JP2012124055A - 金属電極基板の保護膜形成に用いるコーティング組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】電解質に対する耐性に優れているばかりか、逆電子防止性にも優れた保護膜を電極基板、多孔質光電変換層が形成される金属電極基板の表面に形成することが可能な保護膜形成用のコーティング組成物を提供する。
【解決手段】色素増感型太陽電池における金属電極基板の保護膜の形成に使用されるコーティング組成物であって、チタンアルコキシド、チタネート重合体、エチレングリコールモノブチルエーテル及び有機溶媒を含むことを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、色素増感型太陽電池における電極基板、特に金属電極基板の保護膜の形成に使用されるコーティング組成物に関する。
現在、地球規模の環境問題や化石エネルギー資源枯渇問題などの観点から太陽光発電に対する期待が大きく、単結晶及び多結晶シリコン光電変換素子を用いた太陽電池が実用化されている。しかし、この種の太陽電池は、高価格であること、シリコン原料の供給問題などを有しており、シリコン以外の材料を用いた太陽電池の実用化が望まれている。
上記のような見地から、最近では、シリコン以外の光電変換素子を用いた太陽電池として、色素増感型太陽電池が注目されている。この色素増感型太陽電池の代表的なものとして、ガラス基板や透明プラスチック基板の表面にITO等の透明導電膜を設けた透明電極基板と、金属電極基板とが、色素で増感された多孔質光電変換層(半導体多孔質層)と電解質層とを間に挟んで対峙した構造を有しており、金属電極基板と透明電極基板との周縁部分は、電解質層が漏洩しないように、封止材で封止されている。即ち、多孔質光電変換層と電解質層とを間に挟んで金属電極基板と透明電極基板とが対峙している領域が発電領域となっており、封止材で封止されている領域が発電とは無関係の封止領域となっている。この多孔質光電変換層は、一般に透明電極基板上に設けられているが、金属電極基板上に設けることもできる(特許文献1参照)。
上記のような構造の色素増感型太陽電池では、透明電極基板側から可視光を照射すると、色素増感多孔質層中の色素が励起され、基底状態から励起状態へと遷移し、励起された色素の電子は、この半導体多孔質層中の伝導帯へ注入され、この半導体多孔質層が形成されている透明電極基板或いは金属電極基板から外部回路を通って、対極である金属電極基板或いは透明電極基板に移動する。対極の電極基板に移動した電子は、電解質層中のイオンによって運ばれ、色素に戻る。このような過程の繰り返しにより電気エネルギーが取り出されるわけである。このような色素増感太陽電池の発電メカニズムは、pn接合型光電変換素子と異なり、光の捕捉と電子伝導が別々の場所で行われ、植物の光電変換プロセスに非常に似たものとなっている。
上記のような構造の色素増感型太陽電池において、特に多孔質光電変換層を金属基板上に設けた場合には、色素を担持している多孔質光電変換層が直接低抵抗の金属基板上に形成されるため、変換効率の低下を回避することができ、またセルを大型化した場合の内部抵抗(曲率因子、Fill Factor;FF)の増大を抑制することができるという利点がある。
しかしながら、多孔質光電変換層を金属基板上に設けて透明電極基板側からの光照射により発電を行うときには、多孔質光電変換層が低抵抗の金属基板上に存在しているため、整流作用が不完全となり、逆電流が発生し、十分に高い変換効率を得るためには、未だ改善の余地がある。また、耐久性が低く、経時と共に変換効率が低下するという問題もある。
上記のような問題を改善するための手段としては、本出願人により、金属基板上に、化成処理膜からなる逆電子防止層を形成し、この逆電子防止層上に色素で増感された多孔質酸化物半導体層を形成する方法が提案されている(特許文献2参照)。
特許文献2では、化成処理膜(逆電子防止層)が電解質に対して高い耐性を示すため、経時による変換効率の低下を有効に防止し得るのであるが、電解質に対する耐性については、更なる向上が求められている。また、この化成処理膜の逆電流防止能はそれほど高くなく、従って高い変化効率を得るという点でも更なる改善が求められている。
また、特許文献3には、本出願人により逆電子防止層を形成するためのコーティング液が提案されている。即ち、このコーティング液は、熱処理により金属酸化物を形成し得る金属化合物を溶質として含む有機溶媒溶液からなり、該有機溶媒溶液は、溶質安定化剤を含有しているとともに、25℃で、10cP以上の粘度を有しているものであり、これを金属基板表面に塗布し、乾燥することにより、色素で増感された半導体多孔質層の下地となる逆電子防止層を形成するというものである。このようなコーティング液を用いて形成された逆電子防止層は、金属酸化物の緻密な層から形成されているため、化成処理により形成したものに比して優れた整流作用を示すばかりか、電解質に対して耐性も良好であり、従って、金属基板の腐食を有効に防止でき、経時による変換効率の低下という問題も有効に回避できるという利点を有している。
