本発明の実施形態に係る落下防止システム(墜落防止システム)101は、図1で示すように、親綱103と錘105とリトラクタ式墜落防止器具107(図18参照)とを備えている。
親綱103は、家屋109の一方の側における地面GLの付近から、棟111を含む家屋109の屋根113の上を通り、家屋109の他方の側における地面GLの付近まで延伸して設置(展開)されるようになっている。
まず、親綱展開具(親綱案内具)2を用いた親綱103の家屋109への設置(展開)について、図2〜図10を参照しつつ説明する。
図2に示された親綱展開具2は、筒体4と、呼び線6と、頭部としてのボール8とを備えている。筒体4は、たとえば12本の節(筒体構成部材)を備えている。すなわち、筒体4は、節10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g、10h、10i、10j、10k、10mを備えている。節10aは、手元側に位置する。節10aから節10mに向かって順に先端側に位置している。
図2及び図3に示される節10aの形状は、筒状である。節10aは、その長手方向に延びる空間12aが形成されている。この空間12aは、節10aの長手方向に貫通している。節10aの太さは、元端側から先端側に向かって細くなっている。節10aの太さと同様に空間の外径も元端側から先端側に向かって細くなっている。
図2に示されるように、節10aの元端側端面の空間12aの開口は、栓14で塞がれている。図3に示されように、節10aの筒状の壁16には入口孔18が形成されている。この入口孔18は、節10aの壁16を空間12aに貫通している。この入口孔18は、節10aの元端側から先端側に向かって径方向外側から内側に傾斜して貫通しているが、入口孔18が傾斜せずに貫通していてもよい。すなわち、入口孔18の中心軸が、円柱形状に近似している円錐台状の空間12aの中心軸に対して直交していてもよい。節10aの先端部には、キャップ止め20が取り付けられている。このキャップ止め20には、孔22が形成されている。
節10bの形状は、節10aと同様に筒状である。節10bは、その長手方向に延びる空間12bを備えている。この空間12bは、節10bの長手方向に貫通している。節10bの太さは、元端側から先端側に向かって細くなっている。節10bの太さと同様に空間12bの外径も元端側から先端側に向かって細くなっている。節10cから節10mの形状は、その太さ及び空間の外形が異なるが、節10bと同様の形状である。
図4に示されるように、節10mの空間12mは、節10mの先端で開口している。この先端の開口は、出口孔24と称する。
この筒体4では、節10aの空間12aに節10bが挿入されている。節10bは、節10aに対してスライド可能に挿入されている。節10bの元端の太さは、節10aの先端の空間12aの外径より大きい。節10bの元端は節10aの先端の空間12aから抜けないようにされている。同様にして、節10bに節10cがスライド可能に挿入されている。この様にして、内側の節はその径方向外側に隣り合う節の空間に通されている。
図2に示される呼び線6は、電線、電話線、光ケーブル等を保護管内に引き込み配線する際に用いられる引き込み用線材である。図2及び図4に示されるように、この呼び線6は、呼び線本体26、収納ケース28及び先端具30を備えている。呼び線本体26の材料としては、繊維強化プラスチック(FRP)、ポリエチレンテレフタラート(PET)等が例示される。使用しないときに、この呼び線本体26は、収納ケース28に収納されている。使用するときに、呼び線本体26が収納ケース28から引き出される。呼び線本体26の先端には、先端具30が連結されている。図示されないが、この先端具30には雄ねじが形成されている。
図4に示されるように、ボール8は、本体32、取付具34及び環36を備えている。本体32としては、ポリ塩化ビニル(PVC)製の空気入りボール、ゴム製ボールなどが例示される。このボール8は、頭部の一例である。頭部の外表面は、家屋42(図6等参照)の突起物に引っ掛かり難い滑らかな曲面であることが好ましい。頭部の形状は、特に球体が好ましい。
取付具34は、本体32に固定されている。この取付具34には、雌ねじが形成されている。取付具34には、環36が取り付けられている。この取付具34の雌ねじに、呼び線6の先端具30の雄ねじがねじ込まれて締結されている。このボール8は、呼び線6に着脱可能に取り付けられている。このボール8が呼び線6に着脱可能に取り付けられていればよく、ねじ締結以外の取付方法が用いられてもよい。例えば、取付具34と先端具30とが面ファスナを構成していて、ボール8が呼び線6に取り付けられてもよい。
図5(a)は、筒体4の全長が縮められた状態が示されている。節10aの空間12aに節10bが挿入されている。節10bの空間12bに節10cが挿入されている。同様にして、節10cから節10mまでが順に挿入されている。節10aには、節10bから節10mが収納されている。キャップ止め20には、キャップ38が取り付けられている。キャップ38により、孔22は塞がれている。この筒体4は、持ち運びが容易にされている。
図5(a)の状態から、キャップ38が外される。孔22から、節10mから節10bまでの、内側の節が引き出される。節10bの元端は節10aの先端の空間12aから抜けないようにされている。節10bの元端部は、節10aの先端部に重なり合っている。同様にして、節10bから節10mまで、径方向内側の節の元端部が、径方向外側の節の先端部に重なり合っている。この様にして、筒体4は、その全長を伸ばされる。節10aから節10mは、内側の節が径方向外側に隣り合う節から抜け止めされていればよく、元端側から先端側まで太さが一定であってもよい。
図5(b)には、筒体4が伸ばされた状態の一部が示されている。図示されないが、この伸ばされた筒体4は、節10aの空間12aから節10mの空間12mまでを連通する空間が形成されている。この複数の節10aから節10mを連通する空間が案内孔40である。図3には、この案内孔40の手元側の一部が示されている。この筒体4では、節10aが手元部である。図4には、この案内孔40の先端側の一部が示されている。この筒体4では、節10mが先端部である。
図5(b)には、入口孔18から案内孔40に挿入される前の呼び線6が示されている。この呼び線6の先端具30が入口孔18から案内孔40に挿入される。この呼び線6が、案内孔40に押し込まれていく。呼び線6の先端具30は、節10aから挿入されて、節10mに向かって押し込まれていく。この先端具30は、節10mの出口孔24から押し出される。このようにして、呼び線6は、筒体4に通される。
図5(c)は、呼び線6が筒体4を通された状態が示されている。この図5(b)から図5(c)までは、筒体4の案内孔40に、筒体4の手元部から先端部に向かって呼び線6が送り込まれるステップである。
更にこの実施形態では、先端具30の雄ねじが、ボール8の取付具34の雌ねじにねじ込まれる。呼び線6にボール8が取り付けられる。図5(d)は、呼び線6にボール8が取り付けられた状態が示されている。
図6(a)は、図5(d)に示された筒体4が家屋42に立て掛けられた状態が示されている。この図6(a)は、筒体4が、節10mを屋根44の一方側44aの上方に位置するように配置されるステップである。
図6(a)の状態で、呼び線6は、更に入口孔18から案内孔40に押し込まれる。呼び線6の先端具30及びボール8は、屋根44(113)の一方側44aから他方側44bに向かって延びていく。呼び線6の筒体4から突き出された部分は、その部分の自重と、ボール8の重さとにより、徐々に湾曲させられる。この湾曲により、先端具30及びボール8が下向きに下がっていく。
図6(b)は、呼び線6が一方側44aから他方側44bに延ばされた状態が示されている。図6(a)の状態から図6(b)の状態に至るまでが、呼び線6が更に筒体4の手元部から先端部に向かって送りこまれて屋根44の一方側44aから他方側44bに延ばされて配置されるステップである。
図6(b)の状態から、更に、呼び線6は、入口孔18から案内孔40に押し込まれる。呼び線6の筒体4から突き出された部分の湾曲により、先端具30及びボール8は、地面に向かって下がっていく。図6(c)には、この様にして、先端具30及びボール8が地面に近付いた状態が示されている。
ボール8の環36に、親綱46(103)の先端部が結びつけられる。図6(d)には、呼び線6の先端具30が、ボール8を介して親綱46の先端部に連結された状態が示されている。図6(c)の状態から図6(d)の状態に至るまでが、呼び線6に親綱46が連結されるステップである。
図6(d)の状態から、呼び線6は、入口孔18から引き戻される。図7(a)には、呼び線6の先端具30及びボール8が、屋根44の上方に引き戻された状態が示されている。図7(b)には、この先端具30及びボール8が、屋根44の他方側44bから一方側44aに向かって引き戻された状態が示されている。親綱46の先端部は、他方側44bから一方側44aに向かって送られている。図6(d)の状態から図7(b)の状態に至るまでが、呼び線6が手元部で引き戻されて親綱46の先端部が屋根44の他方側44bから一方側44bに向かって送られるステップである。
なお、図6や図7(a)、(b)で示す状態では、筒体4と屋根44との交差角度θができるだけ小さくなっていることが望ましい。このようにすると、呼び線6の延出量を増やすことなく、呼び線6を屋根44を超えて延伸させることができる。
図6(b)の状態から、筒体4が地面に置かれる。図7(c)には、筒体4が地面に置かれた状態が示されている。呼び線6の先端具30及びボール8が下方に下ろされている。図7(b)の状態から図7(c)の状態に至るまでが、呼び線6の先端具30が屋根44の一方側44aから下方に下ろされることで親綱46が家屋42(109)の屋根44の他方側44bから一方側44aまで延ばされて配置されるステップである。なお、筒体4の全長が縮められて、呼び線6の先端具30が屋根44の一方側44aから下方に下ろされてもよい。
この図7(c)の状態で、親綱46の先端部がボール8の環36から外される。親綱46の先端部が重錘としての水袋48(105)に連結される。この水袋48は、その袋の中に水が入れられた重錘である。同様にして、親綱46の後端部が水袋49(105)に連結される。図7(d)は、この様にして、親綱46が屋根44の上に展開された状態が示されている。図7(c)の状態から図7(d)の状態に至るまでが、親綱46の両端が固定されるステップである。
この親綱展開具2では、筒体4の案内孔40を通して呼び線6が送られる。呼び線6が、家屋42の凹凸部に引っ掛かることが防止される。呼び線6を容易に送り出すことができる。
呼び線本体26では、筒体4の出口孔24から突出させられた部分は、その自重、先端具30及びボール8の重さで湾曲する。この湾曲により、徐々に先端具30及びボール8が下方に下がる。これにより、筒体4の節10mが屋根44の一方側44aの上方に位置した状態で、先端具30及びボール8が他方側44b側へ送られうる。勢いをつけて先端具30を送る必要がないので、屋根材等を損傷することが抑制される。
更に、ボール8を備えることで、より一層、屋根材等を損傷することが抑制される。また、家屋42の樋などの凹凸部に引っ掛かることが抑制される。更に、筒体4は伸縮可能である。ボール8は着脱可能にされている。この親綱展開具2は、携帯に適している。
この親綱展開具2を用いた親綱展開方法では、地上から親綱46を展開できる。この親綱展開方法は、安全性に優れている。親綱46の展開が容易にされている。親綱展開具2により、家屋42の損傷が抑制されている。
親綱展開具2及び移動用ロープ56を用いた作業方法では、梯子52を昇り始めるときから地上に降りるときまで、作業者50の転落事故の発生が抑制されている。この作業法は、安全性に優れている。
この筒体4は12本の節を備えているが、本発明に係る筒体は1本の筒(節)から構成されてもよい。また、この筒体は、筒体4と同様の構造を備える、2本以上の複数の節を備えていてもよい。
さらに、親綱展開具2において、たとえば入口孔18を削除し、図2に破線で示すように、筒体4(節10a)の基端部(底)から呼び線6を挿入する構成であってもよい。これにより、親綱展開具2を最大に伸ばしてなくても、呼び線6を筒体4内に挿入し延伸させることができる。また、筒体4の長さが若干不足していても、親綱展開具2を用いて呼び線6を延伸させて親綱46を設置することができる。
次に、親綱46を使用した作業者50の作業状態について説明する。図8には、この親綱46を使用した作業者50の作業状態が示されている。図7(d)に示された親綱46の近傍で、梯子52(175)が家屋42に立て掛けられる。作業者50は、安全帯(胴ベルト;胴ベルト型の安全帯)54を装着している。
この移動用ロープ56は、リトラクタ式墜落防止器具107(図18等参照)を構成している連結具57、ロープ本体58、巻取器60と、グリップ62を備えている。なお、ロープ本体58の一端に連結具57が連結されている。ロープ本体58の他端が巻取器60に連結されている。巻取器60は、ロープ本体58の他端部を、巻取り繰り出し可能に巻き取っている。
この巻取器60がグリップ62に連結されている。このグリップ62は、親綱46に取り付けられている。この様にして、この安全帯54と、移動用ロープ56と、親綱46とが連結されている。更に説明すると、グリップ62(図9参照)は、常態では、歯が親綱46を軽く押圧し固定するように、歯をバネ等で軽く付勢している。そして、親綱46に対してスライド可能になっている。人の体重がかかったときに、歯(爪)が親綱46に食い込み、親綱46に対して固定されるようになっている。
巻取器60には、急激にロープ本体58が繰り出されると、繰り出しを阻止する自動ロック機構が備えられている。この自動ロック機構は、一般に周知であり、ここではその詳細な説明を省略する。この自動ロック機構としては、ロープ本体58を巻き取っているドラムの回転の遠心力を利用して、巻取器60の本体とドラムとの間でロック爪を係合させる機構が例示される。また、移動用ロープ56は、巻取器60を備えなくてもよい。移動用ロープ56(連結綱;親綱式スライド器具115;図17等参照)が、連結具57、ロープ本体58及びグリップ62から構成されてもよい。
グリップ62についてさらに詳しく説明すると、図9に示されるように、グリップ62は、本体64、第一爪66、第二爪68、握り桿70、連結環72及び弾性体としてのバネ74を備えている。バネ74の付勢力により、本体64と第一爪66及び第二爪68とが親綱46を挟み込んでいる。挟み込むことで、グリップ62は、親綱46に固定される。本体64、第一爪66、第二爪68、握り桿70及びバネ74は、親綱46に対してのスライドを阻止するスライドロック機構を構成している。連結環72の孔76を利用して巻取器60が取り付けられる。
このグリップ62では、矢印Xで示された一方向に連結環72が引かれると、第一爪66及び第二爪68はバネ74の付勢力に抗して回動する。本体64と第一爪66及び第二爪68とが親綱46の挟み込みを解除する。このグリップ62のスライドロック機構が解除され、グリップ62は親綱46に沿ってスライド可能にされる。このグリップ62では、連結環72に代えて、握り桿70を一方向に移動させることでも、第一爪66及び第二爪68はバネ74の付勢力に抗して回動する。
図8では、この親綱46に移動用ロープ56のグリップ62が連結される。連結具57が安全帯54に連結される。この様にして、親綱46と移動用ロープ56と安全帯54とが連結される。この移動用ロープ56は、安全帯54を介して作業者50に連結されている。この様にして、親綱46が移動用ロープ56を介して作業者50に連結されるステップが行われる。
作業者が、梯子52を昇る。グリップ62は一方向に(図8上方向きに)連結環72を回動させることで又は握り桿70を移動させることで、作業者50の移動に伴い、親綱46に連結されたまま、親綱46に沿ってスライドする。この移動用ロープ56は、スライドロック機構により、親綱46に対してスライド可能な状態とスライドしない状態とを切り替え可能に構成されている。
