JP2012214793A - ポリカーボネート樹脂の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】透明性、色相、耐熱性、成形性、及び機械的強度に優れ、かつ優れた光学特性を有するポリカーボネート樹脂を、安定的に製造するためのポリカーボネート樹脂原料の調製方法を提供する。
【解決手段】原料化合物としてジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを用いて、エステル交換触媒の存在下、エステル交換反応により重縮合させて得られたポリカーボネート樹脂を製造する方法であって、前記ジヒドロキシ化合物がヒドロキシ基の少なくとも1つのβ位またはγ位にエーテル性酸素原子を有する脂肪族ジヒドロキシ化合物を少なくとも含み、かつ前記原料化合物が、前記脂肪族ジヒドロキシ化合物に対する窒素原子換算の重量濃度として、0.3ppm以上10ppm未満の含窒素化合物を含み、前記脂肪族ジヒドロキシ化合物を、予め50℃以上に加熱し、溶融状態で0.5時間以上200時間以下保持した後、炭酸ジエステルと混合する工程を含むことを特徴とするポリカーボネート樹脂の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、耐光性、透明性、色相、耐熱性、熱安定性、及び機械的強度に優れ、性能の安定したポリカーボネート樹脂を、効率的かつ安定的に製造する方法に関する。
ポリカーボネート樹脂は一般的にビスフェノール類をモノマー成分とし、透明性、耐熱性、機械的強度等の優位性を生かし、電気・電子部品、自動車用部品、光学記録媒体、レンズ等の光学分野等でいわゆるエンジニアリングプラスチックスとして広く利用されている。しかしながら、最近急激に普及しつつあるフラットパネルディスプレー等の光学補償フィルム用途では、低複屈折や低光弾性係数等、さらに高度な光学的特性が要求されるようになり、既存の芳香族ポリカーボネート樹脂ではその要求に応えられなくなってきた。また、従来のポリカーボネート樹脂は、石油資源から誘導される原料を用いて製造されるが、近年、石油資源の枯渇が危惧されており、植物などのバイオマス資源から得られる原料を用いたポリカーボネート樹脂の提供が求められている。また、二酸化炭素排出量の増加、蓄積による地球温暖化が、気候変動などをもたらすことが危惧されていることからも、使用後の廃棄処分をしてもカーボンニュートラルな、植物由来モノマーを原料としたポリカーボネート樹脂の開発が求められている。
かかる状況下、特殊なジヒドロキシ化合物をモノマー成分とし、炭酸ジエステルとのエステル交換により副生するモノヒドロキシ化合物を減圧下で留去しながら、ポリカーボネート樹脂を得る方法が提案されている(例えば特許文献1〜3参照)。
ところが、このような特殊な構造を有するジヒドロキシ化合物は、熱安定性が悪く、ポリカーボネート樹脂の原料として用いると、重合反応性が低下したり、原料調製や重合時の熱履歴で着色がおこり、得られたポリカーボネート樹脂の商品価値を落としてしまったりするという問題があった。特に工業的規模でポリカーボネート樹脂を製造しようとする場合、伝熱や生産効率性、生産安定性の観点から、原料をある程度の時間、加熱保持する必要が出てくるため、原料の熱安定性の悪さは深刻な問題となる。
この問題を解決するために、ポリカーボネート樹脂中の不純物量を規定したり(例えば特許文献4)、ポリカーボネート樹脂に熱安定剤を添加したりする方法が開示されている(例えば特許文献5)。
他方、蒸留精製したジヒドロキシ化合物に塩基性の安定性改善剤を添加する方法が開示されている(例えば特許文献6)。さらに、ジヒドロキシ化合物に安定剤として塩基性金属塩を添加し、それを蒸留精製して用いる方法が開示されている(特許文献7)。
国際公開第2004/111106号パンフレット 国際公開第2007/013463号パンフレット 国際公開第2008/093860号パンフレット 国際公開第2008/029746号パンフレット 国際公開第2008/133342号パンフレット 特表2005−509667号公報 特開2010−150540号公報
しかしながら、特許文献4及び特許文献5に記載の方法では、その効果は満足できるものではなく、特にジヒドロキシ化合物をポリカーボネート樹脂の原料として調製する工程における着色や重合活性の低下は抑制できないという問題があった。
また、特許文献6に記載の方法ではジヒドロキシ化合物中に含まれる安定性改良剤が、エステル交換触媒となってしまうため、ポリカーボネート樹脂の重合反応制御が困難になったり、安定性改良剤自身がポリカーボネート樹脂の着色を招いてしまったりするという問題があった。
そして、特許文献7に記載の方法では蒸留精製時に熱安定剤が液相にのみ存在するため、気相部での熱履歴によって新たな着色原因物質や重合阻害物質が生成する可能性があり、得られたジヒドロキシ化合物は結果的に熱安定剤を含まないため、重合原料としてジヒドロキシ化合物を調製する際の熱履歴によって着色等を招くという問題があった。
本発明の目的は、上記従来の問題点を解消し、耐光性、透明性、色相、耐熱性、熱安定性、及び機械的強度に優れ、性能の安定したポリカーボネート樹脂を、効率的かつ安定的に製造する方法を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するべく、鋭意検討を重ねた結果、原料モノマーとして炭酸ジエステル並びに特定のジヒドロキシ化合物を用いて、触媒の存在下、エステル交換反応により重縮合させて得られたポリカーボネート樹脂を製造する方法において、前記ジヒドロキシ化合物に含窒素化合物を特定量含有させることによって、耐光性、透明性、色相、耐熱性、熱安定性、及び機械的強度に優れ、性能の安定したポリカーボネート樹脂が得られることを見出した。
即ち、本発明は、下記[1]〜[16]の発明に係るものである。
[1] 原料化合物としてジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを用いて、エステル交換触媒の存在下、エステル交換反応により重縮合させて得られたポリカーボネート樹脂を製造する方法であって、前記ジヒドロキシ化合物がヒドロキシ基の少なくとも1つのβ位またはγ位にエーテル性酸素原子を有する脂肪族ジヒドロキシ化合物を少なくとも含み、かつ前記原料化合物が、前記脂肪族ジヒドロキシ化合物に対する窒素原子換算の重量濃度として、0.3ppm以上10ppm未満の含窒素化合物を含み、前記脂肪族ジヒドロキシ化合物を、予め50℃以上に加熱し、溶融状態で0.5時間以上200時間以下保持した後、炭酸ジエステルと混合する工程を含むポリカーボネート樹脂の製造方法。
[2] 前記脂肪族ジヒドロキシ化合物を、溶融した炭酸ジエステルと混合する工程を含む前記[1]に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
[3] 前記原料化合物が、固体の前記脂肪族ジヒドロキシ化合物を含窒素塩基性化合物の存在下で加熱し、溶融状態にした後、蒸留精製した脂肪族ジヒドロキシ化合物を含有する原料化合物であって、当該原料化合物中に含まれる含窒素化合物の含有量が、脂肪族ジヒドロキシ化合物に対する窒素原子換算の重量濃度として0.3ppm以上10ppm未満である前記[1]または[2]に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
[4] 固体の脂肪族ジヒドロキシ化合物を含窒素化合物の存在下で加熱し、溶融状態にした後、蒸留精製することなく、ポリカーボネート樹脂の原料化合物として用いる前記[1]または[2]に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
[5] 固体の脂肪族ジヒドロキシ化合物を溶融状態にした後、前記エステル交換触媒を添加し、エステル交換反応により重縮合させる工程を含む前記[1]乃至[4]の何れかに記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
[6] 前記含窒素化合物が、アルカノールアミンである前記[1]乃至[5]の何れかに記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
[7] 前記原料化合物が、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む前記[1]乃至[6]の何れかに記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
[8] 前記脂肪族ジヒドロキシ化合物の加熱を70℃以上100℃未満で行う前記[1]乃至[7]の何れかに記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
[9] 前記脂肪族ジヒドロキシ化合物と前記炭酸ジエステルを混合する工程を含み、該工程が80℃以上130℃未満である前記[1]乃至[8]の何れかに記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
[10] 前記脂肪族ジヒドロキシ化合物が90重量%以上エステル交換反応で消費される段階の工程を230℃未満で行う前記[1]乃至[9]の何れかに記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
[11] 前記原料化合物がナトリウム化合物を含み、該ナトリウム化合物の含有量が、前記脂肪族ジヒドロキシ化合物に対するナトリウム原子換算の重量濃度として2ppm未満である前記[1]乃至[10]の何れかに記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
