JP2012223792A - 原子拡散接合方法及び前記方法で封止されたパッケージ型電子部品 - Google Patents

原子拡散接合方法及び前記方法で封止されたパッケージ型電子部品 Download PDF

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Abstract

【課題】異種材質間の接合を含む広範な材質間の接合に使用することができ,かつ,接合対象とする基体に物理的なダメージを与えることなく大気圧下で接合を行うことができる接合方法を提供する。
【解決手段】真空容器内において,平滑面を有する2つの基体それぞれの前記平滑面に,単金属又は合金から成る微結晶構造の薄膜を形成する。その後,大気圧の高純度不活性ガス雰囲気下で前記2つの基体に形成された前記薄膜同士が接触するように前記2つの基体を重ね合わせることにより前記微結晶薄膜の接合界面及び結晶粒界に原子拡散を生じさせて前記2つの基体を接合する。
【選択図】図1

Description

本発明は原子拡散接合方法に関し,より詳細には,例えばIC基板の積層化やパッケージの封止,各種デバイスの複合化等,被接合材である2つの基体間を強固に接合する際に使用される接合方法において,少なくとも一方の基体の接合面に形成された微結晶薄膜を介して2つの基体を接合することにより,接合界面および結晶粒界において原子拡散を生じさせることにより基体間を接合する新規な接合方法に関する。
なお,本発明における「微結晶」には「多結晶」の他,「アモルファス」を含む。
また,本発明における「薄膜」には,連続した膜の他,核成長の過程において形成される島状構造のように断続部分を有するものも含む。
更に本発明における「結晶粒界」とは原子配列の規則性の断続部分を言い,多結晶における結晶粒の境界(一般的な意味での「結晶粒界」)の他,長距離秩序(数10原子程度以上の原子集団における配列の規則性)を有しないが,短距離秩序(数10原子以下の原子集団における配列の規則性)を有する前述のアモルファスにあっては,この「短距離秩序」の断続部分が本発明における「結晶粒界」であると共に,アモルファス金属膜中に空隙があり,体積率(充填率)が100%よりも低い場合,その空隙とアモルファス金属の界面も,高い原子拡散係数を有すると考えられることから,上述の短距離秩序の断続部分と同様に本発明における「結晶粒界」に相当する。
2つ以上の被接合材を貼り合わせる接合技術が各種の分野において利用されており,例えば電子部品の分野において,ウエハのボンディング,パッケージの封止等においてこのような接合技術が利用されている。
一例として,前述のウエハボンディング技術を例にとり説明すれば,従来の一般的なウエハボンディング技術では,重ね合わせたウエハ間に高圧,高熱を加えて接合する方法が一般的である。
しかし,この方法による接合では,熱や圧力に弱い電子デバイス等が形成された基板の接合や集積化を行うことができず,そのため,このような物理的なダメージを与えることなく被接合材相互を接合する技術が要望されている。
このように,被接合材間を常温,無加圧で接合する技術としては,被接合材の接合面のそれぞれに対し,いずれも希ガス等のイオンビームを照射して接合面における酸化物や有機物等を除去することで,接合面表面の原子を,化学的結合を形成し易い活性な状態(活性化)とし,この状態において被接合材の接合面相互を重ね合わせることにより,加熱することなく,かつ,接着剤等を使用することなしに常温での接合を可能とする「常温接合法」が,例えばシリコンウエハ等の接合方法として提案されている(特許文献1参照)。
しかし,上記特許文献1に記載の方法では,被接合材の接合面に対して希ガスビームなどを照射して接合面を洗浄して活性な状態とした後,両接合面を接合することにより強固な接合力を得ることができるものの,接合できる材料が一部の金属と金属,一部の金属と化合物間に限定されており,用途が限定される。
また,前記方法により接合を行う場合,接合面は巨視的には接合がされていたとしても,接合面の粗さやうねり等によって微視的には接合されていない部分が存在し,ウエハレベルでの積層化,集積化のための接合に使用することができない。
このように,部分的に接合されていない部分が発生することを防止するために,接合面を研磨等してその表面粗さを抑制することも考えられるが,研磨によって抑制し得る接合面の粗さやうねりには限度がある。
そのため,上記従来の常温接合方法により,接合されない部分の発生を減少しようとすれば,被接合材相互を重合する際に加圧して圧着する等の処理を行う必要があり,被接合材に物理的なダメージを与えるおそれがある。
なお,上記方法による接合では,両基体の表面を前述のように活性化させることで,接触界面においてのみ原子間に金属又は化学結合を生じさせるものであり,接合界面や結晶粒界におけるダイナミックな原子拡散を伴うものではない。
そのため,接着自体は比較的強固に行うことはできるものの,両基体の接合部分には依然として接合界面が存在し,また,接合に際して接合界面に酸化被膜等の変質層が形成されることにより,例えば電子デバイス等として使用する際,このような接合界面や変質層が電子の通過を妨げる障壁等として作用する等,性能の低下をもたらすものとなっている。
このような特許文献1に記載の常温接合方法における欠点を解消するために,本発明の発明者は,接合対象とするウエハやチップ,基板やパッケージ,その他の各種被接合材のそれぞれの接合面に,到達圧力を1×10-4Pa以下の高真空度とした真空雰囲気において,例えばスパッタリングやイオンプレーティング等の真空成膜方法により,かつ,好ましくはプラズマの発生下で金属や各種化合物の微結晶構造を有する薄膜を接合面に形成し,前記薄膜の成膜中,あるいは成膜後に前記真空を維持したまま,前記被接合材の前記接合面に形成された薄膜相互を常温で重合することにより,前記接合面間に生じた結合により前記被接合材間を接合する「常温接合方法」を既に提案している(特許文献2参照)。
そして,この常温接合方法によれば,同種又は異種薄膜の接合面を,加熱,加圧,電圧の印加等を伴うことなく原子レベルで金属結合あるいは分子間結合により強固に接合させることができると共に,薄膜の内部応力を開放して接合歪みを緩和させることができ,ここで得られる接合は,界面で剥離が生じない(無理に剥離しようとすると薄膜の界面以外の部分又は被接合材が破壊する)接合状態が得られるものとなっている(特許文献2「0021」欄)。
特許第2791429号公報 特開2008−207221号公報
上記従来の常温接合方法のうち,特許文献1に記載の方法は,被接合材の接合面に対して希ガスビームなどを照射して接合面に存在する酸化物や有機物等を除去して活性な状態とした後,両接合面を重ね合わせることにより接合を行おうというものである。
そのため,前掲の特許文献1に記載の発明では,真空チャンバー内に対向して位置する一対のウエハ保持部材を配置し,一方のウエハ保持部材を真空チャンバーに固定すると共に,他方のウエハ保持部材を真空チャンバーの気密を保った状態で直線移動可能なプッシュロッドの下端に取り付け,希ガスビームの照射を行ったと同一の真空容器内で接合面の重ね合わせを行うことにより(特許文献1「0005」欄),希ガスビームの照射などによって活性な状態となった接合面が,再度空気中の酸素や有機物等と結合して活性を失わないようにしつつ,接合を行うことができるようにしている。
また,特許文献2に記載の常温接合方法においても,被接合材の接合面間の重ね合わせを成膜と共に同一の真空中で行うことを前提としているだけでなく(例えば特許文献2の請求項1),同一の真空中において接合を行う場合であっても「薄膜の表面が真空容器内に残留している不純物ガス等との反応によって汚染が進行するに従い,薄膜相互の付着強度は低下してゆき,やがて接合自体ができなくなる。」と説明する(特許文献2「0055」欄)。
このように従来の常温接合方法では,接合面の処理(希ガスビームによる洗浄,又は微結晶構造の薄膜形成)を行った後に,これに続き行う接合面の重ね合わせは,接合面の処理を行ったと同一の真空容器内で,かつ,この真空容器内を高真空の状態に維持したまま行わなければならず,例えば,希ガスビームによる洗浄や微結晶薄膜を形成した後の接合面を大気圧の雰囲気に暴露してしまえば,接合自体が不可能となるというのが,本発明の発明者を含めた本発明の技術分野における当業者の認識であり,この認識を前提として,接合面の重ね合わせを高真空の空間内において行う構成を採用している。
そのため,被接合材の接合面を重ね合わせる作業を高真空に維持された真空容器内という限定された空間,限定された条件下で行う必要があると考えられており,被接合材同士を重ね合わせる作業が極めて行い難いだけでなく,前記接合方法を実現するためには真空容器内を高真空に保ったまま,真空容器内に配置された被接合材の接合面を重ね合わせる作業を行うための特殊な構造を備えたロボットアームや治具,その他の貼着装置が必要となり,多大な初期投資を必要とする。
また,上記の方法により例えば電子部品のパッケージ等を行う場合には,封止後のパッケージ内も真空となり,内部に大気圧に近い圧力の不活性ガスを封入するといった構造との両立を図ることはできないものと考えられていた。
以上のような当業者の認識に拘わらず,本発明の発明者による研究の結果,特許文献2として説明したと同様の原子拡散を伴う常温接合方法において,所定の条件を満たすことにより,接合面同士の重ね合わせを前掲の特許文献2で記載されている真空(1×10-4Pa)よりも高い低真空の圧力,乃至は大気圧下の雰囲気に暴露した後であっても,特許文献2に記載のように真空中で接合を行った場合と同様,接合界面における原子拡散を伴う接合が可能であることを見出した。
