JP6504555B2 - 原子拡散接合方法及び前記方法により接合された構造体 - Google Patents

原子拡散接合方法及び前記方法により接合された構造体 Download PDF

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Description

本発明は原子拡散接合方法及び前記方法により接合された構造体に関し,より詳細には,接合の対象とする一方の基体の接合面に真空容器中で形成した微結晶薄膜を,他方の基体に形成された微結晶構造の接合面に重ね合わせることにより行われる,接合界面や結晶粒界における原子拡散を伴った接合方法である原子拡散接合を,1×10-4Paを超える圧力の雰囲気下(大気圧を超える圧力を含む)において実行可能とした原子拡散接合方法及び前記方法により接合された構造体に関する。
なお,本発明における「微結晶」には「多結晶」の他,原子配置の単距離秩序を持つ場合が多く,粒径が非常に細かい微結晶構造とみなされる「アモルファス」を含む。
また,本発明における「結晶粒界」とは原子配列の規則性の断続部分を言い,多結晶における結晶粒の境界(一般的な意味での「結晶粒界」)の他,長距離秩序(数10原子程度以上の原子集団における配列の規則性)を有しないが,短距離秩序(数10原子以下の原子集団における配列の規則性)を有する前述のアモルファスにあっては,この「短距離秩序」の断続部分が本発明における「結晶粒界」であると共に,アモルファス金属膜中に空隙があり,体積率(充填率)が100%よりも低い場合,その空隙とアモルファス金属の界面も,高い原子拡散係数を有すると考えられることから,上述の短距離秩序の断続部分と同様に本発明における「結晶粒界」に相当する。
2つ以上の被接合材を貼り合わせる接合技術が各種の分野において利用されており,例えば電子部品の分野において,ウエハのボンディング,パッケージの封止等においてこのような接合技術が利用されている。
一例として,前述のウエハボンディング技術を例にとり説明すれば,従来の一般的なウエハボンディング技術では,重ね合わせたウエハ間に高圧,高熱を加えて接合する方法が一般的である。
しかし,この方法による接合では,熱や圧力に弱い電子デバイス等が形成された基板の接合や集積化を行うことができず,そのため,このような物理的なダメージを与えることなく被接合材相互を接合する技術が要望されていると共に,一例として下記のような接合方法が既に提案されている。
〔表面活性化接合〕
被接合材間を常温,無加圧で接合する技術として,被接合材の接合面のそれぞれに対し,いずれも希ガス等のイオンビームを照射して接合面における酸化物や有機物等を除去することで,接合面表面の原子を,化学的結合を形成し易い活性な状態に活性化し,この活性化した状態において被接合材の接合面相互を重ね合わせることにより,加熱することなく,かつ,接着剤等を使用することなしに常温での接合を可能とする接合法が,例えばシリコンウエハ等の接合方法として提案されている(特許文献1参照)。
〔原子拡散接合(高真空下)〕
しかし,上記特許文献1に記載の方法では,被接合材の接合面に対して希ガスビームなどを照射して接合面を洗浄して活性な状態とした後,両接合面を接合することにより強固な接合力を得ることができるものの,接合できる材料が一部の金属と金属,一部の金属と化合物間に限定されており,用途が限定される。
また,前記方法により接合を行う場合,接合面は巨視的には接合がされていたとしても,接合面の粗さやうねり等によって微視的には接合されていない部分が存在し,ウエハレベルでの積層化,集積化のための接合に使用することができない。
このように,部分的に接合されていない部分が発生することを防止するために,接合面を研磨等してその表面粗さを抑制することも考えられるが,研磨によって抑制し得る接合面の粗さやうねりには限度がある。
そのため,上記従来の常温接合方法により,接合されない部分の発生を減少しようとすれば,被接合材相互を重合する際に加圧して圧着する等の処理を行う必要があり,被接合材に物理的なダメージを与えるおそれがある。
なお,上記方法による接合では,両基体の表面を前述のように活性化させることで,接触界面においてのみ原子間に金属又は化学結合を生じさせるものであり,接合界面や結晶粒界におけるダイナミックな原子拡散を伴うものではない。
そのため,接着自体は比較的強固に行うことはできるものの,両基体の接合部分には依然として接合界面が存在し,また,接合界面に微視的に接合されていない部分が存在すること等により,例えば電子デバイス等として使用する際,このような接合界面や微視的ギャップが電子の通過を妨げる障壁等として作用する等,性能の低下をもたらすものとなっている。
このような特許文献1に記載の接合方法における欠点を解消するために,本発明の発明者らは,接合対象とするウエハやチップ,基板やパッケージ,その他の各種被接合材のそれぞれの接合面に,到達圧力を10-4Pa以下の高真空度とした真空雰囲気において,例えばスパッタリングやイオンプレーティング等の真空成膜方法により,かつ,好ましくはプラズマの発生下で金属や各種化合物の微結晶構造を有する被膜を接合面に形成し,前記被膜の成膜中,あるいは成膜後に前記真空を維持したまま,前記被接合材の前記接合面に形成された被膜相互を重合することにより,接合界面や結晶粒界における原子拡散を伴う接合を可能とした「原子拡散接合方法」を提案している(特許文献2参照)。
そして,この原子拡散接合方法によれば,同種又は異種被膜の接合面を,加熱,加圧,電圧の印加等を伴うことなく原子レベルで金属結合あるいは分子間結合により強固に接合させることができると共に,薄膜の内部応力を開放して接合歪みを緩和させることができ,ここで得られる接合は,界面で剥離が生じない(無理に剥離しようとすると薄膜の界面以外の部分又は基体が破壊する)接合状態が得られるものとなっている(特許文献2「0029」欄)。
〔原子拡散接合(大気圧下)〕
以上で説明した2つの接合方法(表面活性化接合,原子拡散接合)は,いずれも所定の処理を行った後の接合面が,空気中の酸素や有機物等によって汚染されると接合できなくなることに鑑み,接合面に対する所定の処理から接合までを,いずれも高真空状態に維持した同一の真空容器内で行うことを前提としており(特許文献1「0005」欄,特許文献2の請求項1),また,同一真空中において接合を行う場合であっても,時間の経過と共に接合が行えなくなると考えられていた(特許文献2「0070」欄)。
そのため,接合面の処理(希ガスビームによる洗浄,又は微結晶構造の被膜形成)を行った後に,これに続き行う接合面の重ね合わせは,接合面の処理を行ったと同一の真空容器内で,かつ,この真空容器内を高真空の状態に維持したまま,比較的短時間のうちに行わなければならず,例えば,希ガスビームによる洗浄や微結晶薄膜を形成した後の接合面を大気圧の空気等に暴露してしまえば,もはや接合自体が不可能となるというのが,本発明の発明者らを含めた本発明の技術分野における当業者の認識であり,この認識を前提として,接合面の重ね合わせを高真空の空間内において行う構成を採用していた。
このように,基体の接合面を重ね合わせる作業を高真空に維持された真空容器内という限定された空間,限定された条件下で行う必要があり,基体同士を重ね合わせる作業が極めて行い難いだけでなく,前記接合方法を実現するためには真空容器内を高真空に保ったまま,真空容器内に配置された被接合材の接合面を重ね合わせる作業を行うための特殊な構造を備えたロボットアームや治具,その他の貼着装置が必要となり,多大な初期投資を必要としていた。
しかし,以上のような当業者の認識に拘わらず,本発明の発明者らが鋭意研究を行った結果,被接合材の接合面に形成する微結晶薄膜を,所定の特性を持った金属によって形成する場合には,接合面同士の重ね合わせを前掲の特許文献2に記載されている真空(1×10-4Pa)よりも高い圧力(低真空度),例えば大気圧下の空間で行った場合,更には大気圧の空気に暴露した後に行った場合であっても,接合面の接合を行えることを見出すと共に,このような接合を行うことができる微結晶薄膜の範囲と接合条件とを限定した原子拡散接合方法を既に特許出願している(特許文献3)。
特許第2791429号公報 特許第5401661号公報 特許第5569964号公報
特許文献2として紹介した原子拡散接合(高真空下)では,基体の平滑面に形成する微結晶薄膜の室温における体拡散係数が大きい程,原子拡散が顕著に顕れ,体拡散係数が小さくなる程,原子拡散が起こり難く接合界面の消失等が起こり難いという相違はあるものの,基体の表面に形成する微結晶薄膜の材質には特に制約が無く,如何なる金属によって微結晶薄膜を形成した場合であっても,加熱及び加圧を行うことなしに接合することができるものとなっている。