[12] 前記触媒として、リチウム及び長周期型周期表第2族の金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物を、その金属原子の合計量として、原料として用いた全ジヒドロキシ化合物1mol当たり、0.1μmol以上30μmol以下用いる前記[1]乃至[11]の何れかに記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
[13] 前記エステル交換触媒が、マグネシウム化合物及びカルシウム化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である前記[12]に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
[14] 全反応段階における反応液の最高温度が250℃未満である前記[1]乃至[13]の何れかに記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
[15] 前記脂肪族ジヒドロキシ化合物が、環状エーテル構造を有する前記[1]乃至[14]の何れかに記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
[16] 前記脂肪族ジヒドロキシ化合物が、下記式(2)の化合物である前記[1]乃至[15]の何れかに記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
Figure 2012214793
本発明によれば、優れた色相を有するだけでなく、透明性、耐熱性、成形性、及び機械的強度に優れ、電気・電子部品、自動車用部品等の射出成形分野、フィルム、シート分野、ボトル、容器分野、さらには、カメラレンズ、ファインダーレンズ、CCDやCMOS用レンズなどのレンズ用途、液晶やプラズマディスプレイなどに利用される位相差フィルム、拡散シート、偏光フィルムなどのフィルム、シート、光ディスク、光学材料、光学部品、色素及び電荷移動剤等を固定化するバインダー用途といった幅広い分野へ適用可能な性能を有するポリカーボネート樹脂を効率的にかつ安定して製造することが可能になる。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の内容に限定されない。
なお、本明細書において、「〜」という表現を用いた場合、その前後の数値または物理値を含む意味で用いることとする。また、本明細書において、“vol%”と“体積%”および“mol”と“モル”とは同義であって、単に“ppm”と記載した場合は、“重量ppm”のことを示す。
(ジヒドロキシ化合物)
本発明のポリカーボネート樹脂の製造法においては、原料化合物として、炭酸ジエステル及びジヒドロキシ化合物を用いるが、ジヒドロキシ化合物の少なくとも1種がヒドロキシル基の少なくとも1つのβ位またはγ位にエーテル性酸素原子を有する脂肪族ジヒドロキシ化合物であることを特徴とする(以下、「本発明の脂肪族ジヒドロキシ化合物(A)」と称する。)。
なお、本発明の脂肪族ジヒドロキシ化合物(A)における「脂肪族」とは、2つのヒドロキシル基がアルコール性のヒドロキシル基であることを意味しており、ジヒドロキシ化合物の骨格に脂肪族炭化水素構造以外にも芳香族環構造やヘテロ原子を有していてもよい。また、「エーテル性酸素原子」とは、当該酸素原子が2つの炭素と単結合していることを意味し、ヒドロキシル基やカルボニル基を構成する酸素原子と区別される。
また、本発明の「ヒドロキシ基の少なくとも1つのβ位またはγ位にエーテル性酸素原子を有する脂肪族ジヒドロキシ化合物」において、β位、γ位とは、ジヒドロキシ化合物においてヒドロキシ基を構成する炭素原子を基準にして、隣接する炭素原子の位置をα位、更にその隣の炭素原子をβ位、更にその隣の炭素原子をγ位とすることを意味する。
例えば、後述するイソソルビドの場合は、ヒドロキシ基を構成する炭素原子を基準にして、β位に相当する炭素原子がエーテル性酸素原子となっており、「ヒドロキシ基のβ位にエーテル性酸素原子を有する脂肪族ジヒドロキシ化合物」に該当する。
また、上記エーテル性酸素原子は、下記式(1)で表される構造の一部であること、すなわち少なくともエチレン基と結合していることが好ましい。
Figure 2012214793
本発明の脂肪族ジヒドロキシ化合物(A)としては、具体的には、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのオキシアルキレングリコール類、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチル−6−メチルフェニル)フルオレン9,9−ビス(4−(3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロポキシ)フェニル)フルオレン等、側鎖に芳香族基を有し、主鎖に芳香族基に結合したエーテル基を有する化合物、下記式(2)および下記式(3)で表されるジヒドロキシ化合物に代表される環状エーテル構造を有する化合物が挙げられる。そして、環状エーテル構造を有する化合物の中でも、化合物内にエーテル構造を複数有する化合物が好ましく、環状エーテル構造を複数有する化合物がより好ましい。より具体的には、環状エーテル構造を有する化合物の中でも、下記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に代表される無水糖アルコールが好ましい。
これらは得られるポリカーボネート樹脂の要求性能に応じて、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
Figure 2012214793
Figure 2012214793
上記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物としては、立体異性体の関係にある、イソソルビド、イソマンニド、イソイデットが挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらのジヒドロキシ化合物のうち、芳香環構造を有しないジヒドロキシ化合物を用いることがポリカーボネート樹脂の耐光性の観点から好ましく、中でも植物由来の資源として豊富に存在し、容易に入手可能な種々のデンプンから製造されるソルビトールを脱水縮合して得られるイソソルビドが、入手及び製造のし易さ、耐光性、光学特性、成形性、耐熱性、カーボンニュートラルの面から最も好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂の製造方法においては、原料モノマーとして、上記本発明の脂肪族ジヒドロキシ化合物(A)以外のジヒドロキシ化合物(以下「ジヒドロキシ化合物(B)」と称する。)に由来する構成単位を含んでいてもよく、ジヒドロキシ化合物(B)としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,5−ヘプタンジオール、1,6−ヘキサンジオールのなどの脂肪族ジヒドロキシ化合物、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、2,6−デカリンジメタノール、1,5−デカリンジメタノール、2,3−デカリンジメタノール、2,3−ノルボルナンジメタノール、2,5−ノルボルナンジメタノール、1,3−アダマンタンジメタノール、等の脂環式ジヒドロキシ化合物、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[=ビスフェノールA]、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−(3,5−ジフェニル)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,4’−ジヒドロキシ−ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジクロロジフェニルエーテル、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ−2−メチル)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)フルオレン等の芳香族ビスフェノール類が挙げられる。
中でも、ポリカーボネート樹脂の耐光性の観点からは、ジヒドロキシ化合物(B)が、脂肪族ジヒドロキシ化合物及び脂環式ジヒドロキシ化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましく、脂肪族ジヒドロキシ化合物としては、特に1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールが好ましく、脂環式ジヒドロキシ化合物としては、特に1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノールが好ましいが、耐熱性と機械的物性の観点からは、脂環式ジヒドロキシ化合物である1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノールが好ましい。
これらのジヒドロキシ化合物(B)を用いることにより、ポリカーボネート樹脂の柔軟性の改善、耐熱性の向上、成形性の改善などの効果を得ることも可能であるが、ジヒドロキシ化合物(B)に由来する構成単位の含有割合が多過ぎると、機械的物性の低下や、耐熱性の低下を招くことがあるため、全ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位に対する本発明の脂肪族ジヒドロキシ化合物(A)に由来する構造単位の割合が、20モル%以上、好ましくは30モル%以上、特には50モル%以上であることが好ましい。
