以下、本発明の望ましい実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は、色々な他の形態に変形され、本発明の範囲が後述する実施形態により限定されるものと解釈されてはならない。本発明の実施形態は、当業者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
図1は、本発明の望ましい一実施形態による窒素酸化物ガスセンサーの組立体を示す概略的な断面図である。
図1を参照すれば、支持ホルダー4に窒素酸化物ガスセンサー1が固定されており、この支持ホルダー4は、ケーシング5と結合され、前記ケーシング5の前端には、キャップ2が結合されている。支持ホルダー4、ケーシング5及びキャップ2は一体に備えられる。そして、前記ケーシング5とキャップ2とには、複数の通気孔3が形成され、この通気孔3を通じてケーシング5の内部空間6に自動車の排気ガスのような、センサー組立体が設置された位置のガスが流入されて、窒素酸化物ガスセンサー1がそのガス中の窒素酸化物ガスの濃度を測定する。
図2は、本発明の望ましい一実施形態による窒素酸化物ガスセンサーを示す概略図である。
図2を参照すれば、本発明の望ましい一実施形態による窒素酸化物ガスセンサーは、酸素イオン伝導性の第1固体電解質60、この第1固体電解質60に接する第1膜10及び第2膜20、電源70及び測定部73を備える。
酸素イオン伝導性の第1固体電解質60は、高温で酸素イオンの伝導が可能なものであって、安定化ジルコニア、CeO2またはThO2で形成される。前記安定化ジルコニアとしては、特にYSZ(Yttria−stabilized
Zirconia:イットリア安定化ジルコニア)が使われる。
前記第1固体電解質60の第1領域61には、第1膜10が接し、第2領域62には、第2膜20が接する。
前記第1膜10及び第2膜20は、それらに電源が印加された時に、窒素酸化物と酸素とに対して反応性を有する金属酸化物で形成する。
本発明の望ましい一実施形態によれば、前記第1膜10及び第2膜20は、同一または相異なるp型半導体金属酸化物で形成される。これについての詳細な説明は後述する。
図1において、第1領域61と第2領域62とは、第1固体電解質60において互いに対向した領域であるが、本発明は、必ずしもこれに限定されるものではなく、第1固体電解質60の同一平面上の他の領域に位置してもよい。ただし、前記第1領域61と第2領域62とは、互いに重ならないようにすることが望ましい。
前記第1膜10と第2膜20とは、電源70の第1ノード71及び第2ノード72にそれぞれ電気的に連結されて、一定した電流を印加する。この時、第1膜10上には、第1導電膜14が形成され、第1導電膜14が第1ノード71に電気的に連結される。そして、第2膜20上にも、第2導電膜24が形成され、第2導電膜24が第2ノード72に電気的に連結される。前記第1導電膜14及び第2導電膜24は、電気伝導性の金属で形成することが望ましく、さらに望ましくは、腐食環境に耐えるように貴金属で形成する。貴金属としては、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、パラジウム(Pd)及びそれらの合金から選択された少なくとも一つが適用可能であるが、望ましくは、金や白金が適用可能である。
前記のような第1導電膜14及び第2導電膜24は、図2に示すように、第1固体電解質60上に薄膜状にパターニングされて、配線の機能まで兼ねるが、本発明は、必ずしもこれに限定されるものではなく、図示していないが、別途の配線を前記第1導電膜14及び第2導電膜24を覆うようにさらに形成してもよい。この時、前記配線を貴金属に限定する必要はなく、電気伝導度が良好であって、配線として使用可能な金属であれば、いずれも適用可能である。また、これは、後述する本発明のあらゆる実施形態でも同様に適用可能である。
一方、本発明において、前記第1膜10は、正の電極として、第2膜20は、負の電極として使用できる。
正の電極である第1膜10と第1固体電解質60との界面には、酸素イオンが酸素ガスに変換するアノード反応が起こり、同時にNOガスが存在する場合、下記反応式1に表すように、NOによるアノード反応が起こり、一定した電流を流すための電圧の大きさを減少させる。この時、第1膜10には、アノード分極が加えられたので、NOに対する反応は増加し、NO2に対する反応は減少する。
