JP5102472B2 - 安全ベスト - Google Patents
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このような安全ベルトBによれば、作業中に作業者Mが足掛けTより足を滑らせた場合、前記ロープRは一時的には作業者Mの落下を防止するが、このとき落下防止の衝撃で作業者Mは多大な損傷(たとえば内臓破裂)を生じる恐れがある。
また、下水道管渠P内で作業を行う場合、大水の発生あるいは有害性ガスの発生など不意の事故によって作業者Mが意識を失うか、あるいは重症を負って自力で移動できなくなる恐れがある。
このような場合、作業者Mを救出する場合、救助者は、人孔Q内に進入して、ロープRのフックを足掛けTより外し、作業者Mを持ち上げて救出する必要がある。しかしながら、遭難した作業者Mを狭くかつ深い人孔Qより引き上げるのは相当な困難を伴い、人孔Q内に進入した救助者が有害性ガス、出水などによって二次遭難に会う恐れもある。
すなわち、請求項1に記載のとおり、下水道管渠等の人孔内での作業をなす作業者が着衣し、該作業者の安全及び救出を図る安全ベストであって、
首部及び袖口部の開口部を有し、下方に開口され、布地をもって前開き可能なベスト状に形成されてなるベスト本体と;前記ベスト本体の胴回りに複数にわたって水平に固定される所定幅の横ベルトと;前記横ベルトの前部に固定接続され、両方の肩部を介して前記横ベルトの背部に回り込んで固定される所定幅の縦ベルトと;前記縦ベルトの両方の肩部分に一端を固定され、所定長さを有する所定幅の支持ベルトと;を備え、
前記ベスト本体の内側で、かつ袖口に隣接するとともに、吊り上げられるときに着衣した作業者の腋の下に当接し、柔軟かつ強度のある広がり面を保持する緩衝帯を胴方向にほぼ全周にわたって固設してなることを特徴とする。
上記において、横ベルト、縦ベルト及び支持ベルトの採る「所定幅」は荷重の均等化をなすに十分な幅を有するとの意である。
上記構成において、
1)ベスト本体の前開き部においてファスナーが装着されること、
2)1)において、横ベルトに脱着具及び又は締付け調整具が装着されてなること、
3)支持ベルトの他端は相互に接続され連結部を介して吊上げロープに接続可能であること、
4)支持ベルトの他端が相互に接続されて形成される三角形の空隙の高さは30〜60cmであること、
5)緩衝帯の幅は20cm程度であること、
6)袖口の直径は20〜35cmであること、
は適宜採りうる選択的事項である。
作業者は本安全ベストを着用し、またその支持ベルトの上端を吊上げロープに連結し、吊上げロープからの張力を受けつつ人孔内で作業する。
吊上げロープからの張力は支持ベルトを介して縦ベルト及び横ベルトに伝わり、作業者の荷重を均等に受け、作業者への締付け感は小さい。更に、緩衝帯によって荷重は更に分散される。支持ベルトから縦ベルトへの張力の伝達は緩衝帯の袖口部への締込みを惹起させ、作業者の腕部の抜出し効果を与える。
作業者が足掛けより足を踏み外したとき、該支持ベルトに接続される吊上げロープは、その高さに対応した長さに繰り出され固定されているため、衝撃は少ない。またこのとき、該支持ベルトは2本の縦ベルトの肩部分より伸長しているため、2点で衝撃を受けることになり、従来の1点で衝撃を受ける場合よりも格段に衝撃が緩和される。本安全ベストはその緩衝帯によって衝撃を更に緩和する。 更に、作業者が動けない場合には、人孔外の作業補助者が該支持ベルトに接続した吊上げロープを吊り上げることにより、作業者を迅速に人孔外に引き上げうる。このとき緩衝帯は胴回りに設けられているため、安全ベストを着用した作業者を支持ベルトにより引っ張り上げる場合、該胴回りに設けられた緩衝帯が作業者の腋の下に当接することになるため、前記引っ張りによって安全ベストが作業者より抜け落ちることはない。
