JP5618942B2 - 光電変換装置の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、I−III−VI族化合物を含む半導体層を用いた光電変換装置の製造方法に関するものである。
太陽光発電等に使用される光電変換装置として、CISやCIGS等のカルコパイライト系のI−III−VI族化合物によって半導体層が形成されたものがある。
このようなI−III−VI族化合物を含む光電変換装置は、複数の光電変換セルが平面的に並設された構成を有する。各光電変換セルは、ガラス等の基板の上に、金属電極等の下部電極と、光吸収層としてのI−III−VI族化合物を含む半導体層と、バッファ層と、透明電極や金属電極等の上部電極とが、この順に積層されて構成される。また、複数の光電変換セルは、隣り合う一方の光電変換セルの上部電極と他方の光電変換セルの下部電極とが接続導体によって電気的に接続されることで、電気的に直列に接続されている。
そして、光電変換装置の光電変換効率を高めるため、特許文献1では、CIGSから成る半導体層として、表面から下部電極側へ近づくほどGaの濃度が増加する濃度勾配を有するものが用いられることが記載されている。
また、I−III−VI族化合物を含む半導体層の形成方法として、スパッタ等の真空成膜装置を用いずに原料溶液を用いて製造工程を簡略化する方法がある。特許文献2には、I−III−VI族化合物の原料として、1つの有機化合物内にCuと、Seと、InもしくはGaとを存在させた単一源前駆体(Single Source Precursor)がI−III−VI族化合物の原料として用いられることが記載されている。
特開平10−135498号公報 米国特許第6992202号明細書
特許文献2に示される単一源前駆体等の原料溶液を用いて、特許文献1に示されるようなGaの濃度勾配を有する半導体層を形成する場合、Ga濃度を変えた複数の原料溶液を用意し、これらを用いて順に皮膜を積層させる必要がある。このような方法では、製造工程が複雑となる。
本発明の目的は、Ga濃度勾配を有する半導体層を備えた光電変換装置を容易に作製することを目的とする。
本発明の一実施形態に係る光電変換装置の製造方法は、I−B族元素、ガリウム元素およびカルコゲン元素を含み、有機化合物を含む配位子が少なくとも前記ガリウム元素と結合している原料溶液を用意する工程と、電極層の上に前記原料溶液を用いて第1の皮膜を作製し、該第1の皮膜を第1の濃度の還元性ガスを含む第1の雰囲気で加熱することによって、前記第1の皮膜中の有機化合物を熱分解して第1の層を作製する工程と、該第1の層の上に前記原料溶液を用いて第2の皮膜を作製し、該第2の皮膜を前記第1の濃度より
も高い第2の濃度の還元性ガスを含む第2の雰囲気で加熱することによって、前記第2の皮膜中の有機成分を熱分解して第2の層を作製する工程と、前記第1の層および前記第2の層を加熱してI−III−VI族化合物を含む光電変換層としての半導体層を作製する工程とを具備する。
本発明の他の実施形態に係る光電変換装置の製造方法は、I−B族元素およびガリウム元素を含み、有機化合物を含む配位子が少なくとも前記ガリウム元素と結合している原料溶液を用意する工程と、電極層の上に前記原料溶液を用いて第1の皮膜を作製し、該第1の皮膜を第1の濃度の還元性ガスを含む第1の雰囲気で加熱することによって、前記第1の皮膜中の有機化合物を熱分解して第1の層を作製する工程と、該第1の層の上に前記原料溶液を用いて第2の皮膜を作製し、該第2の皮膜を前記第1の濃度よりも高い第2の濃度の還元性ガスを含む第2の雰囲気で加熱することによって、前記第2の皮膜中の有機成分を熱分解して第2の層を作製する工程と、前記第1の層および前記第2の層をカルコゲン元素を含む雰囲気で加熱してI−III−VI族化合物を含む光電変換層としての半導体層を作製する工程とを具備する。
