以下に、本発明に係る油圧制御装置の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
[第1実施形態]
図1〜3を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る油圧制御装置1を搭載する車両2の構成を示す概略図であり、図2は、図1に示す油圧制御装置1の概略構成を示す図であり、図3は、電動ポンプ33駆動時の油圧経路34内の油圧の推移を示す図である。
まず、図1を参照して、本実施形態に係る油圧制御装置1を搭載する車両2の構成について説明する。図1に示すように、この車両2は、走行時における動力源としてのエンジン3と、駆動輪4と、動力伝達装置5と、油圧制御装置1と、制御装置としてのECU7とを備える。
エンジン3は、車両2を走行させる走行用駆動源(原動機)であり、燃料を消費して車両2の駆動輪4に作用させる動力を発生させる。エンジン3は、燃料の燃焼に伴って機関出力軸であるクランクシャフト8に機械的な動力(エンジントルク)を発生させ、この機械的動力をクランクシャフト8から駆動輪4に向けて出力可能である。
動力伝達装置5は、エンジン3から駆動輪4へ動力を伝達するものである。動力伝達装置5は、エンジン3から駆動輪4への動力の伝達経路中に設けられ、液状媒体としてのオイルの圧力(油圧)によって作動する。
より詳細には、動力伝達装置5は、トルクコンバータ9、前後進切替機構10、無段変速機構11、減速機構12、デファレンシャルギヤ13等を含んで構成される。動力伝達装置5は、エンジン3のクランクシャフト8と無段変速機構11のインプットシャフト14とがトルクコンバータ9、前後進切替機構10等を介して接続され、無段変速機構11のアウトプットシャフト15が減速機構12、デファレンシャルギヤ13、駆動軸16等を介して駆動輪4に接続される。
トルクコンバータ9は、エンジン3と前後進切替機構10との間に配置され、エンジン3から伝達された動力のトルクを増幅させて(又は維持して)、前後進切替機構10に伝達することができる。トルクコンバータ9は、回転自在に対向配置されたポンプインペラ9a及びタービンランナ9bを備え、フロントカバー9cを介してポンプインペラ9aをクランクシャフト8と一体回転可能に結合し、タービンランナ9bを前後進切替機構10に連結して構成されている。そして、これらポンプインペラ9a及びタービンランナ9bの回転に伴って、ポンプインペラ9aとタービンランナ9bとの間に介在された作動油などの粘性流体が循環流動することにより、その入出力間の差動を許容しつつトルクを増幅して伝達することが可能である。
また、トルクコンバータ9は、タービンランナ9bとフロントカバー9cとの間に設けられ、タービンランナ9bと一体回転可能に連結されたロックアップクラッチ9dをさらに備える。このロックアップクラッチ9dは、後述の油圧制御装置1から供給されるオイルの圧力によって作動し、フロントカバー9cとの係合状態(ロックアップON)と開放状態(ロックアップOFF)とに切り替えられる。ロックアップクラッチ9dがフロントカバー9cと係合している状態では、フロントカバー9c(すなわちポンプインペラ9a)とタービンランナ9bが係合され、ポンプインペラ9aとタービンランナ9bとの相対回転が規制され、入出力間の差動が禁止されるので、トルクコンバータ9は、エンジン3から伝達されたトルクをそのまま前後進切替機構10に伝達する。
前後進切替機構10は、エンジン3からの動力(回転出力)を変速可能であると共に、その回転方向を切替可能である。前後進切替機構10は、遊星歯車機構17、摩擦係合要素としての前後進切替クラッチ(フォワードクラッチ)C1及び前後進切替ブレーキ(リバースブレーキ)B1等を含んで構成される。遊星歯車機構17は、相互に差動回転可能な複数の回転要素としてサンギヤ、リングギヤ、キャリア等を含んで構成される差動機構であり、前後進切替クラッチC1及び前後進切替ブレーキB1は、遊星歯車機構17の作動状態を切り替えるための係合要素であり、例えば多板クラッチなどの摩擦式の係合機構等によって構成することができ、ここでは油圧式の湿式多板クラッチを用いる。
前後進切替機構10は、後述の油圧制御装置1から供給されるオイルの圧力によって前後進切替クラッチC1、前後進切替ブレーキB1が作動し作動状態が切り替えられる。前後進切替機構10は、前後進切替クラッチC1が係合状態(ON状態)、前後進切替ブレーキB1が解放状態(OFF状態)である場合に、エンジン3からの動力を正転回転(車両2が前進する際にインプットシャフト14が回転する方向)でインプットシャフト14に伝達する。前後進切替機構10は、前後進切替クラッチC1が解放状態、前後進切替ブレーキB1が係合状態である場合に、エンジン3からの動力を逆転回転(車両2が後進する際にインプットシャフト14が回転する方向)でインプットシャフト14に伝達する。前後進切替機構10は、ニュートラル時には、前後進切替クラッチC1、前後進切替ブレーキB1共に解放状態とされる。本実施形態では、このような前後進切替クラッチC1及び前後進切替ブレーキB1の係合/解除の制御を行う制御系をまとめて「C1制御系」18と呼ぶ。
