JP2012162740A - 透明複合体およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】無機酸化物微粒子の表面を、アクリル変性ポリビニルアルコールにより修飾することにより、屈折率および機械的特性の向上と共に透明性維持を可能とする透明複合体およびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の透明複合体は、樹脂中に、アクリル変性ポリビニルアルコールにより表面が修飾され、平均分散粒径が1nm以上かつ20nm以下の無機酸化物微粒子を分散してなり、前記表面の修飾部分の重量比は、前記無機酸化物微粒子の20重量%以上かつ80重量%未満であることを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は透明複合体およびその製造方法に関し、さらに詳しくは、樹脂のフィラー材として好適に用いられ、屈折率および機械的特性の向上と共に透明性維持を可能とする無機酸化物透明分散液の樹脂への相溶性を向上することにより複合一体化してなり、ガラスに代替可能な透明複合体、および、この透明複合体の製造方法に関するものである。
従来、シリカなどの無機酸化物をフィラーとして樹脂と複合化することにより、樹脂の機械的特性などを向上させる試みがなされている。このフィラーと樹脂とを複合化する方法としては、無機酸化物を水および/または有機溶媒中に分散させた分散液と樹脂とを混合する方法が一般的であり、分散液と樹脂を種々の方法により混合することにより、無機酸化物粒子が第2相として複合化された無機酸化物粒子複合化プラスチック材料を作製することができる。
一方、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(EL)などのフラットパネルディスプレイ(FPD)用基板としては、従来、ガラス基板が多く用いられてきたが、このガラス基板には、割れ易い、曲げられない、比重が大きく軽量化に不向きなどの問題がある。そこで、ガラス基板の代わりとして、柔軟性を有するプラスチック基板を用いる試みが数多く行われるようになってきた。
フラットパネルディスプレイ(FPD)用としてのプラスチック基板に対する要求特性としては、透明性、屈折率、機械的特性などが挙げられている。
また、プラスチックの屈折率を向上させるための無機酸化物フィラーとしては、ジルコニア、チタニアなどの酸化物微粒子が高屈折率フィラーとして利用されている。
また、無機酸化物フィラーを樹脂と複合化するために、水系溶媒や有機溶媒中に無機酸化物フィラーを分散させた分散液が開発され、樹脂の屈折率の向上について検討されている。
この複合化の例としては、粒径10〜100nmのジルコニア粒子と樹脂とを複合化したジルコニア粒子複合化プラスチックを用いた高屈折率かつ高透明性の厚み数ミクロンの膜が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2005−161111号公報
ところで、従来の無機酸化物粒子複合化プラスチックを用いた基板の透明性を評価する場合、基板の厚みを光路長とし、この光路長における可視光線の透過率が測定されている。したがって、基板の厚みが厚いと、その透明性を維持するのが困難になる。
例えば、上述した従来のジルコニア粒子複合化プラスチック膜の場合、厚みを数μmとすることにより高屈折率、高透明性を確保したものであるから、厚みが数十μm、あるいはそれ以上になると、透明性を維持するのが困難になる。
このように、ジルコニア粒子複合化プラスチック膜については検討されているものの、ジルコニア粒子複合化プラスチックをバルク体とした場合、そのバルク体の屈折率や透明性については検討されていないのが現状である。
また、ジルコニア粒子などの金属酸化物粒子を疎水性の樹脂と複合化しようとすると、この金属酸化物粒子の表面は親水性であるため、金属酸化物粒子と樹脂が分離するか、あるいは、金属酸化物粒子と樹脂が分離しないものの、濁って失透するなどの不具合が発生するおそれがあった。したがって、樹脂の透明性を維持したまま、金属酸化物粒子と樹脂を複合化することは困難であった。