これに対し,上記特許文献3として紹介した原子拡散接合では,接合を1×10-4Paよりも高い圧力下(大気圧下を含む)において行うことができるものの,被接合材の表面に形成する微結晶薄膜を構成する材質が限定されると共に,この微結晶薄膜を構成する金属の体拡散係数と酸化物の生成自由エネルギーの数値範囲に応じて,下記の加熱条件が要求されるものとなっている。
AuやAg等,体拡散係数が1×10-40(m2/s)以上で,かつ,酸化物の生成自由エネルギーが−15(kJ/mol of compounds)以上の金属で微結晶薄膜を形成した場合には,加熱することなく接合が可能である。
体拡散係数が1×10-45(m2/s)以上で,かつ,酸化物の生成自由エネルギーが−150(kJ/mol of compounds)以上の範囲,即ち,上記Au,Agの他,Cuを含む範囲まで微結晶薄膜を構成する金属の範囲を拡張した場合には,接合に際し100℃以上の加熱が必要となる。
更に,体拡散係数が1×10-55(m2/s)以上で,かつ,酸化物の生成自由エネルギーが−330(kJ/mol of compounds)以上の範囲,即ち,上記Au,Ag,Cuの他,Pd,Pt,Ni,Zn等を含む範囲まで微結晶薄膜を構成する金属の範囲を拡張すると,接合には200℃以上の加熱が必要となる。
このように,接合を1×10-4Paよりも高い圧力下(大気圧下を含む)において行う場合,TiやAl等のように室温における体拡散係数が大きいというだけでは接合を行うことができず,接合には更に酸化物の生成自由エネルギーについても大きい材料,すなわち,酸化等がし難く,化学的に安定した材料で微結晶薄膜を形成する必要があり,特に,1×10-4Paを超える圧力下(大気圧下を含む)においても加熱することなく接合を行うためには,接合面にAuやAgといった高価な貴金属による微結晶薄膜を形成する必要があり,接合コストを高めるものとなっていた。
また,1×10-4Paを超える圧力下(大気圧下を含む)においても非加熱で接合を行うことができる上記金属のうち,Agで微結晶薄膜を形成した場合,接合自体は可能であるものの,接合後の膜内部の構造が不均質になると共に,Auで微結晶薄膜を形成した場合に比較して,大気中に暴露した後,短時間で接合できなくなることが確認されている。
更に,Auとの比較において例えばCuは安価であるだけでなく,熱伝導率が高く電気抵抗が低いことから,熱伝導性が良い,あるいは(薄膜全体の)電気抵抗の低い接合部(当該電気抵抗の低い接合面を含む接合した後の薄膜全体)の形成が必要とされる場合,Auの微結晶薄膜を形成して接合を行う場合に比較して,Cuの微結晶薄膜を形成して接合を行う場合の方が,より高性能な接合面を得ることができる。
しかし,前述したように,Cuの微結晶薄膜による接合を大気圧下で行う場合には100℃以上の加熱が必要となることから,加熱を行うことができない被接合材に対しこの接合方法を適用することはできない。
そこで本発明は,上記従来技術における欠点を解消するために成されたものであり,AuやAg等の一部の金属で形成された微結晶薄膜による接合においてのみ可能であった,1×10-4Paを超える圧力下(大気圧下を含む)における非加熱での原子拡散接合を,その他の金属で微結晶薄膜を形成した場合であっても行うことができ,かつ,高真空を維持した状態で接合したと同様,接合した後の膜内部の構造が均質であると共に,比較的長時間,1×10-4Paを超える圧力下(大気圧下を含む)の雰囲気においた場合であっても接合を行うことができる原子拡散接合方法を提供することで,比較的安価な材料を使用して1×10-4Paを超える圧力下(大気圧下を含む)における非加熱での接合を可能にすると共に,接合部における熱伝導率,電気抵抗,光の反射率等の物理的特性の選択幅を拡大できるようにすることを目的とする。
上記目的を達成するために,本発明の原子拡散接合方法は,
真空容器内において,一方及び他方の基体の平滑面に,Au又はAu合金を除く室温における体拡散係数が1×10-45(m2/s)以上の単金属,あるいは合金から成る微結晶構造の接合膜を形成し,該接合膜上に,Au又はAu合金(Au−Ag,Au−Cu等)から成る微結晶構造の保護膜を形成すると共に,
1×10-4Paを越える大気圧下を含む圧力の雰囲気下において,前記一方及び他方の基体の前記平滑面を,前記保護膜同士が接触するように重ね合わせることにより,前記保護膜間に原子拡散を生じさせると共に,該保護膜間で生じた原子拡散を前記接合膜に伝搬させて前記保護膜の原子拡散により前記接合膜の原子を再配列してこれと一体化させることにより,接合界面における前記保護膜が拡散し,前記接合膜の有する物理的特性が維持された接合部を生成したことを特徴とする(請求項1)。
原子の再配列とは,接合する二つの薄膜の接触界面において,いずれか一方の薄膜表面における原子配列(結晶構造)に沿って,他方の薄膜表面から移動した原子が再び配列しなおすことを言う。
このような再配列の発生により,上記一方の薄膜表面の結晶が成長することで,接合界面近傍の構造は結晶的に連続し,接合界面が消失する。特に,原子の体拡散係数が大きな薄膜ほど,再配列が接合界面から遠くまで及ぶ。
ただし,二つの薄膜は微結晶の多結晶薄膜であり,二つの薄膜が接触する場所の違い(接触する結晶粒の結晶方位や大きさの違い等)により,接合界面が消失した後の構造に違いが生じる。
なお,室温における体拡散係数が1×10-45(m2/s)以上であるAu以外の単金属の例としては,Ti,Al,Ag,Cu,Zn,Zr等を挙げることができる。
前記接合膜は,好ましくは,前記保護膜と同一結晶系の結晶構造(fcc)を有する単金属(例えばAg,Al,Cu)あるいは合金によって形成することが好ましい(請求項2)。
また,前記保護膜をAu合金によって形成する場合,該Au合金に,合金成分として,前記接合膜を構成する金属を含有することが好ましい(請求項3)。
更に,前記保護膜は,Au−Ag系合金,又はAu−Cu系合金により形成するものとしても良い(請求項4)。
前記基体の重ね合わせは,加熱下において行うものとしても良いが,好ましくは,200℃以下の温度で行うことが好ましい(請求項5)。
更に,前記接合膜は,前記保護膜の2倍以上の厚み,好ましくは10倍以上の厚みで形成することが好ましい(請求項6)。
なお,前記保護膜の好ましい膜厚は,2nm〜20nmである(請求項7)。
上記原子拡散接合方法において,上記基体の重ね合わせは,大気圧以上の圧力の雰囲気下で行うものとしても良い(請求項8)。
また,上記基体の重ね合わせを行う雰囲気は,空気であっても良く(請求項9),更には,78%を越える不活性ガスを含むものであっても良い(請求項10)。なお,ここでいう「不活性ガス」の用語には,「窒素」を含む。
更に,上記基体の重ね合わせは,例えばクリーンルームやグローブボックス等のように塵埃の除去された雰囲気下で行うことが好ましい(請求項11)。
また,前記基体を重ね合わせる力の強さは0.5MPa以下の比較的弱い力によって行うことができる(請求項12)。もっとも,このことは基体等に対してダメージを与えない程度の力で更に強い力で加圧を行うことを禁ずるものではない。
また,前記接合膜を形成する前に,前記接合膜の形成と同一真空中において,前記接合膜の形成を行う基体の平滑面に生じている変質層を除去することが好ましい(請求項13)。
更に,前記接合膜が形成される前記基体の平滑面に,前記接合膜とは異なる材料の薄膜から成る下地層を1層以上形成し,当該下地層上に前記接合膜を形成するものとしても良い(請求項14)。
この場合,前記下地層を,Ti,V,Cr,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta,Wの元素群より選択されたいずれか1つの単金属により形成し,又は前記元素群より選択された1つ以上の元素を含む合金により形成することができる(請求項15)。
更に,前記下地層を形成する前記単金属又は合金として,当該下地層上に形成される前記接合膜を形成する単金属又は合金よりも高融点で,かつ,前記接合膜を形成する単金属又は合金に対して融点の差が大きいものを使用することができる(請求項16)。
更に,本発明には,前述した原子拡散接合方法により接合された構造体を含む(請求項17)。
