JP2012241226A - 絶縁被覆アルミニウム導体、絶縁被膜およびその形成方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明のアルミニウム導体は、純アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる基材と該基材の外表面を被覆する絶縁被膜とからなる絶縁被覆アルミニウム導体であって、その絶縁被膜は、基材上に形成された比表面積が25m2/g以上ある陽極酸化皮膜からなることを特徴とする。陽極酸化皮膜の比表面積が25m2/g以上となると、その比抵抗および耐破壊電圧が正に桁違いに急増する。このような陽極酸化皮膜で被覆されたアルミニウム導体は高い絶縁性を発現する。しかも陽極酸化皮膜は耐熱性にも優れる。従って本発明のアルミニウム導体は、高温環境下等でも優れた絶縁性を発揮する。
【選択図】図2A
Description
(1)本発明の絶縁被覆アルミニウム導体は、純アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる基材と該基材の外表面を被覆する絶縁被膜とからなる絶縁被覆アルミニウム導体であって、前記絶縁被膜は、前記基材上に形成された比表面積が25m2/g以上ある陽極酸化皮膜からなることを特徴とする。
本発明は絶縁被覆アルミニウム導体としてのみならず、そのアルミニウム導体を被覆する上記の陽極酸化皮膜からなる絶縁被膜としても把握できる。
本発明は、その絶縁被膜の形成方法としても把握できる。すなわち本発明は、純アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる基材を陽極として酸性水溶液中で該基材へ直流電圧を連続的に印加する成膜工程を備え、上述した絶縁被膜が形成されることを特徴とする絶縁被膜の形成方法でもよい。
(1)本明細書でいう陽極酸化皮膜の比表面積は、BET窒素吸着法による算出値に基づいて特定した。すなわち、流動法(キャリアーガス法)により、ヘリウムを非吸着気体、窒素を吸着質として、JIS Z8830:2001に準じた測定を行って比表面積を求めた。このとき試料の脱ガスは、100℃で30分間行った。また測定データの評価は多点法で行った。この比表面積が、30m2/g以上、35m2/g以上、40m2/g以上、45m2/g以上さらには50m2/g以上であると、高絶縁性の陽極酸化皮膜をより確実に得ることができて好適である。
1a 陽極酸化皮膜
1b 基材
本発明に係る陽極酸化皮膜は、従来よりも格段に優れた絶縁性を示す。本発明では、その形態等まで限定するものではないが、前述したように、比表面積の特定値(臨界値)を境にして、陽極酸化皮膜の形態等が変化していると考えられる。
本発明に係る基材は、純アルミニウムまたはアルミニウム合金(以下単に「アルミニウム」という。)からなる。アルミニウムの組成等は問わないが、純アルミニウムに近い方が、均一的な陽極酸化皮膜が形成され易いと考えられる。
(1)陽極酸化処理
本発明の絶縁被膜である陽極酸化皮膜は、陽極酸化処理液(電解液)中で基材に通電する陽極酸化処理により形成される。この陽極酸化処理液は、例えば、硫酸水溶液、燐酸水溶液、クロム酸水溶液等の無機酸液でも、蓚酸水溶液等の有機酸液でもよい。本発明では陽極酸化処理液の種類を問わないが、陽極酸化皮膜の柔軟性や処理の経済性等の点で硫酸水溶液を用いると好ましい。この際、硫酸水溶液の濃度は、5〜40質量%さらには10〜35質量%程度であると好ましい。この濃度が過小では陽極酸化皮膜の形成が遅く、濃度が過大では陽極酸化皮膜の耐食性が低下するため好ましくない。また陽極酸化処理液(特に硫酸水溶液)の温度は0〜40℃さらには10〜30℃程度であると好ましい。この温度が過小では陽極酸化皮膜の形成が遅く、温度が過大では陽極酸化皮膜の溶解速度が速くなり好ましくない。
本発明に係る陽極酸化皮膜は、陽極酸化処理されたままでも良いが、その後に適宜、封孔処理、熱処理、塗装等の後処理がされてもよい。例えば、封孔処理を行うことにより、陽極酸化皮膜中に形成された細孔が封じられ、絶縁被覆アルミニウム導体の耐食性の向上が図られる。この封孔処理は周知であり、例えば、陽極酸化処理後の基材を沸騰水または高圧蒸気に曝すことにより行える。なお、封孔処理により陽極酸化皮膜の比抵抗や耐電圧等が多少変動し得るが、本発明に係る陽極酸化皮膜は著しく優れた絶縁性を発揮するため、封孔処理による絶縁性への影響は相対的に僅かである。
