JP2004283734A - 円筒状基体の洗浄方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】円筒状基体に残留した水系洗浄剤溶液に起因するハーフトーン等の画像ムラを防止し、清浄度の高い円筒状基体を効率よく得られる円筒状基体の洗浄方法を提供する。
【解決手段】少なくとも、水系溶液により洗浄を行う洗浄処理を施す円筒状基体の洗浄方法であって、
前記水系溶液により洗浄を行う洗浄処理が、水系溶液中に前記円筒状基体を少なくとも1回浸漬する処理であり、
前記水系溶液のうち、少なくとも最後に浸漬するための前記水系溶液が実質的にシリカを含有し、該シリカ濃度が30mg/リットル以下であることを特徴とする円筒状基体の洗浄方法である。
【選択図】 図1
【解決手段】少なくとも、水系溶液により洗浄を行う洗浄処理を施す円筒状基体の洗浄方法であって、
前記水系溶液により洗浄を行う洗浄処理が、水系溶液中に前記円筒状基体を少なくとも1回浸漬する処理であり、
前記水系溶液のうち、少なくとも最後に浸漬するための前記水系溶液が実質的にシリカを含有し、該シリカ濃度が30mg/リットル以下であることを特徴とする円筒状基体の洗浄方法である。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、円筒状基体の洗浄方法に関し、特に、電子写真方式の複写機、プリンタ、ファクシミリ等に用いられる電子写真感光体の基体として使用される円筒状基体の洗浄方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子写真感光体用基体(円筒状基体)は、その成型、加工時に加工油、潤滑油、防錆油などが用いられる。そのため、加工後の基体には必ず油分が残留している。また、円筒状基体表面には、切削粉や空気中の粉塵、ハンドリング時に発生する異物などが付着する。
従って、成型加工した後の円筒状基体は、次工程に入る前に、上記油分や付着物を洗浄除去する必要がある。
【0003】
円筒状基体の洗浄方法としては、溶剤、純水系洗浄剤、水系洗浄剤、または純水を用いて洗浄する方法がある。現在は、オゾン層破壊や地球温暖化、大気汚染などの環境問題及び人体への悪影響などを考慮して、塩素系溶剤の削減、全面廃止の方向に移行しており、水系洗浄剤または純水を用いた洗浄方法が行われている。
【0004】
水系洗浄剤または純水を用いて洗浄を行う場合、まず最初に、界面活性剤を含有させた洗浄液に円筒状基体を浸漬させ、油分や異物などの付着物を除去する。その後、濯ぎ用の浸漬槽に浸漬させることで洗浄液を洗い流し、最後に円筒状基体に残留した水を乾燥し洗浄を完了させる。
【0005】
しかし、単に洗浄液中に基体を浸漬するだけでは十分な洗浄力が得られないことがある。そこで、洗浄力を高めるべく、キャビテーション効果を利用した超音波洗浄、ジェットノズルなどによる洗浄液の高圧噴射、ブラシやブレードなどによる摺擦洗浄などの種々の洗浄方法が採用されている。
【0006】
しかしながら、上記各洗浄方法はいずれも、最終的には円筒状基体を水系溶液から引き上げて水切り乾燥させるものである。水切り乾燥後に円筒状基体に系溶液が残留している場合、その後の円筒状基体上に、少なくともバインダー樹脂と感光性材料とを溶剤に溶解または分散させた感光層用塗液を塗布して感光層を形成すると、電子写真感光体の感光層に残留した洗浄液により感光層に塗布むらや凝集等が生じてしまう。その結果、感光層を形成した電子写真感光体を用いてコピーを行った場合、そのコピー画像には、ハーフトーン等の画像ムラが発生する問題があった。
【0007】
さらに、このように円筒状基体を水系洗浄剤を使用して水系下で洗浄するようにした場合、円筒状基体の洗浄が不十分になる場合が多い。その結果、このような円筒状基体を用いて感光層を形成した電子写真感光体のコピー画像には、黒ポチ、白ポチ等の画像ムラが生じてしまう問題あった。
【0008】
上記問題を解決するために、円筒状基体表面を界面活性剤含有水溶液中で浸漬洗浄し、濯ぎ処理後、35〜90℃の純水に浸漬することを特徴とする電子写真感光体用円筒状基体の洗浄方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、上記のような、濯ぎ処理された円筒状基体を70℃に保たれた純水中に30秒間浸漬し、10mm/sで引き上げ、クリーン度100に保たれたクリーンブース内で20分間放冷する方法では、円筒状基体の洗浄が不十分となることがある。その結果、このような円筒状基体を用いて感光層を形成した電子写真感光体のコピー画像には黒ポチ、白ポチ等の画像ムラが現われ、画像品質に悪影響を及ぼすことが確認された。また、上記方法は、基体の引き上げ速度が10mm/sと非常に低速であるため、生産効率が低かった。
【0009】
また、上記課題を解決する方法として、水系下で洗浄した後の円筒状基体を高温の水系溶液中に浸漬させ、この水系溶液中から円筒状基体を引き上げて、円筒状基体を水切り乾燥させるにあたり、この水切り乾燥を下記式に示す条件を満たすようにして行う方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0010】
式:30≦[TL−H・Δω/ρ]≦60
(上記式中、TLは上記水系溶液の温度[℃]、Hは上記水系溶液の蒸発潜熱[cal/g]、Δωは上記円筒状基体の単位表面積当りにおいて蒸発した上記水系溶液の蒸発量[g/cm2]、ρは上記円筒状基体の単位表面積当りの比熱[cal/cm2・℃]を示す。)
【0011】
上記式を満たすような水切り乾燥を行った円筒状基体を用いた電子写真感光体の感光層には、残留水系溶液に起因する塗布むらや凝集等が生ずることはない。しかし、円筒状基体の洗浄が不十分であり、このような円筒状基体を用いて感光層を形成した電子写真感光体のコピー画像には、黒ポチ、白ポチ等が現われることが分かった。
【0012】
【特許文献1】
特開平5−127396号公報
【特許文献2】
特許第3060598号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
以上から、本発明は、上記問題点を解消することを目的とする。すなわち、本発明は、円筒状基体に残留した水系溶液に起因するハーフトーン等の画像ムラを防止し、清浄度の高い円筒状基体を効率よく得られる円筒状基体の洗浄方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決すべく鋭意検討の結果、本発明者らは、ハーフトーン等の画像ムラが、主に、円筒状基体の洗浄工程で残留した水系溶液による水染み等によるものであることを見出した。そして、その水染み発生の原因の一つとして、洗浄処理の一つである濯ぎ処理を行う際のシリカ濃度が重要な影響を与えることを見出し、本発明に想到した。
【0015】
すなわち、本発明は、
<1> 少なくとも、水系溶液により洗浄を行う洗浄処理を施す円筒状基体の洗浄方法であって、
前記洗浄処理が、前記水系溶液中に前記円筒状基体を少なくとも1回浸漬する処理であり、
前記水系溶液のうち、少なくとも最後に浸漬するための前記水系溶液が実質的にシリカを含有し、該シリカ濃度が30mg/リットル以下であることを特徴とする円筒状基体の洗浄方法である。
【0016】
<2> 前記洗浄処理が、前記洗浄剤溶液中に前記円筒状基体を少なくとも1回浸漬する処理であることを特徴とする<1>に記載の円筒状基体の洗浄方法である。
<3> 前記洗浄処理のうち、少なくとも、最後に浸漬した前記円筒状基体を前記水系溶液中から引き上げる際の引き上げ速度が、20mm/s以上であることを特徴とする<1>または<2>に記載の円筒状基体の洗浄方法である。
<4> 前記洗浄処理のうち、少なくとも、前記円筒状基体を前記水系濯ぎ液に最後に浸漬する際の前記水系溶液の温度が、80℃以下であることを特徴とする<1>〜<3>のいずれかに記載の円筒状基体の洗浄方法である。
<5> 前記洗浄処理のうち、少なくとも、前記円筒状基体を前記水系溶液に最後に浸漬し前記水系溶液中から引き上げる際のクリーン度が、1000以下であることを特徴とする<1>〜<4>のいずれかに記載の円筒状基体の洗浄方法である。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の円筒状基体の洗浄方法は、成型加工を施した感光体用の円筒状基体(以下、単に「基体」ということがある)に、少なくとも、水系溶液により洗浄を行う洗浄処理を施すものである。これら処理の前後には、種々の公知の処理を適宜施してもよい。例えば、基体に(1)洗浄処理を施した後、(2)洗浄剤溶液を除去する洗剤除去処理、(3)ホーニング処理等の粗面化処理、(4)押付処理を施し、(5)濯ぎ処理を施して、本発明の洗浄方法としてもよい。
