JP2012220809A - トナーの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】トナーの粒子径分布が狭く、クリーニング性及び帯電性に優れたトナーの製造方法を提供すること。
【解決手段】フェノール類とアルデヒド類との重縮合反応により得られる重縮合体を含有する帯電制御剤及び結着樹脂を含むトナー組成物を、有機溶剤に溶解乃至分散させてトナー組成液を調製する工程と、1つ以上の吐出孔が形成された液柱共鳴液室内で、前記トナー組成液に振動を付与することで液柱共鳴による定在波を形成させ、前記定在波の腹となる領域に配置された前記吐出孔から前記トナー組成液を吐出して液滴を生成する工程と、前記液滴中の前記有機溶剤を乾燥させて粒子を固化させる工程と、を含む、トナーの製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、トナーの製造方法に関する。
電子写真装置、静電記録装置等の画像形成装置においては、感光体上に形成された静電潜像を、トナーを含有する現像剤で現像してトナー像とし、形成されたトナー像を、紙等の記録媒体に転写した後、加熱、加圧により定着させて、画像を形成している。
近年、より高画質で画像を形成することが要求されており、高画質化へのトナー設計がなされている。高画質化の要求に対応するため、トナーを小粒径化し、潜像を忠実に再現することが検討されている。また、帯電したトナーの静電気力を用いて現像を行うため、迅速に帯電され、温度や湿度といった環境条件に影響されない帯電性能を有するトナーが求められている。
近年、トナーの製造方法としては、重合法と呼ばれる水系媒体中でトナー粒子を形成する工法が広く行なわれている。重合法で得られるトナーは、一般的に、小粒子径の粒子が得易い、粒子径分布が狭い、形状が球形に近いといった特徴を有する。しかしながら、重合法には、多くの時間と、多量の水、エネルギーを必要とするという欠点がある。具体的には、重合過程に長時間を必要とし、さらに固化終了後に溶媒とトナー粒子を分離し、その後トナー粒子の洗浄乾燥を繰り返す必要がある。
重合法に代わるトナーの製造方法として、噴射造粒法と呼ばれる方法の開発が進められている(例えば、特許文献1〜3参照)。噴射造粒法とは、トナーの原材料成分を有機溶媒に溶解または分散した液体を、様々なアトマイザを用いて微粒子化した後に乾燥させて、粉体状のトナーを得る方法である。この方法によれば、水を用いる必要が無いため、洗浄や乾燥といった工程を大幅に削減することができる。
しかしながら、特許文献1〜3に示されたトナーの製造方法では、トナー組成液を噴霧した後において、形成された液滴が乾燥する前に液滴同士が合着し、合着状態のまま溶媒が乾燥してトナーが得られることがある。そのため、得られるトナーの粒子径分布が広くなるという問題を有していた。また、トナー組成液の表面張力により、得られるトナーが球形となり、感光体から転写されなかったトナーのクリーニング性が悪いという問題も有していた。
そこで、本発明は、トナーの粒子径分布が狭く、クリーニング性及び帯電性に優れたトナーの製造方法を提供することを課題とする。
本発明によると、
フェノール類とアルデヒド類との重縮合反応により得られる重縮合体を含有する帯電制御剤及び結着樹脂を含むトナー組成物を、有機溶剤に溶解乃至分散させてトナー組成液を調製する工程と、
1つ以上の吐出孔が形成された液柱共鳴液室内で、前記トナー組成液に振動を付与することで液柱共鳴による定在波を形成させ、前記定在波の腹となる領域に配置された前記吐出孔から前記トナー組成液を吐出して液滴を生成する工程と、
前記液滴中の前記有機溶剤を乾燥させて粒子を固化させる工程と、
を含む、トナーの製造方法が提供される。
本発明によれば、トナーの粒子径分布が狭く、クリーニング性及び帯電性に優れたトナーの製造方法を提供が提供できる。
図1は、本発明のトナーの製造方法における、液柱共鳴液滴形成手段の構成を例示する断面図である。 図2は、本発明のトナーの製造方法における、液柱共鳴液滴ユニットの構成を例示する断面図である。 図3は、吐出孔の断面形状の一例を説明するための概略図である。 図4は、速度及び圧力変動の定在波の一例を示す概略図である。 図5は、速度及び圧力変動の定在波の一例を示す概略図である。 図6は、液柱共鳴方式の液滴形成手段の、液柱共鳴流路で生じる液柱共鳴現象の様子を示す概略図である。 図7は、液柱共鳴液滴形成手段における液滴吐出の様子の一例を示す図である。 図8は、駆動周波数と液滴吐出速度周波数特性を示す特性図である。 図9は、本発明のトナーの製造方法を実施する、トナー製造装置の一例を示す断面図である。 図10は、補助気流による合着防止手段の一例を示す概略図である。 図11は、合着を防止できた場合の、トナー粒子径分布の一例を示したグラフである。 図12は、合着を防止できなかった場合の、トナー粒子径分布の一例を示したグラフである。 図13は、図12で得られたトナーの粒子径分布を説明するための図である。 図14は、粒子が合着した様子を示す写真の一例である。 図15は、粒子が結着した様子を示す写真の一例である。 図16は、本発明の画像形成装置の構成の一例を示す概略図である。 図17は、本発明の画像形成装置の構成の他の例を示す概略図である。 図18は、本発明の画像形成装置の構成のさらに他の例を示す概略図である。 図19は、本発明のプロセスカートリッジの構成を例示する概略図を示す。
本発明は、液柱の共鳴を利用してトナー組成液を吐出し、乾燥することによりトナーを得る方法である。以下、図を参照しながら、本発明のトナーの製造方法について詳細に説明する。なお、本発明では、有機溶媒などの容易に揮発可能な溶媒に、トナー材料を溶解乃至分散させたトナー組成液を用いてトナーを製造するが、トナー材料及び有機溶媒の材料などについては、後述する。
図1に、本発明のトナーの製造方法における、液柱共鳴方式の液滴吐出手段11の構成を例示する断面図を示す。また、図2に、本発明のトナーの製造方法における、液柱共鳴液滴ユニットの構成を例示する断面図を示す。液滴吐出ヘッド11は、液共通供給路17及び液柱共鳴液室18を有する。液柱共鳴液室18は、長手方向の両端の壁面のうち片側の壁面に設けられた液共通供給路17と連通されている。また、液柱共鳴液室18は、短手方向の両端の壁面のうち片側の壁面に吐出孔19を有し、該吐出孔よりトナー液滴21が吐出される。
さらに、吐出孔19と対向する壁面に液柱共鳴定在波を形成するために高周波振動を発生する振動発生手段20とを有している。なお、振動発生手段20には、図示していない高周波電源が接続されている。
また、液柱共鳴液室毎に、液供給のための流路が液共通供給路17から連通接続されており、液共通供給路17は複数の液柱共鳴液室18と連通している。
トナー組成液14は、図示しない液循環ポンプにより液柱共鳴液滴形成ユニット10の液共通供給路17内に流入し、液柱共鳴液室18に供給される。液柱共鳴液室18内には、振動発生手段20によって発生する液柱共鳴定在波により圧力分布が形成される。そして、液柱共鳴定在波において振幅及び圧力変動が大きい、定在波の腹となる領域に配置されている吐出孔19からトナー液滴21が吐出される。
吐出孔19は、液柱共鳴定在波の腹となる領域に配置されており、ここから液滴21が吐出される。ここで言う、定在波の腹となる領域とは、液柱共鳴定在波の圧力波において振幅が大きく、かつ液滴を吐出するのに十分な大きさの圧力変動を有する領域である。すなわち、定在波の節以外の領域を意味する。吐出孔が、圧力定在波の腹となる領域に形成されていると、複数の吐出孔が開口されていても、それぞれの吐出孔からほぼ均一な液滴を形成することができる。さらに、効率的に液滴の吐出を行うことができるため、吐出孔の詰まりも生じ難くなる点でも好ましい。より好ましい吐出孔の配置位置としては、圧力定在波の振幅が極大となる位置から極小となる位置に向かって±1/8波長である。
液共通供給路17を通過したトナー組成液14は、図示しない液戻り管を流れて図示しない原料収容器に戻される。トナー液滴21の吐出によって液柱共鳴液室18内のトナー組成液14の量が減少すると、液柱共鳴液室18内の液柱共鳴定在波の作用による吸引力が作用する。これにより、液共通供給路17から供給されるトナー組成液14の流量が増加し、液柱共鳴液室18内にトナー組成液14が補充される。液柱共鳴液室18内にトナー組成液14が補充されると、液共通供給路17を通過するトナー組成液14の流量が元に戻り、液供給管16及び液戻り管には装置内を循環するトナー組成液14の流れが再形成された状態となる。
液柱共鳴液室18は、後述する振動の駆動周波数においてトナー組成液の共鳴周波数に影響を与えない程度の高い剛性を持つ材質により形成されたフレームがそれぞれ接合されて形成されることが好ましい。具体的には、金属やセラミックス、シリコーンなどが挙げられる。
液柱共鳴液室の長手方向の両端の壁面間の長さLとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、後述する液柱共鳴原理に基づいて決定されることが好ましい。また、液柱共鳴液室の幅Wとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、液柱共鳴に余分な周波数を与えないように、前記液柱共鳴液室の長さLの2分の1より小さいことが好ましい。
液柱共鳴液室の液共通供給路17側の端部から、端部液共通供給路17側の端部に最も近い吐出孔19までの距離をLeとした時の、LとLeの距離比(Le/L)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.6より大きいことが好ましい。
1つの液滴形成ユニットに対して複数の前記液柱共鳴液室を配置することが、生産性の観点から好ましい。1つの液滴形成ユニットに対して設置される液柱共鳴液室の数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。1つの液滴形成ユニットに対して設置される液柱共鳴液室の数が多くなると、生産性が高くなるが、操作性が悪くなる。操作性と生産性が両立できる液柱共鳴液室の数としては、100個〜2,000個が好ましい。
液柱共鳴液滴吐出手段11における振動発生手段20は、圧電体を弾性板9に貼りあわせた形態で設置されていることが好ましい。また、弾性板9は、前記振動発生手段がトナー組成液と接液しないように、液柱共鳴液室の壁の一部に形成されていることが好ましい。また、振動発生手段20は、1つの液柱共鳴液室毎に個別に制御できるように配置されていることが望ましい。さらに、ブロック状の振動部材を液柱共鳴液室の配置にあわせて一部切断し、弾性板を介してそれぞれの液柱共鳴液室を個別に制御できるように構成されていることが好ましい。
前記圧電体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の圧電セラミックス、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の圧電高分子、水晶、LiNbO、LiTaO、KNbO等の単結晶などの材質から形成された圧電体などが挙げられる。
吐出孔19の開口径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1〜40μmであることが好ましい。開口径が、1μm未満の場合、形成される液滴が非常に小さくなるためトナーを得ることができない場合がある。また、トナー組成液の成分として着色剤などの固形微粒子を含有する場合、吐出孔の閉塞が頻繁に発生して生産性が低下することもある。また、40μmを超える場合、トナー液滴の直径が大きいため、乾燥固化後に有機溶剤でトナー組成を希釈する工程が必要となる場合があり、トナーを得るためには大量の乾燥エネルギーが必要となることがある。
前記吐出孔19の開口径は、吐出孔19が複数である場合においても、全て同じ開口径であってもよく、また、少なくとも1つの吐出孔の開口径が異なっていてもよい。
なお、前記吐出孔19の開口径とは、真円であれば直径を意味し、楕円や、四角形、六角形、八角形等の多角形又は正多角形であれば平均径を意味する。
また、図2に示すように、吐出孔19は液柱共鳴液室18内の幅方向に複数設ける構成とすることが、生産効率が高くなり、好ましい。
1つの液柱共鳴液室18に対する吐出孔19の数は、1つでも構わないが、複数個配置することが生産性の観点から好ましい。具体的には、2〜100個であることが好ましい。1つの液柱共鳴液室18に対して、吐出孔19の数が100個を超える場合、振動発生手段20に与える電圧を高く設定する必要がある。そのため、振動発生手段20としての圧電体の挙動が不安定となる。
複数の吐出孔19を開孔する場合、吐出孔間のピッチは20μm以上であることが好ましい。吐出孔間のピッチが20μmより小さい場合、隣あう吐出孔より放出される液滴同士が衝突することがある。
図3に吐出孔19の断面形状の一例を示す。図3(a)は吐出孔19の接液面から吐出口に向かってラウンド形状を持ちながら開口径が狭くなるような形状を有している。この形状の場合、薄膜41が振動した際に吐出孔19の出口付近で液にかかる圧力が最大となる。そのため、吐出の安定化の面では、最も好ましい形状である。