しかるに、特許文献3のようなコーティング液により逆電子防止層を形成した場合には、下地の金属基板の表面に局部的な腐食(孔食)が生じるという問題があった。このような孔食は、経時と共に拡大し、変換効率の低下をもたらしてしまう。特に、このような孔食は、表面粗さの大きな金属基板の表面に逆電子防止層を形成する場合に頻繁に生じている。従って、電解質に対する耐性を確実なものとし、経時による変換効率の低下を確実に防止することが必要であり、さらなる改善が求められている。
更に、本出願人は、先にチタン酸化物、熱処理により酸化物を形成し得るチタン化合物、分散剤及び有機溶媒を含み、該チタン酸化物は分散粒子として存在し、該チタン化合物は溶質として存在しているコーティング組成物を提案した(特許文献4参照)。このコーティング組成物によれば、これを電極基板に塗布し、次いで熱処理することにより、電極基板表面に形成された逆電子防止層と、逆電子防止層上に形成された多孔質チタン酸化物半導体からなる多孔質光電変換層とを、一段の塗布で形成することができ、生産性を著しく高めることができるという利点を有している。このコーティング組成物から得られる電極は、電解質に対する耐性が優れており、長期間の経時後においても電解質による電極基板の腐食を有効に防止することができ、このような電極についても本出願人は特許出願をしている(特願2009−152837)。
特開2001−273937 特開2008−053024 特開2010−20939 特開2010−262919
即ち、特許文献4に開示されているコーティング組成物から得られる電極では、多孔質光電変換層を形成している二酸化チタンの結晶粒子が、逆電子防止層中に食い込んでいるという特異的な構造を有しており、この結果、成膜時における逆電子防止層の熱収縮が緩和され、電極基板の表面が粗面である場合においても、逆電子防止層の部分的な破断が防止され、電解質による電極基板の腐食を有効に防止することが可能となる。
しかしながら、上記のようなコーティング組成物により得られる電極においても、電解質による電極基板の腐食、特に局部的な腐食(孔食)を安定且つ確実に防止し得るには至っていない。即ち、電極基板の電解質による腐食防止が、多孔質光電変換層中の二酸化チタン結晶粒子の逆電子防止層中への食い込みに依存しており、この食い込みの程度を安定に保持することが極めて難しく、このため、電極基板の腐食防止効果が極めて不安定なものとなっている。
従って、本発明の目的は、電解質に対する耐性に優れているばかりか、逆電子防止性にも優れた保護膜を電極基板、多孔質光電変換層が形成される金属電極基板の表面に形成することが可能な保護膜形成用のコーティング組成物を提供することにある。
本発明によれば、色素増感型太陽電池における金属電極基板の保護膜の形成に使用されるコーティング組成物であって、チタンアルコキシド、チタネート重合体、エチレングリコールモノブチルエーテル及び有機溶媒を含むことを特徴とするコーティング組成物が提供される。
本発明のコーティング組成物においては、
(1)前記チタネート重合体がテトラブチルチタネートの4量体であること、
(2)前記チタンアルコキシド100重量部当り、前記チタネート重合体が5乃至30重量部、及び前記エチレングリコールモノブチルエーテルが0.1乃至20重量部の量で含まれていること、
(3)前記チタンアルコキシドがチタンイソプロポキシドであること、
が好ましい。
本発明の保護膜形成用コーティング組成物は、これを電極基板上に塗布し、焼成することにより保護膜を形成するが、このような保護膜は、逆電子防止特性と共に、電解質と電極基板との接触を効果的に且つ安定的に防止し、優れた腐食防止特性を有している。従って、このような電極基板表面の保護膜を介して多孔質光電変換層が形成されている色素増感型太陽電池は、整流特性が極めて良好であり、高い変換効率を示すばかりか、電解質による電極基板の腐食も長期間にわたって安定に防止されているため、経時に伴う変換効率の低下も有効に解消されている。特に、多孔質光電変換層を金属電極の粗い面上に形成する場合においても、本発明のコーティング組成物を用いて保護膜を形成しておくことにより、優れた逆電子防止効果と金属電極の腐食防止効果が長期間にわたって安定に発揮される。
即ち、本発明のコーティング組成物を用いて形成される保護膜は、アルコキシ基を含む緻密な非晶質の酸化チタン成分の連続層中に二酸化チタンの微結晶粒状物が存在しているという構造を有している。かかる構造において、緻密な非晶質の酸化チタンの連続層が、電解質と電極基板との接触を防止し、電極基板の腐食防止に寄与するという性質を示し、二酸化チタンの微結晶粒状物が逆電子防止機能(整流作用)を示すのであるが、特に、非晶質連続層中に二酸化チタンの微結晶粒状物が入り込んでいるため、成膜時の熱収縮が極めて小さいという特性を有している。この結果、成膜時の熱収縮等に起因する保護膜の破断(ピンホールの形成)が有効に防止され、電解質と電極基板との接触による電極基板の腐食が安定して発揮されるのである。例えば、金属電極基板の表面が粗い面であったとしても、成膜時の熱収縮が効果的に抑制されているため、金属電極基板の表面が保護膜を突き破って露出してしまうという不都合を生じることも無く、金属基板の電解質による腐食を長期間にわたって安定且つ確実に防止することができるのである。
