JP7052411B2 - 酸化銀、酸化銀ケーキおよび酸化銀の製造方法 - Google Patents

酸化銀、酸化銀ケーキおよび酸化銀の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、酸化銀、ケーキおよび酸化銀の製造方法に関する。
Agは、Sn-Ag合金などのめっきの材料として利用されている。Sn-Ag合金を電解めっきする場合、アノードにSnを用いると、AgはSnより貴であるために、アノード面にAgが置換析出する。このAgの析出を避けるため、Pt等の不溶性アノードを用いてアノード側で水素を発生させ、カソード側でSn-Ag合金を電解めっきすることが行われている。
ところで、Sn-Ag合金を連続的に電解めっきにより生成させるためには、めっき液にSn成分とAg成分とを補給して、めっき液中のSnとAgの濃度を一定に維持することが必要となる。Sn成分の補給方法としては、イオン交換膜を用いたSnアノードによる補給方法、Snの高濃度溶液の添加、酸化第一錫での補給等があり、最も簡単かつめっき液の組成を崩さずに補給できる方法として酸化第一錫によるSn成分の補給が注目されている。また、Ag成分の補給方法としては、Agの高濃度溶液の添加による方法が利用されている。
一方、Agの酸化物である酸化銀は、比較的低温での加熱によって還元してAgを生成することから、導電性ペースト用のフィラーとして利用されている。
特許文献1には、導電性ペースト用のフィラーとして有用な酸化銀微粒子の製造方法として、pHを12程度のアルカリ性に調整した水溶液中に、銀塩を6mol/L以下の量で含む水溶液と、この銀塩に対し1mol当量以上のアルカリを含む水溶液とを同時投入して反応を行い、一次粒子の小さな酸化銀微粒子を析出させる方法が記載されている。
特開2012-176892号公報
ところで、めっき液の補給材として利用する化合物は、比較的容易にめっき液に溶解し、かつ多量にめっき液に加えてもめっき液の特性を変化させないものであることが好ましい。しかしながら、Agは硝酸や硫酸などの無機酸には容易に溶解するが、めっき液のアニオン成分として広く利用されているメタンスルホン酸などのスルホン酸系の有機酸には溶解しにくいという問題がある。また、硝酸銀や硫酸銀などの銀無機塩はめっき液に溶解しやすいが、硝酸イオンや硫酸イオン等のAgの対イオン(カウンターイオン)が蓄積されて、めっき液の特性が変化するおそれがあった。
また、Agの高濃度溶液をめっき浴に添加してAgを補給する場合、水分や酸成分がAgと同時に添加されるため、めっき浴の液を抜いてAg濃度を調整する必要があり、連続的にAgを補給することはできない。このため、Agの補給作業に時間がかかり、連続的にめっきを行う場合の効率が悪かった。
一方、酸化銀は、スルホン酸系の有機酸に溶解させやすく、また硝酸銀や硫酸銀などの銀無機塩の場合と異なり、めっき液に無機塩が蓄積しないという利点があり、めっき液の組成を変動させずにAg成分のみを連続的に補給することができ、連続的にめっきを行う場合の効率が良くなる。
しかしながら、特許文献1に記載されているように、アルカリ性に調整した水溶液中に、銀塩の水溶液とアルカリ性の水溶液とを同時投入する方法によって得られた酸化銀微粒子はアルカリ性に調整した水溶液由来の不純物を含みやすい。このような酸化銀をAg成分の補給材として用いると、めっき液に不純物が蓄積されて、めっき液のpHが変動し、長期間にわたって安定にSn-Ag合金めっきを行うことが難しくなるおそれがある。
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、めっき液に溶解させても、そのめっき液の組成やpHを変動させにくく、めっき特性(例えば、めっきされたAgの組成バラつきやめっき高さの均一性等)を変化させにくい酸化銀、酸化銀ケーキおよび酸化銀の製造方法を提供することにある。
