JP3722176B2 - 電子写真感光体基体の洗浄方法、電子写真感光体の製造方法及びそれを用いた電子写真感光体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機、プリンター等に利用される電子写真感光体基体の洗浄方法、電子写真感光体の製造方法及びそれらの方法を用いて製造された電子写真感光体に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に電子写真感光体(以後、単に感光体ともいう)は、感光体基体上に必要により下引き層を介して感光層を塗布加工して得られる。
【0003】
上記感光体基体としては、例えばアルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス、真ちゅう等の金属の円筒を切削成型したもの又はアルミニウム、錫合金、酸化インジウム等をポリエステルフィルム或いは紙等のシート若しくは無端ベルトに蒸着したものが挙げられるが、低価格、加工し易さ、強度及び重量等の観点から、アルミニウム製円筒を用いた感光体基体が最も一般的である。特にアルミニウムは反応性が高く柔らかいという性質を有しており、アルミニウムの純度が高くなるとこの傾向が著しいが、加工し易さ及び感光層との接着性の観点から純度の高いアルミニウムが感光体基体の材料として広く用いられている。
【0004】
ところで、近時上記高純度のアルミニウム製円筒を用いた感光体基体の表面に耐食性のアルマイト層を形成し、かつ封孔処理を施したものが注目されている。
【0005】
上記アルマイト処理及び封孔処理を施した感光体基体は耐食性に優れている他、該感光体基体上に感光層を設けて感光体としたときアルマイト層がバリアー機能を有し、カブリや画像欠陥のない画像が得られる等の利点を有する。
【0006】
上記感光体基体は、アルミニウム製円筒を、例えば粗面加工、鏡面加工等の切削成型を行った後、更にアルマイト処理及び封孔処理等を施して得られ、これらの加工及び処理中に、該感光体基体表面に例えば切削油のミスト、空気中のダスト、切粉等が付着して汚染され、これが感光体を形成した場合の画像欠陥の原因なる。従って上記感光体基体の洗浄は良質の感光体を得るため極めて重要な問題である。即ち、上記感光体基体の洗浄が不十分な場合、塗布の際にハジキやシミ等が発生し、画像形成時に感光体上に、黒ポチ、ハーフトーン画像ムラ等が発生し、画像品質に悪影響を及ぼす。
【0007】
なお、上記感光体基体の表面を洗浄する場合は、基体材料であるアルミニウムの反応性と柔らかさを考慮して、従来、有機溶媒による洗浄が通例であった。
【0008】
上記有機溶媒による洗浄では、▲1▼必要に応じて加温された有機溶媒中に感光体基体を浸漬処理及び/又は超音波の作用下で浸漬処理する浸漬洗浄、▲2▼感光体基体を溶媒に浸漬中又は感光体基体に溶媒をシャワーリングしながらブラシ、スポンジ等により物理的にこする接触洗浄、▲3▼溶媒を高圧下でスリットより感光体基体表面に噴出するジェット洗浄及び、▲4▼溶媒蒸気中に感光体基体を挿入する蒸気洗浄が挙げられ、これらを単独で、又は組み合わせて洗浄が行われている。
【0009】
他方、上記有機溶媒を用いない、別の洗浄方法として、▲5▼基体を超音波の作用下で、純水、ノニオン系又はアニオン系界面活性剤溶液等で浸漬洗浄する方法が開発されている(例えば特開平5−61215号公報)。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記洗浄方法▲1▼〜▲4▼では、溶媒として例えば、メチレンクロライド、エチレンクロライド、1,1,1−トリクロルエタン、トリクロルエチレン、パークロルエチレン等の塩素系溶剤、フロン−112、フロン−113等のフッ素系溶剤、該フッ素系溶剤とメタノール、メチレンクロライド等の混合溶剤、ベンゼン、トルエン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、石油系炭化水素等及びそれ等の混合物が用いられ、これらの有機溶媒の多くは引火性、発火性、環境への悪影響、又は人体への有害性を有しているため、使用許容濃度を低く押さえる必要があり、このため洗浄能力が不足することが多い。
【0011】
