JP2017166048A - 銅粉とその製造方法、および導電性ペースト - Google Patents
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Abstract
【課題】湿式製造方法を用いて、微細化による焼結性と高結晶性による耐酸化性を兼ね備えた銅粉を提供する。【解決手段】走査型電子顕微鏡(SEM)により擬八面体構造を有することが観察され、対角線長さ(L)が0.1μm〜2μmであり、対角線長さ(L)とScherrer法により求められる結晶子径(R)との比(R/L)が0.2〜0.5の範囲のものを全体の60%以上含む銅粉である。この銅粉は、銅塩をアルカリでpH12〜14の範囲として、さらに錯化剤を添加して水酸化銅と銅錯イオンを共存したスラリーとする工程(A)と、このスラリーに還元剤を1〜2当量添加して亜酸化銅(Cu2O)を析出させる工程(B)と、さらに1当量以上の還元剤を追加して亜酸化銅を銅粉に還元させる工程(C)とを含む湿式法により製造される。【選択図】図2
Description
本発明は、銅粉とその製造方法、および導電性ペーストに関し、より詳しくは、導電性ペースト等の材料として好適に用いることができる、焼結性と耐酸化性とを兼ね備えた微細で高結晶な銅粉とその製造方法、および導電性ペーストに関する。
電子機器における配線層や電極等を形成するために、樹脂型ペーストや焼成型ペーストのような、銀粉や銅粉等の金属フィラーを使用した導電性ペーストが多用されている。銀粉や銅粉の金属フィラーを使用したペーストは、各種基材上に塗布又は印刷され、加熱硬化あるいは加熱焼成の処理を受けて、配線層や電極等となる導電膜を形成する。
樹脂型導電性ペーストは、金属フィラーと、樹脂、硬化剤、溶剤等からなり、導電体回路パターン又は端子の上に印刷され、100℃〜200℃で加熱硬化されて導電膜となり、配線や電極を形成する。樹脂型導電性ペーストでは、熱によって熱硬化型樹脂が硬化収縮するために金属フィラーが圧着され相互に接触することで金属フィラー同士が重なり、その結果、電気的に接続した電流パスが形成される。さらに、金属粉は一般的に粒径が微細になるほど焼結性が向上するので、粒径がより小さい金属フィラーを用いると、焼結の効果も加わり低抵抗となる。この樹脂型導電性ペーストは、200℃以下の硬化温度で処理されることから、プリント配線板等の熱に弱い材料を用いる基板に使用されている。
また、焼成型導電性ペーストは、金属フィラーと、ガラス、溶剤等からなり、導電体回路パターン又は端子の上に印刷され、600℃〜800℃の高温に加熱焼成されて導電膜となり、配線や電極を形成する。焼成型導電性ペーストでは、高温で処理され、金属フィラーが焼結して導通性が確保される。焼成型導電性ペーストは、このように高い焼成温度で処理されるため、樹脂材料を使用するようなプリント配線基板には使用できないが、高温処理で金属フィラーが焼結することから低抵抗を実現できる。そのため、焼成型導電性ペーストは、積層セラミックコンデンサの外部電極等に使用されている。
さて、これらの樹脂型導電性ペーストや焼成型導電性ペーストに使用されている金属フィラーとしては、従来、銀粉が多用されてきたが、低コスト化への要請から、近年では銀粉よりも安価な銅粉を使用する傾向が強まっている。
銅粉を用いた導電性ペーストは、高温の酸化性雰囲気では、金属銅が酸化するため加熱が難しく、一般には不活性雰囲気下で焼成する。
銅粉を用いた導電性ペーストは、高温の酸化性雰囲気では、金属銅が酸化するため加熱が難しく、一般には不活性雰囲気下で焼成する。
また、原料となる銅粉末の製造方法としては、銅イオンを含有する電解液を電気分解して陰極上に銅粉を析出させる電解法や、銅原料を熔解しその熔湯を液滴化して急冷、凝固させることで銅粉を生成するアトマイズ法、溶液中で還元剤を添加して銅粉を生成する湿式法等が知られている。これらの製造方法は、生産性が高く製造コストも安価であるため、工業的生産法として採用されている。
電解法で得られる銅粉は、高純度なものになるという特長があるが、その電解銅粉の多くは樹枝状の形状で析出し、しかも粒径が10μm以上と粗大なものになりやすく、さらに粒度分布が広く導電性ペーストで特に低抵抗が求められる配線用途には適していない。
また、アトマイズ法は、例えば特許文献1に示されるように、金属を高温で熔解した熔湯の流れにジェット流体を吹き付けて微粉末化する方法であるが、金属を熔解するときに不純物を含有しやすく、また噴霧するときに酸化されやすいこと、さらに1μm以下の銅微粒子を作製できないといった問題がある。
上述したように、アトマイズ法、電解法で得られた銅粉は、粒径が2μm以上で焼結性が劣るので低抵抗になりにくいこと、多結晶で粒界を持つため耐酸化性に劣ることなどの欠点があり、導電性ペーストとして使用分野が限定されている。
また、アトマイズ法は、例えば特許文献1に示されるように、金属を高温で熔解した熔湯の流れにジェット流体を吹き付けて微粉末化する方法であるが、金属を熔解するときに不純物を含有しやすく、また噴霧するときに酸化されやすいこと、さらに1μm以下の銅微粒子を作製できないといった問題がある。
上述したように、アトマイズ法、電解法で得られた銅粉は、粒径が2μm以上で焼結性が劣るので低抵抗になりにくいこと、多結晶で粒界を持つため耐酸化性に劣ることなどの欠点があり、導電性ペーストとして使用分野が限定されている。
これに対して、湿式法は、溶液中の銅イオン等を還元剤により還元析出させる方法である。具体的には、例えば特許文献2に示されるように、銅塩を含む溶液中にアルカリ剤を添加し反応させて水酸化銅を析出させ、次いでブドウ糖のような還元剤を添加して亜酸化銅まで還元させ、さらにヒドラジンのような二次還元剤を添加して金属銅にまで還元させて銅粉を得る。このような湿式法では、サブミクロンの非常に微細な球状の銅微粉を作製できるという特長があるが、特許文献1と同じく多結晶で粒界を持つため耐酸化性が劣り、同じく導電性ペーストとして使用分野が限定されている。
一方で、特許文献3、4には、一定の結晶方位を持つ単結晶銅粉末を得る方法が提案されているが、主な粒径は2〜5μm程度と硬化温度100〜200℃の樹脂型導電性ペーストでは低抵抗化を満足できていない。また低抵抗とするために硬化温度を200℃以上とすると、耐酸化性が不十分となる。
この特許文献3には、正八角錐型の単結晶となった銅粉末を製造するために、銅塩と銅に対して1〜5倍のモル比の酒石酸と水酸化アルカリとを含む溶液に還元剤としてホルムアルデヒドを1分間以内に加えることが記載されている。