本発明は,発明者による上記研究の結果得られた知見に基づき成されたものであり,被接合材の接合面に対する微結晶薄膜の形成を真空下で行った後,前掲の1×10-4Paよりも高い圧力(低真空度),例えば大気圧下において前記接合面間の重ね合わせを行うことによっても,異種材質間の接合を含む広範な材質間の接合に使用することができ,かつ,接合対象とする基体に物理的なダメージを与えることなく接合を行う,原子拡散を伴う接合方法(原子拡散接合方法)を提供することにより,このような原子拡散を伴う接合の作業性を向上させると共に,重ね合わせ作業を行うための特殊な構造を備えた真空装置や貼着装置を不要とすることを目的とする。
また,本発明は,このような大気圧下における接合を可能とすることで,原子拡散を伴う強固な接合が行われるものでありながら,例えばパッケージ内を真空とすることなく大気圧に近い圧力の不活性ガスが封止されたMEMS等のパッケージ型電子部品を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために,本発明の原子拡散接合方法は,
真空容器内において,平滑面を有する2つの基体それぞれの前記平滑面に,単金属あるいは合金から成る微結晶構造の薄膜(以下,「微結晶薄膜」と略称する。)を形成すると共に,1×10-4Paを越える圧力の不活性ガス雰囲気下において,前記2つの基体に形成された前記微結晶薄膜同士が接触するように前記2つの基体を重ね合わせることにより,前記微結晶薄膜の接合界面及び結晶粒界に原子拡散を生じさせて前記2つの基体を接合することを特徴とする(請求項1)。
また,本発明の別の原子拡散接合方法は,
真空容器内において,一方の基体の平滑面に,単金属あるいは合金から成る微結晶薄膜を形成すると共に,1×10-4Paを越える圧力の不活性ガス雰囲気下において,少なくとも表面が微結晶構造を有する平滑面を備えた他方の基体の平滑面に前記一方の基体に形成された前記微結晶薄膜が接触するように前記一方,他方の2つの基体を重ね合わせることにより,前記微結晶薄膜と前記他方の基体の前記平滑面との接合界面及び結晶粒界に原子拡散を生じさせることにより前記2つの基体を接合することを特徴とする(請求項2)。
なお,本発明における不活性ガスには,狭義の不活性ガス,すなわちヘリウム(He),ネオン(Ne),アルゴン(Ar),クリプトン(Kr),キセノン(Xe)の他,窒素ガス(N2),メタン(CH4),二酸化炭素(CO2),一酸化炭素(CO)のように,化学反応を起こしにくい広義の不活性ガスを含む。
上記いずれの方法においても,前記微結晶薄膜を室温における体拡散係数が1×10-55(m2/s)未満,又は,室温における酸化物の生成自由エネルギーが−330(kJ/mol of compounds)未満のものを使用することができ(請求項3),この条件より外れる単金属としては,Ni,Cu,Zn,Pd,Ag,Pt,Auがある。
前記微結晶薄膜は,室温における体拡散係数が1×10−110m2/s以上の材料,例えば,6.7×10−110m2/sのタングステン(W)以上の体拡散係数の材料によって形成することができる(請求項4)。
また,前記基体の重ね合わせは,大気圧以上の圧力の不活性ガス雰囲気下で行うものとしても良い(請求項5)。
前記いずれの方法においても,前記不活性ガスとして,アルゴン,ヘリウム,ネオン,クリプトン,キセノン,窒素,メタンの群から選択されたいずれか1種のガス,あるいは,前記群のガスから選択された2種以上のガスの混合ガスを使用することができる(請求項6)。
前述の不活性ガス雰囲気の生成は,前記基体の重ね合わせを行う空間に,不純物濃度が1ppm以下の不活性ガスを供給するガス源(例えばガスボンベ)からのガスを単独で又は混合して導入することによりガス置換し行うことができる(請求項7)。
このとき,前記ガス源からの不活性ガスに純化器を通過させて不純物を除去した後,前記基体の重ね合わせを行う空間に導入するものとしても良い(請求項8)。
なお,前記不活性ガス雰囲気を窒素ガス,あるいは,窒素ガスと他の不活性ガスとの混合ガスにより形成する場合には,前記微結晶薄膜を,室温における窒化物の生成自由エネルギーが−310(kJ/mol of compounds)以上の単金属あるいは合金で形成するものとしても良い(請求項9)。
前記基体の重ね合わせは塵埃の除去された雰囲気下で行うことが好ましい(請求項10)。
また,前記基体を重ね合わせる力の強さが101kPa以下,例えば数kPa程度の比較的弱い力によって行うことができる(請求項11)。もっとも,このことは基体等に対してダメージを与えない程度の力で加圧を行うことを禁ずるものではない。
また,上記基体を重ね合わせる際の前記基体温度を室温以上400℃以下の範囲で加熱して体拡散係数を上昇させることもできる(請求項12)。
前記基体の加熱は,前記微結晶薄膜の形成材料の室温における体拡散係数が1×10-40m2/s以下の場合に行うものとしても良い(請求項13)。
なお,前記基体の重ね合わせは,前記基体を加熱することなく行うものとしても良い(請求項14)。
前記微結晶薄膜の形成と,前記基体の重ね合わせは,同一あるいは隣接する真空容器中で行うことができる(請求項15)。
また,前記微結晶薄膜の形成は,到達真空圧力が1×10-4Pa〜1×10-8Paの真空容器内で行うことができる(請求項16)。
前記微結晶薄膜は,Al,Si,Ti,V,Cr,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Zr,Nb,Mo,Ru,Rh,Pd,Ag,In,Sn,Hf,Ta,Pt,Au,Wの元素群より選択されたいずれか1つの単金属により形成し,又は前記元素群より選択された1つ以上の元素を含む合金により形成することができる(請求項17)。
前記微結晶薄膜を形成する前に,前記微結晶薄膜の形成と同一真空中において,前記微結晶薄膜の形成を行う基体の平滑面に生じている変質層を除去することができる(請求項18)。
前記微結晶薄膜が形成される前記基体の平滑面に,前記微結晶薄膜とは異なる材料の薄膜から成る下地層を1層以上形成し,当該下地層上に前記微結晶薄膜を形成するようにしても良い(請求項19)。
前記下地層は,Ti,V,Cr,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta,Wの元素群より選択されたいずれか1つの単金属により形成し,又は前記元素群より選択された1つ以上の元素を含む合金により形成することができる(請求項20)。
特に,前記下地層を形成する前記単金属又は合金として,当該下地層上に形成される微結晶薄膜を形成する単金属又は合金よりも高融点で,且つ,前記微結晶薄膜を形成する単金属又は合金に対して融点の差が大きいものを使用することが好ましい(請求項21)。
前記微結晶薄膜の好ましい膜厚は,0.1nm〜1μmである(請求項22)。
また,本発明のパッケージ型電子部品は,前述したいずれかの方法により原子拡散を伴うパッケージの接合を行うことにより,内部に1×10−4Paを越える圧力,好ましくは大気圧に近い圧力の不活性ガスを封止したことを特徴とする(請求項23)。
以上説明した本発明の構成により,本発明の原子拡散接合方法によれば,以下の顕著な効果を得ることができる。
前述した微結晶構造の薄膜が形成された一方の基体の平坦面を,同様に微結晶構造を有する平坦面を備えた他方の基体に不活性ガス雰囲気下で重ね合わせることで,両者の重ね合わせを1×10-4Paを越える圧力の雰囲気下という比較的低真空度の空間や,大気圧(1気圧),更には大気圧を越える圧力の雰囲気下で行った場合においても,接合界面及び結晶粒界に原子拡散を生じさせて,これにより同種又は異種の微結晶薄膜の接合面間,又は微結晶薄膜と基体の平滑面間を,原子レベルで金属結合あるいは分子間結合により強固に接合させることができると共に,薄膜の内部応力を開放して接合歪みを緩和させること可能となる。なお,ここで得られる接合は,界面で剥離が生じない(無理に剥離しようとすると薄膜の界面以外の部分又は基体が破壊する)接合状態である。
その結果,基体同士の接合を,高真空に維持された真空容器内で行う必要がなく,接合条件の自由度が増す結果,原子拡散による接合を行う際の作業性を大幅に改善することが可能となる。
なお,後述するように原子拡散は体拡散係数の値が大きくなる程,顕著に生じるところ,本発明の方法では,室温における体拡散係数が単金属中で最も低いタングステン(W)によって微結晶薄膜を形成することによっても接合できることが確認されていることから,微結晶薄膜を,タングステン(W)の室温における体拡散係数である1×10-110(m2/s)以上の材料,従って如何なる金属材料で形成した場合であっても,接合が可能である。
上記原子拡散接合方法は,基体の重ね合わせを大気圧(1気圧)以上の圧力の雰囲気下で行った場合であっても可能であり,接合に必要な条件の選択の幅が広い。
また,不活性ガスとして,アルゴン,ヘリウム,ネオン,クリプトン,キセノン,窒素,メタンの群から選択されたいずれか1種のガス,あるいは,前記群のガスから選択された2種以上のガスの混合ガスのいずれを使用することも可能であり,目的や用途等にあわせた選択の幅が広い。