本発明によれば、Ga濃度勾配を有する半導体層を備えた光電変換装置を容易に作製することが可能となる。
本発明の一実施形態にかかる光電変換装置の製造方法を用いて作製した光電変換装置の実施の形態の一例を示す斜視図である。 図1の光電変換装置の斜視図である。 条件を変えて作製した半導体層のGa含有量を示すグラフである。 条件を変えて作製した半導体層のGa含有量を示すグラフである。 条件を変えて作製した半導体層のGa含有量を示すグラフである。 条件を変えて作製した半導体層のGa含有量を示すグラフである。
以下に本発明の実施形態に係る光電変換装置の製造方法について図面を参照しながら詳細に説明する。
<(1)光電変換装置の構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る光電変換装置の製造方法を用いて作製した光電変換装置を示す断面図であり、図2はその斜視図である。光電変換装置11は、基板1上に複数の光電変換セル10が並べられて電気的に接続されている。光電変換セル10は、第1の電極層2と、I−III−VI族化合物を含む第1の半導体層3と、第2の半導体層4と、第2の電極層5とを含んでいる。
第1の半導体層3と第2の半導体層4は導電型が異なっており、第1の半導体層3と第2の半導体層4とで光照射により生じた正負のキャリアの電荷分離を良好に行うことができる。例えば、第1の半導体層3がp型であれば、第2の半導体層4はn型である。あるいは、第2の半導体層4が、バッファ層と第1の半導体層3とは異なる導電型の半導体層とを含む複数層であってもよい。本実施形態では、第1の半導体層3が一方導電型の光吸収層であり、第2の半導体層4がバッファ層と他方導電型半導体層とを兼ねている例を示している。
また、本実施形態における光電変換装置11は第2の電極層5側から光が入射されるものを示しているが、これに限定されず、基板1側から光が入射されるものであってもよい
図1において、光電変換セル10は、第1の半導体層3の基板1側に第1の電極層2と離間して設けられた第3の電極層6を具備している。そして、第1の半導体層3に設けられた接続導体7によって、第2の電極層5と第3の電極層6とが電気的に接続されている。図1においては、この第3の電極層6は、隣接する光電変換セル10の第1の電極層2が延伸されたものである。この構成により、隣接する光電変換セル10同士が直列接続されている。また、一つの光電変換セル10内において、接続導体7は第1の半導体層3および第2の半導体層4を貫通するように設けられており、第1の電極層2と第2の電極層5とで挟まれた第1の半導体層3と第2の半導体層4とで光電変換が行なわれる。
基板1は、第1の半導体層3および第2の半導体層4を支持するためのものである。基板1に用いられる材料としては、例えば、ガラス、セラミックス、樹脂および金属等が挙げられる。
第1の電極層2および第3の電極層6は、Mo、Al、TiおよびAu等から選ばれる導電体が用いられ、基板1上にスパッタリング法および蒸着法等から選ばれる方法で形成される。
第1の半導体層3はI−III−VI族化合物を主に含んだ半導体層である。I−III−VI化合物とは、I−B族元素(11族元素ともいう)とIII−B族元素(13族元素ともいう)とVI−B族元素(16族元素ともいう)との化合物であり、カルコパイライト構造を有し、カルコパイライト系化合物と呼ばれる(CIS系化合物ともいう)。I−III−VI化合物としては、例えば、Cu(In,Ga)Se(CIGSともいう)、Cu(In,Ga)(Se,S)(CIGSSともいう)、およびCuInSe(CISともいう)等が挙げられる。なお、Cu(In,Ga)Seとは、CuとInとGaとSeとから主に構成された化合物をいう。また、Cu(In,Ga)(Se,S)とは、CuとInとGaとSeとSとを主成分として含む化合物をいう。
