以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
本発明の墜落防止装置は、伐木、草刈、地山掘削、切土や盛土用の整形、法面清掃、ラス張り、法枠用型枠の設置、鉄筋挿入工、張芝工、植生マット工、設置された法枠用型枠へのモルタルやコンクリートの吹き付け、モルタルやコンクリート面のはつり等の法面作業に用いることができる。以下の説明では、法面に設置された法枠用型枠へのモルタルの吹き付け(以下、吹き付け工程と称する。)を行う場合に用いる態様を例に挙げて説明する。
図1は、本発明の一実施形態である墜落防止装置を用いて吹き付け工程を行う様子を概念的に示す斜視図である。図1では、法面Sの一部を示すとともに、この法面Sに張設されたワイヤーラス91上に法枠用型枠92が設置され、この法枠用型枠92に作業者Mがモルタルを吹き付けて法枠90を形成している様子を示している。なお、図1では、左斜め上方が、法面Sの上部側になる法肩側になり、右斜め下方が、法面Sの下部側になる法尻側になる。以下、図1における、法肩側と法尻側を基準にして方向を説明する。また、法肩と法尻を結ぶ方向と交差する方向を幅方向と称することがある。
図1に示すように、法面Sには、メインロープとしてのロープRと、ライフラインとしてのワイヤWがつり下げられている。作業者Mは、ロープRによって身体を保持された状態で作業を行うものであり、万一、ロープRが切れてしまったり解けてしまったりした場合には、ワイヤWに保持されることで墜落が防止される。法肩には手すり93が設けられており、この手すり93には、ロープRやワイヤWの摩耗を防止するための保護ローラ931が設けられている。ロープRとワイヤWは、保護ローラ931に巻き掛けられた状態で、上端部分が、不図示の立木やアンカーバー等の支持物に締結されている。また、法面Sにつり下げられたロープRは、作業者Mよりも法尻側にかけてつり下げられており、ワイヤWは、詳しくは後述するように、作業者Mの安全帯8に取り付けられた巻取機3(図2参照)に巻き取られている。
図1では、それぞれロープRによって身体を保持された作業者Mが幅方向に3人並んで作業する様子を示している。左側の作業者Mは、一点鎖線で示す供給ホースHを肩にかけて保持しており、この供給ホースHから吐出されるモルタルを法枠用型枠92に吹き付けて法枠90を形成している。なお、供給ホースHを保持している作業者Mは、モルタルを吹き付けた後、供給ホースHを隣の作業者Mに渡し、さらに供給ホースHを受け取った作業者Mがモルタルを吹き付けるといった作業を繰り返しながら幅方向に法枠90を形成していき、徐々に法尻側に向けて下降しながら吹き付け工程を実施していく。ここで、モルタルを吹き付けた法枠90にロープRやワイヤWが接触すると、吹き付けたモルタルが崩れてしまう。このため、ロープRやワイヤWが垂れて法枠90に接触しないように、作業者Mは、ロープRやワイヤWが張った状態に維持しながら吹き付け工程を実施することが要求される。なお、図1では、供給ホースHを法尻側から供給する態様を採用しているが、供給ホースHを法肩側から供給する態様を採用してもよい。
図2は、本発明の一実施形態である墜落防止装置1を用いて吹き付け工程を実施する作業者Mを上方から見た図である。この図2では、図面を簡略化するため、図1に示す、法面Sに設けられた、法枠90、ワイヤーラス91および法枠用型枠92等は省略し、作業者Mについては、その胴体と頭部を概念的に示している。なお、図2では、紙面の上側が法肩側になり、紙面の下側が法尻側になる。
図2に示すように、ロープRには、グリップ6が取り付けられており、ワイヤWには、本発明の墜落防止装置1の接続器具2が取り付けられている。ロープRは、メインロープ(親綱)の機能を有するものであり、法面Sにつり下げられた状態で法尻まで達する長さのものが用いられ、本実施形態では、径が18mmの三つ打ちロープを採用している。ワイヤWは、メインロープが切れてしまった場合や解けてしまった場合に作業者Mの安全を確保するライフラインの機能を有するものであり、例えば、長さが15m〜50m、径が3mm〜4mm程度のものを採用している。
作業者Mの腰には、安全帯8が装着されており、グリップ6と安全帯8とが2本のロープ側ランヤード7によって接続されている。また、ワイヤWは、安全帯8に取り付けられた巻取機3に巻き取られ、接続器具2と安全帯8とがワイヤ側ランヤード5によって接続されている。
図3は、安全帯8の構造を示す図である。安全帯8は、図3に示す状態では、裏側が作業者Mに装着される側になる。
図3に示すように、安全帯8は、腰ベルト81と、バックサイドベルト82と、一対のつりベルト83,83を有している。腰ベルト81は作業者Mの腰骨の位置に巻かれるものであり、巻取機3およびワイヤ側ランヤード5(図2参照)が取り付けられるD環811が設けられている。このD環811は、図3において腰ベルト81のやや左寄りに設けられ、安全帯8を装着した作業者Mの左腰付近に位置するものである。また、D環811は、腰ベルト81における位置を移動させることができ、例えば、作業者Mが左利きの場合には、作業者Mの右腰付近に位置するように移動させてもよい。
