JP2008152949A - 酸化チタン膜および半導体電極ならびに色素増感型太陽電池 - Google Patents

酸化チタン膜および半導体電極ならびに色素増感型太陽電池 Download PDF

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Abstract

【課題】光電変換効率を向上させ、かつ安価に製造が可能な色素増感太陽電池およびこの色素増感太陽電池に適用可能な半導体電極や酸化チタン膜を提供する。
【解決手段】基板11を構成する透明導電膜15には、下地膜となる酸化チタン膜12が形成されている。図2に示すように、酸化チタン膜12は、基板11の一面11a、即ち透明導電膜15から垂直方向Lに向けて成長した針状結晶を成すアナターゼ型の酸化チタンからなる。このような針状結晶を成すアナターゼ型の酸化チタンは、垂直方向に結晶軸が選択的に成長した針状ないし柱状の結晶構造を成す。
【選択図】図2

Description

この発明は、酸化チタン膜やこれを備えた半導体電極、およびこの半導体電極を利用した色素増感型太陽電池に関する。
例えば、太陽光などの光エネルギーを有効に利用する手段の1つとして、光エネルギーを電気エネルギーに直接変換する太陽電池が広く用いられている。この太陽電池は、シリコンの多結晶、または単結晶を用いたシリコン型太陽電池が良く知られており、すでに住宅用の電力供給用から電卓等の微弱電力用電源として利用されている。
しかしながら、こうしたシリコン型太陽電池の製造にあたって必須となるシリコンの単結晶や多結晶、あるいはアモルファスシリコンを製造するためには、シリコン高純度化でのプロセスや高温での溶融プロセスを必要とするために多大なエネルギーを消費する。このため、シリコン型太陽電池を製造するために費やしたエネルギー量の総和が、この太陽電池の発電可能期間に発電できる総発電エネルギー量よりも大きいという危惧が出ている。
こうした、シリコン型太陽電池の課題を解決する太陽電池として、近年、色素増感型太陽電池が注目されている。色素増感型太陽電池は、スイスのミカエル・グレツェルらがその基礎となる構造を開発したもので、光電変換効率が高く、かつ、シリコン型太陽電池のように単結晶シリコンなどの製造に多大なエネルギーを消費する材料が必要ではないため、太陽電池を作製するためのエネルギーも桁違いに少なく、且つ低コストで量産が可能なものであり、その普及が期待されるものである。
従来の色素増感型太陽電池は、例えば以下の作製方法によって得られる。即ち、透明導電膜を形成したガラス基板に下地膜を形成し、この下地膜に、例えば酸化チタンからなる多孔質層を形成し、この多孔質層に色素を吸着させる。そして、色素の吸着後に逆電子移動防止のために、カルボン酸や有機金属塩等で処理を行い、色素増感型太陽電池の負極に用いる。一方、正極は、透明導電膜を形成したガラス基板にPt膜を形成する。このPt膜の形成は、例えば、Ptの蒸着や、Ptを含む塩を熱分解する方法、あるいは電解メッキ等で形成している。このようにして得られた正極と負極とを、例えばアイオノマー樹脂を用いて熱融着させ、最後に電解液を充填することによって色素増感型太陽電池が得られる。
上述したように、色素増感型太陽電池は、シリコン型太陽電池と比較して簡易な工程でローコストに製造が可能であるが、一方で、光電変換効率を上げることが重要な課題となっている。変換効率に与える影響の大きい要因としては、ガラス基板上に成膜する透明導電膜の導電性、電解液中の電解質の種類および濃度、正極や負極での電荷移動抵抗、負極膜の多孔質電極膜内での伝導性等が挙げられる。中でも、特に負極において、界面での電荷移動後に、高抵抗の金属酸化物からなる半導体を電子が移動して集電体へと移動していくために、この時の電流の低減や電圧降下が大きく、変換効率を下げる要因となっている。このため、電子が効率的に移動できる負極を開発することが、色素増感型太陽電池の変換効率を引上げるためには重要である。
色素増感型太陽電池の負極側電極を構成する、金属酸化物からなる半導体電極に求められる性質としては、例えば、
1.電解液の電解質イオンからの電荷移動ができる界面の面積を大きくすること
2.多孔質層内でのイオン拡散がしやすい構造であること
3.多孔質層の導電性を高めること
4.多孔質層と基板との間に形成される下地膜(例えば酸化チタン膜)の抵抗の改善
の四つが挙げられる。
このうち、電荷移動抵抗に関しては、電解液と接触する界面の面積を大きくするために、金属酸化物の粒子サイズを小さくして低温焼結することにより可能である。しかし、電解液中でのイオン拡散と金属酸化物の半導体電極の電子伝導性、及び多孔質層、下地膜と、基板表面の透明導電膜との界面における抵抗に関しては、十分に検討されていないのが現状であった。そこで、多孔質層でのイオン拡散や電子伝導性に関する理論的な観点でのアプローチから、実験的な視野に立って様々なモデルを立てて試験が行なわれている。例えば、円柱ないしチューブ状に酸化チタンを焼結して表面積を増加させ、且つ電解液の浸透性やイオン拡散を改善するような工夫もなされている(例えば、特許文献1〜3参照)。
