この発明における油圧制御装置は、車両に搭載されるとともに、摩擦クラッチやブレーキなどの摩擦係合装置を適宜に係合・解放させてトルクの伝達経路を変更することにより所定の変速段を設定する有段式の自動変速機や、プーリの可動シーブを動作させてベルトを巻き掛けるプーリ溝幅を変化させることにより変速比を連続的に(無段階に)変化させるベルト式無段変速機、あるいは互いに対向して配置した一対のディスクの間にパワーローラを挟み込み、パワーローラと各ディスクとの間でのトルクの伝達箇所を変位させることにより、変速比を連続的に変化させるトロイダル型(もしくはトラクション式)の無段変速機などの自動変速機の油圧制御を対象としている。すなわち、この発明は、上記のような摩擦係合装置や可動シーブあるいはパワーローラなどの動作状態を油圧により制御する際の油圧制御を行う自動変速機の油圧制御装置を対象としている。
具体的には、この発明で対象としている自動変速機の油圧制御装置は、油圧の発生源として、車両の駆動力源であって、自動変速機が連結する主動力源の出力により駆動されて油圧を発生する主オイルポンプと、主動力源とは別の動力源であって、その主動力源に対して独立して運転・制御できる副動力源の出力により駆動されて油圧を発生する副オイルポンプとを備えている。そして、通常時すなわち主動力源が運転されている場合は、主オイルポンプにより油圧を発生させ、主動力源が停止した場合には、副オイルポンプにより油圧を発生させて、それら主オイルポンプあるいは副オイルポンプが吐出するオイルを、自動変速機の油圧作動部および潤滑や冷却のためにオイルを必要とするオイル供給部に供給するように構成されている。なお、上記のように副動力源は主動力源に対して独立に運転することができるので、主動力源により主オイルポンプが駆動されて油圧を発生している場合に、副動力源により副オイルポンプも駆動して、主オイルポンプと共に油圧を発生させることもできる。上記のようなこの発明で対象としている自動変速機の油圧制御装置のより詳細な構成を以下の具体例に基づいて説明する。
(第1実施例)
図1は、この発明の第1実施例として、この発明で対象とする自動変速機の油圧制御装置HCUにおける油圧回路の一部を示している。図1において、符号1はこの発明における主動力源であり、ここでは、例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジンあるいはLPGエンジンなどの内燃機関を対象としている。なお、以下の説明では、主動力源1すなわち内燃機関1をエンジン(ENG)1と記す。
エンジン1の出力側には、例えばトルクコンバータ(図示せず)などを介して、自動変速機の入力軸(図示せず)が連結されるとともに、機械式オイルポンプ2のロータ軸(もしくは入力軸)2aが連結されている。
機械式オイルポンプ2は、駆動力源であるエンジン1の出力トルクが伝達されることにより駆動されて油圧を発生するものであり、エンジン1の出力トルクを得てそのロータ軸2aを駆動することによって吸入口2iからオイルを吸引し、その吸入したオイルを吐出口2oから吐出するように構成されている。この機械式オイルポンプ2のポンプ機構としては、例えば、歯車ポンプ、トロコイドポンプ、ベーンポンプ、ねじポンプなどの回転ポンプや、あるいはピストンポンプなどの各種構成の公知のポンプを採用することができる。そして、この機械式オイルポンプ2は、例えばケーシング(図示せず)内の底部に設けられたオイルパン3に貯留されているオイルを吸入し、吐出口2oから吐出するようになっている。
機械式オイルポンプ2の吐出口2oは、オイルによる冷却や潤滑を行う必要がある自動変速機のオイル供給部4に連通されているとともに、チェックバルブ5およびコントロールバルブ6等を介して、自動変速機の油圧作動部7に連通されている。
オイル供給部4は、この発明におけるオイル供給部に相当していて、例えば、自動変速機内の歯車伝動機構や軸受(いずれも図示せず)など、車両走行中にエンジン1の動力が伝達されて自動変速機が駆動されている際に、オイルによる冷却や潤滑を行う必要がある部位である。したがって、このオイル供給部4に対しては、停車中にエンジン1の運転が停止してそれに伴い自動変速機の駆動が停止する際には、オイルの供給を一時的に休止することが可能である。
チェックバルブ5は、この発明におけるチェック弁に相当するいわゆる逆流防止弁(逆止弁)であって、機械式オイルポンプ2の吐出口2oとコントロールバルブ6とを連通する油路において、吐出口2oからコントロールバルブ6側へのオイルの流動を許容し、反対に、コントロールバルブ6側から吐出口2oへのオイルの流動を制止する構成となっている。
コントロールバルブ6は、自動変速機の変速制御の際に、油圧作動部7に供給する油圧、すなわちこの発明における変速油圧を制御する切替弁などから構成される制御弁であって、その入力ポート6iが上記のチェックバルブ5の吐出側に連通され、出力ポート6oが油圧作動部7に連通されている。そして、例えば図示しないソレノイドバルブなどから供給される信号圧によってスプールの位置が切り替えられて、油圧作動部7に供給する油圧を適宜に制御する構成となっている。
一方、油圧作動部7は、例えば、有段式の自動変速機において所定の変速段を設定する際に係合・解放状態に動作させられる摩擦クラッチおよび摩擦ブレーキや、車両の駆動力源と自動変速機との間の動力伝達を伝達・遮断するための摩擦クラッチなどの摩擦係合装置、あるいはベルト式無段変速機のプーリの溝幅を変更するために動作させられる可動シーブ、あるいはトロイダル型無段変速機のパワーローラの姿勢を変更するために動作させられる油圧アクチュエータなど、自動変速機の変速制御の際に油圧を用いてその係合・解放状態や動作状態が制御される部分である。
したがって、上記の油圧作動部7が、この発明における油圧作動部に相当していて、その油圧作動部7に作用させる変速油圧を制御する前述のコントロールバルブ6が、この発明の変速制御弁に相当している。そして、エンジン1の出力により駆動されて油圧を発生させ、その油圧によりオイルを吐出する吐出口2oがオイル供給部4に連通し、かつ吐出口2oがコントロールバルブ6を介して油圧作動部7に連通する機械式オイルポンプ2が、この発明における主オイルポンプに相当し、その吐出口2oが、この発明における主吐出口に相当している。
車両に搭載される自動変速機は、車両の停止時には、その後の再発進に備えて車両の発進が可能な変速段もしくは変速比を設定しておく必要がある。そのため、車両の停止時であっても、再発進のための所定の変速段(変速比)を設定するのに必要な油圧を油圧作動部7に作用させ続けておく必要がある。すなわち、この油圧作動部7は、停車中のエンジン1停止時にオイルの供給を一時的に休止することが可能な前述のオイル供給部4に対して、停車中のエンジン1停止時であっても、油圧の供給が必要となる、もしくは供給されていた油圧を保持しておくことが必要となる部分である。
したがって、例えば信号待ちなどの一時的な停車時に、エンジン1の運転を一時的に休止するいわゆるエコランを実行する際には、機械式オイルポンプ2をエンジン1に代わる他の動力源により駆動すること、もしくはエンジン1に代わる他の動力源により駆動されて油圧を発生させる機械式オイルポンプ2とは別のオイルポンプを設けておくことが必要となる。そのため従来では、例えば図2に示すように、エンジン1により駆動される機械式オイルポンプ2と並列に、電動機100により駆動されて油圧を発生させる電動式オイルポンプ101が設けられ、エンジン1が停止して機械式オイルポンプ2が油圧を発生しない場合に、電動式オイルポンプ101により油圧を発生させてオイル供給部4および油圧作動部7へオイルを供給するように構成されている。
しかしながら、図2に示すような従来の構成では、エンジン1の停止時に機械式オイルポンプ2に代わって電動式オイルポンプ101で油圧を発生させる際には、機械式オイルポンプ2と同等の吐出圧もしくは吐出量となる油圧を電動式オイルポンプ101でも発生させる必要がある。そのため、電動式オイルポンプ101として相対的に容量・体格が大きなものを使用しなければならず、装置の小型・軽量化あるいはコストダウンを促進する際の制約要因になっていた。
そこで、この発明における油圧制御装置HCUでは、前述のように、オイル供給部4では停車中のエンジン1停止時にオイルの供給を一時的に休止することが可能であること、言い換えると、停車中のエンジン1停止時には、最低限油圧作動部7にのみに再発進時の変速比を維持しておくために必要な油圧を供給し続ければよいこと、もしくは再発進時の変速比を維持しておくために必要な油圧を保持しておけばよいことに着目して、機械式オイルポンプ2とは別に設けるオイルポンプの小型・軽量化あるいはコストダウンを図ることが可能な構成となっている。
すなわち、図1に示すように、エンジン1に対して独立して運転可能な動力源として、すなわちこの発明における副動力源に相当する電動機8が設けられていて、その電動機8の出力側に、電動式オイルポンプ9のロータ軸(もしくは入力軸)9aが連結されている。
電動式オイルポンプ9は、駆動力源である電動機8の出力トルクが伝達されることにより駆動されて油圧を発生するものであり、電動機8の出力トルクを得てそのロータ軸9aを駆動することによって吸入口9iからオイルを吸引し、その吸入したオイルを吐出口9oから吐出するように構成されている。この電動式オイルポンプ9のポンプ機構としては、前述の機械式オイルポンプ2と同様に、例えば、歯車ポンプ、トロコイドポンプ、ベーンポンプ、ねじポンプなどの回転ポンプや、あるいはピストンポンプなどの各種構成の公知のポンプを採用することができる。そして、この電動式オイルポンプ9も、例えばケーシング(図示せず)内の底部に設けられたオイルパン3に貯留されているオイルを吸入し、吐出口9oから吐出するようになっている。
