JP2019007071A - 錫コート銅粉及びその製造方法、並びに導電性ペースト - Google Patents
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Abstract
【課題】焼結性と耐酸化性と耐候性とを兼ね備え、導電性ペースト等の材料として好適に用いることができる錫コート銅粉及びその製造方法、並びに導電性ペーストを提供すること。【解決手段】本発明に係る錫コート銅粉の製造方法は、銅化合物を含む溶液と、アルカリ金属の水酸化物を含む溶液と、分散剤を含む溶液とを混合して銅塩溶液を作製する銅塩溶液作製工程S1と、銅塩溶液と還元剤溶液とを混合して銅粒子を生成させる銅粒子生成工程S2と、銅粒子表面に錫又は錫合金を被覆する錫被覆工程S3とを有し、銅粒子生成工程S2において、銅塩溶液及び前記還元剤溶液の温度を50℃以上90℃以下の範囲として、銅塩溶液へ還元剤溶液を添加することによって銅粒子を生成する。【選択図】図1
Description
本発明は、表面に錫(Sn)や錫合金を被覆した銅粉(錫コート銅粉)及びその製造方法、並びに導電性ペーストに関する。
電子機器における配線層や電極等の形成には、樹脂型導電性ペーストや焼成型導電性ペーストのような、銀粉や銅粉等の金属フィラーを使用した導電性ペーストが多用されている。銀粉や銅粉の金属フィラーを使用した導電性ペーストは、各種基材上に塗布又は印刷され、加熱硬化あるいは加熱焼成の処理を受けて、配線層や電極等となる導電膜を形成する。
また、電子材料分野で高集積化、高密度化が進む中で、多層化の方法として、プリント配線板の表面と裏面の導通を得るために貫通孔(スルーホール)を設けてその壁面部分にスルーホールめっきを施し、さらにその貫通孔に導電性ペーストを充填する方法がある。
樹脂型導電性ペーストは、金属フィラーと、樹脂、硬化剤、溶剤等からなり、導電体回路パターン又は端子の上に印刷され、100℃〜200℃で加熱硬化されて導電膜となり、配線や電極を形成する。樹脂型導電性ペーストでは、熱によって熱硬化型樹脂が硬化収縮するために金属フィラーが圧着され相互に接触することで金属フィラー同士が重なり、その結果、電気的に接続した電流パスが形成される。さらに、金属粉は一般的に粒径が微細になるほど焼結性が向上するので、粒径がより小さい金属フィラーを用いると、焼結の効果も加わり低抵抗となる。この樹脂型導電性ペーストは、200℃以下の硬化温度で処理されることから、プリント配線板等の熱に弱い材料を用いる基板に使用されている。この樹脂型導電性ペーストには、金属フィラーとして、銀粉、銅粉、銀コート銅粉等が用いられる。
また、焼成型導電性ペーストは、金属フィラーと、ガラス、溶剤等からなり、導電体回路パターン又は端子の上に印刷され、600℃〜800℃の高温に加熱焼成されて導電膜となり、配線や電極を形成する。焼成型導電性ペーストでは、高温で処理され、金属フィラーが焼結して導通性が確保される。焼成型導電性ペーストは、このように高い焼成温度で処理されるため、金属粒子が拡散アロイ化することで導通が図られるものであり、高接続信頼性を期待することができる。この焼成型導電性ペーストに使用される金属フィラーとしては、共晶半田(Sn‐Pb合金)、Pbフリー半田粉(例えば、Sn−Ag−Cu合金)、錫(Sn)めっき銅粉、Snめっき銀粉等が挙げられる。
しかしながら、鉛含有半田の場合は、それを使用した配線基板等を廃棄した際に、鉛が溶出して環境汚染の恐れがあることから、電子部品のPbフリー化の観点で使用が制限される。
Sn−Pb合金の代替であるPbフリー半田粉としては、銀、ビスマス、銅、インジウム、アンチモン、亜鉛等を含む二元あるいは多元のSn合金が候補として挙げられる。このPbフリー半田粉では、より高性能な配線基板を作製するという観点から、多層基板として層間の導通を得るためにビアホールを形成し、そのビアホールに導電性ペーストやめっきで充填することが行われる。導電性ペーストを充填する場合には、ビア中の導電性ペースト組成物を高度に金属拡散接合させ、ビアの抵抗値を低くすることが要求される。ところが、積層温度より低融点のSn合金が積層時にその温度によって融解してしまい、充填した形状が変形収縮挙動を起こすことによって変形して、ビアホール内の接続信頼性が低下するという問題がある。
これらの問題を解決するためには、溶融による形状変形を最小化する必要があり、積層温度によって溶融するSn合金の領域を可能な限り減少させる必要がある。そのためには、使用する金属フィラー粒子をPbフリー半田粉とするのではなく、銅や銀を核としたSn合金が被覆された金属フィラー粒子とすることが考えられる。
ここで、核となる銅粉の製造方法としては、銅イオンを含有する電解液を電気分解して陰極上に銅粉を析出させる電解法や、銅原料を熔解しその熔湯を液滴化して急冷、凝固させることで銅粉を生成するアトマイズ法、溶液中で還元剤を添加して銅粉を生成する湿式法等が知られている。これらの製造方法は、生産性が高く製造コストも安価であるため、工業的生産法として採用されている。
電解法で得られる銅粉は、高純度なものになるという特長がある。しかし、電解法では、電解銅粉の多くは樹枝状の形状で析出し、しかも粒径が10μm以上と粗大なものになりやすく、さらに粒度分布が広く導電性ペーストで特に低抵抗が求められる配線用途には適していない。
また、アトマイズ法は、例えば特許文献1に示されるように、金属を高温で熔解した熔湯の流れにジェット流体を噴射して微粉末化する方法である。しかし、このようなアトマイズ法では、金属を熔解するときに不純物を含有しやすく、また噴射されるときに酸化されやすいこと、さらに1μm以下の銅粉を作製できないといった問題がある。
上述したように、アトマイズ法、電解法で得られた銅粉は、粒径が2μm以上で焼結性が劣るので低抵抗になりにくいこと、多結晶で粒界を持つため耐酸化性に劣ること等の欠点があり、導通性が要求される導電性ペーストとして使用分野が限定されている。
これに対して、湿式法は、溶液中の銅イオン等を還元剤により還元析出させる方法である。具体的には、例えば特許文献2に示されるように、銅塩を含む溶液中にアルカリ剤を添加し反応させて水酸化銅を析出させ、次いでブドウ糖のような還元剤を添加して亜酸化銅まで還元させ、さらにヒドラジンのような二次還元剤を添加して金属銅にまで還元させて銅粉を得る。このような湿式法では、サブミクロンの非常に微細な球状の銅粉を作製できるという特長があるが、特許文献1と同じく多結晶で粒界を持つため耐酸化性が劣り、同じく導電性ペーストとして使用分野が限定されている。
一方で、特許文献3、4には、湿式法により一定の結晶方位を持つ単結晶銅粉を得る方法が提案されている。例えば、特許文献3には、正八角錐型の単結晶となった銅粉を製造するために、銅塩と銅に対して1倍〜5倍のモル比の酒石酸と水酸化アルカリとを含む溶液に還元剤としてホルムアルデヒドを1分間以内に加えることが記載されている。しかし、ここで主に得られる銅粉の粒径は2μm〜5μm程度であり、硬化温度100℃〜200℃の樹脂型導電性ペーストでは低抵抗化を満足できていない。また低抵抗とするために硬化温度を200℃以上とすると、耐酸化性が不十分となる。
また、特許文献3で提案される製造方法は、酒石酸塩等のキレート剤が銅に対して1倍〜5倍のモル比で必要とされるため薬液コストが高くなり、同時に廃液処理のコストも高くなるため、製造コストが高くなるという問題もある。さらに、還元剤であるホルムアルデヒドを1分以内に加えて還元するという条件もあり、工業的に大量生産するには不向きである。
一方、特許文献4で提案される製造方法により得られる銅粉は、高結晶ではあるが板状であるため、比表面積が高くなって酸化しやすく、また配線エッジが凸凹となることから導電膜の用途には不向きである。
一般に、導電性ペーストをIC基板やプリント基板等に利用する際には、微細なパターンを形成するために、例えば、熱重量(TG)分析で大気中200℃の酸化増量1質量%以下という耐酸化性に優れ、微細で分散性の良い金属フィラーが要求される。また、基板耐熱性等から、低温で樹脂硬化させて収縮させた際の接触抵抗が低く、また金属フィラーを大気中で焼成すると、例えば、圧粉抵抗率500μΩ・cm以下という低抵抗になることが求められる。しかしながら、金属の粉末、特に銅粉の場合には顕著に、粒径が微細になるほど酸化が進みやすくなる傾向がある。そのため、微細でありながらも耐酸化性に優れた銅粉を得る方法が求められている。
特許文献5には、気相反応によって単結晶の銅粉を得る方法が提案されている。この銅粉は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察すると、面取りされた多面体の単結晶で、しかも単結晶であるために、表面が滑らかで欠陥がなく耐酸化性に優れている。しかし、気相反応による銅粉の製造では、塩化第一銅を還元性ガスと700℃以上の高温で反応させて単結晶銅粉を得るため、装置の機構が複雑となって製造コストがかかり、さらに得られた銅粉が再溶融して連結する等、収率が悪いという問題がある。
上述した通り、焼成型導電性ペーストに使用される金属フィラーとして、銅粉に錫(Sn)めっきしたものが知られているが、核となる銅粉として、特許文献3〜5に開示される銅粉を用い、その表面を錫で被覆した場合であっても、焼結性と耐酸化性を兼ね備えたものとはならず、耐候性も不十分である。これらの特性を有する錫コート銅粉を工業的に安価に製造できる方法が求められている。
本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、焼結性と耐酸化性と耐候性とを兼ね備え、導電性ペースト等の材料として好適に用いることができる錫コート銅粉及びその製造方法、並びに導電性ペーストを提供することにある。
