JP2012209302A - 半導体層の製造方法および光電変換装置の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、I−III−VI族化合物を含む半導体層の製造方法およびそれを用いた光電変換装置の製造方法に関するものである。
太陽光発電等に使用される光電変換装置として、CISやCIGS等といったカルコパイライト構造のI−III−VI族化合物によって光吸収層が形成されたものがある(例えば、特許文献1)。カルコパイライト構造のI−III−VI族化合物は、光吸収係数が高く、光電変換装置の薄型化と大面積化と製造コストの抑制とに適しており、カルコパイライト構造のI−III−VI族化合物を用いた次世代太陽電池の研究開発が進められている。
このような光電変換装置は、ガラス等の基板の上に、Mo等の下部電極と、光吸収層と、イオウ含有亜鉛混晶化合物等のバッファ層と、ZnO等の上部電極とが、この順に積層されて構成されている。このバッファ層は、光吸収層上にCBD(Chemical Bath Deposition)法によって結晶成長されることにより形成されている。
このような光吸収層は、下部電極上にI−III−VI族化合物の原料を含む皮膜が形成され、この皮膜が熱処理されることによって形成される。I−III−VI族化合物の原料として、特許文献2には、1つの有機化合物内にCuと、Seと、InもしくはGaとを存在させた単一源前駆体(Single Source Precursor)がI−III−VI族化合物の原料として用いられることが記載されている。
光電変換装置はさらなる光電変換効率の向上が要求されている。この光電変換効率は、光電変換装置において光のエネルギーが電気エネルギーに変換される割合を示し、例えば、光電変換装置から出力される電気エネルギーの値が、光電変換装置に入射される光のエネルギーの値で除されて、100が乗じられることで導出される。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、光電変換装置における光電変換効率の向上を図ることを目的とする。
本発明の一実施形態に係る半導体層の製造方法は、下記一般式(1)で表わされる、カルコゲン元素含有有機化合物、第1の有機リン化合物、I−B族元素およびIII−B族元素を含む単一源錯体と、第2の有機リン化合物とを含む原料溶液を準備する工程と、該原料溶液を用いて皮膜を形成する工程と、該皮膜を加熱してI−III−VI族化合物を含む半導体層を形成する工程とを具備することを特徴とする。
なお、一般式(1)において、Eはカルコゲン元素であり、Rは有機化合物であり、R−Eはカルコゲン元素含有有機化合物である。また、Lは第1の有機リン化合物であり、AはI−B族元素であり、BはIII−B族元素である。
本発明の一実施形態に係る光電変換装置の製造方法は、上記の半導体層の製造方法によって第1の半導体層を作製する工程と、該第1の半導体層に電気的に接続されるように、該第1の半導体層とは異なる導電型の第2の半導体層を作製する工程とを具備することを特徴とする。
本発明によれば、光電変換効率の高い半導体層および光電変換装置を提供することが可能となる。
以下に本発明の実施形態に係る半導体層の製造方法および光電変換装置の製造方法について図面を参照しながら詳細に説明する。
<(1)光電変換装置の構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る半導体層の製造方法および本発明の一実施形態に係る光電変換装置の製造方法を用いて作製した光電変換装置を示す斜視図であり、図2はこの光電変換装置の断面図である。光電変換装置11は、基板1と、第1の電極層2と、I−III−VI族化合物を含む第1の半導体層3と、第2の半導体層4と、第2の電極層5とを含んでいる。