本発明の脂肪族ジヒドロキシ化合物(A)は、含窒素化合物を含み、その含有量が本発明の脂肪族ジヒドロキシ化合物(A)に対する窒素原子換算の重量濃度として0.3ppm以上10ppm未満であることが必要である。
本発明の脂肪族ジヒドロキシ化合物(A)は、ヒドロキシ基の少なくとも1つのβ位またはγ位に式(1)で表されるエーテル性酸素原子を有する脂肪族ジヒドロキシ化合物を少なくとも含む為に、分解し易く、特に重合反応性の低下や色相の低下を招き易いが、含窒素化合物を特定量含有することにより、分解反応が抑制されるものと推定される。
窒素化合物の含有量が少なすぎると、本発明の効果が得られなくなる傾向にあり、多すぎるとエステル交換反応触媒として働き、重合反応の制御を困難にしたり、含窒素化合物自体がポリカーボネート樹脂の着色を助長したりすることがあるので好ましくない。含窒素化合物の含有量は、本発明の脂肪族ジヒドロキシ化合物(A)に対する窒素原子換算の重量濃度として、好ましくは0.5ppm以上、さらに好ましくは1ppm以上、特に好ましくは2ppm以上であり、好ましくは8ppm未満、さらに好ましくは5ppm未満、特に好ましくは4.5ppm未満である。
本発明の含窒素化合物としては、窒素を含む化合物であれば特に限定はないが、含窒素化合物は含窒素塩基性化合物であることが好ましい。具体的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、ブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等の塩基性アンモニウム化合物、ピリジン、4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン等のピリジンおよびその誘導体、イミダゾール、2−ジメチルアミノイミダゾール、2−メトキシイミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾール等のイミダゾールおよびその誘導体、1,3,5−トリアジン、シアヌル酸、メラミン等のトリアジン化合物、ジイソブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルベンジルアミン、エチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、アニリン、アミノキノリン、モルホリン等のアミン系化合物、リジン、アルギニン、ヒスチジン等のアミノ酸、カプロラクタム、ラウロラクタム等のラクタム類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチル−ジエタノールアミン、N−プロピルジエタノールアミン、N−イソプロピルジエタノールアミン、N,N−ジメチルモノエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、等のアルカノールアミン類、テトラメチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレート等の含窒素ホウ素塩、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート等のヒンダードアミン、が挙げられ、中でも塩基性アンモニウム化合物、イミダゾールおよびその誘導体、アルカノールアミン類が好ましく、更にはアルカノールアミン類、特にはジエタノールアミンが好ましい。
本発明の脂肪族ジヒドロキシ化合物(A)は、上記含窒素化合物に加えて、ナトリウム原子を含むことができ、その含有量は、本発明の脂肪族ジヒドロキシ化合物(A)に対するナトリウム原子換算の重量濃度として2ppm未満であることが好ましく、更には1ppm未満、中でも0.5ppm未満、特には0.3ppm未満であることが好ましい。ナトリウム原子の含有量が多いとエステル交換反応触媒として働き、重合反応の制御を困難にしたり、ポリカーボネート樹脂の着色を助長したりすることがあるので好ましくない。ナトリウム原子の定量は、誘導結合プラズマ(以下、ICP(Inductively coupled plasma)と略記することがある)質量分析装置(以下、ICP−MSと略記することがある)等で測定することができる。
原料化合物である上記ジヒドロキシ化合物は、前述以外の還元剤、酸化防止剤、脱酸素剤、光安定剤、制酸剤、pH安定剤、熱安定剤等の安定剤を含んでいても良い。
中でも、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましく、具体的には例えば、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチル−4−メトキシフェノール、2−tert−ブチル−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、n−オクタデシル−3−(3',5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−tert−ブチル−6−(3’−tert−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(6−シクロヘキシル−4−メチルフェノール)、2,2’−エチリデン−ビス−(2,4−ジ−tert−ブチルフェノール)、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]−メタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンなどが挙げられる。
本発明の脂肪族ジヒドロキシ化合物(A)がイソソルビド等、環状エーテル構造を有する場合には、酸素によって徐々に酸化されやすいので、保管や、製造時には、酸素による分解を防ぐため、水分が混入しないようにし、また、脱酸素剤等を用いたり、窒素雰囲気下で取り扱うことが肝要である。イソソルビドが酸化されると、蟻酸等の分解物が発生する場合がある。例えば、これら分解物を含むイソソルビドをポリカーボネート樹脂の製造原料として使用すると、得られるポリカーボネート樹脂の着色を招く可能性があり、又、物性を著しく劣化させる可能性があるだけでなく、重合反応に影響を与え、高分子量の重合体が得られない場合もあり、好ましくない。
本発明のポリカーボネート樹脂の製造方法においては、本発明の脂肪族ジヒドロキシ化合物(A)を予め50℃以上に加熱し、溶融状態で保持する工程を含むことを特徴とする。このように加熱することで、ジヒドロキシ化合物(B)や炭酸ジエステル等と溶融状態で混合する場合や、重合反応開始時の余計な加温が必要でなくなり、原料混合槽や重合反応槽の加熱媒体の温度を下げることが可能になる。原料混合槽や重合反応槽の加熱媒体の温度が高いと着色等の不具合を招く場合がある。このようにすると、本発明の脂肪族ジヒドロキシ化合物(A)を液体として取り扱うことができるため、原料供給の際の定量精度が向上し、結果的にジヒドロキシ化合物の劣化を抑制しながら、安定的にポリカーボネート樹脂を得ることができる。
また、融解させる前には融解槽の内部を窒素等の不活性ガスで完全に置換させ、好ましくは融解後にこれらの不活性ガスを融解液に流通させバブリングすることが好ましい。
本発明の脂肪族ジヒドロキシ化合物(A)を予め融解させる場合の下限温度は、上記のように50℃以上であるが、好ましくは70℃以上、更に好ましくは75℃以上である。上限温度としては、好ましくは150℃未満、更に好ましくは120℃未満、特に好ましくは100℃未満、最適には90℃未満である。加熱する温度が低いと、本発明の脂肪族ジヒドロキシ化合物(A)の融解速度が遅くなって生産効率が低下する可能性があり、加熱する温度が高いと、本発明の脂肪族ジヒドロキシ化合物(A)の熱劣化を招くことがある。
本発明の脂肪族ジヒドロキシ化合物(A)を予め加熱し、溶融状態で保持する時間は、0.5時間以上、200時間以下であるが、熱劣化を抑制するためには、好ましくは100時間以下、より好ましくは50時間以下、特に好ましくは24時間以下である。本発明において、脂肪族ジヒドロキシ化合物(A)を予め加熱し溶融状態で保持するとは、カーボネート源である炭酸ジエステルと混合する前に、本発明の脂肪族ジヒドロキシ化合物(A)を予め加熱し、溶融状態で保持することを意味し、ジヒドロキシ化合物(B)と混合して溶融状態で保持することも含む。
また溶融状態で保持する時間とは、本発明のジヒドロキシ化合物(A)が融解し始める時点を基点とし、炭酸ジエステルと混合されるまでの時間のことを示し、ジヒドロキシ化合物(B)と溶融状態で混合する場合には、その時間も合算するものとする。溶融状態で保持する時間が0.5時間よりも短いと、未溶融物が残って原料フィルター等の閉塞を招いたり、搬送性を悪化させたりする可能性がある。
本発明の脂肪族ジヒドロキシ化合物(A)は、重合反応に先立って蒸留精製を行うことができる。この場合の蒸留とはバッチ式蒸留であっても、連続式蒸留であっても良く、特に限定されない。蒸留の条件としてはアルゴンや窒素などの不活性ガス雰囲気において、減圧下で蒸留を実施することが好ましく、熱による変性を抑制するためには、250℃以下、好ましくは200℃以下、特には180℃以下の条件で行うことが好ましい。