本発明者は、上述した課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、分散剤を含有させた銅塩溶液を調製し、その銅塩溶液と還元剤水溶液との温度を特定の範囲に制御し、銅塩溶液に対して還元剤溶液を添加して、その温度条件を維持しながら還元反応を生じさせることで、粒径が0.1μm以上3.0μm以下であって均一で、高い結晶性を有する銅粒子を得ることができることを見出した。そして、得られた銅粒子の表面に錫又は錫合金を被覆することで、焼結性と耐酸化性と耐候性とを兼ね備えた錫コート銅粉を比較的安価に得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下のものを提供する。
(1)本発明の第1の発明は、銅粒子の表面に錫又は錫合金が被覆された錫コート銅粉であって、走査型電子顕微鏡により測定される一次粒子の平均粒径が0.1μm以上3.0μm以下であり、前記一次粒子の粒径の標準偏差値を、前記平均粒径で除した値である粒径の相対標準偏差値が0.3以下であり、前記銅粒子の結晶子径を前記平均粒径で除した値が0.07以上である、錫コート銅粉である。
(2)本発明の第2の発明は、第1の発明において、前記銅粒子の結晶子径が60nm以上である、錫コート銅粉である。
(3)本発明の第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記銅粒子の形状が粒状である、錫コート銅粉である。
(4)本発明の第4の発明は、第1乃至第3のいずれかの発明において、錫又は錫合金として被覆されている錫の被覆量が、該錫コート銅粉全体の質量100%に対して1質量%以上33質量%以下である、錫コート銅粉である。
(5)本発明の第5の発明は、第4の発明において、前記錫合金は、銀、ビスマス、及び亜鉛から選ばれる少なくとも1種以上の金属を含有し、該金属含有量は、該錫合金の質量100%に対して0.1質量%以上50質量%以下である、錫コート銅粉である。
(6)本発明の第6の発明は、銅化合物を含む溶液と、アルカリ金属の水酸化物を含む溶液と、分散剤を含む溶液とを混合して銅塩溶液を作製する銅塩溶液作製工程と、前記銅塩溶液と還元剤溶液とを混合して銅粒子を生成させる銅粒子生成工程と、前記銅粒子表面に錫又は錫合金を被覆する錫被覆工程と、を有し、前記銅粒子生成工程では、前記銅塩溶液及び前記還元剤溶液の温度を50℃以上90℃以下の範囲として、該銅塩溶液へ該還元剤溶液を添加することによって混合する、錫コート銅粉の製造方法である。
(7)本発明の第7の発明は、第6の発明において、前記銅塩溶液作製工程では、前記分散剤の添加量を、前記銅化合物中の銅量に対して0.01質量%以上10質量%以下の範囲とする、錫コート銅粉の製造方法である。
(8)本発明の第8の発明は、第6又は第7の発明において、前記分散剤は、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン、変性シリコーンオイル系界面活性剤、及びポリエーテル系界面活性剤から選択される少なくとも1種である、錫コート銅粉の製造方法である。
(9)本発明の第9の発明は、第6乃至第8のいずれかの発明において、前記銅粒子生成工程では、前記還元剤の添加量を、前記銅化合物中の銅量に対して1当量以上7当量以下とする、錫コート銅粉の製造方法である。
(10)本発明の第10の発明は、第6乃至第9のいずれかの発明において、前記錫被覆工程では、前記銅粒子の表面に、無電解めっき法により錫又は錫合金を被覆する、錫コート銅粉の製造方法である。
(11)本発明の第11の発明は、第1乃至第5のいずれかの発明に係る錫コート銅粉と、樹脂と、溶媒とを混練してなる、導電性ペーストである。
本発明によれば、焼結性と耐酸化性と耐候性とを兼ね備え、導電性ペースト等の材料として好適に用いることができる錫コート銅粉とその製造方法、及び導電性ペーストを提供することができる。また、本発明に係る錫コート銅粉の製造方法によれば、製造コストが高くなる気相反応によらず湿式法であるため、比較的安価な原料、簡易な工程を採用できる。その結果、低コストで錫コート銅粉を製造することができ、その工業的価値は極めて大きい。
以下、本発明の具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」という)について詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて適宜変更することができる。なお、本明細書にて、「X〜Y」(X、Yは任意の数値)との表記は、「X以上Y以下」の意味である。
≪1.錫コート銅粉≫
本実施の形態に係る錫コート銅粉は、銅粒子の表面に錫又は錫合金が被覆され、走査型電子顕微鏡(SEM)により測定される一次粒子の平均粒径が0.1μm〜3.0μmであり、一次粒子の粒径の標準偏差値を平均粒径で除した値である粒径の相対標準偏差値が0.3以下であり、また、銅粒子の結晶子径を錫コート銅粉の平均粒径で除した値が0.07以上であることを特徴としている。
本実施の形態に係る錫コート銅粉は、銅粒子の表面に錫又は錫合金が被覆され、走査型電子顕微鏡(SEM)により測定される一次粒子の平均粒径が0.1μm〜3.0μmであり、一次粒子の粒径の標準偏差値を平均粒径で除した値である粒径の相対標準偏差値が0.3以下であり、また、銅粒子の結晶子径を錫コート銅粉の平均粒径で除した値が0.07以上であることを特徴としている。
より具体的に、この錫コート銅粉は、粒状の形状を有しており、平均粒径が0.1μm〜3.0μmの範囲であり、より好ましくは0.3μm〜2.5μmの範囲である。このような範囲の平均粒径を有する錫コート銅粉であることにより、細線化された配線を形成するのに適した導電性ペーストとすることができる。
ここで、平均粒径は、SEMにより一定数の錫コート銅粉を観察して、その観察により測定した一次粒子の粒径から求められる平均値である。また、一次粒子は、そのSEM観察像より単位粒子と考えられるものを指し、単位粒子が凝集、結合してできた粒子、いわゆる二次粒子を意味するものではない。
この錫コート銅粉の平均粒径が0.1μm未満であると、粒子が凝集しやすくなり、ペースト化し難くなる。一方で、平均粒径が3.0μmを超えると、その錫コート銅粉を含む導電性ペーストにより配線を形成させたときに線幅を狭くすることが難しくなり、配線を細線化することが困難となる。
また、この錫コート銅粉は、一次粒子の粒径の標準偏差値を、上述したSEMにより測定される平均粒径で除した値である、粒径の相対標準偏差値が0.3以下である。この粒径の相対標準偏差値が0.3を超えると、印刷膜中に錫コート銅粉が均一に存在しなくなるため、配線や電極の太さや厚さが不均一となる。またそればかりか、硬化あるいは焼成が不均一となるため、導電膜の抵抗が大きくなり、導電膜が脆く弱いものになりやすい。
また、この錫コート銅粉は、銅粒子の結晶子径を、上述したSEMにより測定される平均粒径で除した(以下、「銅粒子の結晶子径/錫コート銅粉の平均粒径」ということがある。)ときの値が0.07以上である。銅粒子の結晶子径は、X線回折結果からScherrer法を用いて計算することができる。「銅粒子の結晶子径/錫コート銅粉の平均粒径」で表される指標が大きいほど、錫コート銅粉を構成する銅粒子の結晶粒の個数が少ないことを意味し、つまり高い結晶性を有しているものとなる。このように、「銅粒子の結晶子径/錫コート銅粉の平均粒径」の値が0.07以上の高結晶性を有する銅粒子を芯材とする錫コート銅粉であることにより、錫コートの耐酸化性に加え、銅粒子の結晶粒界が少ないことで酸化し難くいものとなる。さらに、詳細は不明ではあるが、結晶粒界の少ない銅粒子上の錫コートや錫合金コートは、粒界が少なく、結晶性が高くなる傾向があり、さらに耐酸化性が向上するため、導電性ペースト用金属材料としてより望ましい。
ここで、本実施の形態に係る銅粒子の結晶子径は、60nm以上が好ましく、130nm以上がより好ましい。なお、結晶子径の上限値としては、特に限定されないが、900nm以下であることが好ましい。
また、上述した「銅粒子の結晶子径/錫コート銅粉の平均粒径」の値は、0.07以上であり、0.08〜0.3であることがより好ましく、0.08〜0.2であることがさらに好ましく、0.1〜0.14であることが特に好ましい。なお、「銅粒子の結晶子径/錫コート銅粉の平均粒径」の値の上限値は、特に限定されないが、0.3以下であることが好ましい。
また、本実施の形態に係る錫コート銅粉は、耐酸化性に優れており、細線用導電性ペーストに用いられる錫コート銅粉として好適である。具体的に、その耐酸化性については、例えば、直径約3mm、厚さ2mmの円筒状ペレットに圧粉し、大気中で200℃まで温度を上げたときの、「200℃加熱時重量増加量」によって定量的に評価することができる。本実施の形態に係る銅粉は、好ましくは、大気中において200℃まで加熱したときの重量増加が2.0質量%未満であり、より好ましくは1.0質量%以下である。
これらの形状を有した錫コート銅粉は、その表面は滑らかであり、走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察したときに、視野中にこの高結晶性構造を有する錫コート銅粉が全錫コート銅粉の個数の60%以上の割合を占めていることが好ましく、70%以上を占めていることがより好ましく、80%以上を占めていることがさらに好ましい。全錫コート銅粉の個数の60%以上がこのような錫コート銅粉であれば、後述するように高い焼結性と高い耐酸化性とを十分に発揮することができる。なお、高結晶性構造を有する錫コート銅粉が占める割合の上限値は、限定されない。
本実施の形態に係る錫コート銅粉において、錫又は錫合金の被覆量としては特に限定されないが、銅粒子表面に、錫コート銅粉全体の質量100%に対して1質量%〜33質量%の割合であることが好ましい。錫又は錫合金の被覆量は、コストの観点からはできるだけ少ない方が好ましいが、少なすぎると銅粒子表面に均一な錫又は錫合金の被膜が確保できず、耐候性の向上が見込めなくなる。そのため、錫又は錫合金の被覆量としては、錫コート銅粉全体の質量100%に対して1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましい。
一方で、錫又は錫合金の被覆量が多くなると、コストがかさむことから、錫又は錫合金の被覆量としては、錫コート銅粉全体の質量100%に対して33質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることがさらに好ましい。