一方、多孔質層、下地膜と、基板の透明導電膜との界面での抵抗を下げるために、下地膜として針状結晶の酸化亜鉛膜を形成し、この酸化亜鉛膜の針状結晶を多孔質層に食い込ませる形態で電極を形成し、伝導性を改善する方法も検討されてきた(例えば、文献4参照)。しかしながら、下地膜として酸化亜鉛を使用すると、酸化チタンのバンドギャップを利用した高い電圧が得られず、酸化亜鉛のバンドギャップが反映されてしまい、Vocが0.6V程度となるため、酸化チタンに比較すると0.1V程度も低下してしまうという課題があった。
そこで、基板の透明導電膜の上に酸化チタンを直接的に成長させて、下地膜と多孔質層との境界面での抵抗を下げる研究がなされてきた。その手法として、電子ビームを用いて金属チタンを加熱し、蒸発および酸素の反応によって酸化チタンを透明導電膜の上に形成する研究が成されてきた。また、有機金属チタン、チタンの金属塩を用いたCVD法等が検討され、透明導電膜の上に酸化チタンが配向成長した下地膜を作製する研究が成されてきた。
しかしながら、上述したような酸化チタンの下地膜においては、酸化チタンが結晶構造にならない状態であり、結晶化については制御されていないのが実情であった。即ち、結晶性の酸化チタンを用いた下地膜では、アモルファス構造の酸化チタンを用いた下地膜よりも導電性の向上が期待されているにもかかわらず、その形成が困難である。従って、結晶性の酸化チタンを基板の透明導電膜の上に成長させ、色素増感型太陽電池の特性の改善効果を調べることが困難であった。
以上のような経緯から、下地膜として、酸化チタンのナノチューブやナノワイヤーを用いて結晶性や配向性の改善を行なう検討、または単結晶に近い粒子を作製し、粒界での抵抗を下げて導電性を改善する方法が検討されてきた(例えば、特許文献5参照)。また、基板に形成された透明導電膜の針状粒子に酸化チタンを被覆したものを用いて導電性を改善するという方法も検討されてきた(例えば、特許文献6参照)。しかしながら、これらの方法では、負極電極の形成に手間がかかり、色素増感型太陽電池が安価に製造できるというコストメリットを失う可能性がある。
特開2005−339883号公報 特開2005−339884号公報 特開2005−339885号公報 特開2002−141115号公報 特開2006−182575号公報 特開2006−210341号公報
本発明は、光電変換効率を向上させ、かつ安価に製造が可能な色素増感太陽電池およびこの色素増感太陽電池に適用可能な半導体電極や酸化チタン膜を提供することを目的とする。
かかる課題を解決するため、請求項1においては、基板の一面に形成された酸化チタン膜であって、この酸化チタン膜は、前記基板の一面から垂直方向に結晶軸が選択的に成長した針状結晶を成すアナターゼ型酸化チタンであることを特徴とする酸化チタン膜が提供される。
請求項2においては、少なくとも一面が導電性の基板と、この基板の一面に積層された酸化チタン膜と、この酸化チタン膜に重ねて積層された多孔質層とを有する半導体電極であって、
前記酸化チタン膜は、前記基板の一面から垂直方向に結晶軸が選択的に向けて成長した針状結晶を成すアナターゼ型酸化チタンであり、
前記多孔質層は、多孔質の金属酸化物に色素を吸着させたものであることを特徴とする半導体電極が提供される。
請求項3においては、請求項2記載の半導体電極を負極に用いたことを特徴とする色素増感型太陽電池が提供される。
本発明によれば、多孔質層に対して、酸化チタン膜を成す基板の一面から垂直方向に向けて結晶軸が選択的に成長した針状結晶の間(隙間)に少なくともその一部が食い込む構造を成すので、多孔質層の全体と基板とが、酸化チタン膜を成す針状結晶を介して強固に結び付けられる構造となる。
このような半導体電極を色素増感型太陽電池に用いれば、多孔質層と基板の一面を成す透明電極膜との間に、針状結晶の酸化チタン膜を形成することで、多孔質層と透明電極膜との間の電荷の移動が低抵抗で行なわれる(電荷の移動が促進される)ので、色素増感型太陽電池の光電変換効率を高めることができ、高い変換効率の高性能な色素増感型太陽電池を実現することが可能になる。
以下、本発明に係る酸化チタン膜、半導体電極、およびこれを用いた色素増感型太陽電池の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明はこのような実施形態に限定されるものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
図1は、本発明の酸化チタン膜を備えた半導体電極の一例を模式的に示す断面図である。また、図2は、図1の要部を拡大した模式図である。半導体電極10は、基板11と、酸化チタン膜12と、多孔質層13とを備えている。
[基板]
基板11は、光を透過させる透明基板が用いられ、例えばガラス基板が好適である。透明基板としてはガラス基板以外にも、ポリカーボネイト(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、フッ素樹脂などの透明プラスチック基板を用いることができる。
基板11は、ITO、FTOなどからなるシート抵抗が100Ω以下、好ましくは30Ω以下の厚さ100nm以上の透明導電膜15を備えている。これにより、一面11a側が導電性の透明な基板11が形成される。
基板11は、PET,PCフィルムにスクリーン印刷法、スプレー法、スパッター法、MOCVD法等により、フッ素ドープ酸化錫、酸素欠損の酸化亜鉛、ITO等を成膜し、シート抵抗として大きくとも100Ω以下にし、望ましくは30Ω以下にした透明導電膜15を作製する。これらの厚みとしては少なくとも0.1μm以上が良い。