図3(b)は、吐出孔19の接液面から吐出口に向かって一定の角度で開口径が狭くなるような形状を有している。このノズル角度44は当業者が適宜変更することができる。図3(a)の場合と同様に、このノズル角度により薄膜41が振動したときの吐出孔19の出口付近で液にかかる圧力を高めることができる。ノズル角度44の角度の範囲は60〜90°であることが好ましい。ノズル角度44の角度60°未満の場合、液に圧力がかかりにくく、さらに薄膜41の加工も困難であるため好ましくない。一方、ノズル角度44の角度が90°である場合(図3(c))、液滴吐出の出口付近に圧力がかかりにくくなる。また、ノズル角度44の角度が90°以上の場合、孔12の出口に圧力がかからなくなるため、液滴吐出が非常に不安定化する。図3(d)は、図3(a)の構造と、図3(b)の構造とを組み合わせた形状である。図3(d)のように、段階的に形状を変更しても構わない。
[液滴形成のメカニズム]
次に、本発明のトナーの製造方法における、液滴形成ユニット10による液滴形成のメカニズムについて説明する。
まず、液滴吐出ユニット10内の液柱共鳴液室18において生じる、液柱共鳴現象の原理について説明する。液柱共鳴液室内のトナー組成液の音速をcとし、振動発生手段20から媒質であるトナー組成液に与えられた駆動周波数をfとした場合、トナー組成液の共鳴が発生する波長λは、下記の式1の関係にある。
λ=c/f ・・・(式1)
また、図4の液柱共鳴液室18において、固定端側のフレームの端部から液共通供給路17側の端部までの長さをLとし、さらに液共通供給路17側のフレームの端部の高さをh1(例えば80μm)とし、連通口の高さをh2(例えば40μm)とする。
液共通供給路17側の端部が閉じている固定端と等価であるとした両側固定端の場合には、長さLが波長λの4分の1の偶数倍に一致する場合に共鳴が最も効率的に形成される。つまり、次の式2で表現される。
L=(N/4)λ ・・・(式2)
(但し、Nは偶数を表す。)
また、液柱共鳴液室18の両端が完全に開いている両側自由端の場合、及び、両側自由端と等価である場合にも、上記式2が成立する。
同様にして、片方側が圧力の逃げ部がある自由端と等価で、他方側が閉じている(固定端)の場合、つまり片側固定端(=片側自由端)の場合には、上記式2において、長さLが波長λの4分の1の奇数倍に一致する場合に共鳴が最も効率的に形成される。つまり、上記式2のNが奇数で表現される。
最も効率の高い駆動周波数fは、上記式1と上記式2より、下記式3が導かれる。
f=N×c/(4L) ・・・(式3)
(f:トナー組成液に与えられた駆動周波数、L:液柱共鳴液室の長手方向の長さ、c:トナー組成液の音波の速度、N:整数(偶数;両側固定端および、両側自由端、奇数;片側固定端))
本発明のトナーの製造方法において、トナー組成液に対して、上記式3が成立する周波数fの振動を付与することが好ましい。しかし、実際には、液体はQ値を持ち、共鳴を減衰させる粘性を有するため、実際には無限に振動が増幅されるわけではない。後述する式4、式5に示すように、式3に示す最も効率の高い駆動周波数fの近傍の周波数でも共鳴は発生する。
図4に、N=1、2、3の場合の速度及び圧力変動の定在波の形状(共鳴モード)を示し、かつ図5にN=4、5の場合の速度及び圧力変動の定在波の形状(共鳴モード)を示す。本来、音波は疎密波(縦波)であるが、図4(a)〜(d)及び図5(a)〜(c)のように横波に変換して表記することが一般的である。実線が速度定在波、点線が圧力定在波である。
理想的には、端が完全に閉口若しくは開口している場合は、波の重ね合わせによって図4(a)〜(d)及び図5(a)〜(c)のような形態の共鳴定在波を生じる。具体的には、N=1の片側固定端の場合を示す図4(a)からわかるように、固定端で速度分布の振幅がゼロとなり、開口端で速度分布の振幅が最大となる。
音響学において、開口端とは長手方向の媒質(液)の移動速度が極大となる端であり、逆に圧力はゼロとなる。固定端においては、逆に媒質の移動速度がゼロとなる端と定義される。この際、固定端は音響的に硬い壁として考え、波の反射が発生する。
しかし、実際には、吐出孔の数や、吐出孔の開口配置位置、吐出孔の断面形状によっても定在波パターンは変動するため、上記式3より求めた位置からずれた位置に共鳴周波数が現れるが、適宜駆動周波数を調整することで安定吐出条件を作り出すことができる。
具体的には、吐出孔19の開口数、開口配置位置、吐出孔の断面形状も駆動周波数を決定する因子となり、駆動周波数はこれに応じて適宜決定することができる。
例えば、液体の音速cを1,200m/sと、液柱共鳴液室の長さLを1.85mmとして、液柱共鳴液室の両端に壁面が存在して(両側固定端と完全に等価)、N=2の共鳴モードを仮定した場合、上記式3より、最も効率の高い共鳴周波数は324kHzと導かれる。
他の例では、液体の音速cが1,200m/s、液柱共鳴液室の長さLが1.85mmと上記と同じ条件を用い、液柱共鳴液室の両端に壁面が存在して(両側固定端と完全に等価)、N=4の共鳴モードを用いた場合、上記式3より、最も効率の高い共鳴周波数は648kHzと導かれる。このため、同じ構造を有する液柱共鳴液室であっても、より高次の共鳴を利用することができる。
音響学において、開口端とは長手方向の媒質(液)の移動速度が極大となる端であり、逆に圧力はゼロとなる。固定端においては、逆に媒質の移動速度がゼロとなる端と定義される。この際、固定端は音響的に硬い壁として考え、波の反射が発生する。
しかし、実際には、吐出孔の数や、吐出孔の開口配置位置、吐出孔の断面形状によっても定在波パターンは変動するため、上記式3より求めた位置からずれた位置に共鳴周波数が現れるが、適宜駆動周波数を調整することで安定吐出条件を作り出すことができる。
具体的には、吐出孔19の開口数、開口配置位置、吐出孔の断面形状も駆動周波数を決定する因子となり、駆動周波数はこれに応じて適宜決定することができる。
例えば、吐出孔19の数を多くすると、固定端であった液柱共鳴液室18の先端の拘束が徐々に緩くなり、ほぼ開口端に近い共鳴定在波が発生し、駆動周波数は高くなる。また、吐出孔19の断面形状がラウンド形状となることや、フレームの厚さによる吐出孔の体積が変動することでも、実際上の駆動周波数が変動する。さらに、共鳴定在波が最も効率よく発生する駆動周波数の近傍の周波数でも液柱共鳴定在波は発生する。つまり、液柱共鳴液室の長手方向の両端間の長さL及び、液共通供給路17側の端部に最も近い吐出孔19までの距離Leを用いて、下記式4及び式5で決定される範囲の駆動周波数fを主成分とした駆動波形を用いて振動発生手段を振動させ、液柱共鳴を誘起して液滴を吐出孔から吐出することが可能である。なお、式4は、開口端−開口端の組み合わせの場合に適用され、式5は、開口端−閉口端又は閉口端−開口端の組み合わせの場合に適用される。
N×c/(4L)≦f≦N×c/(4Le) ・・・(式4)
N×c/(4L)≦f≦(N+1)×c/(4Le) ・・・(式5)
次に、液滴形成ユニットにおける液滴吐出ヘッド内の液柱共鳴液室で生じる液柱共鳴現象の様子について、図6を用いて説明する。なお、図6では、液柱共鳴液室内に記した実線は、液柱共鳴液室内の固定端側から液共通供給路側の端部までの各測定位置における速度をプロットした速度分布を示している。この時、液共通供給路側から液柱共鳴液室への方向を+とし、その逆方向を−としている。また、液柱共鳴液室内に記した点線は、液柱共鳴液室内の固定端側から液共通供給路側の端部までの各測定位置における圧力値をプロットした圧力分布を示している。この時、大気圧に対して正圧を+とし、負圧は−としている。また、正圧であれば図中の鉛直下方向に圧力が加わり、負圧であれば図中の鉛直上方向に圧力が加わる。さらに、図6において、上述したように液共通供給路側が開放されているが、液共通供給路17と液柱共鳴液室18とが連通する開口の高さ(図1に示す高さh2)に比して固定端となるフレームの高さ(図1に示す高さh1)が約2倍以上である場合、液柱共鳴液室18はほぼ両側固定端であると近似可能である。そのため、図6では、液柱共鳴液室18はほぼ両側固定端であると近似した条件のもとで、速度分布及び圧力分布の時間変化を示している。
図6(a)は、液滴吐出直前の圧力波形と速度波形を示している。液柱共鳴液室18における吐出孔19が設けられている流路内での圧力は徐々に大きくなり、直前の液滴吐出時の液引き込み後において減少したメニスカス圧が、再び増加している。その後、図6(b)に示すように、吐出孔19付近の正の圧力は小さくなり、液滴21が吐出されると共に、負圧の方向へ移行する。
そして、図6(c)に示すように、吐出孔19付近の圧力は極小になる。このときから液柱共鳴液室18へのトナー組成液14の充填が始まる。その後、図6(d)に示すように、吐出孔19付近の負の圧力は小さくなり、正圧の方向へ移行する。この時点で、トナー組成液14の充填が終了する。そして、再び、図6(a)に示すように、液柱共鳴液室18の液滴吐出領域の正の圧力が極大となって、吐出孔19から液滴21が吐出される。
このように、液柱共鳴液室内には振動発生手段の高周波駆動によって液柱共鳴による定在波が発生し、また圧力が最も大きく変動する位置となる液柱共鳴による定在波の腹の領域に吐出孔19が配置されていることから、当該定在波の周期に応じてトナー液滴21が吐出孔19から連続的に吐出される。
次に、液柱共鳴現象によって液滴が吐出された構成の一実施形態の例について説明する。この一例は、図1においてLが1.85mmで、N=2の共鳴モードであって、N=2の共鳴モードの圧力定在波の腹の位置に第一から第四の吐出孔を配置されている。また、駆動周波数を340kHzのサイン波で行った。
図7に各々の吐出孔からの吐出の様子をレーザーシャドウグラフィ法にて撮影した様子を示す。図7から、非常に液滴の径が揃い、吐出速度もほぼ同じであることがわかる。また、図8は駆動周波数290kHz〜395kHzの同一の振幅を有するサイン波にて駆動した際の、液滴速度周波数特性を示す特性図である。図8からわかるように、第一乃至第四のノズルにおいて、駆動周波数が340kHz付近では、各ノズルからの吐出速度が均一であり、かつ、吐出速度が最大となっている。この特性結果から、液柱共鳴周波数の第二モードである340kHzにおいて、液柱共鳴定在波の腹の位置で均一吐出が実現していることがわかる。また、図8の特性結果から、130kHz付近の第一モードと、340kHz付近の第二モードとの間では、液滴は吐出しないことがわかる。これは、液柱共鳴の特徴的な液柱共鳴定在波の周波数特性によるものである。
[液滴の乾燥及び捕集]
次に、先に説明した液滴吐出手段からトナー組成液の液滴を、乾燥させた後に捕集する手段について説明する。
図9に、本発明のトナーの製造方法を実施する、トナー製造装置の一例を示す断面図を示す。トナー製造装置1は、主に、液滴吐出手段2及び乾燥捕集ユニット60を含んで構成されている。液滴吐出手段2は、前述の液柱共鳴方式の液滴吐出手段を用いることが出来る。
液滴吐出手段2には、原料収容器13と液循環ポンプ15とが連結されている。原料収容器13はトナー組成液14を収容している。液循環ポンプ15は、原料収容器13に収容されているトナー組成液14を、液供給管16経由で液滴吐出手段2に供給する。また、液循環ポンプ15は、トナー組成液14を液戻り管22により原料収容器13に戻すために、液供給管16内のトナー組成液14を圧送する。これにより、トナー組成液14を随時液滴吐出手段2に供給することができる。
液供給管16にはP1、乾燥捕集ユニットにはP2の圧力測定器が設けられている。液滴吐出手段2への送液圧力および、乾燥捕集ユニット内の圧力は圧力計P1、P2によって管理される。このときに、P1>P2の場合には、トナー組成液1が孔12から染み出す恐れがあり、P1<P2の場合には、吐出手段に気体が入り、吐出が停止する恐れがあるため、P1≒P2があることが望ましい。
図9に示す乾燥捕集手段60は、チャンバ61及びトナー捕集手段62、トナー貯留部63を含んで構成される。乾燥工程のメカニズムを以下に示す。トナー組成液14で構成された液滴21は液滴吐出手段2から吐出された直後は液体の状態である。その後、チャンバ内を搬送される間に、トナー組成液中に含まれる揮発溶剤が揮発することで乾燥が進行し、液体から固体に変化する。固体状態では粒子同士が接触しても合着は生じない。そのため、トナー捕集手段62により、トナーは粉体として回収することが可能であり、得られたトナーはトナー貯蔵部63に格納することが出来る。トナー貯蔵部63に格納されたトナーは必要に応じて更に別工程で乾燥される。
