JP2012211309A - 液晶性ポリエステル樹脂の製造方法、および液晶性ポリエステル樹脂の製造装置 - Google Patents

液晶性ポリエステル樹脂の製造方法、および液晶性ポリエステル樹脂の製造装置 Download PDF

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邦彦 宮内
Michiyoshi Matsumoto
道吉 松本
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Abstract

【課題】
アセチル化反応槽でのオリゴマー化反応時に、槽内壁面の腐食を抑制することができ、さらに槽内壁面への異物の付着を抑制し、洗浄周期と品質を改善することができる、液晶性ポリエステル樹脂の製造方法および製造装置を提供する。
【解決手段】
本発明は、アセチル化反応槽において原料のアセチル化反応とオリゴマー化反応を行い、次いで重縮合反応槽においてオリゴマー化反応後の液の脱酢酸重縮合を行う液晶性ポリエステル樹脂の製造方法であって、
アセチル化反応槽として、内壁面が、Niを50質量%以上かつMoを10質量%以上含有する合金で構成された槽を用い、
アセチル化反応槽の内壁面を、槽の高さ方向に並ぶ3つ以上の帯状の領域に分け、各帯状領域の温度を特定の関係に保ちながらオリゴマー化反応を行うものである。
【選択図】なし

Description


本発明は液晶性ポリエステル樹脂の製造方法、および液晶性ポリエステル樹脂の製造装置に関する。
液晶性ポリエステル樹脂は耐熱性、流動性、電気特性などが優れている。そして、この優れた特性を活かして、電気・電子用途の小型精密成形品を中心に需要が拡大している。また、近年、その熱安定性や高熱寸法精度に着目して、発熱部品の支持基材としてOA機器や携帯電話の液晶ディスプレイ支持基材やランプの構造部品などに用いる検討がなされている。
液晶性ポリエステル樹脂の原料としては、p−ヒドロキシ安息香酸や6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸を主成分とし、共重合成分としてヒドロキノン,4,4’−ジヒドロキシビフェニル,2,6−ナフタレンジオール,脂肪族ジオールなどのジオール、テレフタル酸,イソフタル酸,2,6−ナフタレンジカルボン酸,脂肪族ジカルボン酸等のジカルボン酸、p−アミノ安息香酸,アミノフェノールなどのアミノ基含有モノマーが用いられる。
中でもヒドロキノンを用い、特定の組成比率とすることで、溶融加工性の改善や、成形品のガスの発生やふくれを抑制することが検討されている(特許文献1〜3)。
また、反応液面およびそれより上の反応液面付近に位置する部分の温度を規定し、留出液を吹きかけて戻すことで、反応槽の洗浄周期を長くすることが検討されている(特許文献4)。さらに、アセチル化反応槽で規定量の酢酸を留出させた後、反応液を重合槽に移行することで、耐熱性に優れた液晶性ポリエステル樹脂を得ることが検討されている(特許文献5)。
一方、液晶性ポリエステル樹脂の製造には、無水酢酸を用いるアセチル化反応工程がある。このアセチル化反応工程では、反応槽気相部やさらに上部の配管が腐食してしまうため、その対策が検討されてきた。例えば、アセチル化反応槽の材質としては、グラスライニング、チタン、ハステロイを選択することで、反応槽の腐食を抑制しつつ、色調や加工性を改善する方法が提案されている(特許文献6〜9)。
特開2004−256656号公報(特許請求の範囲) 特開2004−352862号公報(特許請求の範囲) 特開2006−89714号公報(特許請求の範囲) 特開平10−7781号公報(特許請求の範囲) 特開平6−192404号公報(特許請求の範囲) 特開2001−72750号公報(特許請求の範囲) 特開2003−171450号公報(特許請求の範囲) 特表2000−508002号公報(実施例6) 特開平2−58531号公報(特許請求の範囲)
液晶性ポリエステル樹脂の製造においては、所定量のモノマー混合物と無水酢酸とを反応槽に仕込み、窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら加熱し、還流しながら水酸基をアセチル化させるアセチル化反応、次いで所定の温度まで昇温を行いつつ規定量まで酢酸を留出させるオリゴマー化反応、さらに、減圧して酢酸留出を完了させると共に、規定の粘度まで反応を進める重縮合反応がある。通常、生産効率を重視してアセチル化反応槽と重縮合反応槽を使用することが多いが、例えば、特許文献4の方法では設備が複雑となり経済的に有効では無い。また、ジャケットの分割位置によっては効果が不十分である。
また、特許文献5の方法であっても、ヒドロキノンを用いた系ではヒドロキノンの強い還元性により、ステンレス鋼の酸化被膜が破壊され、反応槽内壁、特に気相部の腐食が顕著である。そのため、短期間でアセチル化反応槽が使用できなくなる。さらに、腐食によって溶出した成分により、得られた製品の色調が悪化する。さらに、ヒドロキノンは沸点を有するために揮発しやすく、反応槽気相部やさらに上部で凝縮して堆積するという問題もある。特に、アセチル化反応以降の酢酸留出工程(オリゴマー化反応)においては、濃縮した反応液から飛散するヒドロキノンやそのアセチル化物が、昇温によって高温となった反応槽気相部や、さらに上部で凝縮して堆積することにより、より腐食の影響が強くなる。
このため、特許文献6〜9の方法が提案されているが、グラスライニング、チタンについては耐食性には問題無いが、高価であるため設備費が高くなってしまう。また設備保護の観点から急激な昇温を避けるために、長時間かけて昇温を行う必要があり、生産性が劣る。さらに、ハステロイを使用する場合においても、ヒドロキノンやそのアセチル化物の揮発物の堆積があり、洗浄頻度の増加等やはり生産性が劣る。
本発明は、アセチル化反応槽における酢酸留出の工程において、槽内壁の腐食を抑制することができ、さらに槽内壁面への異物の付着を抑制し、洗浄周期と品質を改善することができる、液晶性ポリエステル樹脂の製造方法を提供する。また、その製造方法を実現できる液晶性ポリエステル樹脂の製造装置を提供する。
本発明者らは、アセチル化反応槽の内壁面を特定比率の合金とし、オリゴマー化反応時におけるアセチル化反応槽の内壁面の温度を特定の分布にすることで、オリゴマー化反応時の、槽内壁の腐食を抑制できることを見いだした。さらに、槽内壁面への異物の付着を抑制でき、洗浄周期と品質を改善できることを見いだした。
すなわち、本発明は、アセチル化反応槽において原料のアセチル化反応とオリゴマー化反応を行い、次いで重縮合反応槽においてオリゴマー化反応後の液の脱酢酸重縮合を行う液晶性ポリエステル樹脂の製造方法であって、
前記アセチル化反応槽として、該槽内壁面が、Niを50質量%以上かつMoを10質量%以上含有する合金で構成された槽を用い、
前記アセチル化反応槽の内壁面を、該槽の高さ方向に並ぶ3つ以上の帯状の領域に分け、各帯状領域の温度を特定の関係に保ちながら前記オリゴマー化反応を行う、液晶性ポリエステル樹脂の製造方法である。
ただし、前記各帯状領域を、前記アセチル化反応槽の下側から順に帯状領域1、帯状領域2、・・・および帯状領域nとしたとき、少なくとも帯状領域mは下記式(1)で表される槽高さ割合20〜80%の範囲内であり、nは3以上の整数であり、mは2〜(n−1)のいずれかであり、
前記各帯状領域の温度の特定の関係は、オリゴマー化反応中において、下記式(2)で表される酢酸留出率が80%以上となった時点から、下記式(3)で表される酢酸留出速度が0.1%/分以下となる時点までの間で、帯状領域1〜帯状領域(m−1)の温度をいずれも帯状領域mの温度よりも高くし、帯状領域(m+1)〜帯状領域nの温度をいずれも帯状領域mの温度よりも低くする。
式(1): 槽高さ割合(%)=アセチル化反応槽内側最下点から該当位置までの高さ(mm)/アセチル化反応槽内側最下点から最上点までの高さ(mm)×100(%)
式(2): 酢酸留出率(%)=留出液量(g)/[〔無水酢酸仕込みモル数−原料モノマー中の水酸基のモル数〕×無水酢酸分子量+原料モノマー中の水酸基のモル数×2×酢酸分子量+原料モノマー中のアセチル基のモル数×酢酸分子量](g)×100(%)
式(3): 酢酸留出速度(%/分)=5分間に留出した酢酸留出液量(g)/[〔無水酢酸仕込みモル数−原料モノマー中の水酸基のモル数〕×無水酢酸分子量+原料モノマー中の水酸基のモル数×2×酢酸分子量+原料モノマー中のアセチル基のモル数×酢酸分子量](g)×100(%)/5(分)。
また、本発明のポリエステル樹脂の製造装置は、本発明のポリエステル樹脂の製造方法を実現できるものであって、
アセチル化反応槽と重縮合反応槽とを有し、
前記アセチル化反応槽は、該槽内壁面が、Niを50%以上かつMoを10%以上含有する合金で構成されており、該槽内部を加熱するための加熱体を3つ以上備えており、
前記加熱体を、前記アセチル化反応槽の下側から順に加熱体1、加熱体2、・・・、および加熱体nとしたとき、少なくとも加熱体mは下記(1)式で表す槽高さ割合20〜80%の範囲内にあり、nは3以上の整数であり、mは2以上(n−1)以下の整数のいずれかである、液晶性ポリエステル樹脂の製造装置である。
式(1): 槽高さ割合(%)=アセチル化反応槽内側最下点から該当位置までの高さ(mm)/アセチル化反応槽内側最下点から最上点までの高さ(mm)×100(%)
本発明の液晶性ポリエステル樹脂の製造方法により、アセチル化反応槽でのオリゴマー化反応時に、槽内壁の腐食を抑制することができる。さらに槽内壁面への異物の付着を抑制し、洗浄周期と品質を改善することができる。また、本発明の液晶性ポリエステル樹脂の製造装置を用いれば、本発明の液晶性ポリエステル樹脂の製造方法を容易に実施できる。
図1は、外壁面が3つのジャケットで覆われた、本発明におけるアセチル化反応槽の概略断面図である。 図2は、外壁面が3つのジャケットで覆われた、本発明における別態様のアセチル化反応槽の概略断面図である。 図3は、外壁面が2つのジャケットで覆われたアセチル化反応槽の概略断面図である。 図4は、中心軸を有さないヘリカルリボン翼を例示する概略図である。 図5は、中心軸を有するヘリカルリボン翼を例示する概略図である。
