JP7144427B2 - 酸化第一錫粉末 - Google Patents

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Description

本発明は、酸化第一錫粉末に関する。
錫めっきを行うにあたって、陽極を金属錫ではなく不溶性電極(白金、貴金属酸化物等)を使用する場合がある。その際、電解液から消耗する錫イオン補給として、しばしば酸化第一錫の添加が行われる。酸化第一錫(SnO)は、酸化第二錫(SnO2)に比べ溶解速度が速く、補給液の製造が容易である。
錫イオン補給用の酸化第一錫は、不純物が少ないことに加えて、溶解性が良好であることが求められる。溶解性の向上のためには、溶液との接触面積を増大させることが望ましいと従来から考えられている。例えば、特許文献1(特開2016-153361号)は、酸化第一錫の粉末の粒子を、板状の突起を有する形状とすることによって比表面積を増大させて、酸化第一錫の溶解性を改善する技術を開示している。
特開2016-153361号公報
本発明者の検討によれば、特許文献1のような形状の粉末は、粉末状態での流動性に劣り、めっき槽へ自動供給する態様で使用すると、しばしば供給経路を閉塞してしまい、作業性に劣る。
すなわち、錫イオン補給用の酸化第一錫の粉末であって、溶解性に優れると同時に、自動供給での取り扱い性に優れた酸化第一錫が、求められている。
したがって、本発明の目的は、錫イオン補給用に好適に使用可能な酸化第一錫の粉末であって、溶解性に優れると同時に、取り扱い性に優れた酸化第一錫の粉末を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、後述する酸化第一錫粉末が、溶解性に優れると同時に、取り扱い性に優れた酸化第一錫粉末となることを見いだして、本発明に到達した。
したがって、本発明は次の(1)を含む。
(1)
酸化第一錫及び不可避不純物からなる、酸化第一錫粉末であって、
乾燥質量における酸化第一錫の含有量が99.9質量%以上であり、
比表面積が0.1~1.0m2/gであり、
TAP密度が2~4g/cm3であり、
50%粒子径が30~60μmであり、
安息角が10~33°である、酸化第一錫粉末。
本発明の酸化第一錫粉末は、溶解性に優れると同時に、取り扱い性に優れた酸化第一錫粉末となっており、粉末の態様でも供給経路を閉塞することなく、錫イオン補給用の酸化第一錫粉末として好適に使用できる。
図1は実施例1の酸化第一錫粉末について、溶解試験における、溶解後の溶液の外観である。 図2は実施例1の酸化第一錫粉末をSEMによって観察した100倍のSEM像である。 図3は実施例1の酸化第一錫粉末をSEMによって観察した800倍のSEM像である。 図4は実施例1の酸化第一錫粉末をSEMによって観察した2000倍のSEM像である。 図5は実施例1の酸化第一錫粉末の粒度分布のグラフである。 図6は実施例2の酸化第一錫粉末について、溶解試験における、溶解後の溶液の外観である。 図7は実施例2の酸化第一錫粉末をSEMによって観察した100倍のSEM像である。 図8は実施例2の酸化第一錫粉末をSEMによって観察した800倍のSEM像である。 図9は実施例2の酸化第一錫粉末をSEMによって観察した2000倍のSEM像である。 図10は実施例2の酸化第一錫粉末の粒度分布のグラフである。 図11は比較例1の酸化第一錫粉末について、溶解試験における、溶解後の溶液の外観である。 図12は比較例1の酸化第一錫粉末をSEMによって観察した100倍のSEM像である。 図13は比較例1の酸化第一錫粉末をSEMによって観察した800倍のSEM像である。 図14は比較例1の酸化第一錫粉末をSEMによって観察した2000倍のSEM像である。 図15は比較例1の酸化第一錫粉末の粒度分布のグラフである。
