JP2012189610A - 検出装置、ジャイロセンサ、電子機器及び検出装置の調整方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 回路の大規模化を抑えながらオフセット調整を実現できる検出装置等の提供。
【解決手段】 検出装置は駆動回路と検出回路を含み、検出回路は、振動子からの出力信号を増幅する増幅回路を含む。増幅回路は、出力信号に対応する差動信号の差動増幅を行う差動増幅回路76と、差動増幅回路76が有する少なくとも1つの抵抗の抵抗値を可変に制御することで、オフセット調整を行うオフセット調整回路78を含む。差動増幅回路76は、第1〜第4の抵抗RB1〜RB4とオペアンプOPBを含む。オフセット調整回路78は、第1、第3の抵抗RB1、RB3の少なくとも一方の抵抗値を可変に制御することにより、差動信号を構成する第1、第2の信号にそれぞれ重畳される第1、第2の不要信号の少なくとも一方を増幅して、オフセット調整を行う。
【選択図】図10
【解決手段】 検出装置は駆動回路と検出回路を含み、検出回路は、振動子からの出力信号を増幅する増幅回路を含む。増幅回路は、出力信号に対応する差動信号の差動増幅を行う差動増幅回路76と、差動増幅回路76が有する少なくとも1つの抵抗の抵抗値を可変に制御することで、オフセット調整を行うオフセット調整回路78を含む。差動増幅回路76は、第1〜第4の抵抗RB1〜RB4とオペアンプOPBを含む。オフセット調整回路78は、第1、第3の抵抗RB1、RB3の少なくとも一方の抵抗値を可変に制御することにより、差動信号を構成する第1、第2の信号にそれぞれ重畳される第1、第2の不要信号の少なくとも一方を増幅して、オフセット調整を行う。
【選択図】図10
Description
本発明は、検出装置、ジャイロセンサ、電子機器及び検出装置の調整方法に関する。
デジタルカメラ、ビデオカメラ、携帯電話機、カーナビゲーションシステム等の電子機器には、外的な要因で変化する物理量を検出するためのジャイロセンサ(物理量トランスデューサ)が組み込まれている。このようなジャイロセンサは、角速度等の物理量を検出し、いわゆる手振れ補正、姿勢制御、GPS自律航法などに用いられる。
近年、ジャイロセンサの軽量小型化と共に高い検出精度も要求され、ジャイロセンサの1つとして圧電型の振動ジャイロセンサが注目されている。そのなかでも、圧電材料として水晶が用いられる水晶圧電振動ジャイロセンサは、多くの装置への組み込み向けに最適なセンサとして期待が寄せられている。この振動ジャイロセンサでは、回転によって発生するコリオリ力に対応した物理量を検出している。
このような振動ジャイロセンサでは、振動子の軽量小型化に伴い、振動子からの出力信号(出力電流)は非常に微弱な信号になっている。従って、このような微弱な出力信号に基づき所望信号(コリオリ力等の物理量に応じた信号)を検出する検出装置には、無歪み・低ノイズで、且つできるだけ大きなゲインで所望信号を検出できる性能が要求される。
また振動ジャイロセンサでは、種々の原因により発生するオフセット電圧を除去するためのオフセット調整が行われる。
しかしながら、このようなオフセットを調整するための専用のオフセット調整回路を設けると、回路の大規模化を招く。また専用のオフセット調整回路では、D/A変換回路等を用いて正確な微少電圧を生成しなければならず、回路が複雑化する。更に、その専用のオフセット調整回路自体が原因となって、ノイズが増加してしまい、S/N比が劣化する問題が生じる。
本発明は、以上のような技術的課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、回路の大規模化を最小限に抑えながらオフセット調整を実現できる検出装置、ジャイロセンサ、電子機器及び検出装置の調整方法を提供することにある。
本発明は、振動子を駆動して振動子を励振させる駆動回路と、振動子からの出力信号を受け、所望信号を検出する検出回路とを含み、前記検出回路は、振動子からの前記出力信号を増幅する増幅回路を含み、前記増幅回路は、前記出力信号に対応する差動信号の差動増幅を行う差動増幅回路と、前記差動増幅回路が有する少なくとも1つの抵抗の抵抗値を可変に制御することで、オフセット調整を行うオフセット調整回路を含む検出装置に関係する。
本発明によれば、オフセット調整回路により、差動増幅回路が有する少なくとも1つの抵抗の抵抗値が可変に制御されて、オフセット調整が行われる。このようにすれば、例えば差動増幅回路の抵抗値のバランスを崩すことで、オフセット調整が実現されるため、専用のオフセット調整回路を設けなくても済む。従って、回路の小規模化を図れる。またノイズ源となる回路ブロックの数も減るため、S/N比を向上できる。
また本発明では、前記差動増幅回路は、前記差動信号を構成する第1の信号が入力される第1の入力ノードと第1のノードの間に設けられる第1の抵抗と、前記第1のノードと出力ノードの間に設けられる第2の抵抗と、前記差動信号を構成する第2の信号が入力される第2の入力ノードと第2のノードとの間に設けられる第3の抵抗と、前記第2のノードと第1の電源電圧のノードの間に設けられる第4の抵抗と、その反転入力端子が前記第1のノードに接続され、その非反転入力端子が前記第2のノードに接続され、その出力端子が前記出力ノードに接続されるオペアンプを含み、前記オフセット調整回路は、前記第1、第3の抵抗の少なくとも一方の抵抗値を可変に制御することで、オフセット調整を行うようにしてもよい。
このようにすれば、第1の信号側のゲインと第2の信号側のゲインを独立に制御できるようになるため、オフセット調整を簡素化できる。
また本発明では、前記オフセット調整回路は、前記差動信号を構成する第1、第2の信号にそれぞれ重畳される第1、第2の不要信号の少なくとも一方を増幅することで、オフセット調整を行うようにしてもよい。
このようにすれば、第1、第2の信号にそれぞれ重畳される第1、第2の不要信号を有効活用してオフセット調整を実現できるようになり、回路の小規模化、S/N比の向上を図れる。
また本発明では、ゲインを可変に制御して感度調整を行う感度調整回路を含み、前記感度調整回路は、前記オフセット調整回路によるオフセット調整により設定された検出装置のゲインを調整することで、感度調整を行うようにしてもよい。
このようにすれば、オフセット調整回路によるオフセット調整により変化したゲインを、感度調整により再度設定し直して、感度を基準値に一致させる感度調整を実現できる。
また本発明では、参照信号に基づいて同期検波を行う同期検波回路を含み、前記感度調整回路は、前記同期検波回路の前段側に設けられていてもよい。
このようにすれば、DC信号ではなく、所与の周波数の信号の状態で感度調整が行われるようになるため、フリッカノイズを低減できる。また感度調整回路の前段側の回路ブロックの数が減るため、これらの回路ブロックのノイズを感度調整回路が増幅することによるS/N比の劣化を、最小限に抑えることができる。
また本発明では、前記感度調整回路は、可変ゲインアンプとして動作すると共にハイパスフィルタとして動作するようにしてもよい。
このようにすれば、ハイパスフィルタによりDC成分をカットでき、感度調整回路によりDC信号が増幅されてしまう事態を防止できる。従って、感度調整回路の可変ゲインアンプや後段側のオペアンプ等が飽和動作状態になる事態も防止できる。また回路ブロックの数を減らすことができるため、S/N比を向上できる。
また本発明では、アクティブフィルタである前記ハイパスフィルタと前記可変ゲインアンプとで、オペアンプが共用されてもよい。
このようにすれば、ノイズ源となるオペアンプの個数を減らすことができるため、回路を小規模化できると共に、S/N比を向上できる。
また本発明では、参照信号に基づいて同期検波を行う同期検波回路と、同期検波後の信号のフィルタ処理を行うフィルタ部を含み、前記オフセット調整回路は、検出装置の出力信号の初期オフセット電圧を除去するためのオフセット調整を行い、前記フィルタ部は、離散時間型フィルタと、前記離散時間型フィルタの前段側に設けられた連続時間型フィルタを含み、前記連続時間型フィルタは、環境変化による不要信号のオフセット変動分を除去する周波数特性を有してもよい。
このようにすれば、オフセット調整後に温度変動などの環境変化が生じた場合にも、環境変化に起因する不要信号のオフセット変動分は、連続時間型フィルタにより除去される。従って、オフセット変動分を除去する特別な回路を設けなくても、離散時間型フィルタの前段側の連続時間型フィルタを有効活用して、オフセット変動分の除去が可能になる。
また本発明では、前記連続時間型フィルタは、前記同期検波回路による同期検波により周波数k×fd(kは自然数)の周波数帯域に現れる不要信号のオフセット変動分を、所望信号の振幅以下に減衰する周波数特性を有してもよい。
このようにすれば、同期検波により周波数k×fdの周波数帯域に現れるオフセット変動分を、連続時間型フィルタを有効活用して除去できる。従って、オフセット変動分の効率的な除去が可能になる。
また本発明では、前記連続時間型フィルタは、1次のローパスフィルタであり、所望信号の振幅をA0とし、周波数k×fdに現れる不要信号のオフセット変動分をΔAkとし、周波数fdでのフィルタの減衰率をaとした場合に、前記連続時間型フィルタは、ΔAk×(a/k)≦A0が成り立つように不要信号のオフセット変動分を減衰させる周波数特性を有してもよい。
このようにすれば、連続時間型フィルタとして1次のローパスフィルタを用いた場合にも、周波数k×fdのオフセット変動分を除去できるフィルタを、容易に実現できる。
また本発明では、前記連続時間型フィルタは、2次のローパスフィルタであり、所望信号の振幅をA0とし、周波数k×fdに現れる不要信号のオフセット変動分をΔAkとし、周波数fdでのフィルタの減衰率をaとした場合に、前記連続時間型フィルタは、ΔAk×(a/k2)≦A0が成り立つように不要信号のオフセット変動分を減衰させる周波数特性を有してもよい。
このようにすれば、連続時間型フィルタとして2次のローパスフィルタを用いた場合にも、周波数k×fdのオフセット変動分を除去できるフィルタを、容易に実現できる。
また本発明では、前記離散時間型フィルタは、振動子の駆動側共振周波数fdと検出側共振周波数fsとの差に対応する離調周波数Δf=|fd−fs|の成分を除去し、所望信号の周波数成分を通過させる周波数特性を有してもよい。
このようにすれば、周波数fdに対して離調周波数Δfが十分に小さいような場合にも、離調周波数Δfの不要信号の成分を、確実且つ容易に除去できる。また離調周波数Δfの不要信号を離散時間型フィルタにより除去しつつ、周波数k×fdの周波数帯域に現れる不要信号のオフセット変動分についても、連続時間型フィルタにより除去できる。従って、不要信号及びそのオフセット変動分の効率的な除去が可能になる。
また本発明は、上記のいずれかに記載の検出装置と、前記振動子とを含むジャイロセンサに関係する。
また本発明は、上記に記載のジャイロセンサと、前記ジャイロセンサにより検出された角速度情報に基づいて処理を行う処理部とを含む電子機器に関係する。
また本発明は、上記のいずれかに記載の検出装置の調整方法であって、前記検出装置の出力信号をモニタし、前記差動増幅回路が有する少なくとも1つの前記抵抗の抵抗値を制御して、検出装置のオフセット調整を行い、前記オフセット調整の後に前記検出装置の出力信号をモニタし、オフセット調整後にモニタされた前記検出装置の出力信号に基づいて、前記検出装置の感度を基準値に一致させる感度調整を行う調整方法に関係する。
このようにすれば、オフセット調整により変化したゲインを、感度調整により再度設定し直して、感度を基準値に一致させることが可能になる。
