JP2012210626A - 熱膨張性マイクロカプセルの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】塩化ビニリデン、又は、塩化ビニリデン及びニトリル系モノマー、カルボキシル基を有し、ラジカル重合性不飽和結合を有する炭素鎖の炭素数が3〜8であるラジカル重合性不飽和カルボン酸モノマー及び沸点が60℃以上の炭化水素を含有する揮発性膨張剤を含有する油性混合液を水性媒体中に分散させる工程、金属カチオンの水酸化物を含有する金属カチオン供給体を添加して、上記カルボキシル基と金属カチオンとを反応させる工程、及び、分散液を加熱することによりモノマーを重合させる工程を有する熱膨張性マイクロカプセルの製造方法。
【選択図】 なし
Description
このような熱膨張性マイクロカプセルとしては、熱可塑性シェルポリマーの中に、シェルポリマーの軟化点以下の温度でガス状になる揮発性膨張剤が内包されているものが広く知られており、例えば、特許文献1には、低沸点の脂肪族炭化水素等の揮発性膨張剤をモノマーと混合した油性混合液を、油溶性重合触媒とともに分散剤を含有する水系分散媒体中に攪拌しながら添加し懸濁重合を行うことにより、揮発性膨張剤を内包する熱膨張性マイクロカプセルを製造する方法が開示されている。
また、特許文献3には、ニトリル系モノマー80重量%以上、非ニトリル系モノマー20重量%以下及び架橋剤0.1〜1重量%を含有する重合成分から得られるポリマーを用い、揮発性膨張剤を内包させた熱膨張性マイクロカプセルにおいて、非ニトリル系モノマーがメタクリル酸エステル類又はアクリル酸エステル類である熱膨張性マイクロカプセルが開示されている。
このような熱膨張性マイクロカプセルでは、最大発泡温度が非常に高い値となっているものの、その後の膨張した状態を維持することができず、高温領域における長時間の使用は困難であった。また、高温領域において急激に弾性率が低下することから、強い剪断力が加えられる混練成形、カレンダー成形、押出成形、射出成形等の成形加工を行った場合に、熱膨張性マイクロカプセルに破裂、収縮が発生していた。
従って、最大発泡温度が高く、長時間膨張した状態を維持することができ、かつ、耐熱性に優れ、高剪断に耐え得る熱膨張性マイクロカプセルが望まれていた。
以下に本発明を詳述する。
なお、上記酸素透過係数は、上記フィルムを用い、JIS K 7126に準拠する方法により測定した場合の25℃における酸素透過係数を意味する。
また、上記重量平均分子量は、上記高ガスバリア性モノマーを乳化重合法を用いて重合することにより得られる単独重合体についてGPC法により測定したものを意味する。
これらのなかでは、塩化ビニリデンが好ましい。
上記塩化ビニリデンを重合してなる重合体は、極めてガスバリア性に優れることから、塩化ビニリデンに由来するセグメントを有する共重合体からなるシェルもガスバリア性に優れる。従って、このようなシェルを有する本発明の熱膨張性マイクロカプセルは、膨張時に揮発させた揮発性膨張剤がシェルを透過しにくく、高温でへたりが生じることを防止することができる。
上記ニトリル系モノマーを重合してなる重合体も上記塩化ビニリデンを重合してなる重合体と同様に、極めてガスバリア性に優れることから、ニトリル系モノマーに由来するセグメントを有する共重合体からなるシェルもガスバリア性に優れる。従って、このようなシェルを有する本発明の熱膨張性マイクロカプセルは、膨張時に揮発させた揮発性膨張剤がシェルを透過しにくく、高温でへたりが生じることを防止することができる。
上記ニトリル系モノマーとしては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル、α−エトキシアクリロニトリル、フマロニトリル又はこれらの任意の混合物等が挙げられる。また、アクリロニトリルとメタクリロニトリルとの混合物が好適である。
上記ラジカル重合性不飽和カルボン酸モノマーは、ラジカル重合性不飽和結合を有する炭素鎖の炭素数の下限が3、上限が8である。8を超えると、分子が嵩高くなり、ガスバリア性が低下する。
ただし、このようなセグメントの含有量は10重量%未満であることが好ましい。10重量%以上であると、シェルのガスバリア性が低下してしまうことがある。