図1は、本発明の一実施形態に係る半導体層の製造方法および本発明の一実施形態に係る光電変換装置の製造方法を用いて作製した光電変換装置を示す斜視図であり、図2はこの光電変換装置の断面図である。光電変換装置11は、基板1と、第1の電極層2と、I−III−VI族化合物を含む第1の半導体層3と、第2の半導体層4と、第2の電極層5とを含んでいる。
第1の半導体層3と第2の半導体層4は導電型が異なっており、第1の半導体層3と第2の半導体層4とで光照射により生じた正負のキャリアの電荷分離を良好に行うことができる。例えば、第1の半導体層3がp型であれば、第2の半導体層4はn型である。あるいは、第2の半導体層4が、バッファ層と第1の半導体層3とは異なる導電型の半導体層とを含む複数層であってもよい。本実施形態では、第1の半導体層3が一方導電型の光吸収層であり、第2の半導体層4がバッファ層と他方導電型半導体層とを兼ねている例を示している。
また、本実施形態における光電変換装置11は第2の電極層5側から光が入射されるものを示しているが、これに限定されず、基板1側から光が入射されるものであってもよい。
図1において、光電変換装置11は複数個の光電変換セル10が並べられて形成されている。光電変換セル10は、第1の半導体層3の基板1側に第1の電極層2と離間して設けられた第3の電極層6を具備している。そして、第1の半導体層3に設けられた接続導体7によって、第2の電極層5と第3の電極層6とが電気的に接続されている。図1においては、この第3の電極層6は、隣接する光電変換セル10の第1の電極層2が延伸されたものである。この構成により、隣接する光電変換セル10同士が直列接続されている。また、一つの光電変換セル10内において、接続導体7は第1の半導体層3および第2の半導体層4を貫通するように設けられており、第1の電極層2と第2の電極層5とで挟まれた第1の半導体層3と第2の半導体層4とで光電変換が行なわれる。
基板1は、第1の半導体層3および第2の半導体層4を支持するためのものである。基板1に用いられる材料としては、例えば、ガラス、セラミックス、樹脂および金属等が挙げられる。
第1の電極層2および第3の電極層6は、Mo、Al、TiおよびAu等から選ばれる導電体が用いられ、基板1上にスパッタリング法および蒸着法等から選ばれる方法で形成される。
第1の半導体層3は、I−III−VI族化合物を主に含んだ半導体層である。I−III−VI族化合物半導体とは、I−B族元素(11族元素ともいう)とIII−B族元素(13族元素ともいう)とVI−B族元素(16族元素ともいう)との化合物半導体であり、カルコパイライト構造を有し、カルコパイライト系化合物半導体と呼ばれる(CIS系化合物半導体ともいう)。I−III−VI族化合物半導体としては、例えば、Cu(In,Ga)Se2(CIGSともいう)、Cu(In,Ga)(Se,S)2(CIGSSともいう)、およびCuInSe2(CISともいう)等が挙げられる。なお、Cu(In,Ga)Se2とは、CuとInとGaとSeとから主に構成された化合物をいう。また、Cu(In,Ga)(Se,S)2とは、CuとInとGaとSeとSとを主成分として含む化合物をいう。
第2の半導体層4は上記第1の半導体層3上に形成されている。本実施形態では、第1の半導体層3が一方導電型の光吸収層であり、第2の半導体層4がバッファ層と他方導電型半導体層とを兼ねている例を示している。リーク電流の低減という観点からは、第2の半導体層4は抵抗率が1Ω・cm以上であってもよい。第2の半導体層4としては、CdS、ZnS、ZnO、In2Se3、In(OH,S)、(Zn,In)(Se,OH)、および(Zn,Mg)O等が挙げられる。第2の半導体層4は、例えばケミカルバスデポジション(CBD)法等で形成される。なお、In(OH,S)とは、InとOHとSとを主成分として含む化合物をいう。(Zn,In)(Se,OH)は、ZnとInとSeとOHとを主成分として含む化合物をいう。(Zn,Mg)Oは、ZnとMgとOとを主成分として含む化合物をいう。第2の半導体層4は、第1の半導体層3の吸収効率を高めるため、第1の半導体層3が吸収する光の波長領域に対して高い光透過性を有するものであってもよい。
