以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態における建物の概要を示す斜視図である。
建物10は、複数の建物ユニットからなる2階建てユニット式建物として構築されており、特にユニット離隔配置工法を用いたものとなっている。建物10は、基礎11上に固定された建物本体12と、建物本体12の上方に設置された屋根13とを有して構成されている。建物本体12は、建物一側面(例えば正面)から見て左右に離し置きされた2つの建物ユニット群からなるユニット構造部X1,X2と、そのユニット構造部X1,X2の間の中間スペースに設けられた中間構造部X3とを有しており、これらの構造部X1〜X3により居室や廊下等の建物内空間が設けられている。本実施形態では、各ユニット構造部X1,X2の建物ユニット群がそれぞれ4体ずつの建物ユニット20で構築されている。また、中間構造部X3には建物ユニット20が設置されておらず、中間構造部X3は、ユニット構造部X1,X2の建物ユニット20を利用して、具体的には中間構造部X3を挟んで対向する建物ユニット20に各種建材を架け渡して構築されている。図示の構成では、建物ユニット20がその短手方向(妻方向)に1ユニット分離間して離し置きされており、これにより、中間構造部X3が建物ユニット20の短辺側(妻面側)の幅とほぼ同じ幅で形成されている。
本実施形態の建物10では、計8体の建物ユニット20を用いて建物本体12が構築されているが、実質的には10体の建物ユニット20により構築された場合と同等の大きさの建物内空間が確保されるものとなっている。つまり、一般的なユニット式建物の場合、各建物ユニットが隣接し合う状態で互いに結合され、居室や廊下等の建物内空間は概ね全て建物ユニット内に設けられるが、本実施形態の建物10では、建物ユニットそのものにより形成される建物内空間以外に、複数の建物ユニットで挟まれる部分にも建物内空間が形成されている。なお、ユニット構造部X1,X2のユニット個数は任意である。
屋根13は寄せ棟式の屋根であり、各構造部X1〜X3に跨り、かつ建物本体12の全体を覆うようにして設置されている。ただし、屋根13は切り妻式の屋根や平屋根であってもよい。
なお、以下の説明では便宜上、一階部分の建物ユニット20を「下階ユニット20A」、二階部分の建物ユニット20を「上階ユニット20B」とも称する。
建物ユニット20の構成を図2を用いて説明する。建物ユニット20は、その四隅に配設される4本の柱21と、各柱21の上端部及び下端部をそれぞれ連結する各4本の天井大梁22及び床大梁23とを備える。そして、それら柱21、天井大梁22及び床大梁23により直方体状の骨格(フレーム)が形成されている。柱21は四角筒状の角形鋼よりなる。また、天井大梁22及び床大梁23は断面コ字状の溝形鋼よりなり、その開口部が向き合うようにして、すなわち溝部をユニット内側に向けるようにして設置されている。
より詳しくは、柱21は、柱本体21aと、その上下に連結された天井仕口21b及び床仕口21cとからなり、天井仕口21bの二方の仕口面に天井大梁22がそれぞれ連結され、床仕口21cの二方の仕口面に床大梁23がそれぞれ連結されている。柱本体21aと各仕口21b,21cとは、同じ断面構造を有する角形鋼が溶接により連結されて構成されている。
建物ユニット20の長辺部(桁部)の相対する天井大梁22の間には、所定間隔で複数の天井小梁25が架け渡されて固定されている。同じく建物ユニット20の長辺部(桁部)の相対する床大梁23の間には、所定間隔で複数の床小梁26が架け渡されて固定されている。天井小梁25及び床小梁26は、それぞれ同一の間隔でかつ短辺側(妻側)の天井大梁22及び床大梁23に水平に設けられている。例えば、天井小梁25はリップ溝形鋼よりなり、床小梁26は角形鋼よりなる。天井小梁25によって天井面材27が支持され、床小梁26によって床面材28が支持されている。
次に、中間構造部X3の構成を図3に基づいて説明する。なお、図3は建物本体の躯体をユニット妻面側から見た正面図である。
図3に示すように、中間構造部X3には、その天井部を構築するための中間天井梁ユニット31と、床部を構築するための床ユニット32とが設けられている。
中間天井梁ユニット31は、中間構造部X3を挟んで対向する2つの建物ユニット20の間に架け渡して設けられており、一階天井部と二階天井部とには同様の構成の中間天井梁ユニット31が設けられている。中間天井梁ユニット31は、離し置きされた両建物ユニット20の天井仕口21bにそれぞれ連結された、支持部材としての片持ち状(キャンチ構造)の支持梁33と、一対の支持梁33の間に設けられる中間天井梁34とを有して構成されている。支持梁33と中間天井梁34とはそれぞれ建物ユニット20の天井大梁22と同じ溝形鋼により構成されており、これら各梁33,34は互いに図示しない連結プレートを介して連結されている。また、支持梁33において天井仕口21b側の端部には、端面プレート43(図5及び図8参照)が溶接により固定されており、その端面プレート43が天井仕口21bに対してボルトにより固定されている。なおここで、支持梁33が天井構造体に相当する。また、以下の説明では便宜上、一階天井部の支持梁33を「下階支持梁33A」、二階天井部の支持梁33を「上階支持梁33B」とも称する。
床ユニット32は、矩形形状に形成されており、一階床部と二階床部とには同様の構成の床ユニット32が設けられている。一階床部分では、基礎11の天端上に載置された状態で床ユニット32が設置されている。また、二階床部分では、中間天井梁ユニット31の上に載置された状態で床ユニット32が設置されている。なお、以下の説明では便宜上、一階床部の床ユニット32を「下階床ユニット32A」、二階床部の床ユニット32を「上階床ユニット32B」とも称する。
続いて、床ユニット32の構成を図4に基づいて説明する。なお、図4は床ユニット32の構成を示す斜視図である。