図10は、屋根44の上での作業状態が示された説明図である。屋根44の上では、スライドロック機構により、グリップ62は、親綱46に固定されている。親綱46から離れる向きに作業者50が移動すると、巻取器60からロープ本体58が繰り出される。これにより、作業者50は、所定の範囲で移動可能に作業することができる。
図10に示されるように、親綱46の先端は梯子52に連結されていてもよい。また、親綱の先端部及び後端部のいずれか一方又は両方が、家屋に連結されていてもよい。
この梯子52を昇る行為又は屋根44の上で作業することは、いずれも作業者50が移動用ロープ56に連結された状態で作業を行うステップである。
通常、グリップ62は、スライドロック機構により親綱46に固定されている。作業者50が屋根44や梯子52から落下すると、巻取器60の自動ロック機構が働く。これにより、作業者50が高所から落下することが抑制されている。なお、屋根44上では、親綱46に巻取器60が連結され、巻取器60がロープ本体58を繰り出し可能な範囲で作業がされてもよい。
ここで、落下防止システム101の説明に戻る。
落下防止システム101の親綱103は、前述したようにまた図1等で示すように、家屋109の屋根113の棟111を通り設置される。棟111とは、屋根113の一番高いところで水平方向に延伸している稜線部分である。親綱103は、棟111を有する屋根113を備えた家屋109に設置される。親綱103が設置される屋根113の種類として、切妻、寄棟、入母屋、片流れ、鋸屋根、マンサード、かまぼこ屋根等を掲げることができる。
親綱103を屋根113に設置した状態について、切妻屋根を例に掲げて詳しく説明する。
図1で示すように、親綱103の長手方向の中央部が、棟111の上部で棟111に接している。親綱103の長手方向の中央部から一方の側に、親綱103の一部である第1の斜面延伸部位117と第1の垂直延伸部位119とが延びている。
第1の斜面延伸部位117は、棟111の一方の側に存在している屋根113の斜面の上で屋根113の斜面に接触し、棟111から屋根113の一方の下端部まで、斜め下方であって棟111と直交する方向に延びている。
第1の垂直延伸部位119は、屋根113の一方の下端部から鉛直方向で下方に延びている。第1の垂直延伸部位119の先端(下端)は、家屋109の一方の側における地面GLの近傍に位置しているが、第1の垂直延伸部位119の先端とこの近傍の部位が地面GLに接地していてもよい。
親綱103の長手方向の中央部から他方の側に延びている第2の斜面延伸部位(図1では図示せず)と第2の垂直延伸部位(図1では図示せず)とは、棟111を含み鉛直方向に展開している平面に対して、第1の斜面延伸部位117、第1の垂直延伸部位119と対称になっている。
錘105は、上部が開口しているバケツで構成されており、親綱103の長手方向の一方の端部で親綱103に接続され、家屋109の一方の側における地面GLに設置されている。また、錘105は、親綱103の長手方向の他方の端部で親綱103に接続され、家屋109の他方の側における地面GLに設置されている。
家屋109の両側に設置されている一対の錘105で、親綱103が引っ張られ親綱103に僅かな張力が発生している(親綱103を張設している)。ただし、親綱103に生じている張力は、屋根113に設置された親綱103が位置ずれを起こさないようにする程度の小さなもの(たとえば、1kgf〜数kgf程度)である。したがって、錘105は、それらの重量のほとんどを地面GLで支えられている。たとえば、家屋109の一方の側の錘105の重量を75kgfとすれば、錘105は、75kgfよりも僅かに小さい力(たとえば、74kgf程度の力)で地面GLを押している。家屋109の他方の側の錘105も同様である。
錘105を構成しているバケツとして、たとえば、図16で示すように、布バケツ(水のう;ズック製のバケツ)が採用されている。布バケツ105は、防水シートで構成され上部が開口している本体部(容器)121と、この本体部121に設けられた取手123と、本体部121を補強している補強部125とを備えて構成されている。
本体部121は、円筒状等の筒状に形成されている側壁部127と、この側壁部127の一方の開口部(底側の開口部)を塞いでいる円形状の底壁部129とを備えて構成されている。なお、底壁部129が矩形状等、円形以外の形状であってもよい。
取手123は、第1の取手構成部材131と第2の取手構成部材133とで構成されている。第1の取手構成部材131は、布等の材料で厚めの帯状に形成されており、長手方向の一端部側の部位が、本体部121の側壁部の外面に接触して係合し本体部121に一体的に設けられている。さらに、長手方向の一端部側の部位は、本体部121の側壁部127の開口部301のところから底壁部129のところ(側壁部127と底壁部129との境界)まで延びている。
第1の取手構成部材131の長手方向の他端部側の部位も、長手方向の一端部側の部位と同様にして、本体部121の側壁部127の開口部301のところから底壁部129のところまで延びている。また、バケツ105を上方から下方に向かって見ると(平面視すると)、円形状に形成されている底壁部129の外周に側壁部127が位置している。そして、第1の取手構成部材131の他端部側の部位は、底壁部129の中心を中心として、第1の取手構成部材131の一端部側の部位に対し90°ずれたところに位置している。
第1の取手構成部材131の長手方向の中間部は、「U」字状になって、本体部121の開口部301から上方に突出し1つ目の取手123を形成するようになっている。
第2の取手構成部材133も、第1の取手構成部材131と同様にして本体部121に設けられており、1つ目の取手123と同形状の2つ目の取手123を形成するようになっている。バケツ105を平面視すると、第1の取手構成部材131の一端部側の部位と、第1の取手構成部材131の他端部側の部位と、第2の取手構成部材133の一端部側の部位と、第2の取手構成部材133の他端部側の部位とは、円形状に形成されている本体部121の外周を4等分するところに位置している。
また、1つ目の取手123の中間部には、板状の取手接合部材135が一体的に設けられている。取手接合部材135には、面ファスナ136が設けられており、面ファスナ136を係合すると、取手接合部材135が筒状になる。面ファスナ136を係合するときに、2つ目の取手123の中間部が取手接合部材135の筒を貫通しかつ取手接合部材135の筒で2つ目の取手123の中間部を締付けるようにすれば、1つ目の取手123の中間部と2つ目の取手123の中間部とがお互いに一体化される。
補強部125は、第1の取手構成部材131と同様に帯状に形成されている補強部材137で構成されている。そして、補強部材137が、本体部121の開口部301の近傍で開口部301に沿って環状になって本体部121に一体的に設けられていることにより、補強部125が形成されている。補強部125(補強部材137)と各取手構成部材131,133とは、お互いがほぼ直交して係合しており、補強部125と各取手構成部材131,133との係合部では、補強糸で縫い合わされる等によって、補強部125と各取手構成部材131,133とが一体になっている。
ここで、バケツ105について、図16、図28等を参照しつつさらに詳しく説明する。
以下、説明の便宜のため、バケツ105の枡状の本体部121の底壁部(底部)129と開口部301とをお互いに結ぶ方向をバケツ105の高さ方向とし、開口部301側を上側とし、底壁部129側を下側とする。
バケツ105は、上述したように本体部121と補強部125と取手123とを備えて構成されている。本体部121は、内部に水を入れるためのものであり、枡状に形成されている。
補強部125は、帯状の部材で環状に形成されており、本体部121の上端に位置している環状の開口部301に沿って(たとえば開口部301の近くで開口部301とほぼ並行し)箍状になって本体部121に一体的に設けられている。
取手123は、帯状に形成されている。そして、取手123の長手方向の一端部側の部位(長手方向の一端部から長手方向の第1の中間部に至るまでの部位;なお、第1の中間部は長手方向の一端部側に位置している。)が、本体部121(本体部121の所定の第1の部位)に一体的に設けられている。また、取手123の長手方向の他端部側の部位(長手方向の他端部から長手方向の第2の中間部に至るまでの部位;なお、第2の中間部は長手方向の他端部側に位置している。)が本体部121(前記所定の第1の部位から離れている所定の第2の部位)に一体的に設けられている。さらに、取手123の長手方向の中間部の部位(第1の中間部と第2の中間部との間の部位)が「U」字状もしくは「V」字状になって、本体部121の開口部301から延出している。
なお、取手123の長手方向の一端部側の部位の少なくとも一部が補強部125にも一体的に設けられており、取手123の長手方向の他端部側の部位の少なくとも一部が補強部125にも一体的に設けられている。これにより、取手123を本体部121に強固に接合している。
バケツ105の本体部121は、筒状の側壁部127と平板状の底壁部129とを備えて構成されている。
平板状の底壁部129の厚さ方向はバケツ105の高さ方向と一致しており、筒状の側壁部127はバケツ105の高さ方向に起立している。換言すれば、筒状の側壁部127の母線や中心軸はバケツ105の高さ方向に延伸している。補強部125は、側壁部127に設けられている。なお、環状の補強部125が、バケツ105の高さ方向で所定の間隔をあけて並び複数設けられていてもよい。
取手123は、側壁部127で本体部125の開口部301から側壁部127と底壁部129との境界まで延びて設けられている。
底壁部129は、たとえば円板状に形成されている。これにより、側壁部127はほぼ円筒状に形成されている。また、取手123は、たとえば、第1の取手123Aと第2の取手123Bとで構成されている。さらに、各取手123A,123Bの延出長さは、本体部121の深さとほぼ等しくなっている。
ここで、第1の取手123A(第2の取手123B)の延出長さとは、「U」字状もしくは「V」字状になって本体部121の開口部301から延出している長さである(図16の寸法HA2)。取手123が「V」字状に延出している場合のほうが、取手123が「U」字状に延出している場合(図16に示す場合)よりも、延出長さが僅かに大きくなるが、この差は僅かなものである。したがって、「U」字状に延出しようが「V」字状に延出しようが、実用上は、第1の取手123A(第2の取手123B)の延出長さは、一定とみなすことができる。
バケツ105の本体部121の深さは、本体部121の開口部301から本体部121の底壁部129までの寸法である(図16の寸法HA1)。
本体部121の直径(底壁部129の直径;側壁部127の外径;図16の寸法DA1)の値は、取手123の延出長さの値とほぼ等しいか、取手123の延出長さの値よりも僅かに大きくなっている。たとえば、図16に示す寸法HA1が320mm、寸法HA2が320mm、寸法DA1が350mmになっている。本体部121の側壁部127や底壁部129の厚さは、上記各寸法HA1,HA2,DA1に対して実用上無視できる程度に十分小さくなっている。
バケツ105では、本体部121の底壁部129の剛性が本体部121の側壁部127の剛性よりも高くなっている。
すなわち、側壁部127の剛性は、厚手の布程度になっている。これに対して底壁部129の剛性は、硬質の合成樹脂の薄板程度かそれ以上の剛性になっている。そして、バケツ105内(本体部121内)の規定量の水を入れ取手123を上方に引っ張りバケツ105を空中に引っ張り上げても、バケツ105の底壁部129がほぼ平板状の形態を保つようになっている。
さらに、補強部125が設けられており取手123が側壁部127の全高にわたって設けられていることで、バケツ105内の規定量の水を入れ取手123を上方に引っ張りバケツ105を空中に引っ張り上げても、バケツ105の側壁部127が、僅かに樽状に変形するだけでほぼ筒状の形態を保つようになっている。
なお、バケツ105において、第1の取手123Aと第2の取手123Bとが、底壁部129まで延びて底壁部129の外側で「十」字状になっている「十」字状補強部303を構成していてもよい。このようにすれば、バケツ105の底壁部129の変形を一層抑制することができる。
さらに、バケツ105には、目盛り305が設けられている。目盛り305は、本体部121に入れる水の規定量を示すためのものであり、本体部121の内側(内面)に設けられている。目盛り305まで水を入れると、バケツ105の質量(重量)が約25kgになる。
目盛り305は、環状に形成されており、本体部121の側壁部127の内面に設けられている。また、目盛り305の設置高さ(底壁部129と目盛り305との間の距離;図16に示す寸法HA3)は、補強部125の設置高さとほぼ等しくなっている。なお、寸法HA3はたとえば240mmになっている。
さらに説明すると、補強部125を構成している帯状の部材は、この幅方向(図16の寸法BA1で示す方向の寸法)が、本体部121の高さ方向と一致するようにして、本体部121の側壁部127に設けられており、バケツ105(本体部121)の高さ方向では、帯状の補強部125の下端と上端との間に、目盛り305が位置している。
バケツ105についてさらに説明する。
バケツ105は、内側構造体307と底部補強体313と外側構造体319と開口部接合体325と前述したように第1の取手123Aと第2の取手123Bと補強部125と目盛り305とを備えて構成されている。
内側構造体307は、防水シートで構成された筒状(円筒状)の内側側壁部309と防水シートで構成された平板状の内側底壁部311とを備えて枡状に形成されており、防水構造になっている。また、内側構造体307は、オレンジ色や黄色等の目につきやすい色になっている。
防水シートは、たとえば、薄く可撓性を備えた合成樹脂で構成されており、熱でカシメることで、板状の素材の端部同士をお互いに接合して筒状の内側側壁部309が形成されており、熱でカシメることで、内側側壁部309と内側底壁部311とが接合されており、これらの接合されているところから水が漏れないようになっている。
底部補強体313は、直径が内側底壁部311の直径とほぼ等しい円板状に形成され、内側構造体307の外側(下側)で内側底壁部311に接してもしくは僅かに離れて、内側底壁部311に並んで設けられている。
底部補強体313は、たとえば、硬質の合成樹脂で構成されており、可撓性をほとんど有していない。また、内側底壁部311の厚さ方向と底部補強体313の厚さ方向は、バケツ105の上下方向と一致しており、バケツ105の上下方向から見ると、内側底壁部311と底部補強体313とはお互いがほぼ重なっている。
外側構造体319は、高さ寸法が内側側壁部309の高さ寸法よりも僅かに大きく内径が内側側壁部309の外径よりも僅かに大きい筒状(円筒状)に形成された外側側壁部315と、直径が内側底壁部311の直径よりも僅かに大きい外側底壁部317とを備えて枡状に形成されている。そして、内側構造体307と底部補強体313とが内側に収まるようにして、内側構造体307と底部補強体313との外側に設けられている。なお、外側構造体319は、黒色等の目につきにくい色になっている。
外側側壁部315と外側底壁部317とは、たとえば、厚手の布で構成されており、縫製することで外側構造体319が枡状に形成されている。また、外側底壁部317の厚さ方向と底部補強体313の厚さ方向は、バケツ105の上下方向と一致しており、バケツの105下方向から見ると、外側底壁部317と底部補強体313とはお互いがほぼ重なっている。
外側底壁部317は、底部補強体313の下側に位置し底部補強体313に接しているかもしくは僅かに離れている。外側側壁部315は、内側側壁部309に接しているかもしくは僅かに離れている。