上記のような蒸留精製は、余計な熱履歴を本発明の脂肪族ジヒドロキシ化合物(A)に与えることになり、結果的に蒸留中に着色や重合活性を低下させる不純物が生成する可能性があるため、蒸留精製後も含窒素化合物が含まれることが好ましい。このような方法としては、本発明の脂肪族ジヒドロキシ化合物(A)の蒸留中または蒸留直後に含窒素化合物を蒸留精製したジヒドロキシ化合物に添加する方法や、蒸留前に含まれている含窒素化合物自体を、ジヒドロキシ化合物と一緒に留出させる方法が挙げられる。
蒸留精製した脂肪族ジヒドロキシ化合物に含まれる含窒素化合物の量は、本発明の脂肪族ジヒドロキシ化合物(A)に対する窒素原子換算の重量濃度として0.3ppm以上10ppm未満であることが好ましい。含窒素化合物の含有量が多いと、重合時にエステル交換反応触媒として働き、重合反応の制御を困難にしたり、含窒素化合物自体がポリカーボネート樹脂の着色を助長したりすることがあり、少ないと蒸留精製後のジヒドロキシ化合物の熱安定性が低下するため、含窒素化合物の含有量は、本発明の脂肪族ジヒドロキシ化合物(A)に対する窒素原子換算の重量濃度として、好ましくは0.5ppm以上、さらに好ましくは1ppm以上、特に好ましくは2ppm以上であり、好ましくは8ppm未満、さらに好ましくは5ppm未満、特に好ましくは4.5ppm未満である。
本発明では、余計な熱履歴をなくし、エネルギーの損失を抑えるために、本発明の脂肪族ジヒドロキシ化合物(A)の蒸留精製を行わないことが好ましい。本発明では、本発明の脂肪族ジヒドロキシ化合物(A)に含まれる含窒素化合物の濃度が最低限に抑えられているため、蒸留精製を行わなくても、良好な色相を維持したまま、重合反応制御を容易にすることができる。
(炭酸ジエステル)
本発明においては、上述した本発明の脂肪族ジヒドロキシ化合物(A)を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルを原料として、エステル交換反応により重縮合させてポリカーボネート樹脂を得ることができる。本発明で用いられる炭酸ジエステルとしては、通常、下記式(4)で表されるものが挙げられる。これらの炭酸ジエステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
Figure 2012214793
(式(4)において、X及びX’は、置換若しくは無置換の炭素数1〜18の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基であり、X及びX’は同一であっても異なっていてもよい。)
上記式(4)で表される炭酸ジエステルとしては、例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート及びジ−t−ブチルカーボネート等が例示されるが、好ましくはジフェニルカーボネート、置換ジフェニルカーボネートであり、特に好ましくはジフェニルカーボネートである。これらの炭酸ジエステルは、1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。なお、炭酸ジエステルを含有する原料化合物は、塩化物イオンなどの不純物を含む場合があり、重合反応を阻害したり、得られるポリカーボネート樹脂の色相を悪化させたりする場合があるため、必要に応じて、蒸留などにより精製したものを使用することが好ましい。
本発明の方法において、原料である本発明の脂肪族ジヒドロキシ化合物(A)および場合によってはジヒドロキシ化合物(B)と炭酸ジエステルは、エステル交換反応前に混合して重合反応槽に供給することができる。
混合の温度は通常80℃以上、好ましくは90℃以上であり、その上限は通常200℃未満、好ましくは150℃未満、更に好ましくは130℃未満である。中でも100℃以上125℃未満が好適である。混合の温度が低すぎると均一化の速度が遅かったり、溶解度が不足したりして、しばしば固化等の不具合を招く可能性がある。一方、混合の温度が高すぎると本発明の脂肪族ジヒドロキシ化合物(A)と炭酸ジエステルのエステル交換反応が起こり始めて、液粘性の増大を招いたり、本発明の脂肪族ジヒドロキシ化合物(A)の熱劣化を招いたりして、結果的に得られるポリカーボネート樹脂の色相が悪化し、耐光性や耐熱性に悪影響を及ぼす可能性がある。
本発明の方法において、原料である本発明の脂肪族ジヒドロキシ化合物(A)を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルと混合する操作は、酸素濃度10vol%以下、更には0.0001vol%〜10vol%、中でも0.0001vol%〜5vol%、特には0.0001vol%〜1vol%の雰囲気下で行うことが、色相悪化防止の観点から好ましい。
本発明において、炭酸ジエステルは、反応に用いる本発明の脂肪族ジヒドロキシ化合物(A)を含む全ジヒドロキシ化合物に対して、通常0.90〜1.20のモル比率で用い、好ましくは、0.95〜1.10、更に好ましくは0.97〜1.03、特に好ましくは0.99〜1.02である。このモル比率が大きすぎても小さすぎても、エステル交換反応の速度が低下し、重合反応時の熱履歴の増大を招き、結果的に得られたポリカーボネート樹脂の色相を悪化させる可能性があり、更には所望する高分子量体が得られない可能性がある。
本発明の方法において、原料である本発明の脂肪族ジヒドロキシ化合物(A)と炭酸ジエステルとは、別々に調製してそれぞれ独立に重合反応槽に供給することもできるし、ジヒドロキシ化合物(B)を用いて共重合をする場合には、ジヒドロキシ化合物(B)と炭酸ジフェニルを混合して、本発明の脂肪族ジヒドロキシ化合物(A)とは別に重合槽に供給することもできる。また、これらは重合槽に入る前の配管内で混合し、重合槽に供給することもできる。
(エステル交換触媒)
本発明の方法においては、上述のように本発明の脂肪族ジヒドロキシ化合物(A)を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルをエステル交換反応させてポリカーボネート樹脂を製造する際に、エステル交換反応触媒(以下、単に「触媒」と称することがある。)を存在させる。
本発明の触媒としては、長周期型周期表における1族または2族(以下、単に「1族」、「2族」と表記することがある。)の金属化合物、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物が挙げられ、好ましくは1族金属化合物及び/又は2族金属化合物である。
また、1族金属化合物及び/又は2族金属化合物と共に、補助的に、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物を併用することも可能である。
1族金属化合物及び/又は2族金属化合物の形態としては通常、水酸化物、又は炭酸塩、カルボン酸塩、フェノール塩といった塩の形態で用いられるが、入手のし易さ、取扱いの容易さから、水酸化物、炭酸塩、酢酸塩が好ましく、色相と重合活性の観点からは酢酸塩が好ましい。
1族金属化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸セシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸セシウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素セシウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、フェニル化ホウ素カリウム、フェニル化ホウ素リチウム、フェニル化ホウ素セシウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、安息香酸セシウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、リン酸水素2セシウム、フェニルリン酸2ナトリウム、フェニルリン酸2カリウム、フェニルリン酸2リチウム、フェニルリン酸2セシウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、セシウムのアルコレート、フェノレート、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2リチウム塩、2セシウム塩等が挙げられ、中でもリチウム化合物が好ましい。
2族金属化合物としては、例えば、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ストロンチウム等が挙げられ、中でもマグネシウム化合物、カルシウム化合物、バリウム化合物が好ましく、重合活性と得られるポリカーボネート樹脂の色相の観点から、マグネシウム化合物及びカルシウム化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物が更に好ましく、最も好ましくはカルシウム化合物である。
塩基性ホウ素化合物としては、例えば、テトラメチルホウ素、テトラエチルホウ素、テトラプロピルホウ素、テトラブチルホウ素、トリメチルエチルホウ素、トリメチルベンジルホウ素、トリメチルフェニルホウ素、トリエチルメチルホウ素、トリエチルベンジルホウ素、トリエチルフェニルホウ素、トリブチルベンジルホウ素、トリブチルフェニルホウ素、テトラフェニルホウ素、ベンジルトリフェニルホウ素、メチルトリフェニルホウ素、ブチルトリフェニルホウ素等のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、マグネシウム塩、あるいはストロンチウム塩等が挙げられる。
塩基性リン化合物としては、例えば、トリエチルホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、あるいは四級ホスホニウム塩等が挙げられる。