以上で説明した本発明の構成により,本発明の原子拡散接合方法によれば,1×10-4Paを越える圧力の雰囲気下という比較的低真空度の空間や大気圧(1気圧)下,あるいは大気圧以上の圧力の雰囲気下において非加熱で接合を行った場合であっても,接合界面及び結晶粒界に原子拡散を生じさせ,これにより同種又は異種の微結晶薄膜の接合面間,又は微結晶薄膜と基体の平滑面間を,原子レベルで金属結合あるいは分子間結合により強固に接合させることができると共に,薄膜の内部応力を開放して接合歪みを緩和させることができた。なお,ここで得られる接合は,界面で剥離が生じない(無理に剥離しようとすると薄膜の界面以外の部分又は基体が破壊する)接合状態である。
その結果,基体同士の接合を,高真空に維持された真空容器内で行う必要がなく,また,加熱を必要としないことから,接合条件の自由度が増す結果,原子拡散による接合を行う際の作業性を大幅に改善することができた。
しかも,2〜20nmという比較的薄い保護膜を介在させることで,1×10-4Paよりも高い圧力下(大気圧下を含む)では接合することができなかったAl,Ti等の金属で形成した接合膜についても接合することができ,また,1×10-4Paよりも高い圧力下(大気圧下を含む)での接合は可能であったが100℃以上の加熱を必要としていたCu等の金属によって形成した接合膜を加熱することなく原子拡散を伴う接合を行うことができ,更に,1×10-4Paよりも高い圧力下(大気圧下を含む)において非加熱での接合が可能であったが,接合後の膜の内部構造が不均質となっていたAgによって形成した接合膜を形成した場合,接合後の膜内部構造が均質な接合状態を得ることができた。
更に,接合膜と保護膜の全体を高価なAuで形成する場合に比較して,接合の際のコストを低減することができた。
しかも,接合界面にAuやAu合金の保護膜を介在させて行う接合でありながら,接合が完了した後においては,Au保護膜成分は接合界面付近の濃度が高いことを除き,保護膜が接合膜中に拡散して一体化することでその特性を失い,接合膜が有する物理的特性が維持された接合部を生成することができることから,接合膜の材質を選択することにより,接合部に所望の熱伝導度,電気抵抗率等といった物理的特性を与えることができた。
接合膜を,保護膜であるAu又はAu合金と同一結晶系の結晶構造(fcc)を有する単金属(Ag,Al,Cu)あるいはこれらの合金によって形成する場合には,原子拡散の伝搬が起こり易く,原子再配列によって保護膜と接合膜とを結晶学的にも一体化させることができた。
また,前記保護膜をAu合金によって形成すると共に,該Au合金に,合金成分として,前記接合膜を構成する金属を含有した構成にあっては,保護膜の格子定数を,接合膜の格子定数に近付けることで,原子再配列の伝搬を抑制する格子不整合を小さくすることができ,その結果,保護膜間で生じた原子再配列を,接合膜のより深部まで伝搬することが可能となる。
前記保護膜をAu−Ag系合金,又はAu−Cu系合金により形成する場合,Au−Ag系合金にあってはAgを80at%,Au−Cu系合金にあっては,Cuを95at%含有させた場合であっても,Au単金属の保護膜を形成した場合と同様の接合性能(加圧することなく,大気中で接合膜同士を重ねることで原子再配列が伝搬する)を得ることができ,高価なAuの使用量を減らし低コストで接合を行うことができるだけでなく,例えばAu単金属で保護膜を形成した場合に比較して,接合部における電気抵抗を低下させることができ,また,熱伝導率を向上させることができる等,Auに比較してAgやCuの方が優れている特性を接合部に与えることができた。
なお,本発明の原子拡散接合方法では,接合膜の材質に拘わらず基体に対する加熱を行うことなしに接合することが可能となるが,基体に対してダメージを与えない程度,例えば400℃以下,好ましくは300℃以下,より好ましくは200℃以下の範囲で基体温度を室温以上に加熱することで,前述した体拡散係数を上昇させることができ,これにより原子の拡散速度,拡散長を増大させることで接合界面及び結晶粒界における原子の拡散性を向上させてより均一かつ強固な接合を行うことができ,特に原子の拡散長の増大により表面の比較的粗い基体であっても接合できることから,接合時において基体を加熱することを本願発明の範囲より排除するものではない。
ここで,体拡散係数Dは,
D=D0exp(−Q/RT)
D0:振動数項(エントロピー項)
Q:活性化エネルギー
R:気体定数
T:絶対温度
によって表すことができ,温度Tを上昇させると,体拡散係数Dは指数関数的に増加する。
本発明の原子拡散接合方法は,基体の重ね合わせを大気圧(1気圧)以上の圧力下で行うことも可能で,更には,上記基体の重ね合わせを空気中に暴露した状態で行う場合であっても好適に接合を行うことができ,接合条件の選択の幅が極めて広いものである。
なお,本発明の原子拡散接合方法は,Au又はAu合金から成る保護膜の存在によって,保護膜及び接合膜のいずれとも酸化等による変質層が形成されないあるいは形成され難い状態にあることから,接合を行う場に酸素が存在することは接合に際して大きな障害とはならないが,不活性ガスの濃度を高め,酸素量を減少させた雰囲気下で重ね合わせを行うことで,より確実に,変質層の形成等に伴う接合不良を排除することが可能であると共に,1×10-4Paを超える空間(大気圧を超える空間を含む)に取り出した後,接合を行うことができなくなるまでの時間を延長することが可能となる。
更に,上記基体の重ね合わせを,「クリーンルーム」や,「グローブボックス」等の塵埃の除去された雰囲気下で行うことにより,接合面に塵埃等の不純物が介在することによる接合不良を防止することができた。一例として,この空間のクリーン度としては,ISOクラス5(1988年米国連邦規格におけるクラス100に相当。1立法フィートの空間中における0.5μm以上の粒子数が100個未満。)以上であることが好ましく,より好適には,雰囲気中の湿度も調整する(一例として50%以下)ことが好ましい。
本発明の原子拡散接合方法によれば,基体の重ね合わせに際し,大きな圧力を加えることを必要とせず,前記基体を重ね合わせる力の強さを0.5MPa以下の圧力で重ね合わせた場合であっても好適に接合を行うことができた。その結果,接合の際に加わる圧力によって基体がダメージを受けることが好適に防止された。
上記接合膜を形成する前に,接合膜の形成と同一真空中において上記一方及び/又は他方の基体の平滑面表面に生じている変質層を逆スパッタリング等のドライプロセスにより除去することで,基体に対する接合膜の付着強度を向上させることができ,基体表面と微結晶薄膜間で剥離が生じることによる基体同士の付着強度の低下についても好適に防止することができた。
また,前記接合膜が形成される前記基体の平滑面に,前記接合膜とは異なる材料の薄膜,例えば周期律表における4A〜6A属の元素であるTi,V,Cr,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta,Wの元素群より選択されたいずれか1つの単金属の薄膜,又は前記元素群より選択された1つ以上の元素を含む合金の薄膜によって下地層を形成することにより,基体に対する接合膜の付着強度を上昇させることができ,これにより基体と接合膜間で剥離が生じることを防止することができた。
特に,このような下地層の形成材料として,接合膜の形成材料に対して高融点であり,かつ,その融点の差が大きいものを使用することで,下地層上に形成される接合膜の2次元性(接合膜の成長時の原子の濡れ性)が良くなり,接合膜が島状に成長することを防止でき,均質な接合膜の形成が容易となる。
なお,本発明の原子拡散接合方法では,電子やスピン電流の平均自由工程よりも十分に薄い数Å(数十nm)程度の膜厚の形成によっても接合を行うことができることから,シリコンウエハ等の接合に用いた場合であっても,接合面によって電子の移動等が妨げられない接合方法を提供することができた。
本発明の原子拡散接合方法を説明した模式図。 本発明の原子拡散接合方法による基体の接合例を示した概略説明図。 実施例1−1(Ag接合膜,Au保護膜)の接合部の(A)〜(C)は,それぞれ倍率を異にする断面電子顕微鏡写真(TEM像)。 実施例2(Ti接合膜,Au保護膜)の接合部の断面電子顕微鏡写真(TEM像),(A)〜(C)は,それぞれ,明視野像,回折スポットの暗視野像,電子回折図形。 (A)〜(C)は,実施例3(Cu接合膜,Au保護膜)の接合部の断面電子顕微鏡写真(TEM像),(A),(B)は,倍率を異にする画像,(C)は,界面近傍の拡大画像。 実施例4 Au合金保護膜を使用した接合実施例で,Ag80at%:Au20at%の合金保護膜を使用した接合部の断面電子顕微鏡写真(TEM像)。 比較例1(Ag接合膜,保護膜なし)の(A)は領域Aの断面電子顕微鏡写真(TEM像),(B)は領域Bの断面電子顕微鏡写真(TEM像),(C)は基板の平面図。 Au膜の膜厚の変化と接合強度の関係を示したグラフ(グラフ中の図は,試験方法の説明図。)。 大気中でAu膜同士(Au20nm/Au20nm)を接合させた接合部の断面電子顕微鏡写真(TEM像)。