本発明の絶縁被覆アルミニウム導体の用途は問わない。例えば、高絶縁性が要求されるモータのコイルや配線等に利用されると好適である。特に、高い絶縁性と共に、絶縁被膜を薄くして導体の占積率を向上させたり、導体で生じた熱を効率的に放熱させることなどが要求される機器等に、本発明の絶縁被覆アルミニウム導体は好適である。
《試料の製造》
(1)基材
陽極酸化皮膜を形成する基材として純アルミニウム(JIS A1070)からなる円板状の試験片(直径25mm×厚み2mm)を用意した。陽極酸化皮膜を形成する試験片の処理面は、表面粗さ(Rz)1μmとした。
硫酸水溶液(陽極酸化浴)中に試験片を浸し、その試験片(処理面)を陽極、白金電極を陰極として通電して、陽極酸化処理を行った。この際、処理面を除く試験片の他面は絶縁テープによりマスキングして、処理面と白金電極の間で通電がされるようにした。陽極酸化浴中の硫酸濃度(質量%)および温度と両極間に印加する電圧(成膜電圧)とを表1に示すように種々調整して、複数の試料を製造した。なお、いずれの試料も、陽極酸化処理時間は10分間とした。また陽極酸化処理後、陽極酸化浴から取り出した各試験片は蒸留水でよく洗浄した後、圧縮空気を吹き付けて水分を十分に除去し、さらに大気中で24時間乾燥させた。このようにして得られる試料を、表1に示した同一条件毎に2ずつ製造して、後述する比抵抗および耐破壊電圧の測定にそれぞれ供した。
(1)比抵抗
各試料の比抵抗(電気抵抗率)を図1Aに示す方法により求めた。すなわち、各試料1の基材1b上に生成された陽極酸化皮膜1aへ、銀ペーストgを介して直径12.5mmの電極T1をつける。また基材1bの反対面側にも電極T2をつける。これらの電極間に100Vの直流電圧を印加して、閉回路中を流れる電流を測定する。測定された電流値(I)、印加した電圧値(V)、電極T1の電極面積(S1)および陽極酸化皮膜1aの厚さ(t)とから、オームの法則に基づいて比抵抗(ρ=(V/I)・S/t)を算出した。なお、陽極酸化皮膜1aの厚み(t)は、この比抵抗の測定後に観察した試料1の断面写真から求めた。
各試料の耐破壊電圧は、図1Bに示すように、JIS H8687に沿って測定した。すなわち、大気中で、接触端面が直径6mmの球面状をした端子Pを、100gの荷重Fで、陽極酸化皮膜1a上に接触させる。この端子Pと基材1bの反対側に設けた電極Nとの間に、25V/秒で昇圧する直流電圧を印加する。この閉回路中を流れる漏洩電流が5mAを超えた時点の電圧値を測定する。
各試料の陽極酸化皮膜の比表面積(単位質量あたりの表面積)を次のようにして求めた。すなわち、先ず、上述した比抵抗や耐破壊電圧の測定に供した試料を、アルカリ溶液中に浸漬して、基材部分を溶解させる。そのアルカリ溶液を濾別して得られた陽極酸化皮膜の残渣を乾燥させた。この残渣の比表面積を、既述したBET窒素吸着法により測定した。
試料No.1と試料No.C1の陽極酸化皮膜の断面を、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)によって観察した様子をそれぞれ図3Aおよび図3Bに示した。
(1)表1、図2Aおよび図2Bからわかるように、比表面積が25m2/gとなる付近で、比抵抗および耐破壊電圧は急激な臨界的変化を示すことがわかる。つまり、比表面積が25m2/g以上となる陽極酸化皮膜の比抵抗は、109(Ω・m)レベルから1010〜1014(Ω・m)レベルに、正に桁違いに急増することが明らかとなった。
Claims (4)
- 純アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる基材と該基材の外表面を被覆する絶縁被膜とからなる絶縁被覆アルミニウム導体であって、
前記絶縁被膜は、前記基材上に形成された比表面積が25m2/g以上ある陽極酸化皮膜からなることを特徴とする絶縁被覆アルミニウム導体。 - 前記陽極酸化皮膜は、厚み方向に延在する非ストレート状の孔体が集合した多孔質体からなる請求項1に記載の絶縁被覆アルミニウム導体。
- 請求項1または2に記載の陽極酸化皮膜からなることを特徴とする絶縁被膜。
- 純アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる基材を陽極として酸性水溶液中で該基材へ直流電圧を連続的に印加する成膜工程を備え、
請求項1〜3のいずれかに記載の絶縁被膜が形成されることを特徴とする絶縁被膜の形成方法。
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