また、第2の半導体層4は、その厚みが10〜200nmである。第2の半導体層4上に第2の電極層5がスパッタリング等で製膜される際のダメージが抑制される観点から言えば、第2の半導体層4の厚みは100〜200nmとされ得る。
第2の電極層5は、ITO、ZnO等の0.05〜3.0μmの厚みを有する透明導電膜である。第2の電極層5は、スパッタリング法、蒸着法または化学的気相成長(CVD)法等で形成される。第2の電極層5は、第2の半導体層4よりも抵抗率の低い層であり、第1の半導体層3で生じた電荷を取り出すためのものである。電荷を良好に取り出すという観点からは、第2の電極層5の抵抗率が1Ω・cm未満でシート抵抗が50Ω/□以下であってもよい。
第2の電極層5としては、第1の半導体層3の吸収効率を高めるため、第1の半導体層3の吸収光に対して高い光透過性を有するものが用いられてもよい。光透過性を高めると同時に光反射ロス低減効果および光散乱効果を高め、さらに光電変換によって生じた電流を良好に伝送するという観点から、第2の電極層5は0.05〜0.5μmの厚さであってもよい。また、第2の電極層5と第2の半導体層4との界面での光反射ロスを低減する観点からは、第2の電極層5と第2の半導体層4の屈折率は略等しくてもよい。
光電変換セル10は、複数個が並べられて電気的に接続され、光電変換装置11と成る。隣接する光電変換セル10同士を容易に直列接続するために、図1に示すように、光電変換セル10は、第1の半導体層3の基板1側に第1の電極層2と離間して設けられた第3の電極層6を具備している。そして、第1の半導体層3に設けられた接続導体7によって、第2の電極層5と第3の電極層6とが電気的に接続されている。
図1において、接続導体7は第2の電極層5が形成される際に、第2の電極層5と同じ工程で、第2の電極層5と一体化して形成されている例が示されているが、これに限定されない。例えば、導電性ペーストが充填されて形成されていてもよい。
また、図1のように、第2の電極層5上に集電電極8が設けられていてもよい。集電電極8は、第2の電極層5の電気抵抗を小さくするためのものである。第2の電極層5上に集電電極8が設けられることにより、第2の電極層5の厚さを薄くして光透過性を高めるとともに第1の半導体層3で発生した電流が効率よく取り出される。その結果、光電変換装置11の発電効率が高められる。
集電電極8は、例えば、図1に示すように、光電変換セル10の一端から接続導体7にかけて線状に形成されている。これにより、第1の半導体層3の光電変換により生じた電荷が第2の電極層5を介して集電電極8に集電され、接続導体7を介して隣接する光電変換セル10に良好に伝達される。
集電電極8の幅は、第1の半導体層3への光を遮るのを低減するとともに良好な導電性を有するという観点からは、50〜400μmとされ得る。また、集電電極8は、枝分かれした複数の分岐部を有していてもよい。
集電電極8は、例えば、Ag等の金属粉を樹脂バインダー等に分散させた金属ペーストがパターン状に印刷され、これが硬化されることによって形成される。
<(2)第1の半導体層の製造方法>
I−III−VI族化合物を含む第1の半導体層3は、次のようにして作製される。先ず、第1の電極層2を有する基板1上に、I−III−VI族化合物の原料と成る単一源錯体と第2の有機リン化合物とを含む原料溶液が用いられて皮膜が形成される。この原料溶液に含まれる単一源錯体は、下記一般式(1)で表わされる、カルコゲン元素含有有機化合物、第1の有機リン化合物、I−B族元素およびIII−B族元素が一つの錯体分子に含まれたものである。単一源錯体は、I−III−VI族化合物を構成する元素である、I−B族元素、III−B族元素およびVI−B族元素を1つの分子内にすべて含んでいるため、反応性が
高く、化学反応でI−III−VI族化合物を形成し得る前駆体として良好に機能する。このような観点から、単一源錯体を単一源前駆体ということもある。