第2の半導体層4は上記第1の半導体層3上に形成されている。本実施形態では、第1の半導体層3が一方導電型の光吸収層であり、第2の半導体層4がバッファ層と他方導電型半導体層とを兼ねている例を示している。リーク電流の低減という観点からは、第2の半導体層4は抵抗率が1Ω・cm以上であってもよい。第2の半導体層4としては、CdS、ZnS、ZnO、InSe、In(OH,S)、(Zn,In)(Se,OH)、および(Zn,Mg)O等が挙げられる。第2の半導体層4は、例えばケミカルバスデポジション(CBD)法等で形成される。なお、In(OH,S)とは、InとOHとSとを主成分として含む化合物をいう。(Zn,In)(Se,OH)は、ZnとInとSeとOHとを主成分として含む化合物をいう。(Zn,Mg)Oは、ZnとMgとOとを主成分として含む化合物をいう。第2の半導体層4は、第1の半導体層3の吸収効率を高めるため、第1の半導体層3が吸収する光の波長領域に対して高い光透過性を有するものであってもよい。また、第2の半導体層4は、その厚みが10〜200nmである。
第2の電極層5は、ITO、ZnO等の0.05〜3.0μmの厚みを有する透明導電膜である。第2の電極層5は、スパッタリング法、蒸着法または化学的気相成長(CVD)法等で形成される。第2の電極層5は、第2の半導体層4よりも抵抗率の低い層であり、第1の半導体層3で生じた電荷を取り出すためのものである。電荷を良好に取り出すという観点からは、第2の電極層5の抵抗率が1Ω・cm未満でシート抵抗が50Ω/□以下であってもよい。
第2の電極層5としては、第1の半導体層3の吸収効率を高めるため、第1の半導体層
3の吸収光に対して高い光透過性を有するものが用いられてもよい。光透過性を高めると同時に光反射ロス低減効果および光散乱効果を高め、さらに光電変換によって生じた電流を良好に伝送するという観点から、第2の電極層5は0.05〜0.5μmの厚さであってもよい。また、第2の電極層5と第2の半導体層4との界面での光反射ロスを低減する観点からは、第2の電極層5と第2の半導体層4の屈折率は略等しくてもよい。
図1において、接続導体7は、第1の半導体層3、第2の半導体層4および第2の電極層5を貫通する溝内に、導電性ペースト等の導体が充填されて形成されている。接続導体7はこれに限定されず、第2の電極層5が延長されて形成されていてもよい。
また、図1のように、第2の電極層5上に集電電極8が設けられていてもよい。集電電極8は、第2の電極層5の電気抵抗を小さくするためのものである。第2の電極層5上に集電電極8が設けられることにより、第2の電極層5の厚さを薄くして光透過性を高めるとともに第1の半導体層3で発生した電流が効率よく取り出される。その結果、光電変換装置11の発電効率が高められる。
集電電極8は、例えば、図1に示すように、光電変換セル10の一端から接続導体7にかけて線状に形成されている。これにより、第1の半導体層3の光電変換により生じた電荷が第2の電極層5を介して集電電極8に集電され、接続導体7を介して隣接する光電変換セル10に良好に伝達される。
集電電極8の幅は、第1の半導体層3への光を遮るのを低減するとともに良好な導電性を有するという観点からは、50〜400μmとされ得る。また、集電電極8は、枝分かれした複数の分岐部を有していてもよい。
集電電極8は、例えば、Ag等の金属粉を樹脂バインダー等に分散させた金属ペーストがパターン状に印刷され、これが硬化されることによって形成される。
<(2)第1の半導体層の製造方法>
I−III−VI族化合物を含む第1の半導体層3は、以下に示す第1の方法または第2の方法によって作製される。
<(2-1)第1の方法>