無段変速機構11は、エンジン3から駆動輪4への動力の伝達経路における前後進切替機構10と駆動輪4との間に設けられ、エンジン3の動力を変速して出力可能な変速装置である。無段変速機構11は、後述の油圧制御装置1から供給されるオイルの圧力によって作動する。
無段変速機構11は、インプットシャフト14に伝達(入力)されるエンジン3からの回転動力(回転出力)を所定の変速比で変速して変速機出力軸であるアウトプットシャフト15に伝達し、このアウトプットシャフト15から駆動輪4に向けて変速された動力を出力する。ここでは、無段変速機構11は、その一例として、インプットシャフト(プライマリシャフト)14に連結されたプライマリプーリ20、アウトプットシャフト(セカンダリシャフト)15に連結されたセカンダリプーリ21、プライマリプーリ20とセカンダリプーリ21との間に掛け渡されたベルト22などを含んで構成されるベルト式の無段自動変速機(ContinuourlyVariable Transmission:CVT)を例示している。
プライマリプーリ20は、プライマリシャフト14の軸方向に移動可能な可動シーブ20a(プライマリシーブ)と、固定シーブ20bとを同軸に対向配置することにより形成され、同様に、セカンダリプーリ21は、セカンダリシャフト15の軸方向に移動可能な可動シーブ21a(セカンダリシーブ)と、固定シーブ21bとを同軸に対向配置することにより形成される。ベルト22は、これら可動シーブ20a,21aと固定シーブ20b,21bとの間に形成されたV字溝に掛け渡されている。
そして、無段変速機構11では、後述の油圧制御装置1からプライマリプーリ20のプライマリシーブ油圧室23、セカンダリプーリ21のセカンダリシーブ油圧室24に供給されるオイルの圧力(プライマリ圧、セカンダリ圧)に応じて、可動シーブ20a,21aが固定シーブ20b,21bとの間にベルト22を挟み込む力(ベルト挟圧力)を、プライマリプーリ20及びセカンダリプーリ21の個々で制御することができる。これにより、プライマリプーリ20及びセカンダリプーリ21のそれぞれにおいて、V字幅を変更してベルト22の回転半径を調節することができ、プライマリプーリ20の入力回転速度に相当する入力回転数(プライマリ回転数)とセカンダリプーリ21の出力回転速度に相当する出力軸回転数(セカンダリ回転数)との比である変速比を無段階に変更することが可能となっている。また、プライマリプーリ20及びセカンダリプーリ21のベルト挟圧力が調整されることで、これに応じたトルク容量で動力を伝達することが可能となっている。
減速機構12は、無段変速機構11からの動力の回転速度を減速してデファレンシャルギヤ13に伝達する。デファレンシャルギヤ13は、減速機構12からの動力を、各駆動軸16を介して各駆動輪4に伝達する。デファレンシャルギヤ13は、車両2が旋回する際に生じる旋回の中心側、つまり内側の駆動輪4と、外側の駆動輪4との回転速度の差を吸収する。
上記のように構成される動力伝達装置5は、エンジン3が発生させた動力をトルクコンバータ9、前後進切替機構10、無段変速機構11、減速機構12、デファレンシャルギヤ13等を介して駆動輪4に伝達することができる。この結果、車両2は、駆動輪4の路面との接地面に駆動力[N]が生じ、これにより走行することができる。
油圧制御装置1は、流体としてのオイルの油圧によってトルクコンバータ9のロックアップクラッチ9d、前後進切替機構10の前後進切替クラッチC1及び前後進切替ブレーキB1、無段変速機構11のプライマリシーブ20a及びセカンダリシーブ21a等を含む動力伝達装置5を作動させるものである。油圧制御装置1は、例えば、ECU7により制御される種々の油圧制御回路を含んで構成される。油圧制御装置1は、複数の油路、オイルリザーバ、オイルポンプ、複数の電磁弁などを含んで構成され、後述するECU7からの信号に応じて、動力伝達装置5の各部に供給されるオイルの流量あるいは油圧を制御する。また、この油圧制御装置1は、動力伝達装置5の所定の箇所の潤滑を行う潤滑油供給装置としても機能する。
ECU7は、車両2の各部の駆動を制御するものである。ECU7は、物理的には、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)及びインターフェースを含む周知のマイクロコンピュータを主体とする電子回路である。ECU7の機能は、ROMに保持されるアプリケーションプログラムをRAMにロードしてCPUで実行することによって、CPUの制御のもとで車両2内の各種装置を動作させるとともに、RAMやROMにおけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。本実施形態では、ECU7は、上述の油圧制御装置1を制御することによって、トルクコンバータ9、前後進切替機構10、無段変速機構11など動力伝達装置5の各部の制御を行う。なお、ECU7は、上記の機能に限定されず、車両2の各種制御に用いるその他の各種機能も備えている。
次に、図2を参照して本実施形態に係る油圧制御装置1の構成について説明する。