バックサイドベルト82は、作業者Mの臀部および腿部を覆うものであり、幅方向の両側それぞれに、ロープ側ランヤード7(図2参照)が取り付けられる作業用D環821が設けられている。
図2に示すように、2つのロープ側ランヤード7それぞれは、ロープRよりもやや細い径のランヤードロープ71と、ランヤードロープ71の一端側に設けられた連結金具72と、ランヤードロープ71の他端側に設けられたフック73とを有している。ロープ側ランヤード7それぞれは、連結金具72が、詳しくは後述するグリップ6の連結環64に連結され、フック73は、安全帯8の作業用D環821に取り付けられている。作業者Mが、法尻側に体重をかけると、2つのロープ側ランヤード7によってグリップ6の連結環64が法尻側に引っ張られる。
図4(a)は、図2に示すグリップ6によってロープRを把持する状態を示し、同図(b)は、グリップ6によるロープRの把持が解除された状態を示す図である。なお、図4では、図面を簡略化するため、2つのロープ側ランヤード7のうち1つのみを示している。
図2および図4に示すように、グリップ6は、本体管部61と、握り杆62と、前述した連結環64を有しており、また、図4に示すように、本体管部61と握り杆62を連結する一対の爪部材63,63を有している。
本体管部61は、開閉自在に構成され、開いた状態でロープRを挿入し、閉めることでロープRを挟み込んだ状態でロープRに取り付けられる。爪部材63における、ロープRと接触する部分には、押爪631が形成されている。また、本体管部61と一対の爪部材63,63は回動自在に連結され、一対の爪部材63,63と握り杆62も回動自在に連結され、これらにより四節リンク機構を構成している。
図4(a)は、図2に示す作業者Mが、法尻側に体重をかけ、矢印で示すように、連結環64に取り付けられたロープ側ランヤード7によって、握り杆62と一対の爪部材63とが法尻側に引っ張られた状態を示している。握り杆62と一対の爪部材63とが法尻側に引っ張られると、四節リンク機構により爪部材63の押爪631がロープRを締めつけ、グリップ6がロープRに強固に固定される。これにより、グリップ6、ロープ側ランヤード7および安全帯8を介して、作業者MがロープRに保持される。すなわち、握り杆62と一対の爪部材63とが、ロープ固定機構の一例に相当する。
一方、作業者Mが法面を昇降する場合には、例えば作業者Mが、ロープRにおける、グリップ6で保持された部分よりも法肩側の部分を右手で掴み、法尻側にかけていた荷重を解除する。その上で、グリップ6を例えば左手で掴み、図4(b)の矢印で示すように、握り杆62を法肩側に押す。これにより、押爪631がロープRから浮いた状態になり、ロープRへのグリップ6の固定が解除され、作業者Mは法面を昇降することができる。
図5は、図2に示すワイヤ側ランヤード5が伸縮する様子を段階的に示す図である。なお、図5では、左上側が法肩側になり、右下側が法尻側になる。
図2および図5に示すように、ワイヤ側ランヤード5は、帯状ロープ51と、帯状ロープ51の一端側に取り付けられた安全フック53と、帯状ロープ51を他端側から巻き取る第2巻取機52と、第2巻取機52に取り付けられた取付フック54と、衝撃緩衝部材55とを有している。
帯状ロープ51は、例えば、芯材にアラミド繊維等の高強度繊維を用いたものであり、本実施形態では、全長が1.5m程度に設定されている。また、帯状ロープ51は、安全フック53が取り付けられた一端側の部分(例えば、50cm程度)がつづら折り状に折りたたまれ、この折りたたまれた部分が衝撃緩衝部材55によって保持されている。
第2巻取機52は、帯状ロープ51を他端側から巻き取り、また巻き取った帯状ロープ51を繰り出すものであり、不図示の巻取ローラと、この巻取ローラを回転させる不図示のゼンマイばねが内蔵されている。ゼンマイばねは、帯状ロープ51を巻き取る方向に巻取ローラを付勢しており、これにより、帯状ロープ51が弛むことなく第2巻取機52に巻き取られる。一方、ゼンマイばねの付勢力に抗する力が強くなると、第2巻取機52から帯状ロープ51が繰り出される。また、第2巻取機52は、不図示の操作部を操作することで巻取ローラの回転をロックするロック機構と、帯状ロープ51が急速に繰り出されると巻取ローラの回転をロックする緊急ロック機構を備えている。なお、軽量化等を図るため、緊急ロック機構は省略してもよい。
図2に示すように、ワイヤ側ランヤード5の安全フック53は、詳しくは後述する接続器具2の連結環23に連結されており、取付フック54は、安全帯8のD環811に取り付けられている。
