JP2013011734A - 電子写真感光体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】超音波の周波数を小さくすることなしに短時間で高い洗浄力をもって導電性基体を洗浄し、その上に感光層を形成して、優れた感光特性を有する電子写真感光体を歩留まりよく製造し得る電子写真感光体の製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】アルミニウム系金属製の導電性基体を有機溶剤に浸漬して出力50〜100kHzの超音波を印加し、次いで前記導電性基体をノニオン系界面活性剤およびアニオン系界面活性剤から選択される1種の界面活性剤を含む水溶液に浸漬して出力50〜100kHzの超音波を印加し、次いでさらに水洗および乾燥して、前記導電性基体を洗浄する工程、および洗浄された導電性基体上に感光層を形成する工程を含むことを特徴とする電子写真感光体の製造方法により、上記の課題を解決する。
【選択図】図1

Description

本発明は、電子写真感光体の製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、複写機やプリンタに用いられる、優れた感光特性を有する電子写真感光体を歩留まりよく製造し得る方法に関する。
電子写真感光体(以下「感光体」ともいう)は、一般に円筒状の導電性基体上に感光層を積層形成することにより製造される。導電性基体の材料としては、低コストであること、軽量であること、加工が容易であることなどからアルミニウム系金属が広く用いられている。
アルミニウム系金属製の円筒状の導電性基体は、円筒状のアルミニウム系金属の表面を切削することにより成形され、切削加工においては、発生する熱の冷却、潤滑工具の摩耗防止、切削加工を施した導電性基体の面精度向上などのために、切削油として一般に灯油ナフサなどの鉱物油が使用されている。
このようにして加工された導電性基体上に感光層を順次形成して、感光体を得ることになるが、導電性基体表面には、切削時の油分(切削油)や切削粉、空気中(周囲)の粉じんなどが付着しているので、通常、これらの導電性基体表面の付着物を洗浄する。
導電性基体表面に油分や切削粉が残ると、感光層形成の際にハジキやシミの原因になり、均一な感光層が形成できず、感光体の欠陥の原因になる。
導電性基体表面の洗浄方法としては、
(1)有機溶剤または水系洗浄剤などに導電性基体を浸漬する浸漬洗浄、(2)有機溶剤または水系洗浄剤などに導電性基体を浸漬し、超音波を印加する浸漬洗浄、(3)有機溶剤または水系洗浄剤などに導電性基体を浸漬し、ブラシ、スポンジなどによる摩擦で物理的に付着物を除去する接触洗浄、(4)導電性基体に有機溶剤または水系洗浄剤などをシャワーリングしながらブラシ、スポンジなどによる摩擦で物理的に付着物を除去する接触洗浄、(5)導電性基体表面に有機溶剤または水系洗浄剤などをスリットより噴出させるジェット洗浄、(6)導電性基体を有機溶剤または水系洗浄剤などの蒸気中に通過させる蒸気洗浄、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
洗浄に用いられる洗浄剤としては、有機溶剤、準水系洗浄剤、水系洗浄剤および純水などが挙げられ、現在では、オゾン層破壊や地球温暖化、大気汚染などの環境問題および人体への悪影響の観点から、塩素系溶剤の削減、全廃の方向に移行しており、水系洗浄剤または純水が主流となっている。
例えば、特開平2−201373号公報(特許文献1)には、上記(3)に相当する、感光体用の導電性基体を、少なくとも溶剤中においてブラシで洗浄する方法が記載され、特開平2−191963号公報(特許文献2)には、上記(5)に相当する、特定の研磨剤を用いて導電性基体を湿式ホーニング処理する方法が記載されている。
また、特開平7−104485号公報(特許文献3)には、上記(2)に相当する、水もしくは界面活性剤水溶液からなる洗浄液により導電性基体を洗浄し、次いで特定の比誘電率を有する水溶性有機溶剤より導電性基体を洗浄する方法が記載されている。
特開平2−201373号公報 特開平2−191963号公報 特開平7−104485号公報
洗浄剤としての水系洗浄剤や純水は、塩素系溶剤に比べて洗浄力が低く、水系洗浄剤や純水を用いて塩素系溶剤と同等の洗浄力を得るためには、特許文献1および2のように、接触洗浄のような物理的手段に頼らざるを得ない。
しかしながら、接触洗浄などは、確かに洗浄力を高めることができる反面、導電性基体表面にキズをつける可能性が高くなるという欠点がある。
他方、切削加工時に水溶性切削油を用いることで、洗浄効率を高める方法も提案されているが、水溶性切削油は非水溶性切削油に比べて切削加工後の被切削物、ここでは導電性基体の水による腐食が生じ易いという欠点がある。
そこで、非水溶性切削油を用いた導電性基体の洗浄において、接触洗浄に代わり、特許文献3のような、超音波を印加する浸漬洗浄(超音波洗浄)が用いられるようになってきた。
超音波洗浄とは、超音波により発生したキャビテーションの衝撃力により、導電性基体表面の油分や切削粉、空気中の粉じんを除去する方法である。
キャビテーションの衝撃力は、一般的に、超音波の周波数が小さいほど大きくなり、逆に周波数が大きくなるほど小さくなることが知られている。
したがって、洗浄力を高めるためには、超音波によるキャビテーション衝撃力を大きくする、つまり低周波数で超音波を印加する、または長時間超音波を印加する必要がある。
しかしながら、アルミニウム系金属は比較的機械的衝撃に弱く、キャビテーションによる衝撃力が強いと、ダメージを受けることになる。
また、長時間超音波を印加すると、エロージョンと呼ばれる腐食が起こり、導電性基体表面にピンホールと呼ばれる微細な穴が生じさせることになる。
特に被洗浄物が大型で重量が大きい場合には、被洗浄物自体が超音波を吸収し、十分な洗浄力を得ることが困難になる。
そこで、高い洗浄力を得るために、超音波を低周波数にする、あるいは長時間超音波を印加すると、上記のように導電性基体自体を痛めることになる。
本発明は、超音波の周波数を小さくすることなしに短時間で高い洗浄力をもって導電性基体を洗浄し、その上に感光層を形成して、優れた感光特性を有する感光体を歩留まりよく製造し得る感光体の製造方法を提供することを課題とする。