[酸化チタン膜]
基板11を構成する透明導電膜15には、下地膜となる酸化チタン膜12が形成されている。図2に示すように、酸化チタン膜12は、基板11の一面11a、即ち透明導電膜15から垂直方向Lに向けて成長した針状結晶を成すアナターゼ型の酸化チタンからなる。このような針状結晶を成すアナターゼ型の酸化チタンは、基板の一面から垂直方向に結晶軸が選択的に成長したものであり、基板面に対して成長させた針状ないし柱状の結晶構造を成す。例えばX線解析を行うと、図5に示すように全体的には主に(110)面の結晶面が非常に強く観察されるような配向した膜を示している。このサンプルでは各針状形態の結晶は主に(110)面の結晶軸の方向に成長していることが確認された。この際、各針状粒子が単結晶または多結晶のいずれでも良く、本発明における酸化チタンの膜とは、結晶配向が確認され、針状形態の組織を持つものであり、成長する結晶軸を限定するものではない。
このような、基板11の一面11aから垂直方向Lに向けて成長した針状結晶を成すアナターゼ型の酸化チタンは、例えば、スパッタリング法により透明導電膜15に垂直な方向に沿って、結晶軸が選択的に成長した粒子を配向させた組織を形成することによって得られる。スパッタリングを行なうにあたっては、例えば、マグネトロンスパッター装置を用い、酸化性の雰囲気にて成膜レート1μm/hr程度にて行えばよい。このようなスパッタリングにあたっては、特にマグネトロンスパッターに限定されなくとも、他のスパッタリング方式を採用しても良い。
また、スパッタリングの際に入力パワーを変えることにより、酸化チタン膜12の成膜速度を変えても良く、条件は限定されるものではない。また、酸化チタン膜12の膜厚は少なくとも0.1μm以上が望ましく、特に上限は限定されるものではないが、生産性を考慮すると、10μm程度以下であればよく、好ましくは1〜5μm程度が妥当である。
透明導電膜15に垂直な方向に沿って、結晶軸が選択的に成長した酸化チタンの粒子の短軸のサイズは、例えば10〜100nm程度とされ、特に短軸径が小さいと表面積が増えるので、細かい方がより好ましいが、特に限定されるものではない。
酸化チタン膜12を構成する針状結晶の酸化チタンの、透明導電膜15(基板11の一面11a)に対する結晶成長角度は、スパッタリング時のターゲットと基板11との成す角度により制御することができる。本発明の酸化チタン膜12では、透明導電膜15(基板11の一面11a)に対して垂直方向に沿って酸化チタンの結晶軸が選択的に成長した長尺粒子が配向した組織から成り立っている。この長尺粒子と透明導電膜15(基板11の一面11a)との成す角度は、スパッタリング時における基板11とターゲット間の角度より決定され、特に透明導電膜15(基板11の一面11a)に対して垂直方向に結晶軸が選択的に成長した長尺粒子を形成することに限定はされないが、酸化チタンの長尺粒子が透明導電膜15に対して30〜90°(基板11の一面11a対する垂直方向を90°と定義)の範囲とすることが望ましい。
[多孔質層]
以上のような構成の酸化チタン膜12に重ねて積層される多孔質層13は、3層構造となっており、基板11側から、下層21、中間層22および上層23の順に形成されている。
(多孔質層:下層)
多孔質層13の下層21は、微粒子、例えば粒子径が3〜20nm程度のアナターゼ型結晶構造をもつ実密な酸化チタン層である。こうした微粒子酸化チタンからなる下層21の形成は、スクリーン印刷法やスプレー法などによりルチル型結晶構造の酸化チタン粒子のスラリーやペーストを塗布して、その後焼成して、酸化チタンの微粒子からなる下層21を形成すればよい。
この酸化チタンの微粒子からなる下層21を形成する方法としては、チタンのアルコキシド、例えばテトラエトキシチタンTi(CO)をエタノールに溶解して、これを吹き付けて焼成することにより酸化チタンの膜を形成しても良く、またチタンのアルコキシドを希釈したアルコール溶液に水を加えて作製したゾル溶液をスプレー法により塗布して焼成して下層21を形成してもよい。また、有機金属チタンとルチル型結晶酸化チタン粒子を混ぜて、スクリーン印刷法またはスプレー法により塗布して焼成して下層21を形成してもよい。
このような酸化チタンの微粒子からなる多孔質層13の下層21は、上述した酸化チタン膜12を成す基板11の一面11aから垂直方向Lに向けて成長した針状結晶の間(隙間)に少なくともその一部が食い込む構造を成す。これによって、多孔質層13全体と基板11とが、酸化チタン膜12を成す針状結晶を介して強固に結び付けられる構造となる。
(多孔質層:中層)
多孔質層13を成す下層21の上には、中間層22が形成されている。この中間層22は、例えば、直径が30〜200nm、長さが0.5〜20μm程度の針状結晶の酸化チタンと、例えば、直径が5〜400nm程度の粒状結晶の酸化チタンとが混在する多孔質膜である。
この中間層22を構成する針状結晶の酸化チタン粒子は、特に、直径30〜200nmであり、長さが0.5〜20μmでかつ、アスペクト比が2以上の針状結晶が好ましい。なお、ここで言うアスペクト比とは、針状粒子の平均長を針状の平均径で割った値であり、比表面積としては、5〜30m/gである。この針状酸化チタンに、アナターゼ型の粒状結晶の酸化チタンの粉末を混ぜ、スラリーまたはペーストにして塗布して、粒状結晶構造の酸化チタンに針状結晶の酸化チタンを混在させて固定化した中間層22が形成される。
