JP2012236724A - Sn合金めっき液へのSn成分補給用酸化第一錫粉末及びその製造方法 - Google Patents

Sn合金めっき液へのSn成分補給用酸化第一錫粉末及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】酸又は酸性めっき液への溶解性が極めて高く、大気中における保存安定性に優れた酸化第一錫粉末及びその製造方法を提供する。
【解決手段】Sn合金めっき液へのSn成分補給用酸化第一錫粉末であって、酸化防止剤が粉末中に質量比で100〜5000ppm含まれ、温度25℃の100g/Lアルキルスルホン酸水溶液100mlに酸化第一錫粉末0.1gを添加して攪拌したとき、180秒以内で溶解する溶解速度を有することを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、Sn合金めっき液へのSn成分補給用として好適な酸化第一錫粉末及びその製造方法に関する。更に詳しくは、酸又は酸性めっき液への溶解性及び保存安定性に優れた酸化第一錫粉末及びその製造方法に関するものである。
はんだ付けが必要な電子部品へのめっきや、半導体ウェーハ等へのはんだ突起電極(バンプ)の形成には、これまでPb−Sn合金めっき液が広く用いられていたが、このPb−Sn合金めっき液は毒性のPbを含有するため、排水処理、環境保全、或いは半導体廃棄物等からの土壌・地下水汚染など多くの問題があった。近年、このような環境負荷の低減を目的とすることから、Pbを含むPb−Sn合金めっき液の代替えとして、第1元素としてはSnが利用されるが、第2元素として銀、ビスマス、銅、インジウム、アンチモン、亜鉛等を用いた2元合金、或いは更に第3元素を添加した多元合金を用いためっき液の研究が行われており、中でもSn−Agめっき液はPbフリーのめっき液として主流となりつつある。
しかしながら、Pb−Sn合金めっき液を用いた電解めっき法では、Pb−Sn製のアノード(電解めっき法の陽極)を用いれば、このアノードからPb2+、Sn2+がめっき液中に溶け出すため、Pb−Sn合金めっき液中の成分バランスは、ほぼ一定に保たれる。一方、例えば、Sn−Agめっき液による電解めっき法において、Sn−Ag製のアノードを用いた場合、Agが次第にアノード表面に析出してアノード表面を被覆し、アノードからめっき液中にSn2+が補給されなくなり、めっき液中の成分バランスが崩れるため、Sn−Agめっき液中においてSn−Ag製のアノードを用いた電解めっき法には問題が生じる。そのため、Sn−Agめっき液を用いた電解めっき法では、アノードとして不溶性の白金めっきのチタン板等を用いる。
また、不溶性のアノードを用いる場合、めっき液の成分補給については、金属Snをめっき液に溶解して供給する方法が考えられるが、この方法ではSnよりも貴な金属との合金めっきの場合、めっき液中で金属Sn表面に貴な金属が置換析出するため、溶解が抑制されてしまう問題がある。そこで、一般的に、あらかじめ該めっき液の必須成分を溶解させた錫塩溶液により補給することにより行われている(例えば、特許文献1参照。)。
ところが、上記特許文献1に記載されているように、めっき液の必須成分を溶解させた錫塩溶液等(以下、要素液という)を投入してSn2+を補給する方法では、投入する要素液を調製しなければならず、まためっき液の成分を分析しながら要素液を投入しなければならないため、めっき液の管理が困難であり、更に多大なコストが掛かる。
このような問題点を解消するため、酸又は酸性めっき液への溶解性が非常に高い酸化第一錫粉末を直接めっき液へ添加することにより、めっき液中のSn成分を補給する方法が検討されている(例えば、特許文献2参照。)。
特開2003−96590号公報(段落[0028]) 特開2009−132571号公報(請求項1、段落[0008])