以下に本発明を実施の態様をあげて詳細に説明する。本発明は以下にあげる具体的な実施の態様に限定されるものではない。
[酸化第一錫粉末]
本発明の酸化第一錫粉末は、好適な実施の態様において、
酸化第一錫及び不可避不純物からなる、酸化第一錫粉末であって、
乾燥質量における酸化第一錫の含有量が99.9質量%以上であり、
比表面積が0.1~1.0m2/gであり、
TAP密度が2~4g/cm3であり、
50%粒子径が30~60μmであり、
安息角が10~33°である、酸化第一錫粉末である。
好適な実施の態様において、この酸化第一錫粉末は、硫酸第一錫を、水溶液中で、炭酸アンモニウム又は重炭酸アンモニウムによって中和反応させて、酸化第一錫を析出させる工程、得られた酸化第一錫を乾燥する工程を、それぞれ下記条件で行うことによって、製造することができる。
[中和反応]
好適な実施の態様において、炭酸アンモニウム又は重炭酸アンモニウム水溶液中へ、硫酸第一錫水溶液を添加することによって、中和反応が行われる。硫酸第一錫水溶液の添加は、公知の手段によって行うことができ、例えば滴下、噴出、噴霧等の手段を用いることができる。好適な実施の態様において、中和反応に際して、水溶液が適宜攪拌される。攪拌は、公知の手段によって行うことができる。
[pH]
好適な実施の態様において、中和反応は例えばpH7.0~pH8.0の範囲の水溶液中で行われる。pH調整は、例えば、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、又はアンモニア水の添加によって、行うことができる。あるいは、反応溶液中に炭酸ガスを吹き込んでpH調整してもよい。pHの値は、後述する二段階の温度調整を通じて、上記範囲に維持されることが好ましい。
[反応温度、時間]
好適な実施の態様において、中和反応させる溶液の温度は、2段階にわけて調整する。すなわち、硫酸第一錫溶液、及び炭酸アンモニウム又は重炭酸アンモニウム水溶液の滴下によって中和反応を進行させる際の温度(一段目の反応温度)と、滴下の終了後に保持する際の温度(二段目の反応温度)の2段階にわけて温度調整する。滴下時の温度、すなわち、一段目の温度として、例えば65~75℃とすることができる。滴下の時間、すなわち、1段目の温度の保持時間は、例えば1~2時間とすることができる。滴下後の保持の温度、すなわち、2段目の温度として、例えば75~85℃とすることができる。滴下後の保持時間、すなわち、2段目の温度の保持時間は、例えば1~3時間とすることができる。
[重炭酸アンモニウム濃度]
中和反応において重炭酸アンモニウム水溶液が使用される場合に、重炭酸アンモニウム濃度は、例えば150~200g/Lの範囲とすることができる。中和反応において炭酸アンモニウム水溶液が使用される場合にも、重炭酸アンモニウム濃度と同じ濃度範囲において、好適に使用できる。
[錫濃度]
中和反応において硫酸第一錫水溶液が使用される場合に、硫酸第一錫水溶液中の錫濃度は、例えば60~110g/Lの範囲とすることができる。
[酸化第一錫の析出]
中和反応によって、酸化第一錫が析出して、沈殿する。得られた沈殿を、固液分離して、酸化第一錫の粉末を得ることができる。固液分離は、公知の手段によって行うことができ、例えば吸引、圧搾ろ過、デカンテーション、遠心分離を使用することができる。酸化第一錫の粉末は、所望により、洗浄してもよく、例えば遠心分離機等の分離手段との組み合わせによって洗浄してもよい。
[酸化第一錫粉末の純度]