チャンバ61内では、搬送気流導入口64から作られる下降気流101が形成されている。液滴吐出手段2から吐出された液滴21は、重力の他に、搬送気流101によっても例えば、鉛直方向下向き搬送される。そのため、噴射されたトナー液滴21が空気抵抗によって減速されることを抑制できる。トナー液滴21を連続的に噴射したときに、前に噴射されたトナー液滴21が乾燥する前に空気抵抗によって減速し、後に噴射されたトナー液滴21と合着し、トナー液滴21の粒子径が大きくなることを抑制できる。図9では液滴吐出手段2は鉛直方向下向きに液滴21を吐出しているが、吐出させる角度は適宜選択できる。気流発生手段としては、チャンバ61上部の搬送気流導入口64に送風機を設けて加圧する方法や、搬送気流排出口65より吸引する方法などを採用することもできる。トナー捕集手段62としては公知の捕集装置を用いることができ、サイクロン捕集機やバックフィルター等を用いることが出来る。
搬送気流101の状態は、液滴21同士の合着を抑制することが出来れば特に限定されることは無く、層流や旋回流や乱流などを適宜選択することができる。搬送気流101を構成する気体の種類は特に限定は無く、空気以外にも、窒素等の不燃性気体を用いても良い。前述のように液滴21は、乾燥することで合着しなくなる性質を有するため、液滴21の乾燥を促進できる条件を持つことが好ましい。つまり、搬送気流101は、トナー組成液14に含まれる溶剤の蒸気を含まないことが望ましい。また、搬送気流101の温度は、当業者が適宜調整可能であり、生産時において変動の無いことが望ましい。さらに、チャンバ61内に、搬送気流101の気流状態を変える手段を有する構成として構わない。搬送気流101は液滴21同士の合着を防止するだけでなく、液滴21がチャンバ61に付着することを防止することも可能である。
[合着防止手段]
液滴の乾燥及び捕集では、液滴の合着を搬送気流によって抑える説明を行った。本発明では、搬送気流の他にも、更なる合着防止手段を取り入れることも出来る。具体的な合着防止手段としては、液滴吐出手段付近での補助搬送気流の導入すること、液滴を同一極性に帯電すること、及び、電界制御すること等が挙げられる。
図10は、補助搬送気流を用いた合着防止手段の一例である。液滴吐出手段2の周りにはシュラウド66が配置されており、その一部に補助搬送気流導入口67が配置されている。補助搬送気流導入口67から導入された気体は、シュラウド66によって形成された気流通路12を通り、吐出孔19の周辺に補助搬送気流68が作られる。液滴吐出手段2から吐出された液滴21は、補助搬送気流68により、液滴吐出手段2の近傍においては速度を落とすことなく移動する。そのため、液滴同士の合着の頻度を低く抑えることが出来る。補助搬送気流68の速度は、液滴吐出手段2から吐出された直後の液滴速度に対して、同じ速さか、より早い速さであることが望ましい。補助搬送気流68の速度は、液滴吐出手段2から吐出された直後の液滴速度に対して遅い場合は、逆効果となる場合がある。
図10に示すように、補助搬送気流68は液滴21の進行方向と同一であることが望ましいが、合着を防ぐことが出来れば液滴吐出方向と補助搬送気流の方向が同じである必要は無い。
シュラウド66の形状としては、図10に示すように液滴吐出手段2の吐出孔19付近で開口部を絞ることによって流速を制御しても良いが、絞りを持たせなくても良い。補助搬送気流68を構成する気体の種類は特に限定は無く、空気であっても窒素等の不燃性気体などを使用することができる。
図11に、本発明で捕集したトナーの粒子径分布の一例を示す。粒子径分布測定はフロー式粒子像解析装置(シスメックス社製 FPIA−3000)を用いて行った。図11より、粒子径分布が狭いトナー粒子を得ることができたことがわかる。これは吐出された液滴13が合着することなく、乾燥して得られたためである。
図12に、液敵同士が合着した場合の、トナーの粒子径分布を示す。図12は微量の搬送気流101および補助搬送気流102を用いていない以外は、図11と同条件で捕集されたトナーの粒子径分布である。また、図13に、図12で得られたトナーの粒子径分布を説明するための図を示す。ノズル孔19から吐出した液滴21は、自然落下するとともに、空気抵抗を受けて吐出速度が急速に低下する。吐出速度が低下すると液滴間距離が短くなり、液滴間の合着粒子23を生じるようになる。また、合着した粒子はさらに空気抵抗が増し、乾燥も遅れるため、更に別の液滴と合着を引き起こすようになり、数個の液滴が合着する場合もある。これにより、結果として得られるトナーの粒子径分布は広くなる。図12中の基本粒子径と示したピークを構成する乾燥粒子は、合着しなかった液滴21がそのまま乾燥固化したものである。2倍と記載されたピークを形成する乾燥粒子は、液滴21が吐出後に少なくとも1回以上合着した後に乾燥固化して得られたトナー粒子である。同様に3倍、4倍と記載されたピークは、少なくとも2回以上の合着が進行していることが推測することができる。
図14に合着した粒子(合着粒子と呼ぶことがある)の写真を示す。また、図15に基本粒子が結着した状態(結着粒子と呼ぶことがある)の写真を示す。結着粒子は、機械的衝撃を与えても結着した粒子がほぐれ無い。その結果、大粒子径を有する粒子と同様に振舞うため、好ましくない。結着粒子は、粒子がある程度乾燥した後、粒子同士が結合することにより得られると考えられる。具体的には、ある程度乾燥が進行した粒子が配管壁面への付着し、やがて別の乾燥が進んでいない粒子が壁面に付着した粒子と結着した後に乾燥が進行し、配管から剥がれて回収されると考えられる。このような粒子の発生を防止するためには、乾燥を早く確実に実施することや、気流制御によって配管内への粒子付着を抑えることで達成できる。
粒子径分布としては、体積平均粒子径(Dv)と個数平均粒子径(Dn)との比で比較することができ、Dv/Dnで示すことができる。Dv/Dn値は、最も小さい場合1.0であり、これはすべての粒子径が同一であることを示す。一般的に、Dv/Dnが大きいほど粒子径分布が広いことを示す。一般的な粉砕トナーはDv/Dn=1.15〜1.25程度である。また重合トナーはDv/Dn=1.10〜1.15程度である。本発明のトナーはDv/Dn=1.15以下とすることで印刷品質に効果が確認されており、より好ましくはDv/Dn=1.10以下である。
電子写真システムにおいては、粒子径分布が狭いことが現像工程・転写工程・定着工程に求められるため、粒子径分布の広がりは望ましくない。安定的に高精細な画質を得るためにはDv/Dn=1.15以下であることが好ましく、より高精細な画像を得るためにはDv/Dn=1.10以下であることがより好ましい。
[2次乾燥]
図9で示した乾燥捕集手段によって得られたトナーに対して、残留溶剤量が多い場合はこれを低減するために必要に応じて、二次乾燥が行われる。二次乾燥としては、流動床乾燥や真空乾燥のような一般的な公知の乾燥手段を用いることが出来る。有機溶剤がトナー中に残留すると、耐熱保存性、定着性、帯電特性等のトナー特性が経時で変動する。さらに、加熱による定着時において有機溶剤が揮発し、機器使用者および周辺機器へ悪影響を及ぼす可能性が高まる。そのため、トナー中の残留溶剤量を低く抑えることが望ましい。
本発明の、液柱共鳴吐出手段により得られるトナーは、従来の噴霧法で得られるトナーに比べて、非常にシャープな粒度分布が得られる。そのため、トナー粒子間の帯電量のばらつきが少なく、実使用時での画像の安定性に優れる。
[トナー組成液]
本発明のトナーの製造法を実施するための、トナー組成液の成分及び調製方法について説明する。
本発明のトナーの製造方法で使用できるトナー組成液としては、特に限定されないが、フェノール類とアルデヒド類との重縮合反応により得られた重縮合体を含有する帯電制御剤、結着樹脂を含むことが好ましい。また、トナー組成液は、着色剤、離型剤及び磁性体微粒子をさらに含んでも良い。さらに、本発明のトナーの製造方法で製造されるトナーの母体粒子は、流動性向上剤やクリーニング性向上剤等の機能性微粒子を外添して使用しても良い。
フェノール類とアルデヒド類との重縮合反応により得られた重縮合体を含有するサリチル酸のアルキル誘導体の金属錯体、結着樹脂を含むトナー組成液を、本発明のトナーの製造方法で液滴化し、乾燥して得られたトナーは、優れた帯電特性を有する。また、ブレードクリーニング性に優れた非球形形状となる。
本発明のトナーの製造方法で得られたトナー粒子の表面を、飛行時間二次イオン質量分析計(Time −of−flight secondary ion mass spectrometer: TOF−SIMS)にて分析を行った。フェノール類とアルデヒド類との重縮合反応により得られた重縮合体を含有する帯電制御剤の添加量が大きいトナーは、前記帯電制御剤がトナー表面に多く偏在していた。つまり、前記帯電制御剤がトナー表面に多く存在することで、良好な帯電性が得られると考えられる。
トナー表面に前記帯電制御剤が偏在する理由は明らかではないが、トナー表面に帯電制御剤が偏在することにより、乾燥時にトナー表面に存在する帯電制御剤が優先的に乾燥する。そして、内部の結着樹脂中の溶剤が後に乾燥するため、トナーに凹みが生じ、トナーの非球形化が生じると考えられる。
トナーが非球形化することにより、静電潜像担持体上に残留するトナーをクリーニングする際に、クリーニング部材からすり抜けにくくなり、良好なクリーニング性を示す。
[帯電制御剤]
前述の説明の通り、帯電制御剤としては、フェノール類とアルデヒド類との重縮合反応により得られる重縮合体を含有する、負帯電性の帯電制御剤を使用することが好ましい。
フェノール類としては、1つのフェノール性水酸基を有し、水酸基のオルト位には水素が結合しているp−アルキルフェノール、p−アラルキルフェノール、p−フェニルフェノール、p−ヒドロキシ安息香酸エステルから成る群より選択されるフェノール化合物を含むことが好ましい。また、アルデヒド類としては、パラホルムアルデヒド、ホルムアルデヒド、パラアルデヒド、フルフラール等のアルデヒドを使用することが好ましい。
帯電制御剤の市販品としては、例えば、FCA−N型の縮合系ポリマーを含有した電荷制御剤(藤倉化成株式会社製)等が挙げられる。
本発明のトナーに含有できる帯電制御剤としては、他にも、例えば、下記の帯電制御剤を使用しても良い。ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩、アルキルアミド、燐の単体または化合物、タングステンの単体または化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩及び、サリチル酸誘導体の金属塩等である。具体的にはニグロシン系染料のボントロン03、第四級アンモニウム塩のボントロンP−51、含金属アゾ染料のボントロンS−34、オキシナフトエ酸系金属錯体のEー82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(以上、オリエント化学工業社製)、第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(以上、保土谷化学工業社製)、第四級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、第四級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(日本カ一リット社製)、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物が挙げられる。
フェノール類とアルデヒド類との重縮合反応により得られる重縮合体を含有する帯電制御剤を合成する場合、例えば、キシレンなどの有機溶媒中にフェノール類とアルデヒド類とを添加し、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物などの強塩基の存在下において、80℃〜使用する有機溶媒の沸点、好ましくは100℃〜使用する有機溶媒の沸点程度の温度で、水を留去しながら3〜20時間重縮合反応させる。その後、アルコールなどの貧溶媒を用いて再結晶する方法、有機溶媒を減圧乾燥した後、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコールで洗浄する方法等により得られる。強塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化ルビジウム、水酸化カリウム等を使用することが好ましい。
帯電制御剤の含有量としては、トナーに対して0.1〜10質量%であることが好ましい。前記範囲の帯電制御剤を含有させることにより、帯電性に優れたトナーを得ることができる。帯電制御剤の含有量が10質量%より多い場合、得られるトナーの定着性が低下する場合がある。一方、帯電制御剤の含有量が0.1重量%よりも少ない場合、得られるトナーが十分な帯電性を有さないことがある。
通常、トナー材料を含むトナー組成液を吐出して液滴化し、乾燥させる場合、溶剤が均一に揮発するため、球形の粒子が得られる。しかしながら、フェノール類とアルデヒド類との重縮合反応により得られた重縮合体と、結着樹脂とを含むトナー組成液を液滴化する場合、非球形化の粒子が得られる。これは、乾燥速度の違いや、粒子内での成分の偏りが発生することによると考えられる。
[結着樹脂]