図5(a)は、衝撃緩衝部材55で保持された部分を除き、帯状ロープ51が第2巻取機52に巻き取られた状態を示し、同図(b)は、矢印で示すように帯状ロープ51が第2巻取機52から全て繰り出された状態を示している。図5(b)に示す状態において、ワイヤWに接続器具2が固定されていると、接続器具2、ワイヤ側ランヤード5および安全帯8を介して、作業者MがワイヤWに保持される。
また、詳しくは後述するように、図2に示す巻取機3はワイヤWの巻き取りおよび繰り出し自在であるため、ワイヤWに接続器具2が固定された状態では、接続器具2に連結されたワイヤ側ランヤード5の帯状ロープ51は、図5(a)に示す状態と同図(b)に示す状態との間で、作業者Mの動きに追従して第2巻取機52に巻き取られ、また第2巻取機52から繰り出される。
さらに、ロープRが切れた場合等において、帯状ロープ51が第2巻取機52から急速に繰り出されると、前述した緊急ロック機構により帯状ロープ51の繰り出しが停止されるとともに、図5(c)に示すように衝撃緩衝部材55が二つに分割して取り除かれ、帯状ロープ51の折りたたまれた部分が伸長する。これにより、帯状ロープ51および安全帯8を通じて作業者Mが保持される際に生じる衝撃荷重を緩和することができる。
なお、ワイヤ側ランヤード5は、図5(c)に示す、帯状ロープ51が第2巻取機52から全て繰り出され、折りたたまれた部分も伸長した最も長い状態において、全長が2m以内に設定されている。これにより、ロープRが切れた場合や解けた場合に、作業者Mがワイヤ側ランヤード5で保持されるまでに法面を落下する距離を2m以内に抑え、作業者Mにかかる衝撃荷重を抑えることができる。
図6は、ワイヤ側ランヤード5の変形例を示す図である。
図6に示す変形例のワイヤ側ランヤード5は、図5に示すワイヤ側ランヤード5の帯状ロープ51を伸縮可能なカールコードワイヤ56に置き換えるとともに、第2巻取機52(図5参照)を省略して、カールコードワイヤ56の他端を取付フック54に接続している。この変形例のワイヤ側ランヤード5を用いた場合には、カールコードワイヤ56が伸縮可能な範囲で作業者Mの移動が許容される。
図7は、図2に示す巻取機3の内部構造を概略的に示す図である。なお、図7でも、左上側が法肩側になり、右下側が法尻側になる。
図7に示すように、巻取機3は、ケーシング31と、ケーシング31に内蔵された巻取ローラ32と、ケーシング31に取り付けられた取付フック33を有している。巻取ローラ32は、一点鎖線で示すワイヤWの巻き取りおよび繰り出しを行うものであり、支持枠34に支持された軸部35を中心に回転自在に配置されている。また、巻取ローラ32は、不図示のゼンマイばねによって、図の円弧状の矢印で示す、ワイヤWを巻き取る方向に付勢されており、これにより、ワイヤWの弛みを防いで巻き取ることができる。
ここで、巻取機3には、セイフティブロックに必要な作業者Mの墜落を防止する機能が不要であるため、巻取機3は、セイフティブロックに比べ、安価であるとともに軽量かつ小型に構成することができる。このため、安全帯8に取り付けることができ、作業負担の増加と費用の増加を抑えることができる。なお、軽量化を優先し、本実施形態の巻取機3には、操作部を操作することで巻取ローラ32の回転をロックするロック機構を設けていないが、このようなロック機構を設ける態様を採用してもよい。
図8(a)は、図2に示す接続器具2を拡大して示す図である。
図2および図8(a)に示すように、接続器具2は、フレーム21と、巻回ローラ22と、フレーム21に設けられた連結環23とを有している。巻回ローラ22は、その回転体221(図9参照)が回転可能にフレーム21に設けられたものであり、回転体221の操作部2211がフレーム21から上方に突出し、その他の部分は、フレーム21内に収容されている。フレーム21は、箱状に形成され、その法肩側と法尻側にはそれぞれ、ワイヤWを挿通させる開口部21aが形成されている。また、フレーム21には、巻回ローラ22の周囲に立設した円筒状の円筒状部211が設けられている。なお、円筒状部211にも、その法肩側と法尻側にはそれぞれ、ワイヤWを挿通させる開口部211aが形成されている。
図8(b)および同図(c)は、同図(a)に示す巻回ローラ22の、阻止される方向への回転と許容される方向への回転を概念的に示す図である。なお、図8(b)および同図(c)でも、上側が法肩側になり、下側が法尻側になる。図9は、図8(a)のA−A線断面図であり、図9(a)は、図8(b)に示す方向の巻回ローラ22の回転が阻止される状態を示しており、同図(b)は、図8(b)に示す方向の巻回ローラ22の回転が阻止される状態から許容される状態に操作した様子を示している。なお、図9では、ワイヤWが巻回されている様子を明確にするため、巻回ローラ22およびこの巻回ローラ22に巻回されたワイヤWを断面せずに示している。また、図9では、左側が法肩側になり、右側が法尻側になる。