【0018】
当該洗浄方法による各処理を施した後は、例えば、円筒状基体表面の水分を極力減少させる水切り工程、円筒状基体表面に残留する水分を除去する乾燥工程等を順次経た後、感光層を形成して電子写真感光体(以下、「感光体」ということがある)が製造される。
【0019】
以下、本発明の洗浄方法の各処理について詳細に説明し、さらに、本発明の洗浄方法を適用した円筒状基体を用いた感光体について説明する。
なお、本発明の洗浄方法は、洗浄処理および濯ぎ処理を含む限り、以下の説明に限定されるものではない。
【0020】
〔円筒状基体の洗浄方法〕
(1)洗浄処理:
洗浄処理は、洗浄剤溶液により、円筒状基体の表面に付着した油や切り粉等をを洗浄して除去する処理である。洗浄方法としては、スプレー洗浄、ジェットノズルを使用した高圧噴射洗浄、洗浄剤溶液中に円筒状基体を少なくとも1回浸漬する浸漬処理、等を適用することができる。洗浄効率や処理コストを考慮すると、浸漬処理を適用することが好ましい。
【0021】
浸漬処理は、1の洗浄槽中に洗浄剤溶液を満たし、その中に被洗浄物である円筒状基体を浸漬し、所定の時間保持した後、洗浄槽から引き上げる処理である。必要に応じて、複数の洗浄槽を設け、順次浸漬処理してもよい。洗浄槽に基体が浸漬されることで、基体に付着した油や切粉等の付着物が除去される。
なお、複数の洗浄槽を設ける場合、これら洗浄槽は多段で構成することが好ましい。この場合、円筒状基体が浸漬される最初の槽から最後の槽に向けて徐々に洗浄剤溶液の成分や濃度を変えて洗浄処理を施すことが好ましい。洗浄槽の数は洗浄効率を考慮して設定することが好ましい。
【0022】
洗浄槽に浸漬する時間(洗浄時間)は、洗浄槽の数や基体表面の付着物の量等にもよるが、15秒〜5分間とすることが好ましく、2〜4分間とすることがより好ましい。また、洗浄槽にヒーター等を設けて、洗浄剤溶液を一定温度に加温してもよい。加温することにより洗浄効率を向上させることができる。加温する温度としては25〜70℃とすることが好ましく、30〜50℃とすることがより好ましい。70℃を超えると、円筒状基体の表面が酸化されてしまうことがある。
また、洗浄槽の底部に超音波発振器を設けて、基体浸漬時に超音波を発振するような構成としてもよい。かかる構成でも、超音波の発振により洗浄効率を向上させることができる。
【0023】
洗浄剤溶液としては、基体を洗浄し得る液体であれば特に限定されないが、地球環境保護の観点、人体への害が少ないこと、発火・爆発の危険性がないこと、取り扱いの容易さ、等から、水を溶媒とし、これに界面活性剤を添加した洗浄剤溶液を使用することが好ましい。
【0024】
溶媒の水としては、例えば、市水、純水、イオン交換水、井戸水などの水;
電解性アルカリイオン水の一種である超還元性水(日本電子アクティブ株式会社製、商品名:EKO−13、EKO−13ALなど);等が挙げられる。
なお、ここで、「井戸水(井水ともいう)」とは、地下水等の自然の水で、一般的な工場等で、種々の処理に使用されている水をいう。
【0025】
界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン・ブロックコポリマー型及びノニルフェノールポリオキシエチレンエーテルなどのノニオン系界面活性剤、アルキルベンゼン、高級アルコール、α−オレフィンの硫酸、ケイ酸、リン酸及び炭酸などのオキシ酸塩などのアニオン系界面活性剤などを使用することが好ましい。
洗浄剤溶液中の界面活性剤の濃度は、基体の洗浄性とコストとのバランスを考慮して、1〜50質量%であることが好ましく、2〜30質量%であることがより好ましい。
【0026】
(2)洗剤除去処理:
洗剤除去処理は、洗浄処理により基体表面に残留した洗浄剤溶液を除去する処理である。洗剤除去処理の方法としては、洗浄処理で使用する洗浄剤溶液の溶媒(水)を使用して、洗浄処理と同様に浸漬処理等の方法を適用することが好ましい。
なお、洗剤除去処理は、後述する濯ぎ処理と同一の処理としてもよい。
【0027】
(3)粗面化処理
粗面化処理は基体表面に一定の粗さに調整するための処理で、必要に応じて施される。
具体的には、研磨材を水中に懸濁させ、高速度で基体に吹き付けるホーニング処理等がある。
ホーニング処理における研磨材としては、粒径が10〜100μmの範囲にある微粉末を用いることが好ましい。研磨材の形状は特に制限がないが、球状のものが好ましい。研磨材の材質としては、鉄、ガラス、酸化アルミニウム、フェライト、ジルコニア、酸化クロム、炭化珪素、炭化ほう素、窒化ほう素等の無機微粉末;エポキシ樹脂、PMMA樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリウレタン系粒子、メラミン樹脂粒子等の有機微粉末;等が挙げられる。
【0028】
ホーニング処理は、短時間の加工で容易に安定した粗面を得ることができること、所望の粗さを正確に得ることができること、および塗膜欠陥の原因となる異常な凹凸が極めて少ない粗さをもつ粗面が得られること、などの生産上の観点から優れている。
【0029】
(4)押付処理:
押付処理は、基体に処理部材を押し付けて、基体表面を清浄化する処理である。
処理部材としては、基体表面に押し付けられた際に、基体表面との接触面積が増すように変形し得る弾性部材であるのが好ましい。このような弾性部材としては、ブラシ、スポンジ、シート、フィルムなどが挙げられる。これらの中でも、ブラシ及びスポンジのいずれかであることが好ましい。
【0030】
弾性部材の材質としては、弾性部材としての機能を阻害しない限り特に制限はないが、入手の容易性等の観点から、ナイロン、ポリエチレン等の汎用プラスチックスまたは発砲体等が好ましい。
処理部材の形状としては、押付処理を行うことができる限り特に制限はないが、通常は基体と同様にドラム状(円柱形状)等であることが好ましい。
【0031】
(5)濯ぎ処理:
濯ぎ処理は既述の通り、洗浄剤溶液および、切り粉、研磨材その他の異物等の付着物を洗い流す処理で、洗浄処理の一つである。濯ぎ処理を施した後の基体表面に感光層等が形成されるため、当該処理は、基体表面を清浄化するために重要な処理となる。
【0032】
濯ぎ処理は、水系濯ぎ液(濯ぎのための水系溶液)中に前記円筒状基体を少なくとも1回浸漬して行う。かかる浸漬処理により、円筒状基体の全体に水系濯ぎ液を馴染ませることができるので、残留する洗浄剤溶液や付着物を完全に除去することが容易となる。
浸漬処理は、洗浄剤溶液を充分に除去する観点から、複数回行うことが好ましい。複数回行う方法としては、1の濯ぎ槽に複数回の浸漬処理を施す方法や、洗浄処理の浸漬処理と同様に、複数の濯ぎ槽を設け、順次浸漬処理する方法でもよい。水系濯ぎ液としては、洗浄処理で使用する洗浄剤溶液の溶媒(水)を使用することができる。
【0033】
図1に、本発明の洗浄処理(浸漬処理)の概略を説明する図を例示する。
洗浄処理、粗面化処理等が施された基体10は、案内レール14に設けられた支持装置12により、支持されている。支持装置12は案内レール14に沿って濯ぎ槽20a,20b,20cおよび20dへ基体10を搬送することができる。
【0034】
まず、支持装置12により濯ぎ槽20a上に搬送された基体10は、伸縮自在の支持部12aが洗浄槽20側に向かって下方に伸び、基体10を濯ぎ槽20a中に浸漬する。
浸漬時間としては、15秒〜5分間とすることが好ましく、2〜4分間とすることが好ましい。
【0035】
所定時間浸漬した後、支持部12aを元に戻し、基体10を矢印A方向へ移動させ、濯ぎ槽20aと同様にして濯ぎ槽20b、20cへ順次基体10を浸漬する。濯ぎ槽20cでの浸漬・濯ぎが終了した後は、濯ぎ槽20dにて、最後の濯ぎ処理を施す。かかる浸漬処理により、洗浄処理で使用され円筒状基体表面に残留する水系溶液や付着物等を除去することができる。
ここで、「最後の濯ぎ処理」等の「最後」の意義としては、各処理の中の最終の処理をいい、次の処理を施す前の処理をいう。
【0036】