錫コート銅粉において、銅粒子の表面に錫合金を被覆する場合、その錫合金としては、銀、ビスマス、及び亜鉛から選ばれる1種以上の金属との合金であることが好ましい。これらの錫合金を構成する錫以外の金属元素の含有割合としては、融点や濡れ性の観点から、錫合金の被膜全体の質量100%に対して0.1質量%〜50質量%であることが好ましい。含有量が多くなりすぎると、融点の上昇や機械的強度が低下する等の原因となることから、50質量%以下であることが好ましい。一方で、含有量が0.1質量%未満であると、これら錫合金となる金属元素を含有させても、融点を低下させ、濡れ性を向上させる効果が十分に得られない可能性がある。また、錫合金を構成する錫以外の金属元素の含有割合としては、1質量%〜20質量%であることがより好ましく、2質量%〜10質量%であることがさらに好ましい。
なお、錫合金を構成する金属の含有量は、例えば高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法により、錫コート銅粉を構成する各元素の含有量を換算することによって測定することができる。また、エネルギー分散型X線分光(EDX)法やオージェ電子分光(AES)法によって、錫コート銅粉の断面等から錫合金被膜中の各元素の定量分析することもできる。
≪2.湿式法による錫コート銅粉の製造方法≫
次に、上述した特徴的な構成を有する錫コート銅粉の製造方法について説明する。図1は、錫コート銅粉の製造方法の一例を示すフロー図である。
次に、上述した特徴的な構成を有する錫コート銅粉の製造方法について説明する。図1は、錫コート銅粉の製造方法の一例を示すフロー図である。
本実施の形態に係る錫コート銅粉は、図1に示すように、銅化合物(銅イオン)を含む溶液とアルカリ金属の水酸化物と分散剤とを混合して銅塩溶液を作製する銅塩溶液作製工程S1と、作製した銅塩溶液と還元剤溶液とを特定の温度範囲に調整して維持しながら混合し、銅粒子を生成させる銅粒子生成工程S2と、生成された銅粒子の表面に錫又は錫合金を被覆する錫被覆工程S3とを有する。
ここで、従来の銅粒子の製造方法では、形状が粒状で、粒径が小さくかつ均一であり、結晶子径が大きい銅粒子を工業的な製造に適した方法で製造できないという問題があった。しかしながら、本発明者の研究により、分散剤を含有させた銅塩溶液を調製し、その銅塩溶液と還元剤水溶液との温度を特定の範囲に調整し、原料である銅塩溶液に対して還元剤溶液を添加していき、その温度条件を維持しながら還元反応を生じさせることで、形状が粒状で、粒径が小さく、結晶子径が大きい銅粒子を得ることができることを見出した。
より具体的には、銅塩溶液と還元剤溶液との温度を50℃以上90℃以下の範囲に調整し、それを維持した状態で、銅塩溶液に対して還元剤溶液を添加して銅粒子を生成させる。このような製造方法によれば、粒状で、粒径が小さくかつ均一であり、結晶子径が大きい銅粒子を得ることができ、そして、その銅粒子の表面に錫又は錫合金を被覆することで、配線の細線化に適した導電性ペーストに有用な銅粉を、工業的に製造することができる。
以下、本実施の形態に係る錫コート銅粉の製造方法の各工程について、より詳細に説明する。なお、以下の説明においては、銅塩溶液と還元剤溶液とを混合させた後の液を「反応液」ともいう。
(1)銅塩溶液作製工程
銅塩溶液作製工程S1では、先ず、銅粒子を製造する原料溶液である銅塩溶液を作製する。具体的には、銅化合物を含む溶液と、アルカリ金属の水酸化物を含む溶液と、分散剤を含む溶液とを混合して銅塩溶液を作製する。
銅塩溶液作製工程S1では、先ず、銅粒子を製造する原料溶液である銅塩溶液を作製する。具体的には、銅化合物を含む溶液と、アルカリ金属の水酸化物を含む溶液と、分散剤を含む溶液とを混合して銅塩溶液を作製する。
(銅化合物を含む溶液)
銅化合物を含む溶液に関して、出発原料である銅化合物としては、特に限定されるものではなく、硫酸銅、塩化銅、炭酸銅、酢酸銅、リン酸銅等、水溶液として溶解するものであればいずれの銅塩でもよく、また1種類単独でも複数を併せて用いてもよい。好ましくは、銅粉に陰イオン元素が混入せず不純物が少なく、排水処理費も含めて安価であるという観点から、硫酸銅、塩化銅、又は炭酸銅が好適である。さらには、導電性ペーストが使われる電子部品の信頼性等を考慮すれば、硫酸銅と炭酸銅がより好ましい。これらの銅塩を溶解して溶液とするが、使用する溶媒としては不純物の混入を防ぐために純水とすることがより好ましい。
銅化合物を含む溶液に関して、出発原料である銅化合物としては、特に限定されるものではなく、硫酸銅、塩化銅、炭酸銅、酢酸銅、リン酸銅等、水溶液として溶解するものであればいずれの銅塩でもよく、また1種類単独でも複数を併せて用いてもよい。好ましくは、銅粉に陰イオン元素が混入せず不純物が少なく、排水処理費も含めて安価であるという観点から、硫酸銅、塩化銅、又は炭酸銅が好適である。さらには、導電性ペーストが使われる電子部品の信頼性等を考慮すれば、硫酸銅と炭酸銅がより好ましい。これらの銅塩を溶解して溶液とするが、使用する溶媒としては不純物の混入を防ぐために純水とすることがより好ましい。
銅化合物の濃度としては、特に限定されないが、得られる銅塩溶液中における銅濃度として5g/L〜250g/Lの範囲であることが好ましい。銅の濃度が低い場合であっても、粒子の成長が生じて銅粒子を得ることができるが、銅塩溶液中において銅濃度が5g/L未満であると、生産性を高めることができず、また排水量が増大してコストが高くなる。一方で、銅の濃度が250g/Lを越えると、銅化合物の水に対する溶解度に近くなり、銅化合物が十分に溶解しない可能性がある。
(アルカリ金属の水酸化物を含む溶液)
アルカリ金属の水酸化物を含む溶液に関して、そのアルカリ金属の水酸化物としては、各種の水酸化物を用いることができる。その中でも、中和で生じる沈殿塩を還元以後に分離する必要がない、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムを用いることが好ましく、水酸化ナトリウムを用いることがより好ましい。これらのアルカリ金属の水酸化物は、入手が容易である。
アルカリ金属の水酸化物を含む溶液に関して、そのアルカリ金属の水酸化物としては、各種の水酸化物を用いることができる。その中でも、中和で生じる沈殿塩を還元以後に分離する必要がない、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムを用いることが好ましく、水酸化ナトリウムを用いることがより好ましい。これらのアルカリ金属の水酸化物は、入手が容易である。
アルカリ金属の水酸化物の濃度としては、後述する還元剤溶液を銅塩溶液に添加した後にその反応液中で還元剤の還元反応が十分に進行するpHとなるように、その銅塩溶液中の濃度を調整することが好ましい。具体的には、例えば還元剤としてアスコルビン酸を用いる場合は、反応液のpHが3.0以上となるようにすることが好ましい。反応液のpHが3.0未満であると、還元剤であるアスコルビン酸による還元反応が進行しにくくなる可能性がある。
反応液のpHが高くなると、反応液中に水酸化銅が形成されるようになり、その水酸化銅からの還元反応により銅粒子が生成される。水酸化銅から銅粒子が生成される反応は、銅イオンから銅粒子が生成される反応よりも速度が低下するため、徐々に結晶が成長することになり、高結晶性の銅粒子が得られやすくなる。このことから、反応液のpHが4.0以上となるようにすることがより好ましい。
(分散剤を含む溶液)
本実施の形態に係る銅粉の製造方法においては、銅塩溶液を作製するにあたり、還元剤との還元反応により生成した銅粒子に凝集が生じないように、分散剤の水溶液を混合させる。分散剤は、反応液中の濃度が高くなるほど、還元反応の速度を遅くする作用を有している。このことから、銅塩溶液に分散剤を含有させることで、還元反応の反応速度を低下させ、高結晶性の銅粒子を得ることができる。
本実施の形態に係る銅粉の製造方法においては、銅塩溶液を作製するにあたり、還元剤との還元反応により生成した銅粒子に凝集が生じないように、分散剤の水溶液を混合させる。分散剤は、反応液中の濃度が高くなるほど、還元反応の速度を遅くする作用を有している。このことから、銅塩溶液に分散剤を含有させることで、還元反応の反応速度を低下させ、高結晶性の銅粒子を得ることができる。
ここで、本実施の形態に係る銅粉の製造方法においては、結晶粒界が少なく結晶子径が大きい銅粒子を得ることが重要であり、そのためには、結晶性が高いことにより銅粒子の各結晶の成長が優先されて結晶粒界が相対的に少なくなる条件とすることが好ましい。このような点から、還元反応の速度を制御することが好ましく、反応液中の分散剤濃度が適切な範囲となるように制御することが好ましい。
具体的に、分散剤の濃度としては、反応液中において銅化合物の銅量に対して0.01質量%〜10質量%となるようにすることが好ましく、0.1質量%〜7質量%とすることがより好ましく、0.3質量%〜5質量%とすることが特に好ましい。分散剤の濃度が反応液中において0.01質量%未満であると、還元反応の速度が速くなり、高結晶性の銅粉が得られない可能性がある。一方で、分散剤の濃度が反応液中において10質量%を超えると、還元反応の速度が低下しすぎて生産性が悪化し、また場合によっては還元反応が進行しない可能性もある。
分散剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン、変性シリコーンオイル系界面活性剤、ポリエーテル系界面活性剤等から選択される少なくとも1種を用いることができる。また、これらの分散剤の2種以上を併用してもよい。
(2)銅粒子生成工程
銅粒子生成工程S2では、作製した銅塩溶液に還元剤溶液を添加して銅粒子を生成させる。このとき、本実施の形態に係る錫コート銅粉の製造方法では、銅塩溶液と還元剤溶液の温度を特定の範囲に制御し、その温度を維持しながら、原料溶液である銅塩溶液に対して還元剤溶液を添加していく。