電動式オイルポンプ9の吐出口9oは、オイル供給部4には連通されず、チェックバルブ10のみを介して、自動変速機の油圧作動部7に直接連通されている。なお、吐出口9oの直近に、吐出口9oから吐出されるオイルの吐出圧を検出するための油圧センサ11、すなわちこの発明における圧力検出手段が設けられている。
したがって、電動機8の出力により駆動されて油圧を発生させ、その油圧によりオイルを吐出する吐出口9oが油圧作動部7に直接連通する上記の電動式オイルポンプ9が、この発明における副オイルポンプに相当し、その吐出口9oが、この発明における副吐出口に相当している。
チェックバルブ10は、前述のチェックバルブ5と同様に、この発明におけるチェック弁に相当する構成であって、電動式オイルポンプ9の吐出口9oとコントロールバルブ6および油圧作動部7とを連通する油路において、吐出口9oからコントロールバルブ6および油圧作動部7側へのオイルの流動を許容し、反対に、コントロールバルブ6および油圧作動部7側から吐出口9oへのオイルの流動を制止する構成となっている。
そして、上記の油圧制御装置HCUにおけるソレノイドバルブあるいは電動機8などを電気的に制御するための電子制御装置(ECU)12が設けられている。この電子制御装置12は、一例としてマイクロコンピュータを主体として構成され、入力されたデータおよび予め記憶しているデータ等に基づいて所定のプログラムに従って演算を行い、ソレノイドバルブあるいは電動機8などの動作状態の制御を実行するように構成されている。また、この電子制御装置12に対しては、前述の油圧センサ11、あるいはオイルの温度を検出する油温センサ(図示せず)や各回転部材の回転数を検出する回転数センサ(図示せず)等の検出信号が入力されるようになっている。
上記のようにして電動式オイルポンプ9から油圧作動部7へ油圧を供給する油圧回路(もしくは油路)を構成することにより、電動式オイルポンプ9から油圧作動部7へ油圧が供給された場合に、油圧作動部7に作用する油圧を保持することが可能になっている。
すなわち、エンジン1の停止時すなわち機械式オイルポンプ2が油圧を発生していない状態で、電動式オイルポンプ9が油圧を発生させて吐出口9oからオイルを吐出すると、オイルはチェックバルブ10を通過して、油圧作動部7およびコントロールバルブ6にそれぞれ連通する油路内を流動して、それら油圧作動部7およびコントロールバルブ6に供給される。そのうち、コントロールバルブ6側に供給されたオイルは、チェックバルブ5によってそれより先の(図1においてチェックバルブ5よりも左側の油路への)流動が制止される。一方、油圧作動部7側に供給されたオイルは、油圧作動部7に油圧を作用させる。チェックバルブ10を一旦通過したオイルは、そのチェックバルブ10によって吐出口9oに戻る方向の流動が制止されるので、各チェックバルブ5,10と油圧作動部7とで区画される部分の油圧が、最終的には電動式オイルポンプ9の吐出圧で保持されることになる。
このように、各チェックバルブ5,10と油圧作動部7とで区画された部分によって、電動式オイルポンプ9から油圧作動部7に油圧が供給された場合に、その油圧作動部7に作用する油圧を保持するこの発明における油圧保持機構が構成されている。
したがって、例えば電動式オイルポンプ9の吐出圧を制御すること、あるいはコントロールバルブ6のドレーン圧を調整することなどにより、上記のような各チェックバルブ5,10と油圧作動部7とで区画される部分の油圧を、所望する変速段(変速比)を設定するために油圧作動部7に作用させる変速油圧に設定し、エンジン1の停止時であっても、自動変速機で所望する変速段(変速比)を維持しておくことができる。
また、上記のように機械式オイルポンプ2に代わって電動式オイルポンプ9によってオイルを吐出する場合、そのオイルは、上記のような各チェックバルブ5,10と油圧作動部7とで区画され限定された部分のみに供給され、通常時のようにオイル供給部4等へは供給されない。そのため、通常時のように装置全体にオイルを供給する場合と比較して油圧発生源に要求されるポンプ容量が少なくなる。また、装置全体にオイルを供給する場合と比較して油圧が作用する範囲が限定されているので、その分オイル漏れなどが発生する個所が少なくなって損失が低減する。すなわち装置の効率が向上する。これらのことから、電動式オイルポンプ9として低容量・小型・軽量のものを採用することができる。その結果、装置全体の小型・軽量化を図り、自動変速機の効率を向上させることができ、ひいては車両の燃費も向上させることができる。
上記のように図1で示す構成の油圧制御装置HCUの制御例を説明する。図3はその制御の一例を説明するためのフローチャートであって、このフローチャートで示すルーチンは、所定の短時間毎に繰り返し実行される。また、この図3のフローチャートで示すルーチンは、車両に対してエコランを実行する指令があることが制御開始の前提条件となっている。
したがって、エコラン開始の指令が出力されると(ステップS10)、先ず、電動式オイルポンプ9の作動が開始される(ステップS20)。すなわち電動機8の運転制御が開始されて電動式オイルポンプ9が駆動される。
電動式オイルポンプ9の作動が開始された後に、エンジン1の運転が停止させられる(ステップS30)。そして、エコラン解除の指令が出力されると(ステップS40)、先ず、停止されていたエンジン1の運転が開始される(ステップS50)。すなわちエンジン1が再始動される。
エンジン1の運転が再開された後に、電動式オイルポンプ9の作動が停止させられる(ステップS60)。そしてその後、このルーチンが一旦終了する。
上記の図3のフローチャートで示すルーチンを基本にして、より詳細な制御の例を図4,図6のフローチャートで示す。このうち、図4のフローチャートで示すルーチンは、前述の図3のフローチャートにおけるステップS20からステップS30に至る制御の詳細例である。すなわち、エコラン時にエンジン1を停止する際の機械式オイルポンプ2から電動式オイルポンプ9への油圧の発生源の切り替えに関する制御例である。
図4のフローチャートにおいて、ステップS20で電動式オイルポンプ9の作動が開始されると、その電動式オイルポンプ9の吐出圧Pが計測される(ステップS21)。前述したように、電動式オイルポンプ9の吐出口9oの直近に設定されている油圧センサ11により、この吐出圧Pを検出することができる。そして、その検出された吐出圧Pが、下限油圧Psよりも大きいか否かが判断される(ステップS22)。この下限油圧Psは、エコラン実行時のエンジン1の運転が停止した状態で、再発進時に必要な変速比の設定を維持しておくために、油圧作動部7に作用させておくことが必要な最小の油圧として予め設定した閾値である。
吐出圧Pが未だ下限油圧Ps以下であることにより、このステップS22で否定的に判断された場合は、前述のステップS21へ戻る。これに対して、吐出圧Pが下限油圧Psよりも大きくなった場合には、ステップS30へ進み、エンジン1の運転が停止させられる。すなわち、このステップS21,22の制御では、エコラン実行時にエンジン1の運転を停止させる際に、図5のタイムチャートでも示すように、エコラン開始の指令が出力された後に電動式オイルポンプ9の吐出圧Pが下限油圧Psまで昇圧するのを待って、エンジン1の停止が実行される。そのため、エコラン時にエンジン1を停止する際の機械式オイルポンプ2から電動式オイルポンプ9への油圧の発生源の切り替えを確実にかつ円滑に行うことができる。
次に、図6のフローチャートで示すルーチンは、前述の図3のフローチャートにおけるステップS40からステップS60に至る制御の詳細例である。すなわち、エコラン終了時に、エンジン1を再始動させ電動式オイルポンプ9を停止する際の電動式オイルポンプ9から機械式オイルポンプ2への油圧の発生源の切り替えに関する制御例である。
図6のフローチャートにおいて、ステップS40でエコラン解除の指令が出力されると、先ず、エンジン1の再始動前、すなわちエンジン1が停止している状態での電動式オイルポンプ9の吐出圧P0が計測されて記憶される(ステップS41)。その後、ステップS50でエンジン1が再始動されると、エンジン1の再始動後、すなわち現在の電動式オイルポンプ9の吐出圧Pが計測される(ステップS51)。
そして、その検出された吐出圧Pが、前述の吐出圧P0に所定値ΔPを加算した値(P0+ΔP)よりも大きいか否かが判断される(ステップS52)。この所定値ΔPは、エコラン終了時に油圧の発生源を電動式オイルポンプ9から再び機械式オイルポンプ2へ切り替える際に、再発進時に必要な変速比の設定を維持しておくために油圧作動部7に作用させておくことが必要な油圧が低下することがないように、余裕代として予め設定した所定の値である。
吐出圧Pが未だ吐出圧P0に所定値ΔPを加算した値(P0+ΔP)以下であることにより、このステップS52で否定的に判断された場合は、前述のステップS51へ戻る。これに対して、吐出圧Pが吐出圧P0に所定値ΔPを加算した値(P0+ΔP)よりも大きくなった場合には、ステップS60へ進み、電動式オイルポンプ9の作動が停止させられる。
この制御は、前述のように、エコランを終了する際の油圧の発生源の切り替えに関するものであり、図7に示すように、エコラン時にエンジン1が停止して電動式オイルポンプ9で発生させた油圧により油圧作動部7に油圧を作用させて保持している状態(図7の(a))から、エコランを終了する際にエンジン1が再始動して機械式オイルポンプ2で発生させた油圧により油圧作動部7に油圧を作用させて保持する状態(図7の(b))へ切り替える際の制御である。