上記の課題を解決するために、本発明の酸化銀は、残留酸の含有量が80質量ppm以下であり、かつ、Na,K,Ca,Mg,Liの含有量が合計で100質量ppm以下であることを特徴としている。
本発明において、残留酸の含有量は、次のように定義される。
酸化銀をメタンスルホン酸水溶液(メタンスルホン酸濃度:60質量%)に溶解させて銀-メタンスルホン酸溶液を調製し、イオンクロマトグラムを用いて、この銀-メタンスルホン酸溶液に含まれる陰イオン(マトリックスとして含まれるメタンスルホン酸イオンを除く)のピークを検出し、検出されたピークに該当する成分の総量から酸化銀に含まれるメタンスルホン酸以外の酸の量を求める。次に、酸化銀を硝酸に溶解させて銀-硝酸溶液を調製し、イオンクロマトグラムを用いて、この銀-硝酸溶液に含まれるメタンスルホン酸のピークを検出し、検出されたピークから、酸化銀に含まれるメタンスルホン酸の量を求める。そして、酸化銀に含まれるメタンスルホン酸以外の酸の量と酸化銀に含まれるメタンスルホン酸の量の合計量を、残留酸の含有量とする。
このような構成とされた本発明の酸化銀は、残留酸の含有量が80質量ppm以下であり、かつ、Na,K,Ca,Mg,Liの含有量が合計で100質量ppm以下とされているので、めっき液に多量に溶解させても、めっき液の組成やpHを変動させにくく、めっき特性を変化させにくい。
本発明の酸化銀ケーキは、上述の酸化銀と水とを含有することを特徴としている。
このような構成とされた本発明の酸化銀ケーキは、上述の酸化銀を含むので、めっき液に多量に溶解させても、めっき液の組成やpHを変動させにくく、めっき特性を変化させにくい。また、酸化銀ケーキは、水分を含むので、乾燥した粉末と比較して飛散しにくく、作業性が向上する。さらに、酸化銀ケーキは、めっき液に投入したときは分散しやすく、めっき液に対する酸化銀の溶解速度が向上する。
ここで、本発明の酸化銀ケーキにおいては、含水率が1質量%以上20質量%以下の範囲内にあることが好ましい。
この場合、めっき液に投入したときの分散性が確実に高くなるので、めっき液に対する酸化銀の溶解速度をより向上させることができる。
本発明の酸化銀の製造方法は、純水が収容された反応槽と、pHが3.0以下である銀塩水溶液と、アルカリ水溶液とを用意する工程と、前記反応槽に前記銀塩水溶液と前記アルカリ水溶液とを、前記反応槽内の前記純水と前記銀塩水溶液と前記アルカリ水溶液の混合物のpHが5.0以上8.0以下の範囲内となるように調整しながら添加して、酸化銀粒子を析出させる工程と、を有することを特徴としている。
このような構成とされた本発明の酸化銀の製造方法によれば、前記純水と前記銀塩水溶液と前記アルカリ水溶液の混合物のpHを5.0以上8.0以下の範囲内に調整しながら酸化銀粒子を析出させるので、酸やアルカリの混入量が少ない酸化銀を得ることができる。また、銀以外の微量の金属元素が水酸化物を生成して析出して混入することが起こりにくいので、得られる酸化銀の純度が高くなる。
ここで、本発明の酸化銀の製造方法においては、前記銀塩水溶液のpHが3.0以下である。
銀塩水溶液のpHが3.0を超える場合、銀塩の一部が、水酸化銀(酸化銀)として銀塩水溶液中に析出するおそれがある。この場合、析出した水酸化銀(酸化銀)は銀塩水溶液中の酸成分を含むことから、前記混合物のpHを5.0以上8.0以下の範囲内に調整しながら酸化銀粒子を析出させて得られる酸化銀の残留酸が増加するおそれがある。
本発明によれば、めっき液に溶解させても、そのめっき液の組成やpHを変動させにくく、めっき特性を変化させにくい酸化銀、酸化銀ケーキおよび酸化銀の製造方法を提供することが可能となる。
以下に、本発明の実施形態である酸化銀、酸化銀ケーキおよび酸化銀の製造方法について説明する。
本実施形態に係る酸化銀、酸化銀ケーキは、例えば、Sn-Ag合金めっきの製造に用いるめっき液のAg成分の補給材として用いるものである。