本発明の発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、感光体用のアルミニウム系金属製の導電性基体の洗浄工程において、水系洗浄剤中で超音波洗浄を行う前に、有機溶剤を用いた超音波洗浄(前処理)を行うことにより、導電性基体の表面に付着した切削油や切削粉を除去し易くなることを意外にも見出し、本発明を完成するに至った。
かくして、本発明によれば、アルミニウム系金属製の導電性基体を有機溶剤に浸漬して出力50〜100kHzの超音波を印加し、次いで前記導電性基体をノニオン系界面活性剤およびアニオン系界面活性剤から選択される1種の界面活性剤を含む水溶液に浸漬して出力50〜100kHzの超音波を印加し、次いでさらに水洗および乾燥して、前記導電性基体を洗浄する工程、および洗浄された導電性基体上に感光層を形成する工程を含むことを特徴とする電子写真感光体の製造方法が提供される。
本発明によれば、超音波の周波数を小さくすることなしに短時間で高い洗浄力をもって導電性基体を洗浄し、その上に感光層を形成して、優れた感光特性を有する感光体を歩留まりよく製造し得る感光体の製造方法を提供することができる。
導電性基体の表面に付着する除去対象の汚れは、切削時の油分(切削油)や切削粉、空気中の粉じんである。切削粉や粉じんは、導電性基体上に付着した切削油を介して付着しているので、導電性基体上の切削油を除去できれば、切削粉や粉じんも除去できる。
有機溶剤は一般に水系洗浄剤に比べて脱脂力が高く、有機溶剤および界面活性剤を含む水溶液の順に導電性基体を浸漬し、超音波を印加(超音波洗浄)することにより、高い洗浄力をもって導電性基体を洗浄できたものと推察される。
本発明によれば、有機溶剤がテトラヒドロフラン、メタノール、エタノールまたはイソプロピルアルコールである場合に、特に有機溶剤がテトラヒドロフランである場合に、上記の効果がさらに発揮される。
また、本発明によれば、界面活性剤がアルキルグリコシドのような低分子系、ポリエチレングリコールやポリビニルアルコールのような高分子系から選択されるノニオン系界面活性剤およびカルボン酸、スルホン酸、リン酸構造を持つ物質を含むアニオン系界面活性剤である場合に、界面活性剤を含む水溶液が濃度0.5〜30重量%の界面活性剤を含む場合に、界面活性剤を含む水溶液が液温30〜60℃に加熱されてなる場合に、上記の効果がさらに発揮される。
本発明によれば、超音波が0.5〜10分間印加される場合に、導電性基体が直径80〜150mmの円筒状である場合に、上記の効果がさらに発揮される。
本発明の感光体の製造方法における導電性基体の洗浄工程に用いられる装置の概略図である。 本発明の感光体の製造方法において製造される積層型感光体(a)および単層型感光体(b)の要部の構成を示す模式断面図である。
本発明の感光体の製造方法は、
アルミニウム系金属製の導電性基体を有機溶剤に浸漬して出力50〜100kHzの超音波を印加し、次いで導電性基体をノニオン系界面活性剤およびアニオン系界面活性剤から選択される1種の界面活性剤を含む水溶液に浸漬して出力50〜100kHzの超音波を印加し、次いでさらに水洗および乾燥して、導電性基体を洗浄する工程、および
洗浄された導電性基体上に感光層を形成する工程
を含むことを特徴とする。
本発明の感光体の製造方法は、上記のように導電性基体の洗浄工程と導電性基体上への感光層の形成工程に分けられ、以下、これらの各工程について具体的に説明する。
(A)導電性基体の洗浄工程
洗浄工程は、アルミニウム系金属製の導電性基体を有機溶剤に浸漬して出力50〜100kHzの超音波を印加し(第1洗浄)、次いで導電性基体を界面活性剤を含む水溶液に浸漬して出力50〜100kHzの超音波を印加し(第2洗浄)、次いで導電性基体を水洗および乾燥することからなり、大きく洗浄、水洗(リンス)および乾燥に分けられる。
(導電性基体)
導電性基体は、アルミニウム系金属製であり、例えば、単結晶ダイヤモンド焼結体からなるバイトにより円筒状のアルミニウム系金属の表面を切削加工することにより製造される。例えば、導電性基体の表面にミスト状にした切削油を吹きつけながら、バイトで切削する。切削油をミスト状にすることで、切削時に発生した切削粉や環境異物の頑強な付着を防止する。しかしながら、これらの付着を完全に防止できず、残った付着物を本発明の方法で除去する。
また、切削加工において切削油を用いることにより、導電性基体の表面が切削油で被覆され、均一な酸化膜が形成されるため、導電性基体の表面が安定化し、その腐食が防止できる。このような切削油の被膜は、切削後に長期間導電性基体が放置されても、本発明の方法の洗浄工程で容易に除去することができる。
アルミニウム系金属とは、純アルミニウムおよび所定量のマンガンやマグネシウムなどの金属を含有する合金を意味し、例えば、JIS規格されているA1070、A1100、A3003、A5005、A5805およびA6003などが挙げられる。
導電性基体の形状としては、シート状、円筒状、円柱状、無端ベルト(シームレスベルトまたはエンドレスシートベルト)状などが挙げられ、これらの中でも、複合機に搭載した際に駆動が容易である、また強度の面から円筒状が好ましい。なお、円筒状の導電性基体を素管ともいう。
(第1洗浄:有機溶剤による洗浄)
第1洗浄は、アルミニウム系金属製の導電性基体を有機溶剤に浸漬して出力50〜100kHzの超音波を印加することからなる。
有機溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、ジフェニルメタン、ジメトキシベンゼン、ジクロルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;
ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム(トリクロロメタン)、1,1,1-トリクロロエタン(メチルクロロホルム)、トリクロロエチレン(トリクレン)、パークロロエチレン(四塩化エチレン)、テトラクロロプロパンなどのハロゲン化炭化水素;テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジベンジルエーテル、ジメトキシメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、イソホロンなどのケトン類;安息香酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、ジフェニルスルフィドなどの含イオウ溶剤;フロン112(1,1,2,2-テトラクロロ-1,2-ジフルオロエタン)、フロン113(1,1,2-トリフルオロトリクロロエタン)、ヘキサフロオロイソプロパノールなどのフッ素系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどアルコール類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどの非プロトン性極性溶剤などが挙げられ、これらは単独または混合溶剤として使用できる。