I−III−VI族化合物を含む第1の半導体層3は、次のようにして作製される。先ず、第1の電極層2を有する基板1上に、I−III−VI族化合物の原料と成る単一源錯体と第2の有機リン化合物とを含む原料溶液が用いられて皮膜が形成される。この原料溶液に含まれる単一源錯体は、下記一般式(1)で表わされる、カルコゲン元素含有有機化合物、第1の有機リン化合物、I−B族元素およびIII−B族元素が一つの錯体分子に含まれたものである。単一源錯体は、I−III−VI族化合物を構成する元素である、I−B族元素、III−B族元素およびVI−B族元素を1つの分子内にすべて含んでいるため、反応性が
高く、化学反応でI−III−VI族化合物を形成し得る前駆体として良好に機能する。このような観点から、単一源錯体を単一源前駆体ということもある。
なお、一般式(1)において、Eはカルコゲン元素であり、Rは有機化合物であり、R−Eはカルコゲン元素含有有機化合物である。また、Lは第1の有機リン化合物であり、AはI−B族元素であり、BはIII−B族元素である。
ここでカルコゲン元素とは、VI−B族元素のうちのS、Se、Teをいう。また、カルコゲン元素含有有機化合物とは、カルコゲン元素を含む有機化合物であり、炭素元素とカルコゲン元素との共有結合を有する有機化合物である。カルコゲン元素含有有機化合物としては、例えば、チオール、スルフィド、ジスルフィド、チオフェン、スルホキシド、スルホン、チオケトン、スルホン酸、スルホン酸エステル、スルホン酸アミド、セレノール、セレニド、ジセレニド、セレノキシド、セレノン、テルロール、テルリド、ジテルリド等が挙げられる。原料溶液中を長期にわたり安定に保持できるという観点から、単一源錯体に用いられるカルコゲン元素含有有機化合物は、金属に対する配位力の高い、チオール、スルフィド、ジスルフィド、セレノール、セレニド、ジセレニド、テルロール、テルリド、ジテルリド等が用いられてもよい。
また、第1の有機リン化合物とは、リン元素を含む有機化合物であり、炭素元素とリン元素との共有結合を有する有機化合物である。第1の有機リン化合物としては、例えば、ホスフィン誘導体等が挙げられる。ホスフィン誘導体はホスフィンの水素元素を有機基に置換したものであり、例えば、トリフェニルホスフィン等のトリアリールホスフィンや、トリメチルホスフィン等のアルキルホスフィン等が挙げられる。有機溶媒に対する溶解性を高め、濃度の高い原料溶液を作製するという観点から、第1の有機リン化合物はトリアリールホスフィンが用いられてもよい。
単一源錯体の具体例としては、例えば、カルコゲン元素含有有機化合物がフェニルセレノールであり、第1の有機リン化合物がトリフェニルホスフィンであり、I−B族元素がCuであり、III−B族元素がInである場合、下記一般式(2)のような構造のものが挙げられる。単一源錯体の他の具体例としては、一般式(2)におけるIII−B族元素としてInの代わりにGaが用いられた、下記一般式(3)のような構造のものが挙げられる。I−III−VI族化合物としてCIGSのようにInとGaとを有する場合、一般式(2)の単一源錯体と一般式(3)の単一源錯体の混合物が原料溶液に含まれてもよい。なお、一般式(2)および一般式(3)においてPhはフェニル基のことである。
また、原料溶液には上記単一源錯体に加えて第2の有機リン化合物が含まれている。第2の有機リン化合物は、上記第1の有機リン化合物と同様の有機リン化合物が用いられる。第1の有機リン化合物と第2の有機リン化合物は同じ構造のものであってもよく、異なるものであってもよい。単一源錯体との親和性を高めるという観点から、第1の有機リン化合物と第2の有機リン化合物は同じ構造のものが用いられても良い。良好な皮膜を形成するという観点から、原料溶液に含まれる第2の有機リン化合物のモル濃度は、原料溶液に含まれる単一源錯体のモル濃度よりも低くてもよい。例えば、原料溶液に含まれる第2の有機リン化合物のモル濃度は、原料溶液に含まれる単一源錯体のモル濃度の0.01%〜7%であってもよい。