本実施形態に係る酸化銀は、残留酸の含有量が100質量ppm以下で、かつ、Na,K,Ca,Mg,Liの含有量が合計で100質量ppm以下とされている。
ここで、酸化銀に含まれる残留酸は、通常、酸化銀の製造の際に混入したものである。酸化銀の製造で使用される酸の例としては、硫酸、硝酸、アルカンスルホン酸、アリールスルホン酸、およびアルカノールスルホン酸が挙げられる。このような、酸が酸化銀に残留したものが残留酸である。
一方、酸化銀に含まれるNa,K,Ca,Mg,Liは、通常、酸化銀の製造の際に混入したものである。酸化銀の製造では、Na,K,Ca,Mg,Liの水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩が主に用いられる。Na,K,Ca,Mg,Liが酸化銀に含有されていることは、即ち、Na,K,Ca,Mg,Liの水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩が酸化銀に残留していることを示している。
残留酸及びNa,K,Ca,Mg,Liの残留量の多い酸化銀を、めっき液のAg成分の補給材として用いると、めっき液の残留酸及びNa,K,Ca,Mg,Liの金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩の含有量が増加して、めっき液の組成やpHが変動し、これに伴って、めっき特性が変化するおそれがある。
このため、酸化銀は、残留酸の含有量が50質量ppm以下で、かつ、Na,K,Ca,Mg,Liの含有量が合計で50質量ppm以下であることが好ましく、残留酸の含有量が10質量ppm以下で、かつ、Na,K,Ca,Mg,Liの含有量が合計で10質量ppm以下であることが更に好ましい。
なお、残留酸の含有量、及び、Na,K,Ca,Mg,Liの合計の含有量の下限は、特に限定されないが、0.1質量ppm以上であるとよい。この場合、酸化銀の凝集を防ぐ効果が得られ、長期保管時にも溶解性の維持が期待される。
本実施形態の酸化銀は、残留酸およびNa,K,Ca,Mg,Li以外に不可避不純物を含有してもよい。但し、めっき液のAg成分の補給材として用いる酸化銀では、不純物として混入する金属の含有量は少ない方が好ましい。例えば、酸化銀の製造工程で混入し易いFe、Cr、Ni、Ti、Alなど含有量は10質量ppm以下であることが好ましい。これらの元素が10質量ppmを超えると、酸化銀を繰り返しめっき液に補給した場合、めっき液内で濃縮し、めっき物に混入するおそれがある。
また、環境から放出される微量のα線によってメモリ中のデータが書き換えられるソフトエラーの発生を抑制するために、半導体チップと基板とを接合するためのはんだでは、α線量を低減させることが求められている。従って、半導体チップと基板とを接合するためのはんだバンプの形成に用いるめっき液のAg成分の補給材として用いる酸化銀は、α線の発生要因となり得るPbの含有量が1質量ppm以下とすることが好ましく、更に好ましくは0.1質量ppm以下である。
本実施形態に係る酸化銀ケーキは、上述の酸化銀と、水とを含有している。
本実施形態の酸化銀ケーキは、上述の酸化銀を含むので、めっき液に多量に溶解させても、そのめっき液の組成やpHを変動させにくく、めっき特性を変化させにくい。また、酸化銀ケーキは、水分を含むので、乾燥した粉末と比較して飛散しにくく、作業性が向上する。さらに、酸化銀ケーキは、酸化銀の微細な粒子と粒子との間に水分が存在しているので、めっき液に投入したときに、微細な粒子として分散し易い。このため酸化銀が溶解するまでの時間が、酸化銀の固体(粉末)を投入した場合と比較して顕著に短くなる。
ここで、酸化銀ケーキの含水率は、1質量%以上20質量%以下であることが好ましい。含水率が1質量%未満では、上述の効果を得ることが難しくなるおそれがある。含水率が20質量%を超えると、酸化銀ケーキがスラリー状になり、作業性が低下するおそれがある。また、めっき液に添加した場合、めっき液の使用中に蒸発する水分量を超える多量の水分がめっき液に投入されることとなり、めっき液の組成を変化させるおそれがある。なお、含水率は、より好ましくは5質量%以上20質量%以下の範囲内である。