最後の濯ぎ処理を行う濯ぎ槽20dの水系濯ぎ液(最後に基体を浸漬するための水系溶液)中には、実質的にシリカが含有されている。シリカは水染み発生の原因となるため、含有しないほうがよい。しかし、実際上は、シリカを完全に除去することはほとんど不可能である。また、コストなど考慮すると、シリカを低減させるにも限界がある。従って、上記「実質的にシリカを含有する」の意義としては、シリカを少なくとも0.05mg/リットル含有することをいい、好ましくは、0.01mg/リットル含有することをいう。
【0037】
シリカ濃度は、30mg/リットル以下とすることを必須とし、好ましくは、25mg/リットル以下とする。30mg/リットル以下とすることで、ハーフトーンの画像ムラという問題を解消できる。これは、ハーフトーンの画像ムラの原因が水系溶液に含まれるシリカによるためだからである。従って、シリカ濃度が30mg/リットルを超えると、ハーフトーンの画像ムラが顕著となり、実用に供する高画質用感光体とすることが不可能となる。
【0038】
シリカ濃度は、例えば、1日おきに濯ぎ槽20dの水系溶液をサンプリングし、セントラル科学株式会社製測定機DR−2000により測定することで確認することができる。当該測定の結果、シリカ濃度が30mg/リットルを付近になったら、水系濯ぎ液の一部もしくは全部を交換することが好ましい。
【0039】
少なくとも、濯ぎ槽20dの水系濯ぎ液(水系溶液)の温度は、80℃以下とすることが好ましく、40〜80℃とすることがより好ましい。
80℃以上を超えると、基体表面からの電荷の注入の不均一に起因する画像ムラが発生することがある。
濯ぎ槽20dへの浸漬時間は15〜5分間とすることが好ましく、30秒〜4分間とすることがより好ましい。
【0040】
また、少なくとも、濯ぎ槽20dのおけるクリーン度は、1000以下とすることが好ましく、100以下にすることがより好ましい。1000を超えると、空気中の浮遊異物が基体に付着し、このような円筒状基体を用いて感光層を形成した電子写真感光体のコピー画像には黒ポチ、白ポチ等の画像ムラが現れることがある。
【0041】
最後の濯ぎ処理が施された後、基体10は、濯ぎ槽20dから矢印B方向へ引き上げられるが、その引き上げ速度としては、20mm/s以上とすることが好ましい。20mm/s未満では、濯ぎ槽20dの水系濯ぎ液に浮遊する異物が基体表面に付着しやすくなり、当該異物が付着した状態で感光体を製造すると、黒ポチ、白ポチ等の画像ムラが発生することがある。
【0042】
なお、最後の濯ぎ処理(図1の場合、濯ぎ槽20dでの処理)についての種々の条件は、適宜、他の濯ぎ処理(図1の場合、濯ぎ槽20a〜20cでの処理)の条件を適用してもよい。
【0043】
図1に示す例では、濯ぎ処理の前段が、濯ぎ槽20a、20b、20cが3段で設けられている。そして、濯ぎ槽20cから、液供給配管12を通じて水系濯ぎ液(水系溶液)が供給され(濯ぎ槽20dも同様)、これをオーバーフローさせて、濯ぎ槽20b、20aへと供給される構成となっている。かかる構成とすることで、濯ぎ槽22aから22cへ進むに従い、水系濯ぎ溶液中の不純物濃度が低くなるため、円筒状基体表面をより清浄化することが可能となり、残留する洗浄剤溶液や付着物等を効率よく除去することができる。
【0044】
上記のような浸漬処理により、各濯ぎ槽中には除去された付着物が分散するが、これはフィルター等を用いて除去することが好ましい。
基体10の浸漬により、オーバーフローする液は、最終的には排液処理装置(図示せず)により処理されることが好ましい。
【0045】
以上のようにして洗浄処理、濯ぎ処理等を施した後は、公知の方法により、乾燥処理等が施され、感光体の製造工程へと進むことになる。
【0046】
〔感光体の製造方法〕
感光体は、既述の洗浄等を終えた基体の表面に、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層等を順次積層して製造される。
【0047】
下引き層としては、例えば、アルミニウム陽極酸化被膜、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム等の無機層、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、セルロース類、ゼラチン、デンプン、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド等の樹脂等の有機層、あるいは、シランカップリング剤、有機ジルコニウムなどの有機金属化合物、又はこれらを混合させたものなどが挙げられる。また、これらの下引き層は、アルミニウム、鋼、錫、亜鉛、チタンなどの金属あるいは金属酸化物などの導電性又は半導性微粒子を含んでいてもよい。
下引き層の厚みとしては、0.05μm〜30μmが好ましく、0.1〜2μmが特に好ましい。感光層が電荷発生層と電荷輸送層との積層構造の場合、それらのいずれかが下引き層の上に設けられてもよい。
【0048】
電荷発生層は電荷発生物質を含有し、前記電荷輸送層は電荷輸送物質を含有する。
【0049】
電荷発生物質としては、例えば、無金属フタロシアニン、銅塩化インジウム、塩化ガリウム、錫、オキシチタニウム、亜鉛、バナジウム等の金属、又は、その酸化物、塩化物の配位したフタロシアニン類が挙げられる。これらの中でも、光感度、電気特性安定性、画質の点で、無金属フタロシアニン、クロロガリウムなどのハロゲン化ガリウムフタロシアニン、ジクロロスズなどのハロゲン化スズフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、オキシチタニルフタロシアニン、クロロインジウムなどのハロゲン化インジウムフタロシアニン、バナジルフタロシアニンから選択される少なくとも1つが好ましい。
なお、これら中心金属類については混晶の形で複数併用してもよいし、単品として複数混合してもよい。
【0050】
電荷発生層には、分光感度を変えたり帯電性、残留電位等の電気特性を改良するために、フタロシアニン以外の電荷発生物質を含有させてもよい。そのような電荷発生物質としては、例えば、セレン及びその合金、ヒ素−セレン、硫化カドミニウム、酸化亜鉛、その他の無機光導電物質、アゾ色素、キナクリドン、多環キノン、ピリリウム塩、チアピリリウム塩、インジゴ、チオインジゴ、アントアントロン、ピラントロン、シアニン等が挙げられる。
以上の電荷発生物質の平均粒径としては、1μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましく、0.3μm以下が特に好ましい。
【0051】
電荷発生層に使用されるバインダーとしては、例えば、ポリビニルアセテート、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルプロピオナール、ポリビニルブチラール、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、セルロースエステル、セルロースエーテルなどが挙げられる。
【0052】
電荷発生層における前記電荷発生物質の含有量としては、前記バインダー100質量部に対し、通常30〜500質量部である。
電荷発生層の厚みとしては、通常0.05μm〜1μmであり、0.1〜0.5μmが特に好ましい。
電荷発生層には、必要に応じて塗布性を改善するためのレベリング剤や酸化防止剤、増感剤等の各種添加剤を添加させることができる。
電荷発生層は、前記電荷発生物質の微粒子が前記バインダー中に分散した状態で結着してなる層であってもよいし、前記電荷発生物質による蒸着膜であってもよい。
【0053】
電荷輸送物質としては、例えば、2,4,7−トリニトロフルオレノン、テトラシアノキノジメタン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(m−トリル)ベンジジンなどの電子吸引性物質、カルバゾール、インドール、イミダゾール、オキサゾール、ピラゾール、オキサジアゾール、ピラゾリン、チアジアゾール、などの複素環化合物、アニリン誘導体、ヒドラゾン化合物、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、あるいはこれらの化合物からなる基を主鎖若しくは側鎖に有する重合体などの電子供与性物質が挙げられる。
電荷輸送層は、これらの電荷輸送物質がバインダーに結着した状態で形成される。
【0054】
