JP6318441B2 - 接合方法 - Google Patents

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本発明は接合方法及び構造体の製造方法に関し,例えば電子デバイスに放熱体を接合する場合等,複数部材間を接合する際に用いる接合方法,及び前記方法で放熱体が接合された電子デバイス等のように,接合部を前記方法により接合する構造体の製造方法に関する。
所望の機能を備えた構造体を得るために,異なる二以上の部材を接合して所定の構造を備えた構造体を組み立てることは,各種分野において広く行われている。
一例として,電子デバイスの分野では,デバイスの実装,集積化,パッケージング等を行う際に,このような接合技術は不可欠なものとなっている。
例えば,LSI等の電子部品のパッケージには,パッケージングされた電子デバイスを冷却するための放熱体を取り付けることが一般的に行われており,特に絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)に代表されるパワーデバイス,LED等の光デバイス等にあっては,その性能の向上を図るべく高出力化,高集積化が行われた結果,発熱量の増大に伴い,より効果的な冷却を行うことができるような熱伝導率の高い接合方法が要望されている。
このような放熱体の取り付けは,従来,熱伝導率の良い材質でできた,ヒートスプレッダ等と呼ばれる放熱板を接着剤による接着やはんだ付け,ロウ付け等の方法で接着することにより行われており,また,必要に応じて,このヒートスプレッダに,更に放熱フィン等を備えたヒートシンクを前記ヒートスプレッダと同様の方法で接着することで,電子デバイスで発生した熱を,ヒートスプレッダとヒートシンクに伝導すると共に,空気との熱交換によって放熱することで冷却を行っている。
しかし,このような放熱体の接着に使用されている前述の接着剤,はんだ,ロウ材等の接合材は,必ずしも熱伝導率が高いものではなく,しかも,電子デバイスと放熱部品,放熱部品と放熱部品間には,数μm〜数mmの厚みで接合材が介在することで,このような接合材の厚みが電子デバイスの小型化,高集積化に伴い相対的に無視できない厚みとなっているだけでなく,熱抵抗を増大させて電子デバイスの冷却を阻害している。
しかも,前述した接着方法のうち,はんだ付け,ロウ付けでは,部材間の接着を行うために被接合材を高温に加熱する必要があり,熱に弱い電子デバイスの性能低下や,熱歪による欠陥や劣化等の問題が発生する。
なお,被接合材を非加熱,あるいは比較的低温での加熱によって接合する方法として,本発明の発明者らは,ウエハやチップ等の被接合材のそれぞれの平滑面に,到達圧力を10-4Pa以下の高真空度とした真空雰囲気において,例えばスパッタリングやイオンプレーティング等の真空成膜方法により,かつ,好ましくはプラズマの発生下で金属や各種化合物の微結晶構造を有する被膜を平滑面に形成し,前記被膜の成膜中,あるいは成膜後に前記真空を維持したまま,前記被接合材の前記平滑面に形成された被膜相互を常温で重合することにより,前記被膜間に生じた結合により二つの被接合材を接合する「常温接合方法」を既に提案している(特許文献1参照)。
また,本発明の発明者らは,このような被膜の材質として,所定の体拡散係数と酸化物の自由生成エネルギーを有する金属を選択することで,前述した特許文献1に記載の方法と同様にして被接合材の表面に微結晶薄膜を形成した後,10-4Paよりも高い圧力,例えば被接合材を真空容器から取り出して大気圧下において重ね合わせた場合であっても,特許文献1に記載の方法と同様にして被接合材の接合が可能であることを見出すと共に,これを接合方法の発明として提案している(特許文献2参照)。
特開2008−207221号公報 特開2011−235300号公報
上記従来の常温接合方法は,いずれも平滑面に形成する微結晶膜の膜厚を数十nm〜数百nm程度の厚みとして形成することができるため,前述した接着剤,はんだ付け,ロウ付け等の方法で接着を行う場合に比較して接合界面に存在する接合材の厚さを大幅に減じることができ,その結果,接合界面に比較的厚い接合材の層が形成されることにより生じる熱抵抗の増大を可及的に減少させることができることが予想される。
特に,特許文献2で規定する体拡散係数と酸化物の自由生成エネルギーの数値範囲に含まれる単金属は,金(Au),銀(Ag),銅(Cu),パラジウム(Pd),白金(Pt),ニッケル(Ni),亜鉛(Zn)等,いずれも熱伝導率の高い金属であることから,この接合方法を放熱体の接合に適用した場合,前述したように接合材層の厚さが薄いこととも相俟って,接合界面における熱抵抗を大幅に減少させることができるものと予想される。
しかし,特許文献1に記載の方法では,被接合材の平滑面間の重ね合わせを成膜と共に同一の真空中で行うことが前提であるだけでなく(例えば特許文献1の請求項1),同一の真空中において接合を行う場合であっても「被膜の表面が真空容器内に残留している不純物ガス等との反応によって汚染が進行するに従い,被膜相互の付着強度は低下してゆき,やがて接合自体ができなくなる。」と説明するように(特許文献1「0055」欄),従来の常温接合方法では平滑面に対する微結晶構造の被膜形成を行った後に,これに続き行う平滑面の重ね合わせは,平滑面の処理を行ったと同一の真空容器内で,かつ,この真空容器内を高真空の状態に維持したまま行わなければならず,例えば,微結晶薄膜を形成した後の平滑面を大気圧の空気等に暴露してしまえば,接合自体が不可能となるというのが,本発明の発明者らを含めた当業者の認識であり,この認識を前提として,平滑面の重ね合わせを高真空の空間内において行う構成を採用していた。
そのため,被接合材の平滑面を重ね合わせる作業は高真空に維持された真空容器内という限定された空間,限定された条件下で行われており,被接合材同士を重ね合わせる作業が極めて行い難いだけでなく,前記接合方法を実現するためには真空容器内を高真空に保ったまま,真空容器内に配置された被接合材の平滑面を重ね合わせる作業を行うための特殊な構造を備えたロボットアームや治具,その他の貼着装置が必要となり,多大な初期投資が必要となる。
一方,特許文献2として紹介した常温接合方法にあっては,微結晶膜の材質として所定の体拡散係数と酸化物の自由生成エネルギーを有する金属を選択することで,被接合材を真空容器より取り出して,一例として大気圧下で重ね合わせを行った場合であっても接合を行うことができるために作業性が大幅に改善される。
しかも,特許文献2における微結晶薄膜,すなわち接合材の材質は,金(Au),銀(Ag),銅(Cu)等の熱伝導率の高い材質であることから,接合界面における熱抵抗の発生を大幅に低減できるものと予想される。
しかし,特許文献2に記載の方法で実際に放熱体の接合を行ってみたところ,電子デバイスと放熱体,又は放熱体同士の接合を行うこと自体は可能であったが,この接合によって得られた構造体は,接合強度が弱く,接合界面において比較的簡単に剥離してしまうと共に,熱伝導を行った際に接合界面である平滑面の温度が均一ではなく,部分的に温度の高い部分,すなわち熱抵抗の大きな部分が生じており,予想したような高い放熱性能を得ることができなかった。
そこで,このような問題の原因を検討したところ,このような低接合強度と,部分的に大きな熱抵抗が残存する原因は,放熱体がアルミや銅等の金属の塊を削り出して製造された,ウエハやチップに比較して大きな厚みを持つ材料の塊(所謂「バルク」)によって構成されていることと,この放熱体の接合面である平滑面に存在する,比較的長周期の凹凸(以下,「うねり」という)が原因で生じるものと考えられる。
すなわち,接着剤やはんだ,ロウ付け等によって行っていた従来の接合方法では,前述したように電子デバイスと放熱体の平滑面間,あるいは放熱体同士の平滑面間には,接着剤,はんだ,ロウ材等の接合材が数μm〜数mmにも及ぶ厚さで充填されているため,ヒートスプレッダやヒートシンク等の放熱体の平滑面は,ある程度の平坦さを備えていれば,多少のうねりを伴うものであったとしても,このようなうねりは接合材の厚みによって吸収することができていたものと考えられる。
一方,前述した特許文献2に記載の接合方法においても,一般に1.0mm未満の肉厚に形成されるチップやウエハを接合対象とする場合には,チップやウエハの表面粗さが,算術平均粗さRaで前述の放熱体の接合面と同程度の数値を示すものであったとしても貼り合わせ時に加圧を行うことなく接合することが可能で,前述算術平均粗さRaで表れるような比較的短周期の凹凸は,バルク材における接合を妨げる原因とはなっていないことが予想される一方,接合強度が得られなかったバルク材同士の接合界面を見ると,所々にギャップ(空隙)が生じており,算術平均粗さRaでの数値に現れる短周期の凹凸よりも,より長周期の凹凸である表面のうねりが,バルク材同士の接合を阻害しているものと考えられる。
そうすると,チップやウエハ等の接合では,接合対象が薄肉であるゆえに,このようなうねりは,チップやウエハが変形する(反る)ことにより吸収され得るが,被接合材の一方又は双方が,前述した放熱体のようにチップやウエハに比較して十分に大きな肉厚を有するバルクである場合には,うねりを吸収し得る変形が生じ得ないことが,接合強度を低下させている原因であると考えられる。