第1の方法では、先ず、I−B族元素、ガリウム元素およびカルコゲン元素を含み、有機化合物を含む配位子が少なくとも上記ガリウム元素と結合している原料溶液(第1の方法における原料溶液を第1の原料溶液ともいう)が用意される。
第1の原料溶液に用いられる溶媒としては、アニリンやピリジン等の各種溶媒が用いられる。このような溶媒に、I−B族元素を含む原料、ガリウム元素を含む原料およびカルコゲン元素を含む原料が溶解または分散されることにより第1の原料溶液が作製される。
ガリウム元素を含む原料は、有機化合物を含む配位子がガリウム元素に結合したものが用いられる。このようなガリウム元素を含む原料としては、例えば、カルボキシル基、カルボニル基、水酸基、アミノ基、シアノ基等を有する有機配位子がガリウム元素に配位した錯体や、カルコゲン元素含有有機化合物がガリウム元素に配位した錯体が挙げられる。なお、カルコゲン元素とは、VI−B族元素のうちのS、Se、Teをいう。また、カルコゲン元素含有有機化合物とは、カルコゲン元素を含む有機化合物であり、炭素元素とカルコゲン元素との共有結合を有する有機化合物である。カルコゲン元素含有有機化合物としては、例えば、チオール、スルフィド、ジスルフィド、チオフェン、スルホキシド、スルホン、チオケトン、スルホン酸、スルホン酸エステル、スルホン酸アミド、セレノール、
セレニド、ジセレニド、セレノキシド、セレノン、テルロール、テルリド、ジテルリド等がある。特に、配位力が高くガリウム元素と安定な錯体を形成しやすいという観点からは、チオール、スルフィド、ジスルフィド、セレノール、セレニド、ジセレニド、テルロール、テルリド、ジテルリドが用いられてもよい。
I−B族元素を含む原料は、I−B族元素の塩や錯体等、種々の化合物が用いられる。上記のような有機化合物を含む配位子が結合したガリウム元素との反応性を高めるという観点からは、I−B族元素を含む原料として、例えば、I−B族元素に有機配位子が配位した錯体や、I−B族元素にカルコゲン元素含有有機化合物が配位した錯体等が用いられてもよい。I−B族元素としては、CuやAg等が用いられ得る。
カルコゲン元素を含む原料は、VI−B族元素を含む種々の化合物が用いられ、例えば、カルコゲン元素含有有機化合物や、金属カルコゲナイド等がある。上記のようにガリウム元素を含む原料またはI−B族元素を含む原料として、ガリウム元素またはI−B族元素にカルコゲン元素含有有機化合物が配位した錯体が用いられる場合、これらの錯体がカルコゲン元素を含む原料として見なされてもよい。
また、上記第1の原料溶液にIn等の他のIII−B族元素が含まれていてもよい。これにより、I−III−VI族化合物のバンドギャップの調整が容易となり、太陽光に対する吸収率を高めることができる。In等の他のIII−B族元素は、例えば、有機配位子がInに配位した錯体や、カルコゲン元素含有有機化合物がInに配位した錯体等が原料として用いられ得る。
カルコゲン化反応を促進し、I−III−VI族化合物を良好に作製するという観点からは、第1の原料溶液として、I−B族元素にカルコゲン元素含有有機化合物が配位した錯体、およびガリウム元素にカルコゲン元素含有有機化合物が配位した錯体を含んだものが用いられてもよい。このようなI−B族元素にカルコゲン元素含有有機化合物が配位した錯体の具体例としては、I−B族元素(例えばCu)とフェニルセレノールとの錯体がある。また、ガリウム元素にカルコゲン元素含有有機化合物が配位した錯体の具体例としては、ガリウム元素とフェニルセレノールとの錯体がある。
カルコゲン化反応をさらに促進し、I−III−VI族化合物をさらに良好に作製するという観点からは、第1の原料溶液として、I−B族元素とガリウム元素とカルコゲン元素含有有機化合物とが互いに結合して一つの分子を形成して成る単一源錯体を含んだものが用いられてもよい(単一源錯体の例としては、特許文献2を参照できる)。