〔接合方法全般〕
本発明の原子拡散接合方法は,図1に示すように真空容器内において接合対象とする一方及び他方の基体の平滑面に,所定の体拡散係数を有する金属から成る微結晶構造の薄膜を所定の厚みで接合膜として形成すると共に,この接合膜上に,Au又はAu合金から成る微結晶構造の薄膜を所定の厚みで保護膜として形成し,その後,前述した接合膜と保護膜とが形成された基体を,1×10-4Paを越える大気圧下を含む圧力の雰囲気下において前記保護膜同士が接触するように重ね合わせることにより,前記一方及び他方の基体の接合を行うものである。
上記の接合において,本発明の発明者らは保護膜をAu又はAu合金により形成し,かつ,接合膜として所定の体拡散係数の範囲内にある金属を使用すると共に,接合膜と保護膜の厚さを調整することで,接合に際し保護膜同士を重ね合わせた際,前記保護膜間で原子拡散が生じるだけでなく,この保護膜間で生じた原子拡散が接合膜にまで伝搬して前記保護膜と前記接合膜とが原子再配列により一体化し,Au保護膜成分が接合界面付近に濃度が高いことを除き接合界面に存在していた保護膜が接合膜中に拡散して,その特性を失うことで,前記接合膜の有する物理的特性が維持された接合部を形成する接合を行うことができることを見出した。
このような保護膜の拡散を伴う本発明の原子拡散接合における接合条件を以下に示す。
〔基体(被接合材)〕
(1)基体の材質
本発明の原子拡散接合方法による接合の対象である基体としては,スパッタリングやイオンプレーティング等,一例として到達真空度が1×10-3〜1×10-8Pa,好ましくは1×10-4〜1×10-8Paの高真空度である真空容器を用いた高真空度雰囲気における真空成膜により前述した微結晶構造の接合膜や保護膜を形成可能な材質であれば如何なるものをも対象とすることができ,各種の純金属,合金の他,Si基板,SiO2基板等の半導体,ガラス(例えば石英ガラス),セラミックス,樹脂,酸化物等であって前記方法による微結晶構造の薄膜が形成可能であれば本発明における基体(被接合材)とすることができる。
なお,基体は,例えば金属同士の接合のように同一材質間の接合のみならず,金属(例えば放熱用としての金属)とセラミックス(例えば電子デバイスウエハ)等のように,異種材質間での接合を行うことも可能である。
(2)基体の接合面の状態等
基体の形状は特に限定されず,例えば平板状のものから各種の複雑な立体形状のもの迄,その用途,目的に応じて各種の形状のものを対象とすることができるが,他の基体との接合が行われる部分(接合面)については所定の精度で平滑に形成された平滑面を備えていることが必要である。
なお,他の基体との接合が行われるこの平滑面は,1つの基体に複数設けることにより,1つの基体に対して複数の基体を接合するものとしても良い。
この接合面の表面粗さは,パッケージの封止等,単に接合が得られるのみで目的が達成される場合には,例えば最大高さ(Rmax)で5nmを越える表面粗さ(例えば50nm以下)であっても接合を行うことができるが,好ましくはRmaxで5nm以下である。
基体の平滑面は,後述する接合膜を形成する前に表面のガス吸着層や自然酸化層等の変質層が除去されていることが好ましく,例えば薬液による洗浄等による既知のウェットプロセスによって前述の変質層を除去し,また,前記変質層の除去後,再度のガス吸着等を防止するために水素終端化等が行われた基体を好適に使用することができる。
また,変質層の除去は前述のウェットプロセスに限定されず,ドライプロセスによって行うこともでき,真空容器中における希ガスイオンのボンバード等によりガス吸着層や自然酸化層などの変質層を逆スパッタリング等によって除去することもできる。
特に,前述のようなドライプロセスによって変質層を除去する場合,変質層を除去した後,後述の接合膜(場合により下地層)を形成する迄の間に,基体表面にガス吸着や酸化が生じることを防止できるために,このような変質層の除去を,後述する接合膜を形成すると同一の真空中において行うと共に,変質層の除去に続けて接合膜(場合により下地層)を形成することが好ましく,より好ましくは,変質層の除去を超高純度の不活性ガスを使用して行い,変質層の除去後に酸化層等が再形成されることを防止する。
なお,基体は,単結晶,多結晶,アモルファス,ガラス状態等,その構造は特に限定されず各種構造のものを接合対象とすることが可能である。
〔接合膜〕
(1)接合膜の材質
前述した接合膜としては,基体と同種材質の微結晶薄膜を形成しても良く,また,目的に応じて基体とは異種材質の微結晶構造の薄膜を形成しても良く,さらに,基体の一方に形成する微結晶構造の薄膜の材質と,基体の他方に形成する微結晶構造の薄膜の材質とを,それぞれ異なる材質としても良い。
形成する接合膜の材料は,室温における体拡散係数が1×10-45(m2/s)以上である単金属,又は合金である必要がある。
但し,従来技術として紹介した前掲の特許文献3に記載の原子拡散接合とは異なり,本願発明の接合膜では,酸化物の生成自由エネルギーに基づく材料の制約はない。
ここで,固体物質の体拡散係数Dは,アレニウスの式を使用して以下のように表すことができる。
D=D0exp(−Q/RT)
上記の式において,D0は振動数項(エントロピー項),Qは活性化エネルギー,Rは気体定数,及びTは絶対温度である。
下記の表1に,上記体拡散係数の数値範囲に含まれる各種材料の特性を示す。
上記の表1より,ここに掲げた単金属(Au,Ag,Al,Cu,Ti,Zn,Zr)は,全て,室温における体拡散係数が1×10-45(m2/s)以上に該当する。
このうちのAuは,室温における体拡散係数が1×10-45(m2/s)以上に該当する物質であるが,このAuは,本発明における接合膜の材質より除外した。
これは,Auによって形成した接合膜では,それ自体1×10-4Paを越える圧力下において非加熱で接合が可能であり,保護膜を形成する必要性が無いこと,また,Auの接合膜上に,Auの保護膜を形成した構成は,実質上,Au単層の膜を形成して接合する場合と相違するところがないことによる。
一方,Agの微結晶薄膜についてはAuの微結晶薄膜と同様,1×10-4Paを越える圧力下においても非加熱での接合が可能であるが(一例として特許文献3の表4参照),後掲の[実施例]欄で説明する接合試験例で[比較例1]として挙げたように,保護膜を形成することなしにAgの接合膜同士を直接,大気中で非加熱にて接合を行う場合,接合後の膜内部の構造が不均質となり,また,Au膜の場合に比較して接合可能な大気中での保管時間が短い一方,本発明の方法により保護膜を形成した状態で接合を行う場合,これらの問題を解消することが可能であることから,Agについては本発明における接合膜の材質に含む。
なお,合金については,合金成分,配合比等によって体拡散係数が変化することになるが,体拡散係数が1×10-45(m2/s)以上の単金属の範囲内で組合せて成る合金は上記の各数値範囲に含まれ,また,上記の各群に属する各金属を主成分とした合金(Ag,Cu,Ti,Al,Zn,Zr合金)は,主成分の単金属と同様に使用することが可能である。
以上のように,本発明の原子拡散接合方法において接合膜の構成材料の体拡散係数の数値範囲を規定しているのは,前述の体拡散係数は大きい程原子の拡散性が向上し,後述する保護膜間で生じた原子拡散を,接合層に伝搬させることが可能で,接合界面における保護膜を拡散させてその特性を失わせて,保護膜を介在させることなく接合膜同士を接合した場合と同様,接合膜の有する物理的特性が維持された接合部が得られるためである。
一方,接合膜の表面に対する酸化膜等の形成は,後述する保護膜の形成によって阻止されることから,前述した室温における体拡散係数の条件を満たすものであれば,酸化物の生成自由エネルギーが小さい材質のものであっても接合膜として使用することができる。
なお,前掲の表1に掲げた金属及びその合金は,Auを除き,いずれも前述した接合膜の構成材料として採用可能であるが,接合膜の材質は,好ましくは,保護膜を構成するAu,Au合金と同じ結晶系の結晶構造(fcc)であることが好ましく,表1に挙げた金属では,Ag,Al,Cuの単金属,あるいはこれらの合金によって接合膜を形成することが好ましい。