また、特許文献4の製造方法は、酒石酸塩などキレート剤が銅に対して1〜5倍のモル比で必要とされるため薬液コストが高くなり、同時に廃液処理のコストも高くなるため、製造コストが高くなるという問題もある。さらに還元剤であるホルムアルデヒドを1分以内に加えて還元するとの条件もあり、工業的に大量生産するには不向きである。一方、特許文献4により得られる銅粉は高結晶ではあるが板状であり、比表面積が高くなって酸化しやすく、また配線エッジが凸凹となることから導電膜の用途には不向きである。
一般に、導電性ペーストをIC基板やプリント基板等に利用する際には、微細なパターンを形成するために、例えば、熱重量(TG)分析で大気中200℃の酸化増量1質量%以下という耐酸化性に優れ、微細で分散性の良い金属フィラーが要求される。また基板耐熱性などから、低温で樹脂硬化させて収縮させた際の接触抵抗が低くなり、またフィラーを大気中で焼成すると、例えば、大気中で焼成した圧粉抵抗率500μΩ・cm以下という低抵抗になることが求められる。しかしながら、金属の粉末、特に銅粉末の場合には顕著に、粒径が微細になるほど酸化が進みやすくなる傾向があるため、微細であり、しかも耐酸化性に優れた銅粉末を得る方法が求められている。
そのため特許文献5には、気相反応によって単結晶の銅微粉を得る方法が提案されているが、得られる銅粉は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察すると、面取りされた多面体の単結晶で、しかも粉末粒子は単結晶であるために、表面が滑らかで欠陥がなく耐酸化性に優れている。しかしながら、気相反応による銅粉の製造では、塩化第一銅を還元性ガスと700℃以上の高温で反応させて単結晶銅粉を得るため、装置の機構が複雑となって製造コストがかかり、さらに得られた銅粉末が再溶融して連結するなど収率が悪いという問題がある。
このようなことから、耐酸化性に優れた微細な銅粉末を、工業的に安価に製造するのに適した方法が求められている。
本発明の目的は、上述した従来技術の問題点に鑑み、導電性ペースト等の材料として好適に用いることができる、焼結性と耐酸化性とを兼ね備えた微細で高結晶な銅粉とその製造方法、および導電性ペーストを提供することにある。
本発明者は、上述した課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定のpH領域で、銅イオンと水酸化銅の共存下で1段目の還元を行い亜酸化銅とし、次いで2段目の還元で特定量の還元剤により亜酸化銅を銅に還元することより、微細、かつ結晶性の高い銅粉を比較的安価に得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、走査型電子顕微鏡(SEM)により擬八面体構造を有することが観察され、対角線長さ(L)が0.1μm〜2μmであり、対角線長さ(L)とScherrer法により求められる結晶子径(R)との比(R/L)が0.2〜0.5の範囲のものを全体の60%以上含むことを特徴とする銅粉が提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記擬八面体構造を構成する結晶粒数が、5〜130個であることを特徴とする銅粉によって提供される。
さらに、本発明の第3の発明によれば、銅塩の水溶液をアルカリでpH12〜14の範囲として、さらに錯化剤を添加して水酸化銅と銅錯イオンを共存したスラリーとする工程(A)と、
前記スラリーに還元剤を1〜2当量添加して、亜酸化銅(Cu2O)を析出させる工程(B)と、
さらに、亜酸化銅(Cu2O)が析出したスラリーに1当量以上の還元剤を追加して、亜酸化銅を銅粉に還元させる工程(C)と、
を含むことを特徴とする銅粉の製造方法によって提供される。
前記スラリーに還元剤を1〜2当量添加して、亜酸化銅(Cu2O)を析出させる工程(B)と、
さらに、亜酸化銅(Cu2O)が析出したスラリーに1当量以上の還元剤を追加して、亜酸化銅を銅粉に還元させる工程(C)と、
を含むことを特徴とする銅粉の製造方法によって提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第3の発明において、前記錯化剤が、PEI、PVA、PVPから選ばれる平均分子量500〜50,000の合成樹脂であることを特徴とする銅粉の製造方法によって提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第3発明において、前記錯化剤は、銅塩中の銅に対して0.5質量%〜50質量%添加されることを特徴とする銅粉の製造方法によって提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、第3の発明において、前記還元剤の量は、工程(B)と工程(C)の合計量として、3当量以上であることを特徴とする銅粉の製造方法によって提供される。
また、本発明の第7の発明によれば、第3〜6のいずれかの発明において、前記還元剤は、銅と錯体を形成することを特徴とする銅粉の製造方法によって提供される。
また、本発明の第8の発明によれば、第3〜7のいずれかの発明において、前記銅粉は、擬八面体構造を有し、銅粉の対角線長さ(L)が0.1μm〜2μmであり、かつ対角線長さ(L)と結晶子径(R)との比(R/L)が0.2〜0.5の範囲であることを特徴とする銅粉の製造方法によって提供される。
また、本発明の第9の発明によれば、第1又は2の発明の銅粉に、樹脂と溶媒とが混練されてなる導電性ペーストによって提供される。
本発明に係る銅粉は、擬八面体構造を有し、微細で焼結性が良く、結晶性が高く耐酸化性が良好なため、配線材料など導電性ペースト等の金属フィラーとして好適に用いることができる。また本発明に係る銅粉は、製造コストが高くなる気相反応によらず、湿式法によるために比較的安価な原料、簡易な工程が採用されるため、工業的に低コストで製造することができる。
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を損なわない範囲で種々の変更が可能である。
1.銅粉
本発明に係る銅粉は、擬八面体構造を有し、その対角線長さ(L)が0.1μm〜2μmであり、その結晶子径(R)と対角線長さ(L)との比(R/L)が0.2〜0.5の範囲となる。
本発明に係る銅粉は、擬八面体構造を有し、その対角線長さ(L)が0.1μm〜2μmであり、その結晶子径(R)と対角線長さ(L)との比(R/L)が0.2〜0.5の範囲となる。
