酸化物中間層がMgOまたはNiOからなり、
前記酸化物中間層構成元素含有超電導層基材層にMgO
またはNiOが含有されてなるものを用いることができ
る。本発明において、前記基材がNi系あるいはZr系
の合金からなり、前記酸化物中間層がNi、Mg、B
a、Zrの内のいずれかの酸化物からなることを特徴と
するものでも良い。前記酸化物超電導層が、一般式RE
BaCuO(ただし、REはY、Nd、Sm、Eu、E
r、Dy、Gd、Ho、Tm、Ybのうちの1種以上を
示す)で示される組成を有するものであることが好まし
い。
【0009】本発明の製造方法は、高融点金属からなる
基材の少なくとも一面上に酸化物中間層と酸化物超電導
体の種膜を形成し、前記酸化物中間層と種膜を備えた基
材を酸化物超電導体構成元素と酸化物中間層構成元素の
両方を含む融液に浸漬して引き上げる液相エピタキシー
法を実施して前記酸化物超電導体の種膜上に薄膜状の酸
化物超電導基材層を形成し、更に全体を酸化物超電導体
構成元素を含む融液に浸漬して引き上げる液相エピタキ
シー法を実施して前記酸化物超電導基材層上に厚膜状の
酸化物超電導素材層を形成し、この後に酸化物超電導素
材層に熱処理を施して前記酸化物超電導素材層を厚膜状
の酸化物超電導層とすることを特徴とする。更に前記基
材としてNi系あるいはZr系の合金からなるものを用
い、前記酸化物中間層としてNi、Mg、Ba、Zrの
内のいずれかの酸化物からなるものを用いることが好ま
しい。更に前記酸化物超電導体構成元素と酸化物中間層
構成元素の両方を含む融液として、酸化物超電導体構成
元素を含む融液に対して酸化物中間層構成元素を飽和状
態になるように添加してなることが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実
施の形態について説明するが、本発明は以下の実施形態
に限定されるものではない。図1は本発明に係る酸化物
超電導導体の第1実施形態を示すもので、この実施形態
の酸化物超電導導体Aは、テープ状の長尺の基材1と、
この基材1の周面に各々順次被覆された酸化物中間層2
と、酸化物中間層2上に被覆された酸化物超電導体の種
膜3と、酸化物超電導体の種膜3上に被覆された酸化物
超電導基材層5と、酸化物超電導基材層5上に被覆され
た厚膜状の酸化物超電導層6とを具備して構成されてい
る。なお、図面においては基材1の周面全体に酸化物中
間層2と酸化物超電導膜3と酸化物超電導基材層5と酸
化物超電導層6を被覆した構造としたが、基材1の上面
のみ、または下面のみに酸化物中間層2と酸化物超電導
膜3と酸化物超電導基材層5と酸化物超電導層6を積層
した構造としても良い。
【0011】前記基材1は、ハステロイなどのNi系合
金、NiCr合金、Ni、あるいはZr等の耐熱性に優
れた融点1000〜2000℃程度の高融点金属から構
成されている。前記ハステロイは耐熱性と耐酸化性に優
れたNiCr系合金として知られるもので、NiにM
n、Fe、Co、Cr、Si、Fe、Wなどの添加元素
を必要量添加してなる組成系のNi合金であり、より具
体的には、Moを20%(重量%、以下同じ)、Mnを
2.0%、Feを20%含有し、残部Niの組成を有す
るハステロイA、Moを26〜30%、Coを2.5
%、Cr、Mn、Siを各々1.0%、Feを4〜7%
含有し、残部Niの組成を有するハステロイB、Moを
15〜17%、Crを14.5〜16.5%、Wを3〜
4.5%、Mn、Siを各々1.0%、Feを4〜7%含
有し、残部Niの組成を有するハステロイCなどが知ら
れているのでこれらのいずれを用いても良い。この実施
形態で用いる基材1は厚さ0.1mm〜0.5mm程度の
テープ状の可撓性を有するものが好ましい。
【0012】前記酸化物中間層2は、基材1を構成する
ハステロイなどのNi系合金あるいはZrなどの反応性
が低い材料からなるものが好ましく、具体的には、Mg
O、NiOなどからなる。この酸化物中間層2は、基材