銅粒子生成工程S2では、作製した銅塩溶液に還元剤溶液を添加して銅粒子を生成させる。このとき、本実施の形態に係る錫コート銅粉の製造方法では、銅塩溶液と還元剤溶液の温度を特定の範囲に制御し、その温度を維持しながら、原料溶液である銅塩溶液に対して還元剤溶液を添加していく。
(還元剤溶液)
還元剤としては、特に限定されないが、比較的還元力の弱い化合物を用いることが好ましく、例えば、アスコルビン酸等のエンジオール基を有する有機化合物、ホルムアルデヒド、ブドウ糖、多糖類から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。特に、アスコルビン酸、アスコルビン酸の酸誘導体、あるいはアスコルビン酸に類似のエンジオール基を有する有機化合物は、還元作用が緩やかであり、結晶性の高い銅粒子を効率的に生じさせることができる点から好ましい。
還元剤としては、特に限定されないが、比較的還元力の弱い化合物を用いることが好ましく、例えば、アスコルビン酸等のエンジオール基を有する有機化合物、ホルムアルデヒド、ブドウ糖、多糖類から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。特に、アスコルビン酸、アスコルビン酸の酸誘導体、あるいはアスコルビン酸に類似のエンジオール基を有する有機化合物は、還元作用が緩やかであり、結晶性の高い銅粒子を効率的に生じさせることができる点から好ましい。
この錫コート銅粉の製造方法においては、上述した還元剤を含有する溶液を銅塩溶液に添加していくが、その還元剤の添加量としては、反応液中において銅化合物の銅量に対して1当量〜7当量に相当する量とすることが好ましい。還元剤の添加量を、銅化合物の銅量に対して1当量未満とすると、未還元の銅塩が残留することがあり、一方で、7当量を超えると、製造コストが高くなる。
ここで、本実施の形態に係る銅粉の製造方法においては、原料溶液である銅塩溶液へ還元剤溶液を添加していくことが重要であり、これにより、結晶性の高い銅粒子を効果的に生成させることができる。
また、銅塩溶液に対して還元剤溶液を添加していくに際しては、その銅塩溶液と還元剤溶液との温度を特定の範囲に制御する。具体的には、50℃以上90℃以下の範囲とし、また、60℃以上80℃以下の範囲とすることが好ましい。銅塩溶液と還元剤溶液の温度をこのような温度範囲に制御し、この温度範囲を維持して還元反応を生じさせることによって、高い結晶性を有する銅粒子を生成させることができる。反応温度が50℃未満であると、銅粒子の結晶性が低くなる。一方で、反応温度が90℃を超えると、反応速度が速くなるために粒径が不均一になりやすくなる。
また、銅塩溶液に対して還元剤溶液を添加した後の反応液の保持時間としては、特に限定されないが、1時間以上とすることが好ましい。反応液の保持時間が1時間未満であると、還元反応が終了していない可能性があり、未還元の銅塩が残留することがある。一方で、反応液の保持時間の上限としては特に限定されないが、アスコルビン酸のような比較的還元力の弱い還元剤による還元反応が完全に終了するまでという観点から、例えば5時間以内とすることが好ましい。なお、この反応液の保持時間としては、1時間〜4時間とすることがより好ましく、2時間〜3時間とすることが特に好ましい。
反応液には、必要に応じてpH調整剤、錯化剤、消泡剤等の添加剤を適宜添加することもできる。これらの添加剤の添加量も、その目的に応じて適宜調整すればよい。
銅塩溶液作製工程S1及び銅粒子生成工程S2を経て得られる銅粒子は、微細で比較的粒度分布が狭い一方で、高結晶性の粒子であるために外観が滑らかで欠陥が無く、結晶性が良好で安定性(表面安定性)が高いものとなり、優れた耐酸化性と焼結性とを有している。
(3)錫又は錫合金被覆工程(錫被覆工程)
銅粒子生成工程S2を経て得られる銅粒子は、優れた耐酸化性と焼結性とを有しているが、焼成型導電性ペースト用の金属フィラーとするには、まだ必ずしも十分な特性であるとはいえない。
銅粒子生成工程S2を経て得られる銅粒子は、優れた耐酸化性と焼結性とを有しているが、焼成型導電性ペースト用の金属フィラーとするには、まだ必ずしも十分な特性であるとはいえない。
そこで、錫被覆工程S3では、銅粒子生成工程S2を経て得られる銅粒子に、例えば、還元型無電解めっき法や置換型無電解めっき法等を用いて錫又は錫合金を被覆する。このように、銅粒子の表面に錫又は錫合金の被膜を形成させて錫コート銅粉とすることで、耐酸化性、焼結性、耐候性を向上させ、焼成型導電性ペースト用の金属フィラーとして好適に用いることができる。
銅粒子は、そのまま錫めっきしてもよいが、その前に洗浄を行うのが好ましい。銅粒子を洗浄液中に分散させ、撹拌しながら洗浄を行うことで均一に錫又は錫合金を被覆することができる。この洗浄処理としては、酸性溶液中で行うことが好ましく、洗浄後には、銅粒子のろ過、分離と、水洗とを適宜繰り返して、水中に銅粒子が分散した水スラリーとする。なお、ろ過、分離と、水洗とについては、公知の方法を用いればよい。
具体的に、無電解めっき法により錫又は錫合金を被覆する場合には、銅粒子を含むスラリーに無電解錫めっき液を加えるか、無電解錫めっき液中に銅粒子を含むスラリーを加え、均一に撹拌することで銅粒子の表面に錫又は錫合金を均一に被覆させることができる。
ここで、無電解めっき法としては、下地である銅粒子の溶出に伴ってめっき液中の錫イオンが還元析出する置換型錫めっきと、めっき液中の錫イオンを還元剤によって還元して錫被覆を行う還元型錫めっきと、錫イオンの不均化反応によって金属錫となることを利用して錫被覆を行う不均化反応型錫めっきが挙げられ、いずれの方法を用いてもよい。
具体的に、置換型錫めっき液としては、錫化合物と、錫化合物を水溶液中に安定に保つための錯化剤とを必須成分とし、必要に応じて界面活性剤、pH調整剤等を添加してなるものを用いることができる。また、還元型錫めっき液としては、上述した置換型錫めっき液の組成に還元剤を添加したものを用いることができる。
また、不均化反応型錫めっきでは、アルカリ水溶液中において錫イオンがHSnO2−イオンとして存在し、そのHSnO2−イオンが、下記式で示される不均化反応によって金属錫となる。不均化反応型錫めっきは、反応により生成する金属錫によって錫めっきを行うものであり、強アルカリ浴の置換型錫めっき液と同様の組成のめっき液を用いることができる。
2HSnO2−+2H2O⇔Sn(OH)6 2−+Sn
2HSnO2−+2H2O⇔Sn(OH)6 2−+Sn
錫化合物としては、2価の錫化合物と4価の錫化合物があり、2価の錫化合物と4価の錫化合物をそれぞれ単独で、又はそれぞれ併用してもよい。
具体的に、錫化合物としては、例えば、ホウフッ化第一錫、スルホコハク酸第一錫、塩化第一錫、塩化第二錫、硫酸第一錫、硫酸第二錫、酸化第一錫、酸化第二錫、メタンスルホン酸第一錫、エタンスルホン酸第一錫、2−ヒドロキシプロパン−1−スルホン酸第一錫、p−フェノールスルホン酸第一錫、ホウフッ化錫、ケイフッ化錫、スルファミン酸錫、シュウ酸錫、酒石酸錫、グルコン酸錫、スルホコハク酸錫、ピロリン酸錫、1−ヒドロキシエタン−1,1−ビスホスホン酸錫、トリポリリン酸錫等が挙げられる。
錯化剤としては、チオ尿素誘導体、カルボン酸又はアミン系化合物、塩化チタン等を用いることができる。
具体的に、チオ尿素誘導体としては、チオ尿素、1,3−ジメチルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、ジエチルチオ尿素(例えば、1,3−ジエチル−2−チオ尿素)、N,N’−ジイソプロピルチオ尿素、アリルチオ尿素、アセチルチオ尿素、エチレンチオ尿素、1,3−ジフェニルチオ尿素、二酸化チオ尿素、チオセミカルバジド等が挙げられる。また、カルボン酸又はアミン系化合物としては、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコン酸、ゴルコヘプトン酸、グリコール酸、乳酸、トリオキシ酪酸、アスコルビン酸、イソクエン酸、タルトロン酸、グリセリン酸、ヒドロキシ酪酸、ロイシン酸、シトラマル酸、コハク酸、メルカプトコハク酸、スルホコハク酸、グルタル酸、マロン酸、アジピン酸、シュウ酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、メサコン酸、グリコール酸、クエン酸ナトリウム、グリシン、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩、エチレンジアミン四プロピオン酸、ニトリロ三酢酸、イミノジ酢酸、ヒドロキシエチルイミノジ酢酸、イミノジプロピオン酸、アミノトリメチレンリン酸、アミノトリメチレンリン酸五ナトリウム塩、ベンジルアミン、2−ナフチルアミン、イソブチルアミン、イソアミルアミン、1,3−プロパンジアミン四酢酸、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、メタフェニレンジアミン四酢酸、1,2−ジアミノシクロヘキサン−N,N,N’,N’−四酢酸、ジアミノプロピオン酸、エチレンジアミンテトラメチレンリン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンリン酸、グルタミン酸、ジカルボキシメチルグルタミン酸、オルニチン、システイン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン、(S、S)−エチレンジアミンコハク酸、メチレンジアミン、エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミン、シンナミルアミン、p−メトキシシンナミルアミン等が挙げられる。
還元剤としては、リン酸系化合物、水素化ホウ素化合物、ヒドラジン誘導体等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を併せて用いることができる。