しかも,前述のはんだや接着剤による接合では,接合界面にはんだや接着剤等の接合材を厚く充填してその厚みによって前述したうねりを吸収させることも可能であるが,前述した特許文献2に記載の方法で放熱体の接合を行う場合,電子デバイスと放熱体,又は放熱体同士の接合界面に介在する数nm〜数百nm程度の薄膜の接合材では前述のうねりを吸収することもできず,その結果,平滑面が部分的にしか接合されずに接合強度不足が生じると共に,接合しなかった部分に生じたギャップ(空隙)が高い熱抵抗を生じさせているものと考えられる。
前掲の特許文献2に記載の接合方法を,放熱体等の接合に適用する場合に生じ得る,前述した接合強度不足や熱抵抗の問題を解消するには,ヒートシンクやヒートスプレッダ等の放熱体の平滑面を,従来の放熱体に対し要求される以上の高精度な平滑面に研磨することも考えられる。
しかし,このような高精度の研磨を行う場合,放熱体の研磨に多大なコストがかかり,このコストが製品の価格に反映されて市場における価格競争力を失う。
また,別の方法としては,接合界面に介在させる接合材(微結晶薄膜)の膜厚を,放熱体の表面に生じているうねりを吸収できる厚さに迄増大させることも考えられる。
しかし,このような厚い膜の形成には長時間を必要とし,この方法で接合を行う場合には生産性が低下すると共,前述したように接合界面に介在する膜厚が厚くなれば,その分,熱抵抗の増大も予想される。
なお,以上の説明では,被接合材の一例として,ヒートシンクやヒートスプレッダ等の放熱体を例に挙げて説明したが,このような接合時における接合不良は,放熱体以外の他の部品等の接合に際しても問題となり得るものである。
すなわち,接合界面が部分的にしか接触していないことによる接合強度不足は,接合によって得られた構造体の用途に拘わらず広く問題となることであり,また,平滑面が部分的にしか接触しておらず,接合界面にギャップ(空隙)が生じていることは,熱伝導性の低下のみならず,例えば振動子の接合等にあっては振動の伝達特性の低下を生じ,また,電気,電子部品にあっては電気抵抗の増大をもたらすなどの物理的,機械的特性の低下をもたらすものとなる。
そこで,本発明の発明者らは,前述した特許文献1,2に記載の接合方法を基調としつつ,この接合方法を放熱体のような比較的肉厚の被接合材の接合に対し適用した場合に生じ得る前述した問題を,構造材の平滑面の平坦化精度の向上や,微結晶薄膜の膜厚の増大等を行うことなく解消できる方法を見出すことにより,既存の部品等を特殊な加工等を行うことなく使用できると共に,生産性を低下させることなく,伝熱性能,振動伝搬性能,電気・磁気特性等の物理的,機械的な特性の向上と,必要な接合強度を得ることができる接合方法,及び,前記方法で接合された接合面を備える,高い放熱性能を持った構造体を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために,本発明の接合方法は,
一方の被接合材に設けた平滑面と,他方の被接合材に設けた平滑面とを重合した状態で接合する方法であって,
前記一方又は他方の被接合材の少なくともいずれかが,1.0mm以上の肉厚を有する材料塊(バルク)によって構成された厚肉の被接合材であり,
真空容器内において,一方の前記被接合材の前記平滑面に,単金属,あるいは合金から成る微結晶構造の薄膜を形成すると共に,少なくとも表面が単金属,あるいは合金から成る微結晶構造を有する平滑面を備えた前記他方の被接合材の前記平滑面に,前記一方の被接合材に形成された前記薄膜が接触するように前記一方,他方の2つの被接合材を重ね合わせると共に,前記厚肉の被接合材の前記平滑面における所定の測定範囲内の最高点と最低点の高低差であるPV値に基づいて,前記厚肉の被接合材が厚み方向に前記PV値に対応した量以上の変位を生じる加圧力を加えることにより,前記薄膜と前記他方の被接合材の前記平滑面との接合界面及び結晶粒界に原子拡散を生じさせることにより前記2つの被接合材を4.0MPa以上の接合強度で接合することを特徴とする(請求項1)。
前記一方の被接合材の前記平滑面に形成する微結晶構造の薄膜を,室温における体拡散係数が1×10-40(m2/s)以上で,且つ,室温における酸化物の生成自由エネルギーが−15(kJ/mol of compounds)以上の単金属,あるいは合金により形成すると共に,前記他方の被接合材の前記平滑面の少なくとも表面を,室温における体拡散係数が1×10-40(m2/s)以上で,且つ,室温における酸化物の生成自由エネルギーが−15(kJ/mol of compounds)以上の単金属,あるいは合金から成る微結晶構造とし,
前記2つの被接合材の重ね合わせを,1×10-4Paを超える圧力の雰囲気下において行うものとしても良い(請求項2)。
なお,ほとんどの金属の室温における酸化物の生成自由エネルギーは負の数値であり,数値が小さい(絶対値が大きい)程,酸化し易いものと考えられていることから,数値が小さい(絶対値が大きい)程,酸化物の生成自由エネルギーが『大きい』と表現される場合もあるが,ここで説明する大きさは数値の大きさ〔符号(負号)を含めた数値の大きさ〕を言う。従って,例えば生成自由エネルギーが「−n(kJ/mol of compounds)以上」(nは数字)とは,−n≦ΔG(ΔGは酸化物の生成自由エネルギー)であること,すなわち酸化物の生成自由エネルギーが負であってその絶対値が「n」以下であるか,あるいは,同エネルギーが「0」または正の値であることを言う(以下,同じ)。
なお,上記体拡散係数及び酸化物の生成自由エネルギーを有する単金属としては,Au,Agがある。
また,前記一方の被接合材の前記平滑面に形成する微結晶構造の薄膜を,室温における体拡散係数が1×10-45(m2/s)以上で,且つ,室温における酸化物の生成自由エネルギーが−150(kJ/mol of compounds)以上の単金属,あるいは合金により形成すると共に,前記他方の被接合材の前記平滑面の少なくとも表面を,室温における体拡散係数が1×10-45(m2/s)以上で,且つ,室温における酸化物の生成自由エネルギーが−150(kJ/mol of compounds)以上の単金属,あるいは合金から成る微結晶構造とし,
前記2つの被接合材の重ね合わせを,1×10-4Paを超える圧力の雰囲気下において100℃以上の温度で加熱しながら行うものとしても良い(請求項3)。
なお,上記体拡散係数及び酸化物の生成自由エネルギーの数値範囲に属する単金属としては,前述のAu,Agの他,Cuがある。
本発明の更に別の接合方法は,
前記一方の被接合材の前記平滑面に形成する微結晶構造の薄膜を,室温における体拡散係数が1×10-55(m2/s)以上で,且つ,室温における酸化物の生成自由エネルギーが−330(kJ/mol of compounds)以上の単金属,あるいは合金により形成すると共に,前記他方の被接合材の前記平滑面の少なくとも表面を,室温における体拡散係数が1×10-55(m2/s)以上で,且つ,室温における酸化物の生成自由エネルギーが−330(kJ/mol of compounds)以上の単金属,あるいは合金から成る微結晶構造とし,
前記2つの被接合材の重ね合わせを,1×10-4Paを超える圧力の雰囲気下において200℃以上の温度で加熱しながら行うものとしても良い(請求項4)。
なお,上記体拡散係数及び酸化物の生成自由エネルギーの数値範囲に属する金属としては,前掲のAu,Ag,Cuの他,Pd,Pt,Ni,Znがある。
前記一方及び他方の被接合材は,いずれともに前記厚肉の被接合材とし,前記厚肉の被接合材のいずれとも,それぞれの前記PV値に対応した量以上の変位を生じる前記加圧力を加えることができる(請求項5)。
また,前記一方又は他方の被接合材のいずれかを,ウエハ等のように厚さ1.0mm未満の薄肉の被接合材としても良い(請求項6)。
なお,上記PV値(PV,PV)は,実際の製造現場等においては,例えば厚肉の被接合材群の中から無作為抽出した複数のサンプルのPV値(PV,PV)の平均値,あるいは最大値を使用するものとしても良い。
上記いずれの構成においても,前記他方の被接合材の前記平滑面の前記表面は,真空容器内において前記他方の被接合材の表面に形成された微結晶構造の薄膜により形成することができる(請求項7)。
なお,前述の厚肉の被接合材を,Al,Cu,Ag,又はAuの単金属,又は,Al,Cu,Ag,又はAuを主成分とする合金により製造された放熱体とすることができる(請求項8)。
また,上記いずれの接合方法においても,上記被接合材の重ね合わせは,大気圧以上の圧力の雰囲気下で行うことができる(請求項9)。
また,上記被接合材の重ね合わせを行う雰囲気は,空気であっても良く(請求項10),更には,78%を超える不活性ガスを含むものであっても良い(請求項11)。なお,ここでいう「不活性ガス」の用語には,「窒素」を含む。
更に,上記被接合材の重ね合わせは,例えばクリーンルームやグローブボックス等のように塵埃の除去された雰囲気下で行うことが好ましい(請求項12)。
また,前記微結晶構造の薄膜を形成する前に,前記微結晶構造の薄膜の形成と同一真空中において,前記微結晶構造の薄膜の形成を行う被接合材の平滑面に生じている変質層を除去することが好ましい(請求項13)。
更に,前記微結晶構造の薄膜が形成される前記被接合材の平滑面に,前記微結晶構造の薄膜とは異なる材料の薄膜から成る下地層を1層以上形成し,当該下地層上に前記微結晶構造の薄膜を形成するものとしても良い(請求項14)。