図2に示すように、油圧制御装置1は、動力伝達装置5の各部にオイルを供給するオイル供給源として、エンジン3の駆動により駆動される機械式のメカポンプ(機械ポンプ)31と、電気で作動するモータ32の駆動により駆動される電動ポンプ33との二つの油圧ポンプを備えている。メカポンプ31及び電動ポンプ33は、油圧制御装置1内のドレン37に貯留されたオイルを吸入圧縮して吐出し、油圧経路34を介して動力伝達装置5にオイルを供給することができる。
なお、本実施形態の車両2には、燃費向上のため、車両の停車中または走行中にエンジン3を停止させる機能、所謂アイドリングストップ機能が備えられている。そして、電動ポンプ33は、このようなエンジン3の停止機能の実行時におけるメカポンプ31の代替として、その作動油の供給を実行する。
メカポンプ31は、油圧経路34を介して、無段変速機構11(プライマリシーブ20a及びセカンダリシーブ21a)及び前後進切替機構10のC1制御系18(前後進切替クラッチC1及び前後進切替ブレーキB1)に対して油圧供給可能に接続されている。なお、図2には図示しないが、油圧経路34と無段変速機構11及びC1制御系18との間には、これらの装置10,18に供給する油圧を調節することができる油圧制御回路が設けられている。これらの油圧制御回路は、ECU7によって制御されている。
電動ポンプ33は、その吐出口に接続される出口流路35を介して、油圧経路34に連通されている。また、この出口流路35上には、油圧経路34から電動ポンプ33へのオイルの逆流を防止する逆止弁36が設けられている。
油圧経路34上には、高圧用リリーフ弁(第1リリーフ弁)38が設けられている。高圧用リリーフ弁38は、油圧経路34内の油圧(ライン圧)が所定値を超えたときに、油圧経路34内からオイルの余剰流を排出できるよう構成されている。より詳細には、高圧用リリーフ弁38は、メカポンプ31駆動時に、メカポンプ31から吐出されるオイルの余剰流を油圧経路34から排出させることで、油圧経路34のライン圧を調圧できるよう構成される。高圧用リリーフ弁38において余剰流を発生させるための所定油圧は、メカポンプ31のオイル吐出可能流量にあわせて設定され、例えば3MPa程度である。
なお、図2には図示しないが、高圧用リリーフ弁38から排出された余剰流が、低圧ライン(トルクコンバータ9のロックアップクラッチ9dなどの制御系)や、動力伝達装置5内の所定の箇所の潤滑部へ供給され、最終的にドレン37へ戻されるよう、高圧用リリーフ弁38の出力側に油路が形成されている。
そして、特に本実施形態では、電動ポンプ33の吐出口側に接続される出口流路35上には、電動ポンプ33と逆止弁36との間に低圧用リリーフ弁(第2リリーフ弁)39が設けられている。低圧用リリーフ弁39は、高圧用リリーフ弁38と同様に、油圧経路34内の油圧(ライン圧)が所定値を超えたときに、油圧経路34内からオイルの余剰流を排出させることで、油圧経路34のライン圧を調圧できるよう構成されている。但し、低圧用リリーフ弁39は、アイドリングストップ等のエンジン3停止機能実行時、すなわちメカポンプ31の停止時かつ電動ポンプ33の駆動時に、電動ポンプ33から吐出されるオイルの余剰流が油圧経路34から排出されるよう構成されている。
ここで、上述のとおり、電動ポンプ33は、アイドリングストップ時などエンジン3が停止している状況においてメカポンプ31の代替手段とされるものであり、エンジン3の停止による燃費向上効果を得るためには容量が制約されてしまうため、一般的にメカポンプ31に比べて吐出量が少ない。このため、電動ポンプ33駆動時における油圧経路34内のライン圧は、メカポンプ31駆動時に比べて低下する。そこで、低圧用リリーフ弁39では、電動ポンプ33のみが駆動する低圧状態(油圧経路34内の油圧が高圧用リリーフ弁38により余剰流を排出できる油圧より低圧な状態)であっても油圧経路34から余剰流を排出できるように、余剰流を排出するための所定油圧が高圧用リリーフ弁38のものより小さく設定されている。具体的には、低圧用リリーフ弁39において余剰流を発生させるための所定油圧は、電動ポンプ33のオイル吐出可能流量にあわせて設定され、例えば0.5MPa程度である。すなわち、本実施形態の高圧用リリーフ弁38及び低圧用リリーフ弁39の「高圧用」及び「低圧用」との表現は、余剰流を排出するために設定された所定油圧の一方の値が、他方に対して高い/低いという意味である。なお、低圧用リリーフ弁39から排出された余剰流は、ドレン37へ戻されるよう油路が形成されている。
また、高圧用リリーフ弁38及び低圧用リリーフ弁39には、例えば、弁本体内で弁体(スプール)がその軸方向に摺動して流路の開閉もしくは切り替えを行うスプール弁を適用することができる。
次に、本実施形態に係る油圧制御装置1の動作について説明する。