本発明によって得られる酸化第一錫(SnO)粉末は、酸化第一錫及び不可避不純物からなり、水分を除いた含有量として、酸化第一錫の含有量が例えば99.9質量%以上、好ましくは99.99質量%以上、さらに好ましくは99.995質量%以上とすることができ、例えば99.99~99.995質量%、好ましくは99.99~99.999質量%の範囲とすることができる。後述する不純物の含有量は、ICP質量分析装置(通称ICP-MS)、ICP発光分光分析装置(通称ICP-OES)、フレーム原子吸光装置(通称AAS)、塩素・硫黄分析装置/全有機ハロゲン分析装置(通称TOX)、炭素・硫黄分析装置(通称LECO)分析によって求めることができる。
[Cl含有量]
好適な実施の態様において、酸化第一錫粉末のCl含有量(塩素含有量)は、水分を除いた含有量として、例えば5ppm未満、好ましくは1ppm以下、更に好ましくは1ppm未満とすることができる。本発明の酸化第一錫は、その製造において塩酸系の水溶液の使用が回避されているために、Cl含有量の著しい低減を可能としている。Clの含有量はTOX((株)三菱ケミカルアナリテック製TOX-2100H)によって測定することができる。
[S含有量]
好適な実施の態様において、酸化第一錫粉末のS含有量(硫黄含有量)は、水分を除いた含有量として、例えば20ppm未満、好ましくは10ppm以下、更に好ましくは10ppm未満とすることができる。本発明の酸化第一錫は、その製造において硫酸系の水溶液を使用されているにもかかわらず、S含有量の著しい低減を可能としている。Sの含有量はLECO(LECOジャパン合同会社製CSLS600)によって測定することができる。
[Na含有量、K含有量]
好適な実施の態様において、酸化第一錫粉末のNa含有量(ナトリウム含有量)は、水分を除いた含有量として、例えば5ppm以下、好ましくは1ppm以下、さらに好ましくは1ppm未満(検出限界未満)とすることができる。好適な実施の態様において、酸化第一錫のK含有量(カリウム含有量)は例えば5ppm以下、好ましくは1ppm以下、さらに好ましくは1ppm未満(検出限界未満)とすることができる。本発明の酸化第一錫は、その製造においてナトリウム含有物質、カリウム含有物質の使用が回避されているために、Na含有量、K含有量の著しい低減を可能としている。Na、Kの含有量はAAS(アジレント・テクノロジー(株)製AA240FS)によって測定することができる。
[その他不純物含有量]
好適な実施の態様において、酸化第一錫粉末の不純物含有量は、水分を除いた含有量として、Ag、As、Bi、Cd、Cr、Cu、In、Mg、Mn、Pb、Sb、Th、Tl、U、ZnはICP-MS((株)日立ハイテクサイエンス製SPQ9700)、Ca、Co、Fe、Ni、PはICP-OES((株)日立ハイテクサイエンス製SPS3500DD)によって測定した含有量として、以下の含有量とすることができる:
Agが1ppm以下、好ましくは1ppm未満(検出限界未満)、Asが1ppm以下、好ましくは1ppm未満(検出限界未満)、Biが1ppm以下、好ましくは1ppm未満(検出限界未満)、Caが1ppm以下、好ましくは1ppm未満(検出限界未満)、Cdが1ppm以下、好ましくは1ppm未満(検出限界未満)、Coが1ppm以下、好ましくは1ppm未満(検出限界未満)、Crが1ppm以下、好ましくは1ppm未満(検出限界未満)、Cuが1ppm以下、好ましくは1ppm未満(検出限界未満)、Feが1ppm以下、好ましくは1ppm未満(検出限界未満)、Inが1ppm以下、好ましくは1ppm未満(検出限界未満)、Mgが1ppm以下、好ましくは1ppm未満(検出限界未満)、Mnが1ppm以下、好ましくは1ppm未満(検出限界未満)、Niが1ppm以下、好ましくは1ppm未満(検出限界未満)、Pbが1ppm以下、好ましくは1ppm未満(検出限界未満)、Thが1ppm以下、好ましくは1ppm未満(検出限界未満)、Tlが1ppm以下、好ましくは1ppm未満(検出限界未満)、Uが1ppm以下、好ましくは1ppm未満(検出限界未満)、Znが1ppm以下、好ましくは1ppm未満(検出限界未満)、Pが20ppm以下、好ましくは10ppm以下、さらに好ましくは10ppm未満(検出限界未満)、Sbが5ppm以下、好ましくは2ppm以下、さらに好ましくは1.6ppm以下。あるいはSbは上記の上限であると同時に0.1ppm以上、好ましくは0.5ppm以上、さらに好ましくは1.0ppm以上。