本発明のトナーの製造方法で製造されるトナーの結着樹脂としては、特に限定されない。例えば、スチレン系単量体、アクリル系単量体、メタクリル系単量体等から成るビニル重合体、これらの単量体の2種類以上から成る共重合体、ポリエステル系樹脂、ポリオール樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、石油系樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ポリエステル系樹脂やスチレン系単量体と(メタ)アクリル系単量体の共重合体樹脂を使用することが好ましい。
ポリエステル系重合体を構成するアルコール成分及び酸成分のモノマーとしては、特に限定されず、例えば、下記のもの等を使用することができる。
2価のアルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、又は、ビスフェノールAにエチレンオキシド、プロピレンオキシド等の環状エーテルが重合して得られるジオール等が挙げられる。
酸成分としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のべンゼンジカルボン酸類又はその無水物、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等のアルキルジカルボン酸類又はその無水物、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸等の不飽和二塩基酸、マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物等の不飽和二塩基酸無水物等が挙げられる。また、3価以上の多価カルボン酸成分としては、トリメット酸、ピロメット酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシ−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシ)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、エンポール三量体酸、又はこれらの無水物、部分低級アルキルエステル等が挙げられる。
スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−フエニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−アミルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−へキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロロスチレン、m−ニトロスチレン、o−ニトロスチレン、p−ニトロスチレン等のスチレン、又はその誘導体等が挙げられる。
アクリル系単量体としては、例えば、アクリル酸、あるいはアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸n−ドデシル、アクリル酸2−エチルへキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸、又はそのエステル類等が挙げられる。
メタクリル系単量体としては、例えば、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸n−ドデシル、メタクリル酸2−エチルへキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のメタクリル酸又はそのエステル類等が挙げられる。
ビニル重合体又はビニル共重合体の製造に用いられる重合開始剤としては、例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2'−アゾビスイソブチレート、1,1'−アゾビス(1−シクロへキサンカルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)−イソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−フェニルアゾ−2',4'−ジメチル−4'−メトキシバレロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルプロパン)、メチルエチルケトンパ−オキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロへキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、2,2−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジークミルパーオキサイド、α−(tert−ブチルパーオキシ)イソプロピルべンゼン、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、m−トリルパーオキサイド、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルへキシルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシカーボネート、ジ−エトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシカーボネート、アセチルシクロへキシルスルホニルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルへキサレート、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチル−オキシベンゾエ−ト、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ−tert−ブチルパーオキシイソフタレート、tert−ブチルパーオキアリルカーボネート、イソアミルパーオキシ−2−エチルへキサノエート、ジ−tert−ブチルパーオキシへキサハイドロテレフタレート、tert−ブチルパーオキシアゼレート等が挙げられる。
本発明のトナーに含有する結着樹脂は、トナー保存性の観点から、ガラス転移温度(Tg)が35〜80℃であることが好ましく、40〜75℃であることがより好ましい。Tgが35℃より低い場合、高温雰囲気下でトナーが劣化することがある。また、Tgが80℃を超える場合、定着性が低下することがある。
[着色剤]
着色剤は、一般的にトナーに添加し、紙や画像保持体上で発色させるために使用される。ただし、画像の光沢付与、画像保護の目的のために使用されるクリアートナーのように、着色剤を含まないトナーも存在する。本発明のトナーは、通常の黒色トナーに加え、黒以外のカラートナー及びクリアートナーにも使用することができる。
着色剤としては、特に限定されず、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミウムレッド、カドミウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン及びこれらの混合物等が挙げられる。
着色剤の含有量としては、トナーに対して1〜15質量%であることが好ましく、3〜10質量%であることがより好ましい。
本発明で用いる着色剤は、樹脂と複合化されたマスターバッチとして用いることもできる。混練されるバインダー樹脂としては、ポリエステル樹脂やポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の重合体;スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックス等が挙げられる。これらは、1種類を単独で使用しても良く、2種類以上を併用して使用しても良い。
マスターバッチは、マスターバッチ用の樹脂と着色剤とを高せん断力をかけて混合、混練することで製造できる。この際、着色剤と樹脂の相互作用を高めるために、有機溶剤を使用しても良い。また、いわゆるフラッシング法と呼ばれる、水中に着色剤を含んだ水性ペーストを、樹脂と有機溶剤とともに混合混練し、着色剤を樹脂側に移行させ、水分と有機溶剤成分を除去する方法も使用される。この方法では、着色剤のウエットケーキをそのまま使用することができるため、乾燥する必要がない。混合、混練する方法としては、3本ロールミル等の高せん断分散装置が使用できる。
マスターバッチの使用量としては、結着樹脂100質量部に対して、2〜30質量部であることが好ましい。
また、マスターバッチ用の樹脂は、酸価が30mgKOH/g以下、アミン価が1〜100mgKOH/gであり、着色剤を分散させて使用することが好ましい。より好ましくは、酸価が20mgKOH/g以下、アミン価が10〜50mgKOH/gであり、着色剤を分散させて使用することである。酸価が30mgKOH/gを超える場合、高湿環境下での帯電性が低下することがある。また、着色剤の分散性も不十分となることがある。さらに、アミン価が1mgKOH/g未満の場合、及び、アミン価が100mgKOH/gを超える場合も、着色剤の分散性が不十分となることがある。なお、ここで言う酸価とは、JIS K0070に記載の方法により測定することができる。また、アミン価はJIS K7237に記載の方法により測定することができる。
着色剤を分散させる場合の分散剤としては、結着樹脂との相溶性が高いものを使用することが好ましい。例えば、市販品として、アジスパーPB821、アジスパーPB822(味の素ファインテクノ株式会社製)、Disperbyk−2001(ビックケミー・ジャパン株式会社製)、EFKA−4010(EFKA社製)等が挙げられる。
分散剤の質量平均分子量は500〜100,000であることが好ましく、3,000〜100,000であることがより好ましく、5,000〜50,000であることがさらに好ましく、5,000〜30,000であることが特に好ましい。ここで言う質量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおける、スチレン換算質量でのメインピークの極大値の分子量である。質量平均分子量が500未満の場合、極性が高くなり、着色剤の分散性が低下することがある。一方、質量平均分子量が100,000を超える場合、溶剤との親和性が高くなり、着色剤の分散性が低下することがある。
分散剤の添加量としては、着色剤100質量部に対して1〜50質量部であることが好ましく、5〜30質量部であることがより好ましい。分散剤の添加量が1質量部未満の場合、分散能が低くなることがある。一方、分散剤の添加量が50質量部を超える場合、帯電性が低下することがある。
[離型剤]
本発明のトナーは、離型剤を含むことが好ましい。離型剤を含むことにより、定着時のオフセットを防止することができる。
離型剤としては、特に限定されず、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、サゾールワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス、酸化ポリエチレンワックス等の脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物又はそれらのブロック共重合体、キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう等の植物系ワックス、みつろう、ラノリン、鯨ろう等の動物系ワックス、オゾケライト、セレシン、ペテロラタム等の鉱物系ワックス、モンタン酸エステルワックス、カスターワックスの等の脂肪酸エステルを主成分とするワックス類、脱酸カルナバワックスの等の脂肪酸エステルを一部又は全部を脱酸化したもの等が挙げられる。ワックス類の例としては、更に、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、あるいは更に直鎖のアルキル基を有する直鎖アルキルカルボン酸類等の飽和直鎖脂肪酸、プランジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸等の不飽和脂肪酸、ステアリルアルコール、エイコシルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウピルアルコール、セリルアルコール、メシリルアルコール、あるいは長鎖アルキルアルコール等の飽和アルコール、ソルビトール等の多価アルコール、リノール酸アミド、オレフィン酸アミド、ラウリン酸アミド等の脂肪酸アミド、メチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸ビスアミド、エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N'−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N'−ジオレイルセパシン酸アミド等の不飽和脂肪酸アミド類、m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N−ジステアリルイソフタル酸アミド等の芳香族系ビスアミド、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸金属塩、脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸等のビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス、ベヘニン酸モノグリセリド等の脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化合物、植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物等が挙げられる。