図4に示すように、床ユニット32は、当該床ユニット32の土台を構築する床フレーム35と、その上面に設けられる床下地面材36とを備える。床フレーム35は、基本的に上述した建物ユニット20の床部と同様の構成を有するものであり、矩形フレーム状に形成されている。床フレーム35は、その四隅に配設される4本の柱レス仕口37と、各柱レス仕口37をそれぞれ連結する4本の床フレーム大梁38とを備える。そして、それら柱レス仕口37と床フレーム大梁38とにより矩形状のフレーム本体が形成され、その長辺部(桁部)の相対する床フレーム大梁38の間に所定間隔で複数の床フレーム小梁39が架け渡されて固定されている。床フレーム大梁38及び床フレーム小梁39は建物ユニット20のそれと同じ構成を有する。すなわち、床フレーム大梁38は床大梁23と同じ溝形鋼よりなり、その開口部が向き合うようにして設置されている。床フレーム小梁39は床小梁26と同じ角形鋼よりなり、その床小梁26と同じピッチで設置されている。
床フレーム35の構成を建物ユニット20の床部の構成と対比すると、その違いは、床仕口21cの代わりに柱レス仕口37が設けられる点である。柱レス仕口37は、2つの床フレーム大梁38を接合するための2つの仕口板部37aと、その上端部及び下端部にそれぞれ対向して設けられた上板部37b及び下板部37cとを有する。2つの仕口板部37aは端部同士が直角に接合され、その頂部をユニット内側に向けて配置されている。また、上板部37bには、後述する柱状治具50を柱レス仕口37に連結する際に用いられる連結孔部41が設けられている。この連結孔部41の内周面にはめねじ(図示略)が形成されており、後述する連結ボルト73を螺合させることが可能となっている。
床下地面材36は、例えばパーティクルボードよりなり、床フレーム35と略同じ大きさ(縦横寸法)で形成されている。床下地面材36は、床フレーム35上に載置された状態で同フレーム35にビス等で固定されている。
図3の説明に戻り、床ユニット32は、上述したように中間構造部X3において上下階にそれぞれ設置されており、かかる設置状態において下階床ユニット32Aの各柱レス仕口37がそれぞれ各下階支持梁33Aの下方に配置され、上階床ユニット32Bの各柱レス仕口37がそれぞれ各上階支持梁33Bの下方に配置されている。また、上階床ユニット32Bは、各柱レス仕口37がそれぞれ下階支持梁33A上に載置された状態で設置されている。そして、かかる設置状態において、柱レス仕口37(詳しくは下板部37c)の下面が下階支持梁33Aに対して溶接により固定されており、これにより上階床ユニット32Bが下階支持梁33Aを介して下階ユニット20Aの天井仕口21bに連結されている。
ところで、本実施形態では、建物10において中間構造部X3を構成する各床ユニット32A,32B及び各支持梁33A,33Bを製造工場において柱状の施工治具(以下、柱状治具という)を用い上下に連結してユニット化することとしている(以下、このユニット化したものを仮構築ユニットという。)。この柱状治具は伸縮可能に構成されており、柱状治具を縮めることにより、下階床ユニット23Aに対する上階床ユニット32B及び支持梁33A,33Bの高さ位置を、ひいては仮構築ユニットの上下高さを低くすることが可能となっている。そして、かかる高さ状態で仮構築ユニットが施工現場へ搬送されるようになっている。施工現場では、仮構築ユニットが離し置きされた建物ユニット20(ユニット構造部X1,X2)の間に設置され、その後柱状治具が伸長されることにより、上階床ユニット32B及び支持梁33A,33Bが所定の設置高さに移動(上昇)され同高さ位置において建物ユニット20に連結されるようになっている。以下においては、かかる柱状治具と、当該柱状治具を用いて構築される仮構築ユニットとについて説明する。まず、柱状治具の説明を行う前に、仮構築ユニットの構成について図5を用いて間単に説明する。なお、図5は、仮構築ユニットの構成を示す斜視図である。
図5に示すように、仮構築ユニット40は、中間構造部X3において一階部分に設けられる下階床ユニット32A及び下階支持梁33Aと、二階部分に設けられる上階床ユニット32B及び上階支持梁33Bとを備え、下階床ユニット32Aと下階支持梁33Aとが柱状治具50(以下、下階柱状治具50Aという)により上下に連結されるとともに、上階床ユニット32Bと上階支持梁33Bとが同じく柱状治具50(以下、上階柱状治具50Bという)により上下に連結されることで構成されている。下階柱状治具50Aは、下階床ユニット32Aの四隅にそれぞれ配置されており、その下端部が同ユニット32Aの床フレーム35の柱レス仕口37に連結され、その上端部が下階支持梁33Aに連結されている。一方、上階柱状治具50Bは、上階床ユニット32Bの四隅にそれぞれ配置されており、その下端部が同ユニット32Bの床フレーム35の柱レス仕口37に連結され、その上端部が上階支持梁33Bに連結されている。なお、上述したように、上階床ユニット32Bの各柱レス仕口37(詳しくは下板部37c)の下面にはそれぞれ下階支持梁33Aが溶接により固定されている。この点からすると、下階柱状治具50Aは、下階床ユニット32Aの柱レス仕口37と上階床ユニット32Bの柱レス仕口37とを下階支持梁33Aを介して上下に連結していると言うこともできる。
仮構築ユニット40は、さらにその上端部に吊り治具60を備えている。吊り治具60は、仮構築ユニット40をクレーン等の吊り下げ装置により吊り下げる際に吊り下げ支持される部材である。吊り治具60は、各上階支持梁33B上に跨って設けられ、それら各支持梁33Bの上面にそれぞれ連結されている。
吊り治具60は、床ユニット32(床フレーム35)と同じ大きさからなる矩形フレーム状をなしており、その四隅に配設される4本の治具仕口61と、各治具仕口61をそれぞれ連結する4本の治具大梁62とを備える。治具仕口61及び治具大梁62はそれぞれ床フレーム35の柱レス仕口37及び床フレーム大梁38と同様の構成を有している。すなわち、治具仕口61は、2つの仕口板部61aと、その上端部及び下端部にそれぞれ対向して設けられた上板部61b及び下板部61cとを有する。治具大梁62は、床フレーム大梁38と同じ溝形鋼よりなり、その開口部が向き合うようにして設置されている。なお、治具仕口61及び治具大梁62によりフレーム部が構成されている。