[酸化第一錫粉末の形状]
好適な実施の態様において、酸化第一錫粉末(酸化第一錫粉)の2次粒子形状は、例えば球状、及び、それらが複数結合した形状となっている。
[比表面積]
好適な実施の態様において、酸化第一錫粉末は、例えば1.0m2/g以下、好ましくは0.5m2/g以下、例えば0.1~1.0m2/g、好ましくは0.1~0.9m2/g、さらに好ましくは0.15~0.5m2/gの範囲の比表面積とすることができる。本発明における比表面積は、QUANTA CHROME製Monosorb MS-21によって測定することができる。
[TAP密度]
好適な実施の態様において、酸化第一錫粉末は、例えば1.0~4.0g/cm3、好ましくは2.0~4.0g/cm3、さらに好ましくは2.5~3.5g/cm3の範囲のTAP密度とすることができる。本発明におけるTAP密度は、株式会社セイシン企業製TAPDENSER KYT-4000Kによって測定することができる。
[50%粒子径(D50)]
好適な実施の態様において、酸化第一錫粉末は、例えば20~60μm、好ましくは30~60μm、さらに好ましくは40~60μmの範囲の50%粒子径(D50)とすることができる。本発明における50%粒子径(D50)は、マイクロトラック・ベル(株)MT3300EX2によって測定することができる。
[安息角]
好適な実施の態様において、酸化第一錫粉末の安息角は、例えば33°以下、好ましくは30°以下とすることができ、例えば10~33°の範囲、好ましくは15~30°の範囲とすることができる。安息角は、粉末を水平面上に落下させて堆積させた円錐の母線と水平面とのなす角をいう。安息角測定は、例えばパウダテスタ(ホソカワミクロン株式会社製PT-S)を用いて行うことができる。好適な実施の態様において、本発明の酸化第一錫粉末は、上述の優れた安息角を備える乾燥粉末である。乾燥粉末とは、乾燥させた粉末であり、具体的には、水分0.1重量%未満となるように乾燥された粉末をいう。
好適な実施の態様において、本発明の酸化第一錫粉末は、上述の優れた安息角を備えるものとなっており、これによって粉末の形態のままで、めっき液の補充のために好適に使用することができる。
[溶解性]
本発明の酸化第一錫粉末は、溶解性に優れ、めっき液の補充のために、好適に使用することができる。本発明における溶解性とは、メタンスルホン酸溶液に対する溶解性をいう。この溶解性は、後述する実施例の条件下の溶解性として求めることができ、すなわち、メタンスルホン酸濃度100g/Lの溶液に酸化第一錫粉末を100g/L添加して溶解させて、酸化第一錫が持つ黒色が消えて無色透明、或いは淡黄色になるまでの時間(溶解時間)を測定することで、定量化することができる。好適な実施の態様において、溶解後の濁度が20度となり、且つ溶解時間が30秒以下である場合に溶解性に優れるということができ、好ましくは20秒以下、さらに好ましくは10秒以下である場合に、特に優れた溶解性であるということができる。
