JP2017137573A - 銀コート銅粉及びその製造方法 - Google Patents

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大夢 西本
Hiromu Nishimoto
大夢 西本
金子 勲
Isao Kaneko
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Abstract

【課題】形状が粒状で、粒径が0.1μm〜3.0μmであって均一であり、耐酸化性に優れ、細線化用途の電子材料の配線形成用として好適な、銀コート銅粉及びその製造方法を提供する。【解決手段】本発明に係る銀コート銅粉は、表面に銀が被覆された銅粒子により構成され、走査型電子顕微鏡により測定される一次粒子の平均粒径が0.1μm以上3.0μm以下であり、一次粒子の粒径の標準偏差値を、平均粒径で除した値である粒径の相対標準偏差値が0.3以下であり、銅粒子の結晶子径を平均粒径で除した値が0.07以上である。この銀コート銅粉は、銅化合物溶液と、アルカリ金属の水酸化物溶液と、分散剤溶液とを混合して銅塩溶液を作製し、その銅塩溶液と還元剤溶液と50℃以上90℃以下の範囲として、銅塩溶液へ還元剤溶液を添加しながら混合することによって銅粒子を生じさせ、その銅粒子に銀を被覆することで製造することができる。【選択図】図1

Description

本発明は、電子材料の配線形成用として有用な銀コート銅粉及びその製造方法に関するものである。
従来から、金属粉末は、導電性ペーストのような電子部品の配線形成材料として、プリント配線、半導体の内部配線、プリント配線板と電子部品との接続等に利用されている。そして近年では、太陽電池用電極やLED等の分野において、配線の細線化に対する需要が高まってきており、そのため、細線化に対応できる導電性ペースト向けの金属粉末が求められている。
導電性ペースト向けの金属粉末として、従来では、銀粉が用いられてきた。しかしながら、銀の地金価格が高価であることから、銅粉の表面に銀を被覆した銀コート銅粉への代替が活発に検討されている。
細線用導電性ペーストに用いられる銀コート銅粉に求められる特性としては、用途及び使用条件によって様々であるが、例えば、形状が粒状であり、粒径が0.1μm〜3.0μmと小さく、また均一であって、耐酸化性が高いことが重要である。粒径が3.0μmを超えると、配線を細線化できない。また、耐酸化性を高くするためには、銀コート銅粉の原料となる銅粒子の結晶子径を大きくすることが有効であることが知られている。
例えば、特許文献1では、結晶子径が800Å〜2000Åの範囲に属する樹枝状銀コート銅粉が開示されている。この銀コート銅粉では、結晶子径は大きいものの、樹枝状銀コート銅粉を構成する銅粒子の平均粒子径が5.0μm〜30μmとなる。細線用銅ペーストに用いられる銀コート銅粉としては、上述したように、粒径が0.1μm〜3.0μmの銀コート銅粒子が求められているため、この文献に記載の銀コート銅粒子を用いることは困難となる。
このように、従来、形状が粒状で、粒径が0.1μm〜3.0μmであって均一であり、耐酸化性に優れた銀コート銅粉を、工業的な大量生産に適した製造方法で製造することができなかった。そのため、上述した特性を有し、配線の細線化に適した導電性ペーストに有用な銀コート銅粉を効率的に製造でき、工業的な大量生産に適した方法が望まれている。
特許第5790900号公報
本発明は、このような従来の実情に鑑みてなされたものであり、形状が粒状で、粒径が0.1μm〜3.0μmであって均一であり、耐酸化性に優れ、細線化用途の電子材料の配線形成用として好適な、銀コート銅粉及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上述した課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、分散剤を含有させた銅塩溶液を調製し、その銅塩溶液と還元剤水溶液の温度を特定の範囲に制御し、銅塩溶液に対して還元剤溶液を添加して、その温度条件を維持しながら還元反応を生じさせることで、粒径が0.1μm以上3.0μm以下であって均一で、結晶子径が大きい銅粒子を得ることができ、この銅粒子の表面に銀を被覆することで、所望とする銀コート銅粉を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
(1)本発明の第1の発明は、表面に銀が被覆された銅粒子により構成される銀コート銅粉であって、走査型電子顕微鏡により測定される当該銀コート銅粉の一次粒子の平均粒径が0.1μm以上3.0μm以下であり、当該銀コート銅粉の一次粒子の粒径の標準偏差値を、前記平均粒径で除した値である粒径の相対標準偏差値が0.3以下であり、前記銅粒子の結晶子径を前記平均粒径で除した値が0.07以上である、銀コート銅粉である。
(2)本発明の第2の発明は、第1の発明において、前記銅粒子の結晶子径が60nm以上である、銀コート銅粉である。
(3)本発明の第3の発明は、第1又は第2の発明において、当該銀コート銅粉の形状が粒状である、銀コート銅粉である。
(4)本発明の第4の発明は、第1乃至第3のいずれかの発明において、当該銀コート銅粉の炭素含有量が0.05質量%以上0.5質量%以下である、銀コート銅粉である。
(5)本発明の第5の発明は、第1乃至第4のいずれかの発明において、熱分析装置を用いた測定による、大気中において室温から10℃/分の昇温速度で加熱したときの0.5%重量増加温度が300℃を超える、銀コート銅粉である。
(6)本発明の第6の発明は、第1乃至第5のいずれかの発明において、銀の被覆量が、銀被覆した当該銀コート銅粉全体の質量100%に対して5質量%以上40質量%以下である、銀コート銅粉である。
(7)本発明の第7の発明は、第1乃至第6のいずれかの発明に係る銅粉と、樹脂と、溶媒とを混練してなる、導電性ペーストである。
