JP2017075383A - アルミニウム部材及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】従来よりも白色度の高いアルミニウム部材及びその製造方法を提供する。【解決手段】アルミニウム部材1は、アルミニウムまたはアルミニウム合金よりなる母材2と、母材2の表面上に形成された陽極酸化皮膜3とを有している。陽極酸化皮膜3は、母材2上に形成された厚さ300〜800nmのバリア層31と、バリア層31上に形成され、多数の孔321を有する厚さ10〜100μmの多孔質層32とを有している。アルミニウム部材1は、到達電圧を100〜300Vに制御したポーラス型陽極酸化処理を母材2に施し、次いで、到達電圧を200〜500Vに制御したバリア型陽極酸化処理を母材2に施すことにより作製することができる。【選択図】図1

Description

本発明は、アルミニウム部材及びその製造方法に関する。
建材や電子機器の筐体等の、意匠性が要求される用途において、不透明白色を呈するアルミニウム部材が望まれている。例えば、特許文献1には、Cu(銅):0.05〜4.0%を含むアルミニウム合金材にシュウ酸浴中で陽極酸化処理を施すことにより、不透明白色を呈する陽極酸化皮膜を形成する技術が提案されている。また、特許文献2には、アルミニウム母材と陽極酸化皮膜との界面に凹部形状からなる膜質調整部分を形成することにより、パール調の陽極酸化皮膜を形成する技術が提案されている。
特開昭63−35795号公報 特開2010−229537号公報
しかし、従来の技術は、陽極酸化皮膜に入射した光が母材と陽極酸化皮膜との界面等の種々の界面で反射することにより、干渉色が生じやすい。そのため、陽極酸化皮膜がわずかに色味を帯びてしまい、不透明白色を呈する陽極酸化皮膜を得ることが難しいという問題がある。
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、従来よりも白色度の高いアルミニウム部材及びその製造方法を提供しようとするものである。
本発明の一態様は、アルミニウムまたはアルミニウム合金よりなる母材と、
該母材の表面上に形成された陽極酸化皮膜とを有しており、
該陽極酸化皮膜は、
上記母材上に形成された厚さ300〜800nmのバリア層と、
該バリア層上に形成され、多数の孔を有する厚さ10〜100μmの多孔質層とを有している、アルミニウム部材にある。
本発明の他の態様は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる母材を準備し、
到達電圧を100〜300Vに制御したポーラス型陽極酸化処理を上記母材に施すことにより、上記母材の表面上に、バリア層と、該バリア層上に形成された厚さ10〜100μmの多孔質層とからなる陽極酸化皮膜を形成し、
次いで、到達電圧を200〜500Vに制御したバリア型陽極酸化処理を上記母材に施すことにより、上記バリア層の厚みを300〜800nmまで厚くする、アルミニウム部材の製造方法にある。
上記アルミニウム部材は、上記母材上に、厚さ300〜800nmの上記バリア層と、厚さ10〜100μmの上記多孔質層とを有する上記陽極酸化皮膜が形成されている。かかる構成を有する上記陽極酸化皮膜は、従来の陽極酸化皮膜に比べて白色度を高くすることができる。これは、例えば以下の理由によるものと考えられる。
上記特定の範囲の厚さを有する上記多孔質層は、多孔質層内を通る光を乱反射させることにより、多孔質層から出射する光を十分に拡散させることができる。その結果、上記陽極酸化皮膜の透明感を低下させ、不透明にすることができる。
また、上記バリア層は、上記特定の範囲の厚さを有することにより、上記多孔質層と上記バリア層との界面で反射した光と、上記母材と上記バリア層との界面で反射した光との干渉を抑制することができる。その結果、上記陽極酸化皮膜は、干渉による着色を抑制することができる。
以上のように、上記陽極酸化皮膜は、上記多孔質層による光の拡散の効果と、上記バリア層による干渉抑制の効果とが相乗的に作用することにより、不透明白色を呈すると考えられる。
また、上記製造方法は、上記ポーラス型陽極酸化処理及び上記バリア型陽極酸化処理を順次行うことにより、上記の態様の陽極酸化皮膜を形成することができる。上記ポーラス型陽極酸化処理後の陽極酸化皮膜は、多孔質層の下部に周期的な凹凸形状を持つバリア層を有する。そのため、上記ポーラス型陽極酸化処理を行うだけではバリア層の構造に基づく干渉色が生じるため、不透明白色を呈する陽極酸化皮膜を得ることが難しい。
