JP2013012722A - 光電変換装置の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】Ga濃度勾配を有する半導体層を備えた光電変換装置を容易に作製する。
【解決手段】光電変換装置の製造方法は、I−B族元素、ガリウム元素およびカルコゲン元素を含み、少なくとも前記ガリウム元素が有機錯体の状態で存在する原料溶液を準備する工程と、電極層の上に原料溶液を用いて第1の皮膜を作製し、第1の皮膜を第1の昇温速度で加熱することによって、第1の皮膜に含まれる有機成分を熱分解して第1の層を作製する工程と、第1の層の上に原料溶液を用いて第2の皮膜を作製し、第2の皮膜を第1の昇温速度よりも高い第2の昇温速度で加熱することによって、第2の皮膜に含まれる有機成分を熱分解して第2の層を作製する工程と、第1の層および第2の層を加熱して、I−III−VI族化合物を含む光電変換層としての半導体層を作製する工程とを具備する。
【選択図】なし
【解決手段】光電変換装置の製造方法は、I−B族元素、ガリウム元素およびカルコゲン元素を含み、少なくとも前記ガリウム元素が有機錯体の状態で存在する原料溶液を準備する工程と、電極層の上に原料溶液を用いて第1の皮膜を作製し、第1の皮膜を第1の昇温速度で加熱することによって、第1の皮膜に含まれる有機成分を熱分解して第1の層を作製する工程と、第1の層の上に原料溶液を用いて第2の皮膜を作製し、第2の皮膜を第1の昇温速度よりも高い第2の昇温速度で加熱することによって、第2の皮膜に含まれる有機成分を熱分解して第2の層を作製する工程と、第1の層および第2の層を加熱して、I−III−VI族化合物を含む光電変換層としての半導体層を作製する工程とを具備する。
【選択図】なし
Description
本発明は、I−III−VI族化合物を含む半導体層を用いた光電変換装置の製造方法に関
するものである。
するものである。
太陽光発電等に使用される光電変換装置として、CISやCIGS等のカルコパイライト系のI−III−VI族化合物によって半導体層が形成されたものがある。
このようなI−III−VI族化合物を含む光電変換装置は、複数の光電変換セルが平面的
に並設された構成を有する。各光電変換セルは、ガラス等の基板の上に、金属電極等の下部電極と、光吸収層としてのI−III−VI族化合物を含む半導体層と、バッファ層と、透
明電極や金属電極等の上部電極とが、この順に積層されて構成される。また、複数の光電変換セルは、隣り合う一方の光電変換セルの上部電極と他方の光電変換セルの下部電極とが接続導体によって電気的に接続されることで、電気的に直列に接続されている。
に並設された構成を有する。各光電変換セルは、ガラス等の基板の上に、金属電極等の下部電極と、光吸収層としてのI−III−VI族化合物を含む半導体層と、バッファ層と、透
明電極や金属電極等の上部電極とが、この順に積層されて構成される。また、複数の光電変換セルは、隣り合う一方の光電変換セルの上部電極と他方の光電変換セルの下部電極とが接続導体によって電気的に接続されることで、電気的に直列に接続されている。
そして、光電変換装置の光電変換効率を高めるため、特許文献1では、CIGSから成る半導体層として、表面から下部電極側へ近づくほどGaの濃度が増加する濃度勾配を有するものが用いられることが記載されている。
また、I−III−VI族化合物を含む半導体層の形成方法として、スパッタ等の真空成膜
装置を用いずに原料溶液を用いて製造工程を簡略化する方法がある。特許文献2には、I−III−VI族化合物の原料として、1つの有機化合物内にCuと、Seと、Inもしくは
Gaとを存在させた単一源前駆体(Single Source Precursor)がI−III−VI族化合物の原料として用いられることが記載されている。
装置を用いずに原料溶液を用いて製造工程を簡略化する方法がある。特許文献2には、I−III−VI族化合物の原料として、1つの有機化合物内にCuと、Seと、Inもしくは
Gaとを存在させた単一源前駆体(Single Source Precursor)がI−III−VI族化合物の原料として用いられることが記載されている。
特許文献2に示される単一源前駆体等の原料溶液を用いて、特許文献1に示されるようなGaの濃度勾配を有する半導体層を形成する場合、Ga濃度を変えた複数の原料溶液を用意し、これらを用いて順に皮膜を積層させる必要がある。このような方法では、製造工程が複雑となる。
本発明の目的は、Ga濃度勾配を有する半導体層を備えた光電変換装置を容易に作製することを目的とする。
本発明の第1の実施形態に係る光電変換装置の製造方法は、I−B族元素、ガリウム元素およびカルコゲン元素を含み、少なくとも前記ガリウム元素が有機錯体の状態で存在する原料溶液を準備する工程と、電極層の上に前記原料溶液を用いて第1の皮膜を作製し、該第1の皮膜を第1の昇温速度で加熱することによって、前記第1の皮膜に含まれる有機成分を熱分解して第1の層を作製する工程と、該第1の層の上に前記原料溶液を用いて第2の皮膜を作製し、該第2の皮膜を前記第1の昇温速度よりも高い第2の昇温速度で加熱
することによって、前記第2の皮膜に含まれる有機成分を熱分解して第2の層を作製する工程と、前記第1の層および前記第2の層を加熱して、I−III−VI族化合物を含む光電
変換層としての半導体層を作製する工程とを具備する。
することによって、前記第2の皮膜に含まれる有機成分を熱分解して第2の層を作製する工程と、前記第1の層および前記第2の層を加熱して、I−III−VI族化合物を含む光電
変換層としての半導体層を作製する工程とを具備する。
本発明の第2の実施形態に係る光電変換装置の製造方法は、I−B族元素およびガリウム元素を含み、少なくとも前記ガリウム元素が有機錯体の状態で存在する原料溶液を準備する工程と、電極層の上に前記原料溶液を用いて第1の皮膜を作製し、該第1の皮膜を第1の昇温速度で加熱することによって、前記第1の皮膜に含まれる有機成分を熱分解して第1の層を作製する工程と、該第1の層の上に前記原料溶液を用いて第2の皮膜を作製し、該第2の皮膜を前記第1の昇温速度よりも高い第2の昇温速度で加熱することによって、前記第2の皮膜に含まれる有機成分を熱分解して第2の層を作製する工程と、前記第1の層および前記第2の層をカルコゲン元素を含む雰囲気で加熱して、I−III−VI族化合
