以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
<1.第1実施形態>
<1−1.装置>
図1および図2は、本発明の第1実施形態に係る接合装置1(1Aとも称する)を示す図である。図1は接合装置1の縦断面図であり、図2は当該接合装置1の横断面図である。なお、各図においては、便宜上、XYZ直交座標系を用いて方向等を示している。
この接合装置1は、減圧下のチャンバ(真空チャンバ)2内で、被接合物91の接合表面と被接合物92の接合表面とを原子ビーム等で活性化させ、両被接合物91,92を接合する装置である。この装置1によれば、両被接合物91,92の接合表面に対して表面活性化処理を施すとともに、当該両被接合物91,92を固相接合することが可能である。なお、両被接合物91,92としては、様々な材料(例えば半導体ウエハーなど)が用いられる。
接合装置1は、両被接合物91,92の処理空間である真空チャンバ2と、当該真空チャンバ2に連結されたロードロックチャンバ3とを備える。真空チャンバ2は、排気管6と排気弁7とを介して真空ポンプ5に接続されている。真空ポンプ5の吸引動作に応じて真空チャンバ2内の圧力が低減(減圧)されることによって、真空チャンバ2は真空状態にされる。また、排気弁7は、その開閉動作と排気流量の調整動作とによって、真空チャンバ2内の真空度を調整することができる。
両被接合物91,92は、ロードロックチャンバ3内において導入棒4の先端部のクランピングチャック4cで保持された後、真空チャンバ2内に移動される。具体的には、上側の被接合物92は、導入棒4の先端部で保持され、ヘッド22の直下位置PG2にまでX方向に移動された後、ヘッド22によって保持される。同様に、下側の被接合物91は、導入棒4の先端部で保持された状態でX方向においてステージ12に向けて位置PG1にまで移動され、当該ステージ12によって保持される。
ヘッド22およびステージ12は、いずれも、真空チャンバ2内に設置されている。
ヘッド22は、アライメントテーブル23によってX方向およびY方向に移動(並進移動)されるとともに、回転駆動機構25によってθ方向(Z軸回りの回転方向)に回転される。ヘッド22は、後述する位置認識部28による位置検出結果等に基づいてアライメントテーブル23および回転駆動機構25によって駆動され、X方向、Y方向、θ方向におけるアライメント動作が実行される。
また、ヘッド22は、Z軸昇降駆動機構26によってZ方向に移動(昇降)される。Z軸昇降駆動機構26は、不図示の圧力検出センサにより検出した信号に基づいて、接合時の加圧力を制御することができる。
また、ステージ12は、スライド移動機構14によってX方向に移動(並進移動)可能である。ステージ12は、ビーム照射部11付近の待機位置(位置PG1付近)とヘッド22直下の接合位置(位置PG2付近)との間でX方向において移動する。スライド移動機構14は高精度の位置検出器(リニアスケール)を有しており、ステージ12は高精度に位置決めされる。
また、接合装置1は、被接合物91,92の位置を認識する位置認識部18,28を備えている。位置認識部18,28は、それぞれ、被接合物等に関する光像を画像データとして取得する撮像部(カメラ)18b,28bを有する。また、両被接合物91,92には、それぞれ、位置識別用マーク(以下、単にマークとも称する)が付されている。例えば、一方の被接合物91に2つの位置識別用マークが設けられ、他方の被接合物92にも2つの位置識別用マークが設けられる。なお、当該各マークは、特定の形状を有することが好ましい。ただし、これに限定されず、ウエハーのオリフラ、あるいは、ウエハー上に形成された回路パターンなどの一部を位置識別用マークとして流用するようにしてもよい。
両被接合物91,92の位置決め動作は、当該位置認識部(カメラ等)により、両被接合物91,92に付されたマークの位置を認識することによって実行される。
例えば、位置認識部18は、位置PG1に存在する被接合物91の光像を画像データとして取得する。具体的には、真空チャンバ2の外部上方に配置された光源18aから出射された光は、真空チャンバ2の窓部2aを透過して被接合物91(位置PG1)に到達して反射される。そして、被接合物91で反射された光は、再び真空チャンバ2の窓部2aを透過して進行し、撮像部18bに到達する。このようにして、位置認識部18は、被接合物91に関する光像を画像データとして取得する。そして、位置認識部18は、当該画像データに基づいてマークを抽出するとともに、当該マークの位置を認識し、ひいては被接合物91の位置を認識する。
同様に、位置認識部28は、位置PG2に存在する被接合物92の光像を画像データとして取得する。具体的には、真空チャンバ2の外部下方に配置された光源28aから出射された光は、真空チャンバ2の窓部2bを透過して被接合物92(位置PG2)に到達して反射される。そして、被接合物92(詳細にはその一部)で反射された光は、再び真空チャンバ2の窓部2bを透過して進行し、撮像部28bに到達する。このようにして、位置認識部28は、被接合物92に関する光像を画像データとして取得する。また、位置認識部28は、当該画像データに基づいてマークを抽出するとともに、当該マークの位置を認識し、ひいては被接合物92の位置を認識する。
さらに、後述するように、この接合装置1においては、ステージ12がX方向に移動することによって、被接合物91が位置PG2に移動し、両被接合物91,92が対向する状態(図10参照)に遷移する。図6に示すように、位置認識部28は両被接合物91,92の対向状態において、両被接合物91,92に関する光像を画像データとして取得することもできる。具体的には、真空チャンバ2の外部下方に配置された光源28aから出射された光は、真空チャンバ2の窓部2bを透過して両被接合物91,92(詳細にはその一部)で反射され、再び真空チャンバ2の窓部2bを透過して進行し、撮像部28bに到達する。位置認識部28は、このようにして取得された両被接合物91,92に関する光像(反射光に関する画像)を画像データとして取得し、当該画像データに基づいてマークの位置を認識する。なお、光源28aとしては、両被接合物91,92およびステージ12等を透過する光(例えば赤外光)が用いられればよい。
また、この実施形態においては、図6に示すように、位置認識部28は、別の光源28c,28dをも有している。位置認識部28は、両被接合物91,92が対向する状態において、当該光源28c,28dからの光の透過光に関する画像データを用いて、両被接合物91,92の位置を認識することも可能である。具体的には、真空チャンバ2の外部側方に配置された光源28c,28dから出射された光は、真空チャンバ2の窓部2c,2dをそれぞれ透過し、その後、ミラー28e,28fで反射されてその進行方向が変更され下方に進行する。当該光は、さらに、両被接合物91,92(詳細にはその一部)を透過した後、窓部2bを透過して撮像部28bに到達する。位置認識部28は、このようにして取得された両被接合物91,92に関する光像(透過光に関する画像)を画像データとして取得し、当該画像データに基づいてマークの位置を認識する。
このように、接合装置1は、反射光による撮像システム(光源28aおよび撮像部28b等を有する)と、透過光による撮像システム(光源28c,28dおよび撮像部28b等を有する)との2種類の撮像システムを備えている。接合装置1は、状況に応じて、これら2種類の撮像システムを適宜に切り換えて利用し、各マークの位置を認識することが可能である。
以上のような位置認識部18,28によって両被接合物91,92の位置が認識される。そして、認識された位置情報に基づいて、アライメントテーブル23および回転駆動機構25によってヘッド22がX方向、Y方向、および/またはθ方向に駆動されることによって、両被接合物91,92の相対的に移動され、アライメント動作が実行される。例えば被接合物91に付された2つのマークと被接合物92に付された2つのマークとが重なるように、両被接合物91,92を微小移動することによって、両被接合物91,92を精密に位置決めすることができる。
また、接合装置1は、3つのビーム照射部11,21,31を備えている。接合装置1においては、これらの3つのビーム照射部11,21,31を用いて表面活性化処理が実行される。図1に示すように、ビーム照射部11,21は、真空チャンバ2の奥側(+Y側)の側壁面に設けられており、ビーム照射部31は、真空チャンバ2の右側(+X側)の側壁面に設けられている(図2も参照)。ビーム照射部11,21,31は、それぞれ、真空チャンバ2内部の対応位置に向けて特定物質のビームを照射する。
より具体的には、図1および図2に示すように、ビーム照射部11は、真空チャンバ2内の比較的左側(−X側)の位置PG1付近に配置され、ビーム照射部21は、真空チャンバ2内の比較的右側(+X側)の位置PG2付近に配置される。
ビーム照射部11は、図3の断面図にも示すように、真空チャンバ2の+Y側壁面の上方寄りの位置において、斜め下方を向いて設置されている。これにより、ビーム照射部11は、ステージ12に保持された被接合物91が位置PG1に存在するときに、当該被接合物91の接合表面に対して、斜め上方からビームを照射する。また、ビーム照射部11によるビーム照射方向は、X軸に垂直な平面(YZ平面)に平行な方向である。なお、図3は、図1のI−I断面における断面図である。
ビーム照射部21は、図4の断面図にも示すように、真空チャンバ2の+Y側壁面の下方寄りの位置において、斜め上方を向いて設置されている。これにより、ビーム照射部21は、ヘッド22に保持された被接合物92が位置PG2に存在するときに、当該被接合物92の接合表面に対して、斜め下方からビームを照射する。また、ビーム照射部21によるビーム照射方向も、X軸に垂直な平面(YZ平面)に平行な方向である。なお、図4は、図1のII−II断面における断面図である。