そこで、一般的な解決法として、金属酸化物粒子の表面を疎水化するために、有機高分子分散剤などの表面修飾剤を金属酸化物粒子の表面に付与することにより、金属酸化物粒子と樹脂との相溶性を高める工夫がなされている。しかしながら、金属酸化物粒子が樹脂と相溶するまで、その表面を疎水化することは難しく、また、無機酸化物粒子の粒径が20nm以上と大きいために透明性が低下し、場合によっては透明でなくなるという問題があった。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、無機酸化物微粒子の表面を、アクリル変性ポリビニルアルコールにより修飾することにより、屈折率および機械的特性の向上と共に透明性維持を可能とする透明複合体およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、平均分散粒径が1nm以上かつ20nm以下の無機酸化物微粒子の表面を、アクリル変性ポリビニルアルコールにより修飾し、この表面が修飾された無機酸化物微粒子を分散液中に分散させて無機酸化物透明分散液とすれば、樹脂と複合化した場合において、複合体の透明性を維持しながら、屈折率、機械的特性の向上が可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の透明複合体は、樹脂中に、アクリル変性ポリビニルアルコールにより表面が修飾され、平均分散粒径が1nm以上かつ20nm以下の無機酸化物微粒子を分散してなり、前記表面の修飾部分の重量比は、前記無機酸化物微粒子の20重量%以上かつ80重量%未満であることを特徴とする。
前記樹脂は、アクリル樹脂、エポキシ樹脂または変性シリコーン樹脂であることが好ましい。
前記無機酸化物粒子の含有率は、1重量%以上かつ90重量%以下であることが好ましい。
本発明の透明複合体の製造方法は、アクリル変性ポリビニルアルコールにより表面が修飾され、平均分散粒径が1nm以上かつ20nm以下の無機酸化物微粒子を含有してなり、前記表面の修飾部分の重量比は、前記無機酸化物微粒子の20重量%以上かつ80重量%未満である無機酸化物透明分散液と、樹脂とを混合し、得られた混合物から分散媒を除去した後、成形もしくは充填し、次いで、この成形体もしくは充填物を硬化することを特徴とする。
本発明の透明複合体によれば、樹脂中に、アクリル変性ポリビニルアルコールにより表面が修飾され、平均分散粒径が1nm以上かつ20nm以下の無機酸化物微粒子を分散してなり、前記表面の修飾部分の重量比を、前記無機酸化物微粒子の20重量%以上かつ80重量%未満としたので、屈折率、透明性および機械的特性を高めることができる。
本発明の透明複合体の製造方法によれば、アクリル変性ポリビニルアルコールにより表面が修飾され、平均分散粒径が1nm以上かつ20nm以下の無機酸化物微粒子を含有してなり、前記表面の修飾部分の重量比は、前記無機酸化物微粒子の20重量%以上かつ80重量%未満である無機酸化物透明分散液と、樹脂とを混合し、得られた混合物から分散媒を除去した後、成形もしくは充填し、次いで、この成形体もしくは充填物を硬化するので、屈折率が高く、透明性に優れ、しかも機械的特性が向上した透明複合体を容易かつ安価に作製することができる。
本発明の透明複合体およびその製造方法を実施するための形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
「無機酸化物透明分散液」
本発明の透明複合体を製造する際に用いられる無機酸化物透明分散液は、樹脂中に無機酸化物微粒子を分散させるために用いられる無機酸化物透明分散液であって、相溶(均一分散)を目的とするアクリル変性ポリビニルアルコールにより表面が修飾され、平均分散粒径が1nm以上かつ20nm以下の無機酸化物微粒子と、分散媒とを含む分散液である。
無機酸化物微粒子としては、特に限定されないが、ジルコニア(Zr)、チタン(Ti)、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、イットリウム(Y)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、インジウム(In)、スズ(Sn)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、セリウム(Ce)、アンチモン(Sb)、ゲルマニウム(Ge)などの元素の酸化物からなる微粒子が用いられる。
これらの元素の酸化物としては、例えば、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化チタン(TiO)、酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化鉄(Fe、FeO、Fe)、酸化銅(CuO、CuO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化イットリウム(Y)、酸化ニオブ(Nb)、酸化モリブデン(MoO)、酸化インジウム(In、InO)、酸化スズ(SnO)、酸化タンタル(Ta)、酸化タングステン(WO、W)、酸化鉛(PbO、PbO)、酸化ビスマス(Bi)、酸化セリウム(CeO、Ce)、酸化アンチモン(Sb)酸化ゲルマニウム(GeO、GeO)などが挙げられる。