吊り治具60は、各治具仕口61の下板部61cがそれぞれ各上階支持梁33B(上側フランジ部)上に載置されることにより設けられ、各下板部61cがそれぞれ上階支持梁33Bの上側フランジ部に連結ボルト75により仮固定されている(図8参照)。具体的には、下板部61cには連結孔部64が設けられており、連結ボルト75がこの連結孔部64に挿通された状態で上階支持梁33Bの固定孔33bに締結されている。
また、各治具仕口61の上板部61bには、クレーンF側から延びるワイヤW(図10参照)の端部に設けられる支持部によって支持される被支持部が設けられている。本実施形態では、支持部が吊りボルト(図示略)により構成され、被支持部が同吊りボルトが締結される吊り孔部77により構成されている。この場合、クレーンF側の吊りボルトが吊り孔部77に締結されることにより、吊り治具60ひいては仮構築ユニット40がクレーンにより吊り下げ可能となる。
なお、支持部及び被支持部の構成は必ずしもこれに限定することはなく、例えば支持部をフック等の引っ掛け部により構成するとともに、被支持部を引っ掛け部が引っ掛けられる被引っ掛け部(例えば、吊り治具60の上面に円環状の部材を固定することで被引っ掛け部を構成する)により構成する等、その他の構成としてもよい。
次に、柱状治具50の構成について図6に基づいて説明する。なお、図6は、柱状治具50の構成を示す図であり、(a)が同構成を示す正面図、(b)が縦断面図である。また、図6(b)は、(a)のA−A線断面図である。
図6(a)及び(b)に示すように、柱状治具50は、第1柱状部材としての下柱51と、第2柱状部材としての上柱52とを備え、それら各柱51,52が互いに連結されることにより構成されている。下柱51は、上下方向に延びる下柱本体53と、下柱本体53の下端部に設けられたエンドプレート54とを備える。下柱本体53は、L字状の断面を有して形成されており、例えば鋼板よりなる。具体的には、下柱本体53は2つの側面部55を有しており、それら各側面部55の端部同士が直角をなすことで形成されている。
エンドプレート54は、矩形平板状の金属板からなり、下柱本体53の下端部に溶接により固定されている。エンドプレート54には、同プレート54を床ユニット32の床フレーム35の柱レス仕口37(詳細にはその上板部37b)に連結する際に用いられる第1連結端部としての連結孔部68が形成されている。
上柱52は、上下方向に延びる上柱本体56と、上柱本体56の上端部に設けられたエンドプレート57とを備える。上柱本体56は、下柱本体53と同様、L字状の断面を有して形成されており、例えば鋼板よりなる。具体的には、上柱本体56は、端部同士が直角に接合された2つの側面部58を有している。上柱本体56は、その上下長さが下柱本体53の上下長さと略同じとなっており、その断面形状が下柱本体53の断面形状と略同じとなっている。
エンドプレート57は、矩形平板状の金属板からなり、上柱本体56の上端部に溶接により固定されている。エンドプレート57には、同プレート57を支持梁33に連結する際に用いられる第2連結端部としての連結孔部69が形成されている。
下柱51と上柱52とは、互いのエンドプレート54,57を反対側に向け、かつ、互いの柱本体53,56について少なくともエンドプレート54,57とは反対側同士(すなわち下柱本体53の上端側及び上柱本体56の下端側)を重ね合わせた状態で結合されている。具体的には、下柱本体53と上柱本体56とは互いの頂部53a,56a同士を位置合わせした状態で重ね合わせられており、したがって下柱本体53の2つの側面部55がそれぞれ上柱本体56の各側面部58と重ね合わせられている。また、本実施形態では、下柱本体53が外側、上柱本体56が内側として各柱本体53,56が重なり合っている。なお、下柱51及び上柱52により治具本体が構成されている。
下柱51と上柱52とは、互いの柱本体53,56の少なくとも一部を重ね合わせた状態で長手方向に相対移動が可能となっている。そして、本柱状治具50では、各柱51,52のかかる相対移動によってその上下長さ(全長)を調整することが可能となっている。すなわち、本柱状治具50は、各柱51,52(詳しくは各柱本体53,56)同士が重なり合う重なり代が調整されることで伸縮可能となっている。以下、柱状治具50の長さ調整(伸縮)機構について説明する。
下柱51の下柱本体53における2つの側面部55のうち一方の側面部55には固定孔部67が設けられている。固定孔部67は、当該側面部55において上端側に設けられており、具体的には当該側面部55の上端側において上下に所定の間隔で複数(図6では3つ)設けられている。各固定孔部67の内周面にはめねじ(図示略)が形成されており、各固定孔部67に対してボルト等を螺合させることが可能となっている。
上柱52の上柱本体56における2つの側面部58のうち、下柱本体53において固定孔部67が形成された側面部55と重なり合う側面部58には固定孔部65,66が設けられている。各固定孔部65,66のうち第1固定孔部65は、当該側面部58において上端側に設けられ、第2固定孔部66は下端側に設けられている。具体的には、各固定孔部65,66はそれぞれ当該側面部58において上下に所定の間隔で複数ずつ(図6では3つずつ)設けられており、詳しくは下柱51(下柱本体53)の固定孔部67と同じ間隔(ピッチ)で設けられている。
なお、各固定孔部65〜67の個数は必ずしも3つとする必要はなく、2つ又は4つ以上とする等任意でよい。また、各固定孔部65〜67をそれぞれ1つだけ設けるようにしてもよい。