しかしながら、上記特許文献2に示す補給方法で使用される酸化第一錫粉末は、平均粒径が小さく、比表面積が大きいことから、大気中に晒された場合に酸化第一錫粉末の表面がSnOからSnO2に酸化されやすい。粉末表面がSnO2に酸化された酸化第一錫粉末は、酸又は酸性めっき液への溶解性が大幅に低下するため、粉末を製造した直後から使用直前まで真空パック等に保存しておく必要があり、また、開封後は速やかにその全量を使い切る必要がある。そのため、酸化第一錫粉末等に何らかの対策、処理を施すことで保存管理や取扱いの面において更なる改良が望まれていた。
一方、上記酸化第一錫粉末を直接めっき液へ添加する補給方法で使用される酸化第一錫粉末には、酸又は酸性めっき液に対して極めて高い溶解性が求められる。これは、溶解性が低い酸化第一錫粉末をこの補給方法に使用すると、めっき液へ添加した際に酸化第一錫粉末がめっき液に十分溶けず、不溶性の酸化第二錫を包含したスラッジとして徐々にめっき液中に沈殿が生じ、Sn2+の補給が困難になるからである。このため、この補給方法に用いられる酸化第一錫粉末に対して何らかの酸化防止対策を施す場合には、酸又は酸性めっき液に対する高い溶解性を損なわないように行わなければならず、2つの特性を共存させることが非常に困難であった。
スラッジが発生すると、Sn2+の補給が困難になるとともに、めっき処理装置の配管やフィルタが閉塞する、或いはめっき面にスラッジが付着してめっき面の品位を低下させるといった不具合が生じる。
本発明の目的は、酸又は酸性めっき液への溶解性が極めて高く、大気中における保存安定性に優れた酸化第一錫粉末及びその製造方法を提供することにある。
本発明の第1の観点は、Sn合金めっき液へのSn成分補給用酸化第一錫粉末であって、酸化防止剤が粉末中に質量比で100〜5000ppm含まれ、温度25℃の100g/Lアルキルスルホン酸水溶液100mlに酸化第一錫粉末0.1gを添加して攪拌したとき、180秒以内で溶解する溶解速度を有することを特徴とする。
本発明の第2の観点は、第1の観点に基づく発明であって、更に上記酸化防止剤がグリセルアルデヒド、フェニルヒドラジン、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、テトラヒドロフラン・ボラン錯体、ジメチルアミン・ボラン錯体、ジフェニルアミン・ボラン錯体及びピリジン・ボラン錯体からなる群より選ばれた1種又は2種以上であることを特徴とする。
本発明の第3の観点は、第1又は第2の観点に基づく発明であって、図1に示すように、Sn2+イオンを含む酸性水溶液を調製する工程11と、酸性水溶液にアルカリ水溶液を添加して中和させ、水酸化第一錫のスラリーを調製する工程12と、調製したスラリーを脱水させ、酸化第一錫のスラリーを得る工程13と、酸化第一錫のスラリーを固液分離し、酸化第一錫を得る工程14と、得られた酸化第一錫を真空乾燥する工程15と、前記酸化第一錫に酸化防止剤粉末を混合する工程16とを含むSn合金めっき液へのSn成分補給用酸化第一錫粉末の製造方法である。
本発明の第1の観点の酸化第一錫粉末は、Sn合金めっき液へのSn成分補給用酸化第一錫粉末であって、酸化防止剤が粉末中に質量比で100〜5000ppm含まれる。これにより、酸又は酸性めっき液に対する極めて高い溶解性を示すとともに、大気中での保存安定性に優れる。具体的には、温度25℃の100g/Lアルキルスルホン酸水溶液100mlに酸化第一錫粉末0.1gを添加して攪拌したとき、180秒以内で溶解する溶解速度を有する。
本発明の第2の観点の酸化第一錫粉末では、酸化防止剤としてグリセルアルデヒド、フェニルヒドラジン、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、テトラヒドロフラン・ボラン錯体、ジメチルアミン・ボラン錯体、ジフェニルアミン・ボラン錯体及びピリジン・ボラン錯体からなる群より選ばれた1種又は2種以上を用いる。上記酸化防止剤を用いることにより、SnO粉末が保存中に酸化し、溶解性を悪化することを防止することが可能となり、めっき液への安定したSn2+イオンの補給が可能となる。