ハロゲン化炭化水素(特に塩素系溶剤)およびフッ素系溶剤は高い脱脂力を有するものの、近年の環境問題の配慮から、その使用は好ましくない。したがって、上記の有機溶剤の中でも、非塩素系溶剤および非フッ素系溶剤が好ましく、比較的脱脂力に優れるテトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールが好ましく、テトラヒドロフラン、メタノールがさらに好ましく、テトラヒドロフランが特に好ましい。
印加する超音波は、出力(周波数)50〜100kHzであり、本発明の優れた効果が発現され易いことから、60〜80kHzが特に好ましい。
超音波の出力が50kHz未満では、衝撃が強過ぎるために、導電性基体の表面がダメージを受けて傷付くことがある。一方、超音波の出力が100kHzを超えると、衝撃が弱過ぎるために、十分な洗浄効果が得られないことがある。
超音波は、洗浄対象の状態、超音波の出力などにもよるが、0.5〜10分間印加されるのが好ましい。
超音波の印加時間が0.5分未満では、衝撃が弱過ぎるために、十分な洗浄効果が得られないことがある。一方、超音波の印加時間が10分を超えると、衝撃が強過ぎるために、導電性基体の表面がダメージを受けて傷付くことがある。
また、洗浄力を高めるために、洗浄時には洗浄液の有機溶剤を適宜加熱してもよい。加熱温度は用いる有機溶剤の種類などにもよるが25〜40℃程度である。
(第2洗浄:界面活性剤を含む水溶液による洗浄)
第2洗浄は、導電性基体をノニオン系界面活性剤およびアニオン系界面活性剤から選択される1種の界面活性剤を含む水溶液に浸漬して出力50〜100kHzの超音波を印加することからなる。
ノニオン系界面活性剤およびアニオン系界面活性剤は、導電性基体のアルミニウム系金属を腐食させ難いことから好ましい。
界面活性剤は、第1洗浄で除去されずに導電性基体の表面に残った切削油や粉塵などをミセル化して包み込み、除去するものと考えられる。
ノニオン系界面活性剤としては、
ポリオキシエチレンアルキルおよびアルキルフェニルエーテル、アルキルアリルホルムアルデヒド縮合ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピルアルキルエーテルのようなエーテル型;
グリセリンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビトールエステルのポリオキシエチレンエーテルのようなエーテルエステル型;
ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、グリセリンエステル、ポリグリセリンエステル、ソルビタンエステル、プロピレングリコールエステル、ショ糖エステルのようなエステル型;および
脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミンのような含窒素型
の界面活性剤が挙げられる。
アニオン系界面活性剤としては、
石けん、N−アシルアミノ酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチドのようなカルボン酸塩;
アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンまたはアルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩−ホルマリン重縮合物、スルホコハク酸塩、o−オレフィンスルホン酸塩、N−アシルスルホン酸塩のようなスルホン酸塩;
硫酸化油、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルアミド硫酸塩のような硫酸エステル塩;および
アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルリン酸塩のようなリン酸エステル塩
の界面活性剤が挙げられる。
界面活性剤を含む水溶液は、pH6.0〜9.0を有するのが好ましく、より好ましくはpH6.5〜8.0である。
pHが上記の範囲であれば、アルミニウム系金属製の導電性基体の表面を腐食する水酸化物、酸化物、水和物の生成が抑制され、またこれらの反応生成物によって濡れ性などの物理特性の変化が生じることがないので、感光層の塗工形成の際にハジキ、シミ、塗布ヌケなどの塗布欠陥の発生を抑制できる。
具体的には、次のような界面活性剤が好適に用いられる。
ヘンケル白水株式会社製、製品名:T−180
ライオン株式会社製、製品名:FM−10
ライオン株式会社製、製品名:FM−20
ライオン株式会社製、製品名:ライオミックスL
ライオン株式会社製、製品名:ライオミックスH
ケミックス株式会社製、製品名:CA01
花王株式会社製、製品名:クリンスルー750L
界面活性剤を含む水溶液は、濃度0.5〜30重量%の界面活性剤を含むのが好ましい。界面活性剤の濃度が0.5重量%未満では、十分な洗浄効果が得られないことがある。一方、界面活性剤の濃度が30重量%を超えると、画像欠陥が生じることがある。より好ましい界面活性剤の濃度は4〜15重量%である。
界面活性剤を含む水溶液は、洗浄力を向上させるために、本発明の効果を阻害しない範囲で洗浄助剤を含んでいてもよい。
洗浄助剤としては、例えば、炭酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、硫酸ナトリウムなどの無機化合物、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、有機アミンなどの有機化合物が挙げられる。
洗浄助剤の配合量は、洗浄助剤の種類や所望する洗浄効果などにより適宜設定すればよい。
印加する超音波は、第1洗浄と同様に、出力(周波数)50〜100kHzであり、本発明の優れた効果が発現され易いことから、60〜80kHzが特に好ましい。