柱状治具50は、当該治具50を縮めた状態である治具収縮状態と、当該治具50を伸長させた状態である治具伸長状態との各長さ状態においてその長さを保持することが可能となっている。図7は柱状治具50のこれら各長さ状態を示す正面図であり、(a)が柱状治具50の治具収縮状態を示し、(b)が治具伸長状態を示している。以下、これら各長さ状態における柱状治具50の構成を説明する。
図7(a)に示すように、柱状治具50の治具収縮状態では、上柱52(上柱本体56)の第1固定孔部65と下柱51(下柱本体53)の固定孔部67とが(同図では3つの第1固定孔部65と3つの固定孔部67とが)位置合わせされた状態とされており、その状態で固定ボルト71が上柱52の第1固定孔部65に挿通され下柱51の固定孔部67に締結されている。これにより、上柱52が下柱51に仮固定され、柱状治具50が治具収縮状態に保持されている。具体的には、複数の第1固定孔部65(及び固定孔部67)のうち、2つの第1固定孔部65(より詳しくは上側及び下側の第1固定孔部65)を利用して上柱52が下柱51にボルト71で仮固定されており、これにより各柱51,52同士がある程度強固な状態で連結されている。なお、固定ボルト71による下柱51に対する上柱52の仮固定は複数の第1固定孔部65のうち1つ又はすべて(本実施形態では3つ)の固定孔部65を利用して行ってもよい。
柱状治具50の治具収縮状態では、上柱52(詳しくは上柱本体56)の下端部が下柱51のエンドプレート54の上面に当接されており、各柱本体53,56がその長さ(上下)方向全域において互いに重なり合った状態となっている。そのため、治具収縮状態における柱状治具50の上下長さ(全長)H1は各柱51,52の上下長さと略同じとなっており、具体的には、同状態にある柱状治具50を用いて仮構築ユニット40を形成した場合に当該ユニット40の上下高さが搬送制限を超えない長さに設定されている。
一方、図7(b)に示すように、柱状治具50の治具伸長状態では、上柱52の第2固定孔部66と下柱51の固定孔部67とが(同図では3つの第2固定孔部66と3つの固定孔部67とそれぞれ)位置合わせされた状態とされており、その状態で固定ボルト71が上柱52の第2固定孔部66に挿通され下柱51の固定孔部67に締結されている。これにより、上柱52が下柱51に仮固定され、柱状治具50が治具伸長状態に保持されている。具体的には、複数の第2固定孔部66(及び固定孔部67)のうち、2つの第2固定孔部66(詳しくは上側及び下側の第2固定孔部66)を利用して上柱52が下柱51にボルト71で仮固定されており、これにより各柱51,52同士がある程度強固な状態で連結されている。なお、固定ボルト71による下柱51に対する上柱52の仮固定は複数の第2固定孔部66のうち1つ又はすべて(本実施形態では3つ)の第2固定孔部66を利用して行ってもよい。
柱状治具50の治具伸長状態では、下柱51の上端側と上柱52の下端側とが互いに重なり合う状態となっている。この場合、柱状治具50の上下長さH2は各柱51,52の上下長さを合わせた長さよりも若干短い長さになっており、治具収縮状態における柱状治具50の上下長さH1の2倍よりも若干短い長さとなっている。そして、この上下長さH2は下階床ユニット32A(又は上階床ユニット32B)の柱レス仕口37と下階支持梁33A(又は上階支持梁33B)との上下間距離(内寸)と略同じ長さに設定されている。
次に、仮構築ユニット40において柱状治具50が床ユニット32の柱レス仕口37及び支持梁33に連結されている連結部分の構成を図8に基づいて説明する。図8は、柱状治具50が床ユニット32の柱レス仕口37及び支持梁33と連結されている連結部の構成を示す正面図である。
図8に示すように、仮構築ユニット40において、下階柱状治具50A及び上階柱状治具50Bはそれぞれ上述したように床ユニット32A,32Bの床フレーム35の柱レス仕口37と支持梁33A,33Bとの間に配設され、その配設状態で下柱51の下端部が柱レス仕口37に連結され、上柱52の上端部が支持梁33A,33Bに連結されている。具体的には、下柱51のエンドプレート54が柱レス仕口37の上板部37bに当接された状態で当該上板部37bに連結ボルト73により固定されており、上柱52のエンドプレート57が支持梁33A,33B(詳しくはその下側フランジ部)の下面に当接された状態で当該支持梁33A,33Bに連結ボルト74により固定されている。なお、連結ボルト73は、エンドプレート54の連結孔部68に挿通された状態で上板部37bの連結孔部41に締結されており、連結ボルト74は、エンドプレート57の連結孔部69に挿通された状態で支持梁33の下側フランジ部に形成された固定孔33aに締結されている。このようにして、本仮構築ユニット40では、柱状治具50A,50Bにより床ユニット32A,32Bと支持梁33A,33Bとが上下に連結されている。
図9は、仮構築ユニット40の四隅に配設された各柱状治具50の設置向きを概略的に示す平面図である。本図では、便宜上、柱状治具50について各柱51,52の柱本体53,56のみを図示している(換言するとエンドプレート54,57の図示を省略している)。また、本図では、参考として床ユニット32の外形線を一点鎖線で示している。
図9に示すように、4本の各柱状治具50はそれぞれ各柱51,52の柱本体53,56の頂部53a,56aを仮構築ユニット40の内側に向けた状態で設けられている。この場合、各柱状治具50における各々の柱本体53,56では、2つの側面部55,58のうち一方の側面部55,58(以下、第1側面部55a,58aという)が、頂部53a,56aとは反対側の端部を床ユニット32の長手方向においてユニット外側に向けて配置され、他方の側面部55,58(以下、第2側面部55b,58bという)が、頂部53a,56aとは反対側の端部を床ユニット32の短手方向においてユニット外側に向けて配置されている。