原料溶液に用いられる溶媒としては、上記単一源錯体および第2の有機リン化合物を溶解可能な有機溶媒が用いられる。単一源錯体が良好に溶解されるという観点から、原料溶液に用いられる溶媒はアニリンやピリジン等の極性溶媒が用いられてもよい。
皮膜は、上記原料溶液が、例えば、スピンコータ、スクリーン印刷、ディッピング、スプレー、またはダイコータ等によって第1の電極層2上に膜状に被着され、溶媒が乾燥により除去されることにより形成される。
次に、以上のようにして作製された皮膜が、窒素およびアルゴン等から選ばれる不活性ガス、水素等の還元ガスあるいはこれらの混合ガスの雰囲気下で400〜600℃で加熱されることにより、金属元素とカルコゲン元素とが反応してI−III−VI族化合物の多結晶体が形成され、第1の半導体層3となる。この加熱処理時の雰囲気ガスには、カルコゲン元素が、例えば、Se蒸気、S蒸気、He2SまたはH2Sとして混合されてもよい。なお、皮膜が加熱される際、異なる加熱温度に設定された多段階の加熱が行なわれてもよい。例えば、第1段階として皮膜が50〜350℃で加熱されることにより、皮膜中の有機成分が熱分解された後、第2段階としてこの熱分解された皮膜が400〜600℃で加熱されることにより第1の半導体層3が形成されてもよい。
以上のように、単一源錯体に加えて第2の有機リン化合物が含まれる原料溶液を用いて形成された皮膜から、第1の半導体層3が形成されることにより、第1の電極層2との密着性の高い第1の半導体層3が形成可能となる。その結果、第1の電極層2と第1の半導体層3との間での電荷移動が良好に行なわれ、光電変換装置11の光電変換効率が向上する。
この理由はよくわからないが、皮膜が加熱されて有機成分が熱分解される際、第2の有機リン化合物の配位力によって単一源錯体中のIII−B族元素等の金属元素と第1の電極層2とが接近した状態に維持されるためではないかと考えられる。
単一源錯体に加えて第2の有機リン化合物が含まれる原料溶液を用いて形成された皮膜が加熱されて第1の半導体層3が形成される際、加熱条件によっては第1の半導体層3中にリン元素が残存し得る。つまり、第1の有機リン化合物および第2の有機リン化合物は加熱時に気化あるいは熱分解により皮膜から消失し得るが、加熱条件によっては第1の半導体層3中にリン元素が残存した状態となる。例えば、皮膜の表面に赤外線等が照射されることにより皮膜が加熱されると、皮膜の表面側がI−III−VI族化合物の多結晶体となり易く、それによって第1の有機リン化合物や第2の有機リン化合物が皮膜中に閉じ込められてリン元素が第1の半導体層3中に残存しやすくなる。このように第1の半導体層3中にリン元素が残存する場合、キャリア濃度が増加するため、光電変換装置11の光電変換効率が高められる。
リン元素が第1の半導体層3に残存する場合、電荷移動を良好にするという観点から、第1の半導体層3に含まれるリン元素のモル濃度は第1の半導体層3に含まれるVI−B族元素のモル濃度の0.01〜1%であってもよい。
本発明の実施形態にかかる半導体層の製造方法および光電変換装置の製造方法について、以下のようにして評価した。本実施例においては半導体層に含まれるI−III−VI族化合物としてCIGSが用いられた。
まず、原料溶液が調整された。この調整方法を以下に示す。
<原料溶液の調整>
<第2の原料溶液の調整>
[a1]10ミリモル(mmol)のCu(CH3CN)4・PF6と、20mmolのP(C6H5)3とが、100mlのアセトニトリルに溶解された後、室温(25℃)における5時間の攪拌によって第1錯体溶液が調製された。
<第2の原料溶液の調整>
[a1]10ミリモル(mmol)のCu(CH3CN)4・PF6と、20mmolのP(C6H5)3とが、100mlのアセトニトリルに溶解された後、室温(25℃)における5時間の攪拌によって第1錯体溶液が調製された。
[a2]40mmolのナトリウムメトキシド(NaOCH3)と、カルコゲン元素含有有機化合物である40mmolのHSeC6H5とが、300mlのメタノールに溶解され、更に、6mmolのInCl3と4mmolのGaCl3とが溶解された後、室温における5時間の攪拌によって第2錯体溶液が調製された。