具体的に、リン酸系化合物としては、次亜リン酸、亜リン酸、ピロリン酸、ポリリン酸等が挙げられる。また、水素化ホウ素化合物としては、メチルヘキサボラン、ジメチルアミンボラン、ジエチルアミンボラン、モルホリンボラン、ピリジンアミンボラン、ピペリジンボラン、エチレンジアミンボラン、エチレンジアミンビスボラン、t−ブチルアミンボラン、イミダゾールボラン、メトキシエチルアミンボラン、水素化ホウ素ナトリウム等が挙げられる。また、ヒドラジン誘導体としては、硫酸ヒドラジン、塩酸ヒドラジン等のヒドラジン塩や、ピラゾール類、トリアゾール類、ヒドラジド類等のヒドラジン誘導体等を用いることができる。これらの中で、ピラゾール類としては、ピラゾールの他に、3,5−ジメチルピラゾール、3−メチル−5−ピラゾロン等のピラゾール誘導体を用いることができる。また、トリアゾール類としては、4−アミノ−1,2,4−トリアゾール、1,2,3−トリアゾール等を用いることができる。また、ヒドラジド類としては、アジピン酸ヒドラジド、マレイン酸ヒドラジド、カルボヒドラジド等を用いることができる。
なお、そのほか、必要に応じて、pH緩衝剤、pH調整剤、界面活性剤等の添加剤を含有させることができる。さらに必要に応じて、消泡剤や分散剤を使用してもよい。
pH緩衝剤としては、公知の錯化剤を使用することができる。例えば、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等が挙げられる。
pH調整剤としては、公知の錯化剤を使用することができる。例えば、酸やアルカリの化合物を使用することができ、例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物,炭酸ニッケル、硫酸、塩酸、ホウフッ酸等が挙げられる。なお、アンモニアを用いる場合、アンモニア水として供給することができる。
界面活性剤は、めっき液の浸透性を向上させるために用いることができ、具体的に、界面活性剤としては、ノニオン性、カチオン性、アニオン性、両性等の界面活性剤のいずれを用いることができ、1種単独又は2種以上併せて用いることができる。
さらに、形成される錫被膜中に、錫以外の他の元素が含有させるようにすることで、すなわち、銅粒子表面に錫合金の被膜を形成させることで、融点や濡れ性等の性質を変更することができる。例えば、Pbフリー半田の仕様としては、使用する用途や材料によって、使用温度や濡れ性、機械的強度が問題となる。この点において、錫合金の被膜を形成させることで、使用用途や材料に合った性質に変更することができる。
具体的に、錫被膜中に含有させる元素、つまり錫合金を構成する錫以外の元素としては、銀、ビスマス、銅、インジウム、アンチモン、及び亜鉛等が挙げられる。錫合金としては、これらの元素を含む二元あるいは多元の合金とすることができる。その中でも、無電解めっき法で錫を被覆するときに合金化できる元素としては、銀、ビスマス、亜鉛があり、上述した無電解錫めっき液に、これら元素を含む化合物を1種以上添加することによって、容易に錫合金被膜を被覆することができる。
具体的に、銀を含む錫合金とする場合、無電解錫めっき液中に添加する銀化合物としては、例えば、酸化銀、硝酸銀、硫酸銀、塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀、安息香酸銀、スルファミン酸銀、クエン酸銀、乳酸銀、メルカプトコハク酸銀、リン酸銀、トリフルオロ酢酸銀、ピロリン酸銀、1−ヒドロキシエタン−1,1−ビスホスホン酸銀、ホウフッ化銀、酒石酸銀、グルコン酸銀、シュウ酸銀、メタンスルホン酸銀、p−フェノールスルホン酸銀、安息香酸銀等が挙げられる。
また、ビスマスを含む錫合金とする場合、無電解錫めっき液中に添加するビスマス化合物としては、例えば、硝酸ビスマス、塩化ビスマス、メタンスルホン酸ビスマス、エタンスルホン酸ビスマス、p−フェノールスルホン酸ビスマス等が挙げられる。
また、亜鉛を含む錫合金とする場合、無電解錫めっき液中に添加する亜鉛化合物としては、例えば、酸化亜鉛、塩化亜鉛、硫酸亜鉛等が挙げられる。
これらの錫合金を構成する錫以外の金属元素の含有割合としては、融点や濡れ性の観点から、当該錫コート銅粉に被覆されている錫合金の被膜全体の質量100%に対して0.1質量%〜50質量%の含有量であることが好ましい。含有量が多くなりすぎると、融点の上昇や機械的強度が低下する等の原因となることから、50質量%以下であることが好ましい。一方で、含有量が0.1質量%未満であると、これら錫合金となる金属元素を含有させても、融点を低下させ、濡れ性を向上させる効果が十分に得られない可能性がある。このことから、錫合金被膜全体に対して0.1質量%〜50質量%の含有量であることが好ましく、1質量%〜20質量%の含有量であることがより好ましく、2質量%〜10質量%の含有量であることがさらに好ましい。
さらに、錫合金被膜を形成する方法としては、上述した無電解めっき法による方法に限定されない。例えば、錫を被覆する前の銅粒子中に錫合金を構成する錫以外の元素を含有させておき、錫のみからなる被膜(錫被膜)を形成させた後に、あらかじめ銅粒子に含有させておいた元素をその錫被膜に拡散させることによって、錫合金被膜を形成させることもできる。
錫被覆工程S3により錫又は錫合金が被覆されて得られた錫コート銅粉は、ろ過、洗浄、及び乾燥の処理を行い、表面に付着した無電解錫めっき液や水分が除去される。洗浄は公知の方法を用いればよく、例えば洗浄液には純水、エタノール等のアルコール類、又はそれらの混合物等を用いることができる。洗浄温度についても特に限定されないが、5℃〜50℃が好ましく、10℃〜40℃がより好ましい。また、錫コート銅粉の凝集等を防止するために、洗浄処理において洗浄水等に表面処理剤を添加して、その洗浄中に錫コート銅粉を表面処理するようにしてもよい。例えば、洗浄処理中にカルボン酸溶液による表面処理を追加することができる。なお、このような表面処理を行った場合には、その後に洗浄及び濾過を行い、余剰な表面処理剤を除去することが好ましい。洗浄は、例えば不純物濃度が所望の範囲内になるまで繰り返し、最終的にろ過して銅粉とする。乾燥方法も特に限定されることはなく、オーブン、スプレードライヤー、真空乾燥等公知の方法を用いればよい。
以上詳細に説明したように、本実施の形態に係る錫コート銅粉の製造方法によれば、微細で比較的粒度分布が狭い一方で、高結晶性の粒子であるために外観が滑らかで欠陥が無く、結晶性が良好で安定性(表面安定性)が高い銅粒子を得ることができ、さらにこの銅粒子の表面に錫又は錫合金を被覆していることから、優れた焼結性と耐酸化性と耐候性とを兼ね備え、導電性ペースト等の材料として好適に用いることができる錫コート銅粉を得ることができる。
≪3.導電性ペースト≫
本実施形態に係る錫コート銅粉を導電性ペーストの材料(金属フィラー)として用いた場合、樹脂中において凝集せずに均一に分散する優れた分散性を示す。また、耐焼結性、耐酸化性、及び耐候性を有する錫コート銅粉を金属フィラーとして用いた導電性ペーストは、例えば酸化性雰囲気下であっても高温焼成等の焼成処理を適切に施すことができる。
本実施形態に係る錫コート銅粉を導電性ペーストの材料(金属フィラー)として用いた場合、樹脂中において凝集せずに均一に分散する優れた分散性を示す。また、耐焼結性、耐酸化性、及び耐候性を有する錫コート銅粉を金属フィラーとして用いた導電性ペーストは、例えば酸化性雰囲気下であっても高温焼成等の焼成処理を適切に施すことができる。
本発明に係る導電性ペーストは、少なくとも上記錫コート銅粉と樹脂(バインダ樹脂)と溶剤とを混合し、それらを混錬することで得ることができる。
導電性ペーストには、構成成分として錫コート銅粉、樹脂、溶剤のほかに、さらに必要に応じて、硬化後の導電性を改善するために酸化防止剤やカップリング剤等の添加剤を配合することができる。
樹脂の種類は、特に限定されないが、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、エチルセルロース樹脂等を用いることができる。
また、溶剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ターピネオール等の有機溶剤を用いることができる。また、その有機溶剤の量は、特に限定されないが、スクリーン印刷やディスペンサー等の導電膜形成方法に適した粘度となるように、銅粉の平均粒径を考慮して添加量を調整することができる。
また、酸化防止剤の種類は、特に限定されないが、例えばヒドロキシカルボン酸等を挙げることができる。より具体的には、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸等のヒドロキシカルボン酸が好ましく、銅への吸着力が高いクエン酸又はリンゴ酸が特に好ましい。その他にカップリング剤、粘度調整剤、分散剤、難燃剤、沈降防止剤等を使用することができる。
この導電性ペーストは、上述した構成成分を均一に分散させることができる限り、従来技術と同様の方法により製造することができる。例えば、上述した各構成成分を、3本ロールミル等により均一に混練することができる。
なお、上述した添加剤を添加するタイミングも特に制限されることはなく、錫コート銅粉、バインダ樹脂と同時に溶剤に添加して混練してもよく、あるいは、錫コート銅粉とバインダ樹脂を溶剤と混練させた後、自公転ミキサ等を用いて添加してもよい。
この導電性ペーストは、導電体回路パターン又は端子の上に印刷し、600℃〜800℃の高温に加熱焼成することで導電膜となり、配線や電極が形成される。焼成型導電性ペーストでは、高温で処理され、金属フィラーが焼結して導通性が確保される。
より高性能な配線基板を作製するという観点から、多層基板として層間の導通を得るためにビアホールを形成し、そのビアホールに導電性ペーストを充填することが行われる。導電性ペーストを充填する場合には、ビア中の導電性ペースト組成物を高度に金属拡散接合させ、ビアの抵抗値を低くすることが要求される。本発明では、銅粒子を核とし表面に錫又は錫合金が被覆された金属フィラー粒子を用いることで、溶融して変形収縮する錫合金領域を最小化することができ、ビアホール内の接続信頼性を確保することができる。
