JP7052411B2 - 酸化銀、酸化銀ケーキおよび酸化銀の製造方法 - Google Patents
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特許文献1には、導電性ペースト用のフィラーとして有用な酸化銀微粒子の製造方法として、pHを12程度のアルカリ性に調整した水溶液中に、銀塩を6mol/L以下の量で含む水溶液と、この銀塩に対し1mol当量以上のアルカリを含む水溶液とを同時投入して反応を行い、一次粒子の小さな酸化銀微粒子を析出させる方法が記載されている。
また、Agの高濃度溶液をめっき浴に添加してAgを補給する場合、水分や酸成分がAgと同時に添加されるため、めっき浴の液を抜いてAg濃度を調整する必要があり、連続的にAgを補給することはできない。このため、Agの補給作業に時間がかかり、連続的にめっきを行う場合の効率が悪かった。
しかしながら、特許文献1に記載されているように、アルカリ性に調整した水溶液中に、銀塩の水溶液とアルカリ性の水溶液とを同時投入する方法によって得られた酸化銀微粒子はアルカリ性に調整した水溶液由来の不純物を含みやすい。このような酸化銀をAg成分の補給材として用いると、めっき液に不純物が蓄積されて、めっき液のpHが変動し、長期間にわたって安定にSn-Ag合金めっきを行うことが難しくなるおそれがある。
本発明において、残留酸の含有量は、次のように定義される。
酸化銀をメタンスルホン酸水溶液(メタンスルホン酸濃度:60質量%)に溶解させて銀-メタンスルホン酸溶液を調製し、イオンクロマトグラムを用いて、この銀-メタンスルホン酸溶液に含まれる陰イオン(マトリックスとして含まれるメタンスルホン酸イオンを除く)のピークを検出し、検出されたピークに該当する成分の総量から酸化銀に含まれるメタンスルホン酸以外の酸の量を求める。次に、酸化銀を硝酸に溶解させて銀-硝酸溶液を調製し、イオンクロマトグラムを用いて、この銀-硝酸溶液に含まれるメタンスルホン酸のピークを検出し、検出されたピークから、酸化銀に含まれるメタンスルホン酸の量を求める。そして、酸化銀に含まれるメタンスルホン酸以外の酸の量と酸化銀に含まれるメタンスルホン酸の量の合計量を、残留酸の含有量とする。
このような構成とされた本発明の酸化銀は、残留酸の含有量が80質量ppm以下であり、かつ、Na,K,Ca,Mg,Liの含有量が合計で100質量ppm以下とされているので、めっき液に多量に溶解させても、めっき液の組成やpHを変動させにくく、めっき特性を変化させにくい。
このような構成とされた本発明の酸化銀ケーキは、上述の酸化銀を含むので、めっき液に多量に溶解させても、めっき液の組成やpHを変動させにくく、めっき特性を変化させにくい。また、酸化銀ケーキは、水分を含むので、乾燥した粉末と比較して飛散しにくく、作業性が向上する。さらに、酸化銀ケーキは、めっき液に投入したときは分散しやすく、めっき液に対する酸化銀の溶解速度が向上する。
この場合、めっき液に投入したときの分散性が確実に高くなるので、めっき液に対する酸化銀の溶解速度をより向上させることができる。
銀塩水溶液のpHが3.0を超える場合、銀塩の一部が、水酸化銀(酸化銀)として銀塩水溶液中に析出するおそれがある。この場合、析出した水酸化銀(酸化銀)は銀塩水溶液中の酸成分を含むことから、前記混合物のpHを5.0以上8.0以下の範囲内に調整しながら酸化銀粒子を析出させて得られる酸化銀の残留酸が増加するおそれがある。
本実施形態に係る酸化銀、酸化銀ケーキは、例えば、Sn-Ag合金めっきの製造に用いるめっき液のAg成分の補給材として用いるものである。
ここで、酸化銀に含まれる残留酸は、通常、酸化銀の製造の際に混入したものである。酸化銀の製造で使用される酸の例としては、硫酸、硝酸、アルカンスルホン酸、アリールスルホン酸、およびアルカノールスルホン酸が挙げられる。このような、酸が酸化銀に残留したものが残留酸である。
一方、酸化銀に含まれるNa,K,Ca,Mg,Liは、通常、酸化銀の製造の際に混入したものである。酸化銀の製造では、Na,K,Ca,Mg,Liの水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩が主に用いられる。Na,K,Ca,Mg,Liが酸化銀に含有されていることは、即ち、Na,K,Ca,Mg,Liの水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩が酸化銀に残留していることを示している。