上記シェルがカチオン性化合物を含有することにより、上記カチオン性化合物がシェルを構成する共重合体のカルボキシル基と反応して共重合体がイオン架橋していると考えられることから、耐熱性が向上し、高温領域において長時間破裂、収縮の起こらない熱膨張性マイクロカプセルとすることが可能となる。また、高温領域においてもシェルの弾性率が低下しにくいことから、強い剪断力が加えられる混練成形、カレンダー成形、押出成形、射出成形等の成形加工を行う場合であっても、熱膨張性マイクロカプセルの破裂、収縮が起こることがない。
なお、上述したイオン架橋は、上記共重合体の側鎖として存在する遊離カルボキシル基間に架橋が形成されていることを意味する。なお、カチオン性化合物1価あたりのカルボキシル基の配列する数は、金属種によって異なる。
上記金属カチオンとしては、上記共重合体の有するカルボキシル基と反応して共重合体をイオン架橋させる金属カチオンであれば、特に限定されず、例えば、Na、K、Li、Zn、Mg、Ca、Ba、Sr、Mn、Al、Ti、Ru、Fe、Ni、Cu、Cs、Sn、Cr、Pb等のイオンが挙げられる。これらは単独で用いても良く、2種以上を併用してもよい。これらのなかでは、Ca、Zn、Alのイオンが好ましく、特にZnのイオンが好適である。
なお、上記金属カチオンを2種以上用いる場合の組み合わせとしては特に限定されないが、アルカリ金属のイオンと上記アルカリ金属以外の金属カチオンとを組み合わせて用いることが好ましい。上記アルカリ金属のイオンを有することにより、カルボキシル基等の官能基が活性化され、上記アルカリ金属以外の金属カチオンと上記共重合体が有するカルボキシル基との反応を促進させることができる。
上記アルカリ金属としては、例えば、Na、K、Li等が挙げられる。
なお、上記カチオン性化合物の含有量は、原子吸光分光光度計(AA−680、島津製作所社製)を用いて測定することができる。
上記架橋度は、架橋剤による共有結合性架橋と、上記共重合体の有する遊離カルボキシル基と上記カチオン化合物とによってイオン架橋された架橋の双方を含む。
なお、本発明の熱膨張性マイクロカプセルでは、上記共重合体の有する遊離カルボキシル基の一部又は全部がイオン化して、カルボキシルアニオンとなり、上記カチオン性化合物カウンターカチオンとしてイオン結合を形成することから、上記カチオン性化合物の含有量によって架橋度を容易に調節することができる。
また、上記イオン架橋は、例えば、赤外吸収スペクトル測定を行った場合に、1500〜1600cm−1付近にCOO−の非対称伸縮運動による吸収が存在することにより確認することができる。
なお、上記中和度は、上記共重合体の有する遊離カルボキシル基のうち、上記カチオン性化合物が結合したカルボキシル基の割合を表す。
上記架橋剤としては特に限定はされず、一般的にはラジカル重合性二重結合を2以上有するモノマーが好適に用いられる。具体例には例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、分子量が200〜600のポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリアリルホルマールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのなかでは、200℃を超える高温領域でも熱膨張したマイクロカプセルが収縮しにくく、膨張した状態を維持しやすいので、ポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリレート等の2官能性架橋剤が好ましく、トリメチロールプロパンのトリ(メタ)アクリレート等の3官能性架橋剤がより好ましい。
上記揮発性膨張剤は、シェルを構成するポリマーの軟化点以下の温度でガス状になる物質であり、低沸点有機溶剤が好適である。
上記揮発性膨張剤としては、例えば、エタン、エチレン、プロパン、プロペン、n−ブタン、イソブタン、ブテン、イソブテン、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、n−へキサン、ヘプタン、石油エーテル等の低分子量炭化水素;CCl3F、CCl2F2、CClF3、CClF2−CClF2等のクロロフルオロカーボン;テトラメチルシラン、トリメチルエチルシラン、トリメチルイソプロピルシラン、トリメチル−n−プロピルシラン等のテトラアルキルシラン等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、揮発性膨張剤として、加熱により熱分解してガス状になる熱分解型化合物を用いることとしてもよい。