なお、1,1,1−トリクロルエタン等のように洗浄能力が高く、かつ取り扱いが容易なものもあるが、地球温暖化やオゾン層破壊等を引き起こす物質の1つとされ、全世界でその削減が決定されているので、使用できないという問題がある。
【0012】
また、上記アルマイト処理及び封孔処理を施した感光体基体は表面に微細な凹凸が多く、これらの処理中に該感光体基体に付着した水溶性のゴミは上記▲1▼〜▲4▼の有機溶媒を用いた洗浄方法では十分に除去できないという問題がある。
【0013】
更にまた、上記洗浄方法▲5▼では、洗浄能力が不足し、特に上記アルマイト処理及び封孔処理を施した感光体基体は洗浄後、感光液を塗布して感光層を形成したとき、塗布液のハジキやシミを発生し、画像形成時、黒ポチ、濃度ムラ等の画像欠陥又は電位低下に基づくカブリを発生する。
【0014】
本発明は、上記実情に鑑みて提案されたものであり、その目的とするところは、封孔処理を施したアルマイト基体上に感光液を塗布したとき、塗布液のハジキやシミを発生せず、得られた感光体を用いて画像形成を行ったとき、黒ポチ、濃度ムラ等の画像欠陥又は電位低下に基づくカブリを発生することのない感光体基体の洗浄方法、該感光体基体の洗浄方法を用いた感光体の製造方法及び、該感光体の製造方法を用いて製造される感光体を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は以下の構成により達成される。
【0016】
1.アルマイト処理及び封孔処理され、下引き層を有する電子写真感光体基体の、洗剤液を用いて洗浄する洗浄方法において、該アルマイト処理及び封孔処理された後に洗浄を行い、かつ該洗剤液がノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤及び両性界面活性剤を含有し、かつpH値が9.5〜13.0であり、更に該洗剤液の濃度が0.1〜30重量%であることを特徴とする電子写真感光体基体の洗浄方法。
【0017】
2.前記洗剤液が無機ビルダー又は有機ビルダーを含有することを特徴とする前記1に記載の電子写真感光体基体の洗浄方法。
【0018】
3.アルミニウム製円筒を切削成型して電子写真感光体基体を得る工程、該電子写真感光体基体をアルマイト処理及び封孔処理する工程、洗剤液を用いて洗浄する工程、水洗乾燥する工程、並びに下引き液及び感光液を塗布乾燥する工程を有する電子写真感光体の製造方法において、該洗剤液がノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤及び両性界面活性剤を含有し、かつpH値が9.5〜13.0であり、更に該洗剤液の濃度が0.1〜30重量%であることを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
【0019】
4.前記洗剤液が無機ビルダー又は有機ビルダーを含有することを特徴とする前記3に記載の電子写真感光体の製造方法。
【0020】
5.アルマイト処理及び封孔処理された電子写真感光体基体を洗剤液を用いて洗浄した後、該基体上に下引き層及び感光層を設けてなる電子写真感光体において、該洗剤液がノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤及び両性界面活性剤を含有し、かつpH値が9.5〜13.0であり、更に該洗剤液の濃度が0.1〜30重量%であることを特徴とする電子写真感光体。
【0021】
6.前記洗剤液が無機ビルダー又は有機ビルダーを含有することを特徴とする前記5に記載の電子写真感光体。
【0022】
以下本発明の構成を詳細に説明する。
【0023】
本発明の感光体は、通常、高純度のアルミニウム製円筒を、例えばダイアモンドバイト、又は超硬鋼バイド等の切削機により切削成型して得た感光体基体をアルマイト処理及び封孔処理した後、本発明特有の洗剤液で洗浄し、水洗乾燥後、感光液を塗布して得られ、該洗剤液が、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤及び両性界面活性剤、更に必要により無機ビルダー又は有機ビルダーを含有し、かつpH値が9.5〜13.0のアルカリ性水溶液からなる点に特長が有る。
【0024】