図9(a)および同図(b)に示すように、巻回ローラ22は、回転体221と、軸体222と、コイルばね223とを有している。軸体222は、フレーム21の底部に固定された固定フランジ2221と、この固定フランジ2221から立設した円柱状の軸部2222を有している。回転体221は、底側に鍔部2215を有するとともに、内部が中空に形成されており、この中空の回転体221の内部には、軸体222の軸部2222が挿入されている。また、軸体222の固定フランジ2221と回転体221の鍔部2215との間には、コイルばね223が配置されている。これらにより、回転体221は、軸部2222を軸として回転可能であり、コイルばね223によって上方に付勢されている。
回転体221は、操作部2211の下側部分に、操作部2211よりも大径な大径部2212を有しており、この大径部2212と鍔部2215との間にワイヤWが巻回される巻回部2214が形成されている。
図8(b)、同図(c)および図9に示すように、大径部2212には、複数の係止駒2213が設けられている。図8(b)および同図(c)に示すように、これら係止駒2213それぞれは、反時計回りに徐々に肉厚になり、最も厚肉な先端部分に係止部2213aを有している。また、係止駒2213は、後端部分に設けられた軸2212cを回転中心として、大径部2212に形成された格納凹部2212aに格納される状態と、大径部2212の外周部分から外側に突出する状態とに回転自在に設けられており、ばね2212bによって大径部2212の外周部分から外側に突出する方向に付勢されている。以下、格納凹部2212aに係止駒2213が格納される状態を格納状態と称することがあり、係止駒2213が大径部2212から突出する状態を突出状態と称することがある。
円筒状部211には、その内周部分から中心に向かって突出した係止片2111が、略90度間隔で形成されている。この係止片2111は、円筒状部211の内周部分から突出する長さが大径部2212の外周部分に接触しない長さに設定され、図9に示すように、円筒状部211の上端部分に設けられている。
図9に示すように、巻回部2214には、ワイヤWが巻回されている。特に限定されるものではないが、本実施形態では、巻回部2214にワイヤWを2周巻き付けており、これによりワイヤWの所定箇所に巻回部2214が固定される。また、回転体221が、巻回部2214から法肩側(図2に示す安全帯8とは反対側)にワイヤWを繰り出す方向に回転すれば、接続器具2は、ワイヤWに対して相対的に法尻側(作業者Mが法面を降りる方向に相当)に移動する。一方、回転体221が、巻回部2214から法尻側(図2に示す安全帯8側)にワイヤWを繰り出す方向に回転すれば、接続器具2は、ワイヤWに対して相対的に法肩側(作業者Mが法面を昇る方向に相当)に移動する。
ここで、図4を用いて前述した、爪部材63によって締めつける態様の固定機構をワイヤWに採用すると、ワイヤWが潰れてしまう場合がある。本実施形態では、ワイヤWを巻回部2214に巻き付けて固定する態様を採用しているため、ワイヤWが潰れてしまうといった不具合を回避することができる。また、回転体221は、ワイヤWの延在方向に対し、法面に向かって直交する方向に延在した軸部2222を回転中心として回転するものである。このため、巻回部2214に巻回されたワイヤWが左右に振れにくくなり、ワイヤWを安定させることができる。
前述したように、回転体221は、コイルばね223によって上方に付勢されるため、図9(a)に示すように、大径部2212は、その上端部分が、フレーム21の天井部分に当接し、水平方向(図9の紙面に対して直交する方向)において、円筒状部211の係止片2111と、大径部2212の係止駒2213とが重なる状態になる。
図8(b)は、回転体221の回転方向を円弧状の矢印(反時計回り)で示すように、図9(a)に示す状態において、巻回部2214から法肩側(図2に示す安全帯8とは反対側)にワイヤWを繰り出す方向(作業者Mが法面を降りる場合の方向に相当)に回転体221が回転する様子を示している。反時計回りに回転体221が回転すると、突出状態の係止駒2213における係止部2213aが、円筒状部211の係止片2111に当接し、回転体221の回転が阻止される。これにより、ワイヤWに対し、接続器具2の法尻側への移動が阻止される。すなわち、回転体221および円筒状部211が、ワイヤ固定機構の一例に相当し、巻回ローラ22がローラの一例に相当し、円筒状部211の係止片2111がストッパの一例に相当する。
ここで、ワイヤWに対し、接続器具2の法尻側への移動が阻止されると、接続器具2の連結環23に連結されたワイヤ側ランヤード5が伸縮する範囲で、作業者Mの法尻側への移動が制限される。また、万一、ロープRが切れてしまったような場合には、接続器具2の連結環23に連結されたワイヤ側ランヤード5によって作業者Mの墜落を防ぐことができる。