本発明の第3の観点の製造方法では、Sn2+イオンを含む酸性水溶液を調製する工程と、酸性水溶液にアルカリ水溶液を添加して中和させ、水酸化第一錫のスラリーを調製する工程と、調製したスラリーを脱水させ、酸化第一錫のスラリーを得る工程と、酸化第一錫のスラリーを固液分離し、酸化第一錫を得る工程と、得られた酸化第一錫を真空乾燥する工程と、酸化第一錫に酸化防止剤粉末を混合する工程とを含む。これにより、酸又は酸性めっき液への溶解性が高く、大気中での保存安定性に優れた酸化第一錫粉末を製造することができる。
本発明のSn合金めっき液へのSn成分補給用酸化第一錫粉末を製造する方法を示す工程図である。
次に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
本発明の酸化第一錫粉末の製造方法では、先ず、Sn2+イオンを含む酸性水溶液を調製する(工程11)。上記酸性水溶液の調製方法は特に限定されないが、たとえば金属Sn粉末を塩酸に溶解する方法が挙げられる。このとき、好ましい塩酸濃度は30〜40質量%、温度は80〜100℃であり、18〜30時間かけて金属Sn粉末を溶解する。使用する金属Sn粉末はα線放出量が0.05cph/cm2以下であることが好ましい。α線放出量が0.05cph/cm2を越えると、例えば、半導体等において、はんだ突起電極から放出されるα線が原因で、メモリ中のデータが書き換えられるといったソフトエラー等が生じたり、或いは半導体が破壊されることがあるからである。
次に、上記調製した酸性水溶液にアルカリ水溶液を添加し、攪拌して中和させ、水酸化第一錫のスラリーを調製する(工程12)。上記アルカリ水溶液としては、アンモニア水、重炭酸アンモニウム溶液又はこれらの混合液が例示される。ここで水酸化第一錫のスラリーを調製する中和工程は、窒素ガス雰囲気中で行うのが好ましい。この中和工程を窒素ガス雰囲気中で行うと、大気中で行った場合に比べ、酸性水溶液中のSn2+が、酸に溶けにくい酸化第二錫に酸化されることを防ぐ効果が得られる。これは雰囲気中に酸素が存在しない窒素ガス雰囲気中でこの中和工程を行えば、スラリー中に酸素が溶け込むのを防ぐことができるからである。
また、アルカリ水溶液としてアンモニア水を添加する場合には、使用するアンモニア水の濃度は好ましくは20〜30質量%である。アンモニア水の濃度が下限値未満であると中和反応が十分に進行しないため好ましくない。一方、上限値を越えると水酸化第一錫の脱水反応が早く進行し、酸化第一錫に残留する酸中の陰イオン成分の濃度が高くなるため好ましくない。アルカリ水溶液としてアンモニア水を使用する理由は、製造される酸化第一錫粉末の粒径を制御するのに好適だからである。また、アルカリ水溶液には、重炭酸アンモニウム単独でも、アンモニア水と同時に重炭酸アンモニウム溶液を混合して用いてもよい。この中和反応は、反応液の液温が30〜50℃で行われ、pHが6〜8の範囲で行うことが好ましい。反応液の液温が下限値未満では酸化第一錫に残留する酸中の陰イオン成分の濃度が高くなるため好ましくなく、上限値を越えると中和反応とともに水酸化第一錫の脱水反応が進むため好ましくない。また、反応液のpHを上記範囲としたのは、中和反応の進行性及び作製した粉末の易溶性の面で好適な範囲だからである。pHが下限値未満では、中和反応が十分に進行しないため好ましくない。一方、上限値を越えると錫酸アンモニウムなどの難溶性の錫塩及び金属錫が形成され、収量が低下したり、めっき液に溶解し難い成分を多く含むものになるため好ましくない。