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
1.電子機器、ジャイロセンサ
図1に本実施形態の検出装置30を含むジャイロセンサ510と、ジャイロセンサ510を含む電子機器500の構成例を示す。なお電子機器500、ジャイロセンサ510は図1の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。また本実施形態の電子機器500としては、デジタルカメラ、ビデオカメラ、携帯電話機、カーナビゲーションシステム、ロボット、ゲーム機、携帯型情報端末等の種々のものが考えられる。
図1に本実施形態の検出装置30を含むジャイロセンサ510と、ジャイロセンサ510を含む電子機器500の構成例を示す。なお電子機器500、ジャイロセンサ510は図1の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。また本実施形態の電子機器500としては、デジタルカメラ、ビデオカメラ、携帯電話機、カーナビゲーションシステム、ロボット、ゲーム機、携帯型情報端末等の種々のものが考えられる。
電子機器500はジャイロセンサ510と処理部520を含む。またメモリ530、操作部540、表示部550を含むことができる。処理部(CPU、MPU等)520はジャイロセンサ510等の制御や電子機器500の全体制御を行う。また処理部520は、ジャイロセンサ(物理量トランスデューサ)510により検出された角速度情報(物理量)に基づいて処理を行う。例えば角速度情報に基づいて、手ぶれ補正、姿勢制御、GPS自律航法などのための処理を行う。メモリ(ROM、RAM等)530は、制御プログラムや各種データを記憶したり、ワーク領域やデータ格納領域として機能する。操作部540はユーザが電子機器500を操作するためのものであり、表示部550は種々の情報をユーザに表示する。
ジャイロセンサ510は振動子10、検出装置30を含む。図1の振動子10は、水晶などの圧電材料の薄板から形成される音叉型の圧電振動子であり、駆動用振動子11、12と、検出用振動子16、17を含む。駆動用振動子11、12には駆動端子2、4が設けられ、検出用振動子16、17には検出端子6、8が設けられている。
検出装置30が含む駆動回路40は、駆動信号(駆動電圧)を出力して振動子10(広義には物理量トランスデューサ)を駆動し、振動子10からフィードバック信号を受ける。これにより振動子10を励振させる。検出回路60は、駆動信号により駆動される振動子10から検出信号(検出電流、電荷)を受け、検出信号から所望信号(コリオリ力信号)を検出(抽出)する。
具体的には、駆動回路40からの交流の駆動信号(駆動電圧)が駆動用振動子11の駆動端子2に印加される。すると逆電圧効果によって駆動用振動子11が振動を開始し、音叉振動により駆動用振動子12も振動を開始する。この時、駆動用振動子12の圧電効果によって発生する電流(電荷)が、駆動端子4からフィードバック信号として駆動回路40にフィードバックされる。これにより振動子10を含む発振ループが形成される。
駆動用振動子11、12が振動すると、検出用振動子16、17が図1に示す方向で振動速度vで振動する。すると、検出用振動子16、17の圧電効果によって発生する電流(電荷)が、検出信号として検出端子6、8から出力される。すると、検出回路60は、この振動子10からの検出信号を受け、コリオリ力に応じた信号である所望信号(所望波)を検出する。即ち、検出軸19を中心に振動子10(ジャイロセンサ)が回転すると、振動速度vの振動方向と直交する方向にコリオリ力Fcが発生する。例えば検出軸19を中心に回転したときの角速度をωとし、振動子の質量をmとし、振動子の振動速度をvとすると、コリオリ力はFc=2m・v・ωと表される。従って検出回路60が、コリオリ力に応じた信号である所望信号(センサ信号)を検出(抽出)することで、ジャイロセンサ(振動子)の回転角速度ωを求めることができる。そして求められた角速度ωを用いることで、処理部520は、手振れ補正、姿勢制御、或いはGPS自律航法等のための種々の処理を行うことができる。
なお振動子10には、駆動側共振周波数fdと検出側共振周波数fsがある。具体的には、駆動用振動子11、12の固有共振周波数(駆動振動モードの固有共振周波数)がfdであり、検出用振動子16、17の固有共振周波数(検出振動モードの固有共振周波数)がfsである。この場合に、駆動用振動子11、12と検出用振動子16、17とが不要な共振結合を起こさないように、fdとfsの間に一定の周波数差を持たせている。この周波数差である離調周波数Δf=|fd−fs|は、fd、fsに比べて十分に小さな周波数に設定されている。
なお図1では、振動子10が音叉型である場合の例を示しているが、本実施形態の振動子10はこのような構造に限定されない。例えばT字型やダブルT字型等であってもよい。また振動子10の圧電材料は水晶以外であってもよい。
2.検出装置
図2に本実施形態の検出装置30の構成例を示す。なお検出装置30は図2の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
図2に本実施形態の検出装置30の構成例を示す。なお検出装置30は図2の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
検出装置30は、振動子10を駆動して振動子を励振させる駆動回路40と、振動子10からの出力信号(電荷、電流)を受け、所望信号(所望波)を検出する検出回路60を含む。
駆動回路(発振回路)40は、電流を電圧に変換するI/V変換回路42と、自動ゲイン制御を行うAGC(Automatic Gain Control)回路44と、2値化回路(コンパレータ)46を含む。駆動回路40では、ジャイロセンサの感度を一定に保つために、振動子10(駆動用振動子)に供給する駆動電圧の振幅を一定に保つ必要がある。このため、駆動振動系の発振ループ内に、ゲインを自動調整するためのAGC回路44が設けられる。具体的にはAGC回路44は、入力信号IDの振幅(振動子の振動速度v)が一定になるように、ゲインを可変に自動調整する。なお、発振ループでの位相シフトが0度になるように位相が調整される。また発振起動時には、高速な発振起動を可能にするために、発振ループのゲインは1よりも大きなゲインに設定される。
I/V変換回路42は、振動子10からの信号IDである電流(電荷)を電圧に変換して、駆動信号VD1として出力する。このI/V変換回路42は、キャパシタ、抵抗、オペアンプにより実現できる。
AGC回路44は、駆動信号VD1を監視して、発振ループのゲインを制御する。このAGC回路44は、発振ループ内の発振振幅を制御するためのゲインコントロールアンプ(GCA)や、発振振幅に応じてゲインコントロールアンプのゲインを調整するための制御電圧を出力するゲイン制御回路を含むことができる。また、このゲイン制御回路は、I/V変換回路42からの交流の駆動信号VD1を直流信号に変換する整流回路(全波整流回路)や、整流回路からの直流信号の電圧と基準電圧との差分に応じた制御電圧を出力する回路などを含むことができる。
2値化回路46は、正弦波である駆動信号VD1の2値化処理を行い、2値化処理により得られた参照信号(同期信号)RSを同期検波回路100に出力する。またこの参照信号RSをフィルタ部110(SCF114)に対しても出力する。この2値化回路46は、I/V変換回路42からの正弦波(交流)の信号VD1が入力されて、矩形波の参照信号RSを出力するコンパレータにより実現できる。なおI/V変換回路42と2値化回路46の間や2値化回路46と同期検波回路100の間に他の回路を設けてもよい。例えばハイパスフィルタや移相回路(位相シフタ)などを設けてもよい。
検出回路60は、増幅回路70、感度調整回路80、同期検波回路100、フィルタ部110を含む。なおこれらの一部を省略する構成としてもよい。
増幅回路70は、振動子10からの出力信号ISP、ISMを増幅する。この増幅回路70は、Q/V変換回路72、74、差動増幅回路76、オフセット調整回路78を含む。
Q/V変換回路72、74は、振動子10からの信号ISP、ISMを受け、振動子10で発生した電荷(電流)を電圧に変換する。差動増幅回路76は、Q/V変換回路72、74からの信号VS1P、VS1Mの差動増幅を行う。
図3(A)にQ/V(I/V)変換回路72、74の構成例を示す。Q/V変換回路72、74は、ノードNA1とNA2の間に設けられる帰還キャパシタCA1及び帰還抵抗RA1と、オペアンプ(演算増幅器)OPAを含み、ローパスフィルタの周波数特性を有する。オペアンプOPAの反転入力端子(−)には入力ノードNA1が接続され、非反転入力端子(+)には基準電源電圧AGND(アナロググランド)のノードが接続される。
図3(A)の回路をQ/V変換回路として機能させる場合には、カットオフ周波数fc=1/2πCRが共振周波数fdよりも十分に小さくなるように、CA1の容量値とRA1の抵抗値を設定する。これにより共振周波数fdにおいて位相が約−90度だけ変化するようになる。一方、図3(A)の回路をI/V変換回路として機能させる場合には、カットオフ周波数fc=1/2πCRが共振周波数fdよりも十分に大きくなるように、CA1の容量値とRA1の抵抗値を設定する。この場合には位相がほとんど変化しないため、参照信号RSの位相を+90度又は−90度だけ変化させるための移相回路が必要になる。
差動増幅回路76は、振動子10からの出力信号ISP、ISMに対応する差動信号の差動増幅を行う。この差動信号は、第1の信号(正相入力信号)VS1Pと第2の信号(逆相入力信号)VS1Mにより構成される。この差動増幅回路76の差動増幅により、センサ信号(所望信号)と同相の不要信号(妨害信号)である静電結合漏れ信号を除去できる。
オフセット調整回路78は、オフセットの調整処理を行う。具体的には、検出装置30の出力信号VSQの初期オフセット電圧を除去する調整を行う。例えばティピカル温度である25℃の時に、出力信号VSQの電圧が基準出力電圧と一致するようにオフセットの調整処理を行う。
更に具体的には、オフセット調整回路78は、差動増幅回路76が有する少なくとも1つの抵抗の抵抗値を可変に制御することで、オフセット調整を行う。例えば差動増幅回路76の入力側の抵抗(入力ノードに接続される抵抗)である第1、第3の抵抗の少なくとも一方の抵抗値を可変に制御することで、オフセット調整を行う。別の言い方をすれば、差動信号を構成する第1、第2の信号VS1P、VS1Mにそれぞれ重畳される第1、第2の不要信号(静電結合漏れの不要信号)の少なくとも一方を増幅することで、オフセット調整を行う。
感度調整回路80は、感度の調整処理を行う。具体的にはゲインを可変に制御して感度調整を行う。この場合に本実施形態では感度調整回路80は、オフセット調整回路78によるオフセット調整により設定された検出装置30のゲインを調整(変更)することで、感度調整を行う。この感度調整回路80は、例えば感度の調整データに基づいてその抵抗値が可変に制御される可変抵抗や、可変抵抗の抵抗値(抵抗比)で決まるゲイン(増幅率)で信号を増幅するためのオペアンプなどを含むことができる。また、感度調整回路80は、可変ゲインアンプとして動作すると共にハイパスフィルタとして動作することが望ましく、アクティブフィルタであるハイパスフィルタと可変ゲインアンプとで、オペアンプが共用されることが更に望ましい。