エンジン3運転時には、エンジン3の動力によってメカポンプ31が駆動され、一方で電動ポンプ33は停止している。この状態では、メカポンプ31がドレン37からオイルを吸入圧縮して吐出し、このオイルが油圧経路34に導入されている。また、逆止弁36によって電動ポンプ33の出口流路35へのオイルの浸入が防止されている。そして、油圧経路34に設けられた高圧用リリーフ弁38によって、油圧経路34のライン圧が所定値(例えば3.0MPa程度)を超えた場合には、メカポンプ31から吐出されたオイルの余剰流が油圧経路34から排出されている。
このような状態で、例えば前後進切替機構10の前後進切替クラッチC1を作動させるべく、油圧制御装置1がC1制御系18の油圧をステップ状に立ち上げようとすると、油圧経路34からC1制御系18に入力させるオイル流量が新たに必要となるため、油圧経路34のライン圧を保持するために油圧経路34内に必要なオイルの流量が増加することになる。このとき、油圧制御装置1では、メカポンプ31から吐出されたオイルの余剰流が高圧用リリーフ弁38から排出されているので、この余剰流の少なくとも一部が高圧用リリーフ弁38から排出されずに、そのまま油圧経路34内に保持されることで、油圧経路34内のオイルの流量を増加させ油圧経路34に必要なオイルの流量を確保することができる。この結果、油圧経路34のライン圧を保持することができ、油圧経路34の油圧の変動を抑制することができる。
一方、アイドリングストップ時などエンジン3が停止している状態では、メカポンプ31が停止しており、モータ32により電動ポンプ33のみが駆動される。この状態では、電動ポンプ33がドレン37からオイルを吸入圧縮して出口流路35に吐出し、このオイルが逆止弁36を通過して、油圧経路34に導入されている。そして、電動ポンプ33の出口流路35に設けられた低圧用リリーフ弁39によって、油圧経路34のライン圧が所定値(例えば0.5MPa程度)を超えた場合に、電動ポンプ33から吐出されるオイルの余剰流が油圧経路34から排出されている。
ここで図3を参照して、まず、油圧制御装置1に本実施形態の低圧用リリーフ弁39を設けない場合の油圧経路34の油圧の挙動について説明する。図3に示す破線のグラフ40は、低圧用リリーフ弁39を備えない油圧制御装置における油圧経路34のライン圧及び無段変速機構11のベルト挟圧の推移を示し、破線のグラフ41は、C1制御系18の油圧の推移を示す。
上述のように、電動ポンプ33の駆動時は、メカポンプ31の駆動時と比べて油圧経路34が低圧状態となる。このため、高圧用リリーフ弁38からの余剰流の排出は行われない。このような状態で、例えば前後進切替クラッチC1を作動させるべく、図3の時点Aにおいて、油圧制御装置1がC1制御系18に入力する油圧をステップ状に立ち上げようとすると、油圧経路34からC1制御系18に導入するオイル流量が新たに必要となるが、これを高圧用リリーフ弁38からの余剰流で補填することができないので、油圧経路34内のオイル流量のみでまかなうこととなる。このため、図3のグラフ40に示すように、油圧経路34のライン圧及び無段変速機構11のベルト挟圧が低下する。このとき、ベルト挟圧が、現時点の運転条件におけるベルト挟圧の必要量Paを下回ると(例えば図3に示す期間D)、無段変速機構11のベルト22に滑りが発生する虞がある。
また、このような油圧経路34のライン圧の低下により、C1制御系18へのオイル流量の供給も不十分となるため、図3のグラフ41に示すように、C1制御系18の油圧立ち上げの応答性も低下する。
続いて図3を参照して、油圧制御装置1に本実施形態の低圧用リリーフ弁39を設けた場合の油圧経路34の油圧の挙動について説明する。図3に示す実線のグラフ42は、低圧用リリーフ弁39を備える油圧制御装置1(本実施形態に係る油圧制御装置1)における油圧経路34のライン圧及び無段変速機構11のベルト挟圧の推移を示し、実線のグラフ43は、C1制御系18の油圧の推移を示す。
本実施形態では、低圧用リリーフ弁39を備える構成をとることにより、電動ポンプ33の駆動時の油圧経路34が低圧な状態(油圧経路34内の油圧が高圧用リリーフ弁38により余剰流を排出できる油圧より低圧な状態)でも、電動ポンプ33から吐出されたオイルの余剰流が低圧用リリーフ弁39から排出される。このため、前後進切替クラッチC1を作動させるべく、図3の時点Aにおいて、油圧制御装置1がC1制御系18に入力する油圧をステップ状に立ち上げようするときに、低圧用リリーフ弁39から排出される余剰流の少なくとも一部を高圧用リリーフ弁38から排出させずに、そのまま油圧経路34内に保持させることで、油圧経路34からC1制御系18に導入するオイル流量を補填して、油圧経路34に必要なオイルの流量を確保することが可能となる。この結果、油圧経路34のライン圧を保持することができ、油圧経路34の油圧の変動を抑制することができる。このため、図3のグラフ42に示すように、油圧経路34のライン圧及び無段変速機構11のベルト挟圧は安定を保つことができ、無段変速機構11のベルト22の滑り発生を防止するのに必要なベルト挟圧力を確保できる。
また油圧経路34のライン圧が安定することにより、図3のグラフ43に示すように、C1制御系18の油圧がライン圧に立ち上がるまでの時間もA〜CからA〜Bへ短縮され、C1制御系18の油圧の応答性も改善することができ、クラッチC1を係合させる際の応答性を向上できる。