前述の不活性ガス雰囲気を,前記基体の重ね合わせを行う空間に,不純物濃度が1ppm以下の高純度不活性ガスを供給するガス源(例えばG1グレードガスのボンベ)からのガスを単独で又は混合して導入してガス置換を行うことにより生成することで,接合不良の原因となり得る酸素や水等の不純物濃度を数ppm(1万分の数%)以下,好ましくは1ppm(0.0001%)以下の極めて微小なものとすることができ,接合不良の発生を減少させることが可能となる。
特に,前述したガス源からの不活性ガスを更に純化器を通過させて不純物を除去した場合には,基体の重ね合わせを行う空間の不活性ガス中における酸素や水等の不純物濃度を,更に数ppb(1千万分の数%),例えば2〜3ppb程度迄減少させた超高純度の不活性ガスとすることができ,原子拡散を伴う接合をより確実に行うことが可能となる。
なお,不活性ガスとして窒素ガス,又は窒素ガスと他の不活性ガスとの混合ガスを使用する場合,微結晶薄膜を窒化物の生成自由エネルギーが−310(kJ/mol of compounds)以上の単金属あるいは合金で形成することにより,微結晶薄膜の窒化に伴う接合不良の発生を確実に防止することが可能となる。
更に,上記基体の重ね合わせを,塵埃の除去された雰囲気下で行うことにより,接合面に塵埃等の不純物が介在することによる接合不良を防止することができる。一例として,この空間のクリーン度としては,ISOクラス5(1988年米国連邦規格におけるクラス100に相当。1立法フィートの空間中における0.5μm以上の粒子数が100個未満。)以上であることが好ましく,より好適には,雰囲気中の湿度も調整(一例として50%以下)することが好ましい。
本発明の原子拡散接合方法によれば,基体の重ね合わせに際し,大きな圧力を加えることを必要とせず,前記基体を重ね合わせる力の強さを101kPa以下,例えば数kPa程度の圧力で重ね合わせた場合であっても好適に接合を行うことが可能である。その結果,接合の際に加わる圧力によって基体がダメージを受けることが好適に防止できる。
なお,前記貼り合わせは,前記基体温度を室温以上,400℃以下という比較的低い温度で加熱して行うことにより,被接合部材に多与える熱によるダメージを可及的に低く抑えたものとしながら,体拡散係数を上昇させることにより,原子拡散を促進させた接合を実現することができる。
特に,前記基体の加熱を,前記微結晶薄膜の形成材料の室温における体拡散係数が1×10-40m2/s以下の場合に行うことで,室温における体拡散係数が比較的低い材質で微結晶薄膜を形成した場合であっても,好適に原子拡散を伴う接合を行うことが可能となる。
ここで,体拡散係数Dは,
D=D0exp(−Q/RT)
0:振動数項(エントロピー項)
Q:活性化エネルギー
R:気体定数
T:絶対温度
によって表すことができ,温度Tを上昇させると,体拡散係数Dは指数関数的に増加する。
もっとも,基体を加熱することなく前記接合を行う場合には,基体や基体に取り付けられた部材,例えば電子部品等に対し,熱による一切の負担を与えることが無い。
前記微結晶薄膜の形成と,前記基体の重ね合わせを同一の容器中で行う場合には,設備の簡略化が可能であり,隣接する容器中で行う場合には,例えば真空容器内で前記微結晶薄膜を形成した電子部品のパッケージに,前記容器に隣接する容器内に配置したデバイス等を封止することで,デバイスを真空中に配置する必要が無く,耐真空性を持たないデバイス等についても原子拡散を伴う強固な接合によるパッケージング等を行うことが可能となる。
到達真空圧力が1×10-4Pa〜1×10-8Paの真空容器内で前記微結晶薄膜の形成を行うことで,基体に対する微結晶薄膜の付着強度が低下することを防止でき,微結晶薄膜の接合界面における剥離のみならず,基体と微結晶薄膜間での剥離の発生等についても好適に防止することができる。
前記微結晶薄膜を,Al,Si,Ti,V,Cr,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Zr,Nb,Mo,Ru,Rh,Pd,Ag,In,Sn,Hf,Ta,Pt,Au,Wの元素群より選択されたいずれか1つの単金属により形成し,又は前記元素群より選択された1つ以上の元素を含む合金により形成した場合であっても,本発明の方法による原子拡散接合を行うことが可能である。
上記微結晶薄膜を形成する前に,微結晶薄膜の形成と同一真空中において上記一方又は双方の基体の平滑面表面に形成されている変質層を逆スパッタリング等のドライプロセスにより除去することで,基体に対する微結晶薄膜の付着強度を向上させることができ,基体表面と微結晶薄膜間で剥離が生じることによる基体同士の付着強度の低下についても好適に防止することができる。
また,前記微結晶薄膜が形成される前記基体の平滑面に,前記微結晶薄膜とは異なる材料の薄膜,例えば周期律表における4A〜6A属の元素であるTi,V,Cr,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta,Wの元素群より選択されたいずれか1つの単金属の薄膜,又は前記元素群より選択された1つ以上の元素を含む合金の薄膜によって下地層を形成することにより,基体に対する微結晶薄膜の付着強度を上昇させることができ,これにより基体と微結晶薄膜間で剥離が生じることを防止することができる。
特に,このような下地層の形成材料として,微結晶薄膜の形成材料に対して高融点であり,且つ,その融点の差が大きいものを使用することで,下地層上に形成される微結晶薄膜の2次元性(薄膜成長時の原子の濡れ性)が良くなり,微結晶薄膜が島状に成長することを防止でき,0.1nmといった1原子層分の厚みに相当する極めて薄い微結晶薄膜の形成が容易となる。
なお,本発明の原子拡散接合方法では,形成する微結晶薄膜の膜厚がそれぞれ0.1nm〜1μmの範囲で好適に原子拡散接合が可能であり,特に,電子やスピン電流の平均自由工程よりも十分に薄い数Å程度の膜厚の微結晶薄膜の形成によっても接合を行うことができることから,シリコンウエハ等の接合に用いた場合であっても,接合面によって電子の移動等が妨げられない接合方法を提供することが可能となる。
また,上記方法により,1×10-4Paを越える圧力の不活性ガス雰囲気における接合を行うことから,例えばこれをパッケージ型電子部品におけるパッケージの封止に使用する場合には,このパッケージ内にデバイス等と共に1×10-4Paを越える圧力,たとえば大気圧乃至はこれに近い圧力の不活性ガスを封止することも可能である。
本発明の原子拡散接合方法による基体の接合工程の一例を示した概略説明図。 Ti/Ti薄膜(片側20nm)の形成により0.1気圧の超高純度Arガス中で接合したSi/Siウエハの断面透過電子顕微鏡(TEM)像(実施例6)。 Ti/Ti薄膜(片側20nm)の形成により1×10-6Pa以下の高真空中で接合したSi/Siウエハの断面透過電子顕微鏡(TEM)像(比較例1)。 Ta/Ta薄膜(片側20nm)の形成により0.1気圧の超高純度Arガス中で接合したSi/Siウエハの断面透過電子顕微鏡(TEM)像(実施例9)。 Ta/Ta薄膜(片側20nm)の形成により1×10-6Pa以下の高真空中で接合したSi/Siウエハの断面透過電子顕微鏡(TEM)像(比較例2)。 Ti/Ti薄膜(片側20nm)の形成により0.1気圧のG1−Arガス中で接合したSi/Siウエハの断面透過電子顕微鏡(TEM)像(実施例12)。 Ti/Ti薄膜(片側20nm)の形成により0.1気圧のG1−窒素ガス中で接合したSi/Siウエハの断面透過電子顕微鏡(TEM)像(実施例17)。
接合方法概略
本発明の原子拡散接合方法は,真空容器内においてスパッタリングやイオンプレーティング等の真空成膜により真空中で成膜した単金属,あるいは合金から成る微結晶構造の薄膜同士を重ね合わせることにより,又は,前記微結晶構造の薄膜と,少なくとも表面が単金属,あるいは合金から成る微結晶構造を有する平坦面に重ね合わせることにより,この重ね合わせを1×10-4Paを越える圧力の雰囲気下,例えば大気圧,乃至はそれ以上の圧力の雰囲気下で行った場合であっても,不活性ガス雰囲気下でこの接合を行うことにより,接合界面及び結晶粒界において原子拡散が生じて両者間で強固な接合が行われることを見出し,これを基体間の接合に適応したものであり,下記の条件において基体同士の接合を行うものである。
基体(被接合材)
材質
本発明の原子拡散接合方法による接合の対象である基体としては,スパッタリングやイオンプレーティング等,一例として到達真空度が1×10-3〜1×10-8Pa,好ましくは1×10-4〜1×10-8Paの高真空度である真空容器を用いた高真空度雰囲気における真空成膜により前述した微結晶構造の薄膜を形成可能な材質であれば如何なるものをも対象とすることができ,各種の純金属,合金の他,Si基板,SiO2基板等の半導体,ガラス,セラミックス,樹脂,酸化物等であって前記方法による微結晶構造の薄膜が形成可能であれば本発明における基体(被接合材)とすることができる。
なお,基体は,例えば金属同士の接合のように同一材質間の接合のみならず,金属とセラミックス等のように,異種材質間での接合を行うことも可能である。
接合面の状態等
基体の形状は特に限定されず,例えば平板状のものから各種の複雑な立体形状のもの迄,その用途,目的に応じて各種の形状のものを対象とすることができるが,他方の基体との接合が行われる部分(接合面)については所定の精度で平滑に形成された平滑面を備えていることが必要である。
なお,他の基体との接合が行われるこの平滑面は,1つの基体に複数設けることにより,1つの基体に対して複数の基体を接合するものとしても良い。
この接合面の表面粗さは,パッケージの封止等,単に接合が得られるのみで目的が達成される場合には,例えば最大高さ(Rmax)で5nmを越える表面粗さ(例えば50nm以下)であっても接合を行うことができるが,好ましくはRmaxで5nm以下である。