ビーム照射部31は、図5の断面図にも示すように、真空チャンバ2の+X側壁面において、水平面に平行に設置されている。これにより、ビーム照射部31は、ステージ12に保持された被接合物91とヘッド22に保持された被接合物92との両者が位置PG2において対向配置される状態において、当該両者91,92の対向空間SP(図11参照)の側方から、当該対向空間SPに向けてビームを照射する。ビーム照射部31によるビーム照射方向は、X軸に平行な方向である。なお、図5は、図2のIII−III断面における断面図である。
この接合装置1においては、後述するようなスライド配置状態(図8参照)において、ビーム照射部11,21を用いて特定物質(例えばアルゴン)を放出することにより、両被接合物91,92の接合表面を活性化する表面活性化処理が実行される。そして、接合装置1は、表面活性化処理が施された両被接合物91,92を近接対向状態(図10)にした後に、互いに近接させて両被接合物91,92を接合する(図12および図13)。
また、この実施形態においては、両被接合物91,92を近接対向状態にした後に、さらにビーム照射部31を用いて特定物質(例えばアルゴン)を放出することにより、両被接合物91,92の接合表面を活性化する表面活性化処理をも実行する(図11)。
ここにおいて、ビーム照射部11,21,31は、イオン化された特定物質(ここではアルゴン)を電界で加速し両被接合物91,92の接合表面に向けて当該特定物質を放出することにより、両被接合物91,92の接合表面を活性化する。換言すれば、ビーム照射部11,21,31は、エネルギー波を放出することによって、両被接合物91,92の接合表面を活性化する。
この実施形態では、ビーム照射部11,21として原子ビーム照射装置を用い、ビーム照射部31としてイオンビーム照射装置を用いるものとする。
図15は、表面活性化処理の原理を示す模式図である。また、図16は、イオンビーム照射の原理を示す模式図であり、図17は、原子ビーム照射の原理を示す模式図である。
図15に示すように、この表面活性化処理においては、特定物質(例えばアルゴン)を被接合物の接合表面に衝突させることによって、接合表面の付着物99を除去し、被接合物(例えば91)の表面原子の未結合手であるダングリングボンド(図15では短い線分で示す)が露出した状態を形成する。そして、このような状態を2つの被接合物91,92の双方の接合表面に形成した後に、当該被接合物91の接合表面を互いに接触させることによって、ダングリングボンド同士を接合させる。これにより、両被接合物91,92が原子レベルで接合される。これによれば、非常に強固な接合状態を実現することができる。
このように特定物質を接合表面に衝突させる技術としては、例えば、イオンビーム照射技術および原子ビーム照射技術が存在する。
図16に示すように、イオンビーム照射においては、イオン化された特定物質(アルゴン等)が電界Eで加速された後にイオン化されたまま放出される。そして、当該特定物質はイオン状態のまま被接合物へと向かう。なお、イオン状態のアルゴン等は、被接合物の表面に到達するまでに電荷と結合して電気的に中和される。
一方、図17に示すように、原子ビーム照射においては、イオン化された特定物質(アルゴン等)が電界Eで加速された後に、ビーム照射部内で供給された電荷と直ちに結合して、その電気特性が中和される。そして、電気的に中和された特定物質が高速で被接合物へと向かう。
このように、イオンビームと原子ビームとでは、その電気的中和のタイミングが異なっているが、イオン化された特定物質(アルゴン等)が電界Eで加速される点で共通する。そして、加速された特定物質が高速で接合表面に衝突することによって、図15に示すような表面活性化処理が実行される点でも共通する。
この実施形態においては、このようなビーム照射を用いて表面活性化処理を実行する。
<1−2.動作>
次に、接合装置1における接合動作について、図7〜図13の模式図を参照しながら説明する。図7〜図13は、当該接合動作(接合方法)における時系列の各工程を順次に示す図である。なお、図7〜図13においては、便宜上、ステージ12およびヘッド22等の図示を省略している。
図7は、導入棒4(図1)等を用いて両被接合物91,92が真空チャンバ2内に導入された状態を示している。この導入動作は減圧下において実行される。図7においては、導入直後において、上側の被接合物92が位置PG2においてヘッド22によって保持されており、下側の被接合物91が位置PG1においてステージ12によって保持されている状態を示している。
この後、図14に示すように期間TM0において接合装置1は、さらに真空ポンプ5による減圧動作を実行して、真空チャンバ2内の圧力を圧力値PR0にまで低減し高真空状態ないし超高真空状態にする。たとえば、10−10Torr(約10−8Pa)〜10−6Torr(約10−4Pa)程度にまで真空引きする。これにより、真空チャンバ2内における不要な浮遊物(不純物等)を減少させることができる。この期間TM0における圧力値PR0は、図14に示すように、次述するビーム照射(図8)を伴う期間TM1における圧力値PR1(例えば10−4Torr(約10−2Pa))よりも低い値である。すなわち、期間TM0の真空度は、期間TM1の真空度よりも高い。換言すれば、真空チャンバ2内の真空度は、期間TM1に先立って期間TM0において予め高められる。なお、期間TM0における減圧処理は、ビーム照射(図8)よりも前に実行される処理であることから、「バックグラウンド減圧処理」とも称される。
つぎに、図8に示すように、接合装置1は、ビーム照射部11,21を用いた表面活性化処理(以下、第1の表面活性化処理とも称する。)F1を実行する。
この第1の表面活性化処理F1においては、両被接合物91,92は次のように配置されている。すなわち、被接合物91,92の接合表面が互いに略平行に且つ互いに逆向きに配置される。詳細には、比較的下側の被接合物91の接合表面はXY平面に略平行に且つ上向きで配置され、比較的上側の被接合物92の接合表面はXY平面に略平行に且つ下向きに配置される。換言すれば、両被接合物91,92は互いに向かい合う向きで配置される。ただし、両被接合物91,92は対向状態を有していない。具体的には、両被接合物91,92の接合表面の法線方向(Z方向)から見て、両被接合物91,92の接合表面が互いに重ならないように、両被接合物91,92は、X方向(Z方向に垂直な方向)において互いにずらされて配置されている。このような配置状態は、対向状態に対して両被接合物91,92が相対的にスライドされた状態であることから、「スライド配置状態」とも称される。
そして、ビーム照射部11,21によるビーム照射(ここでは原子ビーム照射)が行われる。具体的には、ビーム照射部11によるビーム照射によって被接合物91の接合表面が活性化され、ビーム照射部21によるビーム照射によって被接合物92の接合表面が活性化される。また、このビーム照射部11,21によるビーム照射は、同時並列的に実行される。
ここでは、両被接合物91,92に対しては、それぞれ、各対応位置PG1,PG2付近において、両被接合物91,92の配列方向(X方向)に垂直な平面(YZ平面に平行な平面)に沿ってビーム照射が行われる。
具体的には、ビーム照射部11の照射口は、図3に示すように、位置PG1付近において、+Y側の比較的上方の位置から−Y側の比較的下方の位置に向けて、被接合物91の接合表面に対して所定の傾斜角度(例えば45度)で傾斜して配置されている。そして、ビーム照射部11は、被接合物91に対して斜め上方からビーム照射を行う。
また、ビーム照射部21の照射口は、図4に示すように、位置PG2付近において、+Y側の比較的下方の位置から−Y側の比較的上方の位置に向けて、被接合物92の接合表面に対して所定の傾斜角度(例えば30度)で傾斜して配置されている。そして、ビーム照射部21は、被接合物92に対して斜め下方からビーム照射を行う。
さて、図8に示すような第1の表面活性化処理F1が終了(図9参照)すると、図10に示すように、ステージ12および被接合物91がスライド移動機構14によってX方向に(+X側に向けて)移動される。このようにして、ビーム照射部11,21によるビーム照射によって表面活性化処理が施された両被接合物91,92がX方向に相対的に移動される。そして、移動動作完了後には、両被接合物91,92は、その接合表面が対向する状態(対向状態)を有している。
なお、ここでは、図9の状態(すなわち移動前)において大まかな位置計測動作を行っておき、その位置計測動作に基づいて図10の移動動作を行い、移動動作完了後に更に正確な位置決め動作(ファインアライメント動作)を実行するものとする。具体的には、まず、第1の表面活性化処理F1の実行後において、被接合物91が位置PG1に存在し且つ被接合物92が位置PG2に存在する状態で、それぞれの位置を計測しておく。そして、両被接合物91,92をスライド移動させて両被接合物91,92を近接対向状態(図10)に遷移させる。この移動後の近接対向状態において、上述のような反射光による撮像システムと透過光による撮像システムとの一方もしくは双方を用いて位置を計測し、当該計測結果に基づいて微小位置調整動作(ファインアライメント動作)を行う。これによれば、両被接合物91,92の位置を非常に正確に調整することが可能である。
次に、図11に示すように、第2の表面活性化処理F2をさらに実行する。
第2の表面活性化処理F2は、対向状態を有する両被接合物91,92の対向空間の側方から当該対向空間に向けて、イオン化された特定物質を電界で加速して当該特定物質を放出することにより、両被接合物91,92の接合表面を活性化する処理である。具体的には、ビーム照射部31によるビーム照射によって両被接合物91,92の接合表面を活性化する。ここでは、ビーム照射部31によってイオンビームを照射する場合を例示する。
その後、図12に示すように第2の表面活性化処理F2が終了した後に、両被接合物91,92を互いに接近させていく。そして、図13に示すように、両被接合物91,92を接合する。これにより、両被接合物91,92が良好な状態で接合される。
この実施形態においては、以上のような動作が実行される。