負の電極である第2膜20と第1固体電解質60との界面には、酸素ガスが酸素イオンに変換するカソード反応が起こり、同時にNO2ガスが存在する場合、下記反応式2に表すように、NO2によるカソード反応が起こり、一定した電流を流すための電圧の大きさを減少させる。この時、第2膜20には、カソード分極が加えられたので、NO2に対する反応は増加し、NOに対する反応は減少する。
この時、前記第1ノード71及び第2ノード72には、測定部73が連結されて、第1ノード71と第2ノード72との電位差を測定する。
このように、本発明によれば、NOとNO2との混合ガスが存在する場合、二つのガスのいずれに対する測定精度も向上させる。
前記のような構造で、高温状態で窒素酸化物混合ガスに第1膜10及び第2膜20が露出されれば、窒素酸化物ガス内の二酸化窒素及び一酸化窒素の濃度によって電位差が変化しつつ、二酸化窒素と一酸化窒素との濃度和を測定できる。
一方、前記窒素酸化物ガスセンサーの場合、前記第1膜10及び/または第2膜20は、温度に非常に敏感な特性を有する。
したがって、図2による本発明の望ましい一実施形態では、第1膜10に対向して第1温度調節ユニット81を設置する。前記第1温度調節ユニット81は、第1膜10と所定の間隔、離隔されて設置され、図示していないが、前記第1温度調節ユニット81と第1膜10との間には、絶縁体で形成されたスペーサがさらに備えられる。
かかる温度調節ユニットは、第1膜10にのみ対向して設置される必要はなく、図3に示すように、第2膜20に対向して第2温度調節ユニット82をさらに設置できる。前記第2温度調節ユニット82も、第2膜20と所定の間隔、離隔されて設置され、図示していないが、前記第2温度調節ユニット82と第2膜20との間には、絶縁体で形成されたスペーサがさらに備えられる。
前記第1温度調節ユニット81及び第2温度調節ユニット82は、それぞれ前記第1膜10及び第2膜20に対向している限り、前記スペーサ(図示せず)を配置する以外にいかなる構造でもとりうる。例えば、図示していないが、前記窒素酸化物ガスセンサーを支持する支持ホルダーなどに、前記第1膜10及び第2膜20に対向するように温度調節ユニットを設置することもある。
本発明の一実施形態において、前記第1温度調節ユニット81は、第1絶縁体811に第1抵抗体812が埋め込まれた構造を有する。そして、前記第2温度調節ユニット82も、第2絶縁体821内に第2抵抗体822が埋め込まれた構造を有する。
前記第1抵抗体812及び第2抵抗体822は、薄膜の導電性金属膜パターンに形成することが望ましい。電気が加えられることで、ヒーターの役割を果たす。
図3による実施形態において、第1抵抗体812及び第2抵抗体822は、互いに並列に連結することが望ましく、同じ電源に連結することが望ましい。したがって、前記第1抵抗体812及び第2抵抗体822により、前記第1膜10及び第2膜20を同じ温度に調節できる。このために、前記第1抵抗体812及び第2抵抗体822は、少なくとも第1膜10及び第2膜20に対向して配置することが望ましい。
かかる詳細な構造は、前記第1抵抗体812及び第2抵抗体822により、第1膜10及び第2膜20の温度を同一に調節できるものであれば、いかなる構造であってもよい。
前記第1抵抗体812及び/または第2抵抗体822による温度の調節は、それらの第1抵抗体812及び第2抵抗体822に電源を印加したり、印加しない動作を反復することによって実現される。
このように、本発明の実施形態の場合、第1温度調節ユニット81及び/または第2温度調節ユニット82により、第1膜10及び第2膜20の温度を同一に維持することで、温度による信号誤差を減らすことができる。
前記のような構造の窒素酸化物ガスセンサーの場合、NOとNO2との混合ガスには、センシングに誤差を起こす他のガスがさらに混合されて流入される。かかる窒素酸化物ガスではない他のガスは、センシング誤差を起こし、これによって、センサーの正確度を低下させる要因となる。
これを解決するために、窒素酸化物ガスの流入経路に酸化触媒を含むフィルタ部材をさらに配置させる。
例えば、図1に示した実施形態の場合、窒素酸化物ガスがキャップ2及びケーシング5の通気孔3を通じて流入されるので、前記キャップ2及びケーシング5に酸化触媒物質を含むペーストを塗布して、窒素酸化物ガスがこれらのキャップ2及びケーシング5を通過する時に、前記酸化触媒物質により酸化されるようにする。また、前記キャップ2及び/またはケーシング5をセラミック材で形成する場合、このセラミック担体に酸化触媒物質を浸漬させて形成できる。