この場合,前記下地層を,Ti,V,Cr,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta,Wの元素群より選択されたいずれか1つの単金属により形成し,又は前記元素群より選択された1つ以上の元素を含む合金により形成することができる(請求項15)。
更に,前記下地層を形成する前記単金属又は合金として,当該下地層上に形成される前記微結晶構造の薄膜を形成する単金属又は合金よりも高融点で,且つ,前記微結晶構造の薄膜を形成する単金属又は合金に対して融点の差が大きいものを使用することができる(請求項16)。
前記被接合材がCu又はCu合金製である場合,前記下地層を形成する前に,前記下地層の形成を行う被接合材の平滑面に生じている変質層を除去することが好ましい(請求項17)。
なお,前記微結晶構造の薄膜の膜厚は,2nm〜1μmの範囲とすることができる(請求項18)。
以上説明した本発明の構成により,本発明の接合方法によれば,接合界面に介在する接合材の被膜が極めて薄く形成されていると共に,接合界面の全面に亘って,原子レベルで金属結合あるいは分子間結合により接合が行われる結果,必要な接合強度が得られると共に,熱伝導率の向上,電気抵抗の低下等の接合界面における物理的,機械的特性を向上させつつ,1×10-4Paを超える圧力の雰囲気下,例えば大気圧中において比較的容易に接合を行うことができた。
しかも,厚肉の被接合材の平滑面におけるPV値に応じて接合時に加える加圧力を調整することで,加圧力を必要最小限に止めることができ電子デバイス等にダメージを与えない程度の比較的小さなものとすることができると共に,接合界面に発生する残応力についても可及的に低い状態に抑えることができ,残留応力の影響によって発生する,経時に伴う平滑面の剥離や,亀裂の進展等を生じ難いものとすることができた。
前記被接合材同士の重ね合わせを,前掲の関係を満足する加圧力で行うことで,接合界面の全面を確実に接触させることができるものでありながら,必要以上に高い加圧力を付加することが防止できた。
しかも,本発明の接合方法では,被接合材を200℃程度の比較的低い温度で加熱することで,いずれの条件においても接合を行うことができ,加熱により被接合材に対して与えるダメージを最小限に抑えることができた。
特に微結晶構造の薄膜を構成する金属の室温における体拡散係数を1×10-45(m2/s)以上とし,且つ,室温における酸化物の生成自由エネルギーを−150(kJ/mol of compounds)以上とした場合には,被接合材を100℃に加熱することにより接合を行うことができ,また,更に室温における体拡散係数を1×10-40(m2/s)以上,室温における酸化物の生成自由エネルギーを−15(kJ/mol of compounds)以上とした場合には,被接合材を加熱することなく,室温において接合した場合でも前述した原子拡散による接合を行うことができ,熱により被接合材に加わるダメージを更に低減することができた。
もっとも,被接合材に対して加熱を行うことなく接合できる場合であっても,被接合材に対してダメージを与えない程度,例えば400℃以下,好ましくは300℃以下に被接合材温度を室温以上に加熱することで前述した体拡散係数を上昇させることができ,これにより原子の拡散速度,拡散長を増大させることで接合界面及び結晶粒界における原子の拡散性を向上させてより均一かつ強固な接合を行うことができ,特に原子の拡散長の増大により表面の比較的粗い被接合材であっても接合することが可能となった。
ここで,体拡散係数Dは,
D=D0exp(−Q/RT)
D0:振動数項(エントロピー項)
Q:活性化エネルギー
R:気体定数
T:絶対温度
によって表すことができ,温度Tを上昇させると,体拡散係数Dは指数関数的に増加する。
なお,前述の厚肉の被接合材が放熱体である場合,これを熱伝導率の高いAl,Cu,C,Ag,又はAuの単金属,又は,Al,Cu,C,Ag,又はAuを主成分とする合金により製造することで,高い放熱性能を発揮させることができた。
上記接合方法は,被接合材の重ね合わせを大気圧(1気圧)以上の圧力の雰囲気下で行った場合であっても可能であり,更には,上記被接合材の重ね合わせを行う雰囲気を空気とした場合,即ち,空気中に暴露した状態で重ね合わせを行う場合であっても好適に接合を行うことができた。
但し,空気は約78%が窒素,約20%が酸素であるところ,このうちの酸素が前述の微結晶薄膜に化学吸着することによって被接合材同士の接合が阻害されるものと考えられるところ,上記被接合材の重ね合わせを,78%を超える不活性ガス(ここで言う「不活性ガス」の用語には「窒素」も含む)を含む雰囲気中,好ましくは不活性ガス100%の雰囲気中において行うことにより,接合を阻害する要因である酸素の量を雰囲気中より減らし,微結晶薄膜と化学吸着しない窒素ガス,アルゴンガス,その他の不活性ガスの濃度が高められた雰囲気下で接合を行うことにより,より好適に接合を行うこと可能となる。
特に,このような不活性ガスの濃度を高めた雰囲気下で重ね合わせを行う場合には,微結晶構造を構成する金属として,酸化物の生成自由エネルギーの数値が比較的小さな金属(従って,酸素と反応し易い金属)を使用した場合であっても強固な接合が可能となる。
更に,上記被接合材の重ね合わせを,「クリーンルーム」や,「グローブボックス」等の塵埃の除去された雰囲気下で行うことにより,平滑面に塵埃等の不純物が介在することによる接合不良を防止することができた。一例として,この空間のクリーン度としては,ISOクラス5(1988年米国連邦規格におけるクラス100に相当。1立法フィートの空間中における0.5μm以上の粒子数が100個未満。)以上であることが好ましく,より好適には,雰囲気中の湿度も調整(一例として50%以下)することが好ましい。
上記微結晶薄膜を形成する前に,微結晶薄膜の形成と同一真空中において上記一方又は双方の被接合材の平滑面表面に形成されている変質層を逆スパッタリング等のドライプロセスにより除去することで,被接合材に対する微結晶薄膜の付着強度を向上させることができ,被接合材表面と微結晶薄膜間で剥離が生じることによる被接合材同士の付着強度の低下についても好適に防止することができた。
また,前記微結晶薄膜が形成される前記被接合材の平滑面に,前記微結晶薄膜とは異なる材料の薄膜,例えば周期律表における4A〜6A属の元素であるTi,V,Cr,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta,Wの元素群より選択されたいずれか1つの単金属の薄膜,又は前記元素群より選択された1つ以上の元素を含む合金の薄膜によって下地層を形成することにより,被接合材に対する微結晶薄膜の付着強度を上昇させることができ,これにより被接合材と微結晶薄膜間で剥離が生じることを防止することができた。
特に,このような下地層の形成材料として,微結晶薄膜の形成材料に対して高融点であり,且つ,その融点の差が大きいものを使用することで,下地層上に形成される微結晶薄膜の2次元性(薄膜成長時の原子の濡れ性)が良くなり,微結晶薄膜が島状に成長することを防止でき,0.2nmといった1原子層分の厚みに相当する極めて薄い微結晶薄膜の形成が容易となる。
前記被接合材がCu又はCu合金製である場合,前述の下地層は被接合材の表面より剥離し易いものとなるが,前記下地層を形成する前に,前記下地層の形成を行う被接合材の平滑面に生じている変質層を除去することで,Cu製の被接合材と下地層間における剥離の発生を防止することができた。
なお,本発明の原子拡散接合方法では,形成する微結晶薄膜の膜厚がそれぞれ2nm〜1μmの範囲で好適に原子拡散接合が可能であり,平滑面によって熱伝導を行う電子の移動等が妨げられない接合方法を提供することができた。
本発明の方法による接合工程の一例を示した概略説明図。 各種材質の基板(厚肉の被接合材)に対する加圧力と変位量の相関図。 明細書中に登場する用語の説明図であり,(A)は加圧力(F),変位量(X),元の高さ(H)の,(B)はPV値の説明図。 Al基板同士の接合試験例の説明図であり,(A)は加圧条件の確認試験,(B),(C)は加熱条件の確認試験の説明図。 Cu基板同士の接合試験例の説明図であり,(A)は加圧条件の確認試験,(B)は加熱条件の確認試験の説明図。 PV値の説明図。 Al基板と石英ウエハの接合試験の説明図。 Al基板と石英ウエハの接合における加圧力の変化に対する剥離位置の変化の状態を示したグラフ。
接合方法概略
本発明の接合方法は,真空容器内においてスパッタリングやイオンプレーティング等の真空成膜により真空中で成膜した所定の体拡散係数及び酸化物の生成自由エネルギーを有する単金属,あるいは合金から成る微結晶構造の薄膜同士を重ね合わせることにより,又は,前記微結晶構造の薄膜と,少なくとも表面が前記所定の体拡散係数及び酸化物の生成自由エネルギーを有する単金属,あるいは合金から成る微結晶構造を有する平滑面に重ね合わせると共に加圧することにより,この重ね合わせと加圧を1×10-4Paを超える圧力の雰囲気下,例えば大気圧以上の圧力の雰囲気下で行った場合であっても,接合界面及び結晶粒界において原子拡散が生じて両者間で強固な接合が行われることを見出し,これを厚肉の被加工物の接合に適応したものであり,下記の条件等において接合を行うものである。
被接合材