また、バケツ105の上下方向では、内側構造体307の上端(縁321)と外側構造体319の上端(縁323)とはお互いがほぼ同じところに位置している。
開口部接合体325は、帯状で環状に形成されており、内側構造体307の開口部の縁321(縁からこの近傍にかけての部位)と外側構造体319の開口部の縁323(縁からこの近傍にかけての部位)とを覆うようにして、内側構造体307と外側構造体319とに一体的に設けられている。
開口部接合体325は、たとえば、厚手の布(外側構造体319と同じ色の布)で構成されており、縫製することで内側構造体307と外側構造体319とに設けられている。開口部接合体325が設けられていることで、内側構造体307と外側構造体319とがバケツ105の環状の開口部301のところで一体化している。なお、帯状の開口部接合体325は、幅方向の中央で長手方向に延びている中心線のところで折り返されて、この中心線を間にした一方の側が外側構造体319の外側に位置し、中心線を間にした他方の側が内側構造体307の内側に位置している。
また、開口部接合体325は、この中心線がバケツ105の開口部301のところに位置している。開口部接合体325の縫い目は、バケツ105の開口部301の極近傍に位置している。
第1の取手123Aは、前述したように、帯状に形成されており、長手方向の一端部側の部位が、外側構造体319の外側の所定の第1の部位で外側構造体319の開口部から外側側壁部315と外側底壁部317との境界のところまで外側構造体319(外側側壁部315)の母線の方向に延びて、外側構造体319(外側側壁部315)に一体的に設けられている。
第1の取手123Aの長手方向の他端部側の部位も、同様にして、前記第1の所定の部位から離れている所定の第2の部位に設けられている。そして、第1の取手123Aの長手方向の中間部の部位(第1の中間部と第2の中間部との間の部位)が「U」字状もしくは「V」字状になって、外側構造体319の開口部(バケツ105の開口部301)から延出している。
第1の取手123Aは、ナイロン等の化学繊維(外側構造体319と同じ色の繊維)等を織ることで帯状に形成されている。また、第1の取手123Aは、この長手方向の断面形状が矩形状になっている。この矩形の横方向の寸法が第1の取手123Aの幅寸法(図16の寸法BA2)になり、矩形の高さ方向の寸法が第1の取手123Aの厚さ寸法になる。なお、矩形の高さ方向の寸法は、矩形の横方向の寸法に比べてかなり小さくなっている。
また、第1の取手123Aは、この厚さ方向が外側側壁部315の厚さ方向と一致するようにして、外側側壁部315に密着し、たとえば縫製によって外側側壁部315に一体的に設けられている。
第2の取手123Bは、第1の取手123Aと同様に構成されて、第1の取手123Aと同様にして外側側壁部315に設けられている。なお、第2の取手123Bは、この長手方向の一端部側の部位が、前記第1の部位や第2の部位から離れた第3の部位で外側側壁部315に取り付けられており、長手方向の他端部側の部位が、前記第1の部位や第2の部位や第3の部位から離れた第4の部位で外側側壁部315に取り付けられている。
また、バケツ105の高さ方向から見ると、外側構造体319に係合している各取手123A,123Bの部位(第1の部位〜第4の部位)は、バケツ105の開口部301の円周をほぼ4等配する位置に設けられている。また、第1の部位〜第4の部位は、たとえば時計まわりでこの順にならんでいる。なお、時計まわりで、第1の部位、第3の部位、第2の部位、第4の部位の順にならんでいる構成であってもよい。
補強部125は、前述したように、帯状で環状に形成されている。また、補強部125は、外側構造体319および各取手123A,123Bの外側であって外側構造体319(バケツ105)の開口部の近くで、外側構造体319(バケツ105)の開口部に沿って外側構造体319に一体的に設けられている。
さらに、補強部125は、たとえば、取手123と同様の材料でほぼ同形状に構成されており、この厚さ方向が外側側壁部315の厚さ方向と一致するようにして、外側側壁部315に密着し、たとえば縫製によって外側側壁部315に一体的に設けられている。なお、取手123が設けられている部位では、補強部125が取手123に重なり縫製によって取手123とともに外側構造体319に一体的に設けられている。
目盛り305は、内側構造体307に入れる水の規定量を示すために、内側構造体307の内側に設けられている。目盛り305は、赤色等の色であって、内側構造体307に対してコントラストの高い色になっている。
そして、バケツ105によれば、補強部125が設けられているので、バケツ105の内部に水を入れたときの本体部121の膨らみを防止することができる。そして、複数のバケツ105で錘を構成するときにおける各バケツ105相互間の干渉を防止し、バケツ105相互間の干渉によって水があふれ出ることを防止できる。
また、バケツ105によれば、取手123が本体部121の開口部301から側壁部127と底壁部129との境界まで延びて設けられていることで、側壁部127のふくらみを一層の防止することができる。
また、バケツ105によれば、本体部121と取手123とを上述したような形態にしてあるので、3つのバケツ105を錘として使用したときに、力の方向(かかり具合い)が良好になる。
さらに、バケツ105によれば、目盛り305によって、適正量の水が入っていることを目視にて容易確認すことができる。また、目盛り305のところに補強部125が設けられているので、目盛り305の変形を防止することができる。
また、内側構造体307と外側構造体319とを備えて構成されているバケツ105によれば、水漏れを内側構造体307で防止し、水の重量を主に外部構造体319で支持する二重構造になっているので、強度を確保しつつ水漏れを確実に防止することができる。
ところで、親綱103の端部には、フックやカラビナが設けられており、フックまたはカラビナが、各取手123に係合して、親綱103がバケツ105に接続されるようになっている。
リトラクタ式墜落防止器具107は、屋根113の上で作業する作業者50が着用するハーネス139(図19等参照)と、親綱103とをお互いに接続するものである。
ハーネス139として、図19等で示すように、フルハーネス型のものも使用しているが、図8等で示すように、胴ベルト型のもの(安全帯54)を使用する場合もある。
ハーネス139は、着用者(作業者)50の身体の係合するハーネス本体部141と、このハーネス本体部141から延出しているハーネス支持綱143とを備えている。ハーネス支持綱143は、帯状に形成されており、ハーネス139を装着したときに着用者50の首の後方から延出するようになっている。ハーネス支持綱143の先端部には、円環状の接続具145が設けられている。
リトラクタ式墜落防止器具107は、前述したようにまた図18等で示すように、ハーネス着用者(作業者)50と親綱103とを、お互いにつなぐためのものである。リトラクタ式墜落防止器具107を介して親綱103につながっているハーネス着用者50は、単にロープ(たとえば、後述する連結綱)でつながっている場合に比べて、屋根113上での行動範囲が広がっている。
詳しく説明すると、リトラクタ式墜落防止器具107は、墜落防止器具本体部147と、フック149と、カラビナ151とを備えて構成されている。墜落防止器具本体部147(巻取器60)は、筐体部153と、この筐体部153から延出しているロープ155とを備えている。筐体部153からのロープ155の延出長さは、最大6m程度である。ロープ155は筐体部153の内部に設けられているロープ巻き取り保持機構(図示せず)で支持されている。
また、リトラクタ式墜落防止器具107のカラビナ151は、墜落防止器具本体部147の筐体部153に設けられており、リトラクタ式墜落防止器具107のフック149は、ロープ155の先端に設けられている。そして、リトラクタ式墜落防止器具107のカラビナ151が、詳しくは後述するが、「8」字環部材(図14等参照)が設けられた親綱103の部位に係合して、墜落防止器具本体部147が親綱103に接続されるようになっている。また、リトラクタ式墜落防止器具107のフック149がハーネス139のハーネス支持綱143の先端部に設けられている接続具145に設置され、ロープ155とハーネス139とが接続されるようになっている。
さらに、ロープ155に大きな加速度や大きな引っ張り力(人の体重程度の力)が加わっていない場合には、ロープ155は、この長さが短くなるように、僅かな力(たとえば1kgf程度の力)で、筐体部153内に巻き取られるようになっている。そして、ハーネス着用者50の移動に応じて筐体部153からの延出長さが適宜変化するようになっている。
すなわち、リトラクタ式墜落防止器具107を介してハーネス着用者50と親綱103とをつないだ場合、ハーネス着用者50が墜落防止器具本体部147(親綱103)の近傍にいれば、ロープ155の延出長さがロープ巻き取り保持機構で巻き取られて自動的に短くなり、ハーネス着用者50が墜落防止器具本体部147(親綱103)の遠くにいれば、ハーネス着用者50に引っ張られてロープ155の延出長さが長くなるのである。
また、ロープ155に大きな加速度や大きな引っ張り力(作業者50の体重程度の力)が加わった場合には、ロープ155は、墜落防止器具本体部147に係止され(ロックされ)、ロープ155と墜落防止器具本体部147とが一体化し、ロープ155が墜落防止器具本体部147から延出できなくなる。これにより、ハーネス着用者50の地面GLへの墜落が防止されるようになっている。
ところで、親綱103の長手方向の一方の端部にのみを錘105を接続し、親綱103の長手方向の他方の端部を、アンカー等を用いて地面GLに固定してもよい。また、親綱103の長手方向の一方の端部にのみを錘105を接続し、親綱103の長手方向の他方の端部を自由な状態にしてあってもよい。この場合、作業者は、屋根113の他方の斜面のみで作業することとなる。
ここで、親綱103とリトラクタ式墜落防止器具107との接続について説明する。リトラクタ式墜落防止器具107は、複環部材を用いて親綱103に接続されるようになっている。前記複環部材は、本体部を貫通している第1の貫通孔とこの第1の貫通孔から離れて前記本体部を前記第1の貫通孔と平行に貫通している第2の貫通孔とを備えた形状になっており、たとえば、「8」字状に形成された「8」字環部材157で構成されている。以下、「8」字環部材157を例に掲げて説明する。
「8」字環部材157は、図14等で示すように、平板状の素材を「8」字状に切断等した形状に形成されており、第1の円環状部位159と、外周の一部が第1の円環状部位159の外周の一部に接続されている第2の円環状部位161とを備えて構成されている。これにより、「8」字環部材157には、内径がお互いに等しい2つの貫通孔163,165が形成されていることになる。2つの貫通孔163,165の中心軸は、お互いが平行になっている。
「8」字環部材157についてより詳しく説明する。「8」字環部材157は、図14等で示すように、中心軸CA,CBを含む平面による断面形状が矩形状になっているトーラスを2つ結合して構成されている。
「8」字環部材157についてさらに説明すると、「8」字環部材157は、次に説明する立体形状になっている。
まず、1つの平面における一方向を横方向とし、前記1つの平面における他の一方向であって前記横方向に対して直交する方向を縦方向とする。
続いて、前記1つの平面に、横方向の寸法が所定の寸法であり縦方向の寸法が所定の寸法である矩形な図形を描く。
続いて、前記1つの平面の縦方向に延伸し、前記1つの平面の横方向の左側で前記矩形な図形から所定の距離だけ離れている第1の直線を描く。なお、この第1の直線が「8」字環部材157を構成している一方のトーラスの中心軸CAになる。
続いて、前記1つの平面の縦方向に延伸し、前記1つの平面の横方向の右側で前記矩形な図形から所定の距離(第1の直線と同じ距離)だけ離れている第2の直線を設ける。この第2の直線が「8」字環部材157を構成している他方のトーラスの中心軸CBになる。
続いて、前記第1の直線を回転中心軸にして前記矩形な図形を360°回転し、前記第2の直線を回転中心軸にして前記矩形な図形を360°回転する。このときに、前記矩形な図形の軌跡であらわされる立体が「8」字環部材157になる。
「8」字環部材157は、たとえば、平板状の鋼板を打ち抜き加工して製造されている。このような形態になっている「8」字環部材157は、すでに理解されるように、各貫通孔163,165の端部(入口と出口)の円形の縁が角張っている(図14(b)に示す角度αが90°になっている)。ただし、各貫通孔163,165の端部にバリが存在していることはなく、さらに各貫通孔163,165の端部は、糸面か糸面よりも僅かに大きい面取りが施されていて、「8」字環部材157に係合した綱(親綱103等)が傷付くことは無い。
「8」字環部材157によれば、貫通孔163,165の端部が角張っているので、綱に一層強固に設置することができる。
ここで、リトラクタ式墜落防止器具107の親綱103への設置について詳しく説明する。
まず、屋根113に設置された1本の親綱103(たとえば棟111の近傍に部位)に、「8」字環部材157を設置する。
「8」字環部材157の設置は、「8」字環部材157を設置する部位で親綱103の一部を湾曲させて第1の逆「U」字状の部位(湾曲部位)167を形成し、この第1の逆「U」字状の部位167に隣接して、第1の逆「U」字状の部位167とほぼ同形態の第2の逆「U」字状の部位(湾曲部位)169を形成する(図15(a)参照)。
続いて、第1の逆「U」字状の部位167を「8」字環部材157の第1の円環状部位159の貫通孔163にたとえば下から上に向かって挿入し、第2の逆「U」字状の部位169を、第1の逆「U」字状の部位167と同じ方向で(たとえば下から上に向かって)、「8」字環部材157の第2の円環状部位161の貫通孔165に挿入する(図15(b)参照)。
各円環状部位159、161の貫通孔163,165への各逆「U」字状の部位167,169の挿入が完了した状態では、「8」字環部材157の一方の側(「8」字環部材157の各貫通孔163,165の貫通方向における一方の側;たとえば上側)に、第1の逆「U」字状の部位167と第2の逆「U」字状の部位169とが突出している。なお、逆「U」字状になっていない親綱103の直線状の部位は、「8」字環部材157の他方の側(たとえば下側)に存在している。
続いて、「8」字環部材157の一方の側に突出している2つの逆「U」字状の部位167,169に、カラビナ177を設置し、このカラビナ177にリトラクタ式墜落防止器具107のカラビナ151を設置する(図15(c)参照)。
カラビナ177の設置が終了した状態では、環状のカラビナ177が、第1の逆「U」字状の部位(第1の逆「U」字状の部位167と「8」字環部材157とで環状になっている部位)167と、第2の逆「U」字状の部位(第2の逆「U」字状の部位169と「8」字環部材157とで環状になっている部位)169とを貫通している。また、リトラクタ式墜落防止器具107のカラビナ151が、カラビナ177を貫通している。そして、各カラビナ177,151と第1の逆「U」字状の部位167と第2の逆「U」字状の部位169とが、「8」字環部材157の一方の側に位置している。
続いて、親綱103に僅かな張力を加えると、各逆「U」字状の部位167,169が縮小され、カラビナ177が、親綱103でしぼられて、親綱103と「8」字環部材157とカラビナ177とが一体化される。これにより、リトラクタ式墜落防止器具107の親綱103への設置が終了する。なお、カラビナ177は、「8」字環部材157の貫通孔163,165よりも大きく形成されているので、カラビナ177が、「8」字環部材157の貫通孔163,165を通り抜けてしまうことはない。なお、図15(c)において、カラビナ177を削除してもよい。そして、カラビナ177の代わりに、リトラクタ式墜落防止器具107のカラビナ151を、2つの逆「U」字状の部位167,169に設置してもよい。