前記のような酸化触媒物質は、貴金属が望ましいが、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、パラジウム(Pd)及びそれらの合金から選択された少なくとも一つが適用可能である。それらの貴金属粒子を溶液に含めて、この溶液に前記キャップ2及びケーシング5を浸漬させて、貴金属粒子をキャップ2及びケーシング5の表面に被膜するか、または別途のペーストに含めて、このペーストをキャップ2及びケーシング5の表面に塗布することによって被膜化できる。
このように、酸化触媒物質により窒素酸化物ガスのセンシングに妨害になるガス成分を酸化させることで、窒素酸化物ガスに対する測定精度をさらに向上させる。
図4は、本発明の望ましい他の実施形態による窒素酸化物ガスセンサーを示すものであって、図3による実施形態において、第1膜10及び第2膜20を取り囲むように構造体84を形成し、この構造体84に酸化触媒物質を含めるものである。
前記構造体84は、内部に空間841を形成し、窒素酸化物ガスが拡散して、前記空間841に浸透するように多孔性の材質で形成される。このために、前記構造体84をアルミナ材質で形成し、その内面を前述したような方法で酸化触媒物質で被膜するか、またはアルミナ材質内に酸化触媒物質を含めて製作できる。
前記構造体84の構造は、必ずしもこれに限定されるものではなく、窒素酸化物ガスが前記空間841に浸透するように、拡散領域となる微細通孔842を形成してもよい。
図5は、本発明の望ましいさらに他の実施形態による窒素酸化物ガスセンサーを示すものである。
図5による実施形態の場合、第1膜10に対向して第1温度調節ユニット81を、第2膜20に対向して第2温度調節ユニット82を設置し、該第1温度調節ユニット81及び第2温度調節ユニット82により形成された第1膜10と第2膜20との空間の前面に酸化触媒物質を含むペーストを満たして、フィルタ部材83を形成したところを示すものである。
前記フィルタ部材83により窒素酸化物ガスのセンシングに妨害になる他のガスを除去でき、これによって、センシング正確度をさらに向上させる。前記フィルタ部材83は、窒素酸化物ガスを拡散浸透させるように多孔性のアルミナ材質で形成できる。前記フィルタ部材83は、第1膜10と第2膜20との間の前面に沿って側面空間まで埋め込む形態に形成され、このフィルタ部材83には、別途の通気孔を形成することもできる。
一方、図示していないが、前記フィルタ部材83を別途に形成せず、第1温度調節ユニット81及び第2温度調節ユニット82の前記第1膜10及び第2膜20に対向した部分である第1絶縁体811及び第2絶縁体821に、前述した酸化触媒物質を含むか、または第1絶縁体811及び第2絶縁体821の表面に酸化触媒物質の被膜を形成してもよい。また、第1膜10及び第2膜20の表面に薄く酸化触媒物質を含むペーストを塗布して具現することもできる。その具体的な方法は、前述した通りである。
図6は、本発明の望ましいさらに他の実施形態を示すものである。
これは、図3による実施形態において、酸素セル90をさらに設置したものである。第1温度調節ユニット81と第1膜10との間に第1酸素セル91を配置し、第2温度調節ユニット82と第2膜20との間に第2酸素セル92を配置する。
前記第1酸素セル91は、酸素イオン伝導性の第2固体電解質911の上下両面に、第1上部電極912及び第2下部電極913を形成した後、それを覆うように第3導電膜914及び第4導電膜915を形成したものである。前記第2酸素セル92は、酸素イオン伝導性の第3固体電解質921の上下両面に、第2上部電極922及び第2下部電極923を形成した後、それを覆うように第5導電膜924及び第6導電膜925を形成したものである。前記第1上部電極912、第2下部電極913、第2上部電極922及び第2下部電極923は、貴金属で形成されることが望ましく、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、パラジウム(Pd)及びそれらの合金から選択された少なくとも一つが適用可能である。そして、第3導電膜914、第4導電膜915、第5導電膜924及び第6導電膜925も、貴金属で形成されることが望ましく、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、パラジウム(Pd)及びそれらの合金から選択された少なくとも一つが適用可能である。