本発明は,少なくとも一方が1.0mm以上の肉厚を有する材料塊(バルク材)によって構成された厚肉の被接合材を接合対象とし,接合対象とする被接合材の双方が共に1.0mm以上の肉厚を有する厚肉の被接合材であっても良く,あるいは,接合対象とする被接合材一方を厚肉の被接合材とし,他方を,ウエハのような厚さが1mm未満の薄肉の被接合材を対象として接合を行うものとしても良い。
これらの被接合材の材質は特に限定されず,スパッタリングやイオンプレーティング等,一例として到達真空度が1×10-3〜1×10-8Pa,好ましくは1×10-4〜1×10-8Paの高真空度である真空容器を用いた高真空度雰囲気における真空成膜により微結晶構造の薄膜を形成可能な材質であれば如何なるものをも対象とすることができる。
一例として,被接合材の一方である厚肉の被接合材が放熱体としてのヒートスプレッダである場合,その材質はAu,Ag,Cu,Al等の熱伝導性の良好な材質により構成されることとなり,被接合材の他方は,冷却対象である電子デバイス,例えばIGBTモジュール,RFパッケージ,LEDチップ等のパッケージに収容されているコアやチップ等の薄肉の被接合材となり,これらのコアやチップに使用される既知の材質,例えばサファイア基板や,SiC,Si,SiO2,GaN等の半導体基板,ガラス,セラミックス等が他方の被接合材の材質となる。
また,放熱フィン等を備えたヒートシンクを被接合材の一方とし,これを,電子デバイス上に接合されたヒートスプレッダ上に接合する場合,双方共に厚肉の被接合材を接合することとなる。
なお,接合は,例えば金属同士の接合のように同一材質間の接合のみならず,金属とセラミックス等のように,異種材質間での接合を行うことも可能である。
被接合材の平滑面の状態
前述した被接合材のうち,少なくとも厚肉の被接合材の接合面である平滑面は,所定の精度で鏡面に研磨されており,本発明では,厚肉の被接合材の平滑面を,PV値が0.1〜2.0μmとなるように鏡面に研磨している。
ここで,PV値とは,図6に示すように,被接合材の平坦面中における所定の測定範囲内を測定して得た断面線における最高点(Peak)と最低点(Valley)の高低差を示したものである。
ここで,PV値は,小さければ小さい程,良好な接合を行うことが可能であるが,一般的な鏡面研磨ではPV値は0.1μm程度が下限で,これを下回る迄高精度に研磨する場合,被接合材の研磨に多大な費用と時間が費やされることとなりコスト高となる。
一方,PV値が2.0μmを超える場合でも,接合時の加圧力を高めることで接合自体は可能であるが,大きな加圧力をかけて接合を行う場合,加圧によって接合対象とする構造材,特に接合対象の一方が電子デバイスである場合にはこの電子デバイスである構造材にダメージを与えるおそれがあると共に,接合界面に大きな残留応力が残り剥離し易くなるため,PV値は0.1〜2.0μmの範囲とすることが好ましい。
なお,ヒートスプレッダに対しヒートシンクを接合する場合のように,接合対象とする被接合材のいずれもが1.0mm以上の厚さを有する厚肉の被接合材である場合,被接合材の平滑面は,いずれ共にPV値を0.1〜2.0μmの範囲に調整することが好ましい。
被接合材の平滑面は,微結晶構造の薄膜を形成する前に,あるいは,微結晶薄膜と被接合材の平滑面との間に下地層を設ける場合には,下地層の形成前に表面のガス吸着層や自然酸化層等の変質層が除去されていることが好ましく,例えば薬液による洗浄等による既知のウェットプロセスによって前述の変質層を除去し,また,前記変質層の除去後,再度のガス吸着等を防止するために水素終端化等が行われた被接合材を好適に使用することができる。
また,変質層の除去は前述のウェットプロセスに限定されず,ドライプロセスによって行うこともでき,真空容器中における希ガスイオンのボンバード等によりガス吸着層や自然酸化層などの変質層を逆スパッタリング等によって除去することもできる。
特に,前述のようなドライプロセスによって変質層を除去する場合,変質層を除去した後,後述の微結晶構造を有する薄膜,あるいは下地層を形成する迄の間に,被接合材表面にガス吸着や酸化が生じることを防止できるために,このような変質層の除去を,後述する微結晶構造の薄膜を形成すると同一の真空中において行うと共に,変質層の除去に続けて微結晶構造の薄膜,あるいは下地層を形成することが好ましく,より好ましくは,変質層の除去を超高純度の不活性ガスを使用して行い,変質層の除去後に酸化層等が再形成されることを防止する。
なお,接合は,単結晶,多結晶,アモルファス,ガラス状態等,その構造は特に限定されず各種構造のものを接合対象とすることが可能であるが,2つの被接合材の一方に対してのみ後述する微結晶構造の薄膜を形成し,他方の被接合材に対して微結晶構造の薄膜の形成を行うことなく両者の接合を行う場合には,この薄膜の形成を行わない他方の被接合材の平滑面は,接合界面や結晶粒界における原子拡散を得ることができるよう,少なくともその表面が後述する微結晶構造の薄膜と同様に,所定の体拡散係数,所定の酸化物の生成自由エネルギーの範囲内の金属によって構成された微結晶構造(アモルファスを含む)を有する必要がある。
微結晶構造の薄膜
材質
前述した微結晶構造の薄膜の形成材質としては,被接合材と同種材質の薄膜を形成しても良く,また,目的に応じて被接合材とは異種材質の微結晶構造の薄膜を形成しても良く,さらに,被接合材の一方に形成する微結晶構造の薄膜の材質と,被接合材の他方に形成する微結晶構造の薄膜の材質とを,それぞれ異なる材質としても良い。
形成する微結晶構造の薄膜の材料は,接合の際の加熱条件に応じて,以下の3種類に分類することができる。
第1の材料は,非加熱での接合が可能な材料であり,この材料は,室温における体拡散係数が1×10-40(m2/s)以上であると共に,室温における酸化物の生成自由エネルギー(kJ/mol of compounds)が,−15以上の単金属,又は合金である。なお,このような数値範囲に属する単金属としては,Au,Agがある。
第2の材料は,前記第1の材料に加え,更に接合の際に被接合材を100℃以上に加熱することで接合が可能となる材料(例えばCu)を含む群であり,この材料は,室温における体拡散係数が1×10-45(m2/s)以上であると共に,室温における酸化物の生成自由エネルギー(kJ/mol of compounds)が,−150以上の単金属,又は合金である。なお,このような数値範囲に属する単金属としては,前述のAu,Agの他,Cuがある。
第3の材料は,前記第1,2の材料に加え,更に接合の際に被接合材を200℃以上に加熱することで接合が可能となる材料を含む群であり,この材料は,室温における体拡散係数が1×10-55(m2/s)以上であると共に,室温における酸化物の生成自由エネルギー(kJ/mol of compounds)が,−330以上の単金属,又は合金である。このような数値範囲に属する単金属としては,前述のAu,Ag,Cuの他,Pd,Pt,Ni,Znがある。
なお,合金については,合金成分,配合比等によって体拡散係数や酸化物の生成自由エネルギーが変化することから,種々の組合せが存在し得るが,前記それぞれの数値範囲内に含まれる単金属の群内で組合せて成る合金は上記の各数値範囲に含まれ,また,上記の各群に属する各金属の化学的な特性を失わない程度に,他の合金成分を添加して得た合金は,主成分の単金属と同様に使用することが可能である。
以上のように体拡散係数の数値範囲と,酸化物の自由エネルギー毎に温度条件を規定しているのは,本発明の原子拡散接合を行うためには,前述の体拡散係数は大きい程原子の拡散性が向上し,一方,酸化物の生成自由エネルギーの数値が大きくなる程,酸素との反応が起こり難く,酸化膜等の接合を阻害する物質を形成し難くなるためである。
従って,室温における体拡散係数が1×10-55(m2/s)以上であると共に,室温における酸化物の生成自由エネルギー(kJ/mol of compounds)が−330(kJ/mol of compounds)以上の単金属,又は合金によって微結晶構造の薄膜を形成した場合には,この数値範囲に属する全ての金属薄膜で接合を可能とするためには,被接合材を200℃以上で加熱する必要があるが,これに対し,体拡散係数が高く,酸化物の生成自由エネルギーが大きい金属に限定する場合には,接合のための被接合材の加熱温度を低くすることができ,室温における体拡散係数が1×10-45(m2/s)以上で,且つ,室温における酸化物の生成自由エネルギーが−150(kJ/mol of compounds)以上では被接合材を100℃以上に,更に,室温における体拡散係数が1×10-40(m2/s)以上で,且つ,室温における酸化物の生成自由エネルギーが−15(kJ/mol of compounds)以上では被接合材を加熱することなく,室温で接合した場合においても,原子拡散を伴う接合を行うことができる。
そして,これらの金属によって微結晶構造の薄膜を形成した被接合材を,前述の各温度条件で接合した場合には,いずれも少なくとも部分的に接合界面の消失が生ずると共に,接合界面の消失部分において接合された微結晶薄膜間において再結晶が生じて2つの被接合材間の間隔の略全域に亘る粒径を備えた結晶粒が生成される等,金属結合による2つの微結晶薄膜の一体化を得ることができる。
膜厚等
形成する膜厚は特に限定されないが,それぞれの微結晶薄膜を,構成元素1層分の厚みで形成した場合であっても接合を行うことが可能であり,一例としてAuの微結晶薄膜を形成する場合,膜厚2nm(2層で4nm)とした場合であっても接合可能であり,接合される被接合材間に介在する微結晶薄膜の厚さを,電子やスピン電流の平均自由工程以下の厚みで形成することが可能である。