基体の平滑面は,微結晶薄膜を形成する前に表面のガス吸着層や自然酸化層等の変質層が除去されていることが好ましく,例えば薬液による洗浄等による既知のウェットプロセスによって前述の変質層を除去し,また,前記変質層の除去後,再度のガス吸着等を防止するために水素終端化等が行われた基体を好適に使用することができる。
また,変質層の除去は前述のウェットプロセスに限定されず,ドライプロセスによって行うこともでき,真空容器中における希ガスイオンのボンバード等によりガス吸着層や自然酸化層などの変質層を逆スパッタリング等によって除去することもできる。
特に,前述のようなドライプロセスによって変質層を除去する場合,変質層を除去した後,後述の微結晶構造を有する薄膜を形成する迄の間に,基体表面にガス吸着や酸化が生じることを防止できるために,このような変質層の除去を,後述する微結晶構造の薄膜を形成すると同一の真空中において行うと共に,変質層の除去に続けて微結晶構造の薄膜を形成することが好ましく,より好ましくは,変質層の除去を超高純度の不活性ガスを使用して行い,変質層の除去後に酸化層等が再形成されることを防止する。
なお,基体は,単結晶,多結晶,アモルファス,ガラス状態等,その構造は特に限定されず各種構造のものを接合対象とすることが可能であるが,2つの基体の一方に対してのみ後述する微結晶構造の薄膜を形成し,他方の基体に対して微結晶構造の薄膜の形成を行うことなく両者の接合を行う場合には,この薄膜の形成を行わない他方の基体の接合面は,接合界面や結晶粒界における原子拡散を得ることができるよう,少なくともその表面が後述する微結晶構造の薄膜と同様の微結晶構造(アモルファスを含む)を有する必要がある。
微結晶薄膜
材質
形成する微結晶薄膜の材質としては,基体と同種材質の薄膜を形成しても良く,また,目的に応じて基体とは異種材質の微結晶薄膜を形成しても良く,さらに,基体の一方に形成する微結晶薄膜の材質と,基体の他方に形成する微結晶薄膜の材質とをそれぞれ異なる材質としても良く,両者間の固溶が可能な組合せのみならず,CoとCuのように非固溶となる組合せであっても良く,また,金属と半金属等,その組合せは目的に応じて適宜任意に行うことができる。
本発明の方法によれば,微結晶薄膜の材料として室温における体拡散係数が1×10-110m2/s以上のものであればいずれの材質で前記微結晶薄膜を形成した場合であっても接合を行うことができ,このような微結晶薄膜の材料として,Al,Si,Ti,V,Cr,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Zr,Nb,Mo,Ru,Rh,Pd,Ag,In,Sn,Hf,Ta,Pt,Au,Wの元素群の中から選択したいずれかの単金属,又はこれらの元素群のうちの少なくとも1つ以上の元素を含む合金を使用することができる。
なお,上記物質のうち室温における体拡散係数が1×10-55(m2/s)以上で,且つ,室温における酸化物の生成自由エネルギーが−330(kJ/mol of compounds)以上であるNi,Cu,Zn,Pd,Ag,Pt,Auの単金属,あるいは上記条件を満たす合金については,所定の条件を満たすことにより大気圧の空気中において接合を行った場合であっても原子拡散を伴う接合が可能であることから,不活性ガス雰囲気下での接合を必須とする本発明における微結晶薄膜の材質としては,上記大気中での接合が可能なものを除いた,室温における体拡散係数が1×10-55(m2/s)未満,又は,室温における酸化物の生成自由エネルギーが−330(kJ/mol of compounds)未満の単金属,あるいは合金を対象としても良い。
微結晶薄膜の構成材料のうち,室温における体拡散係数が1×10-40m2/s以上であるIn,Al,Zr,Ti等によって微結晶薄膜を形成する場合には,基体を加熱することなく室温において接合した場合であっても接合界面が消失すると共に,接合された微結晶薄膜間において再結晶が生じて2つの基体間の間隔の略全域に亘る粒径を備えた結晶粒が生成される等,金属結合による2つの微結晶薄膜の一体化を得ることができる。
もっとも,室温における体拡散係数が1×10-110m2/s以上の材質であれば,室温における体拡散係数が1×10-40m2/s未満の材質によって微結晶薄膜を形成した場合であっても接合界面における金属結合により基体間の十分な接合強度を得ることが可能であり,また,必要に応じて基体を400℃以下の温度範囲内で加熱して接合を行うことで,接合界面における原子拡散を促進させることができる。
なお,後述するように基体の重ね合わせを行う空間内における不活性ガス雰囲気が,窒素ガス乃至は窒素ガスと他の不活性ガスとの混合ガスである場合には,前述した微結晶薄膜の形成を,窒化物の生成自由エネルギーが−310(kJ/mol of compounds)以上の物質を使用することが好ましい。
膜厚等
形成する膜厚は特に限定されないが,それぞれの微結晶薄膜を,構成元素1層分の厚みで形成した場合であっても接合を行うことが可能であり,一例としてTiの微結晶薄膜を形成した後述する実施例では,膜厚0.1nm(2層で0.2nm)とした場合であっても接合可能であり,接合される基体間に介在する微結晶薄膜の厚さを,電子やスピン電流の平均自由工程以下の厚みで形成することが可能である。
その結果,基体間に介在する微結晶薄膜の層が電子の移動等に対して障壁となることがなく,任意のシリコンウエハを接合する等して新たな機能性デバイスの創成等に本発明の原子拡散接合方法を使用することが可能である。
なお,形成する微結晶薄膜は,接合面の全体を連続して覆うものである必要はなく,これを部分的に覆うものであっても良い。従って,ここでいう「微結晶薄膜」には,例えば核成長の過程において形成される島状構造の状態も含み,例えば島状構造の薄膜同士を重ね合わせて接合する場合には,一方の薄膜を構成する島と,他方の薄膜を構成する島との重なり部分において後述する原子拡散による接合が生じ,これにより接合が得られることとなる。
一方,膜厚が厚くなるに従って得られた微結晶薄膜の表面粗さが増大して接合が困難となると共に,厚みのある微結晶薄膜の形成には長時間を要し,生産性が低下することから,その上限は1μm程度であり,0.1nm〜1μm程度が本発明における原子拡散接合方法における各微結晶薄膜の好ましい膜厚の範囲である。
粒径及び密度
形成する微結晶薄膜は,同微結晶金属の固体内に比べて原子の拡散速度が大きく,特に,拡散速度が極めて大きくなる粒界の占める割合が大きい微結晶構造であることが好ましく,結晶粒の薄膜面内方向の平均粒径は50nm以下であれば良く,より好ましくは20nm以下である。
なお,微結晶薄膜は,前述したように島状構造のものであっても良いが,微結晶薄膜が占める空間の体積100%に対し,空隙等の形成部分を除く,微結晶薄膜を構成する金属が占める体積の割合が80%以上,好ましくは80〜98%となるよう形成することが好ましい。
微結晶薄膜の形成面
さらに,上記微結晶薄膜の形成は,接合対象とする2つの基体のそれぞれに形成しても良いが,一方の基体に対してのみ前記微結晶薄膜を形成し,他方の基体に対しては微結晶薄膜を形成することなく接合を得ることも可能である。
この場合,微結晶薄膜の形成を行わない上記他方の基体の接合面は,前述したように接合面の少なくとも表面付近が前述した微結晶薄膜と同様,単金属,あるいは合金の微結晶構造となっている必要がある。但し,薄膜の形成を行わない基体の接合面と微結晶薄膜の材質が共通である必要はない。
なお,微結晶薄膜の形成を行う基体の平滑面には,微結晶薄膜の形成前に,微結晶薄膜とは異なる材質の薄膜より成る1層以上の下地層を形成することができ,特に,形成する微結晶薄膜が,基体に対する付着強度が比較的弱い場合には,付着強度を向上する上で下地層の形成は有効である。
このような下地層は,微結晶薄膜の後述する成膜方法と同様の真空成膜技術によって形成することができ,その材質としては,周期律表の4A〜6A属の元素であるTi,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Mo,Wによって形成することができ,その厚さは,一例として0.2〜20nmである。
この下地層の材質としては,その上に形成する微結晶薄膜の形成材料に対して融点の差が大きいものを使用することが好ましく,かつ,微結晶構造の薄膜の形成材料に対して高融点のものを使用することが好ましい。
このような下地層の形成により微結晶薄膜が基体より剥離することを好適に防止できるだけでなく,下地層上に形成される微結晶薄膜の2次元性(微結晶薄膜形成時の原子の濡れ性)が良くなり成膜時に微結晶薄膜が島状に成長することを防止でき,0.1nmといった極めて薄い微結晶薄膜の形成が容易となる。
成膜方法
成膜技術
本発明の原子拡散接合方法において,被接合材である基体の接合面に形成する微結晶薄膜の形成方法としては,スパッタリングやイオンプレーティング等のPVDの他,CVD,各種蒸着等,到達真空度が1×10-4〜1×10-8Paの高真空度である真空容器において真空雰囲気における真空成膜を行う各種の成膜法を挙げることができ,拡散速度が比較的遅い材質及びその合金や化合物等については,好ましくは形成された薄膜の内部応力を高めることのできるプラズマの発生下で成膜を行う真空成膜方法,例えばスパッタリングによる成膜が好ましい。
真空度
薄膜形成の際の真空容器内の圧力は,到達真空度が1×10-3〜1×10-8Paの真空雰囲気であれば良く,より低い圧力(高真空度)である程好ましい。