これは,接合膜と,この接合膜上に形成する保護膜の結晶系を一致させることにより,原子再配列がより一層伝搬し易くなり,構造の一体化が起こり易く,結晶学的な一体化をも実現することができるためである。
また,接合膜の材質は,後述する保護膜の材料であるAu又はAu合金と,表1に記載した格子不整合(%)が小さいものである程,好ましい。
なお,本明細書において「格子不整合(%)」は,
格子不整合(%)=〔(保護膜材料の格子定数−接合膜材料の格子定数)/保護膜材料の格子定数〕×100
である。
格子不整合が大きくなる程,保護膜で生じた原子再配列の接合膜に対する伝搬が抑制される傾向にあることから,これを小さくすることにより,保護膜で生じた原子再配列を接合膜のより深部にまで伝搬させることが可能となり,接合界面付近における保護膜成分のより一層の希釈化が可能となる。
(2)接合膜の膜厚等
後述する保護膜よりも接合膜の膜厚が薄い場合,接合時に保護膜が接合膜中に拡散せずに接合界面に保護膜が残るため,接合部の物理的特性は,保護膜を構成するAu或いはAu合金のものとなり,接合膜の構成金属の物理的特性を持った接合部を得ることができない。
そのため,接合界面における保護膜の特性を失わせるためには,接合膜は,少なくとも後述する保護膜の2倍以上,好ましくは10倍程度の厚さとすることが好ましい。
このように,後述する保護膜に対し接合膜を十分に厚いものとすることで,接合膜中に拡散した保護膜成分の濃度を十分に低いものとすることができ,接合後に基体間に存在する薄膜は,接合膜の材質である例えばAl,Ti,Cu等が有する電気的な特性等が支配的となり,保護膜を介在させることなく接合膜同士を接合させたと同様の接合状態を,1×10-4Paを超える圧力(大気圧下を含む)においても非加熱で実現することが可能となる。
一方,膜厚が厚くなるに従って得られた微結晶薄膜の表面粗さが増大して接合が困難となると共に,厚みのある微結晶薄膜の形成には長時間を要し,生産性が低下することから,その上限は1μm程度であり,後述する保護膜の厚さの下限が2nm程度であるから,接合膜の厚さは,4nm〜1μm程度が本発明における原子拡散接合方法における接合膜の好ましい膜厚の範囲である。
(3)接合膜の結晶粒径及び密度
形成する接合膜は,同金属の固体内に比べて原子の拡散速度が大きく,特に,拡散速度が極めて大きくなる粒界の占める割合が大きい微結晶構造であることが好ましく,結晶粒の薄膜面内方向の平均粒径は50nm以下であれば良く,より好ましくは20nm以下である。
また,接合膜は,該接合膜が占める空間の体積100%に対し,空隙等の形成部分を除く,構成金属が占める体積の割合が80%以上,好ましくは80〜98%となるよう形成することが好ましい。
(4)接合膜の形成前処理
接合膜を形成する基体の平滑面には,接合膜の形成前に,接合膜とは異なる材質の薄膜より成る1層以上の下地層を形成することができ,特に,形成する接合膜が,基体に対する付着強度が比較的弱い場合には,付着強度を向上する上で下地層の形成は有効である。
このような下地層は,接合膜の成膜方法として後述する方法と同様の真空成膜技術によって形成することができ,その材質としては,周期律表の4A〜6A属の元素であるTi,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Mo,Wによって形成することができ,その厚さは,一例として0.2〜20nmである。
この下地層の材質としては,その上に形成する接合膜の形成材料に対して融点の差が大きいものを使用することが好ましく,かつ,接合膜の形成材料に対して高融点のものを使用することが好ましい。このような融点差が大きく,接合膜に対して高融点となる材質の組み合わせの一例として,例えばTaの下地層上にAgの接合膜を形成する場合,形成された接合膜が基体より剥離することを好適に防止できるだけでなく,下地層上に形成される接合膜の2次元性(接合膜形成時の原子の濡れ性)が良くなり成膜時に接合膜であるAgが島状に成長することを防止でき,均質な接合膜の形成が容易となる。
(5)接合膜の成膜方法
(5-1) 成膜技術
本発明の原子拡散接合方法において,被接合材である基体の接合面に形成する接合膜の形成方法としては,スパッタリングやイオンプレーティング等のPVDの他,CVD,各種蒸着等,到達真空度が1×10-4〜1×10-8Paの高真空度である真空容器において真空雰囲気における真空成膜を行う各種の成膜法を挙げることができ,拡散速度が比較的遅い材質及びその合金や化合物等については,好ましくは形成された薄膜の内部応力を高めることのできるプラズマの発生下で成膜を行う真空成膜方法,例えばスパッタリングによる成膜が好ましい。
(5-2) 真空度
接合膜形成の際の真空容器内の圧力は,到達真空度が1×10-3〜1×10-8Paの真空雰囲気であれば良く,より低い圧力(高真空度)である程好ましい。
(5-3) 不活性ガス(Arガス)圧
成膜方法がスパッタリングである場合,成膜時における不活性ガス(一般的にはArガス)の圧力は,放電可能な領域,例えば0.01Pa以上であることが好ましく,また30Pa(300μbar)を越えると接合を行うことができない場合が生じるため,上限は30Pa(300μbar)程度とすることが好ましい。これは,Arガス圧が上昇すると,形成された薄膜の表面粗さが増加すると共に,膜密度が著しく低下し,膜中の酸素等の不純物濃度が著しく増加する場合が生じるためである。
〔保護膜〕
以上で説明した接合膜上には,更に,Au又はAu合金によって構成された微結晶薄膜である保護膜を形成して,前述した接合膜を酸化等より保護する。
保護膜の材質としてAu合金を用いる場合,合金成分の一例として,Ag,Cuを挙げることができ,Au−Cu合金の場合にはCuの含有量を最大で約95at%,Au−Ag合金の場合にはAgの含有量を最大で約80at%としても,Au単金属で形成した保護膜を使用した場合と同様,大気中において加熱,加圧を行うことなく接合できることが実験的に確認されている。
保護膜をAu合金によって構成する場合には,Au合金に含める合金成分として接合膜の構成成分を添加することが好ましく,これにより,保護膜と接合膜間の格子定数を近付けることにより,前述した格子不整合(%)を小さくすることができる。
特に,接合膜をCuによって形成する場合,保護膜をAuの単金属で形成すると,保護膜の構成金属であるAuと,接合膜の構成金属であるCuとの間には,−11.4%という比較的大きな格子不整合が生じ(表1参照),この格子不整合は,その絶対値が大きくなる程,原子再配列の伝搬を抑制する傾向にあることは,接合膜の説明において既に述べた通りである。
これに対し,Au−Cu合金では,Cu成分の含有量が増加するに従い,該合金の格子定数は単調にCuの格子定数に近付く変化を示すことから,保護膜の材質として,接合膜の構成成分であるCuを合金成分とするAu−Cu合金を用いることで,前述した格子不整合が小さくなり,その結果,保護膜で生じた原子再配列を,接合膜のより深部に迄伝搬させることができる。
この保護膜は,接合を行った際の拡散により,接合界面よりAuやAu合金の特性を失わせることができるよう,可及的に薄く形成することが好ましく,前述した接合膜に対し好ましくは2分の1以下,より好ましくは10分の1以下の厚さとすることが好ましく,また,大気中での接合において,保護膜中で厚み方向に一体化できる厚みの最大値であると考えられる20nm以下であることが好ましい。
一方,保護膜は,前述した接合膜を酸化等より保護する役割を有するものであり,接合膜上を覆うことができる厚さを有する必要があると共に,1×10-4Paを超える圧力の雰囲気下,例えば大気圧下の大気中に取り出して接合する際に保護膜表面に吸着する水や酸素等の影響を排して接合を可能とするためには,ある程度の厚さが必要となる。
よって,2〜20nm程度が本発明における保護膜の好ましい膜厚の範囲である。
なお,保護膜についてのその他の形成条件(結晶粒径,密度,成膜方法)については,前述した接合膜と同様であるため説明を省略する。
〔重ね合わせの条件〕
(1)重ね合わせを行う雰囲気の圧力
以上のようにして,表面に接合膜及び保護膜が形成された基体相互が,1×10-4Paを越える圧力の雰囲気下,例えば,大気圧以上の圧力雰囲気下において重ね合わされることにより,保護膜間の接合界面及び結晶粒界に原子拡散を生じさせ,この保護膜間において生じた原子拡散とこれに伴う原子再配列を接合層にまで伝搬させることにより,保護膜を接合膜に拡散させることで,接合界面における保護膜の特性を失わせて接合膜の有する物理的特性が維持された接合,すなわち,保護膜なしで接合膜同士を接合させたと同様の接合を得ている。