物を含む光電変換層としての半導体層を作製する工程とを具備する。
物を含む光電変換層としての半導体層を作製する工程とを具備する。
本発明によれば、Ga濃度勾配を有する半導体層を備えた光電変換装置を容易に作製することが可能となる。
以下に本発明の実施形態に係る光電変換装置の製造方法について図面を参照しながら詳細に説明する。
<(1)光電変換装置の構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る光電変換装置の製造方法を用いて作製した光電変換装置を示す断面図である。図1〜図3において同じ構成のものには同じ符号を付している。光電変換装置11は、基板1と、第1の電極層2と、I−III−VI族化合物を含む第1
の半導体層3と、第2の半導体層4と、第2の電極層5とを含んでいる。
図1は、本発明の一実施形態に係る光電変換装置の製造方法を用いて作製した光電変換装置を示す断面図である。図1〜図3において同じ構成のものには同じ符号を付している。光電変換装置11は、基板1と、第1の電極層2と、I−III−VI族化合物を含む第1
の半導体層3と、第2の半導体層4と、第2の電極層5とを含んでいる。
第1の半導体層3と第2の半導体層4は導電型が異なっており、第1の半導体層3と第2の半導体層4とで光照射により生じた正負のキャリアの電荷分離を良好に行うことができる。例えば、第1の半導体層3がp型であれば、第2の半導体層4はn型である。あるいは、第2の半導体層4が、バッファ層と第1の半導体層3とは異なる導電型の半導体層とを含む複数層であってもよい。本実施形態では、第1の半導体層3が一方導電型の光吸収層であり、第2の半導体層4がバッファ層と他方導電型半導体層とを兼ねている例を示している。
また、本実施形態における光電変換装置11は第2の電極層5側から光が入射されるものを示しているが、これに限定されず、基板1側から光が入射されるものであってもよい。
図1において、光電変換装置11は複数個の光電変換セル10が並べられて形成されて
いる。光電変換セル10は、第1の半導体層3の基板1側に第1の電極層2と離間して設けられた第3の電極層6を具備している。そして、第1の半導体層3に設けられた接続導体7によって、第2の電極層5と第3の電極層6とが電気的に接続されている。図1においては、この第3の電極層6は、隣接する光電変換セル10の第1の電極層2が延伸されたものである。この構成により、隣接する光電変換セル10同士が直列接続されている。また、一つの光電変換セル10内において、接続導体7は第1の半導体層3および第2の半導体層4を貫通するように設けられており、第1の電極層2と第2の電極層5とで挟まれた第1の半導体層3と第2の半導体層4とで光電変換が行なわれる。
いる。光電変換セル10は、第1の半導体層3の基板1側に第1の電極層2と離間して設けられた第3の電極層6を具備している。そして、第1の半導体層3に設けられた接続導体7によって、第2の電極層5と第3の電極層6とが電気的に接続されている。図1においては、この第3の電極層6は、隣接する光電変換セル10の第1の電極層2が延伸されたものである。この構成により、隣接する光電変換セル10同士が直列接続されている。また、一つの光電変換セル10内において、接続導体7は第1の半導体層3および第2の半導体層4を貫通するように設けられており、第1の電極層2と第2の電極層5とで挟まれた第1の半導体層3と第2の半導体層4とで光電変換が行なわれる。
基板1は、第1の半導体層3および第2の半導体層4を支持するためのものである。基板1に用いられる材料としては、例えば、ガラス、セラミックス、樹脂および金属等が挙げられる。
第1の電極層2および第3の電極層6は、Mo、Al、TiおよびAu等から選ばれる導電体が用いられ、基板1上にスパッタリング法および蒸着法等から選ばれる方法で形成される。
第1の半導体層3はI−III−VI族化合物を主に含んだ半導体層である。I−III−VI化合物とは、I−B族元素(11族元素ともいう)とIII−B族元素(13族元素ともいう
)とVI−B族元素(16族元素ともいう)との化合物であり、カルコパイライト構造を有し、カルコパイライト系化合物と呼ばれる(CIS系化合物ともいう)。I−III−VI化
合物としては、例えば、Cu(In,Ga)Se2(CIGSともいう)、Cu(In,Ga)(Se,S)2(CIGSSともいう)、およびCuInSe2(CISともいう)等が挙げられる。なお、Cu(In,Ga)Se2とは、CuとInとGaとSeとから主に構成された化合物をいう。また、Cu(In,Ga)(Se,S)2とは、CuとInとGaとSeとSとを主成分として含む化合物をいう。
)とVI−B族元素(16族元素ともいう)との化合物であり、カルコパイライト構造を有し、カルコパイライト系化合物と呼ばれる(CIS系化合物ともいう)。I−III−VI化
合物としては、例えば、Cu(In,Ga)Se2(CIGSともいう)、Cu(In,Ga)(Se,S)2(CIGSSともいう)、およびCuInSe2(CISともいう)等が挙げられる。なお、Cu(In,Ga)Se2とは、CuとInとGaとSeとから主に構成された化合物をいう。また、Cu(In,Ga)(Se,S)2とは、CuとInとGaとSeとSとを主成分として含む化合物をいう。
第2の半導体層4は上記第1の半導体層3上に形成されている。本実施形態では、第1の半導体層3が一方導電型の光吸収層であり、第2の半導体層4がバッファ層と他方導電型半導体層とを兼ねている例を示している。リーク電流の低減という観点からは、第2の半導体層4は抵抗率が1Ω・cm以上であってもよい。第2の半導体層4としては、CdS、ZnS、ZnO、In2Se3、In(OH,S)、(Zn,In)(Se,OH)、および(Zn,Mg)O等が挙げられる。第2の半導体層4は、例えばケミカルバスデポジション(CBD)法等で形成される。なお、In(OH,S)とは、InとOHとSとを主成分として含む化合物をいう。(Zn,In)(Se,OH)は、ZnとInとSeとOHとを主成分として含む化合物をいう。(Zn,Mg)Oは、ZnとMgとOとを主成分として含む化合物をいう。第2の半導体層4は、第1の半導体層3の吸収効率を高めるため、第1の半導体層3が吸収する光の波長領域に対して高い光透過性を有するものであってもよい。