〈感光体基体のアルマイト処理及び封孔処理〉
本発明の感光体に用いられる感光体基体は、高純度のアルミニウム製円筒を切削成型した後例えば硫酸又はシュウ酸等を電解液として陽極酸化して、その表面に耐食性のアルマイト層を形成する。上記アルマイト層は陽極酸化の際、表面に多くのピンホールが形成され、感光体として画像形成を行ったときの画像欠陥の原因となる。そこでアルマイト処理した感光体は更に封孔処理して上記ピンホールを封鎖するようにしている。上記封孔処理としては、例えば陽極酸化処理した基体を4〜5気圧の水蒸気で30〜60分間処理するとか、1〜15%の酢酸ニッケル水溶液で処理する方法等が有る。上記のようにして得られた感光体基体は耐食性及び感光体のバリアー機能を有する他、該感光体を例えばレーザービームを用いたデジタル方式の画像形成に用いたときモアレが防止される等の利点を有する。
【0025】
〈洗浄及び水洗工程〉
図1の(a)〜(f)は所定の直径に造られ、一定サイズに切断され、かつ切削等で表面加工された感光体基体をアルマイト処理及び封孔処理を行った後洗浄及び水洗を行う工程を説明する工程図であり、洗浄槽及び水洗槽を含めて3〜10槽程度である。図1の(a)〜(f)において、1−1〜1−3は後述する洗剤液を満たした洗浄槽であり、洗剤液のpH値は9.5〜13.0であり、9.5未満では洗浄能力が不足し13.0を超えると感光体基体の溶解を伴い、洗浄性能を発揮させる上からはこれ以上とする必要も無い。また洗剤液中の洗剤の濃度は、0.01〜50重量%とするのが好ましく、より好ましくは0.1〜30重量%である。洗剤液中の洗剤の濃度が0.01重量%未満では、洗剤液の洗浄能力が不足し、50重量%を越えると、洗浄後の水洗が厄介になり、すすぎ不良が出やすくなる。洗剤液の温度は10〜60℃とするのが好ましい。又洗浄槽内には必要に応じて超音波洗浄装置を装備してもよい。
【0026】
ここで、感光体基体面に切削時に付いた金属粉や油等の汚れは、洗浄槽1−1及び洗浄槽1−2において殆んど洗浄されるが、更に洗浄槽1−3を設けて完全を期すようにしている。上記洗浄槽の処理時間は通常1〜30分であり、洗浄中、感光体基体を回転及び/又は上下に揺動させながら洗浄してもよい。
【0027】
次に、図1(a)〜(f)において、2−1〜2−5は水洗槽であり、水洗水の温度は10〜60℃であり、必要により水洗槽内には超音波洗浄装置を装備していて、上記洗浄槽1−1〜1−3で洗浄された後、感光体基体表面に付着した洗剤等を水洗して電子写真性能に影響のある物質を全て除去するようにしている。
【0028】
《図1(b)の洗浄及び水洗工程》
以下図1の(b)を中心にしてアルマイト処理及び封孔処理された感光体基体の洗浄及び水洗工程を更に詳細に説明する。
【0029】
洗浄槽1−1及び1−2では、当初のpH値は好ましくは12〜12.5であり、洗浄が進むに従い当初のpH値が低下するので、適当なアルカリ剤或いは弱酸と強アルカリの塩類等により少なくともpH値が9.5以上、好ましくは10以上となるように補強する必要がある。
【0030】
図1の(b)において水洗槽2−1、2−2、2−3は、主に洗浄槽1−1、1−2にて用いた洗剤等を洗い落とす工程であり、水洗槽2−3に純水を注入し、これによりオーバーフローした水洗水を水洗槽2−2に注入し、更に水洗槽2−2をオーバーフローした液を水洗槽2−1に注入し、水洗槽2−1のオーバーフロー液は破棄する構成を採っている。
【0031】
ここにおいて用いる純水は固有抵抗値0.01〜18×106Ω・cmの純水であり、水洗槽2−3に注入される純水は当然抵抗値が高く、15×106Ω・cm程度のものが用いられる。
【0032】
水洗槽の温度については、水洗槽2−1、2−2が25〜30℃であり、水洗槽2−1、2−2には、超音波洗浄装置5が設置されている。水洗槽2−3槽は超音波洗浄装置は設置しなくてもよい。その代わり温度はかなり高い40〜60℃程度とするのが良い。処理時間は通常1〜30分で基体を回転させながら上下に揺動させるとよい。なお、洗浄のための超音波洗浄装置5は周波数25〜60kHz程度で用いられる。
【0033】