(8)本発明の第8の発明は、銅化合物を含む溶液と、アルカリ金属の水酸化物を含む溶液と、分散剤を含む溶液とを混合して銅塩溶液を作製する銅塩溶液作製工程と、前記銅塩溶液と還元剤溶液とを混合して銅粒子を生成させる銅粒子生成工程と、得られた銅粒子の表面に銀を被覆する銀被覆工程とを有し、前記銅粒子生成工程では、前記銅塩溶液及び前記還元剤溶液の温度を50℃以上90℃以下の範囲として、該銅塩溶液へ該還元剤溶液を添加することによって混合する、銀コート銅粉の製造方法である。
(9)本発明の第9の発明は、第8の発明において、前記銅塩溶液作製工程では、前記分散剤の添加量を、前記銅化合物中の銅量に対して0.01質量%以上10質量%以下の範囲とする、銀コート銅粉の製造方法である。
(10)本発明の第10の発明は、第8又は第9の発明において、前記分散剤が、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン、変性シリコーンオイル系界面活性剤、及びポリエーテル系界面活性剤から選択される少なくとも1種である、銀コート銅粉の製造方法である。
(11)本発明の第11の発明は、第8乃至第10のいずれかの発明において、前記銅化合物は硫酸銅五水和物である、銀コート銅粉の製造方法である。
(12)本発明の第12の発明は、第8乃至第11のいずれかの発明において、前記アルカリ金属の水酸化物は水酸化ナトリウムである、銀コート銅粉の製造方法である。
(13)本発明の第13の発明は、第8乃至第12のいずれかの発明において、前記銅粒子生成工程では、前記還元剤の添加量を、前記銅化合物中の銅量に対して1当量以上7当量以下とする、銀コート銅粉の製造方法である。
(14)本発明の第14の発明は、第8乃至第13のいずれかの発明において、前記還元剤はアスコルビン酸である、銀コート銅粉の製造方法である。
(15)本発明の第15の発明は、第8乃至第14のいずれかの発明において、銀被覆工程では、前記銅粒子への銀の被覆量が、銀被覆して得られる銀コート銅粉全体の質量100%に対して1質量%以上40質量%以下となるようにする、銀コート銅粉の製造方法である。
(16)本発明の第16の発明は、第8乃至第15のいずれかの発明において、前記銅粒子生成工程にて得られた前記銅粒子を含むスラリーを濾過し、銀塩溶液中の該銅粒子を分散させる、銀コート銅粉の製造方法である。
(17)本発明の第17の発明は、第8乃至第15のいずれかの発明において、前記銀被覆工程では、前記銅粒子生成工程にて得られた前記銅粒子を含むスラリーに、銀塩溶液を添加する、銀コート銅粉の製造方法である。
(18)本発明の第18の発明は、第16又は第17の発明において、前記銀被覆工程では、前記銀塩溶液中の銀塩として、硝酸銀、酸化銀、炭酸銀、硫酸銀、及び酢酸銀から選択される少なくとも1種を用いる、銀コート銅粉の製造方法である。
(19)本発明の第19の発明は、第8乃至第18のいずれかの発明において、前記銀コート銅粉は、該銀コート銅粉を構成する銅粒子の結晶子径を、該銀コート銅粉を走査型電子顕微鏡により測定される一次粒子の平均粒径で除した値が0.07以上である、銀コート銅粉の製造方法である。
(20)本発明の第20の発明は、第19の発明において、前記銀コート銅粉は、該銀コート銅粉を構成する銅粒子の結晶子径が60nm以上である、銀コート銅粉の製造方法である。
(21)本発明の第21の発明は、第19又は第20の発明において、前記銀コート銅粉は、該銀コート銅粉の一次粒子の粒径の標準偏差値を、該銀コート銅粉の前記平均粒径で除した値である粒径の相対標準偏差値が0.3以下である、銀コート銅粉の製造方法である。
(22)本発明の第22の発明は、第19乃至第21のいずれかの発明において、前記銀コート銅粉は、炭素含有量が0.05質量%以上0.5質量%以下である、銀コート銅粉の製造方法である。
(23)本発明の第23の発明は、第1乃至第7のいずれかの発明に係る銀コート銅粉と、樹脂と、溶媒とを混練することによって製造する導電性ペーストの製造方法である。
本発明によれば、形状が粒状で、粒径が0.1μm〜3.0μmであって均一であり、耐酸化性に優れており、細線化用途の電子材料の配線形成に用いて好適な、銀コート銅粉及びその銀コート銅粉の製造方法を提供することができる。また、本発明に係る銀コート銅粉の製造方法によれば、取り扱いが容易であり工業的な大量生産に適した水溶液系において、効率的に銅粉を製造することができ、その工業的価値は極めて大きい。
実施例1にて得られた銀コート銅粉のSEM観察写真図である。 実施例2にて得られた銀コート銅粉のSEM観察写真図である。 比較例1にて得られた銀コート銅粉のSEM観察写真図である。
以下、本発明の具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」という)について詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて適宜変更することができる。なお、本明細書にて、「X〜Y」(X、Yは任意の数値)との表記は、「X以上Y以下」の意味である。
≪1.銀コート銅粉≫
本実施の形態に係る銀コート銅粉は、表面に銀が被覆(コート)された銅粒子により構成される銀コート銅粉であって、走査型電子顕微鏡(SEM)により測定される当該銀コート銅粉の平均粒径が0.1μm以上3.0μm以下であり、当該銀コート銅粉の一次粒子の粒径の標準偏差値を平均粒径で除した値である粒径の相対標準偏差値が0.3以下であり、また、銀コート銅粉を構成する銅粒子の結晶子径を当該銀コート銅粉の平均粒径で除した値が0.07以上であることを特徴としている。
より具体的に、この銀コート銅粉は、粒状の形状を有しており、平均粒径が0.1μm以上3.0μm以下の範囲であり、より好ましくは0.3μm以上2.5μm以下の範囲である。平均粒径をこのような範囲とすることにより、細線化された配線を形成するのに適した導電性(銅)ペーストとすることができる。
ここで、平均粒径は、SEMにより一定数の銀コート銅粉を観察して、その観察により測定した一次粒子の粒径から求められる平均値である。また、一次粒子は、そのSEM観察像より単位粒子と考えられるものを指し、単位粒子が凝集、結合してできた粒子、いわゆる二次粒子を意味するものではない。