その結果,被接合材間に介在する微結晶薄膜の層が電子の移動等に対して障壁となることがなく,極めて良好な熱伝導性,電気伝導性を発揮する。
一方,膜厚が厚くなるに従って得られた微結晶薄膜の表面粗さが増大して接合が困難となるだけでなく,接合界面を通過する熱や電子等に対する抵抗となると共に,厚みのある微結晶薄膜の形成には長時間を要し,生産性が低下することから,その上限は1μm程度であり,2nm〜1μm程度が本発明における原子拡散接合方法における各微結晶薄膜の好ましい膜厚の範囲である。
粒径及び密度
形成する微結晶薄膜は,同微結晶金属の固体内に比べて原子の拡散速度が大きく,特に,拡散速度が極めて大きくなる粒界の占める割合が大きい微結晶構造であることが好ましく,結晶粒の薄膜面内方向の平均粒径は50nm以下であれば良く,より好ましくは20nm以下である。
また,微結晶薄膜は,微結晶薄膜が占める空間の体積100%に対し,空隙等の形成部分を除く,微結晶薄膜を構成する金属が占める体積の割合が80%以上,好ましくは80〜98%となるよう形成することが好ましい。
微結晶薄膜の形成面
さらに,上記微結晶構造の薄膜の形成は,接合対象とする2つの被接合材のそれぞれに形成しても良いが,一方の被接合材に対してのみ前記微結晶構造の薄膜を形成し,他方の被接合材に対しては微結晶構造の薄膜を形成することなく,接合を得ることが可能である。
この場合,微結晶構造の薄膜の形成を行わない上記他方の被接合材の平滑面は,前述したように平滑面の少なくとも表面付近が所定の体拡散係数,酸化物の生成自由エネルギーの数値範囲内にある単金属,あるいは合金から成る微結晶構造となっている必要がある。但し,微結晶構造の薄膜の形成を行わない被接合材の平滑面と微結晶構造の薄膜の材質が共通である必要はない。
なお,微結晶構造の薄膜を形成する被接合材の平滑面には,微結晶構造の薄膜の形成前に,微結晶構造の薄膜とは異なる材質の薄膜より成る1層以上の下地層を形成することができ,特に,形成する微結晶構造の薄膜が,被接合材に対する付着強度が比較的弱い場合には,付着強度を向上する上で下地層の形成は有効である。
このような下地層は,微結晶薄膜の後述する成膜方法と同様の真空成膜技術によって形成することができ,その材質としては,周期律表の4A〜6A属の元素であるTi,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Mo,Wによって形成することができ,その厚さは,一例として0.2〜20nm,後述の実施例では5nmである。
この下地層の材質としては,その上に形成する微結晶薄膜の形成材料に対して融点の差が大きいものを使用することが好ましく,かつ,微結晶構造の薄膜の形成材料に対して高融点のものを使用することが好ましい。このような融点差が大きく,微結晶構造の薄膜に対して高融点となる材質の組み合わせの一例として,例えばTaの下地層上にAgの微結晶薄膜を形成する場合,形成された微結晶薄膜が被接合材より剥離することを好適に防止できるだけでなく,下地層上に形成される微結晶構造の薄膜の2次元性(微結晶薄膜形成時の原子の濡れ性)が良くなり成膜時に微結晶構造の薄膜であるAgが島状に成長することを防止でき,2nmといった極めて薄い微結晶薄膜の形成が容易となる。
なお,被接合材がCu又はCu合金製である場合,平滑面に生じた自然酸化物の存在によって下地層の付着強度が弱くなり,この部分で層間剥離が生じることで接合強度の向上が頭打ちとなることから,下地層を形成する前に,平滑面に生じている変質層を除去することが好ましい。なお,このような変質層の除去は,Cu又はCu合金製の被接合材に限らず,他の材質の被接合材に対し下地層を形成する場合に行うものとしても良い。
また,Cu又はCu合金製の被接合材の平滑面上に形成されたTa下地層は,加熱を行うと極度に着強度が低下することから,Cu又はCu合金製の被接合材を接合対象とし,且つ,接合時に加熱を必要とするCu,Pd,Pt,Ni,Zn等の比較的拡散係数の低い材質で微結晶薄膜を形成する場合には,Ta下地層の使用を避けることが好ましい。
成膜方法
成膜技術
本発明の接合方法において,被接合材の平滑面に形成する微結晶薄膜の形成方法としては,スパッタリングやイオンプレーティング等のPVDの他,CVD,各種蒸着等,到達真空度が1×10-4〜1×10-8Paの高真空度である真空容器において真空雰囲気における真空成膜を行う各種の成膜法を挙げることができ,拡散速度が比較的遅い材質及びその合金や化合物等については,好ましくは形成された薄膜の内部応力を高めることのできるプラズマの発生下で成膜を行う真空成膜方法,例えばスパッタリングによる成膜が好ましい。
真空度
薄膜形成の際の真空容器内の圧力は,到達真空度が1×10-3〜1×10-8Paの真空雰囲気であれば良く,より低い圧力(高真空度)である程好ましい。
不活性ガス(Arガス)圧
成膜方法がスパッタリングである場合,成膜時における不活性ガス(一般的にはArガス)の圧力は,放電可能な領域,例えば0.01Pa以上であることが好ましく,また30Pa(300μbar)を超えると接合を行うことができない場合が生じるため,上限は30Pa(300μbar)程度とすることが好ましい。これは,Arガス圧が上昇すると,形成された薄膜の表面粗さが増加すると共に,膜密度が著しく低下し,膜中の酸素等の不純物濃度が著しく増加する場合が生じるためである。
重ね合わせの条件
雰囲気の圧力
以上のようにして,表面に微結晶構造の薄膜が形成された被接合材相互,又は微結晶構造の薄膜が形成された被接合材と微結晶構造の被接合材表面とが,1×10-4Paを超える圧力の雰囲気下,例えば,大気圧以上の圧力雰囲気下において重ね合わされることにより,接合界面及び結晶粒界に原子拡散を生じさせて前記2つの被接合材の接合が行われる。
このように,本発明の方法では,2つの被接合材の重ね合わせを,微結晶薄膜の形成を行った真空中よりも高圧の雰囲気下において行う場合であっても接合を行うことができるものとなっている。
なお,被接合材同士の重ね合わせを行う雰囲気の圧力が大気圧を超える場合としては,例えば給気処理型のクリーンルームやグローブボックス内で被接合材の重ね合わせを行う場合等がある。
雰囲気の成分
また,被接合材同士の重ね合わせを行う際の雰囲気の成分は,空気(窒素約78%,酸素約20%)であっても良く,又は,窒素ガス,アルゴンガス,その他の不活性ガスが,単独又は混合状態で78%を超えて存在した状態,好ましくは不活性ガス100%の雰囲気であっても良い。
微結晶薄膜形成後の経過時間
ここで,微結晶薄膜としてAu膜を形成した例では,Au膜の形成後,Au膜を大気圧(1気圧)の空気に1〜6時間暴露した後に被接合材の重ね合わせを行った場合においても十分な接合力が得られることが確認されており,1〜6時間に対して十分に長い時間,大気圧の空気中に暴露した後においても接合を行うことが可能である。
更に,雰囲気中の酸素や水の量を減らすことは,微結晶構造の薄膜の形成後,更に長時間経過した後にも接合を強固に行い得るものとなることから,被接合材同士の重ね合わせを,前述したように78%を超える不活性ガスを含む雰囲気,好ましくは100%不活性ガスの雰囲気中において行う場合,及び/又は1×10-4Paを超える圧力の範囲内で重ね合わせを行う雰囲気の圧力を低く設定する場合には,微結晶構造の薄膜の形成からより長時間経過した後であっても,強固な接合を行うことが可能となる。
また,例えば,微結晶構造の薄膜を形成する金属の体拡散係数が低くなるに従い,また,酸化物の生成自由エネルギーの数値が小さくなるに従い,接合を行う雰囲気中における不活性ガスの含有量を高める等,形成する微結晶薄膜の材質に応じて被接合材の重ね合わせを行う雰囲気の成分や圧力を変化させるものとしても良い。
雰囲気の清浄度
なお,このような被接合材の重ね合わせを行う雰囲気は,平滑面に塵埃等が介在することによる接合不良を防止するために,塵埃の除去された空間内において行うことが好ましく,前述したように,塵埃の除去されたクリーンルームやグローブボックス内において行うことができる。
このような雰囲気の清浄度は,一例として,ISOクラス5(1988年米国連邦規格におけるクラス100に相当。1立法フィートの空間中における0.5μm以上粒子数が100個未満。)以上であることが好ましい。
また前述したように,雰囲気中の水分についても微結晶薄膜の表面に化学吸着して化合物を形成する原因となることから,このような平滑面の重ね合わせを行う雰囲気は湿度が50%以下に調整されていることが好ましい。
接合時の温度条件
前述したように,平滑面に形成する微結晶構造の薄膜を構成する金属材料の体拡散係数,及び酸化物の生成自由エネルギーに応じて,被接合材を下記の条件毎に下記の温度に加熱して接合を行う。
室温における体拡散係数が1×10-40(m2/s)以上であると共に,室温における酸化物の生成自由エネルギー(kJ/mol of compounds)が−15以上の単金属,又は合金により微結晶構造の薄膜による接合を行う場合には,接合を得るために被接合材の加熱は不要である。
但し,この場合においても先に記載したように,被接合材にダメージを与えない範囲で被接合材を加熱して,体拡散係数を上昇させた接合を行うものとしても良い。