不活性ガス(Arガス)圧
成膜方法がスパッタリングである場合,成膜時における不活性ガス(一般的にはArガス)の圧力は,放電可能な領域,例えば0.01Pa以上であることが好ましく,また30Pa(300μbar)を越えると接合を行うことができない場合が生じるため,上限は30Pa(300μbar)程度とすることが好ましい。これは,Arガス圧が上昇すると,形成された薄膜の表面粗さが増加すると共に,膜密度が著しく低下し,膜中の酸素等の不純物濃度が著しく増加する場合が生じるためである。
重ね合わせの条件
雰囲気の圧力
以上のようにして,表面に微結晶薄膜が形成された基体相互,又は微結晶薄膜が形成された基体と微結晶構造の基体表面とが,1×10-4Paを越える圧力の雰囲気下,例えば,大気圧,乃至はそれ以上の圧力雰囲気下において重ね合わされることにより,接合界面及び結晶粒界に原子拡散を生じさせて前記2つの基体の接合が行われる。
なお,基体同士の重ね合わせを行う空間内の圧力が大気圧よりも若干高くなるように不活性ガスを前記空間内に導入し続けることで,空間内に外気が入り込むことを防止できると共に,給気処理型のクリーンルームやグローブボックスと同様,内部空間を清浄な空間に保つことができる。
雰囲気の成分
2つの基体の重ね合わせは,不活性ガス雰囲気下において行い,このような不活性ガスとしては,狭義の不活性ガスであるアルゴン(Ar),ヘリウム(He),ネオン(Ne),クリプトン(Kr),キセノン(Xe)の他,化学反応を起こし難い窒素,メタン,二酸化炭素,及び一酸化炭素等の広義の不活性ガスを使用可能であり,これらの群から選択されたいずれか1種のガス,あるいは,前記群のガスから選択された2種以上のガスの混合ガスを使用することができる。
この不活性ガス雰囲気中における不活性ガス以外の成分(不純物)の濃度は,数ppm以下,好ましくは1ppm以下であることが好ましく,ガスボンベに封入した状態で提供される上記各種の高純度ガスを,基体の重ね合わせを行う空間内に導入して空間内のガス置換を行うことで,前述した不活性ガス雰囲気を生成する。
純度保証のされた高純度ガスボンベとして入手し得る所謂「G1」グレードの純ガスにおいて,アルゴンガスの純度は99.9999%以上(不純物濃度1ppm以下),窒素(N2)ガスで99.99995%以上(不純物濃度0.5ppm以下)であり,これらのガスをそのまま基体の重ね合わせを行う空間に導入してガス置換を行うことで,一般的なステンレスのガス配管系を用いてガスの導入を行うことにより配管内部に付着している吸着ガスの脱利等により不純物濃度が上昇したとしても,空間内の不純物濃度を数ppm以下,好ましくは1ppm程度又はそれ以下の高純度の不活性ガス雰囲気とすることができる。
なお,一般に「純窒素ガス」という場合の「純窒素」に対する「不純物」としては,窒素以外の成分,例えば,酸素や水の他,窒素以外の不活性ガスも不純物ということになるが,前述の窒素ガスに対し,アルゴンガス等の不活性ガスが不純物として含まれていたとしても,本発明における接合方法の実現に何等影響しないことから,本発明においては,不活性ガス以外の成分,主として酸素と水が「不純物」として問題となり,これらが数ppm以下,好ましくは1ppm以下となるように,接合を行う空間内の不活性ガス雰囲気を形成することが好ましい。
なお,純CO2ガスや純COガスとして提供されているガスにあっては,CO2やCOの酸素(O)が乖離して微結晶薄膜の表面に酸化物を形成する悪影響が考えられることから,例えば酸化しやすい材料で微結晶薄膜を形成する場合には,接合力の低下や接合不良が発生する可能性があること,また,純CO2ガスや純COガスにおける純度保証されたG1グレードのガスにおける不純物濃度は,他の純ガスに比較して1〜2桁大きくなっていることから,これらのガスを,重合を行う空間に直接導入しても,不活性ガス雰囲気,例えば不純物濃度が数ppm以下の不活性ガス雰囲気が得られないことから,これらのガスを不活性ガスとして使用する場合には,不純物濃度の調整が必要となる場合がある。
よって,好ましくは,先に例示した不活性ガスのうち,二酸化炭素と一酸化炭素を除いた,アルゴン(Ar),ヘリウム(He),ネオン(Ne),クリプトン(Kr),キセノン(Xe),窒素,メタンより選択したいずれか1種の不活性ガス又は複数種類の不活性ガスの混合ガスの使用が好ましい。
もっとも,このことは,本発明において不活性ガスとして二酸化炭素及び一酸化炭素の使用を否定するものではない。
なお,ガス源からの不活性ガスが不純物濃度の高いものである場合,又は,より高純度の不活性ガス雰囲気の形成が必要な場合には,ガス源から導入した不活性ガスを更に純化器を通して純化させた後に,基体の接合を行う前述の空間に導入するものとしても良い。
この場合,前記空間内における不活性ガス雰囲気中における不純物濃度を数ppb(1ppb=0.0001ppm)程度とした超高純度の不活性ガス雰囲気を生成しても良い。
微結晶薄膜形成後の経過時間
微結晶薄膜としてTi膜を形成した例では,Ti膜を1気圧(1×105Pa)の純Arガス雰囲気中に10分(600秒)間暴露した後に基体の重ね合わせを行った場合においても十分な接合力が得られることが確認されており,10分に対して十分に長い時間,大気圧の不活性ガス雰囲気中に暴露した後においても接合を行うことが可能である。
雰囲気の清浄度
基体の重ね合わせを行う雰囲気は,接合面に塵埃等が介在することによる接合不良を防止するために,塵埃の除去された空間内において行うことが好ましく,塵埃の除去されたグローブボックス等において行うことができる。
このような雰囲気の清浄度は,一例として,ISOクラス5(1988年米国連邦規格におけるクラス100に相当。1立法フィートの空間中における0.5μm以上粒子数が100個未満。)以上であることが好ましい。
接合時の温度条件
基体の接合は,これを室温において行っても良く,また,必要に応じて400℃以下の温度で加熱するものとしても良い。
特に,室温における体拡散係数が1×10-40(m2/s)以下の材料によって微結晶薄膜を形成した場合,接合に際し基体の加熱を行うことが好ましく,このような加熱は,微結晶薄膜を室温における体拡散係数が小さくなるに従い,加熱温度を高く設定することが好ましい。
接合方法例
本発明による原子拡散接合方法による接合工程の一例を,図1を参照して説明する。図1において,微結晶薄膜の形成を行う真空容器内の上部に,スパッタを行うためのマグネトロンカソードを配置すると共に,このマグネトロンカソードの下部に,相互に貼り合わされる基体を載置する治具を配置し,この治具に取り付けた基体の接合面に対して微結晶薄膜を形成する。
図示の実施形態において,前述の治具に設けられたテーブルは,図1中の紙面右側の図に破線で示す薄膜形成位置と,実線で示す貼り合わせ位置間を回動可能に構成されており,基体の一方を載置したテーブルの一端と,基体の他方を載置したテーブルの一端とが突き合わされた状態に配置されていると共に,この突き合わせ部分を中心として前記2つのテーブルが回動して,両テーブルの他端を上方に持ち上げることにより,前記テーブル上の載置された2つの基体の接合面が重合されるよう構成されている。
接合に際し,基体の加熱が必要となる体拡散係数,及び酸化物の生成自由エネルギーの数値範囲にある金属で微結晶構造の薄膜を形成して接合を行う場合には,前述のテーブル内に電熱ヒータ等を埋め込んでおき,これにより2つの基体の接合面を重合した後で所定の温度に加熱することができるようにしても良い。
なお,このように基体の貼り合わせを行う治具は,図示の構成のものに限定されず,貼り合わせを行う基体の形状等にあわせて各種形状,構造のものを使用することができ,また,例えばロボットアーム等によって基体の一方若しくは双方を操作して接合を行うものとしても良く,更には,人の手によって基体同士を重ね合わせるものとしても良い。
このような治具が収容された真空容器には,一例として図1に示すように不活性ガスを導入するためのガス源を連通しておき,内部空間を不活性ガスで置換できるようにしておくと共に,この真空容器の出入口と連通して,同様に不活性ガス源と連通されて不活性ガスによるガス置換が可能に形成されたグローブボックス等を設ける。
以上のように構成された装置構成において,前述した治具が配置された真空容器内を到達真空圧力1×10-4Pa〜1×10-8Paに減圧し,前記治具を前述した成膜位置とした状態で,基体の接合面に対して微結晶薄膜を形成する。
そして,基体の接合面に対して所定厚みの微結晶薄膜を形成すると,微結晶薄膜の形成を終了し,真空容器内に前述したガス源より不活性ガスを導入し,真空容器内の圧力を1×10-4Paを越える圧力,例えば大気圧,乃至は大気圧に対して若干高い圧力とする。
また,この真空容器の出入口と連通されているグローブボックス内も,同様の圧力となるように不活性ガスによる置換を行い,真空容器の出入口を開き,真空容器内より前述した治具と共に基体を取り出し,前記治具に設けられたテーブルを,前述した,貼り合わせ位置に回動させて,基体を101kPa以下,例えば数kPa程度の比較的弱い力で貼り合わせる。
これにより,両微結晶薄膜の接合界面及び結晶粒界において原子拡散を生じさせ,かつ,接合歪みを緩和させた接合を行うことができる。