ここにおいて、上記実施形態においては、第1の表面活性化処理F1(図8)が終了して対向状態への移動動作が実行された後に、第2の表面活性化処理F2(図11)が実行される。すなわち、両被接合物91,92に対する表面活性化処理が移動期間後に再び実行される。そして、その後に被接合物92が接合される。そのため、仮に、表面活性化処理F1後の移動期間(図10)等において、不要な物質が両被接合物91,92の各接合表面に再付着する場合であっても、表面活性化処理F1の終了後に付着した付着物等をビーム照射部31による表面活性化処理によってさらに除去できる。端的に言えば、ビーム照射部31による表面活性化処理が接合直前に実行され、表面活性化処理終了時点から接合時点までの期間が短くなるため、付着物を抑制した状態で接合を行うことができる。したがって、両被接合物91,92を非常に良好な状態で接合することが可能である。
また、この実施形態のように、第1の表面活性化処理F1と第2の表面活性化処理F2との2回に分けて表面活性化処理を実行することによれば、両被接合物91,92の温度上昇を抑制することが可能である。
例えば、仮に、1回の表面活性化処理のみで同程度の効果を得るために所定時間T10(例えば10分程度)の処理を行う場合を想定する。この場合には両被接合物91,92の温度が例えば比較的高い温度(例えば120℃程度)にまで上昇する。
これに対して、上記実施形態のように、2回に分けて表面活性化処理を実行することによれば両被接合物91,92の温度上昇を抑制することが可能である。例えば、1回目の時間T11(例えば8分)の処理では100℃程度、そして2回目の時間T11(例えば2分)の処理では80℃程度に抑制することが可能である。
また、この実施形態では、第1の表面活性化処理F1にて原子ビームが用いられ、第2の表面活性化処理F2にてイオンビームが用いられている。ここにおいて、イオンビームによるエネルギーは、原子ビームによるエネルギーよりも小さい。そのため、特に、接合直前における両被接合物91,92の温度上昇、より詳細にはファインアライメント(図10)後における両被接合物91,92の温度上昇を抑制できる。したがって、両被接合物91,92の温度上昇に起因する変形等を抑制することが可能である。
仮に、比較的大きな温度上昇が生じた場合には、基板の反り或いは割れが発生することがある。このような反りは接合時の位置ずれ等を誘発する。また、反りが発生しないとしても、例えば、両被接合物91,92が互いに異なる種類の材料であるときには、当該両被接合物91,92の熱膨張率の差異に起因して、両被接合物91,92の相互間に位置ずれが生じることがある。これに対して、両被接合物91,92の温度上昇を抑制することによれば、このような事態を回避することができる。特に、異種材料間での熱膨張差によるそりや割れを防ぐことができるとともに、被接合物同士での位置合わせ精度であるアライメント精度を向上することができる。
また、上記実施形態においては、第1の表面活性化処理F1後に両被接合物91,92をX方向にスライド移動させ更にZ方向に接近させて接合することによって、両被接合物91,92が良好に接合される。特に、図8に示すように、両被接合物91,92がX方向において互いにずらされて配置された状態で行われるため、一方の被接合物に付着していた付着物が跳ね返ったとしても他方の被接合物へ向けて飛散する可能性が低下する。したがって、一方の被接合物に付着していた付着物が他方の被接合物に再付着することを防止することが可能である。
なお、上記のようなビーム照射部11,21を用いた表面活性化処理(図8)中においては、被接合物91の接合表面を含む平面PL1と被接合物92の接合表面を含む平面PL2とは、近接して配置されることが好ましい。これによれば、一方の被接合物に付着していた付着物が跳ね返ったとしても他方の被接合物へ向けて飛散する可能性がさらに低下する。したがって、一方の被接合物に付着していた付着物が他方の被接合物に再付着することを、より確実に防止することが可能である。
より詳細には、被接合物91の接合表面を含む平面PL1と被接合物92の接合表面を含む平面PL2との距離D1(図8参照)は20ミリメートル以下であることが好ましい。
ここにおいて、対向配置された両被接合物に対してプラズマ洗浄による表面活性化処理を行った後に被接合物を接合する従来技術が存在する。このような従来技術に係る装置においては、通常、対向する両被接合物91,92が少なくとも30mm程度離して配置される。
これに対して、平面PL1,PL2の相互間の距離D1が20ミリメートル以下である場合には、さらに接近した状態で第1の表面活性化処理F1が実行される。したがって、一方の被接合物に付着していた付着物が他方の被接合物へと再付着することを、より確実に防止することが可能である。
また、距離D1が比較的大きいときには、Z軸の傾き等に起因して、ヘッド下降時に位置ずれが発生することがある。これに対して、当該両平面PL1,PL2相互間の距離を20ミリメートル以下にすることによれば、ヘッド下降時における位置ずれを抑制して、アライメント精度の向上を図ることも可能である。
以上のように、距離D1は小さいことが好ましい。
また、この距離D1はさらに小さいことが好ましく、例えば5μm以下であることが好ましい。これによれば、一方の被接合物に付着していた付着物が他方の被接合物へと再付着することを、さらに確実に防止することが可能である。
また、この実施形態においては、第1の表面活性化処理F1において、図3、図4および図8に示すように、両被接合物91,92の配列方向(X方向)に垂直な平面(YZ平面に平行な平面)に沿って、斜め上方および斜め下方からビーム照射が行われる。そのため、一方の被接合物から除去された物質は、Y方向およびZ方向を中心に飛散し、他方の被接合物が存在するX方向には飛散しにくい。これによれば、一方の被接合物に付着していた付着物が他方の被接合物へと再付着することを、さらに確実に防止することが可能である。
なお、第1の表面活性化処理F1において、仮に被接合物に対して真横からビーム照射を行う場合には、被接合物に対して均一な処理を施すことが困難である。特に、第1の表面活性化処理F1においては比較的大きな出力でのビーム照射を伴うことが好ましく、そのような状況では、ビーム照射口に近い部分とビーム照射口から離れた部分とで表面活性化処理の程度を同程度にすることは困難である。これに対して、上記実施形態においては、両被接合物91,92に対して斜めからビーム照射が行われる。したがって、被接合物に対して均一な表面活性化処理を施すことが比較的容易である。これにより、比較的大きな接合表面を有する被接合物を処理対象とする場合にも、良好な接合を実現することができる。例えば、チップ単位ではなく基板(半導体ウエハー)単位での接合を良好に行うことが可能である。さらには、より大きな基板に関する接合を良好に行うことが可能である。
また、上記実施形態においては、ビーム照射部11,21,31は、同一の接合装置1内(詳細には同一の真空チャンバ2内)に設けられている。換言すれば、この実施形態においては、第1の表面活性化処理F1と第2の表面活性化処理F2と接合処理とが同一の装置内において実行される。そのため、両被接合物91,92を別の装置に移動することを要さず、第1の表面活性化処理F1の終了後の比較的短い期間において、第2の表面活性化処理F2をも実行して両被接合物91,92を接合することができる。例えば表面活性化処理F1を行う処理室と接合処理を行う接合室とが別個に設けられ且つ搬送ロボット等を用いて当該処理室から当該接合室へと被接合物を搬送する場合に比べて、第1の表面活性化処理の終了時点から接合完了までの時間が短縮される。したがって、再付着を抑えて良好な接合を行うことが可能である。
また特に、第1の表面活性化処理F1が終了した後に、同一の接合装置1内(詳細には同一のチャンバ2内)において両被接合物をスライドさせることによって両被接合物を対向させ接合可能な状態にすることができるので、接合までの時間をさらに短縮することができる。したがって、再付着をさらに抑制して良好な接合を行うことが可能である。
また、上記実施形態においては、ビーム照射部11,21,31は、それぞれ、接合装置1に固定されている。そして、ビーム照射部11,21,31に対する電力供給は、真空チャンバ2の外部から行うことが可能である。そのため、真空チャンバ2内に電力供給経路を設けることを要しない。したがって、上記実施形態によれば、電気的構成を簡易に構築することができる。
また、上記実施形態においては、期間TM0においてバックグラウンド減圧処理(図14)を予め実行しているため、不要な浮遊物等を予め低減することができる。そのため、非常に良好に両被接合物91,92を接合することができる。また特に、このバックグラウンド減圧処理が実行されることによって、第2の表面活性化処理F2の際に比較的大きな浮遊物、不純物が存在する確率は、非常に低くなる。そして、第2の表面活性化処理F2においては、比較的小さな衝撃力で除去することが可能な不純物(例えば水分やハイドロカーボン(水とカーボンとの反応物)等)が主要な浮遊物になる。そのため、第2の表面活性化処理F2における照射エネルギーを低減し、両被接合物91,92の温度上昇を抑制しつつ、ビーム照射部31による比較的小さなエネルギーのビーム照射によって付着物を除去することが可能である。このように、バックグラウンド減圧処理は、上述のような第1の表面活性化処理F1と第2の表面活性化処理F2とを有する2段階処理には特に有効な手法である。
なお、上記第1実施形態においては、ビーム照射部11,21によって原子ビームを照射し、ビーム照射部31によってイオンビームを照射する場合を例示しているが、本発明は、これに限定されない。例えば、ビーム照射部11,21,31が全てイオンビームを照射するものであってもよい。あるいは、逆に、ビーム照射部11,21,31が全て原子ビームを照射するものであってもよい。換言すれば、第1の表面活性化処理F1と第2の表面活性化処理F2とは、同じ種類のビームを照射する処理であってもよい。