また、第2の半導体層4は、その厚みが10〜200nmである。第2の半導体層4上に第2の電極層5がスパッタリング等で製膜される際のダメージが抑制される観点から言えば、第2の半導体層4の厚みは100〜200nmとされ得る。
第2の電極層5は、ITO、ZnO等の0.05〜3.0μmの厚みを有する透明導電膜である。第2の電極層5は、スパッタリング法、蒸着法または化学的気相成長(CVD)法等で形成される。第2の電極層5は、第2の半導体層4よりも抵抗率の低い層であり、第1の半導体層3で生じた電荷を取り出すためのものである。電荷を良好に取り出すという観点からは、第2の電極層5の抵抗率が1Ω・cm未満でシート抵抗が50Ω/□以下であってもよい。
第2の電極層5としては、第1の半導体層3の吸収効率を高めるため、第1の半導体層3の吸収光に対して高い光透過性を有するものが用いられてもよい。光透過性を高めると同時に光反射ロス低減効果および光散乱効果を高め、さらに光電変換によって生じた電流を良好に伝送するという観点から、第2の電極層5は0.05〜0.5μmの厚さであってもよい。また、第2の電極層5と第2の半導体層4との界面での光反射ロスを低減する観点からは、第2の電極層5と第2の半導体層4の屈折率は略等しくてもよい。
光電変換セル10は、複数個が並べられて電気的に接続され、光電変換装置11と成る。隣接する光電変換セル10同士を容易に直列接続するために、図1に示すように、光電変換セル10は、第1の半導体層3の基板1側に第1の電極層2と離間して設けられた第3の電極層6を具備している。そして、第1の半導体層3に設けられた接続導体7によって、第2の電極層5と第3の電極層6とが電気的に接続されている。
図1において、接続導体7は第2の電極層5が形成される際に、第2の電極層5と同じ工程で、第2の電極層5と一体化して形成されている例が示されているが、これに限定されない。例えば、導電性ペーストが充填されて形成されていてもよい。
<(2)第1の半導体層の製造方法>
I−III−VI族化合物を含む第1の半導体層3は、以下に示す第1の方法〜第4の方法
のいずれかによって作製される。
I−III−VI族化合物を含む第1の半導体層3は、以下に示す第1の方法〜第4の方法
のいずれかによって作製される。
<(2-1)第1の方法>
第1の方法では、先ず、I−B族元素、Gaおよびカルコゲン元素を含み、少なくともGaが有機錯体の状態で存在する原料溶液が用意される。そして、この有機錯体として、I−B族元素とGaとカルコゲン元素含有有機化合物とを含む単一源前駆体が用いられ、この単一源前駆体が溶媒に溶解させた原料溶液(第1の方法における原料溶液を第1の原料溶液ともいう)が第1の方法で用いられる。カルコゲン元素含有有機化合物とは、カルコゲン元素を含む有機化合物であり、炭素元素とカルコゲン元素との共有結合を有する有機化合物である。カルコゲン元素とは、VI−B族元素のうちのS、Se、Teをいう。カルコゲン元素含有有機化合物としては、例えば、チオール、スルフィド、ジスルフィド、チオフェン、スルホキシド、スルホン、チオケトン、スルホン酸、スルホン酸エステル、スルホン酸アミド、セレノール、セレニド、ジセレニド、セレノキシド、セレノン、テルロール、テルリド、ジテルリド等がある。特に、配位力が高く金属元素と安定な錯体を形成しやすいという観点からは、チオール、スルフィド、ジスルフィド、セレノール、セレニド、ジセレニド、テルロール、テルリド、ジテルリドが用いられてもよい。I−B族元素としてCuが用いられ、カルコゲン元素含有有機化合物としてフェニルセレノールが用いられた場合の単一源前駆体の構造の一例として、一般式(1)が挙げられる。この単一源前駆体は特許文献2に示されるような方法を用いて作製可能である。なお、一般式(1)中のPhはフェニル基を示す。
第1の方法では、先ず、I−B族元素、Gaおよびカルコゲン元素を含み、少なくともGaが有機錯体の状態で存在する原料溶液が用意される。そして、この有機錯体として、I−B族元素とGaとカルコゲン元素含有有機化合物とを含む単一源前駆体が用いられ、この単一源前駆体が溶媒に溶解させた原料溶液(第1の方法における原料溶液を第1の原料溶液ともいう)が第1の方法で用いられる。カルコゲン元素含有有機化合物とは、カルコゲン元素を含む有機化合物であり、炭素元素とカルコゲン元素との共有結合を有する有機化合物である。カルコゲン元素とは、VI−B族元素のうちのS、Se、Teをいう。カルコゲン元素含有有機化合物としては、例えば、チオール、スルフィド、ジスルフィド、チオフェン、スルホキシド、スルホン、チオケトン、スルホン酸、スルホン酸エステル、スルホン酸アミド、セレノール、セレニド、ジセレニド、セレノキシド、セレノン、テルロール、テルリド、ジテルリド等がある。特に、配位力が高く金属元素と安定な錯体を形成しやすいという観点からは、チオール、スルフィド、ジスルフィド、セレノール、セレニド、ジセレニド、テルロール、テルリド、ジテルリドが用いられてもよい。I−B族元素としてCuが用いられ、カルコゲン元素含有有機化合物としてフェニルセレノールが用いられた場合の単一源前駆体の構造の一例として、一般式(1)が挙げられる。この単一源前駆体は特許文献2に示されるような方法を用いて作製可能である。なお、一般式(1)中のPhはフェニル基を示す。
第1の原料溶液に含まれる溶媒としては、単一源前駆体を溶解できるものであればよく、例えば、ピリジンやアニリン等の極性溶媒が用いられる。
また、上記第1の原料溶液にInが含まれていてもよい。この場合、I−III−VI族化
合物のIII−B族元素としてInとGaとが含まれることとなり、太陽光に対する吸収率
が高まる。第1の原料溶液に含まれるInは、例えばInを含む単一源前駆体であってもよい。このような前駆体の構造の一例としては、一般式(2)が挙げられる。