1を構成するハステロイを後述する酸化物超電導体の融
液に浸漬した場合に基材1の溶解を防止するための目的
と、適用される酸化物超電導体に近い結晶構造を有して
いて、酸化物超電導体の結晶を成長させる場合にエピタ
キシャル成長できるような格子定数を有し、酸化物超電
導体の成膜用の下地膜となる得るものが好ましい。酸化
物中間層2の厚さは0.5μm〜2μm程度の厚さであ
ることが好ましく、具体的には1μm程度の膜厚とする
ことができる。
【0013】前記酸化物超電導体の種膜3は、目的とす
る電流通電用の酸化物超電導層6と同一組成のものであ
ることが必要であるが、Y1Ba2Cu3yで示されるY
系の組成のもの、先の組成式のYをNd、Sm、Eu、
Er、Dy、Gd、Ho、Tm、Ybの元素のいずれか
で置換してなるREBa2Cu3yなる組成系のものの
内のいずれの組成系のものでも良い。ただし、これらの
中でもY1Ba2Cu3yの組成式で示されるY系が広く
用いられていて有用であり、Nd系ではNd1 +xBa2-x
Cu3yの組成式で示されるNd系のものが有用であ
る。このNd系の酸化物超電導体は96Kの臨界温度を
示し、高磁界域での臨界電流密度(Jc)が先のY系よ
りも高いことで有望視されている組成のものである。こ
の酸化物超電導体の種膜3は、レーザ蒸着法、CVD
法、スパッタリング法などの気相法で形成されたもの
で、厚さは0.01〜1μm程度の厚さであることが好
ましく、具体的には1μm程度の膜厚とすることができ
る。
【0014】前記酸化物超電導基材層5は先に示す組成
の酸化物超電導体の構成元素に加えて酸化物中間層2を
構成する元素が含有されたものである。この酸化物超電
導基材層5は先の酸化物超電導体の種膜3の構成元素と
先の酸化物中間層2の構成元素を両方含む後述の融液か
ら後述の液相エピタキシー法により形成された薄膜状の
ものである。この酸化物超電導基材層5は厚さ0.5μ
m〜3μm程度の範囲のものであり、一例として1μm
程度の厚さとすることができる。この酸化物超電導基材
層5は酸化物中間層2を構成する元素を微量、数%含む
ので超電導特性の面では後述する酸化物超電導層6に劣
るが、酸化物超電導層6を液相エピタキシー法で成長さ
せるための基の層として有効であるので、薄いもので十
分であり、薄膜状にできるので液相エピタキシー法によ
り形成する際の速度も早くすることができる。
【0015】前記酸化物超電導層6は先に説明の酸化物
超電導体の種膜3の構成材料と同等の酸化物超電導材料
からなるが、後述する液相エピタキシー法により厚膜状
に形成されたものであり、この酸化物超電導層6を通電
用の主力の超電導層とする。この酸化物超電導層6は例
えば1μm〜10μmの範囲の厚さとすることができ
る。
【0016】図1に示す構造の酸化物超電導導体Aを製
造するには、まず、図2に示す構造のベース基材7を作
成する。このベース基材7は、基材1の周面に酸化物中
間層2を形成し、酸化物中間層2上に酸化物超電導層種
膜3を形成して構成されたものである。
【0017】基材1の周面に酸化物中間層2を形成する
には、レーザ蒸着法などの気相法で形成する。この酸化
物中間層2は後に形成する酸化物超電導層6に比べて厚
膜化する必要は無く、後に形成する酸化物超電導体の種
膜3の結晶配向性を整える目的とするので、0.5〜2
μm程度の厚さに形成すれば良い。よって酸化物中間層
2を気相法(CVD法、スパッタ法、レーザ蒸着法など
の気相法)で1μm程度に形成することができる。
【0018】続いて酸化物中間層2の周面に酸化物超電
導体の種膜3をレーザ蒸着法、CVD法またはスパッタ
法などの気相法により形成する。この酸化物超電導体の
種膜3は、後に説明する液相エピタキシー法により酸化
物超電導体の厚膜を融液から成長させる場合の成長の種
となるべきものであるので、厚く形成する必要は無く、
気相法で容易に形成できる厚さである0.01μm(1