かかる柱状治具50の配置状態では、各々の柱状治具50において各柱本体53,56の第1側面部55a,58a同士が床ユニット32の短手方向(以下、場合によってユニット短手方向という)に重なり合っており、詳しくは下柱本体53の第1側面部55aをユニット内側、上柱本体56の第1側面部58aをユニット外側として重なり合っている。一方、各柱本体53,56の第2側面部55b,58b同士は床ユニット32の長手方向(以下、場合によってユニット長手方向という)に重なり合っており、詳しくは下柱本体53の第2側面部55bをユニット内側、上柱本体56の第2側面部58bをユニット外側として重なり合っている。
上記の構成では、床ユニット32の長手方向に並ぶ2つの柱状治具50(換言すると長辺側の床フレーム大梁38の両端部に設けられた各柱状治具50)において各々の上柱52がそれぞれユニット長手方向におけるユニット内側への移動が規制されており、換言すると各々の上柱52が同方向において互いに反対となる側への移動が規制されている。また、床ユニット32の短手方向に並ぶ2つの柱状治具50(換言すると短辺側の床フレーム大梁38の両端部に設けられた各柱状治具50)において各々の上柱52はそれぞれユニット短手方向におけるユニット内側への移動が規制されており、換言すると同方向において互いに反対となる側への移動が規制されている。
そして、床ユニット32の四隅に配された各柱状治具50の各々の上柱52は、上述したように、上階床ユニット32B又は吊り治具60を介して一体化されているため、一体化された各上柱52はユニット短手方向及びユニット長手方向のいずれの方向においてもその両側への移動が規制されている。すなわち、各上柱52は水平方向への移動が規制された状態にある。したがって、各柱状治具50について上柱52を下柱51に対し上方に移動させ(すなわち同柱状治具50を治具伸長状態とすることで)、上階床ユニット32B(又は上階支持梁33B)を上方に移動させる際に、上柱52が水平方向(柱状治具50と直交する方向)に位置ずれするのを抑制でき、ひいては上階床ユニット32B(又は上階支持梁33B)が水平方向に位置ずれするのを抑制できる。
次に、本実施形態における建物10の製造手順及び施工手順について説明する。ここでは、中間構造部X3の製造手順及び施工手順を中心に説明する。まず、ユニット製造工場での製造手順について説明する。
製造工場では、柱状治具50を用いて仮構築ユニット40を仮構築する。この仮構築に際しては、予め柱状治具50を治具収縮状態としておく。詳しくは、上柱52を下柱51に固定ボルト71で仮固定し柱状治具50を治具収縮状態に保持しておく。これにより、仮構築ユニット40が道路交通法上の搬送制限を超えない高さで仮構築される。仮構築ユニット40を仮構築後、同ユニット40の内部に施工の際に用いる各種建材(例えば中間天井梁34等)を積載する。その後、同ユニット40を施工現場に搬送する。
次に、施工現場での施工作業について図10に基づいて説明する。図10は、建物10における中間構造部X3の施工手順を説明するための説明図である。
施工作業の際には、まず基礎11上に各下階ユニット20Aを設置するとともに、それら各下階ユニット20Aの上に上階ユニット20Bを設置する。これにより、各ユニット構造部X1,X2が構築される。
次に、図10(a)に示すように、離し置きされた各ユニット構造部X1,X2(建物ユニット20)の間に仮構築ユニット40を設置する。この設置作業では、まず仮構築ユニット40の吊り治具60の各吊り孔部77にクレーンFのワイヤW端部に設けられた吊りボルト(図示略)を締結し、その後、クレーンFにより仮構築ユニット40を吊り上げて同ユニット40を各建物ユニット20間に設置する。この場合、仮構築ユニット40は基礎11上に設置され、下階床ユニット32Aが基礎11に対しアンカーボルトにより固定される。
次に、図10(b)に示すように、各下階柱状治具50Aを伸長して治具伸長状態とすることにより、上階床ユニット32Bを所定の設置高さに、すなわち上階ユニット20Bの床部と同じ高さ位置に移動(上昇)させる。この移動作業では、まず各下階柱状治具50Aについてそれぞれ固定ボルト71を取り外し、下柱51に対する上柱52の仮固定状態を解除する。その後、クレーンFにより吊り治具60を上方に吊り上げる。これにより、各下階柱状治具50Aにおいて上柱52が下柱51に対し上方にスライド移動し、そのスライドに伴って上階床ユニット32Bが上方に移動する。
上階床ユニット32Bを所定の設置高さまで移動した後、各下階柱状治具50Aについて上柱52を下柱51に固定ボルト71により仮固定する。これにより、各下階柱状治具50Aが治具伸長状態で保持され、その結果上階床ユニット32Bが各柱状治具50Aにより所定の高さ位置で支持される。この場合、クレーンFにより吊り下げ支持に頼ることなく、上階床ユニット32Bを所定の高さ位置において安定した状態で支持することができる。そして、かかる支持状態で、上階床ユニット32Bの下面に固定されている各下階支持梁33A(詳細にはその端面プレート43)を下階ユニット20Aの天井仕口21bにそれぞれボルトで固定する。これにより、上階床ユニット32Bが各下階ユニット20Aにそれぞれ連結され同床ユニット32Bの設置が完了する。
次に、図10(c)に示すように、各下階柱状治具50Aをそれぞれ下階床ユニット32Aの柱レス仕口37と下階支持梁33Aとの間から取り外す作業を行う。この作業では、連結ボルト73(図8参照)を取り外すことにより下階柱状治具50Aの下柱51(詳しくはエンドプレート54)を柱レス仕口37から取り外すとともに、連結ボルト74(図8参照)を取り外すことにより上柱52(詳しくはエンドプレート57)を下階支持梁33Aから取り外す。
次に、図10(d)に示すように、各上階柱状治具50Bを伸長して治具伸長状態とすることにより、各上階支持梁33Bをそれぞれ所定の設置高さに、具体的には上階ユニット20Bの天井大梁22と同じ高さ位置に移動(上昇)させる。この移動作業では、まず各上階柱状治具50Bについてそれぞれ固定ボルト71を取り外し、下柱51に対する上柱52の仮固定状態を解除する。その後、クレーンFにより吊り治具60を上方に吊り上げる。これにより、各上階柱状治具50Bにおいて上柱52が下柱51に対し上方にスライド移動し、そのスライドに伴い各上階支持梁33Bが上方に移動する。また、この場合、各上階支持梁33Bは吊り治具60を介して一体化されているため、それぞれが同じ高さ位置を保ちながら上方へ移動する。これにより、各上階支持梁33Bをそれぞれ同じ高さ位置に配置することが可能となる。