ところで、図1等で示すように、落下防止システム101が、複数本(たとえば2本)の親綱103と水平綱171とを備えて構成されている場合もある。
2本の親綱103は、図1等で示すように、屋根113の棟111の延伸方向で所定の間隔をあけて設置されるものである。具体的には、一方の親綱103が棟111の延伸方向で屋根113の一方の端部から1m程度のところに設置され、他方の親綱103が棟111の延伸方向で屋根113の他方の端部から1m程度のところに設置されるようになっている。
水平綱171は、この一端部が屋根113に設置された各親綱103のうちの1本の親綱103に接続され、他端部が屋根に設置された各親綱のうちの他の1本の親綱103に接続されるようになっている。
また、屋根113に水平綱171を設置するときに、この水平綱171の長さとほぼ同じ長さの筒状部材(図示せず)の貫通孔を通して、水平綱171を設置してあってもよい。前記筒状部材は、ほぼ剛体とみなせる素材(たとえば、金属)で構成されているものとする。これにより、水平綱171に接続されているハーネス着用者50が足を滑らせる等して水平綱171に大きな荷重がかかっても、水平綱171が斜めになって親綱103を引っ張ってしまう事態を回避することができる。さらに、水平綱171を、ほぼ剛体とみなせる素材(たとえば金属の棒)で構成してもよい。
親綱103と水平綱171との接続について説明する。水平綱171は、たとえば、「8」字環部材157を用いて親綱103に接続されるようになっている。
より詳しく説明する。水平綱171の長手方向の両端部にはカラビナが設けられているものとする。
まず、屋根113に設置された1本の親綱103(たとえば棟111の近傍に部位)に、前述した場合と同様にして「8」字環部材157を設置し、水平綱171の一方のカラビナを設置する。同様にして、屋根113に設置された他の1本の親綱103(たとえば棟111の近傍に部位)に、「8」字環部材157を設置し、水平綱171の他方のカラビナを設置する。これにより、2本の親綱103の間での2本の親綱103への水平綱171の設置が終了する。なお、2本の親綱103は、これらの間隔が、これらの親綱103に設置される水平綱171の長さとほぼ同様になるようにして屋根113に設置されているものとする。
ところで、水平綱171の長さの値が2本の親綱103の間隔の値よりも小さいときには、図12で示すように、「8」字環部材157とカラビナ172を用いて、水平綱171を一対の親綱103に接続すればよい。
より詳しく説明する。水平綱171の長手方向の両端部は、環状に形成されているものとする。
まず、屋根113に設置された1本の親綱103(たとえば棟111の近傍の部位)に、前述した場合と同様にして「8」字環部材157を設置し、カラビナ172を設置する。このカラビナ172に、水平綱171の一方の端部を係合させて設置する。同様にして、屋根113に設置された他の1本の親綱103(たとえば棟111の近傍の部位)に、「8」字環部材157とカラビナ172とを設置し、水平綱171の他方の端部を係合させて設置する。これにより、2本の親綱103の間での2本の親綱103への水平綱171の設置が終了する。
錘105は、図1等で示すように、たとえば、複数個に分かれている。すなわち、1本の親綱103の一方の端部に接続される錘105が、複数個になっている。より具体的には、1個25kgの質量の水入りバケツ3個が、1本の親綱103の一方の端部に接続されるようになっている。このように錘105が複数個になっている場合において、各バケツ同士をお互いに連結すれば、各バケツが錘として一体化され、作業者の安全性が一層確保される。なお、各バケツの連結は、各バケツの取手123同士を取手接合部材135で連結してもよいし、各バケツの取手123同士を別途のロープで連結してもよいし、各バケツの本体部121に面ファスナ等の係合部を設けておいて、本体部121同士を連結してもよい。
1本の親綱103の端部に接続され地面GLに設置された各バケツ105は、お互いがくっついているが、各バケツ105が、お互いに僅かに離れて配置されていてもよい。
また、錘105をバケツで構成することにより、錘105が、親綱103、ハーネス139、リトラクタ式墜落防止器具107等を収納する容器として使用されるようになっている。バケツ105に収容されるものとして、さらに、他のバケツ(水が入っていないバケツ)、親綱式スライド器具(連結綱)115、「8」字環部材157、水平綱171、パッド173を掲げることができる。
ここでパッド173について説明すると、パッド173は、ゴムや硬質スポンジ等の弾性体を布等の材料で包んで構成されている。そして、パッド173は、図1で示すように、屋根113の棟111と親綱103との間、屋根113の下端部と親綱103との間との間に設置され、屋根113を保護するようになっている。
また、落下防止システム101では、1本の親綱103には、1人の作業者50が接続されて支持されるようになっている。また、1本の親綱103の一方の端部に接続される錘105の質量(重量)は、1人の作業者50の質量(重量;服や装備を含む総重量)よりも小さくなっている(77%以上で100%未満;より好適には、88%以上で100%)。例を掲げて説明すると、作業者50の質量が65kg未満である場合には、錘105の質量が50kgになっており、作業者50の質量が65kg以上で85kg以下である場合には、錘105の質量が75kgになっており、作業者50の質量が85kgよりも重く100kg以下である場合には、錘105の質量が100kgになっている。
さらに説明すると、作業者(ハーネス着用者)50の質量が85kgであるものとする。この場合、1本の親綱103に一方の端部に接続される錘105の質量は、75kgでよい。そして、錘105を親綱103の両端部のそれぞれに接続するときには、親綱103の一方の端部に75kgの質量の錘を接続し、親綱103の他方の端部に75kgの質量の錘を接続すればよい。
親綱103が2本であって、2本の親綱103の間に1本の水平綱171が接続されており、2本の親綱のうちの一方の親綱(第1の親綱)103で1人の作業者50が支持され、2本の親綱のうちの他方の親綱(第1の親綱)103で別の1人の作業者50が支持され、1本の水平綱171でさらなる別の1人の作業者50が支持される場合にあっては、詳しくは、図23等を用いて後に説明するように、補助親綱201を設置し、補助親綱201に錘105を設置すればよい。
ところで、前述したように(図15参照)、「8」字環部材157は、綱(たとえば、親綱103)をこの長手方向の中間部で逆「U」字状に湾曲させた第1の逆「U」字状の部位を挿入する第1の貫通孔と、前記綱をこの長手方向の中間部であって前記第1の逆「U」字状の部位の近傍で逆「U」字状に湾曲させた第2の逆「U」字状の部位を前記第1の逆「U」字状の部位と同じ方向から挿入する第2の貫通孔とを備えて、「8」字状に形成されている。
また、「8」字環部材157は、前記第1の貫通孔に挿入された第1の逆「U」字状の部位と、前記第2の貫通孔に挿入された第2の逆「U」字状の部位とに、カラビナが設置され、前記各逆「U」字状の部位から一方の側に延出している前記綱の部位を、各逆「U」字状の部位から離れる方向に引っ張り、前記各逆「U」字状の部位から他方の側に延出している前記綱の部位を、各逆「U」字状の部位から離れる方向に引っ張ることにより、前記親綱に一体的に設置されるように構成されている。
ここで、「8」字環部材157の親綱103等への設置態様の変形例について、図21を参照しつつ説明する。
図21に示す態様では、「8」字環部材157の第1の貫通孔に挿入された親綱103の第1の湾曲部位167に、第2の貫通孔に挿入された親綱103の第2の湾曲部位169を挿入し、この挿入された第2の湾曲部位169にカラビナ177を設置する点が、図15で示した態様と異なっている。
すなわち、図21(a)で示す状態において、「8」字環部材157の第1の貫通孔に親綱103の第1の湾曲部位167を挿入し、「8」字環部材157の第2の貫通孔に親綱103の第2の湾曲部位169を挿入する(図21(b)参照)。
続いて、「8」字環部材157の第1の貫通孔に挿入された第1の湾曲部位167に、「8」字環部材157の第2の貫通孔に挿入された第2の湾曲部位169を挿入し(図21(c)参照)、この挿入された第2の湾曲部位169にカラビナ177を設置する(図21(d)参照)。
続いて、各湾曲部位167,169から一方の側に延出している親綱103の部位を引っ張り、各湾曲部位167,169から他方の側に延出している親綱103の部位を引っ張ることにより、「8」字環部材157が親綱103に一体的に設置されるようになっている。
このようにして、「8」字環部材157を親綱103に設置すれば、親綱103と「8」字環部材157との間等の摩擦力が大きくなり、親綱103に「8」字環部材157を一層確実に設置し固定することができる。
ここで、「8」字環部材157の親綱103等への設置態様のさらなる変形例について、図33を参照しつつ説明する。図33に示す態様では、「8」字環部材157の第1の貫通孔に挿入された親綱103の第1の湾曲部位167と第2の貫通孔に挿入された親綱103の第2の湾曲部位169とを、リング327に通し、さらに、第1の湾曲部位167と第2の湾曲部位169とにカラビナ151を設置してある。
そして、各湾曲部位167,169から一方の側に延出している親綱103の部位を引っ張り、各湾曲部位167,169から他方の側に延出している親綱103の部位を引っ張ることにより、「8」字環部材157が親綱103に一体的に設置されるようになっている。
次に、落下防止システム101の屋根113への設置作業等について、図20等を参照しつつ説明する。
まず、図11等で示すように、親綱設置段階S1で1本目の親綱103と錘105とを設置する。すなわち、家屋109の一方の側における地面GLの付近から、棟111を含む家屋109の屋根113の上を通り、家屋109の他方の側における地面GLの付近まで、親綱103を延伸させて設置する。親綱103の設置は、図6、図7等で示すように、作業者50によりたとえば親綱展開具2を用いてなされる。また、家屋109近傍の地面GLに設置され上部が開口し内部に水が入っているバケツを、親綱設置段階で設置された親綱103の端部に作業者50が接続する。なお、バケツ105内への水の蓄積は、前述したように、バケツ105を親綱103に接続する前になされるが、バケツ105内への水の蓄積を、バケツ105を親綱103に接続した後に行うようにしてもよい。
続いて、地面GLに居る1人目の作業者50がハーネス139を装着し(S3)、梯子175を1本目の親綱103の近くで家屋109に設置する(S5)。
なお、ハーネス139を装着するときハーネス139に、リトラクタ式墜落防止器具107と「8」字環部材157とが設置される。すなわち、「8」字環部材157の一方の貫通孔163にリトラクタ式墜落防止器具107のカラビナ151を通すとともに、カラビナ151にハーネス139の一部を構成している帯状部材を通すことで、ハーネス139に、リトラクタ式墜落防止器具107と「8」字環部材157とが設置される。
続いて、連結綱接続段階S7で、連結綱(親綱式スライド器具)115を用いて1人目のハーネス装着者(ハーネスを装着した作業者)50を親綱103に接続する。親綱103は、親綱設置段階S1で設置された親綱であり、連結綱115を用いた上記接続は、地面GLに居る1人目のハーネス装着者50により、連結綱115のグリップ62を親綱103に係合し、連結綱115の連結具(フック)57をハーネス139の接続具145に係合させることでなされる。
続いて、1人目のハーネス装着者50が梯子175を用いて家屋109の屋根113にのぼり、棟111の近くまで行く(S9)。なお、このとき、1人目のハーネス装着者50は連結綱(親綱式スライド器具)115で1本目の親綱103に接続されている。
続いて、リトラクタ式墜落防止器具接続段階(S11,S13,S15)で、親綱103に「8」字環部材157を設置し、リトラクタ式墜落防止器具107を設置する。すなわち、リトラクタ式墜落防止器具107を用いてハーネス装着者50を親綱103に接続する。
より詳しく説明すると、梯子175を用いて屋根113の棟111のところまでのぼった1人目のハーネス装着者50が、錘設置段階S1で錘105が設置された親綱103の中間部(たとえば、棟111の部位若しくは棟111近傍の部位)に、「8」字環部材157を設置する(S11)。「8」字環部材157が設置されたことにより、「8」字環部材157の一方の側に突出している親綱103の2箇所の突出部位(湾曲部位)167,169に、カラビナ177を設置し、このカラビナ177に、リトラクタ式墜落防止器具107のカラビナ151を設置する(図15参照;S13)。また、1人目のハーネス装着者50が装着しているハーネス139に、リトラクタ式墜落防止器具107のフック149を設置して、親綱103に1人目のハーネス装着者50を接続する(S15)。なお、カラビナ177を使用することなく、親綱103の2箇所の湾曲部位167,169に、リトラクタ式墜落防止器具107のカラビナ151を直接設置してもよい。
続いて、連結綱撤去段階S17で、1人目のハーネス装着者50が、連結綱接続段階S7で接続された連結綱115を撤去し、パッド173を設置する(S19)。
この後、1本目の親綱だけで、家屋109の屋根113の上で所定の作業(たとえば、太陽光発電モジュール179の設置)を行ってもよいが、通常は、図12等で示すように、2本目の親綱103を1本目の親綱と同様にして設置する(S21)。
2本目の親綱103の設置は、1人目の作業者50によってなされるが、上述したように、親綱展開具2を再び用いて行ってもよい。
続いて、図12等で示すように、1人目の作業者50が水平綱171を設置する(S23)。水平綱171の設置は、図15等で示すように、「8」字環部材157を用いてなされる。
続いて、1人目の作業者50の場合と同様にして、2人目の作業者50、3人目の作業者が、連結綱115と梯子175とを使用して屋根113にのぼり、リトラクタ式墜落防止器具107を設置する(S25)。なお、2人目の作業者50、3人目の作業者は、2本目の親綱103を使用して屋根113にのぼるので、梯子175は、2本目の親綱103の近くの位置にかけかえられる。この後、梯子175は、太陽光発電モジュール179の運搬に使用される。
続いて、作業段階S27で、各作業者50により、家屋109の屋根113の上で所定の作業(たとえば、太陽光発電モジュール179の設置)を行われる。なお、作業が、太陽光発電モジュール179等の新規設置ではなく、既存のもののメンテナンス等である場合もある。
作業終了後、上述した場合と逆に手順で、リトラクタ式墜落防止器具107を連結綱115に付け換えて、各作業者50が梯子175を降り、バケツ内の水を捨てて錘105を撤去し、親綱103を撤去し、梯子175を撤去する。
落下防止システム101によれば、親綱103を用いて作業者50の墜落(たとえば、図1に示す軒先185からの墜落)を防止していると共に、親綱103を張る錘として水を入れたバケツ105を使用しているので、落下防止システム101自体の設置や撤去が容易であると共に、作業者の安全を保ちつつ作業の工期を短縮することができる。
すなわち、錘として鋼や鋳物等を用いると搬送に多くの負荷が発生するが、水を錘として使用すれば、錘を設置する場所までは、バケツに水を入れず搬送することできるので、搬送の負荷を軽減することができる。
また、錘105としてバケツを使用しているので、万一水漏れが発生した場合であっても、水漏れをバケツ上部の開口部301を通して肉眼で容易に発見することができ、作業者の墜落が防止され安全が確実に確保される。
さらに、錘105として布バケツを使用しているので、安定して内部に水を蓄えることができ、作業者50の安全を確保することができる。すなわち、金属のバケツやポリバケツを使用すると、作業者が誤って蹴る等によりバケツに横荷重がかかったときにバケツが容易に横転して中の水がこぼれてしまうが、布バケツであれば、作業者が誤って蹴った場合であって、形状が適宜変化して衝撃を吸収するので、横転することはほとんどない。さらに、親綱103で上方に引っ張られているので、布バケツの横転がさらに一層抑制される。