又、感光体基体6を洗浄槽1−1に浸漬した後、洗浄槽1−1、1−2及び水洗槽2−1、2−2、2−3間を搬送するための機構としては、3本爪による無段取替チャック機構及び3本爪による自動段取替パレット機構が好ましく用いられ、又洗浄槽1−2においては洗浄手段として液中、固定ブラシ4によるスクラブ洗浄を行ってもよい。更に水洗槽2−3には、水洗槽2−3より最終的に基体を取り出す時、付着している槽液を出来るだけ落とすため、エアーナイフ12が設置されているのが好ましい。上記水洗槽2−3を出た感光体基体6は、乾燥炉10にて30〜150℃程度のクリーンエアーにより3〜60分間乾燥され、洗浄工程を終える。これらの構成は図1の他の構成(a)、(c)〜(f)においてもほぼ同様である。
【0034】
〈洗剤液に含有する洗浄剤〉
本発明に用いられる洗剤液に含有される洗剤成分としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤及び両性界面活性剤であり、更に該洗剤成分の洗浄作用を補強するための洗浄剤助剤として、必要により無機ビルダー又は有機ビルダーが含有される。
【0035】
《ノニオン界面活性剤》
上記ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンエーテル類、ソルビタンアルキルエステル類等であり、例えばRO(C2H4O)nH等のアルキルポリオキシエチレンエーテル型、RO(C2H4O)m(C3H6O)nHの構造を有するポリオキシアルキレンブロックコポリマー型(プルロニック型、Rは炭素数4〜25の飽和、不飽和のアルキル基)が代表的なものである。これらのノニオン界面活性剤のHLBは5〜15であり、HLB7〜14が特に好ましい。
【0036】
《アニオン界面活性剤》
上記アニオン界面活性剤としては、高級アルコール硫酸エステル塩類、脂肪酸アミドスルホン酸塩類等であり、代表的なものとして、例えば炭素数8〜22の飽和、不飽和のアルキル基を有する直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムがある。
【0037】
《両性界面活性剤》
上記両性界面活性剤としては、イミダゾリン誘導体型、又は例えば下記構造の化合物(A)の如きN−アルキルジメチルカルボキシベタイン型、又は例えば下記構造の化合物(B)の如きN−アルキルジメチルスルホベタイン型、又は例えば下記構造の化合物(C)の如きN−アルキルアミノカルボン酸型等がある。
【0038】
【化1】
【0039】
式中、Rは炭素原子数8〜22の飽和又は不飽和のアルキル基を表す。
【0040】
なお、上記化合物(A)、(B)及び(C)の具体的な化合物例として、下記構造の化合物例(A−1)、(B−1)及び(C−1)が好ましく用いられる。
【0041】
【化2】
【0042】
なお本発明の洗浄方法に用いられる洗剤液では、該洗剤液中の洗剤成分(固形分)総体に対して、ノニオン界面活性剤を好ましくは1〜60重量%、より好ましくは10〜50重量%、アニオン界面活性剤を好ましくは1〜60重量%、より好ましくは2〜40重量%、両性界面活性剤を好ましくは1〜60重量%、より好ましくは1〜40重量%含有される。
【0043】
《無機ビルダー》
上記、無機ビルダーとしては、オルトケイ酸ソーダやメタケイ酸ソーダのケイ酸塩等がある。
【0044】
《有機ビルダー》
有機ビルダーとしては、D−グルコン酸モノナトリウム塩(C6H11O7Na)やエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)のアルカリ金属塩等がある。
【0045】
更に、多くの場合加えられているものとしてニトリロトリ酢酸トリナトリウム塩(NTA−Na塩、N(CH2COONa)3)等のキレート剤がある。
【0046】
《その他の添加剤》
その他の添加剤として、洗剤液安定性向上、洗浄性向上のためグルコン酸ナトリウム塩、クエン酸ナトリウム塩、p−エチルベンゼンスルホン酸ソーダ、或いはキシレンスルホン酸ソーダ塩等を加えても良い。
【0047】
上記のようにして洗浄された感光体基体を用いた感光体は、カブリ、黒ポチ等の画像欠陥の発生がなく、又洗浄廃液は環境汚染を生ぜず、無公害であるなどの利点を有する。
【0048】
ここで各洗浄槽及び水洗槽間にはそれぞれ循環経路とポンプが付設されており、その経路中にはフィルターを備え、洗剤液及び水洗水中の不溶解物を取り除くシステムにするのが望ましい。