0nm)〜1μm程度、例えば1μm形成すれば良い。
よって、気相法であっても長尺のベース基材1に容易に
酸化物超電導体の種膜3を形成することができる。ここ
で用いる超電導体の種膜3の組成は、目的とする酸化物
超電導層6と同一組成のものを用いることが必要であ
り、例えば、後述する液相エピタキシー法でY1Ba2
3yで示される組成系の酸化物超電導層6を形成する
場合はY1Ba2Cu3yで示される組成の酸化物超電導
体の種膜3とする必要がある。
【0019】酸化物超電導基材層5を酸化物超電導体の
種膜3上に形成するには、酸化物中間層2と酸化物超電
導体の種膜3を設けたベース基材7を酸化物超電導体の
融液に浸漬後に引き上げる液相エピタキシー法を用い
る。液相エピタキシー法を実施するには、例えば、図3
に示すように酸化物超電導体の近似組成の融液に対して
飽和する量の酸化物中間層構成元素を添加した融液8を
偏平型の容器9に満たし、前記融液8にベース基材7を
浸漬してからベース基材7を徐々に引き上げる操作を行
なう。
【0020】MgOからなる酸化物中間層2とY1Ba2
Cu3yで示される組成系の酸化物超電導層6とを用い
る構造の場合、酸化物超電導基材層5を形成するには、
前記融液8として、Y2BaCuO5の組成(略称Y21
1)の粉末を容器9の底部に収納し、その粉末の上に3
BaCuO2+2CuOの組成の混合物を載せ、全体の
組成を例えばY:Ba:Cu=6:36:58の割合と
して全体を溶融して得た融液を作成し、これに飽和量と
なる0.3原子%程度のMgをMgOとして添加溶融し
た融液を一例として用いることができる。
【0021】そして、この融液8の底部を約1000℃
になるように加熱すると同時に、融液8の表面部分を約
980℃になるように若干冷却し、融液8の表面側と底
部側とで20℃程度の温度差をつける。この状態の融液
8の内部の表面近くの部分に耐熱性部材からなるローラ
10を設け、ローラ10を介してベース基材7が融液8
の上部側を通過するようにベース基材7を融液8に浸漬
する。ここで用いるローラ10の構成材料は、融液8に
対して強いBaZrO3等の耐熱性のセラミック材料か
ら構成することができる。
【0022】以上の操作により融液8の上部側を通過す
るベース基材7の表面に融液8の成分が付着し、ベース
基材7の表面部分に酸化物超電導体の種膜3を種結晶と
してY1Ba2Cu3y+MgOで示される組成系の酸化
物超電導基材層5を良好な結晶配向状態で結晶成長でき
る。これは、融液8の底部側を高温度領域とし、融液8
の上部側を低温度領域としているので、底部側から上部
側に対流が生じ、融液8の底部側の過飽和状態の融液が
上部側の低温領域に達すると過飽和とされた成分が選択
的に結晶化しやすくなり、この低温領域に超電導体の種
膜3を備えたベース基材7を通過させることで酸化物超
電導体の種膜3を基にして結晶成長を促進することがで
きることに起因している。
【0023】なおここで、酸化物超電導基材層5の膜厚
は後に形成する酸化物超電導層6よりも薄いもので酸化
物中間層2や酸化物超電導体の種膜3と同等の薄膜状の
もので差し支えない。この酸化物超電導基材層5にMg
Oを添加するのは、融液8が980℃〜1000℃と高
温であり、この融液にベース基材7を浸漬した際に酸化
物中間層2が高温に加熱されて融液8と反応しないよう
に、また、仮に多少反応したとしても酸化物中間層2が
融液8側に溶出しないようにするためである。MgOが
融液8の中に飽和状態で添加されているならば、仮にM
gOの酸化物中間層2が融液8と反応しても酸化物中間
層2のMgOが溶出するおそれは少なく、酸化物中間層
2が損傷することはない。また、添加するMgの溶解量
があまりに多い場合、酸化物超電導基材層5が液相エピ
タキシー法で生成されないおそれを有するが、上述の如
くMgの飽和溶解量は0.3原子%と低いので、液相エ
ピタキシー法で酸化物超電導基材層5を成長させる場合