[液晶性ポリエステル樹脂]
液晶性ポリエステル樹脂とは、異方性溶融相を形成する樹脂であり,例えば、液晶性ポリエステルや液晶性ポリエステルアミドなどエステル結合を有する液晶性ポリエステル樹脂が挙げられる。
液晶性ポリエステル樹脂の具体例としては、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位,4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位,ヒドロキノンから生成した構造単位,テレフタル酸および/またはイソフタル酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル樹脂、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位,エチレングリコールから生成した構造単位,4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位,ヒドロキノンから生成した構造単位,テレフタル酸および/またはイソフタル酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル樹脂、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位,エチレングリコールから生成した構造単位,4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位,テレフタル酸および/またはイソフタル酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル樹脂、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位,ヒドロキノンから生成した構造単位,4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位,2,6−ナフタレンジカルボン酸から生成した構造単位,テレフタル酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル樹脂などが挙げられる。これらの中でも好ましい組み合わせとして、p−ヒドロキシ安息香酸,ヒドロキノン,4,4’−ジヒドロキシビフェニル,テレフタル酸および/またはイソフタル酸が例示される。
ヒドロキノンとp−ヒドロキシ安息香酸,4,4’−ジヒドロキシビフェニル,テレフタル酸,イソフタル酸以外に用いるモノマーとしては、芳香族ヒドロキシカルボン酸としては、例えば6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸が挙げられ、芳香族ジカルボン酸としては、例えば2,6−ナフタレンジカルボン酸,4,4’−ジフェニルジカルボン酸,1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸,1,2−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸,4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸などが、それぞれ挙げられる。芳香族ジオールとしては、例えばレゾルシノール,t−ブチルヒドロキノン,フェニルヒドロキノン,クロロヒドロキノン,2,6−ジヒドロキシナフタレン,2,7−ジヒドロキシナフタレン,3,4’−ジヒドロキシビフェニル,2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン,4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルなどが挙げられる。アミノ基を有するモノマーとしては、p−アミノ安息香酸,p−アミノフェノールなどが挙げられる。
異方性溶融相を形成する液晶性ポリエステル樹脂の好ましい例としては、下記(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)の構造単位からなる液晶性ポリエステル樹脂が挙げられる。
Figure 2012211309
上記構造単位(I)はp−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位を、構造単位(II)は4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位を、構造単位(III)はヒドロキノンから生成した構造単位を、構造単位(IV)はテレフタル酸から生成した構造単位を、構造単位(V)はイソフタル酸から生成した構造単位を各々示す。
以下、この液晶性ポリエステル樹脂を例に挙げて説明する。
上記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)の共重合量は任意である。しかし、液晶性ポリエステル樹脂の特性を発揮させるためには次の共重合量であることが好ましい。構造単位(I)は構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して65〜80モル%であることが好ましい。より好ましくは68〜78モル%である。構造単位(II)は構造単位(II)および(III)の合計に対して55〜85モル%であることが好ましい。より好ましくは55〜78モル%であり、最も好ましくは58〜73モル%である。構造単位(IV)は構造単位(IV)および(V)の合計に対して50〜95モル%であることが好ましい。より好ましくは55〜90モル%であり、最も好ましくは60〜85モル%である。
構造単位(II)および(III)の合計と(IV)および(V)の合計とは実質的に等モルである。ここでいう「実質的に等モル」とは、末端を除くポリマー主鎖を構成する構造単位が等モルであることを示す。このため、末端を構成する構造単位まで含めた場合には必ずしも等モルとはならない態様も、「実質的に等モル」の要件を満たしうる。
特に、ヒドロキノンを有する上記構造単位を選択した場合には、ヒドロキノンによって反応槽内壁が腐食し易かったり、均質な反応液を得るのに時間がかかったり、ヒドロキノンの泡立ちや昇華によって組成ズレが起こり易かったりするため、本発明が特に効果を発揮することができる。
上記好ましく用いられる液晶性ポリエステル樹脂は、上記構造単位(I)〜(V)を構成する成分以外に、3,3’−ジフェニルジカルボン酸,2,2’−ジフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸,アゼライン酸,セバシン酸,ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸などの脂環式ジカルボン酸、クロロハイドロキノン,3,4’−ジヒドロキシビフェニル,4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン,4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド,4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン,3,4’−ジヒドロキシビフェニルなどの芳香族ジオール、プロピレングリコール,1,4−ブタンジオール,1,6−ヘキサンジオール,ネオペンチルグリコール,1,4−シクロヘキサンジオール,1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂肪族、脂環式ジオールおよびm−ヒドロキシ安息香酸、ポリエチレンテレフタレートなどを、液晶性や特性を損なわない程度の範囲でさらに共重合させることができる。
例えば、上記液晶性ポリエステル樹脂の製造において、次の製造方法が好ましく挙げられる。なお下記の製造方法は、p−ヒドロキシ安息香酸および4,4’−ジヒドロキシビフェニル,ヒドロキノン,テレフタル酸,イソフタル酸からなる液晶性ポリエステル樹脂の合成を例にとり説明したものであるが、共重合組成としてはこれらに限定されるものではなく、それぞれをその他のポリエチレンテレフタレート,ヒドロキシカルボン酸,芳香族ジオールあるいは芳香族ジカルボン酸に置き換え、下記の方法に準じて製造することができる。
本発明の実施形態において、液晶性ポリエステル樹脂における各構造単位の含有量は、以下の処理によって算出することができる。すなわち、液晶性ポリエステル樹脂をNMR(核磁気共鳴)試験管に量りとり、液晶性ポリエステル樹脂が可溶な溶媒(例えば、ペンタフルオロフェノール/重テトラクロロエタン−d混合溶媒)に溶解して、H−NMRスペクトル測定を行う。各構造単位の含有量は、各構造単位由来のピーク面積比から算出することができる。
[液晶性ポリエステル樹脂の製造方法]
以下、本発明の液晶性ポリエステル樹脂の製造方法について説明する。
本発明の液晶性ポリエステル樹脂の製造においては、所定量のモノマー混合物と無水酢酸を反応槽に仕込み、窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら加熱し、還流しながら水酸基をアセチル化させるアセチル化反応、次いで所定の温度まで昇温を行いつつ規定量まで酢酸を留出させるオリゴマー化反応、さらに、減圧して酢酸留出を完了させると共に、規定の粘度まで反応を進める重縮合反応がある。
本発明の液晶性ポリエステル樹脂の製造装置としては、アセチル化反応槽と重縮合反応槽の2槽を用いる。そして、第1槽目のアセチル化反応槽でアセチル化反応とオリゴマー化反応を行い、第2槽目の重縮合反応槽で脱酢酸重縮合反応を行う。アセチル化反応槽としては、例えば、原料投入口、攪拌翼、留出管、加熱コントロール用のジャケット、移行ラインを備えた槽を用いることができる。重縮合反応槽としては、例えば、アセチル化反応槽からの移行ライン、攪拌翼、留出管、加熱コントロール用のジャケット、減圧装置、底部に吐出口を備えた槽を用いることができる。