本発明において、擬八面体構造とは、八面体の形状もしくは、その頂点の一部が面取りされた形状を称するものである。これらの形状を有した銅粉は、図2または図3に示されるように、その表面は滑らかな面である。本発明に係る銅粉は、走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察した時に、視野中にこの擬八面体構造を有する銅粉が全銅粉個数の60%以上の数を占めているのが好ましい。この個数は、70%以上を占めるのがより好ましく、80%以上がさらに好ましい。全銅粉個数の60%以上が擬八面体構造を有した銅粉であれば、後述するように高い焼結性と高い耐酸化性を十分に発揮することができる。全銅粉個数の上限値は、限定されないものの、例えば95%以下が好ましい。
本発明に係る銅粉の粒径は、銅粉が擬八面体の形状を有しており、図1に示すように四角錐の頂点間の長さとなる対角線長さ(L)を指標とする。なお、図1(b)のように四角錐の頂点が面取りされている場合には、面取りにより形成された面までの長さをもって対角線長さ(L)とする。
この対角線長さ(L)は、0.1μm〜2μmであり、0.2μm〜1.5μmが好ましく、0.2μm〜1μmがより好ましい。対角線長さ(L)が0.1μm未満では比表面積が急激に増加して、結晶性を高めても酸化を防ぐことが難しい。一方、2μmより大きい場合は、焼結性が悪化するため、焼成温度を200℃以上とすると、大気中で酸化して低抵抗になりにくく、狭い配線幅で高精度の配線を形成することが困難になることがある。なお対角線長さ(L)は、SEMで観察し、その観察像を画像処理して求めることができる。
本発明に係る銅粉は、単結晶ではなく、数個〜数十個の結晶粒からなる多結晶体である。ただ結晶粒数が少ないため粒界酸化・腐食が起こりにくく、さらに擬八面体構造でその表面が滑らかであるため耐酸化性が高い。
図1(c)は、図1(a)の擬八面体の形状をした本発明における銅粉の断面で、複数の結晶粒からなる多結晶体を示している。上記対角線長さ(L)と各結晶粒の大きさの指標となる結晶子径(R)との関係は図1(c)の通りとなり、1つの擬八面体粒子の中の結晶粒数は、結晶子径(R)と擬八面体の対角線長さ(L)の数値から以下のように計算できる。結晶粒数は擬八面体粒子体積を結晶子径粒子体積で割ったものであり、(L/R)の関係で決まり、すなわち(R/L)の逆数の3乗となる。
具体的には、例えば(R/L)=0.2のとき、結晶粒数が125個、また(R/L)=0.5のとき、結晶粒数が8個となる。したがって、本発明では、結晶粒数が5〜130個のものが好ましく、5〜100個のものがより好ましい。
具体的には、例えば(R/L)=0.2のとき、結晶粒数が125個、また(R/L)=0.5のとき、結晶粒数が8個となる。したがって、本発明では、結晶粒数が5〜130個のものが好ましく、5〜100個のものがより好ましい。
このように比(R/L)は、銅粉を構成する結晶粒数を表す指標であり、R/Lが0.2未満、すなわち結晶子径が相対的に小さくなると、結晶粒数が増大して多結晶による粒界酸化・腐食が進みやすく、耐酸化性が悪化する。また、R/Lが0.5より大きくなれば単結晶に近づくことを意味し(単結晶ではR/Lが1)、耐酸化性は良好であるが焼結性が悪化するため、電気的に接続した電流パスが形成されにくく低抵抗になりにくい。電流パスを増大させるために焼成温度を高め、例えば焼成温度を200℃以上とすると、耐酸化性が高いとはいえ酸化の影響が出始めるので、いずれにしても低抵抗になりにくい。
ここで、結晶子径は、X線回折測定装置(XRD)を用い、Scherrer法等により求めることができる。本発明では、擬八面体粒子の中の結晶粒数が、10〜30個となるのが好ましく、これは、R/L=0.3〜0.5となる。
2.銅粉の湿式法による製造方法
本発明に係る銅粉の湿式法による製造方法は、銅塩(銅イオン)を含む溶液にアルカリを添加してpH12〜14の範囲とし、さらに錯化剤を添加して水酸化銅と銅錯イオンを共存させてスラリーとする工程(A)、このスラリーに還元剤を1〜2当量添加して亜酸化銅(Cu2O)を生成させる工程(B)、次いで、さらに1当量以上の還元剤を追加して亜酸化銅を銅粉に還元させる工程(C)を含んでいる。
以下、図2に示す通り、各工程(A〜C)の具体的な方法を以下に記述する。
本発明に係る銅粉の湿式法による製造方法は、銅塩(銅イオン)を含む溶液にアルカリを添加してpH12〜14の範囲とし、さらに錯化剤を添加して水酸化銅と銅錯イオンを共存させてスラリーとする工程(A)、このスラリーに還元剤を1〜2当量添加して亜酸化銅(Cu2O)を生成させる工程(B)、次いで、さらに1当量以上の還元剤を追加して亜酸化銅を銅粉に還元させる工程(C)を含んでいる。
以下、図2に示す通り、各工程(A〜C)の具体的な方法を以下に記述する。
(1)工程(A)
工程(A)では、銅塩(銅イオン)を含む溶液にアルカリを添加してpH12〜14の範囲とし、さらに錯化剤を添加することで、溶液中に水酸化銅と銅錯イオンが共存したスラリーとする。
工程(A)では、銅塩(銅イオン)を含む溶液にアルカリを添加してpH12〜14の範囲とし、さらに錯化剤を添加することで、溶液中に水酸化銅と銅錯イオンが共存したスラリーとする。
銅塩としては、硫酸銅、塩化銅、炭酸銅、酢酸銅、リン酸銅など、水溶液として溶解すればいずれの塩でもよく、また1種類単独でも複数を用いてもよい。好ましくは銅粉に陰イオン元素が混入せず不純物が少なく、排水処理費も含めて安価であるという観点から、硫酸銅、塩化銅、炭酸銅が好適である。さらには、導電性ペーストの使われる電子部品の信頼性などを考慮すれば、硫酸銅と炭酸銅がより好ましい。これらの銅塩を溶解して溶液とするが、用いる溶媒は不純物の混入を防ぐために純水とするのがより好ましい。
溶液中の銅濃度であるが、一旦は均一な溶液となり、過飽和にならない程度に溶解している溶液をpH調整すればよく、特に限定されるものではない。ただ、工業的に生産性が高く、安定して製造できるという点で、銅濃度は5g/L〜250g/Lの範囲であることが好ましい。
本発明においては、銅塩を含む溶液にアルカリを添加してpHを12〜14に調整するが、用いるアルカリの種類は、特に制限されず、例えばLiOH、KOH、NaOH、Ca(OH)2および、その弱酸の塩などが使用できる。さらに好適なものには、中和で生じる沈殿塩を還元以後に分離する必要がないKOH、NaOH、LiOHが挙げられる。