に支障はない。このような理由から、融液8に飽和状態
で溶解する元素は酸化物中間層2を構成する元素とす
る。
【0024】次に、酸化物超電導層6を酸化物超電導基
材層5上に形成するには、酸化物中間層2と酸化物超電
導体の種膜3と酸化物超電導基材層5を設けたベース基
材7を酸化物超電導体の融液に浸漬後に引き上げる第2
回目の液相エピタキシー法を用いる。第2回目の液相エ
ピタキシー法を実施するには、例えば、図5に示すよう
に酸化物超電導体の近似組成の融液12を偏平型の容器
13に満たし、前記融液12に先の酸化物超電導基材層
5を設けたベース基材7を浸漬してからベース基材7を
徐々に引き上げる操作を行なう。
【0025】Y1Ba2Cu3yで示される組成系の酸化
物超電導層6を用いる構造を採用する場合、酸化物超電
導層6を形成するには、前記融液12として、Y2Ba
CuO5の組成(略称Y211)の粉末を容器13の底
部に収納し、その粉末の上に3BaCuO2+2CuO
の組成の混合物を載せ、全体の組成を例えばY:Ba:
Cu=6:36:58の割合として全体を溶融して得た
融液を一例として用いることができる。
【0026】そして、この融液12の底部を約1000
℃になるように加熱すると同時に、融液12の表面部分
を約980℃になるように若干冷却し、融液12の表面
側と底部側とで20℃程度の温度差をつける。この状態
の融液12の内部の表面近くの部分に耐熱性部材からな
るローラ14を設け、ローラ14を介してベース基材7
が融液12の上部側を通過するようにベース基材7を融
液12に浸漬する。ここで用いるローラ14の構成材料
は、融液12に対して強いBaZrO3等の耐熱性のセ
ラミック材料から構成することができる。
【0027】以上の操作により融液12の上部側を通過
するベース基材7の表面に融液12の成分が付着し、ベ
ース基材7の表面部分に酸化物超電導基材層5を種結晶
としてY1Ba2Cu3yで示される組成系の酸化物超電
導素材層15を良好な結晶配向状態で結晶成長できる。
これは、融液12の底部側を高温度領域とし、融液12
の上部側を低温度領域としているので、底部側から上部
側に対流が生じ、融液12の底部側の過飽和状態の融液
が上部側の低温領域に達すると過飽和とされた成分が選
択的に結晶化しやすくなり、この低温領域に超電導基材
層5を備えたベース基材7を通過させることで酸化物超
電導素材層15を基にして結晶成長を促進することがで
きることに起因している。
【0028】以上のことから、第2回目の液相エピタキ
シー法を用いて長尺のベース基材7に酸化物超電導体の
厚膜を形成する場合に用いる容器13は図5に示す偏平
型の幅広のものが好ましく、この容器13の融液12の
上部側に長い距離にわたりベース基材7を浸漬してから
引き出すことで酸化物超電導体の結晶成長を早くするこ
とができ、早い引き出し速度であっても厚い膜を得るこ
とができる。従って高電流を流すために都合の良い厚膜
状の酸化物超電導素材層15を従来の気相法よりも格段
に早い成膜速度で得ることができる。
【0029】このようにして得られた厚膜状の酸化物超
電導素材層15を350〜600℃の温度に好ましくは
酸素雰囲気中において数時間〜数100時間熱処理する
ことで酸化物超電導素材層に酸素を十分に供給して結晶
構造を整え、酸化物超電導素材層15を酸化物超電導層
6にすることができ、これにより図1に示すものと同等
の厚膜状の結晶配向性の良好な酸化物超電導層6を備え
た酸化物超電導導体Aを得ることができる。
【0030】以上説明の液相エピタキシー法により酸化
物超電導層6を形成するならば、厚さ2〜10μm程度
の厚膜状の酸化物超電導層6を気相法よりも格段に早
い、例えば、1μm/分程度の成膜レートで得ることが
できる。ここで気相法(スパッタリング法、蒸着法、C
VD法等)において成膜レートが比較的早いものとして
知られるCVD法であっても、通常の成膜レートは0.