さらに、錘105として布バケツを使用しているので、作業者50が誤って墜落しそうになったときの衝撃力を的確に吸収することができる。すなわち、錘として水の入った金属バケツ等を使用していると、錘が剛体で構成されていることになり、作業者50が誤って墜落しそうになったとき、大きな衝撃力がハーネス139や親綱103にかかる。しかし、錘105が水を蓄えた布バケツで構成されているので、作業者50が誤って墜落しそうになったとき、錘自体(水バケツ自体)が若干変形し、この変形により衝撃力を緩和することができる。
また、布バケツ105の変形により、錘を地面GLに接触させて設置することが容易になる。すなわち、錘として水の入った金属バケツ等を使用していると、錘を地面GLに接地させつつ親綱103に張力を発生させるには、親綱103の長さの微妙な調整が必要である。つまり、親綱103が少しでも長いと親綱103が弛んでしまい。親綱103が少しでも短いと、錘が地面から離れて振り子のようになってしまう。しかし、布バケツを使用すれば、布バケツが変形するので、親綱103の長さが多少変化してもこの変化を吸収することができ、親綱103の張力を確保したまま錘105を接地させることが容易になる。
また、錘105としてバケツを使用しているので、地面GLがコンクリートで覆われていても、このコンクリートを傷つけることなく、親綱103を設置することができる。
さらに、落下防止システム101を使用すれば、親綱103等の設置とソーラパネル179の設置と親綱103等の撤去と(工事全体)を、2日程度で行うことができる。
また、落下防止システム101によれば、「8」字環部材157を用いているので、リトラクタ式墜落防止器具107の親綱103への設置が容易になる。すなわち、親綱103の端部を「8」字環部材157の貫通孔163,165に通すことなく、親綱103を屋根113に設置してある状態で、「8」字環部材157を親綱103の長手方向の中間部に一体的に設置することができ、この設置された「8」字環部材157にリトラクタ式墜落防止器具107を設置するので、リトラクタ式墜落防止器具107の設置工数を少なくすることができる。
また、落下防止システム101によれば、水平綱171により、親綱103の棟111からはずれてしまうことを防止することができる。すなわち、切妻の屋根113において、棟111の延長方向で棟111の一端部側に1本目の親綱103を設置し、棟111の延長方向で棟111の他端部側に2本目の親綱103を設置しただけであると、1本目の親綱103が棟111の一端部に向かう方向にさらにずれて、棟111からはずれてしまうおそれがある。2本目の親綱103も同様に、棟111からはずれてしまうおそれがある。しかし、水平綱171を設置することにより、この水平綱171の張力によって、上述した1本目の親綱103のさらなる位置ずれや2本目の親綱103のさらなる位置ずれが防止される。
また、ロープ155が延出するリトラクタ式墜落防止器具107で、ハーネス着用者50を水平綱171に接続すれば、屋根の上での作業範囲が広がる。
また、落下防止システム101によれば、錘105が複数個に分かれているので、1つの錘が万一水漏れを起こしたとしても、錘の重量が総て無くなるという事態を回避することができ、作業者50の安全を確保することができる。また、1つの錘105の重量を軽くすることができるので、水を蓄えた後のバケツ105の移動(たとえば、位置の調整)を容易に行うことができる。
なお、作業者50が屋根113の上で作業をしているとき、バケツ105に水が入っていることを確認する作業者を地面に配置してあるものとする。
また、落下防止システム101によれば、バケツ105が、親綱103、ハーネス139、リトラクタ式墜落防止器具107等を収納する容器として使用されるように構成されているので、落下防止システム101の運搬や保管がしやすくなっていると共に、落下防止システム101の構成部品の紛失を防止することができる。
また、落下防止システム101によれば、錘105の重量が作業者50の重量より小さくても、作業者50が誤って墜落しそうになったときに、作業者50の墜落を防止することができる。したがって、錘105を軽量化することができ、錘105の位置調整等がしやすくなる。なお、錘105の重量が作業者50の重量より小さくても作業者50の墜落を防止することができるのは、親綱103と屋根113との間の摩擦力(特に親綱103が曲がっている箇所での摩擦力)や、親綱103の瞬間的な伸びによる衝撃力の緩和や、布バケツ105の変形による衝撃力の緩和等によるものである。
ここで、落下防止システム101の設置時間の測定結果を掲げる。
本発明の落下防止システム101の設置に要する時間を実際に測定した。測定対象である落下防止システム101の構成は、たとえば図25(d)で示す構成になっている。ただし、図25(d)では親綱103を2本しか使用していないが、測定対象である落下防止システム101では親綱103を3本使用している。測定対象である落下防止システム101の設置は、4人の作業者で行った。
測定の結果、落下防止システム101の設置に要した時間は28分で、非常に短い時間で設置できることが確認できた。設置開始から各作業が完了するまでの時間は、以下のとおりであった。親綱1本目設置:10分、親綱2本目設置:14分、親綱3本目設置:17分(親綱2本目、3本目は地上から展開せず、屋根上の作業員が展開した)、水平綱設置:19分、水平補助綱設置:22分、パッド設置:25分、張力・位置の調整:28分。バケツへの水入れ作業は、バケツを設置場所に置いてホースを用いて行い、1個あたり約1分を要したが、他の作業と並行して行ったので、時間を延長する要因にはならなかった。
ところで、2本の親綱103の間に水平綱171を設けた場合において、図1に破線で示すように、各親綱103に「Y」字状の補助綱181を設けてもよい。補助綱181の下端には、錘105が設置されており、「Y」字状の補助綱181の2つの上端のうちの一方の上端は、屋根113の一方の斜面上に位置している親綱103の部位に、たとえば、「8」字環部材157を用いて接続されており、他方の上端は、屋根113の他方の斜面上に位置している親綱103の部位に、たとえば、「8」字環部材157を用いて接続されている。
これにより、水平綱171に接続されている作業者50が誤って軒先185から墜落しそうになったときでも、水平綱171が斜めになることをある程度抑制することができ、また、親綱103に接続されている作業者50が誤ってケラバ183から墜落することを防止することができる。
なお、図1では、補助綱181や錘105を、棟111の延伸方向(ケラバ183)の一方の側にしか書いていないが、棟111の延伸方向の両方の側に補助綱181や錘105を設けてあってもよい。
さらに、水平綱(筒状部材や金属棒を使用しないで両端部が一対の親綱103に接続された水平綱)171に、リトラクタ式墜落防止器具107を用いて作業者を接続する場合、リトラクタ式墜落防止器具107のカラビナ151や筐体部153を、図15等で示すように「8」字環部材157を用いて水平綱171に固定してもよい(水平綱171の長手方向で移動しないように固定してもよい)。
そして、補助綱181等を用いることなく、詳しくは、後述するが、図23(a)等で示すように、リトラクタ式墜落防止器具107のカラビナ151や筐体部153を固定した水平綱171の部位の近傍に、ロープ(図23(a)で示す補助親綱201)の一端部を「8」字環部材157等を用いて固定し、ロープの他端部側を、屋根113の一方の側に垂らし、ロープの他端部に補助親綱用錘203を接続してもよい。
この場合、錘105は、上述した他の錘と同様に地面に接地している水バケツで構成されているものとする。また、リトラクタ式墜落防止器具107で水平綱171に接続された作業者50は、ロープが垂れている屋根113の斜面とは反対側の斜面(棟111に対して反対側に位置している斜面)で作業をするのである。
これにより、リトラクタ式墜落防止器具107で水平綱171に接続された作業者50が誤って墜落しそうになったとき、ロープと錘で墜落荷重を支えることができる。
ここで、リトラクタ式墜落防止器具107を介して水平綱171で作業者50を支持する場合について説明する。
この場合、図23(a)で示すように、補助親綱201と補助親綱用錘203とが設けられている。
補助親綱201は、リトラクタ式墜落防止器具(図23(a)では図示せず)が設置されている水平綱171の部位に一端部が接続されている。補助親綱201の他端部側は、水平綱171に接続されている一端部から親綱103とほぼ平行に延伸して家屋109が建っている地面GLの付近まで延伸して設置されている。
補助親綱用錘203は、錘105と同様にして水入り布バケツで構成されて地面GLに設置されている。そして、補助親綱201の他端部が補助親綱用錘203に接続されている。
さらに詳しく説明すると、棟111の延伸方向の一端部側の屋根113には親綱103Aが設置されており、棟111の延伸方向の他端部側の屋根113にも親綱103Bが設置されている。各親綱103の端部には、図1等で示した場合と同様にして錘(地面に設置されている錘)105が設置されている。
また、各親綱103の間には、水平綱171がたとえば「8」字環部材157(図23(a)では図示せず)を用いて設置されている。これにより、平面視すると、一対の親綱103と水平綱171とで「H」字が形成されている。水平綱171は、屋根113の棟111から僅かに離れて、屋根113の棟111と平行に延伸している。
水平綱171の長手方向の中間部(たとえば中央部)には、リトラクタ式墜落防止器具がたとえば「8」字環部材とカラビナ(図23(a)では図示せず)とを用いて設置されている。
補助親綱201は、この一端部が、水平綱171の長手方向の中間部(たとえば中央部)に接続されて固定されている。補助親綱201の一端部は、たとえば「8」字環部材(リトラクタ式墜落防止器具設置用の「8」字環部材)とカラビナ(図23(a)では図示せず)とを用いて水平綱171に設置されている。
また、補助親綱201は、水平綱171に接続されている部位から、屋根113の棟111を超えて、水平綱171が設置されている屋根の斜面とは反対側の斜面を通り、この反対側の斜面の軒先185から地面GLに向かって、親綱103から所定の距離だけ離れ親綱103とほぼ平行に延伸している。そして、補助親綱201の他端部には、親綱103の場合と同様にして、補助親綱用錘203が設置されている。
リトラクタ式墜落防止器具を介して水平綱に接続されている作業者50の質量に対する補助親綱用錘203の質量は、上述したような関係になっている。たとえば、作業者50の質量が85kgであるならば補助親綱用錘203の質量は75kgになっている。
なお、図23(a)の紙面では、水平綱171が屋根113の棟111よりも僅かに下側に位置しており、作業者50が水平綱171の下側で作業するようになっており、補助親綱201や補助親綱用錘203が水平綱171(棟111)の上側に位置しているが、作業者50の位置と補助親綱201等の位置とが入れ替わっていてもよい。
すなわち、水平綱171を屋根113の棟111よりも僅かに下側に位置させておいて(図23(a)で示している状態にしておいて)、作業者50が水平綱171の上側(棟111よりも上側に描かれている屋根113の斜面)で作業するようにし、補助親綱201や補助親綱用錘203が水平綱171(屋根113)の下側に位置していてもよい。
図23(b)に示す態様では、補助親綱201の一端部を「Y」字状に形成して、水平綱171に接続している点が図23(a)で示す態様とは異なり、その他の点は、図23(a)で示すものとほぼ同様になっている。なお、図23(b)で示す態様において、水平綱171への2つの接続箇所の間隔L1は、たとえば1500mm以下になっている。そして、この間隔L1の内側にリトラクタ式墜落防止器具が接続されている。
また、図23(b)で示す態様において、リトラクタ式墜落防止器具をたとえばカラビナのみを用いて水平綱(2つの接続箇所の間;L1の範囲内)171に設置し、2つの接続箇所の間で、リトラクタ式墜落防止器具が水平綱171に対して自由に移動(水平綱171の延伸方向で移動)できるようになっていてもよい。
図23(c)に示す態様では、一対の親綱103のそれぞれにも、リトラクタ式墜落防止器具を介して作業者50が接続されている(作業者50が3人存在している)点が図23(a)で示す態様とは異なり、その他の点は、図23(a)で示すものとほぼ同様になっている。
なお、図23(b)、図23(c)で示す態様においても、図23(a)の場合と同様にして、作業者50の位置と補助親綱201等の位置とが入れ替わっていてもよい。
図23で示した落下防止システム1によれば、水平綱171に作業者50が接続されている態様で、水平綱171に補助親綱201と補助親綱用錘203とが設けられている。作業者50が屋根113の軒先185から誤って落下しそうになると(図23に矢印で示すように軒先185から落下しそうになると)、補助親綱201の延伸方向のほぼ延長線上で、作業者50の落下が発生することになるが、作業者50の落下荷重を、補助親綱201と補助親綱用錘203とで確実に受けることができる。
そして、水平綱171や一対の親綱103が屋根113に対してずれることが防止され、作業者50の屋根113からの墜落を防止することができる。
これに対して、図22で示すように、補助親綱や補助親綱用錘を設けていない態様であると、作業者50が落下しそうになったときに、水平綱171や一対の親綱103が「ヘ」字状に曲がってしまい、作業者50の屋根113からの墜落を防ぐことができない。
なお、本件明細書では、作業者50に見立てた砂袋(砂のう)を屋根113から落下させたときに、錘の地面からの上昇量(錘と地面GLとの間の距離)が500mm(0.5m)以下であり、かつ、軒先185からの砂袋の落下量(軒先185と砂袋との間の距離)が2000mm(2m)以下であれば、作業者50の墜落が防止されるものとする。
次に、屋根113のケラバ183からの作業者50の墜落防止について説明する。
図25(a)で示すように、リトラクタ式墜落防止器具(図25(a)では図示せず)が親綱103Aに設置されており、親綱103Bに水平補助綱205が接続されており、水平補助綱205には、フック(ケラバ用フック)207が設置されている。
詳しく説明すると、水平補助綱205の一方の端部が親綱103Bに接続されている。水平補助綱205の一方の端部から延伸している部位が屋根113の上を水平に延伸しており、水平補助綱205の他端部が屋根113のケラバ183にフック(ケラバ用フック)207を用いて固定されている(図27参照)。
また、親綱103Aとリトラクタ式墜落防止器具との接続部が、水平補助綱205のほぼ延長線上に存在している。
さらに詳しく説明すると、図25(a)で示す態様では、図23(a)で示す場合と同様にして、平面視すると、一対の親綱103と水平綱171とで「H」字が形成されている。
また、図25(a)で示す態様では、一方の親綱103A(水平綱171が接続されている部位)に、リトラクタ式墜落防止器具を介して作業者50が接続されており、他方の親綱103B(水平綱171が接続されている部位)に、水平補助綱205の一端部が、たとえば8字環部材(水平綱171設置用の「8」字環部材;図25(a)では図示せず)とカラビナ(図25(a)では図示せず)とを用いて接続されている。
水平補助綱205の他端部には、フック(ケラバ用フック)207が設けられており、このフック(ケラバ用フック)207を用いて水平補助綱205の他端部が屋根113のケラバ183で支持されている。
フック(ケラバ用フック)207について詳しく説明すると、フック(ケラバ用フック)207は図26、図27で示すように、一対の「J」字状部位209と、一対の「J」字状部位209をお互いに連結する複数の連結部位211と、補強リブ213と、水平補助綱接続用環状部位215とを備えて構成されている。