アセチル化反応では、まず、所定量のモノマー混合物と無水酢酸をアセチル化反応槽に仕込み、窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら加熱し、還流しながら水酸基をアセチル化させる。次いでオリゴマ−化反応では、留出管へと切り替えて酢酸を留出させながら所定の温度まで昇温を行い、規定量まで酢酸を留出させる。次いで、反応液を重縮合反応槽に移行し、規定量の酢酸が留出すれば、重縮合反応槽を減圧し、規定の攪拌トルクに到達すれば、脱酢酸重縮合反応を終了させる。脱酢酸重縮合反応が終了すれば、攪拌を停止し、反応槽を窒素にて加圧し、反応槽底部から口金を経由してストランド状にし、カッティング装置にてペレット化する。
[アセチル化反応槽におけるアセチル化反応とオリゴマー化反応]
本発明の液晶性ポリエステル樹脂の製造方法は、これらの方法によって液晶性ポリエステル樹脂を製造するに際し、アセチル化反応槽として、槽内壁面が、Niを50質量%以上かつMoを10質量%以上含有する合金で構成された槽を用い、アセチル化反応槽の内壁面を、槽の高さ方向に並ぶ3つ以上の帯状の領域に分け、各帯状領域の温度を特定の関係に保ちながらオリゴマー化反応を行う方法である。
ここで、槽の高さ方向に並ぶ3つ以上の帯状領域を、アセチル化反応槽の下側から順に帯状領域1、帯状領域2、・・・および帯状領域n(ただし、nは3以上の整数)としたとき、少なくとも帯状領域m(ただし、mは2以上(n−1)以下の整数のいずれか)は下記式(1)で表される槽高さ割合20〜80%の範囲内にある。つまり、一番下側の帯状領域1と一番上側の帯状領域nを除くその他の帯状領域の中の少なくとも1つの帯状領域は、槽高さ割合20〜80%の範囲内にある。
式(1): 槽高さ割合(%)=アセチル化反応槽内側最下点から該当位置までの高さ(mm)/アセチル化反応槽内側最下点から最上点までの高さ(mm)×100(%)。
また、各帯状領域の温度の特定の関係は、オリゴマー化反応中において、下記式(2)で表される酢酸留出率が80%以上となった時点から、下記式(3)で表される酢酸留出速度が0.1%/分以下となる時点までの間で、帯状領域1〜帯状領域(m−1)の温度をいずれも帯状領域mの温度よりも高くし、帯状領域(m+1)〜帯状領域nの温度をいずれも領域mの温度よりも低くする。
式(2): 酢酸留出率(%)=留出液量(g)/[〔無水酢酸仕込みモル数−原料モノマー中の水酸基のモル数〕×無水酢酸分子量+原料モノマー中の水酸基のモル数×2×酢酸分子量+原料モノマー中のアセチル基のモル数×酢酸分子量](g)×100(%)
式(3): 酢酸留出速度(%/分)=5分間に留出した酢酸留出液量(g)/[〔無水酢酸仕込みモル数−原料モノマー中の水酸基のモル数〕×無水酢酸分子量+原料モノマー中の水酸基のモル数×2×酢酸分子量+原料モノマー中のアセチル基のモル数×酢酸分子量](g)×100(%)/5(分)。
無水酢酸の使用量は、用いる液晶性ポリエステル樹脂原料中のフェノール性水酸基の合計の1.00〜1.20モル当量であることが好ましい。より好ましくは1.03〜1.16モル当量である。
アセチル化反応は、反応液を125℃以上150℃以下の温度で還流しながら、芳香族ジオールのモノアセチル化物の残存量が特定範囲となるまで反応を行うことが好ましい。アセチル化反応の装置としては、例えば還流管や精留塔、凝縮器を備えた反応装置を用いることができる。アセチル化の反応時間としては大まかには1〜5時間程度であるが、芳香族ジオールのモノアセチル化物の残存量が特定範囲となるまでの時間は、用いる液晶性ポリエステル樹脂原料や、反応温度によっても異なる。好ましくは、1.0〜2.5時間であり、反応温度が高い程短時間でよく、無水酢酸のフェノール性水酸基末端に対するモル比が大きい程短時間で行えるため好ましい。
次いで、オリゴマー化反応において、酢酸を留出させながら所定の温度まで昇温を行う際には、精留塔の塔頂温度を115℃〜150℃の範囲で行うことが好ましい。
さらに、均質な液晶性ポリエステル樹脂を得るためには、オリゴマー化反応中における反応液の温度と酢酸留出率の関係が重要であり、反応液の温度250℃の時に、酢酸留出率50〜80%となるように昇温、留出させることが好ましく、酢酸留出速度が0.1%/分以下になるまでオリゴマー化反応を続ける。そして、反応液の温度が260℃〜275℃の範囲で、酢酸留出率85%以上とした後で重合槽に移行することが好ましい。より好ましくは、酢酸留出率88%以上で移行することである。酢酸留出率85%以上で移行することで、ヒドロキノンを効率よく反応させることができ、留出状態が安定し、組成ズレの少ない良好な液晶性ポリエステル樹脂を得ることができるため好ましい。さらに、酢酸留出率85%以上で移行することで、残留するジカルボン酸の反応も促進され、均質な反応液となり、移行ラインに目開き0.5mm以下のフィルターを設けることできるため、異物の少ない良好な品質のポリマーを得る条件として好ましく用いることができる。
なお、本願においてオリゴマー化反応の開始とは、アセチル化反応が終了して酢酸の留出が始まる時点であり、オリゴマー化反応の終了とは酢酸留出速度が0.1%/分を越えて次に0.1%/分以下になる時点のことをいう。オリゴマー化反応中とはこの開始時点から終了時点までのことをいう。
酢酸留出率85%以上を達成するためには、アセチル化反応槽内壁面が合金で構成されており、この合金が合金全体に対してNiを50質量%以上、Moを10質量%以上含有するNi−Mo合金であることが必要である。好ましくは、Ni−Mo合金が、さらにCrを10質量%以上含有していることである。このNi−Mo合金を用いることで、留出率85%以上まで反応を行った際にも、ヒドロキノンによるアセチル化反応槽内壁の腐食が抑えられる。このNi−Mo合金以外の素材を用いた場合には、反応液相部や、特に気相部の腐食が起こったり、昇温に長時間を要したり、急激な加熱による発泡が起こったり、高温領域での材質の強度低下が起こるため好ましくない。
また、酢酸留出率85%以上を達成するためには、アセチル化反応槽においてオリゴマー化反応を行うに際し、槽の内壁面を特定の温度分布に保ちながらオリゴマー化反応を行うことが必要である。この特定の温度分布は以下に説明するとおりである。
まず、アセチル化反応槽の内壁面を、槽の高さ方向に並ぶ3つ以上の帯状の領域に分け、各帯状領域をアセチル化反応槽の下側から順に帯状領域1、帯状領域2、・・・および帯状領域n(nは3以上の整数)とする。そして、一番下側の帯状領域1と一番上側の帯状領域nとを除くその他の帯状領域のうち、少なくとも1つの帯状領域を選び、それを帯状領域m(mは2以上(n−1)以下の整数のいずれか)とする。
そして、オリゴマー化反応中において、酢酸留出率が80%以上となった時点から、酢酸留出速度が0.1%/分以下となる時点までの間で、帯状領域1〜帯状領域(m−1)の温度をいずれも帯状領域mの温度よりも高くし、帯状領域(m+1)〜帯状領域nの温度をいずれも帯状領域mの温度よりも低くしつつ、オリゴマー化反応を行う。酢酸留出率が80%以上となり、アセチル化反応槽内の酢酸が増えてきたときに、腐食の傾向が強いアセチル化反応槽の気相部は、帯状領域(m+1)〜帯状領域nの範囲として低めの温度に制御して腐食を抑える。そして、反応液を昇温するためにアセチル化反応槽の下側は、帯状領域1〜帯状領域(m−1)の範囲として高めの温度に制御する。さらに、酢酸の留出によって液面が低下する範囲は帯状領域mとして、上記の温度関係となるように独立に温度を制御する。本願発明の製造方法は、このような温度で制御することによって、酢酸によるアセチル化反応槽内部の腐食を抑えながら、酢酸留出率を85%以上にまで高めることができる。
反応液の液面の位置は、オリゴマー化反応の終了時点で液面が帯状領域mの範囲内にあることが好ましい。オリゴマー化反応の開始時点では、液面は帯状領域(m+1)〜nの範囲内にあってもよいが、帯状領域mの範囲内にあることがより好ましい。つまり、オリゴマー化反応の開始から終了までを通じて、反応液の液面が帯状領域mの範囲内で推移することがより好ましい。
オリゴマー化反応中の酢酸が留出していく過程で反応液の液面が低下し、反応液から露出した壁面にモノマーやオリゴマーが付着する。そして、これらモノマーやオリゴマーが熱履歴を受け、正常ポリマーの融点以上、例えば350℃以上でも溶融しない異物になってしまう。そのため、反応液の液面の変動範囲を独立で温度制御することで、アセチル化反応槽の壁面への付着物の堆積を抑制する。
各帯状領域の具体的な位置としては、帯状領域mは下記(1)式で示す槽高さ割合20〜80%の範囲内にあればよい。オリゴマー化反応中の反応液の液面は、この槽高さ割合20〜80%の範囲内で推移するので、この範囲内に帯状領域mを設定すればよい。帯状領域mよりも下側にある帯状領域1〜帯状領域(m−1)の位置は特に限定されないが、槽高さ割合0〜60%の範囲内にあることが好ましい。帯状領域mよりも上側にある帯状領域(m+1)〜帯状領域nの位置も特に限定されないが、槽高さ割合40〜100%の範囲内にあるのが好ましい。
式(1): 槽高さ割合(%)=アセチル化反応槽内側最下点から該当位置までの高さ(mm)/アセチル化反応槽内側最下点から最上点までの高さ(mm)×100(%)。
オリゴマー化反応中の各帯状領域の具体的な温度としては、帯状領域(m+1)〜帯状領域nをいずれも100〜210℃、帯状領域mを120〜250℃、帯状領域1〜帯状領域(m−1)をいずれも120〜330℃にすることが好ましい。さらに、帯状領域(m+1)〜帯状領域nをいずれも110〜200℃、帯状領域mを130〜240℃、帯状領域1〜帯状領域(m−1)をいずれも130〜320℃にすることがより好ましい。

また、オリゴマー化反応中における各帯状領域の温度差としては、酢酸留出率70%以上で、帯状領域mの温度を帯状領域(m+1)〜帯状領域nのいずれの温度よりも10℃以上高く、帯状領域1〜帯状領域(m−1)のいずれの温度も帯状領域mの温度よりも10℃以上高くすることが好ましい。さらに、酢酸留出率80%以上で、帯状領域mの温度を帯状領域(m+1)〜帯状領域nのいずれの温度よりも20℃以上高く、帯状領域1〜帯状領域(m−1)のいずれの温度も帯状領域mの温度よりも20℃以上高くすることがより好ましい。