この銀コート銅粉の平均粒径が0.1μm未満であると、銀コート銅粉の粒子が凝集しやすくなり、ペースト化し難くなる。一方で、平均粒径が3.0μmを超えると、その銀コート銅粉を含むペーストにより配線を形成させたとき線幅を狭くすることが難しくなり、配線の細線化することが困難になる。
また、この銀コート銅粉は、一次粒子の粒径の標準偏差値を、上述したSEMにより測定される平均粒径で除した値である、粒径の相対標準偏差値は0.3以下である。この粒径の相対標準偏差値が0.3を超えると、印刷膜中に銀コート銅の粒子が均一に存在しなくなるため、配線や電極の太さや厚さが不均一となる。またそればかりか、硬化あるいは焼成が不均一となるため、導電膜の抵抗が大きくなったり、導電膜が脆く弱いものになりやすい。
また、この銀コート銅粉は、その銅粒子の結晶子径を、上述したSEMにより測定される当該銀コート銅粉の平均粒径で除した値(結晶子径/平均粒径)が0.07以上である。結晶子径は、X線回折結果からScherrer法を用いて計算することができる。結晶子径/平均粒径で表される指標が高いほど、銀コート銅粉を構成する銅の結晶粒の個数が少ないことを意味し、つまり高い結晶性を有しているものとなる。このように、結晶子径/平均粒径が0.07以上の高結晶性を有する銀コート銅粉であることにより、結晶粒界が少なくなり、酸化し難くいものとなる。
ここで、本実施の形態に係る銀コート銅粉を構成する銅粒子の結晶子径は、60nm以上であり、好ましくは130nm以上である。なお、銅粒子の結晶子径の上限値としては、特に限定されないが、900nm以下であることが好ましい。
また、上述した結晶子径/平均粒径の値として、その上限値は特に限定されないが、0.3以下であることが好ましい。また、結晶子径/平均粒径としては、0.08以上0.3以下であることがより好ましく、0.1以上0.2以下であることが特に好ましい。
また、本実施の形態に係る銀コート銅粉は、炭素含有量が0.05質量%以上0.5質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上0.4質量%以下であることがより好ましい。炭素含有量は、その銅粉表面における分散剤等に由来する有機物の付着量を示すものである。後述するように本実施の形態においては、銅粒子を生成させる際に、生成する銅粒子の凝集を抑制することを目的の1つとして分散剤を用い、また、得られた銅粒子に対する銀コート処理に際しても錯化剤等の有機化合物を用いるが、得られる銀コート銅粉においてもその表面に適切な量の有機物を付着させておくことで、凝集を抑制することができ、またその銀コート銅粉を用いて導電性ペーストとしたときの分散性を高めることができる。
銀コート銅粉の炭素含有量が0.05質量%未満であると、十分な凝集抑制効果が得られず、導電性ペーストとしたときに所望の分散性が得られない可能性がある。一方で、炭素含有量が多くなると、凝集抑制効果や分散性向上効果等は高まるものの、その銀コート銅粉表面に付着した有機物は導電性ペーストを加熱硬化させたときの、銀コート銅粉の焼結を阻害する要因となる。このことから、炭素含有量が0.5質量%を超えると、焼結性が低下することがある。
また、本実施の形態に係る銀コート銅粉は、耐酸化性に優れており、細線用導電性ペーストに用いられる銅粉として好適である。具体的に、その耐酸化性については、例えば、熱分析装置を用いた測定による「0.5%重量増加温度」によって定量的に評価することができ、この銀コート銅粉は、好ましくは、大気中において室温から10℃/分の昇温速度で加熱したときの0.5%重量増加温度が300℃を超える。
本実施の形態に係る銀コート銅粉は、上述したように、表面に銀が被覆された銅粒子により構成されるものであり、その銀被覆量としては、特に限定されないが、銀被覆した当該銀コート銅粉全体の質量100%に対して、5質量%以上40質量%以下であることが好ましく、5質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。
銀コート銅粉において、銀被覆量が5質量%未満であると、銀による被覆が不十分となる可能性があり、酸化しやすいものとなり、また配線材料としたときに電気抵抗が高くなる可能性がある。一方で、銀被覆量が40質量%を超えると、それ以上に銀被覆量を増やしても電気抵抗の低下効果が見込めないだけでなく、コストが高くなる。
≪2.銀コート銅粉の製造方法≫
次に、上述した特徴的な構成を有する銀コート銅粉の製造方法について説明する。
本実施の形態に係る銀コート銅粉は、銅塩溶液を作製する工程と、作製した銅塩溶液と還元剤溶液とを混合して銅粒子を生成させる工程と、得られた銅粒子の表面に銀を被覆する工程とを有する。そして、この製造方法においては、分散剤を含有させた銅塩溶液を調製し、その銅塩溶液と還元剤溶液とを特定の温度範囲に調整して維持しながら、その銅塩溶液に対して還元剤溶液を添加して銅粒子を生成させる。
ここで、従来の銅粉の製造方法では、形状が粒状で、粒径が小さくかつ均一であり、結晶子径が大きい銅粒子からなる銀コート銅粉を工業的な製造に適した方法で製造できないという問題があった。しかしながら、本発明者の研究により、分散剤を含有させた銅塩溶液を調製し、その銅塩溶液と還元剤水溶液の温度を特定の範囲に調整し、原料である銅塩溶液に対して還元剤溶液を添加していき、その温度条件を維持しながら還元反応を生じさせることで、粒状形状を有し、粒径の小さく、結晶子径が大きい銅粒子を得ることができることを見出した。
より具体的には、分散剤を含有させた銅塩溶液と還元剤溶液の温度を50℃以上90℃以下の範囲に調整し、それを維持した状態で、銅塩溶液に対して還元剤溶液を添加して銅粒子を生成させる。このような製造方法によれば、粒状形状で、粒径が小さくかつ均一であり、結晶子径が大きい銅粒子により構成される銀コート銅粉であって、配線の細線化に適した導電性ペーストに有用な銀コート銅粉を、工業的に製造することができる。
以下、本実施の形態に係る銀コート銅粉の製造方法についてより具体的に説明する。なお、以下の説明においては、銅塩溶液と還元剤溶液とを混合させた後の液を「反応液」ともいう。
(1)銅塩溶液の作製