塩基性アンモニウム化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、ブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
アミン系化合物としては、例えば、4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−ジメチルアミノイミダゾール、2−メトキシイミダゾール、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾール、アミノキノリン等が挙げられる。
上記重合触媒の使用量は、通常、用いた全ジヒドロキシ化合物1mol当たり0.1μmol〜300μmol、好ましくは0.5μmol〜100μmolであり、好ましくは0.5μmol〜50μmol、更に好ましくは0.5μmol〜20μmol、特に好ましくは1μmol〜5μmolである。中でもリチウム及び2族の金属から選ばれる少なくとも1種の金属化合物を用いる場合、用いた全ジヒドロキシ化合物1mol当たり、金属量として、通常、0.1μmol以上、好ましくは0.5μmol以上、特に好ましくは0.7μmol以上とする。また上限としては、通常30μmol、好ましくは20μmol、さらに好ましくは5μmol、特に好ましくは3μmol、中でも2μmolが好適である。
尚、触媒は、重合反応槽に直接添加してもよいし、予めジヒドロキシ化合物に添加したり、炭酸ジエステルに添加したりすることもできる。また、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルを予め混合する原料調整槽に添加し、その後、重合反応槽に存在させる方法を取ってもよいし、原料反応槽に原料が供給される配管内で添加しても良い。何れにしても、本発明の脂肪族ジヒドロキシ化合物(A)を、50℃以上の温度で溶融状態で保持した後、添加することが、触媒とジヒドロキシ化合物の均一性が増して重合反応が安定する傾向にある。
触媒の使用量が少なすぎると、十分な重合活性が得られず重合反応の進行が遅くなるため、所望の分子量のポリカーボネート樹脂が得られにくく、生産効率が低下するだけでなく、原料モノマーがポリカーボネート樹脂中に取り込まれる速度が低下し、副生するモノヒドロキシ化合物とともに留出するモノマー量が増加し、結果的に原料原単位の悪化や、その回収のため余分なエネルギーが必要となる可能性があり、更には、複数のジヒドロキシ化合物を用いた共重合の場合には、原料として用いたモノマーの組成比と製品ポリカーボネート樹脂中の構成モノマー単位の組成比が変わってしまう原因となることがある。
一方、触媒の使用量が多すぎると、上記のような未反応モノマーの留出は改善される方向にはなるが、その一方で得られるポリカーボネート樹脂の色相や耐光性、熱安定性等が悪化する可能性がある。
また、1族金属、中でもナトリウム、カリウム及びセシウムは、特に、ナトリウムは、ポリカーボネート樹脂中に多く含まれると色相に悪影響を及ぼす可能性があり、該金属は使用する触媒からのみではなく、原料や反応装置から混入する場合がある。ポリカーボネート樹脂中のこれらの1族金属を含む化合物の合計量は、金属量(原子換算)として、通常2重量ppm未満、好ましくは1重量ppm以下、より好ましくは0.7重量ppm未満である。
ポリカーボネート樹脂中の金属量は、湿式灰化などの方法でポリカーボネート樹脂中の金属を回収した後、原子発光、原子吸光、ICP発光、ICP質量分析等の方法を使用して測定することが出来る。
本発明の方法において、炭酸ジエステルとジヒドロキシ化合物は、触媒の存在下でエステル交換反応させ、複数の反応器を用いて多段階で重縮合(単に「重合」という場合がある。)させる。重合を複数の反応器で実施する理由は、重合反応初期においては、反応液中に含まれるモノマーが多いために、必要な重合速度を維持しつつ、モノマーの揮散を抑制してやることが重要であり、重合反応後期においては、平衡を重合側にシフトさせるために、副生するモノヒドロキシ化合物を十分留去させることが重要になるためである。このように、異なった重合反応条件を設定するには、直列に配置された複数の重合反応器を用いることが、生産効率の観点から好ましい。
本発明の方法で使用される反応器は、少なくとも2つ以上であればよいが、生産効率などの観点からは、3つ以上が好ましい。
本発明において、反応器が2つ以上であれば、その反応器中で、更に条件の異なる反応段階を複数持たせる、連続的に温度・圧力を変えていくなどしてもよい。
即ち、例えば、反応器を2つ用い、それぞれで反応条件を変えて2段階の重合とするケースや、反応器を2つ用い、1つ目の反応器で条件の異なる2つの反応段階を持たせ、かつ、2つ目の反応器で1つの反応条件を持たせて、3段階とするケースなどが含まれる。
重合の初期段階では、生成するモノヒドロキシ化合物の量が多く、未反応のジヒドロキシ化合物が同伴して留去して結果的にモノヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルのモル比が仕込みとずれて、重合反応が頭打ちになったり、複数のジヒドロキシ化合物を使用して共重合体を得ようとする場合には、共重合比率が不安定になったりする可能性があるため、少なくとも1つの重合反応槽に還流冷却器を具備することが好ましい。
還流冷却器に導入される冷媒の温度は該還流冷却器の入口において、45〜180℃であるのが好ましく、より好ましくは、80〜150℃、特に好ましくは100〜130℃である。冷媒の温度が高すぎると還流量が減り、その効果が低下する傾向があり、逆に低すぎると、本来留去すべきモノヒドロキシ化合物の留去効率が低下する傾向にある。冷媒としては、温水、蒸気、熱媒オイル等が用いられ、蒸気、熱媒オイルが好ましい。
本発明の目的を達成するためには、触媒の種類、触媒の量、重合の温度、圧力、滞留時間を、重合の進行に応じて適正に制御する必要がある。
また、重合初期においては、たとえ還流冷却器を設置しても、温度を上げすぎたり、圧力を下げすぎたりすると、未反応のモノマーが留出し、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルのモル比を狂わせ、重合速度の低下を招いたり、所定の分子量や末端基を持つポリカーボネート樹脂が得られなかったりする可能性がある。更に本発明の脂肪族ジヒドロキシ化合物(A)が未反応のまま多く含まれる段階で温度を高くしすぎると、着色が起こり最終的に得られるポリカーボネート樹脂の色相に悪影響を及ぼすため、本発明の脂肪族ジヒドロキシ化合物(A)が90重量%以上エステル交換反応で消費される段階(以下、「オリゴマー製造段階」と称することがある。)での重合温度は、230℃未満が好ましく、220℃未満が更に好ましく、210℃未満が特に好ましく、中でも200℃未満が好適である。一方、オリゴマー製造段階での温度が低すぎると重合反応の速度が遅くなり生産効率が低下するため、通常150℃以上、好ましくは170℃以上、特に好ましくは180℃以上である。
本発明でいう重合温度とは、通常重合反応槽に具備されている内温計で測定された重合液の温度のことをいい、重合がバッチ式で行われる場合にはしばしば時間とともに内温が変化するため、その最高温度を指し、連続式の場合には一般的に重合槽毎に一定の値を設定するため、その設定された温度のことを指す。
また、ジヒドロキシ化合物や炭酸ジエステルの揮散を抑制するため、オリゴマー製造段階での重合圧力(絶対圧力)は、通常1kPa以上、好ましくは3kPa以上、より好ましくは5kPa以上、更に好ましくは10kPa以上、特に好ましくは15kPa以上で行う。一方、重合圧力が高すぎると重合反応の進行が遅くなり、余計な熱履歴が生じたり、生産効率が低下したりする可能性があるため、通常2000kPa以下、好ましくは1000kPa以下、より好ましくは100kPa以下、更に好ましくは50kPa以下、特に好ましくは30kPa以下である。
オリゴマー製造段階の重合時間は、通常0.1〜10時間、好ましくは0.5〜5時間、さらに好ましくは1〜3時間である。重合時間が短すぎると重合反応の速度が低下し、生産効率が低下するだけでなく、前述したような未反応モノマーの揮散を招く傾向がある。一方、重合時間が長すぎると、熱履歴による色相の悪化を招くことがある。
オリゴマー製造段階に続く段階(以下、「後重合段階」と称することがある。)では、反応系の圧力をオリゴマー製造段階の圧力から徐々に下げ、引き続き発生するモノヒドロキシ化合物を反応系外へ除きながら、最終的には重合圧力を通常2kPa以下、好ましくは1kPa以下にして行う。圧力が高すぎると後重合段階の重合時間が長くなり、生産効率の低下を招いたり、熱履歴増大による色相の悪化を招いたりすることがある。また、本発明の含窒素化合物は、後重合段階で圧力を低くして、少なくともその一部を留去して、最終的な製品であるポリカーボネート樹脂中の含有量を低下させた方が、色相の点から好ましい。
後重合段階の内温は、その最高温度として、通常210〜270℃、好ましくは220〜250℃、特に好ましくは220℃〜245℃である。後重合段階の温度が低すぎると、重合時間が長くなり、生産効率の低下を招いたり、熱履歴増大による色相の悪化を招いたりすることがある。一方、重合温度が高すぎると、色相が悪化したり、ポリカーボネート樹脂の分解を招いたりする可能性がある。
本発明の方法においては、全反応段階における反応液の最高温度は、250℃未満であることが好ましい。
後重合段階の重合時間は、通常0.5〜10時間、好ましくは1〜8時間、さらに好ましくは2〜5時間で行う。重合時間が短すぎると、生産効率が低下するだけでなく、所定の分子量のポリカーボネート樹脂が得られない可能性がある。一方、重合時間が長すぎると、熱履歴による色相の悪化を招く可能性がある。