pHを12〜14の範囲とすることで、銅の大部分を水酸化銅の形態(スラリー)で存在させることができる。pHを12未満とすると、水酸化銅の存在比率が低くなり、還元後の銅粉の形状が高結晶性の擬八面体構造となりにくくなる。
pHを12〜14の範囲とすることで、銅の大部分を水酸化銅の形態(スラリー)で存在させることができる。pHを12未満とすると、水酸化銅の存在比率が低くなり、還元後の銅粉の形状が高結晶性の擬八面体構造となりにくくなる。
本発明において、銅は、アルカリによるpH調整後のスラリーに、銅錯イオンと水酸化銅が共存した形態で存在する。イオン形態の銅濃度を調整するために、錯化剤を添加することもできる。好ましい例として、水酸基、カルボキシル基、非共有電子対を持つN、S原子を1つ以上同一分子中に持つ化合物があり、代表的なものとして、アンモニア、チオール類、カルボン酸類、酒石酸、アミノ酸、エチレンジアミン、EDTA(エチレンジアミン四酢酸塩)があり、またPVA(ポリビニルアルコール)樹脂、PEI(ポリエチレンイミン)樹脂、PVP(ポリビニルピロリドン)樹脂などの有機合成樹脂のうち水溶性のものを使用できる。
有機合成樹脂を用いる場合、その平均分子量は、500〜50,000が好ましい。PVA樹脂であれば1,000〜40,000、PEI樹脂であれば500〜20,000、またPVP樹脂であれば2,000〜50,000である。
平均分子量が小さすぎると、分散効果が得られにくい。また付着力が強すぎて擬八面体表面を被覆して電気抵抗が高くなる。さらに分解しやすく反応後のろ液は、排水処理しにくくなりコスト高となる。一方、平均分子量が高すぎると水への溶解性が低くなり、たとえ溶解しても水中で分子が凝縮した構造であるため分散効果が得られにくい。また水溶液粘度も高くなり、析出した擬八面体粒子のろ別・ろ過が困難となり生産性が低下する。
平均分子量が小さすぎると、分散効果が得られにくい。また付着力が強すぎて擬八面体表面を被覆して電気抵抗が高くなる。さらに分解しやすく反応後のろ液は、排水処理しにくくなりコスト高となる。一方、平均分子量が高すぎると水への溶解性が低くなり、たとえ溶解しても水中で分子が凝縮した構造であるため分散効果が得られにくい。また水溶液粘度も高くなり、析出した擬八面体粒子のろ別・ろ過が困難となり生産性が低下する。
従来技術の中には、ゼラチンを用いるものがある。しかし、これは特異な還元剤、錯化剤、分散剤であって、その生体高分子としての特徴から、平均分子量が10万程度で大きな電荷をもち、可溶でもあって保護コロイドとなり、水中での分子構造が本発明の有機合成樹脂とは異なっている。PVAのような繰り返し構造をもち、電荷ではなく誘電率が大きく水に可溶となる合成樹脂とは異なる機能を有するものである。保護コロイドは、微粒子を分散させるための担体であり、分散剤としてPVAと同様に機能するが、分子量と電荷の面では、アミノ酸の重合したポリペプチド、すなわちアミノ基とカルボキシル基を同一分子にもつので、水中ではほとんどがイオン化している。銅に対してはイオン結合的で吸着力が高く洗浄しにくいため、200℃程度の焼成では電気抵抗は高くなる。
一方、本発明のPVA等は、水和し誘電体化しているだけで還元反応(速度)にはほとんど寄与していない。しかし、成長反応には影響し、成長後は水洗浄で除去出来て、電気抵抗に影響することはほとんどないという長所がある。
一方、本発明のPVA等は、水和し誘電体化しているだけで還元反応(速度)にはほとんど寄与していない。しかし、成長反応には影響し、成長後は水洗浄で除去出来て、電気抵抗に影響することはほとんどないという長所がある。
本発明において、高結晶性の擬八面体構造の銅粉を得るために、後述する還元剤の量とともに、工程(A)での水酸化銅と銅錯イオンの存在比率を適切な範囲内とする。
この水酸化銅と銅錯イオンの存在比率は、錯化剤の添加量を銅塩中の銅に対して0.5質量%〜50質量%とするのが好ましい。0.5質量%〜30質量%とするのがより好ましく、1質量%〜10質量%とするのがさらに好ましい。錯化剤の添加量が銅塩中の銅に対して0.5質量%未満であるか、50質量%を超えると、高結晶性の擬八面体構造の銅粉が生成されにくくなり、球状の銅粉が主として生成されることがある。錯化剤の必要量は、銅塩中の銅に対して0.5質量%〜50質量%であり、製造コストに与える影響は小さい。
この水酸化銅と銅錯イオンの存在比率は、錯化剤の添加量を銅塩中の銅に対して0.5質量%〜50質量%とするのが好ましい。0.5質量%〜30質量%とするのがより好ましく、1質量%〜10質量%とするのがさらに好ましい。錯化剤の添加量が銅塩中の銅に対して0.5質量%未満であるか、50質量%を超えると、高結晶性の擬八面体構造の銅粉が生成されにくくなり、球状の銅粉が主として生成されることがある。錯化剤の必要量は、銅塩中の銅に対して0.5質量%〜50質量%であり、製造コストに与える影響は小さい。
(2)工程(B)
工程(B)は、工程(A)にて作製されたスラリーに、還元剤を1〜2当量添加して亜酸化銅(Cu2O)を生成させる工程である。
工程(B)は、工程(A)にて作製されたスラリーに、還元剤を1〜2当量添加して亜酸化銅(Cu2O)を生成させる工程である。
工程(B)で用いる還元剤は、ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、リン酸ヒドラジン等ヒドラジン及びその誘導体、アスコルビン酸及びその酸誘導体、ホルマリン、ブドウ糖、多糖類から選ばれる1種類以上とすればよい。これら還元剤は、pH12〜14の範囲で銅の錯イオンおよび水酸化物を亜酸化銅まで還元する還元力を有し、かつ微粉で結晶性の擬八面体構造を有する亜酸化銅を得ることができる。
また、還元剤の添加量は、1〜2当量とするのが好ましい。1当量未満では還元が極めて遅いので実用的でなく、2当量より多くの還元剤を添加すると、急激に亜酸化銅や銅粉まで還元されるため、酸化されやすい0.1μm以下の超微粉が生成する。さらに工程(C)で還元剤を追加しても、目的の粒度まで成長させることができない。なお1当量は、化学量論的に銅塩中の銅を全量還元するのに必要な量を意味する。
工程(B)の還元条件として、温度、撹拌速度、発泡の抑制を適宜決定することができるが、液温20〜80℃、撹拌速度100rpm〜500rpmとするのが好ましい。さらに発泡抑制剤など、必要に応じて界面活性剤を添加することで、生産性、再現安定性ともに優れた還元が行われる。