また、特にこのような場合においては、ビーム照射部31によるビーム照射時間(特定物質の放出時間、あるいはエネルギー波の照射時間とも称される)は、ビーム照射部11,21によるビーム照射時間よりも短いことが好ましい。換言すれば、第2の表面活性化処理F2におけるビーム照射時間は、第1の表面活性化処理F1におけるビーム照射時間よりも短いことが好ましい。例えば、ビーム照射部31のビーム照射時間T3を、ビーム照射部11,21のビーム照射時間T1,T2よりも短く設定すればよい。例えば、値T1,T2がそれぞれ8分であるときには、値T3は2分に設定されればよい。これによれば、接合直前における両被接合物91,92の温度上昇、特に、ファインアライメント(図10)後における両被接合物91,92の温度上昇を抑制できる。したがって、両被接合物91,92の温度上昇に起因する変形等を抑制することが可能である。
同様に、ビーム照射部31によるビーム照射出力(特定物質の放出強度、あるいはエネルギー波の照射強度とも称される)は、ビーム照射部11,21によるビーム照射出力よりも小さいことが好ましい。換言すれば、第2の表面活性化処理F2におけるビーム照射出力は、第1の表面活性化処理F1におけるビーム照射出力よりも小さいことが好ましい。具体的には、ビーム照射部31のビーム照射出力電圧V3を、ビーム照射部11,21のビーム照射出力電圧V1,V2よりも小さく設定すればよい。例えば、値V1,V2がともに80V(ボルト)であるときには、値V3は20V(ボルト)に設定されればよい。これによれば、特に、接合直前における両被接合物91,92の温度上昇、より詳細にはファインアライメント後における両被接合物91,92の温度上昇を抑制できる。したがって、両被接合物91,92の温度上昇に起因する変形等を抑制することが可能である。
<2.第2実施形態>
第2実施形態は、第1実施形態の変形例である。以下では、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
上記第1実施形態においては、第1の表面活性化処理F1においてイオンビーム照射によるエネルギー波の照射を行う場合を例示したが、この第2実施形態においては、第1の表面活性化処理F1において引き込み型電界プラズマ(単に「プラズマ」とも称する)を用いてエネルギー波の照射を行う場合を例示する。
図18は、第2実施形態に係る接合装置1(1Bとも称する)を示す図である。
図18に示すように、第2実施形態に係る接合装置1Bは、第1実施形態に係る接合装置1Aと類似の構成を有している。ただし、この接合装置1Bにおいては、接合装置1Aにおけるビーム照射部11,21は設けられていない。一方、接合装置1Bのヘッド22Bおよびステージ12Bは、それぞれ、電圧付与手段(不図示)に電気的に接続されており、プラズマ電極(プラズマ発生手段)としても機能する。
接合装置1Bにおいては、ステージ12Bがプラズマ電極として機能することによって、被接合物91の接合表面にプラズマ処理(表面活性化処理)を施すことが可能である。また、ヘッド22Bがプラズマ電極として機能することによって、被接合物92の接合表面にプラズマ処理(表面活性化処理)を施すことが可能である。
そして、このような接合装置1Bにおいて、上記第1実施形態と同様の動作が実行される。
具体的には、バックグラウンド減圧処理の後、プラズマ処理による第1の表面活性化処理F1が両被接合物91,92に施される。詳細には、真空チャンバ2内にプラズマ反応ガス(例えばアルゴン)が供給され、低真空状態(例えば10−2Torr(約1Pa)程度)でステージ12B(プラズマ電極)に交番電圧を付与することによって、プラズマが発生する。このとき、発生したプラズマイオン(換言すれば、イオン化された特定物質)(例えば、アルゴンイオン)が被接合物91に引き込まれて当該被接合物91に照射されることによって、被接合物91の表面活性化処理が行われる。また、同様に、ヘッド22B(プラズマ電極)に交番電圧を付与することによってプラズマを発生させ、発生したプラズマイオンによって被接合物92の表面活性化処理が行われる。このようにして、両被接合物91,92の接合表面のそれぞれに向けてプラズマを用いたエネルギー波が照射されることにより、両被接合物91,92の各接合表面が活性化される。なお、この第1の表面活性化処理F1は、両被接合物91,92の「スライド配置状態」で実行される。
図19は、プラズマ洗浄を用いた表面活性化処理について説明する図である。図19に示すように、プラズマ洗浄を用いた表面活性化処理においては、被処理物(被接合物)の接合表面に電気的な極性(例えば負極性)が付与される。そして、当該接合表面の極性とは逆の極性を有する特定物質(例えば正極性を有するアルゴン)が当該接合表面に向けてクーロン力で引き込まれて当該接合表面に衝突し、その衝突力によって不純物の除去が行われる。第2実施形態に係る第1の表面活性化処理F1においては、このような処理が実行される。
つぎに、被接合物91はスライド移動機構14を用いてX方向に被接合物92の直下位置にまでスライド移動され、両被接合物91,92が対向する(図10参照)。
その後、今度はビーム照射部31を用いてイオンビーム照射による第2の表面活性化処理F2が両被接合物91,92に施される(図11参照)。具体的には、両被接合物91,92の接合表面を対向させた状態で、両被接合物91,92の対向空間の側方から当該対向空間に向けてビーム照射部31によるエネルギー波(ここではイオンビーム)が照射され、両被接合物91,92の接合表面が活性化される。
そして、ヘッド22Bが下降して両被接合物91,92が接近し、両被接合物91,92が接合される(図12参照)。
この第2実施形態においては、以上のような動作が実行される。
このような動作によれば、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
特に、第1の表面活性化処理F1(図8)が終了して対向状態への移動動作が実行された後に、第2の表面活性化処理F2(図11)が実行されて被接合物92が接合される。そのため、仮に、表面活性化処理F1後の移動期間(図10)等において、不要な物質が両被接合物91,92の各接合表面に再付着する場合であっても、表面活性化処理F1の終了後に付着した付着物等をビーム照射部31による表面活性化処理によってさらに除去できる。したがって、両被接合物91,92を非常に良好な状態で接合することが可能である。
また、この第2実施形態では、第1の表面活性化処理F1にてプラズマが用いられ、第2の表面活性化処理F2にてイオンビームが用いられている。ここにおいて、イオンビームによるエネルギーは、プラズマによるエネルギーよりも小さい。そのため、特に、接合直前における両被接合物91,92の温度上昇、より詳細にはファインアライメント(図10)後における両被接合物91,92の温度上昇を抑制できる。したがって、両被接合物91,92の温度上昇に起因する変形等を抑制することが可能である。
<3.第3実施形態>
第3実施形態は、第2実施形態の変形例である。第3実施形態においても、第2実施形態と同様に、第1の表面活性化処理F1としてプラズマ処理が採用され、第2の表面活性化処理F2としてイオンビーム照射処理が採用される場合を例示する。
ただし、この第3実施形態においては、第1の表面活性化処理F1と第2の表面活性化処理F2とを互いに異なる処理室で実行する。具体的には、第1の表面活性化処理F1を第1洗浄処理部120(次述)で実行し、第2の表面活性化処理F2を第2洗浄処理部140(次述)で実行する。以下、第2実施形態との相違点を中心に説明する。
図20は、第3実施形態に係る接合装置1(1Cとも称する)を示す上面図である。
図20に示すように、この接合装置1Cは、導入部110と第1洗浄処理部120と反転部130と第2洗浄処理部(接合部)140と搬送部150と搬送ロボット(搬送装置)RB1とを備えている。これらの各処理部110,120,130,140,150は、それぞれ、減圧装置に接続されており真空状態を形成することが可能である。
また、搬送部150は、その他の処理部110,120,130,140に接続される被接合物搬送用の処理室であり、搬送ロボットRB1を備えている。搬送部150に設置された搬送ロボットRB1は、被接合物を複数の処理部110,120,130,140の相互間で移動させることができる。特に、搬送中の再付着防止の観点からは、搬送部150を真空状態にすることによって、搬送ロボットRB1は被接合物を真空状態で搬送すること(真空搬送)が好ましい。なお、被接合物が反応しにくい物質(例えば金あるいは銅)である場合等においては、両被接合物91,92を大気搬送するようにしてもよい。
導入部110は、被接合物を装置外部から搬入すること、及び被接合物を装置外部へと搬出することを行うチャンバ(処理室)である。
第1洗浄処理部120は、被接合物に対してプラズマ処理(第1の表面活性化処理F1)を行うチャンバ(処理室)である。第1洗浄処理部120は、図21に示すように、被接合物を保持するステージ121Cを有している。当該ステージ121Cは、電圧付与手段(不図示)に電気的に接続されており、プラズマ電極(プラズマ発生手段)としても機能する。
反転部130は、被接合物の上下を反転させる処理部である。反転部130は、被接合物を回転して反転する反転部材を有している。
また、第2洗浄処理部140は、イオンビーム照射処理(第2の表面活性化処理F2)を行うとともに接合処理をも行うチャンバ(処理室)である。そのため、第2洗浄処理部140は、接合部とも称される。この第2洗浄処理部140は、第2実施形態の真空チャンバ2内の構成と類似の構成を有している。ただし、第2洗浄処理部140は、スライド移動機構14を有しない点、ならびにヘッド22Cおよびステージ12Cがプラズマ電極として機能しない点で、第2実施形態の接合装置1Bのチャンバ2内の構成と相違する。第2洗浄処理部140においては、ヘッド22Cとステージ12Cとが常に対向している。
次に、第3実施形態に係る動作について図21〜図25を参照しながら説明する。
