JP2020019987A - アルミニウム部材及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、簡便な一次処理で得られる、白色度が高く、白色ムラが抑制されたアルミニウム部材及びその製造方法を提供することを目的とする。【解決手段】本発明のアルミニウム部材は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる母材と、該母材の表面上に陽極酸化被膜とを有する。また、前記陽極酸化被膜は、前記母材の表面上に形成されたバリア層と、該バリア層上に形成されたポーラス層とを有し、前記陽極酸化被膜のBET比表面積が、0.1〜10.0m2/gである。【選択図】図1

Description

本発明は、アルミニウム部材及びその製造方法に関し、特に、二次処理以上の複雑な工程を要せず、簡便な一次処理で得られる、白色度が高く、白色ムラが抑制されたアルミニウム部材及びその製造方法に関する。
建材、電子機器の筐体等の軽量化、意匠性が要求される用途において、不透明白色を有するアルミニウム部材が望まれている。しかしながら、不透明白色は、アルミニウム部材の陽極酸化処理において適用される一般的な染色および着色方法によっては達成することが困難な色調である。そこで、従来から、不透明白色を有するアルミニウム系材料の製造について検討されている。
特許文献1には、BET比表面積が規定された白色度の高い水酸化アルミニウムが開示されている。しかしながら、特許文献1では、白色度の対象は水酸化アルミニウムであり、純アルミニウム又はアルミニウム合金ではない。また、特許文献1には、水酸化アルミニウム粉末表面上の物理吸着水分を調整するためにBET比表面積を制御することが記載されているものの、白色度の向上がどのように達成されるかについては言及されていない。
一方、特許文献2には、アルミニウム表面を陽極酸した後、酸処理、後水和処理及び焼成工程を順次行うことにより、得られるアルマイトのBET比表面積を高める技術が開示されている。しかしながら、特許文献2では、BET比表面積が高められたアルマイトについて記載されているものの、白色度について言及されていない。また、特許文献2に記載されている技術では、所望とするBET比表面積を得るために、二次処理以上の複雑な工程が必要とされる。そのため、従来技術よりも簡便な工程で、高い白色度を有するアルミニウム部材の製造方法の開発が望まれている。また、意匠性の観点から、アルミニウム部材の白色ムラをできる限り抑制し、外観特性にも優れていることが好ましい。
特許第3575150号公報 特開2002−119856号公報
本発明は、簡便な一次処理で得られる、白色度が高く、白色ムラが抑制されたアルミニウム部材及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記問題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、陽極酸化被膜においてBET比表面積を適切な範囲に制御することで、アルミニウム部材の白色度が高まり、さらには白色ムラを抑制できることを見出した。また、特定の組成を有する電解液を用いてアルミニウム部材の陽極酸化処理を行うことにより、二次処理以上の複雑な工程を経ず、簡便な一次処理で、白色度が高く、白色ムラが抑制されたアルミニウム部材が得られることを見出した。
本発明の態様は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる母材と、該母材の表面上に陽極酸化被膜とを有し、前記陽極酸化被膜が、前記母材の表面上に形成されたバリア層と、該バリア層上に形成されたポーラス層とを有し、前記陽極酸化被膜のBET比表面積が、0.1〜10.0m/gである、アルミニウム部材である。
本発明の態様は、前記陽極酸化被膜の表面側から測定した前記アルミニウム部材のハンター白色度が65以上である、アルミニウム部材である。