これに対し、上記製造方法においては、上記ポーラス型陽極酸化処理の後に上記バリア型陽極酸化処理を実施する。これにより、上記バリア層を上記特定の範囲内の厚さまで成長させる過程において、上記バリア層の形状を平坦化することができる。その結果、上述したバリア層の周期的な凹凸形状に起因する干渉色の発生を抑制することができる。
上記製造方法は、母材の合金種がどのようなものであっても、母材上に上記の態様の陽極酸化皮膜を容易に形成することができる。それ故、上記製造方法によれば、従来の技術よりも白色度の高いアルミニウム部材を容易に作製することができる。
実施例における、陽極酸化皮膜の例を示す断面図である。 実施例における、試験体E2の陽極酸化皮膜の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した図面代用写真である。 図2における、バリア層を拡大して観察した図面代用写真である。 実施例における、試験体C2の陽極酸化皮膜の断面をSEMにより観察した図面代用写真である。 図4における、バリア層を拡大して観察した図面代用写真である。
上記アルミニウム部材において、母材は、アルミニウムから構成されていてもよく、アルミニウム合金から構成されていてもよい。母材の材質は、アルミニウム部材の用途に応じて適宜選択することができる。例えば、アルミニウム部材の強度を高くする観点からは、5000系アルミニウム合金または6000系アルミニウム合金を母材とすることが好ましい。また、陽極酸化処理後の白色度をより高くする観点からは、陽極酸化処理による着色が起こりにくい1000系アルミニウムまたは6000系アルミニウム合金を母材とすることが好ましい。
母材上には、厚さ300〜800nmのバリア層が形成されている。バリア層の厚みを上記特定の範囲にすることにより、干渉による着色を抑制し、白色度を高くすることができる。バリア層の厚みが300nm未満の場合には、干渉による着色を抑制することが難しいため、アルミニウム部材の白色度が低下する。
バリア層を厚くするためには、後述するバリア型陽極酸化処理における到達電圧を高くする必要がある。しかし、この到達電圧を過度に高くすると、陽極酸化皮膜の表面での火花放電により、陽極酸化皮膜の絶縁破壊を招く。従って、干渉抑制の効果を得つつ陽極酸化皮膜の絶縁破壊を回避する観点から、バリア層の厚みは300〜800nmとする。
バリア層は、陽極酸化皮膜のセル、即ち、多孔質層及びバリア層から構成され、内部に1個の孔を有する単位構造に対応する凹凸形状を有していることがある。この場合、凹凸形状の周期や高さによっては、干渉色の発生を招くおそれがある。
バリア層の周期的な凹凸形状に起因する干渉色の発生を抑制する観点からは、バリア層と母材との界面における頂部と底部との高さの差は100nm以下であることが好ましい。上記頂部は、通常、隣り合うセルの境界に形成される。また、上記底部は、通常、各セルの中央に形成される。そのため、頂部と底部との高さの差を100nm以下にすることにより、セルに対応して形成されるバリア層の周期的な凹凸を低くすることができる。その結果、干渉色の発生をより効果的に抑制し、上記アルミニウム部材の白色度をより向上させることができる。
バリア層上には、多数の孔を有する厚さ10〜100μmの多孔質層が形成されている。上記特定の範囲の厚さを有する多孔質層は、光を乱反射させることにより、陽極酸化皮膜の透明感を低下させることができる。多孔質層の厚さが10μm未満の場合には、乱反射による光の拡散が不十分となるため、陽極酸化皮膜が透明になりやすい。そして、陽極酸化皮膜が透明になると、アルミニウム部材の色調が母材の色調に近くなる。以上の結果、多孔質層の厚さが10μm未満の場合には、白色度が低くなり易い。
陽極酸化皮膜を不透明にするためには、多孔質層の厚みを厚くすることが好ましい。しかし、多孔質層の厚みを過度に厚くすると生産性の悪化を招く。従って、生産性の悪化を回避しつつ陽極酸化皮膜を不透明にするために、多孔質層の厚みは10〜100μmとする。
多孔質層は、多数の孔を有している。多孔質層における孔の平均径は150〜450nmであり、かつ、隣り合う上記孔の平均間隔は250〜750nmであることが好ましい。この場合には、多孔質層に入射した光をより効果的に拡散させることができるため、陽極酸化皮膜の透明感をより低下させることができる。その結果、アルミニウム部材の白色度をより高くすることができる。