帯状領域の数は3つ以上であればよいが、3つであることが好ましい。上述のように、本発明の製造方法では、オリゴマー化反応中においてアセチル化反応槽の内壁面を異なる3つの温度の領域に分ければよいので、帯状領域も3つに分かれていれば十分である。さらに、後述する槽の壁を加熱するための加熱体も3つで済むので、設備の費用の点でも好ましい。帯状領域の数が3つの場合は、帯状領域mは帯状領域2になる。また、隣り合う帯状領域は必ずしも接している必要はない。本願の発明の効果を損なわない限り、隣り合う帯状領域の間に温度制御がされていない空間があってもよい。
[液晶性ポリエステル樹脂の製造装置]
本発明の液晶性ポリエステル樹脂の製造方法を実現するために、本発明の製造装置は以下のような構成をとる。
まず、本発明の製造装置は、アセチル化反応槽と重縮合反応槽とを有している。そして、このアセチル化反応槽は、槽内壁面が合金で構成されており、この合金が合金全体に対してNiを50質量%以上、Moを10質量%以上含有するNi−Mo合金である。また、Ni−Mo合金が、さらにCrを10質量%以上含有していることが好ましい。
さらに、本発明の製造装置は、前述の各帯状領域を特定の温度に保つために、帯状領域1,帯状領域2,・・・,帯状領域nに対応して、加熱体1,加熱体2,・・・および加熱体nを備えている。そして、帯状領域mに対応する加熱体を加熱体mとし、この加熱体mを槽高さ割合20〜80%の範囲内に備えている。
加熱体の設置位置や種類は特に制限はなく、アセチル化反応槽の内壁面に取り付けても、槽の壁の内側に埋め込んでも、槽の外壁面に取り付けて槽の壁を介して内壁面を間接的に加熱してもよい。内壁面に取り付けたり、壁の内側に埋め込むものとしてはコイルなどが例示できる。槽の外壁面に取り付けるものとしては、コイルやジャケットなどが例示できる。これらの中でも、加熱する位置を容易に変更でき、加熱範囲を均一な温度で加熱できる点で、外壁面にジャケットを取り付ける方法が好ましい。加熱体の発熱方法としては、ジャケットやコイルを電熱線で加熱する方法や、ジャケットやコイル内をベーパーまたは液状の熱媒で循環する方法などが用いられる。好ましくはベーパーまたは液状の熱媒で循環する方法である。さらに好ましくは、ジャケット内を液状の熱媒でポンプにて循環する方法であり、この方法だと安定して温度を制御できる。また、帯状領域によっては、積極的に加熱する必要はなく、保温するだけでよい場合がある。このような帯状領域には、電熱線や熱媒循環ラインを有さない保温材を用いてもよい。本願においては、このような保温材も「加熱体」に含めるものとする。
各加熱体の位置は各帯状領域の位置に対応させる。具体的には、加熱体mは槽高さ割合20〜80%の範囲内に設置する。加熱体1〜加熱体(m−1)は加熱体mよりも下側に設置し、好ましくは槽高さ割合0〜60%の範囲内に設置する。加熱体(m+1)〜加熱体nは領域mよりも上側に設置し、好ましくは槽高さ割合40〜100%の範囲内に設置する。なお、アセチル化反応槽の外壁面に取り付ける加熱体の場合、加熱体の上端および下端の位置は、それぞれ加熱体と外壁面との接触面の上端および下端の位置である。また、図1の符号6の加熱体のように、アセチル化反応槽の槽厚みの分だけ、下端の位置が槽高さ割合0%(符号14)よりも下側になることがある。このような場合は、加熱体の下端が槽高さ割合0%の位置にあるとみなす。
各加熱体の温度は、前述の各帯状領域の温度関係を実現するために、オリゴマー化反応中において、酢酸留出率が80%以上となった時点から、酢酸留出速度が0.1%/分以下となる時点までの間で、加熱体1〜加熱体(m−1)の温度をいずれも加熱体mの温度よりも高くし、加熱体(m+1)〜加熱体nの温度をいずれも加熱体mの温度よりも低くする。
各加熱体の具体的な温度も、前述の帯状領域の具体的な温度を実現するために、オリゴマー化反応中において、加熱体(m+1)〜加熱体nをいずれも100〜210℃、加熱体mを120〜250℃、加熱体1〜加熱体(m−1)をいずれも120〜330℃の範囲内の温度にすることが好ましい。さらに、加熱体(m+1)〜加熱体nをいずれも110〜200℃、加熱体mを130〜240℃、加熱体1〜加熱体(m−1)をいずれも130〜320℃の範囲内の温度とすることがより好ましい。
また、オリゴマー化反応中の各加熱体の温度差としては、酢酸留出率が70%以上で、加熱体mの温度を加熱体(m+1)〜加熱体nのいずれの温度よりも10℃以上高く、加熱体1〜加熱体(m−1)のいずれの温度も加熱体mの温度よりも10℃以上高くすることが好ましい。さらに、酢酸留出率80%以上で、加熱体mの温度を加熱体(m+1)〜加熱体nのいずれの温度よりも20℃以上高く、加熱体1〜加熱体(m−1)のいずれの温度も加熱体mの温度よりも20℃以上高くすることがより好ましい。帯状領域と加熱体との温度は多少差が生じることはあるが、この温度範囲や温度関係で加熱体の温度を制御することで、前述の帯状領域の温度範囲や温度関係を実現することができる。なお、加熱体として熱媒循環ラインを埋め込んだジャケットを使用する場合、加熱体の温度は、ジャケット部への入り口に取り付けた温度計によって測定した熱媒の温度である。
加熱体の数は3つ以上であればよいが、帯状領域と同様に3つであることが好ましい。加熱体が3つの場合は、加熱体mは加熱体2になる。また、隣り合う帯状領域が接していないのであれば、隣り合う加熱体も接している必要はない。
アセチル化反応槽から重縮合反応槽への移行方法は特に制限がないが、移行ラインにフィルターを設けた場合には、フィルター目に異物が捕集されてくると圧損となり、自然落下では移行に長時間を要するため、アセチル化反応槽を窒素等で加圧し、圧送する方法が好ましい。
[重縮合反応槽における重縮合反応]
重縮合反応槽は、攪拌翼としてヘリカルリボン翼を備えた反応容器を用いることが好ましい。ヘリカルリボン翼とは、撹拌軸のフレームに螺旋状にリボン翼が取り付けられているものであり、例えば、図4、図5のようなものが挙げられる。図4のヘリカルリボン翼は、中心軸を有さないフレームにリボン翼が取り付けられているヘリカルリボン翼である(以下、中心軸を有さないヘリカルリボン翼とする)。この中心軸を有さないヘリカルリボン翼は、回転軸16と、回転軸16の末端に固定され長手方向が反応容器20の直径方向である固定棒21と、この固定棒の両端に固定され長手方向が反応容器20壁面に平行な2本以上のフレーム棒17と、これらフレーム棒17に螺旋状に巻き付きながら固定されたリボン翼18とで構成されている。各フレーム棒は反応容器20壁面からの距離が反応容器内径の0.2倍以内の所に位置している。そして、回転軸16の回転に伴い、回転軸16を中心として反応容器20の中でリボン翼18が回転する。図5のヘリカルリボン翼は、中心軸を兼ねた回転軸16と、回転軸16に固定され長手方向が反応容器20の直径方向である複数の固定棒21と、固定棒21の末端に固定され反応容器20壁面に沿って螺旋状に進むリボン翼18とで構成されている。ヘリカルリボン翼18の反応容器20壁面からのクリアランスは50mm以下が好ましい。さらに好ましくは20mm以下である。
重縮合反応において、ヒドロキノンの泡立ちや昇華による反応液の上昇を抑制するため、ヘリカルリボン翼の回転方向は掻き下げ方向であることがより好ましい。ここでいう掻き下げ方向とは、缶壁面付近の反応液がリボン翼の回転方向によって缶底部に向かって押し下げられることである。逆に、掻き上げ方向とは、缶壁面付近の反応液がリボン翼の回転方向によって上向きに押し上げられることを言う。
さらに、より効率の良い撹拌混合状態を達成するため、減圧前の撹拌剪断速度は150〜500(1/秒)の範囲であることが好ましい。攪拌剪断速度の下限は200(1/秒)以上がより好ましい。攪拌剪断速度の上限は350(1/秒)以下がより好ましい。この撹拌剪断速度とは、撹拌翼と缶壁面での剪断速度を下記式(4)で求められた値をいう。
式(4): 剪断速度(1/秒)=2×2×3.14×撹拌数(回転/秒)×缶内径×缶内径/(缶内径×缶内径−撹拌翼外径×撹拌翼外径)。
撹拌剪断速度の下限が150(1/秒)以上であれば、ハイドロキノンを含む反応液が均一に混合できるため好ましい。撹拌剪断速度の上限が500(1/秒)以下であれば、高速撹拌混合による反応液の飛散や昇華物の飛散を抑制できるため好ましい。
また、ヘリカルリボン翼としては、中心軸を有さないヘリカルリボン翼が好ましい。中心軸を有さないヘリカルリボン翼を用いると、剪断速度の小さい撹拌軸中心部へのポリマー付着量が少なく、缶残ポリマーを極力少なくすることができる。その結果、中心軸近傍の異常滞留がなくなり、反応液が均一に撹拌され、内温分布が小さく均一な反応液を得ることができ、良好な液晶性ポリエステル樹脂を得ることができる。
さらに、ヘリカルリボン翼で重縮合反応を行うに際し、ヒドロキノンを十分に反応させてから減圧を行う必要があるため、酢酸留出率の90%以上で減圧を開始することが好ましい。より好ましくは93%以上である。酢酸留出率が90%未満であると、ヒドロキノンの反応が不十分であるため、減圧を開始した後に減圧装置に向かって昇華物が飛散したり、ヒドロキノンの泡立ちが促進されるため好ましくない。
酢酸留出率90%後の重縮合時の圧力としては、減圧して1333Pa以下とすることが好ましく、より好ましくは133Pa以下である。
最終重合温度は、融点+20℃程度が好ましく、370℃以下であることが好ましい。
脱酢酸重縮合反応終了後、得られたポリマーを重縮合反応槽から取り出すには、ポリマーが溶融する温度で重縮合反応槽内を、例えばおよそ0.02〜0.5MPaに加圧し、重縮合反応槽下部に設けられた吐出口よりストランド状に吐出し、ストランドを冷却水中で冷却して、ペレット状に切断し、樹脂ペレットを得ることができる。溶融重合法は均一なポリマーを製造するために有利な方法であり、ガス発生量がより少ない優れたポリマーを得ることができるので好ましい。
液晶性ポリエステル樹脂を製造する際に、固相重合法により重縮合反応を完了させることもできる。例えば、液晶性ポリエステル樹脂のポリマーまたはオリゴマーを粉砕機で粉砕し、窒素気流下、または、減圧下、液晶性ポリエステル樹脂の融点−5℃〜融点−50℃の範囲で1〜50時間加熱し、所望の重合度まで重縮合し、反応を完了させる方法が挙げられる。固相重合法は高重合度のポリマーを製造するための有利な方法である。