薄膜を形成する金属を,室温における体拡散係数が1×10-45(m2/s)以上であると共に,室温における酸化物の生成自由エネルギー(kJ/mol of compounds)が−150以上の単金属,又は合金にまで拡張した場合には,この条件に含まれる全ての金属薄膜において接合を得るためには被接合材を100℃以上に加熱する。
更に,薄膜を形成する金属の範囲を,室温における体拡散係数が1×10-55(m2/s)以上であると共に,室温における酸化物の生成自由エネルギー(kJ/mol of compounds)が−330以上の単金属,又は合金の範囲に迄拡大した場合には,この条件に含まれる全ての金属薄膜において接合を得るためには被接合材を200℃以上の温度に加熱する。
なお,一方の被接合材に形成した微結晶構造の薄膜を構成する金属の体拡散係数及び酸化物の生成自由エネルギーと,他方の被接合材の表面に微結晶構造を形成する金属の体拡散係数及び酸化物の生成自由エネルギーとが相違する場合には,体拡散係数が小さく,酸化物の自由生成エネルギーの数値が小さい金属に対して適用される温度に被接合材を加熱して接合を行う。
接合時の加圧
前述した被接合材の重ね合わせに際しては,前述した室温における体拡散係数に応じた加熱の他,厚肉の被接合材の平滑面におけるPV値に応じて加圧を行うことが必要である。
被接合材の一方又は双方を1.0mm以上の肉厚を有する厚肉の被接合材とした場合にその接合を阻害する原因が,算術平均粗さRaに現れるような比較的短周期の凹凸によるものではなく,より長周期の凹凸,すなわち表面のうねりによってもたらされるものであると予測されることは既に説明した。
ここで,厚肉の被接合材の接合面の所定範囲における表面形状を測定して得られた断面線が図6に示すような波形を示していると仮定すると,この断面線に山頂の包接線,谷底の包接線波を補助線として記入すると,この断面線には,長周期凹凸である「うねり」の成分が含まれていることが判る。
このようにして,平滑面の表面形状に含まれる「うねり」の成分を顕在化させてみると,所定の測定範囲内における最高点と最低点の高低差を表すPV値は,「うねり」の振幅(測定範囲における最大振幅)におよそ対応したものであると見ることができる。
このように,短周期の凹凸成分を捨象した,バルク材表面に生じているうねりの様子を模式図に表すと,図3(B)のように,平滑面の表面に現れる「うねり」の波形は,PV値によって規定される幅内で振幅する波形となる。
従って,図3(B)に模式的に示すような「うねり」が平滑面の表面に生じている一方の被接合材の平滑面と,他方の被接合材の平滑面の全体を接触させるためには,このうねりに伴う凹凸が打ち消されて,被接合材の平滑面の全体を平坦と成し得る加圧力を加えれば良い。
このような加圧力は,同一材質の被接合材同士での比較であれば,PV値が大きくなる程,接合時の加える加圧力は大きくなり,逆にPV値が小さければ接合時に加える加圧力は小さくすることができる。
また,同一PV値の被接合材同士の比較であれば,被接合材を構成する材料のヤング率が大きくなる程,接合時に加える加圧力は大きくなり,逆にヤング率が低くなれば,接合時に加える加圧力は小さくすることができる。
従って,図3(B)に示すように被接合材の平滑面におけるPV値を,平滑面に生じているうねりの振幅と捉え,このPV値と被接合材のヤング率との相対的な関係によって加圧力を変化させることが好ましいことが判る。
ここで,図3(A)に示すように板状物体の上面に下向きの加圧力(F)を加えた場合,物体に生じる変位量(X)は加圧力(F)に比例する(フックの法則;図2参照)。
図3(A)のモデルにおいて,ヤング率(E)は「加圧力(F)/変位率」であり,変位率は「変位量(X)/元の高さ(H)」であるから,図3(A)に示すように,厚さ(H)の板に対し,加圧力(F)を加えた際の変位量(X)は,
X=HF/E
によって求めることがでる。
ここで,上記の式によって求められる変位量(X)は,理想平面を持った被接合材に生じる変位量であり,実際の被接合材の平滑面には,図3(B)に示すように,PV値によって表わされる凹凸が生じている。
従って,被接合材に加えられた応力は,平滑面の全体に均一に加わらず,凹凸の山頂部分に集中することとなるために,被接合材の平滑面は,上記の関係式によって求められたPV値に対応する変位量を得るための加圧力(F),すなわち,
F = PV・E/H (PVはPV値)
により求められる加圧力(F)よりも低い加圧力によってその全面を他方の被接合材の平滑面に対し接触することになり,ここで求められる加圧力(F)以上の加圧力を加える場合,両平滑面を確実に全面にて接触させることができることとなる。
但し,過度に大きな加圧力を与える場合,電子デバイスが破損するおそれがあると共に,接合界面に大きな残留応力が残り,経時により剥離や亀裂が進展する原因となることから,加える加圧力は,好ましくは100MPa以下となるよう調整することが好ましい。
接合方法の例
本発明による原子拡散接合方法による接合工程の一例を,図1を参照して説明する。図1において,薄膜形成を行う真空容器内の上部に,スパッタを行うためのマグネトロンカソードを配置すると共に,このマグネトロンカソードの下部に,相互に貼り合わされる被接合材を載置する治具を配置し,この治具に取り付けた被接合材の平滑面に対して微結晶薄膜を形成する。
図示の実施形態において,前述の治具に設けられたテーブルは,図1中の紙面右側の図に破線で示す薄膜形成位置と,実線で示す貼り合わせ位置間を回動可能に構成されており,被接合材の一方を載置したテーブルの一端と,被接合材の他方を載置したテーブルの一端とが突き合わされた状態に配置されていると共に,この突き合わせ部分を中心として前記2つのテーブルが回動して,両テーブルの他端を上方に持ち上げることにより,前記テーブル上の載置された2つの被接合材の平滑面が重合されるよう構成されている。
接合に際し,被接合材の加熱が必要となる体拡散係数,及び酸化物の生成自由エネルギーの数値範囲にある金属で微結晶構造の薄膜を形成して接合を行う場合には,前述のテーブル内に電熱ヒータ等を埋め込んでおき,これにより2つの被接合材の平滑面を重合した後で所定の温度に加熱することができるようにしても良い。
なお,このように被接合材の貼り合わせを行う治具は,図示の構成のものに限定されず,貼り合わせを行う被接合材の形状等にあわせて各種形状,構造のものを使用することができ,また,例えばロボットアーム等によって被接合材の一方若しくは双方を操作して接合を行うものとしても良く,更には,人の手によって被接合材同士を重ね合わせるものとしても良い。
このような治具が収容された真空容器は,図1に示すようにこれを前述したクラス1000以上の清浄度を実現可能なクリーンルーム内に配置し,又は,真空容器の出入口に連通して前述したクラス1000以上の清浄度を実現可能なグローブボックスを設けておく。
以上のように構成された治具が配置された真空容器において,前記治具を前述した成膜位置とした状態で,前述した条件で被接合材の平滑面に対して微結晶薄膜を形成する。
そして,被接合材の平滑面に対して所定厚みの微結晶薄膜が形成されると,微結晶薄膜の形成を終了し,真空容器内を前述したように1×10-4Paを超える圧力,例えば大気圧やクリーンルーム内の圧力に戻す。このように真空容器内の圧力の上昇は,例えば真空容器内に窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスを導入することにより行っても良く,又は,空気を導入することにより行っても良い。
このようにして,真空容器内の圧力を1×10-4Paを超える圧力,例えば大気圧やクリーンルーム内の圧力に迄上昇させた後,真空容器の出入口を開き,真空容器内より前述した治具と共に被接合材を取り出し,前記治具に設けられたテーブルを,前述した,貼り合わせ位置に回動させて貼り合わせると共に,前述した加圧力(F)を加えて接合する。
これにより,両微結晶薄膜の接合界面及び結晶粒界において原子拡散を生じさせ,かつ,接合歪みを緩和させた接合を行うことができる。
なお,上記の説明では同一材質の微結晶薄膜が形成された被接合材相互を貼り合わせる場合について説明したが,異なる材質の微結晶薄膜が形成された被接合材相互を貼り合わせる場合には,例えば共通のクリーンルーム内に設置された2つの真空容器内のそれぞれに,前述のマグネトロンカソードを配置して各真空容器内で異なる材質の微結晶薄膜を成膜可能と成すと共に,それぞれの被接合材の平滑面に対してそれぞれ異なる材質の微結晶薄膜を形成した後に,各真空容器より取り出した被接合材を前述のクリーンルーム内で重ね合わせると共に加圧することにより接合する等しても良い。
また,両被接合材に対する微結晶薄膜の形成は,必ずしも同時に行う必要はなく,時間差を以て行っても良い。
また,他方の被接合材の少なくとも平滑面が,前述した体拡散係数,及び酸化物の生成自由エネルギーの数値範囲にある単金属や合金による微結晶構造を有する場合には,接合対象とする2つの被接合材の一方に対してのみ前述の微結晶薄膜を形成し,他方の被接合材に対しては微結晶薄膜を形成することなく直接,両被接合材を接合することも可能である。
以下に本発明の接合方法によって接合を行った接合試験例を示す。
〔被接合材〕
厚肉の被接合材
厚肉の被接合材として,下記の表1に示すAl基板及びCu基板を使用した。
Figure 0006318441
薄肉の被接合材
薄肉の被接合材として,接合状態を目視で確認し易くするため,透明な石英ウエハを使用した。