したがって、それらの第1上部電極912と第3導電膜914、第2下部電極913と第4導電膜915、第2上部電極922と第5導電膜924、第2下部電極923と第6導電膜925とは、それぞれ一体に形成される。
前記のような第1酸素セル91及び第2酸素セル92は、酸素ポンピングセルまたは限界電流方式の酸素測定セルとなる。
限界電流方式の酸素測定セルは、固体電解質の上下両面の電極のうち一つの電極から他の電極に電圧を次第に増加させつつ、電流が特定値以上増加しない領域を確認して酸素濃度を求める方式である。
酸素濃度が変化する場合、各第1酸素セル91及び第2酸素セル92がこれを測定して変化した値に該当する値だけ、第1膜10及び第2膜20による窒素酸化物ガスのセンシング誤差を補正する。
酸素ポンピングセルは、固体電解質の上下両面の電極のうち一つの電極がカソード反応を行い、他の電極がアノード反応を行う。この時、カソード反応の場合、前記反応式2によって、酸素ガスを酸素イオンに変換させて固体電解質に提供し、アノード反応の場合、前記反応式1によって、前記固体電解質の酸素イオンと反応じて酸素ガスを生成する。
この時、上下電極の両端の電位差を測定することで、酸素の濃度をセンシングでき、前述したように、固体電解質の一つの電極での酸素ガスの生成を通じて酸素濃度を調整できる。したがって、特定の空間での酸素濃度が変化しても、第1膜10及び第2膜20による窒素酸化物ガスのセンシング精度が低下しないようにする。
図6による実施形態において、第1温度調節ユニット81及び第2温度調節ユニット82は、前記第1酸素セル91と第2酸素セル92との外側に位置したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、第1温度調節ユニット81と第2温度調節ユニット82とが、前記第1酸素セル91及び第2酸素セル92と第1膜10及び第2膜20との間に介在されてもよい。
図7は、本発明の望ましいさらに他の実施形態を示すものであって、図2に示した実施形態において、第1温度調節ユニット81の外側に、酸素セル90として第3酸素セル93がさらに位置したものである。
この第3酸素セル93は、内部に空間922を有する酸素イオン伝導性の第4固体電解質931を備え、第3上部電極933は、空間922の外側に、第3下部電極934は、空間922の内側に位置する。第3上部電極933は、第7導電膜935に連結され、第3下部電極934は、第8導電膜936に連結される。
前記第3上部電極933及び第3下部電極934は、貴金属で形成されることが望ましく、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、パラジウム(Pd)及びそれらの合金から選択された少なくとも一つが適用可能である。そして、第7導電膜935及び第8導電膜936も、貴金属で形成されることが望ましく、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、パラジウム(Pd)及びそれらの合金から選択された少なくとも一つが適用可能である。したがって、それらの第3上部電極933と第7導電膜935、第3下部電極934と第8導電膜936とは、それぞれ一体に形成される。
前記のような第3酸素セル93は、起電力方式の酸素測定セルとなる。
これは、前記空間932に外部空気を流入させ、これによって、前記空間932での外部空気の酸素ガス分圧に比べた空間932の外側の窒素酸化物ガスに露出された領域での酸素ガス分圧を測定して、これによって発生する起電力を測定して、空間932の外側での酸素濃度をセンシングするものである。
この時、酸素濃度が変化する場合、第3酸素セル93がそれを測定して変化した値に該当する値だけ、第1膜10及び第2膜20による窒素酸化物ガスのセンシング誤差を補正する。
図8による実施形態は、図3に示した実施形態に、前述した図7による第3酸素セル93を適用したものである。詳細な説明は省略する。
図9による実施形態は、図8による実施形態において、第3酸素セル93と第1温度調節ユニット81との位置を互いに置き換えたものである。このように、酸素セルと温度調節ユニットとの位置は互いに可変である。
図10による実施形態は、図8による実施形態において、第1温度調節ユニット81及び第2温度調節ユニット82の代わりに、第1固体電解質60内に埋め込まれた第3温度調節ユニット83を設置した例を示す。第3温度調節ユニット83も、第3絶縁体831内に第3抵抗体832が埋め込まれたものであって、その効果は、図8による実施形態と同一である。