第2洗浄の界面活性剤を含む水溶液は、第1洗浄の有機溶剤に比べて、洗浄力および脱脂力に劣るため、第2洗浄において印加する超音波は、上記の範囲内で第1洗浄時よりも低く設定するのが好ましい。
また、洗浄力を高めるために、洗浄時には洗浄液の界面活性剤を含む水溶液を適宜加熱してもよい。
加熱温度(界面活性剤を含む水溶液の液温)は、用いる界面活性剤の種類などにもよるが30〜60℃程度、例えば後述する実施例のように42℃である。
(水洗:リンス)
次いで、公知の方法により、導電性基体の表面に付着する洗浄剤を洗い流す。例えば、洗浄された導電性基体を市水または純水に浸漬して水洗する。
ここでの洗浄効率を高めるために、導電性基体を複数の水槽に順次浸漬させてもよく、また加熱してもよい。加熱温度は25〜40℃程度である。
(乾燥)
次いで、公知の方法により、導電性基体を乾燥させる。例えば、水洗された導電性基体を、クリーン度100に保持されかつ100℃に設定された乾燥炉中に保持する。
(装置)
図1は、本発明の感光体の製造方法における導電性基体の洗浄工程に用いられる装置の概略図である。本発明の製造方法は、当該技術分野の製造ラインにおいて既設の装置を転用することができ、図1の装置もその一例であり、これにより本発明が限定されるものではない。
切削加工された導電性基体1は、レール3に配置されたロボットハンド2に支持され、順次各洗浄槽に移動される。
前処理槽71は、第1洗浄のための前処理液72として有機溶剤で満たされ、その底部には超音波発振器73が備えられている。
洗浄槽11は、第2洗浄のための洗浄液18として界面活性剤を含む水溶液で満たされ、加熱用のヒーター16および超音波発振器17が備えられ、洗浄液18中の切削粉やダストを捕捉するために洗浄液18をろ過循環させるための配管19、ポンプ14およびフィルター15が備えられている。
加熱用のヒーター16は、洗浄液18を所定の温度、例えば30〜60℃(具体的には42℃)に加熱し、超音波発振器17は、導電性基体1の浸漬時に所定の出力(周波数)の超音波を印加(発振)する。
洗浄槽11には、配管12を通じて定常的に洗浄液18がタンク(図示せず)から供給され、導電性基体1の浸漬によりオーバーフローした洗浄液18は配管13を通じて排出され、廃液処理装置(図示せず)で処理される。
第1の濯ぎ槽21は、水洗(リンス)のための濯ぎ用水25として純水で満たされ、超音波発振器24が備えられ、濯ぎ用水25中の切削粉やダストを捕捉するために濯ぎ用水25をろ過循環させる配管26、ポンプ22およびフィルター23が備えられている。
第2の濯ぎ槽31は、水洗(リンス)のための濯ぎ用水35として純水で満たされ、濯ぎ用水35中の切削粉やダストを捕捉するために濯ぎ用水35をろ過循環させるための配管36、ポンプ32およびフィルター33が備えられている。
第3の濯ぎ槽41は、水洗(リンス)のための濯ぎ用水45として純水で満たされ、濯ぎ用水45中の切削粉やダストを捕捉するために濯ぎ用水45をろ過循環させるための配管46、ポンプ42およびフィルター43が備えられている。
第1の濯ぎ槽21、第2の濯ぎ槽31および第3の濯ぎ槽41にも、洗浄槽11と同様に、超音波発振器24が備えられていてもよい。
濯ぎ用水25、35および45の純水は、タンク60から第3の濯ぎ槽41に供給され、オーバーフローにより第2の濯ぎ槽31に、次いで第1の濯ぎ槽21に供給され、配管27から排出され、廃液処理装置(図示せず)で処理される。
(B)感光層の形成工程
形成工程は、公知の材料を用いて公知の方法により、洗浄された導電性基体上に感光層を形成する。
図2は、本発明の感光体の製造方法において製造される積層型感光体(a)および単層型感光体(b)の要部の構成を示す模式断面図である。この図に示される感光体は一例であり、これにより本発明が限定されるものではない。
以下、図2を用いて感光層の形成工程について具体的に説明する。
図2(a)は、感光層が電荷発生層と電荷輸送層とがこの順で積層された積層型感光層(「機能分離型感光層」ともいう)である積層型感光体(「機能分離型感光体」ともいう)の要部の構成を示す模式断面図である。
図2(b)は、感光層が一層からなる単層型感光層である単層型感光体の要部の構成を示す模式断面図である。
図2(a)の積層型感光層は電荷発生層と電荷輸送層とが逆順であってもよいが、図2(a)の順に形成された積層型感光層が好ましい。
図2(a)の積層型感光体80は、導電性基体82の表面に、下引層83と、電荷発生物質89を含有する電荷発生層86と電荷輸送物質90を含有する電荷輸送層87とがこの順で積層された積層型感光層84がこの順で形成されている。
図2(b)の単層型感光体81は、導電性基体82の表面に、下引層83と、電荷発生物質89と電荷輸送物質90とを含有する単層型感光層85がこの順で形成されている。
図2における図番88はバインダー樹脂を示す。
(導電性基体82)
導電性基体は、感光体の電極としての役割を果たすとともに、他の各層の支持部材としても機能し、本発明においては前工程で洗浄された導電性基体が用いられる。
導電性基体の表面には、必要に応じて、画質に影響のない範囲内で、陽極酸化皮膜処理、薬品、熱水などによる表面処理、着色処理、表面を粗面化するなどの乱反射処理が施されていてもよい。
乱反射処理は、レーザを露光光源として用いる電子写真プロセスにおいて本発明による感光体を用いる場合に特に有効である。すなわち、レーザを露光光源として用いる電子写真プロセスでは、レーザ光の波長が揃っているので、感光体の表面で反射されたレーザ光と感光体の内部で反射されたレーザ光とが干渉を起こし、この干渉による干渉縞が画像に現れて画像欠陥の発生することがある。そこで、導電性基体の表面に乱反射処理を施すことにより、波長の揃ったレーザ光の干渉による画像欠陥を防止することができる。
(下引層(「中間層」ともいう)83)
本発明の感光体は、導電性基体と感光層との間に下引層を有するのが好ましい。
下引層は、導電性基体から単層型感光層または積層型感光層への電荷の注入を防止する(ホール注入に対して障壁となる)機能を有する。すなわち、単層型感光層または積層型感光層の帯電性の低下が抑制され、露光によって消去されるべき部分以外の表面電荷の減少が抑えられ、かぶりなどの画像欠陥の発生が防止される。特に、反転現像プロセスによる画像形成の際に、白地部分にトナーからなる微小な黒点が形成される黒ポチと呼ばれる画像かぶりが発生するのが防止される。