このため、酸化銀は、残留酸の含有量が50質量ppm以下で、かつ、Na,K,Ca,Mg,Liの含有量が合計で50質量ppm以下であることが好ましく、残留酸の含有量が10質量ppm以下で、かつ、Na,K,Ca,Mg,Liの含有量が合計で10質量ppm以下であることが更に好ましい。
なお、残留酸の含有量、及び、Na,K,Ca,Mg,Liの合計の含有量の下限は、特に限定されないが、0.1質量ppm以上であるとよい。この場合、酸化銀の凝集を防ぐ効果が得られ、長期保管時にも溶解性の維持が期待される。
また、環境から放出される微量のα線によってメモリ中のデータが書き換えられるソフトエラーの発生を抑制するために、半導体チップと基板とを接合するためのはんだでは、α線量を低減させることが求められている。従って、半導体チップと基板とを接合するためのはんだバンプの形成に用いるめっき液のAg成分の補給材として用いる酸化銀は、α線の発生要因となり得るPbの含有量が1質量ppm以下とすることが好ましく、更に好ましくは0.1質量ppm以下である。
本実施形態の酸化銀ケーキは、上述の酸化銀を含むので、めっき液に多量に溶解させても、そのめっき液の組成やpHを変動させにくく、めっき特性を変化させにくい。また、酸化銀ケーキは、水分を含むので、乾燥した粉末と比較して飛散しにくく、作業性が向上する。さらに、酸化銀ケーキは、酸化銀の微細な粒子と粒子との間に水分が存在しているので、めっき液に投入したときに、微細な粒子として分散し易い。このため酸化銀が溶解するまでの時間が、酸化銀の固体(粉末)を投入した場合と比較して顕著に短くなる。
本実施形態に係る酸化銀の製造方法は、純水が収容された反応槽と、銀塩水溶液と、アルカリ水溶液とを用意する工程と、前記反応槽に前記銀塩水溶液と前記アルカリ水溶液とを、前記反応槽内の前記純水と前記銀塩水溶液と前記アルカリ水溶液の混合物のpHが5.0以上8.0以下の範囲内となるように調整しながら添加して、酸化銀粒子を析出させる工程と、を有する。
アルカリ水溶液は、アルカリ性化合物の濃度として0.5mol/L以上2mol/L以下の範囲内にあることが好ましい。アルカリ性化合物の濃度が上記の範囲内にあると、後の工程で銀塩水溶液に添加したとき、酸化銀の生産効率を維持しつつ、急激なpHの変化を抑制することができ、不純物の混入量が少ない高純度の酸化銀を安定して析出させることができる。
また、反応槽内の混合物全体のpHを均一にし、局所的にpHが5.0以上8.0以下の範囲内から逸脱しにくくするため、撹拌を行いながら銀塩水溶液及びアルカリ水溶液を添加することが好ましい。撹拌はスターラーを用いて200rpm~2000rpmの範囲内で行うとよい。
一方、金属、特にPbが水酸化物として混入することを抑えるためには、銀塩水溶液のpHは5.0以上7.0以下の範囲内とすることが好ましい。
また、反応槽内の混合物の液温は、5℃以上50℃以下の範囲内にあることが好ましい。5℃未満では、酸化銀が析出しにくくなり、生産性が悪化するおそれがある。50℃を超えると、銀塩水溶液とアルカリ水溶液の反応性が上昇し、反応槽内のpHを5.0以上8.0以下とすることが難しくなるおそれがある。
回収した酸化銀は、水で十分に洗浄して、表面に付着している酸やアルカリを除去することが好ましい。ただし、遠心分離、加圧ろ過、減圧ろ過など、過度の荷重がかかる場合は、酸化銀粒子が凝集し、洗浄が十分に行われない可能性があるので、デカンテーション、で固液分離を行うことが好ましい。
純水に硝酸銀(関東化学社製、特級)を溶解させて、Ag濃度が100g/Lの硝酸銀水溶液を調製した。また、純水に水酸化ナトリウム(関東化学社製、特級)を溶解させて、水酸化ナトリウム濃度が1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を調製した。
銀塩水溶液は、下記表1に示す銀塩を用いて調製した銀塩水溶液(Ag濃度:100g/L)を用いた。アルカリ水溶液は、下記表1に示すアルカリ性化合物を用いて調製したアルカリ水溶液(アルカリ性化合物濃度:1mol/L)を用いた。また、反応槽内のpHは下記表1に記載の通りとなるようにした。上記以外は、本発明例1と同様にして、酸化銀を得た。
なお、本発明例4では、最終デカンテーション後の酸化銀粒子を乾燥する際に、乾燥条件を40℃、1時間とし、その後全体を均一に混ぜ、含水率が10質量%となったことを確認して、酸化銀ケーキとした。また、本発明例11は、本発明の発明例ではなく、参考例である。