本発明のコーティング組成物により形成される保護膜の断面構造を示す図である。 図1に示された保護膜が形成された電極基板を有する色素増感型太陽電池の概略構造を示す概略断面図である。
<コーティング組成物>
本発明のコーティング組成物は、チタンアルコキシド(a)、チタネート重合体(b)、エチレングリコールモノブチルエーテル(c)及び有機溶媒(d)を必須成分として含有しており、特にチタンアルコキシド(a)は溶質としてコーティング組成物中に相溶している。図1を参照して、この組成物を塗布し、焼成することにより形成される保護膜50は、非晶質の連続層51と、二酸化チタンの微結晶粒状物53とを含有しており、通常、金属電極基板60の表面に形成される。保護膜50が、このような構造を有していることは、TEMによる断面観察、XRD(X線回折)、EDX(エネルギー分散X線分光法)等により確認することができる。
(a)チタンアルコキシド;
コーティング組成物中に含まれるチタンアルコキシドは、後述する熱処理(焼成)によってゲル化し、アルコキシ基を含むチタン酸化物を形成するものである。
このようなチタンアルコキシドとしては、チタンのメトキシド、エトキシド、プロポキシド、ブトキシド等の各種チタンアルコキシドを使用することができ、特に、チタンイソプロポキシドが好適であり、更に、チタンテトライソプロポキシドが最も好適に使用される。
即ち、このアルコキシ基を含むチタン酸化物は、チタンアルコキシドに由来するアルコキシ基を有しているため、酸化度が低く、柔軟な非晶質の連続層51を形成する。即ち、このような非晶質の連続層51を形成しているチタン酸化物は、例えば下記式:
TiO・nTiOR
式中、nは正の数であり、
Rは、チタンアルコキシドに由来するアルキル基である、
で表される組成を有しており、二酸化チタン以外のチタン酸化物成分を含む非晶質の連続層となっている。かかる層51が非晶質であることは、XRDにより容易に確認することができる。
また、上記のチタン酸化物は、二酸化チタン以外のチタン酸化物成分を含んでいるため、その酸化度は二酸化チタンよりも低く、例えばEDXにより、下記式;
X=STi/S
式中、STiは、チタンのKα線に由来するエネルギー強度を示し、
は、酸素のKα線に由来するエネルギー強度を示す、
で定義されるTi/Oエネルギー強度比Xが、二酸化チタンよりもかなり低い。
例えば、チタン成分として、後述するチタネート重合体(b)を使用せず、チタンアルコキシドのみを含むコーティング組成物により形成される保護膜(非晶質の連続層51のみからなり、二酸化チタンの粒状結晶53を含んでいない)のTi/Oエネルギー強度比Xは、一般に1.20乃至2.39の範囲となる。一方、チタン成分としてチタンアルコキシド及びチタネート重合体を含む本発明のコーティング組成物により形成される保護膜50のTi/Oエネルギー強度比Xは、2.00乃至2.70程度の範囲となるが、二酸化チタンのTi/Oエネルギー強度比X(2.40乃至2.80)よりも低い値となる。
このような非晶質連続層51は緻密で且つ柔軟であり、従って、このような非晶質層51を有する保護膜50は、金属電極基板60との密着性も高く、金属電極基板60の表面に電解質が接触することを効果的に防止し、金属電極基板60に対する優れた腐食防止能を有する。
(b)チタネート重合体;
コーティング組成物中のチタネート重合体は、焼成(熱処理)による脱水縮重合によって微細な粒径(例えば30nm以下)の微結晶二酸化チタン粒子53を析出させるための成分である。
このような、チタネート重合体としては、各種のアルキルチタネートの重合体が知られているが、有機溶媒に安定に微細分散でき、上記粒径の微結晶二酸化チタン粒子を容易に析出可能であるという点でテトラブチルチタネートの重合体の4量体及び10量体が好適に使用され、特に、4量体が最も好適に使用される。
即ち、本発明のコーティング組成物は、かかるチタネート重合体を前述したチタンアルコキシドと共に含有しているため、図1に示されているように、非晶質連続層51の内部に微結晶二酸化チタン粒子53が分布した保護膜50を形成するのである。
上記の微結晶二酸化チタン粒子53の形成は、TEMによる断面観察やXRDやEDXによるTi/Oエネルギー強度比Xによって確認することができる。
例えば、チタン成分として、チタネート重合体のみを含むコーティング組成物により形成される保護膜は、前述した非晶質連続層51を含んでおらず、微結晶二酸化チタン粒子53のみが連なった層となり、そのTi/Oエネルギー強度比Xは、二酸化チタンと同等のレベル(2.40乃至2.80)となる。
このような微結晶二酸化チタン粒子53の形成は、保護膜50に逆電子防止特性を付与するが、同時に、腐食防止性能を大きく向上させる。即ち、かかる二酸化チタン粒子53は硬質であり、しかも熱膨張係数も小さい。このため、成膜時の加熱による熱収縮が有効に抑制され、熱収縮によるピンホール等が保護膜50に生成することが効果的に防止されるのである。例えば、上記のような保護膜50が形成される金属電極基板60の表面が粗面である場合、成膜時における保護膜50の熱収縮が大きいと、金属電極基板60の表面が保護膜50を突き破って露出してしまうおそれがあるが、本発明では、チタネート重合体の配合により微結晶二酸化チタン粒子53が形成されているため、このような不都合を有効に回避することが可能となる。