本発明の態様は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる母材を準備する工程と、前記母材に対して、(a)無機酸である第1の酸又はその塩と、(b)二リン酸、三リン酸及びポリリン酸からなる群から選択される少なくとも一種の第2の酸又はその塩と、を含む電解液中で陽極酸化処理を行う工程と、を有する、アルミニウム部材の製造方法である。
前記陽極酸化処理を行う工程において、前記電解液中の第1の酸又はその塩の濃度が0.005〜7.0mol・dm−3であり、前記電解液中の第2の酸又はその塩の濃度が0.005〜10.0mol・dm−3である、アルミニウム部材の製造方法である。
前記陽極酸化処理を行う工程において、電流密度が2〜150mA・cm−2であり、かつ電解時間が10〜700分である、アルミニウム部材の製造方法である。
本発明により、簡便な一次処理で得られる、白色度の高いアルミニウム部材、及びその製造方法を提供することができる。特に、アルミニウム部材のハンター白色度が65以上であることにより、アルミニウム部材は所望とする不透明白色を有すると共に、アルミニウム部材に優れた意匠性を付与することができる。
図1は、本発明に係るアルミニウム部材の一実施形態を模式的に表す概略図である。 図2は、実施例3で得られたアルミニウム部材の陽極酸化被膜の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により撮影した画像である。
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することができる。
<アルミニウム部材>
本発明に係るアルミニウム部材は、母材と、母材の表面上に陽極酸化被膜とを有する。以下、一実施形態に係るアルミニウム部材の構成要素について説明する。
(母材)
母材は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなり、アルミニウム部材の用途に応じて適宜、選択することができる。例えば、アルミニウム部材の強度を高くする観点から、母材は、5000系アルミニウム合金又は6000系アルミニウム合金であることが好ましい。また、陽極酸化処理後のアルミニウム部材の白色度をより高くする観点から、母材は、陽極酸化処理による着色が起こりにくい1000系アルミニウム合金又は6000系アルミニウム合金であることが好ましい。
(陽極酸化被膜)
陽極酸化被膜は、母材の表面上に形成されたバリア層と、該バリア層上に形成されたポーラス層とを有する。陽極酸化被膜の厚さは、特に限定されるものではないが、100μm以下であることが好ましく、80μm以下であることが好ましい。陽極酸化被膜の厚さが100μmを超えると、電解時間が長くなり、生産性の低下を招く上、不均一成長に伴うムラが発生して外観不良となる傾向にある。
バリア層の厚さは、特に限定されるものではないが、干渉による着色を抑制し、白色度をより高くする観点から、10〜150nmであることが好ましい。
ポーラス層は、第1及び第2の孔を有する。第1の孔は、ポーラス層とバリア層の境界からポーラス層の厚さ方向に伸びる。このように第1の孔は、ポーラス層のバリア層側(ポーラス層とバリア層の境界及びその近傍)に位置し、ポーラス層の厚さ方向(母材の表面に略垂直な方向)に伸びる。
第2の孔は、第1の孔に連通すると共に、ポーラス層の表面に向かってポーラス層の厚さ方向を放射状に分岐して伸びる。すなわち、第2の孔は、ポーラス層の表面に近づくにつれて、一つの孔から所定の角度で分岐して一つ以上の孔が伸び、さらにこの孔から所定の角度で分岐して一つ以上の孔が伸びる、というように一つの孔から分岐した一つ以上の孔が所定の角度範囲に広がって存在する。第2の孔は、ポーラス層の厚さ方向に沿ってポーラス層の表面に向かって、逆樹枝状に広がって伸長する。このように、第2の孔は、ポーラス層の表面側(ポーラス層の表面及びその近傍)に位置する。なお、「ポーラス層の表面」とは、ポーラス層の互いに対向する二つの面のうちバリア層に接する面と反対の面を意味する。そのため、ポーラス層をその厚さ方向に平行な断面で見ると、母材側からポーラス層の表面側に向かって順に、第1の孔及び第2の孔が存在する。