なお,上記の説明では同一材質の微結晶薄膜が形成された基体相互を貼り合わせる場合について説明したが,異なる材質の微結晶薄膜が形成された基体相互を貼り合わせる場合には,例えば2つの真空容器の出入口間に前述したグローブボックスを設け,2つの真空容器内のそれぞれに,前述のマグネトロンカソードを配置して各真空容器内で異なる材質の微結晶薄膜を成膜可能と成すと共に,それぞれの基体の接合面に対してそれぞれ異なる材質の微結晶薄膜を形成した後に,各真空容器より取り出した基体を前述のグローブボックス内で重ね合わせることにより接合する等しても良い。
また,両基体に対する微結晶薄膜の形成は,必ずしも同時に行う必要はなく,時間差を以て行っても良い。
また,他方の基体の少なくとも表面部分が,前述した体拡散係数,及び酸化物の生成自由エネルギーの数値範囲にある単金属や合金による微結晶構造を有する場合には,接合対象とする2つの基体の一方に対してのみ前述の微結晶薄膜を形成し,他方の基体に対しては微結晶薄膜を形成することなく直接,両基体を接合することも可能である。
なお,図1を参照して説明した上記の接合例では,真空容器から取り出した基体をグローブボックス内で接合するものとして説明したが,成膜を行った真空容器内でそのまま接合を行うものとしても良く,この場合には必ずしもグローブボックスを設ける必要はない。
以下,本発明の原子拡散接合方法による基体の接合を行った実施例を以下に示す。
〔Arガス雰囲気での接合〕
実験方法
スパッタリング法による微結晶薄膜の形成後,直ちに,スパッタリングを行った真空容器内にArガスを導入して真空容器内を所定圧力の不活性ガス雰囲気として接合を実施した(実施例1〜12)。
比較例として,スパッタリング法による微結晶薄膜の形成後,真空容器内を高真空に維持したまま直ちに接合を実施した(比較例1,2)。
各実施例及び比較例における微結晶薄膜の材質,膜厚,接合対象とした基体,使用したArガス(Arガスの純度),真空容器内の圧力,薄膜形成後,薄膜がArガス雰囲気中に曝された時間(以下,「暴露時間」という。)をそれぞれ下記の表1に示す。
なお,下記表1の「Ar純度」において,「G1−Arガス」とは不純物濃度が1ppm以下であるG1グレードのArガスボンベから取り出したArガスを指し,「超高純度Arガス」とは,前記G1−Arガスを更に純化器に通し,不純物濃度を2〜3ppbに低下させたArガスを指す。
また,「暴露時間」は,容器内のArガス圧力が,接合を行う圧力に到達した後,接合迄の放置時間を示し,「暴露時間」の記載が無いものは,微結晶薄膜の形成後,接合圧力となった時点で直ちに接合を行っており,本試験例にあっては,微結晶薄膜の形成後,接合圧力迄の上昇に要した時間〔5分(300秒)〕の経過後,比較例にあっては,微結晶薄膜の形成後,直ちに接合を行ったことを示す。
実験結果
膜厚の変化に伴う接合状態の変化の確認
形成する微結晶薄膜の膜厚を,片側2nm(実施例1),片側0.2nm(実施例2),片側0.1nm(実施例3),及び片側0.05nm(実施例4)のTi膜とし,SiウエハとSiO2ウエハを0.1気圧(1×104Pa)の超高純度Arガス雰囲気下で貼り合わせた。
以上の結果,いずれの膜厚で接合を行った場合においても接合を行うことができることが確認されており,本発明の方法により,1×10-4Paを越える圧力の雰囲気中に薄膜を暴露した場合であっても,好適に接合を行うことができることが確認された。
但し,膜厚を0.05nmとした接合(実施例4)では,接合自体は可能であったものの,他の実施例に比較して接合強度が弱くなっており,また,G1−Arガス雰囲気下で接合を行った場合においても,上記膜厚において,同様の結果となった。
よって,本発明の方法による接合において,形成する微結晶薄膜の膜厚(片側)は0.1nm以上の厚さに形成することが好ましい。
容器内圧力の変化に伴う接合の変化の確認
容器内圧力の変化が,接合状態に及ぼす影響を確認すべく,実施例5として,片側2nmのTi微結晶薄膜を形成したSi/SiO2基板を1気圧(1×105Pa)の超高純度Arガス雰囲気中で接合した。なお,その他の条件は実施例1と同じである。
以上の結果,容器内の圧力を1気圧(1×105Pa)として接合を行った場合(実施例5)においても,0.1気圧(1×104Pa)で接合を行った場合(実施例1)と接合状態に違いを確認することはできなかった。
なお,片側20nmのTi薄膜を形成した2枚のSiウエハを,0.1気圧(1×104Pa)の超高純度Arガス雰囲気中において接合した例(実施例6)の接合部の断面電子顕微鏡写真を図2に示す。
比較のため,接合を1×10-6以下の高真空中で行った点を除き,他の条件を同一として接合を行った例(比較例1)における接合部の断面顕微鏡写真を図3に示す。
図2及び図3から明らかなように,0.1気圧(1×104Pa)という比較的高い圧力下で接合した実施例5の条件においても,これよりも10桁以上も低い圧力の真空中において接合した場合と同様,Ti/Ti膜間の接合界面が消失していることが確認でき,実施例6の接合方法において,高真空中で接合した場合との接合構造に差は確認できなかった。
このことから,超高純度Arガス中の接合メカニズムでは,真空中で接合を行った場合と全く同様に,室温でTi/Ti膜の界面における原子拡散が生じていることが判る。
また,実施例5のように,1気圧(1×105Pa)の圧力下においても良好な接合が得られることが確認できており,1気圧に対して数倍程度高い圧力下で接合を行った場合であっても,接合を行うことができることは明白である。
微結晶薄膜の材質と接合状態の変化の確認
形成する微結晶薄膜を,片側2nmのTa膜(実施例7)及び片側2nmのW膜(実施例8)とし,形成する微結晶薄膜の材質の相違による接合状態の影響を確認した。
Ta膜の形成により接合を行った実施例(実施例7),及びW膜の形成により接合を行った実施例(実施例8)のいずれにおいても良好に接合されていることが確認された。
なお,微結晶薄膜の接合界面の状態を観察し易くするために,Ta膜厚を片側20nmとして0.1気圧(1×104Pa)の超高純度Arガス雰囲気下において接合したSi/Siウエハ(実施例9)の断面における透過電子顕微鏡(TEM)写真を図4に示す。
比較のため,容器内の圧力を1×10-6Pa以下の超高真空とした点を除き,実施例9と同一条件で行った接合例(比較例2)の断面における透過電子顕微鏡(TEM)写真を図5に示す。
Ta膜の形成によって接合を行った例(実施例9,比較例2)では,いずれも,Ta膜の接合界面を明瞭に確認することができ,図4及び図5に示すTi膜の形成によって接合を行った場合(実施例6,比較例1)のように,微結晶薄膜の接合界面を完全に消失させる程の原子拡散の発生を確認することはできなかったが,0.1気圧(1×104Pa)下で行った実施例9の接合と,高真空(1×10-6Pa)で接合した比較例2におけるTa薄膜の接合界面に相違は見られず,また,接合界面を形成する微結晶薄膜をTaやWによって結成した場合についても,常温で非加圧として接合を行うことができることが確認された。
なお,微結晶薄膜の形成による基体の接合を真空中において行った事例(特許文献2参照)において,接合界面における原子拡散は,原子拡散係数(体拡散係数)が大きな物質程より顕著に生じ,従って,体拡散係数が大きな物質程,接合が生じ易いことが確認されており,接合を行う雰囲気の圧力に相違はあるものの,同様に原子拡散を伴う接合を行う本発明においても,微結晶薄膜を形成する物質の原子拡散係数を大きくする程,接合が生じ易いものとなる。
ここで,固体物質の体拡散係数Dは,アレニウスの式を使用して以下のように表すことができる。
D=D0exp(−Q/RT)
上記の式において,D0は振動数項(エントロピー項),Qは活性化エネルギー,Rは気体定数,及びTは絶対温度である。
表2に,代表的な物質のD0 ,Q及び算出した300K(27℃)時のD値の各値をそれぞれ示す。表2において各材料は,Dの大きさ順に挙げている。
なお,RuのD0及びQの値は,入手可能な文献において報告がされておらず,RuのD値については,Dが他の材料の場合と同様に融点と略比例するものと仮定して概算したものである。この概算したD値を参考のため表中にカッコを付して示した。
表2に示すように,上記材料中においてTiは最も大きなD値を有し,また,Wが6.7×10-110m2/sと,単金属中で最も小さなD値を有している。
従って,本発明の方法によりWの微結晶薄膜の形成により接合が確認できたことから(実施例8),本発明の方法によれば,いずれの金属によって微結晶薄膜を形成した場合であっても,良好に接合を行うことができることが判る。
暴露時間の変化と接合状態の変化の確認
不活性ガスに対する暴露時間の変化が接合状態に及ぼす影響を確認すべく,実施例1では真空容器内を所定の圧力に上昇させた後〔薄膜形成から5分(300秒)後〕に接合したのに対し,実施例10では,真空容器内を所定の圧力に上昇させた後,更に10分(600秒)不活性ガス雰囲気に暴露した後〔薄膜形成から15分(900秒)後〕,接合を行った。その他の条件は実施例1と同じである。
このような暴露時間の変化によっても,実施例1と実施例10の接合状態に差異はなく,接合時間の長短は,接合状態に影響を与えないことが確認できた。
Arガス純度の変化が接合状態に及ぼす影響の確認
不活性ガス雰囲気中における不純物の影響を確認すべく,実施例1では超高純度Arガス(不純物濃度約2〜3ppb)雰囲気下で行っていた接合を,実施例11ではG1−Arガス(不純物濃度約1ppm)雰囲気下で行った。その他の条件は,実施例1と同じである。
実施例1の場合に比較して,不純物濃度が高いG1−Arガス雰囲気中で接合を行った場合であっても,Si/SiO2ウエハ間で好適な接合が行われていることが確認できた。