01μm/分程度であるので、液相エピタキシー法によ
る成膜レートが如何に早いものであるかということが理
解できる。
【0031】
【実施例】幅10mm、厚さ0.2mm、長さ1000
mmの無配口ハステロイC(Ni60%、Cr15%、
Mo15%、Fe5%、Co2.5%、残部微量添加元
素)からなる基材テープの上下両面と両側面に対し、M
gOのターゲットを用いたレーザ蒸着法により厚さ1μ
mのMgOの(100)面配向させた酸化物中間層を形
成し、ベース基材を得た。ハステロイCからなるテープ
基材の周面に酸化物中間層を形成するには、テープ基材
の片面に第1中間層を形成した後でテープ基材を裏返し
てテープ基材の他面に再びレーザ蒸着する方法を採用し
た。このレーザ蒸着の際にテープ基材の両側面側にもレ
ーザ蒸着粒子の回り込みにより第1、第2中間層を生成
させ、図2に示す構造のベース基材を得た。レーザ蒸着
には、各ターゲットを用いて1×10-8MPaの減圧雰
囲気においてターゲットにエキシマレーザを照射してタ
ーゲット粒子を蒸発させて基材テープ上に蒸着する方法
を採用した。
【0032】次に、イットリア製の容器の内底部にY2
BaCuO5の組成(略称Y211)の粉末を収納し、
その粉末の上に3BaCuO2+2CuOの組成の混合
物を載せて全体の組成を例えばY:Ba:Cu=6:3
6:58の割合として容器を加熱装置で加熱し、前記粉
末と混合物溶融して融液を得た。この融液に0.3原子
%の飽和量に当たるMgO粉末を溶解し、Mgを飽和さ
せた融液を得た。
【0033】次いでこの融液の上層部に先のベース基材
の先端部側からベース基材を順次浸漬し、5mm/se
cの速度で順次引き上げる第1回目の液相エピタキシー
法を行なった。この処理により酸化物中間層上に厚さ1
μmの酸化物超電導基材層を生成した。次いで先の組成
の融液とは異なり、MgOを添加していない融液を用
い、この融液の上層部に先のベース基材の先端部側から
ベース基材を順次浸漬し、1mm/secの速度で順次
引き上げる第2回目の液相エピタキシー法を行なった。
この処理により酸化物超電導基材層上に厚さ5μmの酸
化物超電導素材層を生成した。この試料を酸素雰囲気中
において500℃で400時間加熱する熱処理を施すこ
とでY1Ba2Cu3yで示される組成の厚さ5μmの酸
化物超電導層を備えた長さ1000mmの酸化物超電導
導体を得ることができた。なお、前記融液の組成比は、
得ようとするY系の酸化物超電導体の組成比とは異なる
が、この組成で得た融液に超電導体の種膜を通過させる
ことでY1Ba2Cu3yで示される組成系の酸化物超電
導層を結晶成長させることができることは本発明者らが
種々の実験により確認している。
【0034】得られた酸化物超電導導体を液体窒素で冷
却し、無磁場中において4端子法で臨界電流値を測定し
たところ、500Aの通電が可能であった。次に比較の
ために、先の試験で用いたハステロイ製のテープ基材と
酸化物中間層を備えたベース基材に対し、CVD法で1
×10-4MPaの減圧雰囲気中においてベース基材を移
動させながら2時間かけて成膜したところ、厚さ1μm
で長さ10cmの酸化物超電導層を得ることができた。
この試料を液体窒素で冷却して無磁場中において4端子
法で臨界電流密度を測定したところ、100Aの通電が
可能であった。以上のことから本発明は、CVD法より
も格段に早い成膜レートで厚膜状の臨界電流値の高い酸
化物超電導層を備えた長尺の酸化物超電導導体を製造で
きることが判明した。
【0035】
【発明の効果】以上説明したように本発明の酸化物超電
導導体にあっては、基材と酸化物中間層と液相エピタキ
シー法により得られた厚膜状の酸化物超電導層とを具備
してなり、酸化物中間層に沿って液相エピタキシー法に
より生成された厚膜状の酸化物超電導層が従来の気相法
で得られる酸化物超電導層よりも厚い状態で得られるの
で、従来の気相法で得られた酸化物超電導層を有する酸
化物超電導導体よりも高い臨界電流を示す優れた酸化物
超電導導体を得ることができる。
【0036】また、酸化物超電導基材層の中に酸化物中
間層の構成元素を含有させているので、酸化物超電導基
材層を液相エピタキシー法で形成する場合に融液内に酸
化物中間層の構成元素を含む融液を使用することがで
き、この融液を使用し、酸化物中間層を備えた基材を融
液に浸漬した場合、酸化物中間層の構成元素を融液側に
溶出させることなく酸化物超電導基材層を形成できる。