ポーラス層の厚さは、特に限定されるものではないが、6μm以上100μm未満であることが好ましく、8〜75μmであることがより好ましく、10〜50μmであることがさらに好ましい。ポーラス層の厚さが6μm未満では、乱反射による光の拡散が不十分となるため、陽極酸化被膜が透明になりやすい。陽極酸化被膜が透明になると、アルミニウム部材全体での色調が母材の色調に近くなるため、所望とする白色度が得ることが困難となる。尚、ポーラス層の厚さの上限値である100μm未満は、陽極酸化被膜の厚さの上限値である100μmに基づく。
図1は、本発明に係るアルミニウム部材の一実施形態を模式的に表す概略図である。図1に示すように、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる母材1の表面上に、陽極酸化被膜2が形成されている。陽極酸化被膜2は、母材1の表面上に形成されたバリア層3と、バリア層3上に形成されたポーラス層4とを有する。尚、図1は概略図であるため、ポーラス層4の孔構造は模式的に示している。そのため、図1のポーラス層4中、実際には第1の孔及び第2の孔が存在するが、図1では、これらの構造は図示していない。
(比表面積)
陽極酸化被膜のBET比表面積は、0.1〜10.0m/gであり、0.5〜8.0m/gであることがより好ましく、1.0〜6.0m/gであることがさらに好ましい。BET比表面積が0.1m/gより小さいと、可視光が陽極酸化皮膜中を透過しやすくなり、アルミニウム部材の十分な白色化を達成できず、白色ムラも多く発生しやすい。一方、BET比表面積が10.0m/gより大きいと、可視光を十分に乱反射することができず、同様にアルミニウム部材の十分な白色化を達成できず、白色ムラも多く発生する。また、BET比表面積をより厳密に制御することにより、白色度をより高くすることができ、さらには白色ムラもより抑制することができる。
陽極酸化被膜の表面側から測定したアルミニウム部材のハンター白色度は、65以上であることが好ましく、70以上であることがより好ましく、75以上であることがさらに好ましく、80以上であることが特に好ましい。ハンター白色度とは、JIS P8123の規格に準拠して得られるハンター白色度試験方法により測定された数値である。この数値が100に近いほど、アルミニウム部材が高い白色度(不透明白色度)を有することを意味する。アルミニウム部材のハンター白色度が65以上であることにより、アルミニウム部材は所望とする不透明白色を有すると共に、アルミニウム部材に優れた意匠性を付与することができる。
<アルミニウム部材の製造方法>
本発明に係るアルミニウム部材の製造方法は、母材を準備する工程と、母材に対して特定の電解液中で陽極酸化処理を行う工程とを有する。すなわち、一次処理として所定の陽極酸化処理が行われれば、該一次処理とは異なるさらなる電解液の使用、陽極酸化処理後に続く他の複雑な処理等、さらなる二次処理、三次処理を行わなくても所望とする高い白色度を有するアルミニウム部材を作製することができる。このように、本発明に係るアルミニウム部材の製造方法では、簡便な一次処理で白色度の高いアルミニウム部材を提供することができるため、より効率的に白色度の高いアルミニウム部材を製造することができる。以下、一実施形態に係るアルミニウム部材の製造方法における各工程について、詳細に説明する。
(母材を準備する工程)
最初に、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる母材を準備する。アルミニウム合金としては特に限定されるものではないが、上述のように、1000系アルミニウム合金、5000系アルミニウム合金又は6000系アルミニウム合金を挙げることができる。
(母材に対して陽極酸化処理を行う工程)
陽極酸化処理は、母材に対して、(a)無機酸である第1の酸又はその塩と、(b)二リン酸、三リン酸及びポリリン酸からなる群から選択される少なくとも一種の第2の酸又はその塩と、を含む電解液中で行う。陽極酸化処理により、母材の表面上に、所定の厚さのバリア層と、バリア層上に所定の厚さを有する第1の孔及び第2の孔を有するポーラス層と、を有する陽極酸化被膜が形成される。尚、第1の孔はバリア層側に位置し、ポーラス層の厚さ方向に伸びる孔である。また、第2の孔は、ポーラス層の表面側に位置し、ポーラス層の厚さ方向をポーラス層の表面に向かって放射状に分岐して伸びる孔である。