合物のIII−B族元素としてInとGaとが含まれることとなり、太陽光に対する吸収率
が高まる。第1の原料溶液に含まれるInは、例えばInを含む単一源前駆体であってもよい。このような前駆体の構造の一例としては、一般式(2)が挙げられる。
次に、上記第1の原料溶液が、例えば、スピンコータ、スクリーン印刷、ディッピング、スプレー、またはダイコータ等によって第1の電極層2上に膜状に被着され、乾燥されることにより、第1の皮膜が作製される。そして、この第1の皮膜が第1の昇温速度で加熱されることによって、第1の皮膜に含まれる有機成分が熱分解された第1の層が作製される。なお、この熱分解時の雰囲気ガスとしては、窒素およびアルゴン等から選ばれる不活性ガス、水素等の還元ガスあるいはこれらの混合ガスが用いられ、加熱温度としては、50〜350℃が採用される。
次に、この第1の層上に、さらに上記第1の原料溶液が用いられて、上記第1の皮膜と同様の方法で第2の皮膜が作製される。そして、この第2の皮膜が、上記第1の昇温速度
よりも高い昇温速度で加熱されることによって、第2の皮膜に含まれる有機成分が熱分解された第2の層が作製される。これにより、生成する第2の層中のGaの含有率を第1の層よりも低減することが可能となる。つまり、有機成分の熱分解時の昇温速度が高くなるほど、皮膜中のGaが皮膜外へ放出される。この現象についての詳細はよくわからないが、熱分解時の昇温速度が高くなると皮膜中の単一源前駆体が分解されて、Gaとカルコゲン元素含有有機化合物との錯体が形成され、この錯体が気化等により皮膜外へ放出されるのではないかと考えられる。
よりも高い昇温速度で加熱されることによって、第2の皮膜に含まれる有機成分が熱分解された第2の層が作製される。これにより、生成する第2の層中のGaの含有率を第1の層よりも低減することが可能となる。つまり、有機成分の熱分解時の昇温速度が高くなるほど、皮膜中のGaが皮膜外へ放出される。この現象についての詳細はよくわからないが、熱分解時の昇温速度が高くなると皮膜中の単一源前駆体が分解されて、Gaとカルコゲン元素含有有機化合物との錯体が形成され、この錯体が気化等により皮膜外へ放出されるのではないかと考えられる。
なお、この第2の皮膜中の有機成分の熱分解時の雰囲気ガスとしては、第1の皮膜中の有機成分の熱分解時と同様、窒素およびアルゴン等から選ばれる不活性ガス、水素等の還元ガスあるいはこれらの混合ガスが用いられ、加熱温度としては、50〜350℃が採用される。
このような第1の昇温速度よりも高い第2の昇温速度での加熱工程が用いられることにより、Ga濃度の異なる原料溶液が用意される必要はなく、1種類の第1の原料溶媒によってGa濃度勾配が容易に形成可能となる。よって、製造工程が簡略化される。
上記第1の昇温速度は、例えば、5〜50℃/minとすることができる。これにより、Gaの消失を低減し、原料使用量を少なくできる。また、第2の昇温速度は、例えば、第1の昇温速度の5〜100倍とすることができる。これにより、Gaの濃度勾配を良好にし、電荷移動をより高めることができる。
なお、上記第2の層上に、熱分解時の昇温速度が高められながら、上記工程が繰り返されて、Ga濃度がさらに減少した第3の層、第4の層等がさらに形成されてもよい。これにより、Ga濃度の勾配をより高めることができる。
次に、上記第1の層および第2の層が、さらに400〜600℃で加熱されることにより、I−III−VI族化合物の多結晶体が形成され、第1の半導体層3となる。この第1の
半導体層3を形成するための加熱時の雰囲気ガスとしては、不活性ガス、還元ガスまたはこれらの混合ガスが用いられる。この雰囲気ガスには、カルコゲン元素が、例えば、Se蒸気、S蒸気、H2SeまたはH2Sとして混合されてもよい。第1の半導体層3を形成
するための雰囲気ガスにカルコゲン元素が含まれることによって、カルコゲン化反応がより促進され、良好な第1の半導体層3と成る。
半導体層3を形成するための加熱時の雰囲気ガスとしては、不活性ガス、還元ガスまたはこれらの混合ガスが用いられる。この雰囲気ガスには、カルコゲン元素が、例えば、Se蒸気、S蒸気、H2SeまたはH2Sとして混合されてもよい。第1の半導体層3を形成
するための雰囲気ガスにカルコゲン元素が含まれることによって、カルコゲン化反応がより促進され、良好な第1の半導体層3と成る。
<(2-2)第2の方法>
I−III−VI族化合物を含む第1の半導体層3を作製するための第2の方法について説
明する。
I−III−VI族化合物を含む第1の半導体層3を作製するための第2の方法について説
明する。
第2の方法では、先ず、I−B族元素、Gaおよびカルコゲン元素を含み、少なくともGaが有機錯体の状態で存在する原料溶液が用意される。そして、この有機錯体として、Gaおよびカルコゲン元素含有有機化合物を含むガリウム錯体が用いられ、このガリウム錯体とI−B族元素とが溶媒に溶解された原料溶液(第2の方法における原料溶液を第2の原料溶液ともいう)が第2の方法で用いられる。I−B族元素は、例えばI−B族元素を含むI族錯体として第2の原料溶液に含まれてもよい。このI族錯体は、有機配位子または無機配位子がI−B族元素に配位した錯体である。また、Gaおよびカルコゲン元素含有有機化合物を含むガリウム錯体は、カルコゲン元素含有有機化合物がGaに配位した錯体である。
I−III−VI族化合物の生成を良好に行なうという観点で、I族錯体も、I−B族元素
およびカルコゲン元素含有有機化合物を含む錯体であってもよい。このようなカルコゲン
元素含有有機化合物を含むI族錯体およびガリウム錯体は、例えば、I−B族元素の地金またはガリウムの地金がカルコゲン元素含有有機化合物を含む溶媒中に溶解されることにより作製される。つまり、I−B族元素の地金やGaの地金は、カルコゲン元素含有有機化合物と反応してI族錯体やGa錯体と成ることで溶媒中に溶解する。I族錯体の具体例としては、I−B族元素(例えばCu)とフェニルセレノールとの錯体がある。また、ガリウム錯体の具体例としては、Gaとフェニルセレノールとの錯体がある。なお、カルコゲン元素含有有機化合物を含むI族錯体として上記単一源前駆体が用いられてもよい。
およびカルコゲン元素含有有機化合物を含む錯体であってもよい。このようなカルコゲン