使用した石英ウエハは,直径2インチ(5.08cm),厚さ310μmのものと,直径1インチ(2.54cm),厚さ380μmの二種類を用意した。
AFMを使用して測定した算術平均粗さRaは0.31nmであり,Rmax(JISB0610-’82)は,6.45nmである。
〔厚肉の被接合材同士の接合試験例〕
加圧力の確認試験
図4(A)及び図5(A)に示すように,表面に下地層としてTi層(10nm)を形成した後,Auの微結晶薄膜(150nm)を形成した一対のAl基板,及びCu基板を作成し,両基板上に形成されたAu微結晶薄膜同士が重なるように室温において重ね合わせを行った。
重ね合わせの際に加える加圧力を変化させ,加圧力の変化に伴う,接合強度の変化を測定した。測定結果を表2に示す。
Figure 0006318441
以上の結果から,上記の例においてAl基板同士,及びCu基板同士のいずれの接合においても,接合時に20MPa以上の加圧力によって4.0MPaが得られることが確認された。
特に,Al基板同士の接合では,加圧力(F)を50MPa迄上昇させることで,21.9MPa以上の接合強度が得られた。
一方,Cu基板同士の接合では,20MPaの加圧力Fによって4.2MPaの接合強度が得られた後,加圧力Fを50MPaに迄増加させても接合強度は4.9MPa迄しか増加せず,Al基板同士の接合の場合に比較して,加圧力の増大に対する接合強度の上昇程度が低いものとなっている。
しかし,Cu基板の接合における上記の現象は,引張試験において下地層として形成したTi膜がCu基板より剥離すること,すなわち,下地層の付着強度によって接合強度には頭打ちが生じるためであり,Au膜同士が接合した接合界面における接着強度は,4.9MPaよりも高いものと考えられる。
なお,Cu基板は,Al基板に比較してヤング率が高く,その変形にはAl基板の場合に比較してより大きな加圧力を与えることが必要となるが,上記の例では,Al基板の場合と同様,20MPaの加圧力の付与によって,必要な付着強度(4.0MPa以上)が得られている。
これは,表1に示したように,Al基板に比較してCu基板の方がPV値が小さく,長周期の平坦度が高いため,Al基板の場合よりもより小さな変形量で平滑面全体の接触が実現されたためであると考えられる。
因みに,Al基板のPV値の最大値0.79μm,ヤング率(E)は70.6GPa,厚さ(H)3mm,Cu基板のPV値の最大値0.46μm,ヤング率(E)129.8GPa,厚さ(H)3mmに基づいて,前掲の関係式「F=PV・E/H」を用いてPV値に対応する変位量を生じさせるために必要な加圧力(F)を求めると,Alの場合で18.6MPa,Cuの場合で19.9MPaとなり,上記の実験結果と略一致し,厚肉の被接合材同士の接合では,接合時に必要な加圧力を「F≧PV・E/H」で近似的に求められることが確認された。
下地層の影響確認
図4(B)及び図5(B)に示すように,表面に下地層としてTi,Cr,又はTa層(10nm)を形成した後,体拡散係数が1×10-40(m2/s)以上の物質であるAuの微結晶薄膜(150nm)を形成した一対のAl基板,及びCu基板を形成し,両基板上に形成されたAu微結晶薄膜同士が重なるように室温において,50MPaの加圧力を与えて重ね合わせを行った。
Al基板同士の接合では,Auの微結晶薄膜を形成した例では,下地層の材質に拘わらず,20MPa以上の接合強度が得られていた。
一方,Auの微結晶薄膜を形成してCu基板同士の接合の例では,いずれの下地層を用いた場合においても下地層とCu基体との界面で剥離してしまい,Auの微結晶薄膜同士の接合界面における接合強度を測定することはできなかった。そのため,これらの例では,Cu基板に対する下地層の接合強度がCu基板同士の接合強度を決定するものとなっている。
因みに,Tiの下地層,及びTaの下地層を設けた場合の付着強度は平均して5MPa程度,Cr下地層を用いた場合では平均して4MPa程度で,かろうじて必要な接合強度4MPaを得られる程度となっており,接合強度の向上には,下地層の付着強度の向上が必要であることが確認された。
体拡散係数と接合温度の確認
図4(C)に示すように,表面に下地層としてTi,Cr,又はTa層(10nm)を形成した後,体拡散係数が1×10-45〜1×10-40(m2/s)の範囲内にある物質であるCuの微結晶薄膜(150nm)を形成した一対のAl基板を形成し,両基板上に形成されたCu微結晶薄膜同士が重なるように,50MPaの加圧力を与えて重ね合わせを行うと共に,接合時の温度を変化させて接合強度の変化を測定した。
Cuの微結晶薄の形成によりAl基板の接合を行った例では,下地層の材質に拘わらず,室温で接合した場合には接合自体を行うことができず,80℃の加熱により接合が可能となり,その後,加熱温度の上昇と共に接合強度が増加することが確認された。
加熱温度が80℃の時に接合強度は3MPa程度で必要な接合強度(4.0MPa以上)が得られず,100℃以上の加熱によって初めて4.0MPa以上の接合強度が得られることが確認できた。
また,120℃以上に加熱した場合,試料を引張試験機のホルダーに固定するために使用していた接着剤との接合界面で剥離が生じ,Al基板の接合強度を測定することができなくなっているが,少なくとも,接着剤の剥離時に測定された強度(120℃加熱時における8.5Mpa,150℃加熱時における11.8MPa)以上の接合強度を有するものと考えられる。
なお,本試験例では,Al基板表面の自然酸化膜を除去することなく,この自然酸化膜上に下地層を形成する構成を採用したが,Al基板に対する下地層の付着強度は,強固であると共に,加熱下において接合した場合であっても,下地層がAl基板より剥離することがなく,付着強度の低下は見られたかった。
このことから,厚肉の被接合材がAl製である場合,下地層の形成前の平滑面のクリーニング等を行わない場合であっても,必要な接合強度が得られることが確認できた。
〔厚肉の被接合材と薄肉の被接合材の接合試験例〕
前掲のAl基板を厚肉の被接合材とし,前掲の石英ウエハを薄肉の被接合材として接合試験を行った結果を以下に示す。
なお,以下の試験では,図7に示すように,下地層としてTi層(5nm)を形成した後,Auの微結晶薄膜(50nm)をそれぞれ形成したAl基板と石英ウエハを作成し,それぞれの表面に形成されたAu微結晶薄膜同士が重なるように室温においてAl基板と石英ウエハの重ね合わせを行って,その接合状態を観察した。
重ね合わせの際の加圧力として,2.5MPa,5MPa,7.5MPa,10MPa,25MPa,50MPaをそれぞれ適用し,加圧力毎のAl基板と石英ウエハの接合によって形成された構造体を得た。
加圧力と接合状態の変化
以上のようにして得られた各構造体の接合面を目視により観察した。観察は,透明な材料である石英ウエハ側から石英ウエハを透かしてAl基板の鏡面研磨面を目視により観察することにより行った。
加圧力を2.5MPa及び5MPaとして接合を行った試料では,接合面に光の干渉が生じている部分が確認され,石英ウエハとAl基板間に隙間があることが目視によっても明確に確認することができた。
また,光の干渉が肉眼では明確に観察できない部分でも,色合が斑な状態となっていることが観察されており,界面同士が完全に接触していないことが確認できた。
加工圧力を7.5MPa迄上げると,明白な光の干渉の発生は観察することができなくなったが,全体的に色合が斑な状態となっており,接合界面における接着状態が完全では無いことが確認された。
加圧力を10MPa迄上昇させると,光の干渉が観察されないだけでなく,色合いの斑も観察できなくなり,全体にわたり色合いも均一なものとなっていることが観察でき,その後,加圧力を25MPa,50MPaと上昇させても,目視により観察できる接合状体には変化が生じなかった。
従って,加圧力10MPaとして行った接合では,Al基板と石英ウエハの接合界面は,略完全な接合状態が実現されたものと考えられる。
以上の結果から,被接合材の一方を薄肉の被接合材であるウエハとした接合例では,10MPa以上の加圧力を加えることにより,接合面全体を接合できていることが確認された。
このように,被接合材の一方をウエハとした接合では,被接合材の双方を厚肉の被接合材とした際の接合で必要であった加圧力に対し約1/2という小さな接合力で接合界面に隙間の無い接合が得られているが,このような加圧力の低下は,厚肉の被接合材であるAl基板に対し,薄肉の被接合材であるウエハが変形(反り)を生じ易いためであると考えられる。
すなわち,厚肉の被接合材同士の接合にあっては,一方の被接合材の平滑面に生じている「うねり」と,他方の被接合材の平滑面に生じている「うねり」の双方を打ち消すための加圧力が必要であったが,前述したように被接合材のいずれか一方を薄肉の被接合材である石英ウエハとすることにより,ウエハの平滑面に生じているうねりについては,ウエハ自身が変形する(反る)ことにより吸収されてしまうために,ウエハ側の表面のうねりは無視することができ,被接合材の一方のみを必要量変形させ得る加圧力のみを加えれば良いためであると考えられる。
なお,上記の例では厚肉の被接合材として3mm厚のAl基板を使用した接合試験について説明したが,直径2インチの石英の石英ウエハと,厚さ1mmの14mm×11mmのAl基板とを,Tiの下地層(5nm)とAuの微結晶薄膜(50nm)の形成により約50MPaの加圧力で接合する接合試験においても好適に接合を行うことができた。