このように、低圧用リリーフ弁38は、エンジン3停止時かつ電動ポンプ33の駆動時に、油圧が必要とされる油圧機器(本実施形態では無段変速機構11)に供給すべき油圧を保障すると共に、余剰流を排出する。そして、エンジン3が停止状態から始動するときに油圧が必要とされる油圧機器(本実施形態ではC1制御系18(前後進切替クラッチC1))を作動させる際にも、これらの油圧機器に供給すべき油圧を保障することができる。
次に、本実施形態に係る油圧制御装置1の効果について説明する。
本実施形態に係る油圧制御装置1は、エンジン3駆動により油圧経路34を介して動力伝達装置5にオイルを供給するメカポンプ31と、モータ32駆動により油圧経路34を介して動力伝達装置5にオイルを供給する電動ポンプ33と、メカポンプ31の駆動時にメカポンプ31から吐出されたオイルの余剰流を油圧経路34から排出する高圧用リリーフ弁38と、メカポンプ31の停止時かつ電動ポンプ33の駆動時に、油圧経路34内の油圧が高圧用リリーフ弁38により余剰流を排出できる油圧より低圧な状態において、電動ポンプ33から吐出された余剰流を油圧経路34から排出する低圧用リリーフ弁39と、を備える。
このような構成により、エンジン3運転時にメカポンプ31が駆動し、油圧経路34の油圧が高圧な状態では、高圧用リリーフ弁38により油圧経路34内のオイルの余剰流が排出されて、この余剰流を利用して油圧を安定化できる一方で、電動ポンプ33のみ駆動し、油圧経路34の油圧が低圧な状態でも、低圧用リリーフ弁39により油圧経路34内のオイルの余剰流が排出されて、この余剰流を利用して油圧を安定化できる。したがって、本実施形態に係る油圧制御装置1は、電動ポンプ33のみ駆動する低圧状態においても、油圧経路34内のライン圧(油圧)を安定させることができる。
[第1実施形態の変形例]
なお、上記実施形態では、図2に示すように、低圧用リリーフ弁39から排出された余剰流はドレン37に戻される構成としていたが、低圧用リリーフ弁39から排出された余剰流の少なくとも一部を、動力伝達装置5内の潤滑部へ供給する油路を備えるよう構成してもよい。この場合、電動ポンプ33駆動時の低圧状態でも潤滑部へのオイル供給が可能となるので、車両2の運転状態によらず常に潤滑部へオイルを供給すること可能となり、潤滑性能を向上できる。
[第2実施形態]
次に、図4,5を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。図4は、本発明の第2実施形態に係る油圧制御装置50の概略構成を示す図であり、図5は、図4に示すコントローラ52による電動ポンプ33の吐出量制御処理を示すフローチャートである。
図4に示すように、本実施形態に係る油圧制御装置50は、(1)低圧用リリーフ弁39から排出されるオイルの流量(余剰流量)Qを計測する流量計(計測手段)51を低圧用リリーフ弁39の下流に備える点、(2)低圧用リリーフ弁39からの余剰流量Qに基づき電動ポンプ33を制御するコントローラ(制御手段)52を備える点において、第1実施形態と異なるものである。
コントローラ52は、流量計51により計測された余剰流量Qの情報を取得すると、この余剰流量Qが所定値を超えるように電動ポンプ33の吐出量を制御する。より詳細には、コントローラ52は、図5に示すフローチャートを実施する。
まず、アイドリングストップ中かつ電動ポンプ33駆動中であるか否かを判定する(S101)。アイドリングストップ実行及び電動ポンプ33駆動の有無の情報は、例えばECU7から取得することができる。アイドリングストップ中かつ電動ポンプ33駆動中であると判定した場合には、電動ポンプ33を制御すべき期間であると判断し、ステップS102に移行する。アイドリングストップ中かつ電動ポンプ33駆動中ではないと判定した場合には、このフローチャートの最初に戻る。
次に、ステップS101において、アイドリングストップ中かつ電動ポンプ33駆動中であると判定した場合には、流量計51により検出された余剰流の余剰流量Qの情報を取得し(S102)、この余剰流量Qが規定流量(所定値)を超えているか否かを判定する(S103)。余剰流量Qが規定流量を超えていると判定した場合、電動ポンプ33が所望以上の流量でオイルを吐出しているために、余剰流量が所定値より多くなっているものと判断し、電動ポンプ33の吐出量を減少すべくモータ32を制御する(S104)。
一方、流量Qが規定流量以下と判定された場合、電動ポンプ33が所望の流量以下でオイルを吐出しているために、余剰流量が所定値以下となっているものと判断して、電動ポンプ33の吐出量を増加すべくモータ32を制御する(S105)。
なお、本実施形態のコントローラ52は、ECU7の機能の一部としてECU7に組み込む構成であってもよい。
このように、本実施形態に係る油圧制御装置50では、流量計51が、低圧用リリーフ弁39から排出されるオイルの流量を計測し、コントローラ52が、流量計51により計測されたオイルの流量が所定値以下の場合に、電動ポンプ33の吐出量を増加させるよう電動ポンプを制御する。