元素含有有機化合物を含むI族錯体およびガリウム錯体は、例えば、I−B族元素の地金またはガリウムの地金がカルコゲン元素含有有機化合物を含む溶媒中に溶解されることにより作製される。つまり、I−B族元素の地金やGaの地金は、カルコゲン元素含有有機化合物と反応してI族錯体やGa錯体と成ることで溶媒中に溶解する。I族錯体の具体例としては、I−B族元素(例えばCu)とフェニルセレノールとの錯体がある。また、ガリウム錯体の具体例としては、Gaとフェニルセレノールとの錯体がある。なお、カルコゲン元素含有有機化合物を含むI族錯体として上記単一源前駆体が用いられてもよい。
カルコゲン元素含有有機化合物の配位力を高め、I族錯体またはガリウム錯体を良好に作製するという観点では、上記カルコゲン元素含有有機化合物を含む溶媒中にはルイス塩基性有機化合物が含まれていてもよい。ルイス塩基性有機化合物とは、ルイス塩基となり得る官能基を有する有機化合物のことである。ルイス塩基となり得る官能基としては、例えば、非共有電子対を有するV−B族元素(15族元素とも言う)を具備した官能基、および非共有電子対を有するVI−B族元素を具備した官能基等が挙げられる。ルイス塩基性有機化合物の具体例としては、ピリジン、アニリン等である。
また、上記第2の原料溶液にInが含まれていてもよい。この場合、I−III−VI族化
合物のIII−B族元素としてInとGaとが含まれることとなり、太陽光に対する吸収率
が高まる。第2の原料溶液に含まれるInは、例えば、カルコゲン元素含有有機化合物がInに配位した錯体が挙げられる。
合物のIII−B族元素としてInとGaとが含まれることとなり、太陽光に対する吸収率
が高まる。第2の原料溶液に含まれるInは、例えば、カルコゲン元素含有有機化合物がInに配位した錯体が挙げられる。
次に、上記第2の原料溶液が第1の電極層2上に膜状に被着され、乾燥されることにより、第1の皮膜が作製される。そして、この第1の皮膜が第1の昇温速度で加熱されることによって、第1の皮膜の有機成分が熱分解され、第1の層が作製される。第2の方法における熱分解時の各種条件は第1の方法と同様である。
次に、この第1の層上に、さらに上記第2の原料溶液が用いられて、上記第1の皮膜と同様の方法で第2の皮膜が作製される。そして、この第2の皮膜が、上記第1の昇温速度よりも高い第2の昇温速度を有する雰囲気下で加熱されることによって、第2の皮膜の有機成分が熱分解して第2の層が作製される。これにより、第1の方法と同様、生成する第2の層中のGaの含有率を第1の層よりも低減することが可能となる。つまり、第2の方法においても、第1の方法と同様に、有機成分の熱分解時の昇温速度が高くなるほど、皮膜中のGaが皮膜外へ放出される。この現象についても詳細はよくわからないが、熱分解時の昇温速度が高くなるとガリウム錯体が気化等により皮膜外へ放出されるのではないかと考えられる。
このように第2の方法においても、第1の昇温速度よりも高い第2の昇温速度での加熱工程が用いられることにより、Ga濃度の異なる原料溶液が用意される必要はなく、1種類の第2の原料溶媒によってGa濃度勾配が容易に形成可能となる。よって、製造工程が簡略化される。
なお、上記第2の層上に、熱分解時の昇温速度が高められながら、上記工程が繰り返されて、Ga濃度がさらに減少した第3の層、第4の層等がさらに形成されてもよい。
次に、上記第1の層および第2の層が、さらに400〜600℃で加熱されることにより、I−III−VI族化合物の多結晶体が形成され、第1の半導体層3となる。第2の方法
における第1の半導体層3を形成するための加熱時の各種条件は第1の方法と同様である。
における第1の半導体層3を形成するための加熱時の各種条件は第1の方法と同様である。
<(2-3)第3の方法>
I−III−VI族化合物を含む第1の半導体層3を作製するための第3の方法について説
明する。
I−III−VI族化合物を含む第1の半導体層3を作製するための第3の方法について説
明する。
第3の方法では、先ず、I−B族元素、Gaおよびカルコゲン元素を含み、少なくともGaが有機錯体の状態で存在する原料溶液が用意される。そして、この有機錯体として、有機配位子がGaに配位した錯体(有機配位子がGaに配位した錯体を第1錯体ともいう)が用いられ、この第1錯体とI−B族元素とカルコゲン元素とが溶媒に溶解された原料溶液(第3の方法における原料溶液を第3の原料溶液ともいう)が第3の方法で用いられる。
第3の原料溶液に含まれる第1錯体は、有機配位子(この有機配位子はカルコゲン元素を含んでいなくてもよい)がGaに配位したものであり、この第1錯体としては有機酸とGaとの塩も含まれる。このような第1錯体としては、例えば、ガリウムアセチルアセトナートや酢酸ガリウム等が挙げられる。
第3の原料溶液に含まれるI−B族元素は、例えばI−B族元素を含むI族錯体であってもよい。このI族錯体は、有機配位子または無機配位子がI−B族元素に配位した錯体である。
第3の原料溶液に含まれるカルコゲン元素は、例えば、カルコゲン元素含有有機化合物等の種々の化合物が挙げられ、上記I族錯体の配位子としてI−B族元素に配位したものであってもよい。
また、上記第2の原料溶液にInが含まれていてもよい。この場合、I−III−VI族化
合物のIII−B族元素としてInとGaとが含まれることとなり、太陽光に対する吸収率
が高まる。第2の原料溶液に含まれるInは、例えば、カルコゲン元素含有有機化合物がInに配位した錯体が挙げられる。
合物のIII−B族元素としてInとGaとが含まれることとなり、太陽光に対する吸収率
が高まる。第2の原料溶液に含まれるInは、例えば、カルコゲン元素含有有機化合物がInに配位した錯体が挙げられる。
次に、上記第3の原料溶液が第1の電極層2上に膜状に被着され、乾燥されることにより、第1の皮膜が作製される。そして、この第1の皮膜が第1の昇温速度で加熱されることによって、第1の皮膜の有機成分が熱分解され、第1の層が作製される。第3の方法における熱分解時の各種条件は第1の方法と同様である。