【0049】
上記アルマイト処理及び封孔処理された感光体基体を洗浄、水洗、乾燥した後、感光体基体表面には公知の方法で感光層を形成する。例えばブレード塗布法、浸漬塗布法、リング方式塗布法、スプレー塗布法又は円形量規制型塗布法等によって、該感光体基体表面に電荷発生層、及び電荷輸送層からなる感光層を形成して、感光体を得る。
【0050】
なお、上記感光体基体と感光層との接着性改良、感光層の塗布性改良、感光体基体上の欠陥の被覆及び感光体基体から電荷発生層への電荷の注入を阻止する等のために下引き層を設けられることが多い。下引き層の材料としては、ポリアミド、共重合ナイロン、カゼイン、ポリビニルアルコール、セルロース、ゼラチン等の樹脂が知られている。これらを各種有機溶媒に溶解し、膜厚が0.01〜5μm程度になるように感光体基体上に塗布される。
【0051】
電荷発生層は、光照射により電荷を発生する電荷発生材料を主成分とし、必要に応じて公知の結合剤、可塑剤、増感剤を含有し、乾燥膜厚が1.0μm以下となるように感光体基体又は下引き層の上に塗布される。
【0052】
電荷発生材料としては、ペリレン系顔料、多環キノン系顔料、無金属フタロシアニン系顔料、金属フタロシアニン系顔料、スクエアリウム色素、アズレニウム色素、チアピリリウム色素及びカルバゾール骨格、スチリルスチルベン骨格、トリフェニルアミン骨格、ジベンゾチオフェン骨格、オキサジアゾール骨格、フルオレノン骨格、ビススチルベン骨格、ジスチリルオキサジアゾール骨格又はジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料等が挙げられる。
【0053】
電荷輸送層は、電荷発生材料が発生した電荷を受け入れ、これを輸送する能力を有する電荷輸送材料及び結着剤を含有し、必要に応じて公知のレベリング剤、可塑剤、増感剤等を含有し、乾燥膜厚5〜70μmとなるように電荷発生層の上に塗布される。
【0054】
電荷輸送材料としては、ポリ−N−ビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタメート及びその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒド縮合物及びその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリル)アントラセン、1,1−ビス(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、フェニルヒドラゾン類、ヒドラゾン誘導体等の電子供与性物質、或いはフルオレノン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、インデノチオフェン誘導体、フェナンスレンキノン誘導体、インデノピリジン誘導体、チオキサントン誘導体、フェナジンオキサイド誘導体、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、プロマニル、クロラニル、ベンゾキノン等の電子受容性物質等が挙げられる。
【0055】
電荷輸送層を構成する結着剤としては、電荷輸送材料と相溶性を有するものであれば良く、例えばポリカーボネート、ポリビニルブチラール、ポリアミド、ポリエステル、ポリケトン、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ホリビニルケトン、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられる。
【0056】
本発明の方法で製造された感光体は塗布時のハジキ、シミ等による画像への黒ポチの発生が殆んどなく、良品率が高い。更に、洗浄工程において、有機溶媒を使用しないので、有機溶媒の使用による環境汚染、人体への影響、引火性及び発火性による取り扱い上の危険がないなど優れた特性を有する。
【0057】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、これにより実施の態様が限定されるものではない。
【0058】
実施例1
〔感光体基体の調製〕
〈本発明用感光体基体1の調製〉