まず、導入部110に搬入された被接合物92が、搬送ロボットRB1によって第1洗浄処理部120へと搬送される。第1洗浄処理部120においては、被接合物92の接合表面が上側に向くように各被接合物が載置される。そして、図21に示すように、被接合物92の上側の接合表面に対してプラズマ処理(第1の表面活性化処理F1)が施される。プラズマ処理が施された被接合物92は、搬送ロボットRB1によって反転部130へと搬送され、反転部130内に設けられた反転装置によって被接合物92の上下が反転される(図22参照)。反転後の被接合物92は、搬送ロボットRB1によって反転部130から取り出され、今度は第2洗浄処理部140へと搬送される(図23)。このように、被接合物92は、搬送ロボットRB1および反転部130によって、第1洗浄処理部120から第2洗浄処理部140へと反転を伴って移動される。移動後においては、図23に示すように、被接合物92は、その接合表面が下側を向いた状態で、第2洗浄処理部140内のヘッド22Cによって保持される。
つぎに、もう一方の被接合物91は、導入部110に搬入された後、搬送ロボットRB1によって第1洗浄処理部120へと搬送される。そして、第1洗浄処理部120において、被接合物91の接合表面が上側に向くように各被接合物が載置され、図21に示すように、被接合物91の上側の接合表面に対してプラズマ処理(第1の表面活性化処理F1)が施される。そして、プラズマ処理が施された被接合物91は、搬送ロボットRB1によって、第1洗浄処理部120から取り出され、その接合表面が上側を向いた状態のまま、第2洗浄処理部140へと移動される(図24)。移動後においては、図24に示すように、被接合物91は、その接合表面が上側を向いた状態で、第2洗浄処理部140内のステージ12Cによって保持される。これにより、ヘッド22Cによって保持された被接合物92と、ステージ12Cによって保持された被接合物91とは、第2洗浄処理部140内において所定の間隙を空けて対向する状態で配置される。
その後、ビーム照射部31(31Cとも称する)によるイオンビーム照射(第2の表面活性化処理F2)が両被接合物91,92に対して実行される。
所定期間にわたるイオンビーム照射が終了すると、ヘッド22Cを下降させることによって両被接合物91,92を互いに接近させていき、両被接合物91,92が接合される。
第3実施形態においては、以上のような動作が実行される。
このような動作によれば、上記第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
特に、第1の表面活性化処理F1(図21)が終了して対向状態への移動動作(図23,図24)が実行された後に、第2の表面活性化処理F2(図25)が実行されて被接合物92が接合される。そのため、仮に、表面活性化処理F1後の移動期間(図23,図24)等において、不要な物質が両被接合物91,92の各接合表面に再付着する場合であっても、表面活性化処理F1の終了後に付着した付着物等をビーム照射部31による表面活性化処理によってさらに除去できる。したがって、両被接合物91,92を非常に良好な状態で接合することが可能である。
なお、この第3実施形態においては、2つの被接合物91,92に対する第1の表面活性化処理F1がそれぞれ異なる期間に実行される場合(すなわち時間をずらして実行される場合)を例示したが、これに限定されない。例えば、第1洗浄処理部120内において、両被接合物91,92を対向配置し、当該対向配置状態で両被接合物91,92に対するプラズマ洗浄処理を同時に実行するようにしてもよい。また、その後は、両被接合物91,92を第1洗浄処理部120から同時に取り出すとともに、両被接合物91,92を同時に第2洗浄処理部140へと搬送し、ステージ12Cおよびヘッド22Cにそれぞれ装着するようにしてもよい。具体的には、そのアーム先端部の上下両側に被接合物の保持チャックを有する搬送ロボットRB1(RB1d)を用いて、両被接合物92,91をそれぞれ保持することによって、このような搬送動作を実現すればよい。
また、この第3実施形態においては、第1洗浄処理部120においてプラズマ処理を実行し第2洗浄処理部140においてイオンビーム照射を実行する場合を例示したが、これに限定されない。例えば、第1洗浄処理部120において、原子ビームあるいはイオンビームを用いて、表面活性化処理を行うようにしてもよい。また、第2洗浄処理部140において、プラズマあるいは原子ビームを用いて、表面活性化処理を行うようにしてもよい。
<4.第4実施形態>
<4−1.概要>
ところで、接合技術においては、2つの被接合物の各接合表面に形成された金属薄膜を媒介にして、当該2つの被接合物同士を接合する技術が存在する。このような技術は、イオン結晶性の材料(例えばガラス、二酸化珪素、セラミック等)同士を接合する際などにおいて特に有用である。
例えば、特開2004−337927号公報においては、スパッタリングによって基板表面が削り取られる作用と金属原子が堆積する作用との均衡を図ることによって、接合表面を洗浄しつつ当該接合表面に金属薄膜を形成する技術が記載されている。謂わば、単一の段階の処理で、接合表面の洗浄処理と接合表面に対する金属薄膜形成処理とを同時並列的に実行する技術が記載されている。
図40は、このような比較例に係る技術を示す図である。当該比較例は、特開2004−337927号公報に記載の技術と同様の技術である。当該比較例においては、或る期間において、ビーム照射部111を用いて不活性ガス(アルゴンガス)イオンビームを基板(SiO2)191の接合表面に照射することにより、基板191の接合表面が削り取られ(エッチングされ)、基板191の接合表面に対する表面活性化処理が行われる。同時に、当該不活性ガスイオンビームの一部がビーム照射部111のグリッド111gの一部に衝突して当該グリッド(鉄)111gの一部をスパッタリングし、スパッタリングされた鉄などの金属原子(金属イオンビームあるいは金属中性原子ビームとも称する)が基板191の表面に照射されて、照射された金属原子が基板191の接合表面に堆積する。このように1つの段階の不活性ガス(アルゴンガス)イオンビームの照射によって、表面活性化処理と金属薄膜形成処理とが同時に実行される。そして、表面活性化処理にて基板表面が削り取られる作用(エッチング作用)と金属薄膜形成処理にて金属原子が基板表面に堆積する作用(堆積作用)との均衡によって、基板の接合表面上に1nm〜10nm(ナノメートル)の膜圧の金属薄膜が形成される。
しかしながら、このような比較例に係る技術においては、単一の段階において上記の2つの作用の均衡を図ることが求められるために、微妙な制御が必要である。このような制御は非常に困難であり、結果として接合が不十分になることもある。
詳細には、当該比較例に係る技術においては、エッチング作用と堆積作用とが均衡した状態で処理が行われる。より詳細には、本来の不純物のみならず堆積金属の一部もがエッチング作用で削り取られ、削り取られる金属よりも多量の金属が堆積することによって、結果的に金属薄膜の厚さが徐々に増大していく。そのため、比較的長い処理時間TL(たとえば、600秒〜1200秒)を要する。さらに、当該比較例に係る技術においては、単一段階の処理でエッチング作用と堆積作用との双方が同時並列的に行われるために、不純物が残留したまま、当該残留不純物の上に金属薄膜が堆積することもある。
そこで、第4実施形態においては、上記第1実施形態等をさらに改変することなどによって、このような問題を解決することを課題とする技術を例示する。第4実施形態は、第1実施形態の変型例であり、以下では、第1実施形態との相違点を中心に説明する。なお、第2実施形態および第3実施形態に対しても下記の思想を適用して同様の変形を行うことが可能である。
上記第1〜第3実施形態においては、第1の表面活性化処理F1に引き続き、第2の表面活性化処理F2においても表面活性化処理が実行される場合を例示した。
一方、この第4実施形態においては、第1の表面活性化処理F1の後に、次の段階の処理として金属薄膜形成処理F20を実行する態様を例示する。具体的には、ビーム照射部31においてスパッタリングされた金属原子を用いて、両被接合物91,92の接合表面に金属薄膜を形成する処理(金属薄膜形成処理)F20を実行する場合を例示する。この金属薄膜形成処理F20においては、第1実施形態と同様にビーム照射部31を用いてイオンビーム照射が実行される。ただし、第4実施形態においては、ビーム照射部31(31D)によるイオンビーム照射は、金属原子を両被接合物91,92に供給することを主目的として実行される。なお、ビーム照射部31Cによるイオンビーム照射によって、両被接合物91,92に対して表面活性化処理が施されても良いが、当該表面活性化処理は、両被接合物91,92の接合表面への金属薄膜の形成を阻害しない程度(微小程度)であることが好ましい。特に、金属薄膜の形成処理が(表面活性化処理に比して)支配的であることが好ましい。この第4実施形態においては、後述するように、より詳細にはビーム照射部31の電圧および電流を変更することなどによって、金属薄膜形成処理F20における洗浄能力(エッチング能力)を抑制するとともに両被接合物91,92に対する金属原子の供給量を特に増大させている。
図26および図27は、イオンビームを照射するビーム照射部31(詳細には31D)の詳細構成を示す図である。図26は、ビーム照射部31Dの或る水平断面を上方からみた断面図であり、図27は、ビーム照射部31Dの正面図である。
図26および図27に示すように、ビーム照射部31Dは、アノード51とカソード52とマグネット54とを備えている。アノード51およびカソード52はそれぞれ適宜の金属材料で構成される電極(電極部材ないし金属部材とも称される)である。例えば、アノード51は鉄(Fe)で構成され、カソード52はタングステン(W)で構成される。また、アノード51は、ホーン形状(略円錐形状)を有しており、カソード52は、フィラメント形状(コイル形状)を有している。また、ビーム照射部31Dの本体部59は、略円柱形状を有しており、その正面中央部において凹部58を有している。当該凹部58は、ホーン形状(メガホン形状)のアノード51によって囲まれた空間として形成されている。なお、アノード51とカソード52とは互いに電気的に絶縁されて設けられ、アノード51はアノード電位を有し、カソード52はカソード電位を有する。