液晶性ポリエステル樹脂の溶融粘度は10〜500Pa・sが好ましい。より好ましくは12〜200Pa・sである。なお、この溶融粘度は融点(Tm)+10℃の条件で、剪断速度1000(1/秒)の条件下で高化式フローテスターによって測定した値である。
液晶性ポリエステル樹脂の融点は特に限定されるものではないが、高耐熱用途に用いるために280℃以上となるよう共重合成分を組み合わせることが好ましい。
液晶性ポリエステル樹脂の重縮合反応は無触媒でも進行するが、酢酸第一錫,テトラブチルチタネート,酢酸カリウムおよび酢酸ナトリウム,三酸化アンチモン,金属マグネシウムなどの金属化合物を使用することもできる。
液晶性ポリエステル樹脂の機械強度その他の特性を付与するために、さらに充填材を配合することができる。充填材は特に限定されるものでないが、繊維状,板状,粉末状,粒状などの充填材を使用することができる。具体的には例えば、ガラス繊維,PAN系やピッチ系の炭素繊維,ステンレス繊維,アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維,芳香族ポリアミド繊維や液晶性ポリエステル繊維などの有機繊維,石膏繊維,セラミック繊維,アスベスト繊維,ジルコニア繊維,アルミナ繊維,シリカ繊維,酸化チタン繊維,炭化ケイ素繊維,ロックウール,バサルト繊維,酸化チタンウィスカー,チタン酸カリウムウィスカー,チタン酸バリウムウィスカー,ホウ酸アルミニウムウィスカー,窒化ケイ素ウィスカーなどの繊維状,ウィスカー状充填材,マイカ,タルク,カオリン,シリカ,ガラスビーズ,ガラスフレーク,ガラスマイクロバルーン,クレー,二硫化モリブデン,ワラステナイト,酸化チタン,酸化亜鉛,ポリリン酸カルシウムおよび黒鉛などの粉状や粒状あるいは板状の充填材が挙げられる。充填材は、その表面を公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤,チタネート系カップリング剤など)、その他の表面処理剤で処理して用いることもできる。
これら充填材のなかで特にガラス繊維が入手性、機械的強度のバランスの点から好ましく使用される。ガラス繊維の種類は、一般に樹脂の強化用に用いるものならば特に限定はなく、例えば、長繊維タイプや短繊維タイプのチョップドストランドおよびミルドファイバーなどから選択して用いることができる。また、これらのうち2種以上を併用して使用することもできる。ガラス繊維としては、弱アルカリ性のものが機械的強度の点で優れており、好ましく使用できる。また、ガラス繊維はエポキシ系,ウレタン系,アクリル系などの被覆あるいは収束剤で処理されていることが好ましく、エポキシ系が特に好ましい。またシラン系,チタネート系などのカップリング剤、その他表面処理剤で処理されていることが好ましく、エポキシシラン,アミノシラン系のカップリング剤が特に好ましい。
なお、ガラス繊維は、エチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で被覆あるいは集束されていてもよい。
充填材の配合量は、液晶性ポリエステル樹脂100質量部に対し、通常30〜200質量部であり、好ましくは40〜150質量部である。
さらに、液晶性ポリエステル樹脂には、酸化防止剤および熱安定剤(たとえばヒンダードフェノール、ヒドロキノン、ホスファイト類およびこれらの置換体など)、紫外線吸収剤(たとえばレゾルシノール、サリシレート)、亜リン酸塩または次亜リン酸塩などの着色防止剤、滑剤および離型剤(モンタン酸およびその金属塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミドおよびポリエチレンワックスなど)、染料および顔料を含む着色剤、導電剤あるいは着色剤としてカーボンブラック、結晶核剤、可塑剤、難燃剤(臭素系難燃剤、燐系難燃剤、赤燐、シリコーン系難燃剤など)、難燃助剤、および帯電防止剤などの通常の添加剤、熱可塑性樹脂以外の重合体を配合して、所定の特性をさらに付与することができる。
これらの添加剤を配合する方法は、溶融混練によることが好ましく、溶融混練には公知の方法を用いることができる。たとえば、バンバリーミキサー,ゴムロール機,ニーダー,単軸もしくは二軸押出機などを用い、180〜350℃、より好ましくは250〜320℃の温度で溶融混練して液晶性ポリエステル樹脂組成物とすることができる。その際には、1)液晶性ポリエステル樹脂、任意成分である充填材およびその他の添加剤との一括混練法、2)まず液晶性ポリエステル樹脂にその他の添加剤を高濃度に含む液晶性ポリエステル樹脂組成物(マスターペレット)を作成し、次いで規定の濃度になるようにその他の熱可塑性樹脂、充填材およびその他の添加剤を添加する方法(マスターペレット法)、3)液晶性ポリエステル樹脂とその他の添加剤の一部を一度混練し、ついで残りの充填材およびその他の添加剤を添加する分割添加法など、どの方法を用いてもかまわない。
液晶性ポリエステル樹脂およびそれを含む液晶性ポリエステル樹脂組成物は、通常の射出成形,押出成形,プレス成形などの成形方法によって、優れた表面外観(色調)および機械的性質,耐熱性,難燃性を有する三次元成形品、シート、容器、パイプ、フィルムなどに加工することができる。なかでも射出成形により得られる電気・電子部品用途に適している。
このようにして得られた液晶性ポリエステル樹脂およびそれを含む液晶性ポリエステル樹脂組成物は、例えば、リレー関連部品、コイル関連部品、スイッチやモーター関連部品、センサー関連部品、軸受関連部品、HDD関連部品、LED関連部品、コネクター関連部品、吸音・緩衝材関連部品、フィルム、繊維などに用いることができる。
以下、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって制限されるものではない。
実施例1〜6および比較例1〜5の製造工程をそれぞれ最大10回(10バッチ)、実施例7〜15および比較例6〜15の製造工程をそれぞれ最大20回(20バッチ)行い、次の(1)〜(11)で示す評価を行った。なお、最大バッチ数に満たないバッチで試験を終了した場合は、終了したバッチまでの平均値を記載した。
(1)アセチル化反応槽内壁面合金の組成(質量%)
アセチル化反応槽内壁面と同じ合金を、縦10mm×横10mm×厚み3mmに切断した。日立ハイテクフィールディング(株)製エネルギー分散型X線分析装置付き走査型電子顕微鏡(SEMEDX TypeN型)で、切断した合金の組成(質量%)を調べた。
(2)オリゴマー化反応終了時の液面位置
試験1バッチ目のアセチル化反応槽でのオリゴマー化反応が終了した後、上部フランジからSUS製の棒を挿入した。SUS棒に付着した反応液の位置から液面高さを計算し、液面の位置がどの帯状領域の範囲内にあるのかを調べた。
(3)酢酸留出率(%)、酢酸留出速度(%/分)
アセチル化反応槽でのオリゴマー化反応中に、留出酢酸容器内の酢酸質量(g)を常時測定し、オリゴマー化反応中の酢酸留出率と酢酸留出速度を求めた。
重縮合反応槽での酢酸留出率については、留出酢酸容器内の酢酸質量(g)を常時測定し、アセチル化反応槽で留出した酢酸質量(g)と重縮合反応槽で留出した酢酸質量(g)の合計酢酸質量(g)から酢酸留出率を求め、減圧開始時の酢酸留出率とした。
(4)オリゴマー化反応時間(分)
アセチル化反応槽において、酢酸を留出開始してから、酢酸留出速度が0.1%/分を越えて次に0.1%/分以下となるまでの時間を、試験バッチ毎に調べた。そして、全ての試験バッチの平均値を各実施例と比較例におけるオリゴマー化反応時間とした。
(5)フィルター捕集物の質量(g)
全ての試験バッチ終了後、アセチル化反応槽からオリゴマー化反応槽への移行ラインに取り付けられたフィルターを取り外し、付着物の質量を調べた。
(6)槽内の気相部、液相部での腐食度(mm/y)
試験片を#400サンドペーパーで磨き、脱脂洗浄し、質量を測定した。気相部での腐食度は、上部フランジからSUS316L針金で試験片を吊るして測定した。液相部での腐食度は、攪拌軸にSUS316L針金で試験片を固定して測定した。全ての試験バッチ終了後に試験片を取り出し、トリエチレングリコールで250℃×5hr洗浄を行い、超音波洗浄後、水洗し、乾燥後に質量を測定した。腐食度は下記式で求めた。
・腐食度(mm/年)=[365(日)×24(時間)×試験片の質量差(g)]/[試験片の比重(g/cm)×試験片の表面積(cm)×試験時間(時間)]
また、水洗、乾燥後の試験片については、顕微鏡を用いて表面観察を行った。
(7)減圧不良発生バッチ数
試験バッチを続けて行い、減圧時のコントロール不良や真空度の振れが生じ始めたバッチ数を調べた。
(8)口金詰まり発生バッチ数
試験バッチを続けて行い、吐出口の口金が詰まり始めたバッチ数を調べた。
(9)製品収率
試験バッチ毎に製品収率を求めた。そして、全ての試験バッチの平均値を各実施例と比較例の製品収率とした。
・製品収率(%)=ペレット質量(kg)/理論ポリマー質量(kg)×100。
(10)融点のバラツキ(標準偏差)
パーキンエルマー製の示差走査熱量計DSC−7を用いて測定した。室温から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)を観測した。次いで、Tm1+20℃の温度で5分間保持した後、20℃/分の降温条件で室温まで一旦冷却し、再度20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm2)を融点とし、その標準偏差値を求めた。
(11)色調(L値)
試験バッチ毎に得られたペレットを、スガ試験器(株)製SMカラーコンピューター装置を用いて、明るみ(L値)を測定した。そして、全ての試験バッチの平均値を各実施例と比較例の色調(L値)とした。
(実施例1)
留出管と留出酢酸容器、ヘリカル翼を有し、内壁面が材質A(組成:Ni 57質量%、Cr 16質量%、Mo 16質量%)で構成された容積5Lのアセチル化反応槽1を用意した。加熱体として内部に熱媒循環ラインを埋め込んだジャケットを用い、アセチル化反応槽1の外壁面を3分割したジャケットで覆った。各ジャケットは外壁面を、加熱体1(帯状領域1):槽高さ割合0〜30%、加熱体2(帯状領域2):槽高さ割合30〜70%、加熱体3(帯状領域3):槽高さ割合70〜90% の範囲を覆った。それぞれのジャケットに接続したヒーターと循環ポンプで熱媒(新日鐵化学社製、サームエス600)をジャケット内に循環させた。3つのジャケットをそれぞれ個別に温度制御しながら、次のように重合を行った。