なお、この中間層22内部に、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化珪素、酸化アルミニウム等の酸化物を粒子サイズとして0.2〜5μmにして混ぜることにより透過光の乱反射成分として光電変換効率を改善させることも可能である。また、中間層22の上に酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化珪素、酸化アルミニウム等の酸化物を粒子サイズとして0.2〜5μmにして積層させることにより透過光の乱反射成分として光電変換効率を改善させることも可能である。
(多孔質層:上層)
多孔質層13を成す中間層22の上には、上層23が形成されている。この上層23は、例えば、直径が20〜400nmの粒状結晶を成すアナターゼ型酸化チタンからなり、厚みが0.1〜10μm程度の多孔質膜である。
この上層23の成膜方法としては、例えばスクリーン印刷やスプレー法等によりペースト又はスラリーを中間層22の上に塗布した後に乾燥し400〜600℃、好ましくは450〜550℃で焼成する。また、多孔質層13に色素を吸着させる前後に、逆電子移動用に例えばケトン系、カルボン酸系、エーテル系等や金属アルコキシド、金属錯体、金属塩等を用いて、酸化チタン電極表面に高い抵抗膜や吸着層を5nm以下で形成することにより、光電変換効率を改善してもよい。
以上の説明では、主にソーダガラスなどの耐熱性の優れた材料として透明基板を用いた場合の酸化チタン膜12をもつ半導体電極10の構成およびその作製方法について説明したが、耐熱性の不十分なPC、PE、PET、PVC、フッ素樹脂系フィルムなどの有機系材料からなるものを透明基板として用いて作製する場合について、以下に説明する。
基本的にはスパッター法、蒸着法、CVD法等の成膜法により、例えばPC基板の上に透明導電膜を形成する。この際、フィルム表面に成膜する膜にピンホールが発生すると電解液の溶媒により樹脂基板が膨潤や溶解して膜の剥離を生じさせるためにクリーンルーム中にて成膜するとよい。また、成膜方法の中でも管理や量産性の観点では、通常はスパッター法が良く、チャンバー中で連続スパッターによる成膜が望ましい。透明導電膜の成膜材料としては、ITOが雰囲気の影響を受けないために管理がしやすい。このような成膜プロセスにより、透明導電膜にシート抵抗が100Ω以下になるように導電性を持たせる。
この透明導電膜を形成した後に、下地膜となる酸化チタン膜を形成する。即ち、透明導電膜から垂直方向に向けて成長した針状結晶を成すアナターゼ型の酸化チタンを形成する。このような針状結晶を成すアナターゼ型の酸化チタンは、結晶軸が選択的に成長した針状ないし柱状の結晶構造を成す。
さらに、この針状ないし柱状結晶の酸化チタン膜上に、多孔質層を形成する。多孔質層の下層としては、チタンのアルコキシドや金属塩、またはチタンのゾル液をアナターゼ型結晶構造の酸化チタン粉と混ぜて塗布し、100℃程度で乾燥して下層を作成すればよい。この温度はフィルム材質の耐熱温度以下で行う。この際、金属アルコキシドやチタンゾル液を用いて、アナターゼ型結晶構造の酸化チタン粉を混ぜてスクリーン印刷法かスプレー法にて塗布し、室温から50℃程度でゲル化反応により固定化することにより、基板の熱膨張による剥離や基板への熱ダメージを減らすことが出来る。
この下層の上に中間層となるアナターゼ型結晶構造の酸化チタン粒子に、針状結晶の酸化チタンを混ぜて多孔質の中間層を形成する。この中間層の形成プロセスは、例えば、アナターゼ型結晶構造の酸化チタン粒子に針状形態の酸化チタンを混ぜたものに、チタンアルコキシドを混ぜて加水分解反応により架橋させるのが望ましく、またはチタンアルコキシドを使用しないで、高周波プラズマに基板表面が触れるようにして表面にだけ高温にして基板裏側を冷却するような方法でも良い。
また、針状結晶の酸化チタン膜の上に、直接にアナターゼ型結晶構造の酸化チタン粒子にルチル型結晶構造の針状形態の酸化チタンを混ぜて、多孔質の中間層を、チタンアルコキシドを混ぜて加水分解反応により架橋させて固定化するか、またはチタンアルコキシドを使用しないで、高周波プラズマを用いて中間層を形成しても良い。
上層の成膜方法としては、例えばスクリーン印刷やスプレー法等によりペースト又はスラリーを中間層の上に塗布した後に乾燥し高周波プラズマに基板表面が触れるようにして表面だけを高温にしてネッキングさせて膜を形成する。または塗膜の乾燥後に放電焼結させても良い。
PC、PE、PET、PVC、フッ素樹脂系フィルムを用いて色素増感型太陽電池を作製する場合に、透明導電膜の下地としてフィルム表面に緻密な膜を作りやすくすることや、酸素や水分に対するバリヤー性を高めるために、酸化アルミニウムや酸化珪素等を成膜することも耐久性の改善において効果がある。また、色素増感太陽電池に用いる場合には、対極の正極側も同様である。例えば、正極はPCフィルム上に酸素や水分に対するバリヤー膜を形成して、この上に透明導電膜を形成し、さらにスパッター法等によりPtを10nm以上に成膜したものを用いる。