次に、上記調製したスラリーを加熱保持して、水酸化第一錫を熟成し脱水させ、酸化第一錫のスラリーを得る(工程13)。ここで加熱保持による水酸化第一錫を脱水し酸化第一錫のスラリーを得る脱水工程は、窒素ガス雰囲気中で行うのが好ましい。この脱水工程を窒素ガス雰囲気中において行うことにより、従来のような大気中で行う場合に比べ、スラリー中の酸化第一錫が、酸に溶けにくい酸化第二錫に酸化されることを防ぐ効果が得られる。これは雰囲気中に酸素が存在しない窒素ガス雰囲気中でこの脱水工程を行えば、スラリー中に酸素が溶け込むのを防ぐことができるからである。加熱保持温度は80〜100℃が好ましい。加熱保持温度が下限値未満では水酸化第一錫の脱水が十分に進行せず、白色の水酸化第一錫が系内に残留するため好ましくない。一方、大気圧条件下で水の沸点よりも高い温度まで加熱するのは物理的に不可能である。また加熱保持時間はスラリーの量や加熱保持温度にもよるが1〜2時間が好ましい。
次に、上記酸化第一錫のスラリーをろ過、遠心分離等によって固液分離し、固形分の酸化第一錫を得る(工程14)。得られた酸化第一錫は、真空乾燥する(工程15)。乾燥を真空乾燥により行うのは、乾燥中の酸化第一錫粉末の酸化防止、粉末粒子の凝集防止、コーティング処理の定着化の理由からである。
その後、乾燥した酸化第一錫粉末を酸化防止剤粉末と混合する(工程16)。酸化防止剤としては、グリセルアルデヒド、フェニルヒドラジン、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、テトラヒドロフラン・ボラン錯体、ジメチルアミン・ボラン錯体、ジフェニルアミン・ボラン錯体及びピリジン・ボラン錯体からなる群より選ばれた1種又は2種以上が好ましい。上記酸化防止剤はめっき液へ溶解しない(グリセルアルデヒド、フェニルヒドラジン)、又はめっき液中で分解(水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、テトラヒドロフラン・ボラン錯体、ジメチルアミン・ボラン錯体、ジフェニルアミン・ボラン錯体、ピリジン・ボラン錯体)し、酸化第一錫粉末の酸又は酸性めっき液への溶解性に影響を与えることなく酸化防止性を付与できる。酸化防止剤は得られる粉末中に質量比で100〜5000ppm含まれるように混合する。
以上、本発明の製造方法により、Sn合金めっき液へのSn成分補給方法として、酸化第一錫粉末を直接めっき液中に添加する方法に好適な酸化第一錫粉末を製造することができる。
上記方法によって得られた本発明の酸化第一錫粉末は、上記酸化防止剤が粉末中に質量比で100〜5000ppm含まれる。このため、大気中に晒された状態で保存した場合でも酸化第一錫粉末の表面がSnOからSnO2に酸化されにくく、長期保存後の粉末において、酸又は酸性めっき液に対する高い溶解性を維持することができる。そのため、該酸化第一錫粉末の添加により、めっき液中のSn2+の補給を十分に行うことができる。粉末中に含まれる酸化防止剤の含有量が質量比で100ppm未満では、大気中に保存した場合に、粉末表面の酸化を十分に防止することができない。また、めっき液に添加することによって補給されたSn2+の酸化防止効果が十分に得られない。一方、5000ppmを越えると、酸化防止効果が飽和するのみならず、上記SnOをSn2+補給用として用いると、めっき液中へ過剰の酸化防止剤が導入されることによるめっき性低下の懸念や、不溶性の酸化防止剤によるフィルター閉塞の懸念の不具合が生じる。このうち、粉末中に含まれる酸化防止剤の含有量が質量比で1000〜3000ppmの範囲であることが好ましい。