電荷輸送層に使用されるバインダーとしては、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等のビニル重合体、及びその供重合体、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエステルカーボネート、ポリスルホン、ポリイミド、フエノキシ、エポキシ、シリコーン樹脂等、これらの部分的架橋硬化物などが挙げられる。
【0055】
電荷輸送層における前記電荷輸送物質の含有量としては、前記バインダー100質量部に対し、通常30〜200質量部であり、40〜150質量部が好ましい。
電荷輸送層の厚みとしては、通常5〜50μmであり、15〜30μmが好ましい。
電荷輸送層には、成膜性、可とう性、塗布性などを向上させるため、必要に応じて周知の可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、レベリング剤などの添加剤を添加することができる。
【0056】
下引き層、電荷発生層及び電荷輸送層用の各塗布液の塗布法としては、浸漬塗布法、スプレー塗布法、ビード塗布法、ブレード塗布法、ローラー塗布法等を適用することができる。
【0057】
以上のようにして製造された感光体は、その基体に残留洗浄溶液や付着物等が存在し難く、コピー機などの画像形成装置に使用しても、ハーフトーンや黒ぽち、白ぽち等の画像ムラを発生させず、良好な画質を提供できる感光体の生産効率が向上する。
【0058】
【実施例】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下に記載の「部」とは、「質量部」を意味する。
【0059】
〔実施例1〜10〕
ダイヤモンドバイトを用いた鏡面旋盤により、アルミニウム製の円筒状基体(直径84mm、長さ340mm、厚さ1mm)の表面に鏡面切削加工を行った。鏡面切削加工後の基体の表面粗さRa(JIS B0601に規定されている中心線平均粗さ)は0.04μmであり、平滑面に仕上げられていることが確認された。
【0060】
鏡面切削加工を施した後、洗浄処理(洗剤除去処理を含む)、粗面化処理、押付処理、濯ぎ処理を順次施した。
【0061】
(洗浄処理)
洗浄処理は、超音波発振機により洗浄中の基体に超音波を印加しながら、洗浄剤溶液を満たした2つ洗浄槽に基体を順次浸漬して行った。
洗浄剤溶液の界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤(ライオン(株)製:LH600F)を用い、その濃度は、始めに浸漬する洗浄槽で10〜20%とし、次に浸漬する洗浄槽で1〜2%とした。また、溶媒として使用した水は、0.1μS/cm以下のイオン交換水であった。
【0062】
(粗面化処理)
基体の粗面化処理は、湿式ホーニング装置によって、その表面の粗面化(ホーニング処理)を行った。
具体的には、まず、研磨材を水に懸濁させて懸濁液を調製した。その後、調製した懸濁液を10リットル/minの流量でガンに送り込んで、表面粗さ(Ra:0.2μm)になるように、所定の圧縮空気圧を0.1〜0.2MPaの範囲で基体に吹きつけた。
研磨材としては、昭和タイタニウム社製の酸化アルミニウム(アルナビーズ(CB−A35S)、粒径35μm)を用いた。
【0063】
(押付処理)
押付処理は、以下に説明するようにして行った。
まず、基体に対し、井戸水を25リットル/minで60秒間吹きかけた。その後、井戸水に0.2%の界面活性剤を含有する洗浄溶液を2リットル/minで吹きかけながら、処理部材としてのナイロン製ブラシ(ブラシ線径65μm、ブラシ外径130mm、ブラシ長さ30mm)を基体表面に接触させ、基体と共に同方向に100rpmで回転させながら60秒間の押付処理を施した。
【0064】
(濯ぎ処理)
基体を純水中に浸漬させて30秒間の濯ぎ処理を行なった。かかる濯ぎ処理は、まず、図1に示すように、3つの濯ぎ槽(20a〜20c)に順次浸漬して行なった。
次いで、下記の表1に示すように、所定のシリカ濃度、所定の水系濯ぎ液の液温、所定の引き上げ速度で、最後の濯ぎ処理を施した。
なお、最後の濯ぎ処理における基体の浸漬時間は、0.5分間とし、基体の浸漬速度は、20mm/sとした。
【0065】
【表1】
【0066】
次に、濯ぎ処理を行なった基体を135℃で乾燥させた。
その後、基体上に、有機ジルコニウム化合物(商品名:オルガチックスZC540、松本製薬(株)製)100部、シランカップリング剤(商品名:A1100、日本ユニカー(株)製)10部、ポリビニルブチラール樹脂(商品名:BM−S、積水化学(株)製)10部及びn−ブチルアルコール130部を混合して得られた塗布液を、浸漬塗布法により塗布し、140℃で15分間加熱して、厚さ1.0μmの下引き層を形成した。
【0067】
次に、ポリビニルブチラール樹脂(商品名:BM−1、積水化学(株)製)の2%シクロヘキサノン溶液に、ヒドロキシガリウムフタロシアノン顔料(特開平5−263007号公報に記載のもの)を混合した。ヒドロキシガリウムフタロシアノン顔料とポリビニルブチラール樹脂との比は2:1(質量比)とした。
次いでサンドミルにより3時間分散処理を行なった。得られた分散液をさらに酢酸n−ブチルで希釈して、下引き層上に浸漬塗布し、0.15μm厚の電荷発生層を形成した。
【0068】
N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(m−トリル)ベンジジン4部及びビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂6部を、モノクロロベンゼン36部に溶解して塗布液を調製した。調製した塗布液を電荷発生層上に浸漬塗布し、115℃で40分間乾燥して、24μm厚の電荷輸送層を形成した。
以上のようにして電子写真感光体を製造した。
【0069】
〔比較例1〜6〕
最後の濯ぎ処理を下記表2のように変更した以外は実施例と同様にして感光体を作製した。
【0070】
【表2】
【0071】
以上のようにして製造した実施例1〜8及び比較例1〜7に係る感光体の各々1000本を使用して画像形成試験を行い、形成された画像における画像ノイズ(画像ムラ)の評価を行った。結果を下記表3に示す。
なお、画像ノイズの評価は、製造した感光体を富士ゼロックス社製プリンターLaser Press 4161IIに搭載して行った。
また、残留する洗浄剤溶液により感光層に塗布むらや凝集等が発生し、感光体1000本中1本でもコピー画像にハーフトーン等の画像ムラが発生したものは、発生時点で評価を中止し、「×」で表した。
【0072】
次に、前記画像ノイズの評価において合格した基体のみをCCDカメラと顕微鏡とからなる表面欠陥評価装置(富士ゼロックス社製)を用い、異物(付着物)の有無の確認を行った。具体的には、基体表面において、直径が20μm以上の異物の有無を確認し、確認を行った基体の全数に対し、20μm以上の異物が認められた基体の割合(欠陥発生率)を算出した。
【0073】
【表3】
【0074】
表3の結果より、比較例ではいずれも画像ノイズが発生したのに対し、実施例ではいずれも、画像ノイズは発生しなかった。また、欠陥発生率は、実施例9,10では、引き上げ速度が小さかったため若干高い値となったが、その他の実施例では非常に低く、いずれの実施例でも実用上問題がないレベルであったといえる。
【0075】
【発明の効果】
本発明の円筒状基体の洗浄方法によれば、基体に残留した水系洗浄剤溶液に起因するハーフトーン等の画像ムラを防止し、清浄度の高い円筒状基体を効率よく得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の洗浄方法に適用される濯ぎ処理を説明するための説明図である。
【符号の説明】
10…基体
14…案内レール
12…支持装置
12a…支持部
20a,20b,20c、20d…濯ぎ槽
【発明の属する技術分野】
本発明は、円筒状基体の洗浄方法に関し、特に、電子写真方式の複写機、プリンタ、ファクシミリ等に用いられる電子写真感光体の基体として使用される円筒状基体の洗浄方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子写真感光体用基体(円筒状基体)は、その成型、加工時に加工油、潤滑油、防錆油などが用いられる。そのため、加工後の基体には必ず油分が残留している。また、円筒状基体表面には、切削粉や空気中の粉塵、ハンドリング時に発生する異物などが付着する。