この銀コート銅粉の製造方法においては、先ず、銅粒子を製造する原料溶液である銅塩溶液を作製する。具体的には、銅化合物を含む溶液と、アルカリ金属の水酸化物を含む溶液と、分散剤を含む溶液とを混合して銅塩溶液を作製する。
(銅化合物溶液)
銅化合物を含む溶液に関して、出発原料である銅化合物としては、特に限定されるものではなく、各種の銅化合物を用いることができるが、その中でも、他の銅化合物よりも安価であり高純度のものを入手し易いという点で硫酸銅五水和物を用いることが好ましい。
また、銅化合物の濃度としては、特に限定されないが、得られる銅塩溶液中における銅濃度として100g/L〜2000g/Lの範囲となるようにすることが好ましい。銅の濃度が低い場合であっても、粒子の成長は生じて銅粒子を得ることができるが、銅塩溶液中において銅濃度が100g/L未満であると、生産性を高めることができず、また排水量が増大してコストが高くなる。一方で、銅の濃度が2000g/Lを越えると、水に対する溶解度に近くなり、十分に溶解しない可能性がある。
(アルカリ金属の水酸化物溶液)
アルカリ金属の水酸化物を含む溶液に関して、そのアルカリ金属の水酸化物としては、各種の水酸化物を用いることができるが、その中でも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムを用いることが好ましく、水酸化ナトリウムを用いることがより好ましい。これらのアルカリ金属の水酸化物は、入手が容易で、他の水酸化物よりも安価である。
また、アルカリ金属の水酸化物の濃度としては、後述する還元剤溶液を銅塩溶液に添加した後にその反応液中で還元剤の還元反応が十分に進行するpHとなるように、その銅塩溶液中の濃度を調整することが好ましい。具体的には、例えば還元剤としてアスコルビン酸を用いる場合は、反応液のpHが3.0以上となるようにすることが好ましい。反応液のpHが3.0未満であると、還元剤であるアスコルビン酸による還元反応が進行しにくくなる可能性がある。
反応液のpHが高くなると、反応液中に水酸化銅が形成されるようになり、その水酸化銅からの還元反応により銅粒子が生成される。水酸化銅から銅粒子が生成される反応は、銅イオンから銅粒子が生成される反応よりも速度が低下するため、徐々に結晶が成長することになり、高結晶性の銅粒子が得られやすくなる。このことから、反応液のpHが4.0以上となるようにすることがより好ましい。
(分散剤溶液)
本実施の形態に係る銅粉の製造方法においては、銅塩溶液を作製するにあたり、還元剤との還元反応により生成した銅粒子が凝集を起こさないように、分散剤の水溶液を混合させる。また、分散剤は、反応液中の濃度が高くなるほど、還元反応の速度を遅くする作用を有している。このことから、銅塩溶液に分散剤を含有させることで、還元反応の反応速度を低下させ、高結晶性の銅粒子を得ることができる。
ここで、結晶粒界が少なく結晶子径が大きい銅粉を得ることが重要であり、そのためには、結晶性が高いことにより銅粒子の各結晶の成長が優先されて結晶粒界が相対的に少なくなる条件とすることが好ましい。このような点から、還元反応の速度を制御することが好ましく、反応液中の分散剤濃度が適切な範囲となるように制御することが好ましい。
具体的に、分散剤の濃度としては、反応液中において銅化合物の銅量に対して0.1質量%以上10質量%以下となるようにすることが好ましく、0.3質量%以上7質量%以下とすることがより好ましく、0.5質量%以上5質量%以下とすることが特に好ましい。分散剤の濃度が反応液中において0.1質量%未満であると、還元反応の速度が速くなり、高結晶性の銅粉が得られない可能性がある。一方で、分散剤の濃度が反応液中において10質量%を超えると、還元反応の速度が低下しすぎて生産性が悪化し、また場合によっては還元反応が進行しない可能性もある。
分散剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン、変性シリコーンオイル系界面活性剤、ポリエーテル系界面活性剤等から選択される少なくとも1種であることが好ましい。また、これらの分散剤の2種以上を併用してもよい。
(2)還元剤の添加による銅粒子の生成
次に、作製した銅塩溶液と還元剤溶液とを混合して銅粒子(銅粉)を生成させる。このとき、本実施の形態に係る銀コート銅粉の製造方法では、銅塩溶液と還元剤溶液の温度を特定の範囲に制御し、その原料溶液である銅塩溶液に対して還元剤溶液を添加していく。
(還元剤溶液)
還元剤としては、特に限定されないが、比較的還元力の弱い化合物を用いることが好ましく、例えば、アスコルビン酸、あるいはそれに類似のラクトン構造を有する有機化合物を用いることが好ましい。アスコルビン酸は、還元作用が緩やかであり、そのようなラクトン構造を有する有機化合物を用いることによって、結晶性の高い銅粒子を効率的に生じさせることができる。
この銀コート銅粉の製造方法においては、上述した還元剤を含有する溶液を銅塩溶液に添加していくが、その還元剤の添加量としては、反応液中において銅化合物の銅量に対して1当量以上7当量以下に相当する量とすることが好ましい。還元剤の添加量を、銅化合物の銅量に対して1当量未満とすると、未還元の銅塩が残留することがあり、一方で、7当量を超えると、製造コストが高くなる。なお、後述するように、得られた銅粒子の表面に銀コート処理するにあたり、銅粒子の生成に用いた還元剤を用いて還元型無電解めっき法により銀コート処理する場合には、この銅粒子の生成に際して、銅塩溶液への還元剤の添加量を、銅量に対して1.5当量以上、より好ましくは2当量以上とするのがよい。
ここで、本実施の形態に係る銀コート銅粉の製造方法においては、原料溶液である銅塩溶液へ還元剤溶液を添加していくことが重要であり、これにより、結晶性の高い銅粒子を効果的に生成させることができる。
また、銅塩溶液に対して還元剤溶液を添加していくに際しては、その銅塩溶液と還元剤溶液の温度を特定の範囲に制御する。具体的には、50℃以上90℃以下の範囲とする。また、好ましくは、60℃以上80℃以下の範囲とする。銅塩溶液と還元剤溶液の温度をこのような温度範囲に制御し、この温度範囲を維持して還元反応を生じさせることによって、高い結晶性を有する銅粒子を生成させることができる。反応温度が50℃未満であると、銅粒子の結晶性が低くなる。一方で、反応温度が90℃を超えると、反応速度が速くなるために粒径が不均一になりやすくなる。