この構成により、電動ポンプ33の駆動中に、電動ポンプ33の吐出量を制御して、常に低圧用リリーフ弁39から少なくとも所定値の余剰流を排出させることが可能となる。このため、例えば前後進切替クラッチC1を作動させるべくC1制御系18の油圧を立ち上げ、油圧経路34内の油圧を維持するのに必要なオイル流量が増加する場合でも、常時所定値以上発生している余剰流によって、油圧経路34内のオイル流量を常時好適に補填することが可能となり、油圧経路34内の油圧の変動をより一層抑制することが可能となる。これにより、無段変速機構11のベルト挟圧を好適に確保でき、また、C1制御系18の油圧の応答性も改善することができるなど、動力伝達装置5の油圧制御の安定化を図れる。また、余剰流の流量を所定の規定流量に維持できるため、必要以上に電動ポンプ33の吐出量を増やすことなく、電損対策として無駄なエネルギーを節約でき、燃費を向上できる。
[第3実施形態]
次に、図6,7を参照して、本発明の第3実施形態について説明する。図6は、本発明の第3実施形態に係る油圧制御装置60の概略構成を示す図であり、図7は、図6に示すコントローラ61による電動ポンプ33の吐出量制御処理を示すフローチャートである。
図6に示すように、本実施形態に係る油圧制御装置60は、コントローラ(制御手段)61が、低圧用リリーフ弁39から排出される余剰流の流量(余剰流量)を、第2実施形態の流量計51の代わりに、電動ポンプ33の回転数、油圧経路34の油圧P、油温Tに基づき算出する点において、第2実施形態と異なるものである。
電動ポンプ33の回転数は、例えば電動ポンプ33に設けられている既存の回転数センサ62により計測することができる。油圧経路34の油圧P及び油温Tは、例えば無段変速機構11に設けられている既存の油圧センサ63および油温センサ64により計測することができる。
コントローラ61は、電動ポンプ33の回転数N、油圧経路34の油圧P及び油温Tに基づいて現在の余剰流量を算出し、この算出した余剰流量に基づいて電動ポンプ33のモータ32を制御する。より詳細には、コントローラ61は、図7に示すフローチャートを実施する。
まず、アイドリングストップ中かつ電動ポンプ33駆動中であるか否かを判定する(S201)。アイドリングストップ実行及び電動ポンプ33駆動の有無の情報は、例えばECU7から取得することができる。アイドリングストップ中かつ電動ポンプ33駆動中であると判定した場合には、電動ポンプ33を制御すべき期間であると判断し、ステップS202に移行する。アイドリングストップ中かつ電動ポンプ33駆動中ではないと判定した場合には、このフローチャートの最初に戻る。
次に、ステップS201において、アイドリングストップ中かつ電動ポンプ33駆動中であると判定した場合には、既存の回転数センサ62により計測された電動ポンプ33の回転数Nと、既存の無段変速機構11内の油圧センサ63、油温センサ64により計測された無段変速機構11の油圧P及び油温T(すなわち油圧経路34の油圧P及び油温T)の情報を取得する(S202)。
次に、ステップS202で取得した電動ポンプ33の回転数N、油圧経路34の油圧P及び油温Tの情報に基づき、電動ポンプ33からの吐出量を表す電動ポンプ流量Q1と、油圧経路34に実際に導入されたオイルの流量を表す回路消費流量Q2を算出する(S203)。具体的には、コントローラ61は、予め、電動ポンプ33の回転数N並びに油圧経路34の油圧P及び油温Tと、電動ポンプ流量Q1及び回路消費流量Q2との対応関係を測定して作成されたマップを備えており、これらのマップを参照して、電動ポンプ33の回転数N並びに油圧経路34の油圧P及び油温Tに基づき、現在の電動ポンプ流量Q1及び回路消費流量Q2を求める。
次に、現在の電動ポンプ流量Q1から現在の回路消費流量Q2を減じて低圧用リリーフ弁39からの余剰流量(Q1−Q2)を算出し、この余剰流量が規定流量(所定値)を超えているか否かを判定する(S204)。余剰流量(Q1−Q2)が規定流量を超えていると判定した場合、電動ポンプ33が所望以上の流量でオイルを吐出しているために、余剰流量が所定値より多くなっているものと判断し、電動ポンプ33の吐出量を減少すべくモータ32を制御する(S205)。
一方、余剰流量(Q1−Q2)が規定流量以下と判定した場合、電動ポンプ33が所望の流量以下でオイルを吐出しているために、余剰流量が所定値以下となっているものと判断して、電動ポンプ33の吐出量を増加すべくモータ32を制御する(S206)。
このように、本実施形態に係る油圧制御装置60では、コントローラ61が、電動ポンプ33の回転数N、油圧経路34の油圧P及び油温Tに基づき低圧用リリーフ弁39から排出されるオイルの流量を算出し、この算出されたオイルの流量が所定値以下の場合に、電動ポンプ33の吐出量を増加させるよう前記電動ポンプを制御する。
この構成により、既存のセンサ類を利用して余剰流量を導出することができるので、例えば余剰流量を計測するため流量計など新たなセンサ類を追加する必要がなく、低コスト化かつ省スペース化が図れる。また、余剰流量を計測する流量計が不要であるので、余剰流を流量計に通過させる際に発生する圧力損失を回避することができる。