従って、成型加工した後の円筒状基体は、次工程に入る前に、上記油分や付着物を洗浄除去する必要がある。
【0003】
円筒状基体の洗浄方法としては、溶剤、純水系洗浄剤、水系洗浄剤、または純水を用いて洗浄する方法がある。現在は、オゾン層破壊や地球温暖化、大気汚染などの環境問題及び人体への悪影響などを考慮して、塩素系溶剤の削減、全面廃止の方向に移行しており、水系洗浄剤または純水を用いた洗浄方法が行われている。
【0004】
水系洗浄剤または純水を用いて洗浄を行う場合、まず最初に、界面活性剤を含有させた洗浄液に円筒状基体を浸漬させ、油分や異物などの付着物を除去する。その後、濯ぎ用の浸漬槽に浸漬させることで洗浄液を洗い流し、最後に円筒状基体に残留した水を乾燥し洗浄を完了させる。
【0005】
しかし、単に洗浄液中に基体を浸漬するだけでは十分な洗浄力が得られないことがある。そこで、洗浄力を高めるべく、キャビテーション効果を利用した超音波洗浄、ジェットノズルなどによる洗浄液の高圧噴射、ブラシやブレードなどによる摺擦洗浄などの種々の洗浄方法が採用されている。
【0006】
しかしながら、上記各洗浄方法はいずれも、最終的には円筒状基体を水系溶液から引き上げて水切り乾燥させるものである。水切り乾燥後に円筒状基体に系溶液が残留している場合、その後の円筒状基体上に、少なくともバインダー樹脂と感光性材料とを溶剤に溶解または分散させた感光層用塗液を塗布して感光層を形成すると、電子写真感光体の感光層に残留した洗浄液により感光層に塗布むらや凝集等が生じてしまう。その結果、感光層を形成した電子写真感光体を用いてコピーを行った場合、そのコピー画像には、ハーフトーン等の画像ムラが発生する問題があった。
【0007】
さらに、このように円筒状基体を水系洗浄剤を使用して水系下で洗浄するようにした場合、円筒状基体の洗浄が不十分になる場合が多い。その結果、このような円筒状基体を用いて感光層を形成した電子写真感光体のコピー画像には、黒ポチ、白ポチ等の画像ムラが生じてしまう問題あった。
【0008】
上記問題を解決するために、円筒状基体表面を界面活性剤含有水溶液中で浸漬洗浄し、濯ぎ処理後、35〜90℃の純水に浸漬することを特徴とする電子写真感光体用円筒状基体の洗浄方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、上記のような、濯ぎ処理された円筒状基体を70℃に保たれた純水中に30秒間浸漬し、10mm/sで引き上げ、クリーン度100に保たれたクリーンブース内で20分間放冷する方法では、円筒状基体の洗浄が不十分となることがある。その結果、このような円筒状基体を用いて感光層を形成した電子写真感光体のコピー画像には黒ポチ、白ポチ等の画像ムラが現われ、画像品質に悪影響を及ぼすことが確認された。また、上記方法は、基体の引き上げ速度が10mm/sと非常に低速であるため、生産効率が低かった。
【0009】
また、上記課題を解決する方法として、水系下で洗浄した後の円筒状基体を高温の水系溶液中に浸漬させ、この水系溶液中から円筒状基体を引き上げて、円筒状基体を水切り乾燥させるにあたり、この水切り乾燥を下記式に示す条件を満たすようにして行う方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0010】
式:30≦[TL−H・Δω/ρ]≦60
(上記式中、TLは上記水系溶液の温度[℃]、Hは上記水系溶液の蒸発潜熱[cal/g]、Δωは上記円筒状基体の単位表面積当りにおいて蒸発した上記水系溶液の蒸発量[g/cm2]、ρは上記円筒状基体の単位表面積当りの比熱[cal/cm2・℃]を示す。)
【0011】
上記式を満たすような水切り乾燥を行った円筒状基体を用いた電子写真感光体の感光層には、残留水系溶液に起因する塗布むらや凝集等が生ずることはない。しかし、円筒状基体の洗浄が不十分であり、このような円筒状基体を用いて感光層を形成した電子写真感光体のコピー画像には、黒ポチ、白ポチ等が現われることが分かった。
【0012】
【特許文献1】
特開平5−127396号公報
【特許文献2】
特許第3060598号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
以上から、本発明は、上記問題点を解消することを目的とする。すなわち、本発明は、円筒状基体に残留した水系溶液に起因するハーフトーン等の画像ムラを防止し、清浄度の高い円筒状基体を効率よく得られる円筒状基体の洗浄方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決すべく鋭意検討の結果、本発明者らは、ハーフトーン等の画像ムラが、主に、円筒状基体の洗浄工程で残留した水系溶液による水染み等によるものであることを見出した。そして、その水染み発生の原因の一つとして、洗浄処理の一つである濯ぎ処理を行う際のシリカ濃度が重要な影響を与えることを見出し、本発明に想到した。
【0015】
すなわち、本発明は、
<1> 少なくとも、水系溶液により洗浄を行う洗浄処理を施す円筒状基体の洗浄方法であって、
前記洗浄処理が、前記水系溶液中に前記円筒状基体を少なくとも1回浸漬する処理であり、
前記水系溶液のうち、少なくとも最後に浸漬するための前記水系溶液が実質的にシリカを含有し、該シリカ濃度が30mg/リットル以下であることを特徴とする円筒状基体の洗浄方法である。
【0016】
<2> 前記洗浄処理が、前記洗浄剤溶液中に前記円筒状基体を少なくとも1回浸漬する処理であることを特徴とする<1>に記載の円筒状基体の洗浄方法である。
<3> 前記洗浄処理のうち、少なくとも、最後に浸漬した前記円筒状基体を前記水系溶液中から引き上げる際の引き上げ速度が、20mm/s以上であることを特徴とする<1>または<2>に記載の円筒状基体の洗浄方法である。
<4> 前記洗浄処理のうち、少なくとも、前記円筒状基体を前記水系濯ぎ液に最後に浸漬する際の前記水系溶液の温度が、80℃以下であることを特徴とする<1>〜<3>のいずれかに記載の円筒状基体の洗浄方法である。
<5> 前記洗浄処理のうち、少なくとも、前記円筒状基体を前記水系溶液に最後に浸漬し前記水系溶液中から引き上げる際のクリーン度が、1000以下であることを特徴とする<1>〜<4>のいずれかに記載の円筒状基体の洗浄方法である。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の円筒状基体の洗浄方法は、成型加工を施した感光体用の円筒状基体(以下、単に「基体」ということがある)に、少なくとも、水系溶液により洗浄を行う洗浄処理を施すものである。これら処理の前後には、種々の公知の処理を適宜施してもよい。例えば、基体に(1)洗浄処理を施した後、(2)洗浄剤溶液を除去する洗剤除去処理、(3)ホーニング処理等の粗面化処理、(4)押付処理を施し、(5)濯ぎ処理を施して、本発明の洗浄方法としてもよい。
【0018】
当該洗浄方法による各処理を施した後は、例えば、円筒状基体表面の水分を極力減少させる水切り工程、円筒状基体表面に残留する水分を除去する乾燥工程等を順次経た後、感光層を形成して電子写真感光体(以下、「感光体」ということがある)が製造される。
【0019】
以下、本発明の洗浄方法の各処理について詳細に説明し、さらに、本発明の洗浄方法を適用した円筒状基体を用いた感光体について説明する。
なお、本発明の洗浄方法は、洗浄処理および濯ぎ処理を含む限り、以下の説明に限定されるものではない。
【0020】
〔円筒状基体の洗浄方法〕
(1)洗浄処理:
洗浄処理は、洗浄剤溶液により、円筒状基体の表面に付着した油や切り粉等をを洗浄して除去する処理である。洗浄方法としては、スプレー洗浄、ジェットノズルを使用した高圧噴射洗浄、洗浄剤溶液中に円筒状基体を少なくとも1回浸漬する浸漬処理、等を適用することができる。洗浄効率や処理コストを考慮すると、浸漬処理を適用することが好ましい。
【0021】
浸漬処理は、1の洗浄槽中に洗浄剤溶液を満たし、その中に被洗浄物である円筒状基体を浸漬し、所定の時間保持した後、洗浄槽から引き上げる処理である。必要に応じて、複数の洗浄槽を設け、順次浸漬処理してもよい。洗浄槽に基体が浸漬されることで、基体に付着した油や切粉等の付着物が除去される。
なお、複数の洗浄槽を設ける場合、これら洗浄槽は多段で構成することが好ましい。この場合、円筒状基体が浸漬される最初の槽から最後の槽に向けて徐々に洗浄剤溶液の成分や濃度を変えて洗浄処理を施すことが好ましい。洗浄槽の数は洗浄効率を考慮して設定することが好ましい。