本発明の方法で得られるポリカーボネート樹脂の分子量は、還元粘度で表すことができ、還元粘度は、通常0.30dL/g以上であり、0.35dL/g以上が好ましく、還元粘度の上限は、1.20dL/g以下、1.00dL/g以下がより好ましく、0.80dL/g以下が更に好ましい。
ポリカーボネート樹脂の還元粘度が低すぎると成形品の機械的強度が小さい可能性があり、大きすぎると、成形する際の流動性が低下し、生産性や成形性を低下させる傾向がある。
尚、還元粘度は、溶媒として塩化メチレンを用い、ポリカーボネート樹脂濃度を0.6g/dLに精密に調製し、温度20.0℃±0.1℃でウベローデ粘度管を用いて測定する。
本発明の方法で得られるポリカーボネート樹脂は、上述の通り重合後、通常、冷却固化させ、回転式カッター等でペレット化される。
ペレット化の方法は限定されるものではないが、最終重合反応槽から溶融状態で抜き出し、ストランドの形態で冷却固化させてペレット化させる方法、最終重合反応槽から溶融状態で一軸または二軸の押出機に樹脂を供給し、溶融押出しした後、冷却固化させてペレット化させる方法、又は、最終重合反応槽から溶融状態で抜き出し、ストランドの形態で冷却固化させて一旦ペレット化させた後に、再度一軸または二軸の押出機に樹脂を供給し、溶融押出しした後、冷却固化させてペレット化させる方法等が挙げられる。
その際、押出機中で、残存モノマーの減圧脱揮や、通常知られている、熱安定剤、中和剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色剤、帯電防止剤、滑剤、潤滑剤、可塑剤、相溶化剤、難燃剤等を添加、混練することも出来る。
また、ポリカーボネート樹脂の押出は、押出後の異物混入を防止するために、好ましくはJISB 9920(2002年)に定義されるクラス7、更に好ましくはクラス6より清浄度の高いクリーンルーム中で実施することが望ましい。
更には、押出されたポリカーボネート樹脂を冷却しチップ化する際は、空冷、水冷等の冷却方法を使用するのが好ましい。空冷の際に使用する空気は、ヘパフィルター等で空気中の異物を事前に取り除いた空気を使用し、空気中の異物の再付着を防ぐのが望ましい。水冷を使用する際は、イオン交換樹脂等で水中の金属分を取り除き、さらにフィルターにて、水中の異物を取り除いた水を使用することが望ましい。用いるフィルターの目開きは、99%除去の濾過精度として10〜0.45μmであることが好ましい。
本発明の方法で得られたポリカーボネート樹脂は、射出成形法、押出成形法、圧縮成形法等の通常知られている方法で成形物にすることができる。
また、種々の成形を行う前に、必要に応じて、樹脂に熱安定剤、中和剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色剤、帯電防止剤、滑剤、潤滑剤、可塑剤、相溶化剤、難燃剤等の添加剤を、タンブラー、スーパーミキサー、フローター、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、押出機などで混合することもできる。
本発明の方法で得られたポリカーボネート樹脂は例えば、芳香族ポリカーボネート、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリオレフィン、アクリル、アモルファスポリオレフィン、ABS、ASなどの合成樹脂、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネートなどの生分解性樹脂、ゴムなどの1種又は2種以上と混練して、ポリマーアロイとしても用いることもできる。
本発明によれば、耐光性、透明性、色相、耐熱性、熱安定性、及び機械的強度に優れ、性能の安定したポリカーボネート樹脂を、効率的かつ安定的に製造できる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を変更しない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
実施例の記載の中で用いた化合物、試薬を以下に示す。
ISB:イソソルビド(ロケットフルーレ社製、商品名POLYSORB−P)を、窒素気流下、内温155℃〜158℃(内圧400Pa)で、単蒸留したものを用いた。初留および釜残は、それぞれ5重量%ずつとした。
CHDM:1,4−シクロヘキサンジメタノール(新日本理化社製 商品名SKY CHDM)
DPC:ジフェニルカーボネート(三菱化学社製)
TMAH:テトラメチルアンモニウムヒドロキシド5水和物(東京化成工業社製)
イミダゾール(東京化成工業社製)
ジエタノールアミン(東京化成工業社製)
TINUVIN770DF(BASF社製)
亜リン酸水素2ナトリウム5水和物(和光純薬工業社製)
以下において、ISBの分析、およびポリカーボネート樹脂の物性の評価は次の方法により行った。
1)ISB中の窒素原子含有量
試料をアルゴン・酸素雰囲気内で燃焼させ、発生した燃焼ガスを燃焼・化学発光法を用いた微量窒素計(三菱化学アナリテック社製TN−10)にて測定を行った。標準試料はアニリンのトルエン溶液を使用した。
2)ISB中のナトリウム原子含有量
パーキンエルマー社製マイクロウェーブ分解容器にISBを約0.5g精秤し、97%硫酸2mLを加え、密閉状態にして230℃で10分間マイクロウェーブ加熱した。室温まで冷却後、68%硝酸1.5mLを加えて、密閉状態にして150℃で10分間マイクロウェーブ加熱した後、再度室温まで冷却を行い、68%硝酸2.5mLを加え、再び密閉状態にして230℃で10分間マイクロウェーブ加熱し、内容物を完全に分解させた。室温まで冷却後、上記で得られた液を純水で希釈し、サーモクエスト社製ICP−MSで定量した。
3)ISB中の蟻酸含有量
10mLメスフラスコに試料約4gを精秤し、脱塩水を加えて溶解した。液体クロマトグラフィーにて所定のピークの面積値から絶対検量線法により蟻酸の定量を行った後、含有量を算出した。
用いた装置や条件は、次のとおりである。
・装置:島津製作所製
システムコントローラ:CBM−20A
ポンプ:LC−10AD
カラムオーブン:CTO−10ASvp
検出器:SPD−M20A
分析カラム:Cadenza CD−18 4.6mmΦ×250mm
オーブン温度:40℃
・検出波長:220nm
・溶離液:0.1%リン酸水溶液
・試料注入量:20μL
4)ISB中のフルフラール含有量
10mLメスフラスコに試料約4gを精秤し、脱塩水を加えて溶解した。液体クロマトグラフィーにて所定のピークの面積値から絶対検量線法によりフルフラールの定量を行った後、含有量を算出した。
用いた装置や条件は、次のとおりである。
・装置:島津製作所製
システムコントローラ:CBM−20A
ポンプ:LC−10AD
カラムオーブン:CTO−10ASvp
検出器:SPD−M20A
分析カラム:Cadenza CD−18 4.6mmΦ×250mm
オーブン温度:40℃
・検出波長:273nm
・溶離液:脱塩水/アセトニトリル/リン酸=70/30/0.1
・試料注入量:10μL
5)ISBのpH
ビーカーに試料を15g計量し、脱塩水50gを加えて溶解した。水溶液のpHは、ガラス電極GTPH1B、参照電極GTRE10、温度計GT5TSN(いずれも三菱化学アナリテック社製)を用いて測定した。電極は予めpH4、pH7、pH9の標準溶液により校正を行ってから測定に用いた。
6)ISBの色相(溶液YI)
ビーカーに試料20gを計量し、脱塩水20gを加えて溶解した。光路長2cmのガラスセルに入れて、分光測色計CM−5(コニカミノルタ社製)により透過モードで測定を行い、溶液のイエローインデックス(YI)値を測定した。YI値が小さい程、黄色味が少ないことを示す。
7)ポリカーボネート樹脂の還元粘度
溶媒として塩化メチレンを用い、0.6g/dLの濃度のポリカーボネート樹脂溶液を調製した。森友理化工業社製ウベローデ型粘度管を用いて、温度20.0℃±0.1℃で測定を行い、溶媒の通過時間t0と溶液の通過時間tから次式より相対粘度ηrelを求め、
ηrel=t/t0
相対粘度から次式より比粘度ηspを求めた。
ηsp=(η−η0)/η0=ηrel−1
比粘度を濃度c(g/dL)で割って、還元粘度ηsp/cを求めた。この値が高いほど分子量が大きい。
8)ポリカーボネート樹脂の色相(ペレットYI)
ポリカーボネート樹脂の色相は、ASTM D1925に準拠して、ペレットの反射光におけるYI値(イエローインデックス値)を測定して評価した。装置はコニカミノルタ社製分光測色計CM−5を用い、測定条件は測定径30mm、SCEを選択した。シャーレ測定用校正ガラスCM−A212を測定部にはめ込み、その上からゼロ校正ボックスCM−A124をかぶせてゼロ校正を行い、続いて内蔵の白色校正板を用いて白色校正を行った。白色校正板CM−A210を用いて測定を行い、L*が99.40±0.05、a*が0.03±0.01、b*が−0.43±0.01、YIが−0.58±0.01となることを確認した。ペレットの測定は、内径30mm、高さ50mmの円柱ガラス容器にペレットを40mm程度の深さまで詰めて測定を行った。ガラス容器からペレットを取り出してから再度測定を行う操作を2回繰り返し、計3回の測定値の平均値を用いた。YI値が小さいほど樹脂の黄色味が少なく、色相に優れることを意味する。
[実施例1]