このように,本発明の方法では,2つの基体の重ね合わせを,接合膜や保護膜の形成を行った真空中よりも高圧の雰囲気下,例えば大気圧を超える圧力の雰囲気下において行う場合であっても接合を行うことができるものとなっている。
なお,基体同士の重ね合わせを行う雰囲気の圧力が大気圧を越える場合としては,例えば給気処理型のクリーンルームやグローブボックス内で基体の重ね合わせを行う場合等がある。
(2)重ね合わせを行う雰囲気の成分
また,基体同士の重ね合わせを行う際の雰囲気の成分は,空気(窒素約78%,酸素約20%)であっても良く,又は,窒素ガス,アルゴンガス,その他の不活性ガスが,単独又は混合状態で78%を越えて存在した状態,あるいは不活性ガス100%の雰囲気であっても良い。
(3)保護膜形成から重ね合わせを行うまでの経過時間
保護膜としてAu膜を形成した例では,Au保護膜の形成後,大気圧(1気圧)の空気に1〜6時間暴露した後に基体の重ね合わせを行った場合においても十分な接合力が得られることが確認されており,1〜6時間に対して十分に長い時間,大気圧の空気中に暴露した後においても接合を行うことが可能であると考えられる。
更に,雰囲気中の酸素や水の量を減らす場合には,保護膜の形成後,更に長時間経過した後にも接合を強固に行い得るものとなることから,基体同士の重ね合わせを,前述したように78%を越える不活性ガスを含む雰囲気,好ましくは100%不活性ガスの雰囲気中において行う場合,及び/又は1×10-4Paを越える圧力の範囲内で重ね合わせを行う雰囲気の圧力を低く設定する場合には,保護膜の形成からより長時間経過した後であっても,強固な接合を行うことが可能となる。
(4)重ね合わせを行う雰囲気の清浄度
なお,このような基体の重ね合わせを行う雰囲気は,接合面に塵埃等が介在することによる接合不良を防止するために,塵埃の除去された空間内において行うことが好ましく,前述したように,塵埃の除去されたクリーンルームやグローブボックス内において行うことができる。
このような雰囲気の清浄度は,一例として,ISOクラス5(1988年米国連邦規格におけるクラス100に相当。1立法フィートの空間中における0.5μm以上粒子数が100個未満。)以上であることが好ましい。
また前述したように,雰囲気中の水分についても保護膜に化学吸着して化合物を形成する原因となることから,このような接合面の重ね合わせを行う雰囲気は湿度が50%以下に調整されていることが好ましい。
(5)重ね合わせを行う際の温度
前述したように,本発明の方法により接合を行う場合,接合膜を構成する金属の如何によらず非加熱での接合が可能である。
但し,先に記載したように,基体にダメージを与えない範囲で基体を加熱して,体拡散係数を上昇させた接合を行うものとしても良い。
(6)重ね合わせの具体例
本発明による原子拡散接合方法による接合工程の一例を,図2を参照して説明する。図2において,薄膜形成を行う真空容器内の上部に,形成する接合膜の構成金属から成るターゲットを備えたマグネトロンカソードを配置すると共に,このマグネトロンカソードの下部に,相互に貼り合わされる基体を載置する治具を配置し,この治具に取り付けた基体の接合面に対して接合膜を形成する。
接合膜の形成後,保護膜と成るAu又はAu合金製のターゲットを備えたマグネトロンカソードの下部に前述した治具を移動させ,接合膜上に更に保護膜を形成する。
図示の実施形態において,前述の治具に設けられたテーブルは,図2中の紙面右側の図に破線で示す成膜位置と,実線で示す,貼り合わせ位置間を回動可能に構成されており,基体の一方を載置したテーブルの一端と,基体の他方を載置したテーブルの一端とが突き合わされた状態に配置されていると共に,この突き合わせ部分を中心として前記2つのテーブルが回動して,両テーブルの他端を上方に持ち上げることにより,前記テーブル上の載置された2つの基体の接合面が重合されるよう構成されている。
なお,このように基体の貼り合わせを行う治具は,図示の構成のものに限定されず,貼り合わせを行う基体の形状等にあわせて各種形状,構造のものを使用することができ,また,例えばロボットアーム等によって基体の一方若しくは双方を操作して接合を行うものとしても良く,更には,人の手によって基体同士を重ね合わせるものとしても良い。
このような治具が収容された真空容器は,これを前述したクラス1000以上の清浄度を実現可能なクリーンルーム内に配置し,又は,図2に示すように真空容器の出入口に連通して前述したクラス1000以上の清浄度を実現可能なグローブボックスを設けておく。
そして,前述したように接合膜と保護膜とをそれぞれ所定厚みで形成した後,真空容器内を1×10-4Paを越える圧力,例えば大気圧やクリーンルーム内の圧力に戻す。このように真空容器内の圧力の上昇は,例えば真空容器内に窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスを導入することにより行っても良く,又は,空気を導入することにより行っても良い。
このようにして,真空容器内の圧力を1×10-4Paを越える圧力,例えば大気圧やクリーンルーム内の圧力に迄上昇させた後,真空容器の出入口を開き,真空容器内より前述した治具と共に基体を取り出し,前記治具に設けられたテーブルを,前述した,貼り合わせ位置に回動させて,基体を0.5MPa以下程度の比較的弱い力で貼り合わせる。この貼り合わせにより,両基体の平滑面に設けられた保護膜同士が重ね合わされると,保護膜同士の接合界面や結晶粒界において原子が拡散して原子再配列を生じるだけでなく,この原子再配列が接合膜にまで伝搬されて接合界面に存在した保護膜の原子が接合膜中に拡散して保護膜が消失乃至は一体化することによりその性質を失い,接合膜の有する物理的特性が維持された接合部が生成される。
これにより,本発明の原子拡散接合では,接合膜上に保護膜が形成されているものの,保護膜がその存在を失い,実質上,保護膜を介在させることなく,接合膜同士を接合したと同様の接合部を得ることができる。
なお,上記の説明では同一材質の接合膜が形成された基体相互を貼り合わせる場合について説明したが,異なる材質の接合膜が形成された基体相互を貼り合わせる場合には,例えば共通のクリーンルーム内に設置された2つの真空容器内のそれぞれに前述したマグネトロンカソードを配置して各真空容器内でそれぞれの基体の接合面に対してそれぞれ異なる材質の接合膜を形成すると共に保護膜を形成し,その後,各真空容器より取り出した基体を前述のクリーンルーム内で重ね合わせることにより接合する等しても良い。
また,各基体に対する接合膜及び保護膜の形成は,必ずしも同時に行う必要はなく,時間差を以て行っても良い。
〔原子拡散の伝搬確認試験〕
(1)実験の目的
室温における体拡散係数が1×10-45(m2/s)以上の金属によって接合膜を形成することで,保護膜間で生じた原子再配列が接合膜にまで伝搬していることを確認する。
(2)実験方法
物理実験用の超高真空(UHV:Ultra High Vacume)5極カソード−マグネトロンスパッタ装置(到達真空度2×10-6Pa)を使用して,接合膜及び保護膜をそれぞれ下記の実施例1〜3,比較例1の材質によって形成し,その後,大気圧中に取り出して接合する。接合後の接合部分の断面を,透過型電子顕微鏡(TEM)を使用して観察し,原子再配列の発生状態を確認した。
実施例1
実施例1−1
石英ガラス(SiO2)製の2枚の基板に形成したTi下地層(5nm)上に,接合膜としてAgの微結晶薄膜をそれぞれ20nmの厚みで成膜し,その後,前記接合膜上に保護膜としてAuの微結晶薄膜をそれぞれ2nmの厚みで成膜した。
実施例1−2
接合膜であるAg膜を4nmの厚さで成膜した。その他は,実施例1−1と同じである。
実施例2
石英ガラス(SiO2)製の2枚の基板上に接合膜としてTiの微結晶薄膜をそれぞれ20nmの厚みで成膜し,その後,前記接合膜上に保護膜としてAuの微結晶薄膜をそれぞれ2nmの厚みで成膜した。
実施例3
石英ガラス(SiO2)製の2枚の基板に形成したTi下地層(5nm)上に,接合膜としてCuの微結晶薄膜をそれぞれ20nmの厚みで成膜し,その後,前記接合膜上に保護膜としてAuの微結晶薄膜をそれぞれ2nmの厚みで成膜した。
比較例1
石英ガラス(SiO2)製の2枚の基板上に接合膜としてAgの微結晶薄膜をそれぞれ20nmの厚みで形成し,保護膜を形成することなく大気圧中に取り出して接合した。
(3)実験結果
実施例1〜3における接合部の断面電子顕微鏡写真(TEM像)をそれぞれ図3〜図5に示す。また,比較例1における接合面の断面電子顕微鏡写真(TEM像)を図7に示す。