図11は、本発明によるさらに他の実施形態を示すものであって、第1固体電解質60に第3温度調節ユニット83が埋め込まれた状態で、第1領域61及び第2領域62が第1固体電解質60の同一平面に位置したものである。
この実施形態は、第1領域61上の第1膜10と、第2領域62上の第2膜20とが同一平面上に存在する。その他の作用は、前述した通りであるので、詳細な説明は省略する。
一方、図12による実施形態において、第1膜10及び第2膜20上に第4酸素セル94をさらに配置させる。この時、第4酸素セル94は、酸素イオン伝導性の第5固体電解質941、その上面の第4上部電極842及び下面の第4下部電極843が備えられている。第4上部電極943は、第9導電膜944に連結され、第4下部電極934は、第10導電膜945に連結される。前記第4上部電極942及び第4下部電極943は、貴金属で形成されることが望ましく、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、パラジウム(Pd)及びそれらの合金から選択された少なくとも一つが適用可能である。そして、第9導電膜944及び第10導電膜945も、貴金属で形成されることが望ましく、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、パラジウム(Pd)及びそれらの合金から選択された少なくとも一つが適用可能である。したがって、それらの第4上部電極942と第9導電膜944、第4下部電極943と第10導電膜945とは、それぞれ一体に形成される。
一方、前記第1固体電解質60と第4固体電解質941とのエッジには、第1スペーサ95及び第2スペーサ96が配置されて、前記第1固体電解質60と第4固体電解質941との間に空間952を形成する。そして、第1スペーサ95には、ガスが拡散して空間952内に流入されるように、拡散領域である通孔951が設置されることが望ましく、第1スペーサ95の前記通孔951の周囲には、前述した酸化触媒物質をさらに形成できる。これによって、前記空間952内に流入されるガス中の妨害ガスが低減できる。
前記第4酸素セル94は、前述した酸素ポンピングセルとなるが、必ずしもこれに限定されるものではなく、酸素測定セルとなってもよい。
図13による実施形態は、図12による実施形態において、第1固体電解質60と第4固体電解質941との間に、前述した第1スペーサ95の代わりに空間を区画できる第3スペーサ97及び第4スペーサ98を配置したものである。これによって、第3スペーサ97と第4スペーサ98との間に第1空間972が、第4スペーサ98と第2スペーサ96との間に第2空間982が備えられる。
第4酸素セル94、特に第4下部電極943は、第1空間972に配置し、第1膜10及び第2膜20は、第2空間982に配置する。第3スペーサ97には、ガスが拡散して第1空間972内に流入されるように、拡散領域である第1通孔971が設置されることが望ましく、第4スペーサ98には、ガスが拡散して第2空間982内に流入されるように、拡散領域である第2通孔981が設置されることが望ましい。前記第1通孔971及び第2通孔981の周囲には、前述した酸化触媒物質をさらに形成して、流入ガス中の妨害ガスを低減できる。
一方、前述した実施形態の窒素酸化物ガスセンサーの第1固体電解質60に形成される電極構造は、前記実施形態の構造に限定されるものではなく、多様に変形可能である。
図14は、その一実施形態を示すものである。図14に示した実施形態は、図2による実施形態のように、第1酸化物電極11と第2酸化物電極21とを固体電解質60に形成した後、この固体電解質60上に、第1酸化物電極11及び第2酸化物電極21の少なくとも一部を覆うように、第1導電膜14及び第2導電膜24を薄膜状に形成したものである。
この時、前記第1酸化物電極11は、p型半導体金属酸化物で形成され、例えば、CuO,NiO,CoO,Cr2O3,Cu2O,MoO2,Ag2O,Bi2O3,Pr2O3,MnO及びLaCoO3からなる群から選択された少なくとも一つ以上の物質、またはそれらの物質を少なくとも二つ以上混合した混合物、またはそれらの物質のうち少なくとも一つと、前記酸素イオン伝導性の固体電解質物質とを混合した混合物を含む。本発明の望ましい一実施形態において、前記第1酸化物電極11は、かかるp型半導体金属酸化物のうちNiOを使用することが望ましい。前記第2膜20も、p型半導体金属酸化物で形成され、例えば、CuO,NiO,CoO,Cr2O3,Cu2O,MoO2,Ag2O,Bi2O3,Pr2O3,MnO及びLaCoO3からなる群から選択された少なくとも一つ以上の物質、またはそれらの物質を少なくとも二つ以上混合した混合物、またはそれらの物質のうち少なくとも一つと、前記酸素イオン伝導性の固体電解質物質とを混合した混合物を含む。本発明の望ましい一実施形態によれば、前記第2酸化物電極21は、前記第1酸化物電極11とは異なるp型半導体金属酸化物で形成でき、CuOまたはLaCoO3で形成できる。