切削加工した後、アルマイト処理及び封孔処理した円筒状の感光体基体を以下のようにして洗浄処理した。洗浄は図1(b)の洗浄工程で行い、洗浄槽1−1に表1の洗剤液1を用い、水洗槽2−1、2−2、2−3に純水を用いた。洗浄槽1−1の液温は40〜45℃、水洗槽2−1、2−2、2−3の液温はそれぞれ25〜30℃であった。各槽への浸漬時間はそれぞれ2分間であった。洗浄後、基体を100℃で10分間乾燥した後放冷し、本発明用感光体基体1を得た。
【0059】
〈本発明用感光体基体2〜5の調製〉
洗剤液1に代えて表1の洗剤液2〜5を用いた他は感光体基体1と同様にして本発明用の感光体2〜5を得た。
【0060】
〈比較用感光体基体6〜8の調製〉
洗剤液1に代えて表1の洗剤液6〜8を用いた他は感光体基体1と同様にして比較用感光体基体6〜8を得た。
【0061】
なお上記洗剤液1〜8は表1に記載されるノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤、有機又は無機のビルダー及びその他の添加剤から成る洗剤成分を3重量%含有し、表1のpH値を有する洗剤液である。
【0062】
【表1】
【0063】
〔感光体の調製〕
〈本発明用感光体1〜5及び比較用感光体6〜8の調製〉
上記本発明用感光体基体1〜5及び比較用感光体基体6〜8に、何れも下記下引き層、電荷発生層及び電荷輸送層の各層を設けて、本発明用感光体1〜5及び比較用感光体6〜8を得た。
【0064】
なお、上記各層の塗布に当たっては、まず下引層を感光体基体上に塗布し、更に電荷発生層、電荷輸送層の順に積層した。各層の塗布液の構成は下記のようである。
【0065】
《下引き層》
からなる塗布液を用いて感光体基体上に浸漬塗布して乾燥膜厚0.4μmの下引き層を形成した。
【0066】
《電荷発生層》
τ型無金属フタロシアニン顔料 50g
シリコ−ン樹脂「KR−5240」(信越化学(株)社製) 50g
メチルエチルケトン 2400ml
上記組成物液をサンドミルを用いて2時間分散した。得られた塗布液を用いて前記下引き層上に浸漬塗布し、膜厚0.5μmの電荷発生層を形成した。
【0067】
《電荷輸送層》
からなる混合物を1,2−ジクロロエタン10000mlに溶解した塗布液を用いて、前記電荷発生層上に浸漬塗布して後、90℃で60分乾燥し、乾燥後の平均膜厚20μmの電荷輸送層を形成した。
【0068】
【化3】
【0069】
〔性能評価〕
〈実写画像テスト〉
電子複写機「Konica9028」(コニカ(株)社製)、光源として半導体レーザー使用、感光体として有機光導電体使用、反転現像法採用機に本発明用感光体1〜5及び比較用感光体6〜8を装着し、それぞれ5000コピーずつ実写した後の画像を、白紙部の黒ポチ、ハーフトーン部の濃度ムラの有無という観点から肉眼にて観察し、下記評価基準に基づき「○、×」方式で評価し、その結果を表3に示した。
【0070】
《黒ポチ評価基準》
表2の評価基準により「○、×」方式で5段階に評価した。
【0071】
なお表2では黒ポチA又は黒ポチBの少なくとも一方が表2に記載の個数存在する場合の評価基準を表している。
【0072】
【表2】
【0073】
《ハーフトーン部の濃度ムラ評価基準》
○:濃度ムラが全く認められない
△:濃度ムラが僅かに認められる
×:濃度ムラがはっきり認められる。
【0074】
〈電位安定性テスト〉
電子複写機「Konica9028」の現像器の代わりに電位計を設置し、低温低湿(10℃、20%RH)環境下においての上記本発明用感光体1〜5及び比較用感光体6〜8の初期帯電電位(V0ボルト)及び5000コピー後の未露光部帯電電位(VHボルト)を測定し、下記式により電位安定性(%)を求め、下記評価基準に基いて「○、×」方式で評価し、その結果を表3に示した。
【0075】
電位安定性(%)={(V0)−(VH)}/(VH)×100
《評価基準》
◎:7%未満で全く問題なし
○:7%以上10%未満で実用上は問題なし
△:10%以上15%未満で実用上問題がある
×:15%以上で明らかに実用上問題がある。
【0076】
【表3】
【0077】