また,微結晶薄膜の接合界面の状態を観察し易くするために,実施例12として,Ti膜厚を片側20nmとして0.1気圧(1×104Pa)のG1−Arガス雰囲気下においてSi/Siウエハの接合を行った。この接合部における断面透過電子顕微鏡(TEM)写真を図6に示す。
超高純度Arガス雰囲気下で接合した実施例6(図2参照)の場合には,Ti膜同士の接合界面が完全に消失していたのに対し,G1−Arガス雰囲気下で接合を行った実施例12の例(図6参照)では,接合界面の存在が確認された。
また,実施例12の接合例では,接合界面に断続的に厚さ1〜2nm程度の低コントラスト層(写真中で白っぽく写っている部分)が存在している。このことは,G1−Ar雰囲気下で行った接合では,Arガス中に存在する不純物(主として酸素と水蒸気)がTi薄膜の表面に吸着し,Ti/Ti界面における原子拡散が部分的に抑制されていることを示している。
従って,接合界面の完全な消失と,薄膜表面に対する不純物の付着を完全に防止しようとすれば,接合を行う不活性ガス雰囲気における不純物(主として酸素と水)は,数ppb程度とすることが好ましいことが確認された。
もっとも,G1−Arガス雰囲気下で接合を行った実施例12の接合例においても,Ti/Ti界面には空隙が存在せず,膜の表面全体にわたり接合が行われていることから,前述した僅かな不純物の吸着が,製品等に対して要求される性能を阻害するものでなければ,接合を行う不活性ガス雰囲気の不純物濃度は,G1グレードとして要求される1ppm程度,更にはこれよりも高い不純物濃度の不活性ガス雰囲気下で接合を行うことも可能である。
なお,酸素や水蒸気等の不活性ガス中の不純物と金属との結合(化学結合)の強さは金属の種類により大きく異なる。
本接合試験において,接合の良否を左右する最も支配的な結合は酸素との化学結合(酸化)であり,主な材料の酸化のし易さを,酸化物の自由生成エネルギー(ΔG)として下記の表3に示す。下記の表3において,室温において酸化物を形成しないAu,Ptは表示を省略した。
表3に示したように,Tiは酸化物を生成し易く,特にTi35のΔGは−2309kJ/molと,他の金属に比べて酸化物を形成し易い。このことから,実施例12の接合例において,Ti膜とTi膜間の接合界面において断続的に存在する低コントラスト層は酸化物の形成に起因しているものと考えられる。
一方,この結果から,Ti以外の金属を使用して微結晶薄膜を形成する場合には,Tiで微結晶薄膜を形成する場合に比較して酸化物を形成し難いことから,Ti膜以外の金属膜を用いてG1−Arガス雰囲気下での接合を行う場合にも,微結晶薄膜界の接合界面に空隙を発生させることなく,微結晶薄膜同士が膜の界面全体にわたり接合できることは明らかである。
なお,接合を行う空間を満たすArガス中の不純物濃度を,実施例12で使用したG1−Arガスよりも高めていくと,他の条件を実施例12と同様にして接合を行ったとしても,微結晶薄膜の表面に対する不純物の吸着による酸化物等の形成がより促進され,この酸化物によって微結晶薄膜の接合界面における原子拡散が更に抑制されることとなる結果,やがて接合を行うことができなくなる。
しかし,基板表面に吸着する不純物ガス量は,前述した−ΔGの絶対値の値が大きい程,不純物が吸着し易く,また,不純物ガスの圧力と時間に略比例すると考えられることから,G1−Arガスよりも不純物濃度が高いArガスを用いる場合であっても,−ΔGの絶対値の値が小さい材料で微結晶薄膜を形成すること,微結晶薄膜の形成から接合までの時間を短くすること,接合を行う雰囲気の圧力を本願所定の圧力範囲内において低めに設定すること,及びこれらの条件を組合せることにより,良好な接合状態を行い得る。
〔窒素ガス雰囲気下での接合〕
実験方法
スパッタリング法による微結晶薄膜の形成後,直ちに,スパッタリングを行った真空容器内にN2窒素ガスを導入して真空容器内を所定圧力の不活性ガス雰囲気として接合を実施した(実施例13〜17)。
各実施例及び比較例における微結晶薄膜の材質,膜厚,接合対象とした基体,使用したArガス(Arガスの純度),真空容器内の圧力,薄膜形成後,薄膜がArガス雰囲気中に曝された時間(以下,「暴露時間」という。)をそれぞれ下記の表4に示す。
なお,実験に使用した窒素ガスは,不純物濃度が約0.5ppm以下であるG1グレードの窒素ガスボンベから取り出した窒素ガス(以下,これを「G1−窒素ガス」という。)を使用した。
なお,真空容器内の不純物濃度は測定していないが,1ppm以下に維持されていると考えられる。
また,「暴露時間」は,容器内の窒素ガス圧力が,接合を行う圧力に到達した後,接合迄の放置時間を示し,「暴露時間」の記載が無いものは,微結晶薄膜の形成後,接合圧力となった時点で直ちに接合を行っており,以下の実施例にあっては,微結晶薄膜の形成後,接合圧力迄の上昇に要した時間〔約3分(180秒)〕の経過後に接合を行ったことを示す。
窒素ガス下における接合実施例の試験条件を,下記の表4に示す。

実験結果
上記試験の結果,0.1気圧(1×104Pa)の窒素ガス雰囲気下で接合を行った場合(実施例13),及び1気圧(1×105Pa)の窒素ガス雰囲気下で接合を行った場合(実施例14)のいずれにおいても,微結晶薄膜の接合面の全体に亘り接合できており,本発明の接合方法が,不活性ガスとして窒素ガスを使用した場合あっても好適に行うことができることが確認された。
また,形成する微結晶薄膜の膜厚を片側0.1nm迄薄くした実施例15の接合実施例において,この膜厚の微結晶薄膜の形成においても問題なく接合を行えることが確認できた。
更に,容器内の窒素ガス圧力を0.1気圧(1×104Pa)まで上昇させた後,微結晶薄膜をこの窒素ガス雰囲気下で更に10分(600秒)暴露した後に接合を行った実施例16においても,接合を行うことができることが確認された。
なお,微結晶薄膜の接合界面の状態を観察し易くするために,形成するTi膜厚を片側20nmとして,実施例13と同様に0.1気圧(1×104Pa)の窒素ガス雰囲気中で接合を行った接合例(実施例17)の接合部における断面の透過電子顕微鏡(TEM)写真を図7に示す。
実施例17(図7参照)においても,G1−Arガス雰囲気中で接合を行った場合(実施例12:図6参照)と同様,接合界面に厚さ1〜2nm程度の低コントラスト層が存在しているが,Ti/Ti膜の界面に空隙が形成されることなく,膜全体に亘り接合されていることが確認できる。
窒化の影響
なお,図6に示した実施例12の接合界面では,低コントラスト層は微結晶薄膜の表面を部分的に覆うように形成されていたのに対し,図7に示した実施例17の接合界面には,低コントラスト層が微結晶薄膜の表面全体に亘り均一に形成されていた。
このようなG1−Arガス雰囲気下における接合状態との相違から,Ti/Ti薄膜が形成されたウエハをG1−窒素ガス中で接合した実施例17では,薄膜の表面における吸着を酸化の影響のみで説明することはできず,窒化し易いTiによって微結晶薄膜を形成したことにより,薄膜表面が窒化の影響を受けたものと考えられる。
ここで,Tiの窒化物(TiN)の生成自由エネルギーであるΔGは,−308.1(kJ/mol of compounds)と絶対値が大きく,Tiは窒化物を形成し易い物質である。
従って,このような窒化し易いTi薄膜を形成した実施例13〜17の実施例において,接合を行うことができることが確認されていることから,Tiよりも窒化し難い材質,すなわち,窒化物の自由生成エネルギーであるΔGが大きい(絶対値が小さい)材質で微結晶薄膜を形成する場合には,窒素雰囲気下での接合が行えることは明らかである。
また,TiNよりもΔGが小さく(絶対値が大きく),従って窒化し易い代表的な金属材料としては,Mg(Mg32:ΔG=−399.4kJ/mol of compounds),Sr(Sr32:ΔG=−323.6kJ/mol of compounds),Zr(ZrN:ΔG=−336.2kJ/mol of compounds)等の一部に限られており,且つ,これらはいずれもTiNと比較的近いΔGを持つものであるから,窒素ガス雰囲気下において接合を行う場合においても略全ての金属を用いた微結晶薄膜の形成により接合が可能であると考えられる。
〔その他の不活性ガス〕
以上のように,Arガス雰囲気下,及び窒素ガス雰囲気下における接合において,1×10-4Paよりも高い圧力下においても接合が可能であることから,Arガス,窒素ガス以外の他の不活性ガス雰囲気中においても,同様に接合が可能であると考えられる。
特に,狭義の不活性ガスに含まれるHe,Ne,Kr,Xeは,Arと同様に完全な不活性ガスであることから,微結晶薄膜同士の接合界面における構造は,Arガス雰囲気下で接合を行った場合と全く同様の構造となるものと考えられる。
また,広義の不活性ガスに含まれるCH4ガスでは,乖離したCと微結晶薄膜を構成する金属とが化学結合(炭化)する可能性が考えられるが,室温において金属は窒化物に比較して炭化物を形成し難いことから,窒化ガス雰囲気下で接合を行う場合に比較して,CH4ガスを使用する場合の方が,接合を阻害する要素が少ない。
従って,窒素ガス雰囲気下で接合が行える以上,CH4ガス雰囲気下においても接合が行えるはずである。
なお,広義の不活性ガスには,更にCO2ガス,COガスが含まれ,これらを使用した場合においても接合が可能であると考えられるが,これらのガスにあっては,酸素の乖離が生じた場合,金属との間で酸化物を形成し易く,酸化が生じ易い金属で微結晶薄膜を形成する場合等には接合強度が低下するおそれがある。