各上階支持梁33Bを所定の設置高さまで移動した後、各上階柱状治具50Bについて上柱52を下柱51に固定ボルト71により仮固定する。これにより、各上階柱状治具50Bが治具伸長状態で保持され、その結果各上階支持梁33Bがそれぞれ上階柱状治具50Bにより支持される。そして、かかる支持状態において、各上階支持梁33Bをそれぞれ上階ユニット20Bの天井仕口21bにボルトにより固定する。これにより、上階支持梁33Bの設置が完了する。
次に、図10(e)に示すように、各上階柱状治具50Bをそれぞれ上階床ユニット32Bの柱レス仕口37と上階支持梁33Bとの間から取り外す。この作業では、連結ボルト73(図8参照)を取り外すことにより上階柱状治具50Bの下柱51(詳しくはエンドプレート54)を柱レス仕口37から取り外すととともに、連結ボルト74(図8参照)を取り外すことにより上柱52(詳しくはエンドプレート57)を上階支持梁33Bから取り外す。その後、各連結ボルト75(図8参照)を取り外すことにより、吊り治具60を各上階支持梁33Bから取り外す。
その後、離し置きされた各建物ユニット20の間に各種建材を架け渡すことで、中間構造部X3を構築する。例えば、各建物ユニット20の支持梁33間に中間天井梁34を架け渡し、その中間天井梁34に外壁パネルを取り付け架け渡す等の作業を行う。こうした一連の作業を行うことで、本建物10が構築される。
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
床ユニット32(下階床ユニット32A,上階床ユニット32B)に連結される第1連結端部(連結孔部68)を有する下柱51と、第2構造体(上階床ユニット32B、上階支持梁33B)に連結される第2連結端部(連結孔部69)を有する上柱52とを備え、これら各柱51,52を、各々の連結端部とは反対側の部分を少なくとも一部重ね合わせた状態で設けた。そして、これら各柱51,52の重なり代を調整することにより柱状治具50を伸縮可能に構成し、その伸長状態において、所定の高さ関係で設置された状態にある床ユニット32及び第2構造体を上下に連結できる長さを有して形成した。この場合、床ユニット32と第2構造体とを柱状治具50により上下に連結することで、床ユニット32と第2構造体とが一体化されてなる仮構築ユニット40を形成できる。そして、柱状治具50を縮めた状態で仮構築ユニット40を形成することで、床ユニット32に対する第2構造体の高さ位置を、中間構造部X3での設置状態における同高さ位置よりも低くした状態で、床ユニット32と第2構造体とを一体化できる。そのため、製造工場においてかかる高さ状態で仮構築ユニットを仮構築することで、床ユニット32と第2構造体とをユニット状態で一括に施工現場へ搬送できる。
施工現場では、仮構築ユニット40を離し置きされた各建物ユニット20間に設置することで、床ユニット32及び第2構造体をそれら各建物ユニット20間にまとめて配置できる。また、その後、各柱状治具50を伸長させることで、第2構造体を容易に所定の設置高さに移動(上昇)させることができる。これにより、床ユニット32及び第2構造体の設置に際して作業性を高めることができ、その結果、中間構造部X3を構築する上での施工作業性の改善を図ることができる。
仮構築ユニット40を、上階床ユニット32Bと、複数の上階支持梁33Bと、上階床ユニット32B及び上階支持梁33Bの間に設けられた複数の柱状治具50Bとを備えて構成し、柱状治具50Bにおいて第1連結端部を上階床ユニット32Bの柱レス仕口37に連結し、第2連結端部を上階支持梁33Bに連結した。そして、さらに、各上階支持梁33Bに連結される複数の連結部(連結孔部64)と、クレーンFにより吊下げ支持される被支持部(吊り孔部77)とを有する吊り治具60を備え、吊り治具60の各連結部を
それぞれ各上階支持梁33Bに連結した。この場合、各柱状治具50Bの第2連結端部にそれぞれ連結されている複数の上階支持梁33Bが吊り治具60により互いに連結されているため、仮構築ユニット40の施工現場への搬送時に、各上階支持梁33Bが揺れ動き荷台の壁に当たる等の不都合を抑制できる。
施工現場では、仮構築ユニット40を離し置きされた複数の建物ユニット20間に設置後、吊り治具60をクレーンFにより吊り上げることで、各柱状治具50Bがそれぞれ伸長され、それに伴い各上階支持梁33Bがそれぞれ所定の設置高さに移動(上昇)される。この場合、複数の上階支持梁33Bを一挙に所定の高さ位置に移動させることが可能となる。また、各上階支持梁33Bをそれぞれ同じ高さ位置に移動(上昇)できるため、各上階支持梁33Bを建物ユニット20に連結する際、各上階支持梁33Bの高さ位置を調整する等の面倒な作業を不要とできる。よって、この場合、複数の上階支持梁33Bの設置作業を容易とすることができる。
仮構築ユニット40を、床ユニット32において離し置きされた各建物ユニット20に沿って延びる一対の床フレーム大梁38にそれぞれ連結される柱状治具50を備えて構成し、当該一対の床フレーム大梁38に連結されている各柱状治具50を、中間スペースにおける離し置き方向の中央部に対し、下柱51が内側、上柱52が外側となるように重ねた。この場合、床ユニット32側に連結された下柱51に対する、第2構造体側に連結された上柱52の移動、詳しくは、ユニット離し置き方向における移動が規制されている。したがって、離し置きされた建物ユニット20間の狭小空間において、床ユニット32に対して第2構造体を移動させるに際し、第2構造体が建物ユニット20に衝突する等の不都合を抑制できる。