ビーム照射部31Dの照射口付近では、カソード52から供給された電子が、マグネット54の磁場によってトラップ(捕捉)されており、照射口付近で回転している(図26の円形状の細破線参照)。また、さらに供給されたアルゴンは、当該電子の作用を受けてプラズマ状態で存在する。そして、プラズマ状態のアルゴンイオンは、両電極51,52の相互間の印加電圧による電界Eで(特にアノード51に対する反発力が作用して)加速されてカソード52に向けて移動し、当該カソード52の位置を通過してビーム照射部31Dの外部へと放出される。この際、アルゴンイオンは、アノード51およびカソード52に衝突し、アノード51およびカソード52の一部をスパッタリングする。そして、スパッタリングされた金属原子が、両被接合物91,92の接合表面へと移動して、当該接合表面に付着し堆積する。
<4−2.詳細動作>
第4実施形態における動作は、第1実施形態と同様であり、図7〜図13の動作が実行される。ただし、図11における表面活性化処理F2は、この第4実施形態においては金属薄膜形成処理F20として実行される。
以下では、図7〜図10までの動作が終了した後、すなわち、金属薄膜形成処理F20以降の処理について詳細に説明する。
第4実施形態に係る金属薄膜形成処理F20においては、図28に示すように、対向状態を有する両被接合物91,92の対向空間SPの側方から当該対向空間SPに向けてビーム照射部31Dによりエネルギー波が照射され、ビーム照射部31Dにより供給される金属原子を用いて、両被接合物91,92の接合表面に金属薄膜が形成(付着)される。
具体的には、ビーム照射部31Dによるビーム照射に伴って、そのスパッタリング作用によってビーム照射部31Dの金属部分(例えばアノード51およびカソード52)が削り取られる。また、スパッタリングされた金属原子は、両被接合物91,92の接合表面へ向けて両被接合物91,92の対向空間内にて移動し、当該接合表面に付着し堆積する。これにより、接合表面に金属薄膜が形成される。なお、この金属薄膜の厚さは、小さいこと(薄いこと)が好ましく、例えば、1nm〜10nm(ナノメートル)であることが好ましい。また、さらに小さな厚さ、例えば原子1個ないし数個分の厚さを有するものであることが更に好ましい。特に、金属薄膜の厚さを微小厚さに制御することによれば、金属の性質が顕著に現れることを回避すること(例えば、導電性を抑制すること(電気抵抗を増大させること))等が可能である。
また、この第4実施形態においては、ビーム照射部11(11D),21(21D),31(31D)の電圧および電流等が例えば図29に示すような値に定められて、表面活性化処理F1および金属薄膜形成処理F20がそれぞれ実行されることが好ましい。ここにおいて、ビーム照射部11D,21D,31Dの「電圧」の大小は、照射されるアルゴンイオンの速度および金属原子の速度(ひいてはエッチング能力)に大きく寄与する。また、ビーム照射部11D,21D,31Dの「電流」の大小は、照射されるアルゴンイオンの量および金属原子の量(ひいては金属原子の堆積量)に大きく寄与する。
具体的には、表面活性化処理F1においては、ビーム照射部11D,21Dの電圧値が比較的高い値(たとえば1500V)に設定されて、比較的強い表面洗浄能力(エッチング能力)が実現される。一方、金属薄膜形成処理F20においては、逆に、表面洗浄能力(エッチング能力)は、それほど高くないこと(寧ろ弱いこと)が望ましいため、ビーム照射部31Dの電圧値は比較的低い値(たとえば80V)に設定され、当該金属薄膜形成処理F20が実行される。なお、第4実施形態のビーム照射部11,21,31に印加される電圧のレベルと第1実施形態のビーム照射部11,21,31に印加される電圧のレベルとは互いに異なっているものとする。
また、金属薄膜形成処理F20においては、ビーム照射部31Dの電流値は比較的高い値(たとえば3.0A)に設定され、比較的多量の金属原子が両被接合物91,92の接合表面へ向けて供給される。一方、表面活性化処理F1においては、逆に、ビーム照射部11D,21Dの電流値が比較的低い値(たとえば0.05A)に設定されて、スパッタリングされる金属原子の量(接合表面へ供給される金属原子の量)が抑制される。
さらに、第1段階の表面活性化処理F1の処理時間は上記の従来技術に係る処理時間TLよりも短い時間TS1(例えば300秒)に設定され(TS1<TL)、当該表面活性化処理F1が実行される。また、第2段階の金属薄膜形成処理F20の処理時間はさらに短い時間TS2(例えば30秒)に設定されて(TS2<TS1)、表面活性化処理F1の終了後に当該金属薄膜形成処理F20が実行される。
そして、上記の金属薄膜形成処理F20が終了した後において、図12に示すように両被接合物91,92が互いに接近し、図13に示すように、両被接合物91,92が接合される。このような接合動作によれば、各種の半導体装置等が良好に生成(製造)され得る。
この第4実施形態においては、以上のような動作が実行される。端的に言えば、この第4実施形態においては、第1の表面活性化処理F1(図8)が終了して対向状態への移動動作が実行された後に、金属薄膜形成処理F20が実行される。そして、その後に被接合物92が接合される。
このような態様によれば、まず、表面活性化処理F1によって、両被接合物91,92の接合表面の不純物が良好に除去される。そして、当該不純物の除去後に、金属薄膜形成処理F20が適切に両被接合物91,92の接合表面にそれぞれ堆積する。そのため、不純物が低減された表面に適切な金属薄膜を形成することが可能である。そして、このような金属薄膜を媒介にして両被接合物91,92が良好に接合される。
特に、上述の比較例に係る技術と比較すると、上記第4実施形態においては、表面活性化処理F1と金属薄膜形成処理F20との2段階の処理が時間的に互いに分離して実行される点で、上記比較例に係る技術と大きく相違する。
上記の比較例に係る技術では、表面活性化処理と金属薄膜の堆積処理とが同時に実行されることに起因する諸問題が存在する。例えば、接合表面が洗浄が完了する前にも金属薄膜が堆積してしまうために、不純物が残留しやすいという問題が存在する。また、一旦堆積した金属の一部もがエッチング作用で削り取られつつ金属薄膜の厚さが徐々に増大していくために、比較的長い処理時間TLを要するという問題も存在する。さらには、長い処理時間を要するために被接合物の温度が上昇しやすいという問題も存在する。
一方、第4実施形態に係る技術によれば、まず表面活性化処理F1において両被接合物91,92の接合表面が良好に洗浄され、その後に金属薄膜形成処理F20において両被接合物91,92の接合表面に適切な金属薄膜を容易に形成することができる。換言すれば、表面活性化処理F1において不純物を良好に除去した後に、金属薄膜形成処理F20において適宜の金属薄膜を形成することが可能である。そして、このような金属薄膜を媒介にして両被接合物91,92が良好に接合される。したがって、不純物が良好に除去された状態で両被接合物91,92を接合することが可能である。
また、第4実施形態に係る技術によれば、上記のように2段階の処理F1,F20が順次に(逐次的に)実行される。そのため、比較例のようなエッチング処理(表面活性化処理)中における金属薄膜の除去と再形成との繰り返しを回避し得るので、総処理時間の短縮を図ることも可能である。具体的には、比較例に係る技術では例えば600秒を要するのに対して、上記第4実施形態に係る技術によれば、例えば330秒程度で済む。また、その結果、第4実施形態に係る技術によれば、比較例に係る技術に比べて、両被接合物91,92の温度上昇を抑制することも可能である。
このように、第4実施形態に係る技術によれば、上記比較例における諸問題を解決し、容易に良好な接合を実現することが可能である。
また、第4実施形態においては、ビーム照射部11D,21D,31Dの電圧および電流が処理の種類(F1,F20)に応じて変更されている。詳細には、表面活性化処理F1におけるビーム照射部11D,21Dの電圧値は、金属薄膜形成処理F20におけるビーム照射部31Dの電圧値よりも高く(大きく)設定される。これによれば、表面活性化処理F1においては比較的高いエッチング能力を得ることができるとともに、金属薄膜形成処理F20においては接合表面に対するエッチング能力を抑制することができる。また、金属薄膜形成処理F20におけるビーム照射部31Dの電流値は、表面活性化処理F1におけるビーム照射部11D,21Dの電流値よりも大きな値に設定される。これによれば、金属薄膜形成処理F20においては比較的多量の金属原子が接合表面に向けて供給されるとともに、表面活性化処理F1においては接合表面に対する金属原子の供給量を抑制することができる。
なお、上記第4実施形態においては、ビーム照射部31Dの電圧および電流を変更することなどによって、金属薄膜形成処理F20における洗浄能力を抑制しつつ給量を増大させる場合を例示したが、これに限定されない。例えば、ビーム照射部31Dの電圧および電流を変更することに代えて、或るいはこれとともに、ビーム照射部31Dの物理的構成等を変更して、金属薄膜形成処理F20における金属供給量を増大させるようにしてもよい。
具体的には、上記第4実施形態においては、ビーム照射部31Dとして、比較的コンパクトなアノード51を有するものを例示したが、当該ビーム照射部31Dに代えて、図30に示すようなビーム照射部31Eを用いるようにしてもよい。このビーム照射部31Eにおいては、略円錐状のアノード51がカソード52側に向けて長く伸びている。より詳細には、ビーム照射部31Eにおいては、本体部59の開口部側の端(前側端)59fよりもさらに前方側(−X側)の位置にまで伸びるように当該アノード51(51E)が構成されている。換言すれば、アノード51Eは、ビーム照射部31Eの照射口付近にて当該照射部31Eの本体部59の前端面59fよりも前方側に突出する案内部51gを有している。