特に、樹脂との相溶性を高める酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化チタン(TiO)が好ましい。
アクリル変性ポリビニルアルコールとしては、中京油脂社製のO−106、O−391などが用いられる。
上記のアクリル変性ポリビニルアルコールを用いて無機酸化物微粒子の表面を修飾する方法としては、湿式法、乾式法などが挙げられる。
湿式法とは、アクリル変性ポリビニルアルコールと無機酸化物微粒子を溶媒に投入し混合することにより、無機酸化物微粒子の表面を修飾する方法である。
乾式法とは、アクリル変性ポリビニルアルコールと乾燥した無機酸化物微粒子をミキサーなどの乾式混合機に投入し混合することにより、無機酸化物微粒子の表面を修飾する方法である。
この表面が修飾された無機酸化物微粒子の修飾部分の重量比は、無機酸化物微粒子全体量の5重量%以上かつ200重量%以下であることが好ましく、より好ましくは10重量%以上かつ100重量%以下、さらに好ましくは20重量%以上かつ100重量%以下である。
ここで、修飾部分の重量比を5重量%以上かつ200重量%以下と限定した理由は、修飾部分の重量比が5重量%未満であると、無機酸化物微粒子の樹脂への相溶が困難となり、樹脂との複合化の際に透明性が失われるからであり、一方、修飾部分の重量比が200重量%を超えると、アクリル変性ポリビニルアルコールが樹脂特性へ及ぼす影響が大きくなり、屈折率などの複合体特性が低下するからである。
また、無機酸化物微粒子の平均分散粒径を1nm以上かつ20nm以下と限定した理由は、平均分散粒径が1nm未満であると、結晶性が乏しくなり、屈折率などの粒子特性を発現することが難しくなるからであり、一方、無機酸化物微粒子の平均分散粒径が20nmを超えると、分散液や透明複合体とした場合に透明性が低下するからである。
このように、無機酸化物微粒子は、ナノサイズの粒子であるから、この無機酸化物微粒子を樹脂中に分散させて透明複合体とした場合においても、光散乱が小さく、複合体の透明性を維持することが可能である。
無機酸化物微粒子の含有率は、1重量%以上かつ80重量%以下が好ましく、より好ましくは1重量%以上かつ50重量%以下、さらに好ましくは5重量%以上かつ30重量%以下である。
ここで、無機酸化物微粒子の含有率を1重量%以上かつ80重量%以下と限定した理由は、この範囲は無機酸化物微粒子が良好な分散状態を取りうる範囲であり、含有率が1重量%未満であると、無機酸化物微粒子としての効果が低下し、また、80重量%を超えると、ゲル化や凝集沈澱が生じ、分散液としての特徴を消失するからである。
分散媒は、基本的には、水、有機溶媒、液状の樹脂モノマー、液状の樹脂オリゴマーのうち少なくとも1種以上を含有したものである。
上記の有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、オクタノールなどのアルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトンなどのエステル類;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類が好適に用いられ、これらの溶媒のうち1種または2種以上を用いることができる。
上記の液状の樹脂モノマーとしては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルなどのアクリル系またはメタクリル系のモノマー、エポキシ系モノマーなどが好適に用いられる。
また、上記の液状の樹脂オリゴマーとしては、ウレタンアクリレート系オリゴマー、エポキシアクリレート系オリゴマー、アクリレート系オリゴマーなどが好適に用いられる。
この無機酸化物透明分散液は、上記以外に、その特性を損なわない範囲において、他の無機酸化物粒子、樹脂モノマーなどを含有していてもよい。
上記以外の無機酸化物粒子としては、単斜晶または立方晶のジルコニア粒子、あるいはアンチモン添加酸化スズ(ATO)、スズ添加酸化インジウム(ITO)などの金属複合酸化物が挙げられる。
この無機酸化物透明分散液は、無機酸化物微粒子の含有率を5重量%とした場合、光路長を10mmとしたときの可視光透過率は90%以上が好ましく、より好ましくは95%以上である。
この可視光透過率は、無機酸化物微粒子の含有率により異なり、無機酸化物微粒子の含有率が1重量%では95%以上、無機酸化物微粒子の含有率が40重量%では80%以上である。
「透明複合体」
本発明の透明複合体は、樹脂中に、アクリル変性ポリビニルアルコールにより表面が修飾され、平均分散粒径が1nm以上かつ20nm以下の無機酸化物微粒子を分散した複合体である。