そして、図27で示すように、「J」字状部位209の曲がっている箇所が屋根113のケラバ183に引っ掛かり、フック(ケラバ用フック)207が屋根113に設置されるようになっている。このように、フック(ケラバ用フック)207が設置されることにより、作業者50のケラバ(ケラバ用フック207が設置されている側のケラバ183とは反対側のケラバ)183からの墜落(図25(a)に矢印で示す墜落)が防止される。
なお、図25(a)では、親綱103Bとフック(ケラバ用フック)207とが水平補助綱205を介して接続されているが、図27で示すように、水平補助綱205を削除し、フック(ケラバ用フック)207を親綱103Bや水平綱171に直接設けてもよい。この場合、図25(a)に示す水平綱171を水平補助綱として考えてもよい。
また、フック(ケラバ用フック)207を棟111の延伸方向における両側のケラバ183に設けた構成であってもよい。すなわち、棟111の延伸方向における一方側に位置しているケラバ183にフック(ケラバ用フック)207を設け、棟111の延伸方向における他方側に位置しているケラバ183に別のフック(ケラバ用フック)207を設けてもよい。
図25(b)に示す態様では、図25(a)で示す場合と同様にして、平面視すると、一対の親綱103と水平綱171とで「H」字が形成されている。
また、図25(b)で示す態様では、一方の親綱103A(水平綱171が接続されている部位)に、リトラクタ式墜落防止器具を介して作業者50が接続されている。
さらに、一方の親綱103A(水平綱171が接続されている部位)に、水平補助綱205の一端部が、たとえば8字環部材(水平綱設置用の8字環部材)とカラビナとを用いて接続されている。水平補助綱205の他端部側の部位は、屋根113のケラバ183から地面GLに向かって延出しており、水平補助綱205の他端部は、地面に設置された錘105に接続されている。
他方の親綱103B(水平綱171が接続されている部位)にも、別の水平補助綱205と錘105と同様に接続されている。なお、平面視においては、水平綱171と一対の水平補助綱205とはほぼ1直線上に存在している。作業者50の質量に対する錘(水平補助綱205の端部に接続された錘)105の質量は、上述したような関係になっている。
図27(c)で示す態様では、親綱103を1本にして水平綱を削除している点が、図25(a)に示すものと異なり、その他の点は、図25(a)で示すものと同様になっている。
図25(d)で示す態様は、図25(b)で示す場合において、2本の親綱103のそれぞれに、リトラクタ式墜落防止器具を介して作業者50が接続されている。
図25(e)で示す態様では、水平補助綱205の端部を、フック(ケラバ用フック)207の代わりに錘105に接続している点が、図25(c)で示すものと異なり、その他の点は、図25(c)で示すものと同様になっている。
図25で示す落下防止システム1によれば、水平補助綱205と錘105、もしくは、水平補助綱205とフック(ケラバ用フック)207とを備えているので、作業者50が屋根113のケラバ183から誤って落下しそうになると(図25に矢印で示すようにケラバ183から落下しそうになると)、水平補助綱205の延伸方向のほぼ延長線上で、作業者50の落下が発生することになるので、作業者50の落下荷重を、水平補助綱205と水平補助綱用錘105やフック(ケラバ用フック)207で確実に受けることができる。
そして、水平綱171や親綱103が屋根113に対してずれることが防止され、作業者50の屋根113からの墜落を防止することができる。
これに対して、図24で示すように、水平補助綱を設けていない構成であると、ケラバからの作業者の墜落を防止することができない。
すなわち、図24(a)や図24(b)で示す態様で矢印の方向に作業者50が落下しそうになると、親綱103が「ヘ」字状になってしまい。作業者50の墜落を防止することができない。
また、図24(c)で示すように、綱を斜めに設置したり、図24(d)で示すように、綱をクロスさせて設置しても、矢印の方向に作業者50が落下しそうになると、親綱103が「ヘ」字状になってしまい。作業者50の墜落を防止することができない。
また、図1等で示すように、家屋109の屋根113に2本の親綱103を設置した場合において、屋根113の片側(家屋109のおもて側および裏側)の錘105を1箇所にまとめてもよい。たとえば、家屋109のおもて側の4つの錘105を、前述したようにお互いに連結して1箇所にまとめてもよい。
このように錘105を1つに連結する場合において、図1で示す場合とは異なり、親綱103の間隔がくっついていれば、2本の親綱103の下端部に4つの錘105をまとめて接続すればよい。一方、図1で示すように、親綱103の間隔が離れていれば、屋根113の下端部の各パッド173のところで、親綱103を曲げて、各垂直延伸部位119を「V」字状に形成し、2本の親綱103の下端部に4つの錘105をまとめて接続すればよい。
なお、親綱が3本以上の複数本の場合にあっても、錘105を1箇所にまとめてよい。これにより、作業者の安全性が一層確保される。
さらに、2人以上の複数人の作業者50が屋根113上で作業する場合、作業者50の人数と同じ本数の親綱103を屋根113に設置し、1本の親綱103で1人の作業者50を支持するようにすることが望ましい。
たとえば、3人の作業者50が屋根113上で作業する場合、3本の親綱103を屋根113に設置し、1本の親綱103で1人の作業者50を支持するようにすることが望ましく、n人の作業者50が屋根113上で作業する場合、n本の親綱103を屋根113に設置し、n本の親綱103のそれぞれでn人の作業者50のそれぞれを支持するようにすることが望ましい。
また、3本以上の親綱103を所定の間隔(棟111の延伸方向で所定の間隔)をあけて屋根113に設置した状態で、水平綱171を設置する場合には、お互いが隣接している2本の親綱103の間に水平綱171を設置すればよい。
この場合において、親綱103ではなくて水平綱171で、作業者50を支持するようにしてもよい。ただし、1本の水平綱171には、1人の作業者50が支持されると共に、図23(a)等で示すように、補助親綱201と補助親綱用錘203とが設置されている。
次に、4つ孔部材351を備えた落下防止システムについて説明する。
まず、4つ孔部材351について、図29を参照しつつ説明する。4つ孔部材351は、本体部361と第1の貫通孔353と第2の貫通孔355と第3の貫通孔357と第4の貫通孔359とを備えて構成されている。
本体部361は、平板状に形成されているとともに、厚さ方向から見ると矩形状(外周の形状がたとえばひし形状)に形成されている。なお、本体部361の4つの角部のそれぞれには円弧状の面取りがされている。
各貫通孔353,355,357,359は、たとえば円形状に形成されており、本体部361をこの厚さ方向に貫通している。
第1の貫通孔353は、この中心が、矩形状の本体部361の第1の角部からこの第1の角部に対向している第3の角部まで延びている第1の対角線上であって第1の角部側に位置している。
第3の貫通孔357は、第1の貫通孔353と同形状に形成されている。また、第3の貫通孔357は、この中心が、矩形状の本体部361の第1の対角線上であって第3の角部側に位置している。
第2の貫通孔355は、この径が第1の貫通孔353の径よりも小さく形成されている。また、第2の貫通孔355は、この中心が、矩形状の本体部361の第2の角部からこの第2の角部に対向している第4の角部まで延びている第2の対角線(第1の対角線よりも短い対角線)上であって第2の角部側に位置している。
第4の貫通孔359は、第2の貫通孔355と同形状に形成されている。また、第4の貫通孔359は、この中心が、矩形状の本体部361の第2の対角線上であって第4の角部側に位置している。
4つ孔部材351についてさらに説明すると、各貫通孔353,355,357,359は、お互いが離れて設けられており、第1の貫通孔353と第3の貫通孔357とは第2の対角線に対して対称に設けられており、第2の貫通孔355と第4の貫通孔359とは第1の対角線に対して対称に設けられている。
4つ孔部材351も、「8」字環部材157と同様にして、たとえば、平板状の鋼板を打ち抜き加工して製造されている。このような形態になっている4つ孔部材351は、「8」字環部材157と同様にして、各貫通孔353,355,357,359の端部の円形の縁が角張っている。
落下防止システムの4つ孔部材351は、「8」字環部材157と同様にして、親綱103に設置されるようになっている。すなわち、4つ孔部材351は、図35や図37や図38で示すように、親綱103の長手方向の中間部で湾曲させた第1の湾曲部位167を第1の貫通孔353に挿入し、親綱103の長手方向の中間部であって第1の湾曲部位167の近傍で湾曲させた第2の湾曲部位169を第3の貫通孔357に挿入し、第1の貫通孔353に挿入された第1の湾曲部位167を、第3の貫通孔357に挿入された第2の湾曲部位169に挿入し(第3の貫通孔357に挿入された第2の湾曲部位169を、第1の貫通孔353に挿入された第1の湾曲部位167に挿入してもよい。)、この挿入された第1の湾曲部位167にリトラクタ式墜落防止器具107のカラビナ151を設置し、各湾曲部位167,169から一方の側に延出している親綱103の部位を引っ張り、各湾曲部位167,169から他方の側に延出している親綱103の部位を引っ張ることにより、親綱103に一体的に設置されるようになっている。
また、4つ孔部材351は、第2の貫通孔355と屋根113の一方の側のケラバとの間に第1の補助綱を設置し、第4の貫通孔359と屋根113の他方の側のケラバとの間に第2の補助綱を設置することで、親綱103の延伸方向とは直交する方向(屋根113の棟111と平行な方向;図35の左右方向)での移動が規制されるようになっている。
さらに詳しく説明すると、4つ孔部材351を有する落下防止システムは、第1の補助綱371と第1のラチェット装置373と第2の補助綱375と第2のラチェット装置377とを備えて構成されている(図35等参照)。
第1の補助綱371は、この長手方向の一端部側に屋根113の一方の側のケラバに掛けられるケラバ用フック207が一体的に設けられている。第2の補助綱375は、この長手方向の一端部側に屋根113の他方の側のケラバに掛けられるケラバ用フック207が一体的に設けられている。
第1のラチェット装置373は、カラビナ370(代わりにフックを設けた構成であってもよい。)を備えている(図37等参照)。第1のラチェット装置373は、第1の補助綱371の長手方向の中間部で第1の補助綱371に係合しており、カラビナ370が4つ孔部材351の第2の貫通孔355に接合するようになっている。
また、第1の補助綱371と第1のラチェット装置373の係合部位と、ケラバ用フック207との間での長さが短くなる方向では、第1の補助綱371の移動(第1の補助綱371の長手方向での移動;第1のラチェット装置373に対する移動)が許容されている。すなわち、図37において、第1の補助綱371が右向きの矢印の方向に移動できるようになっている。
一方、第1の補助綱371と第1のラチェット装置373との係合部位と、ケラバ用フック207との間での長さが長くなる方向では、第1の補助綱371の移動が規制されるようになっている。
第2のラチェット装置377は、第1のラチェット装置373と同様に構成されており、第2の補助綱375とともに、第1のラチェット装置373と同様にして、親綱103等に設置されるようになっている。
すなわち、第2のラチェット装置377は、カラビナ370(代わりにフックを設けた構成であってもよい。)を備えている。第2のラチェット装置377は、第2の補助綱375の長手方向の中間部で第2の補助綱375に係合しており、カラビナ370が4つ孔部材351の第4の貫通孔359に接合するようになっている。
また、第2の補助綱375と第2のラチェット装置377の係合部位と、ケラバ用フック207との間での長さが短くなる方向では、第2の補助綱375の移動(第2の補助綱375の長手方向での移動;第2のラチェット装置377に対する移動)が許容されている。すなわち、図37において、第2の補助綱375が左向きの矢印の方向に移動できるようになっている。
一方、第2の補助綱375と第2のラチェット装置377との係合部位と、ケラバ用フック207との間での長さが長くなる方向では、第2の補助綱375の移動が規制されるようになっている。
ここで、ラチェット装置373(377)について、図30〜図32を参照しつつ詳しく説明する。ラチェット装置373は、図17に示すグリップ62とほぼ同様に構成されている。説明の便宜のために、ラチェット装置373の一方向を長手方向とし、この長手方向に直交する他の一方向を縦方向とし、長手方向と縦方向とに直交する方向を横方向とする。
ラチェット装置373は、基体379と第1のリンク構成体381と第2のリンク構成体383と第3のリンク構成体385と連結体387とを備えて構成されている。
基体379や第3のリンク構成体385は、矩形状の平板を「U」字状に曲げた形状になっている。第1のリンク構成体381は、矩形状の平板を「U」字状に曲げた形状になっているが、曲がっている部分の両端部側の部位に切り欠きが形成されている。第2のリンク構成体383は、第1のリンク構成体381と同形状に形成されている。
第1のリンク構成体381は、中間から基端にかけての部位が、基体379の内側(「U」字状に曲げられていることでお互いが平行になっている2枚の平板状の部位の間)であって基体379の長手方向の一端部側に位置している。また、第1のリンク構成体381は、この中間部が第1の軸部材389を介して基体379に支持されており、幅方向に延びている軸C1を中心にして基体379に対して回動自在になっている。第1のリンク構成体381の先端部側の部位は、基体379から縦方向の他端部側に突出している。
さらに、第1のリンク構成体381の基端部側には、ツメ部397が形成されており、このツメ部397と基体379の曲げられている部位との間には、間隙が形成されており、この間隙のところを補助綱371,375が通るようになっている。
第2のリンク構成体383は、中間から基端にかけての部位が、基体379の内側であって基体379の長手方向の他端部側に位置している。また、第2のリンク構成体383は、この中間部が第3の軸部材393を介して基体379に支持されており、幅方向に延びている軸C3を中心にして基体379に対して回動自在になっている。なお、第2のリンク構成体383の先端部側の部位は、基体379から縦方向の他端部側に突出している。
さらに、第2のリンク構成体383の基端部側には、第1のリンク構成体381と同様にしてツメ部397が形成されており、このツメ部397と基体379の曲げられている部位との間には、間隙が形成されており、この間隙のところを補助綱371(375)が通るようになっている。
第1のリンク構成体381の先端部からこの近傍にかけての部位は、第3のリンク構成体385の内側(「U」字状に曲げられていることでお互いが平行になっている2枚の平板状の部位の間)であって第3のリンク構成体385の長手方向の一端部側に位置している。
また、第1のリンク構成体381は、この先端部の近傍の部位が第2の軸部材391を介して第3のリンク構成体385を支持しており、幅方向に延びている軸C2を中心にして第3のリンク構成体385が第1のリンク構成体381に対して回動自在になっている。
第2のリンク構成体383の先端部からこの近傍にかけての部位は、第3のリンク構成体385の内側であって第3のリンク構成体385の長手方向他端部側に位置している。
また、第2のリンク構成体383は、この先端部の近傍の部位が第4の軸部材395を介して第3のリンク構成体385を支持しており、幅方向に延びている軸C4を中心にして第3のリンク構成体385が第2のリンク構成体383に対して回動自在になっている。