本発明例1~11および比較例1~2で得られた酸化銀について、溶解速度、残留酸含有量、Na,K,Ca,Mg,Liの合計含有量、Pb含有量を下記の方法により測定した。その結果を表1に示す。
試料の酸化銀を10g量り取る。100mLビーカーに、濃度60質量%のメタンスルホン酸水溶液を100g投入し、その水溶液を撹拌(スターラー:アズワン社製、撹拌子サイズ:φ10mm、撹拌条件:200rpm)しながら、その水溶液中に、量り取った酸化銀を投入した。次いで、酸化銀を目視で観察しながら、酸化銀を投入してから、その酸化銀が完全に溶解し、消失するまでの時間を計測した。溶解速度(g/秒)を、下記の式より算出した。なお、投入開始時のメタンスルホン酸水溶液の液温は25℃とした。ただし、本発明例4で得られた酸化銀ケーキに関しては酸化銀相当で10gとなるように11.1g測り取って、同様の評価を行った。
溶解速度(g/秒)=酸化銀の質量(g)/酸化銀が消失するまでの時間(秒)
上記溶解速度の測定と同様にして、酸化銀10gをメタンスルホン酸水溶液(メタンスルホン酸濃度:60質量%)100gに溶解させて、銀-メタンスルホン酸溶液を調製した。調製した銀-メタンスルホン酸溶液を純水で100倍に希釈した。次いで、イオンクロマトグラム(Thermo Scientific社製、ICS-5000+)を用いて、希釈した銀-メタンスルホン酸溶液に含まれる陰イオン(マトリックスとして含まれるメタンスルホン酸イオンを除く)のピークを検出し、検出されたピークに該当する成分の総量から、酸化銀に含まれるメタンスルホン酸以外の酸の量(A)を求めた。なお、イオンクロマトグラムの条件としては、分離カラム:AS15、カラム温度:35℃、溶離液:38mMKOH水溶液、溶離液流量:1.2mL/min、試料注入量:25μm、検出器:電気伝導度、サプレッサー電流値:113mAとした。
次に、メタンスルホン酸水溶液の代わりに硝酸を用いたこと以外は、上記溶解速度の測定と同様にして、酸化銀10gを硝酸100gに溶解させて銀-硝酸溶液を調製した。
調製した銀-硝酸溶液を純水で100倍に希釈した。次いで、同様にイオンクロマトグラムを用いて、希釈した銀-硝酸溶液に含まれるメタンスルホン酸のピークを検出し、検出されたピークから、酸化銀に含まれるメタンスルホン酸の量(B)を求めた。
そして、酸化銀に含まれるメタンスルホン酸以外の酸の量(A)と酸化銀に含まれるメタンスルホン酸の量(B)の合計量((A)+(B))を、残留酸の含有量とした。
上記溶解速度の測定と同様にして、酸化銀10gをメタンスルホン酸水溶液(メタンスルホン酸濃度:60質量%)100gに溶解させて、銀-メタンスルホン酸溶液を調製した。次いで、調製した銀-メタンスルホン酸溶液中のNa,K,Ca,Mg,Liの含有量を、ICP発光分光分析装置(Agilent Technologies社製725-ES)を用いて測定した。
上記残留酸の含有量の測定と同様にして、酸化銀10gを硝酸100gに溶解させて銀-硝酸溶液を調製した。次いで、調製した銀-硝酸溶液中のPbの含有量を、ICP-MS(Agilent Technologies社製、7700X)を用いて測定した。
これに対して、アルカリ水溶液添加時の銀塩水溶液のpHが4.5以上4.9以下とされた比較例1の酸化銀は、残留酸の含有量が多くなった。また、アルカリ水溶液添加時の銀塩水溶液のpHが8.1以上8.5以下とされた比較例2の酸化銀は、Na,K,Ca,Mg,Liの含有量とPb含有量が多くなった。
Claims (4)
- 残留酸の含有量が80質量ppm以下であり、かつ、Na,K,Ca,Mg,Liの含有量が合計で100質量ppm以下であることを特徴とする酸化銀。
- 請求項1に記載の酸化銀と、水とを含有することを特徴とする酸化銀ケーキ。
- 含水率が1質量%以上20質量%以下の範囲内にあることを特徴とする請求項2に記載の酸化銀ケーキ。
- 純水が収容された反応槽と、pHが3.0以下である銀塩水溶液と、アルカリ水溶液とを用意する工程と、
前記反応槽に前記銀塩水溶液と前記アルカリ水溶液とを、前記反応槽内の前記純水と前記銀塩水溶液と前記アルカリ水溶液の混合物のpHが5.0以上8.0以下の範囲内となるように調整しながら添加して、酸化銀粒子を析出させる工程と、
を有することを特徴とする酸化銀の製造方法。
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