また,CO2ガス,COガスからは,酸素や水等の不純物を除去し難く,工業的に用いられるG1グレードのガスにおける不純物濃度は,同グレードのArガスやN2ガスに比較してCO2ガスで1桁,COガスで2桁程大きくなることから,CO2ガスやCOガスを使用する場合,不活性ガス雰囲気(一例として不純物濃度が数ppm以下)を得ること自体が困難となることから,CO2ガス,COガスを除く不活性ガスの使用が好ましい。
以上で説明した本発明の接合方法は,無加熱又は比較的低い温度での加熱,無加圧で原子レベルでの接合を行うことができること,接合後の界面応力が小さいこと,しかも微結晶薄膜の形成を行った真空よりも高い圧力の雰囲気,例えば大気圧の不活性ガスに暴露した状態で接合面の重ね合わせを行うことができ作業性が向上されていること等から,各種新機能・高機能デバイスの創製,情報家電の小型化,高集積化等の用途において容易に利用することができ,これらの用途における例を示せば下記の通りである。
新機能・高性能デバイスの創製
ウエハレベルで積層化,集積化した新機能デバイスの創製への利用
集積回路と短波長光デバイスの集積化(例えば,Siデバイス/GaN,フォトニクス結晶,LED),新機能光−電子変換デバイス創製の際の接合。
スピン−電子ハイブリッドデバイスの製造。本発明の方法によって接合することで,電子やスピン電流の平均自由工程以下でウエハ間を接合することが可能である。
異種材料ウエハ間の接合
超ハイブリッド基板・部材の形成等を目的として,半導体ウエハを微結晶薄膜を挟んで積層化した電位障壁ハイブリッド・ウエハの製造や,ガラスを微結晶薄膜を挟んで積層した特殊光学ウエハ(光フィルタリング)の製造に際し,本発明の方法を使用することができる。
発光ダイオードの高輝度化
本発明の方法により,発光ダイオードに鏡面のレイヤーを接合し,輝度を上げる。
水晶振動子の積層化
本発明の方法により,水晶に例えば金の薄膜を形成して水晶同士を接着することで,比較的接着が困難な水晶同士の接合を行う。
情報家電の小型化・高集積化
SiP技術のための三次元スタック化,パッケージ基板高機能化(三次元実装);本接合方法によりSiデバイスとSiデバイスの積層や基板を立体的に貼り合わせることにより高集積化を図る。
MEMS製造技術
三次元配線を兼ねた微細素子の封止,特に不活性ガスを封入した封止。Siデバイスとの積層に本接合方法を利用する。この用途での利用の場合,接合面に界面があっても良く,内部に不活性ガスを封止した状態を保持できれば良い。
高性能化,超低消費電力のための効率的な熱伝導(冷却)の実現
熱放散係数の大きな材料,例えば銅,ダイヤモンド,DLC等で作製したヒートシンク,ヒートスプレッダを本発明の方法により半導体デバイス等に直接ボンディングして,放熱性能,熱拡散性能等を向上させる。
その他
なお,以上で説明した用途では,いずれも本発明の接合方法を電気,電子部品等の分野において使用する例を説明したが,本発明の方法は,上記で例示した利用分野に限定されず,接合を必要とする各種分野,各種用途において利用可能である。

Claims (23)

  1. 真空容器内において,平滑面を有する2つの基体それぞれの前記平滑面に,単金属あるいは合金から成る微結晶構造の薄膜を形成すると共に,1×10-4Paを越える圧力の不活性ガス雰囲気下において,前記2つの基体に形成された前記微結晶構造の薄膜同士が接触するように前記2つの基体を重ね合わせることにより,前記微結晶構造の薄膜の接合界面及び結晶粒界に原子拡散を生じさせて前記2つの基体を接合することを特徴とする原子拡散接合方法。
  2. 真空容器内において,一方の基体の平滑面に,単金属あるいは合金から成る微結晶構造の薄膜を形成すると共に,1×10-4Paを越える圧力の不活性ガス雰囲気下において,少なくとも表面が微結晶構造を有する平滑面を備えた他方の基体の平滑面に前記一方の基体に形成された前記微結晶構造の薄膜が接触するように前記一方,他方の2つの基体を重ね合わせることにより,前記微結晶構造の薄膜と前記他方の基体の前記平滑面との接合界面及び結晶粒界に原子拡散を生じさせることにより前記2つの基体を接合することを特徴とする原子拡散接合方法。
  3. 前記微結晶構造の薄膜を,室温における体拡散係数が1×10-55(m2/s)未満の金属あるいは合金,又は,室温における酸化物の生成自由エネルギーが−330(kJ/mol of compounds)未満の単金属あるいは合金により形成することを特徴とする請求項1又は2記載の原子拡散接合方法。
  4. 前記微結晶薄膜が,室温における体拡散係数が6.7×10−110m2/sのタングステン(W)から成ることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の原子拡散接合方法。
  5. 前記基体の重ね合わせを,大気圧以上の圧力の不活性ガス雰囲気下で行うことを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の原子拡散接合方法。
  6. 前記不活性ガスが,アルゴン,ヘリウム,ネオン,クリプトン,キセノン,窒素,メタン,二酸化炭素,及び一酸化炭素の群から選択されたいずれか1種のガス,あるいは,前記群のガスから選択された2種以上のガスの混合ガスであることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の原子拡散接合方法。
  7. 前記基体の重ね合わせを行う空間に,不純物濃度が1ppm以下の不活性ガスを供給するガス源からのガスを単独で又は混合して導入することによりガス置換し,前記不活性ガス雰囲気を生成したことを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の原子拡散接合方法。
  8. 前記ガス源からの不活性ガスを純化器を通過させて不純物を除去した後,前記基体の重ね合わせを行う空間に導入したことを特徴とする請求項6記載の原子拡散接合方法。
  9. 前記不活性ガス雰囲気を窒素ガス,あるいは,窒素ガスと他の不活性ガスとの混合ガスにより形成すると共に,前記微結晶薄膜を,室温における窒化物の生成自由エネルギーが−310(kJ/mol of compounds)以上の単金属あるいは合金で形成したことを特徴とする請求項1〜8いずれか1項記載の原子拡散接合方法。
  10. 前記基体の重ね合わせを,塵埃の除去された雰囲気下で行うことを特徴とする請求項1〜9いずれか1項記載の原子拡散接合方法。
  11. 前記基体を重ね合わせる力の強さが101kPa以下であることを特徴とする請求項1〜10いずれか1項記載の原子拡散接合方法。
  12. 上記基体を重ね合わせる際の前記基体温度を室温以上400℃以下の範囲で加熱して体拡散係数を上昇させることを特徴とする請求項1〜11いずれか1項記載の原子拡散接合方法。
  13. 前記基体の加熱を,前記微結晶薄膜の形成材料の室温における体拡散係数が1×10-40m2/s以下の場合に行うことを特徴とする請求項12記載の原子拡散接合方法。
  14. 前記基体の重ね合わせを,前記基体を加熱することなく行うことを特徴とする請求項1〜11いずれか1項記載の原子拡散接合方法。
  15. 前記微結晶薄膜の形成と,前記基体の重ね合わせを同一あるいは隣接する容器中で行うことを特徴とする請求項1〜14いずれか1項記載の原子拡散接合方法。
  16. 到達真空圧力が1×10-4Pa〜1×10-8Paの真空容器内で前記微結晶薄膜の形成を行うことを特徴とする請求項1〜15いずれか1項記載の原子拡散接合方法。
  17. 前記微結晶薄膜を,Al,Si,Ti,V,Cr,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Zr,Nb,Mo,Ru,Rh,Pd,Ag,In,Sn,Hf,Ta,Pt,Au,Wの元素群より選択されたいずれか1つの単金属により形成し,又は前記元素群より選択された1つ以上の元素を含む合金により形成したことを特徴とする請求項1又2記載の原子拡散接合方法。
  18. 前記微結晶薄膜を形成する前に,前記微結晶薄膜の形成と同一真空中において,前記微結晶薄膜の形成を行う基体の平滑面に生じている変質層を除去することを特徴とする請求項1〜17いずれか1項記載の原子拡散接合方法。
  19. 前記微結晶薄膜が形成される前記基体の平滑面に,前記微結晶薄膜とは異なる材料の薄膜から成る下地層を1層以上形成し,当該下地層上に前記微結晶薄膜を形成することを特徴とする請求項1〜18いずれか1項記載の原子拡散接合方法。
  20. 前記下地層を,Ti,V,Cr,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta,Wの元素群より選択されたいずれか1つの単金属により形成し,又は前記元素群より選択された1つ以上の元素を含む合金により形成したことを特徴とする請求項19記載の原子拡散接合方法。
  21. 前記下地層を形成する前記単金属又は合金として,当該下地層上に形成される微結晶薄膜を形成する単金属又は合金よりも高融点で,且つ,前記微結晶薄膜を形成する単金属又は合金に対して融点の差が大きいものを使用することを特徴とする請求項19又は20記載の原子拡散接合方法。
  22. 前記微結晶薄膜の膜厚を0.1nm〜1μmとしたことを特徴とする請求項1〜20いずれか1項記載の原子拡散接合方法。
  23. 請求項1〜22いずれか1項記載の方法により原子拡散を伴うパッケージの接合を行うことにより,内部に1×10-4Paを越える圧力の不活性ガスを封止したパッケージ型電子部品。
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