前述した工程(A)の中和反応で、銅は水酸化物となる。この段階では非晶質(微細)であったものが、工程(B)で還元されて酸化物となる段階で擬八面体構造を形成する。酸化銅が結晶性の擬八面体構造を形成する理由として、PVAなどの有機合成樹脂が分散剤として存在し、かつ水酸化物が、ゆっくりと還元されて酸化銅となることが重要と考えられる。錯化作用のある還元剤でCuイオンを安定化させ、水酸化物と共存させることで、存在量が減った水酸化物からは酸化物への還元速度が低下すると考えられる。還元速度が遅くなれば酸化銅は結晶性となり、八面体構造に近づく。
(3)工程(C)
工程(C)は、工程(B)で亜酸化銅まで還元されたスラリーに還元剤を添加して銅を生成させる工程である。工程(C)で使用できる還元剤は、工程(B)と同一で、ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、リン酸ヒドラジン等ヒドラジン及びその誘導体、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、ホルマリン、ブドウ糖、多糖類から選ばれる1種類以上とすればよい。
その添加量は1当量以上とするのが好ましい。また工程(B)と工程(C)の還元剤の合計添加量は、3当量以上、より好ましくは4当量以上とすれば、還元時間の短縮、還元率(亜酸化銅から銅粉の回収率)を向上させることができる。工程(B)と工程(C)の還元剤の合計添加量の上限は、特に限定されないが、7当量を超えても還元時間をさらに短縮する効果はなく、薬液コストが増大するので好ましくない。
工程(C)は、工程(B)で亜酸化銅まで還元されたスラリーに還元剤を添加して銅を生成させる工程である。工程(C)で使用できる還元剤は、工程(B)と同一で、ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、リン酸ヒドラジン等ヒドラジン及びその誘導体、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、ホルマリン、ブドウ糖、多糖類から選ばれる1種類以上とすればよい。
その添加量は1当量以上とするのが好ましい。また工程(B)と工程(C)の還元剤の合計添加量は、3当量以上、より好ましくは4当量以上とすれば、還元時間の短縮、還元率(亜酸化銅から銅粉の回収率)を向上させることができる。工程(B)と工程(C)の還元剤の合計添加量の上限は、特に限定されないが、7当量を超えても還元時間をさらに短縮する効果はなく、薬液コストが増大するので好ましくない。
工程(B)で水酸化銅が擬八面体構造の亜酸化銅となり、工程(C)で高結晶化する理由は明確ではないが、これら還元剤が錯化剤としても働くことから、錯化剤および還元剤と銅とが、何らかの錯形成により、その錯体の有する八面体構造由来の銅粉となるものと考えられる。工程(C)では一旦擬八面体構造の酸化銅が、還元剤の錯化作用で溶解して錯イオンとなり、還元されてCuとなると考えた場合、局所的に溶解と還元の速度を制御するためには、還元剤の構造や還元力が重要であり、選ばれた還元剤であれば元の構造を引き継ぐことが可能となるであろう。
また、工程(C)の還元条件として、温度、撹拌速度、発泡の抑制を適宜変更することができ、工程(B)と同様、液温20〜80℃、撹拌速度100rpm〜500rpmとするのが好ましい。さらに、発泡抑制剤など、必要に応じて界面活性剤を添加することで、生産性、再現安定性ともに優れた還元が行われる。
工程(C)により生成された銅粉は、ろ過、洗浄、および乾燥の処理を行い、表面に付着した水分が除去される。洗浄は公知の方法を用いればよく、例えば洗浄液には純水、エタノール等のアルコール類、またはそれらの混合物等を用いることができる。また洗浄温度も特に限定されないが、5〜50℃が好ましく、10〜40℃がより好ましい。洗浄は例えば不純物濃度が所望の範囲内になるまで繰り返し、最終的にろ過して銅粉とする。乾燥方法も特に限定されることはなく、オーブン、スプレードライヤー、真空乾燥など公知の方法を用いればよい。
このような本発明に係る湿式銅粉では、微細で比較的粒度分布が狭い一方で、高結晶性の粒子であるために外観が滑らかで欠陥が無く、結晶性が良好で安定性(表面安定性)が高いものとなり、優れた耐酸化性を有する。
このことから、例えば導電性ペーストの材料(金属フィラー)として用いた場合、樹脂中において凝集せずに均一に分散する優れた分散性を示す。また、耐酸化性を有することにより、この電解銅粉を金属フィラーとして用いた導電性ペーストは、例えば酸化性雰囲気下であっても高温焼成等の焼成処理を適切に施すことができる。
このことから、例えば導電性ペーストの材料(金属フィラー)として用いた場合、樹脂中において凝集せずに均一に分散する優れた分散性を示す。また、耐酸化性を有することにより、この電解銅粉を金属フィラーとして用いた導電性ペーストは、例えば酸化性雰囲気下であっても高温焼成等の焼成処理を適切に施すことができる。
3.導電性ペースト
上記の銅粉には、樹脂(バインダ樹脂)と溶剤などを混合し混錬して、導電性ペーストを得ることができる。
上記の銅粉には、樹脂(バインダ樹脂)と溶剤などを混合し混錬して、導電性ペーストを得ることができる。
導電性ペーストには、構成成分として本発明に係る銅粉、樹脂、溶剤のほかに、さらに必要に応じて、硬化後の導電性を改善するために酸化防止剤やカップリング剤等の添加剤を配合することができる。
樹脂の種類は、特に限定されないが、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、エチルセルロース樹脂等を用いることができる。
また、溶剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ターピネオール等の有機溶剤を用いることができる。また、その有機溶剤の量は、特に限定されないが、スクリーン印刷やディスペンサー等の導電膜形成方法に適した粘度となるように、銅粉の平均粒径を考慮して添加量を調整することができる。
また、酸化防止剤の種類は、特に限定されないが、例えばヒドロキシカルボン酸等を挙げることができる。より具体的には、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸等のヒドロキシカルボン酸が好ましく、銅への吸着力が高いクエン酸又はリンゴ酸が特に好ましい。その他にカップリング剤、粘度調整剤、分散剤、難燃剤、沈降防止剤などを使用することができる。
また、溶剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ターピネオール等の有機溶剤を用いることができる。また、その有機溶剤の量は、特に限定されないが、スクリーン印刷やディスペンサー等の導電膜形成方法に適した粘度となるように、銅粉の平均粒径を考慮して添加量を調整することができる。