これにより、基体379と第1のリンク構成体381と第2のリンク構成体383と第3のリンク構成体385とで平行リンク機構が構成されている。
回動中心軸C1、回動中心軸C2、回動中心軸C4、回動中心軸C3をこの順に直線でつなぐと平行四辺形が形成される。そして、ラチェット装置373の縦方向では、回動中心軸C1と回動中心軸C3とお互いに同じところに位置しており、回動中心軸C2と回動中心軸C4とがお互いに同じところに位置しており、回動中心軸C1と回動中心軸C3とは、回動中心軸C2と回動中心軸C4よりも縦方向の一端部側に位置している。
ラチェット装置373の長手方向では、回動中心軸C1が回動中心軸C3よりも長手方向の一端部側に位置しており、回動中心軸C2が回動中心軸C1よりも長手方向の一端部側に位置しており、回動中心軸C4が回動中心軸C3よりも長手方向の一端部側に位置している。
第1のリンク構成体381と第2のリンク構成体383には、これらのリンク構成体381,383のツメ部397の保持力を補強するためのツメ構成体401が一体的に設けられている。
また、第1のリンク構成体381(第2のリンク構成体383)は、所定の方向に回動するように弾性体(たとえばねじりコイルバネ403)で付勢されている。すなわち、第1のリンク構成体381のツメ部397(第2のリンク構成体383のツメ部397)と基体379の曲げられている部位との間の間隙(補助綱371が通る間隙)の値が小さくなるように(第1のリンク構成体381が軸C1を中心にして反時計まわりに回動するように)、第1のリンク構成体381(第2のリンク構成体383)が、ねじりコイルバネ403で付勢されている。
このように付勢されている状態で補助綱371を間隙に通すと、ラチェット装置373の長手方向に延伸している補助綱371が、基体379と第1のリンク構成体381や第2のリンク構成体383のツメ部397(ツメ構成体401)とで挟まれる。そして、ラチェット装置373の長手方向に延伸している補助綱371がラチェット装置373に対して図30の右側には容易に移動するが、ツメ部397(ツメ構成体401)が引っかかることで図30の左側には移動しないようになっている。つまり、ラチェット装置373の長手方向に延伸している補助綱371の移動が、ラチェット装置373の長手方向の一端部側に向かう方向では規制され、ラチェット装置373の長手方向の他端部側に向かう方向では許容されるようになっている。
なお、ねじりコイルバネ403による付勢力はそれほど大きくなく、ねじりコイルバネ403による付勢力に抗して、人が素手で第1のリンク構成体381(第2のリンク構成体383)を回動することができるようになっている。
また、第2のリンク構成体383と第3のリンク構成体385には、連結体387が設けられている。連結体387は、この基端部の近傍で、第4の軸部材395を介して第2のリンク構成体383や第3のリンク構成体385に支持されており、幅方向に延びている軸C4を中心にして第2のリンク構成体383や第3のリンク構成体385に対して回動自在になっている。
連結体387の先端部側に部位は、ラチェット装置373の縦方向の他端部側もしくはラチェット装置373の長手方向の他端部側に突出しており、連結体387の先端部側に部位には貫通孔388が設けられている。
そして、ラチェット装置373は、連結体387の貫通孔388に設けられたカラビナもしくはフック(図30では図示せず)を介して、たとえば親綱103(屋根113に設置された親綱103)に設置された4つ孔部材351の第2の貫通孔355もしくは第4の貫通孔359の接合されるようになっている。
また、ラチェット装置373を4つ孔部材351とカナビナ等を介して親綱103(屋根113に設置された親綱103)に設置しラチェット装置373に補助綱371を通しラチェット装置373から左側に延出している補助綱371の左端端部に設けられているケラバ用フック207を屋根113のケラバに引っ掛け、補助綱371に引っ張り力を付与すると、連結体387が図30で示す状態に対し中心軸C4を中心にして時計まわりに約90°回動する。また、ラチェット装置373が右側に引っ張られ、第1のリンク構成体381(第2のリンク構成体383)に軸C1(軸C3)を中心にした時計まわりの回転モーメントが付与され、補助綱371がより大きな力で挟み込まれるようになっている。
なお、4つ孔部材351は、図30では、ラチェット装置373の右側に位置しており、右側に延出している補助綱371は自由になっている。
4つ孔部材351を備えた落下防止システムによれば、補助綱371,375を用いて屋根113の棟111の延伸方向における親綱103の位置ずれを抑制しようとする場合、4つ孔部材351を用いることで、親綱103への補助綱371,375の接合を容易かつ確実に行うことができる。
また、4つ孔部材351とラチェット装置373(377)を使用することにより、補助綱371(375)を用いて屋根113の棟111の延伸方向における親綱103の位置ずれを抑制する場合、補助綱371(375)の長さの調整や張力の付与を簡単な作業で行うことができる。
ところで、4つ孔部材351の代わりの2つの「8」字環部材157を用いて、屋根113の棟111の延伸方向における親綱103の位置ずれを抑制するようにしてもよい。
すなわち、図34や図36で示すように、屋根113の上で親綱103と交差する方向に延伸する補助綱405を設け、親綱103と補助綱405とをこれらの交差部位で「8」字環部材157を用いてお互いに接合してもよい。補助綱405の両端部にはバケツ105が設けられており張力が付与されているが、バケツ105の代わりにケラバ用フック207で張力を付与してもよい。
なお、親綱103への一方の「8」字環部材157の設置と、補助綱405への他方の「8」字環部材157の設置とは、たとえば図21で示した場合とほぼ同様にしてなされる。ただし、図36で示すものでは、親綱103に設置されている「8」字環部材157から突出している第1の湾曲部位167に、リトラクタ式墜落防止器具107のカラビナ151が設置されており、このカラビナ151と補助綱405に設置されている「8」字環部材157から突出している第1の湾曲部位167とカラビナ407が設置されている。
ここで、落下防止システムの屋根113への種々の設置態様についてさらに説明する。
図39では、1本の親綱103を屋根113に設置し、「8」字環部材157とリトラクタ式墜落防止器具107とを用いて、作業者50を親綱103で支持している。なお、図39では、錘であるバケツ105が、屋根113の一方の側(図39の下側)で1つしか描かれておらず、屋根113の他方の側(図39の上側)で1つしか描かれていないが、実際には、規定量の水を入れることで1つの質量が25kgになっているバケツ105が、屋根113の一方の側で3つ、屋根113の他方の側で3つ使用されているものとする。
図40、図41では、1本の親綱103を屋根113の一方の側(図40の棟111よりも下側)に設置し、他の1本の親綱103を屋根113の他方の側(図40の棟111よりも上側)に設置し、屋根113の棟111のところに設置された4つ孔部材351と一対のラチェット装置373とを用いて、一対の親綱103をお互いに接続している。そして、リトラクタ式墜落防止器具107を用いて、作業者50を親綱103で支持している。
なお、図40では、ケラバ用フック207を用いて、親綱103を屋根113の軒先に接合しているが、図39の場合と同様に、バケツ105を用いて親綱103を設置するようにしてもよい。
図42では、2本の親綱103と1本の水平綱171とを屋根113に設置し、4つの「8」字環部材157と2つのリトラクタ式墜落防止器具107とを用いて、2人の作業者50を親綱103で支持している。なお、バケツ105の個数は、図39の場合と同様である。
図43では、2本の親綱103と1本の水平綱171と2本の水平補助綱205とを屋根113に設置し、2つの4つ孔部材351と4つのラチェット装置373と2つのリトラクタ式墜落防止器具107とを用いて、2人の作業者50を親綱103で支持している。
なお、図43では、バケツ105(図39で示すバケツと同様のバケツ)とケラバ用フック207とを適宜使用して、親綱103や水平補助綱205を設置している。
図44では、3本の親綱103と1本の水平綱171と2本の水平補助綱205とを屋根113に設置し、2つの「8」字環部材157と2つの4つ孔部材351と4つのラチェット装置373と3つのリトラクタ式墜落防止器具107とを用いて、3人の作業者50を親綱103で支持している。
なお、図44でも、バケツ105(図39で示すバケツと同様のバケツ)とケラバ用フック207とを適宜使用して、親綱103や水平補助綱205を設置している。
図45では、1本の親綱103と2本の水平補助綱205と1本の補助親綱201とを屋根113に設置し、2つの「8」字環部材157と1つの4つ孔部材351と2つのラチェット装置373と3つのリトラクタ式墜落防止器具107とケラバ用フック207とを用いて、3人の作業者50を親綱103で支持している。
さらに説明すると、図45では、1本の親綱103がバケツ105(図39で示すバケツと同様のバケツ)によって設置されている。4つ孔部材351が、屋根113の棟111の近くで、リトラクタ式墜落防止器具107のカラビナ151により親綱103に設置されている(たとえば図21も参照)。一方の(図45の左側の)水平補助綱205が、ケラバ用フック207と4つ孔部材351に接合されているラチェット装置373とを用いて屋根113に設置されており、他方の(図45の右側の)水平補助綱205が、ケラバ用フック207と4つ孔部材351に接合されているラチェット装置373とを用いて屋根113に設置されている。
また、図45では、上述したように、4つ孔部材351にリトラクタ式墜落防止器具107が設置されており、一方の水平補助綱205の中間部に、「8」字環部材157が設置されており(たとえば図21も参照)、他方の水平補助綱205の中間部に、「8」字環部材157が設置されている(たとえば図21も参照)。
また、図45では、4つ孔部材351と2つの「8」字環部材157のそれぞれに設置されたリトラクタ式墜落防止器具107を介して3人の作業者50が、親綱103と水平補助綱205とに接続されている。中央の作業者と両隣の作業者との距離(ピッチ)は、それぞれ1000mm以下である。
さらに、図45では、屋根の一方の側(図45では棟111よりも上側)に補助親綱201が設置されている。補助親綱201は屋根113の軒先に設置されたケラバ用フック207と4つ孔部材351との間で延びている。これにより、図45の上側のバケツ105の質量が75kgであっても、3人の作業者(図45で棟111よりも下側で作業する作業者)50の墜落を防止することができる。
なお、落下防止システムでは、一般的に親綱1本で1人の作業者を支持するのであるが、屋根の軒先にケラバ用フックを設ける等上述した所定の条件を満たせば、図45で示す態様であっても例外的に3人の作業者を支持することができる。
次に、落下防止システムを構築するためおよび構築した落下防止システムの機能を確認するために行った種々の試験の結果を、図46〜図58を用いて説明する。図46〜図58で示している各試験図は平面図である。図46〜図58で示している判定は、「×」、が採用不可の態様を示しており、「○」が採用可能な態様を示しており、「△」は原則的に採用不可であって採用を差し控えるべき態様を示している。この判定基準は、安全帯構造指針(NIIS−TR−No.35(1999)、ISSN0911−8063)の次の箇所を参考にしたものである。5.1.3:安全帯の各部の構造(10ページ);1本つり用ランヤード原則1700mm以下、やむを得ない場合2500mmまで、表12安全帯関連器具の衝撃吸収性(20ページ);親綱式スライド、固定ガイド式スライド、リトラクタ式墜落阻止器具の衝撃吸収性及び関連性能「質量85kgの落下体を用いて落下試験をしたとき、落下体を保持し、最大衝撃荷重8.0kN以下、落下距離2.0m以下」。
また、上記試験での屋根の軒先の地面からの高さは約6mであり、上記試験での屋根の棟の地面からの高さは約8mである。上記試験での屋根のケラバの地面からの高さは、6mから8mの間になるが、上記試験では、ケラバの約7mの高さのところから、砂のうを落下させている。
図46で示す試験結果のための試験は、ウェイトバケット(バケツ105)の重量(質量)が何キログラムの場合、作業者50の代わりである砂のう(質量85kgの落下体)の落下を阻止できるか、検証したものである。バケツ1個あたりの重量(質量)は25Kgとし、複数個組み合わせて試験に用いた。
図46で示す試験結果のための試験では、親綱を1本使用し、「8」字環部材とリトラクタ式墜落防止器具(ベルブロック;登録商標)とを介して、落下体(たとえば作業者の代わりの砂のう)を親綱で支持している。
落下体の落下は、屋根の軒先から行った。落下場所における「軒先補強有り」とは、親綱による屋根の軒先の破損を防止するために、軒先にアングル材等を設置したものである。これにより、親綱の荷重のほとんどが、軒先ではなくアングル材にかかるようになっている。
「落下方法」における「砂のう転がし」では、屋根上で地面から所定の高さに位置している砂のうを上記屋根上で転がして、軒先から落としている。一方、「砂のう落下」では、砂のうを、上記所定の高さからそのまま落としている(自由落下させている)。作業者の屋根からの実際の落下は、「砂のう転がし」に近い状態で発生する。
「ベルト引き出し長さ」は、砂のうを落下する前における、リトラクタ式墜落防止器具(筐体部)から延出しているロープ(図18参照)の長さであり、「ベルト繰り出し長さ」は、砂のうを落下した後における、リトラクタ式墜落防止器具(筐体部)から延出しているロープの繰り出し長さである。「落下長さ」は、砂のうを落下した後における、屋根の軒先と砂のうとの間の距離である。
図46で示す試験結果では、落下体(砂のう)の重量が85kgの場合、バケツ(錘)の重量が75kg以上あれば、作業者の安全(屋根からの落下時における安全)を確保することができる(試験No1−4参照)。
なお、落下方法における落下(自然落下)と転がし(転がし落下)とでは、自然落下のほうが親綱にかかる衝撃が小さくなる。実際の作業者の落下は、転がし落下と似た条件になる。
図46で示すNo1−1の試験は、ロープ(親綱)を新品に交換して実施した。ロープを新品に交換したことでロープの伸びが寄与し(ロープによって衝撃力が僅かに緩和され)、使用を重ねたロープを用いた場合に比べるとウェイト(バケツ)の浮き上りがやや改善され浮き上がり量が少なくなっている。
図46で示すNo1−2の試験では、試験No1−1と比較して、落下場所および落下方法を変更している。この結果、砂のうの落下を阻止することができなかった(屋根からの落下時における作業者の安全を確保することができなかった)。屋根と親綱との間の摩擦力が小さいことが、1つの原因であると思われる。
図46で示すNo1−3の試験では、試験No1−1と比較して、落下方法を変更している。この結果、ウェイト(バケツ)は浮き上るものの、落下をほぼ阻止することができた。なお、これまでの試験結果と比べると、落下を阻止すると落下体やバケツにかかる衝撃荷重(図示しないロードセルで測定)の値がやや大きくなることがわかる。
図46で示すNo1−4の試験は、ウェイト(バケツ)を75kgに変更して実施した。ウェイトがほとんど浮くことなく、砂のうの落下を完全に阻止できた(屋根からの落下時における作業者の安全を完全に確保することができた)。
図47A、図47B、図48で示す試験結果のための試験は、親綱と作業者(落下体)の接続がベルブロック(リトラクタ式墜落防止器具)である場合、砂のう(たとえば質量85kgの落下体)の落下を阻止できるか、検証したものである。
図47A、図47B、図48の試験では、親綱を1本使用し、「8」字環部材とリトラクタ式墜落防止器具とを介して、砂のうを親綱で支持している。落下は、屋根の軒先から行った。