[第4実施形態]
次に、図8〜10を参照して、本発明の第4実施形態について説明する。図8は、本発明の第4実施形態に係る油圧制御装置70の概略構成を示す図であり、図9は、メカポンプ31駆動時における図8に示すリリーフ弁71の状態を示す模式図であり、図10は、電動ポンプ33駆動時における図8に示すリリーフ弁71の状態を示す模式図である。
図8に示すように、本実施形態に係る油圧制御装置70は、高圧用リリーフ弁38及び低圧用リリーフ弁39の代わりに、両者の機能を併せ持つ単一のリリーフ弁71を備える点で、上記の第1〜第3実施形態と異なるものである。
リリーフ弁71は、図8に示すように、弁本体内で弁体(スプール)がその軸方向に摺動して流路の開閉もしくは切り替えを行うスプール弁が適用されている。このリリーフ弁71は、弁本体72の中空部分に、その軸線方向に摺動可能に挿入されたスプール73と、そのスプール73が軸線方向に移動することにより相互に連通・遮断される入力ポート74及び出力ポート75と、スプール73の一方の端部側(図8では下側)に設置されて、スプール73を他方の端部側に向けて押圧するスプリング76と、スプリング76が設けられた端部側に連通された第1パイロットポート77と、第1パイロットポート77と反対側(図8では上側)の端部側に連通された第2パイロットポート78と、第2パイロットポート78と入力ポート74の間に設けられ、入力ポート74の同一の油圧が導入されるフィードバックポート79と、を備えて構成されている。
また、スプール73には、小径のバルブ80と2つの大径のバルブ81,82が形成されている。小径バルブ80は第二パイロットポート78とフィードバックポート79との間を摺動可能に配置される。また、一方の大径バルブ81は、フィードバックポート79と出力ポート75との間に配置される。他方の大径バルブ82は一方の大径バルブ81を挟んで小径バルブ80と反対側(図8では下側)に配置される。そして、スプール73の移動によって、大径バルブ81,82の間に入力ポート74及び出力ポート75が同時に開口する状態が生じうるように、スプール73の大径バルブ81,82及び入力ポート74及び出力ポート75の位置が設定されている。
入力ポート74及びフィードバックポート79は、油圧経路34と接続されており、ライン圧PLのオイルが導入される。出力ポート75は、低圧ライン及び潤滑部などと接続されており、油圧経路34の余剰流を排出すると、この余剰流を低圧ライン及び潤滑部などに供給する。
第1パイロットポート77には、油圧経路34とは別の油路(図示せず)が接続されており、油圧経路34のライン圧PLを調整するための第1パイロット圧P1のオイルが導入されている。なお、第1パイロット圧P1は、固定値としてもよいし、調整可能としてもよい。
第2パイロットポート78には、電動ポンプ33の出口流路35から逆止弁36より上流側で分岐された流路83が、オリフィス84を介して接続されている。電動ポンプ33駆動時には、電動ポンプ33から吐出されたオイルが流路83内を流れ、オリフィス84を通過した後にその油圧が低下されて、第2パイロットポート78に導入される。このとき、オリフィス通過により低減され、第2パイロットポート78に導入された油圧を第2パイロット圧P2とする。なお、この第2パイロット圧P2は、オリフィス84により低減されるため、油圧経路34内のライン圧PLより小さい値となる。
このリリーフ弁71は、図9,10に示すように、メカポンプ31駆動時の油圧経路34が高圧な状態と、電動ポンプ33駆動時の油圧経路34が低圧な状態の両方の状態において、油圧経路34からオイルの余剰流を排出して、油圧経路34のライン圧(油圧)PLを調圧することができる。
まず、メカポンプ31駆動時には、スプール73には、図9に示すように各ポートから導入されるオイルの油圧による外力が働く。すなわち、小径バルブ80の端面の面積をAs、大径バルブ81,82の断面の面積をAlとすると、第1パイロットポート77から導入されたオイルの第1パイロット圧P1によって、大径バルブ82に押圧力P1・Alが(図9では上方向に)付加される。また、フィードバックポート79から導入されたオイルのライン圧PLによって、小径バルブ80に押圧力PL・Asが(図9では上方向に)付加されると共に、大径バルブ81に押圧力PL・Alが(図9の下方向に)付加される。さらにスプール73には、スプリング76によるバネ荷重Fが(図9の上方向に)付加される。なお、このとき電動ポンプ33は駆動していないので、第2パイロットポート78には油圧が加えられていない。
このときのスプール73に働く力の釣り合いは次の(1)式で表すことができる。
PL・Al=F+P1・Al+PL・As (1)
従って、(1)式に基づき、ライン圧PLは次の(2)式で表すことができる。
PL=(F+P1・Al)/(Al−As) (2)
この(2)式のライン圧PLの値が、メカポンプ31駆動時において余剰流の排出が開始される油圧であり、上記の第1〜第3実施形態において高圧用リリーフ弁38から余剰流の排出が開始される油圧と同等である。