【0022】
洗浄槽に浸漬する時間(洗浄時間)は、洗浄槽の数や基体表面の付着物の量等にもよるが、15秒〜5分間とすることが好ましく、2〜4分間とすることがより好ましい。また、洗浄槽にヒーター等を設けて、洗浄剤溶液を一定温度に加温してもよい。加温することにより洗浄効率を向上させることができる。加温する温度としては25〜70℃とすることが好ましく、30〜50℃とすることがより好ましい。70℃を超えると、円筒状基体の表面が酸化されてしまうことがある。
また、洗浄槽の底部に超音波発振器を設けて、基体浸漬時に超音波を発振するような構成としてもよい。かかる構成でも、超音波の発振により洗浄効率を向上させることができる。
【0023】
洗浄剤溶液としては、基体を洗浄し得る液体であれば特に限定されないが、地球環境保護の観点、人体への害が少ないこと、発火・爆発の危険性がないこと、取り扱いの容易さ、等から、水を溶媒とし、これに界面活性剤を添加した洗浄剤溶液を使用することが好ましい。
【0024】
溶媒の水としては、例えば、市水、純水、イオン交換水、井戸水などの水;
電解性アルカリイオン水の一種である超還元性水(日本電子アクティブ株式会社製、商品名:EKO−13、EKO−13ALなど);等が挙げられる。
なお、ここで、「井戸水(井水ともいう)」とは、地下水等の自然の水で、一般的な工場等で、種々の処理に使用されている水をいう。
【0025】
界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン・ブロックコポリマー型及びノニルフェノールポリオキシエチレンエーテルなどのノニオン系界面活性剤、アルキルベンゼン、高級アルコール、α−オレフィンの硫酸、ケイ酸、リン酸及び炭酸などのオキシ酸塩などのアニオン系界面活性剤などを使用することが好ましい。
洗浄剤溶液中の界面活性剤の濃度は、基体の洗浄性とコストとのバランスを考慮して、1〜50質量%であることが好ましく、2〜30質量%であることがより好ましい。
【0026】
(2)洗剤除去処理:
洗剤除去処理は、洗浄処理により基体表面に残留した洗浄剤溶液を除去する処理である。洗剤除去処理の方法としては、洗浄処理で使用する洗浄剤溶液の溶媒(水)を使用して、洗浄処理と同様に浸漬処理等の方法を適用することが好ましい。
なお、洗剤除去処理は、後述する濯ぎ処理と同一の処理としてもよい。
【0027】
(3)粗面化処理
粗面化処理は基体表面に一定の粗さに調整するための処理で、必要に応じて施される。
具体的には、研磨材を水中に懸濁させ、高速度で基体に吹き付けるホーニング処理等がある。
ホーニング処理における研磨材としては、粒径が10〜100μmの範囲にある微粉末を用いることが好ましい。研磨材の形状は特に制限がないが、球状のものが好ましい。研磨材の材質としては、鉄、ガラス、酸化アルミニウム、フェライト、ジルコニア、酸化クロム、炭化珪素、炭化ほう素、窒化ほう素等の無機微粉末;エポキシ樹脂、PMMA樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリウレタン系粒子、メラミン樹脂粒子等の有機微粉末;等が挙げられる。
【0028】
ホーニング処理は、短時間の加工で容易に安定した粗面を得ることができること、所望の粗さを正確に得ることができること、および塗膜欠陥の原因となる異常な凹凸が極めて少ない粗さをもつ粗面が得られること、などの生産上の観点から優れている。
【0029】
(4)押付処理:
押付処理は、基体に処理部材を押し付けて、基体表面を清浄化する処理である。
処理部材としては、基体表面に押し付けられた際に、基体表面との接触面積が増すように変形し得る弾性部材であるのが好ましい。このような弾性部材としては、ブラシ、スポンジ、シート、フィルムなどが挙げられる。これらの中でも、ブラシ及びスポンジのいずれかであることが好ましい。
【0030】
弾性部材の材質としては、弾性部材としての機能を阻害しない限り特に制限はないが、入手の容易性等の観点から、ナイロン、ポリエチレン等の汎用プラスチックスまたは発砲体等が好ましい。
処理部材の形状としては、押付処理を行うことができる限り特に制限はないが、通常は基体と同様にドラム状(円柱形状)等であることが好ましい。
【0031】
(5)濯ぎ処理:
濯ぎ処理は既述の通り、洗浄剤溶液および、切り粉、研磨材その他の異物等の付着物を洗い流す処理で、洗浄処理の一つである。濯ぎ処理を施した後の基体表面に感光層等が形成されるため、当該処理は、基体表面を清浄化するために重要な処理となる。
【0032】
濯ぎ処理は、水系濯ぎ液(濯ぎのための水系溶液)中に前記円筒状基体を少なくとも1回浸漬して行う。かかる浸漬処理により、円筒状基体の全体に水系濯ぎ液を馴染ませることができるので、残留する洗浄剤溶液や付着物を完全に除去することが容易となる。
浸漬処理は、洗浄剤溶液を充分に除去する観点から、複数回行うことが好ましい。複数回行う方法としては、1の濯ぎ槽に複数回の浸漬処理を施す方法や、洗浄処理の浸漬処理と同様に、複数の濯ぎ槽を設け、順次浸漬処理する方法でもよい。水系濯ぎ液としては、洗浄処理で使用する洗浄剤溶液の溶媒(水)を使用することができる。
【0033】
図1に、本発明の洗浄処理(浸漬処理)の概略を説明する図を例示する。
洗浄処理、粗面化処理等が施された基体10は、案内レール14に設けられた支持装置12により、支持されている。支持装置12は案内レール14に沿って濯ぎ槽20a,20b,20cおよび20dへ基体10を搬送することができる。
【0034】
まず、支持装置12により濯ぎ槽20a上に搬送された基体10は、伸縮自在の支持部12aが洗浄槽20側に向かって下方に伸び、基体10を濯ぎ槽20a中に浸漬する。
浸漬時間としては、15秒〜5分間とすることが好ましく、2〜4分間とすることが好ましい。
【0035】
所定時間浸漬した後、支持部12aを元に戻し、基体10を矢印A方向へ移動させ、濯ぎ槽20aと同様にして濯ぎ槽20b、20cへ順次基体10を浸漬する。濯ぎ槽20cでの浸漬・濯ぎが終了した後は、濯ぎ槽20dにて、最後の濯ぎ処理を施す。かかる浸漬処理により、洗浄処理で使用され円筒状基体表面に残留する水系溶液や付着物等を除去することができる。
ここで、「最後の濯ぎ処理」等の「最後」の意義としては、各処理の中の最終の処理をいい、次の処理を施す前の処理をいう。
【0036】
最後の濯ぎ処理を行う濯ぎ槽20dの水系濯ぎ液(最後に基体を浸漬するための水系溶液)中には、実質的にシリカが含有されている。シリカは水染み発生の原因となるため、含有しないほうがよい。しかし、実際上は、シリカを完全に除去することはほとんど不可能である。また、コストなど考慮すると、シリカを低減させるにも限界がある。従って、上記「実質的にシリカを含有する」の意義としては、シリカを少なくとも0.05mg/リットル含有することをいい、好ましくは、0.01mg/リットル含有することをいう。
【0037】
シリカ濃度は、30mg/リットル以下とすることを必須とし、好ましくは、25mg/リットル以下とする。30mg/リットル以下とすることで、ハーフトーンの画像ムラという問題を解消できる。これは、ハーフトーンの画像ムラの原因が水系溶液に含まれるシリカによるためだからである。従って、シリカ濃度が30mg/リットルを超えると、ハーフトーンの画像ムラが顕著となり、実用に供する高画質用感光体とすることが不可能となる。
【0038】
シリカ濃度は、例えば、1日おきに濯ぎ槽20dの水系溶液をサンプリングし、セントラル科学株式会社製測定機DR−2000により測定することで確認することができる。当該測定の結果、シリカ濃度が30mg/リットルを付近になったら、水系濯ぎ液の一部もしくは全部を交換することが好ましい。
【0039】
少なくとも、濯ぎ槽20dの水系濯ぎ液(水系溶液)の温度は、80℃以下とすることが好ましく、40〜80℃とすることがより好ましい。
80℃以上を超えると、基体表面からの電荷の注入の不均一に起因する画像ムラが発生することがある。
濯ぎ槽20dへの浸漬時間は15〜5分間とすることが好ましく、30秒〜4分間とすることがより好ましい。
【0040】
また、少なくとも、濯ぎ槽20dのおけるクリーン度は、1000以下とすることが好ましく、100以下にすることがより好ましい。1000を超えると、空気中の浮遊異物が基体に付着し、このような円筒状基体を用いて感光層を形成した電子写真感光体のコピー画像には黒ポチ、白ポチ等の画像ムラが現れることがある。