図8(c)は、回転体221の回転方向を円弧状の矢印(時計回り)で示すように、図9(a)に示す状態において、巻回部2214から法尻側(図2に示す安全帯8側)にワイヤWを繰り出す方向(作業者Mが法面を昇る場合の方向に相当)に回転体221が回転する様子を示している。時計回りに回転体221が回転すると、突出状態の係止駒2213は、円筒状部211の係止片2111に押され格納状態になる。このため、回転体221の回転が許容される。これにより、例えば、作業者Mが法面を昇る場合には、図7に示す巻取機3によってワイヤWが巻き取られることで、回転体221が時計回りに回転し、巻回部2214によってワイヤWが法肩側から巻き取られていく。この結果、ワイヤWに対する接続器具2の位置も法肩側に移動していき、ワイヤWの垂れを防ぐことができる。
一方、図8(b)に示す、接続器具2の法尻側への移動が阻止された状態を解除するには、図9(b)において矢印で示すように、操作部2211をフレーム21に向けて押し込む。これにより、水平方向(図9の紙面に対して直交する方向)において、円筒状部211の係止片2111に、大径部2212の係止駒2213が重ならない状態に回転体221が移動する。この結果、反時計回りの回転体221の回転が許容され、ワイヤWに対して接続器具2を法尻側に移動させることができ、作業者Mが法面を降りることが可能となる。
なお、本実施形態では、係止駒2213と係止片2111をそれぞれ4つずつ設けているが、係止駒2213と係止片2111を、3つ以下にしてもよいし、5つ以上設けてもよい。また、例えば、係止駒2213を1つ設け、係止片2111を4つ設ける等、係止駒2213と係止片2111の数を異ならせる態様を採用してもよい。
続いて、図2に示す作業者Mが行う吹き付け工程の一例を説明する。
作業者Mは、法尻側に体重をかけることで、前述したように、グリップ6、ロープ側ランヤード7および安全帯8を介して身体がロープRに保持される。この状態では、ロープRが張った状態になり、ロープRが弛んでモルタルが崩れてしまうといった不具合を回避することができる。
また、ワイヤWは、巻取機3に巻き取られることで張力が付与され、巻取機3と接続器具2との間の部分の弛みが防止される。さらに、接続器具2は、図8(c)に示すように、巻回部2214から法尻側にワイヤWを繰り出す方向に回転体221が回転し、ワイヤWの、法肩から接続器具2までの部分の弛みも抑制することができる。これらによって、ワイヤWが垂れて、吹き付けたモルタルを崩してしまうといった不具合を回避することができる。なお、ワイヤ側ランヤード5も、第2巻取機52に巻き取られることで帯状ロープ51の弛みが防止される。
作業者Mは、ロープRに保持された状態で、図1に示す供給ホースHを肩にかけるなどして保持し、供給ホースHからモルタルを法枠用型枠92(図1参照)に吹き付ける。また、作業者Mは、法尻側に体重をかけ、身体がロープRに保持された状態で法面を左右に移動しながらモルタルを吹き付け、所定範囲の吹き付けが完了したら隣の作業者Mに供給ホースHを渡す。
ここで、吹き付けたモルタルが、ワイヤWや帯状ロープ51に付着してしまうと、巻取機3や第2巻取機52への巻き取りが困難になってしまう場合がある。このため、図2において一点鎖線で示すように、ワイヤWや帯状ロープ51にカバーCを取り付けることが好ましい。このカバーCとしては、例えばポリエステル製の布を筒状に形成し、さらに蛇腹状に伸縮自在なものを採用することが好ましい。
続いて、作業者Mが法尻側の領域に吹き付け工程を実施するために法面を降りる場合には、まず、グリップ6よりも法肩側に位置するロープRの部分を右手で掴み、法尻側にかけていた体重を右手で支えるようにする。次いで、グリップ6を左手で掴み、図4(b)の矢印で示すように、握り杆62を法肩側に押す。これによって押爪631を浮かせ、グリップ6のロープRへの固定を解除した状態で、法面を降りていく。作業者Mが法面を降りていくうちに、ワイヤWと帯状ロープ51は、それぞれ巻取機3と第2巻取機52から繰り出されていくとともに、接続器具2が作業者Mから離れていく。作業者Mは、接続器具2の操作部2211に手が届く範囲で下降を停止し、ロープRを掴んでいた右手と、グリップ6を掴んでいた左手をはなし、法尻側に体重をかける。これにより、グリップ6がロープRに固定され、再び作業者Mの身体がロープRに保持された状態に戻る。
次に、図9(b)に示すように、接続器具2の操作部2211をフレーム21に向けて押し込む。これにより、図8(b)に示す反時計回りの回転体221の回転が許容され、この状態で、ワイヤWに対して接続器具2を法尻側に移動させる。以上の動作を行うことで、あるいは以上の動作を繰り返し行うことで、作業者Mは所望の位置まで下降し、次の領域にモルタルを吹きつける作業を行うことができる。
作業者Mが吹き付け工程を行う際には、ワイヤWは巻取機3に巻き取られるため、作業者Mよりも法尻側につり下がることがない。このため、作業者Mよりも法尻側につり下がるのがロープR1本、あるいはロープRと供給ホースHの2本になり、法枠用型枠等に引っ掛かって作業がしにくくなるといった問題を大幅に軽減することができる。