一方、前記のように、第1酸化物電極11と第2酸化物電極21とがp型半導体金属酸化物で形成される場合には、センサーの測定不安定性が引き起こされる。これは、第1酸化物電極11と第2酸化物電極21とがいずれもp型半導体金属酸化物を使用するため、電子の濃度より正孔の濃度が高くなり、これによって、電子の不足によりガス反応速度が次第に遅くなって、一定した電流のための電圧が経時的に上昇するためであると考えられる。かかる問題点を解決するために、感知物質であるp型半導体金属酸化物の電子濃度を高めねばならないが、本発明では、第1膜10及び第2膜20のうち少なくとも一つを、p型半導体金属酸化物とn型半導体金属酸化物との固溶体、もしくはp型半導体金属酸化物とn型半導体金属酸化物との混合物として製作するか、または第1膜10及び第2膜20のうち少なくとも一つと第1固体電解質60との間に、n型半導体金属酸化物が含まれたバッファ膜を介在させた。この時のn型半導体金属酸化物としては、ZnO,MgO,Al2O3,SiO2,V2O5,Fe2O3,SrO,BaO,TiO2,BaTiO3,CeO2,Nb2O5,Ta2O5,Ga2O3及びWO3からなる群から選択される少なくとも一つの金属酸化物、またはそれらの混合物を含む。本発明の望ましい一実施形態によれば、前記n型半導体金属酸化物としては、ZnOを使用する。
したがって、図14による実施形態の場合、第1酸化物電極11をp型半導体金属酸化物とn型半導体金属酸化物とを混合させて製作するか、またはp型半導体金属酸化物とn型半導体金属酸化物とを固溶体化して製作する。これにより、第1膜10の長期安定性を確保できる。これは、第1膜10だけでなく、第2膜20にも同一に適用可能なものであって、第2膜20にのみn型半導体金属酸化物を混合または固溶体化させるか、または第1膜10と第2膜20とにいずれもn型半導体金属酸化物を混合または固溶体化させる。この時、前記p型半導体金属酸化物を主にして混合または固溶体化してもよく、前記n型半導体金属酸化物を主にして混合または固溶体化してもよい。
さらに他の例として、図15に示すように、p型半導体金属酸化物で形成された第1酸化物電極11と第1固体電解質60との間に、第1バッファ膜13をさらに介在させた積層体の形態に第1膜10を製作できる。この時、第1バッファ膜13に使われるn型半導体金属酸化物としては、前述したように、ZnO,MgO,Al2O3,SiO2,V2O5,Fe2O3,SrO,BaO,TiO2,BaTiO3,CeO2,Nb2O5,Ta2O5,Ga2O3及びWO3からなる群から選択される少なくとも一つの金属酸化物、またはそれらの混合物を含む。本発明の望ましい一実施形態によれば、前記n型半導体金属酸化物としては、ZnOを使用する。
前記第1バッファ膜13については、p型半導体金属酸化物とn型半導体金属酸化物との固溶体を使用するか、またはp型半導体金属酸化物とn型半導体金属酸化物との混合物を使用できる。例えば、p型半導体金属酸化物で形成された第1酸化物電極11としてNiOを使用し、ZnOをNiOに固溶させたNiO−ZnO固溶体を第1バッファ膜13として、第1膜10を構成できる。この場合、前記第1バッファ膜13は、第1酸化物電極11の第1固体電解質60との機械的接合特性をさらに向上させる。
このように、第1バッファ膜13をp型半導体金属酸化物で形成された第1酸化物電極11と第1固体電解質60との間に介在させることで、前述した実施形態のように、センサーの測定不安定性を防止し、第1膜10の劣化を遅らせ、これによって、長期安定性を確保できる。
図15による実施形態では、前記第1膜10のみをp型半導体金属酸化物で形成された第1酸化物電極11と第1バッファ膜13との積層体で備えられたものと図示したが、本発明は、必ずしもこれに限定されるものではなく、図示していないが、第2膜20も、かかる積層体で備えられることはいうまでもない。