同期検波回路(検波回路、検波器)100は、増幅後の信号VS5に対して、参照信号(参照クロック)RSに基づいて同期検波を行う。この同期検波により、センサ信号に対して90度の位相差がある不要信号である機械振動漏れ信号を除去できる。
図3(B)に同期検波回路100の構成例を示す。この同期検波回路100は、反転増幅器102と、非反転増幅器104と、インバータ106と、スイッチング素子SE1、SE2を含む。スイッチング素子SE1の一端とスイッチング素子SE2の一端は、出力信号Q(VS6)のノードNE4に接続される。そして、入力信号IN(VS5)は反転増幅器102により反転増幅され、入力信号INと逆相の信号IN1がスイッチング素子SE1の他端に入力される。また入力信号INは非反転増幅器104により増幅され、入力信号INと同相の信号IN2がスイッチSE2の他端に入力される。MOSトランジスタにより構成されるスイッチング素子SE1は、参照信号RSの反転信号RSXによりオン・オフ制御され、スイッチング素子SE2は参照信号RSによりオン・オフ制御される。即ちスイッチング素子SE1、SE2が交互にオンになることで、同期検波が行われる。なお反転増幅器102、104の機能を、同期検波回路100の前段側の回路が有するオペアンプで代用してもよい。
フィルタ部110は、同期検波後の信号VS6のフィルタ処理を行う。具体的には、高周波成分を除去するローパスフィルタ処理を行う。
図4に検出装置30の動作を説明するための信号波形例を示す。駆動信号VD1は、その周波数が駆動側固有周波数fdとなる正弦波である。この駆動信号VD1を2値化回路46により2値化することで、矩形波の参照信号RSが得られる。同期検波回路100に入力される信号VS5(センサ信号)は、コリオリ力の大きさ(角速度)に応じて振幅変調(AM変調)されている。この信号VS5を、参照信号RSにより同期検波し、得られた信号VS6をフィルタ部110により平滑化することで、所望信号のDC成分が信号VSQとして出力されるようになる。即ち信号VSQの電圧レベルが、コリオリ力の大きさに応じた電圧レベルになり、この電圧レベルを求めることでジャイロセンサの回転角速度を得ることができる。
3.不要信号
センサ信号には、所望信号(所望波)と不要信号(不要波)が混在している。なお本実施形態では所望信号と不要信号を併せたものをセンサ信号と呼ぶ。
センサ信号には、所望信号(所望波)と不要信号(不要波)が混在している。なお本実施形態では所望信号と不要信号を併せたものをセンサ信号と呼ぶ。
不要信号の振幅は一般的に所望信号の振幅に比べて非常に大きいため、検出装置30に対する要求性能は高くなる。この不要信号には、機械振動漏れや、静電結合漏れや、離調周波数Δfや、2fd(2ωd)や、DCオフセットなどに起因するものがある。
機械振動漏れの不要信号は、振動子10の形状のアンバランス等に起因して発生する。信号ISPに重畳される機械振動漏れの不要信号と信号ISMに重畳される機械振動漏れの不要信号は互いに逆相になるため、差動増幅回路76によっては除去できない。しかしながら、信号VS5に重畳される機械振動漏れの不要信号は、信号VS5での所望信号と90度の位相差を持つため、同期検波回路100により除去できる。
静電結合漏れの不要信号は、図2の駆動信号VD2が、寄生容量CP、CMを通じてISP、ISMの入力端子等に漏洩することで生じる。即ち寄生容量CP、CMにより容量結合が形成され、駆動信号周波数付近においては、駆動信号VD2よりも約90度(π/2)だけ位相が進んだ信号が、静電結合漏れの不要信号としてISP、IMの双方に重畳される。そして信号ISPに重畳される不要信号と信号ISMに重畳される不要信号は互いに同相になるため、差動増幅回路76により除去することが可能になる。但し、必ずしもCP=CMになるとは限らないため、CPとCMが等しくない場合には、信号ISPに重畳された静電結合漏れの不要信号と、信号ISMに重畳された静電結合漏れの不要信号は大きさが異なってしまう。従って、この場合には、静電結合漏れの不要信号は除去されずに残ることになる。
例えばISP、ISMでの所望信号と静電結合漏れの不要信号は、図5に示すような位相関係にある。即ち、ISPにおける所望信号S1(t)とISMにおける所望信号S2(t)は逆相(位相差180度)になっている。一方、ISPにおける静電結合漏れの不要信号N1(t)とISMにおける静電結合漏れの不要信号N2(t)は同相(同位相)になっている。
ISP=S1(t)+N1(t) (1)
ISM=S2(t)+N2(t) (2)
S1(t)=−S2(t) (3)
N1(t)=N2(t) (4)
従って、S1(t)とS2(t)の間に上式(3)の関係が成立し、またN1(t)とN2(t)の間に上式(4)の関係が成立している限り、減算器として機能する差動増幅回路76にISPとISMを入力することで、差動増幅回路76の出力は、
ISP−ISM=2S1(t) (5)
となる。従って理想的には、差動増幅回路76の出力には、振幅が2倍にされた所望信号(2S1(t))だけが残り、不要信号は除去される。
ISM=S2(t)+N2(t) (2)
S1(t)=−S2(t) (3)
N1(t)=N2(t) (4)
従って、S1(t)とS2(t)の間に上式(3)の関係が成立し、またN1(t)とN2(t)の間に上式(4)の関係が成立している限り、減算器として機能する差動増幅回路76にISPとISMを入力することで、差動増幅回路76の出力は、
ISP−ISM=2S1(t) (5)
となる。従って理想的には、差動増幅回路76の出力には、振幅が2倍にされた所望信号(2S1(t))だけが残り、不要信号は除去される。
しかしながら、実際には、
|S2(t)|=|S1(t)|+ΔS(t) (6)
|N2(t)|=|N1(t)|+ΔN(t) (7)
となっている。ここで、絶対値記号で表された|S1(t)|、|S2(t)|は所望信号S1(t)、S2(t)の振幅を表す。同様に|N1(t)|、|N2(t)|は不要信号N1(t)、N2(t)の振幅を表す。またΔS(t)は所望信号のアンバランス成分(ISP、ISMでの所望信号の振幅差)を表し、ΔN(t)は不要信号のアンバランス成分(ISP、ISMでの不要信号の振幅差)を表す。従って、差動増幅回路76の出力は、
ISP−ISM=2S1(t)+ΔS(t)+ΔN(t) (8)
となる。従って、差動増幅回路76の出力には、所望信号のみならず、不要信号(アンバランス成分ΔN(t))も残るようになる。
|S2(t)|=|S1(t)|+ΔS(t) (6)
|N2(t)|=|N1(t)|+ΔN(t) (7)
となっている。ここで、絶対値記号で表された|S1(t)|、|S2(t)|は所望信号S1(t)、S2(t)の振幅を表す。同様に|N1(t)|、|N2(t)|は不要信号N1(t)、N2(t)の振幅を表す。またΔS(t)は所望信号のアンバランス成分(ISP、ISMでの所望信号の振幅差)を表し、ΔN(t)は不要信号のアンバランス成分(ISP、ISMでの不要信号の振幅差)を表す。従って、差動増幅回路76の出力は、
ISP−ISM=2S1(t)+ΔS(t)+ΔN(t) (8)
となる。従って、差動増幅回路76の出力には、所望信号のみならず、不要信号(アンバランス成分ΔN(t))も残るようになる。
2fdの不要信号は、何らかの原因で振動子が、2fdの高調波の周波数で振動することにより発生する。DCオフセットの不要信号は、入力リーク、静電結合漏れのアンバランス、所望信号と参照信号との間に存在する位相ずれ、参照信号のデューティのずれ、回路ブロックが有するDCオフセットなどに起因して発生する。
次に、図6(A)〜図6(C)の周波数スペクトラムを用いて不要信号の除去について詳細に説明する。図6(A)は同期検波前の周波数スペクトラムである。図6(A)に示すように、同期検波前のセンサ信号では、DCの周波数帯域にはDCオフセットの不要信号が存在する。またfdの周波数帯域には、機械振動漏れの不要信号と所望信号が存在する。
図6(B)は同期検波後の周波数スペクトラムである。図6(A)のfdの周波数帯域の所望信号は、図6(B)に示すように同期検波後はDC及び2fdの周波数帯域に現れる。また図6(A)のDCの周波数帯域の不要信号(DCオフセット)は、図6(B)に示すように同期検波後はfdの周波数帯域に現れる。また図6(A)のfdの周波数帯域の不要信号(機械振動漏れ)は、図6(B)に示すように同期検波後は2fdの周波数帯域に現れる。なお図6(A)において2fdの周波数帯域に不要信号が存在した場合には、同期検波後は3fd及びfdの周波数帯域に現れるようになる。また検波後の混入ノイズは、同期検波回路100の後段の回路が発生するノイズなどである。
図6(C)はフィルタ処理後の周波数スペクトラムである。同期検波後の信号をフィルタ部110で平滑化(LPF)することで、fd、2fd等の周波数帯域の不要信号の周波数成分が除去されている。
図2のVS5での所望信号は、図4で説明したように振幅変調されているため、A(t)sin(ωd×t)と表すことができる。またVS5での機械漏れ振動の不要信号(妨害波)は、所望信号と位相が90度ずれているため、Bsin(ωd×t+π/2)と表すことができる。また、VS5でのセンサ信号はVS5での所望信号と不要信号の和であるため、A(t)sin(ωd×t)+Bsin(ωd×t+π/2)と表すことができる。また駆動信号は、Csin(ωd×t)と表すことができる。なおA(t)、B、Cは振幅であり、ωd=2πfdである。
同期検波は、VS5でのセンサ信号(所望信号+不要信号)と駆動信号(参照信号)の乗算とみなすことができる。従って、VS5でのセンサ信号のうち所望信号については、
A(t)sin(ωd×t)×Csin(ωd×t)
={(A(t)×C)/2}×{1−cos(2ωd×t)}
となる。従って図6(B)に示すように、同期検波後に所望信号はDC並びに2fdの周波数帯域に現れるようになる。
A(t)sin(ωd×t)×Csin(ωd×t)
={(A(t)×C)/2}×{1−cos(2ωd×t)}
となる。従って図6(B)に示すように、同期検波後に所望信号はDC並びに2fdの周波数帯域に現れるようになる。
一方、VS5でのセンサ信号のうち機械振動漏れの不要信号については、
Bsin(ωd×t+π/2)×Csin(ωd×t)
={−(B×C)/2}×cos(2ωd×t+π/2)
となる。従って図6(B)に示すように、同期検波後に機械振動漏れの不要信号は2fd+(2ωd)の周波数帯域に現れ、DCには現れない。
Bsin(ωd×t+π/2)×Csin(ωd×t)
={−(B×C)/2}×cos(2ωd×t+π/2)
となる。従って図6(B)に示すように、同期検波後に機械振動漏れの不要信号は2fd+(2ωd)の周波数帯域に現れ、DCには現れない。
次に、図7(A)〜図7(D)の模式図を用いて同期検波について説明する。なお実際には、不要信号(機械漏れ振動)の振幅Bは所望信号の振幅A(t)に比べて非常に大きいが、図面の都合上、振幅A(t)とBを等しくしてある。
図7(A)のように、VS5での所望信号の位相と参照信号(駆動信号)の位相が完全に揃っている場合には、同期検波後のVS6での所望信号と不要信号は図7(B)のようになる。即ち所望信号は、完全な全波整流波形になり、不要信号は、正の部分と負の部分の面積が等しい波形になる。従って、フィルタ部110で平滑化することにより、所望信号のDC成分が信号VSQとして出力されるようになり、不要信号の成分が信号VSQとして現れることはない。