アセチル化反応槽1にp−ヒドロキシ安息香酸1012質量部(54モル%)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル409質量部(16モル%)、ヒドロキノン104質量部(7モル%)、テレフタル酸339質量部(15モル%)、イソフタル酸182質量部(8モル%)および無水酢酸1527質量部(フェノール性水酸基合計の1.10当量)を仕込んだ。仕込んだ原料を窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら、加熱体3(帯状領域3)温度を120℃、加熱体2(帯状領域2)と加熱体3(帯状領域1)温度を150℃に制御し、反応液の温度を145℃に保ちながら1.5時間アセチル化反応させた。
次に、留出管を留出酢酸容器側に切り替え、加熱体3(帯状領域3)の温度を170℃、加熱体2(帯状領域2)の温度を220℃、加熱体1(帯状領域1)の温度を275℃まで、それぞれ0.8℃/分の昇温速度で昇温していき、酢酸留出速度が0.1%/分以下に低下するまでオリゴマー化反応を続けた。その時の反応液の温度は267℃で、酢酸留出率は89%で、液面位置は加熱体2(帯状領域2)の高さ範囲内であった。
次に、重縮合反応槽2に移行ライン経由で反応液を移行した。重縮合反応槽2は、留出管、留出酢酸容器と減圧装置を有し、重縮合反応槽内壁と中心軸を有さないヘリカルリボン翼との隙間が5mmであり、内壁の材質がSUS316Lである容積5Lの槽である。重縮合反応槽2において、窒素ガス雰囲気下で剪断速度285(1/秒)で掻き下げ方向に撹拌しながら、反応液の温度を335℃まで約1時間かけて昇温させた。酢酸留出率95%に達した時点で減圧を開始し、1時間かけて133Pa(1torr)まで減圧を行った。途中、13.3kPa(100torr)に到達した時点で撹拌剪断速度を180(1/秒)に変更し、さらに減圧させながら重縮合反応を続け、規定の攪拌トルクに到達したところで脱酢酸重縮合反応を終了させた。次に重縮合反応槽2内を0.1MPaに窒素で加圧し、直径10mmの円形吐出口を有する口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレット化した。前記の方法で繰り返し10バッチの重合を行った。
試験片の腐食度は問題無く、フィルター捕集物の量も少なく問題無かった。得られたペレットの品質については、融点が312.5℃(平均値)でバラツキも小さく、色調L値も問題無かった。
(実施例2)
アセチル化反応槽1に仕込む成分を下記のものに変更する以外は、実施例1と同様に行った。
・p−ヒドロキシ安息香酸977質量部(54モル%)
・4,4’−ジヒドロキシビフェニル541質量部(22モル%)
・ヒドロキノン15質量部(1モル%)
・テレフタル酸328質量部(15モル%)
・イソフタル酸177質量部(8モル%)
・無水酢酸1476質量部(フェノール性水酸基合計の1.10当量)
アセチル化反応槽1でのオリゴマー化反応終了時の反応液の温度は267℃で、酢酸留出率は89%であった。試験片の腐食度は問題無く、フィルター捕集物の量も少なく問題無かった。得られたペレットの品質については、融点が324.1℃(平均値)でバラツキも小さく、色調L値も問題無かった。
(実施例3)
アセチル化反応槽1に仕込む成分を、下記のものに変更する以外は、実施例1と同様に行った。
・p−ヒドロキシ安息香酸1354質量部(73モル%)
・4,4’−ジヒドロキシビフェニル228質量部(9モル%)
・テレフタル酸204質量部(9モル%)
・ポリエチレンテレフタレート236質量部(9モル%)
・次亜リン酸ナトリウム0.36質量部(0.02質量%)
・無水酢酸1382質量部(フェノール性水酸基合計の1.11当量)
アセチル化反応槽1でのオリゴマー化反応終了時の反応液の温度は267℃で、酢酸留出率は89%であった。試験片の腐食度は問題無く、フィルター捕集物の量も少なく問題無かった。得られたペレットの品質については、融点が326.2℃(平均値)でバラツキも小さく、色調L値も問題無かった。
(実施例4)
3分割したジャケットでアセチル化反応槽1の外壁を覆う範囲を、加熱体1(帯状領域1):槽高さ割合0〜45%、加熱体2(帯状領域2):槽高さ割合45〜70%、加熱体3(帯状領域3):槽高さ割合70〜100%、とした以外は、実施例1と同様に行った。
アセチル化反応槽1でのオリゴマー化反応終了時の反応液の温度は268℃で、酢酸留出率は89%であり、反応終了した時の液面位置は加熱体1(帯状領域1)の高さ範囲内であった。また、重縮合反応槽2への移行完了後、移行ラインに取り付けられたフィルターを取り外し付着物の確認を行うと、白色状の固形物が6g付着していたが軽微であった。
試験片の腐食度は問題無く、得られたペレットの品質については、融点が311.6℃(平均値)でバラツキも小さく、色調L値も問題無かった。
(実施例5)
アセチル化反応槽1で、反応液の温度を145℃で1.5時間アセチル化反応させた後に、留出管を留出酢酸容器側に切り替え、加熱体2(帯状領域2)の温度を250℃まで昇温していった以外は、実施例1と同様に行った。
アセチル化反応槽1でのオリゴマー化反応終了時の反応液の温度は267℃で、酢酸留出率は89%であり、反応終了までの時間は175分と約5分程度早かった。
試験片の腐食度は問題無く、フィルター捕集物の量も少なく問題無かった。得られたペレットの品質については、融点が312.0℃(平均値)でバラツキも小さく、色調L値も問題無かった。
(実施例6)
アセチル化反応槽1で、酢酸留出速度0.14%/分、酢酸留出率84%でオリゴマー化反応を終了した後に、重縮合反応槽2に移行ライン経由で反応液を移行した以外は、実施例1と同様に行った。
アセチル化反応槽1でのオリゴマー化反応終了時の反応液の温度は263℃であり、反応終了までの時間は168分と約12分程度早かった。
また、重縮合反応容器2への移行完了後、移行ラインに取り付けられたフィルターを取り外し付着物の確認を行うと、白色状の固形物が7g付着していたが、軽微であった。
試験片の腐食度は問題無く、得られたペレットの品質については、融点が311.1℃(平均値)でバラツキも小さく、色調L値も問題無かった。
(実施例7)
試験を繰り返し20バッチとした以外は、実施例1と同様に行った。
試験片の腐食度は問題無く、得られたペレットの品質については、融点が312.8℃(平均値)でバラツキも小さく、色調L値も問題無かった。
(実施例8)
試験を繰り返し20バッチとした以外は、実施例2と同様に行った。
試験片の腐食度は問題無く、得られたペレットの品質については、融点が324.4℃(平均値)でバラツキも小さく、色調L値も問題無かった。
(実施例9)
試験を繰り返し20バッチとした以外は、実施例3と同様に行った。
試験片の腐食度は問題無く、得られたペレットの品質については、融点が326.3℃(平均値)でバラツキも小さく、色調L値も問題無かった。
(実施例10)
試験を繰り返し20バッチとした以外は、実施例4と同様に行った。
試験片の腐食度は問題無く、得られたペレットの品質については、融点が311.3℃(平均値)でバラツキも小さく、色調L値も問題無かった。
(実施例11)
試験を繰り返し20バッチとした以外は、実施例5と同様に行った。
試験片の腐食度は問題無く、得られたペレットの品質については、融点が312.2℃(平均値)でバラツキも小さく、色調L値も問題無かった。
(実施例12)
試験を繰り返し20バッチとした以外は、実施例6と同様に行った。
試験片の腐食度は問題無く、得られたペレットの品質については、融点が310.9℃(平均値)でバラツキも小さく、色調L値も問題無かった。
(実施例13)
重縮合反応槽2で、酢酸留出率が89%に達した時点で減圧を開始したことと、試験を繰り返し20バッチとした以外は、実施例6と同様に行った。
19バッチ目で減圧時の真空度の振れが生じ始めたが、軽微であるため20バッチの連続運転ができた。
試験片の腐食度は問題無く、得られたペレットの品質については、融点が310.6℃(平均値)でバラツキも小さく、色調L値も問題無かった。
(実施例14)
重縮合反応槽2で、酢酸留出率が90%に達した時点で減圧を開始したことと、試験を繰り返し20バッチとした以外は、実施例7と同様に行った。
試験片の腐食度は問題無く、得られたペレットの品質については、融点が312.3℃(平均値)でバラツキも小さく、色調L値も問題無かった。
(実施例15)
重縮合反応槽2で、中心軸を有するヘリカルリボン翼を用いたことと、試験を繰り返し20バッチとした以外は、実施例7と同様に行った。
19バッチ目で口金詰まりが見られ始めたが軽微であり、20バッチの連続運転ができた。
試験片の腐食度は問題無く、得られたペレットの品質については、融点が310.6℃(平均値)でバラツキも小さく、色調L値も問題無かった。
(比較例1)
アセチル化反応槽1の内壁の材質をチタン合金(組成:Ni 0質量%、Cr 0質量%、Mo 0質量%)とした以外は、実施例1と同様に行った。
アセチル化反応槽1での反応液の温度の上昇が遅く、オリゴマー化反応終了時の反応液の温度は263℃で、反応時間は300分と大幅に遅延した。
また、重縮合反応槽2への移行完了後、移行ラインに取り付けられたフィルターを取り外し付着物の確認を行うと、白色状の固形物が25g付着していた。
試験片の腐食度は問題無かったが、融点が307.9℃(平均値)で低め傾向にあり、バラツキが見られ、得られたペレットの色調L値は低めであった。
(比較例2)
アセチル化反応槽1の内壁の材質をグラスライニング(組成:Ni 0質量%、Cr 0質量%、Mo 0質量%)とした以外は、実施例1と同様に行った。
アセチル化反応槽1での反応液の温度の上昇が遅く、オリゴマー化反応終了時の反応液の温度は262℃で、反応時間は335分と大幅に遅延した。