一方、前記第1導電膜14及び第2導電膜24は、導電性素材で薄膜状にパターニングでき、第1膜10及び第2膜20の配線の機能を兼ねる。したがって、前記第1導電膜14及び第2導電膜24は、腐食環境に耐えるように貴金属、例えば、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、パラジウム(Pd)及びそれらの合金から選択された少なくとも一つで形成され、望ましくは、白金ペーストを塗布してパターニングできる。
この場合、前記第1導電膜14のうち、第1膜10を覆う部分は、図14及び図15に示すように、第1膜10上の第1電極の機能を担い、第1導電膜14のうち、第1固体電解質60の第3領域63に接触して通過する部分は、第1膜10と並列に連結された電極の機能を担える。同様に、前記第2導電膜24のうち、第2膜20を覆う部分は、第2膜20上の第2電極の機能を担い、第2導電膜24のうち、第1固体電解質60の第4領域64に接触して通過する部分は、第2膜20と並列に連結された電極の機能を担える。
前記のような第1導電膜14の第3領域63に接触して通過する部分、及び第2導電膜24の第4領域64に接触して通過する部分は、強制的な電流の印加により電極に発生する過剰電荷が、第1膜10及び第2膜20と固体電解質との界面に発生するのを、貴金属電極での酸素置換反応により通過させることで、センサー信号の安定性を保証する。
図16は、本発明の望ましいさらに他の実施形態を示すものである。図16に示した実施形態は、第1酸化物電極11ないし第3酸化物電極31をそれぞれ第1固体電解質60の第1領域61ないし第3領域63に形成した後、第1酸化物電極11と第3酸化物電極31を並列に連結したものである。そして、第1固体電解質60上に、第1酸化物電極11ないし第3酸化物電極31の少なくとも一部を覆うように、第1導電膜14及び第2導電膜24を薄膜状に形成したものである。前記第1導電膜14は、第1酸化物電極11及び第3酸化物電極31をいずれも通過するようにパターニングする。
それらの第1導電膜14及び第2導電膜24は、導電性素材で薄膜状にパターニングでき、第1酸化物電極11ないし第3酸化物電極31の配線の機能を兼ねる。
したがって、前記第1導電膜14及び第2導電膜24は、腐食環境に耐えるように、貴金属、例えば、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、パラジウム(Pd)及びそれらの合金から選択された少なくとも一つで形成され、望ましくは、白金ペーストを塗布してパターニングできる。
本発明は、このように、第1膜10と第3膜30とが並列に連結されており、測定が進められるにつれて、測定誤差を減らし、長期安定性を向上させる。これは、第1膜10と第3膜30とが並列に連結されることで、測定用電極となる第1膜10と第1固体電解質60との界面に発生及び/または蓄積される過剰電荷を、第3膜30での酸素置換反応により第3膜30に分散させるためであると見られるが、必ずしもかかる理由に起因するものに限定されず、その他の複合的または明らかにされていない理由により可能になるものと見られる。
一方、前記第1導電膜14のうち、第1固体電解質60の第5領域65を覆う部分は、前述したように、第1膜10及び第3膜30と並列に連結された電極の機能を担いい、前記第2導電膜24のうち、第1固体電解質60の第4領域64を覆う部分は、第2膜20と並列に連結された電極の機能を担う。
図16による実施形態の場合にも、前述した図14による実施形態のように、第1酸化物電極11ないし第3酸化物電極31のうち少なくとも一つを、p型半導体金属酸化物とn型半導体金属酸化物との固溶体を使用するか、またはp型半導体金属酸化物とn型半導体金属酸化物との混合物を使用して形成できる。
図17による実施形態は、図16による実施形態において、第1酸化物電極11及び第3酸化物電極31を、第1バッファ膜13及び第3バッファ膜33が備えられた構造としたものである。これについての詳細な説明は、前述した通りであるので、省略する。
前述した酸化物電極の物質及びバッファ膜についての事項は、図11ないし図13の同一平面上に第1膜10及び第2膜20が形成された構造にも適用できることはいうまでもない。
そして、図11ないし図13の実施形態は、図18に示すように、第1固体電解質60の第3領域63に、第1膜10と並列に連結された第3膜30をさらに備えた構造にも適用できる。
前述したような本発明は、家庭用、自動車用及び産業用の窒素酸化物ガスセンサー及び窒素酸化物処理装置に使われる。