また、この酸化第一錫粉末は、平均粒径がD50値で5〜15μm、比表面積0.4〜3.5m2/g、タップ密度0.6〜1.2g/cm3である。平均粒径及びタップ密度が上記範囲内の酸化第一錫粉末は、酸又は酸性めっき液への溶解性が極めて高い、即ち酸又は酸性めっき液に対して易溶性を有する。溶解性を示す指標の一つとして、酸に対する溶解速度が上げられるが、具体的には、温度25℃の100g/Lアルキルスルホン酸水溶液100mlに酸化第一錫粉末0.1gを添加して攪拌したとき、180秒以内で溶解する溶解速度が得られる。また、上記酸化防止処理を行った酸化第一錫粉末は粉末表面の酸化第二錫の生成が極めて少ないため、要素液の調製を行わず、酸化第一錫粉末を直接めっき液中に添加した場合でも、スラッジを発生させることなく、めっき液に瞬時に溶解し、めっき液のSn2+成分の補給を行うことができる。
なお、本発明の製造方法により製造される酸化第一錫粉末は、特に、酸として酸性めっき液の成分であるメタンスルホン酸、エタンスルホン酸又は1−プロパンスルホン酸等のアルカンスルホン酸、酸性めっき液としてSnとSnより貴なる合金めっき液であるSn−Ag合金めっき液、Sn−Cu合金めっき液、Sn−Ag−Cu合金めっき液又はAu−Sn合金めっき液等への溶解性に優れる。
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
<実施例1>
先ず、α線放出量が0.05cph/cm2以下の0.0007cph/cm2である金属Sn粉末500gを、濃度35質量%、温度80℃の塩酸1000gに24時間かけて溶解し、酸性水溶液を調製した。続いて、窒素ガスを充填させたタンク内で、この酸性水溶液に、液温30℃、pH6を維持するように濃度30質量%のアンモニア水をアルカリ水溶液として添加し、攪拌して、水酸化第一錫のスラリーを得た。
次いで、この水酸化第一錫のスラリーを、窒素ガス雰囲気中で90〜100℃で8時間加熱保持し、水酸化第一錫を脱水して酸化第一錫沈殿物のスラリーを得た。
次に、この酸化第一錫沈殿物のスラリーをろ過により固液分離し、酸化第一錫沈殿物を得た。得られた酸化第一錫沈殿物を温度25℃で真空乾燥させることにより黒色の酸化第一錫粉末530gを得た。
更に、酸化防止剤としてジメチルアミン・ボラン錯体(純度95%以上、粒径10〜20μm)を用意し、上記得られた酸化第一錫粉末にジメチルアミン・ボラン錯体0.053gを混合することにより、Sn成分補給用酸化第一錫粉末を得た。
<実施例2>
酸化防止剤として水素化ホウ素ナトリウム(純度92%以上、粒径10〜30μm)を用意し、実施例1と同様にして得られた黒色の酸化第一錫粉末536gに水素化ホウ素ナトリウム0.054gを混合したこと以外は、実施例1と同様に、Sn成分補給用酸化第一錫粉末を得た。
<実施例3>
実施例1と同様にして得られた黒色の酸化第一錫粉末529gにグリセルアルデヒド2.65gを混合したこと以外は、実施例1と同様に、Sn成分補給用酸化第一錫粉末を得た。
<実施例4>
実施例1と同様にして得られた黒色の酸化第一錫粉末532gに実施例1と同様に用意したジメチルアミン・ボラン錯体2.66gを混合したこと以外は、実施例1と同様に、Sn成分補給用酸化第一錫粉末を得た。
<実施例5>
酸化防止剤として水素化ホウ素ナトリウム(純度92%以上、粒径10〜30μm)を用意し、実施例1と同様にして得られた黒色の酸化第一錫粉末530gに水素化ホウ素ナトリウム2.65gを混合したこと以外は、実施例1と同様に、Sn成分補給用酸化第一錫粉末を得た。
<比較例1>
酸化防止剤を混合せず、実施例1と同様にして得られた黒色の酸化第一錫粉末536gをSn成分補給用酸化第一錫粉末とした。
<比較例2>
実施例1と同様にして得られた黒色の酸化第一錫粉末528gにジメチルアミン・ボラン錯体0.042gを混合したこと以外は、実施例1と同様に、Sn成分補給用酸化第一錫粉末を得た。
<比較例3>
酸化防止剤として水素化ホウ素ナトリウム(純度92%以上、粒径10〜30μm)を用意し、実施例1と同様にして得られた黒色の酸化第一錫粉末531gに水素化ホウ素ナトリウム0.042gを混合したこと以外は、実施例1と同様に、Sn成分補給用酸化第一錫粉末を得た。