なお、本明細書において、最大発泡温度は、熱膨張性マイクロカプセルを常温から加熱しながらその径を測定したときに、熱膨張性マイクロカプセルの径が最大となったとき(最大変位量)における温度を意味する。
更に、上記縮合生成物としては、ジエタノールアミンと脂肪族ジカルボン酸との縮合生成物が好ましく、特にジエタノールアミンとアジピン酸との縮合物やジエタノールアミンとイタコン酸との縮合生成物が好ましい。
なお、上記モノマーを重合するために、重合開始剤が使用されるが、上記重合開始剤は、予め上記油性混合液に添加してもよく、水性分散媒体と油性混合液とを重合反応容器内で攪拌混合した後に添加してもよい。
なお、上記静止型分散装置には水系分散媒体と重合性混合物を別々に供給してもよいし、予め混合、攪拌した分散液を供給してもよい。
また、上記アルカリ金属の水酸化物としては特に限定されないが、Na、K、Liの水酸化物が好ましく、なかでも塩基性の強いNa、Kの水酸化物を用いることが好ましい。
重合反応容器に、水8Lと、分散安定剤としてコロイダルシリカ(旭電化社製)10重量部及びポリビニルピロリドン(BASF社製)0.3重量部を投入し、水性分散媒体を調製した。次いで、表1に示した配合量のモノマー、架橋剤、揮発性膨張剤及び重合開始剤からなる油性混合液を水溶性分散媒体に添加し、更に表1に示した配合量の金属カチオン供給体を添加することにより、分散液を調製した。得られた分散液をホモジナイザーで攪拌混合し、窒素置換した加圧重合器(20L)内へ仕込み、加圧(0.2MPa)し、60℃で20時間反応させることにより、反応生成物を調製した。得られた反応生成物について、ろ過と水洗を繰り返した後、乾燥して熱膨張性マイクロカプセルを得た。
実施例5、6、比較例1〜4、参考例1〜4で得られた熱膨張性マイクロカプセルについて、性能(体積平均粒子径、架橋度、金属カチオン濃度、発泡開始温度、最大発泡温度、最大変位量、最大発泡倍率)を評価した。結果を表1に示す。
粒度分布径測定器(LA−910、HORIBA社製)を用い、体積平均粒子径を測定した。
熱機械分析装置(TMA)(TMA2940、TA instruments社製)を用い、発泡開始温度(Ts)、最大変位量(Dmax)及び最大発泡温度(Tmax)を測定した。具体的には、試料25μgを直径7mm、深さ1mmのアルミ製容器に入れ、上から0.1Nの力を加えた状態で、5℃/minの昇温速度で80℃から220℃まで加熱し、測定端子の垂直方向における変位を測定し、変位が上がり始める温度を発泡開始温度、その変位の最大値を最大変位量とし、最大変位量における温度を最大発泡温度とした。
ガラス容器にN,N−ジメチルホルムアミド29gと試料1gを添加し、24時間振とうして膨潤液とした後、遠心分離により上澄み液を除いたゲル分について真空乾燥機を用い、130℃で蒸発乾固した。その重量を測定し、下記の式により架橋度を得た。
1N塩酸20mlに、得られた熱膨張性マイクロカプセル10gを添加し、2時間攪拌させた後、濾紙にてろ過した。そのろ液を検出範囲に入るよう希釈し、原子吸光分光光度計(AA−680、島津製作所社製)にて分析した。測定結果より熱膨張性マイクロカプセルに含まれる金属成分量(粒子中の金属カチオン濃度)を算出した。
得られた熱膨張性マイクロカプセル0.1gをオーブンに入れ、熱膨張性マイクロカプセルの最大発泡温度で2分間加熱し、発泡させた。得られた発泡済みマイクロカプセルの比重を測定し、発泡前の比重で割って最大発泡倍率を算出した。
Claims (2)
- 塩化ビニリデン、又は、塩化ビニリデン及びニトリル系モノマー、カルボキシル基を有し、ラジカル重合性不飽和結合を有する炭素鎖の炭素数が3〜8であるラジカル重合性不飽和カルボン酸モノマー及び沸点が60℃以上の炭化水素を含有する揮発性膨張剤を含有する油性混合液を水性媒体中に分散させる工程、金属カチオンの水酸化物を含有する金属カチオン供給体を添加して、上記カルボキシル基と金属カチオンとを反応させる工程、及び、分散液を加熱することによりモノマーを重合させる工程を有することを特徴とする熱膨張性マイクロカプセルの製造方法。
- 金属カチオンは、ナトリウムイオン及び亜鉛イオンであることを特徴とする請求項1記載の熱膨張性マイクロカプセルの製造方法。
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