以上のような構成の本発明の酸化チタン膜12を備えた半導体電極10によれば、多孔質層13は、その下層21の少なくとも一部が、酸化チタン膜12を成す基板11の一面11aから垂直方向Lに向けて成長した針状結晶の間(隙間)に食い込む構造を成す。これにより、多孔質層13全体と基板11とが、酸化チタン膜12を成す針状結晶を介して強固に結び付けられる。よって、多孔質層13と基板11との剥離を防止するとともに、多孔質層13と、基板11の一面11aを成す透明電極膜15との間で、電荷の移動がこの針状結晶の酸化チタン膜12を介して低抵抗で行なわれる。
[色素増感型太陽電池]
図3に示すように、本発明の色素増感型太陽電池30は、上述したような半導体電極10、即ち、基板11の一面11aから垂直方向Lに向けて成長した針状結晶をもつ酸化チタン膜12によって、多孔質層13と基板11とが強固に結び付けられた半導体電極10を負極Mとして用いたもので、この多孔質層13に増感用の色素を吸着させて使用する。また、この負極Mに対向して正極Pを配し、この負極Mと正極Pとの間に電解液32を満たし、色素増感型太陽電池30が形成される。
多孔質層13に吸着させる色素としては、例えばルテニウムビピリジン系色素、アゾ系色素、キノン系色素、キノンイミン系色素、キナクリドン系色素、スクアリリウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、トリフェニルメタン系色素、キサンテン系色素、ポリフィリン系色素、フタロシアニン系色素、ベリレン系色素、インジゴ系色素、ナフタロシアニン系色素などが挙げられる。
色素の吸着方法としては、例えば、半導体電極10を色素が溶解された溶液(色素吸着用溶液)に浸漬する方法が挙げられる。色素を溶解させる溶剤としては、色素を溶解するものであればよく、具体的には、エタノールなどのアルコール類、アセトンなどのケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトニトリルなどの窒素化合物類、クロロホルムなどのハロゲン化脂肪族炭化水素、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素、ベンゼンなどの芳香族炭化水素、酢酸エチルなどのエステル類が挙げられる。これらの溶剤は2種類以上を混合して用いることもできる。
溶液中の色素濃度は、使用する色素および溶剤の種類により適宜調整することができるが、吸着機能を向上させるためにはできるだけ高濃度である方が好ましいが、高濃度であると多孔質層の表面に過剰に吸着した層が形成されるので、低濃度が好ましく3×10−4モル/リットル以上であればよい。
電解液32を構成する酸化還元対としては、I3−/I系の電解質、Br3−/Br系の電解質などのレドックス電解質等が挙げられるが、酸化還元対を構成する酸化体がI3−であり、かつ、前記酸化還元対を構成する還元体がIであるI3−/I系の電解質が好ましく、LiI、NaI、KI、CsI、CaIなどの金属ヨウ化物、およびテトラアルキルアンモニウムヨーダイド、ピリジニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイドなど4級アンモニウム化合物のヨウ素塩などのヨウ化物と、Iとの組み合わせが挙げられる。このような電解液32において、特にヨウ素系レドックス溶液からなる電解質が用いられる場合には、正極Pは白金又は導電性炭素材料からなること、及び触媒粒子が白金又は導電性炭素材料からなることが好ましい。
電解液32を構成する溶剤としては、例えば、
エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート化合物,3−メチル−2−オキサゾリジノンなどの複素環化合物,
ジオキサン、ジエチルエーテルなどのエーテル化合物,
エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテルなどのエーテル類,
メタノール、エタノールなどのアルコール類,
エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール類,
アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル化合物,
ジメチルスルフォキシド、スルフォランなど非プロトン極性物質
などが好ましく挙げられる。
電解液32の濃度は、電解質や溶剤の種類などにより適宜設定すればよく、例えば、0.01〜1.5モル/リットル、好ましくは0.01〜0.7モル/リットルである。具体的な電解液の一例としては、リチウムアイオダイド0.06モル/リットル、ヨウ素0.06モル/リットル、ターシャルブチルピリジン0.3モル/リットルの濃度となるようにそれぞれをアセトニトリルに溶解させたものが挙げられる。
色素増感型太陽電池30の形成方法としては、負極Mを成す半導体電極10と、白金を担持させた正極Pを対面させ、アイオノマー等の有機材料を用いてこれら負極Mと正極Pとを熱融着させて封止固定し、更に外周部をガスバリヤー性のある材料で封止する方法などが挙げられる。
以上のように、本発明の半導体電極10を用いた色素増感型太陽電池30によれば、多孔質層13と基板11の一面11aを成す透明電極膜15との間に、針状結晶の酸化チタン膜12を形成することで、多孔質層13と透明電極膜15との間の電荷の移動が低抵抗で行なわれる(電荷の移動が促進される)ので、色素増感型太陽電池30の光電変換効率を高めることができ、高い変換効率の高性能な色素増感型太陽電池を実現することが可能になる。