一方、図7(C)のようにVS5での所望信号の位相と参照信号(駆動信号)の位相がγだけずれている場合には、同期検波後のVS6での所望信号と不要信号は図7(D)のようになる。即ち所望信号は、完全な全波整流波形ではなく、負の成分を含む。また、不要信号は、正の部分と負の部分の面積が等しくならない。従って、フィルタ部110での平滑化で得られる信号VSQにおいて、所望信号のDC成分が図7(B)の場合よりも小さくなると共に、不要信号の成分が信号VSQとして現れるようになる。
4.差動増幅回路によるオフセット調整
図8に差動増幅回路76の入力信号(所望信号)VS1P、VS1Mと出力信号VS4の信号波形例を示す。信号VS1P、VS1Mは差動信号を構成する。即ち、検出用振動子16、17からの信号ISP、ISMは互いに逆相の信号であるため、Q/V変換回路72、74からの信号VS1P、VS1Mも、位相が180度ずれた互いに逆相の信号になり、差動信号を構成する。
図8に差動増幅回路76の入力信号(所望信号)VS1P、VS1Mと出力信号VS4の信号波形例を示す。信号VS1P、VS1Mは差動信号を構成する。即ち、検出用振動子16、17からの信号ISP、ISMは互いに逆相の信号であるため、Q/V変換回路72、74からの信号VS1P、VS1Mも、位相が180度ずれた互いに逆相の信号になり、差動信号を構成する。
静電結合漏れの不要信号は、前述したように図2の駆動信号VD2とISP、ISMの入力端子との間の寄生容量CP、CMによる容量結合により発生する。即ち周波数fdの駆動信号VD2の振動成分が、寄生容量CP、CMを介してISP、ISMの入力端子に伝達し、図8に示すような静電結合漏れの不要信号として現れる。このため、信号VS1Pに重畳される静電結合漏れの不要信号と信号VS1Pに重畳される静電結合漏れの不要信号は、図8に示すように同相の信号になる。従って、信号VS1PとVS1Mの静電結合漏れの不要信号の振幅が同じである場合には、差動増幅回路76による差動増幅(減算)により、図8に示すように出力信号VS4には静電結合漏れの不要信号が現れないようになる。
このように差動増幅回路76は、一般的に、信号VS1P、VS1Mの差動増幅と、静電結合漏れなどの同相の不要信号を除去するために用いられている。そして従来では、初期オフセット電圧の除去のためのオフセット調整については、例えばフィルタ部110の後段側に設けられた専用のオフセット調整回路により行っていた。
しかしながら、このような専用のオフセット調整回路を設けると、回路の大規模化を招く。またフィルタ部110の後段側にオフセット調整回路を設けると、オフセット調整回路のゲインによりノイズそのものが増幅されてしまう。またノイズ源となる回路ブロックの数も増えてしまうため、S/N比が劣化する。
そこで本実施形態では、差動増幅回路76に対して、差動増幅の機能のみならず、オフセット調整の機能を持たせ、差動増幅回路76の抵抗の抵抗値を可変に制御することで、オフセット調整を行っている。
例えば図9(A)において、環境温度が25℃(ティピカル温度)であり、ジャイロセンサが静止状態である場合に、検出装置30の出力電圧VQが基準出力電圧VR(例えばVDD/2)に一致するように、オフセット調整を行う。即ち図9(A)では、出力電圧VQが基準出力電圧VRと一致していない。この場合には図9(B)に示すように、初期オフセット電圧である|VQ−VR|が除去されて0になるように、オフセット調整を行う。具体的には、ジャイロセンサの製造後に、ジャイロセンサを静止状態にして、検出装置30の出力電圧VQをモニタする。そして出力電圧VQを基準出力電圧VRに一致させるためのオフセット調整データを、図示しない不揮発性メモリ等に書き込む。すると、検出装置30の出力電圧VQがVRに一致するように、上記調整データに基づいてオフセット調整が行われる。
図10に本実施形態の差動増幅回路76、オフセット調整回路78の構成例を示す。差動増幅回路76は、差動信号を構成する第1の信号VS1Pが入力される第1の入力ノードNB1と第1のノードNB3の間に設けられる第1の抵抗RB1と、ノードNB3と出力ノードNB5の間に設けられる第2の抵抗RB2を含む。また差動信号を構成する第2の信号VS1Mが入力される第2の入力ノードNB2と第2のノードNB4との間に設けられる第3の抵抗RB3と、ノードNB4と基準電圧AGND(広義には第1の電源電圧)のノードの間に設けられる第4の抵抗RB4を含む。更にその反転入力端子(−)がノードNB3に接続され、その非反転入力端子(+)がノードNB4に接続され、その出力端子が出力ノードNB5に接続されるオペアンプOPBを含む。
オフセット調整回路78は、差動増幅回路76が有する抵抗RB1、RB2、RB3、RB4のうち少なくとも1つの抵抗の抵抗値を可変に制御することで、図9(A)、図9(B)で説明したオフセット調整を行う。具体的には、オフセット調整回路78はオフセットの調整データDDA[m:0]を受ける。そして調整データDDA[m:0]に基づいて、抵抗RB1、RB3の抵抗値を可変に制御することで、オフセット調整を行う。
なお図10では、抵抗RB1、RB3の両方の抵抗値を制御しているが、抵抗RB1、RB3の一方の抵抗値だけを制御してもよい。また差動増幅回路76、オフセット調整回路78の構成は図10に限定されず、図10の構成要素の一部を省略したり、他の構成要素を追加するなどの変形実施が可能である。
図10において、信号VS1P、VS1M、VS4の電圧を、各々、V1、V2、V3とし、抵抗RB1、RB2、RB3、RB4の抵抗値を、各々、R1、R2、R3、R4とする。するとV3は下式のように表される。
V3={R4×(R1+R2)×V2−R2×(R3+R4)×V1}/{R1×(R3+R4)}
=(K1×V2−K2×V1)/K3 (9)
ここで、
K1=R4×(R1+R2) (10)
K2=R2×(R3+R4) (11)
K3=R1×(R3+R4) (12)
である。
V3={R4×(R1+R2)×V2−R2×(R3+R4)×V1}/{R1×(R3+R4)}
=(K1×V2−K2×V1)/K3 (9)
ここで、
K1=R4×(R1+R2) (10)
K2=R2×(R3+R4) (11)
K3=R1×(R3+R4) (12)
である。
従来例では、差動増幅回路76に対して差動増幅の機能しか持たせておらず、R1=R3、R2=R4に設定していた。そしてR1=R3、R2=R4に設定すると、K1=K2=R2×(R1+R2)、K3=R1×(R1+R2)となり、従来例では、V3は下式のように表されるようになる。
V3=K1×(V2−V1)/K3
=(R2/R1)×(V2−V1) (13)
そしてジャイロセンサが静止状態である場合には、ジャイロセンサの角速度に比例する所望信号VS1P、VS1Mの電圧V1、V2は共に0になる。従って、図8のようにVS1P側、VS1M側の静電結合漏れの不要信号の振幅が同じである場合(アンバランス成分が0の場合)には、ジャイロセンサの静止状態時に差動増幅回路76の出力電圧V3も0になる。
=(R2/R1)×(V2−V1) (13)
そしてジャイロセンサが静止状態である場合には、ジャイロセンサの角速度に比例する所望信号VS1P、VS1Mの電圧V1、V2は共に0になる。従って、図8のようにVS1P側、VS1M側の静電結合漏れの不要信号の振幅が同じである場合(アンバランス成分が0の場合)には、ジャイロセンサの静止状態時に差動増幅回路76の出力電圧V3も0になる。
しかしながら、前述のように静電結合漏れの不要信号は、寄生容量による容量結合により発生する。従って図11、図12に示すように、VS1P側とVS1M側とで静電結合漏れの不要信号にはアンバランス成分(ΔN(t))があり、VS1P側とVS1M側の不要信号の振幅が同じにならない。そしてこのようなアンバランス成分が存在すると、差動増幅回路76により差動増幅を行っても、図11、図12に示すように出力信号VS4に静電結合漏れの不要信号が残る。
本実施形態では、このような同相の不要信号のアンバランス成分を逆に利用して、オフセット調整を実現している。
即ち図11、図12のように出力信号VS4に静電結合漏れの不要信号が残ると、この不要信号は所望信号と同相又は180度位相がずれた信号であるため、同期検波回路100による同期検波では除去されない。またこの不要信号は、同期検波前は所望信号と同じ周波数fdの帯域にあるため(図6(A)参照)、同期検波後は、所望信号と同様にDCの周波数帯域に現れるようになる(図6(B)参照)。従って、この不要信号は、フィルタ部110によるローパスフィルタ処理によっても除去されず(図6(C)参照)、出力信号VSQのオフセット電圧(初期オフセット電圧)として現れるようになる。
ここで、オフセット電圧には、上述のような静電結合漏れに起因するもの以外に、入力リーク、所望信号と参照信号との間に存在する位相ずれ、参照信号のデューティのずれ、回路ブロックが有するDCオフセットなどに起因するものがある。
そこで本実施形態では、静電結合漏れの不要信号で発生するオフセット電圧により、静電結合漏れ以外の不要信号(入力リーク、位相ずれ等)で発生するオフセット電圧を相殺する。即ち、図11、図12のように信号VS1P、VS1Mにそれぞれ重畳される静電結合漏れの不要信号(広義には第1、第2の不要信号)の少なくとも一方を増幅することで、オフセット調整を実現する。
例えば図11において信号VS4に重畳される静電結合漏れの不要信号は、図8の信号VS4の所望信号と同相である。従って、図11の信号VS1Mに重畳される静電結合漏れの不要信号(第2の不要信号)を増幅することで、図11の信号VS4の静電結合漏れの不要信号を増幅すれば、検出装置30の出力信号VSQのオフセット電圧を正方向に変化させることができる。
一方、図12において信号VS4に重畳される静電結合漏れの不要信号は、図8の信号VS4の所望信号と逆相(180度ずれている)である。従って、図8の信号VS1Pに重畳される静電結合漏れの不要信号(第1の不要信号)を増幅することで、図12の信号VS4の静電結合漏れの不要信号を増幅すれば、検出装置30の出力信号VSQのオフセット電圧を負方向に変化させることができる。
従って図9(A)、図9(B)のオフセット電圧(初期オフセット電圧)が正である場合にも負である場合にも、静電結合漏れの不要信号で発生するオフセット電圧を有効利用して、オフセット電圧を0にして除去するオフセット調整を実現できる。
次に図13(A)、図13(B)を用いて、本実施形態のオフセット調整手法について更に詳しく説明する。
図13(A)のV3は、上式(9)のように、V3=(K1×V2−K2×V1)/K3と表される。このV3を、参照信号RSで同期検波し、更にフィルタ部110のLPFを通すと、V4が得られる。このV4は直流信号であり、V4の符号は、V3の位相と参照信号RSの位相が同相ならばプラスになり、逆相(180度ずれ)ならばマイナスになる。またV4の大きさはV3の振幅に比例する。
例えば図13(B)のケース1では、V1、V2の静電結合漏れの不要信号は同相であり、V1の振幅はV2の振幅よりも小さい。この場合には、V4としてプラスのDC電圧が出力される。従って、静電結合漏れ以外の不要信号が存在しない場合には、オフセット電圧はプラスになる。
また図13(B)のケース2では、V1、V2の静電結合漏れの不要信号は同相であり、V1の振幅はV2の振幅よりも大きい。この場合には、V4としてマイナスのDC電圧が出力される。従って、静電結合漏れ以外の不要信号が存在しない場合には、オフセット電圧はマイナスになる。
静止状態においては角速度=0であるため、V1及びV2は所望信号(コリオリ力信号)を含まない。この状態で、V4が0VになるようにK1、K2を調整すれば、静止時の出力電圧が0Vになるように、ジャイロモジュール全体をチューニングすることができる。