柱状治具50の治具伸長状態において、下柱51と上柱52とを固定ボルト71により連結可能とした。この場合、柱状治具50を伸長させて第2構造体を所定の設置高さまで移動させた後、その長さ状態で下柱51と上柱52とを固定ボルト71により連結(仮固定)できる。すなわち、柱状治具50をその長さ状態に保持できる。そのため、第2構造体を柱状治具50により所定の設置高さで支持することが可能となり、かかる支持状態で第2構造体を建物ユニット20に連結することができる。柱状治具50による第2構造体の支持状態では、クレーンによる第2構造体の支持状態よりも、第2構造体を安定した状態で支持できるため、第2構造体の連結作業について作業性を高めることができる。
下柱51(下柱本体53)及び上柱52(上柱本体56)をそれぞれL字状の断面を有して形成した。この場合、各柱51,52を互いに重ね合わせることができ、ひいては複数の柱状治具50の各柱51,52を互いに重ね合わせることができる。そのため、複数の柱状治具50をコンパクトに保管することができ、保管スペースの削減を図ることができる。特に、本柱状治具50は使い回しを前提としての使用が想定されるため、柱状治具50を保管する頻度が多くなると考えられ、その点を鑑みてもかかる構成は実用上好ましい構成であるといえる。
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
(1)上記実施形態では、建物10における設置高さがそれぞれ異なる下階床ユニット32A、上階床ユニット32B(下階支持梁33Aを含む)及び上階支持梁33Bを上下2段に配した柱状治具50A,50Bにより上下に連結することで、3段構成の仮構築ユニット40を形成したが、柱状治具50を上下に1段のみ又は3段以上配することで、2段又は4段以上の構成の仮構築ユニットを形成してもよい。
例えば、図11には、2段構成の仮構築ユニット80が示されている。仮構築ユニット80は、一階部分に設けられる下階床ユニット32A及び下階支持梁33Aと、二階部分に設けられる上階床ユニット32Bとを備え、下階床ユニット32Aの柱レス仕口37と下階支持梁33Aとが下階柱状治具50Aにより上下に連結されることで構成されている。換言すると、本仮構築ユニット80は、上下の各床ユニット32A,32Bの柱レス仕口37同士が下階柱状治具50Aにより下階支持梁33Aを介して上下に連結されることで構成されている。要するに、本仮構築ユニット80は、上記実施形態の仮構築ユニット40から上階支持梁33Bと上階柱状治具50Bとを取り除いた構成となっている。かかる構成においても、製造工場にて、治具収縮状態にある下階柱状治具50Aを用い仮構築ユニット80を仮構築することで、同ユニット80を施工現場へ好適に搬送することができる。そして、施工現場では、下階柱状治具50Aを治具伸長状態とすることで上階床ユニット32Bを所定の設置高さに好適に移動させることができ、その設置高さにおいて各下階支持梁33Aを下階ユニット20Aに連結することで上階床ユニット32Bを設置できる。
なお、本例の仮構築ユニット80は吊り治具60を有していないため、クレーンF側の吊りボルトを例えば上階床ユニット32Bの各柱レス仕口37(詳しくは上板部37b)の連結孔部41に締結することとなる。この場合、クレーンFにより直接上階床ユニット32Bが吊り上げられることになる。また、仮構築ユニット80に組み込まれなかった各上階支持梁33Bについては、施工の際に個別に所定の設置高さまで持ち運ばれ、上階ユニット20Bの天井仕口21Bに固定されることとなる。
(2)図12には、4段構成の仮構築ユニット90が示されている。仮構築ユニット90は、上下に隣接する3層(3階)分の床ユニット32X,32Y,32Z及び支持梁33X,33Y,33Zを備え、各層ごとの床ユニット32の柱レス仕口37及び支持梁33がそれぞれ柱状治具92により上下に連結されることで構成されている。また、仮構築ユニット90において最上階に配置された各支持梁33の上面には吊り治具60が固定されている。
図12の例では、この仮構築ユニット90を用いて中間構造部X3にスキップ床が構築されている。同図の建物では、ユニット構造部X1,X2が下階ユニット20Aと上階ユニット20Bとにより2層に形成されているのに対して、中間構造部X3がスキップ床を用いて3層に形成されている。詳細には、中間構造部X3において上下3段に配された各床ユニット32X,32Y,32Zのうち、中段及び上段の床ユニット32Y,32Zがそれぞれ下階ユニット20A,上階ユニット20Bの中間高さに配置されることでスキップ床が構築されている。この場合、中間構造部X3では各層(各階)における階高がユニット構造部X1,X2における階高と比べ低くなっており、そのため各柱状治具92の長さが上記実施形態の柱状治具50の長さよりも短くなっている。
仮構築ユニット90は、図12(a)に示すように、柱状治具92が治具収縮状態とされることにより、その上下高さが上記実施形態の仮構築ユニット40の治具収縮状態における上下高さと略同じとなる。したがって、製造工場において仮構築ユニット90を仮構築後、同ユニット90を施工現場へ搬送することができる。施工現場では、図12(b)に示すように、まず仮構築ユニット90が離し置きされたユニット構造部X1,X2の間に設置され、その後各柱状治具92が治具伸長状態とされることにより、中段及び上段の各床ユニット32Y,32Z、上段の各支持梁33がそれぞれ所定の高さ位置まで移動(上昇)される。そのため、各床ユニット32Y,32Z及び上段の各支持梁33Zの設置作業を容易とすることができる。