試験の結果、落下体の重量65kgの場合、錘の重量が50kg以上であれば、落下体の落下を防止することができた(屋根からの落下時における作業者の安全を確保することができた)。また、落下体の重量が75kgの場合、錘の重量が75kg以上であれば、落下体の落下を防止することができた。また、落下体の重量が85kgの場合、錘の重量が75kg以上であれば、落下体の落下を防止することができた。さらに、落下体の重量が100kgの場合、錘の重量が75kg以上であれば、落下体の落下を防止することができた。
図49A、図49Bで示す試験結果のための試験は、親綱と水平綱で作業者(落下体)の落下を阻止できるか試したものである。2本の親綱の間に水平綱を張り、水平綱の中間部で、「8」字環部材とリトラクタ式墜落防止器具とを介して、落下体を支持している。落下は、屋根の軒先から行った。
試験の結果、落下体を阻止することができないことがわかった。図49Aで示すNo3−1の試験では、落下体の落下によって、親綱と水平綱との一方の係合部(丸付き数字「1」)が右側に880mm移動し、親綱と水平綱との他の係合部(丸付き数字「2」が左側に430mm移動した。この試験では、落下体の落下をある程度阻止することができたようにも見える。しかしこれは、水平親綱の長さ(2本の親綱103の間隔)が2000mmと短かったからであると推測される。実際の民家では水平親綱の長さ5m以上になる事も予測されるため、この方式は、採用できないものと考えられる。
落下防止システムの開発当初は、親綱を極力減らす方式を検討をしていた。親綱が少ない方が、パネル設置をし易いと考えていたからである。しかし、本試験を筆頭に、この方式では落下を阻止出来ないことがわかった。そこで、作業者1人につき、親綱を原則として1本使用するという、本願の落下防止システム原形が出来上がった。
図49Aで示すNo3−2の試験では、水平綱の長さを4500mmにしてある。この試験では、落下体の落下によって、親綱と水平綱との一方の係合部Aが右側に1300mm移動し、親綱と水平綱との他の係合部Bが左側に1400mm移動した。
図49Aで示すNo3−3の試験では、水平綱の長さを4500mmとしてある。この試験では、落下体の落下によって、親綱と水平綱との一方の係合部Aが右側に1300mm移動し、親綱と水平綱との他の係合部Bが左側に1440mm移動した。
図49Bで示すNo3−4の試験では、水平綱の長さを4000mmとしてある。この試験では、落下体の落下によって、親綱と水平綱との一方の係合部Aが右側に530mm移動し、親綱と水平綱との他の係合部Bが左側に1450mm移動した。また、落下体の落下によって、係合部Aと係合部Bとの間の距離が1350mmになった。
図49Bで示すNo3−5の試験では、落下体の落下によって、親綱と水平綱との一方の係合部Aが右側に1050mm移動し、親綱と水平綱との他の係合部Bが左側に1550mm移動した。No3−5の試験は、作業をする側(パネルを設置する南側)では親綱が邪魔になるので、南側に親綱を極力張らない仕様を検討するために行ったものである。
図49Bで示すNo3−6の試験では、水平綱の両端に一対の錘を設けてあるが、落下体の落下によって、親綱と水平綱との一方の係合部Aが右側に600mm移動し、親綱と水平綱との他の係合部Bが左側に500mm移動した。
図50で示す試験結果のための試験は、水平綱に錘を取り付けることなく代わりに小綱を取り付ける事で(小綱の効果により)、落下体の落下を阻止ができるか否か、検証したものである。試験の結果、落下体の落下は阻止できないことがわかった。
図50で示すNo4−1の試験では、落下体の落下によって、水平綱の一方の側の固定点(水平綱と親綱との係合部;丸付き数字「1」と「5」)とが右側に600mm移動し、水平綱の他方の側の固定点(水平綱と親綱との係合部;丸付き数字「4」と「8」)とが左側に700mm移動した。これにより、小綱の効果はほとんどないことが確認された。
図50で示すNo4−1の試験では、落下体の落下阻止はぎりぎり可能だったが、これは把持間隔が2m未満であったためであると推測される。水平綱のみで落下体の落下を阻止しようとするこの方式を、実際の作業用として使用することは不向きであると考えられる。
さらに、これはいわゆる「ロープワーキング」だけで、落下体の落下を何とか阻止ができないかと考え、No4−1の試験をしたのであるが、結局、この方式ではだめな(落下体の落下を阻止できない)ことが判明した。
図51A、図51Bで示す試験結果のための試験は、補助親綱により落下体の落下阻止ができるか確認するために行ったものである。図51A、図51Bで示す試験では、親綱を2本、水平綱を1本、補助親綱を1本使用している。試験の結果、補助親綱と錘とを設置すれば、落下体の重量が85kgの場合、補助親綱に設けた錘の重量が50kg以上であれば、落下体の落下を阻止することができることがわかった。
図51Aで示すNo5−1の試験では、水平綱の長さ(親綱の設置間隔)が4500mmになっている。また、落下体の落下によって、親綱と水平綱との一方の係合部Aが右側に1100mm移動し、親綱と水平綱との他の係合部Bが左側に1000mm移動した。
図49A、図49Bで示すNo3−1〜No3−6の試験や図50で示すNo4−1の試験の結果、作業者(落下体)の後に親綱がないと落下阻止ができないと考え、図51A、図51Bで示す方式を試した。しかし、補助親綱に接続される錘の重量が50kgでは落下体の落下を阻止ができないので、No5−3の試験のとおり、錘の重量を75kgにして試験を行い、これをベースに現在の落下防止システムが構築された。
図51Aで示すNo5−2の試験では、水平綱171の長さは4500mmになっている。また、落下体の落下によって、親綱と水平綱との一方の係合部Aが右側に300mm移動し、親綱と水平綱との他の係合部Bが左側に170mm移動した。No5−2の試験は結果としては「○」だが、安全帯の規格では85kgの落下体を落とさないといけないため「△」にしてある。
図51Bで示すNo5−3の試験では、水平綱171の長さは4000mmになっている。また、落下体の落下によって、親綱と水平綱との一方の係合部Aが右側に380mm移動し、親綱と水平綱との他の係合部Bが左側に320mm移動した。また、落下体の落下によって、係合部Aと係合部Bとの間の距離が3340mmになった。
図51Bで示すNo5−4の試験では、水平綱の長さは2150mmになっている。また、落下体の落下によって、親綱と水平綱との一方の係合部Aが右側に620mm移動し、親綱と水平綱との他の係合部Bが左側に460mm移動した。図49に示すNo3−1の試験とほぼ同様の落下距離となったが、より安定的に落下を阻止できる本方式の方が実用性が高いと考えられる。
図52で示す試験結果のための試験は、補助親綱の有無で、複数人の作業者の落下阻止ができるか確認するためのものである。図52で示す試験結果のための試験では、親綱を2本、水平綱を1本、補助親綱を1本使用しているかもしくは使用していない。試験の結果、補助親綱と錘とを設置しないと落下体の落下を阻止することができないことがわかった。逆に、補助親綱と錘とを適宜設置すれば、落下体の落下を阻止することができることがわかった。この場合、落下体の重量が85kgのとき補助親綱に設けた錘の重量を75kg以上にすれば、落下体の落下を阻止することができることがわかった。
図52で示す試験No6−1では、2つの親綱の間のスパン(設置間隔)によっては、落下体が地面と衝突するおそれがある。すなわち、複数人(複数の落下体)の同時落下で落下を阻止することは(落下時の安全を確保することは)不可能な結果となった。
図53で示す試験結果のための試験は、屋根のケラバからの落下を阻止することができるか確認するためのものである。親綱を1本もしくは2本用い、場合によっては水平綱を用いたが、いずれの場合も落下を阻止することができなかった。
図53の試験No7−1は、親綱と屋根のケラバとの距離を600mmにしたのであるが、落下を阻止することができなかった。これにより、側面方向への落下(ケラバからの落下)が懸念される現場においては、はだけ止め用の水平親綱の常設が必須である事が確認された。なお、No7−1の試験は、親綱だけでケラバからの落下を阻止することができないか検討していたことに対応して行われたものである。
図53の試験No7−2のものでは、親綱の取付ピッチ(2本の親綱間の距離)を4000mmとした。No7−2の試験では、落下体の落下によって、水平綱の一方の側の固定点(水平綱と親綱との係合部A)が右側に1030mm移動し、水平綱の他方の側の固定点(水平綱と親綱との係合部B)が右側に360mm移動し、係合部Bとケラバとの間の距離が350mmになった。
図53の試験No7−3のものでは、親綱の取付ピッチ(2本の親綱間の距離)を3600mmとした。また、一方の親綱(符号Bのところの親綱;右側の親綱)と屋根のケラバ(右側のケラバ)との間の距離を1100mmとした。No7−3の試験では、落下体の落下によって、水平綱の一方の側の固定点(水平綱と親綱との係合部A)が右側に3680mm移動し、水平綱の他方の側の固定点(水平綱と親綱との係合部B)が右側に移動し、ケラバ(屋根)から外れて落下してしまった。
図53の試験No7−4のものでは、親綱をケラバ(右側のケラバ)から1500mm離れたところに設置した。No7−4の試験では、落下体の落下によって、親綱がケラバ(屋根113)から外れしまった。
図53の試験No7−5のものでは、親綱の取り付けピッチ(2本の親綱3間の距離)を3600mmとした。また、左側の親綱をケラバ(左側のケラバ)から600mm離れたところに設置し、右側の親綱をケラバ(右側のケラバ)から1000mm離れたところに設置した。No7−5の試験では、落下体の落下によって、符号B側の親綱(右側の親綱)がケラバ(屋根)から外れ落下してしまった。なお、参照符号Aで示すところに設置された「8」字環部材157は、落下体の落下によって、右側に3200mm移動した。
図54A、図54Bで示す試験結果のための試験は、屋根のケラバからの落下を阻止することができるか確認するためのものである。この試験では、親綱を2本と水平綱を1本と補助親綱とを使用した。しかし、補助親綱を設けても、ケラバからの落下を阻止することはできなかった。
図54Aの試験No8−1のものでは、親綱の取付ピッチ(2本の親綱間の距離)を3600mmとした。右側の親綱(符号B側の親綱)を屋根のケラバ(右側のケラバ)から1000mmのところに設置した。No8−1の試験では、落下体の落下によって、水平綱の一方の側の固定点(水平綱と親綱との係合部A)が右側に790mm移動し、水平綱の他方の側の固定点(水平綱と親綱との係合部B)が右側に移動し、ケラバ(屋根)から外れて落下してしまった。
図54Aの試験No8−2、8−3のものでは、V字のはだけ止めを採用した。図54A、図54Bの試験の総ては、ロープワーキングだけで落下阻止ができないか考えて実施したものである。しかし、いずれの場合も親綱のロープワーキングだけでは落下阻止ができないと判明した。この後(図56、図57、図58参照)、落下方向に対して反対側に錘が必要という判断のもと、試験を追加して行った。
なお、図54Aの試験No8−2、8−3のものでは、屋根上のネジ頭にベルトが引っ掛り、落下が阻止されたものであるので、実質的には、落下の阻止がなされていない。また、図54Aの試験No8−2、8−3の試験では、落下体の落下によって、水のう(バケツ)が1mほど移動してしまった。図54Bの試験No8−6のものでは、水のう(バケツ)が300mmほど移動してしまった。
図55で示す試験結果のための試験は、親綱と屋根(たとえば棟や軒先)との間にパッド等の滑り止めを設けることで、ケラバからの落下を阻止することができるか否か確認するための行ったものである。滑り止めを用いてもケラバからの落下を阻止することができないことがわかった。
図55の試験No9−1のものでは、パッドとして分厚いスポンジを使用しているが、ケラバからの落下を阻止することができなかった。
図55の試験No9−2のものでは、パッドとして雨といカバーの改良品を、軒先の4箇所に使用した。この場合もケラバからの落下を阻止することができなかった。
図56で示す試験結果のための試験は、ケラバ用フック等を用いることで、ケラバからの落下を阻止することができるか否か確認するために行ったものである。この試験では、親綱を2本、水平綱を1本、水平補助綱、ケラバ用フック(もしくは錘)を使用した。この試験の結果、錘を使用すると、落下体の重量が85kgの場合、錘の重量が75kg以上であれば、落下を阻止することができた。また、ケラバ用フックを使用した場合の判定(落下体の落下を阻止することができたか否かの判定)は、85kgの落下体が落下してケラバ用フックが塑性変形しなければ、原則として落下体の落下を阻止することができたものとした。
図56の試験No10−1のものでは、符号Aのところの親綱(左側の親綱)をヤネロップのフック(ケラバ用フック)で支持した。この結果落下を阻止することができた。
図56の試験No10−2のものでは、水平綱の両端に水のう(重量が50kgのバケツ)を設置した。落下体を落下させても親綱ははだけず、落下を阻止することができた。図56の試験No10−3のものでは、水平綱の両端をフック金具(屋根のケラバに引っ掛けたケラバ用フック)で支持した。この結果、落下体の落下の衝撃により、符号A側のフックとして試作品を使用していたので上記フックが変形した。この後、フックとして現行品(図26で示す改良品)を使用することでフックの変形が無くなり落下を阻止することができた。
図57で示す試験結果のための試験は、ケラバからの複数人の落下を阻止できるか確認するために行ったものである。この試験では、親綱を2本、水平綱を1本、水平補助綱、ケラバ用フック(もしくは錘)を適宜使用した。この結果、錘を使用した場合には、落下体の重量が85kg×2のとき、錘の重量が150kg以上であれば、落下を阻止することができた。ケラバ用フックを使用した場合には、落下体の重量が85kg×2であっても、落下によってケラバ用フック207が塑性変形せず、落下を阻止することができた。
図57の試験No11−1のものでは、符号Cのところの親綱(最も右側の親綱)が落下体の落下により屋根から外れてしまったが、落下を阻止することができた。また、符号Cのところの親綱が屋根から外れても、荷重がサイドロープ(水平綱)にかかっているため、落下距離が規定量より大きくなることはなかった。
図57の試験No11−2のものでは、落下体が落下してもケラバ用フックの塑性変形はなかった。また、ロープの伸びによる落下時の衝撃吸収がないため、落下衝撃荷重が大きくなった。
図57の試験No11−3のものでは、屋根の棟に親綱が引っ掛り落下を阻止した。したがって、試験No11−3のものでは、実用上、落下を阻止することはできないと考えられる。
図57の試験No11−4のものでは、親綱の取付ピッチ(2本の親綱間の距離)を4000mmにしてある。参照符号B側の親綱(右側の親綱)は屋根の右側のケラバから1000mmのところに設置した。落下体の落下によって、丸付き数字1で示す水のう(錘)が2000mmほど横方向に移動し、丸付き数字3で示す水のう(錘)が1400mmほど横方向に移動した。
図58で示す試験結果のための試験は、屋根のケラバからの落下を阻止することができるか否かを、さらなる別の形態で試したものである。
図58の試験No12−1のものでは、親綱の取付ピッチ(2本の親綱間の距離)を4000mmにしてある。また、符号Bのところの親綱(右側の親綱)を、右側のケラバから1000mmのところに設置した。落下体の落下により、符号Aと符号Bとの間で親綱が4070mm移動し、水のう(錘)は、横方向に1000mm移動した。
図58の試験No12−2のものは、寄棟のはだけ止めを検証するためのものである。寄棟(よせむね)とは、屋根の4面が勾配になっているものである。屋根の4面は2つの三角形(2等辺三角計)と2つの台形(等脚台形)とで構成されている。
なお、図46〜図56で示した試験は、図18に示すリトラクタ式墜落防止器具を用いて落下体と親綱等とを接続しているが、図17で示すグリップ(安全器)を用いて、落下体と親綱等とを接続しても、ほぼ同様の結果を得ることができる。