無機酸である第1の酸又はその塩は、バリア層表面の凹部上で被膜の形成と溶解のために使用され、陽極酸化被膜の厚み方向に伸びる孔を形成する作用を有する。一方で、二リン酸、三リン酸及びポリリン酸からなる群から選択される少なくとも一種の第2の酸又はその塩は、凹部の壁面上に繊維状に伸びる構造を形成する作用を有する。このように、陽極酸化処理において、特定の第1の酸又はその塩と、特定の第2の酸又はその塩の両方を含む電解液を使用することにより、これらの物質が相乗的に作用し、第1の孔及び第2の孔を有するポーラス層が形成されるものと考えられる。これにより、陽極酸化被膜のBET比表面積を所定の範囲に制御することができ、その結果、白色度が高いアルミニウム部材を、陽極酸化処理による一次処理で作製することができる。
第1の酸としての無機酸は、特に限定されるものではないが、亜硫酸、硫酸、チオ硫酸及び二硫酸からなる群から選択されることが好ましく、このような無機酸の塩として、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム及びチオ硫酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも一種の硫酸塩であることが好ましい。
二リン酸、三リン酸及びポリリン酸からなる群から選択される第2の酸又はその塩は、特に限定されるものではないが、二リン酸、三リン酸又はポリリン酸の無水酸の他、これら無水酸の塩として、リン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム及びメタリン酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも一種のリン酸塩であることが好ましい。これらの無水酸とその塩の中でも、規則的な形状の第2の孔を安定的に形成できる観点から、第2の酸又はその塩は、二リン酸、三リン酸及びポリリン酸からなる群から選択される少なくとも一種のリン酸であることが好ましい。
電解液中の第1の酸又はその塩の濃度は、0.005〜7.0mol・dm−3であることが好ましく、0.01〜2.0mol・dm−3であることがより好ましく、0.05〜1.5mol・dm−3であることがさらに好ましい。第1の酸又はその塩の濃度が0.005mol・dm−3未満では、母材の陽極酸化処理を有効に行うことができない傾向にあり、一方、第1の酸又はその塩の濃度が7.0mol・dm−3を超えると、電解液の溶解力が高くなり、ポーラス層の被膜を成長させることが困難となる場合がある。
電解液中の第2の酸又はその塩の濃度は、0.005〜10.0mol・dm−3であることが好ましく、0.01〜5.0mol・dm−3であることがより好ましい。第2の酸又はその塩の濃度が0.005mol・dm−3未満では、ポーラス層内に第2の孔を形成することができない傾向にあり、一方、第2の酸又はその塩の濃度が10.0mol・dm−3を越えると、ポーラス層内に第2の孔を周期的に形成しにくくなり、ポーラス層が薄くなるおそれがある。そのため、第2の酸又はその塩の濃度を0.005〜10.0mol・dm−3の範囲に制御することにより、ポーラス層を一定の厚さまで十分に成長させると共に、ポーラス層上に周期的に第2の孔を形成することができ、これにより、アルミニウム部材の白色度をより向上させることができる。
陽極酸化処理時の電流密度は、2〜150mA・cm−2であることが好ましく、5〜50mA・cm−2であることがより好ましく、5〜30mA・cm−2であることがさらに好ましく、10〜20mA・cm−2であることが特に好ましい。電流密度が2mA・cm−2以上であることにより、ポーラス層の成膜速度を早めつつ、十分な厚さの陽極酸化被膜を得ることができる。また、電流密度が150mA・cm−2以下であることにより、陽極酸化反応が均一に起こる。これにより、陽極酸化被膜に対する焼け、白色ムラ等を有効に抑制できる。