図2に示す作業者Mが法面を昇る場合には、法面を降りる場合と同様に、グリップ6よりも法肩側に位置するロープRの部分を右手で掴み、法尻側にかけていた体重を右手で支えるとともに、グリップ6を左手で掴み、グリップ6のロープRへの固定を解除した状態で、グリップ6を法肩側に移動させながら法面を昇っていく。この際、ロープRが垂れて吹き付けたモルタルに接触しないように、右手でロープRを引っ張りながら注意して法面を昇っていく必要がある。
一方、接続器具2は、ワイヤWが巻取機3によって巻き取られることで、図8(c)の矢印で示すように、回転体221が時計回りに回転する。これにより、作業者Mが法面を昇っていくにつれて、接続器具2も法肩側に移動していく。このため、法面を昇る際には、作業者Mは、接続器具2に対して操作をする必要がない。なお、巻取機3のワイヤWを巻き取る力が弱い場合には、作業者Mが法面を昇っていっても回転体221が回転しない場合がある。その場合には、一旦、ロープRとグリップ6から手をはなし、身体をロープRに保持させた状態にした後、接続器具2を法肩側に移動させればよい。
次に、図8および図9に示す接続器具2の変形例について説明する。以下に説明する変形例においては、図8および図9に示す接続器具2との相違点を中心に説明し、図8および図9に示す接続器具2における構成要素の名称と同じ名称の構成要素には、これまで用いた符号を付して説明し、重複する説明は省略することがある。
図10(a)および同図(b)は、第1変形例の接続器具2における、図8(b)および同図(c)に対応する図であり、図10(c)および同図(d)は、第1変形例の接続器具2における、図9(a)および同図(b)に対応する図である。
図10に示すように、大径部2212は、薄肉の円盤状に形成され、この大径部2212の上面には、操作部2211から放射状に延在した係止歯2216が複数(図では略45度間隔で8つ)設けられている。円筒状部211には、その内周部分から中心に向かって突出した係止片2111が複数(図では略45度間隔で8つ)形成されている。この係止片2111は、円筒状部211の内周部分から突出する長さが操作部2211の外周部分に接触しない程度に設定されている。
図10(c)に示すように、コイルばね223によって回転体221が上方に付勢されると、係止歯2216の上端部分がフレーム21の天井部分に当接し、水平方向(図10(c)における紙面に対して直交する方向)において、円筒状部211の係止片2111と、係止歯2216とが重なる状態になる。第1変形例の接続器具2では、図10(a)に示す、巻回部2214から法肩側にワイヤWを繰り出す反時計回りの方向に回転体221が回転する場合でも、図10(b)に示す、巻回部2214から法尻側にワイヤWを繰り出す時計回りの方向に回転体221が回転する場合でも、係止歯2216が、円筒状部211の係止片2111に当接し、回転体221の回転が阻止される。これにより、ワイヤWに対し、接続器具2の法尻側および法肩側の両方への移動が阻止される。
図10(a)、同図(b)および同図(c)に示す、接続器具2の移動が阻止された状態を解除するには、図10(d)において矢印で示すように、操作部2211をフレーム21に向けて押し込むことで、水平方向(図10(d)における紙面に対して直交する方向)において、円筒状部211の係止片2111に対して、係止歯2216が重ならない状態に回転体221を移動させればよい。
なお、第1変形例の接続器具2では、図10(a)および同図(b)に示す、円筒状部211の係止片2111どうしの間隔が、ワイヤWに対する、接続器具2の法尻側および法肩側の両方への移動の、いわゆる遊びになる。このため、係止片2111どうしの間隔や、設ける係止片2111の数等を変更することで、接続器具2の移動の遊びを調整することができる。
図11(a)および同図(b)は、第2変形例の接続器具2における、図8(b)および同図(c)に対応し、巻回ローラ22の回転が阻止される場合と許容される場合を概念的に示す図である。また、図11(c)および同図(d)は、第2変形例の接続器具2における、図9(a)および同図(b)に対応する図である。
図11(c)および同図(d)に示すように、巻回ローラ22は、図9に示すコイルばね223を有しておらず、回転体221は、軸体222に設けられた上側フランジ2223と固定フランジ2221に挟まれた状態で軸体222に対して回転可能に設けられている。これにより、回転体221の、軸体222に対する上下方向の位置は固定されている。また、図11に示すように、回転体221の大径部2212には、中心に向かって切り欠かれた切欠部2212dが、略45度間隔で4つ形成されている。