また、銅塩溶液に対して還元剤溶液を添加した後の反応液の保持時間としては、特に限定されないが、1時間以上とすることが好ましい。反応液の保持時間が1時間未満であると、還元反応が終了していない可能性があり、未還元の銅塩が残留することがある。一方で、反応液の保持時間の上限としては特に限定されないが、アスコルビン酸のような比較的還元力の弱い還元剤による還元反応が完全に終了するまでという観点から、例えば5時間以内とすることが好ましい。なお、この反応液の保持時間としては、1時間以上4時間以下とすることがより好ましく、2時間以上3時間以下とすることが特に好ましい。
反応液には、必要に応じてpH調整剤、錯化剤、消泡剤等の添加剤を適宜添加することもできる。これらの添加剤の添加量も、その目的に応じて適宜調整すればよい。
(3)銀コート処理
次に、反応溶液中に生成させた銅粒子の表面に、銀を被覆(コート)する処理を施す。具体的には、銀塩溶液を用いて、例えば還元型無電解めっき法や置換型無電解めっき法等により銅粒子表面に銀を被覆する。
銅粒子の表面に銀の被覆させる方法としては、無電解めっき法に限定されず、銅粒子の表面に銀を被覆させることができる方法であれば、その他の公知の方法により行うことができる。なお、無電解めっき法によれば、比較的低コストでかつ生産性よく被覆処理を施すことができ、また、銅粒子表面の酸化が抑えられるとともに、このようにして得られる銀コート銅粉を用いて導電膜を形成したときに導電性を高めることができる。
例えば、還元型無電解めっき法に基づいた銀コート処理では、その銀塩溶液に還元剤を用いて処理する。具体的に、還元剤としては、銀の錯イオンは還元できるが銅の錯イオンは還元できない、比較的還元力の弱い還元剤を用いることが好ましく、例えば、炭水化物類、多価カルボン酸及びその塩、アルデヒド類等が挙げられる。より具体的には、アスコルビン酸、ぶどう糖(グルコース)、乳酸、シュウ酸、酒石酸、リンゴ酸、マロン酸、グリコール酸、酒石酸ナトリウムカリウム、ホルマリン等が挙げられる。
なお、銅粒子生成工程にて用いた還元剤と同じ還元剤を用いる場合、銀塩溶液に還元剤を添加せずに、銅粒子が生成した反応液中に残留した還元剤を利用してもよい。
また、置換型無電解めっき法に基づいて銀コート処理では、例えばその銀塩溶液として、銀塩と、錯化剤と、伝導塩とを主要成分とするものを用いて処理する。また、必要に応じて、pH調整剤、界面活性剤等の分散剤、光沢剤、結晶調整剤、沈殿防止剤、安定剤等の添加剤を添加することができる。なお、これらの添加剤は、還元剤型無電解めっき法による処理において使用する銀塩溶液にも添加することができる。
具体的に、錯化剤としては、銀イオンと錯体を形成させるものであり、例えば、アンモニア、クエン酸、酒石酸、エチレンジアミン4酢酸、ニトリロ3酢酸等や、エチレンジアミン、グリシン、ヒダントイン、ピロリドン、コハク酸イミド等のN含有化合物、ヒドロキシエチリデン2ホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸、メルカプトプロピオン酸、チオグリコール、チオセミカルバジド等を用いることができる。
また、伝導塩としては、例えば、硝酸、ホウ酸、リン酸等の無機酸、クエン酸、マレイン酸、酒石酸、フタル酸等の有機酸、又はそれらのナトリウム、カリウム、アンモニウム塩等を用いることができる。
銀塩溶液の主成分である銀塩としては、特に限定されるものではないが、硝酸銀、酸化銀、炭酸銀、硫酸銀、酢酸銀から選択される少なくとも1種であることが好ましい。その中でも特に、硝酸銀を用いることが好ましい。銀塩として硝酸銀を用いる場合には、アンモニアによる錯形成が容易であることから、アンモニア性溶液として銀コート処理を行うことが好ましい。
ここで、置換型無電解めっき法により銀コート処理する場合や、銅粒子の生成に用いた消泡剤や錯化剤等が銀コート処理を阻害する場合には、銅粒子生成工程にて生成した銅粒子を含む銅粒子スラリーを濾過した後、洗浄して銅粒子の水スラリーとし、その銅粒子の水スラリーに銀コート処理に用いる銀塩溶液を添加することで銀塩溶液中に銅粒子を分散させることが好ましい。または、銅粒子スラリーを濾過した後、固液分離して、分離した銅粒子を銀コート処理に用いる銀塩溶液に添加することで銀塩溶液中に銅粒子を分散させることが好ましい。なお、濾過、洗浄、及び固液分離の方法は、特に限定されず、公知の手法を用いることができる。
また、還元型無電解めっき法により銀コート処理するにあたり、銅粒子の生成に用いた還元剤と同じ還元剤を銀コート処理に用いる場合には、反応液中で生成した銅粒子を含む銅粒子スラリーに直接、銀塩溶液を添加してもよい。これにより、銅粒子が生成した反応液中に残留した還元剤を有効に活用しながら、無電解めっき処理を行うことができる。
銀コート処理においては、その銅粒子の表面に対する銀被覆量が、銀被覆した当該銀コート銅粉全体の質量100%に対して、5質量%以上40質量%以下となるように処理することが好ましく、5質量%以上20質量%以下となるように処理することがより好ましい。銀被覆量が5質量%未満であると、銀による被覆が不十分となる可能性があり、酸化しやすいものとなり、また配線材料としたときに電気抵抗が高くなることがある。一方で、銀被覆量が40質量%を超えると、それ以上に銀被覆量を増やしても電気抵抗の低下効果が見込めないだけでなく、コストが高くなるため、好ましくない。
(4)濾過、洗浄・乾燥
以上のようにして、銀コート銅粒子のスラリーを生成させると、そのスラリーを濾過することによって銀コート銅粉を分離し、洗浄して乾燥する。
洗浄方法としては、特に限定されないが、例えば、銀コート銅粒子を水に投入し、撹拌機又は超音波洗浄器を使用して撹拌した後、吸引濾過機やフィルタープレス等で濾過して回収する方法により行うことができる。また、その洗浄方法においては、水への投入、撹拌洗浄、及び濾過からなる操作を、数回繰り返して行うことが好ましい。なお、洗浄水としては、銀コート銅粉に対して有害な不純物元素を含有しない水、特に純水を用いることが好ましい。