図7の(b)で示すように、エンジン1が再始動して機械式オイルポンプ2で再び油圧が発生させられると、その機械式オイルポンプ2の吐出圧が電動式オイルポンプ9の吐出圧を上回ることにより、チェックバルブ5が開いて機械式オイルポンプ2からのオイルが油圧作動部7側へ流入するとともに、チェックバルブ10が閉じて電動式オイルポンプ9から油圧作動部7側へのオイルの流入が制止される。すなわち、エンジン1が再始動して機械式オイルポンプ2の吐出圧が昇圧していく段階で、その機械式オイルポンプ2の吐出圧が電動式オイルポンプ9の吐出圧を上回った時点で、自動的に油圧の発生源が電動式オイルポンプ9から機械式オイルポンプ2に切り替わることになる。この場合、電動式オイルポンプ9の吐出圧は、チェックバルブ10の前後で機械式オイルポンプ2の吐出圧と対向して、機械式オイルポンプ2の吐出圧付近まで上昇する。
この油圧の発生源の切り替えの際に、切り替え後即座に電動式オイルポンプ9の運転を停止すると、油圧作動部7へ供給する油圧が不安定になる可能性があるので、上記のように切り替えの際の電動式オイルポンプ9の作動の停止判断時に、余裕代として所定値ΔPが設けられている。したがって、図8のタイムチャートでも示すように、エンジン1が再始動した後に電動式オイルポンプ9の吐出圧Pが所定値ΔP分昇圧するのを待って、電動式オイルポンプ9の停止が実行される。そのため、エコラン終了時にエンジン1を再始動して電動式オイルポンプ9の作動を停止する際の電動式オイルポンプ9から機械式オイルポンプ2への油圧の発生源の切り替えを確実にかつ円滑に行うことができる。
また、図9のフローチャートで示す制御例は、自動変速機のシフトが、N(ニュートラル)レンジとD(ドライブ)レンジとの間、あるいはNレンジとR(リバース)レンジとの間で頻繁に切り替えられる、いわゆるガレージシフトが行われた場合に好適な制御の例である。すなわち、この図9のフローチャートで示すルーチンは、上記のようなガレージシフトが行われることが制御開始の前提条件となっている。
したがって、例えばシフトレバーの位置を検出するセンサ(図示せず)の検出値などからガレージシフトが実行されることを示す信号が出力されると(ステップS71)、先ず、電動式オイルポンプ9の作動が開始される(ステップS72)。ガレージシフトが行われると、油圧作動部7、特にエンジン1からの動力を自動変速機に伝達・遮断する入力クラッチ(図示せず)を頻繁の動作させることになり、油圧作動部7で必要とされるオイル量が増大する。そのため、通常時の機械式オイルポンプ2による吐出だけでは、オイルおよび油圧が不足する可能性がある。そこで、このステップS72の制御は、ガレージシフトが行われた場合に、機械式オイルポンプ2と共に、電動式オイルポンプ9を併せて作動させることにより、オイルの不足を解消させるためのものである。
次のステップS73で入力クラッチの係合制御が開始されると、その入力クラッチの入力側の回転数Ntと、入力クラッチの出力側の回転数Noutが計測される(ステップS74)。それらの回転数Nt,Noutは、例えば自動変速機内の各部に設けられた回転数センサ(図示せず)などから検出することができる。
そして、それら検出された各回転数Nt,Noutが、互いに等しいか否かが判断される(ステップS75)。すなわち、ここでは入力クラッチの係合状態について確認・判断される。
各回転数Nt,Noutが未だ一致しないことにより、このステップS75で否定的に判断された場合は、上記のステップS74へ戻る。これに対して、各回転数Nt,Noutが互いに等しくなり一致したこと、すなわち入力クラッチの係合が完了したことにより、ステップS75で肯定的に判断された場合には、ステップS76へ進み、電動式オイルポンプ9の作動が停止させられる。そしてその後、このルーチンが一旦終了する。
このように、ガレージシフトが行われ、油圧作動部7の油圧が不足する可能性がある場合に、電動式オイルポンプ9を駆動して油圧の不足分を補填することができる。したがって、電動式オイルポンプ9による油圧のアシストが期待できるため、その分機械式オイルポンプ2としてポンプ容量の低いものを採用することができる。その結果、装置全体を小型・軽量化することができ、ひいては車両の燃費も向上させることができる。
(第2実施例)
図10は、この発明の自動変速機の油圧制御装置HCUの第2実施例における油圧回路の一部を示している。この図10に示す例は、この発明による油圧制御装置HCUを、ベルト式無段変速機に適用した構成の一例である。各部の構成は、基本的に前述の第1実施例で図1に示したものと同じである。したがって、以降の説明においては、前出の図面で説明したものと構成が同じものについては、その前出の図面と同じ参照符号を付けて詳細な説明は省略する。また、オイル供給部4、油圧センサ11、電子制御装置12等の記載も省略している。
ベルト式無段変速機の場合、変速時に動作させる油圧作動部7としては、プーリの溝幅を変更する機構を構成する可動シーブ7sと、エンジン1の動力を伝達・遮断する入力クラッチなどの摩擦係合装置7cとが設けられている。このように、油圧作動部7が複数に別れている場合であっても、この図10で示す構成のように、例えば可動シーブ7sに対する油圧回路に、前述の図1に示す構成の油圧回路における各チェックバルブ5,10およびコントロールバルブ6に対応する各シーブチェックバルブ5s,10sおよびシーブコントロールバルブ6sを設け、また、摩擦係合装置7cに対する油圧回路に、各クラッチチェックバルブ5c,10cおよびクラッチコントロールバルブ6cを設けることにより、前述の第1実施例と同様の作用・効果を奏する油圧制御装置HCUを得ることができる。
(第3実施例)
図11は、この発明の自動変速機の油圧制御装置HCUの第3実施例における油圧回路の一部を示している。この図11に示す例は、電動式オイルポンプ9から油圧作動部7へ到る油圧供給回路(油路)に、油圧作動部7に作用する油圧を所定の設定油圧に設定する調圧機構を設けた構成の一例である。
すなわち、図11において、電動式オイルポンプ9の吐出口9oと可動シーブ7sおよび摩擦係合装置7cとをそれぞれ連通する油路の途中から分岐して、この発明における調圧機構に相当するリリーフバルブ13が設けられている。より具体的には、吐出口9oと可動シーブ7sおよび摩擦係合装置7cとをそれぞれ連通する油路における吐出口9oとシーブチェックバルブ10sおよびクラッチチェックバルブ10cとの間から分岐して、リリーフバルブ13の入力ポート13iが連通されている。さらにその分岐点と入力ポート13iとを連通する油路とリリーフバルブ13のフィードバックポート13fとが連通されている。
そして、このリリーフバルブ13は、フィードバックポート13fに作用する電動式オイルポンプ9の吐出圧が、スプリング13sの弾性力による押圧力よりも高い場合に開いて排圧するように構成されている。したがって、このリリーフバルブ13による調圧機構は、電動式オイルポンプ9の吐出圧をスプリング13sの弾性力等に応じて調圧して設定油圧に設定する構成となっている。なお、リリーフバルブ13が開いた場合に排圧されるオイルは、自動変速機内各部の潤滑や冷却に使用することができる。
このように、電動式オイルポンプ9から油圧作動部7へ到る油圧供給回路内に、油圧作動部7に作用させる油圧を所定の設定油圧に設定することが可能な調圧機構を設けることにより、油圧作動部7に供給する油圧を所望する設定油圧に容易に調圧することができ、油圧作動部7への油圧の供給を効率良く行うことができる。また、例えば何らかのフェールにより、油圧作動部7に供給する油圧が異常に高くなった場合に、リリーフバルブ13が開いて排圧するので、フェールセーフとしての機能も持たせることができる。
また、電動式オイルポンプ9は、エコラン時にエンジン1が停止した際に、機械式オイルポンプ2に代わって油圧を発生することができるものであるが、通常時すなわちエンジン1が運転されている場合に、機械式オイルポンプ2の補助として電動式オイルポンプ9を作動させることもできる。その場合の、ベルト式無段変速機を対象とした制御の一例を、図12のフローチャートに示す。
図12のフローチャートにおいて、先ず、現在の油圧制御装置HCUの運転状態を把握するための各種データが読み込まれる。例えば、機械式オイルポンプ2の回転数Nmp、油温Thoなどが検出され、またその状態における機械式オイルポンプ2の容積効率ηvが回転数Nmpおよび油温Thoに基づき予め設定されたマップなどから求められ、それらの値が電子制御装置12で読み込まれる(ステップS81)。
ステップS81で読み込まれた各種データを基に、機械式オイルポンプ2のオイル吐出量(吐出流量)Qmpが算出される(ステップS82)。また併せて、その時点でベルト式無段変速機に要求されている変速比を設定するために摩擦係合装置7cおよび可動シーブ7sでそれぞれ必要となるオイルの供給量としてクラッチ供給量Qcおよびシーブ供給量Qs、またオイル供給部4で必要となるオイルの供給量として潤滑量Qlub、そして油圧回路内で不可避的に発生するオイル漏れを見込んだ量として漏れ量Qdが算出される(ステップS83)。
ステップS83で算出された各オイル量を基に、油圧制御装置HCU全体で必要となるオイルの吐出量として必要オイル量Qneedが算出される(ステップS84)。例えば、上記のステップS83で求めたクラッチ供給量Qc、シーブ供給量Qs、潤滑量Qlub、漏れ量Qdの総和として必要オイル量Qneedを算出することができる。
そして、上記の各ステップで求めた必要オイル量Qneedとオイル吐出量(吐出流量)Qmpとが比較されて、必要オイル量Qneedがオイル吐出量Qmpよりも大きいか否かが判断される(ステップS85)。必要オイル量Qneedがオイル吐出量(吐出流量)Qmpよりも大きいことにより、このステップS85で肯定的に判断された場合は、ステップS86へ進み、電動式オイルポンプ9が作動させられる。すなわち、必要オイル量Qneedに対して機械式オイルポンプ2のオイル吐出量Qmpが不足している場合に、電動式オイルポンプ9が作動させられてその不足分が補われる。そしてその後、このルーチンを一旦終了する。