(3)上記実施形態では、2階建て建物10の中間構造部X3を構築するにあたり本柱状治具50を用いたが、図13に示すように、1階建ての建物の中間構造部を構築する際に本柱状治具50を用いてもよい。図13には、離し置きされた2つの建物ユニット20(一階建物ユニット)の間に仮構築ユニット95が設置される様子が示されている。この場合、仮構築ユニット95は、床ユニット32と各支持梁33とを備え、床ユニット32の各柱レス仕口37と各支持梁33とが柱状治具50により上下に連結されて構成されている。また、各支持梁33の上面には吊り治具60が連結されている。かかる構成では、治具伸長状態における仮構築ユニット95の上下高さが、同状態における上記実施形態の仮構築ユニット40の上下高さよりも小さいものとなり、例えば約半分程度となる。そのため、柱状治具50を治具伸長状態としても仮構築ユニット95を施工現場に搬送することができる。そうすることで、施工現場では仮構築ユニット95を離し置きした各建物ユニット20間に設置するだけで各支持梁33が所定の設置高さに配置される。そのため、柱状治具50を伸長させる作業が不要となり、支持梁33の設置作業をより一層容易とすることができる。
(4)例えば、上階床ユニット32Bが、その柱レス仕口37が上階ユニット20Bの床仕口21cに連結されることで設置される構成が考えられる。その場合、上階床ユニット32Bが下階支持梁33Aを介さずに直接上階ユニット20Bに連結されるため、下階支持梁33Aが不要となる。かかる場合、例えば、図14に示すように、柱状治具50Aの上端部を直接上階床ユニット32Bの柱レス仕口37に連結してもよい。この場合、柱状治具50Aの上柱52のエンドプレート57を柱レス仕口37の下板部37cに固定することとなる。
(5)上記実施形態では、床フレーム35と床下地面材36とを備えてなる床ユニット32を仮構築ユニット40に組み込む構成としたが、これを変更し、床ユニットを、これら両部材35,36の他に床下地面材36上に敷設される床仕上げ面材を備えて形成し、それを仮構築ユニット40に組み込むようにしてもよい。この場合、床仕上げ面材を施工現場で設置する手間が省ける。また、床フレーム35のみを仮構築ユニット40に組み込んで床下地面材36を施工現場で後付けするようにしてもよい。この場合、床フレーム35が床ユニットに相当するものとなる。
(6)上記実施形態では、施工時に中間天井梁34を各支持梁33間に架け渡して固定したが、中間天井梁34を製造時に各支持梁33間に固定してもよい。すなわち、中間天井梁34を仮構築ユニット40に予め組み込む構成としてもよい。また、さらに、中間天井梁ユニット31に取り付けられる天井下地材や天井面材等を予め仮構築ユニット40に組み込むようにしてもよい。その場合、施工時における天井部の施工作業を軽減できる。
(7)下柱51及び上柱52のうち少なくともいずれか一方を、互いに重なり合った状態で連結される複数の柱材を有して構成し、それら複数の柱材の重なり代を調整することで、該複数の柱材を有してなる柱について伸縮可能としてもよい。この場合、柱状治具は少なくとも3つ以上の柱部材により構成され、それら各柱部材を用いて柱状治具を伸縮させることが可能となる。そのため、柱状治具において治具収縮状態の上下長さに対する治具伸長状態の上下長さを拡張することができ、その結果例えば吹き抜け空間等の階高の高い空間に設置される床ユニットと支持梁とを上下に連結すること等が可能となる。
(8)各柱51,52(柱本体53,53)の断面形状は必ずしもL字形状とする必要はなく、コ字状や筒状(例えば四角筒状や円筒状)等その他の形状としてもよい。例えば、各柱51,52の断面形状を四角筒状(例えば正方形状からなる筒状)とする場合、上柱及び下柱のうち一方の柱の内幅を他方の柱の外幅よりも若干大きくし、一方の柱の内部に他方の柱を挿入することでそれら各柱を重ね合わせた状態で結合することが考えられる。この場合でも、上柱と下柱との重なり代を調整することで柱状治具(柱本体)を伸縮させることが可能である。
(9)仮構築ユニット40において、各柱状治具50を、各柱本体53,56の頂部53a,56aを同ユニット40の外側に向けた状態で配置してもよい。この場合、各柱状治具50において各柱本体53,56の一方の側面部55,58同士が側面部55をユニット外側、側面部58をユニット内側としてユニット長手方向に重なり合い、他方の側面部55,58同士が側面部55をユニット外側、側面部58をユニット内側として重なり合う。このため、上記実施形態と同様に、各柱状治具50の各々の上柱52はユニット短手方向及びユニット長手方向のいずれの方向においてもその移動が規制されており、したがって、各柱状治具50について上柱52を下柱51に対し上方に移動させ(すなわち同柱状治具50を治具伸長状態とすることで)、上階床ユニット32B等を上方に移動させる際に、各上柱52が水平方向(柱状治具50と直交する方向)に位置ずれするのを抑制できる。
また、仮構築ユニット40において、各柱状治具50を、各柱本体53,56の頂部53a,56aを同じ側に向けた状態で配置してもよい。例えば、各柱状治具50について、各柱本体53,56の側面部55,58のうち一方の側面部55,58をユニット長手方向において同一側に向け、かつ、他方の側面部55,58をユニット短手方向において同一側に向けた状態で配置することで、各柱本体53,56の頂部53a,56aを同じ側に向けることが考えられる。
(10)上記実施形態では、柱状治具50を治具収縮状態又は治具伸長状態に保持するために、上柱52を下柱51に固定ボルト71により仮固定したが、柱状治具50を治具収縮状態又は治具伸長状態に保持する手段は必ずしもこれに限定されない。例えば、下柱51の固定孔部67と上柱52の固定孔部65,66とにピンを連続させて挿通することで上柱52を下柱51に仮固定することで、柱状治具50を治具収縮状態又は治具伸長状態に保持してもよい。また、柱状治具50を治具伸縮状態又は治具伸長状態とした際に、上柱52を下柱51に仮固定しないようにしてもよい。例えば、柱状治具50の治具伸長状態において、上柱52を下柱51に仮固定しない場合には、上階床ユニット32BをクレーンFにより吊り下げ支持した状態で下階支持梁33Aを下階ユニット20Aに連結すればよい。
(11)上記実施形態では、クレーンFにより吊り治具60を吊り上げることにより、各柱状治具50を治具伸長状態としたが、作業者による手作業で各柱状治具50を治具伸長状態としてもよい。