この溶解性の指標として、十分な時間経過後の濁度を用いる場合には、メタンスルホン酸に酸化錫を溶かし、溶解させて5分間静置させた後での濁度を指標とすることができる。濁度は純水(無色透明)では「20度」になり、最大値は「500度」となる。後述する実施例で示されるように、好適な実施の態様において、本発明による酸化第一錫粉末を溶解した溶液の濁度は「20度」とすることができる。濁度は、濁度計によって測定することができ、濁度計としては、例えば株式会社共立理化学研究所製デジタル濁度計500G(型式TB-500G)をあげることができる。
[好適な実施の態様]
好適な実施の態様において、本発明は、次の(1)以下を含んでもよい。
(1)
酸化第一錫及び不可避不純物からなる、酸化第一錫粉末であって、
乾燥質量における酸化第一錫の含有量が99.9質量%以上であり、
比表面積が0.1~1.0m2/gであり、
TAP密度が2~4g/cm3であり、
50%粒子径が30~60μmであり、
安息角が10~33°である、酸化第一錫粉末。
(2)
塩素含有量が1ppm以下であり、且つ硫黄含有量が10ppm以下である、(1)に記載の酸化第一錫粉末。
(3)
Ag、As、Bi、Ca、Cd、Co、Cr、Cu、Fe、In、K、Mg、Mn、Na、Ni、Pb、Th、Tl、U、Znの含有量がいずれも1ppm以下であり、P、Sの含有量が10ppm以下であり、Clの含有量が1ppm以下であり、Sbの含有量が1~5ppmである、(1)に記載の酸化第一錫粉末。
(4)
メタンスルホン酸濃度100g/Lの溶液に酸化第一錫粉末を100g/L添加して、30秒以下で溶解し、溶解後の濁度が20度である、(1)~(3)のいずれかに記載の酸化第一錫粉末。
以下に実施例をあげて、本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
[酸化第一錫の製造]
反応容器としてガラス製の50L丸底容器に純水を20L入れ、重炭酸アンモニウムを175g/L投入し、反応母液とした。この溶液を加熱保持した。
予め、金属錫を電解して作製した硫酸錫溶液(錫濃度100g/L)20Lを炭酸水素アンモニウム溶液中へ滴下した。滴下反応中の液温はオイルバスで65℃~70℃を維持した(加熱保持温度一段目)。滴下は電磁定量ポンプを用い、約2時間かけて投入した。反応中は撹拌機を用いて撹拌した。反応中は酸性の硫酸錫溶液が入るために、pHは低下してゆく。そこでpHを7.0~7.5が維持できるように、重炭酸アンモニウム結晶を適宜投入した。
滴下の終了後に、温度を75~80℃に上げてさらに約1時間保持した(加熱保持温度二段目)。
反応後、得られたスラリーを抜出、濾過洗浄を行い、80℃16時間保持して乾燥した酸化第一錫粉末を得た。
このようにして、粒子状の酸化第一錫を得た。この中和反応の反応式を以下に示す:

SnSO4+2(NH4)HCO3→SnO+(NH4)2SO4+H2O+2CO2
[酸化第一錫の評価]
得られた粒子状の酸化第一錫を、次のように評価した。得られた結果は、表1にまとめて示す。
不純物含有量を、ICP-MS、ICP-OES、AAS、TOX、LECO等を用いて分析した。
比表面積を、QUANTA CHROME製Monosorb MS-21を用いて測定した。
TAP密度を、株式会社セイシン企業製TAPDENSER KYT-4000Kを用いて測定した。
粒度を、マイクロトラック・ベル株式会社MT3300EX2によって測定した。
安息角を、ホソカワミクロン株式会社製PT-Sによって測定した。
[溶解性]
得られた酸化第一錫粉末の溶解性を、次のように溶解時間を求めることによって、評価した。
濃度96%のメタンスルホン酸を7.5mL採取し、純水で50mLに希釈する。酸化第一錫5.0gを、50mLビーカー中のメタンスルホン酸水溶液へ速やかに投入し、スターラーによって500rpmで攪拌しながら、投入から溶解するまでの時間を測定した。この時の溶液温度は23℃であった。目視によって黒い濁りが無色透明となったことを目安として、溶解の終了と判定して時間を測定した。さらに、メタンスルホン酸に酸化錫を溶かし、溶解させて5分間静置させた後での濁度を、株式会社共立理化学研究所製デジタル濁度計500G(型式TB-500G)によって測定した。これらの結果をまとめて表1に示す。また、実施例1の酸化第一錫粉末について、溶解試験における、溶解後の溶液の外観を図1に示す。