[a3]工程[a1]で調製された第1錯体溶液に対して、工程[a2]で調製された第2錯体溶液が1分間に10mlの速度で滴下され、白い析出物(沈殿物)が生じた。上記滴下処理の終了後、室温における1時間の攪拌と、遠心分離機による沈殿物の抽出とが、順次に行われた。この沈殿物の抽出時には、遠心分離機によって一旦取り出された沈殿物を500mlのメタノールに分散させた後に遠心分離機で沈殿物を再度取り出す工程が2回繰り返され、最後にこの沈殿物が室温で乾燥されることで、一般式(2)および一般式(3)に示すような単一源錯体の混合体を含む沈殿物が得られた。この単一源錯体の混合体で
は、1つの錯体分子に、CuとInとSeとが含まれるか、またはCuとGaとSeとが含まれる。
は、1つの錯体分子に、CuとInとSeとが含まれるか、またはCuとGaとSeとが含まれる。
[a4]工程[a3]で得られた単一源前駆体が有機溶媒であるピリジンに溶解され、さらに、表1に示すような種々の量の第2の有機リン化合物としてのP(C6H5)3が溶解されることで、複数種の原料溶液が作製された。表1における第2の有機リン化合物の比率は、原料溶液中の単一源前駆体のCuのモル数(MCu)に対するP(C6H5)3のモル数(MP)の百分率、すなわち(MP/MCu)×100(%)を示している。
<第1の半導体層の作製>
次に、ガラスを含む基板1の表面に、Mo等を含む第1の電極層2が成膜されたものが複数枚用意された。そして、窒素ガスの雰囲気下において第1の電極層2の上に上記の複数種の原料溶液がブレード法によってそれぞれ塗布され、複数種の皮膜が形成された。
次に、ガラスを含む基板1の表面に、Mo等を含む第1の電極層2が成膜されたものが複数枚用意された。そして、窒素ガスの雰囲気下において第1の電極層2の上に上記の複数種の原料溶液がブレード法によってそれぞれ塗布され、複数種の皮膜が形成された。
次に、これらの皮膜が窒素ガスの雰囲気下において、300℃で10分間加熱されることにより有機成分が除去された。さらに、この有機成分が除去された皮膜が、水素ガス雰囲気下において、550℃で1時間加熱されることにより、主にCIGSから成る第1の半導体層3が形成された。
<光電変換装置の作製>
次に、上述のように作製された第1の半導体層3の上に、それぞれ、第2の半導体層4と第2の電極層5とが順に形成されて光電変換装置が作製された。
次に、上述のように作製された第1の半導体層3の上に、それぞれ、第2の半導体層4と第2の電極層5とが順に形成されて光電変換装置が作製された。
具体的には、アンモニア水に酢酸カドミウムおよびチオ尿素が溶解された溶液に、主にCIGSから成る第1の半導体層3が形成された基板1が浸漬されることで、第1の半導体層3の上に厚さが50nmのCdSを含む第2の半導体層4が形成された。更に、この第2の半導体層4の上に、スパッタリング法によってAlがドープされた酸化亜鉛を含む透明の導電膜が形成された。
<光電変換装置における光電変換効率の測定>
作製された光電変換装置の光電変換効率が、定常光ソーラーシミュレーターを用いて測定された。ここでは、光電変換装置の受光面に対する光の照射強度が100mW/cm2であり且つエアマス(AM)が1.5である条件下で光電変換効率が測定された。なお、光電変換効率は、光電変換装置において太陽光のエネルギーが電気エネルギーに変換される割合を示し、ここでは、光電変換装置から出力される電気エネルギーの値が、光電変換装置に入射される太陽光のエネルギーの値で除されて、100が乗じられることで導出された。
作製された光電変換装置の光電変換効率が、定常光ソーラーシミュレーターを用いて測定された。ここでは、光電変換装置の受光面に対する光の照射強度が100mW/cm2であり且つエアマス(AM)が1.5である条件下で光電変換効率が測定された。なお、光電変換効率は、光電変換装置において太陽光のエネルギーが電気エネルギーに変換される割合を示し、ここでは、光電変換装置から出力される電気エネルギーの値が、光電変換装置に入射される太陽光のエネルギーの値で除されて、100が乗じられることで導出された。