多孔質層に形成された孔は、少なくともバリア層の近傍において枝分かれしていることが好ましい。この場合には、孔が枝分かれのない直管状を呈する場合に比べて多孔質層の構造が不規則になるため、光をより効果的に拡散させることができる。そして、光の拡散がより効果的に起こる結果、陽極酸化皮膜の透明感をより低下させることができる。それ故、孔が枝分かれしている場合には、アルミニウム部材の白色度をより高くすることができる。
次に、上記アルミニウム部材の製造方法について説明する。上記アルミニウム部材は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる母材に、ポーラス型陽極酸化処理及びバリア型陽極酸化処理を順次行うことにより、作製することができる。
ポーラス型陽極酸化処理を行う前に、必要に応じて、脱脂処理や研磨処理等の下地処理を母材に行ってもよい。例えば、下地処理としてアルカリ脱脂処理を行うことにより、陽極酸化皮膜のグロス値を低くし、艶のない白色を呈するアルミニウム部材を得ることができる。また、下地処理として化学研磨、機械研磨及び電解研磨等の研磨処理を行うことにより、陽極酸化処理のグロス値を高くし、艶のある白色を呈するアルミニウム部材を得ることができる。アルミニウム部材の白色度及びグロス値をより高くする観点からは、ポーラス型陽極酸化処理を行う前に、母材に電解研磨処理を行うことが好ましい。
ポーラス型陽極酸化処理は、酸性〜弱酸性の水溶液中で行われる。具体的には、リン酸、リン酸塩、カルボン酸、カルボン酸塩、クロム酸、クロム酸塩、ホウ酸及びホウ酸塩からなる群より選ばれる1種または2種以上の電解質の水溶液中でポーラス型陽極酸化処理を行うことができる。上記カルボン酸としては、例えばシュウ酸を用いることができる。これらの水溶液中でポーラス型陽極酸化処理を行うことにより、光を効果的に拡散させることができる多孔質層を形成することができる。その結果、得られるアルミニウム部材の白色度をより高くすることができる。
ポーラス型陽極酸化処理における到達電圧は100〜300Vとする。ポーラス型陽極酸化処理における到達電圧を上記特定の範囲に制御することにより、多孔質層における孔の平均径及び平均間隔を上記特定の範囲にすることができる。その結果、得られるアルミニウム部材の白色度を高くすることができる。
また、ポーラス型陽極酸化処理は、電解質濃度が0.01〜0.1mol・dm-3の浴中で行われることが好ましい。浴中の電解質濃度を上記特定の範囲にすることにより、多孔質層における孔を容易に枝分かれさせることができる。その結果、得られるアルミニウム部材の白色度をより高くすることができる。
多孔質層における孔を枝分かれさせるためには、電解質濃度を薄くすることが好ましい。この観点からは、電解質濃度を0.1mol・dm-3以下にすることが好ましい。しかし、電解質濃度が過度に薄くなると、ポーラス型陽極酸化処理により焼けが発生し、かえって外観の悪化を招くおそれがある。焼けの発生を回避する観点からは、電解質濃度を0.01mol・dm-3以上にすることが好ましい。
ポーラス型陽極酸化処理を行った後、到達電圧を200〜500Vに制御したバリア型陽極酸化処理を上記母材に施すことにより、上記バリア層の厚みを300〜800nmまで厚くする。バリア型陽極酸化処理を行った後のバリア層は、ポーラス型陽極酸化処理を行った後のバリア層に比べて平坦になる。例えば、上記特定の条件でバリア型陽極酸化処理を行うことにより、上記バリア層と上記母材との界面における頂部と底部との高さの差を100nm以下まで小さくすることができる。そして、このようにバリア層を平坦にすることにより、得られるアルミニウム部材の白色度をより高くすることができる。
バリア型陽極酸化処理は、中性の水溶液中で行われる。具体的には、ホウ酸アンモニウム、アジピン酸アンモニウム、シュウ酸チタン酸カリウム、クエン酸アンモニウム、シュウ酸ナトリウム及び酒石酸アンモニウムからなる群より選ばれる1種または2種以上の電解質の水溶液中でバリア型陽極酸化処理を行うことが好ましい。これらの水溶液中でバリア型陽極酸化処理を行うことにより、多孔質層の厚みを維持しつつバリア層の厚みを厚くすることができる。また、この場合には、バリア層をより平坦にすることができる。これらの結果、アルミニウム部材の白色度をより高くすることができる。
以上により、不透明白色を呈するアルミニウム部材を得ることができる。なお、バリア型陽極酸化処理を行った後、必要に応じて封孔処理等の後処理を行ってもよい。