また、重縮合反応槽2への移行完了後、移行ラインに取り付けられたフィルターを取り外し付着物の確認を行うと、白色状の固形物が32g付着していた。
試験片の腐食度は問題無かったが、融点が307.3℃(平均値)で低め傾向にあり、バラツキが大きく、得られたペレットの色調L値は低めであった。
(比較例3)
アセチル化反応槽1の内壁の材質をSUS316L(組成:Ni 14質量%、Cr 18質量%、Mo 3質量%)とした以外は、実施例1と同様に行った。
アセチル化反応槽1でのオリゴマー化反応終了時の反応液の温度は269℃であり、反応終了までの時間は165分と約15分程度早かった。
重縮合反応槽2への移行完了後、移行ラインに取り付けられたフィルターを取り外し付着物の確認を行うと、白色状の固形物が16g付着しており、試験片は気相部、液相部共に全面腐食が見られ、腐食度も大きかった。また、アセチル化反応槽1の内壁および攪拌軸部には、反応時の発泡と思われる液面上昇跡(付着物)が見られた。得られたペレットの品質については、融点が310.5℃(平均値)で、色調L値は若干低めであった。
(比較例4)
アセチル化反応槽1の内壁の材質をSUS316L(組成:Ni 14質量%、Cr 18質量%、Mo 3質量%)とし、酢酸留出速度0.24%/分、酢酸留出率80%になるまで反応を続けた後に、重縮合反応槽2に移行ライン経由で反応液を移行した以外は、実施例1と同様に行った。
アセチル化反応槽1でのオリゴマー化反応終了時の反応液の温度は261℃であり、反応終了までの時間は147分と約33分程度早かった。5バッチ目で移行ができなくなり、試験を中止した。フィルター部を点検すると、未反応モノマーがフィルター目に詰まっていた。試験装置を整備し、反応容器の洗浄後に同様な方法で試験を再開したが、5バッチ目で移行ができなくなり、試験を中止した。
試験片は気相部で全面腐食が見られ、腐食度も大きく、液相部は軽い全面腐食が見られた。また、アセチル化反応槽1の内壁および攪拌軸部には、反応時の発泡と思われる液面上昇跡(付着物)が見られた。得られたペレットの品質については、融点が304.6℃(合計10バッチの平均値)と低く、バラツキも大きく、ペレットは黒色傾向にあった。
(比較例5)
加熱体として内部に熱媒循環ラインを埋め込んだジャケットを用い、外壁面を2分割したジャケットで覆う以外は、実施例1と同じアセチル化反応槽1を用いた。各ジャケットは外壁面を、加熱体1(帯状領域1):槽高さ割合0〜50%、加熱体2(帯状領域2):槽高さ割合50〜90%、の範囲で覆った。それぞれのジャケットに接続したヒーターと循環ポンプで熱媒をジャケット内に循環させた。2つのジャケットをそれぞれ個別に温度制御しながら、次のように重合を行った。
原料モノマーを仕込み、窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら、加熱体2(帯状領域2)の温度を150℃、加熱体1(帯状領域1)の温度を150℃に制御し、反応液の温度を145℃で1.5時間アセチル化反応させた後に、留出管を留出酢酸容器側に切り替え、加熱体2(帯状領域2)の温度と加熱体1(帯状領域1)の温度をそれぞれ275℃まで昇温していった以外は、実施例1と同様に行った。
アセチル化反応槽1でのオリゴマー化反応終了時の反応液の温度は265℃であり、反応終了までの時間は162分と約18分程度早く、反応終了した時の液面位置は加熱体1(帯状領域1)の高さ範囲内であった。また、重縮合反応槽2への移行完了後、移行ラインに取り付けられたフィルターを取り外し、付着物の確認を行うと、白色状の固形物が40g付着していた。
試験片は気相部が軽微な変色が見られたが、液相部は問題無かった。得られたペレットの品質については、融点が309.8℃(平均値)と低め傾向にあり、バラツキが大きく、色調L値は若干低めであった。
(比較例6)
試験を繰り返し20バッチとした以外は、比較例1と同様に行った。
14バッチ目で減圧時の真空度の振れが生じ始め、18バッチ目で口金詰まりが見られ始めたが、軽微であり、20バッチの連続運転ができた。
得られたペレットの品質については、融点が307.6℃(平均値)で低め傾向にあり、バラツキが見られ、色調L値は低めであった。
(比較例7)
重縮合反応槽2でヘリカルリボン翼の回転方向を掻き上げにした以外は、比較例6と同様に行った。
12バッチ目で減圧時の真空度の振れが生じ始め、15バッチ目で口金詰まりが見られ始めたが、軽微であり、20バッチの連続運転ができた。
得られたペレットの品質については、融点が306.3℃(平均値)と低く、バラツキも大きく、色調L値は低めであった。
20バッチ終了後に重縮合反応槽2の上部を解体し、内部点検を行うと、内壁の気相部にわずかにポリマーの付着が見られた。
(比較例8)
重縮合反応槽2で中心軸を有するアンカー型撹拌翼を用いた以外は、比較例6と同様に行った。
6バッチ目で減圧時の真空度の振れが生じ始め、2バッチ目で口金詰まりが見られ始めた。その後、口金詰まりが酷くなってきたので、6バッチ目の吐出終了後に口金を交換した。また、7バッチ目で減圧時の真空度の振れが生じ始め、その後も真空度の振れが大きくなり、10バッチ目の吐出後に減圧ラインを点検すると、配管の約半分が昇華物で閉塞していたので、このバッチで実験を中止した。真空度1333Pa到達後の重合時間は141分(10バッチの平均)と遅延した。
得られたペレットの品質については、融点が304.1℃(10バッチの平均値)と低く、バラツキも大きく、ペレットは黒色傾向にあった。製品収率は低い結果であった。
(比較例9)
試験を繰り返し20バッチとした以外は、比較例2と同様に行った。
12バッチ目で減圧時の真空度の振れが生じ始め、18バッチ目で口金詰まりが見られ始めたが軽微であり、20バッチの連続運転ができた。
得られたペレットの品質については、融点が306.9℃(平均値)と低く、バラツキも大きく、色調L値は低めであった。
(比較例10)
試験を繰り返し20バッチとした以外は、比較例3と同様に行った。
16バッチ目で減圧時の真空度の振れが生じ始め、18バッチ目で口金詰まりが見られ始めたが軽微であり、20バッチの連続運転ができた。
また、アセチル化反応槽1の内壁および攪拌軸部には、反応時の発泡と思われる液面上昇跡(付着物)が見られた。
得られたペレットの品質については、融点が310.1℃(平均値)で、色調L値は若干低めであった。
(比較例11)
試験を繰り返し20バッチとした以外は、比較例4と同様に行った。
5バッチ目で移行ができなくなり、試験を中止した。フィルター部を点検すると、未反応モノマーがフィルター目に詰まっていた。試験装置を整備し、反応容器の洗浄後に同様な方法で試験を再開したが、5バッチ目で移行ができなくなり、試験を中止した。また、アセチル化反応槽1の内壁および攪拌軸部には、反応時の発泡と思われる液面上昇跡(付着物)が見られた。
真空度1333Pa到達後の重合時間は128分(合計10バッチの平均)と遅延した。
製品収率は低い結果であった。
得られたペレットの品質については、融点が304.6℃(合計10バッチの平均値)と低く、バラツキも大きく、ペレットは黒色傾向にあった。
(比較例12)
重縮合反応槽2で、酢酸留出率が85%に達した時点で減圧を開始した以外は、比較例11と同様に行った。
5バッチ目で移行ができなくなり、試験を中止した。フィルター部を点検すると、未反応モノマーがフィルター目に詰まっていた。試験装置を整備し、反応容器の洗浄後に同様な方法で試験を再開したが、5バッチ目で移行ができなくなり、試験を中止した。また、アセチル化反応槽1の槽内壁および攪拌軸部には、反応時の発泡と思われる液面上昇跡(付着物)が見られた。
1バッチ目から減圧時の真空度の振れが生じ始め、徐々に振れが大きくなり、5バッチ終了後に重縮合反応槽2の減圧ラインを点検すると、配管の約半分以上が昇華物で閉塞していた。真空度1333Pa到達後の重合時間は300分(合計10バッチの平均)と大幅に遅延した。製品収率は非常に低い結果であった。
得られたペレットの品質については、融点が302.3℃(合計10バッチの平均値)と低く、バラツキも大きく、ペレットは黒色傾向にあった。
(比較例13)
試験を繰り返し20バッチとした以外は、比較例5と同様に行った。
10バッチ目で減圧時の真空度の振れが生じ始め、16バッチ目で口金詰まりが見られ始めた。その後、減圧時の真空度の振れが徐々に大きくなってきたが、20バッチの連続運転ができた。20バッチ終了後に重縮合反応槽2の減圧ラインを点検すると、配管の約半分以上が昇華物で閉塞していた。
得られたペレットの品質については、融点が309.1℃(平均値)と低め傾向にあり、バラツキも大きく、色調L値は低めであった
(比較例14)
試験を繰り返し20バッチとし、3分割したジャケットでアセチル化反応槽1の外壁を覆う範囲を、加熱体1(帯状領域1):槽高さ割合0〜50%、加熱体2(帯状領域2):槽高さ割合50〜90%、加熱体3(帯状領域3):槽高さ割合90〜100%とし、反応液の温度を145℃で1.5時間アセチル化反応させた後に、留出管を留出酢酸容器側に切り替え、加熱体2(帯状領域2)と加熱体3(帯状領域3)の温度をそれぞれ275℃まで昇温していった以外は、実施例1と同様に行った。
アセチル化反応槽1でのオリゴマー化反応終了時の反応液の温度は265℃で、酢酸留出率は89%であり、反応終了した時の液面位置は加熱体1(帯状領域1)の高さ範囲内であった。また、重縮合反応槽2への移行完了後、移行ラインに取り付けられたフィルターを取り外し、付着物の確認を行うと、白色状の固形物が69g付着していた。試験片は気相部で軽微な変色が見られたが、液相部は問題無かった。
9バッチ目で減圧時の真空度の振れが生じ始め、16バッチ目で口金詰まりが見られ始めた。その後、減圧時の真空度の振れが徐々に大きくなってきたが、20バッチの連続運転ができた。20バッチ終了後に重縮合反応槽2の減圧ラインを点検すると、配管の約半分以上が昇華物で閉塞していた。
得られたペレットの品質については、融点が307.9℃(平均値)と低め傾向にあり、バラツキも大きく、色調L値は低めであった。
(比較例15)
アセチル化反応槽1の材質をSUS316L(組成:Ni 14質量%、Cr 18質量%、Mo 3質量%)とし、酢酸留出速度0.24%/分、酢酸留出率80%になるまで反応を続けた後に、重縮合反応槽2に移行ライン経由で反応液を移行した以外は、比較例13と同様に行った。