この時、機械振動漏れが印加されていても構わない。機械振動漏れが印加された状態でチューニングを行えば、図7(C)、図7(D)で説明した同期検波において、参照信号RSとV3の位相が90度からずれていることにより生ずるDCオフセットについても、キャンセルすることが可能となる。
このように調整されたジャイロセンサに、角速度、即ち所望信号であるコリオリ力信号が加えられると、重ね合わせの原理により、角速度に相当する出力信号が正しくゼロ点調整されて、フィルタ部110の出力として得られるようになる。
また本実施形態では、抵抗RB1〜RB4の抵抗値R1〜R4のうちR1及びR3の少なくとも一方を制御して、オフセット調整を実現している。
例えば上式(10)(11)のように、K1、K2を制御する場合に抵抗値R1、R3は独立変数と見なすことができる。即ち抵抗値R1を変化させると、K1=R4×(R1+R2)は変化する一方で、K2=R2×(R3+R4)は変化しない。また抵抗値R3を変化させると、K2=R2×(R3+R4)は変化する一方で、K1=R4×(R1+R2)は変化しない。
そして静電結合漏れの不要信号が図11のような状態であり、オフセット電圧が負であったとする。この場合には、図10の抵抗RB1の抵抗値R1を大きくして、V3=(K1×V2−K2×V1)/K3のうちのK1=R4×(R1+R2)を大きくする。こうすれば、図11の出力信号VS4の静電結合漏れの不要信号の振幅が大きくなり、静電結合漏れによる正のオフセット電圧成分が増えるため、負のオフセット電圧を正方向に変化させることができる。これにより、オフセット電圧を0にして除去するオフセット調整が可能になる。なお抵抗RB3の抵抗値R3を小さくして、V3=(K1×V2−K2×V1)/K3のうちのK2=R2×(R3+R4)を小さくしてもよい。このようにしても、図11の信号VS4の静電結合漏れの不要信号の振幅が大きくなるため、負のオフセット電圧を正方向に変化させて、除去できるようになる。
また静電結合漏れの不要信号が図12のような状態であり、オフセット電圧が正であったとする。この場合には、図10の抵抗RB3の抵抗値R3を大きくして、V3=(K1×V2−K2×V1)/K3のうちのK2=R2×(R3+R4)を大きくする。こうすれば、図12の出力信号VS4の静電結合漏れの不要信号の振幅が大きくなり、静電結合漏れによる負のオフセット電圧成分が増えるため、正のオフセット電圧を負方向に変化させることができる。これにより、オフセット電圧を0にして除去するオフセット調整が可能になる。なお抵抗RB1の抵抗値R1を小さくして、V3=(K1×V2−K2×V1)/K3のうちのK1=R4×(R1+R2)を小さくしてもよい。このようにしても、図12の信号VS4の静電結合漏れの不要信号の振幅が大きくなるため、正のオフセット電圧を負方向に変化させて、除去できるようになる。
図14にオフセット調整回路78の構成例を示す。図14は、図10の抵抗RB1の抵抗値の可変制御を実現する構成例であるが、抵抗RB3を抵抗値の可変制御も同様の構成により実現できる。図14のオフセット調整回路78は、デコーダ79と、トランジスタ(例えばN型トランジスタ)TB0〜TBnを含む。デコーダ79はオフセットの調整データDDA[m:0]を受けて、DDA[m:0]のデコード処理を行う。そして選択信号SL0〜SLnを出力する。また抵抗RB1は、直列に接続された抵抗RBR、DR0〜DRnにより構成される。
トランジスタTB0〜TBnのゲートには、デコーダ79からの選択信号SL0〜SLnが入力され、これによりTB0〜TBnはオン・オフ制御される。例えば選択信号SL0がアクティブになり、トランジスタTB0がオンになると、抵抗RB1の出力タップTR0とノードNB3が接続される。従って、抵抗RBRの抵抗値をRRとし、抵抗DR0〜DRnの抵抗値をΔRとすると、抵抗RB1の抵抗値はR1=RRに設定される。
また選択信号SL1がアクティブになり、トランジスタTB1がオンになると、出力タップTR1とノードNB3が接続される。従って、抵抗RB1の抵抗値はR1=RR+ΔRに設定される。同様に、選択信号SL2がアクティブになり、トランジスタTB2がオンになると、出力タップTR2とノードNB3が接続される。従って、抵抗RB1の抵抗値はR1=RR+2×ΔRに設定される。このように図14の構成によれば、オフセット調整データDDA[m:0]に基づいて、抵抗RB1の抵抗値R1を可変に制御できる。
5.感度調整
ジャイロセンサ510では、感度が所与の基準値に一致するように、検出装置30の全体のゲインの調整を行う感度調整が行われる。この感度(V/度/sec)は、図15の出力電圧VQ(VSQの電圧)の単位角速度当たりの変化量であり、出力電圧VQの直線の傾きに相当する。
ジャイロセンサ510では、感度が所与の基準値に一致するように、検出装置30の全体のゲインの調整を行う感度調整が行われる。この感度(V/度/sec)は、図15の出力電圧VQ(VSQの電圧)の単位角速度当たりの変化量であり、出力電圧VQの直線の傾きに相当する。
これまでは、感度調整のやりやすさ、わかりやすさの観点から、このような感度を調整する回路は、図2のフィルタ部110の後段側に設けられていた。即ち不要信号などを除去して、DC(直流)信号になった後に、感度調整を行うのが一般的であった。
しかしながら、感度調整回路をフィルタ部110の後段側に設けると、システムノイズが増加してしまうことが判明した。即ちフィルタ部110のローパスフィルタ処理により、DC信号になった後に感度調整を行うと、感度調整回路自体が発生するノイズが、出力電圧VQに現れてしまう。またフリッカノイズ(1/fノイズ)は、周波数が低いほど大きくなるため、DC信号の状態で感度調整を行うと、フリッカノイズの悪影響も大きくなる。更に、ゲイン調整を行う感度調整回路を後段側に設けると、所望信号のみならず、感度調整回路の前段側の回路が発生するノイズについても増幅されてしまい、S/N比が劣化する。
そこで図2では、感度調整回路80を同期検波回路(検波器)100の前段側に設けている。具体的には増幅回路70と同期検波回路100(オフセット調整回路)の間に感度調整回路80を設けている。
このように同期検波回路100の前段側に感度調整回路80を設ければ、DC信号ではなく、周波数fdの信号の状態で感度調整が行われるようになる。従って、周波数が高いほど小さくなるフリッカノイズ(1/fノイズ)の悪影響を最小限に抑えることができる。また感度調整回路80自体に発生したノイズは、図6(B)に示すように同期検波によりfdの周波数帯域に現れ、フィルタ部110により除去できる。従って、感度調整回路80自体に発生したノイズの悪影響も低減できる。更に、フィルタ部110の後段側に感度調整回路を設ける場合に比べて、感度調整回路80の前段側の回路ブロックの数が減るため、これらの回路ブロックのノイズを感度調整回路80が増幅することによるS/N比の劣化を、最小限に抑えることができる。
6.感度調整回路の構成
図16(A)、図16(B)に感度調整回路80(Programmable Gain Amp)の構成例を示す。図16(A)、図16(B)では、感度調整回路80が、可変ゲインアンプ(PGA)として動作すると共にハイパスフィルタとして動作する。またアクティブフィルタであるハイパスフィルタと可変ゲインアンプとで、オペアンプが共用される。
図16(A)、図16(B)に感度調整回路80(Programmable Gain Amp)の構成例を示す。図16(A)、図16(B)では、感度調整回路80が、可変ゲインアンプ(PGA)として動作すると共にハイパスフィルタとして動作する。またアクティブフィルタであるハイパスフィルタと可変ゲインアンプとで、オペアンプが共用される。
図16(A)は非反転増幅型の例である。図16(A)の感度調整回路80は、入力ノードND8とノードND9(第1のノード)との間に設けられるキャパシタCD1と、ノードND9と基準電源電圧AGND(第1の電源電圧)のノードとの間に設けられる抵抗RD5を含む。また出力ノードND11とAGNDのノードとの間に設けられる可変抵抗RD6、RD7を含む。また、その非反転入力端子にノードND9が接続され、その反転入力端子に可変抵抗RD6、RD7の出力タップQT(ノードND10)が接続され、その出力端子に出力ノードND11が接続されるオペアンプOPD3を含む。
図16(A)では、出力ノードND11と出力タップQTの間の可変抵抗RD7の抵抗値と、出力タップQTとAGNDのノードの間の可変抵抗RD6の抵抗値が、感度の調整データDPGA[m:0]に基づいて可変に制御される。これにより、感度調整回路80のゲインが調整されて、感度調整が行われる。
例えば可変抵抗RD6、RD7の抵抗値をR6、R7とすると、PGAである感度調整回路80のゲインはG=(R6+R7)/R6になる。具体的には、可変抵抗に対して複数の出力タップを設けておき、その複数の出力タップの中から調整データDPGA[m:0]に対応する出力タップQTを選択することで、可変抵抗RD6、RD7の抵抗値R6、R7が決定され、ゲインG=(R6+R7)/R6が決定される。
図16(B)は反転増幅型の例である。図16(B)の感度調整回路80は、入力ノードND12とノードND13(第1のノード)との間に設けられる抵抗RD8と、ノードND13とノードND14(第2のノード)との間に設けられるキャパシタCD2を含む。また出力ノードND15とノードND14との間に設けられ、調整データDPGA[m:0]に基づいてその抵抗値が可変に制御される可変抵抗RD9を含む。また、その反転入力端子にノードND14が接続され、その非反転入力端子に電源電圧AGNDのノードが接続されるオペアンプOPD4を含む。
図16(B)では、可変抵抗RD8、RD9の抵抗値をR8、R9とすると、感度調整回路80のゲインはG=−R9/R8になる。なお図16(A)、図16(B)の構成要素を変更したり、他の構成要素を追加する変形実施も可能である。例えばキャパシタCD1、CD2を省略し、感度調整回路80にハイパスフィルタの機能を持たせないようにしてもよい。
図16(A)、図16(B)の感度調整回路80を用いた感度調整は、具体的には以下のように実現する。まずジャイロセンサの製造後に検出装置30の出力電圧VQをモニタする。そして、例えばジャイロセンサを静止状態から所与の回転角速度で回転させ、その時の出力電圧VQの変化量(図15の直線の傾き)である感度を求める。そして求められた感度を基準値(基準感度)に一致させるための調整データDPGA[m:0]を、図示しない不揮発性メモリ等に書き込む。すると感度調整回路80は、検出装置30の感度が基準値に一致するように、上記の調整データDPGA[m:0]に基づいて、オペアンプのゲインを調整するようになる。
ここで図16(A)、図16(B)の感度調整回路80は、可変ゲインアンプとして動作すると共にハイパスフィルタとして動作する。感度調整回路80をハイパスフィルタとして動作させれば、DC成分をカットでき、可変ゲインアンプ(PGA)によりDC信号が増幅されてしまう事態を防止できる。従って、感度調整回路80の可変ゲインアンプや後段側のオペアンプ(例えばオフセット調整回路、同期検波回路のオペアンプ)が、過入力により飽和動作状態になり、出力がオーバフローしてしまうなどの事態を防止できる。またこのハイパスフィルタによりDCノイズも除去でき、S/N比の向上を図ることも可能になる。
また図16(A)、図16(B)では、ハイパスのアクティブフィルタと可変ゲインアンプとでオペアンプが共用される。従って、アクティブフィルタ用のオペアンプと可変ゲインアンプ用のオペアンプを別々に設ける場合に比べて、オペアンプの個数を減らすことができる。従って、回路の小規模化を図れると共に、ノイズ源となる回路ブロックの数も減るため、S/N比を向上できる。