樹脂としては、可視光線あるいは近赤外線などの所定の波長帯域の光に対して透明性を有する樹脂であればよく、熱可塑性、熱硬化性、可視光線や紫外線や赤外線などによる光(電磁波)硬化性、電子線照射による電子線硬化性などの硬化性樹脂が好適に用いられる。
このような樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリシクロヘキシルメタクリレートなどのアクリル樹脂、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアリレート、ポリアクリル酸エステル、ポリアミド、フェノール−ホルムアルデヒド(フェノール樹脂)、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)、メチルメタクレート・スチレン共重合体(MS樹脂)、ポリ−4−メチルペンテン、ノルボルネン系ポリマー、ポリウレタン、エポキシ樹脂、変性シリコーン樹脂などが挙げられ、特に、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、変性シリコーン樹脂が好ましい。
アクリル樹脂としては、単官能アクリレートおよび/または多官能アクリレートが用いられ、これらのうち1種または2種以上が用いられる。
単官能アクリレートおよび多官能アクリレートそれぞれの具体例について次に挙げる。
(a)脂肪族単官能(メタ)アクリレートとしては、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート;メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキレングリコール(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどのN−置換アクリルアミドなどが挙げられる。
(b)脂肪族多官能(メタ)アクリレートとしては、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブタンジオールジ(メタ)アクリレートなどのアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレートなどのトリ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジ−トリメチロールプロパンテトラアクリレートなどのテトラ(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトール(モノヒドロキシ)ペンタアクリレートなどのペンタ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
(c)脂環式(メタ)アクリレートのうち、単官能型としては、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどが、また、多官能型としては、ジシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
(d)芳香族(メタ)アクリレートのうち、単官能型としては、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレートなどが、また、多官能型としては、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートなどのジアクリレート類、ビスフェノールFジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
(e)ポリウレタン(メタ)アクリレートとしては、ポリウレタンエーテル(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
(f)エポキシ(メタ)アクリレートとしては、ビスフェノールA型エポキシアクリレート、ノボラック型エポキシアクリレートなどが挙げられる。
アクリル樹脂のラジカル重合開始剤としては、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイドジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテートなどの過酸化物系重合開始剤、あるいは、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系重合開始剤が挙げられる。