実施例1−1
図3に,Ag(20nm)の接合膜上にAu(2nm)の保護膜を成膜して,大気に取り出してから接合したサンプルの断面TEM像(膜厚は片側あたりの膜厚)を示す。このサンプルでは,石英ガラスと接合膜(Ag)間にTi(5nm)の下地膜を設けている。原子再配列により,Ag/Au/Au/Agの全体にわたり,結晶粒が一体化していることがわかる(結晶学的に一体化。Au層と思われる黒い層が,結晶粒の中ほどに見える結晶粒もある。膜中に不均質な空隙も形成されない。(像の違いは倍率の違いによる))。
このような一体化は,次の要因で生じている。
(a) AuもAgも体拡散係数が大きい,
(b) AuもAgもfcc構造である,
(c) Auに対するAgの格子不整合は+0.2%程度でありミスフィットが小さい。
実施例1−2
サンプルの断面TEM像の添付は省略するが,Ag(4nm)の接合膜上にAu(2nm)の保護膜を成膜して,大気に取り出してから接合した実施例1−2においても,実施例1−1と同様,原子再配列により,Ag/Au/Au/Agの全体にわたり,結晶粒が一体化した結果が得られた。
実施例2
Ti(20nm)の接合膜上にAu(2nm)の保護膜を成膜して,大気に取り出してから接合したサンプルの断面TEM像(膜厚は片側あたりの膜厚)を図4に示す。
図4(A)の明視野像でわかるように,Au/Auの原子再配列がTi膜中にも及び,結果としてAuが片側あたりで10nmにわたり拡散している。Tiはhcp構造,Auはfcc構造であるが,電子線回折にはhcp構造の回折スポットのみ観察されており,原子再配列によりAuが拡散した部分でもTiと同じhcpの結晶構造を維持している。(但し,原子再配列が始まった接合前のAu/Au界面近傍の位置にfcc構造が全くないかどうかは明らかではない。)
また,hcp(002)に対応する回折スポットの暗視野像(C)を見ると,Au/Au拡散層を挟む上下のTi層が連続的であり,原子再配列が膜全体にわたって生じていることを示唆している。(hcp(002)の回折スポットは,fcc(111)と分離できないが,fcc構造の他の回折スポットが観察されていないため,hcp(002)の回折スポットであると同定できる。)
実施例3
図5(A)は,Cu(20nm)の接合膜上にAu(2nm)の保護膜を成膜して,大気に取り出してから接合したサンプルの断面TEM像(膜厚は片側あたりの膜厚)である。このサンプルでは,石英ガラスと接合膜(Cu)間に下地膜としてTi(5nm)を設けている。Au/Au界面で生じる原子再配列がCu中に伝搬することで,AuがCu中に拡散しているが,上下のCuの結晶粒は一体化されていない.
なお,Au保護膜を用いずにCu膜だけで大気中で接合した実験の結果では,接合時に100℃以上に加熱することが必要であった。また,Cuは若干酸化するため,接合界面にCu酸化物(Cu2O)が形成され,2つのCu膜の結晶粒は,接合界面付近においても一体化しないことが判明した。更に,酸化物が界面に形成されることで,接合膜の電気的・熱的導電性が大きく損なわれた。
図5(B),(C)に示すように界面近傍〔図5(B)中の破線で囲った部分〕を拡大した高分解能像〔図5(C)〕を参照すると,Au/Au界面は消失し,そこで生じた原子再配列がCu層にまで及んでいることがわかる。
しかし,原子再配列は途中で止まっており(即ち,Auの拡散が抑制されており),上下のCuの結晶粒は一体化していない。
これは,
(a)CuはAgやAuと同様に体拡散係数が大きく,
(b) CuもAgやAuと同様にfcc構造であるが,
(c) Auに対するCuの格子不整合は−11.4%程度もありミスフィットが大きいため,原子再配列の伝搬が進行しないためであると推察される。
比較例1
Agの微結晶薄膜を接合膜として形成し,保護膜を形成することなく大気中で接合した比較例1では,接合自体は可能であったが,石英ガラス基板を平面方向に透視して接合部を観察したところ,図7(C)に領域A,Bで示す位置の接合部に斑模様が生じており,接合部が不均質であることが確認された。
この斑模様が生じている領域A(金属色の部分)と,領域B(褐色の部分)をそれぞれ電子顕微鏡(TEM)により観察した結果,領域A〔図7(A)参照〕,領域B〔図7(B)参照〕に示すように,Ag膜中の所々に空隙が生じていることが確認された。
特に,褐色の斑として認識された領域Bでは空隙の大きさが大きく,空隙の密度も高いものとなっており,不完全な接合状態であることが確認された。
(4)実験結果の考察
以上の結果から,室温における体拡散係数が1×10-45(m2/s)以上の金属であるAg,Ti,Cuの微結晶薄膜によって接合膜を形成した実施例1〜3では,いずれも保護膜として形成したAu/Au膜間で生じた原子再配列が,接合膜にまで伝搬し,保護膜の成分が接合膜中に拡散して保護膜が消失していることが確認された。
よって,上記の実験結果より,体拡散係数が1×10-45(m2/s)以上の金属によって接合膜を形成することで,保護膜で生じた原子再配列を,接合膜にまで伝搬させて両者が一体化した薄膜を接合部に形成することができることが確認された。
なお,上記体拡散係数の数値範囲に含まれる物質としては,上記で試験を行ったAg,Ti,Cuの他,AlやZn,Zrもあるが,これらの材質はいずれも原子拡散の伝搬が確認されている上記Ag,Cuよりも室温における体拡散係数が大きな物質であることから,これらの材質で接合膜を形成した場合にも同様に保護膜で生じた原子拡散を接合膜にまで伝搬させることができるものと合理的に予測することができる。
また,Agの微結晶薄膜のように,保護膜を形成することなく大気圧下での接合が可能な材質によって接合膜を形成する場合であっても,Auの保護膜によって保護した状態で接合を行うことにより,接合後に接合膜と保護膜とが一体化して形成される膜内の構造が均質であり,空隙等の欠陥を伴わない接合が得られることから,本発明の表面活性化接合方法は,接合膜をAgやAg合金等とした場合においても有効であることが確認された。
〔Au合金膜を使用した接合試験〕
(1)実験の目的
保護膜の材質として使用するAu合金に関し,Au単金属の場合と同様の接合性能を発揮する合金成分の添加量(最大量)を確認する。
(2)実験方法
物理実験用の超高真空(UHV:Ultra High Vacume)5極カソード−マグネトロンスパッタ装置(到達真空度2×10-6Pa)を使用して,石英ガラス(SiO2)製の2枚の基板上に形成したTi製の接合膜上に,保護膜として,後掲のAu−Ag合金製の保護膜(実施例4),及びAu−Cu合金製の保護膜(実施例5)を形成した後,大気圧中に取り出して接合し,Au単金属製の保護膜を形成して接合した場合と接合性能を比較した。
実施例4では,Au−Ag合金中のAgの含有量を段階的に増加し,Au単金属製の膜と同様の接合性能が得られるAgの最大添加量を求めた。
実施例5では,Au−Cu合金中のCuの含有量を段階的に増加し,Au単金属製の膜と同様の接合性能が得られるCuの最大添加量を求めた。
(3)実験結果
実施例4(Au−Ag合金製保護膜)
上記試験の結果,Au−Ag合金膜を保護膜として使用した接合試験では,Agの含有量を最大で80at%増加した場合であっても,Au単金属の膜と同様の接合性能を発揮する(加圧しなくても,大気中で薄膜を重ねることで原子再配列が伝搬し接合できる)ことが確認された。
図6は,Ag80at%:Au20at%の合金製の保護膜を使用して接合したサンプルの断面SEM像である。
なお,Au−Ag合金製の保護膜では,Au単金属製の保護膜との比較において膜厚の低減や大気暴露時間の増加にともない,接合性能は低下する傾向が見られたが,大気中に取り出して接合を行うに必要な作業時間を確保しても,原子再配列を伴う接合が可能である。
実施例5(Au−Cu合金製保護膜)
Au−Cu合金製の保護膜を使用した接合試験例では,Cuの含有量を最大で95at%に増加した場合であっても,Au単金属の膜を保護膜として使用した場合と同様の接合性能,すなわち,加圧しなくても,大気中で薄膜を重ねることで原子再配列が伝搬した接合を行えることが確認された。
なお,Au−Cu合金製の保護膜においても,膜厚の低減や大気暴露時間の増加にともない,接合性能は低下する傾向が見られたが,大気中に取り出して接合を行うに必要な作業時間を確保しても,原子再配列を伴う接合が可能である。
このように,Cu含有率が比較的高いAu−Cu合金を保護膜として使用できることから,これをCu製の接合膜上に形成する保護膜の材質として採用することで,接合性の向上が得られることが予測される。