【0041】
最後の濯ぎ処理が施された後、基体10は、濯ぎ槽20dから矢印B方向へ引き上げられるが、その引き上げ速度としては、20mm/s以上とすることが好ましい。20mm/s未満では、濯ぎ槽20dの水系濯ぎ液に浮遊する異物が基体表面に付着しやすくなり、当該異物が付着した状態で感光体を製造すると、黒ポチ、白ポチ等の画像ムラが発生することがある。
【0042】
なお、最後の濯ぎ処理(図1の場合、濯ぎ槽20dでの処理)についての種々の条件は、適宜、他の濯ぎ処理(図1の場合、濯ぎ槽20a〜20cでの処理)の条件を適用してもよい。
【0043】
図1に示す例では、濯ぎ処理の前段が、濯ぎ槽20a、20b、20cが3段で設けられている。そして、濯ぎ槽20cから、液供給配管12を通じて水系濯ぎ液(水系溶液)が供給され(濯ぎ槽20dも同様)、これをオーバーフローさせて、濯ぎ槽20b、20aへと供給される構成となっている。かかる構成とすることで、濯ぎ槽22aから22cへ進むに従い、水系濯ぎ溶液中の不純物濃度が低くなるため、円筒状基体表面をより清浄化することが可能となり、残留する洗浄剤溶液や付着物等を効率よく除去することができる。
【0044】
上記のような浸漬処理により、各濯ぎ槽中には除去された付着物が分散するが、これはフィルター等を用いて除去することが好ましい。
基体10の浸漬により、オーバーフローする液は、最終的には排液処理装置(図示せず)により処理されることが好ましい。
【0045】
以上のようにして洗浄処理、濯ぎ処理等を施した後は、公知の方法により、乾燥処理等が施され、感光体の製造工程へと進むことになる。
【0046】
〔感光体の製造方法〕
感光体は、既述の洗浄等を終えた基体の表面に、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層等を順次積層して製造される。
【0047】
下引き層としては、例えば、アルミニウム陽極酸化被膜、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム等の無機層、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、セルロース類、ゼラチン、デンプン、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド等の樹脂等の有機層、あるいは、シランカップリング剤、有機ジルコニウムなどの有機金属化合物、又はこれらを混合させたものなどが挙げられる。また、これらの下引き層は、アルミニウム、鋼、錫、亜鉛、チタンなどの金属あるいは金属酸化物などの導電性又は半導性微粒子を含んでいてもよい。
下引き層の厚みとしては、0.05μm〜30μmが好ましく、0.1〜2μmが特に好ましい。感光層が電荷発生層と電荷輸送層との積層構造の場合、それらのいずれかが下引き層の上に設けられてもよい。
【0048】
電荷発生層は電荷発生物質を含有し、前記電荷輸送層は電荷輸送物質を含有する。
【0049】
電荷発生物質としては、例えば、無金属フタロシアニン、銅塩化インジウム、塩化ガリウム、錫、オキシチタニウム、亜鉛、バナジウム等の金属、又は、その酸化物、塩化物の配位したフタロシアニン類が挙げられる。これらの中でも、光感度、電気特性安定性、画質の点で、無金属フタロシアニン、クロロガリウムなどのハロゲン化ガリウムフタロシアニン、ジクロロスズなどのハロゲン化スズフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、オキシチタニルフタロシアニン、クロロインジウムなどのハロゲン化インジウムフタロシアニン、バナジルフタロシアニンから選択される少なくとも1つが好ましい。
なお、これら中心金属類については混晶の形で複数併用してもよいし、単品として複数混合してもよい。
【0050】
電荷発生層には、分光感度を変えたり帯電性、残留電位等の電気特性を改良するために、フタロシアニン以外の電荷発生物質を含有させてもよい。そのような電荷発生物質としては、例えば、セレン及びその合金、ヒ素−セレン、硫化カドミニウム、酸化亜鉛、その他の無機光導電物質、アゾ色素、キナクリドン、多環キノン、ピリリウム塩、チアピリリウム塩、インジゴ、チオインジゴ、アントアントロン、ピラントロン、シアニン等が挙げられる。
以上の電荷発生物質の平均粒径としては、1μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましく、0.3μm以下が特に好ましい。
【0051】
電荷発生層に使用されるバインダーとしては、例えば、ポリビニルアセテート、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルプロピオナール、ポリビニルブチラール、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、セルロースエステル、セルロースエーテルなどが挙げられる。
【0052】
電荷発生層における前記電荷発生物質の含有量としては、前記バインダー100質量部に対し、通常30〜500質量部である。
電荷発生層の厚みとしては、通常0.05μm〜1μmであり、0.1〜0.5μmが特に好ましい。
電荷発生層には、必要に応じて塗布性を改善するためのレベリング剤や酸化防止剤、増感剤等の各種添加剤を添加させることができる。
電荷発生層は、前記電荷発生物質の微粒子が前記バインダー中に分散した状態で結着してなる層であってもよいし、前記電荷発生物質による蒸着膜であってもよい。
【0053】
電荷輸送物質としては、例えば、2,4,7−トリニトロフルオレノン、テトラシアノキノジメタン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(m−トリル)ベンジジンなどの電子吸引性物質、カルバゾール、インドール、イミダゾール、オキサゾール、ピラゾール、オキサジアゾール、ピラゾリン、チアジアゾール、などの複素環化合物、アニリン誘導体、ヒドラゾン化合物、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、あるいはこれらの化合物からなる基を主鎖若しくは側鎖に有する重合体などの電子供与性物質が挙げられる。
電荷輸送層は、これらの電荷輸送物質がバインダーに結着した状態で形成される。
【0054】
電荷輸送層に使用されるバインダーとしては、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等のビニル重合体、及びその供重合体、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエステルカーボネート、ポリスルホン、ポリイミド、フエノキシ、エポキシ、シリコーン樹脂等、これらの部分的架橋硬化物などが挙げられる。
【0055】
電荷輸送層における前記電荷輸送物質の含有量としては、前記バインダー100質量部に対し、通常30〜200質量部であり、40〜150質量部が好ましい。
電荷輸送層の厚みとしては、通常5〜50μmであり、15〜30μmが好ましい。
電荷輸送層には、成膜性、可とう性、塗布性などを向上させるため、必要に応じて周知の可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、レベリング剤などの添加剤を添加することができる。
【0056】
下引き層、電荷発生層及び電荷輸送層用の各塗布液の塗布法としては、浸漬塗布法、スプレー塗布法、ビード塗布法、ブレード塗布法、ローラー塗布法等を適用することができる。
【0057】
以上のようにして製造された感光体は、その基体に残留洗浄溶液や付着物等が存在し難く、コピー機などの画像形成装置に使用しても、ハーフトーンや黒ぽち、白ぽち等の画像ムラを発生させず、良好な画質を提供できる感光体の生産効率が向上する。
【0058】
【実施例】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下に記載の「部」とは、「質量部」を意味する。
【0059】
〔実施例1〜10〕
ダイヤモンドバイトを用いた鏡面旋盤により、アルミニウム製の円筒状基体(直径84mm、長さ340mm、厚さ1mm)の表面に鏡面切削加工を行った。鏡面切削加工後の基体の表面粗さRa(JIS B0601に規定されている中心線平均粗さ)は0.04μmであり、平滑面に仕上げられていることが確認された。