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂などの2官能型のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリス・ヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂などの多官能型のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;テトラグリシジルジアミニジフェニルメタン型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂、アニリン型エポキシ樹脂、トルイジン型エポキシ樹脂などのグリシジルアミン型エポキシ樹脂などが好適に用いられる。
エポキシ樹脂の硬化剤としては、重付加型、触媒型、縮合型のいずれのタイプのものでも使用可能であり、例えば、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ポリアミド、ジシアンジアミド、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸などが挙げられる。
変性シリコーン樹脂としては、例えば、アルキル変性シリコーン、アルキル/アラルキル変性シリコーン、アルキル/ポリエーテル変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、高級脂肪酸エステル変性シリコーン、フルオロアルキル変性シリコーン、アクリル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、アルコール変性シリコーンの変性シリコーン樹脂などが挙げられる。
また、上記のアクリル樹脂、エポキシ樹脂、変性シリコーン樹脂などに対しては、その特性を損なわない範囲において、酸化防止剤、離型剤、カップリング剤、無機充填剤などを添加してもよい。
この透明複合体では、無機酸化物微粒子の含有率は、1重量%以上かつ90重量%以下が好ましく、より好ましくは10重量%以上かつ80重量%以下、さらに好ましくは10重量%以上かつ50重量%以下である。
ここで、無機酸化物微粒子の含有率を1重量%以上かつ90重量%以下と限定した理由は、下限値の1重量%は屈折率および機械的特性の向上が可能となる添加率の最小値であるからであり、一方、上限値の90重量%は樹脂自体の特性(柔軟性、比重)を維持することができる添加率の最大値であるからである。
この透明複合体では、無機酸化物微粒子の含有率を25重量%とした場合、光路長を1mmとしたときの可視光透過率は90%以上が好ましく、より好ましくは92%以上である。
この可視光透過率は、透明複合体における無機酸化物微粒子の含有率により異なり、無機酸化物微粒子の含有率が1重量%では95%以上、無機酸化物微粒子の含有率が40重量%では80%以上である。
無機酸化物微粒子の中でも、正方晶ジルコニア粒子の屈折率は2.15であるから、この正方晶ジルコニア粒子を樹脂中に分散させることにより、アクリル樹脂、シリコーン樹脂の屈折率1.4程度、エポキシ樹脂の屈折率1.5程度と比べて、樹脂の屈折率をそれ以上に向上させることが可能である。
また、正方晶ジルコニア粒子は、ナノサイズの粒子であるから、樹脂と複合化させた場合においても、光散乱が小さく、複合材料の透明性を維持することが可能である。
「透明複合体の製造方法」
本発明の透明複合体は、次に挙げる方法により作製することができる。
まず、上述した本発明の無機酸化物透明分散液と、樹脂のモノマーやオリゴマーを、ミキサーなどを用いて混合し、流動し易い状態の樹脂組成物とする。
次いで、この樹脂組成物を、金型を用いて成形、または、金型あるいは容器内に充填し、次いで、この成形体もしくは充填物に加熱、あるいは紫外線や赤外線などの照射を施し、この成形体もしくは充填物を硬化させる。
ここで、樹脂のモノマーやオリゴマーが、反応性を有する炭素二重結合(C=C)を有する場合、単に混合するだけでも、重合・樹脂化させることができる。
特に、アクリル樹脂などの紫外線(UV)硬化性樹脂を含む樹脂組成物を硬化させる方法としては、様々な方法があるが、代表的には、加熱または光照射により開始されるラジカル重合反応を用いたモールド成形法、トランスファー成形法などが挙げられる。このラジカル重合反応としては、熱による重合反応(熱重合)、紫外線などの光による重合反応(光重合)、ガンマ(γ)線による重合反応、あるいは、これらの複数を組み合わせた方法などが挙げられる。
「発光素子装置用光学シート」
本発明の無機酸化物透明分散液を用い、上記の無機酸化物微粒子を上記の樹脂中に分散して、発光素子装置用光学シートを形成することができる。
「光学シート」
少なくとも光透過領域を、上記の発光素子装置用光学シートにより形成して、光学シートを形成することができる。このような光学シートとしては、プリズムシートなどが挙げられる。