図16(A)の回路は、図16(B)に比べて、カットオフ周波数とゲイン(可変抵抗の抵抗値)を独立に制御できるという利点がある。例えばハイパスフィルタでは、DC成分をカットして、所望信号を通過させるためには、カットオフ周波数fcをなるべく低くすることが望ましい。ここで、容量値をC、抵抗値をRとした場合に、カットオフ周波数はfc=1/2πCRと表される。そして図16(B)のCD2の容量値C2を大きくすると、回路が大面積化するため、カットオフ周波数fcを低くするためには、抵抗RD8の抵抗値R8を大きくする必要がある。
しかしながら、このように抵抗値R8を大きくすると、抵抗RD8で発生するノイズ(サーマルノイズ等)が大きくなってしまい、S/N比が低下する。
これに対して図16(A)では、カットオフ周波数fcはキャパシタCD1の容量値C1と抵抗RD5の抵抗値R5で決まる。一方、可変ゲインアンプのゲインはG=(R6+R7)/R6であり、可変抵抗RD6、RD7の抵抗値R6、R7で決まる。即ちカットオフ周波数fcとゲインを別個に調整できる。従って、カットオフ周波数fcを低くするために、RD5の抵抗値R5を大きくした場合にも、RD6、RD7の抵抗値R6、R7については大きくする必要がない。従って、図16(B)のRD9の抵抗値R9に比べて、RD6、RD7の抵抗値R6、R7を十分に小さくできるため、これらの可変抵抗RD6、RD7で発生するノイズを小さくでき、S/N比を向上できる。
7.検出装置の調整方法
次に本実施形態の検出装置30の調整方法について図17のフローチャートを用いて説明する。
次に本実施形態の検出装置30の調整方法について図17のフローチャートを用いて説明する。
図17では、まずオフセット調整処理を行う(ステップS1)。即ち検出装置30の出力電圧VQをモニタし(ステップS2)、VQが基準出力電圧VR以上か否かを判断する(ステップS3)。
出力電圧VQが基準出力電圧VR以上でありオフセット電圧が正である場合には、VQが小さな値に変化するように、オフセット調整データにより図10のRB1の抵抗値R1又はRB3の抵抗値R3を調整する(ステップS4)。例えば図12のような状態の場合には、抵抗値R3を大きくして、V3=(K1×V2−K2×V1)/K3のうちのK2=R2×(R3+R4)を大きくする。これにより、正のオフセット電圧を負方向に変化させることができる。そして出力電圧VQが基準出力電圧VRに一致したか否かを判断し(ステップS5)、一致しない場合にはステップS4に戻り、再度調整を行う。
一方、出力電圧VQが基準出力電圧VRより小さく、オフセット電圧が負である場合には、VQが大きな値に変化するように、オフセット調整データにより抵抗値R1又はR3を調整する(ステップS6)。例えば図11のような状態の場合には、抵抗値R1を大きくして、V3=(K1×V2−K2×V1)/K3のうちのK1=R4×(R1+R2)を大きくする。これにより、負のオフセット電圧を正方向に変化させることができる。そして出力電圧VQが基準出力電圧VRに一致したか否かを判断し(ステップS7)、一致しない場合にはステップS6に戻り、再度調整を行う。
そして、最終的に決定されたオフセット調整データを不揮発性メモリに書き込み(ステップS8)、オフセット調整処理を終了する。
次に、感度調整処理を行う(ステップS9)。即ち、検出装置30の出力電圧VQを再度モニタする(ステップS10)。そして感度調整データにより、感度が基準値に一致するように調整を行う(ステップS11)。そして、最終的に決定された感度調整データを不揮発性メモリに書き込み(ステップS12)、感度調整処理を終了する。
このように本実施形態では、検出装置30の出力信号をモニタし、差動増幅回路76が有する少なくとも1つの抵抗の抵抗値を制御して、検出装置30のオフセット調整を行う(ステップS1〜S8)。そして、オフセット調整の後に検出装置30の出力信号を再度モニタし、オフセット調整後にモニタされた検出装置30の出力信号に基づいて、検出装置30の感度を基準値に一致させる感度調整を行っている(ステップS9〜S12)。
即ち、前述のように差動増幅回路76の出力電圧はV3=(K1×V2−K2×V1)/K3と表される。そして本実施形態では、抵抗値R1、R3を制御することで、K1=R4×(R1+R2)、K2=R2×(R3+R4)を変化させて、オフセット調整を実現している。
ところが、抵抗値R1、R3を変化させると、K3=R1×(R3+R4)も変化してしまうため、差動増幅回路76のゲインも変化し、検出装置30の全体のゲインも変化してしまう。
そこで本実施形態では図17に示すように、まずオフセット調整を行う(ステップS1〜S8)。次に、このオフセット調整により設定(変更)された検出装置30のゲインを再度調整する感度調整を行う(ステップS9〜S12)。こうすることで、オフセット調整により検出装置30のゲインが変化した場合にも、この感度調整によりこのゲインを再度調整することができ、検出装置30の感度を適正な基準値に設定できるようになる。なお本実施形態の調整方法は図17に限定されない。例えば、まず始めに感度調整を行い、その後にオフセット調整を行うようにしてもよい。
8.オフセットの変動成分
図9(A)に示すように、初期オフセット電圧が0になるようなオフセット調整を行えば、少なくとも環境温度が25℃であり、ジャイロセンサの角速度が0である静止時には、検出装置30の出力電圧(0点電圧)VQは基準出力電圧VRに一致するようになる。
図9(A)に示すように、初期オフセット電圧が0になるようなオフセット調整を行えば、少なくとも環境温度が25℃であり、ジャイロセンサの角速度が0である静止時には、検出装置30の出力電圧(0点電圧)VQは基準出力電圧VRに一致するようになる。
しかしながら図9(B)に示すように、オフセット電圧には正又は負の温度特性(温度ドリフト)がある。従って初期オフセット電圧を除去して0にしても、温度変化(広義には環境変化)によるオフセット変動分は0にならないという課題がある。
例えば、初期オフセット電圧を除去しても、図6(A)のDCオフセット、機械漏れ振動のオフセット変動分については、同期検波後には、fd、2fdの周波数帯域に現れるようになる。また図7(C)、図7(D)で説明した位相ずれに温度変動があると、位相ずれの不要信号のオフセット変動分はDCの周波数帯域に現れる。従って、このような課題を解決するために、本実施形態では以下の手法を採用している。
図18に本実施形態のフィルタ部110の構成例を示す。フィルタ部110は、離散時間型フィルタであるSCF(スイッチト・キャパシタ・フィルタ)114を含む。またフィルタ部110は、SCF114(広義には離散時間型フィルタ)の前段側に設けられたプリフィルタ(前置フィルタ)112と、SCF114の後段側に設けられたポストフィルタ(後置フィルタ)116を含む。これらのプリフィルタ112、ポストフィルタ116は連続時間型フィルタになっている。
そして本実施形態では、プリフィルタ112(広義には連続時間型フィルタ)に、温度変化や電圧変化などの環境変化による不要信号のオフセット変動分を除去する周波数特性(所望信号の振幅以下に減衰させる周波数特性)を持たせている。
即ち図18のようにフィルタ部110にSCF114を設けた場合、SCF114では離散時間で信号をサンプリングするため、サンプリングによる周波数の折り返し現象であるエイリアシングが生じる。例えばサンプリング周波数をfspとした場合に、fsp/2(=fd/2)の高調波周波数の信号が、DCの周波数領域等に折り返し、S/N比が劣化する。
このようなエイリアシングの悪影響を防止するために、図18では、SCF114の前段側にアンチエイリアシング用のプリフィルタ112を設けている。即ちサンプリング周波数をfsp(=fd)とした場合に、プリフィルタ112に、fsp/2(=fd/2)以上の周波数成分を除去するアンチエイリアシングの周波数特性を持たせている。
本実施形態では、このようなアンチエイリアシング用のプリフィルタ112の存在に着目し、このプリフィルタ112の有効活用を図っている。即ちアンチエイリアシング用のプリフィルタ112を、環境変化による不要信号のオフセット変動分を除去するフィルタとして兼用している。このようにすれば、不要信号のオフセット変動分を除去するフィルタを別に設ける必要がなくなる。従って、回路の小規模化を図れると共に、ノイズ源となる回路ブロックの数も減るため、S/N比を向上できる。
図19(A)〜図19(C)に、図9(B)のように初期オフセット電圧を除去した後の周波数スペクトラムの例を示す。図9(B)のようにオフセット電圧が正又は負の温度特性を有していると、初期オフセット電圧を除去したとしても、図19(A)に示すようにDCオフセットの不要信号のオフセット変動分が、DCの周波数帯域に現れる。また機械振動漏れの不要信号のオフセット変動分がfdの周波数帯域に現れる。
そして同期検波後は図19(B)に示すように、DCオフセットの不要信号のオフセット変動分はfdの周波数帯域に現れ、機械振動漏れの不要信号のオフセット変動分は2fdの周波数帯域に現れる。
即ち環境温度が25℃であれば、オフセット調整回路90によるオフセット調整を行うことにより、図19(A)のDC、fdの周波数帯域の不要信号の成分が除去されて、現れないようになる。
しかしながら、環境温度が25℃からずれると、温度変化によるこれらの不要信号のオフセット変動分が、DC、fdの周波数帯域に現れてくる。例えば温度変化により、機械振動漏れの不要信号の振幅が増加すると、その増加分が、同期検波前ではfdの周波数帯域に現れ、同期検波後では2fdの周波数帯域に現れる。このような不要信号のオフセット変動分については、ジャイロセンサの製造後の調整工程では除去することができず、ジャイロセンサの動作時に動的に調整して除去する必要がある。
またこのようなオフセット変動分が、同期検波後にDCの周波数帯域に現れたり、SCF114の離散サンプリングによりDC周波数帯域に折り返すと、感度調整回路80で調整した感度にもずれが生じる。即ち感度の温度変動分として現れるようになってしまう。
この場合、このようなオフセット変動分を除去するための特別な温度補償回路を検出装置30に内蔵させる手法も考えられる。
しかしながら、この手法によると、その温度補償回路を設けた分だけ回路が大規模化する。またノイズ源となる回路ブロックの数も増えるため、S/N比が劣化する。
この点、本実施形態では、元々、アンチエイリアシング用に必要なプリフィルタ112を有効活用して、図19(C)に示すように、これらの不要信号のオフセット変動分を除去している。従って、回路を小規模化できると共に、ノイズ源となる回路ブロックの数も減るため、S/N比を向上できる。
即ち、通常のアンチエイリアシング用プリフィルタの目的は下記(A1)の通りである。
(A1)ランダム雑音や回路中で発生するパルス性ノイズなどの不要信号が、SCFの通過帯域に折り返すのを防止する。
(A1)ランダム雑音や回路中で発生するパルス性ノイズなどの不要信号が、SCFの通過帯域に折り返すのを防止する。
これに対して本実施形態では、上記(A1)の役割に加えて、下記(A2)の役割をプリフィルタ112に持たせている。
(A2)同期検波によって生じ、fd、2fdなどのk×fdに必ず存在する不要信号のオフセット変動分が、SCF114でのサンプリングによりDCに折り返し、DCに存在する所望信号(コリオリ力信号)の品質(S/N比)を劣化させるのを防止する。
(A2)同期検波によって生じ、fd、2fdなどのk×fdに必ず存在する不要信号のオフセット変動分が、SCF114でのサンプリングによりDCに折り返し、DCに存在する所望信号(コリオリ力信号)の品質(S/N比)を劣化させるのを防止する。