また、酸化防止剤の種類は、特に限定されないが、例えばヒドロキシカルボン酸等を挙げることができる。より具体的には、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸等のヒドロキシカルボン酸が好ましく、銅への吸着力が高いクエン酸又はリンゴ酸が特に好ましい。その他にカップリング剤、粘度調整剤、分散剤、難燃剤、沈降防止剤などを使用することができる。
この導電性ペーストは、上述した構成成分を均一に分散させることができる限り、従来技術と同様の方法により製造することができる。たとえば、上述した各構成成分を、3本ロールミルなどにより均一に混練することができる。
なお、上述した添加剤を添加するタイミングも特に制限されることはなく、銅粉、バインダ樹脂と同時に溶剤に添加して混練してもよく、あるいは、銅粉とバインダ樹脂を溶剤と混練させた後、自公転ミキサ等などを用いて添加してもよい。
なお、上述した添加剤を添加するタイミングも特に制限されることはなく、銅粉、バインダ樹脂と同時に溶剤に添加して混練してもよく、あるいは、銅粉とバインダ樹脂を溶剤と混練させた後、自公転ミキサ等などを用いて添加してもよい。
以下に、本発明の実施例を比較例と共に示して具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、下記の実施例、比較例により得られた銅粉は、以下の方法により、形状の観察、結晶子径、耐酸化性、焼結抵抗の測定を行った。
(形状の観察)
走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子株式会社製,JSM−7100F)により、任意の倍率(20視野)で観察し、その視野内に含まれる銅粉の外観を観察した。また擬八面体の対角線長(L)を画像解析(解析ソフトMacViewer等)により測長した。また画像解析により観察した視野中の全銅粉個数中の擬八面体構造を有する銅粉の個数比率も測定した。
走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子株式会社製,JSM−7100F)により、任意の倍率(20視野)で観察し、その視野内に含まれる銅粉の外観を観察した。また擬八面体の対角線長(L)を画像解析(解析ソフトMacViewer等)により測長した。また画像解析により観察した視野中の全銅粉個数中の擬八面体構造を有する銅粉の個数比率も測定した。
(結晶性、結晶子径の測定)
X線回折測定装置(XRD)(PAN alytical社製,商品名X’Pert PRO)により測定し、亜酸化銅、酸化銅の生成を確認し、さらに銅粉の結晶子径(R)はX線回折法のScherrer法により求めた。単結晶か多結晶かの結晶性は、対角線長(L)との比、(R/L)により判断される。
X線回折測定装置(XRD)(PAN alytical社製,商品名X’Pert PRO)により測定し、亜酸化銅、酸化銅の生成を確認し、さらに銅粉の結晶子径(R)はX線回折法のScherrer法により求めた。単結晶か多結晶かの結晶性は、対角線長(L)との比、(R/L)により判断される。
(耐酸化性)
乾燥して得られた銅粉を、打錠プレスにより直径約3mm、厚さ2mmの円筒状ペレットとし、熱重量法(TG;理学製)により、大気中で200℃まで温度を上げて、酸化による重量増量を測定した。
乾燥して得られた銅粉を、打錠プレスにより直径約3mm、厚さ2mmの円筒状ペレットとし、熱重量法(TG;理学製)により、大気中で200℃まで温度を上げて、酸化による重量増量を測定した。
(焼結抵抗)
耐酸化性のTG評価後のペレットを、4端子法抵抗測定器(三菱化学アナリティカル製)により抵抗値を測定し、ペレット形状から抵抗率(μΩ・cm)を算出した。
耐酸化性のTG評価後のペレットを、4端子法抵抗測定器(三菱化学アナリティカル製)により抵抗値を測定し、ペレット形状から抵抗率(μΩ・cm)を算出した。
[実施例1]
銅塩として硫酸銅水和物(住友金属鉱山製)を純水(イオン交換樹脂処理)に溶解し、銅濃度40g/Lの水溶液を得た。この青色のCu溶液に、1質量%/銅質量の平均分子量2000のポリエチレンイミン(PEI樹脂、日本触媒製)を添加し、さらにアルカリとして25%水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬工業株式会社製)を滴下してpH12.5に整えた。その結果、溶液は銅錯体イオンによる濃い青色となり、白色の水酸化銅の沈殿が共存するスラリー状態となった(工程(A))。
この溶液を40℃とし、300rpmで撹拌して、単独のヒドラジン水和物(和光純薬工業株式会社製)からなる還元剤を2当量添加したところ、鮮やかな橙色の亜酸化銅(XRD解析からCu2Oと同定)が析出した(工程(B))。次いでさらに2当量のヒドラジン水和物還元剤を追加したところ、鮮やかな橙色が明るい茶色に変化し、XRD測定から亜酸化銅が銅粉に還元されたことが分かった(工程(C))。得られた銅粉は一旦濾別し、水洗と凝集防止のためのステアリン酸エマルション添加による表面処理後に再度濾別し、30℃の真空オーブンで6時間乾燥させた。
こうして得られた銅粉の形状を、上述したSEMを用いた方法で観察した。図3に、観察結果としての代表的な形状の写真を示す。図3の写真から分かるように、析出した銅粉は、擬八面体構造をなしており、この擬八面体構造を有する銅粉の個数は全個数の80%以上であった。また、多結晶の擬八面体の対角線長(L)の平均値は0.5μm、XRDによる結晶子径(R)は0.15μmであって、得られた銅粉は、R/L=0.3である微細で高結晶性の銅粉であることが確認された。さらに、200℃酸化増量(TG測定)は0.5質量%と小さく、抵抗率は115μΩ・cmと低抵抗となった。
銅塩として硫酸銅水和物(住友金属鉱山製)を純水(イオン交換樹脂処理)に溶解し、銅濃度40g/Lの水溶液を得た。この青色のCu溶液に、1質量%/銅質量の平均分子量2000のポリエチレンイミン(PEI樹脂、日本触媒製)を添加し、さらにアルカリとして25%水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬工業株式会社製)を滴下してpH12.5に整えた。その結果、溶液は銅錯体イオンによる濃い青色となり、白色の水酸化銅の沈殿が共存するスラリー状態となった(工程(A))。