以下、本発明の半導体電極を負極に用いた色素増感型太陽電池の実施例を列記する。
「実施例1」
使用した基板はソーダライムガラス板に透明導電膜を形成したガラス板(日本板硝子製)を切断して厚み3mm、5cm角にしたガラス板を用いた。このガラス板にスパッタリング法により、基板面に対して垂直方向に酸化チタンの(110)面の結晶軸を結晶成長させた、針状ないし柱状の酸化チタン膜を形成した。この際、DCマグネトロンスパッター装置を用いて、ターゲットを金属Tiの外径50mm、厚み3mmのものを用いた。基板となるガラス板とターゲット間距離は1cmに設定し、10−3torrにて、アルゴンガスに酸素を5%程度加えて、100Wの投入電力にて二時間成膜した。この結果、透明導電膜を成膜したガラス基板上に図4に示すような酸化チタン膜が成長した。
この酸化チタンは図5に示すように(110)面における回折が強く観察され、(110)面に垂直な軸が結晶成長し配向した組織であることが確認された。この配向した組織の膜厚は2μmであった。この酸化チタンの結晶膜の上にスクリーン印刷法により酸化チタンペースト(SOLARONIX 製品名:Nanoxide HT)を20μmの厚みで塗布した。塗布した膜を450℃で1時間焼成した。この後、ルテニウム錯体系の色素ルテニウム535(SOLARONIX 製品名: ルテニウム535)を濃度5×10−4モル/リットルにしたエタノール溶液に浸漬して8時間保持した。そして無水エタノールに浸漬して過剰の色素を取り除き、乾燥した。前述した透明電極膜を形成する際には、ガラス板の周端部から3mmの部分には酸化チタンペーストが付かないように印刷を行い、このガラス板の周端部には外側から内側に厚み60μmのハイミラン(三井デュポンポリケミカル社製:スペーサS(商品名:「ハイミラン」))を幅3mmで付着させた。
対極となる正極として、導電性膜を形成したガラス基板にはスパッタリング法によりPtを200nm成膜し、ドリルにより直径1mm径の穴を二箇所 対角線方向に両端に形成した。この正極と負極のガラス基板間に50gf/cmの荷重を掛けた。この状態において120℃でハイミラン(三井デュポンポリケミカル社製)により熱融着させた。この作製した色素増感型太陽電池での多孔質層の空隙量は同様な条件で10cm角のサイズにして、厚みは触針式の膜厚計で測定し、20℃で水を含浸させて乾燥後の重量変化から膜の空隙率を測定した。このサンプルの空隙率は33パーセントであった。
作製したセルにLiIとIを溶かしたアセトニトリル電解液を注入口より入れて、セル全体に均一になるように注入した。このサンプルの多孔質層の構造をFE−SEMで観察し、引き続き光電変換特性を調べた。また、比較例として、上述した針状結晶の酸化チタン膜を形成せずに、それ以外の構成は同様な、従来の半導体電極を形成した。
そして、この本発明例と比較例の半導体電極をそれぞれ用いた色素増感型太陽電池の短絡電流密度(Jsc)、開放電圧(Voc)、フィルファクタ(F.F.)、及びエネルギー変換効率(η(%))をそれぞれ測定した。なお、色素増感型太陽電池のエネルギー変換効率(η(%))は、下記式(A)で表される。ここで、下記式(A)中、P0は入射光強度[mWcm−2]、Vocは開放電圧[V]、Jscは短絡電流密度[mA・cm−2]、F.F.は曲線因子(Filling Factor)を示す。
η=100×(Voc×Jsc×F.F.)/P0…(A)
電池特性評価試験は、ソーラーシミュレータ(山下電装製、商品名;「YS−100H型」)を用い、AMフィルター(AM1.5)を通したキセノンランプ光源からの疑似太陽光の照射条件を、100mW/cmとする(いわゆる「1Sun」の照射条件)測定条件の下で行った。光電変換効率の結果を表1に示す。
Figure 2008152949
表1に示す結果によれば、透明導電膜を形成したガラス基板に、スパッター装置を用いて垂直方向に結晶軸が選択的に成長し配向した組織からなる酸化チタン膜を形成したものを用いて作製した本発明例の色素増感型太陽電池は、従来例の色素増感型太陽電池と比較して光電変換効率が著しく改善することが分かった。
また、上述した実施例1で作成した透明導電膜の上に形成される結晶配向性(針状結晶)の酸化チタン膜の厚みをスパッター時間により変えて作製し、同様に色素増感型太陽電池を作製して評価を行った。この時の結晶配向性の酸化チタン膜の厚みと、光電変換効率の関係を表2に示した。
Figure 2008152949
表2に示す結果によれば、少なくとも透明導電膜の上に形成した結晶配向性の酸化チタンの膜厚としては、0.5μm以上が特に好ましいことが分かった。
「実施例2」
使用した基板は、ソーダガラス板に透明導電膜を形成したガラス板(日本板硝子製) を切断して厚み3mm、5cm角にしたガラス板を用いた。このガラス板にスパッタリング法により基板面に対して垂直方向に結晶軸が選択的に成長した、針状ないし柱状の酸化チタン膜を形成した。この酸化チタン膜はX線解析やSEMの観察から基板面に対して垂直方向に酸化チタンの(110)面の結晶軸を結晶成長させた、針状ないし柱状の酸化チタン膜であった。この際、DCマグネトロンスパッター装置を用いて、ターゲットを金属Tiの外径50mm、厚み3mmのものを用いた。基板となるガラス板とターゲット間距離は1cmに設定し、10−3torrにて、アルゴンガスに酸素を5%程度加えて、100Wの投入電力にて二時間成膜した。