[SEM画像]
得られた酸化第一錫粉末を、SEM(株式会社日立ハイテクノロジーズ、電子顕微鏡S-3000N)によって観察した。実施例1の酸化第一錫粉末のSEM像を図2~4に示す。図2は×100倍、図3は×800倍、図4は×2000倍のSEM像である。
[粒度分布]
得られた酸化第一錫粉末の粒度分布をマイクロトラック・ベル株式会社MT3300EX2によって測定した。実施例1の酸化第一錫粉末の粒度分布のグラフを図5に示す。
[実施例2]
実施例2として、以下の条件を変更したことを除いて、実施例1と同様の手順で酸化第一錫粉末を得た。
すなわち、実施例1において、反応母液とするための重炭酸アンモニウムの投入量を増やして、重炭酸アンモニウム200g/Lとなるようにした。また、この溶液を70℃~75℃に加熱保持して、滴下反応中の液温は70℃~75℃を維持し(加熱保持温度一段目)、滴下は約1時間かけて行った。pHは、pH7.5~8.0を維持するようにした。滴下の終了後に、温度を80~85℃に上げてさらに約3時間保持した(加熱保持温度二段目)。
得られた実施例2の酸化第一錫粉末を、実施例1と同様に評価した。その結果を表1にまとめて示す。実施例2の酸化第一錫粉末について、溶解試験における、溶解後の溶液の外観を図6に示す。
実施例2の酸化第一錫粉末のSEM像を図7~9に示す。図7は×100倍、図8は×800倍、図9は×2000倍のSEM像である。
実施例2の酸化第一錫粉末の粒度分布のグラフを図10に示す。
[比較例1]
市販の酸化第一錫粉末(JX金属商事株式会社製)を用意して、実施例1と同様に、評価を行った。その結果を、表1にまとめて示す。
比較例1の酸化第一錫粉末について、溶解試験における、溶解後の溶液の外観を図11に示す。
比較例1の酸化第一錫粉末のSEM像を図12~14に示す。図12は×100倍、図13は×800倍、図14は×2000倍のSEM像である。
比較例1の酸化第一錫粉末の粒度分布のグラフを図15に示す。
Figure 0007144427000001
本発明によれば、溶解性に優れると同時に、取り扱い性に優れた酸化第一錫粉末を提供する。本発明は産業上有用な発明である。

Claims (4)

  1. 酸化第一錫及び不可避不純物からなる、酸化第一錫粉末であって、
    乾燥質量における酸化第一錫の含有量が99.9質量%以上であり、
    比表面積が0.1~1.0m2/gであり、
    TAP密度が2~4g/cm3であり、
    50%粒子径が30~60μmであり、
    安息角が10~33°である、酸化第一錫粉末。
  2. 塩素含有量が1ppm以下であり、且つ硫黄含有量が10ppm以下である、請求項1に記載の酸化第一錫粉末。
  3. Ag、As、Bi、Ca、Cd、Co、Cr、Cu、Fe、In、K、Mg、Mn、Na、Ni、Pb、Th、Tl、U、Znの含有量がいずれも1ppm以下であり、P、Sの含有量が10ppm以下であり、Clの含有量が1ppm以下であり、Sbの含有量が1~5ppmである、請求項1に記載の酸化第一錫粉末。
  4. メタンスルホン酸濃度100g/Lの溶液に酸化第一錫粉末を100g/L添加して、30秒以下で溶解し、溶解後の濁度が20度である、請求項1~3のいずれかに記載の酸化第一錫粉末。
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