他にも、オレフィンを高圧下でラジカル重合したポリオレフィン、高分子量ポリオレフィン重合時に得られる低分子量副生成物を精製したポリオレフィン、低圧下でチーグラー触媒、メタロセン触媒の如き触媒を用いて重合したポリオレフィン、放射線、電磁波又は光を利用して重合したポリオレフィン、高分子量ポリオレフィンを熱分解して得られる低分子量ポリオレフィン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィツシャートロプシュワックス、ジントール法、ヒドロコール法、アーゲ法等により合成される合成炭化水素ワックス、炭素数1個の化合物をモノマーとする合成ワックス、水酸基又はカルボキシル基の如き官能基を有する炭化水素系ワックス、炭化水素系ワックスと官能基を有する炭化水素系ワックスとの混合物、これらのワックスを母体としてスチレン、マレイン酸エステル、アクリレート、メタクリレート、無水マレイン酸の如きビニルモノマーでグラフト変性したワックス等が挙げられ、これらを使用することが好ましい。
また、上記の離型剤を、プレス発汗法、溶剤法、再結晶法、真空蒸留法、超臨界ガス抽出法又は溶液晶析法を用いて分子量分布をシャープにしたものや、低分子量固形脂肪酸、低分子量固形アルコール、低分子量固形化合物、その他の不純物を除去したものも、使用することができる。
離型剤の融点は、耐ブロッキング性と耐オフセット性を両立する観点から、60〜140℃であることが好ましく、70〜120℃であることがより好ましい。離型剤の融点が60℃未満の場合、得られるトナーの耐ブロッキング性が低下することがある。一方、離型剤の融点が140℃を超える場合、得られるトナーの耐オフセット効果が発現しにくくなることがある。なお、ここで言う融点とは、DSCにおいて測定されるワックスの吸熱ピークにおいて、最大ピークのピークトップの温度により定義される。
ワックス又はトナーのDSC測定機器としては、特に限定されないが、例えば、高精度の内熱式入力補償型の示差走査熱量計を用いて測定することができる。測定方法としては、ASTM D3418−82(DSC法)に規定される方法に準じて測定される。本発明では、DSC曲線は、1回昇温、降温させ前履歴を取った後、温度速度10℃/minで、昇温させた時に測定したものを用いた。
離型剤の含有量としては、トナーに対して1〜30質量%であることが好ましく、2〜20質量%であることがより好ましい。
[磁性体]
本発明のトナーは、磁性体を含有させて磁性トナーとして使用しても良い。磁性体としては、例えば、マグネタイト、マグヘマイト、フェライトの如き磁性酸化鉄、及び他の金属酸化物を含む酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケル等の金属、又は、これらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、錫、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウム等の金属との合金;及びこれらの混合物等が用いられる。
具体的には、Fe、γ−Fe、ZnFe、YFe12、CdFe、GdFe12、CuFe、PbFe12O、NiFe、NdFeO、BaFe1219、MgFe、MnFe、LaFeO、鉄粉、コバルト粉、ニッケル粉等が挙げられる。これらは、1種類を単独で使用しても良く、2種類以上を併用して使用してもよい。上記の磁性体の中でも、四三酸化鉄、γ−三二酸化鉄の微粉末を使用することが好ましい。磁性体は、着色剤としても使用しても良い。
また、異種元素を含有するマグネタイト、マグヘマイト、フェライト等の磁性酸化鉄、又はその混合物も使用できる。異種元素としては、例えば、リチウム、ベリリウム、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、ゲルマニウム、ジルコニウム、錫、イオウ、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム等が挙げられる。この中でも、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、又はジルコニウムを含むことが好ましい。異種元素は、酸化鉄結晶格子の中に取り込まれていても良く、酸化物として酸化鉄中に取り込まれていても良く、表面に酸化物又は水酸化物として存在していても良い。これらの中でも、酸化物として含有されているものが好ましい。
異種元素は、磁性体を作製する際に、それぞれの異種元素の塩を混在させ、pHを調整することにより粒子中に取り込むことができる。また、磁性体粒子を作製した後に、pH調整又は各々の元素の塩を添加することにより、粒子表面に析出することができる。
磁性体の含有量としては、結着樹脂100質量部に対して、10〜200質量部であることが好ましく、20〜150質量部であることがより好ましい。また、磁性体の個数平均粒径としては、0.1〜1μmであることが好ましく、0.1〜0.5μmであることがより好ましい。ここで言う個数平均粒径とは、透過電子顕微鏡により拡大撮影した写真をデジタイザー等で測定することにより求めることができる。
また、磁性体の磁気特性としては、10Kエルステッド印加での磁気特性がそれぞれ、抗磁力20〜150エルステッド、飽和磁化50〜200emu/g、残留磁化2〜20emu/gであることが好ましい。
[流動性向上剤]
本発明のトナーは、流動性向上剤を添加して使用してもよい。
流動性向上剤としては、特に限定されず、例えば、フッ化ビニリデン微粉末、ポリテトラフルオロエチレン微粉末の如きフッ素系樹脂粉末、湿式製法シリカ、乾式製法シリカ等の微粉末シリカ、微粉未酸化チタン、微粉未アルミナ、それらをシランカップリング剤、チタンカップリング剤若しくはシリコーンオイルにより表面処理を施した処理シリカ、処理酸化チタン、処理アルミナ等が挙げられる。これらの中でも、微粉末シリカ、微粉未酸化チタン、微粉未アルミナを使用することが好ましく、また、これらをシランカップリング剤やシリコーンオイルにより表面処理を施したものを使用することが好ましい。なお、微粉末シリカとは、ケイ素ハロゲン化含物の気相酸化により生成されるシリカの微粉体であり、通常、乾式法シリカ又はヒュームドシリカとも称される。
ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成される市販のシリカ微粉体としては、例えば、AEROSIL(日本アエロジル社商品名、以下同じ)−130、−300、−380、−TT600、−MOX170、−MOX80、−COK84:Ca−O−SiL(CABOT社商品名)−M−5、−MS−7、−MS−75、−HS−5、−EH−5、Wacker HDK(WACKER−CHEMIEGMBH社商品名)−N20 V15、−N20E、−T30、−T40:D−CFineSi1ica(ダウコーニング社製):Franso1(Fransi1社製)等が挙げられる。
さらに、ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体を疎水化処理した処理シリカ微粉体において、メタノール滴定試験によって測定される疎水化度が30〜80%であることが好ましい。疎水化は、シリカ微粉体と反応又は物理吸着する有機ケイ素化合物等で化学的又は物理的に処理することによって付与される。ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体を有機ケイ素化合物で処理する方法が好ましい。
シリカ微粉体を処理する有機ケイ素化合物としては、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、ビニルメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ジメチルビニルクロロシラン、ジビニルクロロシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、へキサメチルジシラン、トリメチルシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、アリルジメチルクロロシラン、アリルフェニルジクロロシラン、ベンジルジメチルクロロシラン、ブロモメチルジメチルクロロシラン、α−クロルエチルトリクロロシラン、β−クロロエチルトリクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、へキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフエニルテトラメチルジシロキサン及び1分子当り2〜12個のシロキサン単位を有し、未端に位置する単位にそれぞれSiに結合した水酸基を0〜1個含有するジメチルポリシロキサン等がある。更に、ジメチルシリコーンオイルといった、シリコーンオイルも使用できる。これらは1種類を単独で使用しても良く、2種類以上を併用して使用しても良い。
流動性向上剤の粒径としては、平均一次粒径として、0.001〜2μmであることが好ましく、0.002〜0.2μmであることがより好ましい。また、流動性向上剤の個数平均粒径としては、5〜100nmになるものが好ましく、5〜50nmになるものがより好ましい。
流動性向上剤のBET法で測定した窒素吸着による比表面積としては、30m/g以上であることが好ましく、60〜400m/gであることがより好ましい。一方、表面処理された微粉体を使用する場合は、上記方法による比表面積としては、20m/g以上であることが好ましく、40〜300m/gであることがより好ましい。
流動性向上剤の含有量としては、トナー粒子100質量部に対して0.03〜8質量部であることが好ましい。
[クリーニング性向上剤]
クリーニング性向上剤は、記録紙等にトナーを転写した後、静電潜像担持体や一次転写媒体に残存するトナの除去性を向上させる機能を有する。クリーニング性向上剤の例としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩、ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子等のソープフリー乳化重合によって製造されたポリマー微粒子等が挙げられる。ポリマー微粒子を使用する場合は、比較的粒度分布が狭く、体積平均粒径が0.01〜1μmのものを使用することが好ましい。
流動性向上剤やクリーニング性向上剤等は、トナーの表面に付着乃至固定化させて使用されるため、外添剤とも呼ぶことがある。トナーに外添剤を外添する手段としては、公知の粉体混合機等を使用することができる。例えば、V型混合機、ロッキングミキサー、レーディゲミキサー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー等が挙げられる。また、固定化も行う場合はハイブリタイザー、メカノフュージョン、Qミキサー等が挙げられる。
[トナーの粒径及び粒度分布]
一般に、トナーの粒径が小さくなると、ドットや細線の再現性が向上し、ざらつきがなくシャープで高品位な画像が得られる。しかしながら、トナー粒径が小さくなると、現像性や転写性を低下することがある。そのため、トナーの重量平均粒径として1〜15μmであることが好ましく、2〜10μmであることがより好ましく、3〜8μmであることがさらに好ましい。
トナーの粒度分布は、重量平均粒径(D4)と、個数平均粒径(Dn)との比D4/Dnで表される。この比D4/Dnが1の場合、単分散のトナーである。従来の粉砕法で得られるトナーのD4/Dnは、生産性とコストの観点から、通常1.2〜1.4程度である。一般に、現像を繰り返すことにより現像装置内に残っているトナーの粒径や粒度分布が変化し、画像品質が変化する。そのため、初期トナーの粒度分布はできるだけ狭いことが好ましい。すなわち、D4/Dnは1.00〜1.15であることが好ましく、1.00〜1.10であることがより好ましい。
[トナー組成液の調製]
上述の結着樹脂、着色剤、帯電制御剤等のトナー材料を、有機溶剤に溶解乃至は分散することによりトナー組成液を得ることができる。
有機溶剤としては、例えば、エーテル類、ケトン類、エステル類、炭化水素類、アルコール類の溶剤が使用することができる。特に、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、酢酸エチル、トルエンが好ましく用いられ、これらは1種類を単独でも使用しても良く、2種類以上を併用して使用しても良い。