尚、上述したチタネート重合体の代わりに、二酸化チタンの結晶粒子自体をはじめからコーティング組成物中に配合しておくことも考えられるが、この場合には、二酸化チタンの結晶粒子を連なった状態で非晶質連続層51中に存在させることができないか、或いは二酸化チタンの結晶粒子の存在により非晶質連続層51の連続性が損なわれてしまい、何れにしろ、逆電子防止性や耐腐食性が損なわれ、本発明の目的を達成することができない。
本発明において、上記のチタネート重合体は、前述したチタンアルコキシド100重量部当り5乃至30重量部、特に10乃至20重量部の量でコーティング組成物中に含まれていることが、非晶質の連続層51と二酸化チタンの結晶粒子51とをバランスよく生成させる上で好適である。即ち、この量が少なすぎると、十分な量の二酸化チタンの結晶粒子53が生成せず、従って、保護膜50の硬度が低くなり、成膜時での熱処理によって熱収縮が大きく、ピンホールの発生を生じ易くなってしまう。また、この量が多すぎると、生成する微結晶二酸化チタン粒子53の粒径が過度に粗大となってしまい、非晶質で緻密な連続層51が形成されにくく、このため、ピンホールが発生し易くなり、保護膜50の性能低下を生じてしまう。
(c)エチレングリコールモノブチルエーテル;
エチレングリコールモノブチルエーテルは、チタンアルコキシドの析出を防止し、チタンアルコキシドを溶質として安定に存在せしめると同時に、チタネート重合体を安定に分散させるための分散安定剤として機能するものである。
このエーテルは、下記式:
HOCHCHOR
式中、Rは、イソブチル基またはn−ブチル基である、
で表され、ブチルセロソルブとも称され、化学的に安定であり、それ自体有機溶媒に可溶で且つチタンアルコキシド及びチタネート重合体に対して高い親和性を有している。
このようなエチレングリコールモノブチルエーテルは、前述したチタンアルコキシド100重量部当り0.1乃至20重量部、特に5乃至10重量部の量でコーティング組成物中に含まれていることが好適である。
(d)有機溶媒;
本発明において、有機溶媒としては、前述したチタンアルコキシド(a)が溶解し、また、チタネート重合体(b)の分散媒としても使用でき、更に、エチレングリコールモノブチルエーテル(c)との親和性が高いものであれば、特に制限なく、各種のものを使用することができるが、特にスクリーン印刷等のコーティング作業に適した粘性の溶液を調製することができ、且つ加熱によって、チタン酸化物の電気特性に悪影響を与えることなく揮散できるという観点から、炭素数4以下の低級アルコール、エチルセルロース及びテルピネオールとの2種を含む混合溶媒が好適に使用される。
特に上記の低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロパノール及びブタノールを例示することができ、これらは、特にチタンアルコキシド(a)の溶剤として好適であり、スクリーン印刷等の高粘度塗装適性を考慮する場合は、テルピネオール及びエチルセルロースとの混合溶媒として使用することが好ましい。
尚、テルピネオール(C1018O)は、1,8−テルビンから水が1分子脱水して生じる不飽和アルコールであり、α、β及びγの3タイプのものが知られており、何れのタイプも使用できるが、一般には、α−テルピネオール(Bp:219〜221℃)、或いはα−テルピネオールを主成分とし、これにβ−テルピネオールなどの他のタイプものが混合された混合物(一般に、市販されているものは混合物である)が好適である。
また、テルピネオールは、粘稠な液体であるが、前述した低級アルコールに溶解分散させたチタンアルコキシド及びチタネート重合体との親和性が良好であり、低級アルコールと同様、加熱により、生成する二酸化チタンの電気特性に悪影響を与えることなく、容易に揮散させることができる。
さらに、エチルセルロースは、テルピネオールと同様に、チタンアルコキシド及びチタネート重合体から生成する二酸化チタンの電気特性に悪影響を与えることなく、熱処理によって容易に分解除去することができるが、特に粘度調整剤としての機能とバインダーとしての機能を有する。
従って、エチルセルロースは、他の有機溶媒と併用することが最も好ましく、例えば、低級アルコールやテルピネオールのみを有機溶媒として用いてコーティング組成物を調製したときには、コーティング組成物の粘度が極めて低粘性となり、コーティングに際してダレ等を生じ易くなってしまうが、エチルセルロースの併用により、コーティング組成物の粘度をコーティングに適した範囲に調整することができる。
尚、エチルセルロースとしては、種々の分子量のものが市販されているが、コーティング液をスクリーン印刷に特に適した粘度に調整するという観点から、トルエンを溶媒とし、固形分エチルセルロース濃度10%溶液の場合の粘度(25℃)が30〜50cPの範囲にあるものが好適である。
本発明において有機溶媒として使用される混合溶媒は、上記のような観点から、一般に、エチルセルロース/テルピネオール(重量比)が=0.1/99.9乃至20/80、特に3乃至97の範囲で含有しているのがよく、さらに、コーティング組成物の粘度がコーティングに適した範囲(例えば25℃で15乃至500cP)となるように、適宜の量の低級アルコールを使用するのがよい。