また、銀コート銅粉の凝集等を防止するために、洗浄処理において洗浄水等に表面処理剤を添加して、その洗浄中に銀コート銅粉を表面処理するようにしてもよい。例えば、洗浄処理中にカルボン酸溶液による表面処理を追加することができる。なお、このような表面処理を行った場合には、その後に洗浄及び濾過を行い、余剰な表面処理剤を除去することが好ましい。
次に、洗浄後の銀コート銅粉に対する乾燥処理において、その乾燥方法としては特に限定されず、例えば、洗浄後の銅粒子をステンレスバット上に置き、大気オーブン又は真空乾燥機等の市販の乾燥装置を用いて、40℃〜80℃程度の温度で加熱することにより行うことができる。
以上詳細に説明したように、本実施の形態に係る銀コート銅粉の製造方法によれば、粒状で、粒径が小さく均一で、結晶子径の大きい高結晶性の銀コート銅粉を製造することができる。
≪3.導電性ペースト≫
本実施の形態に係る銀コート銅粉は、上述したように、表面に銀が被覆された銅粒子により構成されるものであって、SEMにより測定される一次粒子の平均粒径が0.1μm以上3.0μm以下であり、一次粒子の粒径の標準偏差値を平均粒径で除した値である粒径の相対標準偏差値が0.3以下であり、また、銅粒子の結晶子径を平均粒径で除した値が0.07以上である。このような銀コート銅粉によれば、凝集を抑えながら、配線の細線化に適した導電性ペーストの原料として好適に用いることができる。
導電性ペーストは、上述した銀コート銅粉と、バインダ樹脂と、溶剤とを混合して、混錬することによって製造することができる。また、必要に応じて、硬化後の導電性を改善するために、酸化防止剤やカップリング剤等の添加剤の配合することもできる。
具体的に、バインダ樹脂としては、特に限定されないが、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、エチルセルロース樹脂等を用いることができる。また、溶剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ターピネオール等の有機溶剤を用いることができる。また、その有機溶剤の添加量としては、特に限定されないが、スクリーン印刷やディスペンサー等の導電膜形成方法に適した粘度となるように、銅粉の平均粒径を考慮して調整することができる。
また、添加剤である酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えばヒドロキシカルボン酸等を挙げることができる。より具体的には、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸等のヒドロキシカルボン酸が好ましく、銅への吸着力が高いクエン酸又はリンゴ酸が特に好ましい。なお、添加剤としては、その他に、カップリング剤や、粘度調整剤、分散剤、難燃剤、沈降防止剤等を使用することができる。
導電性ペーストを製造するに際しては、上述した構成成分を均一に分散させることができる限り、従来と同様の方法により製造することができる。例えば、上述した各構成成分を、3本ロールミル等を用いて均一に混練することにより製造することができる。
なお、添加剤を添加するタイミングについても、特に制限されず、銀コート銅粉やバインダ樹脂と同時に溶剤に添加して混練してもよく、あるいは、銀コート銅粉とバインダ樹脂とを溶剤に混ぜて混練させ、その後、自公転ミキサ等を用いて添加してもよい。
以下に、本発明の実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
<評価方法>
下記実施例及び比較例にて得られた銅粉について、以下の方法により、平均粒径、結晶子系、形状の観察、0.5%重量増加温度、炭素含有量の測定を行った。
(平均粒径)
得られた銀コート銅粉の平均粒径については、走査型電子顕微鏡(SEM、日本電子株式会社製,JSM−7100F)を用いて観察し、銀コート銅粉300個以上の一次粒子の粒径を測長することによって、その平均値を求めて平均粒径とした。
(結晶子径)
得られた銅粒子の結晶子径については、X線回折装置(PAN alytical社製,X‘pert PRO)を用いて測定し、得られたX線回折パターンから、一般にScherrerの式として知られる公知の方法を用いて算出した。
(0.5%重量増加温度)
得られた銀コート銅粉の0.5%重量増加温度については、熱分析装置(ブルカー社製,TG−DTA2000SR)を用いて、空気流量を100mL/分とし、10℃/分で昇温させたときの重量増加量を測定し、0.5%重量が増加したときの温度を、0.5%重量増加温度として求めた。
(炭素含有量)
得られた銀コート銅粉の炭素含有量については、炭素硫黄分析装置(LECO社製,CS−600)を用いて、高周波燃焼−赤外吸収法により測定した。
[実施例1]
硫酸銅五水和物(住友金属鉱山株式会社製)500gを純水3Lに溶解させ、そこへ、25%水酸化ナトリウム水溶液(関東化学株式会社製)600mLと、分散剤であるポリビニルアルコール(株式会社クラレ製,PVA205)1.28gを純水1Lに溶解させた分散剤溶液とを添加した。さらに、消泡剤(株式会社アデカ製,アデカノールLG−126)を体積比で100倍に希釈し、この消泡剤希釈液10mLを添加した。これにより、銅塩溶液を調製した。
次に、調製した銅塩溶液を撹拌しながら60℃で保持し、そこへ、アスコルビン酸(和光純薬工業株式会社製)881gを純水2Lに溶解させて60℃に加熱した還元剤溶液を投入し、60℃で3時間撹拌しながら保持した。
撹拌終了後、その反応液を、吸引濾過機を使用して濾過し、反応液中の銅粒子を固液分離した。続いて、回収した銅粒子を、硝酸銀(和光純薬工業株式会社製)20.1gを溶解させた純水2L中に投入し、40℃で1時間撹拌しながら保持した。
撹拌終了後、得られた銀コート銅粒子スラリーを、吸引濾過機を使用して濾過し、銀コート銅粒子を固液分離した。続いて、回収した銀コート銅粒子を純水2L中に投入し、そこへ、ステアリン酸エマルジョン(中京油脂株式会社製,セロゾール920)2.5gを添加して15分間撹拌した後、吸引濾過機で濾過して回収した。続いて、回収した銀コート銅粒子を純水2L中に投入し、15分間の撹拌による洗浄と吸引濾過機による濾過からなる操作を行った。その後、銀コート銅粒子をステンレスバット上に移し、真空乾燥機にて60℃で10時間乾燥して、銀コート銅粉を得た。