本発明は、トナー材料の分散体を含むトナー組成液を、ノズルより噴霧させるため、ホモミキサーやビーズミルなどを用いて、分散体を充分に微細とすることが好ましい。また、トナー組成液の固形分は5〜40質量%であることが好ましい。固形分が5質量%未満の場合、生産性が低下する。また、着色剤離型剤、磁性体等の分散体が沈降や凝集を起こし、トナー粒子の組成が不均一になることがある。一方固形分が40質量%を超える場合、小粒径のトナーが得られないことがある。
[現像剤]
本発明のトナーは、キャリアと混合して二成分現像剤として使用することができる。キャリアとしては、特に限定されず、フェライト、マグネタイト等のキャリア及び樹脂コートキャリアを使用することができる。
樹脂コートキャリアとは、コア粒子(芯材)とコア粒子表面を被覆するコート樹脂を含むキャリアのことを指す。
コア粒子としては、例えば、フェライト、鉄過剰型フェライト、マグネタイト、γ−酸化鉄等の酸化物や、鉄、コバルト、ニッケルのような金属、又はこれらの合金を使用することができる。また、コア粒子に含まれる元素としては、鉄、コバルト、ニッケル、アルミニウム、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウム等が挙げられる。これらの中でも、銅、亜鉛及び鉄成分を主成分とする銅−亜鉛−鉄系フェライト、マンガン、マグネシウム及び鉄成分を主成分とするマンガン−マグネシウム−鉄系フェライトを使用することが好ましい。
コート樹脂に使用される樹脂としては、特に限定されず、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体等のスチレン−アクリル系樹脂、アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合体等のアクリル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、モノクロロトリフルオロエチレン重合体、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素含有樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、アミノアクリレート樹脂等が挙げられる。他にも、アイオモノマー樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂等のキャリアの被覆材として使用できる樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用して使用しても良い。上記の樹脂において、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、含フッ素樹脂とスチレン系共重合体との混合物、シリコーン樹脂を使用することが好ましく、シリコーン樹脂を使用することがより好ましい。
含フッ素樹脂とスチレン系共重合体との混合物としては、例えば、ポリフッ化ビニリデンとスチレン−メタクリ酸メチル共重合体との混合物、ポリテトラフルオロエチレンとスチレン−メタクリル酸メチル共重合体との混合物、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合(共重合体質量比10:90〜90:10)とスチレン−アクリル酸2−エチルヘキシル共重合体(共重合質量比10:90〜90:10)とスチレン−アクリル酸2−エチルヘキシル−メタクリル酸メチル共重合体(共重合体質量比20〜60:5〜30:10〜50)との混合物が挙げられる。
シリコーン樹脂としては、含窒素シリコーン樹脂及び含窒素シランカップリング剤と、シリコーン樹脂とが反応させて得られる変性シリコーン樹脂を使用することが好ましい。
また、コート樹脂中に磁性粉を分散させたバインダー型のキャリアコアを使用しても良い。
樹脂コートキャリアにおいて、コア粒子の表面をコート樹脂で被覆する方法としては、樹脂を溶剤中に溶解又は懸濁させた塗布液を、キャリアコアに付着させる方法又は粉体状態で混合させる方法等の従来の方法を使用することができる。
コート樹脂の含有量としては、キャリアに対して0.01〜5質量%であることが好ましく、0.1〜1質量%であることがより好ましい。
また、コア粒子を2種類以上の混合物の被覆剤で被覆しても良い。具体的には、酸化チタン微粉体100質量部に対してジメチルジクロロシランとジメチルシリコーンオイル(質量比1:5)の混合物12質量部で処理したものを使用できる。他にも、シリカ微粉体100質量部に対してジメチルジクロロシランとジメチルシリコーンオイル(質量比1:5)の混合物20質量部で処理したものを使用できる。
キャリアの抵抗値は、キャリアの表面の凹凸度合い、コート樹脂の含有量などで調整されるが、10〜1010Ω・cmの範囲にあることが好ましい。
キャリアの粒径としては、通常4〜200μmであるが、10〜150μmであることが好ましく、20〜100μmであることがより好ましい。コート樹脂により被覆されるキャリアを使用する場合は、50%粒径が20〜70μmであることが好ましい。
2成分系現像剤として使用する場合、キャリア100質量部に対して、本発明のトナー1〜100質量部で使用することが好ましく、キャリア100質量部に対して、トナー2〜50質量部で使用することがより好ましい。
本発明のトナーは、キャリアを使用しない一成分系の磁性トナー又は非磁性トナーとしても使用することができる。
[画像形成方法]
本発明により得られるトナー又は現像剤は、下記の画像形成方法により、高画質の画像が形成される。本発明の画像形成方法としては、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、静電潜像を本発明のトナー又は現像剤を用いて現像して可視像を形成する現像工程と、前記可視像を記録媒体に転写する転写工程と、前記記録媒体に転写された転写像をローラ状又はベルト状の定着部材を用いて加熱加圧し、定着する定着工程を含む。また、必要に応じて、例えば、除電工程、クリーニング工程、リサイクル工程等の他の工程を有しても良い。
また、本発明の画像形成装置は、静電潜像担持体と、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、静電潜像を本発明の前記トナー乃至前記現像剤を用いて現像し可視像を形成する現像手段と、可視像を記録媒体に転写する転写手段と、記録媒体に転写された転写像をローラ状又はベルト状の定着部材を用いて加熱加圧し、定着する定着手段と、を有する。また、必要に応じて、例えば、除電手段、クリーニング手段、リサイクル手段、制御手段等の他の手段を有しても良い。
[静電潜像形成工程及び静電潜像形成手段]
静電潜像形成工程は、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する工程である。静電潜像担持体としては、材質、形状、構造及び大きさ等について特に制限はないが、形状はドラム状のものが好ましく使用でき、材質は、有機感光体やアモルファスシリコン、セレン等の無機感光体等が好ましく使用できる。
静電潜像は、例えば、静電潜像担持体の表面を一様に帯電させた後、像様に露光することにより形成される。即ち、静電潜像形成手段は、例えば、静電潜像担持体の表面に電圧を印加して一様に帯電させる帯電器と、静電潜像担持体の表面を像様に露光する露光器を有する。
帯電器としては、特に限定されないが、例えば、導電性又は半導電性のロール、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を備えた公知の接触帯電器、コロトロン、スコロトロン等のコロナ放電を利用した非接触帯電器等を用いることができる。
露光器としては、帯電器により帯電された静電潜像担持体の表面に形成すべき像様に露光することができれば、特に限定されないが、例えば、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザー光学系、液晶シャッタ光学系等の各種露光器を用いることができる。なお、静電潜像担持体の裏面側から像様に露光を行う光背面方式を採用しても良い。
[現像工程及び現像手段]
静電潜像形成工程により形成された静電潜像を、現像剤を用いて現像してトナー像を形成する工程である。現像手段は、本発明の現像剤を用いて現像することができれば、特に限定されないが、例えば、本発明の現像剤を収容し、静電潜像にトナーを接触又は非接触的に付与可能な現像器を有するものを用いることができる。また、本発明の現像剤収容容器を一体的に備えた現像器等が好ましい。
現像器は、乾式現像方式及び湿式現像方式のいずれの方式のものも使用することが出来る。また、単色用現像器及び多色用現像器のいずれであっても良い。例えば、本発明の現像剤を摩擦攪拌により帯電させる攪拌器と、回転可能なマグネットローラーを有するもの等が挙げられる。現像器内では、例えば、トナーとキャリアが混合攪拌され、その際の摩擦によりトナーが帯電し、回転するマグネットローラーの表面に穂立ち状態で保持され、磁気ブラシが形成される。マグネットローラーは、静電潜像担持体近傍に配置されており、マグネットローラーの表面に形成された磁気ブラシを構成するトナーの一部は、電気的な吸引力によって、静電潜像担持体の表面に移動する。その結果、静電潜像がトナーにより現像されて、静電潜像担持体の表面にトナー像が形成される。なお、現像器に収容する現像剤は、一成分現像剤であっても良く、二成分現像剤であっても良い。
[転写工程及び転写手段]
転写工程は、例えば、転写帯電器を用いて、トナー像が形成された静電潜像担持体を帯電し、トナー像を記録媒体に転写する工程である。転写工程は、トナー像を中間転写体上に転写する一次転写工程と、中間転写体上に転写されたトナー像を記録媒体上に転写する二次転写工程を有することが好ましい。また、転写工程は、二色以上のトナー、好ましくは、フルカラートナーを用いて、各色のトナー像を中間転写体上に転写して複合トナー像を形成する一次転写工程と、中間転写体上に形成された複合トナー像を記録媒体上に転写する二次転写工程を有することがさらに好ましい。
転写手段としては、トナー像を中間転写体上に転写して複合トナー像を形成する一次転写手段と、中間転写体上に形成された複合トナー像を記録媒体上に転写する二次転写手段を有することが好ましい。なお、中間転写体としては、特に限定されないが、例えば、無端状の転写ベルト等が挙げられる。また、転写手段は、静電潜像担持体上に形成されたトナー像を記録媒体側に帯電剥離させる転写器を有することが好ましい。なお、転写手段は、1個又は2個以上の転写器を有することができる。
転写器としては、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラー、圧力転写ローラー、粘着転写器等が挙げられる。
なお、記録媒体としては、特に限定されず、例えば記録紙などの公知の記録媒体の中から適宜選択することができる。
[定着工程及び定着手段]
定着工程は、記録媒体に転写されたトナー像を定着させる工程である。なお、二色以上のトナーを用いる場合は、各色のトナーが記録媒体に転写される毎に定着させても良く、全色のトナーが記録媒体に転写されて積層された後で定着させても良い。定着手段としては、特に限定されず、公知の加熱加圧手段を用いることができる。加熱加圧手段としては、加熱ローラーと加圧ローラーを組み合わせたもの、加熱ローラーと加圧ローラーと無端ベルトを組み合わせたもの等が挙げられる。このとき、加熱温度は、120〜200℃であることが好ましい。
なお、本発明においては、定着工程と共に又は定着工程と代えて、光定着器を使用しても良い。
[その他の工程及びその他の手段]
《除電工程》
除電工程は、静電潜像担持体に除電バイアスを印加して除電する工程である。除電手段としては、静電潜像担持体に除電バイアスを印加することができれば、特に限定されないが、例えば、除電ランプ等を用いることができる。
《除電工程》
除電工程は、静電潜像担持体に除電バイアスを印加して除電する工程である。除電手段としては、静電潜像担持体に除電バイアスを印加することができれば、特に限定されないが、例えば、除電ランプ等を用いることができる。
《クリーニング工程》
クリーニング工程は、静電潜像担持体上に残留するトナーを除去する工程である。クリーニング手段としては、静電潜像担持体上に残留するトナーを除去することができれば、特に限定されないが、例えば、磁気ブラシクリーナー、静電ブラシクリーナー、磁気ローラークリーナー、ブレードクリーナー、ブラシクリーナー、ウエブクリーナー等を用いることができる。
《リサイクル工程》
リサイクル工程は、クリーニング工程で除去されたトナーを現像手段にリサイクルさせる工程である。リサイクル手段としては、特に限定されず、公知の搬送手段等を用いることができる。
次に、本発明の一実施形態に係る、画像形成装置について、図を参照しながら説明する。
図16に、本発明の画像形成装置の構成を例示する概略図を示す。画像形成装置800は、静電潜像担持体として感光体ドラム810(以下「感光体810」という)と、帯電手段としての帯電ローラ820と、露光手段としての露光装置830と、前記現像手段としての現像装置840と、中間転写体850と、クリーニングブレードを有するクリーニング手段としてのクリーニング装置860と、前記除電手段としての除電ランプ870とを有する。