これに対して、必要オイル量Qneedがオイル吐出量(吐出流量)Qmp以下であることにより、ステップS85で否定的に判断された場合には、必要オイル量Qneedに対して、電動式オイルポンプ9を作動しなくとも機械式オイルポンプ2のオイル吐出量Qmpだけで足りるため、ステップS87へ進み、電動式オイルポンプ9が非作動の状態にされ、そしてその後、このルーチンを一旦終了する。
このように、この発明の油圧制御装置HCUの構成によれば、通常時にエンジン1の出力により機械式オイルポンプ2で油圧を発生させている際に、その機械式オイルポンプ2の補助として電動式オイルポンプ9を作動させて、オイル吐出量の不足分を補うことができる。そのため、機械式オイルポンプ2のポンプ容量を従来よりも低容量化することができる。その結果、機械式オイルポンプ2の体格を小型・軽量化することができ、装置全体としても小型・軽量化およびコストダウンを図ることができる。
(第4実施例)
図13は、この発明の自動変速機の油圧制御装置HCUの第4実施例における油圧回路の一部を示している。この図13に示す例は、電動式オイルポンプ9から油圧作動部7へ到る油圧供給回路(油路)に、油圧作動部7に作用する油圧を所定の設定油圧に設定する調圧機構を設けた他の構成例である。
すなわち、図13において、電動式オイルポンプ9の吐出口9oと油圧作動部7とをそれぞれ連通する油路の途中に、この発明における調圧機構に相当するリリーフバルブ14が設けられている。このリリーフバルブ14は、油圧作動部7に作用する油圧がフィードバック圧としてフィードバックポート14fに作用する構成となっている。言い換えると、チェックバルブ10を介して吐出口9oと油圧作動部7とをそれぞれ連通する油路に対して並列に、吐出口9oとリリーフバルブ14の入力ポート14iとを連通しかつリリーフバルブ14のフィードバックポート14fと油圧作動部7とを連通する油路が形成されている。
そして、このリリーフバルブ14は、フィードバックポート14fに作用するフィードバック圧すなわち油圧作動部7に作用する油圧が、スプリング14sの弾性力による押圧力よりも高い場合に開いて排圧するように構成されている。したがって、このリリーフバルブ14による調圧機構は、油圧作動部7に作用する油圧をスプリング14sの弾性力等に応じて調圧して設定油圧に設定する構成となっている。なお、リリーフバルブ14が開いた場合に排圧されるオイルは、自動変速機内各部の潤滑や冷却に使用することができる。
このように、電動式オイルポンプ9から油圧作動部7へ到る油圧供給回路内に、油圧作動部7に作用させる油圧を所定の設定油圧に設定することが可能な調圧機構を設けることにより、油圧作動部7に供給する油圧を所望する設定油圧に容易に調圧することができ、油圧作動部7への油圧の供給を効率良く行うことができる。
また、この第4実施例におけるリリーフバルブ14のように、油圧作動部7に作用する油圧をフィードバックポート14fに導いてフィードバック圧とすることにより、油圧作動部7に対する設定油圧を維持するために電動式オイルポンプ9から吐出するオイルの流量を可及的に少なくすることができる。そのため、電動式オイルポンプ9のポンプ容量を低容量化することができ、電動式オイルポンプ9の体格を小型・軽量化することができる。
さらに、油圧作動部7に所望する設定油圧が作用している状態、例えば摩擦係合装置で所望する係合状態が達成されている状態では、その設定油圧がリリーフバルブ14のフィードバックポート14fに作用することにより、リリーフバルブ14が開いて排圧される。したがって、その場合の電動式オイルポンプ9は無負荷状態もしくはごく僅かな負荷しか作用しない状態となるので、電動式オイルポンプ9の電動機8を駆動する際の消費電力を抑制し省電力化を図ることができる。
(第5実施例)
図14は、この発明の自動変速機の油圧制御装置HCUの第5実施例における油圧回路の一部を示している。この図14に示す例は、電動式オイルポンプ9から油圧作動部7へ到る油圧供給回路(油路)に、油圧作動部7に作用する油圧を所定の設定油圧に設定する調圧機構を設けた更に他の構成例である。
すなわち、図14において、電動式オイルポンプ9の吐出口9oと油圧作動部7とを連通する油路の途中から分岐して、この発明における調圧機構に相当するリリーフバルブ15が設けられている。より具体的には、吐出口9oと油圧作動部7とを連通する油路における吐出口9oとチェックバルブ10との間から分岐して、リリーフバルブ15の入力ポート15iが連通されている。さらにその分岐点と入力ポート15iとを連通する油路とリリーフバルブ15のフィードバックポート15fとが連通されている。
そして、このリリーフバルブ15は、前述の第3実施例におけるリリーフバルブ13と同様に、フィードバックポート15fに作用する電動式オイルポンプ9の吐出圧が、スプリング15sの弾性力による押圧力よりも高い場合に開いて排圧するように構成されている。したがって、このリリーフバルブ15による調圧機構は、電動式オイルポンプ9の吐出圧をスプリング15sの弾性力等に応じて調圧して設定油圧に設定する構成となっている。そして、リリーフバルブ15が開いた場合に排圧されるオイルは、特に、油圧作動部7内の潤滑および冷却が必要な部位へ供給されるようになっている。
このように、電動式オイルポンプ9から油圧作動部7へ到る油圧供給回路内に、油圧作動部7に作用させる油圧を所定の設定油圧に設定することが可能な調圧機構を設けることにより、油圧作動部7に供給する油圧を所望する設定油圧に容易に調圧することができ、油圧作動部7への油圧の供給を効率良く行うことができる。
また、この第5実施例におけるリリーフバルブ15では、油圧作動部7に作用する油圧をフィードバック圧とすることにより、油圧作動部7に対する設定油圧を維持するために電動式オイルポンプ9から吐出するオイルの流量を可及的に少なくすることができる。そのため、電動式オイルポンプ9のポンプ容量を低容量化することができ、電動式オイルポンプ9の体格を小型・軽量化することができる。
さらに、油圧作動部7に所望する設定油圧が作用している状態、例えば摩擦係合装置で所望する係合状態が達成されている状態では、その設定油圧がリリーフバルブ15のフィードバックポート15fに作用することにより、リリーフバルブ15が開いて排圧される。したがって、その場合電動式オイルポンプ9は無負荷状態もしくはごく僅かな負荷しか作用しない状態となるので、電動式オイルポンプ9の電動機8を駆動する際の消費電力を抑制し省電力化を図ることができる。油圧作動部7に所望する設定油圧が作用している状態、例えば摩擦係合装置で所望する係合状態が達成されている状態では、リリーフバルブ15が開いて排圧され、その排圧されたオイルが油圧作動部7内の潤滑・冷却の必要部位へ供給される。そのため、油圧作動部7の作動時、例えば摩擦係合装置での係合時に、摩擦材などの潤滑・冷却が必要となる部位に潤滑・冷却用のオイルを確実に供給することができる。
(第6実施例)
図15は、この発明の自動変速機の油圧制御装置HCUの第6実施例における油圧回路の一部を示している。この図15に示す例は、電動式オイルポンプ9から油圧作動部7へ到る油圧供給回路(油路)に、油圧作動部7に作用する油圧を所定の設定油圧に設定する調圧機構を設けた構成であって、特にベルト式無段変速機を対象とした構成の例である。
すなわち、図15において、電動式オイルポンプ9の吐出口9oと可動シーブ7sとを連通する油路の途中から分岐して、この発明における調圧機構に相当するリリーフバルブ16が設けられている。より具体的には、吐出口9oと可動シーブ7sとを連通する油路における吐出口9oとシーブチェックバルブ10sとの間から分岐して、リリーフバルブ16の入力ポート16iが連通されている。さらにその分岐点と入力ポート16iとを連通する油路とリリーフバルブ16のフィードバックポート16fとが連通されている。そしてリリーフバルブ16の出力ポート(もしくはドレーンポート)16oと摩擦係合装置7cとが連通されている。
そして、このリリーフバルブ16は、フィードバックポート16fに作用する電動式オイルポンプ9の吐出圧が、スプリング16sの弾性力による押圧力よりも高い場合に開いて、その入力ポート16iと出力ポート16oとを連通する、すなわち電動式オイルポンプ9の吐出口9oと摩擦係合装置7cとを連通するように構成されている。
したがって、このリリーフバルブ16による調圧機構は、電動式オイルポンプ9から吐出されて可動シーブ7sに作用する油圧をスプリング16sの弾性力等に応じて調圧して設定油圧に設定する構成となっていて、可動シーブ7sに作用する油圧が設定油圧に調圧された後に、リリーフバルブ16が開いて電動式オイルポンプ9の吐出口9oと摩擦係合装置7cとが連通される。すなわち摩擦係合装置7cに対する油圧の供給が開始される。
このように、電動式オイルポンプ9から油圧作動部7へ到る油圧供給回路内に、油圧作動部7に作用させる油圧を所定の設定油圧に設定することが可能な調圧機構を設けることにより、油圧作動部7に供給する油圧を所望する設定油圧に容易に調圧することができ、油圧作動部7への油圧の供給を効率良く行うことができる。
また、この第6実施例のように、リリーフバルブ16を用いて可動シーブ7sおよび摩擦係合装置7cに電動式オイルポンプ9の吐出圧を供給する回路を構成することにより、電動式オイルポンプ9で発生させた油圧を可動シーブ7sおよび摩擦係合装置7cに供給する場合、先ず初めに、可動シーブ7sに対して油圧が供給されて可動シーブ7sに作用する設定油圧が確保され、その後に、摩擦係合装置7cに対して油圧が供給される。すなわち、電動式オイルポンプ9により可動シーブ7sおよび摩擦係合装置7cに油圧を供給する場合は、可動シーブ7sに対して優先的に油圧が供給される。そのため、可動シーブ7sを作動させてプーリの溝幅を変化させるベルト式無段変速機における変速制御を、ベルト滑りに対して安全側で実行することができ、ベルト式無段変速機の信頼性を向上させることができる。