【0060】
鏡面切削加工を施した後、洗浄処理(洗剤除去処理を含む)、粗面化処理、押付処理、濯ぎ処理を順次施した。
【0061】
(洗浄処理)
洗浄処理は、超音波発振機により洗浄中の基体に超音波を印加しながら、洗浄剤溶液を満たした2つ洗浄槽に基体を順次浸漬して行った。
洗浄剤溶液の界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤(ライオン(株)製:LH600F)を用い、その濃度は、始めに浸漬する洗浄槽で10〜20%とし、次に浸漬する洗浄槽で1〜2%とした。また、溶媒として使用した水は、0.1μS/cm以下のイオン交換水であった。
【0062】
(粗面化処理)
基体の粗面化処理は、湿式ホーニング装置によって、その表面の粗面化(ホーニング処理)を行った。
具体的には、まず、研磨材を水に懸濁させて懸濁液を調製した。その後、調製した懸濁液を10リットル/minの流量でガンに送り込んで、表面粗さ(Ra:0.2μm)になるように、所定の圧縮空気圧を0.1〜0.2MPaの範囲で基体に吹きつけた。
研磨材としては、昭和タイタニウム社製の酸化アルミニウム(アルナビーズ(CB−A35S)、粒径35μm)を用いた。
【0063】
(押付処理)
押付処理は、以下に説明するようにして行った。
まず、基体に対し、井戸水を25リットル/minで60秒間吹きかけた。その後、井戸水に0.2%の界面活性剤を含有する洗浄溶液を2リットル/minで吹きかけながら、処理部材としてのナイロン製ブラシ(ブラシ線径65μm、ブラシ外径130mm、ブラシ長さ30mm)を基体表面に接触させ、基体と共に同方向に100rpmで回転させながら60秒間の押付処理を施した。
【0064】
(濯ぎ処理)
基体を純水中に浸漬させて30秒間の濯ぎ処理を行なった。かかる濯ぎ処理は、まず、図1に示すように、3つの濯ぎ槽(20a〜20c)に順次浸漬して行なった。
次いで、下記の表1に示すように、所定のシリカ濃度、所定の水系濯ぎ液の液温、所定の引き上げ速度で、最後の濯ぎ処理を施した。
なお、最後の濯ぎ処理における基体の浸漬時間は、0.5分間とし、基体の浸漬速度は、20mm/sとした。
【0065】
【表1】
【0066】
次に、濯ぎ処理を行なった基体を135℃で乾燥させた。
その後、基体上に、有機ジルコニウム化合物(商品名:オルガチックスZC540、松本製薬(株)製)100部、シランカップリング剤(商品名:A1100、日本ユニカー(株)製)10部、ポリビニルブチラール樹脂(商品名:BM−S、積水化学(株)製)10部及びn−ブチルアルコール130部を混合して得られた塗布液を、浸漬塗布法により塗布し、140℃で15分間加熱して、厚さ1.0μmの下引き層を形成した。
【0067】
次に、ポリビニルブチラール樹脂(商品名:BM−1、積水化学(株)製)の2%シクロヘキサノン溶液に、ヒドロキシガリウムフタロシアノン顔料(特開平5−263007号公報に記載のもの)を混合した。ヒドロキシガリウムフタロシアノン顔料とポリビニルブチラール樹脂との比は2:1(質量比)とした。
次いでサンドミルにより3時間分散処理を行なった。得られた分散液をさらに酢酸n−ブチルで希釈して、下引き層上に浸漬塗布し、0.15μm厚の電荷発生層を形成した。
【0068】
N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(m−トリル)ベンジジン4部及びビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂6部を、モノクロロベンゼン36部に溶解して塗布液を調製した。調製した塗布液を電荷発生層上に浸漬塗布し、115℃で40分間乾燥して、24μm厚の電荷輸送層を形成した。
以上のようにして電子写真感光体を製造した。
【0069】
〔比較例1〜6〕
最後の濯ぎ処理を下記表2のように変更した以外は実施例と同様にして感光体を作製した。
【0070】
【表2】
【0071】
以上のようにして製造した実施例1〜8及び比較例1〜7に係る感光体の各々1000本を使用して画像形成試験を行い、形成された画像における画像ノイズ(画像ムラ)の評価を行った。結果を下記表3に示す。
なお、画像ノイズの評価は、製造した感光体を富士ゼロックス社製プリンターLaser Press 4161IIに搭載して行った。
また、残留する洗浄剤溶液により感光層に塗布むらや凝集等が発生し、感光体1000本中1本でもコピー画像にハーフトーン等の画像ムラが発生したものは、発生時点で評価を中止し、「×」で表した。
【0072】
次に、前記画像ノイズの評価において合格した基体のみをCCDカメラと顕微鏡とからなる表面欠陥評価装置(富士ゼロックス社製)を用い、異物(付着物)の有無の確認を行った。具体的には、基体表面において、直径が20μm以上の異物の有無を確認し、確認を行った基体の全数に対し、20μm以上の異物が認められた基体の割合(欠陥発生率)を算出した。
【0073】
【表3】
【0074】
表3の結果より、比較例ではいずれも画像ノイズが発生したのに対し、実施例ではいずれも、画像ノイズは発生しなかった。また、欠陥発生率は、実施例9,10では、引き上げ速度が小さかったため若干高い値となったが、その他の実施例では非常に低く、いずれの実施例でも実用上問題がないレベルであったといえる。
【0075】
【発明の効果】
本発明の円筒状基体の洗浄方法によれば、基体に残留した水系洗浄剤溶液に起因するハーフトーン等の画像ムラを防止し、清浄度の高い円筒状基体を効率よく得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の洗浄方法に適用される濯ぎ処理を説明するための説明図である。
【符号の説明】
10…基体
14…案内レール
12…支持装置
12a…支持部
20a,20b,20c、20d…濯ぎ槽
Claims (5)
- 少なくとも、水系溶液により洗浄を行う洗浄処理を施す円筒状基体の洗浄方法であって、
前記洗浄処理が、前記水系溶液中に前記円筒状基体を少なくとも1回浸漬する処理であり、
前記水系溶液のうち、少なくとも最後に浸漬するための前記水系溶液が実質的にシリカを含有し、該シリカ濃度が30mg/リットル以下であることを特徴とする円筒状基体の洗浄方法。 - 前記洗浄処理が、前記洗浄剤溶液中に前記円筒状基体を少なくとも1回浸漬する処理であることを特徴とする請求項1に記載の円筒状基体の洗浄方法。
- 前記洗浄処理のうち、少なくとも、最後に浸漬した前記円筒状基体を前記水系溶液中から引き上げる際の引き上げ速度が、20mm/s以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の円筒状基体の洗浄方法。
- 前記洗浄処理のうち、少なくとも、前記円筒状基体を前記水系溶液に最後に浸漬する際の前記水系溶液の温度が、80℃以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の円筒状基体の洗浄方法。
- 前記洗浄処理のうち、少なくとも、前記円筒状基体を前記水系溶液に最後に浸漬し前記水系溶液中から引き上げる際のクリーン度が、1000以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の円筒状基体の洗浄方法。
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JP2003079495A JP2004283734A (ja) | 2003-03-24 | 2003-03-24 | 円筒状基体の洗浄方法 |
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KR102675361B1 (ko) * | 2023-06-21 | 2024-06-17 | 최맹열 | 피가공품용 초음파 세척기 |
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- 2003-03-24 JP JP2003079495A patent/JP2004283734A/ja active Pending
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