また、酸化銀ケーキは、分散剤などの添加剤を含んでいてもよい。添加剤の含有量は、酸化銀スラリーの全体量に対して0.1質量ppm以上100質量ppm以下の範囲内にあることが好ましい。0.1質量ppm未満だと効果が無くなるおそれがあり、100質量ppmを超えると、酸化銀ケーキを繰り返しめっき液に補給した場合、めっき液内で濃縮し、めっき特性に悪影響を与えるおそれがある。分散剤としては、例えば、脂肪酸、脂肪酸塩、有機金属、保護コロイド等を用いることができる。脂肪酸の例としては、ステアリン酸、オレイン酸等が挙げられる。脂肪酸塩の例としては、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム等が挙げられる。有機金属の例としては、クエン酸マグネシウム、ジエチル亜鉛等が挙げられる。保護コロイドの例としては、ゼラチン、アルブミン等が挙げられる。
次に、本実施形態に係る酸化銀の製造方法について説明する。
本実施形態に係る酸化銀の製造方法は、純水が収容された反応槽と、銀塩水溶液と、アルカリ水溶液とを用意する工程と、前記反応槽に前記銀塩水溶液と前記アルカリ水溶液とを、前記反応槽内の前記純水と前記銀塩水溶液と前記アルカリ水溶液の混合物のpHが5.0以上8.0以下の範囲内となるように調整しながら添加して、酸化銀粒子を析出させる工程と、を有する。
銀塩水溶液は、銀塩を水に溶解させた水溶液である。銀塩の例としては、硫酸銀、硝酸銀、アルカンスルホン酸銀(例えば、メタンスルホン酸銀、エタンスルホン酸銀)、アリールスルホン酸銀(例えば、ベンゼンスルホン酸銀、フェノールスルホン酸銀、クレゾールスルホン酸銀、トルエンスルホン酸銀)、およびアルカノールスルホン酸銀(例えば、イセチオン酸銀)が挙げられる。これらの銀塩は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。銀塩水溶液は、酸化銀の生産効率の観点から、Ag濃度として50g/L以上であることが好ましい。Ag濃度の上限は銀塩の飽和濃度である。銀塩水溶液は、pHが3.0以下であることが好ましく、1.0以上3.0以下の範囲内にあることがより好ましく、2.0以上3.0以下の範囲内にあることが特に好ましい。銀塩水溶液のpHが3.0を超える場合、銀塩の一部が、水酸化銀(酸化銀)として銀塩水溶液中に析出するおそれがある。この場合、析出した水酸化銀(酸化銀)は銀塩水溶液中の酸成分を含むことから、得られる酸化銀の残留酸が増加するおそれがある。一方、銀塩水溶液のpHが低くなりすぎると、後の工程で使用するアルカリ水溶液の使用量が多くなり生産性が低下するおそれがある。
アルカリ水溶液は、アルカリ性化合物を水に溶解させた水溶液である。アルカリ性化合物の例としては、Na,K,Ca,Mg,Liの水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩が挙げられる。これらのアルカリ性化合物は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。
アルカリ水溶液は、アルカリ性化合物の濃度として0.5mol/L以上2mol/L以下の範囲内にあることが好ましい。アルカリ性化合物の濃度が上記の範囲内にあると、後の工程で銀塩水溶液に添加したとき、酸化銀の生産効率を維持しつつ、急激なpHの変化を抑制することができ、不純物の混入量が少ない高純度の酸化銀を安定して析出させることができる。