そのため、ビーム照射部31Eのアノード51Eは、ビーム照射部31Dのアノード51(51D)に比べて、アルゴンおよび金属の飛散範囲(照射範囲)の指向性を高めることができる。これによれば、アルゴンおよび金属が不本意な部分(両被接合物91,92の接合表面以外の部分)にまで飛散することを抑制できる。また、案内部51gを有するアノード51Eを用いることによれば、アルゴンイオンとアノードとの衝突面積が増大するため、比較的多量の金属が削り取られ、当該比較的多量の金属が接合表面へ向けて移動する。そのため、ビーム照射部31Eによれば、ビーム照射部31Dよりも多量の金属原子を両被接合物91,92に向けて効率的に供給することも可能である。これらの観点からは、ビーム照射部31Dよりもビーム照射部31Eを用いることが好ましい。
また、図31に示すように、アノード51の前方側の部分(案内部51h)は、その開口端側(前方先端側)がアノード51Eの案内部51gよりも窄んだもの(すぼんだもの)であってもよい。換言すれば、アノード51の案内部は、その口径(開口径)が前方側(−X側)にいくにつれて直線状に増大するもの(案内部51g等)に限定されず、当該口径の増大率が前方側にいくにつれて徐々に減少するもの(案内部51h)であってもよい。このようなビーム照射部31Fによれば、指向性をさらに高め、金属原子の飛散をさらに抑制することも可能である。また、アルゴンイオンとアノード51との衝突面積および/または衝突強度が増大するため、さらに多量の金属を削り取って接合表面へ向けて移動させることができる。そのため、ビーム照射部31Fによれば、ビーム照射部31D,31Eよりも多量の金属原子を両被接合物91,92に向けて効率的に供給することができる。
また、上記変型例においては、アノード51を特定形状に改変しアルゴンイオンとアノード51との衝突面積等を増大させるものを例示したが、これに限定されず、カソード52を特定形状に改変しアルゴンイオンとカソード52との衝突面積等を増大させるものであってもよい。図32〜図34は、そのような改変例に係るビーム照射部31Gを示す図である。図32はビーム照射部31Gの正面図であり、図33はビーム照射部31GのIV−IV断面(図32参照)における断面図であり、図34はビーム照射部31GのV−V断面(図32参照)における断面図である。なお、図33は、その向きを図26等と同様の向きに揃えて示されている。
図32〜図34に示すように、ビーム照射部31Gは、ビーム照射部31D等と類似の構成を有している。ただし、カソード52(52G)が複数の部材(具体的にはコイル状のカソード52a、および筒状中空部を有するカソード52b等)を備えて構成されている点などにおいて相違する。なお、各カソード52a,52bは、それぞれ、アノード51とは電気的に絶縁されて設けられ、それぞれカソード電位を有する。
図32〜図34に示すように、ビーム照射部31Gの本体部59は、略円柱形状を有しており、その正面中央部において凹部58aを有している。当該凹部58aは、ホーン形状(メガホン形状)のアノード51によって囲まれた空間として形成されている。
また、本体部59の正面部材(図33の左端面)59fにおいては、凹部58aを挟む左右の各位置に、それぞれ軸部材57が正面手前側(図33の左側(−X側))に向けて立設されている。コイル状のカソード52aの両端は、それぞれ、各軸部材57の前面側(図33の左側)の先端部付近において、各軸部材57に接続されている。具体的には、コイル状のカソード52aの一端は、一方の軸部材57aの先端側(−X側)に固定されており、当該カソード52aの他端は、他方の軸部材57bの先端側(−X側)に固定されている。
さらに、コイル状のカソード52aとアノード51の正面部材59fとの間には、カソード52bが設けられている。ここでは、カソード52bは、薄板状且つ略円盤状の2つの部分52dと当該2つの部分52dを相互に接続する接続部52eとを有する。当該接続部52eは、その両端に開口を有する、略直方体形状の筒状部材(中空部材)である。当該接続部52eは、図33の左右方向(X方向)の両端に配置された略円盤状部分52d(詳細にはその開口部)を相互に接続する。また、軸部材57a,57bは、それぞれ、カソード52bの2つの略円盤状部分52dの双方を貫通し、カソード52bは当該軸部材57a,57bに固定されている。
カソード52bの略円盤状部分52dは、図32に示すように、その中央部に略矩形状の開口を有している。当該開口は、筒状の接続部52eの開口と同じ形状および同じ大きさを有している。また、当該接続部52eは、コイル状のカソード52aとアノード51で囲まれた凹部58aとの間に設けられている。換言すれば、コイル状のカソード52aとアノード51で囲まれた凹部58aとの間には、筒状の接続部52eで囲まれた略直方体形状の空間58bが存在する。また、カソード52bの接続部52eは、当該空間58bの側壁面であるとも表現される。さらに換言すれば、カソード52は、特定物質(アルゴン等)をビーム照射部31Gのアノード51(51G)から両被接合物91,92に向けて案内する筒状の案内部52u(52e)を有している。
そして、ビーム照射部31Gにおいては、アルゴンイオンは、アノード51とカソード52a,52b(詳細には52e)とに衝突しながら、凹部58aから図34の左側へと進行する。その際、アルゴンイオンは、アノード51とカソード52aとカソード52b(52e)とをそれぞれスパッタリングし、スパッタリングされた金属原子が、両被接合物91,92の接合表面へと移動して、当該接合表面に付着し堆積する。
特に、図34に示すように、アルゴンイオンは、アノード51およびカソード52aのみならず、カソード52b(52e)にも衝突しつつ進行し、カソード52b(52e)もスパッタリングされる。したがって、アルゴンイオンに衝突する金属部材の面積を増大させて、両被接合物91,92に対する金属原子の供給量を増大させることが可能である。また、アノード51とコイル状のカソード52aとの間に、側壁部材(ガイド部材ないし拡散防止部材とも称する)として機能するカソード52b(52e)を設けることによって、アルゴンイオンおよび金属原子の移動範囲が制限される。換言すれば、アルゴンイオン等を比較的狭い空間58bを進行させることによって、不本意な方向へのアルゴンイオンおよび金属原子の飛散を防止できる。
なお、カソード52bの中央部の開口のY方向の長さLy(図32参照)は両被接合物91,92のY方向の幅W2(図28参照)よりも小さく、カソード52bの中央部の開口のZ方向の長さLzは金属薄膜形成処理F20における当該両被接合物91,92の鉛直方向(Z方向)の配置間隔D2(図28参照)よりも小さい。特に、このような構成によれば、上述のように、アルゴンイオン等を比較的狭い空間58bを移動させることによって、不本意な方向へのアルゴンイオンおよび金属原子の飛散を抑制できる。
また、図32においては、カソード52bの中央部の開口は、横長の矩形形状、具体的には水平方向の長さLyが鉛直方向の長さLzの2倍程度の矩形形状(換言すれば、縦横比が1:2の矩形形状)を有している。これは、金属薄膜形成処理F20において当該両被接合物91,92の鉛直方向の配置間隔D2と両被接合物91,92(例えば基板)の幅W2とが、1:2であることに対応している。このように、カソード52bの中央部の開口の形状が、両被接合物91,92の幅W2と配置間隔D2とに応じて設定されることによれば、両被接合物91,92に対して金属原子を適切に供給しつつ、不本意な方向への金属原子の飛散を防止することが可能である。
また、上記第4実施形態等においては、カソード52aがアノード51の前面側(−X側)に配置される場合を例示したが、これに限定されず、たとえば、本体部59の斜め前方(−X側且つZ側、あるいは−X側且つY側)、又は本体部59のサイド(Z側ないしY側)にカソード52aが配置されてもよい。このような場所にカソード52aが配置される場合でも、電子がアノードへ向けて流れ込んでアルゴンイオンが発生し、イオンビームの照射が同様に行われ得る。また、このような構成によれば、カソードとアルゴンイオンとの衝突は殆ど生じないか或いは低減される。そのため、主にアノード51とアルゴンイオンとの衝突により生じた金属原子が両被接合物91,92に向けて供給される。したがって、両被接合物91,92上に堆積する金属材料の種類をアノードの材料の種類にほぼ限定すること(あるいは当該アノードの材料の種類に中心に絞り込むこと)が可能である。
また、図32〜図34に示す態様において、カソード52b等がそのまま配置される一方で、カソード52aが本体部59のサイド(Z側ないしY側)(側方部)又は本体部59の斜め前方(−X側且つZ側、あるいは−X側且つY側)に配置されるように改変してもよい。このような構成によれば、カソード52aとアルゴンイオンとの衝突は殆ど生じないか或いは低減される。その結果、主に、カソード52bとアルゴンイオンとの衝突、およびアノード51とアルゴンイオンとの衝突により生じた金属原子が両被接合物91,92に向けて供給される。したがって、両被接合物91,92に向けて供給される金属からカソード52aの材料をほぼ除外し、両被接合物91,92上に堆積する金属材料の種類をアノード51の材料とカソード52bの材料とにほぼ制限することが可能である。たとえば、カソード52aがタングステン(W)で構成され、カソード52bとアノード51とがいずれも鉄(Fe)で構成される場合には、両被接合物91,92に対して供給される金属材料からタングステン(W)を除外し、ほぼ鉄(Fe)のみを両被接合物91,92に対して供給することが可能である。
また、ビーム照射部31におけるカソードは上述のようなものに限定されない。例えば、フォロー(ホロー)カソードタイプのビーム照射部31を用いるようにしてもよい。フォローカソードタイプのビーム照射部31においては、アルゴンイオンの進行経路から外れた場所(例えば、本体部のサイド(+Z側ないし+Y側))にカソードが配置される。この場合においても、電子がアノードへ向けて流れ込んでアルゴンイオンが発生し、イオンビームの照射が同様に行われ得る。そして、このような構成においては、カソードとアルゴンイオンとの衝突は殆ど生じず、アノードとアルゴンイオンとの衝突により生じた金属原子が両被接合物91,92に向けて供給される。したがって、両被接合物91,92上に堆積する金属材料の種類をアノードの材料の種類にほぼ限定することが可能である。