よって、酸化物超電導基材層を液相エピタキシー法によ
り生成させる場合に融液によって基材を損傷させること
なく酸化物超電導基材層を生成できる。更にまた、この
損傷していない状態の基材上に酸化物超電導基材層を生
成できることから、この酸化物超電導基材層を基に液相
エピタキシー法により厚膜状の高臨界電流の酸化物超電
導層を得ることができる。更に、酸化物超電導体の種膜
を酸化物中間層上に良好な結晶配向性でもって形成する
ならば、液相エピタキシー法で形成する酸化物超電導基
材層の結晶配向性を良好にすることができ、この酸化物
超電導基材層を基に液相エピタキシー法で得られた酸化
物超電導層であるならば、良好な結晶配向性を有するも
のを得ることができ、優れた臨界電流を示す酸化物超電
導導体を提供できる。
【0037】前記基材をNi系、Zr系の高融点金属か
ら形成することで、基材の耐熱性と耐食性を確実なもの
とすることができる。また、酸化物中間層をMgOまた
はNiOの酸化物から構成することで液相エピタキシー
法により融液に浸漬されて高温度に加熱されて製造され
た場合であっても、基材との反応を抑制することがで
き、液相エピタキシー法を実施する場合の融液に対する
耐性を確実なものとすることができる。
【0038】次に、酸化物超電導層として、一般式RE
BaCuO(ただし、REはY、Nd、Sm、Eu、E
r、Dy、Gd、Ho、Tm、Ybの内の1種以上を示
す)で示される組成の酸化物超電導体が好ましく、液体
窒素温度以上の臨界温度を示し、高臨界電流のものが得
られる。
【0039】一方、本発明の製造方法によれば、酸化物
超電導層構成元素と酸化物中間層構成元素を含む融液に
酸化物中間層を備えた基材を浸漬して酸化物超電導基材
層を形成し、更に酸化物超電導層構成元素を含む融液に
前記酸化物超電導基材層を備えた基材を浸漬させて液相
エピタキシー法により結晶配向性に優れた厚膜状の酸化
物超電導層を有する酸化物超電導導体を得ることができ
る。
【0040】これらの液相エピタキシー法を実施する場
合、酸化物中間層を構成する元素を含む融液に酸化物中
間層を備えた基材を浸漬することで、酸化物中間層構成
元素を融液側に溶出させることなく、基材と酸化物中間
層を損傷させることなく酸化物超電導基材層を酸化物中
間層上に形成できる。また、基材と酸化物中間層を損傷
させていない状態で酸化物超電導基材層を形成し、この
酸化物超電導基材層を基にして液相エピタキシー法によ
り酸化物超電導層を形成できるので、高臨界電流を示す
結晶配向性の優れた酸化物超電導層を有する酸化物超電
導導体を得ることができる。
【0041】先の基材としてはNi系、Zr系の高融点
金属から形成することで、基材の耐熱性と耐食性を確実
なものとすることができる。また、酸化物中間層をN
i、Mgの酸化物から構成することで融液に浸漬されて
高温度に加熱されて製造されても基材との反応を抑制す
ることができ、基材を損傷させていない状態の臨界電流
の高い酸化物超電導導体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は本発明に係る酸化物超電導導体の第1
の実施形態を示す断面図。
【図2】 図2は図1に示す酸化物超電導導体を製造す
る場合に用いるベース基材の一実施形態を示す断面図。
【図3】 図3は超電導体の種膜を備えたテープ状のベ
ース基材を融液に浸漬して引き上げる第1回目の液相エ
ピタキシー法を実施している状態を示す構成図。
【図4】 図4は第1回目の液相エピタキシー法により
酸化物超電導体の種膜上に酸化物超電導基材層を形成し
た状態を示す断面図。
【図5】 図5は超電導基材層を備えたテープ状のベー
ス基材を融液に浸漬して引き上げる第2回目の液相エピ
タキシー法の実施状態を示す構成図。
【図6】 図6は第2回目の液相エピタキシー法により
得られた酸化物超電導素材層を備えたベース基材の断面
図。
【符号の説明】
A・・・酸化物超電導導体、1・・・基材、2・・・酸化物中間
層、3・・・酸化物超電導体の種膜、5・・・酸化物超電導基
材層、6・・・酸化物超電導層、7・・・ベース基材、8、1
2・・・融液、9、13・・・容器、10、14・・・ローラ、