本実施形態では、純水が収容されている反応槽に、上記の銀塩水溶液とアルカリ水溶液を添加する。このように銀塩水溶液とアルカリ水溶液を添加することによって、反応槽内の純水と銀塩水溶液とアルカリ水溶液の混合物のpHの急激な上昇を抑えつつ、酸化銀を析出させることができる。このため、銀以外の微量の金属元素が水酸化物を生成して析出することが抑制され、高純度の酸化銀を析出させることができる。
本実施形態では、反応槽内の純水と銀塩水溶液とアルカリ水溶液の混合物のpHが5.0以上8.0以下の範囲内となるように調整しながら、銀塩水溶液とアルカリ水溶液とを添加する。反応槽内の混合物のpHが上記の範囲内にあると、析出する酸化銀に混入する酸およびアルカリの量を低減させることができる。反応槽内の混合物のpHが5.0未満であると、生成する酸化銀に酸が混入しやすくなるおそれがある。一方、銀塩水溶液のpHが8.0を超えると、生成する酸化銀にアルカリが混入しやすくなるおそれがある。また、反応槽内の混合物のpHが高くなると、銀以外の微量の金属元素が水酸化物を生成して析出しやすくなるおそれがある。
また、反応槽内の混合物全体のpHを均一にし、局所的にpHが5.0以上8.0以下の範囲内から逸脱しにくくするため、撹拌を行いながら銀塩水溶液及びアルカリ水溶液を添加することが好ましい。撹拌はスターラーを用いて200rpm~2000rpmの範囲内で行うとよい。
また、酸化銀の生産性を向上させるためには、反応槽内の混合物のpHは6.0以上7.5以下の範囲内とすることが好ましい。
一方、金属、特にPbが水酸化物として混入することを抑えるためには、銀塩水溶液のpHは5.0以上7.0以下の範囲内とすることが好ましい。
また、反応槽内の混合物の液温は、5℃以上50℃以下の範囲内にあることが好ましい。5℃未満では、酸化銀が析出しにくくなり、生産性が悪化するおそれがある。50℃を超えると、銀塩水溶液とアルカリ水溶液の反応性が上昇し、反応槽内のpHを5.0以上8.0以下とすることが難しくなるおそれがある。
なお、本実施形態で得られる酸化銀の粒径は、通常、0.01μm以上100μm以下の範囲内である。粒径が0.01μm未満であると酸化銀の粉末が飛散し易くなったり、乾燥・回収やめっき液への補給時の作業性が悪くなるおそれがある。一方、粒径が100μmを超えると、酸化銀のめっき液への溶解速度が低下するおそれがある。酸化銀の粒径は、好ましくは0.1μm以上10μm以下の範囲内である。
反応槽内の混合物中に析出した酸化銀粒子は、デカンテーション、遠心分離、加圧ろ過、減圧ろ過などの通常の固液分離方法によって、回収することができる。
回収した酸化銀は、水で十分に洗浄して、表面に付着している酸やアルカリを除去することが好ましい。ただし、遠心分離、加圧ろ過、減圧ろ過など、過度の荷重がかかる場合は、酸化銀粒子が凝集し、洗浄が十分に行われない可能性があるので、デカンテーション、で固液分離を行うことが好ましい。
酸化銀を乾燥粉末として利用する場合は、酸化銀の自己分解を抑えるために、洗浄後の酸化銀を50℃以下で乾燥することが好ましい。
以上のような構成とされた本実施形態の酸化銀は、残留酸の含有量が100質量ppm以下であり、かつ、Na,K,Ca,Mg,Liの含有量が合計で100質量ppm以下とされているので、めっき液に多量に溶解させても、そのめっき液の組成やpHを変動させにくく、めっき特性を変化させにくい。
本実施形態の酸化銀ケーキは、上述の酸化銀と水とを含有するので、めっき液に多量に溶解させても、そのめっき液の組成やpHを変動させにくく、めっき特性を変化させにくい。また、酸化銀ケーキは、水分を含むので、乾燥した粉末と比較して飛散しにくく、めっき液に投入する際の作業性が向上する。さらに、酸化銀ケーキは、めっき液に投入したときは分散しやすく、めっき液に対する酸化銀の溶解速度が向上する。またさらに、酸化銀ケーキは冷凍保管することによって、空気との接触による酸化銀の変質を長期間にわたって抑制することができる。これは、酸化銀の表面が氷(凍結した酸化銀ケーキ中の水分)で被覆されることによって、酸化銀と空気との接触面積が小さくなるためであると考えられる。