以上のような第1の原料溶液が、例えば、スピンコータ、スクリーン印刷、ディッピング、スプレー、またはダイコータ等によって第1の電極層2上に膜状に被着されることにより、第1の皮膜が作製される。そして、この第1の皮膜が、第1の濃度の還元性ガスを含む第1の雰囲気で加熱されることによって、第1の皮膜中の有機化合物が熱分解されて成る第1の層が形成される。第1の雰囲気での加熱温度は、例えば、50〜350℃が採用される。
ここで還元性ガスとは水素や一酸化炭素等の還元力を有するガスである。また、第1の雰囲気は、上記還元性ガスが、窒素やアルゴン、ヘリウム等の不活性ガスに混合されて成る雰囲気である。
次に、この第1の層上に、さらに上記第1の原料溶液が用いられて、上記第1の皮膜と同様の方法で第2の皮膜が作製される。そして、この第2の皮膜が、上記第1の濃度よりも高い第2の濃度の還元性ガスを含む第2の雰囲気で加熱されることによって、第2の皮
膜中の有機化合物が熱分解されて成る第2の層が形成される。第2の雰囲気での加熱温度は、例えば、50〜350℃が採用される。
第2の雰囲気は、第1の雰囲気と同様、還元性ガスが不活性ガスに混合されて成る雰囲気であるが、還元性ガスの濃度(第2の濃度)が第1の濃度よりも高く設定される。これにより、生成する第2の層中のGaの含有率を第1の層よりも低減することが可能となる。つまり、有機成分の熱分解時の還元性ガスの濃度が高くなるほど、皮膜中のGaが皮膜外へ放出される。この現象についての詳細はよくわからないが、熱分解時の還元性ガスの濃度が高くなると、皮膜中の金属元素の酸化がより低減され、その結果、特に融点の低いGaが、液体金属となる傾向が高くなって気化し易くなるのではないかと考えられる。
このような第1の濃度よりも高い第2の濃度の還元性ガスを含む雰囲気下での加熱工程が用いられることにより、Ga濃度の異なる原料溶液が用意される必要はなく、1種類の第1の原料溶媒によってGa濃度勾配が容易に形成可能となる。よって、製造工程が簡略化される。
なお、上記第2の層上に、熱分解時の還元性ガスの濃度が高められながら、上記工程が繰り返されて、Ga濃度がさらに減少した第3の層、第4の層等がさらに形成されてもよい。
次に、上記第1の層および第2の層が、さらに400〜600℃で加熱されることにより、I−III−VI族化合物の多結晶体が形成され、第1の半導体層3となる。この第1の半導体層3を形成するための加熱時の雰囲気ガスとしては、不活性ガス、還元ガスまたはこれらの混合ガスが用いられる。この雰囲気ガスには、カルコゲン元素が、例えば、Se蒸気、S蒸気、HSeまたはHSとして混合されてもよい。
<(2-2)第2の方法>
I−III−VI族化合物を含む第1の半導体層3を作製するための第2の方法について説明する。
第2の方法では、I−B族元素およびガリウム元素を含み、有機化合物を含む配位子が少なくとも上記ガリウム元素と結合している原料溶液(第2の方法における原料溶液を第2の原料溶液ともいう)が用意される。つまり、第1の原料溶液とはカルコゲン元素を含まない点で異なっている。
第2の原料溶液に用いられる溶媒としては、アニリンやピリジン等の各種溶媒が用いられる。このような溶媒に、I−B族元素を含む原料およびガリウム元素を含む原料が溶解または分散されることにより第2の原料溶液が作製される。
ガリウム元素を含む原料は、有機化合物を含む配位子がガリウム元素に結合したものが用いられる。このようなガリウム元素を含む原料としては、例えば、カルボキシル基、カルボニル基、水酸基、アミノ基、シアノ基等を有する有機配位子がガリウム元素に配位した錯体が挙げられる。
I−B族元素を含む原料は、I−B族元素の塩や錯体等、種々の化合物が用いられる。上記のような有機化合物を含む配位子が結合したガリウム元素との反応性を高めるという観点からは、I−B族元素を含む原料として、例えば、I−B族元素に有機配位子が配位した錯体が用いられてもよい。