第2の有機リン化合物の含有率の異なる原料溶液を用いて作製された各光電変換装置の
光電変換効率を表1に示している。表1より、第2の有機リン化合物を添加しない比較例としての試料No.5に比べ、第2の有機リン化合物が原料溶液に添加されることにより、光電変換効率が高められることが分かった。
光電変換効率を表1に示している。表1より、第2の有機リン化合物を添加しない比較例としての試料No.5に比べ、第2の有機リン化合物が原料溶液に添加されることにより、光電変換効率が高められることが分かった。
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が施されることは何等差し支えない。
1:基板
2:第1の電極層
3:第1の半導体層(I−III−VI族化合物を含む半導体層)
4:第2の半導体層
5:第2の電極層
6:第3の電極層
7:接続導体
8:集電電極
10:光電変換セル
11:光電変換装置
2:第1の電極層
3:第1の半導体層(I−III−VI族化合物を含む半導体層)
4:第2の半導体層
5:第2の電極層
6:第3の電極層
7:接続導体
8:集電電極
10:光電変換セル
11:光電変換装置
Claims (6)
- 前記原料溶液において、前記第2の有機リン化合物のモル濃度は前記単一源錯体のモル濃度よりも低い、請求項1に記載の半導体層の製造方法。
- 前記第1の有機リン化合物および前記第2の有機リン化合物はトリアリールホスフィンである、請求項1または2に記載の半導体層の製造方法。
- 前記半導体層を形成する工程において、前記I−III−VI族化合物にリン元素を残存させる、請求項1乃至3のいずれかに記載の半導体層の製造方法。
- 前記半導体層を形成する工程は、前記皮膜の表面に赤外線を照射することによって前記皮膜を加熱する工程である、請求項4記載の半導体層の製造方法。
- 請求項1乃至5のいずれかに記載の半導体層の製造方法によって第1の半導体層を作製する工程と、
該第1の半導体層に電気的に接続されるように、該第1の半導体層とは異なる導電型の第2の半導体層を作製する工程と
を具備することを特徴とする光電変換装置の製造方法。
Priority Applications (1)
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JP2011071683A JP2012209302A (ja) | 2011-03-29 | 2011-03-29 | 半導体層の製造方法および光電変換装置の製造方法 |
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JP2011071683A JP2012209302A (ja) | 2011-03-29 | 2011-03-29 | 半導体層の製造方法および光電変換装置の製造方法 |
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Family Applications (1)
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JP2011071683A Withdrawn JP2012209302A (ja) | 2011-03-29 | 2011-03-29 | 半導体層の製造方法および光電変換装置の製造方法 |
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- 2011-03-29 JP JP2011071683A patent/JP2012209302A/ja not_active Withdrawn
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