次に、この第1の層上に、さらに上記第3の原料溶液が用いられて、上記第1の皮膜と同様の方法で第2の皮膜が作製される。そして、この第2の皮膜が、上記第1の昇温速度よりも高い第2の昇温速度を有する雰囲気下で加熱されることによって、第2の皮膜の有機成分が熱分解して第2の層が作製される。これにより、第1の方法と同様、生成する第2の層中のGaの含有率を第1の層よりも低減することが可能となる。つまり、第3の方法においても、第1の方法と同様に、有機成分の熱分解時の昇温速度が高くなるほど、皮膜中のGaが皮膜外へ放出される。この現象についても詳細はよくわからないが、熱分解時の昇温速度が高くなるとガリウム錯体が気化等により皮膜外へ放出されるのではないかと考えられる。
このように第3の方法においても、第1の昇温速度よりも高い第2の昇温速度での加熱工程が用いられることにより、Ga濃度の異なる原料溶液が用意される必要はなく、1種類の第3の原料溶媒によってGa濃度勾配が容易に形成可能となる。よって、製造工程が簡略化される。
なお、上記第2の層上に、熱分解時の昇温速度が高められながら、上記工程が繰り返されて、Ga濃度がさらに減少した第3の層、第4の層等がさらに形成されてもよい。
次に、上記第1の層および第2の層が、さらに400〜600℃で加熱されることにより、I−III−VI族化合物の多結晶体が形成され、第1の半導体層3となる。第3の方法
における第1の半導体層3を形成するための加熱時の各種条件は第1の方法と同様である。
における第1の半導体層3を形成するための加熱時の各種条件は第1の方法と同様である。
<(2-4)第4の方法>
I−III−VI族化合物を含む第1の半導体層3を作製するための第4の方法について説
明する。
I−III−VI族化合物を含む第1の半導体層3を作製するための第4の方法について説
明する。
第4の方法では、先ず、I−B族元素およびGaを含み、少なくともGaが有機錯体の状態で存在する原料溶液(この原料溶液はカルコゲン元素を含んでいなくてもよい)が用意される。そして、この有機錯体として、有機配位子がGaに配位した第1錯体が用いられ、この第1錯体とI−B族元素とが溶媒に溶解された原料溶液(第4の方法における原料溶液を第4の原料溶液ともいう)が第4の方法で用いられる。I−B族元素は、例えば有機配位子または無機配位子がI−B族元素に配位したI族錯体が用いられてもよい。
また、上記第4の原料溶液にInが含まれていてもよい。この場合、I−III−VI族化
合物のIII−B族元素としてInとGaとが含まれることとなり、太陽光に対する吸収率
が高まる。第4の原料溶液に含まれるInは、例えば、有機配位子または無機配位子がInに配位した錯体が挙げられる。
合物のIII−B族元素としてInとGaとが含まれることとなり、太陽光に対する吸収率
が高まる。第4の原料溶液に含まれるInは、例えば、有機配位子または無機配位子がInに配位した錯体が挙げられる。
次に、上記第4の原料溶液が第1の電極層2上に膜状に被着され、乾燥されることにより、第1の皮膜が作製される。そして、この第1の皮膜が第1の昇温速度で加熱されることによって、第1の皮膜の有機成分が熱分解され、第1の層が作製される。第4の方法における熱分解時の各種条件は第1の方法と同様である。
次に、この第1の層上に、さらに上記第4の原料溶液が用いられて、上記第1の皮膜と同様の方法で第2の皮膜が作製される。そして、この第2の皮膜が、上記第1の昇温速度よりも高い第2の昇温速度を有する雰囲気下で加熱されることによって、第2の皮膜の有機成分が熱分解して第2の層が作製される。これにより、第1の方法と同様、生成する第2の層中のGaの含有率を第1の層よりも低減することが可能となる。つまり、第4の方法においても、第1の方法と同様に、有機成分の熱分解時の昇温速度が高くなるほど、皮膜中のGaが皮膜外へ放出される。この現象についても詳細はよくわからないが、熱分解時の昇温速度が高くなるとガリウム錯体が気化等により皮膜外へ放出されるのではないかと考えられる。
このように第4の方法においても、第1の昇温速度よりも高い第2の昇温速度での加熱工程が用いられることにより、Ga濃度の異なる原料溶液が用意される必要はなく、1種類の第4の原料溶媒によってGa濃度勾配が容易に形成可能となる。よって、製造工程が簡略化される。
なお、上記第2の層上に、熱分解時の昇温速度が高められながら、上記工程が繰り返されて、Ga濃度がさらに減少した第3の層、第4の層等がさらに形成されてもよい。
次に、上記第1の層および第2の層が、さらにカルコゲン元素を含む雰囲気において、400〜600℃で加熱されることにより、I−III−VI族化合物の多結晶体が形成され
、第1の半導体層3となる。
、第1の半導体層3となる。
カルコゲン元素を含む雰囲気としては、例えば、Se蒸気、S蒸気、H2SeまたはH
2S等の雰囲気が挙げられ、これらは不活性ガスや還元ガスと混合されて用いられてもよい。
2S等の雰囲気が挙げられ、これらは不活性ガスや還元ガスと混合されて用いられてもよい。
<(3)光電変換装置の変形例>
次に本発明の一実施形態に係る光電変換装置の製造方法を用いて作製した光電変換装置の変形例を図2、図3に基づき説明する。図2は光電変換装置21の断面図であり、図3は光電変換装置21の斜視図である。図2、図3は、第2の電極層5上に集電電極8が形成されている点で図1の光電変換装置11と異なっている。図2、図3において、図1と同じ構成のものには、同じ符号が付されている。図2、図3に示すように、光電変換装置21は、図1と同様、互いに接続された複数の光電変換セル20を具備している。集電電極8は、第2の電極層5の電気抵抗を小さくするためのものである。第2の電極層5上に集電電極8が設けられることにより、第2の電極層5の厚さを薄くして光透過性を高めるとともに第1の半導体層3で発生した電流が効率よく取り出される。その結果、光電変換装置21の発電効率が高められる。