すなわち,Au−Cu合金成分中のCu成分が増加するに従い,合金の格子定数は,Auの格子定数からCuの格子定数に向かって単調に変化して(近付いて)いく。
従って,実施例3(図5参照)で行った,Au単金属製の保護膜を使用したCu接合膜の接合試験結果において,Cu接合膜に対するAuの原子再配列の伝搬の抑制を,格子不整合が−11.4%と大きいためであると考察したが,Au単金属製の保護膜に代えて,Au−Cu合金製の保護膜を使用してCu接合膜の接合を行う場合,格子不整合に基づく伝搬の抑制を緩和することができる結果,Au−Cu保護膜からCu接合膜のより深部に対して迄,原子再配列の伝搬を生じさせることができるものと推察できる。
〔接合に必要な保護膜の膜厚確認試験〕
(1)試験の目的
保護膜に必要な厚さの下限値を確認する。
(2)試験方法
2枚の基板上に形成したCr膜(0.5nm)上にAu膜を形成した後,大気圧中に取り出して接合し,Au膜同士が重なり合うように接合した。
接合後の基板に対し剥離試験を行い,剥離時における荷重(MPa)を接合強度として測定した。
(3)試験結果
試験結果を,図8及び表2に示す。
図8及び表2より,Au膜は薄くし過ぎると接合強度が得られない。Au膜/Au膜の接合では,2nm以上必要であることが判る。
これは,大気に出した際に,Au膜表面に吸着する水や酸素等の層の厚みが相対的に無視できなくなるためと推察される。
したがって,Au膜を保護膜として使用する場合にも,水や酸素等の吸着による影響を排するためには,2nm以上の厚さで形成する必要があると推定される。
但し,接合膜が厚くなると,接合膜の表面粗さが大きくなるため,保護膜は,2nmを下限として,接合膜の厚みの増加に応じて増加することが好ましい。
一方,保護膜の厚みの上限は,原子再配列を接合膜まで伝搬させる,すなわち,保護膜の中で厚み方向に一体化できる膜厚,という意味では,大気中の接合なので最大でも20nm程度と推定できる。
図9は,片側20nmのAu膜同士を大気中で接合したサンプルの断面TEM像であり,図9に示すように,片側20nmのAu膜同士の接合では,Au/Au膜同士が一体化していることが判る。因って,保護膜の厚みの範囲は,2nm〜20nmとすることが好ましい。
なお,実施例1−2の結果より,Au保護膜(2nm)に対し,2倍の厚さである4nmのAg接合膜を形成したサンプルでは,原子再配列の伝搬が生じると共に,保護膜と接合膜の一体化が生じることが確認されている。
そして,このような原子再配列の伝搬と,これに伴う保護膜と接合膜との一体化は,実施例1−1,実施例2,実施例3で示したように,2nmの保護膜に対し,10倍の厚みである20nmの接合膜を形成したサンプルのいずれにおいても確認されている(図3〜図5参照)。
上記の実験結果より,接合膜の厚さを保護膜の厚さの2倍以上とした例では,いずれも原子再配列の伝搬による保護膜と接合膜との一体化が得られることが確認されている。
以上で説明した本発明の原子拡散接合方法は,非加熱,非加圧で原子レベルでの接合を行うことができること,接合後の界面応力が小さいこと,しかも微結晶薄膜の形成を行った真空よりも高い圧力の雰囲気,例えば大気圧の空気中に暴露した状態で接合面の重ね合わせを行うことができ作業性が向上されていること等から,各種新機能・高機能デバイスの創製,情報家電の小型化,高集積化等の用途において容易に利用することができる。
特に,Au膜を形成して接合を行う場合と同様,大気圧の空気中に暴露した後においても接合することができるものでありながら,接合により生じた界面付近の物理的特性として,接合膜の物理的特性を維持できることから,例えばAuよりも熱伝導度が高く,電気抵抗率が低いAgやCuによって接合膜を形成することで,ヒートシンクやヒートスプレッダ等の放熱部材の接合をより熱抵抗の低下された状態で行うことができ,また,電子デバイスの接合等を接合部の電気抵抗をより小さな状態で行うことが可能となる。
この場合,保護膜として,Agを最大80at%程度含めることができるAu−Ag合金,Cuを最大95at%程度含めることができるAu−Cu合金を使用することで,接合部に介在するAu量を可及的に減少させることが可能となり,より低抵抗,高熱伝導性を有する接合面を得ることができる。
また,Auに比較して光の反射率が高いAg,Alで接合膜を形成することで,発光ダイオードの鏡面レイヤーの接合等に際し,より一層の高輝度化等に寄与し得るものとなる。

Claims (17)

  1. 真空容器内において,一方及び他方の基体の平滑面に,Au又はAu合金を除く室温における体拡散係数が1×10-45(m2/s)以上の単金属,あるいは合金から成る微結晶構造の接合膜を形成し,該接合膜上に,Au又はAu合金から成る微結晶構造の保護膜を形成すると共に,
    1×10-4Paを越える大気圧下を含む圧力の雰囲気下において,前記一方及び他方の基体の前記平滑面を,前記保護膜同士が接触するように重ね合わせることにより,前記保護膜間に原子拡散を生じさせると共に,該保護膜間で生じた原子拡散を前記接合膜に伝搬させて前記保護膜の原子拡散により前記接合膜の原子を再配列してこれと一体化させることにより,接合界面における前記保護膜が拡散し,前記接合膜の有する物理的特性が維持された接合部を生成したことを特徴とする原子拡散接合方法。
  2. 前記接合膜を,前記保護膜と同一結晶系の結晶構造を有する単金属あるいは合金によって形成することを特徴とする請求項1記載の原子拡散接合方法。
  3. 前記保護膜をAu合金によって形成すると共に,該Au合金に,合金成分として,前記接合膜を構成する金属を含有したことを特徴とする請求項1又は2記載の原子拡散接合方法。
  4. 前記保護膜をAu−Ag系合金,又はAu−Cu系合金により形成したことを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の原子拡散接合方法。
  5. 前記基体の重ね合わせを,200℃以下の温度で行うことを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の原子拡散接合方法。
  6. 前記接合膜を,前記保護膜の2倍以上の厚みで形成することを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の原子拡散接合方法。
  7. 前記保護膜を,2nm〜20nmの膜厚に形成したことを特徴とする請求項1〜6いずれか1項記載の原子拡散接合方法。
  8. 前記基体の重ね合わせを,大気圧以上の圧力の雰囲気下で行うことを特徴とする請求項1〜7いずれか1項記載の原子拡散接合方法。
  9. 前記基体の重ね合わせを行う雰囲気が空気であることを特徴とする請求項1〜8いずれか1項記載の原子拡散接合方法。
  10. 前記基体の重ね合わせを行う雰囲気が78%を越える不活性ガスを含むことを特徴とする請求項1〜9いずれか1項記載の原子拡散接合方法。
  11. 前記基体の重ね合わせを,塵埃の除去された雰囲気下で行うことを特徴とする請求項1〜10いずれか1項記載の原子拡散接合方法。
  12. 前記基体を重ね合わせる力の強さが0.5MPa以下であることを特徴とする請求項1〜11いずれか1項記載の原子拡散接合方法。
  13. 前記接合膜を形成する前に,前記接合膜の形成と同一真空中において,前記接合膜の形成を行う基体の平滑面に生じている変質層を除去することを特徴とする請求項1〜12いずれか1項記載の原子拡散接合方法。
  14. 前記接合膜が形成される前記基体の平滑面に,前記接合膜とは異なる材料の薄膜から成る下地層を1層以上形成し,当該下地層上に前記接合膜を形成することを特徴とする請求項1〜13いずれか1項記載の原子拡散接合方法。
  15. 前記下地層が,Ti,V,Cr,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta,Wの元素群より選択されたいずれか1つの単金属により形成し,又は前記元素群より選択された1つ以上の元素を含む合金により形成することを特徴とする請求項14記載の原子拡散接合方法。
  16. 前記下地層を形成する前記単金属又は合金として,当該下地層上に形成される前記接合膜を形成する単金属又は合金よりも高融点で,かつ,前記接合膜を形成する単金属又は合金に対して融点の差が大きいものを使用することを特徴とする請求項14又は15記載の原子拡散接合方法。
  17. 請求項1〜16いずれか1項記載の原子拡散接合方法により接合された構造体。
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