上記アルミニウム部材は、従来技術により陽極酸化皮膜を形成したアルミニウム部材に比べて高い白色度を有する。例えば、1000系アルミニウムや6000系アルミニウム合金を母材とするアルミニウム部材は、ASTM E313−73の規定による白色度を60以上にすることができる。白色度が60以上のアルミニウム部材は、建材や電子機器の筐体等の、意匠性が要求される用途に好適である。
上記アルミニウム部材の実施例について、図を用いて説明する。なお、本発明は、以下に示す態様に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜構成を変更することができる。
図1に示すように、アルミニウム部材1は、アルミニウムまたはアルミニウム合金よりなる母材2と、母材2の表面上に形成された陽極酸化皮膜3とを有している。陽極酸化皮膜3は、母材2上に形成された厚さ300〜800nmのバリア層31と、バリア層31上に形成され、多数の孔321を有する厚さ10〜100μmの多孔質層32とを有している。
本例においては、JIS A1100アルミニウムまたはJIS A6063アルミニウム合金のいずれかよりなる母材2を準備した後、母材2にアルカリ脱脂、化学研磨、機械研磨または電解研磨のいずれかの下地処理を行った。その後、ポーラス型陽極酸化処理及びバリア型陽極酸化処理を順次母材に施し、アルミニウム部材1を作製した。
ポーラス型陽極酸化処理は、リン酸、シュウ酸、クロム酸、ホウ酸、ホウ酸塩、アジピン酸塩または酒石酸塩を電解質とする水溶液中で行った。水溶液の電解質濃度は0.01〜0.1mol・dm-3、液温は40〜80℃とした。また、ポーラス型陽極酸化処理は、電流密度100〜300A・m-2、到達電圧100〜300Vの条件で行い、到達電圧を15〜150分間保持した後に処理を完了した。
バリア型陽極酸化処理は、ホウ酸アンモニウム、アジピン酸アンモニウム、シュウ酸チタン酸カリウム、クエン酸アンモニウム、シュウ酸ナトリウムまたは酒石酸アンモニウムを電解質とする水溶液中で行った。水溶液の電解質濃度は0.02〜0.5mol・dm-3、液温は10〜30℃とした。また、バリア型陽極酸化処理は、電流密度5〜100A・m-2、到達電圧200〜500Vの条件で行い、到達電圧に達した直後に処理を完了するか、あるいは最大で30分間到達電圧を保持した後に処理を完了した。
より詳細には、表1に示す処理条件の組み合わせにより、下地処理、ポーラス型陽極酸化処理及びバリア型陽極酸化処理を順次行い、試験体E1〜E32を作製した。
また、本例においては、試験体E1〜E32との比較のため、ポーラス型陽極酸化処理やバリア型陽極酸化処理の処理条件等を表2に示すように変更して試験体C1〜C10を作製した。具体的には、試験体C1はポーラス型陽極酸化処理を行わずに作製した試験体である。試験体C2は、バリア型陽極酸化処理を行わずに作製した試験体である。試験体C3〜C8は、ポーラス型陽極酸化処理またはバリア型陽極酸化処理の処理条件を上記特定の範囲外とした試験体である。試験体C9及びC10は、ポーラス型陽極酸化処理またはバリア型陽極酸化処理のいずれかに、強酸性の水溶液である硫酸水溶液を使用した試験体である。
走査電子顕微鏡(日本電子株式会社製「JSM−6701F」を用いて各試験体の陽極酸化皮膜3の断面を観察した。これにより得られたSEM像に基づき、多孔質層32の厚み、バリア層31の厚み、多孔質層32における孔321の枝分かれの有無、孔321の平均径wave及び平均間隔dave、並びにバリア層31と母材2との界面311における頂部312と底部313との高さの差haveを、以下の方法により算出した。
・多孔質層32の厚み
例えば図2に示すように、陽極酸化皮膜3の厚み方向における全体が視野に入るようにして、陽極酸化皮膜3の断面をSEMにより観察した。得られたSEM像に基づいて、1視野あたりの多孔質層32の厚みの平均を算出し、この値を多孔質層32の厚みとして表3及び表4に記載した。
・バリア層31の厚み
例えば図3に示すように、バリア層31の厚み方向における全体が視野に入るようにして、陽極酸化皮膜3の断面をSEMにより観察した。得られたSEM像に基づいて、個々の孔321の底からバリア層31と母材2との界面311の底部までの厚さt(図1参照)を計測した。1視野あたりの厚さtの平均をバリア層31の厚みとして表3及び表4に記載した。
・孔321の枝分かれの有無