図11(c)および同図(d)に示すように、第2変形例の接続器具2では、図8(b)および同図(c)に示す、円筒状部211の係止片2111に代えて、ストッパ部材24が設けられている。ストッパ部材24は、フレーム21の天井部において紙面と直交する方向に延在した回転軸243と、この回転軸243に取り付けられたストッパ本体241と、一端が軸部2222に取り付けられ他端がストッパ本体241に取り付けられた引張コイルばね244が設けられている。ストッパ本体241は、先端がフレーム21から突出した棒状の操作部241aと、この操作部241aの下端に設けられ、図11(a)および同図(b)においてクロスハッチングを施して示すように、断面が楔状の楔部241bとを有している。ストッパ本体241は、その楔部241b側が、回転体221から遠ざかる方向と回転体221に近づく方向とに回動自在に設けられ、また、引張コイルばね244によって回転体221に近づく方向に引っ張られている。
図11(a)および同図(c)に示すように、引張コイルばね244によって引っ張られ、楔部241bが、大径部2212の切欠部2212dに入り込んでいる場合には、回転体221の回転が阻止され、これにより、ワイヤWに対し、接続器具2の法尻側および法肩側の両方への移動が阻止される。一方、図11(d)の矢印で示すように、ストッパ本体241の操作部241aに手をかけて法尻側に倒せば、引張コイルばね244に抗してストッパ本体241の楔部241b側が、回転体221から遠ざかる方向に回転し、楔部241bが切欠部2212dから抜け出る。これにより、図11(b)の両矢印で示すように、回転体221の回転が許容され、ワイヤWに対し、接続器具2を法尻側および法肩側のいずれにも移動させることができる。なお、ストッパ本体241の操作部241aから手を離し、楔部241bが切欠部2212dに入り込む位置まで回転体221が回転すると、引張コイルばね244に引っ張られて楔部241bが切欠部2212dに入り込み、回転体221の回転が阻止される。
図12(a)および同図(b)は、第3変形例の接続器具2における、図11(a)および同図(b)に対応する図であり、図12(c)および同図(d)は、第3変形例の接続器具2における、図11(c)および同図(d)に対応する図である。第3変形例の接続器具2は、図11に示す第2変形例の接続器具2と比べ、主に、回転体221の大径部2212に形成された切欠部2212dの態様と、ストッパ部材24の構成及びその位置が相違する。
図12(a)および同図(b)に示すように、第3変形例の接続器具2では、回転体221の大径部2212に切欠部2212dが1つ形成されている。また、図12(c)および同図(d)に示すように、ストッパ部材24が、軸部2222よりも法尻側に設けられるとともに、一端がフレーム21の天井部分に取り付けられ他端がストッパ本体241の楔部241bに取り付けられた圧縮コイルばね245を有している。この圧縮コイルばね245により、ストッパ本体241は、楔部241bが回転体221に近づく方向に付勢されている。
図12(a)および同図(c)に示すように、圧縮コイルばね245によって付勢され、楔部241bが、大径部2212の切欠部2212dに入り込んでいる場合には、回転体221の回転が阻止され、これにより、ワイヤWに対し、接続器具2の法尻側および法肩側の両方への移動が阻止される。一方、図12(d)の矢印で示すように、ストッパ本体241の操作部241aに手をかけて法肩側に倒せば、圧縮コイルばね245に抗してストッパ本体241の楔部241b側が、回転体221から遠ざかる方向に回転し、楔部241bが切欠部2212dから抜け出る。これにより、図12(b)の実線の矢印で示す、巻回部2214から法肩側にワイヤWを繰り出す方向の回転体221の回転が許容され、ワイヤWに対し、接続器具2を法尻側へ移動させることができる。また、図12(b)の一点鎖線の矢印で示す、巻回部2214から法尻側にワイヤWを繰り出す方向の回転体221の回転も許容され、ワイヤWに対し、接続器具2を法肩側へも移動させることができる。
この第3変形例の接続器具2によれば、回転体221の回転を許容する状態への操作は、図12(d)の矢印で示すように、図2に示す作業者Mから離れる方向へ操作部241aを倒す動作になり、誤って操作部241aに手をかけてしまい不用意に回転体221の回転を許容してしまうといった誤動作が抑制される。
なお、図11に示す第2変形例の接続器具2では、大径部2212に切欠部2212dを4つ形成し、図12に示す第3変形例の接続器具2では、大径部2212に切欠部2212dを1つ形成しているが、切欠部2212dの数は特に限定されるものではない。例えば、切欠部2212dを、2つあるいは3つ形成してもよいし、切欠部2212dを5つ以上設けて、作業者Mがストッパ本体241の操作部241aから手を離すと直ぐに、楔部241bが切欠部2212dに入り込むように構成してもよい。