また、上記第2の原料溶液にIn等の他のIII−B族元素が含まれていてもよい。これ
により、I−III−VI族化合物のバンドギャップの調整が容易となり、太陽光に対する吸収率を高めることができる。In等の他のIII−B族元素は、例えば、有機配位子がInに配位した錯体が原料として用いられ得る。
以上のような第2の原料溶液を用いて、第1の方法と同様にして、第1の層および第2の層が順次形成されることにより、第2の層中のGaの含有率を第1の層よりも低減することが可能となる。
そして、上記第1の層および第2の層が、カルコゲン元素を含む雰囲気で、400〜600℃で加熱されることにより、I−III−VI族化合物の多結晶体が形成され、第1の半導体層3となる。この第1の半導体層3を形成するための加熱時の雰囲気ガスとしては、のカルコゲン元素を含むガス(Se蒸気、S蒸気、HSe、HS等)に、不活性ガス、還元ガス等が混合されていてもよい。このように、カルコゲン元素を含まない第2の原料溶液を用いて第1の層および第2の層が形成された場合でも、外部からカルコゲン元素を供給することにより、1種類の第2の原料溶媒によってGa濃度勾配が容易に形成可能となる。よって、第2の方法においても製造工程が簡略化される。
<(3)第1の半導体層の製造方法の変形例>
上記の第1の半導体層の製造方法としての第1の方法や第2の方法において、第2の雰囲気の圧力(第2の雰囲気の全圧)を第1の雰囲気の圧力(第1の雰囲気の全圧)よりも高くしてもよい。これにより、第2の層中のGaの含有率をさらに低減することが可能となる。
本発明の実施形態にかかる光電変換装置の製造方法について、以下のようにして評価した。本実施例においては半導体層としてCIGSが用いられた。
まず、原料溶液が以下のようにして調整された。
<原料溶液の調整>
[a1]10ミリモル(mmol)のCu(CHCN)・PFと、20mmolのP(Cとが、100mlのアセトニトリルに溶解された後、室温(25℃)における5時間の攪拌によって第1錯体溶液が調製された。
[a2]40mmolのナトリウムメトキシド(NaOCH)と、カルコゲン元素含有有機化合物である40mmolのHSeCとが、300mlのメタノールに溶解され、更に、6mmolのInClと4mmolのGaClとが溶解された後、室温における5時間の攪拌によって第2錯体溶液が調製された。
[a3]工程[a1]で調製された第1錯体溶液に対して、工程[a2]で調製された第2錯体溶液が1分間に10mlの速度で滴下され、白い析出物(沈殿物)が生じた。上記滴下処理の終了後、室温における1時間の攪拌と、遠心分離機による沈殿物の抽出とが、順次に行われた。この沈殿物の抽出時には、遠心分離機によって一旦取り出された沈殿物を500mlのメタノールに分散させた後に遠心分離機で沈殿物を再度取り出す工程が2回繰り返され、最後にこの沈殿物が室温で乾燥されることで、構造式(1)および構造式(2)に示すような単一源錯体の混合体を含む沈殿物が得られた。この単一源錯体の混合体では、1つの錯体分子に、CuとGaとSeとが含まれるか、またはCuとInとSeとが含まれる。なお、構造式(1)および(2)において、Phはフェニル基である。
Figure 0005618942
Figure 0005618942
[a4]工程[a3]で得られた単一源錯体を含む沈殿物に有機溶媒であるピリジンが添加されることで、単一源錯体の濃度が45質量%である原料溶液が生成された。
<第1の半導体層の作製>
次に、ガラスを含む基板1の表面に、Mo等を含む第1の電極層2が成膜されたものが複数枚用意された。そして、窒素ガスの雰囲気下において各第1の電極層2の上に上記原料溶液がブレード法によって塗布され、複数の第1の皮膜が形成された。