なお、図16は、上記の第6実施例の変形例であり、その変形例における油圧回路の一部を示している。この図16に示す例は、上記の図15に示した構成のリリーフバルブ16に替えて、チェックバルブ17を用いてこの発明における調圧機構を構成した例である。
すなわち、図16において、電動式オイルポンプ9の吐出口9oと可動シーブ7sとを連通する油路の途中から分岐して、チェックバルブ17が設けられている。より具体的には、吐出口9oと可動シーブ7sとを連通する油路における吐出口9oとシーブチェックバルブ10sとの間から分岐して、チェックバルブ17の入力ポート17iが連通されている。そしてチェックバルブ17の出力ポート17oと摩擦係合装置7cとが連通されている。
このチェックバルブ17は、上記のように電動式オイルポンプ9の吐出口9oと摩擦係合装置7cとの間に設けられて、摩擦係合装置7cから吐出口9oへの方向のオイルの流動を制止するとともに、吐出口9oから摩擦係合装置7cへの方向のオイルの流動を許容するいわゆる逆流防止弁(逆止弁)であり、さらに吐出口9oから摩擦係合装置7cへの方向に作用する油圧に対向する方向の荷重を発生させるスプリング17sが設けられている。そのため、電動式オイルポンプ9の吐出圧がスプリング17sの弾性力による押圧力よりも高い場合にのみ開いて、その入力ポート17iと出力ポート17oとを連通する、すなわち電動式オイルポンプ9の吐出口9oと摩擦係合装置7cとを連通するように構成されている。
この図16に示す変形例の構成においても、スプリング17sの弾性力を適宜に調整することにより、前述の第6実施例の場合と同様の作用・効果を得ることができる。
(第7実施例)
図17は、この発明の自動変速機の油圧制御装置HCUの第7実施例における油圧回路の一部を示している。この図17に示す例は、油圧作動部7の動作状態を設定する変速油圧を制御するためのコントロールバルブ6として、所定の制御油圧が作用する場合に開弁するノーマリークローズ特性の切替弁を用いた構成の一例である。
油圧作動部7の動作状態を設定するための変速油圧を制御するコントロールバルブ6すなわちこの発明における変速制御弁には、変速制御における油圧制御の制御応答性や制御のし易さの観点から、ノーマリークローズ特性のものを適用するのが好ましい。しかしながら、例えば前述の第1実施例の構成におけるコントロールバルブ6に対して、例えば図18に示すようなノーマリークローズ特性のセレクトバルブ200を用いたとすると、油圧の発生源を機械式オイルポンプ2から電動式オイルポンプ9へ切り替える際に、機械式オイルポンプ2で発生させていた油圧PLが降下してノーマリークローズ特性のセレクトバルブ200に対する制御油圧Psolが0になると、セレクトバルブ200が閉状態になるとともにそのドレーンポート200dが開いた状態になる。その状態で電動式オイルポンプ9で油圧Pmを発生させ、その油圧Pmによってオイルを吐出すると、その電動式オイルポンプ9からのオイルがセレクトバルブ200のドレーンポート200dから大量に漏れ出てしまう可能性がある。そこで、この発明における油圧制御装置HCUでは、変速制御弁にノーマリークローズ特性のものを用いた場合であっても、油圧の発生源の切り替えを適切に行うことができるよう、以下のように構成されている。
すなわち、図17において、この発明の変速制御弁に相当するコントロールバルブ6が、セレクトバルブ18により構成されている。このセレクトバルブ18は、いわゆるノーマリークローズ特性(常時閉型)の制御弁であって、入力ポート18iおよび出力ポート18oと、制御油圧を作用させる制御ポート18cと、その制御ポート18cの油圧の作用方向に対向する方向に出力ポート18oの吐出圧をフィードバック圧として作用させるフィードバックポート18fと、制御ポート18cの油圧の作用方向に対向する方向の荷重を発生させるスプリング18sとを有している。
そして、その制御ポート18cに所定の制御油圧が作用した場合に、入力ポート18iと出力ポート18oとの間を連通し、かつドレーンポート18dを閉じるとともに、制御ポート18cに制御油圧が作用しない場合には、入力ポート18iと出力ポート18oとの間を遮断し、かつドレーンポート18dを開くように構成されている。
また、そのセレクトバルブ18の入力ポート18iにチェックバルブ5の吐出側が連通され、出力ポート18oに油圧作動部7が連通されている。そして制御ポート18cには、所定の切替機構19を介して、機械式オイルポンプ2の吐出圧を基にソレノイドバルブ20などによって調圧された信号圧Psol、もしくは電動式オイルポンプ9の吐出圧Pmが、制御油圧として入力される構成となっている。なお、切替機構19は、例えば一般的な切替弁などから構成されるものであって、入力される信号圧Psolと吐出圧Pmとのいずれか一方を選択して制御ポート18cへ制御油圧として出力するように構成されている。
そして、セレクトバルブ18の制御ポート18cの受圧面積をApm、セレクトバルブ18のフィードバックポート18fの受圧面積をAfb、セレクトバルブ18のスプリング18sの荷重をW、電動式オイルポンプ9の吐出圧をPmとすると、電動式オイルポンプ9の作動時に、
Apm>Afb+W/Pm
の関係式が成立するように、セレクトバルブ18の各ポート18c,18fの形状寸法、およびスプリング18sの形状寸法・材質あるいはばね定数などが設定されている。
このように、セレクトバルブ18の各部の形状寸法あるいはばね定数等を設定し、またそのセレクトバルブ18を設けた油圧回路を構成することにより、ノーマリークローズ特性のセレクトバルブ18を用いて、この発明における変速制御弁を構成することができる。すなわち、油圧の発生源を機械式オイルポンプ2から電動式オイルポンプ9へ切り替える際には、電動式オイルポンプ9が油圧を発生するのに伴って、その電動式オイルポンプ9の吐出圧Pmが制御油圧としてセレクトバルブ18の制御ポート18cに作用するので、セレクトバルブ18は開状態となって入力ポート18iと出力ポート18oとが連通されるとともに、ドレーンポート18dが閉じられる。したがって、油圧の発生源を切り替える際に、セレクトバルブ18のドレーンポート18dが開放状態になることがない。そのため、油圧回路内におけるオイル漏れを低減することができ、自動変速機の効率を向上させることができる。
そして、変速制御弁としてノーマリークローズ特性のセレクトバルブ18を適用できるので、変速制御の際にセレクトバルブ18により制御して油圧作動部7に供給する変速油圧を、セレクトバルブ18の制御油圧に対してリニアに制御することができ、変速制御のための油圧制御を容易にし、またその油圧制御の応答性も向上させることができる。
(第8実施例)
図19は、この発明の自動変速機の油圧制御装置HCUの第8実施例における油圧回路の一部を示している。この図19に示す例は、油圧作動部7の動作状態を設定する変速油圧を制御するためのコントロールバルブ6として、所定の制御油圧が作用する場合に開弁するノーマリークローズ特性の切替弁を用いた他の構成例である。
すなわち、この第8実施例におけるセレクトバルブ18は、機械式オイルポンプ2の吐出圧PLを元圧とするモジュレート圧Pmodと、電動式オイルポンプ9の吐出圧Pmとのいずれか大きい方がマックスセレクト圧として選択され、そのマックスセレクト圧を基にソレノイドバルブ21によって調圧された信号圧Psolが、制御油圧として制御ポート18cに入力される構成となっている。
具体的には、この図19において、機械式オイルポンプ2の吐出口2oとソレノイドバルブ21の制御ポート21cとが、チェックバルブ22を介して連通されている。チェックバルブ22は、いわゆる逆流防止弁(逆止弁)であって、機械式オイルポンプ2の吐出口2oとソレノイドバルブ21の制御ポート21cとを連通する油路において、吐出口2oから制御ポート21c側へのオイルの流動を許容し、反対に、制御ポート21c側から吐出口2oへのオイルの流動を制止する構成となっている。
また、電動式オイルポンプ9の吐出口9oが、上記のチェックバルブ22とソレノイドバルブ21とを連通する油路の途中に、チェックバルブ23を介して連通されている。チェックバルブ23は、上記のチェックバルブ22と同様の構成であって、電動式オイルポンプ9の吐出口9oとソレノイドバルブ21の制御ポート21cとを連通する油路において、吐出口9oから制御ポート21c側へのオイルの流動を許容し、反対に、制御ポート21c側から吐出口9oへのオイルの流動を制止する構成となっている。
そして、ソレノイドバルブ21の出力ポート21oと、セレクトバルブ18の制御ポート18cとが連通されている。すなわち、ソレノイドバルブ21によって調圧されてその出力ポート21oから出力される信号圧Psolが、制御油圧としてセレクトバルブ18の制御ポート18cに入力されるように構成されている。
すなわち、各チェックバルブ22,23は、オイルの流動を許容する方向が互いに対向するように配置されていて、各チェックバルブ22,23のいずれか一方が開いている場合には、他方は必ず閉じることになる。言い換えると、各チェックバルブ22,23により区画され、またその間からソレノイドバルブ21に連通している部分では、作用する油圧が高い方のチェックバルブ22(もしくは23)のみが開いて、その油圧がソレノイドバルブ21の制御ポート21cに作用することになる。