以下に、本発明の実施例を比較例と共に示して具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、下記の実施例、比較例により得られた錫コート銅粉は、以下の方法により、形状の観察、平均粒径、銅粒子の結晶子径、錫又は錫合金の被覆量、耐酸化性、焼結性(焼結抵抗)、耐候性の測定を行った。
(形状の観察・平均粒径)
得られた錫コート銅粉の形状及び平均粒径については、走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子株式会社製,JSM−7100F)を用いて観察し、銅粉300個以上の一次粒子の粒径を測長することによって、その平均値を求めて平均粒径とした。
得られた錫コート銅粉の形状及び平均粒径については、走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子株式会社製,JSM−7100F)を用いて観察し、銅粉300個以上の一次粒子の粒径を測長することによって、その平均値を求めて平均粒径とした。
(結晶子径)
得られた錫コート銅粉の銅粒子の結晶子径については、X線回折装置(PAN alytical社製,X‘pert PRO)を用いて測定し、得られたX線回折パターンから、一般にScherrerの式として知られる公知の方法を用いて算出した。
得られた錫コート銅粉の銅粒子の結晶子径については、X線回折装置(PAN alytical社製,X‘pert PRO)を用いて測定し、得られたX線回折パターンから、一般にScherrerの式として知られる公知の方法を用いて算出した。
(錫又は錫合金の被覆量)
錫又は錫合金の被覆量は、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法により評価した。
錫又は錫合金の被覆量は、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法により評価した。
(耐酸化性)
耐酸化性は、乾燥して得られた錫コート銅粉を打錠プレスにより直径約3mm、厚さ2mmの円筒状ペレットとし、熱重量法(TG−DTA 2020SR;株式会社理学製)により、大気中で200℃まで温度を上げて、酸化による200℃酸化増量を測定した。
耐酸化性は、乾燥して得られた錫コート銅粉を打錠プレスにより直径約3mm、厚さ2mmの円筒状ペレットとし、熱重量法(TG−DTA 2020SR;株式会社理学製)により、大気中で200℃まで温度を上げて、酸化による200℃酸化増量を測定した。
(焼結性)
耐酸化性のTG評価後のペレットを、4探針法抵抗測定器(株式会社三菱化学ケミカルアナリテック製)により抵抗値を測定し、ペレット形状から抵抗率(μΩ・cm)を算出した。
耐酸化性のTG評価後のペレットを、4探針法抵抗測定器(株式会社三菱化学ケミカルアナリテック製)により抵抗値を測定し、ペレット形状から抵抗率(μΩ・cm)を算出した。
(耐候性)
焼結性評価後のペレットを85℃、相対湿度85%(R.H.)の恒温恒湿下で500時間経過した後、上記焼結性評価と同様の手法でペレットの抵抗率を算出し、抵抗率の上昇率を算出した。上昇率は、85℃85%RH恒温恒湿に暴露された時間(500時間)と0時間の抵抗率の差をパーセント表示した値である。上昇率20%以下の錫コート銅粉が信頼のおける導電性ペーストとして使用される。
焼結性評価後のペレットを85℃、相対湿度85%(R.H.)の恒温恒湿下で500時間経過した後、上記焼結性評価と同様の手法でペレットの抵抗率を算出し、抵抗率の上昇率を算出した。上昇率は、85℃85%RH恒温恒湿に暴露された時間(500時間)と0時間の抵抗率の差をパーセント表示した値である。上昇率20%以下の錫コート銅粉が信頼のおける導電性ペーストとして使用される。
[実施例1]
硫酸銅五水和物(住友金属鉱山株式会社製)500gを純水3Lに溶解させ、そこへ、25%水酸化ナトリウム水溶液(関東化学株式会社製)600mLと、ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製,PVA205)1.28gを純水1Lに溶解させた分散剤溶液とを添加した。さらに、消泡剤(株式会社アデカ製,アデカノールLG−126)を体積比で100倍に希釈し、この消泡剤希釈液10mLを添加した。これにより、銅塩溶液を調製した(銅塩溶液作製工程)。
硫酸銅五水和物(住友金属鉱山株式会社製)500gを純水3Lに溶解させ、そこへ、25%水酸化ナトリウム水溶液(関東化学株式会社製)600mLと、ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製,PVA205)1.28gを純水1Lに溶解させた分散剤溶液とを添加した。さらに、消泡剤(株式会社アデカ製,アデカノールLG−126)を体積比で100倍に希釈し、この消泡剤希釈液10mLを添加した。これにより、銅塩溶液を調製した(銅塩溶液作製工程)。
次に、調製した銅塩溶液を撹拌しながら60℃で保持し、そこへ、アスコルビン酸(和光純薬工業株式会社製)881gを純水2Lに溶解させて60℃に加熱した還元剤溶液を投入し、60℃で3時間撹拌しながら保持した。これにより、銅粒子を生成した(銅粒子生成工程)。
この銅粒子を用いて、無電解めっき法によりその表面に錫被膜を形成させた。無電解錫めっき液として、ホウフッ化第一錫20g/L、ホウフッ酸200g/L、チオ尿素50g/L、水素化ホウ素ナトリウム40g/L、ホウ酸ナトリウム10g/Lを各濃度で添加しためっき液を用意した。この無電解錫めっき液に、上述した方法で作製した銅粒子100gを入れ、25℃で10分間撹拌した後、浴温を60℃まで加熱して60分間撹拌した。無電解めっきが終了した後、粉末をろ過、水洗した。水洗後の水スラリーにステアリン酸エマルジョン(中京油脂株式会社製,セロゾール920)2.5gを添加して15分間撹拌した後、エタノールを通じて乾燥させて錫コート銅粉を得た(錫被覆工程)。
こうして得られた錫コート銅粉の形状を、上述したSEMを用いた方法で観察した。錫コート銅粉は、粒状で、ファセット結晶面を有し、結晶性の高い構造をなしており、この構造を有する錫コート銅粉の個数は全個数の80%以上であった。
また、そのSEM像より300個以上の一次粒子の粒径を測長して粒子数で平均することで求めた平均粒径は1.80μmであり、一次粒子の粒径の標準偏差値を平均粒径で除した粒径の相対標準偏差値は0.19であった。銅粒子の結晶子径は153nmであり、「銅粒子の結晶子径/錫コート銅粉の平均粒径」の値は0.08であった。
錫コート銅粉の錫被覆量を測定したところ、錫コート銅粉全体の質量100%に対して10.4質量%であった。さらに、200℃酸化増量(TG測定)は0.5質量%と小さく、抵抗率は115μΩ・cmと低抵抗であり、85℃85%RH恒温恒湿下での抵抗変化率も13.0%と小さかった。
[実施例2]
硫酸銅五水和物(住友金属鉱山株式会社製)25.0gを純水150mLに溶解させ、そこへ、25%水酸化ナトリウム水溶液(関東化学株式会社製)30mLと、ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製,PVA205)0.06gを純水50mLに溶解させた分散剤溶液とを添加した。さらに、消泡剤(株式会社アデカ製,アデカノールLG−126)を体積比で100倍に希釈し、この消泡剤希釈液5mLを添加した。これにより、銅塩溶液を調製した(銅塩溶液作製工程)。
硫酸銅五水和物(住友金属鉱山株式会社製)25.0gを純水150mLに溶解させ、そこへ、25%水酸化ナトリウム水溶液(関東化学株式会社製)30mLと、ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製,PVA205)0.06gを純水50mLに溶解させた分散剤溶液とを添加した。さらに、消泡剤(株式会社アデカ製,アデカノールLG−126)を体積比で100倍に希釈し、この消泡剤希釈液5mLを添加した。これにより、銅塩溶液を調製した(銅塩溶液作製工程)。
次に、調製した銅塩溶液を撹拌しながら80℃で保持し、そこへ、アスコルビン酸(和光純薬工業株式会社製)44gを純水100mLに溶解させて80℃に加熱した還元剤溶液を投入し、80℃で3時間撹拌しながら保持した。反応液の温度を80℃とした以外の条件は、実施例1と同様である(銅粒子生成工程)。
その後、得られた銅粒子に対して、実施例1と同様に、錫被膜を形成して錫コート銅粉を得た(錫被覆工程)。
こうして得られた錫コート銅粉の形状を、実施例1と同じくSEMを用いた方法で観察した。錫コート銅粉は、粒状で、ファセット結晶面を有し、結晶性の高い構造をなしており、この構造を有する錫コート銅粉の個数は全個数の80%以上であった。
また、そのSEM像より300個以上の一次粒子の粒径を測長して粒子数で平均することで求めた平均粒径は2.28μmであり、一次粒子の粒径の標準偏差値を平均粒径で除した粒径の相対標準偏差値は0.23であった。銅粒子の結晶子径は296nmであり、「銅粒子の結晶子径/錫コート銅粉の平均粒径」の値は0.12であった。
錫コート銅粉の錫被覆量を測定したところ、錫コート銅粉全体の質量100%に対して10.3質量%であった。さらに、200℃酸化増量(TG測定)は0.4質量%と小さく、抵抗率102μΩ・cmと低抵抗であり、85℃85%RH恒温恒湿下での抵抗変化率も10.5%と小さかった。
[実施例3]
銅被覆工程において、ホウフッ化第一錫を45g/Lとした以外は、実施例1と同様の条件にして錫コート銅粉を作製した。これは錫被覆量が多い事例である。
銅被覆工程において、ホウフッ化第一錫を45g/Lとした以外は、実施例1と同様の条件にして錫コート銅粉を作製した。これは錫被覆量が多い事例である。
得られた錫コート銅粉の形状を、実施例1と同じくSEMを用いた方法で観察した。錫コート銅粉は、粒状で、結晶性の高い構造をなしており、この構造を有する錫コート銅粉の個数は、全個数の80%以上であった。
また、そのSEM像より300個以上の一次粒子の粒径を測長して粒子数で平均することで求めた平均粒径は1.98μmであり、一次粒子の粒径の標準偏差値を平均粒径で除した粒径の相対標準偏差値は0.25であった。銅粒子の結晶子径は170nmであり、「銅粒子の結晶子径/錫コート銅粉の平均粒径」の値は0.09であった。