この酸化チタン膜の上にスクリーン印刷法により酸化チタンペースト(SOLARONIX 製品名:Nanoxide HT)を5μmの厚みで塗布した。塗布した膜を450℃で1時間焼成した。更にこの上にスクリーン印刷法により酸化チタンペーストを20μmの厚みで塗布した。用いた酸化チタンペーストは酸化チタン量として45重量パーセントで、その他はエチルセルロース系のバインダーとテルピオーネの溶媒からなる。ブルックフィールド社製回転粘度計を用いて測定した粘度は、14号スピンドル・10rpm・25℃の条件で120Pa・sであった。また酸化チタンは粒子サイズ25nmのアナターゼ型結晶構造の酸化チタン(Degussa社製、商品名;「P25」)を用いた。ペースト塗布後、大気中にて450℃で1時間の焼成を行った。
この後、ルテニウム錯体系の色素ルテニウム535(SOLARONIX 製品名: ルテニウム535)を濃度5×10−4モル/リットルにしたエタノール溶液に浸漬して8時間保持した。そして無水エタノールに浸漬して過剰の色素を取り除き、乾燥した。このような半導体電極を形成する際には、ガラス基板の周端部から3mmの部分には酸化チタンペーストが付かないように印刷を行い、このガラス基板の周端部には外側から内側に厚み60μmのハイミラン(三井デュポンポリケミカル社製のスペーサS(商品名:「ハイミラン」))を幅3mmで付着させ、50gf/cmの荷重を掛けた。この状態において120℃でハイミランにより正極と負極とをスペーサSを介して熱融着させた。
対極となる正極として、導電性膜を形成したガラス基板にはスパッタリング法によりPtを200nm成膜し、ドリルにより直径1mmの径の穴を二箇所、対角線方向に両端に形成した。この作製した色素増感型太陽電池での多孔質層の空隙量は同様な条件で10cm角のサイズにして、厚みは触針式の膜厚計で測定し、20℃で水を含浸させて乾燥後の重量変化から膜の空隙率を測定した。このサンプルの空隙率は45パーセントであった。
作製した色素増感型太陽電池と、比較例の色素増感型太陽電池(針状結晶の酸化チタン膜を形成せずに、それ以外の構成は同様)の短絡電流密度(Jsc)、開放電圧(Voc)、フィルファクタ(F.F.)、及びエネルギー変換効率(η(%))を測定した。光電変換効率の測定条件は前述の実施例1と同一とした。こうした光電変換効率の測定結果を表3に示す。
Figure 2008152949
表3に示す結果によれば、実施例1と同様に、透明導電膜を形成したガラス基板にスパッター装置を用いて垂直方向に結晶軸が選択的に成長し配向した組織からなる酸化チタン膜を形成した本発明例の色素増感型太陽電池は、従来例の色素増感型太陽電池と比較して光電変換効率が著しく改善することが分かった。
「実施例3」
使用したガラス基板はソーダガラス板に透明導電膜を形成したガラス板(日本板硝子製)を切断して厚み3mm、5cm角にしたガラス板を用いた。このガラス板にスパッタリング法により基板面に対して垂直方向に結晶軸が選択的に成長した、針状ないし柱状の酸化チタン膜を形成した。この酸化チタン膜はX線解析やSEMの観察から基板面に対して垂直方向に酸化チタンの(110)面の結晶軸を結晶成長させた、針状ないし柱状の酸化チタン膜であった。この際、DCマグネトロンスパッター装置を用いて、ターゲットを金属Tiの外径50mm、厚み3mmのものを用いた。基板となるガラス板とターゲット間距離は1cmに設定し、10−3torrにて、アルゴンガスに酸素を5%程度加えて、100Wの投入電力にて二時間成膜した。この酸化チタン膜の上にスクリーン印刷法により酸化チタンペースト(SOLARONIX 製品名:Nanoxide HT)を1μmの厚みで塗布した。塗布した膜を450℃で1時間焼成した。
更にこの上にスクリーン印刷法により酸化チタンペーストを20μmの厚みで塗布した。用いた酸化チタンペーストは酸化チタン量として45重量パーセントで、その他はエチルセルロース系のバインダーとテルピオーネの溶媒からなる。ブルックフィールド社製の回転粘度計を用いて測定した粘度は、14号スピンドル・10rpm・25℃の条件で120Pa・sであった。また酸化チタンは粒子サイズ25nmのアナターゼ型結晶構造の酸化チタン(Degussa社製、商品名;「P25」)を用いた。ペースト塗布後、大気中にて500℃、1時間の焼成を行った。この後、ルテニウム錯体系の色素ルテニウム535(SOLARONIX 製品名: ルテニウム535)を濃度5×10−4モル/リットルにしたエタノール溶液に浸漬して8時間保持した。そして無水エタノールに浸漬して過剰の色素を取り除き、乾燥した。
この半導体電極を形成する際にはガラス板の周端部から3mmの部分には酸化チタンペーストが付かないように印刷を行い、このガラス基板の周端部には外側から内側に厚み60μmのハイミラン(三井デュポンポリケミカル社製のスペーサS(商品名:「ハイミラン」))を幅3mmで付着させ、50gf/cmの荷重を掛けた。この状態において120℃でハイミランにより正極と負極とをスペーサSを介して熱融着させた。
対極となる正極として、導電性膜を形成したガラス基板にはスパッタリング法によりPtを200nm成膜し、ドリルにより直径1mmの径の穴を二箇所、対角線方向に両端に形成した。この作製した色素増感型太陽電池での多孔質電極膜の空隙量は同様な条件で10cm角のサイズにして、厚みは触針式の膜厚計で測定し、20℃で水を含浸させて乾燥後の重量変化から膜の空隙率を測定した。このサンプルの空隙率は48パーセントであった。