接合強度の確認
前記方法でAl基板と石英ウエハを接合することにより得た構造体のうち,好適に接合が行えている,加圧力を10MPa,25MPa,50MPaとして接合した構造体を試料として各試料に対し引張試験機による接合強度の測定を行った。測定結果を下記の表3に示す。
Figure 0006318441
以上の結果から,Al基板と石英ウエハの接合では,加圧力10MPa以上で接合を行うことで,必要な接合強度(4.0MPa以上)が得られることが確認された。
なお,上記の接合強度の測定において測定された上記数値は,いずれも,引張試験機のホルダーに試料を取り付けるために使用していた接着剤と試料との接合界面において剥離が生じ,あるいは,石英ウエハが破断することによりそれ以上の測定ができなくなったもので,このことからAu−Au接合界面における接合力は,少なくとも測定された上記数値よりも高いものであると言える。
加圧力とAu−Au接合界面の付着強度の変化
前述した接合強度の測定を行うことにより破断した試料の破断面を観察すると,異なる加圧力で接合された試料間には,破断の仕方に明らかな相違があることが確認された。
すなわち,50MPaの加圧力をかけて接合した試料の破断面を観察したところ,石英ウエハの面積の約1/2は,引張試験機のホルダーに石英ウエハを固定するために使用していた接着剤からの剥離部分であり,残りの1/2は石英ウエハの肉厚内において破断が生じており,Au−Au膜の接合界面における剥離を観察することはできなかった。
これに対し,加圧力をこれよりも低い25MPa,10MPaとして接合した例では,Au−Auの接合界面における剥離が生じていると共に,低い加圧力で加圧して接合したもの程,Au−Au接合界面における剥離領域が増大していることが確認された。
観察された加圧力の変化と剥離領域の変化の関係を,図8に示す。
以上結果から,接合時の加圧力を大きくする程,Au−Au界面における接合強度が上昇することが確認された。
以上で説明した本発明の接合方法は,半導体露光装置(ステッパ)等の超低熱膨張部品の接合,自動車などの構造材の接合,石油掘削等の高圧下での使用が予定される特殊センサの接合,宝飾品の接合等,各種の接合に使用することができる。
特に,本発明の方法による接合では,接合界面が熱伝導に対す抵抗となり難く,良好な熱伝導性を維持しつつ接合を行うことが可能となることから,IGBT等のパワ半導体や,高輝度LED等の電子デバイスに対する放熱体(ヒートシンク,ヒートスプレッダ)等の接合に好適に使用することができる。

Claims (18)

  1. 一方の被接合材に設けた平滑面と,他方の被接合材に設けた平滑面とを重合した状態で接合する方法であって,
    前記一方又は他方の被接合材の少なくともいずれかが,1.0mm以上の肉厚を有する材料塊によって構成された厚肉の被接合材であり,
    真空容器内において,一方の被接合材の前記平滑面に,単金属,あるいは合金から成る微結晶構造の薄膜を形成すると共に,少なくとも表面が単金属,あるいは合金から成る微結晶構造を有する平滑面を備えた前記他方の被接合材の前記平滑面に,前記一方の被接合材に形成された前記薄膜が接触するように前記一方,他方の2つの被接合材を重ね合わせると共に,前記厚肉の被接合材の前記平滑面における所定の測定範囲内の最高点と最低点の高低差であるPV値に基づいて,前記厚肉の被接合材が厚み方向に前記PV値に対応した量以上の変位を生じる加圧力を加えることにより,前記薄膜と前記他方の被接合材の前記平滑面との接合界面及び結晶粒界に原子拡散を生じさせ,前記2つの被接合材を4.0MPa以上の接合強度で接合することを特徴とする接合方法。
  2. 前記一方の被接合材の前記平滑面に形成する微結晶構造の薄膜を,室温における体拡散係数が1×10-40(m2/s)以上で,且つ,室温における酸化物の生成自由エネルギーが−15(kJ/mol of compounds)以上の単金属,あるいは合金により形成すると共に,前記他方の被接合材の前記平滑面の少なくとも表面を,室温における体拡散係数が1×10-40(m2/s)以上で,且つ,室温における酸化物の生成自由エネルギーが−15(kJ/mol of compounds)以上の単金属,あるいは合金から成る微結晶構造とし,
    前記2つの被接合材の重ね合わせを,1×10-4Paを超える圧力の雰囲気下において行うことを特徴とする請求項1記載の接合方法。
  3. 前記一方の被接合材の前記平滑面に形成する微結晶構造の薄膜を,室温における体拡散係数が1×10-45(m2/s)以上で,且つ,室温における酸化物の生成自由エネルギーが−150(kJ/mol of compounds)以上の単金属,あるいは合金により形成すると共に,前記他方の被接合材の前記平滑面の少なくとも表面を,室温における体拡散係数が1×10-45(m2/s)以上で,且つ,室温における酸化物の生成自由エネルギーが−150(kJ/mol of compounds)以上の単金属,あるいは合金から成る微結晶構造とし,
    前記2つの被接合材の重ね合わせを,1×10-4Paを超える圧力の雰囲気下において100℃以上の温度で加熱しながら行うことを特徴とする請求項1記載の接合方法。
  4. 前記一方の被接合材の前記平滑面に形成する微結晶構造の薄膜を,室温における体拡散係数が1×10-55(m2/s)以上で,且つ,室温における酸化物の生成自由エネルギーが−330(kJ/mol of compounds)以上の単金属,あるいは合金により形成すると共に,前記他方の被接合材の前記平滑面の少なくとも表面を,室温における体拡散係数が1×10-55(m2/s)以上で,且つ,室温における酸化物の生成自由エネルギーが−330(kJ/mol of compounds)以上の単金属,あるいは合金から成る微結晶構造とし,
    前記2つの被接合材の重ね合わせを,1×10-4Paを超える圧力の雰囲気下において200℃以上の温度で加熱しながら行うことを特徴とする請求項1記載の接合方法。
  5. 前記一方及び他方の被接合材を,いずれとも前記厚肉の被接合材とし,前記厚肉の被接合材のいずれとも,それぞれの前記PV値に対応した量以上の変位を生じる前記加圧力を加えることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の接合方法。
  6. 前記一方又は他方の被接合材のいずれかを,1.0mm未満の薄肉の被接合材とすることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の接合方法。
  7. 前記他方の被接合材の前記平滑面の前記表面を,真空容器内において前記他方の被接合材の表面に形成した微結晶構造の薄膜により形成したことを特徴とする請求項1〜6いずれか1項記載の接合方法。
  8. 前記厚肉の被接合材を,Al,Cu,Ag,又はAuの単金属,又は,Al,Cu,Ag,又はAuを主成分とする合金により製造された放熱体としたことを特徴とする請求項1〜7いずれか1項記載の接合方法。
  9. 前記被接合材の重ね合わせを,大気圧以上の圧力の雰囲気下で行うことを特徴とする請求項1〜8いずれか1項記載の接合方法。
  10. 前記被接合材の重ね合わせを行う雰囲気が,空気であることを特徴とする請求項1〜9いずれか1項記載の接合方法。
  11. 前記被接合材の重ね合わせを行う雰囲気が,78%を超える不活性ガスを含むことを特徴とする請求項1〜9いずれか1項記載の接合方法。
  12. 前記被接合材の重ね合わせを,塵埃の除去された雰囲気下で行うことを特徴とする請求項1〜11いずれか1項記載の接合方法。
  13. 前記微結晶構造の薄膜を形成する前に,前記微結晶構造の薄膜の形成と同一真空中において,前記微結晶構造の薄膜の形成を行う被接合材の平滑面に生じている変質層を除去することを特徴とする請求項1〜12いずれか1項記載の接合方法。
  14. 前記微結晶構造の薄膜が形成される前記被接合材の平滑面に,前記微結晶構造の薄膜とは異なる材料の薄膜から成る下地層を1層以上形成し,当該下地層上に前記微結晶構造の薄膜を形成したことを特徴とする請求項1〜13いずれか1項に記載の接合方法。
  15. 前記下地層を,Ti,V,Cr,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta,Wの元素群より選択されたいずれか1つの単金属により形成し,又は前記元素群より選択された1つ以上の元素を含む合金により形成することを特徴とする請求項14記載の接合方法。
  16. 前記下地層を形成する前記単金属又は合金として,当該下地層上に形成される前記微結晶構造の薄膜を形成する単金属又は合金よりも高融点で,且つ,前記微結晶構造の薄膜を形成する単金属又は合金に対して融点の差が大きいものを使用することを特徴とする請求項14又は15記載の接合方法。
  17. 前記被接合材がCu又はCu合金製である場合,前記下地層を形成する前に,前記下地層の形成を行う被接合材の平滑面に生じている変質層を除去することを特徴とする請求項14〜16いずれか1項記載の接合方法。
  18. 前記微結晶構造の薄膜の膜厚を,2nm〜1μmの範囲としたことを特徴とする請求項1〜17いずれか1項記載の接合方法。
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