15・・・酸化物超電導素材層。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (71)出願人 000002130 住友電気工業株式会社 大阪府大阪市中央区北浜四丁目5番33号 (71)出願人 391004481 財団法人国際超電導産業技術研究センター 東京都港区新橋5丁目34番3号 栄進開発 ビル6階 (72)発明者 柿本 一臣 東京都江東区東雲1丁目14番3号 財団法 人国際超電導産業技術研究センター 超電 導工学研究所内 (72)発明者 保原 夏朗 東京都江東区東雲1丁目14番3号 財団法 人国際超電導産業技術研究センター 超電 導工学研究所内 (72)発明者 和泉 輝郎 東京都江東区東雲1丁目14番3号 財団法 人国際超電導産業技術研究センター 超電 導工学研究所内 (72)発明者 塩原 融 東京都江東区東雲1丁目14番3号 財団法 人国際超電導産業技術研究センター 超電 導工学研究所内 (72)発明者 中村 雄一 東京都江東区東雲1丁目14番3号 財団法 人国際超電導産業技術研究センター 超電 導工学研究所内 (72)発明者 大松 一也 大阪府大阪市此花区島屋1丁目1番3号 住友電気工業株式会社大阪製作所内 (72)発明者 藤野 剛三 大阪府大阪市此花区島屋1丁目1番3号 住友電気工業株式会社大阪製作所内 Fターム(参考) 4G077 AA03 BC53 CG02 ED06 EE06 FE11 HA08 5G321 AA01 AA04 BA01 BA03 BA05 CA04 CA22 CA24 CA27 CA28 DB28

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 高融点金属からなる基材と、この基材上
    の少なくとも一面上に形成された酸化物中間層と、前記
    酸化物中間層上に形成された酸化物超電導種膜と、前記
    酸化物中間層構成元素のうち少なくとも1種を含み前記
    超電導種膜上に液相エピタキシー法により形成された超
    電導基材層と、この超電導基材層上に形成された液相エ
    ピタキシー法による厚膜状の酸化物超電導層とを具備し
    てなることを特徴とする酸化物超電導導体。
  2. 【請求項2】 前記酸化物中間層がMgOまたはNiO
    からなり、前記酸化物中間層構成元素含有超電導層基材
    層にMgOまたはNiOが含有されてなることを特徴と
    する請求項1記載の酸化物超電導導体。
  3. 【請求項3】 前記基材がNi系あるいはZr系の合金
    からなり、前記酸化物中間層がNi、Mg、Ba、Zr
    の内のいずれかの酸化物からなることを特徴とする請求
    項1記載の酸化物超電導導体。
  4. 【請求項4】 前記酸化物超電導層が、一般式REBa
    CuO(ただし、REはY、Nd、Sm、Eu、Er、
    Dy、Gd、Ho、Tm、Ybのうちの1種以上を示
    す)で示される組成を有するものであることを特徴とす
    る請求項1または2記載の酸化物超電導体。
  5. 【請求項5】 高融点金属からなる基材の少なくとも一
    面上に酸化物中間層と酸化物超電導体の種膜を形成し、
    前記酸化物中間層と種膜を備えた基材を酸化物超電導体
    構成元素と酸化物中間層構成元素の両方を含む融液に浸
    漬して引き上げる液相エピタキシー法を実施して前記酸
    化物超電導体の種膜に薄膜状の酸化物超電導基材層を形
    成し、更に全体を酸化物超電導体構成元素を含む融液に
    浸漬して引き上げる液相エピタキシー法を実施して前記
    酸化物超電導基材層上に厚膜状の酸化物超電導素材層を
    形成し、この後に厚膜状の酸化物超電導素材層に熱処理
    を施して前記酸化物超電導素材層を厚膜状の酸化物超電
    導層とすることを特徴とする酸化物超電導導体の製造方
    法。
  6. 【請求項6】 前記基材としてNi系あるいはZr系の
    合金からなるものを用い、前記酸化物中間層としてN
    i、Mg、Ba、Zrの内のいずれかの酸化物からなる
    ものを用いることを特徴とする請求項5記載の酸化物超
    電導導体の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記酸化物超電導体構成元素と酸化物中
    間層構成元素の両方を含む融液として、酸化物超電導体
    構成元素を含む融液に対して酸化物中間層構成元素を飽
    和状態になるように添加してなることを特徴とする請求
    項6記載の酸化物超電導導体の製造方法。
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