次いで、これまで説明してきた墜落防止装置1の第2実施形態について説明する。以下の第2実施形態の説明では、これまで説明してきた墜落防止装置1との相違点を中心に説明し、これまで説明した構成要素の名称と同じ名称の構成要素には、これまで用いた符号を付して説明し、重複する説明は省略することがある。
図13は、第2実施形態の墜落防止装置を用いて吹き付け工程を実施する作業者Mを上方から見た図である。なお、図13では、図2に示す巻取機3が、第2巻取機52の下方に隠れている。
図13に示すように、第2実施形態の墜落防止装置1は、接続器具2に、ロープ固定機構としての一対の爪部材63,63が設けられている。これら爪部材63,63は、操作部2211とともに、図4に示すような、四節リンク機構を構成している。また、操作部2211には、巻回ローラ22の回転を阻止する不図示のストッパを有している。このストッパは、例えば、巻回ローラ22の回転体に設けられた溝に挿入されることで、巻回ローラ22の回転体の回転を阻止する態様を採用することができる。
これらにより、図2に示す作業者Mが、法尻側に体重をかけると、連結環64に取り付けられたロープ側ランヤード7によって、操作部2211が法尻側に引っ張られ、四節リンク機構により爪部材63の押爪631(図4参照)がロープRを締めつけ、接続器具2がロープRに強固に固定される。これにより、接続器具2、ロープ側ランヤード7および安全帯8を介して、作業者MがロープRに保持される。また、不図示のストッパによって、巻回ローラ22の回転が阻止され、これにより、ワイヤWに対する、接続器具2の法肩側および法尻側双方への移動が停止する。
作業者Mが法面を昇降する場合には、例えば作業者Mが、ロープRにおける、接続器具2で保持された部分よりも法肩側の部分を右手で掴み、法尻側にかけていた荷重を解除する。その上で、接続器具2を例えば左手で掴み、操作部2211を法肩側に押す。こうすると、押爪631(図4参照)がロープRから浮いた状態になり、接続器具2のロープRへの固定が解除されるとともに、不図示のストッパによる、巻回ローラ22の回転の阻止も解除される。これらにより、作業者Mは法面を昇降することができる。一方、作業者Mが、接続器具2から左手を離し、法尻側に体重をかければ、接続器具2がロープRに強固に固定されて、作業者MがロープRに保持され、また、巻回ローラ22の回転が阻止される。このように、第2実施形態の墜落防止装置1によれば、作業者Mの一つの操作によって、ロープRおよびワイヤWへの接続器具2の固定およびその固定の解除を行うことができ、操作をより容易に行うことができる。
なお、第2実施形態の墜落防止装置1では、ロープRが切れた場合には、ワイヤW、ワイヤWに固定された接続器具2、および接続器具2に取付けられたロープ側ランヤード7によって作業者Mを保持することができる。このため、ワイヤ側ランヤード5を省略することもできる。また、図4に示す、爪部材63,63を操作する握り杆62と、巻回ローラ22の回転を阻止するための不図示のストッパの操作部とを別体に設けてもよい。別体に設ける態様の場合には、ストッパの操作部が第2操作部の一例に相当し、握り杆62と第2操作部とが片手で一緒に操作(例えば、左手の親指で握り杆62を押さえ、左手の内側で第2操作部を押さえる等)できる構成とすることが好ましい。
本発明は前述の実施の形態に限られることなく特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことができる。例えば、上記実施形態においては、図8(a)に示すように、法肩側から法尻側に延在するワイヤWが巻回部2214(図9参照)の右側(図2に示すロープR側)に位置する態様を採用しているが、ワイヤWが巻回部2214(図9参照)の左側(図2に示すロープRとは反対側)に位置する態様を採用してもよい。また、図9に示すように、ワイヤWは、巻回部2214に巻回された分よりも法肩側が高くなり法尻側が低くなる態様を採用しているが、逆に、法肩側が低くなり法尻側が高くなるように巻回部2214に巻回してもよい。ただし、法肩側が高くなり法尻側が低くなる態様とすれば、ワイヤWにおける、接続器具2よりも法肩側の部分が、吹き付けたモルタルに接触しにくくなるため好ましい。さらに、上記実施形態では、ワイヤWを、法肩に設けられた立木やアンカーバー等の支持物に締結した状態で、作業者Mが法尻まで降りていく態様を例に挙げて説明したが、作業者Mが法面Sの途中まで降りたところで、ワイヤWを、法肩に設けられた支持物から解き、作業者Mが位置する近傍に立設されたアンカ等に締結し、さらに作業者Mが法面Sを降りていく態様としてもよい。この態様を採用すれば、ワイヤWの長さを短くすることができる。このため、巻取機3に巻き取られるワイヤWの量が少なくなり、巻取機3の重量を抑えることができる。
なお、以上説明した各実施形態や各変形例の記載それぞれにのみ含まれている構成要件であっても、その構成要件を他の実施形態や変形例に適用してもよい。