したがって、機械式オイルポンプ2の吐出圧PLを元圧とするモジュレート圧Pmodと、電動式オイルポンプ9の吐出圧Pmとのいずれか大きい方が選択され、その選択された油圧が、この発明におけるマックスセレクト圧としてソレノイドバルブ21の制御ポート21cに作用させられ、そのソレノイドバルブ21の吐出ポート21oから出力される信号圧Psolが、制御油圧としてセレクトバルブ18の制御ポート18cに作用する構成となっている。
そして、ソレノイドバルブ21からの信号圧Psolが作用するセレクトバルブ18の制御ポート18cの受圧面積をAsol、セレクトバルブ18のフィードバックポート18fの受圧面積をAfb、セレクトバルブ18のスプリング18sの荷重をW、電動式オイルポンプ9の吐出圧をPmとすると、電動式オイルポンプ9の作動時に、
Asol>Afb+W/Pm
の関係式が成立するように、セレクトバルブ18の各ポート18c,18fの形状寸法、およびスプリング18sの形状寸法・材質あるいはばね定数などが設定されている。
このように、セレクトバルブ18の各部の形状寸法あるいはばね定数等を設定し、またそのセレクトバルブ18を設けた油圧回路を構成することにより、前述の第7実施例の構成と同様に、ノーマリークローズ特性のセレクトバルブ18を用いて、この発明における変速制御弁を構成することができる。そのため、変速時に油圧作動部7に作用させる油圧を制御する際の制御応答性や制御のし易さを向上させることができる。また、油圧回路内におけるオイル漏れを低減することができ、自動変速機の効率を向上させることができる。
そして、この第8実施例の構成では、流動方向を対向して配置させた2つのチェックバルブ22,23を用いて、機械式オイルポンプ2の吐出圧PLに基づくモジュレート圧Pmodと、電動式オイルポンプ9の吐出圧Pmとの大きい方を選択して変速制御用のセレクトバルブ18の制御ポート18cに作用させることができる。そのため、特別な制御を行うことなく油圧の発生源の切り替えを容易に行うことができ、油圧制御の精度を向上させることができる。また、前述の第7実施例の構成と比較して切替機構19が不要となるので、その分装置の構成を簡素化することができる。
なお、図20は、上記の第8実施例の構成における変形例であり、その変形例における油圧回路の一部を示している。この図20に示す例は、上記の図19に示した構成の各チェックバルブ22,23に替えて、いわゆるマックスセレクト型のセレクトバルブ24を用いてこの発明におけるマックスセレクト圧を変速制御用のセレクトバルブ18の制御ポート18cに作用させるように構成した例である。
すなわち、図20において、機械式オイルポンプ2の吐出口2oおよび電動式オイルポンプ9の吐出口9oと、ソレノイドバルブ21の制御ポート21cとが、セレクトバルブ24を介して連通されている。具体的には、機械式オイルポンプ2の吐出口2oとセレクトバルブ24の入力ポート24aとが連通されている。また、電動式オイルポンプ9の吐出口9oとセレクトバルブ24の入力ポート24bとが連通されている。そして、セレクトバルブ24の出力ポート24oとソレノイドバルブ21の制御ポート21cとが連通されている。このセレクトバルブ24は、いわゆるマックスセレクト型の切替弁であって、併設されている2つの入力ポート24a,24bのうち作用する油圧が高い方が選択され、その選択された方の入力ポート24a(もしくは24b)と出力ポート24oとを連通するように構成されている。
したがって、この図20に示す変形例におけるセレクトバルブ24は、前述の図19に示す第8実施例の構成で流動方向を対向して配置させた2つのチェックバルブ22,23と同様の機能を持つ構成であり、それら2つのチェックバルブ22,23と置き換えることができる。そして、この図20に示す変形例の構成においても、前述の図19に示す第8実施例の場合と同様の作用・効果を得ることができる。
(第9実施例)
図21は、この発明の自動変速機の油圧制御装置HCUの第9実施例における油圧回路の一部を示している。この図21に示す例は、油圧作動部7の動作状態を設定する変速油圧を制御するためのコントロールバルブ6として、所定の制御油圧が作用する場合に開弁するノーマリークローズ特性の切替弁を用いた更に他の構成例である。
すなわち、この第9実施例におけるセレクトバルブ18は、機械式オイルポンプ2の吐出圧PLを元圧とするモジュレート圧Pmodを基にソレノイドバルブ25によって調圧された信号圧Psolと、電動式オイルポンプ9の吐出圧Pmとのいずれか大きい方がマックスセレクト圧として選択され、そのマックスセレクト圧が、制御油圧Paとして制御ポート18cに入力される構成となっている。
具体的には、図21において、機械式オイルポンプ2の吐出口2oとソレノイドバルブ25の制御ポート25cとが連通されている。そして、ソレノイドバルブ25の出力ポート25oとセレクトバルブ18の制御ポート18cとが、チェックバルブ26を介して連通されている。チェックバルブ26は、いわゆる逆流防止弁(逆止弁)であって、ソレノイドバルブ25の出力ポート25oとセレクトバルブ18の制御ポート18cとを連通する油路において、出力ポート25oから制御ポート18c側へのオイルの流動を許容し、反対に、制御ポート18c側から出力ポート25oへのオイルの流動を制止する構成となっている。
また、電動式オイルポンプ9の吐出口9oが、上記のチェックバルブ25とセレクトバルブ18とを連通する油路の途中に、チェックバルブ27を介して連通されている。チェックバルブ27は、上記のチェックバルブ25と同様の構成であって、電動式オイルポンプ9の吐出口9oとセレクトバルブ18の制御ポート18cとを連通する油路において、吐出口9oから制御ポート18c側へのオイルの流動を許容し、反対に、制御ポート18c側から吐出口9oへのオイルの流動を制止する構成となっている。
すなわち、各チェックバルブ26,27は、オイルの流動を許容する方向が互いに対向するように配置されていて、各チェックバルブ26,27のいずれか一方が開いている場合には、他方は必ず閉じることになる。言い換えると、各チェックバルブ26,27により区画され、またその間からセレクトバルブ18に連通している部分では、作用する油圧が高い方のチェックバルブ26(もしくは27)のみが開いて、その油圧がセレクトバルブ18の制御ポート18cに作用することになる。
したがって、機械式オイルポンプ2の吐出圧PLを元圧とするモジュレート圧Pmodを基にソレノイドバルブ25により調圧された信号圧Psolと、電動式オイルポンプ9の吐出圧Pmとのいずれか大きい方が選択され、その選択された油圧、すなわちこの発明におけるマックスセレクト圧が、制御油圧Paとしてセレクトバルブ18の制御ポート18cに作用する構成となっている。
そして、制御油圧Paが作用するセレクトバルブ18の制御ポート18cの受圧面積をAsol、セレクトバルブ18のフィードバックポート18fの受圧面積をAfb、セレクトバルブ18のスプリング18sの荷重をW、電動式オイルポンプ9の吐出圧をPmとすると、電動式オイルポンプ9の作動時に、
Asol>Afb+W/Pm
の関係式が成立するように、セレクトバルブ18の各ポート18c,18fの形状寸法、およびスプリング18sの形状寸法・材質あるいはばね定数などが設定されている。
このように、セレクトバルブ18の各部の形状寸法あるいはばね定数等を設定し、またそのセレクトバルブ18を設けた油圧回路を構成することにより、前述の第7,第8実施例の構成と同様に、ノーマリークローズ特性のセレクトバルブ18を用いて、この発明における変速制御弁を構成することができる。そのため、変速時に油圧作動部7に作用させる油圧を制御する際の制御応答性や制御のし易さを向上させることができる。また、油圧回路内におけるオイル漏れを低減することができ、自動変速機の効率を向上させることができる。
また、この第9実施例の構成では、機械式オイルポンプ2の吐出圧PLに基づくモジュレート圧Pmodを調圧して信号圧Psolを出力するソレノイドバルブ25の出力側に、流動方向を対向して配置させた2つのチェックバルブ26,27を配置し、それら2つのチェックバルブ26,27を用いて、信号圧Psolと電動式オイルポンプ9の吐出圧Pmとの大きい方を選択して変速制御用のセレクトバルブ18の制御ポート18cに作用させることができる。そのため、特別な制御を行うことなく油圧の発生源の切り替えを容易に行うことができ、油圧制御の精度を向上させることができる。
そして、この第9実施例の構成では、比較的オイルの漏れが多くなるチェックバルブ周辺の構成が、ソレノイドバルブ25の出力側に設けられているので、チェックバルブ周辺の構成が、出力側よりも油圧が高いソレノイドバルブ21の入力側に設けられている前述の第8実施例の構成と比べて、チェックバルブ周辺でのオイルの漏れ量が少なくなる。したがって、その分だけ油圧回路内におけるオイル漏れを低減することができ、自動変速機の効率を向上させることができる。
なお、図22は、上記の第9実施例の構成における変形例であり、その変形例における油圧回路の一部を示している。この図22に示す例は、上記の図21に示した構成の各チェックバルブ26,27に替えて、いわゆるマックスセレクト型の切替弁を用いてこの発明におけるマックスセレクト圧を変速制御用のセレクトバルブ18の制御ポート18cに作用させるように構成した例である。