<コーティング組成物の調製>
上述した各成分を含む本発明のコーティング組成物は、チタンアルコキシド(a)を溶質として安定に存在させるために、チタネート重合体(b)が分散した分散液と、チタンアルコキシド(a)が溶解した溶液とを別個に調製した後、これらの分散液と溶液とを混合することにより調製するのがよい。各成分を一挙に混合すると、チタンアルコキシド(a)が凝集した状態で析出してしまうおそれがあり、このような場合には、均質な保護膜50を形成することが困難となってしまうからである。
この場合において、チタネート重合体(b)の分散液は、チタネート重合体(b)と分散安定剤であるエチレングリコールモノブチルエーテル(c)とを、前述した有機溶媒の一部とともに、所定の量割合で混合し、攪拌することにより調製される。
また、チタンアルコキシド(a)の溶液は、残りの有機溶媒に所定の量比で混合し、攪拌することにより調製される。
このようにして調製されたチタネート重合体の分散液とチタンアルコキシド溶液とを混合することにより、本発明のコーティング組成物が得られる。
<保護膜50の形成>
本発明のコーティング組成物を、金属電極基板60の表面に塗布し、熱処理(焼成)を行うことにより図1で示す保護膜50を形成することができる。即ち、この熱処理によって有機溶媒が揮散、熱分解等により除去され、更に、ゲル化や酸化分解等によりチタン酸化物成分が生成し、生成したチタン酸化物成分の一部が焼結してピンホールの無い逆電子防止能を有する緻密なチタン酸化物系の保護膜50が得られる。
上述したコーティング液の塗布は、スクリーン印刷により行うことが出来るが、勿論、生産性等を考慮しないのであれば、スプレー噴霧、刷毛塗り、スピンコート、ディピング等公知の手段を採用することができるが、効率よく、連続的に塗布を行うという点でスクリーン印刷が適用される。
塗布後の熱処理は、用いるチタン化合物の種類によっても異なるが、本発明のコーティン組成物においては、300℃乃至600℃の高温に10乃至180分間塗膜を加熱保持すればよい。
上記のようにして形成される保護膜50は、一般に、その厚みが5乃至500nm、特に50乃至200nmの範囲にあるのがよく、このような厚みの保護膜50が形成されるようにコーティング液の塗布量が調整されることとなる。即ち、保護膜50の厚みが厚いと、絶縁膜化してしまい、電極としての機能が損なわれてしまい、電池として機能しなくなる恐れがある。更には、ピンホールなどの欠陥の発生により、耐久性が損なわれてしまい、電池とした時に電解質層からの電解液により金属電極基板60が腐食し、経時により変換効率の低下を生じるようになってしまう。また、その厚みが薄すぎると、整流障壁としての機能が損なわれ、逆電流の発生により、変換効率の低下を生じてしまう恐れが生じる。
なお、上述した保護膜50は、金属電極基板60の上に直接形成することもできるが、前述した緻密な非晶質酸化チタンの連続層51のみからなる層或いは微結晶二酸化チタン粒子53からなる粒状層を適宜の厚みで形成し、その上に、保護膜50を形成することにより、電解質に対する腐食防止能をさらに高めることもできる。
この場合において、保護膜50の下に形成される非晶質酸化チタンの連続層51のみからなる層は、本発明のコーティング組成物からチタネート重合体(b)を除いた組成のコーティング組成物により形成することができ、微結晶ニ酸化チタン粒子53からなる粒状層は、本発明のコーティング組成物からチタンアルコキシド(a)を除いた組成のコーティング組成物により形成することができる。
また、金属電極基板60の表面に、特開2008−53165号などに開示されている化成処理膜(逆電子防止機能を有している)を形成し、この上に、本発明のコーティング組成物を用いて保護膜50を形成することも可能である。
<電極及びその製造>
図2を参照して、前述した本発明のコーティング組成物により形成された保護膜50を有する金属電極基板60は、その保護膜50の上に多孔質光電変換層13を設けることにより、色素増感型太陽電池の負極15として使用される。
上記の金属電極基板60としては、低電気抵抗の金属材料から形成されたものであれば特に制限されないが、一般的には、6×10−6Ω・m以下の比抵抗を有する金属乃至合金、例えばアルミニウム、鉄(スチール)、ステンレススチール、銅、ニッケルなどが使用される。また、金属電極基板60の厚みは特に制限されず、適度な機械的強度が保持される程度の厚みを有していればよい。また、生産性を考慮しないのであれば、金属電極基板60は、例えば蒸着等により、樹脂フィルム等に形成されていてもよい。勿論、この樹脂フィルム等の基材は透明である必要はない。
尚、図2から理解されるように、多孔質光電変換層13は、発電領域Xとなる部分に形成されるものであり、その周囲が発電に関与しない封止領域Yとなる。
この多孔質光電変換層13は、酸化物半導体の多孔質層に色素を担持させたものである。