多孔質層32の厚みの測定に用いたSEM像において、1視野中に枝分かれを有する孔321が30%以上確認された場合には枝分かれ有りと判定し、表3及び表4の「孔の枝分かれ」の欄にAの記号を記載した。また、1視野中の枝分かれを有する孔321が30%未満であった場合には、枝分かれ無しと判定し、表3及び表4の「孔の枝分かれ」の欄にBの記号を記載した。
・孔321の平均径wave及び平均間隔dave
バリア層31の厚みの測定に用いたSEM像において、個々の孔321の幅w(図1参照)を計測した。そして、1視野あたりに存在する孔321の幅wの平均を孔321の平均径waveとして表3及び表4に記載した。
また、上記SEM像において、孔321の間隔d(図1参照)を計測した。そして、1視野あたりの間隔dの平均を孔321の平均間隔daveとして表3及び表4に記載した。
・バリア層31と母材2との界面311における頂部312と底部313との高さの差have
バリア層31の厚みの測定に用いたSEM像において、バリア層31と母材2との界面311の底部313を結ぶ直線Lを基準とし、この基準から界面311の各頂部312までの距離h(図1参照)を計測した。そして、1視野あたりの距離hの平均を高さの差haveとして表3及び表4に記載した。
得られた試験体のASTM E313−73に規定される白色度及びグロス値を、分光測色計(コニカミノルタ株式会社製「CM−5」)を用いて測定した。その結果を表3及び表4に記載した。
表1及び表3に記載したように、試験体E1〜E32は、ポーラス型陽極酸化処理及びバリア型陽極酸化処理を上記特定の範囲の処理条件で行うことにより作製されたため、多孔質層32の厚み及びバリア層31の厚みが上記特定の範囲となった。その結果、これらの試験体は、高い白色度を有していた。
高い白色度を有する試験体の陽極酸化皮膜の例として、試験体E2のSEM像を図2及び図3に示す。なお、図2は、陽極酸化皮膜の厚み方向の全体が視野に入るようにして断面を観察したSEM像であり、図3は、図2を拡大してバリア層を観察したSEM像である。
図2に示すように、試験体E2の多孔質層32には、表面から厚み方向の略中央まで直管状を呈し、厚み方向の略中央からバリア層31との界面311までの範囲に亘って多数の枝分かれを有する孔321が形成されていた。また、図3に示すように、試験体E2のバリア層31は、界面311における頂部312と底部313との高さの差が小さく、ポーラス型陽極酸化処理を行った後に形成されるバリア層31(例えば、図5参照)に比べて平坦であった。
グロー放電発光分光分析(GD−OES)により試験体E2のバリア層31をさらに詳細に分析したところ、厚み方向における多孔質層32側には、陽極酸化処理に用いた電解質のアニオンが混入したアニオン混入層が形成されており、母材2側には、アニオンが混入していないアルミナ層が形成されていることを確認した。アニオン混入層の厚みは、バリア層31全体の厚みの40%以下であった。なお、図には示さないが、試験体E1〜E32のアニオン混入層の厚みは、いずれもバリア層31全体の厚みの50%以下であった。
一方、表2及び表4に示すように、試験体C1及びC2は、ポーラス型陽極酸化処理またはバリア型陽極酸化処理のいずれか一方を行っていないため、試験体E1〜E32に比べて白色度が低くなった。
ポーラス型陽極酸化処理のみを行った陽極酸化皮膜の一例として、試験体C2のSEM像を図4及び図5に示す。なお、図4は、陽極酸化皮膜の厚み方向の全体が視野に入るようにして断面を観察したSEM像であり、図5は、バリア層の厚み方向の全体が視野に入るように図4を拡大したSEM像である。
図4に示すように、試験体C2の多孔質層32は、試験体E2と同様に、厚み方向の略中央からバリア層31との界面までの範囲に亘って多数の枝分かれを有する孔321が形成されていた。しかし、図5に示すように、試験体C2のバリア層31は、孔321を中心とする略半球状を呈しており、試験体E1〜E32に比べて頂部と底部との高さの差が大きかった。また、試験体C2のバリア層においては、アニオン混入層の厚みが、バリア層全体の厚みの75%を越えていた。
試験体C3は、ポーラス型陽極酸化処理における電解質濃度が薄かったため、本条件ではポーラス型陽極酸化処理により焼けが発生した。それ故、試験体C3の白色度は、試験体E1〜E32に比べて低かった。なお、試験体C3は、例えばポーラス型陽極酸化処理における到達電圧や液温等を変更することにより、焼けの発生を回避することができると考えられる。