すなわち、図22において、ソレノイドバルブ25の出力ポート25oおよび電動式オイルポンプ9の吐出口9oと、セレクトバルブ18の制御ポート18cとが、セレクトバルブ28を介して連通されている。具体的には、ソレノイドバルブ25の出力ポート25oとセレクトバルブ28の入力ポート28aとが連通されている。また、電動式オイルポンプ9の吐出口9oとセレクトバルブ28の入力ポート28bとが連通されている。そして、セレクトバルブ28の出力ポート28oとセレクトバルブ18の制御ポート18cとが連通されている。このセレクトバルブ28は、いわゆるマックスセレクト型の切替弁であって、併設されている2つの入力ポート28a,28bのうち作用する油圧が高い方が選択され、その選択された方の入力ポート28a(もしくは28b)と出力ポート28oとを連通するように構成されている。
したがって、この図22に示す変形例におけるセレクトバルブ28は、前述の図21に示す第9実施例の構成で流動方向を対向して配置させた2つのチェックバルブ26,27と同様の機能を持つ構成であり、それら2つのチェックバルブ26,27と置き換えることができる。そして、この図22に示す変形例の構成においても、前述の図21に示す第9実施例の場合と同様の作用・効果を得ることができる。
(第10実施例)
図23は、この発明の自動変速機の油圧制御装置HCUの第10実施例における油圧回路の一部を示している。この図23に示す例は、油圧作動部7の動作状態を設定する変速油圧を制御するためのコントロールバルブ6として、所定の制御油圧が作用する場合に開弁するノーマリークローズ特性の切替弁を用いた構成例であって、前述の各実施例でこの発明の油圧保持機構を構成していたチェックバルブ5,10を省いた構成の一例である。
すなわち、図23において、この第10実施例におけるセレクトバルブ18は、その入力ポート18iが、機械式オイルポンプ2の吐出口2oに連通されている。また、出力ポート18oが、油圧作動部7に連通されている。また、その出力ポート18oの吐出圧をフィードバック圧としてフィードバックポート18fに作用させるようになっている。さらに、制御ポート18cに、例えば図示しないソレノイドバルブなどから信号圧Psolが供給されるようになっている。そして、ドレーンポート18dが、セレクトバルブ29を介して電動式オイルポンプ9の吐出口9oに連通されている。
より具体的には、セレクトバルブ29は、その入力ポート29iが、電動式オイルポンプ9の吐出口9oに連通されている。また、出力ポート29oが、セレクトバルブ18のドレーンポート18dに連通されている。そしてこのセレクトバルブ29は、制御ポート29cに電動式オイルポンプ9の吐出圧Pmが作用するようになっていて、さらに、その制御ポート29cの油圧の作用方向に対向する方向の荷重を発生させるスプリング29sが設けられている。
そして、このセレクトバルブ29は、入力ポート29iと出力ポート29oとの間を連通しかつドレーンポート29dを閉じた状態と、入力ポート29iと出力ポート29oとの間を遮断しかつドレーンポート29dを開いた状態とに切り替えられるように構成されている。
すなわち、このセレクトバルブ29は、電動式オイルポンプ9が油圧を発生させ、その吐出圧Pmが、制御ポート29cに制御圧として作用する場合に、入力ポート29iと出力ポート29oとの間を連通しかつドレーンポート29dを閉じた状態を設定し、反対に、制御ポート29cに吐出圧Pmが作用しない場合には、入力ポート29iと出力ポート29oとの間を遮断しかつドレーンポート29dを開いた状態を設定する構成となっている。
そのため、電動式オイルポンプ9で油圧を発生させてその吐出圧Pmが制御ポート29cに作用する場合には、セレクトバルブ29の入力ポート29iと出力ポート29oとが連通されることにより、電動式オイルポンプ9の吐出口9oとセレクトバルブ18のドレーンポート18dとが連通される。したがって、セレクトバルブ18のドレーンポート18dを通して、電動式オイルポンプ9の吐出口9oと油圧作動部7とを直接連通させることができ、その結果、電動式オイルポンプ9の吐出圧Pmを直接油圧作動部7に供給することができる。
より具体的には、電動式オイルポンプ9の吐出圧をPm、その吐出圧Pmが作用するセレクトバルブ29の制御ポート29cの受圧面積をAk、セレクトバルブ29のスプリング29sの荷重をWkとすると、電動式オイルポンプ9の作動時に、
Pm>Wk/Ak
の関係式を満足させることにより、コントロールバルブ6すなわちセレクトバルブ18の各部の構成や油圧回路内の各部の油圧の関係に関わらず、電動式オイルポンプ9の吐出口9oと油圧作動部7とが直接連通された状態になる。そして電動式オイルポンプ9が吐出するオイルが油圧作動部7に確実に供給される。
このように、この第10実施例の構成では、前述の第7,第8,第9実施例の構成と同様に、ノーマリークローズ特性のセレクトバルブ18を用いて、この発明における変速制御弁を構成することができる。そのため、変速時に油圧作動部7に作用させる油圧を制御する際の制御応答性や制御のし易さを向上させることができる。また、油圧回路内におけるオイル漏れを低減することができ、自動変速機の効率を向上させることができる。
さらに、この第10実施例の構成では、セレクトバルブ18の各部の構成や油圧回路内の各部の油圧の関係に関わらずに、電動式オイルポンプ9の作動時に、その電動式オイルポンプ9が吐出するオイルを直接油圧作動部7に供給可能な回路を構成することができるので、セレクトバルブ18の各部の構成を設定する際もしくはセレクトバルブ18を選定する際の自由度を拡大することができる。
そして、この第10実施例の構成では、電動式オイルポンプ9からセレクトバルブ29およびセレクトバルブ18を介して油圧作動部7へ至る油圧回路部分で、その油圧作動部7に作用する油圧を保持する油圧保持機構を兼ねることができる。すなわち、例えば、前述の各実施例の構成においてこの発明の油圧保持機構を構成していたチェックバルブ5,10を省くことができる。そのため、装置の構成を簡素化することができ、また装置の信頼性も向上させることができる。
(第11実施例)
図24は、この発明の自動変速機の油圧制御装置HCUの第11実施例における油圧回路の一部を示している。この図24に示す例は、前述の第10実施例と同様、油圧作動部7の動作状態を設定する変速油圧を制御するためのコントロールバルブ6として、所定の制御油圧が作用する場合に開弁するノーマリークローズ特性の切替弁を用いた構成例であって、前述の各実施例でこの発明の油圧保持機構を構成していたチェックバルブ5,10を省いた他の構成例である。
すなわち、図24において、この第11実施例では、前述の第10実施例におけるセレクトバルブ29に替えて、2つの制御ポート30c,30fおよび2つのドレーンポート30d,30eを有するセレクトバルブ30が設けられていて、セレクトバルブ18のドレーンポート18dが、そのセレクトバルブ30を介して電動式オイルポンプ9の吐出口9oに連通されている。
より具体的には、セレクトバルブ30は、その入力ポート30iが、電動式オイルポンプ9の吐出口9oに連通されている。また、出力ポート30oが、セレクトバルブ18のドレーンポート18dに連通されている。また、このセレクトバルブ30は、制御ポート30cに電動式オイルポンプ9の吐出圧Pmが作用するようになっていて、さらに、その制御ポート30cの油圧の作用方向に対向する方向の油圧を作用させる制御ポート30fが、機械式オイルポンプ2の吐出口2oに連通されている。そして、他方のドレーンポート30eが、例えば前述のオイル供給部4などの、冷却もしくは潤滑のためにオイルの供給が必要な部位に連通されている。また、一方のドレーンポート30dは、例えばオイルパン3などに連通されていて、そのドレーンポート30dから排圧されるようになっている。
そして、このセレクトバルブ30は、入力ポート30iと出力ポート30oとの間を連通しかつ各ドレーンポート30d,30eをいずれも閉じた状態と、入力ポート30iと出力ポート30oとの間を遮断しかつ各ドレーンポート30d,30eをいずれも開いた状態とに切り替えられるように構成されている。
すなわち、このセレクトバルブ30は、電動式オイルポンプ9が油圧を発生させ、その吐出圧Pmが、一方の制御ポート30cに制御圧として作用しかつ他方の制御ポート30fに作用する機械式オイルポンプ2の吐出圧PLよりも大きい場合に、入力ポート30iと出力ポート30oとの間を連通し、かつ各ドレーンポート30d,30eをいずれも閉じた状態を設定し、反対に、機械式オイルポンプ2が油圧を発生させ、その吐出圧PLが、他方の制御ポート30fに制御圧として作用しかつ一方の制御ポート30cに作用する電動式オイルポンプ9の吐出圧Pmよりも大きい場合、もしくは一方の制御ポート30cに吐出圧Pmが作用しない場合には、入力ポート30iと出力ポート30oとの間を遮断し、かつ入力ポート30iとドレーンポート30eとの間を連通し、かつ出力ポート30oとドレーンポート30dとの間を連通した状態を設定する構成となっている。
そのため、セレクトバルブ30の制御ポート30cに作用する電動式オイルポンプ9の吐出圧Pmが、セレクトバルブ30の制御ポート30fに作用する機械式オイルポンプ2の吐出圧PLよりも大きい場合は、セレクトバルブ30の入力ポート30iと出力ポート30oとが連通されることにより、電動式オイルポンプ9の吐出口9oとセレクトバルブ18のドレーンポート18dとが連通される。したがって、セレクトバルブ18のドレーンポート18dを通して、電動式オイルポンプ9の吐出口9oと油圧作動部7とを直接連通させることができ、その結果、電動式オイルポンプ9の吐出圧Pmを直接油圧作動部7に供給することができる。
一方、セレクトバルブ30の制御ポート30cに作用する電動式オイルポンプ9の吐出圧Pmが、セレクトバルブ30の制御ポート30fに作用する機械式オイルポンプ2の吐出圧PLよりも小さい場合には、セレクトバルブ30の入力ポート30iと出力ポート30oとの間が遮断されるとともに、セレクトバルブ30のドレーンポート30dとセレクトバルブ18のドレーンポート18dとが連通され、そしてセレクトバルブ30のドレーンポート30eと例えばオイル供給部4とが連通される。したがって、電動式オイルポンプ9の吐出圧Pmを無駄に排圧させることなく、その吐出圧Pmにより電動式オイルポンプ9から吐出されるオイルを、例えばオイル供給部4などの潤滑・冷却のためのオイル必要部位に供給することができる。