この酸化物半導体としては、例えば、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、タンタル、クロム、モリブデン、タングステンなどの金属の酸化物、或いはこれら金属を含有する複合酸化物、例えばSrTiO、CaTiOなどのペロブスカイト型酸化物などを例示することができる。これらの中でも、容易に入手でき且つ高い変換効率を得ることができるという点で二酸化チタンが好ましく、特に、アナターゼ型或いはブルーカイト型の二酸化チタンが最も好適である。
また、このような多孔質光電変換層13の厚みは、通常、3乃至15μm程度である。
上記のような酸化物半導体の多孔質層は、色素を担持させるため、例えば、アルキメデス法による相対密度が50乃至90%、特に50乃至70%程度であることが好ましく、これにより、大きな表面積を確保し、有効量の色素を担持させることができる。
色素を担持させる酸化物半導体の多孔質層を形成するためには、例えば、上述した酸化物半導体の微粒子を、有機溶媒やキレート反応性を有する有機化合物に分散させてペースト状のコーティング組成物、或いは、該酸化物半導体の微粒子をチタンアルコキシド(例えばテトライソプロポキシチタンなど)等のバインダー成分とともに有機溶媒中に分散させたペースト状のコーティング組成物を調製する。これらのコーティング組成物は、前述した本発明のコーティング組成物と同様の粘度を有している。
例えば、酸化物半導体の多孔質層形成用のコーティング組成物を、スクリーン印刷等の手段により前述した本発明のコーティング組成物の塗布層(焼付け前の層)に塗布し、所定の温度(例えば600℃以下)で、前述した相対密度となる程度の時間、焼成することにより、保護膜50と同時に、色素を担持させる酸化物半導体の多孔質層を容易に形成することができる。
即ち、焼成により、上記バインダー成分のゲル化(脱水縮合)により形成されたTiOゲルが半導体微粒子同士を接合し、多孔質化される。また、多孔質化と同時に、前述した保護膜50が形成されることとなる。
本発明のコーティング組成物を用いて保護膜50を形成する場合には、上記のようにして酸化物半導体の多孔質層を形成するに際して、保護膜50の熱収縮が有効且つ確実に防止されているため、熱収縮による保護膜50の破断によるピンホールの発生が有効に防止され、従って、かかる保護膜50による電解質に対する優れた耐性や逆電子防止能が安定して発揮されることとなるわけである。
上記のようにして得られた酸化物半導体の多孔質層への色素の担持は、多孔質層に色素溶液を接触させることにより行われ、吸着処理時間(浸漬時間)は、通常、30分〜24時間程度であり、吸着後、乾燥して色素溶液の溶媒を除去することにより、表面及び内部に増感色素が吸着担持された多孔質光電変換層13が得られる。
用いる色素は、増感色素として機能し得るものであり、カルボキシレート基、シアノ基、ホスフェート基、オキシム基、ジオキシム基、ヒドロキシキノリン基、サリチレート基、α−ケト−エノール基などの結合基を有するそれ自体公知のものが使用される。例えばルテニウム錯体、オスミウム錯体、鉄錯体などを何ら制限なく使用することができる。特に幅広い吸収帯を有するなどの点で、ルテニウム−トリス(2,2’−ビスピリジル−4,4’−ジカルボキシラート)、ルテニウム−シス−ジアクア−ビス(2,2’−ビスピリジル−4,4’−ジカルボキシラート)などのルテニウム系錯体が好適である。このような増感色素の色素溶液は、溶媒としてエタノールやブタノールなどのアルコール系有機溶媒を用いて調製され、その色素濃度は、通常、3×10−4乃至5×10−4mol/L程度とするのがよい。
上記のようにして金属電極基板60表面の保護膜50上に多孔質光電変換層13を設けることにより、負極15が形成されることとなる。
尚、かかる多孔質層光電変換層13は、保護膜50の上に直接形成されるが、場合によっては、前述した緻密な非晶質酸化チタンの連続層51のみからなる層或いは微結晶二酸化チタン粒子53からなる粒状層を適宜の厚みで形成し、その上に、多孔質光電変換層13を形成することもできる。即ち、保護膜50と多孔質光電変換層13との間に、上記のような層を介在させることにより、電解質に対する腐食防止能をさらに高めることができる。
上記のようにして形成される負極15には、図2に示されているように、電解質層20を間に挟んで対極1(透明電極)が配置される。この対極1は、透明基板3の表面に透明導電膜5及び電子還元性導電層7が形成されたものであり、このようにして対極1を負極15に対向して配置することにより、色素増感型太陽電池が得られる。
透明基板3は、高い光透過性を有していればよく、例えば透明ガラスや透明樹脂フィルムなどから形成される。その厚みや大きさは、最終的に形成される色素増感太陽電池の用途に応じて適宜決定される。
また、上記の透明導電膜5上に形成される電子還元導電層7は、一般に白金の薄層からなり、透明導電膜5に流れ込んだ電子を電解質層20に速やかに移行せしめる機能を有するものである。このような電子還元導電層7は、光透過性が損なわれないように、その平均厚みが0.1乃至1.5nm程度となるように蒸着により薄く形成される。
上記のようにして負極15と透明な対極1(正極)は、電解質層20を間に挟んで対峙しており、電解質層20と色素で増感された多孔質光電変換層13とによって発電領域Xが形成されることとなる。