上記(A2)は、ジャイロセンサに特有の下記(B1)〜(B3)の事情に起因する。(B1)ジャイロセンサでは同期検波が行われる。
(B2)同期検波によりfdや2fdに不要信号のオフセット変動分の強いスペクトラムが現れる。
(B3)SCFのサンプリング周波数がfsp=fdとなるため、fd、2fdなどの不要信号のオフセット変動分が、所望信号が存在するDCに折り返す。
(B2)同期検波によりfdや2fdに不要信号のオフセット変動分の強いスペクトラムが現れる。
(B3)SCFのサンプリング周波数がfsp=fdとなるため、fd、2fdなどの不要信号のオフセット変動分が、所望信号が存在するDCに折り返す。
即ち同期検波後にfd、2fdに現れる不要信号のオフセット変動分(図19(B)参照)は、所望信号の振幅に比べて大きい。
また、後述するようにシステム構成の簡素化のためには、SCF114のサンプリング周波数をfsp=fdとすることが望ましい。そしてfsp=fdにすると、SCF114でのサンプリングにより、fd、2fdの不要信号のオフセット変動分が、ぴったりとDCに折り返してしまう。
一方、同期検波前にfdに存在した所望信号(図19(A)参照)は、同期検波によりDCに現れる(図19(B)参照)。従って、何ら対策を施さないと、fd、2fdに存在する不要信号のオフセット変動分の折り返しにより、DCの所望信号の品質が極めて劣化する。具体的には、fd、2fdの不要信号のオフセット変動分が折り返して、所望信号の最小分解能よりも大きいオフセット変動分がDCに重畳されると、ジャイロセンサが静止状態であっても、あたかもジャイロセンサが一定の角速度で回転しているかのような偽情報を与えてしまう。
このような問題を解決するために本実施形態では、SCF114の前段にあるプリフィルタ112の存在に着目し、このプリフィルタ112に対して上記(A1)のみならず(A2)の役割を持たせている。
9.連続時間型フィルタの周波数特性
ジャイロセンサのように微少信号を扱うセンサでは、不要信号の振幅は所望信号の振幅に比べて非常に大きい。従って、温度変動により、機械振動漏れ等の不要信号の振幅が変動すると、不要信号の振幅変化分であるオフセット変動分も、所望信号の振幅(DC成分)に比べて非常に大きくなる。従って、プリフィルタ112の減衰度を適正に設定しないと、SCF114のサンプリングによるオフセット変動分のDC成分への折り返しにより、S/N比が劣化してしまうおそれがある。
ジャイロセンサのように微少信号を扱うセンサでは、不要信号の振幅は所望信号の振幅に比べて非常に大きい。従って、温度変動により、機械振動漏れ等の不要信号の振幅が変動すると、不要信号の振幅変化分であるオフセット変動分も、所望信号の振幅(DC成分)に比べて非常に大きくなる。従って、プリフィルタ112の減衰度を適正に設定しないと、SCF114のサンプリングによるオフセット変動分のDC成分への折り返しにより、S/N比が劣化してしまうおそれがある。
そこで本実施形態では、連続時間型フィルタであるプリフィルタ112に対して、同期検波回路100による同期検波により周波数k×fd(kは自然数)の周波数帯域に現れる不要信号のオフセット変動分を、所望信号(最小分解能)の振幅以下に減衰する周波数特性(フィルタ特性、減衰特性)を持たせている。例えば周波数fd、2fd、3fdの周波数帯域に現れる不要信号のオフセット変動分(図19(B)参照)を、所望信号の振幅以下に減衰する周波数特性を持たせている。ここで、所望信号の振幅は、所望信号の最小分解能に対応する振幅であり、本実施形態の検出装置の検出対象である角速度(単位dps:degree per second)に対応する振幅値である。また所望信号の振幅は、DCの周波数領域での所望信号の振幅である。
このようにすれば、所望信号に比べて非常に大きなオフセット変動分(不要信号の振幅変化分)が周波数k×fdに現れた場合にも、このオフセット変動分をプリフィルタ112により確実に除去できる。従って、SCF114でのサンプリングによるオフセット変動分のDC成分への折り返しにより、S/N比が劣化してしまう事態を防止できる。従って微少信号を扱うジャイロセンサに最適な検出装置を提供できる。
図20にプリフィルタ112の周波数特性を模式的に示す。図20のD1に示すように、プリフィルタ112はfsp/2(=fd/2)において十分な減衰特性を有する。従って、SCF114でのサンプリングによるランダム雑音(熱雑音、1/fノイズ等)の折り返しにより、S/N比が劣化してしまう事態を防止でき、プリフィルタ112に通常のアンチエイリアシング用フィルタとしての役割を持たせることができる。
またプリフィルタ112が1次のローパスフィルタである場合には、減衰傾度は−20dB/decとなる。そして所望信号(DC成分)の振幅(最小分解能)をA0とし、周波数k×fd(kは自然数)に現れる不要信号のオフセット変動分をΔAkとし、周波数fdでのフィルタの減衰率をaとしたとする。この場合に、プリフィルタ112には、ΔAk×(a/k)≦A0が成り立つように不要信号のオフセット変動分を減衰させる周波数特性を持たせればよい。
例えば図20のD2では、周波数fdに現れる不要信号のオフセット変動分はΔA1であり、周波数fdでのフィルタの減衰率(減衰度)はaである。従って、ΔA1×a≦A0が成り立つようにする。
また図20のD3では、周波数2fdに現れる不要信号のオフセット変動分はΔA2であり、周波数2fdでのフィルタの減衰率は、プリフィルタ112が1次であるため、a/k=a/2である。従って、ΔA2×(a/2)≦A0が成り立つようにする。
また図20には示していないが、周波数3fdに現れる不要信号のオフセット変動分はΔA3であり、周波数3fdでのフィルタの減衰率は、プリフィルタ112が1次であるため、a/k=a/3である。従って、ΔA3×(a/3)≦A0が成り立つようにする。
以上のような条件が成り立つようにすれば、プリフィルタ112が1次のローパスフィルタである場合に、周波数fd、2fd、3fdの周波数帯域に現れる不要信号のオフセット変動分を、所望信号の振幅以下に減衰できるようになる。
なおプリフィルタ112として2次のローパスフィルタを使用してもよい。プリフィルタ112が2次のローパスフィルタである場合には、減衰傾度は−40dB/decとなる。従って、この場合、プリフィルタ112には、ΔAk×(a/k2)≦A0が成り立つように不要信号のオフセット変動分を減衰させる周波数特性を持たせればよい。
例えば、周波数fdに現れる不要信号のオフセット変動分はΔA1であり、周波数fdでのフィルタの減衰率はaであるため、ΔA1×a≦A0が成り立つようにする。
また周波数2fdに現れる不要信号のオフセット変動分はΔA2であり、周波数2fdでのフィルタの減衰率は、プリフィルタ112が2次であるため、a/k2=a/4である。従って、ΔA2×(a/4)≦A0が成り立つようにする。
また周波数3fdに現れる不要信号のオフセット変動分はΔA3であり、周波数3fdでのフィルタの減衰率は、プリフィルタ112が2次であるため、a/k2=a/9である。従って、ΔA3×(a/9)≦A0が成り立つようにする。
以上のような条件が成り立つようにすれば、プリフィルタ112が2次のローパスフィルタである場合に、周波数fd、2fd、3fdの周波数帯域に現れる不要信号のオフセット変動分を、所望信号の振幅以下に減衰できるようになる。
図21(A)にプリフィルタ112の構成例を示す。図21(A)は1次のローパスフィルタの例である。プリフィルタ112は、ノードNI2とNI3の間に設けられる抵抗RI1及びキャパシタCI1と、ノードNI1とNI2の間に設けられる抵抗RI2を含む。また、その反転入力端子にノードNI2が接続され、その非反転入力端子にAGNDのノードが接続されるオペアンプOPIを含む。この図21(A)の回路は図18のポストフィルタ116としても用いることができる。
なおプリフィルタ112として2次のローパスフィルタを使用してもよい。図21(B)は2次のローパスフィルタの例である。図21(B)のローパスフィルタは、ノードNH2と、ノードNH4、NH3、NH1との間にそれぞれ設けられる抵抗RH1、RH2、RH3と、ノードNH3とNH4の間に設けられるキャパシタCH1と、ノードNH2とAGNDのノードの間に設けられるキャパシタCH2を含む。また、その反転入力端子にノードNH3が接続され、その非反転入力端子にAGNDのノードが接続されるオペアンプOPHを含む。
図21(A)の1次のローパスフィルタでは、キャパシタCI1の容量値をC1とし、抵抗RI1の抵抗値をR1とすると、カットオフ周波数はfc=1/(2π×C1×R1)である。また減衰傾度は−20dB/decである。従って、1次のローパスフィルタを用いる場合には、図22のG1に示すようにカットオフ周波数fcを十分に低くすることで、G2、G3に示すように周波数fd、2fdでの減衰度を小さくすることができる。従って、G7に示すような不要信号のオフセット変動分についても減衰することができ、このオフセット変動分がDCに折り返した場合にも、所望信号の最小分解能以下にすることが可能になる。
また図21(B)の2次のローパスフィルタでは、キャパシタCH1、CH2の容量値をC1、C2とし、抵抗RH1、RH2の抵抗値をR1、R2とすると、カットオフ周波数は、fc=1/{2π×(C1×C2×R1×R2)1/2}となる。また減衰傾度は−40dB/decである。このように2次のローパスフィルタは、素子数は多くなるもの、減衰傾度が大きい。従って、図22のG4に示すようにカットオフ周波数fcをそれほど小さくしなくても、G5、G6に示すように周波数fd、2fdにおいて十分な減衰度を得ることができる。従って、図21(A)の1次のローパスフィルタに比べて回路を小規模化することも可能になる。また、不要信号のオフセット変動分についても十分に減衰することができ、オフセット変動分を確実に除去できる。
10.離調周波数
不要信号のうち、離調周波数Δf=|fd−fs|に起因する不要信号は、センサ信号に検出側共振周波数fsの信号が混入し、このセンサ信号が同期検波回路100により同期検波されることにより発生する。例えばジャイロセンサの応答を良くするために、検出用振動子をアイドリング的に微少振幅で固有共振周波数fsにて振動させる場合がある。或いは、ジャイロセンサの外部からの外部振動が振動子に加わることで、検出用振動子が固有共振周波数fsにて振動してしまう場合がある。そしてこのように検出用振動子が周波数fsで振動すると、同期検波回路100に入力される信号VS5に周波数fsの信号が混入される。そして同期検波回路100は、周波数fdの参照信号RSに基づき同期検波を行うため、周波数fdとfsの差に相当する離調周波数Δf=|fd−fs|の不要信号が生成されてしまう。
不要信号のうち、離調周波数Δf=|fd−fs|に起因する不要信号は、センサ信号に検出側共振周波数fsの信号が混入し、このセンサ信号が同期検波回路100により同期検波されることにより発生する。例えばジャイロセンサの応答を良くするために、検出用振動子をアイドリング的に微少振幅で固有共振周波数fsにて振動させる場合がある。或いは、ジャイロセンサの外部からの外部振動が振動子に加わることで、検出用振動子が固有共振周波数fsにて振動してしまう場合がある。そしてこのように検出用振動子が周波数fsで振動すると、同期検波回路100に入力される信号VS5に周波数fsの信号が混入される。そして同期検波回路100は、周波数fdの参照信号RSに基づき同期検波を行うため、周波数fdとfsの差に相当する離調周波数Δf=|fd−fs|の不要信号が生成されてしまう。