表3から明らかなように、本発明の感光体1〜5は実写画像テスト、電位安定性テスト共に良好な特性を示すが、比較の感光体6〜8は実写画像テストでは黒ポチ、ハーフトーンの濃度ムラが多く、かつ電位安定性も悪く実用に適さないことがわかる。
【0078】
実施例2
〈本発明用感光体基体9〜13の調製〉
実施例1と同様にアルマイト処理及び封孔処理した5本の円筒状の感光体基体を用い、実施例1の洗剤液4と同様の洗剤成分を用いると共に、純水中の該洗剤成分の濃度(重量%)、及び洗剤液のpHを表4の如く5種類に変化した他は実施例1と同様にして本発明用感光体基体9〜13を得た。
【0079】
〈本発明用感光体9〜13の調製〉
上記のようにして得た本発明用感光体基体9〜13上に実施例1と同様の下引き層、電荷発生層及び電荷輸送層を塗布して本発明用の感光体9〜13を得た。
【0080】
〈性能評価〉
上記本発明用感光体9〜13について実施例1と同様にして実写画像テストを行い、白紙部の黒ポチの発生及びハーフトーン部の濃度ムラを実施例1と同様の評価基準に基づき評価し、その結果を表4に示した。
【0081】
【表4】
【0082】
表4から明らかなように本発明に属する感光体9〜13は実写画像テスト、電位安定性テスト共に良好な特性を有することが解る。
【0083】
【発明の効果】
実施例で実証した如く、本発明のアルマイト処理及び封孔処理済み感光体基体の洗浄方法、該感光体基体の洗浄方法を用いた感光体の製造方法及び、該感光体の製造方法を用いて製造される感光体によれば、該基体上に感光液を塗布したとき、塗布液のハジキやシミを発生せず、得られた感光体を用いて画像形成を行ったとき、黒ポチ、濃度ムラ等の画像欠陥又は電位低下に基づくカブリを発生することがない等、優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】洗浄及び水洗工程を説明する工程図。
【符号の説明】
1−1,1−2,1−3 洗浄槽
2−1,2−2,2−3,2−4,2−5 水洗槽
4 固定ブラシ
5 超音波洗浄装置
6 感光体基体
10 乾燥炉
12 エアーナイフ
Claims (6)
- アルマイト処理及び封孔処理され、下引き層を有する電子写真感光体基体の、洗剤液を用いて洗浄する洗浄方法において、該アルマイト処理及び封孔処理された後に洗浄を行い、かつ該洗剤液がノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤及び両性界面活性剤を含有し、かつpH値が9.5〜13.0であり、更に該洗剤液の濃度が0.1〜30重量%であることを特徴とする電子写真感光体基体の洗浄方法。
- 前記洗剤液が無機ビルダー又は有機ビルダーを含有することを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体基体の洗浄方法。
- アルミニウム製円筒を切削成型して電子写真感光体基体を得る工程、該電子写真感光体をアルマイト処理及び封孔処理する工程、洗剤液を用いて洗浄する工程、水洗乾燥する工程、並びに下引き液及び感光液を塗布乾燥する工程を有する電子写真感光体の製造方法において、該洗剤液がノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤及び両性界面活性剤を含有し、かつpH値が9.5〜13.0であり、更に該洗剤液の濃度が0.1〜30重量%であることを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
- 前記洗剤液が無機ビルダー又は有機ビルダーを含有することを特徴とする請求項3に記載の電子写真感光体の製造方法。
- アルマイト処理及び封孔処理された電子写真感光体基体を洗剤液を用いて洗浄した後、該基体上に下引き層及び感光層を設けてなる電子写真感光体において、該洗剤液がノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤及び両性界面活性剤を含有し、かつpH値が9.5〜13.0であり、更に該洗剤液の濃度が0.1〜30重量%であることを特徴とする電子写真感光体。
- 前記洗剤液が無機ビルダー又は有機ビルダーを含有することを特徴とする請求項5に記載の電子写真感光体。
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