錫コート銅粉の錫被覆量を測定したところ、錫コート銅粉全体の質量100%に対して23.8質量%であった。さらに、200℃酸化増量(TG測定)は0.4質量%と小さく、抵抗率は220μΩ・cmと低抵抗であり、85℃85%RH恒温恒湿下での抵抗変化率も17.0%と小さかった。
[実施例4]
銅塩溶液作製工程及び銅粒子生成工程では、実施例1と同一の条件とし、錫被覆工程での無電解錫めっき条件を変えて、銅粒子の表面に錫被膜を形成し、錫コート銅粉を作製した。
銅塩溶液作製工程及び銅粒子生成工程では、実施例1と同一の条件とし、錫被覆工程での無電解錫めっき条件を変えて、銅粒子の表面に錫被膜を形成し、錫コート銅粉を作製した。
無電解錫めっき液として、塩化第一錫10g/L、クエン酸ナトリウム40g/L、エチレンジアミン四酢酸20g/L、塩化チタン50g/Lを各濃度で添加しためっき液を用意した。この無電解錫めっき液に、上述した方法で作製した銅粒子100gを入れ、25℃で10分間撹拌した後、浴温を65℃まで加熱して60分間撹拌した。無電解めっきが終了した後、粉末をろ過、水洗した。水洗後の水スラリーにステアリン酸エマルジョン(中京油脂株式会社製,セロゾール920)2.5gを添加して15分間撹拌した後、エタノールを通じて乾燥させて錫コート銅粉を得た(錫被覆工程)。
得られた錫コート銅粉の形状を、実施例1と同じくSEMを用いた方法で観察した。錫コート銅粉は、粒状で、結晶性の高い構造をなしており、この構造を有する錫コート銅粉の個数は、全個数の80%以上であった。
また、そのSEM像より300個以上の一次粒子の粒径を測長して粒子数で平均することで求めた平均粒径は1.75μmであり、一次粒子の粒径の標準偏差値を平均粒径で除した粒径の相対標準偏差値は0.19であった。銅粒子の結晶子径は155nmであり、「銅粒子の結晶子径/錫コート銅粉の平均粒径」の値は0.09であった。
錫コート銅粉の錫被覆量を測定したところ、錫コート銅粉全体の質量100%に対して17.6質量%であった。さらに、200℃酸化増量(TG測定)は0.8質量%と小さく、抵抗率は305μΩ・cmと低抵抗であり、85℃85%RH恒温恒湿下での抵抗変化率も14.4%と小さかった。
[実施例5]
銅塩溶液作製工程及び銅粒子生成工程では、実施例1と同一の条件とし、錫被覆工程での無電解錫めっき条件を変えて、銅粒子の表面に錫被膜を形成し、錫コート銅粉を作製した。
銅塩溶液作製工程及び銅粒子生成工程では、実施例1と同一の条件とし、錫被覆工程での無電解錫めっき条件を変えて、銅粒子の表面に錫被膜を形成し、錫コート銅粉を作製した。
無電解錫めっき液として、塩化第一錫10g/L、水酸化ナトリウム100g/L、クエン酸ナトリウム40g/Lを各濃度で添加しためっき液を用意した。この無電解錫めっき液に、上述した方法で作製した銅粒子100gを入れ、25℃で10分間撹拌した後、浴温を80℃まで加熱して60分間撹拌した。無電解めっきが終了した後、粉末をろ過、水洗した。水洗後の水スラリーにステアリン酸エマルジョン(中京油脂株式会社製,セロゾール920)2.5gを添加して15分間撹拌した後、エタノールを通じて乾燥させたて錫コート銅粉を得た(錫被覆工程)。
得られた錫コート銅粉の形状を、実施例1と同じくSEMを用いた方法で観察した。錫コート銅粉は、粒状で、結晶性の高い構造をなしており、この構造を有する錫コート銅粉の個数は、全個数の80%以上であった。
また、そのSEM像より300個以上の一次粒子の粒径を測長して粒子数で平均することで求めた平均粒径は1.80μmであり、一次粒子の粒径の標準偏差値を平均粒径で除した粒径の相対標準偏差値は0.19であった。銅粒子の結晶子径は153nmであり、「銅粒子の結晶子径/錫コート銅粉の平均粒径」の値は0.09であった。
錫コート銅粉の錫被覆量を測定したところ、錫コート銅粉全体の質量100%に対して8.4質量%であった。さらに、200℃酸化増量(TG測定)は0.5質量%と小さく、抵抗率は135μΩ・cmと低抵抗であり、85℃85%RH恒温恒湿下での抵抗変化率も10.8%と小さかった。
[実施例6]
銅塩溶液作製工程及び銅粒子生成工程では実施例1と同一の条件とし、錫被覆工程での無電解錫めっき条件を変えて、銅粒子の表面に錫合金の被膜(Sn−Ag合金めっき)を形成し、錫コート銅粉を作製した。
銅塩溶液作製工程及び銅粒子生成工程では実施例1と同一の条件とし、錫被覆工程での無電解錫めっき条件を変えて、銅粒子の表面に錫合金の被膜(Sn−Ag合金めっき)を形成し、錫コート銅粉を作製した。
合金用無電解錫めっき液として、メタンスルホン酸第一錫50g/L、クエン酸銀20g/L、チオ尿素100g/L、次亜リン酸ナトリウム30g/Lを各濃度で添加しためっき液を用意した。この無電解錫めっき液に、上述した方法で作製した銅粒子100gを入れ、25℃で10分間撹拌した後、浴温を70℃まで加熱して60分間撹拌した。無電解めっきが終了した後、粉末をろ過、水洗した。水洗後の水スラリーにステアリン酸エマルジョン(中京油脂株式会社製,セロゾール920)2.5gを添加して15分間撹拌した後、エタノールを通じて乾燥させて錫コート銅粉を得た(錫被覆工程)。
得られた錫コート銅粉の形状を、実施例1と同じくSEMを用いた方法で観察した。錫コート銅粉は、結晶性の高い構造をなしており、この構造を有する錫コート銅粉の個数は、全個数の80%以上であった。
また、そのSEM像より300個以上の一次粒子の粒径を測長して粒子数で平均することで求めた平均粒径は1.90μmであり、一次粒子の粒径の標準偏差値を平均粒径で除した粒径の相対標準偏差値は0.19であった。銅粒子の結晶子径は153nmであり、「銅粒子の結晶子径/錫コート銅粉の平均粒径」の値は0.08であった。
錫コート銅粉の錫合金被覆量を測定したところ、錫コート銅粉全体の質量100%に対して18.2質量%であり、錫合金中に含まれる銀の含有量は、錫合金の被覆全体の質量100%に対して14.2質量%であった。さらに、200℃酸化増量(TG測定)は0.3質量%と小さく、抵抗率は95μΩ・cmと低抵抗であり、85℃85%RH恒温恒湿下での抵抗変化率も8.0%と極めて小さかった。
[実施例7]
銅塩溶液作製工程及び銅粒子生成工程では、実施例1と同一の条件とし、錫被覆工程での無電解錫めっき条件を変えて、銅粒子の表面に錫合金の被膜(Sn−Bi合金めっき)を形成し、錫コート銅粉を作製した。
銅塩溶液作製工程及び銅粒子生成工程では、実施例1と同一の条件とし、錫被覆工程での無電解錫めっき条件を変えて、銅粒子の表面に錫合金の被膜(Sn−Bi合金めっき)を形成し、錫コート銅粉を作製した。
合金用無電解錫めっき液として、メタンスルホン酸第一錫40g/L、メタンスルホン酸ビスマス40g/L、チオ尿素100g/L、エチレンジアミン四酢酸20g/L、次亜リン酸ナトリウム80g/Lを各濃度で添加しためっき液を用意した。この無電解錫めっき液に、上述した方法で作製した銅粒子100gを入れ、25℃で10分間撹拌した後、浴温を70℃まで加熱して60分間撹拌した。無電解めっきが終了した後、粉末をろ過、水洗した。水洗後の水スラリーにステアリン酸エマルジョン(中京油脂株式会社製,セロゾール920)2.5gを添加して15分間撹拌した後、エタノールを通じて乾燥させて錫コート銅粉を得た(錫被覆工程)。
得られた錫コート銅粉の形状を、実施例1と同じくSEMを用いた方法で観察した。錫コート銅粉は、粒状で、結晶性の高い構造をなしており、この構造を有する錫コート銅粉の個数は、全個数の80%以上であった。
また、そのSEM像より300個以上の一次粒子の粒径を測長して粒子数で平均することで求めた平均粒径は1.74μmであり、一次粒子の粒径の標準偏差値を平均粒径で除した粒径の相対標準偏差値は0.19であった。銅粒子の結晶子径は153nmであり、「銅粒子の結晶子径/錫コート銅粉の平均粒径」の値は0.09であった。
錫コート銅粉の錫合金の被覆量を測定したところ、錫コート銅粉全体の質量100%に対して錫合金の被覆量は31.6質量%であり、錫合金中に含まれるビスマスの含有量は、錫合金の被膜全体の質量100%に対して40.2質量%であった。さらに、200℃酸化増量(TG測定)は0.5質量%と小さく、抵抗率は351μΩ・cmと低抵抗であり、85℃85%RH恒温恒湿下での抵抗変化率も16.2%と小さかった。
[実施例8]
銅塩溶液作製工程及び銅粒子生成工程では、実施例1と同一の条件とし、錫被覆工程での無電解錫めっき条件を変えて、銅粒子の表面に錫合金の被膜(Sn−Zn合金めっき)を形成し、錫コート銅粉を作製した。
銅塩溶液作製工程及び銅粒子生成工程では、実施例1と同一の条件とし、錫被覆工程での無電解錫めっき条件を変えて、銅粒子の表面に錫合金の被膜(Sn−Zn合金めっき)を形成し、錫コート銅粉を作製した。
合金用無電解錫めっき液として、塩化第一錫10g/L、硫酸亜鉛5g/L、チオ尿素100g/L、クエン酸ナトリウム40g/L、次亜リン酸ナトリウム70g/Lを各濃度で添加しためっき液を用意した。この無電解錫めっき液に、上述した方法で作製した銅粒子100gを入れ、25℃で10分間撹拌した後、浴温を70℃まで加熱して60分間撹拌した。無電解めっきが終了した後、粉末をろ過、水洗した。水洗後の水スラリーにステアリン酸エマルジョン(中京油脂株式会社製,セロゾール920)2.5gを添加して15分間撹拌した後、エタノールを通じて乾燥させたて錫コート銅粉を得た(錫被覆工程)。
得られた錫コート銅粉の形状を、実施例1と同じくSEMを用いた方法で観察した。錫コート銅粉は、粒状で、結晶性の高い構造をなしており、この構造を有する錫コート銅粉の個数は、全個数の80%以上であった。
また、そのSEM像より300個以上の一次粒子の粒径を測長して粒子数で平均することで求めた平均粒径は1.83μmであり、一次粒子の粒径の標準偏差値を平均粒径で除した粒径の相対標準偏差値は0.19であった。銅粒子の結晶子径は153nmであり、「銅粒子の結晶子径/錫コート銅粉の平均粒径」の値は0.08であった。