あらかじめ窒素気流下(酸素濃度0.0005〜0.001vol%)、撹拌翼を具備した容器に固体状態のイソソルビド(ISB)と、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド5水和物(TMAH)をISBに対して50重量ppm、亜リン酸水素2ナトリウム5水和物を1重量ppmとなるように仕込み、熱媒で加熱した。溶融が始まり、撹拌が可能になった時点で撹拌を開始し、全量を均一に溶融させ、内温を80℃にした。溶融開始から12時間後、溶融状態のISBをバットにサンプリングし、水冷して固化させた後、アルミラミネート袋に窒素下でヒートシールして冷蔵保管した。
得られたサンプルを前述の方法にしたがって各種分析を行った。ISBの窒素原子含有量は3.7重量ppm、ナトリウム原子含有量は0.2重量ppmであった。ISB中に含有される蟻酸量は1.3重量ppm、フルフラールは13重量ppbであり、pHは7.7、溶液YIは0.55であった。
このようにして得られたISBを窒素気流下(酸素濃度0.0005〜0.001vol%)、撹拌翼を具備した容器に仕込み、80℃に加温して、溶融液を調製した。1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)とジフェニルカーボネート(DPC)もISBと同様に、窒素気流下(酸素濃度0.0005〜0.001vol%)、撹拌翼を具備した容器にそれぞれ仕込み、100℃に加温して、溶融液を調製した。DPCは蒸留精製して塩化物イオン濃度を10ppb以下にしたものを用いた。続いて、窒素気流下(酸素濃度0.0005〜0.001vol%)、撹拌翼と還流冷却器を具備した重合装置を100℃に保持した状態で、溶融状態の各原料を、DPC、CHDM、ISBの順番に仕込み、攪拌して均一溶液を調製した。ISBが融解し始めてからDPCと混合されるまでの時間は、前述の12時間を合わせて13.5時間であった。
このように調製した原料に、重合触媒として酢酸カルシウム水溶液を添加した。各原料は一定のモル比(ISB/CHDM/DPC/酢酸カルシウム=0.700/0.300/1.01/1.5×10-6)となるように仕込んだ。
触媒を添加後、昇温を開始し、40分後に内温を210℃に到達させ、この温度を保持するように制御すると同時に減圧を開始し、210℃に到達してから90分後に13.3kPa(絶対圧力、以下同様)にして、この圧力を保持するようにしながら、さらに15分間保持した。重合反応とともに副生するフェノール蒸気は100℃の還流冷却器に導き、フェノール蒸気中に若干量含まれるモノマー成分を重合反応器に戻し、凝縮しないフェノール蒸気は続いて45℃の凝縮器に導いて回収した。
このようにしてISBの90重量%以上をオリゴマー化させた内容物を、一旦大気圧まで窒素で復圧させた後、撹拌翼および100℃に制御された還流冷却器を具備した別の重合反応装置に移し、昇温および減圧を開始して、40分で内温220℃、圧力200Paにした。その後、20分かけて圧力133Pa以下にした。2槽目の重合反応装置の減圧を開始した時点から115分後に所定撹拌動力に到達した。その後、反応槽内を窒素で復圧し、内容物をストランドの形態で抜き出し、回転式カッターでペレットにした。
得られたポリカーボネート樹脂の還元粘度は0.465dL/g、ペレットYIは12.3であった。結果を表1に示す。
[実施例2]
ISBを溶融させる際に、ISBに対して、亜リン酸水素2ナトリウム5水和物を添加せず、TMAHのみを50重量ppm加えた以外は、実施例1と同様に行った。
80℃で12時間溶融後のISBの窒素原子含有量は3.8重量ppm、ナトリウム原子含有量は0.1重量ppm未満であった。ISB中に含有される蟻酸量は1.2重量ppm、フルフラールは12重量ppb、pHは7.4、溶液YIは0.51であり、実施例1と同程度の保存安定性を示した。
2槽目の重合反応装置の反応を開始した時点から129分後に所定撹拌動力に到達した。得られたポリカーボネート樹脂の還元粘度は0.464dL/g、ペレットYIは11.3であり、実施例1よりも若干色相が向上した。結果を表1に示す。
[実施例3]
ISBを溶融させる際に、ISBに対して、亜リン酸水素2ナトリウム5水和物を添加せず、TMAHのみを100重量ppm加えた以外は、実施例1と同様に行った。
80℃で12時間溶融後のISBの窒素原子含有量は7.6重量ppm、ナトリウム原子含有量は0.1重量ppm未満であった。また、ISB中に含有される蟻酸量は1.2重量ppm、フルフラールは15重量ppbであり、pHは7.6、溶液YIは0.54であり、実施例1と同程度の保存安定性を示した。
2槽目の重合反応装置の反応を開始した時点から108分後に所定撹拌動力に到達した。得られたポリカーボネート樹脂の還元粘度は0.474dL/g、ペレットYIは13.4であり、実施例1と同程度の色相となった。結果を表1に示す。
[比較例1]
ISBを溶融させる際に、ISBに対してTMAHを200重量ppmと亜リン酸水素2ナトリウム5水和物を1重量ppm加えた以外は、実施例1と同様に行った。
80℃で12時間溶融後のISBの窒素原子含有量は15.3重量ppm、ナトリウム原子含有量は0.2重量ppmであった。また、ISB中に含有される蟻酸量は1.3重量ppm、フルフラールは13重量ppbであり、pHは8.8、溶液YIは0.55であり、実施例1と同程度の保存安定性を示した。
2槽目の重合反応装置の反応を開始した時点から94分後に所定撹拌動力に到達した。得られたポリカーボネート樹脂の還元粘度は0.477dL/g、ペレットYIは16.6であり、実施例1よりも反応速度が向上したが、得られたポリカーボネート樹脂の色相は悪化した。結果を表1に示す。
[実施例4]
ISBを溶融させる際に、ISBに対して、亜リン酸水素2ナトリウム5水和物を添加せず、トリエチルアミンのみを25重量ppm加えた以外は、実施例1と同様に行った。
80℃で12時間溶融後のISBの窒素原子含有量は2.9重量ppm、ナトリウム原子含有量は0.1重量ppm未満であった。また、ISB中に含有される蟻酸量は1.4重量ppm、フルフラールは18重量ppbであり、pHは7.3、溶液YIは0.72であり、実施例1と比較してISBの色相が若干悪化した。
2槽目の重合反応装置の反応を開始した時点から120分後に所定撹拌動力に到達した。得られたポリカーボネート樹脂の還元粘度は0.466dL/g、ペレットYIは14.5であり、実施例1と比較して、得られたポリカーボネート樹脂の色相が若干悪化した。結果を表1に示す。
[実施例5]
ISBを溶融させる際に、ISBに対して、亜リン酸水素2ナトリウム5水和物を添加せず、イミダゾールのみを10重量ppmのみ加えた以外は、実施例1と同様に行った。
80℃で12時間溶融後のISBの窒素原子含有量は4.0重量ppm、ナトリウム原子含有量は0.1重量ppm未満であった。また、ISB中に含有される蟻酸量は1.3重量ppm、フルフラールは13重量ppbであり、pHは7.5、溶液YIは0.52であり、実施例1と同等の保存安定性を示した。
2槽目の重合反応装置の反応を開始した時点から121分後に所定撹拌動力に到達した。得られたポリカーボネート樹脂の還元粘度は0.460dL/g、ペレットYIは12.1であり、実施例1と同等の色相のポリカーボネート樹脂が得られた。結果を表1に示す。
[実施例6]
ISBを溶融させる際に、ISBに対して、亜リン酸水素2ナトリウム5水和物を添加せず、TINUVIN770DFのみを50重量ppmのみ加えた以外は、実施例1と同様に行った。
80℃で12時間溶融後のISBの窒素原子含有量は2.9重量ppm、ナトリウム原子含有量は0.1重量ppm未満であった。また、ISB中に含有される蟻酸量は1.2重量ppm、フルフラールは12重量ppbであり、pHは7.5、溶液YIは0.65であり、実施例1と同等の保存安定性を示した。
2槽目の重合反応装置の反応を開始した時点から123分後に所定撹拌動力に到達した。得られたポリカーボネート樹脂の還元粘度は0.462dL/g、ペレットYIは14.0であり、実施例1と同等の色相のポリカーボネート樹脂が得られた。結果を表1に示す。
[比較例2]
ISBを溶融させる際に、ISBに対して亜リン酸水素2ナトリウム5水和物を50重量ppm加えた以外は、実施例1と同様に行った。
80℃で12時間溶融後のISBの窒素原子含有量は0.3重量ppm未満、ナトリウム原子含有量は10.6重量ppmであった。また、ISB中に含有される蟻酸量は8.5重量ppm、フルフラールは80重量ppbであり、pHは6.4、溶液YIは0.90であり、実施例1と比較して、ISBの劣化の程度が大きくなった。
2槽目の重合反応装置の反応を開始した時点から58分後に所定撹拌動力に到達した。得られたポリカーボネート樹脂の還元粘度は0.481dL/g、ペレットYIは35.1であり、得られたポリカーボネート樹脂の色相は著しく悪化した。結果を表1に示す。
[比較例3]
あらかじめ窒素気流下(酸素濃度0.0005〜0.001vol%)、撹拌翼を具備した蒸留容器に固体状態のISBと、ISBに対して亜リン酸水素2ナトリウム5水和物を50重量ppmとなるように仕込み、熱媒で加熱した。溶融が始まり撹拌が可能になった時点で撹拌を開始し、全量を均一に溶融させた。続いて、該容器の圧力を徐々に下げ、加温を行った。内圧133〜266Pa、内温160℃になった時点で留出が始まり、初留を25.5重量部採取した後、主留として403.5重量部、後留として28.5重量部採取し、残りは釜残として容器中に残した。主留の受け器の内温は80℃に調節した。主留の採取開始から12時間後、溶融状態のISBをバットにサンプリングし、水冷して固化させた後、アルミラミネート袋に窒素下でヒートシールし、保管した。
得られたサンプルを前述の方法にしたがって、各種分析を行った。ISBの窒素原子含有量は0.3重量ppm未満、ナトリウム原子含有量は0.1重量ppm未満であった。ISB中に含有される蟻酸量は12.2重量ppm、フルフラールは250重量ppbであり、pHは5.8、溶液YIは1.77であり、実施例1と比較して、溶融保持中にISBの劣化が進行していた。