次に本発明の一実施形態に係る光電変換装置の製造方法を用いて作製した光電変換装置の変形例を図2、図3に基づき説明する。図2は光電変換装置21の断面図であり、図3は光電変換装置21の斜視図である。図2、図3は、第2の電極層5上に集電電極8が形成されている点で図1の光電変換装置11と異なっている。図2、図3において、図1と同じ構成のものには、同じ符号が付されている。図2、図3に示すように、光電変換装置21は、図1と同様、互いに接続された複数の光電変換セル20を具備している。集電電極8は、第2の電極層5の電気抵抗を小さくするためのものである。第2の電極層5上に集電電極8が設けられることにより、第2の電極層5の厚さを薄くして光透過性を高めるとともに第1の半導体層3で発生した電流が効率よく取り出される。その結果、光電変換装置21の発電効率が高められる。
集電電極8は、例えば、図3に示すように、光電変換セル20の一端から接続導体7にかけて線状に形成されている。これにより、第1の半導体層3の光電変換により生じた電荷が第2の電極層5を介して集電電極8に集電され、接続導体7を介して隣接する光電変換セル20に良好に伝達される。その結果、光電変換装置20の発電効率が高められる。
集電電極8の幅は、第1の半導体層3への光を遮るのを低減するとともに良好な導電性を有するという観点からは、50〜400μmとされ得る。また、集電電極8は、枝分かれした複数の分岐部を有していてもよい。
集電電極8は、例えば、Ag等の金属粉を樹脂バインダー等に分散させた金属ペーストがパターン状に印刷され、これが硬化されることによって形成される。
本発明の実施形態にかかる光電変換装置の製造方法について、以下のようにして評価した。本実施例においては半導体層としてCIGSが用いられた。
まず、2種類の原料溶液(第1の原料溶液および第2の原料溶液)が調整された。これらの調整方法を以下に示す。
<第1の原料溶液の調整>
[a1]10ミリモル(mmol)のCu(CH3CN)4・PF6と、20mmolのP(C6H5)3とが、100mlのアセトニトリルに溶解された後、室温(25℃)における5時間の攪拌によって第1錯体溶液が調製された。
[a1]10ミリモル(mmol)のCu(CH3CN)4・PF6と、20mmolのP(C6H5)3とが、100mlのアセトニトリルに溶解された後、室温(25℃)における5時間の攪拌によって第1錯体溶液が調製された。
[a2]40mmolのナトリウムメトキシド(NaOCH3)と、カルコゲン元素含有有機化合物である40mmolのHSeC6H5とが、300mlのメタノールに溶解され、更に、6mmolのInCl3と4mmolのGaCl3とが溶解された後、室温における5時間の攪拌によって第2錯体溶液が調製された。
[a3]工程[a1]で調製された第1錯体溶液に対して、工程[a2]で調製された第2錯体溶液が1分間に10mlの速度で滴下され、白い析出物(沈殿物)が生じた。上記滴下処理の終了後、室温における1時間の攪拌と、遠心分離機による沈殿物の抽出とが、順次に行われた。この沈殿物の抽出時には、遠心分離機によって一旦取り出された沈殿物を500mlのメタノールに分散させた後に遠心分離機で沈殿物を再度取り出す工程が2回繰り返され、最後にこの沈殿物が室温で乾燥されることで、一般式(1)および一般式(2
)に示すような単一源前駆体の混合体を含む沈殿物が得られた。この単一源前駆体の混合体では、1つの錯体分子に、CuとGaとSeとが含まれるか、またはCuとInとSeとが含まれる。
)に示すような単一源前駆体の混合体を含む沈殿物が得られた。この単一源前駆体の混合体では、1つの錯体分子に、CuとGaとSeとが含まれるか、またはCuとInとSeとが含まれる。
[a4]工程[a3]で得られた単一源前駆体を含む沈殿物に有機溶媒であるピリジンが添加されることで、単一源前駆体の濃度が45質量%である第2の原料溶液が生成された。<第2の原料溶液の調整>
[b1]カルコゲン元素含有有機化合物であるフェニルセレノール(HSeC6H5)が、ルイス塩基性有機溶剤であるアニリンに対して、同じmol数となるように溶解されて混合溶媒が調製された。
[b1]カルコゲン元素含有有機化合物であるフェニルセレノール(HSeC6H5)が、ルイス塩基性有機溶剤であるアニリンに対して、同じmol数となるように溶解されて混合溶媒が調製された。
[b2]次に、地金のCu、地金のIn、および地金のGaが、上記混合溶媒に直接溶解されることで第1の原料溶液が調製された(各金属元素はフェニルセレノールと錯体を形成することにより混合溶媒中に溶解すると考えられる)。この第2の原料溶液では、Cuの濃度が2.3質量%、Inの濃度が3.2質量%、Gaの濃度が1.3質量%とされた。
<第1の半導体層の作製>
次に、ガラスを含む基板1の表面に、Mo等を含む第1の電極層2が成膜されたものが用意された。そして、窒素ガスの雰囲気下において第1の電極層2の上に上記第1の原料溶液がブレード法によって塗布され、第1の皮膜が形成された。
次に、ガラスを含む基板1の表面に、Mo等を含む第1の電極層2が成膜されたものが用意された。そして、窒素ガスの雰囲気下において第1の電極層2の上に上記第1の原料溶液がブレード法によって塗布され、第1の皮膜が形成された。
そして、この第1の皮膜が窒素ガスの雰囲気下において、17℃/minの昇温速度で300℃まで昇温され、300℃で10分間加熱されることにより有機成分が除去され、第1の層が形成された。
次に、この第1の層上に上記第1の原料溶液がブレード法によって塗布され、第2の皮膜が形成された。
そして、この第2の皮膜が窒素ガスの雰囲気下において、330℃/minの昇温速度で300℃まで昇温され、300℃で10分間加熱されることにより有機成分が除去され、第2の層が形成された。
さらに、この第2の層上に上記第1の原料溶液がブレード法によって塗布され、第3の皮膜が形成された。
そして、この第3の皮膜が窒素ガスの雰囲気下において、330℃/minの昇温速度で300℃まで昇温され、300℃で10分間加熱されることにより有機成分が除去され、第3の層が形成された。
次に、この第1〜第3の層の積層体が水素ガスの雰囲気下において、550℃で1時間加熱されることにより、主にCIGSから成るサンプル1としての第1の半導体層3(厚みは2μm)が形成された。
また、上記サンプル1としての第1の半導体層3の作製工程において、第1の原料に代えて第2の原料溶液が用いられることによって、サンプル2としての第2の半導体層3(厚みは2μm)が形成された。