陽極酸化処理時の電解液の温度(液温)は0〜80℃であることが好ましく、20〜60℃であることがより好ましい。電解液の温度が0℃以上であることにより、ポーラス層内に第2の孔を形成しやすくなる。また、電解液の温度が80℃以下であることにより、ポーラス層が適度な速度で溶解すると共にポーラス層の成長が促進し、陽極酸化被膜の膜厚が厚くなり、これにより、アルミニウム部材の白色度を向上させることができる。
陽極酸化処理時の電解時間は、10〜700分であることが好ましく、10〜600分であることがより好ましく、20〜300分であることがさらに好ましく、30〜120分であることが特に好ましい。電解時間が10分未満では、陽極酸化被膜の膜厚が薄く、所望の厚さの陽極酸化被膜が得られない傾向にあり、一方、電解時間が700分を超えても原理上膜厚をさらに厚くすることができない上、生産効率が悪くなるため、好ましくない。
陽極酸化処理を行う前に、必要に応じて、母材に対して脱脂処理、研磨処理等の下地処理を行ってもよい。例えば、下地処理としてアルカリ脱脂処理を行うことにより、陽極酸化被膜のグロス値を低くし、艶のない白色を呈するアルミニウム部材を得ることができる。一方、下地処理として化学研磨、機械研磨、電解研磨等の研磨処理を行うことにより、陽極酸化処理のグロス値を高くし、艶のある白色を呈するアルミニウム部材を得ることができる。アルミニウム部材の白色度及びグロス値をより高くする観点からは、陽極酸化処理を行う前に、母材に電解研磨処理を行うことが好ましい。また、母材に対して陽極酸化処理を行った後、必要に応じて、封孔処理等の後処理を行ってもよい。
以下に、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1〜32、比較例1〜3]
下記表1に示す条件で、アルミニウム部材の原料である母材を準備し、母材に対して所定の電解液中で陽極酸化処理を行い、実施例1〜32及び比較例1〜3のアルミニウム部材を作製した。尚、実施例1〜32及び比較例2、3の各アルミニウム部材においては、陽極酸化被膜の厚さが100μm以下になるように、電解時間は10分以上の条件で陽極酸化処理を行った。また、表1中に母材合金種として記載されている「1100」は、1000系アルミニウム合金であり、「6063」は6000系アルミニウム合金である。
実施例1〜32及び比較例1〜3で得られたアルミニウム部材について、下記に示す測定及び評価を行った。これらの測定及び評価結果を表2に示す。なお、ハンター白色度、白色ムラ、第1の孔及び第2の孔の確認、BET比表面積は、以下のように測定した。また、表2中の「判定」については、ハンター白色度が65以上であり、かつ白色ムラが「△」又は「○」である場合を「○」とし、それ以外のものを「×」とした。
<ハンター白色度>
得られたアルミニウム部材について、JIS Z8781−4:2013規定の国際照明委員会(CIE)で規格化されたLを測色計で測定し、下記式(1)によりハンター白色度に換算したものを用いて評価した。
ハンター白色度=100−{(100−L+a*2+b*21/2・・・(1)
<白色ムラ>
陽極酸化処理後の各実施例、比較例のサンプルを目視で外観観察した。外観観察により、均一に陽極酸化されている場合を「○」、白色ムラの程度が低い場合を「△」、多くの白色ムラが発生した場合又は陽極酸化されていない場合を「×」と評価した。
<陽極酸化被膜の比表面積>
陽極酸化処理後の各実施例、比較例のサンプルについて、BET比表面積測定装置(BELSORP miniII:マイクロトラック・ベル社製)を用いてBET比表面積を測定した。
<第1の孔及び第2の孔の確認>
バリア層、ポーラス層、ポーラス層中の第1の孔及び第2の孔の存在の有無の確認については、FE−SEM(SU−8230:日立ハイテクノロジー社製)を使用して、陽極酸化被膜の表面及び断面を観察した結果を利用した。断面の観察には、陽極酸化処理後の各実施例、比較例のサンプルをV字曲げすることで生じた被膜の割れに対して傾斜をつけて観察した。