また、導電性基体の表面を被覆する下引層は、導電性基体の表面の欠陥である凹凸の度合を軽減して表面を均一化し、単層型感光層または積層型感光層の成膜性を高め、導電性基体と単層型感光層または積層型感光層との密着性(接着性)を向上させることができる。
下引層83は、例えば、樹脂材料を適当な溶剤に溶解させて下引層用塗布液を調製し、この塗布液を導電性基体82の表面に塗布し、乾燥により有機溶剤を除去することによって形成できる。
樹脂材料としては、後述する感光層に含まれるものと同様のバインダー樹脂に加えて、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、エチルセルロースなどの天然高分子材料などが挙げられ、これらの1種または2種以上を使用できる。これらの樹脂の中でも、ポリアミド樹脂が好ましく、特にアルコール可溶性ナイロン樹脂が特に好ましい。
樹脂材料を溶解または分散させる溶剤としては、例えば、水、メタノール、エタノール、ブタノールなどのアルコール類、メチルカルビトール、ブチルカルビトールなどのグライム類、ジクロロエタン、クロロホルムもしくはトリクロロエタンなどの塩素系溶剤、アセトン、ジオキソラン、これらの溶剤を2種以上混合した混合溶剤などが挙げられる。これらの溶剤の中でも、地球環境に対する配慮から、非ハロゲン系有機溶剤が好適に用いられる。
また、下引層用塗布液は、金属酸化物粒子を含んでいてもよい。
金属酸化物粒子は、下引層の体積抵抗値を容易に調節でき、感光層への電荷の注入をさらに抑制できると共に、各種環境下において感光体の電気特性を維持できる。
金属酸化物粒子としては、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化スズなどが挙げられる。
下引層用塗布液におけるバインダー樹脂と金属酸化物粒子との合計重量Aと溶剤の重量Bとの比率(A/B)は、1/99〜40/60が好ましい。
また、バインダー樹脂の重量Cと金属酸化物粒子の重量Dとの比率C/Dは、90/10〜1/99が好ましい。
下引層用塗布液の塗布方法は、塗布液の物性および生産性などを考慮に入れて最適な方法を適宜選択すればよく、例えば、ディップコート法、スプレー法、ノズル法、バーコート法、ロールコート法、ブレード法、リング法および浸漬塗布法などが挙げられる。
これらの塗布方法の中でも、浸漬塗布法は、塗布液を満たした塗工槽に基体を浸漬した後、一定速度または逐次変化する速度で引上げることによって基体の表面に層を形成する方法であり、比較的簡単で、生産性および原価の点で優れているので、感光体の製造に好適に用いることができる。浸漬塗布法に用いる装置には、塗布液の分散性を安定させるために、超音波発生装置に代表される塗布液分散装置が設けられていてもよい。
塗膜の乾燥工程における温度は、使用した有機溶剤を除去し得る温度であれば特に限定されないが、50〜140℃が適当である。
このような感光層の製造における温度条件は、下引層のみならず後述する感光層などの層形成や他の処理においても共通する。
下引層の膜厚は特に限定されないが、0.01〜20μmが好ましく、0.05〜10μmが特に好ましい。
下引層の膜厚が0.01μm未満では、下引層として実質的に機能しなくなり、導電性基体の欠陥を被覆して均一な表面性を得ることができず、導電性基体からの感光層への電荷の注入を防止することができなくなるおそれがある。一方、下引層の膜厚が20μmを超えると、均一な下引層を形成し難く、また感光体の感度も低下するおそれがある。
なお、本発明では導電性基体の構成材料がアルミニウムであり、その表面にアルマイトを含む層(アルマイト層)を形成し、下引層としてもよい。
(積層型感光体80の積層型感光層84)
積層型感光体80の積層型感光層84は、電荷発生層86と電荷輸送層87とからなる。このように電荷発生機能と電荷輸送機能とを別々の層に担わせることにより、各層を構成する最適な材料を独立して選択することができる。
以下の説明では、電荷発生層と電荷輸送層とがこの順で積層された積層型感光体(図2(a))について説明するが、逆二層型の積層型感光体の場合には積層順が異なるだけで基本的に同様である。
感光体が高感度、高耐久性を有するためには、積層型感光体80の積層型感光層84および後述する単層型感光体81の単層型感光層85は、負帯電性であるのが好ましい。
(電荷発生層86)
電荷発生層は、照射された光を吸収することにより電荷を発生する電荷発生能を有する電荷発生物質を主成分とし、任意に公知の添加剤およびバインダー樹脂(結合剤)を含有する。
電荷発生物質としては、当該分野で用いられる化合物を使用できる。
具体的には、アゾ系顔料(カルバゾール骨格、スチリルスチルベン骨格、トリフェニルアミン骨格、ジベンゾチオフェン骨格、オキサジアゾール骨格、フルオレノン骨格、ビススチルベン骨格、ジスチリルオキサジアゾール骨格またはジスチリルカルバゾール骨格を有する、モノアゾ系顔料、ビスアゾ系顔料、トリスアゾ系顔料など)、ペリレン系顔料(ペリレンイミド、ペリレン酸無水物など)、多環キノン系顔料(キナクリドン、アントラキノン、ピレンキノンなど)、フタロシアニン系顔料(金属フタロシアニン、無金属フタロシアニン、ハロゲン化無金属フタロシアニンなど)、インジゴ系顔料(インジゴ、チオインジゴなど)、スクアリリウム色素、アズレニウム色素、チオピリリウム色素、ピリリウム塩類、トリフェニルメタン系色素などの有機顔料または染料、さらにセレン、非晶質シリコンなどの無機材料などが挙げられる。これらの電荷発生物質は1種を単独でまたは2種以上を組み合せて使用することができる。これらの中でも、フタロシアニン系顔料、トリスアゾ系顔料は耐久性および高感度を有することから特に好ましい。
電荷発生層は、本発明の好ましい特性が損なわれない範囲内で、化学増感剤、光学増感剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、分散安定剤、増感剤、レベリング剤、可塑剤、無機化合物もしくは有機化合物の微粒子などから選ばれる1種または2種以上の公知の添加剤を適量含有していてもよい。これらの添加剤は、後述する電荷輸送層に含有されてもよく、電荷発生層および電荷輸送層の両方に含有されてもよい
化学増感剤および光学増感剤は、感光体の感度を向上させ、繰返し使用による残留電位の上昇および疲労などを抑え、電気的耐久性を向上させることができる。