中間転写体850は無端ベルトであり、内側に配置され、かつ張架する3個のローラ851によって、例えば、図中矢印方向に移動可能となるように設計されている。3個のローラ851の一部は、中間転写体850に一次転写バイアスを印加可能である、転写バイアスローラとしても機能する。また、中間転写体850の近傍には、中間転写体用クリーニングブレード890及び転写ローラ880が配置されている。転写ローラ880は、記録媒体895にトナー像を二次転写するための転写バイアスを印加可能である。中間転写体850の周囲には、中間転写体850上の可視像に電荷を付与するためのコロナ帯電器858が配置されている。コロナ帯電器858は、中間転写体850の回転方向において、静電潜像担持体810と中間転写体850との接触部と、中間転写体850と記録媒体895との接触部との間に配置されている。
現像装置840は、現像剤担持体としての現像ベルト841と、この現像ベルト841の周囲に併設したブラック現像ユニット845K、イエロー現像ユニット845Y、マゼンタ現像ユニット845M、及びシアン現像ユニット845Cとを含む。なお、ブラック現像ユニット845Kは、現像剤収容部842Kと現像剤供給ローラ843Kと現像ローラ844Kとを有する。イエロー現像ユニット845Yは、現像剤収容部842Yと現像剤供給ローラ843Yと現像ローラ844Yとを有する。マゼンタ現像ユニット845Mは、現像剤収容部842Mと現像剤供給ローラ843Mと現像ローラ844Mとを有する。シアン現像ユニット845Cは、現像剤収容部842Cと現像剤供給ローラ843Cと現像ローラ844Cとを有する。また、現像ベルト841は、無端ベルトであり、複数のベルトローラにより回転可能に張架され、一部が静電潜像担持体810と接触している。
画像形成装置800において、例えば、帯電ローラ820が感光体ドラム810を一様に帯電させる。露光装置830が感光ドラム810上に像様に露光を行い、静電潜像を形成する。感光ドラム810上に形成された静電潜像を、現像装置840からトナーを供給して現像してトナー像を形成する。トナー像は、ローラ851から印加された電圧により中間転写体850上に一次転写され、更に転写紙895上に二次転写される。それにより、転写紙895上に転写像が形成される。なお、感光体810上の残存トナーは、クリーニング装置860により除去される。感光体810における帯電は、除電ランプ870により除去される。
図17は、本発明の画像形成装置の構成の他の例を示す概略図である。画像形成装置900は、現像ベルト841を有さない点で前述の画像形成装置800と異なる。また、感光体810の周囲に、ブラック現像ユニット845K、イエロー現像ユニット845Y、マゼンタ現像ユニット845M及びシアン現像ユニット845Cが直接対向して配置されている。その他の構成は、図16における画像形成装置800と同様の構成を有する。
図18に、本発明の画像形成装置の構成のさらに他の例を示す概略図を示す。図18に示す画像形成装置は、ダンデム型の画像形成装置である。複写装置本体150は、主として、給紙テーブル200と、スキャナ300と、原稿自動搬送装置(ADF)400とを備える。
複写装置本体150には、無端ベルト状の中間転写体1050が設けられている。中間転写体1050は、支持ローラ1014、1015及び1016に張架され、例えば、時計回りに回転可能である。支持ローラ1015の近傍には、中間転写体1050上の残留トナーを除去するための中間転写体クリーニング装置1017が配置されている。中間転写体1050は、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4つの画像形成手段1018が対向して並置されたタンデム型現像器120が配置されている。タンデム型現像器120の近傍には、露光装置1021が配置されている。中間転写体1050における、タンデム型現像器120が配置された側とは反対側には、二次転写装置1022が配置されている。二次転写装置1022においては、無端ベルトである二次転写ベルト1024が一対のローラ1023に張架されている。二次転写ベルト1024上を搬送される転写紙と中間転写体1050とは互いに接触可能である。二次転写装置1022の近傍には、定着装置1025が配置されている。定着装置1025は、無端ベルトである定着ベルト1026と、これに押圧されて配置された加圧ローラ1027とを備える。二次転写装置1022及び定着装置1025の近傍には、転写紙の両面に画像形成を行うために、転写紙を反転させるためのシート反転装置1028が配置されている。
次に、タンデム型現像器120を用いたフルカラー画像の形成について説明する。まず、原稿自動搬送装置(ADF)400の原稿台130上に原稿をセットする又は原稿自動搬送装置400を開いてスキャナ300のコンタクトガラス1032上に原稿をセットし、原稿自動搬送装置400を閉じる。図示しないスタートスイッチを押すと、原稿自動搬送装置400に原稿をセットした時は、原稿が搬送されてコンタクトガラス1032上へと移動された後で、一方、コンタクトガラス1032上に原稿をセットした時は直ちに、スキャナ300が駆動し、第1走行体1033及び第2走行体1034が走行する。この時、第1走行体1033により、光源からの光が照射されると共に、原稿面からの反射光を第2走行体1034におけるミラーで反射し、結像レンズ1035を通して読取りセンサ1036で受光する。これにより、カラー画像が読取られ、ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの画像情報とされる。
ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの各画像情報は、タンデム型現像手段120における各画像形成手段1018(ブラック用画像形成手段、イエロー用画像形成手段、マゼンタ用画像形成手段、及びシアン用画像形成手段)に伝達され、各画像形成手段により各色のトナー画像が形成される。各画像形成手段1018は、静電潜像担持体1110(ブラック用静電潜像担持体1010K、イエロー用静電潜像担持体1010Y、マゼンタ用静電潜像担持体1010M、及びシアン用静電潜像担持体1010C)と、該静電潜像担持体1110を一様に帯電させる帯電装置160とを有する。また、各カラー画像情報に基づいて各カラー画像対応画像用に前記静電潜像担持体を露光し、該静電潜像担持体上に各カラー画像に対応する静電潜像を形成する露光装置と、該静電潜像を各カラートナー(ブラックトナー、イエロートナー、マゼンタトナー、及びシアントナー)を用いて現像して各カラートナーによるトナー画像を形成する現像装置61とを有する。さらに、トナー画像を中間転写体1050上に転写させるための転写帯電器1062と、クリーニング装置63と、除電器64とを有する。これにより、それぞれのカラーの画像情報に基づいて各単色の画像(ブラック画像、イエロー画像、マゼンタ画像、及びシアン画像)を形成することが可能である。
形成されたブラック画像、イエロー画像、マゼンタ画像及びシアン画像は、支持ローラ1014、1015及び1016により回転移動される中間転写体1050上にそれぞれの静電潜像担持体(1010K、1010Y、1010M、1010C)上に形成された画像が、順次一次転写される。そして、中間転写体1050上に各色の画像が重ね合わされて合成カラー画像が形成される。
給紙テーブル200においては、給紙ローラ142の1つを選択的に回転させ、ペーパーバンク143に多段に備える給紙カセット144の1つからシート(記録紙)を繰り出す。そして、分離ローラ145で1枚ずつ分離して給紙路146に送出し、搬送ローラ147で搬送して給紙路148に導き、レジストローラ1049に突き当てて止める。給紙ローラ142を回転して手差しトレイ1054上の記録紙を繰り出し、分離ローラ1058で1枚ずつ分離して手差し給紙路1053に入れ、レジストローラ1049で止めても良い。なお、レジストローラ1049は、接地されて使用しても良く、シートの紙粉除去のためにバイアスが印加された状態で使用しても良い。さらに、中間転写体1050上に合成された合成カラー画像にタイミングを合わせてレジストローラ1049を回転させ、中間転写体1050と二次転写装置1022との間に記録紙を送出する。二次転写装置1022により合成カラー画像を記録紙上に二次転写することにより、記録紙上にカラー画像が形成される。なお、画像転写後の中間転写体1050上の残留トナーは、中間転写体クリーニング装置1017によりクリーニングされる。
カラー画像が形成された記録紙は、二次転写装置1022により搬送されて、定着装置1025へと送出され、定着装置1025において、熱及び/又は圧力により合成カラー画像が記録紙上に定着される。その後、記録紙は、切換爪1055で切り換えて排出ローラ1056により排出され、排紙トレイ1057上にスタックされる。あるいは、切換爪1055で切り換えてシート反転装置1028により反転されて再び転写位置へと導かれ、裏面にも画像を記録した後、排出ローラ1056により排出され、排紙トレイ1057上にスタックされる。
図19に、本発明のプロセスカートリッジの構成を例示する概略図を示す。プロセスカートリッジは、感光体701、帯電手段702、現像手段704、転写手段708、クリーニング手段707、図示しない除電手段のいずれか一つを有する。本発明のカートリッジは、前述の画像形成装置と着脱可能であることが好ましい。感光体701は、例えば、矢印方向に回転しながら、帯電手段702による帯電、露光手段703による露光により、その表面に露光像に対応する静電潜像が形成される、静電潜像は、現像手段704においてトナー現像され、トナー現像は転写手段708により、転写体705に転写され、プリントアウトされる。次いで、像転写後の感光体表面は、クリーニング手段707によりクリーニングされ、さらに図示しない除電手段により除電される。
以下、実施例により本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明は、これに限定されない。
[ポリエステル樹脂の合成]
窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を備えた、窒素雰囲気に置換した5リットルの四つ口フラスコ内に、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物0.5モル及びビスフェノールAエチレンオキサイド付加物0.5モルと、テレフタル酸0.9モルとを、オクチル酸スズのエステル化触媒下で、180℃、4時間縮重合反応させた。その後、トリメリット酸0.07モルを追加して、210℃に昇温して1時間反応させた。さらに、8KPaにて1時間反応させ、(ポリエステル樹脂A)を合成した。得られたポリエステル樹脂Aの重量平均分子量Mwは93000、数平均分子量Mnは3500、ピークトップ分子量Mpは48000であった。また、THF不溶解分は0%であった。なお、ここで言う、重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn、ピークトップ分子量Mp及びTHF不溶解分は、下記の方法により測定した。
《重量平均分子量Mw》
ポリエステル樹脂のTHF溶解分の分子量分布を、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定装置GPC−150C(ウォーターズ社製)により測定した。カラムにはKF801〜807(ショウデックス社製)を使用した。本実施形態では、測定は以下の方法で行った。40℃のヒートチャンバー中にカラムを設置し、溶媒としてTHFを毎分1mlの流速で流した。ポリエステル樹脂0.05gをTHF5gに溶かした後、前処理用フィルター(例えば、孔径0.45μmのクロマトディスク(クラボウ製))で濾過した。最終的な試料濃度が0.05〜0.6質量%となるように、THF溶液を50〜200μl程度注入して測定した。結着樹脂のTHF溶解分の重量平均分子量Mw、数平均分子量Mnピークトップ分子量Mpは、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数との関係から算出される。検量線作成用の単分散ポリスチレン試料としては、例えばPressureChemical Co.又は東洋ソーダ工業社製の、分子量が6×10、2.1×10、4×10、1.75×10、5.1×10、1.1×10、3.9×10、8.6×10、2×10、4.48×10のものを用いることが好ましい。また、検出器にはRI(屈折率)検出器を用いることが好ましい。
《THF不溶解分》
ポリエステル樹脂10gを秤量し、THF90gを加えて、20℃で60分間撹拌した後、20℃で20〜30時間放置した。これにより、THF不溶解分が沈降するため、濾紙にて分離する。濾紙としては、FILTER PAPER No.7(アドバンテック社製)を用いて、濾紙上に分離された不溶分をTHFで洗浄しながら吸引濾過を行った。分離した不溶分を120℃で3時間加温し、THFを揮発させた後、質量を秤量し、不溶解分を求めた。