重合反応は実施例1と同様に実施した。2槽目の重合反応装置の反応を開始した時点から153分後に所定撹拌動力に到達した。得られたポリカーボネート樹脂の還元粘度は0.452dL/g、ペレットYIは20.4であり、実施例1と比較して、反応速度が低下し、得られたポリカーボネート樹脂の色相も悪化した。結果を表1に示す。
[実施例7]
ISBを溶融させる際に、ISBに対して、亜リン酸水素2ナトリウム5水和物を添加せず、TMAHのみを50重量ppm加えた以外は、比較例3と同様に行った。蒸留により初留を25.0重量部採取した後、主留として401.3重量部、後留として29.9重量部採取し、残りは釜残として容器中に残した。
主留の採取開始から12時間後のISBの窒素原子含有量は3.0重量ppm、ナトリウム原子含有量は0.1重量ppmで未満あった。また、ISB中に含有される蟻酸量は1.2重量ppm、フルフラールは35重量ppbであり、pHは7.1、溶液YIは0.68であり、実施例1と比較して、ISBの色相が若干悪化した。
重合反応は実施例1と同様に実施した。2槽目の重合反応装置の反応を開始した時点から129分後に所定撹拌動力に到達した。得られたポリカーボネート樹脂の還元粘度は0.464dL/g、ペレットYIは14.3であり、実施例1と比較して、得られたポリカーボネート樹脂の色相が若干悪化した。結果を表1に示す。
[比較例4]
ISBを溶融させる際に亜リン酸水素2ナトリウム5水和物もTMAHも加えなかった以外は実施例1と同様に行った。
80℃で12時間溶融後のISBの窒素原子含有量は0.3重量ppm未満、ナトリウム原子含有量は0.1重量ppm未満であった。また、ISB中に含有される蟻酸量は10.5重量ppm、フルフラールは182重量ppbであり、pHは5.4、溶液YIは1.03であり、実施例1と比較して、溶融保持中にISBの劣化が進行していた。
2槽目の重合反応装置の反応を開始した時点から162分後に所定撹拌動力に到達した。得られたポリカーボネート樹脂の還元粘度は0.453dL/g、ペレットYIは33.5であり、実施例1と比較して、反応速度が低下し、得られたポリカーボネート樹脂の色相も悪化した。結果を表1に示す。
[実施例8]
ISBを溶融させる際に、ISBに対して、亜リン酸水素2ナトリウム5水和物を添加せず、ジエタノールアミンのみを25重量ppm加えた以外は、実施例1と同様に行った。
80℃で12時間溶融後のISBの窒素原子含有量は3.2重量ppm、ナトリウム原子含有量は0.1重量ppm未満であった。また、ISB中に含有される蟻酸量は1.2重量ppm、フルフラールは10重量ppbであり、pHは7.3、溶液YIは0.47であった。
2槽目の重合反応装置の反応を開始した時点から120分後に所定撹拌動力に到達した。得られたポリカーボネート樹脂の還元粘度は0.475dL/g、ペレットYIは10.5と良好な色相であった。結果を表1に示す。
[実施例9]
ISBを溶融させる際に、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(以下、BHTと略記することがある)を25重量ppm添加した他は実施例8と同様に行った。結果を表1に示す。
[実施例10]
溶融開始から48時間後、溶融状態のISBをバットにサンプリングし、水冷して固化させた後、アルミラミネート袋に窒素下でヒートシールして冷蔵保管した他は実施例1と同様に行った。実施例1に比べると、若干重合速度が低下し、得られたポリカーボネート樹脂の色相が悪化した。結果を表1に示す。
Figure 2012214793
本発明のポリカーボネート樹脂の製造方法によれば、耐光性、透明性、色相、耐熱性、熱安定性、及び機械的強度に優れ、性能の安定したポリカーボネート樹脂を、効率的かつ安定的に製造することが可能である。

Claims (16)

  1. 原料化合物としてジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを用いて、エステル交換触媒の存在下、エステル交換反応により重縮合させて得られたポリカーボネート樹脂を製造する方法であって、前記ジヒドロキシ化合物がヒドロキシ基の少なくとも1つのβ位またはγ位にエーテル性酸素原子を有する脂肪族ジヒドロキシ化合物を少なくとも含み、かつ前記原料化合物が、前記脂肪族ジヒドロキシ化合物に対する窒素原子換算の重量濃度として、0.3ppm以上10ppm未満の含窒素化合物を含み、前記脂肪族ジヒドロキシ化合物を、予め50℃以上に加熱し、溶融状態で0.5時間以上200時間以下保持した後、炭酸ジエステルと混合する工程を含むことを特徴とするポリカーボネート樹脂の製造方法。
  2. 前記脂肪族ジヒドロキシ化合物を、溶融した炭酸ジエステルと混合する工程を含む請求項1に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
  3. 前記原料化合物が、固体の前記脂肪族ジヒドロキシ化合物を含窒素塩基性化合物の存在下で加熱し、溶融状態にした後、蒸留精製した脂肪族ジヒドロキシ化合物を含有する原料化合物であって、当該原料化合物中に含まれる含窒素化合物の含有量が、脂肪族ジヒドロキシ化合物に対する窒素原子換算の重量濃度として0.3ppm以上10ppm未満である請求項1または請求項2に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
  4. 固体の脂肪族ジヒドロキシ化合物を含窒素化合物の存在下で加熱し、溶融状態にした後、蒸留精製することなく、ポリカーボネート樹脂の原料化合物として用いる請求項1または請求項2に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
  5. 固体の脂肪族ジヒドロキシ化合物を溶融状態にした後、前記エステル交換触媒を添加し、エステル交換反応により重縮合させる工程を含む請求項1乃至4の何れか1項に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
  6. 前記含窒素化合物が、アルカノールアミンである請求項1乃至5の何れか1項に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
  7. 前記原料化合物が、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む請求項1乃至6の何れか1項に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
  8. 前記脂肪族ジヒドロキシ化合物の加熱を70℃以上100℃未満で行う請求項1乃至7の何れか1項に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
  9. 前記脂肪族ジヒドロキシ化合物と前記炭酸ジエステルを混合する工程を含み、該工程が80℃以上130℃未満である請求項1乃至8の何れか1項に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
  10. 前記脂肪族ジヒドロキシ化合物が90重量%以上エステル交換反応で消費される段階の工程を230℃未満で行う請求項1乃至9の何れか1項に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
  11. 前記原料化合物がナトリウム化合物を含み、該ナトリウム化合物の含有量が、前記脂肪族ジヒドロキシ化合物に対するナトリウム原子換算の重量濃度として2ppm未満である請求項1乃至10の何れか1項に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
  12. 前記触媒として、リチウム及び長周期型周期表第2族の金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物を、その金属原子の合計量として、原料として用いた全ジヒドロキシ化合物1mol当たり、0.1μmol以上30μmol以下用いる請求項1乃至11の何れか1項に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
  13. 前記エステル交換触媒が、マグネシウム化合物及びカルシウム化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項12に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
  14. 全反応段階における反応液の最高温度が250℃未満である請求項1乃至13の何れか1項に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
  15. 前記脂肪族ジヒドロキシ化合物が、環状エーテル構造を有する請求項1乃至14の何れか1項に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
  16. 前記脂肪族ジヒドロキシ化合物が、下記式(2)の化合物である請求項1乃至15の何れか1項に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
    Figure 2012214793
JP2012081819A 2011-03-30 2012-03-30 ポリカーボネート樹脂の製造方法 Active JP5978719B2 (ja)

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