図1は、この実施例1で得られた銀コート銅粉のSEM観察写真である。図1のSEM写真から分かるように、得られた銀コート銅粉は粒状の形状であった。また、銀の被覆量は、銀被覆した当該銀コート銅粉全体の質量100%に対して10質量%であった。
また、そのSEM像より300個以上の一次粒子の粒径を測長して粒子数で平均することで求めた平均粒径は1.92μmであり、一次粒子の粒径の標準偏差値を平均粒径で除した粒径の相対標準偏差値は0.19であった。また、銀コート銅粉を構成する銅粒子の結晶子径は157nmであり、結晶子径/平均粒径で表される値は0.08であった。
さらに、得られた銀コート銅粉の0.5%重量増加温度は312℃であり、300℃を超えるものとなり、耐酸化性が良好であった。また、得られた銀コート銅粉の炭素含有量は0.22質量%であった。
[実施例2]
硫酸銅五水和物(住友金属鉱山株式会社製)25.0gを純水150mLに溶解させ、そこへ、25%水酸化ナトリウム水溶液(関東化学株式会社製)30mLと、分散剤であるポリビニルアルコール(株式会社クラレ製,PVA205)0.06gを純水50mLに溶解させた分散剤溶液とを添加した。さらに、消泡剤(株式会社アデカ製,アデカノールLG−126)を体積比で100倍に希釈し、この消泡剤希釈液5mLを添加した。これにより、銅塩溶液を調製した。
次に、調製した銅塩溶液を撹拌しながら80℃で保持し、そこへ、アスコルビン酸(和光純薬工業株式会社製)44gを純水100mLに溶解させて80℃に加熱した還元剤溶液を投入し、80℃で3時間撹拌しながら保持した。
撹拌終了後、その反応液を、吸引濾過機を使用して濾過し、反応液中の銅粒子を固液分離した。続いて、回収した銅粒子を、硝酸銀(和光純薬工業株式会社製)1.0gを溶解させた純水200mL中に投入し、40℃で1時間撹拌しながら保持した。
撹拌終了後、得られた銀コート銅粒子スラリーを、吸引濾過機を使用して濾過し、銀コート銅粒子を固液分離した。続いて、回収した銀コート銅粒子を純水200mL中に投入し、そこへ、ステアリン酸エマルジョン(中京油脂株式会社製,セロゾール920)0.13gを添加して15分間撹拌した後、吸引濾過機で濾過して回収した。続いて、回収した銀コート銅粒子を純水200mL中に投入し、15分間の撹拌による洗浄と吸引濾過機による濾過からなる操作を行った。その後、銀コート銅粒子をステンレスバット上に移し、真空乾燥機にて60℃で10時間乾燥して、銀コート銅粉を得た。
図1は、この実施例1で得られた銀コート銅粉のSEM観察写真である。図1のSEM写真から分かるように、得られた銀コート銅粉は粒状の形状であった。また、銀の被覆量は、銀被覆した当該銀コート銅粉全体の質量100%に対して10質量%であった。
また、そのSEM像より300個以上の一次粒子の粒径を測長して粒子数で平均することで求めた平均粒径は2.50μmであり、一次粒子の粒径の標準偏差値を平均粒径で除した粒径の相対標準偏差値は0.21であった。また、銀コート銅粉を構成する銅粒子の結晶子径は295nmであり、結晶子径/平均粒径で表される値は0.12であった。
さらに、得られた銀コート銅粉の0.5%重量増加温度は330℃であり、300℃を超えるものとなり、耐酸化性が良好であった。また、得られた銀コート銅粉の炭素含有量は0.23質量%であった。
[実施例3]
実施例1において、銅粒子生成後の反応液を濾過せずに、その銅粒子スラリーに直接硝酸銀を添加して銀コート処理したこと以外は、同様にして銀コート銅粉を作製した。
具体的には、先ず、硫酸銅五水和物(住友金属鉱山株式会社製)500gを純水3Lに溶解させ、そこへ、25%水酸化ナトリウム水溶液(関東化学株式会社製)600mLと、分散剤であるポリビニルアルコール(株式会社クラレ製,PVA205)1.28gを純水1Lに溶解させた分散剤溶液とを添加し、さらに、消泡剤(株式会社アデカ製,アデカノールLG−126)を体積比で100倍に希釈した消泡剤希釈液10mLを添加することによって、銅塩溶液を調製した。
次に、調製した銅塩溶液を撹拌しながら60℃で保持し、そこへ、アスコルビン酸(和光純薬工業株式会社製)881gを純水2Lに溶解させて60℃に加熱した還元剤溶液を投入し、60℃で3時間撹拌しながら保持した。
次に、撹拌保持が終了した後の反応液(銅粒子スラリー)に、硝酸銀(和光純薬工業株式会社製)20.1gを溶解させた純水200mLを添加し、40℃で1時間撹拌しながら保持した。
撹拌終了後、得られた銀コート銅粒子スラリーを、吸引濾過機を使用して濾過し、銀コート銅粒子を固液分離した。続いて、回収した銀コート銅粒子を純水2L中に投入し、そこへ、ステアリン酸エマルジョン(中京油脂株式会社製,セロゾール920)2.5gを添加して15分間撹拌した後、吸引濾過機で濾過して回収した。続いて、回収した銀コート銅粒子を純水2L中に投入し、15分間の撹拌による洗浄と吸引濾過機による濾過からなる操作を行った。その後、銀コート銅粒子をステンレスバット上に移し、真空乾燥機にて60℃で10時間乾燥して、銀コート銅粉を得た。
得られた銀コート銅粉は粒状の形状であった。また、銀の被覆量は、銀被覆した当該銀コート銅粉全体の質量100%に対して10質量%であった。
また、得られた銀コート銅粉のSEM観察像より300個以上の一次粒子の粒径を測長して粒子数で平均することで求めた平均粒径は1.95μmであり、一次粒子の粒径の標準偏差値を平均粒径で除した粒径の相対標準偏差値は0.18であった。また、銀コート銅粉を構成する銅粒子の結晶子径は160nmであり、結晶子径/平均粒径で表される値は0.08であった。
さらに、得られた銀コート銅粉の0.5%重量増加温度は310℃であり、300℃を超えるものとなり、耐酸化性が良好であった。また、得られた銀コート銅粉の炭素含有量は0.31質量%であった。
[比較例1]