酸化防止剤は、長期にわたって感度安定性を維持させることができる。
レベリング剤および可塑剤は、成膜性、可撓性および表面平滑性を向上させることができる。
無機化合物または有機化合物の微粒子は、機械的強度を増強し、電気特性を向上させることができる。
電荷発生層は、公知の乾式法および湿式法により形成することができる。
乾式法としては、例えば、電荷発生物質を導電性基体の表面に真空蒸着する方法が挙げられる。
湿式法としては、例えば、電荷発生物質、必要に応じて添加剤およびバインダー樹脂を適当な有機溶剤に溶解または分散して電荷発生層形成用塗布液を調製し、この塗布液を導電性基体上に形成された下引層表面に塗布し、次いで乾燥して有機溶剤を除去する方法が挙げられる。
バインダー樹脂は、電荷発生層の機械的強度や耐久性、層間の結着性などを向上させることができ、当該分野で用いられる結着性を有する樹脂を使用できる。
具体的には、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルなどのビニル系樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエステルカーボネート、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリアミド、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテル、ポリアクリルアミド、ポリフェニレンオキサイドなどの熱可塑性樹脂;フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマールなどの熱硬化性樹脂、これらの樹脂の部分架橋物、これらの樹脂に含まれる構成単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂(塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂などの絶縁性樹脂)などが挙げられる。これらのバインダー樹脂は1種を単独でまたは2種以上を組み合せて使用することができる。
電荷発生物質とバインダー樹脂との配合比は特に限定されないが、通常、電荷発生物質が10〜99重量%程度である。
有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、ジフェニルメタン、ジメトキシベンゼン、ジクロルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、ジクロロエタン、テトラクロロプロパンなどのハロゲン化炭化水素;テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジベンジルエーテル、ジメトキシメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、イソホロンなどのケトン類;安息香酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、ジフェニルスルフィドなどの含イオウ溶剤;ヘキサフロオロイソプロパノールなどのフッ素系溶剤;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどの非プロトン性極性溶剤などが挙げられ、これらは単独または混合溶剤として使用できる。また、このような溶剤に、アルコール類、アセトニトリルまたはメチルエチルケトンを加えた混合溶剤を使用することもできる。これらの溶剤の中でも、地球環境に対する配慮から、非ハロゲン系有機溶剤が好適に用いられる。
バインダー樹脂溶液中に電荷発生物質を分散させる前に、電荷発生物質を予め粉砕機により粉砕処理してもよい。粉砕処理に用いられる粉砕機としては、ボールミル、サンドミル、アトライタ、振動ミルおよび超音波分散機などが挙げられる。
電荷発生物質をバインダ樹脂溶液中に溶解または分散させるために、ペイントシェーカ、ボールミルおよびサンドミルなどの分散機を用いることができる。このとき、容器および分散機を構成する部材から摩耗などによって不純物が発生し、塗布液中に混入しないように、分散条件を適宜設定するのが好ましい。
その他の工程やその条件は、下引層の形成に準ずる。
電荷発生層の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは0.05〜5μm、より好ましくは0.1〜1μmである。電荷発生層の膜厚が0.05μm未満であると、光吸収の効率が低下し、感光体の感度が低下するおそれがある。また、電荷発生層の膜厚が5μmを超える場合には、電荷発生層内部での電荷移動が感光層表面の電荷を消去する過程の律速段階となり、感光体の感度が低下するおそれがある。
(電荷輸送層87)
電荷輸送層は、電荷発生物質で発生した電荷を受け入れ、それを輸送する能力を有する電荷輸送物質と、バインダー樹脂(結合剤)とを主成分として含有する。
電荷輸送物質としては、当該分野で用いられる化合物を使用できる。
具体的には、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタメートおよびその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒド縮合物およびその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリル)アントラセン、1,1−ビス(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、ピラゾリン誘導体、フェニルヒドラゾン類、ヒドラゾン誘導体、トリフェニルアミン系化合物、テトラフェニルジアミン系化合物、トリフェニルメタン系化合物、スチルベン系化合物、3−メチル−2−ベンゾチアゾリン環を有するアジン化合物などの電子供与性物質;
フルオレノン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、インデノチオフェン誘導体、フェナンスレンキノン誘導体、インデノピリジン誘導体、チオキサントン誘導体、ベンゾ[c]シンノリン誘導体、フェナジンオキサイド誘導体、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、プロマニル、クロラニル、ベンゾキノンなどの電子受容性物質