そして、これらの第1の皮膜が、図3、図4に示すような異なる分圧比(水素/(水素+窒素))の窒素と水素との混合ガスの雰囲気下(雰囲気の全圧は101.3kPaの標準圧力に設定された)において、300℃で10分間加熱されることにより有機成分が除去され、複数種の第1の層が形成された。
次に、これらの第1の層が上記標準圧力の水素ガスの雰囲気下において、550℃で1時間加熱されることにより、主にCIGSから成る複数種の半導体層3が形成された。
次に、これらの半導体層3に対して、X線光電子分光法(XPS)を用いた分析によって半導体層3中に含まれるGaの含有率が測定された。
図3および図4のグラフは、窒素と水素の比率を変えた雰囲気下で熱処理を行なった各半導体層3のGa含有率を示している。図3のグラフにおけるGa含有率は、III族元素の合計原子%(すなわち、InとGaの合計原子%)に対するGaの原子%を示している。図4のグラフにおけるGa含有率は、Cuの原子%に対するGaの原子%を示している。これらのグラフより、有機成分を熱分解する際の雰囲気中の窒素(不活性ガス)と水素(還元性ガス)の比率を変えることによって、Gaの含有率を変えることができることが分かった。
上記実施例1で用いた原料溶液を用いて、光電変換装置を作製した例を以下に示す。
<第1の半導体層の作製>
ガラスを含む基板1の表面に、Mo等を含む第1の電極層2が成膜されたものが用意された。そして、窒素ガスの雰囲気下において第1の電極層2の上に実施例1で作製した原料溶液がブレード法によって塗布され、第1の皮膜が形成された。
そして、この第1の皮膜が、窒素雰囲気下(雰囲気の全圧は101.3kPaの標準圧力に設定された)において、300℃で10分間加熱されることにより有機成分が除去され、複数種の第1の層が形成された。
次に、この第1の層上に上記原料溶液がブレード法によって塗布され、第2の皮膜が形成された。
そして、この第2の皮膜が、分圧比(水素/(水素+窒素))が50%の窒素と水素の混合ガス雰囲気下(雰囲気の全圧は標準圧力に設定された)において、300℃で10分間加熱されることにより有機成分が除去され、複数種の第2の層が形成された。
さらに、この第2の層上に上記原料溶液がブレード法によって塗布され、第3の皮膜が形成された。
そして、この第3の皮膜が、分圧比(水素/(水素+窒素))が75%の窒素と水素の混合ガス雰囲気下(雰囲気の全圧は標準圧力に設定された)において、300℃で10分間加熱されることにより有機成分が除去され、複数種の第3の層が形成された。
次に、この第1〜第3の層の積層体が標準圧力の水素ガスの雰囲気下において、550℃で1時間加熱されることにより、主にCIGSから成る第1の半導体層3(厚みは2μm)が形成された。
<光電変換装置の作製>
次に、上述のように作製された第1の半導体層3の上に、第2の半導体層4と第2の電極層5とが順に形成されて光電変換装置11が作製された。
具体的には、アンモニア水に酢酸カドミウムおよびチオ尿素が溶解された溶液に、第1の半導体層3が形成された基板1が浸漬されることで、第1の半導体層3の上に厚さが50nmのCdSを含む第2の半導体層4が形成された。更に、この第2の半導体層4の上に、スパッタリング法によってAlがドープされた酸化亜鉛を含む透明の導電膜が形成された。
この光電変換装置における第1の半導体層3に対して、X線光電子分光法(XPS)を用いた分析によって第1の半導体層3中に含まれるGaの含有率が測定された。なお、第1の半導体層3のGaの含有率の測定は、第1の電極層2側から第1の半導体層3の厚みの1/4の位置(第1の電極層2側から0.5μmの位置)における第1地点、第1の電極層2側から第1の半導体層3の厚みの1/2の位置(第1の電極層2側から1μmの位置)における第2地点、および、第1の電極層2側から第1の半導体層3の厚みの3/4の位置(第1の電極層2側から1.5μmの位置)における第3地点において行なわれた。