この溶液を40℃とし、300rpmで撹拌して、単独のヒドラジン水和物(和光純薬工業株式会社製)からなる還元剤を2当量添加したところ、鮮やかな橙色の亜酸化銅(XRD解析からCu2Oと同定)が析出した(工程(B))。次いでさらに2当量のヒドラジン水和物還元剤を追加したところ、鮮やかな橙色が明るい茶色に変化し、XRD測定から亜酸化銅が銅粉に還元されたことが分かった(工程(C))。得られた銅粉は一旦濾別し、水洗と凝集防止のためのステアリン酸エマルション添加による表面処理後に再度濾別し、30℃の真空オーブンで6時間乾燥させた。
こうして得られた銅粉の形状を、上述したSEMを用いた方法で観察した。図3に、観察結果としての代表的な形状の写真を示す。図3の写真から分かるように、析出した銅粉は、擬八面体構造をなしており、この擬八面体構造を有する銅粉の個数は全個数の80%以上であった。また、多結晶の擬八面体の対角線長(L)の平均値は0.5μm、XRDによる結晶子径(R)は0.15μmであって、得られた銅粉は、R/L=0.3である微細で高結晶性の銅粉であることが確認された。さらに、200℃酸化増量(TG測定)は0.5質量%と小さく、抵抗率は115μΩ・cmと低抵抗となった。
[実施例2]
実施例1において、PEI樹脂に代えて、1質量%/銅質量の平均分子量1000のポリビニルアルコール(PVA樹脂、関東化学株式会社製)を添加し、さらにアルカリとして25%水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬工業株式会社製)を滴下してpH13.5に整え、さらに工程(C)では2当量のアスコルビン酸還元剤を追加したこと以外の条件は、同様に行った。実施例1と同じく、工程(A)の溶液は、銅錯体イオンによる濃い青色で白色の水酸化銅の沈殿が共存するスラリー状態となり、工程(B)では鮮やかな橙色の亜酸化銅(XRD解析からCu2Oと同定)が析出し、工程(C)では鮮やかな橙色が明るい茶色に変化してXRD測定から銅粉に還元されていた。
得られた銅粉を、実施例1と同じくSEMにより観察した。図4に、観察結果としての代表的な形状の写真を示す。図4の写真から分かるように、析出した銅粉は、擬八面体構造をなしており、この擬八面体構造を有する銅粉の個数は、全個数の80%以上であった。また、多結晶の擬八面体の対角線長(L)の平均値は0.7μm、XRDによる結晶子径(R)は0.3μmとなり、得られた銅粉は、R/L=0.43の微細で高結晶性の銅粉であることが確認された。さらに、200℃酸化増量(TG測定)は0.4質量%と小さく、抵抗率95μΩ・cmと低抵抗となった。
実施例1において、PEI樹脂に代えて、1質量%/銅質量の平均分子量1000のポリビニルアルコール(PVA樹脂、関東化学株式会社製)を添加し、さらにアルカリとして25%水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬工業株式会社製)を滴下してpH13.5に整え、さらに工程(C)では2当量のアスコルビン酸還元剤を追加したこと以外の条件は、同様に行った。実施例1と同じく、工程(A)の溶液は、銅錯体イオンによる濃い青色で白色の水酸化銅の沈殿が共存するスラリー状態となり、工程(B)では鮮やかな橙色の亜酸化銅(XRD解析からCu2Oと同定)が析出し、工程(C)では鮮やかな橙色が明るい茶色に変化してXRD測定から銅粉に還元されていた。
得られた銅粉を、実施例1と同じくSEMにより観察した。図4に、観察結果としての代表的な形状の写真を示す。図4の写真から分かるように、析出した銅粉は、擬八面体構造をなしており、この擬八面体構造を有する銅粉の個数は、全個数の80%以上であった。また、多結晶の擬八面体の対角線長(L)の平均値は0.7μm、XRDによる結晶子径(R)は0.3μmとなり、得られた銅粉は、R/L=0.43の微細で高結晶性の銅粉であることが確認された。さらに、200℃酸化増量(TG測定)は0.4質量%と小さく、抵抗率95μΩ・cmと低抵抗となった。
[比較例1]
アルカリとして25%水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬工業株式会社製)を滴下して、pHを10.5に整えた条件以外は、実施例1と同様とした。
得られた銅粉を、実施例1と同じくSEMにより観察した。図5に、観察結果としての代表的な形状の写真を示す。図5の写真から分かるように、析出した銅粉は、擬八面体構造ではなく不定形、平均粒径0.1μm以下の超微粉となった。また、XRDによる結晶子径(R)は0.015μmとなり、得られた銅粉は、R/L=0.15と結晶性の低い銅粉であることが確認された。そのため、200℃酸化増量(TG測定)は2.0質量%と大きく、抵抗率10000μΩ・cmと高抵抗となった。また粒状の銅粉粒子が凝集した超微粉であり、ペーストにすることが困難であった。
アルカリとして25%水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬工業株式会社製)を滴下して、pHを10.5に整えた条件以外は、実施例1と同様とした。
得られた銅粉を、実施例1と同じくSEMにより観察した。図5に、観察結果としての代表的な形状の写真を示す。図5の写真から分かるように、析出した銅粉は、擬八面体構造ではなく不定形、平均粒径0.1μm以下の超微粉となった。また、XRDによる結晶子径(R)は0.015μmとなり、得られた銅粉は、R/L=0.15と結晶性の低い銅粉であることが確認された。そのため、200℃酸化増量(TG測定)は2.0質量%と大きく、抵抗率10000μΩ・cmと高抵抗となった。また粒状の銅粉粒子が凝集した超微粉であり、ペーストにすることが困難であった。
[比較例2]
工程(A)までは実施例1と同様とし、工程(B)にて、単独のヒドラジン水和物(和光純薬工業株式会社製)からなる還元剤の量を変え0.8当量添加した。これによる溶液の色の変化はわずかであり、亜酸化銅は生成しなかった。このスラリーに、さらに1当量のヒドラジン水和物を添加した。鮮やかな橙色の亜酸化銅(XRD解析からCu2Oと同定)が析出するのみで銅粉は得られなかった。
工程(A)までは実施例1と同様とし、工程(B)にて、単独のヒドラジン水和物(和光純薬工業株式会社製)からなる還元剤の量を変え0.8当量添加した。これによる溶液の色の変化はわずかであり、亜酸化銅は生成しなかった。このスラリーに、さらに1当量のヒドラジン水和物を添加した。鮮やかな橙色の亜酸化銅(XRD解析からCu2Oと同定)が析出するのみで銅粉は得られなかった。