表1、2に示されるように、アルミニウム合金からなる母材に対して、所定の第1の酸又はその塩と、所定の第2の酸又はその塩の両方を含む電解液中で陽極酸化処理を行うことにより得られた実施例1〜32のアルミニウム部材では、陽極酸化被膜は、母材の表面上に形成されたバリア層と、バリア層上に形成されたポーラス層を有し、さらに、ポーラス層には、第1の孔及び第2の孔の両方の存在が確認された。また、実施例1〜32のアルミニウム部材は、陽極酸化被膜のBET比表面積が0.10〜10.00m/gであり、白色ムラの評価も「△」又は「○」であった。このため、実施例1〜32では、高い白色度を有し、白ムラの発生も抑制されていることから外観特性に優れたアルミニウム部材を得ることができた。特に、実施例1〜5、7〜10、13〜21、23〜27、29〜32では、70以上のより高いハンター白色度を有し、白ムラの発生もさらに抑制されていることから、外観特性をさらに向上したアルミニウムを得ることができた。
また、バリア層、ポーラス層、ポーラス層中の第1の孔及び第2の孔の存在の確認の一例として、図2に、実施例3で作製したアルミニウム部材が有する陽極酸化被膜の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により撮影した画像を示す。図2に示されるように、ポーラス層4のバリア層側には、バリア層3の表面に対して垂直に伸びる第1の孔6の存在が確認された。また、ポーラス層4の表面側には、第1の孔6のそれぞれに連通するように、放射状に広がって伸びる逆樹枝状の形態の第2の孔5の存在が確認された。
一方、比較例1では、母材に対して、下地処理として5質量%のNaOHを用いてアルカリ脱脂を行ったのみであり陽極酸化処理を行わなかった。そのため、母材は陽極酸化されていないことから、ポーラス層が形成されておらず、BET比表面積も本発明の規定の範囲外であり、得られたアルミニウム部材のハンター白色度も低かった。
同様に、比較例2では、電解液中に所定の第1の酸又はその塩に相当する物質が含まれていないため、ポーラス層中に第1の孔及び第2の孔の両方の存在を確認できず、また、BET比表面積も本発明の規定の範囲外であった。そのため、ハンター白色度も低く、多くの白色ムラが発生した。
一方、比較例3では、電解液中に所定の第2の酸又はその塩に相当する物質が含まれていないため、ポーラス層中に第2の孔の存在を確認できず、また、BET比表面積も本発明の規定の範囲外であった。また、ポーラス層中に第2の孔が形成されていないため、高いハンター白色度を示すアルミニウム部材を得ることができなかった。
1 母材
2 陽極酸化被膜
3 バリア層
4 ポーラス層
5 第2の孔
6 第1の孔

Claims (5)

  1. アルミニウム又はアルミニウム合金からなる母材と、該母材の表面上に陽極酸化被膜とを有し、
    前記陽極酸化被膜が、前記母材の表面上に形成されたバリア層と、該バリア層上に形成されたポーラス層とを有し、
    前記陽極酸化被膜のBET比表面積が、0.1〜10.0m/gであることを特徴とするアルミニウム部材。
  2. 前記陽極酸化被膜の表面側から測定した前記アルミニウム部材のハンター白色度が65以上である、請求項1に記載のアルミニウム部材。
  3. アルミニウム又はアルミニウム合金からなる母材を準備する工程と、
    前記母材に対して、(a)無機酸である第1の酸又はその塩と、(b)二リン酸、三リン酸及びポリリン酸からなる群から選択される少なくとも一種の第2の酸又はその塩と、を含む電解液中で陽極酸化処理を行う工程と、
    を有する、請求項1または2に記載のアルミニウム部材の製造方法。
  4. 前記陽極酸化処理を行う工程において、
    前記電解液中の第1の酸又はその塩の濃度が0.005〜7.0mol・dm−3であり、
    前記電解液中の第2の酸又はその塩の濃度が0.005〜10.0mol・dm−3である、請求項3に記載のアルミニウム部材の製造方法。
  5. 前記陽極酸化処理を行う工程において、
    電流密度が2〜150mA・cm−2であり、かつ電解時間が10〜700分である、請求項3または4に記載のアルミニウム部材の製造方法。
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