このようなリリーフ弁71では、油圧経路34内のライン圧PLが(2)式のライン圧PL以下の場合には、図9に示すように大径バルブ82により入力ポート74が閉じられ、入力ポート74と出力ポート75とが連通されておらず、油圧経路34からのオイル排出が停止されている。
そして、油圧経路34内のライン圧PLが(2)式のライン圧PLの値を超えたときには、フィードバックポート79から導入されるオイルの油圧(ライン圧PL)が増大する。このとき、小径バルブ80に比べて、大径バルブ81の端面の面積が大きく、フィードバックポート79の油圧から受ける押圧力が大きくなるので、この押圧力の差によってスプール73が下方に移動する。このスプール73の移動により、入力ポート74と出力ポート75とが連通され、油圧経路34内の余剰流が出力ポート75から排出される。その後に、余剰流が排出されたことにより、油圧経路34内のライン圧PLが(2)式のライン圧PLの値に戻ると、スプール73は、再び図9に示す釣り合いの位置に移動して、余剰流の排出が停止される。
次に、電動ポンプ33駆動時には、スプール73には、図10に示すように各ポートから導入されるオイルの油圧による外力が働く。すなわち、上記のメカポンプ31駆動時に作用する力の他に、第2パイロットポート78から導入されたオイルの第2パイロット圧P2によって、小径バルブ80に押圧力P2・Asが(図10では下方向に)付加される。
このときのスプール73に働く力の釣り合いは次の(3)式で表すことができる。
PL・Al+P2・As=F+P1・Al+PL・As (3)
従って、(3)式に基づき、ライン圧PLは次の(4)式で表すことができる。
PL=(F+P1・Al−P2・As)/(Al−As) (4)
この(4)式のラインPLの値が、電動ポンプ33駆動時において余剰流の排出が開始される油圧であり、上記の第1〜第3実施形態において低圧用リリーフ弁39から余剰流の排出が開始される油圧と同等である。
上記(3)、(4)式より、このリリーフ弁71は、電動ポンプ33駆動時には、メカポンプ31駆動時と比べてP2・As/(Al−As)だけ低い圧力で余剰流を発生させることができる。つまり、リリーフ弁71は、スプール73の小径バルブ80の面積As、大径バルブ81,82の面積Al、第1パイロット圧P1を適宜設定し、また、オリフィス径を適宜設定して第2パイロット圧P2を調整することにより、メカポンプ31駆動時の油圧経路34が高圧な状態と、電動ポンプ33駆動時の油圧経路34が低圧な状態の両方の状態において、油圧経路34からオイルの余剰流を排出して、油圧経路34のライン圧(油圧)PLを調圧することが可能となる。
このように、本実施形態に係る油圧制御装置70では、上記第1〜第3実施形態の高圧用リリーフ弁38及び低圧用リリーフ弁39は、単一のスプール弁であるリリーフ弁71により同様の機能が実現されている。リリーフ弁71の入力ポート74が油圧経路34に接続され、リリーフ弁71の第2パイロットポート78がオリフィス84を介して電動ポンプ33に接続される。この構成により、1台のリリーフ弁71のみで、メカポンプ31駆動時の油圧経路34が高圧な状態と、電動ポンプ33駆動時の油圧経路34が低圧な状態の両方の状態において、油圧経路34からオイルの余剰流を排出して、油圧経路34のライン圧(油圧)PLを調圧することが可能となり、省スペース化を図れる。また、このリリーフ弁71は、例えば高圧用リリーフ弁38のパイロットポートに電動ポンプ33からの流路83を接続するなどの小規模な改良で実現することが可能であり、低コスト化も図ることができる。
以上、本発明について好適な実施形態を示して説明したが、本発明はこれらの実施形態により限定されるものではない。本発明は、以上で説明した実施形態を複数組み合わせることで構成してもよいし、実施形態の各構成要素を、当業者が置換することが可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものに変更することが可能である。
また、上記実施形態では、変速装置の一例としてベルト式の無段変速機構11を適用した場合について説明しているが、変速装置は、メカポンプ31及び電動ポンプ33で発生する油圧によって駆動することができ、また、アイドリングストップ制御時に駆動輪側の回転トルクをエンジン側に伝達することができるものであればよく、例えば手動変速機(MT)、有段自動変速機(AT)、トロイダル式の無段自動変速機(CVT)、マルチモードマニュアルトランスミッション(MMT)、シーケンシャルマニュアルトランスミッション(SMT)、デュアルクラッチトランスミッション(DCT)、などを用いてもよい。
また、上記実施形態では、油圧制御装置1によって変速装置(無段変速機構11)と共に油圧制御されるクラッチとして、前後進切替機構10のC1制御系18(前後進切替クラッチC1及び前後進切替ブレーキB1)を例示したが、このクラッチは、アイドリングストップ制御時に開放状態としてエンジンと駆動輪側との間の回転トルクを遮断し、また、係合状態として駆動輪側の回転トルクをエンジン側に伝達することのできるものであれば、前後進切替機構10以外のクラッチを用いてもよい。