さらに、本実施形態の酸化銀の製造方法によれば、反応槽内の純水と銀塩水溶液とアルカリ水溶液の混合物のpHを5.0以上8.0以下の範囲内に調整しながら、銀塩水溶液とアルカリ水溶液とを添加して、酸化銀粒子を析出させるので、酸やアルカリの混入量が少ない酸化銀を得ることができる。また、銀以外の微量の金属元素が水酸化物を生成して析出して混入することが起こりにくいので、得られる酸化銀の純度が高くなる。
[本発明例1]
純水に硝酸銀(関東化学社製、特級)を溶解させて、Ag濃度が100g/Lの硝酸銀水溶液を調製した。また、純水に水酸化ナトリウム(関東化学社製、特級)を溶解させて、水酸化ナトリウム濃度が1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を調製した。
反応槽(HARIO社製、1000mLビーカー)に純水500mLを入れ、pHメータ(HORIBA社製、ダブルジャンクション形比較電極)と撹拌機(スターラー:アズワン社製、撹拌子サイズ:φ40mm、撹拌条件:500rpm)を設置した。次いで、撹拌機で反応槽内の純水を撹拌しながら、銀塩水溶液として上記の硝酸銀水溶液を、アルカリ水溶液として上記の水酸化ナトリウム水溶液を、滴下ポンプ(アズワン社製)を使用して滴下した。滴下は、硝酸銀水溶液を5mL/minの速度で滴下しながら、水酸化ナトリウム水溶液を反応槽内のpHが5.0以上5.5以下の範囲内となるように調整しながら約5mL/minの速度で滴下した。硝酸銀水溶液と水酸化ナトリウム水溶液は、反応槽内の混合物の量が1000mLとなるまで滴下した。また、滴下中の反応槽内の混合物の液温は20℃になるように調整した。
硝酸銀水溶液及び水酸化ナトリウム水溶液の滴下終了後、さらに撹拌を10分間続けて、析出した酸化銀粒子を熟成させた。熟成後、撹拌機を止めて、デカンテーションにより、析出した酸化銀粒子を回収した。回収した酸化銀粒子を500mLビーカーを用いて200mLの純水に再分散させ、デカンテーションする洗浄工程を3度繰り返し、最終デカンテーション後の酸化銀粒子を50℃で乾燥して、本発明例1の酸化銀を得た。
[本発明例2~11、比較例1~2]
銀塩水溶液は、下記表1に示す銀塩を用いて調製した銀塩水溶液(Ag濃度:100g/L)を用いた。アルカリ水溶液は、下記表1に示すアルカリ性化合物を用いて調製したアルカリ水溶液(アルカリ性化合物濃度:1mol/L)を用いた。また、反応槽内のpHは下記表1に記載の通りとなるようにした。上記以外は、本発明例1と同様にして、酸化銀を得た。
なお、本発明例4では、最終デカンテーション後の酸化銀粒子を乾燥する際に、乾燥条件を40℃、1時間とし、その後全体を均一に混ぜ、含水率が10質量%となったことを確認して、酸化銀ケーキとした。また、本発明例11は、本発明の発明例ではなく、参考例である。
[評価]
本発明例1~11および比較例1~2で得られた酸化銀について、溶解速度、残留酸含有量、Na,K,Ca,Mg,Liの合計含有量、Pb含有量を下記の方法により測定した。その結果を表1に示す。
(溶解時間)
試料の酸化銀を10g量り取る。100mLビーカーに、濃度60質量%のメタンスルホン酸水溶液を100g投入し、その水溶液を撹拌(スターラー:アズワン社製、撹拌子サイズ:φ10mm、撹拌条件:200rpm)しながら、その水溶液中に、量り取った酸化銀を投入した。次いで、酸化銀を目視で観察しながら、酸化銀を投入してから、その酸化銀が完全に溶解し、消失するまでの時間を計測した。溶解速度(g/秒)を、下記の式より算出した。なお、投入開始時のメタンスルホン酸水溶液の液温は25℃とした。ただし、本発明例4で得られた酸化銀ケーキに関しては酸化銀相当で10gとなるように11.1g測り取って、同様の評価を行った。
溶解速度(g/秒)=酸化銀の質量(g)/酸化銀が消失するまでの時間(秒)
(残留酸の含有量)