[ポリエステル樹脂の溶解液の調製]
(ポリエステル樹脂A)1質量部と酢酸エチル9質量部とを混合し、ポリエステル樹脂を完全に溶解させ、(ポリエステル樹脂Aの溶解液)を作成した。
[帯電制御剤の溶解乃至分散液の調製]
FCA−2508N(藤倉化成株式会社製;フェノールとアルデヒドとの重縮合反応により得られた重縮合体)1質量部と酢酸エチル4質量部とを混合し、(FCA−2508Nの溶解液A)を調製した。
ボントロンE−84(オリエント化学工業株式会社製)のボントロンE−84を1質量部と酢酸エチル4質量部とを混合し、ビーズミルにより微細にして(ボントロンE−84の分散液A)を調製した。
ボントロンS−34(オリエント化学工業株式会社製)のボントロンS−34を1質量部と酢酸エチル4質量部とを混合し、ボントロンS−34を溶かし、(ボントロンS−34の溶解液A)を調製した。
[着色剤の分散液の調製]
カーボンブラック(Regal400;Cabot社製)20質量部及び顔料分散剤2質量部を、酢酸エチル78質量部に、攪拌羽を有するミキサーを使用して一次分散させた。顔料分散剤としては、アジスパーPB821(味の素ファインテクノ社製)を使用した。得られた一次分散液を、ダイノーミルによりせん断力を加えて細かく分散し、二次分散液を調製した。得られた分散液は、1μmの細孔を有するフィルター(PTFE製)に通過させて、(着色剤の分散液A)を得た。
[ワックス分散液の調製]
カルナバワックス1質量部及び酢酸エチル4質量部を、85℃に加温して20分間撹拌し、カルナバワックスを溶解させた後、急冷してカルナバワックスの微粒子を析出させた。得られたワックス分散液に対して、0.1μmφのジルコニアビーズを充填したスターミルLMZ06(アシザワファインテック(株)製)を用いてせん断力を加え、さらに細かく分散した。ワックスの粒径をNPA150(株式会社マイクロトラック製)により測定し、ワックスの平均粒径が0.3μm、最大粒径が0.8μm以下となるまで分散し、(ワックスの分散液A)を得た。
各実施例及び比較例のトナーの母体粒子の作製条件を表1に示す。
(実施例1)
(ポリエステル樹脂の溶解液A)1000質量部、(FCA−2508Nの溶解液A)10質量部、(ワックスの分散液A)50質量部、(着色剤の分散液A)25質量部、酢酸エチル90質量部を混合した。得られた混合液を目開き1μmのフィルターに通し、トナー組成液を作成した。
得られたトナー液を、本発明のトナー製造方法により吐出液滴、乾燥し、トナー母体粒子を得た。なお、液柱共鳴条件及びトナー母体粒子の作製条件は下記の通りである。
[液柱共鳴条件]
共鳴モード :N=2
液柱共鳴液室の長手方向の両端間の長さ :L=1.8mm
液柱共鳴液室の液共通供給路側のフレームの端部の高さ :h1=80μm
液柱共鳴液室の連通口の高さ :h2=40μm
[トナー母体粒子作製条件A]
分散液比重 :ρ=1.1g/cm
吐出孔の形状 :真円
吐出孔直径 :8.0μm
吐出孔の開口数 :100個(液柱共鳴液室1つ当たり1個×100ch)
乾燥エアー温度 :40℃
印加電圧 :12.0V
駆動周波数 :280kHz
得られたトナー母体粒子100質量部に対して、疎水性シリカ(H2000、クラリアントジャパン社製)1.0質量部と酸化チタン(JMT−150IB、テイカ社製)1.0質量部とを、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)を用いて外添処理を行った。その後、目開き30μmの篩を通して、実施例1のトナーを得た。
(実施例2)
実施例1における、トナー母体粒子作製条件Aを、下記のトナー母体粒子作製条件Bに変更した以外は、実施例1と同様の工程で、実施例2のトナーを得た。
[トナー母体粒子作製条件B]
分散液比重 :ρ=1.1g/cm
吐出孔の形状 :真円
吐出孔直径 :8.0μm
吐出孔の開口数 :400個(液柱共鳴液室1つ当たり4個×100ch)
隣接する吐出孔の中心部間の最短間隔 :130μm(全て等間隔)
乾燥エアー温度 :40℃
印加電圧 :12.0V
駆動周波数 :340kHz
(実施例3)
(FCA−2508Nの溶解液A)の使用量を1質量部に変更し、酢酸エチルの使用量を81質量部に変更した以外は、実施例2と同様の工程により、実施例3のトナーを得た。
(実施例4)
(FCA−2508Nの溶解液A)の使用量を50質量部に変更し、酢酸エチルの使用量を130質量部に変更した以外は、実施例2と同様の工程により、実施例4のトナーを得た。
(比較例1)
(FCA−2508Nの溶解液A)の代わりに、(ボントロンE−84の分散液A)10質量部を使用した以外は、実施例2と同様の工程により、比較例1のトナーを得た。
(比較例2)
(FCA−2508Nの溶解液A)の代わりに、(ボントロンS−34の分散液A)10質量部を使用した以外は、実施例2と同様の工程により、比較例2のトナーを得た。
[評価方法]
《重量平均粒径(D4)及び個数平均粒径(Dn)》
本発明のトナーの重量平均粒径(D4)及び個数平均粒径(Dn)は、粒度測定器(マルチサイザーIII;ベックマンコールター社製)を用いて、アパーチャー径100μmで測定した。また、解析ソフトは、Beckman Coulter Mutlisizer 3 Version3.51にて解析を行った。
具体的には、ガラス製100mlビーカーに10質量%界面活性剤(アルキルベンゼンスルフォン酸塩ネオゲンSC−A;第一工業製薬株式会社製)を0.5mlと、トナー0.5gを添加した。これを、ミクロスパーテルで攪拌し、次いでイオン交換水80mlを添加した。得られた分散液を、超音波分散器(W−113MK−II本多電子株式会社製)で10分間分散処理した。得られた分散液を、マルチサイザーIIIにより測定した。測定は、濃度が8±2%となるように、アイソトンIII(ベックマンコールター製)によりサンプル分散液を調整して行った。チャンネルとしては、2.00〜2.52μm未満;2.52〜3.17μm未満;3.17〜4.00μm未満;4.00〜5.04μm未満;5.04〜6.35μm未満;6.35〜8.00μm未満;8.00〜10.08μm未満;10.08〜12.70μm未満;12.70〜16.00μm未満;16.00〜20.20μm未満;20.20〜25.40μm未満;25.40〜32.00μm未満;32.00〜40.30μm未満の13チャンネルを使用し、粒径2.00μm以上乃至40.30μm未満の粒子を対象とした。
《円形度》
フロー式粒子像分析装置FPIA−3000(東亜医用電子株式会社製)を用いて、平均円形度を測定した。具体的には、予め不純固形物を除去した水100〜150ml中に分散剤として界面活性剤を0.1〜0.5ml加え、更に、測定試料を0.1〜0.5g程度加えた。好ましい界面活性剤としては、アルキルベンゼンスフォン酸塩が挙げられる。得られた懸濁液を、超音波分散器により約1〜3分間分散処理を行い、分散液濃度を3000〜1万個/μlとし、FPIA−3000により測定した。
《帯電量》
〈常温常湿での帯電量〉
まず、シリコーン樹脂(オルガノストレートシリコ−ン)100質量部、トルエン100質量部、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン5質量部、カーボンブラック10質量部の混合物を穂もミキサーで20分分散し、コート層形成液を調製した。粒径40μmの球状マグネタイト1000部の表面に、流動床型コーティング装置を用いて、コート層形成液をコーティングすることにより、磁性キャリアを得た。
各実施例及び比較例のトナー母体粒子5質量部と磁性キャリア95質量部とを、20℃/50%RHの環境下に24時間暴露した。その後、前記環境下で、トナー及びキャリアをボールミル内に投入し、30秒間、10分間又は30分間ボールミルで混合し、二成分現像剤を得た。得られた各現像剤は、後述するブローオフ法により帯電量を測定した。なお、30秒撹拌した現像剤の帯電量が、10分撹拌した現像剤の帯電量に近いことは、一般に帯電の立ち上がり性が良いと言える。また、30分撹拌した現像剤の帯電量が、10分撹拌した現像剤の帯電量に近いことは、一般に帯電の安定性が良いと言える。
〈高温高湿での帯電量〉
また、トナー母体粒子5質量部と磁性キャリア95質量部とを、30℃/90%RHの環境下に24時間暴露した。その後、前記環境下で、トナー及びキャリアをボールミル内に投入し、10分間ボールミルで混合し、二成分現像剤を得た。得られた現像剤は、後述するブローオフ法により帯電量を測定した。
〈低温低湿での帯電量〉
さらに、トナー母体粒子5質量部と磁性キャリア95質量部とを10℃/15%RHの環境下に24時間暴露した。その後、その環境下でトナー及びキャリアをボールミル内に投入し、10分間ボールミルで混合し、二成分現像剤を得た。得られた現像剤は、後述するブローオフ法により帯電量を測定した。
なお、一般的に、高温高湿品の帯電量と低温低湿の帯電量との差が小さいことは、耐環境安定性に優れていると言える。
〈ブローオフ法〉
現像剤6gを、両底面に目開き20μmのステンレス製メッシュを設けた金属製円柱容器に入れた。窒素ガスを吹き付けてトナーを除去し、残ったキャリアの電荷qを計測し、除去されたトナーの質量mで除したq/mとして帯電量を評価した。
上記までの評価方法の結果を表2に示す。
実施例1〜4の現像剤は、立上り性、安定性及び環境安定性に優れる。
《画像安定性》
実施例及び比較例のトナー母体粒子5質量部を、前記磁性キャリア95質量部とターブラーシェーカーミキサー(シンマルエンタープライゼス社製)で混合し、現像剤を得た。各実施例及び比較例で得られた現像剤を、リコー社製の複写機(Imagio MP C5000)のブラックステーション部分に入れた。リコー社製タイプ6000ペーパーを用いて、30℃/90%RH及び10℃/15%RHの環境にて、画像の面積率が2%、10%、50%の画像を連続して各100枚出力した。
評価基準は、いずれの環境及び画像面積率においても100枚目の画像が、目視において初期画像と同等の良好な画像であった場合は○、いずれかの環境及び画像面積率で100枚目の画像が初期画像より明らかな変化を生じた場合は×とした。
《クリーニング性》
実施例及び比較例の現像剤を、リコー社製の複写機(Imagio MP C5000)のブラックステーション部分に入れた。画像面積率30%の画像を現像し、転写紙に転写後、感光体に残存する転写残のトナーをクリーニングブレードでクリーニングしている最中に複写機を停止させた。クリーニング工程を通過した感光体上の転写残トナーをスコッチテープ(住友スリーエム株式会社製)で白紙に移し、それをマクベス反射濃度計RD514型で10箇所測定した。各箇所の平均値と、前記テープを白紙に貼った場合の測定結果との差を求め、下記基準により評価した。なお、クリーニングブレードは2万枚クリーニング後のものを用いた。
差が0.01以下: ◎
差が0.01より大きく0.015以下: ○
差が0.015を超える: ×
画像安定性及びクリーニング性の評価結果を表3に示す。
実施例1〜4で得られた現像剤を使用した場合、高温高湿及び低温低湿いずれの環境においても、画像安定性及びクリーニング性に優れていた。一方、比較例1〜2で得られた現像剤を使用した場合、高温高湿の環境下において、1枚目の画像と比較して100枚目の画像は、白画像の部分が薄い灰色を示し、地かぶりが生じていた。また、低温低湿の環境下において、1枚目〜100枚目間の画像で変化は見られなかったが、黒画像の部分が薄くなっていた。
1 トナー製造装置
2 液滴吐出手段
9 弾性板
10 液滴形成ユニット
11 液柱共鳴液滴吐出手段
12 気流通路
13 原料収容器
14 トナー組成液
15 液循環ポンプ
16 液供給管
17 液共通供給路
18 液柱共鳴液室
19 吐出孔
20 振動発生手段
21 液滴
特許第3786034号公報 特許第3786035号公報 特開昭57−201248号公報

Claims (4)

  1. フェノール類とアルデヒド類との重縮合反応により得られる重縮合体を含有する帯電制御剤及び結着樹脂を含むトナー組成物を、有機溶剤に溶解乃至分散させてトナー組成液を調製する工程と、
    1つ以上の吐出孔が形成された液柱共鳴液室内で、前記トナー組成液に振動を付与することで液柱共鳴による定在波を形成させ、前記定在波の腹となる領域に配置された前記吐出孔から前記トナー組成液を吐出して液滴を生成する工程と、
    前記液滴中の前記有機溶剤を乾燥させて粒子を固化させる工程と、
    を含む、トナーの製造方法。
  2. 吐出孔が2つ以上である、請求項1に記載のトナーの製造方法。
  3. 前記帯電制御剤の含有量は、前記トナー組成物に対して0.1〜10質量%である、トナー請求項1又は2に記載のトナーの製造方法。
  4. 前記結着樹脂は、ポリエステル樹脂である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のトナーの製造方法。
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