<光電変換装置の作製>
次に、上述のように作製されたサンプル1としての第1の半導体層3およびサンプル2
としての第1の半導体層3の上に、それぞれ、第2の半導体層4と第2の電極層5とが順に形成されて光電変換装置11が作製された。
次に、上述のように作製されたサンプル1としての第1の半導体層3およびサンプル2
としての第1の半導体層3の上に、それぞれ、第2の半導体層4と第2の電極層5とが順に形成されて光電変換装置11が作製された。
具体的には、アンモニア水に酢酸カドミウムおよびチオ尿素が溶解された溶液に、サンプル1としての第1の半導体層3が形成された基板1およびサンプル2としての第1の半導体層3が形成された基板1がそれぞれ浸漬されることで、各第1の半導体層3の上に厚さが50nmのCdSを含む第2の半導体層4が形成された。更に、この第2の半導体層4の上に、スパッタリング法によってAlがドープされた酸化亜鉛を含む透明の導電膜が形成された。
これらの各光電変換装置における第1の半導体層3に対して、X線光電子分光法(XPS)を用いた分析によって第1の半導体層3中に含まれるGaの含有率が測定された。なお、第1の半導体層3のGaの含有率の測定は、第1の電極層2側から第1の半導体層3の厚みの1/4の位置(第1の電極層2側から0.5μmの位置)における第1地点、第1の電極層2側から第1の半導体層3の厚みの1/2の位置(第1の電極層2側から1μmの位置)における第2地点、および、第1の電極層2側から第1の半導体層3の厚みの3/4の位置(第1の電極層2側から1.5μmの位置)における第3地点において行なわれた。
図4および図5のグラフはサンプル1およびサンプル2の各第1の半導体層3のGa含有率を示している。図4のグラフにおけるGa含有率は、III族元素の合計原子%(すな
わち、InとGaの合計原子%)に対するGaの原子%の比率を示している。図5のグラフにおけるGa含有率は、Cuの原子%に対するGaの原子%の比率を示している。これらのグラフより、サンプル1およびサンプル2のいずれの場合においても、第1の半導体層3の第1の電極層2側でGa含有率が増加した勾配を有することが分かった。
わち、InとGaの合計原子%)に対するGaの原子%の比率を示している。図5のグラフにおけるGa含有率は、Cuの原子%に対するGaの原子%の比率を示している。これらのグラフより、サンプル1およびサンプル2のいずれの場合においても、第1の半導体層3の第1の電極層2側でGa含有率が増加した勾配を有することが分かった。
このように、本発明の光電変換装置の製造方法を用いることにより、Ga濃度の異なる複数の原料溶液を用いなくとも、一種類の原料溶液だけで容易にGa勾配を有する光電変換装置を容易に作製可能であることが示された。
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が施されることは何等差し支えない。
1:基板
2:第1の電極層
3:第1の半導体層(I−III−VI族化合物を含む半導体層)
4:第2の半導体層
5:第2の電極層
6:第3の電極層
7:接続導体
8:集電電極
10、20:光電変換セル
11、21:光電変換装置
2:第1の電極層
3:第1の半導体層(I−III−VI族化合物を含む半導体層)
4:第2の半導体層
5:第2の電極層
6:第3の電極層
7:接続導体
8:集電電極
10、20:光電変換セル
11、21:光電変換装置
Claims (5)
- I−B族元素、ガリウム元素およびカルコゲン元素を含み、少なくとも前記ガリウム元素が有機錯体の状態で存在する原料溶液を準備する工程と、電極層の上に前記原料溶液を用いて第1の皮膜を作製し、該第1の皮膜を第1の昇温速度で加熱することによって、前記第1の皮膜に含まれる有機成分を熱分解して第1の層を作製する工程と、
該第1の層の上に前記原料溶液を用いて第2の皮膜を作製し、該第2の皮膜を前記第1の昇温速度よりも高い第2の昇温速度で加熱することによって、前記第2の皮膜に含まれる有機成分を熱分解して第2の層を作製する工程と、
前記第1の層および前記第2の層を加熱して、I−III−VI族化合物を含む光電変換層と
しての半導体層を作製する工程と
を具備することを特徴とする光電変換装置の製造方法。 - 前記有機錯体として、I−B族元素、ガリウム元素およびカルコゲン元素を含む単一源前駆体を用いる、請求項1に記載の半導体層の製造方法。
- 前記有機錯体として、ガリウム元素およびカルコゲン元素含有有機化合物を含むガリウム錯体を用いる、請求項1に記載の半導体層の製造方法。
- I−B族元素およびガリウム元素を含み、少なくとも前記ガリウム元素が有機錯体の状態で存在する原料溶液を準備する工程と、電極層の上に前記原料溶液を用いて第1の皮膜を作製し、該第1の皮膜を第1の昇温速度で加熱することによって、前記第1の皮膜に含まれる有機成分を熱分解して第1の層を作製する工程と、
該第1の層の上に前記原料溶液を用いて第2の皮膜を作製し、該第2の皮膜を前記第1の昇温速度よりも高い第2の昇温速度で加熱することによって、前記第2の皮膜に含まれる有機成分を熱分解して第2の層を作製する工程と、
前記第1の層および前記第2の層をカルコゲン元素を含む雰囲気で加熱して、I−III−VI族化合物を含む光電変換層としての半導体層を作製する工程と
を具備することを特徴とする光電変換装置の製造方法。 - 前記原料溶液にインジウムを含ませる請求項1乃至4のいずれかに記載の光電変換装置の製造方法。
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CN113279058A (zh) * | 2021-04-13 | 2021-08-20 | 中国科学院上海技术物理研究所 | 一种低对称性层状材料Te的可控制备方法 |
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2012
- 2012-05-16 JP JP2012112630A patent/JP2013012722A/ja active Pending
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