作製した色素増感型太陽電池と比較例の色素増感型太陽電池(針状結晶の酸化チタン膜を形成せずに、それ以外の構成は同様)の短絡電流密度(Jsc)、開放電圧(Voc)、フィルファクタ(F.F.)、及びエネルギー変換効率(η(%))を測定した。光電変換効率の測定条件は前述と同一とした。光電変換効率の結果を表4に示す。
Figure 2008152949
表4に示す結果によれば、透明導電膜を形成したガラス基板にスパッター装置を用いて垂直方向に結晶軸が選択的に成長し配向した組織からなる酸化チタン膜を形成した本発明例の色素増感型太陽電池は、従来例の色素増感型太陽電池と比較して光電変換効率が著しく改善することが分かった。
「実施例4」
使用したガラス基板はソーダガラス板に透明導電膜を形成したガラス板(日本板硝子製)を切断して厚み3mm、5cm角にしたガラス板を用いた。このガラス板にスパッター法により基板面に垂直方向に結晶軸が選択的に成長した、針状ないし柱状の酸化チタン膜を形成した。この際、DCマグネトロンスパッター装置を用いて、ターゲットを金属Tiの外径50mm、厚み3mmのものを用いた。基板となるガラス板とターゲット間距離は1cmに設定し、10−3torrにて、アルゴンガスに酸素を5%程度加えて、100Wの投入電力にて二時間成膜した。
この針状結晶の酸化チタン膜の上にスクリーン印刷法により酸化チタンペースト(SOLARONIX 製品名:Nanoxide HT)を1μmの厚みで塗布した。塗布した膜を450℃で1時間焼成した。更にこの上にスクリーン印刷法により酸化チタンペーストを20μmの厚みで塗布した。用いた酸化チタンペーストはルチル型結晶構造の針状酸化チタン(石原産業製)と酸化チタン(SOLARONIX 製品名:Nanoxide)の粉を等量で混ぜたものを酸化チタン量として45重量パーセントで、その他はエチルセルロース系のバインダーとテルピオーネの溶媒からなる。ペースト塗布後、大気中にて475℃で1時間の焼成を行った。この後、ルテニウム錯体系の色素ルテニウム535(SOLARONIX 製品名: ルテニウム535)を濃度5×10−4モル/リットルにしたエタノール溶液に浸漬して8時間保持した。そして無水エタノールに浸漬して過剰の色素を取り除き、乾燥した。
この半導体電極を形成する際にはガラス板の周端部から3mmの部分には酸化チタンペーストが付かないように印刷を行い、このガラス基板の周端部には外側から内側に厚み60μmのハイミラン(三井デュポンポリケミカル社製のスペーサS(商品名:「ハイミラン」))を幅3mmで付着させ、50gf/cmの荷重を掛けた。この状態において120℃でハイミランにより正極と負極とをスペーサSを介して熱融着させた。
対極となる正極として、導電性膜を形成したガラス基板にはスパッタリング法によりPtを200nm成膜し、ドリルにより直径1mmの径の穴を二箇所、対角線方向に両端に形成した。この作製した色素増感型太陽電池での多孔質電極膜の空隙量は、同様な条件で10cm角のサイズにして、厚みは触針式の膜厚計で測定し、20℃で水を含浸させて乾燥後の重量変化から膜の空隙率を測定した。このサンプルの空隙率は52パーセントであった。
作製した色素増感型太陽電池と比較例の色素増感型太陽電池(針状結晶の酸化チタン膜を形成せずに、それ以外の構成は同様)の短絡電流密度(Jsc)、開放電圧(Voc)、フィルファクタ(F.F.)、及びエネルギー変換効率(η(%))を測定した。光電変換効率の測定条件は前述と同一とした。光電変換効率の結果を表5に示す。
Figure 2008152949
表5に示す結果によれば、透明導電膜を形成したガラス基板にスパッター装置を用いて垂直方向に結晶軸が選択的に成長し配向した組織からなる酸化チタン膜を形成した本発明例の色素増感型太陽電池は、従来例の色素増感型太陽電池と比較して光電変換効率が著しく改善することが分かった。
本発明の酸化チタン膜を備えた半導体電極の一例を模式的に示す断面図である。 図1の要部を拡大した模式図である。 本発明の色素増感型太陽電池の一例を模式的に示す断面図である。 本発明の酸化チタン膜を拡大して示した顕微鏡写真である。 本発明の酸化チタン膜の結晶配向を示す測定グラフである。
符号の説明
10 半導体電極、11 基板、12 酸化チタン膜、13 多孔質層、15 透明電極膜、30 色素増感型太陽電池。


Claims (3)

  1. 基板の一面に形成された酸化チタン膜であって、この酸化チタン膜は、前記基板の一面から垂直方向に結晶軸が選択的に成長した針状結晶を成すアナターゼ型酸化チタンであることを特徴とする酸化チタン膜。
  2. 少なくとも一面が導電性の基板と、この基板の一面に積層された酸化チタン膜と、この酸化チタン膜に重ねて積層された多孔質層とを有する半導体電極であって、
    前記酸化チタン膜は、前記基板の一面から垂直方向に結晶軸が選択的に向けて成長した針状結晶を成すアナターゼ型酸化チタンであり、
    前記多孔質層は、多孔質の金属酸化物に色素を吸着させたものであることを特徴とする半導体電極。
  3. 請求項2記載の半導体電極を負極に用いたことを特徴とする色素増感型太陽電池。

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