図5のグラフは第1の半導体層3の厚み方向のGa含有率の変化を示している。なお、
図5のグラフにおけるGa含有率は、III族元素の合計原子%(すなわち、InとGaの合計原子%)に対するGaの原子%を示している。これより、上記方法により作製した光電変換装置11における第1の半導体層3は、第1の電極層2側から離れるに従いGa含有率が減少した勾配を有することが分かった。
このように、本発明の光電変換装置の製造方法を用いることにより、Ga濃度の異なる複数の原料溶液を用いなくとも、一種類の原料溶液だけで容易にGa勾配を有する光電変換装置を容易に作製可能であることが示された。
上記実施例1において、有機成分を除去する際の窒素と水素との混合ガスの雰囲気の全圧を図6に示すような圧力に設定して第1の層を形成したこと以外は実施例1と同様にして半導体層3を形成した。
図6に実施例1の結果と合わせて実施例3の結果を示した。図6より、雰囲気の圧力を高くすれば、さらにGa濃度を低減させることができることが示された。
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が施されることは何等差し支えない。
1:基板
2:第1の電極層
3:第1の半導体層(I−III−VI族化合物を含む半導体層)
4:第2の半導体層
5:第2の電極層
6:第3の電極層
7:接続導体
8:集電電極
10:光電変換セル
11:光電変換装置

Claims (4)

  1. I−B族元素、ガリウム元素およびカルコゲン元素を含み、有機化合物を含む配位子が少なくとも前記ガリウム元素と結合している原料溶液を用意する工程と、
    電極層の上に前記原料溶液を用いて第1の皮膜を作製し、該第1の皮膜を第1の濃度の還元性ガスを含む第1の雰囲気で加熱することによって、前記第1の皮膜中の有機化合物を熱分解して第1の層を作製する工程と、
    該第1の層の上に前記原料溶液を用いて第2の皮膜を作製し、該第2の皮膜を前記第1の濃度よりも高い第2の濃度の還元性ガスを含む第2の雰囲気で加熱することによって、前記第2の皮膜中の有機成分を熱分解して第2の層を作製する工程と、
    前記第1の層および前記第2の層を加熱してI−III−VI族化合物を含む光電変換層としての半導体層を作製する工程と
    を具備することを特徴とする光電変換装置の製造方法。
  2. I−B族元素およびガリウム元素を含み、有機化合物を含む配位子が少なくとも前記ガリウム元素と結合している原料溶液を用意する工程と、
    電極層の上に前記原料溶液を用いて第1の皮膜を作製し、該第1の皮膜を第1の濃度の還元性ガスを含む第1の雰囲気で加熱することによって、前記第1の皮膜中の有機化合物を熱分解して第1の層を作製する工程と、
    該第1の層の上に前記原料溶液を用いて第2の皮膜を作製し、該第2の皮膜を前記第1の濃度よりも高い第2の濃度の還元性ガスを含む第2の雰囲気で加熱することによって、前記第2の皮膜中の有機成分を熱分解して第2の層を作製する工程と、
    前記第1の層および前記第2の層をカルコゲン元素を含む雰囲気で加熱してI−III−VI族化合物を含む光電変換層としての半導体層を作製する工程と
    を具備することを特徴とする光電変換装置の製造方法。
  3. 前記第2の雰囲気の圧力を前記第1の雰囲気の圧力よりも高くする、請求項1または2に記載の光電変換装置の製造方法。
  4. 前記原料溶液にインジウムを含ませる請求項1乃至3のいずれかに記載の光電変換装置の製造方法。
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