が挙げられる。これらの電荷輸送物質は1種を単独でまたは2種以上を組合せて使用することができる。
バインダー樹脂は、電荷発生層に含まれるものと同様のバインダー樹脂の1種または2種以上を使用できる。
電荷輸送物質の重量Eとバインダー樹脂の重量Fとの比率E/Fは、10/12〜10/25が好ましい。
電荷輸送層は、本発明の効果を阻害しない範囲内で必要に応じて、電荷発生層に含まれるものと同様の添加剤を適量含有していてもよい。
電荷輸送層は、電荷輸送物質、バインダー樹脂および必要に応じて他の添加剤を適当な有機溶剤に溶解または分散して電荷輸送層形成用塗布液を調製し、この塗布液を電荷発生層の表面に塗布し、次いで乾燥して有機溶剤を除去することによって形成できる。より具体的には、例えば、バインダー樹脂を有機溶剤に溶解してなる樹脂溶液に電荷輸送物質および必要に応じて他の添加剤を溶解または分散させることにより、電荷輸送層形成用塗布液を調製する。
その他の工程およびその条件は、下引層の形成に準ずる。
電荷輸送層の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは5〜50μm、より好ましくは10〜40μmである。電荷輸送層の膜厚が5μm未満であると、帯電保持能が低下するおそれがあり、逆に電荷輸送層の膜厚が50μmを超えると、鮮鋭性の低下や残留電位の上昇が発生し、著しく画像劣化が生じるおそれがある。
(単層型感光体81の単層型感光層85)
単層型感光層85は、電荷発生物質89と、電荷輸送物質90と、バインダー樹脂(結合剤)とを主成分として含有する。
単層型感光層は、本発明の効果を阻害しない範囲内で必要に応じて、電荷発生層に含まれるものと同様の添加剤を適量含有していてもよい。
単層型感光層は、電荷発生物質、電荷輸送物質および必要に応じて他の添加剤を適当な有機溶剤に溶解および/または分散して単層型感光層形成用塗布液を調製し、この塗布液を導電性基体上に形成された下引層の表面に塗布し、次いで乾燥して有機溶剤を除去することによって形成できる。
その他の工程およびその条件は、下引層の形成に準ずる。
単層型感光層の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは5〜50μm、より好ましくは10〜40μmである。単層型感光層の膜厚が5μm未満であると、感光体表面の帯電保持能が低下するおそれがあり、単層型感光層の膜厚が50μmを超えると、生産性が低下するおそれがある。
(保護層(図示せず))
本発明の感光体は、積層型感光体80の積層型感光層84および単層型感光体81の単層型感光層85の表面に保護層(図示せず)を有していてもよい。
保護層は、感光層の摩耗性の改善やオゾン、窒素酸化物などによる化学的悪影響の防止の機能を有する。
保護層は、例えば、適当な有機溶剤にバインダー樹脂、必要に応じて酸化防止剤や紫外線吸収剤などの添加剤、および金属化合物微粒子やポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッ素樹脂などの微粒子を溶解または分散させて保護層形成用塗布液を調製し、この保護層形成用塗布液を単層型感光層または積層型感光層の表面に塗布し、乾燥により有機溶剤を除去することによって形成できる。
その他の工程およびその条件は、下引層の形成に準ずる。
保護層の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは0.5〜10μm、より好ましくは1〜5μmである。保護層の膜厚が0.5μm未満では、感光体表面の耐摩耗性が劣り、耐久性が不十分になるおそれがあり、逆に10μmを超えると、感光体の解像度が低下するおそれがある。
以上のような方法によれば、優れた感光特性を有する感光体を歩留まりよく製造することができ、得られた感光体は、複写機やプリンタに好適に用いることができる。
以下に実施例および比較例により本発明の具体例を説明するが、本発明は実施例により限定されるものではない。
(実施例1)
(1)導電性基体の洗浄
前処理液72の有機溶剤として、液温25℃のテトラヒドロフラン(THF)を満たした前処理槽71に、直径120mm×長さ372mm×厚さ2mmの円筒状のアルミニウム系金属製(JIS A6063)の導電性基体1を1分間浸漬し、超音波発振器73により出力60kHzの超音波を印加した(第1洗浄)。
次いで、洗浄液18として、濃度4.5%に調整し、液温42℃に加熱した界面活性剤(ライオン株式会社製、製品名:ライオミックスL)を含む水溶液を満たした洗浄槽11に、導電性基体1を2分間浸漬し、超音波発振器17により出力50kHzの超音波を印加した(第2洗浄)。
次いで、濯ぎ用水25として液温37℃の純水を満たした第1濯ぎ槽21、濯ぎ用水35として純水を満たした第2濯ぎ槽31および濯ぎ用水45として純水を満たした第3濯ぎ槽41に、導電性基体1を2分間ずつ順次浸漬させ(水洗)、最後にクリーン度100に保持されかつ100℃に設定された乾燥炉中で導電性基体1を乾燥させた(乾燥)。
(2)下引層の形成
金属酸化物微粒子として酸化チタン(石原産業株式会社製、製品名:TTO−MI−1)3重量部、樹脂材料としてアルコール可溶性ナイロン樹脂(東レ株式会社製、製品名:CM−8000)3重量部および溶剤としてメタノール60重量部と1,3−ジオキソラン40重量部を、ペイントシェイカで10時間分散処理することにより、下引層用塗布液3Lを調製した。得られた下引層用塗布液を、浸漬塗布法により洗浄済み導電性基体上に成膜して、膜厚1.0μmの下引層を形成した。
(3)電荷発生層の形成
次に、電荷発生物質として下記構造式(VI−1)で示されるチタニルフタロシアニン(例えば、特許第3569422号公報に記載された公知の方法により作製)15重量部、バインダー樹脂としてブチラール樹脂(積水化学株式会社製、製品名:エスレックBM−2)10重量部および溶剤として1,3−ジオキソラン1400重量部を、ボールミルで72時間分散処理することにより、電荷発生層用塗布液3Lを調製した。得られた電荷発生層用塗布液を、浸漬塗布法により導電性基体上に形成した下引層上に成膜して、膜厚0.2μmとの電荷発生層を形成した。
Figure 2013011734
(4)電荷輸送層の形成