試験体C4は、ポーラス型陽極酸化処理における電解質濃度が濃かったため、本条件では枝分かれした孔の割合が少なかった。それ故、試験体C4の白色度は、試験体E1〜E32に比べて低かった。なお、試験体C4は、例えばポーラス型陽極酸化処理における到達電圧や液温等を変更することにより、枝分かれした孔の割合を多くすることができると考えられる。
試験体C5は、ポーラス型陽極酸化処理における到達電圧が低かったため、孔の平均径及び平均間隔が上記特定の範囲よりも小さくなった。それ故、試験体C5の白色度は、試験体E1〜E32に比べて低かった。
試験体C6は、ポーラス型陽極酸化処理における到達電圧が高かったため、孔の平均径及び平均間隔が上記特定の範囲よりも大きくなった。それ故、試験体C6の白色度は、試験体E1〜E32に比べて低かった。
試験体C7は、バリア型陽極酸化処理における到達電圧が低かったため、バリア層の厚みを上記特定の範囲まで厚くすることができなかった。また、試験体C7は、バリア層の成長が不十分だったことにより、試験体E1〜E32に比べて頂部と底部との高さの差が大きかった。それ故、試験体C7の白色度は、試験体E1〜E32に比べて低かった。
試験体C8は、バリア型陽極酸化処理における到達電圧が高かったため、処理中に火花放電が発生した。その結果、試験体C8の白色度は、試験体E1〜E32に比べて低かった。
試験体C9及びC10は、ポーラス型陽極酸化処理またはバリア型陽極酸化処理のいずれかを強酸性の硫酸浴中で行ったため、不透明白色を呈する陽極酸化皮膜を得ることができなかった。
1 アルミニウム部材
2 母材
3 陽極酸化皮膜
31 バリア層
32 多孔質層
321 孔

Claims (10)

  1. アルミニウムまたはアルミニウム合金よりなる母材と、
    該母材の表面上に形成された陽極酸化皮膜とを有しており、
    該陽極酸化皮膜は、
    上記母材上に形成された厚さ300〜800nmのバリア層と、
    該バリア層上に形成され、多数の孔を有する厚さ10〜100μmの多孔質層とを有している、アルミニウム部材。
  2. 上記孔の平均径は150〜450nmであり、かつ、隣り合う上記孔の平均間隔は250〜750nmである、請求項1に記載のアルミニウム部材。
  3. 上記孔は、少なくとも上記バリア層の近傍において枝分かれしている、請求項1または2に記載のアルミニウム部材。
  4. 上記バリア層と上記母材との界面における、頂部と底部との高さの差が100nm以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のアルミニウム部材。
  5. 上記アルミニウム部材は、ASTM E313−73の規定による白色度が60以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のアルミニウム部材。
  6. アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる母材を準備し、
    到達電圧を100〜300Vに制御したポーラス型陽極酸化処理を上記母材に施すことにより、上記母材の表面上に、バリア層と、該バリア層上に形成された厚さ10〜100μmの多孔質層とからなる陽極酸化皮膜を形成し、
    次いで、到達電圧を200〜500Vに制御したバリア型陽極酸化処理を上記母材に施すことにより、上記バリア層の厚みを300〜800nmまで厚くする、アルミニウム部材の製造方法。
  7. 上記ポーラス型陽極酸化処理を、リン酸、リン酸塩、シュウ酸、シュウ酸塩、クロム酸、クロム酸塩、ホウ酸及びホウ酸塩からなる群より選ばれる1種または2種以上の電解質の水溶液中で行う、請求項6に記載のアルミニウム部材の製造方法。
  8. 上記ポーラス型陽極酸化処理を、電解質濃度が0.01〜0.1mol・dm-3の浴中で行う、請求項6または7に記載のアルミニウム部材の製造方法。
  9. 上記バリア型陽極酸化処理を、ホウ酸アンモニウム、アジピン酸アンモニウム、シュウ酸チタン酸カリウム、クエン酸アンモニウム、シュウ酸ナトリウム及び酒石酸アンモニウムからなる群より選ばれるいずれか1種または2種以上の電解質の水溶液中で行う、請求項6〜8のいずれか1項に記載のアルミニウム部材の製造方法。
  10. 上記母材に電解研磨処理を行った後に、上記ポーラス型陽極酸化処理を行う、請求項6〜9のいずれか1項に記載のアルミニウム部材の製造方法。
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