上記溶解速度の測定と同様にして、酸化銀10gをメタンスルホン酸水溶液(メタンスルホン酸濃度:60質量%)100gに溶解させて、銀-メタンスルホン酸溶液を調製した。調製した銀-メタンスルホン酸溶液を純水で100倍に希釈した。次いで、イオンクロマトグラム(Thermo Scientific社製、ICS-5000+)を用いて、希釈した銀-メタンスルホン酸溶液に含まれる陰イオン(マトリックスとして含まれるメタンスルホン酸イオンを除く)のピークを検出し、検出されたピークに該当する成分の総量から、酸化銀に含まれるメタンスルホン酸以外の酸の量(A)を求めた。なお、イオンクロマトグラムの条件としては、分離カラム:AS15、カラム温度:35℃、溶離液:38mMKOH水溶液、溶離液流量:1.2mL/min、試料注入量:25μm、検出器:電気伝導度、サプレッサー電流値:113mAとした。
次に、メタンスルホン酸水溶液の代わりに硝酸を用いたこと以外は、上記溶解速度の測定と同様にして、酸化銀10gを硝酸100gに溶解させて銀-硝酸溶液を調製した。
調製した銀-硝酸溶液を純水で100倍に希釈した。次いで、同様にイオンクロマトグラムを用いて、希釈した銀-硝酸溶液に含まれるメタンスルホン酸のピークを検出し、検出されたピークから、酸化銀に含まれるメタンスルホン酸の量(B)を求めた。
そして、酸化銀に含まれるメタンスルホン酸以外の酸の量(A)と酸化銀に含まれるメタンスルホン酸の量(B)の合計量((A)+(B))を、残留酸の含有量とした。
(Na,K,Ca,Mg,Liの合計含有量)
上記溶解速度の測定と同様にして、酸化銀10gをメタンスルホン酸水溶液(メタンスルホン酸濃度:60質量%)100gに溶解させて、銀-メタンスルホン酸溶液を調製した。次いで、調製した銀-メタンスルホン酸溶液中のNa,K,Ca,Mg,Liの含有量を、ICP発光分光分析装置(Agilent Technologies社製725-ES)を用いて測定した。
(Pb含有量)
上記残留酸の含有量の測定と同様にして、酸化銀10gを硝酸100gに溶解させて銀-硝酸溶液を調製した。次いで、調製した銀-硝酸溶液中のPbの含有量を、ICP-MS(Agilent Technologies社製、7700X)を用いて測定した。
Figure 0007052411000001
本発明例1~11の酸化銀は、残留酸の含有量、Na,K,Ca,Mg,Liの合計含有量、Pb含有量が低くなった。特に、アルカリ水溶液添加時の銀塩水溶液のpHが7.0以下とされた本発明例1~4、7~11 の酸化銀は、Pb含有量が低くなった。また、酸化銀がケーキ状態とされた本発明例4は、溶解速度が顕著に速くなった。
これに対して、アルカリ水溶液添加時の銀塩水溶液のpHが4.5以上4.9以下とされた比較例1の酸化銀は、残留酸の含有量が多くなった。また、アルカリ水溶液添加時の銀塩水溶液のpHが8.1以上8.5以下とされた比較例2の酸化銀は、Na,K,Ca,Mg,Liの含有量とPb含有量が多くなった。

Claims (4)

  1. 残留酸の含有量が80質量ppm以下であり、かつ、Na,K,Ca,Mg,Liの含有量が合計で100質量ppm以下であることを特徴とする酸化銀。
  2. 請求項1に記載の酸化銀と、水とを含有することを特徴とする酸化銀ケーキ。
  3. 含水率が1質量%以上20質量%以下の範囲内にあることを特徴とする請求項2に記載の酸化銀ケーキ。
  4. 純水が収容された反応槽と、pHが3.0以下である銀塩水溶液と、アルカリ水溶液とを用意する工程と、
    前記反応槽に前記銀塩水溶液と前記アルカリ水溶液とを、前記反応槽内の前記純水と前記銀塩水溶液と前記アルカリ水溶液の混合物のpHが5.0以上8.0以下の範囲内となるように調整しながら添加して、酸化銀粒子を析出させる工程と、
    を有することを特徴とする酸化銀の製造方法。
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