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[ジルコニア透明分散液の調製]
「実施例1」
オキシ塩化ジルコニウム8水塩2615gを純水40L(リットル)に溶解させたジルコニウム塩溶液に、28%アンモニア水344gを純水20Lに溶解させた希アンモニア水を攪拌しながら加え、ジルコニア前駆体スラリーを調製した。
次いで、このスラリーに、硫酸ナトリウム300gを5Lの純水に溶解させた硫酸ナトリウム水溶液を攪拌しながら加えた。このときの硫酸ナトリウムの添加量は、ジルコニウム塩溶液中のジルコニウムイオンのジルコニア換算値に対して30重量%であった。
次いで、この混合物を、乾燥器を用いて、大気中、130℃にて24時間、乾燥させ、固形物を得た。
次いで、この固形物を自動乳鉢により粉砕した後、電気炉を用いて、大気中、500℃にて1時間焼成した。
次いで、この焼成物を純水中に投入し、攪拌してスラリー状とした後、遠心分離機を用いて洗浄を行い、添加した硫酸ナトリウムを十分に除去した後、乾燥器にて乾燥させ、ジルコニア粒子を調製した。
次いで、このジルコニア粒子20gに、水72g、表面修飾剤としてアクリル変性ポリビニルアルコール(O−106、中京油脂社製)8gを加えて混合し、凍結乾燥して、ジルコニア粒子の表面をアクリル変性ポリビニルアルコールにより修飾した。
その後、この表面修飾ジルコニア粒子20gに、メタノール80gを加えて混合し、実施例1のジルコニア透明分散液(Z1)を調製した。
「比較例1」
表面修飾剤としてアクリル変性ポリビニルアルコール(O−106、中京油脂社製)16g加えて混合する以外は実施例1と同様にして、比較例1のジルコニア透明分散液(Z2)を調製した。
「比較例2」
表面修飾剤としてアクリル変性ポリビニルアルコール(O−106、中京油脂社製)2g加えて混合する以外は実施例1と同様にして、比較例2のジルコニア透明分散液(Z3)を調製した。
「比較例3」
表面修飾剤を加えない以外は実施例1と同様にして、比較例3のジルコニア透明分散液(Z4)を調製した。
[ジルコニア透明分散液の評価]
実施例1および比較例1〜3のジルコニア透明分散液のジルコニア粒子について、表面処理量、平均分散粒径および分散液の可視光透過率を測定した。
表面処理量は、それぞれ150℃と750℃の2水準の温度で加熱した場合の重量減少から測定した。
平均分散粒径は、動的光散乱式粒径分布測定装置(Malvern社製)を用い、ジルコニア透明分散液中のジルコニア粒子の含有量を1重量%に調製したものを測定用試料とした。また、データ解析条件としては、粒子径基準を体積基準とし、分散粒子であるジルコニアの屈折率を2.15、分散媒であるエタノールの屈折率を1.36とした。
また、分散液の可視光透過率は、上記の分散液のジルコニア含有率を、エタノールを用いて5重量%に調製した試料を石英セル(10mm×10mm)に入れ、この試料の光路長10mmとしたときの可視光透過率を、分光光度計(日本分光社製)を用いて測定した。ここでは、透過率が80%以上を「○」、80%未満を「×」とした。
これらの測定結果を表1に示す。
Figure 2012162740
[透明複合体の調製]
「実施例2」
実施例1のジルコニア透明分散液(Z1)100gに、エポキシレジン(エピコート828、ジャパンエポキシレジン社製)7g、硬化剤(エピキュア3080、ジャパンエポキシレジン社製)3gを加え、真空乾燥により溶媒を除去し、樹脂組成物を調製した。
次いで、この樹脂組成物を、ガラス板で組み上げた型の中に厚みが1mmになるように流し込み、80℃にて30分間加熱して硬化させ、実施例2の透明複合体(S1)を得た。
この透明複合体(S1)のジルコニアの含有率は48重量%であった。
「実施例3」
実施例1のジルコニア透明分散液(Z1)100gに、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート5g、ペンタエリスリトールトリアクリレート2.5g、ペンタエリスリトールテトラアクリレート2g、重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド0.5gを加え、真空乾燥により溶媒を除去し、樹脂組成物を調製した。
次いで、この樹脂組成物を、ガラス板で組み上げた型の中に厚みが1mmになるように流し込み、60℃にて5時間、続いて120℃にて2時間加熱して硬化させ、実施例3の透明複合体(S2)を作製した。
この透明複合体(S2)のジルコニアの含有率は48重量%であった。
「実施例4」
実施例1のジルコニア透明分散液(Z1)100gに、アクリル変性シリコーン10gを加え、減圧下、常温にて溶媒を除去し、樹脂組成物を調製した。
次いで、この樹脂組成物を、ガラス板で組み上げた型の中に厚みが1mmになるように流し込み、100℃にて1時間加熱して硬化させ、実施例4の透明複合体(S3)を作製した。