<評価1>
実施例1〜5及び比較例1〜3で得られたSn成分補給用酸化第一錫粉末について、粉末の平均粒径(D50)、比表面積及びタップ密度を測定した。これらの結果を以下の表1に示す。
(1) 粉末の平均粒径(D50):粒度分布測定装置(MICROTRAC社製 型式名:マイクロトラックMT3000粒度分布計)を用いて測定された体積累積中位径を示す。
(2) 粉末の比表面積:表面積測定装置(Macsorb社製 型式名:全自動比表面積(BET)測定装置 HM−model−1201)を用いて測定されたBET1点法によるBET比表面積を示す。
(3) 粉末のタップ密度:JIS Z2512:2006に規定する金属粉−タップ密度測定方法により測定した。
Figure 2012236724
<比較試験及び評価2>
実施例1〜5及び比較例1〜3の酸化第一錫粉末について100g/Lアルキルスルホン酸に対する溶解速度を測定した。具体的には、実施例1〜5及び比較例1〜3の酸化第一錫粉末について、その日に製造した粉末と、製造後40℃の温度で3日間、大気中で保存した後の粉末の2種類をそれぞれ用意し、これらの粉末について、以下に示す手順で溶解速度を測定した。
溶媒として温度25℃の100g/Lアルキルスルホン酸100mlに、上記用意した酸化第一錫粉末0.1gを、それぞれスターラーにて回転速度500rpmで攪拌しながら添加し、粉末の添加から目視による粉末の消失を確認するまでの時間を測定した。これらの結果を、以下の表2に示す。
Figure 2012236724
表1及び表2から明らかなように、測定日に製造した酸化第一錫粉末は、実施例1〜5及び比較例1〜3のいずれの粉末も溶解速度が速く、溶解性に優れることが確認された。一方、3日間大気中に保存した後の酸化第一錫粉末は、比較例1の粉末では、粉末表面の酸化が激しく、溶解性が大幅に損なわれる結果となった。また、比較例2,3の粉末では、測定日に製造した粉末の結果よりも溶解速度が遅い結果となった。これに対し、実施例1〜5の粉末では、大気中に保存した場合でも、粉末表面の酸化が抑えられ、溶解速度に大きな変化は見られず、高い溶解性が維持されていることが判る。

Claims (3)

  1. Sn合金めっき液へのSn成分補給用酸化第一錫粉末であって、
    前記酸化防止剤が粉末中に質量比で100〜5000ppm含まれ、
    温度25℃の100g/Lアルキルスルホン酸水溶液100mlに酸化第一錫粉末0.1gを添加して攪拌したとき、180秒以内で溶解する溶解速度を有することを特徴とするSn合金めっき液へのSn成分補給用酸化第一錫粉末。
  2. 前記酸化防止剤がグリセルアルデヒド、フェニルヒドラジン、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、テトラヒドロフラン・ボラン錯体、ジメチルアミン・ボラン錯体、ジフェニルアミン・ボラン錯体及びピリジン・ボラン錯体からなる群より選ばれた1種又は2種以上である請求項1記載のSn合金めっき液へのSn成分補給用酸化第一錫粉末。
  3. Sn2+イオンを含む酸性水溶液を調製する工程(11)と、
    前記酸性水溶液にアルカリ水溶液を添加して中和させ、水酸化第一錫のスラリーを調製する工程(12)と、
    前記調製したスラリーを脱水させ、酸化第一錫のスラリーを得る工程(13)と、
    前記酸化第一錫のスラリーを固液分離し、酸化第一錫を得る工程(14)と、
    前記酸化第一錫を真空乾燥する工程(15)と、
    前記酸化第一錫に酸化防止剤粉末を混合する工程(16)と
    を含む請求項1又は2記載のSn合金めっき液へのSn成分補給用酸化第一錫粉末の製造方法。
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