例えば、混入される周波数fsの信号はDsin(ωs×t)と表すことができる。なおωs=2πfsである。そして同期検波は、センサ信号と駆動信号(参照信号)の乗算とみなすことができるため、センサ信号のうち周波数fsの信号については、
Csin(ωd×t)×Dsin(ωs×t)
={−(D×C)/2}×[cos{(ωd+ωs)t}−cos{(ωd−ωs)t}]
となる。上式から明らかなように、周波数fsの信号が混入されることにより、同期検波後に、離調周波数Δf=|fd−fs|の不要信号が生成されてしまう。
Csin(ωd×t)×Dsin(ωs×t)
={−(D×C)/2}×[cos{(ωd+ωs)t}−cos{(ωd−ωs)t}]
となる。上式から明らかなように、周波数fsの信号が混入されることにより、同期検波後に、離調周波数Δf=|fd−fs|の不要信号が生成されてしまう。
ここで、離調周波数Δf=|fd−fs|は、fd、fsに比べて十分に小さい。従って、この離調周波数Δfの成分の不要信号を除去するためには、図23に示すような急峻な減衰特性が必要になる。従って、従来のような連続時間型のローパスフィルタだけでは、このような離調周波数Δfの成分の不要信号の除去が難しいという課題がある。
このような課題を解決するために、図18では、フィルタ部110に、離散時間型フィルタであるSCF114を設けている。このSCF114は、振動子の駆動側共振周波数fdと検出側共振周波数fsとの差に対応する離調周波数Δf=|fd−fs|の成分を除去し、所望信号の周波数成分(DC成分)を通過させる周波数特性を有する。
図18に示すように、フィルタ部110に、SCF114(広義には離散時間型フィルタ)を設ければ、図23に示すような急峻な減衰特性の実現も容易になる。従って、離調周波数Δfが、周波数fdに比べて極めて小さい場合にも、離調周波数Δfの周波数帯の不要信号の成分を、通過帯域の所望信号に悪影響を与えることなく、確実且つ容易に除去できる。
また連続時間型フィルタでは、フィルタを構成するキャパシタの容量値C、抵抗の抵抗値Rがばらつくと、フィルタの周波数特性もばらついてしまい、安定した周波数特性を得ることが難しいという不利点がある。例えばC、Rの絶対値は±20パーセント程度ばらつき、連続時間型フィルタ(RCフィルタ)のカットオフ周波数はC×Rで決まるため、ばらつきが大きくなる。そしてカットオフ周波数がばらつくと、通過帯域にある所望信号の振幅減衰や位相変化を生じ、信号品質が劣化する。
これに対してSCF114では、容量比やサンプリング周波数(クロック周波数)によりフィルタ特性を決めることができる。例えば容量比の精度は0.1パーセント以下であるため、カットオフ周波数のばらつきも少ない。従って、SCF114によれば、通過帯域の所望信号を通過させながら離調周波数Δfの不要信号を確実に除去するという急峻な減衰特性を、容易に実現できる。
さて、本実施形態では、SCF114を、参照信号RSに応じたクロック(参照信号そのもの、或いは参照信号により生成されたクロック。参照信号と同じ周波数のクロック)に基づき動作させている。具体的には、例えば参照信号RSにより、互いにノン・オーバラップの2相のクロック(サンプリングクロック)を生成する。そして生成されたクロックに基づきSCF114が含むスイッチング素子をオン・オフ制御して、SCF114を動作させる。
このようにすれば、参照信号RSを有効活用して、SCF114の動作クロックを生成できるため、回路の小規模化を図れる。また参照信号RSの周波数fdと、SCF114のサンプリング周波数(クロック周波数)を一致させることができるため、フィルタの周波数特性の設計を容易化できる。また駆動側共振周波数であるfdが、環境変化(温度変化)や経時変化によって変動した場合に、この変動に応じてSCF114のサンプリング周波数も変動するようになる。従って、周波数fdの変化に応じて、SCF114のカットオフ周波数も変化させて調整できるようになる。従って、環境変化や経時変化が生じた場合にも、離調周波数fdの不要信号を確実に除去することが可能になる。
以上のように本実施形態では、離調周波数fdの不要信号については、SCF114で除去しつつ、同期検波によりfd、2fd、3fd等に現れる不要信号のオフセット変動分については、SCF114のアンチエイリアシング用に設けられたプリフィルタ112により除去するというように、各フィルタ毎に異なる役割分担を持たせている。即ち離調周波数による不要信号のように急峻な減衰特性が必要な不要信号については、SCF114で除去し、不要信号のオフセット変動分については、プリフィルタ112で除去する。このように役割分担を明確化することにより、小規模な回路で不要信号の効率的な除去が可能になる。
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語(離散時間型フィルタ、連続時間型フィルタ、環境変化等)と共に記載された用語(SCF、プリフィルタ、温度変化等)は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また振動子の構造、検出装置やジャイロセンサや電子機器の構成も、本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。また離散時間型フィルタをSCF以外のフィルタ(例えばデジタルフィルタ等)で実現することも可能である。また検出回路に同期検波回路やフィルタ部を設けずに、他の構成により振動子からの信号の検出処理を実現してもよい。
10 振動子、30 検出装置、40 駆動回路、42 I/V変換回路、
44 AGC回路、46 2値化回路、60 検出回路、70 増幅回路、
72、74 Q/V(I/V)変換回路、76 差動増幅回路、
78 オフセット調整回路、79 デコーダ、80 感度調整回路、
100 同期検波回路、110 フィルタ部、112 プリフィルタ、
114 SCF、116 ポストフィルタ、500 電子機器、
510 ジャイロセンサ、520 処理部、530 メモリ、540 操作部、
550 表示部
44 AGC回路、46 2値化回路、60 検出回路、70 増幅回路、
72、74 Q/V(I/V)変換回路、76 差動増幅回路、
78 オフセット調整回路、79 デコーダ、80 感度調整回路、
100 同期検波回路、110 フィルタ部、112 プリフィルタ、
114 SCF、116 ポストフィルタ、500 電子機器、
510 ジャイロセンサ、520 処理部、530 メモリ、540 操作部、
550 表示部
Claims (13)
- 振動子を駆動して振動子を励振させる駆動回路と、
振動子からの出力信号を受け、所望信号を検出する検出回路とを含み、
前記検出回路は、
振動子からの前記出力信号を増幅する増幅回路を含み、
前記増幅回路は、
前記出力信号に対応する差動信号の差動増幅を行う差動増幅回路と、
前記差動増幅回路が有する少なくとも1つの抵抗の抵抗値を可変に制御することで、オフセット調整を行うオフセット調整回路を含み、
前記差動増幅回路は、
前記差動信号を構成する第1の信号が入力される第1の入力ノードと第1のノードの間に設けられる第1の抵抗と、
前記第1のノードと出力ノードの間に設けられる第2の抵抗と、
前記差動信号を構成する第2の信号が入力される第2の入力ノードと第2のノードとの間に設けられる第3の抵抗と、
前記第2のノードと第1の電源電圧のノードの間に設けられる第4の抵抗と、
その反転入力端子が前記第1のノードに接続され、その非反転入力端子が前記第2のノードに接続され、その出力端子が前記出力ノードに接続されるオペアンプを含み、
前記オフセット調整回路は、
前記第1、第3の抵抗の少なくとも一方の抵抗値を可変に制御することにより、前記差動信号を構成する第1、第2の信号にそれぞれ重畳される第1、第2の不要信号の少なくとも一方を増幅して、オフセット調整を行うことを特徴とする検出装置。 - 請求項1において、
ゲインを可変に制御して感度調整を行う感度調整回路を含み、
前記感度調整回路は、
前記オフセット調整回路によるオフセット調整により設定された検出装置のゲインを調整することで、感度調整を行うことを特徴とする検出装置。 - 請求項2において、
参照信号に基づいて同期検波を行う同期検波回路を含み、
前記感度調整回路は、
前記同期検波回路の前段側に設けられていることを特徴とする検出装置。 - 請求項3において、
前記感度調整回路は、
可変ゲインアンプとして動作すると共にハイパスフィルタとして動作することを特徴とする検出装置。 - 請求項4において、
アクティブフィルタである前記ハイパスフィルタと前記可変ゲインアンプとで、オペアンプが共用されることを特徴とする検出装置。 - 請求項1乃至5のいずれかにおいて、
参照信号に基づいて同期検波を行う同期検波回路と、
同期検波後の信号のフィルタ処理を行うフィルタ部を含み、
前記オフセット調整回路は、
検出装置の出力信号の初期オフセット電圧を除去するためのオフセット調整を行い、
前記フィルタ部は、
離散時間型フィルタと、
前記離散時間型フィルタの前段側に設けられた連続時間型フィルタを含み、
前記連続時間型フィルタは、
環境変化による不要信号のオフセット変動分を除去する周波数特性を有することを特徴とする検出装置。 - 請求項6において、
前記連続時間型フィルタは、
前記同期検波回路による同期検波により周波数k×fd(kは自然数)の周波数帯域に現れる不要信号のオフセット変動分を、所望信号の振幅以下に減衰する周波数特性を有することを特徴とする検出装置。 - 請求項7において、
前記連続時間型フィルタは、1次のローパスフィルタであり、
所望信号の振幅をA0とし、周波数k×fdに現れる不要信号のオフセット変動分をΔAkとし、周波数fdでのフィルタの減衰率をaとした場合に、
前記連続時間型フィルタは、
ΔAk×(a/k)≦A0が成り立つように不要信号のオフセット変動分を減衰させる周波数特性を有することを特徴とする検出装置。 - 請求項7において、
前記連続時間型フィルタは、2次のローパスフィルタであり、
所望信号の振幅をA0とし、周波数k×fdに現れる不要信号のオフセット変動分をΔAkとし、周波数fdでのフィルタの減衰率をaとした場合に、
前記連続時間型フィルタは、
ΔAk×(a/k2)≦A0が成り立つように不要信号のオフセット変動分を減衰させる周波数特性を有することを特徴とする検出装置。 - 請求項6乃至9のいずれかにおいて、
前記離散時間型フィルタは、
振動子の駆動側共振周波数fdと検出側共振周波数fsとの差に対応する離調周波数Δf=|fd−fs|の成分を除去し、所望信号の周波数成分を通過させる周波数特性を有することを特徴とする検出装置。 - 請求項1乃至10のいずれかに記載の検出装置と、
前記振動子と、
を含むことを特徴とするジャイロセンサ。 - 請求項11に記載のジャイロセンサと、
前記ジャイロセンサにより検出された角速度情報に基づいて処理を行う処理部と、
を含むことを特徴とする電子機器。 - 請求項1乃至10のいずれかに記載の検出装置の調整方法であって、
前記検出装置の出力信号をモニタし、
前記差動増幅回路が有する少なくとも1つの前記抵抗の抵抗値を制御して、検出装置のオフセット調整を行い、
前記オフセット調整の後に前記検出装置の出力信号をモニタし、
オフセット調整後にモニタされた前記検出装置の出力信号に基づいて、前記検出装置の感度を基準値に一致させる感度調整を行うことを特徴とする調整方法。
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