[比較例3]
工程(A)までは実施例1と同様とし、工程(B)にて、単独のヒドラジン水和物(和光純薬工業株式会社製)からなる還元剤を、一気に3当量添加した。還元剤を添加したところ、鮮やかな橙色ではなく明るい茶色の析出物が生成され、XRD解析から銅粉と確認された。
こうして得られた銅粉の形状を、上述したSEMを用いた方法で観察した。図6に、観察結果としての代表的な形状の写真を示す。図6の写真から分かるように、析出した銅粉は、擬八面体構造ではなく不定形、平均粒径0.1μm以下の超微粉となった。また、XRDによる結晶子径(R)は0.01μmとなり、得られた銅粉は、R/L=0.1と結晶性の低い銅粉であることが確認された。そのため、200℃酸化増量(TG測定)は3質量%以上、抵抗率10,000μΩ・cm以上と高抵抗となった。また粒状の銅粉粒子が凝集した超微粉であり、ペーストにすることが困難であった。
工程(A)までは実施例1と同様とし、工程(B)にて、単独のヒドラジン水和物(和光純薬工業株式会社製)からなる還元剤を、一気に3当量添加した。還元剤を添加したところ、鮮やかな橙色ではなく明るい茶色の析出物が生成され、XRD解析から銅粉と確認された。
こうして得られた銅粉の形状を、上述したSEMを用いた方法で観察した。図6に、観察結果としての代表的な形状の写真を示す。図6の写真から分かるように、析出した銅粉は、擬八面体構造ではなく不定形、平均粒径0.1μm以下の超微粉となった。また、XRDによる結晶子径(R)は0.01μmとなり、得られた銅粉は、R/L=0.1と結晶性の低い銅粉であることが確認された。そのため、200℃酸化増量(TG測定)は3質量%以上、抵抗率10,000μΩ・cm以上と高抵抗となった。また粒状の銅粉粒子が凝集した超微粉であり、ペーストにすることが困難であった。
[比較例4]
工程(A)でポリエチレンイミン(PEI樹脂)を添加しなかった以外は実施例1と同様とした。その結果、溶液の色はわずかに青色となったが、白色の水酸化銅の沈殿が共存するスラリー状態となり、銅塩のほとんどは水酸化銅の形態となった。
この溶液を40℃とし、300rpmで撹拌して単独のヒドラジン水和物(和光純薬工業株式会社製)からなる還元剤を2当量添加したところ、鮮やかな橙色の亜酸化銅(XRD解析からCu2Oと同定)が析出した。さらに2当量のヒドラジン水和物還元剤を追加したところ、鮮やかな橙色が明るい茶色に変化し、XRD測定から亜酸化銅が銅粉に還元されたことが分かった。
こうして得られた銅粉の形状を、上述したSEMを用いた方法で観察した。析出した銅粉は、擬八面体構造ではなく球状であり、平均粒径1.5μmであった。また、XRDによる結晶子径(R)は0.05μmとなり、得られた銅粉は、R/L=0.033と極めて結晶性の低い銅粉であることが確認された。そのため、200℃酸化増量(TG測定)は3質量%以上、抵抗率10,000μΩ・cm以上と高抵抗となった。
以上の実施例1、2および比較例1〜4の結果から、耐酸化性と焼結・低抵抗を両立するには、本発明の条件を満たすことが必要であるといえる。
工程(A)でポリエチレンイミン(PEI樹脂)を添加しなかった以外は実施例1と同様とした。その結果、溶液の色はわずかに青色となったが、白色の水酸化銅の沈殿が共存するスラリー状態となり、銅塩のほとんどは水酸化銅の形態となった。
この溶液を40℃とし、300rpmで撹拌して単独のヒドラジン水和物(和光純薬工業株式会社製)からなる還元剤を2当量添加したところ、鮮やかな橙色の亜酸化銅(XRD解析からCu2Oと同定)が析出した。さらに2当量のヒドラジン水和物還元剤を追加したところ、鮮やかな橙色が明るい茶色に変化し、XRD測定から亜酸化銅が銅粉に還元されたことが分かった。
こうして得られた銅粉の形状を、上述したSEMを用いた方法で観察した。析出した銅粉は、擬八面体構造ではなく球状であり、平均粒径1.5μmであった。また、XRDによる結晶子径(R)は0.05μmとなり、得られた銅粉は、R/L=0.033と極めて結晶性の低い銅粉であることが確認された。そのため、200℃酸化増量(TG測定)は3質量%以上、抵抗率10,000μΩ・cm以上と高抵抗となった。
以上の実施例1、2および比較例1〜4の結果から、耐酸化性と焼結・低抵抗を両立するには、本発明の条件を満たすことが必要であるといえる。
本発明の銅粉は、電子機器における配線層や電極等を形成するために、樹脂型ペーストや焼成型ペーストの原料の金属フィラーとして使用することができる。
Claims (9)
- 走査型電子顕微鏡(SEM)により擬八面体構造を有することが観察され、対角線長さ(L)が0.1μm〜2μmであり、対角線長さ(L)とScherrer法により求められる結晶子径(R)との比(R/L)が0.2〜0.5の範囲のものを全体の60%以上含むことを特徴とする銅粉。
- 前記擬八面体構造を構成する結晶粒数が、5〜130個であることを特徴とする請求項1に記載の銅粉。
- 銅塩の水溶液をアルカリでpH12〜14の範囲として、さらに錯化剤を添加して水酸化銅と銅錯イオンを共存したスラリーとする工程(A)と、
前記スラリーに還元剤を1〜2当量添加して、亜酸化銅(Cu2O)を析出させる工程(B)と、
さらに、亜酸化銅(Cu2O)が析出したスラリーに1当量以上の還元剤を追加して、亜酸化銅を銅粉に還元させる工程(C)と、
を含むことを特徴とする銅粉の製造方法。 - 前記錯化剤が、PEI、PVA、PVPから選ばれる平均分子量500〜50,000の合成樹脂であることを特徴とする請求項3に記載の銅粉の製造方法。
- 前記錯化剤は、銅塩中の銅に対して0.5質量%〜50質量%添加されることを特徴とする請求項3に記載の銅粉の製造方法。
- 前記還元剤の量は、工程(B)と工程(C)の合計量として、3当量以上であることを特徴とする請求項3に記載の銅粉の製造方法。
- 前記還元剤は、銅と錯体を形成することを特徴とする請求項3〜6のいずれかに記載の銅粉の製造方法。
- 前記銅粉は、擬八面体構造を有し、銅粉の対角線長さ(L)が0.1μm〜2μmであり、かつ対角線長さ(L)と結晶子径(R)との比(R/L)が0.2〜0.5の範囲であることを特徴とする請求項3〜7のいずれか1項に記載の銅粉の製造方法。
- 請求項1または2に記載の銅粉に、樹脂と溶媒とが混練されてなる導電性ペースト。
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-
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