電解質層20は、公知の太陽電池と同様、リチウムイオン等の陽イオンや塩素イオン等の陰イオンを含む種々の電解質溶液により形成される。また、この電解質20中には、酸化型構造及び還元型構造を可逆的にとり得るような酸化還元対を存在させることが好ましく、このような酸化還元対としては、例えばヨウ素−ヨウ素化合物、臭素−臭素化合物、キノン−ヒドロキノンなどを挙げることができる。
上記の電解質層20は、図2に示されているように、発電領域Xの周縁に位置する封止領域Yに設けられる封止材30により封止され、電極間からの液の漏洩が防止されることとなるわけである。一般に、このような電解質層20の厚みは、最終的に形成される電池の大きさによっても異なるが、通常、10乃至50μm程度である。
封止材30としては、ヒートシール可能な各種の熱可塑性樹脂乃至熱可塑性エラストマー、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテン、或いはエチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン同士のランダム乃至ブロック共重合体等のポリオレフィン系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体等のエチレン−ビニル化合物共重合体樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ABS、α−メチルスチレン−スチレン共重合体等のスチレン系樹脂;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のビニル系樹脂;ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン11、ナイロン12等のポリアミド樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂;ポリカーボネート;ポリフェニレンオキサイド;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体;酸化澱粉、エーテル化澱粉、デキストリンなどの澱粉;及びこれらの混合物からなる樹脂;などが使用される。
即ち、封止材30は、上記の熱可塑性樹脂等を用いての押出成形、射出成形等によって、例えば、封止領域Yに対応する幅のリング形状に成形するにより得られ、この封止材30を、互いに対抗して配置された負極15と対極1との間に挟んだ状態でヒートシール(加熱圧着)することにより、負極15と対極1とが接合され、次いで、この封止材30に注入管を挿入し、該注入管を介して、両電極基板の間の空間内に、電解質層20を形成する電解質溶液を注入することにより、図2に示す構造の色素増感太陽電池を得ることができる。
尚、透明基板3として透明樹脂フィルムなどを用いるときには、例えば負極15と対極1との3方を封止剤30でシールし、次いでシールされていない開口部から電解質液を充填し、最後に、開口部を封止剤30で完全に封止することによっても図2に示す構造の色素増感太陽電池を作製することができる。
このようにして形成される色素増感太陽電池では、透明な対極1側から可視光を照射することにより、多孔質光電変換層13中の色素が励起され、基底状態から励起状態へと遷移し、励起された色素の電子が、多孔質光電変換層13中の伝導帯へ注入され、金属電極基板60を介して外部回路(図示せず)を通って対極1に移動する。対極1に移動した電子は、電解質層20中のイオンによって運ばれ、色素に戻る。このような過程の繰り返しにより電気エネルギーが取り出され、発電が行われることとなる。即ち、かかる太陽電池では、本発明のコーティング組成物を用いて金属電極基板60と多孔質光電変換層13との間に、逆電子防止層(整流障壁)として機能し且つ電解質と金属電極基板60との接触を防止する保護膜50が形成されているため、逆電流が有効に防止され且つ金属電極基板60の腐食等も確実に防止され、この結果、高い変換効率を安定して得ることができ、例えば、経時による変換効率の低下も有効に防止することができる。
本発明の優れた効果を次の実験例で説明する。
尚、以下の例において、電極基板として使用されるアルミニウム基板の上に形成される各層の厚みの測定及びTi/Oエネルギー強度比Xの測定は、以下の方法により行った。
<非晶質連続層、保護膜、粒状結晶層及び多孔質光電変換層の厚みの測定>
これらの層の厚みの測定は、走査型電子顕微鏡によるSEM観察、及び電解放射型透過分析電子顕微鏡によるTEM観察により、実施した。
<Ti/Oエネルギー強度比Xの測定>
加工装置として、収束イオン加工装置(低加速FIB/SEM複合装置;SIINT製XVison 200DB)を用い、さらにEDX分析装置として、エネルギー分散型X線分光分析装置(EDAX製 γ−TEM)を用いた。
即ち、上記の収束イオン加工装置を用いて、測定の対象となる層の超薄切片を作製し、その後、その超薄切片をEDX分析装置によって、元素分析を実施することにより、Ti/Oエネルギー強度比Xを測定した。
<実施例1>
(コーティング組成物の調製)
チタンイソプロポキシドを主剤とし、溶媒として、テルピネオールとエチルセルロースを2/98の重量比の混合溶媒、安定化剤としてブチルセロソルブを20重量%添加して、チタンアルコキシド溶液(非晶質連続層形成用ペースト)を調製した。