また、上記第4実施形態等においては、金属薄膜形成処理F20にてアルゴン(及び金属)をビーム状に供給するビーム照射部を用いる技術を例示したが、これに限定されない。例えば、アルゴン(及び金属)を面状に供給する照射部を用いて金属薄膜形成処理F20を行うようにしてもよい。
また、上記第4実施形態等においては、金属薄膜形成処理F20がイオンビーム照射を用いて実行される場合を例示したが、これに限定されず、原子ビーム照射を用いて実行されるようにしてもよい。詳細には、原子ビーム照射装置の金属部分を原子ビーム照射に伴ってスパッタリングし、当該スパッタリングされた金属原子を両被接合物91,92の接合表面に付着させるようにしてもよい。あるいは、プラズマによりエネルギー波の照射を行う照射部(マグネトロンカソード方式の照射部等)を用いて、当該照射部の金属部分をスパッタリングし、当該スパッタリングされた金属原子を両被接合物91,92の接合表面に付着させるようにしてもよい。
また、上記第4実施形態等においては、コイル形状のカソード52(52a)を例示したが、これに限定されない。たとえば、二次元的(面的)な広がりを有するグリッド形状(メッシュ形状とも称される)のカソードを用いるようにしてもよい。
また、アノードおよび/またはカソードの材料(ひいては金属薄膜の材料)としては、鉄(Fe)、タングステン(W)などに限定されず、その他の様々な金属(たとえば、チタン(Ti)、金(Au))などであってもよい。あるいは、各種金属の合金(たとえば、ステンレス(SUS)等)であってもよい。
また、上記第4実施形態等においては、表面活性化処理F1において原子ビームを用いる場合を例示したが、これに限定されず、各種のエネルギー波を用いるようにしてもよい。例えば、表面活性化処理F1にてイオンビームを用いるようにしてもよく、あるいは、表面活性化処理F1にてプラズマ処理を用いるようにしてもよい。また、表面活性化処理F1と金属薄膜形成処理F20とにおいて、同種あるいは異種の各種のエネルギー波を組み合わせて第4実施形態と同様の思想を適用するようにしてもよい。例えば、表面活性化処理F1にてプラズマ処理を用い、金属薄膜形成処理F20にてイオンビーム処理を用いるようにしてもよい。
<5.その他>
以上、本願発明の実施の形態について説明したが、本願発明は上記説明した内容のものに限定されるものではない。
たとえば、上記各実施形態においては、第2の表面活性化処理F2あるいは金属薄膜形成処理F20(以下、「第2の表面活性化処理F1等」とも称する)中は、両被接合物91,92を移動させず、第2の表面活性化処理F1等が終了した後に、両被接合物91,92を互いに接近させる動作を開始する場合(図11〜図13等)を例示したが、これに限定されない。
具体的には、第1実施形態〜第3実施形態のそれぞれにおいて、図35に示すように、ビーム照射部31による第2の表面活性化処理F1を実行しつつ両被接合物91,92を互いに接近させていき、両被接合物91,92を接合するようにしてもよい。換言すれば、ビーム照射部31による第2の表面活性化処理F1に並行して、両被接合物91,92を互いに接近させるように両被接合物91,92を相対的に移動するようにしてもよい。これによれば、接合完了時点もしくは当該接合完了時点の直前の時点まで表面活性化処理が継続される。また、付着物が再付着する機会が最低限となるため、さらに良好な状態で両被接合物91,92を接合することができる。なお、特に、接合完了時点まで表面活性化処理が継続されることが好ましい。
また、このような改変例において、さらに、両被接合物91,92のZ方向における相対移動に応じてビーム照射部31をZ方向に移動するように改変してもよい。
例えば、図36に示す改変例に係る接合装置1Hは、ビーム照射部31をZ方向に駆動する駆動部33をさらに備えている。そして、図37および図38に示すように、第2の表面活性化処理F1と両被接合物91,92の接近動作とが並行して実行される際には、ビーム照射部31の照射口が両被接合物91,92相互間の中央位置CTに存在するように、当該照射口と両被接合物91,92とが相対的に移動される。
より詳細には、例えば、まずZ方向の移動直前(図35参照)においてビーム照射部31の照射口を両被接合物91,92相互間の中央位置に配置した後、ヘッド22の下降開始に応じてビーム照射部31をヘッド22の下降速度の半分の速度で下降させればよい。このとき、ステージ12は停止したままである。これによれば、ヘッド22とビーム照射部31とが下降する際において、常に、ビーム照射部31の照射口が両被接合物91,92相互間の中央位置CTに存在する(図37参照)。したがって、ビーム照射部31からのビームを両被接合物91,92に対して均等に照射することができる。
なお、第4実施形態に関しても、図35に係る改変例および図36〜図38に係る改変例と同様の改変を行うことが可能である。以後の改変例についても同様であり、各改変は、適宜、各実施形態等に対してそれぞれ行うことが可能である。
また、上記第1実施形態においては、ビーム照射部11,21によるビーム照射は、それぞれ、両被接合物91,92の配列方向(X方向)に垂直な平面(YZ平面に平行な平面)に沿って行われる場合を例示したが、これに限定されない。例えば、図39に示すように、両被接合物91,92の配列方向(X方向)に平行な平面(XZ平面に平行な平面)に沿って、斜め上方および斜め下方からビーム照射が実行されるようにしてもよい。この場合においても両被接合物91,92の接合表面を互いに近接させることによって、一方の被接合物に付着していた付着物が他方の被接合物へと再付着することをより確実に防止することが可能である。
ただし、上記第1実施形態のような態様(図3、図4および図8参照)でビーム照射が行われることがより好ましい。上記実施形態によれば、ビームの照射方向には他方の被接合物が存在しないため、図39のような態様に比べて、一方の被接合物に付着していた付着物が他方の被接合物へと再付着することをより確実に防止することが可能である。
また、上記第2実施形態および第3実施形態においては、第1の表面活性化処理F1にプラズマを用い、第2の表面活性化処理F2にイオンビーム照射を用いる場合を例示したが、これに限定されない。例えば、第1の表面活性化処理F1にプラズマを用い、第2の表面活性化処理F2に原子ビーム照射を用いるようにしてもよい。具体的には、ビーム照射部31として原子ビーム照射装置を配置するようにすればよい。あるいは、第1の表面活性化処理F1にプラズマを用いるとともに、第2の表面活性化処理F2にもプラズマを用いるようにしてもよい。なお、第2の表面活性化処理F2においてプラズマを用いる際には、例えば、上下に対向する両被接合物91,92の対向空間の左右(ないし前後)両側部にプラズマ電極をそれぞれ配置し、当該両側部のプラズマ電極相互間(すなわち両被接合物の対向空間)にプラズマを発生させるようにすればよい。
また、上記第1実施形態および第2実施形態では、第1の表面活性化処理F1において両被接合物91,92の接合表面は、X方向において互いにずらされた状態で互いに向かい合う向きで近接して配置される場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、被接合物92の接合表面が被接合物91の接合表面よりも下側に存在する状態で、両被接合物91,92が配置されるようにしてもよい。具体的には、被接合物92の接合表面は、被接合物91の接合表面よりもZ方向下向き(−Z方向)に所定距離(例えば数ミリメートル)シフトして配置されるようにしてもよい。これによれば、上記と同様に、一方の被接合物に付着していた付着物が他方の被接合物へと再付着するという問題を回避することが可能である。
なお、この場合には、第1の表面活性化処理F1後において、両被接合物91,92をX方向とZ方向との双方に相対的に移動することによって、両被接合物91,92の接合表面を対向させた後に、両被接合物91,92を接合するようにすればよい。詳細には、被接合物91を+X方向に移動するとともに被接合物92を+Z方向に移動(上昇)することによって、両被接合物91,92を対向させればよい。ただし、動作簡略化等の観点からは、Z方向の移動を伴うことなく、両被接合物91,92を対向状態に遷移させることが好ましい。
また、上記第1実施形態および第2実施形態においては、被接合物91を+X方向にスライド移動させて両被接合物91,92を対向状態にする場合を例示したが、これに限定されない。例えば、逆に、被接合物92をX方向にスライド移動させることによって、両被接合物91,92をX方向に相対的に移動して両被接合物91,92を対向状態にするようにしてもよい。
また、上記各実施形態においては、被接合物92を−Z方向に移動させて両被接合物91,92を接合する場合を例示したが、これに限定されない。例えば、逆に被接合物91を+Z方向に移動させて両被接合物91,92をZ方向に相対的に移動させるようにしてもよい。
また、上記各実施形態は、同種の両被接合物を接合する場合だけでなく、互いに異なる種類の両被接合物を接合する場合にも適用することができる。特に両被接合物が異種材料であるときには、当該両被接合物間の熱膨張差により反りや割れが発生し易いため、当該両被接合物を低温で接合することが好ましい。そして、このような各種の両被接合物91,92を接合することによって、各種の半導体装置を生成(製造)することができる。
また、エネルギー波照射における特定物質としては、上記各実施形態のようにアルゴンを使用することが好ましい。アルゴンは、他の物質と反応しにくく、且つ、分子重量も大きいため、被接合物の表面分子を衝突により切り離して結合手を露出させること(ダングリングボンドを生成すること)、すなわち表面活性化処理に特に適している。そして、このようなダングリングボンドが適切に生成された両被接合表面を接合することによって、良好な接合状態を実現することが可能である。ただし、これに限定されず、クリプトン(Kr)あるいはキセノン(Xe)などの他の物質を、エネルギー波の照射における特定物質として用いるようにしてもよい。