銅塩溶液、還元剤水溶液、保持時間中の反応液の温度を、それぞれ40℃としたこと以外は、実施例2と同様にして銀コート銅粉を製造した。
図3は、この比較例1で得られた銅粉のSEM観察写真である。図3のSEM写真から分かるように、得られた銀コート銅粉は粒状の形状であった。また、銀の被覆量は、銀被覆した当該銀コート銅粉全体の質量100%に対して10質量%であった。
また、そのSEM像より300個以上の一次粒子の粒径を測長して粒子数で平均することで求めた平均粒径は1.77μmであり、一次粒子の粒径の標準偏差値を平均粒径で除した粒径の相対標準偏差値は0.26であった。また、銀コート銅粉を構成する銅粒子の結晶子径は95nmであり、結晶子径/平均粒径で表される値は0.05であった。
得られた銀コート銅粉の0.5%重量増加温度は265℃であり、耐酸化性の劣るものであった。また、得られた銀コート銅粉の炭素含有量は0.24質量%であった。

Claims (23)

  1. 表面に銀が被覆された銅粒子により構成される銀コート銅粉であって、
    走査型電子顕微鏡により測定される当該銀コート銅粉の一次粒子の平均粒径が0.1μm以上3.0μm以下であり、
    当該銀コート銅粉の一次粒子の粒径の標準偏差値を、前記平均粒径で除した値である粒径の相対標準偏差値が0.3以下であり、
    前記銅粒子の結晶子径を前記平均粒径で除した値が0.07以上である
    銀コート銅粉。
  2. 前記銅粒子の結晶子径が、60nm以上である
    請求項1に記載の銀コート銅粉。
  3. 当該銀コート銅粉の形状が、粒状である
    請求項1又は2に記載の銀コート銅粉。
  4. 当該銀コート銅粉の炭素含有量が、0.05質量%以上0.5質量%以下である
    請求項1乃至3のいずれか1項に記載の銀コート銅粉。
  5. 熱分析装置を用いた測定による、大気中において室温から10℃/分の昇温速度で加熱したときの0.5%重量増加温度が300℃を超える
    請求項1乃至4のいずれか1項に記載の銀コート銅粉。
  6. 銀の被覆量が、銀被覆した当該銀コート銅粉全体の質量100%に対して5質量%以上40質量%以下である
    請求項1乃至5のいずれか1項に記載の銀コート銅粉。
  7. 請求項1乃至6のいずれかに記載の銅粉と、樹脂と、溶媒とを混練してなる
    導電性ペースト。
  8. 銅化合物を含む溶液と、アルカリ金属の水酸化物を含む溶液と、分散剤を含む溶液とを混合して銅塩溶液を作製する銅塩溶液作製工程と、
    前記銅塩溶液と還元剤溶液とを混合して銅粒子を生成させる銅粒子生成工程と、
    得られた銅粒子の表面に銀を被覆する銀被覆工程と
    を有し、
    前記銅粒子生成工程では、前記銅塩溶液及び前記還元剤溶液の温度を50℃以上90℃以下の範囲として、該銅塩溶液へ該還元剤溶液を添加することによって混合する
    銀コート銅粉の製造方法。
  9. 前記銅塩溶液作製工程では、前記分散剤の添加量を、前記銅化合物中の銅量に対して0.01質量%以上10質量%以下の範囲とする
    請求項8に記載の銀コート銅粉の製造方法。
  10. 前記分散剤が、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン、変性シリコーンオイル系界面活性剤、及びポリエーテル系界面活性剤から選択される少なくとも1種である
    請求項8又は9に記載の銀コート銅粉の製造方法。
  11. 前記銅化合物は、硫酸銅五水和物である
    請求項8乃至10のいずれか1項に記載の銀コート銅粉の製造方法。
  12. 前記アルカリ金属の水酸化物は、水酸化ナトリウムである
    請求項8乃至11のいずれか1項に記載の銀コート銅粉の製造方法。
  13. 前記銅粒子生成工程では、前記還元剤の添加量を、前記銅化合物中の銅量に対して1当量以上7当量以下とする
    請求項8乃至12のいずれか1項に記載の銀コート銅粉の製造方法。
  14. 前記還元剤は、アスコルビン酸である
    請求項8乃至13のいずれか1項に記載の銀コート銅粉の製造方法。
  15. 前記銀被覆工程では、前記銅粒子への銀の被覆量が、銀被覆して得られる銀コート銅粉全体の質量100%に対して1質量%以上40質量%以下となるようにする
    請求項8乃至14のいずれか1項に記載の銀コート銅粉の製造方法。
  16. 前記銀被覆工程では、前記銅粒子生成工程にて得られた前記銅粒子を含むスラリーを濾過し、銀塩溶液中の該銅粒子を分散させる
    請求項8乃至15のいずれか1項に記載の銀コート銅粉の製造方法。
  17. 前記銀被覆工程では、前記銅粒子生成工程にて得られた前記銅粒子を含むスラリーに、銀塩溶液を添加する
    請求項8乃至15のいずれか1項に記載の銀コート銅粉の製造方法。
  18. 前記銀被覆工程では、前記銀塩溶液中の銀塩として、硝酸銀、酸化銀、炭酸銀、硫酸銀、及び酢酸銀から選択される少なくとも1種を用いる
    請求項16又は17に記載の銀コート銅粉の製造方法。
  19. 前記銀コート銅粉は、該銀コート銅粉を構成する銅粒子の結晶子径を、該銀コート銅粉を走査型電子顕微鏡により測定される一次粒子の平均粒径で除した値が0.07以上である
    請求項8乃至18のいずれか1項に記載の銀コート銅粉の製造方法。
  20. 前記銀コート銅粉は、該銀コート銅粉を構成する銅粒子の結晶子径が60nm以上である
    請求項19に記載の銀コート銅粉の製造方法。
  21. 前記銀コート銅粉は、該銀コート銅粉の一次粒子の粒径の標準偏差値を、該銀コート銅粉の前記平均粒径で除した値である粒径の相対標準偏差値が0.3以下である
    請求項19又は20に記載の銀コート銅粉の製造方法。
  22. 前記銀コート銅粉は、炭素含有量が0.05質量%以上0.5質量%以下である
    請求項19乃至21のいずれか1項に記載の銀コート銅粉の製造方法。
  23. 請求項1乃至7のいずれかに記載の銀コート銅粉と、樹脂と、溶媒とを混練することによって製造する
    導電性ペーストの製造方法。
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