また、テトラブチルチタネート4量体を主剤とし、溶媒として、テルピネオールとエチルセルロースを2/98の重量比の混合溶媒、安定化剤としてブチルセロソルブを20重量%添加して、チタネート分散液(粒状結晶層形成用ペースト)を調製した。
次いで、上記のチタンアルコキシド溶液とチタネート分散液とを30/70の重量比で混合して、本発明の保護膜用コーティング組成物を調製した。
(多孔質光電変換層形成用ペーストの調製)
球状の粒径30nmと多面体状の粒径15nmの市販TiO粒子2種類を主剤とし、溶媒として、エタノールをペースト中70重量%の量、分散剤として、酢酸をペースト中0.05%の量で含むTiOペーストを調製した。
(電極の作製)
次いで、金属基板として、市販のアルミニウム板(厚み0.3mm)を用意し、このアルミニウム板上に、粒状結晶層形成用ペースト(チタネート分散液)、保護膜形成用コーティング組成物、非晶質連続層形成用ペースト(チタンアルコキシド溶液)、多孔質光電変換層形成用ペーストの順番で塗布し、その後、450℃で30分間焼成して、電極を作製した。
上記電極の断面について、透過型電子顕微鏡(TEM)によるHAADF像により観察したところ、アルミ基板上には、粒状結晶酸化チタン層(粒状結晶層)、非晶質連続層中に粒状結晶が存在している保護膜、非晶質酸化チタン層(非晶質連続層)、多孔質光電変換層が形成されていることが確認された。また、各層の厚みは、アルミ基板直上層から順番に、約100nm、約50nm、約100nm、約10μmであった。
また、上記の保護膜及び粒状結晶層における微結晶二酸化チタン粒子の粒径は15nm以下であった。
さらに、各層上記式Ti/Oのエネルギー強度比を測定したところ、アルミ基板直上層から順番に平均値として、2.53、2.31、1.89であった。
さらに、純度99.5%のエタノールに分散させたルテニウム錯体色素からなる色素溶液中に、上記の多孔質光電変換層を24時間漬浸させ、次いで乾燥することにより、負極を得た。尚、用いたルテニウム錯体色素は、下記式で表される。
[Ru(dcbpy)(NCS)]・2H
(色素増感型太陽電池の作製及び評価)
一方、白金を蒸着したITO/PENフィルムで構成される対向電極(正極)を用意した。この対向電極と上記で作製した負電極との間に電解質液を挟みこんで色素増感型太陽電池を作製した。
尚、電解質液としては、LiI/I(0.5mol/0.025mol)をメトキシプロピオニトリルに溶かしたものに4−tert−ブチルピリジンを添加したものを用いた。
得られた電池を、室温環境下にて保管し、1000時間後に確認したところ、腐食は未発現であり、変換効率の低下もなかった。
<実施例2>
アルミニウム板上に、直接保護膜コーティング組成物を塗布し、且つこの塗布層上に多孔質光電変換層形成用ペーストを塗布し、アルミニウム基板上に保護膜を介して多孔質光電変換層を形成した以外は、実施例1と同様にして電極を作製した。
上記電極の断面について、透過型電子顕微鏡(TEM)によるHAADF像により観察したところ、アルミ基板直上の保護膜は、非晶質連続層中に粒状結晶が分布した酸化チタン層であり、該層中の微結晶二酸化チタン粒子の粒径は15nm以下であった。
また、この保護膜の厚みは、約50nmであり、その上の多孔質光電変換層の厚みは、約10μmであった。
さらに、保護膜におけるTi/Oのエネルギー強度比を測定したところ2.33であり、多孔質光電変換層では2.69であった。
次いで、実施例1と同様に電池を作製し、室温環境下にて保管し、1000時間後に確認したところ、腐食は未発現であり、変換効率の低下もなかった。
<比較例1>
実施例1において、保護膜形成用のコーティング組成物を使用せず、粒状結晶酸化チタン層(粒状結晶層)、非晶質酸化チタン層(非晶質連続層)及び多孔質光電変換層を、この順にアルミニウム基板上に形成した以外は、実施例1と同様にして電極を作製した。
上記電極の断面について、透過型電子顕微鏡(TEM)によるHAADF像により観察したところ、アルミ基板上の非晶質酸化チタンの層に、部分的にクラックが発生していた。これは、非晶質酸化チタン層の熱収縮による内部歪みの影響によるものであると考えられる。
50:保護膜
51:非晶質酸化チタン連続層
53:酸化チタン粒状結晶層
60:金属電極基板

Claims (4)

  1. 色素増感型太陽電池における金属電極基板の保護膜の形成に使用されるコーティング組成物であって、チタンアルコキシド、チタネート重合体、エチレングリコールモノブチルエーテル及び有機溶媒を含むことを特徴とするコーティング組成物。
  2. 前記チタネート重合体がテトラブチルチタネートの4量体である請求項1に記載のコーティング組成物。
  3. 前記チタンアルコキシド100重量部当り、前記チタネート重合体が5乃至30重量部、及び前記エチレングリコールモノブチルエーテルが0.1乃至20重量部の量で含まれている請求項1または2に記載のコーティング組成物。
  4. 前記チタンアルコキシドがチタンイソプロポキシドである請求項1乃至3の何れかに記載のコーティング組成物。
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