次に、重縮合反応槽2では、中心軸を有するアンカー型撹拌翼を用い、剪断速度510(1/秒)で撹拌しながら昇温させ、留出酢酸量が85%に達した時点で減圧を開始した以外は、比較例13と同様に行った。
アセチル化反応槽1でのオリゴマー化反応終了時の反応液の温度は260℃で、反応終了した時の液面位置は加熱体1(帯状領域1)の高さ範囲内であった。
試験片は気相部で全面腐食が見られ、腐食度も大きく、液相部は軽い全面腐食が見られた。また、アセチル化反応槽1の槽内壁および攪拌軸部には、反応時の発泡と思われる液面上昇跡(付着物)が見られた。
真空度1333Pa到達後の撹拌トルク上昇が遅く、重合を途中で打ち切った。1バッチ目から減圧時の真空度の振れと口金詰まりが見られ、2バッチ目で真空度不良と口金部の詰まりが酷くなったため、試験を中止した。2バッチ終了後に重縮合反応槽2の減圧ラインを点検すると、配管の約半分以上が昇華物で閉塞していた。
また、重縮合反応槽2への移行完了後、移行ラインに取り付けられたフィルターを取り外し、付着物の確認を行うと、未反応モノマーがフィルター目に詰まっていた。製品収率は最も低い結果であった。
得られたペレットの品質については、融点が300.3℃(2バッチの平均値)と最も低く、ペレットは最も黒色傾向にあった。
各実施例、比較例の条件と結果を表1〜10にまとめる。なお、アセチル化反応槽内壁の帯状領域の分割数は、各表中の加熱体の分割数と同じであり、各帯状領域が占める槽高さ割合(%)の値は、各表中の加熱体の槽高さ割合(%)の値と同じであり、各帯状領域の温度(℃)は、各表中の加熱体の温度(℃)と同じである。
Figure 2012211309
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1 アセチル化反応槽
2 攪拌翼
3 重縮合反応槽への移行ライン
4 加熱体3(帯状領域3)
5 加熱体2(帯状領域2)
6 加熱体1(帯状領域1)
7 加熱体1(帯状領域1)下端までの高さ
8 加熱体1(帯状領域1)上端までの高さ
9 加熱体2(帯状領域2)下端までの高さ
10 加熱体2(帯状領域2)上端までの高さ
11 加熱体3(帯状領域3)下端までの高さ
12 加熱体3(帯状領域3)上端までの高さ
13 アセチル化反応槽内側最上点
14 アセチル化反応槽内側最下点
15 アセチル化反応槽の高さ
16 回転軸(中心軸)
17 フレーム棒
18 ヘリカルリボン翼
19 ボトム翼
20 反応容器
21 固定棒

Claims (17)

  1. アセチル化反応槽と重縮合反応槽とを有し、
    前記アセチル化反応槽は、該槽内壁面が、Niを50質量%以上かつMoを10質量%以上含有する合金で構成されており、該槽内部を加熱するための加熱体を3つ以上備えており、
    前記加熱体を、前記アセチル化反応槽の下側から順に加熱体1、加熱体2、・・・、および加熱体nとしたとき、少なくとも加熱体mは下記(1)式で表す槽高さ割合20〜80%の範囲内にあり、nは3以上の整数であり、mは2以上(n−1)以下の整数のいずれかである、液晶性ポリエステル樹脂の製造装置。
    式(1): 槽高さ割合(%)=アセチル化反応槽内側最下点から該当位置までの高さ(mm)/アセチル化反応槽内側最下点から最上点までの高さ(mm)×100(%)
  2. 前記アセチル化反応槽の内壁面を構成する合金が、さらにCrを10質量%以上含有する、請求項1の液晶性ポリエステル樹脂の製造装置。
  3. 前記加熱体が、前記アセチル化反応槽の外壁面を帯状にくるむジャケットである、請求項1または2の液晶性ポリエステル樹脂の製造装置。
  4. 前記アセチル化反応槽が、前記加熱体を3つ備える、請求項1〜3のいずれかの液晶性ポリエステル樹脂の製造装置。
  5. 前記重縮合反応槽が、中心軸を有さないフレームに取り付けられたヘリカルリボン翼を有する、請求項1〜4のいずれかの液晶性ポリエステル樹脂の製造装置。
  6. 請求項1〜5のいずれかの液晶性ポリエステル樹脂の製造装置を用い、前記アセチル化反応槽において原料のアセチル化反応とオリゴマー化反応を行い、次いで前記重縮合反応槽においてオリゴマー化反応後の液の脱酢酸重縮合を行う液晶性ポリエステル樹脂の製造方法であって、
    前記オリゴマー化反応中において、下記式(2)で表される酢酸留出率が80%以上となった時点から、下記式(3)で表される酢酸留出速度が0.1%/分以下となる時点までの間で、前記加熱体1〜加熱体(m−1)の温度をいずれも前記加熱体mの温度よりも高くし、前記加熱体(m+1)〜加熱体nの温度をいずれも前記加熱体mの温度よりも低くしながら、オリゴマー化反応を行う、液晶性ポリエステル樹脂の製造方法。
    式(2): 酢酸留出率(%)=留出液量(g)/[〔無水酢酸仕込みモル数−原料モノマー中の水酸基のモル数〕×無水酢酸分子量+原料モノマー中の水酸基のモル数×2×酢酸分子量+原料モノマー中のアセチル基のモル数×酢酸分子量](g)×100(%)
    式(3): 酢酸留出速度(%/分)=5分間に留出した酢酸留出液量(g)/[〔無水酢酸仕込みモル数−原料モノマー中の水酸基のモル数〕×無水酢酸分子量+原料モノマー中の水酸基のモル数×2×酢酸分子量+原料モノマー中のアセチル基のモル数×酢酸分子量](g)×100(%)/5(分)
  7. 前記オリゴマー化反応後の液面高さが、前記加熱体mの加熱範囲内になるように原料モノマー量を仕込む、請求項6の液晶性ポリエステル樹脂の製造方法。
  8. アセチル化反応槽において原料のアセチル化反応とオリゴマー化反応を行い、次いで重縮合反応槽においてオリゴマー化反応後の液の脱酢酸重縮合を行う液晶性ポリエステル樹脂の製造方法であって、
    前記アセチル化反応槽として、該槽内壁面が、Niを50質量%以上かつMoを10質量%以上含有する合金で構成された槽を用い、
    前記アセチル化反応槽の内壁面を、該槽の高さ方向に並ぶ3つ以上の帯状の領域に分け、各帯状領域の温度を特定の関係に保ちながら前記オリゴマー化反応を行う、液晶性ポリエステル樹脂の製造方法。
    ただし、前記各帯状領域を、前記アセチル化反応槽の下側から順に帯状領域1、帯状領域2、・・・および帯状領域nとしたとき、少なくとも帯状領域mは下記式(1)で表される槽高さ割合20〜80%の範囲内であり、nは3以上の整数であり、mは2以上(n−1)以下の整数のいずれかであり、
    前記各帯状領域の温度の特定の関係は、オリゴマー化反応中において、下記式(2)で表される酢酸留出率が80%以上となった時点から、下記式(3)で表される酢酸留出速度が0.1%/分以下となる時点までの間で、帯状領域1〜帯状領域(m−1)の温度をいずれも帯状領域mの温度よりも高くし、帯状領域(m+1)〜帯状領域nの温度をいずれも帯状領域mの温度よりも低くする。
    式(1): 槽高さ割合(%)=アセチル化反応槽内側最下点から該当位置までの高さ(mm)/アセチル化反応槽内側最下点から最上点までの高さ(mm)×100(%)
    式(2): 酢酸留出率(%)=留出液量(g)/[〔無水酢酸仕込みモル数−原料モノマー中の水酸基のモル数〕×無水酢酸分子量+原料モノマー中の水酸基のモル数×2×酢酸分子量+原料モノマー中のアセチル基のモル数×酢酸分子量](g)×100(%)
    式(3): 酢酸留出速度(%/分)=5分間に留出した酢酸留出液量(g)/[〔無水酢酸仕込みモル数−原料モノマー中の水酸基のモル数〕×無水酢酸分子量+原料モノマー中の水酸基のモル数×2×酢酸分子量+原料モノマー中のアセチル基のモル数×酢酸分子量](g)×100(%)/5(分)
  9. 前記アセチル化反応槽の内壁面を構成する合金が、さらにCrを10質量%以上含有する、請求項8の液晶性ポリエステル樹脂の製造方法。
  10. 前記アセチル化反応槽の内壁面を、該槽の高さ方向に並ぶ前記3つの帯状の領域に分け、各帯状領域の温度を個別に保ちながら、かつ、各帯状領域の温度を前記特定の関係に保ちながら前記オリゴマー化反応を行う、請求項8または9の液晶性ポリエステル樹脂の製造方法。
  11. 前記オリゴマー化反応後の液面高さが、前記帯状領域mの範囲内になるように原料モノマー量を仕込む、請求項8〜10のいずれかの液晶性ポリエステル樹脂の製造方法。
  12. 前記アセチル化反応槽において原料中の酢酸を理論酢酸留出量の85%以上まで留出させた後で、該原料を重縮合反応槽に移行する、請求項6〜11のいずれかの液晶性ポリエステル樹脂の製造方法。
  13. 前記脱酢酸重縮合する工程において、酢酸留出率90%以上で減圧を開始する、請求項6〜12のいずれかの液晶性ポリエステル樹脂の製造方法。
  14. 前記重縮合反応槽がヘリカルリボン翼を有し、前記脱酢酸重縮合する工程において、減圧開始前の撹拌剪断速度を150〜500(1/秒)とする請求項6〜13のいずれかの液晶性ポリエステル樹脂の製造方法。
  15. 前記脱酢酸重縮合する工程において、撹拌翼の回転方向が掻き下げ方向である請求項14の液晶性ポリエステル樹脂の製造方法。
  16. ヒドロキノンを原料モノマーとして含む、請求項6〜15のいずれかの液晶性ポリエステル樹脂の製造方法。
  17. 前記液晶性ポリエステル樹脂が、下記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)から構成され、構造単位(I)が構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して65〜80モル%であり、構造単位(II)が構造単位(II)および(III)の合計に対して55〜85モル%であり、構造単位(IV)が構造単位(IV)および(V)の合計に対して50〜95モル%であり、構造単位(II)および(III)の合計と構造単位(IV)および(V)の合計が実質的に等モルである液晶性ポリエステル樹脂である、請求項6〜16のいずれかの液晶性ポリエステル樹脂の製造方法。
    Figure 2012211309
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