次に、電荷輸送物質として下記構造式(I)で示されるエナミン化合物8重量部、添加剤として下記構造式(II)で示されるジアミン化合物0.2重量部およびバインダー樹脂としてポリカーボネート樹脂(三菱ガス化学株式会社製、製品名:PCZ400)10重量部を、溶剤としてのテトラヒドロフラン80重量部に溶解させて、電荷輸送層用塗布液3Lを調製した。得られた電荷輸送層用塗布液を、浸漬塗布法により先に形成した電荷発生層上に塗布した後、130℃で1時間乾燥させて、膜厚30μmの電荷輸送層を形成し、実施例1の積層型感光体を作製した。
Figure 2013011734
Figure 2013011734
(実施例2)
直径120mm×長さ372mm×厚さ2mmの円筒状のアルミニウム系金属製(JIS A6063)の導電性基体の代わりに、直径80mm×長さ348mm×厚さ1mmの円筒状のアルミニウム系金属製(JIS A6063)の導電性基体を用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例2の積層型感光体を作製した。
(比較例1)
有機溶剤による第1洗浄(前処理)を実施しないこと以外は、実施例1と同様にして比較例1の積層型感光体を作製した。
(実施例3)
有機溶剤としてテトラヒドロフランの代わりにメタノール(Me)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例3の積層型感光体を作製した。
(比較例2)
第2洗浄(洗浄槽)における超音波の出力50kHzを45kHzに設定したこと以外は、実施例1と同様にして比較例2の積層型感光体を作製した。
(実施例4)
第2洗浄(洗浄槽)における超音波の出力50kHzを95kHzに設定したこと以外は、実施例1と同様にして実施例4の積層型感光体を作製した。
(比較例3)
第2洗浄(洗浄槽)における超音波の出力50kHzを110kHzに設定したこと以外は、実施例1と同様にして比較例2の積層型感光体を作製した。
以上のようにして作製した実施例1、3および4ならびに比較例1〜3の積層型感光体(以下「感光体」ともいう)をデジタル複写機(シャープ株式会社製、型式:MX−850)改造機に搭載し、実施例2の感光体をデジタル複写機(シャープ株式会社製、型式:MX−650)改造機に搭載して、画像評価を行った。
各感光体について、白ベタ、黒ベタおよびハーフトーンのサンプル画像を取り、以下の基準により評価し、さらに総合評価を行った。
得られた結果を、洗浄条件および使用した導電性基体の大きさと共に表1に示す。
[白ベタ画像の評価基準]
黒点となって現れるピンホール欠陥数(感光体1本当たりの個数)を計測し、次の基準により評価した。
○: 0個
△: 1〜3個
×: 4〜5個
××: 6個以上
[黒ベタ画像の評価基準]
黒ベタでは白点となって現れる洗浄不良(洗浄工程で除去しきれなかった切削粉、粉じん)による欠陥数(感光体1本当たりの個数)を計測し、次の基準により評価した。
○: 0個
△: 1〜3個
×: 4〜5個
××: 6個以上
[ハーフトーンの評価基準]
濃度ムラとなって現れる洗浄不良(洗浄工程で除去しきれなかった切削油)による欠陥数(感光体1本当たりの個数)を計測し、次の基準により評価した。
○: 0個
△: 1〜2個
×: 3〜4個
××: 5個以上
[総合評価基準]
得られた各評価結果に基づき、次の基準により総合評価した。
各項目(白ベタ画像、黒ベタ画像、フーフトーン)の評価結果において、○を5点、△を4点、×を2点、××を1点とし、合計点数をもって総合評価を行った。
○○: 15点
○: 12点〜14点
△: 10点〜11点
×: 8点〜9点
××: 7点以下
感光体評価条件と結果を表1に示す。
Figure 2013011734
表1によれば、本発明の製造方法により得られた感光体(実施例1〜4)は、本発明の条件を満たさない製造方法により得られた感光体(比較例1〜3)に比べて、優れた感光特性を有し、これにより本発明によれば、優れた感光特性を有する電子写真感光体を歩留まりよく製造できることがわかる。
1 導電性基体
2 ロボットハンド
3 レール
11 洗浄槽
12、13、19、27 配管
14、22、32、42 ポンプ
15、23、33、43 フィルター
16 ヒーター
17、24、73 超音波発振器
18 洗浄液(界面活性剤を含む水溶液)
21 第1の濯ぎ槽
31 第2の濯ぎ槽
41 第3の濯ぎ槽
25、35、45 濯ぎ用水
26、36、46 配管
60 タンク
71 前処理槽
72 前処理液(有機溶剤)
80 積層型感光体
81 単層型感光体
82 導電性基体(導電性支持体)
83 下引層
84 積層型感光層
85 単層型感光層
86 電荷発生層
87 電荷輸送層
88 バインダー樹脂
89 電荷発生物質
90 電荷輸送物質

Claims (7)

  1. アルミニウム系金属製の導電性基体を有機溶剤に浸漬して出力50〜100kHzの超音波を印加し、次いで前記導電性基体をノニオン系界面活性剤およびアニオン系界面活性剤から選択される1種の界面活性剤を含む水溶液に浸漬して出力50〜100kHzの超音波を印加し、次いでさらに水洗および乾燥して、前記導電性基体を洗浄する工程、および
    洗浄された導電性基体上に感光層を形成する工程
    を含むことを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
  2. 前記有機溶剤が、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノールまたはイソプロピルアルコールである請求項1に記載の電子写真感光体の製造方法。
  3. 前記有機溶剤が、テトラヒドロフランである請求項2に記載の電子写真感光体の製造方法。
  4. 前記界面活性剤を含む水溶液が、濃度0.5〜30重量%の前記界面活性剤を含む請求項1〜3のいずれか1つに記載の電子写真感光体の製造方法。
  5. 前記界面活性剤を含む水溶液が、液温30〜60℃に加熱されてなる請求項1〜4のいずれか1つに記載の電子写真感光体の製造方法。
  6. 前記超音波が、0.5〜10分間印加される請求項1〜5のいずれか1つに記載の電子写真感光体の製造方法。
  7. 前記導電性基体が、直径80〜150mmの円筒状である請求項1〜6のいずれか1つに記載の電子写真感光体の製造方法。
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