この透明複合体(S3)のジルコニア含有率は48重量%であった。
「比較例4」
比較例1のジルコニア分散液(Z2)100gを使用した以外は実施例2と同様にして、比較例4の透明複合体(S4)を作製した。
この透明複合体(S4)のジルコニアの含有率は37重量%であった。
「比較例5」
比較例1のジルコニア分散液(Z2)100gを使用した以外は実施例3と同様にして、比較例5の透明複合体(S5)を作製した。
この透明複合体(S5)のジルコニアの含有率は37重量%であった。
「比較例6」
比較例1のジルコニア分散液(Z2)100gを使用した以外は実施例4と同様にして、比較例6の透明複合体(S6)を作製した。
この透明複合体(S6)のジルコニアの含有率は37重量%であった。
「比較例7」
比較例2のジルコニア分散液(Z3)100gを使用した以外は実施例2と同様にして、比較例7の透明複合体(S7)を作製した。
この透明複合体(S7)のジルコニアの含有率は61重量%であった。
「比較例8」
比較例2のジルコニア分散液(Z3)100gを使用した以外は実施例3と同様にして、比較例8の透明複合体(S8)を作製した。
この透明複合体(S8)のジルコニアの含有率は61重量%であった。
「比較例9」
比較例2のジルコニア分散液(Z3)100gを使用した以外は実施例4と同様にして、比較例9の透明複合体(S9)を作製した。
この透明複合体(S9)のジルコニアの含有率は61重量%であった。
[透明複合体の評価]
実施例2〜4および比較例4〜9の透明複合体について、可視光透過率および屈折率について、下記の装置または方法により評価を行った。
(1)可視光透過率
分光光度計(V−570、日本分光社製)を用いて可視光線の透過率を測定した。
ここでは、測定用試料を100×100×1mmの大きさのバルク体とし、透過率が80%以上を「○」、80%未満を「×」とした。
この測定結果を表2に示す。
(2)屈折率
日本工業規格:JIS K 7142「プラスチックの屈折率測定方法」に準拠し、アッベ屈折計により測定した。
ここでは、ジルコニアを添加していない樹脂を基準として、屈折率が0.05以上向上した場合を「○」、屈折率が0.05未満しか向上しなかった場合を「×」とした。
この測定結果を表2に示す。
Figure 2012162740
これらの評価結果によれば、実施例2〜4では、可視光透過率、屈折率ともに良好であることが分かった。
一方、比較例4〜6では、屈折率が実施例2〜4と比べて劣っていた。また、比較例7〜9では、可視光透過率が実施例2〜4と比べて劣っていた。
本発明の無機酸化物透明分散液は、樹脂中に無機酸化物微粒子を分散させるために用いられる無機酸化物透明分散液であって、アクリル変性ポリビニルアルコールにより表面が修飾され、平均分散粒径が1nm以上かつ20nm以下の無機酸化物微粒子を含有したことにより、この無機酸化物微粒子および樹脂を含む透明複合体の屈折率および機械的特性の向上と共に透明性の維持を図ることができるものであるから、液晶表示装置用基板、有機EL表示装置用基板、カラーフィルタ用基板、タッチパネル用基板、太陽電池用基板などの光学シート、半導体レーザ(LED)の封止材、透明板、光学レンズ、光学素子、光導波路などはもちろんのこと、これ以外の様々な工業分野においても、その効果は大である。

Claims (4)

  1. 樹脂中に、アクリル変性ポリビニルアルコールにより表面が修飾され、平均分散粒径が1nm以上かつ20nm以下の無機酸化物微粒子を分散してなり、前記表面の修飾部分の重量比は、前記無機酸化物微粒子の20重量%以上かつ80重量%未満であることを特徴とする透明複合体。
  2. 前記樹脂は、アクリル樹脂、エポキシ樹脂または変性シリコーン樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の透明複合体。
  3. 前記無機酸化物粒子の含有率は、1重量%以上かつ90重量%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の透明複合体。
  4. アクリル変性ポリビニルアルコールにより表面が修飾され、平均分散粒径が1nm以上かつ20nm以下の無機酸化物微粒子を含有してなり、前記表面の修飾部分の重量比は、前記無機酸化物微粒子の20重量%以上かつ80重量%未満である無機酸化物透明分散液と、樹脂とを混合し、得られた混合物から分散媒を除去した後、成形もしくは充填し、次いで、この成形体もしくは充填物を硬化することを特徴とする透明複合体の製造方法。
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