このように、この第11実施例の構成では、前述の第7,第8,第9,第10実施例の構成と同様に、ノーマリークローズ特性のセレクトバルブ18を用いて、この発明における変速制御弁を構成することができる。そのため、変速時に油圧作動部7に作用させる油圧を制御する際の制御応答性や制御のし易さを向上させることができる。また、油圧回路内におけるオイル漏れを低減することができ、自動変速機の効率を向上させることができる。
さらに、この第11実施例の構成では、前述の第10実施例の構成により得られる作用・効果に加えて、機械式オイルポンプ2により油圧作動部7に油圧が作用させられている場合に、電動式オイルポンプ9によりオイル供給4等のオイル必要部位にオイルを供給することができる。すなわち、機械式オイルポンプ2によるオイルの供給が不足するような場合に、電動式オイルポンプ9でアシストすることができる。
(第12実施例)
図25は、この発明の自動変速機の油圧制御装置HCUの第12実施例における油圧回路の一部を示している。この図25に示す例は、油圧作動部7の動作状態を設定する変速油圧を制御するためのコントロールバルブ6として、所定の制御油圧が作用する場合に開弁するノーマリークローズ特性の切替弁を用いた構成の一例であって、通常時に機械式オイルポンプ2の吐出圧を元圧とする制御圧を、フィードバック圧と同方向に作用させるように構成した例である。
前述したように、油圧作動部7の動作状態を設定するための変速油圧を制御するコントロールバルブ6すなわちこの発明における変速制御弁には、変速制御における油圧制御の制御応答性や制御のし易さの観点から、ノーマリークローズ特性のものを適用するのが好ましい。そのために、例えば前述の第7ないし第9実施例のように構成することにより、ノーマリークローズ特性のセレクトバルブ18を用いてこの発明における変速制御弁を構成することができ、油圧制御の制御応答性や制御のし易さを向上させることができる。しかしながら、そのように構成した場合であっても、油圧制御装置HCUの油圧発生源を機械式オイルポンプ2から電動式オイルポンプ9に切り替える際には、電動式オイルポンプ9の吐出圧Pmが所定の油圧以上に昇圧する僅かな期間は、セレクトバルブ18は閉じた状態すなわちドレーンポート18dが開いた状態になっていて、そのドレーンポート18dからのオイル漏れが不可避的に発生する。そこで、この第12実施例で示すこの発明の油圧制御装置HCUでは、油圧発生源の切替時に生じるオイル漏れを可及的に低減することができるよう、以下のように構成されている。
すなわち、図25において、この発明の変速制御弁に相当するコントロールバルブ6が、セレクトバルブ31により構成されている。このセレクトバルブ31は、前述のセレクトバルブ18と同様に、いわゆるノーマリークローズ特性(常時閉型)の制御弁であって、入力ポート31iおよび出力ポート31oと、制御油圧を作用させる制御ポート31cと、その制御ポート31cの油圧の作用方向に対向する方向に出力ポート31oの吐出圧をフィードバック圧として作用させるフィードバックポート31fとを有している。そしてこのセレクトバルブ31は、制御ポート31cの油圧の作用方向と同じ方向の荷重を発生させるスプリング31sを有していて、さらに、制御ポート31cの油圧の作用方向に対向する方向に機械式オイルポンプ2の吐出圧PLに基づくモジュレート圧Pmodを作用させるもう1つの制御ポート31gを有している。
また、セレクトバルブ31のフィードバックポート31fの受圧面積をAfb、セレクトバルブ31のスプリング31sの荷重をW、電動式オイルポンプ9の吐出圧をPmとすると、電動式オイルポンプ9の作動時に、
Pm×Afb<W
の関係式が成立するように、セレクトバルブ31のフィードバックポート31fの形状寸法、およびスプリング31sの形状寸法・材質あるいはばね定数などが設定されている。
したがって、このセレクトバルブ31は、その制御ポート31cに、ソレノイドバルブ20によって調圧された信号圧Psolが作用する場合、および機械式オイルポンプ2の吐出圧PLが低下して、信号圧Psolおよびモジュレート圧Pmodが共に0となる場合に、入力ポート31iと出力ポート31oとの間を連通し、かつドレーンポート31dを閉じるように構成されている。そして、例えば電動式オイルポンプ9の吐出圧Pmが設定圧以上に上昇し、そのためフィードバックポート31fに所定値以上のフィードバック圧が作用する場合などに、入力ポート31iと出力ポート31oとの間を遮断し、かつドレーンポート31dを開くように構成されている。
そして、電動式オイルポンプ9がこの油圧制御装置HCUの油圧発生源として作動してオイルを吐出している状態において、セレクトバルブ31の制御ポート31cの受圧面積をAsol、セレクトバルブ31の制御ポート31gの受圧面積をAmod、セレクトバルブ31のフィードバックポート31fの受圧面積をAfb、セレクトバルブ31のスプリング31sの荷重をW、電動式オイルポンプ9の吐出圧をPm、機械式オイルポンプ2の吐出圧(もしくはライン圧)をPL、ソレノイドバルブ20により調圧されて制御ポート31cに入力される信号圧をPsol、そして油圧作動部7に作用して保持されるクラッチ圧をPcとすると、油圧作動部7に供給する油圧のコントロールバルブ6としてのセレクトバルブ31の調圧特性を示す調圧式は、
Pc=(Asol/Afb)×Psol−W/Afb+Pmod×Amod/Afb ・・・・・(1)
として表すことができる。
上記の(1)式で表されるセレクトバルブ31の調圧式は、図26に示すような調圧特性図において、直線A(実線)で表される。ここで、例えば前述の図18に示す比較例の構成におけるセレクトバルブ200の調圧特性を示す調圧式は、
Pc=(Asol/Afb)×Psol−W/Afb ・・・・・(2)
として表すことができ、これを上記の図26の調圧特性図上で示すと、直線B(一点鎖線)で表される。このように、この第12実施例のようにしてノーマリークローズ特性のセレクトバルブ31を用いた油圧回路を構成することにより、セレクトバルブ31の調圧式の切片を、比較例と比べてより原点に近づけることができ、油圧作動部7に対する油圧制御の制御性が向上する。
このように、この第12実施例の構成では、ノーマリークローズ特性のセレクトバルブ31を用いて、この発明における変速制御弁を構成することができる。そしてその場合のセレクトバルブ31の調圧特性を、例えば油圧作動部7に作用させる油圧のコントロールバルブ6(すなわちセレクトバルブ31)の制御圧と、その油圧作動部7に作用させる油圧との関係に基づく調圧特性図において、原点近傍から立ち上がる態様のものにすることができ、そのため、変速時に油圧作動部7に作用させる油圧を制御する際の制御応答性や制御のし易さを一層向上させることができる。
また、機械式オイルポンプ2から電動式オイルポンプ9への油圧発生源の切り替えをスムーズに実行することができ、油圧回路内におけるオイル漏れを可及的に低減することができる。その結果、電動式オイルポンプ9の小型・軽量化を図ることでき、また、自動変速機の効率を向上させることができる。
なお、この発明は上述した具体例に限定されない。例えば、上記の各実施例の構成において、この発明の副オイルポンプとして設けられている電動式オイルポンプ9は、図27に示すような、従来一般的なソレノイドバルブの基本構造を応用して油圧を発生させる構成のポンプ32(いわゆるバルブポンプ、ソレノイドポンプ、電磁弁ポンプ等)に置き換えることができる。その構成を簡単に説明しておくと、図27において、バルブポンプ32は、電磁コイル33が備えられたコイル部32cと、オイルの流動を一方向に規制する逆止弁34,35およびオイルの吸入・排出が行われる油室36などから構成されるバルブ(ポンプ)部32vと、油室36内を往復動作するプランジャ32pとから構成されている。
逆止弁34は、バルブポンプ32の吸入口32iにおいて、吸入口32iから油室36内へのオイルの流動を許容し、反対に油室36内から吸入口32iの外側へのオイルの流動を制止する構成となっている。また、逆止弁35は、バルブポンプ32の吐出口32oにおいて、油室36内から吐出口32oの外側へのオイルの流動を許容し、反対に、吐出口32oから油室36内へのオイルの流動を制止する構成となっている。そして、プランジャ32pは、電磁コイル33の電磁力の作用により油室36内を往復動作するように構成されている。
そして電磁コイル33に供給する電流を制御することにより、プランジャ32pを油室36内で高速で往復動させることができる。そのため、そのプランジャ32pの往復動作に伴なって、油室36内においてオイルの吸入と吐出とを繰り返し行うことができ、バルブポンプ32を往復動型の容積ポンプとして機能させることができる。したがって、このようなバルブポンプ32をこの発明における副オイルポンプとして適用することにより、例えばブラシレス型の回転モータを動力源として備える電動式オイルポンプ9を用いた場合と比較して、装置の構成をより簡素化し、また小型・軽量化することができる。
また、上記の具体例では、この発明で対象とする自動変速機として、有段式の自動変速機と、ベルト式無段変速機を例に挙げて説明しているが、例えば、前述したようにトロイダル型(もしくはトラクション式)の無段変速機も対象とすることができる。あるいは、手動変速機における変速操作を所定の油圧作動機構により自動制御するようないわゆるセミオートマティック式の変速機の油圧制御などに適用することもできる。