錫コート銅粉の錫合金の被覆量を測定したところ、錫コート銅粉全体の質量100%に対して錫合金の被覆量は11.0質量%であり、錫合金中に含まれる亜鉛の含有量は、錫合金の被膜全体の質量100%に対して2.8質量%であった。さらに、200℃酸化増量(TG測定)は0.8質量%と小さく、抵抗率は296μΩ・cmと低抵抗であり、85℃85%RH恒温恒湿下での抵抗変化率も15.7%と小さかった。
[実施例9]
銅塩溶液作製工程及び銅粒子生成工程では、実施例1と同一の条件とし、錫被覆工程での無電解錫めっき条件を変えて、銅粒子の表面に錫合金の被膜(Sn−Ag−Bi合金めっき)を形成し、錫コート銅粉を作製した。
銅塩溶液作製工程及び銅粒子生成工程では、実施例1と同一の条件とし、錫被覆工程での無電解錫めっき条件を変えて、銅粒子の表面に錫合金の被膜(Sn−Ag−Bi合金めっき)を形成し、錫コート銅粉を作製した。
合金用無電解錫めっき液としては、メタンスルホン酸第一錫50g/L、メタンスルホン酸ビスマス5g/L、クエン酸銀20g/L、チオ尿素100g/L、次亜リン酸ナトリウム30g/Lを各濃度で添加しためっき液を用意した。この無電解錫めっき液に、上述した方法で作製した銅粒子100gを入れ、25℃で10分間撹拌した後、浴温を70℃まで加熱して60分間撹拌した。無電解めっきが終了した後、粉末をろ過、水洗した。水洗後の水スラリーにステアリン酸エマルジョン(中京油脂株式会社製,セロゾール920)2.5gを添加して15分間撹拌した後、エタノールを通じて乾燥させたて錫コート銅粉を得た(錫被覆工程)。
得られた錫コート銅粉の形状を、実施例1と同じくSEMを用いた方法で観察した。錫コート銅粉は、粒状で、結晶性の高い構造をなしており、この構造を有する錫コート銅粉の個数は、全個数の80%以上であった。
また、そのSEM像より300個以上の一次粒子の粒径を測長して粒子数で平均することで求めた平均粒径は1.83μmであり、一次粒子の粒径の標準偏差値を平均粒径で除した粒径の相対標準偏差値は0.19であった。銅粒子の結晶子径は153nmであり、「銅粒子の結晶子径/錫コート銅粉の平均粒径」の値は0.08であった。
錫コート銅粉の錫合金の被覆量を測定したところ、錫コート銅粉全体の質量100%に対して錫合金の被覆量は18.9質量%であり、錫合金中に含まれる銀とビスマスの含有量は、錫合金の被膜全体の質量100%に対して、それぞれ12.4質量%と3.1質量%であった。さらに、200℃酸化増量(TG測定)は0.3質量%と小さく、抵抗率は110μΩ・cmと低抵抗であり、85℃85%RH恒温恒湿下での抵抗変化率も10.1%と極めて小さかった。
[比較例1]
銅塩溶液作製工程及び銅粒子生成工程において、銅塩溶液、還元剤水溶液、保持時間中の反応液の温度を、それぞれ40℃としたこと以外は、実施例1と同様とし、錫コート銅粉を作製した。
銅塩溶液作製工程及び銅粒子生成工程において、銅塩溶液、還元剤水溶液、保持時間中の反応液の温度を、それぞれ40℃としたこと以外は、実施例1と同様とし、錫コート銅粉を作製した。
実施例1と同様にSEMにより観察した錫コート銅粉は、粒状であった。また、そのSEM像より300個以上の一次粒子の粒径を測長して粒子数で平均することで求めた平均粒径は1.81μmであり、一次粒子の粒径の標準偏差値を平均粒径で除した粒径の相対標準偏差値は0.29であった。ただし、銅粒子の結晶子径が97nmと小さくなったことで「銅粒子の結晶子径/錫コート銅粉の平均粒径」の値は0.05と多結晶構造であった。そのため、200℃酸化増量(TG測定)は2.0質量%と大きく、抵抗率6000μΩ・cmと高抵抗であった。
また、錫コート銅粉の錫被覆量を測定したところ、錫コート銅粉全体の質量100%に対して11.5質量%であったが、85℃85%RH恒温恒湿下での抵抗変化率は、33%と大きかった。
[比較例2]
銅塩溶液作製工程では、実施例1と同一の条件とし、銅粒子生成工程において、単独のヒドラジン水和物(和光純薬工業株式会社製)からなる還元剤の量を変え0.8当量添加した。これによる溶液の色の変化はわずかであり、亜酸化銅は生成しなかった。このスラリーに、さらに1当量のヒドラジン水和物を添加した。鮮やかな橙色の亜酸化銅(XRD解析からCu2Oと同定)が析出するのみで銅粉は得られなかった。
銅塩溶液作製工程では、実施例1と同一の条件とし、銅粒子生成工程において、単独のヒドラジン水和物(和光純薬工業株式会社製)からなる還元剤の量を変え0.8当量添加した。これによる溶液の色の変化はわずかであり、亜酸化銅は生成しなかった。このスラリーに、さらに1当量のヒドラジン水和物を添加した。鮮やかな橙色の亜酸化銅(XRD解析からCu2Oと同定)が析出するのみで銅粉は得られなかった。
[比較例3]
銅塩溶液作製工程でポリビニルアルコールを添加しなかった以外は、実施例1と同様とした。
銅塩溶液作製工程でポリビニルアルコールを添加しなかった以外は、実施例1と同様とした。
こうして得られた錫コート銅粉の形状を、実施例1と同じくSEMを用いた方法で観察した。錫コート銅粉は比較的高結晶の外観であり、この構造を有する錫コート銅粉の個数は、全個数の80%以上であった。また、そのSEM像より300個以上の一次粒子の粒径を測長して粒子数で平均することで求めた平均粒径は3.8μmであり、一次粒子の粒径の標準偏差値を平均粒径で除した粒径の相対標準偏差値は0.19であった。銅粒子の結晶子径は187nmであり、「銅粒子の結晶子径/錫コート銅粉の平均粒径」の値は0.05であった。
次いで、錫コート銅粉の錫合金の被覆量を測定したところ、錫コート銅粉全体の質量100%に対して11.2質量%であった。さらに、200℃酸化増量(TG測定)は3質量%以上と大きく、抵抗率も1000μΩ・cm以上と高抵抗であった。なお、85℃85%RH恒温恒湿下での抵抗変化率は、14%と小さかった。
実施例1〜実施例9では、湿式法で得られた銅粒子が微細で結晶性の高い構造をなしており、この構造を有する錫コート銅粉の個数は、全個数の80%以上であった。これらの錫コート銅粉は、また一次粒子の粒径の標準偏差値を平均粒径で除した値である粒径の相対標準偏差値が0.3以下であり、銅粒子の結晶子径を錫コート銅粉の平均粒径で除した値が0.07以上である。これら特徴を有する錫コート銅粉は、200℃酸化増量(TG測定)は0.3質量%〜0.8質量%と小さく耐酸化性に優れ、抵抗率は95μΩ・cm〜351μΩ・cmと低抵抗で焼結性に優れ、恒温恒湿下における抵抗変化率は17.0%以下と小さく、耐候性に優れていた。このように優れた耐酸化性、焼結性、及び耐候性を両立する錫コート銅粉は、電子機器における配線層や電極等を形成するために使用される樹脂型導電性ペーストや焼成型導電性ペーストの原料の金属フィラーとして有用であり、特にビアホールへの充填用ペーストとして有用であると考えられる。
これに対して、比較例1では、湿式法ではあるが、銅粒子生成工程で銅塩溶液及び還元剤溶液の温度が低すぎるため、得られる銅粒子の結晶子径が97nmと小さく、結晶性が低かった。また、比較例3では、銅塩溶液作製工程で分散剤を使用しなかったため、得られる錫コート銅粉の平均粒径が3.8μmと大きくなり、結晶性が低かった。そのため、比較例1及び比較例3では、銅粒子の結晶子径を錫コート銅粉の平均粒径で除した値がいずれも0.05と低くなり、200℃酸化増量(TG測定)が2質量%以上、抵抗率が1000μΩ・cm以上と大きくなり、耐酸化性及び焼結性が不十分であり、比較例1においては、耐候性も悪化した。
Claims (11)
- 銅粒子の表面に錫又は錫合金が被覆された錫コート銅粉であって、
走査型電子顕微鏡により測定される一次粒子の平均粒径が0.1μm以上3.0μm以下であり、
前記一次粒子の粒径の標準偏差値を、前記平均粒径で除した値である粒径の相対標準偏差値が0.3以下であり、
前記銅粒子の結晶子径を前記平均粒径で除した値が0.07以上である、
錫コート銅粉。 - 前記銅粒子の結晶子径が60nm以上である、
請求項1に記載の錫コート銅粉。 - 前記銅粒子の形状が粒状である、
請求項1又は2に記載の錫コート銅粉。 - 錫又は錫合金として被覆されている錫の被覆量が、該錫コート銅粉全体の質量100%に対して1質量%以上33質量%以下である、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の錫コート銅粉。 - 前記錫合金は、銀、ビスマス、及び亜鉛から選ばれる少なくとも1種以上の金属を含有し、該金属の含有量は、該錫合金の質量100%に対して0.1質量%以上50質量%以下である、
請求項4に記載の錫コート銅粉。 - 銅化合物を含む溶液と、アルカリ金属の水酸化物を含む溶液と、分散剤を含む溶液とを混合して銅塩溶液を作製する銅塩溶液作製工程と、
前記銅塩溶液と還元剤溶液とを混合して銅粒子を生成させる銅粒子生成工程と、
前記銅粒子の表面に錫又は錫合金を被覆する錫被覆工程と、
を有し、
前記銅粒子生成工程では、前記銅塩溶液及び前記還元剤溶液の温度を50℃以上90℃以下の範囲として、該銅塩溶液へ該還元剤溶液を添加することによって混合する
錫コート銅粉の製造方法。 - 前記銅塩溶液作製工程では、前記分散剤の添加量を、前記銅化合物中の銅量に対して0.01質量%以上10質量%以下の範囲とする、
請求項6に記載の錫コート銅粉の製造方法。 - 前記分散剤は、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン、変性シリコーンオイル系界面活性剤、及びポリエーテル系界面活性剤から選択される少なくとも1種である、
請求項6又は請求項7に記載の錫コート銅粉の製造方法。 - 前記銅粒子生成工程では、前記還元剤溶液の添加量を、前記銅化合物中の銅量に対して1当量以上7当量以下とする、
請求項6乃至8のいずれか1項に記載の錫コート銅粉の製造方法。 - 前記錫被覆工程では、前記銅粒子の表面に、無電解めっき法により錫又は錫合金を被覆する、
請求項6乃至9のいずれか1項に記載の錫コート銅粉の製造方法。 - 請求項1乃至5のいずれか1項に記載の錫コート銅粉と、樹脂と、溶媒とを混練してなる、導電性ペースト。
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