作業者が何らかの原因で落下状態となったとき、支持ベルトに接続される吊上げロープはその高さに対応した長さに繰り出され固定されているため、衝撃は少ない。また、該支持ベルトは2本の縦ベルトの肩部分より伸長しているため、2点で衝撃を受けることになり、従来の1点で衝撃を受ける場合より格段に小さくなるという利点がある。更に、本安全ベストは緩衝帯が設けてあるため、該緩衝帯によって衝撃を更に緩和する。
更に、作業者が動けない場合には、人孔外の作業補助者が該支持ベルトに接続した吊上げロープを吊り上げることにより、作業者を迅速に人孔外に引き上げることが可能である。このとき緩衝帯は胴回りに設けられているため、安全ベストを着用した作業者を支持ベルトにより引っ張り上げる場合、該胴回りに設けられた緩衝帯が作業者の腋の下に当接することになるため、前記引っ張りによって安全ベストが作業者より抜け落ちる必要がないという利点がある。
図1及び図2はこの安全ベストVの全体構成を示す。図3は更にその内部の構成、図4はその使用態様を示す。
図1〜図3に示されるように、この安全ベストVは、布地をもってベスト状に形成されてなるベスト本体1と、該ベスト本体1の胴回りに上下に水平に固定される2本の横ベルト2(上部横ベルト3A、下部横ベルト3B)と、該横ベルト2の前部に接続され、両方の肩部を介して該横ベルト2の背部に回り込んで固定される2本(左右)の縦ベルト3(右縦ベルト2A、左縦ベルト2B)と、該縦ベルト3の両方の肩部分から延設される2本の支持ベルト4とを含むとともに、更には、該ベスト本体1の内側の胴方向にほぼ全周にわたって配され広がり面を有する緩衝帯5及び吊上げロープRに連結される連結部6を含む。
ベスト本体1(図1〜図3参照)
ベスト本体1は、布地をもってベスト(チョッキ)状に形成され、かつ前開き可能となっており、それぞれの前身頃1a,1bはファスナー(図示せず)などによって、開閉可能になっている。
該ベスト本体1はベスト態様として、大きめの首部10及び袖口部11が形成され、着脱し易くなされる。
該ベスト本体1の布地として、メッシュ、防水布等が使用される。
横ベルト2は、上部横ベルト2Aと下部横ベルト2Bとからなり、ベスト本体1の胴部分を捲回するように、上下に平行に固定される。横ベルト2は所定の幅及び強度を有する。更に、該横ベルト2の素材は強度の大きい布地もしくは合成樹脂材が使用される。
該横ベルト2A,2Bはそれぞれ脱着具(いわゆるバックル)13(13A,13B)を正面に備えており、接続・解離可能になっている。更に、横ベルト2A,2Bにはベルトの長さを調整するための締具(長さ調整環)14(14A,14B)が設けられている。それぞれの横ベルト2A,2Bは、2本の縦ベルト3A,3Bに接続している。
縦ベルト3は、右縦ベルト3Aと左縦ベルト3Bとからなり、それぞれ横ベルト2の固定前部に接続され、両方の肩部を介して該横ベルト2の背部に回り込んで固定される。縦ベルト3は横ベルト2と同様、所定の幅及び強度を有する。更に、該縦ベルト3の素材は強度の大きい布地もしくは合成樹脂材が使用される。
支持ベルト4は、左右の2本4A,4Bよりなり、各縦ベルト3の肩部分に一端が接続されており、他端は相互に接続固定され、該他端にフックなどによって吊上げロープRに接続される連結部6を有する。あるいは1本よりなり、両端が肩部分に固定され中央で連結部6に固定把持されう態様も採りうる。この場合、当該中央部で小さな輪を形成し、該輪を連結部6としてもよい。該支持ベルト4は横ベルト2及び縦ベルト3と同様、所定の幅及び強度を有する。更に、該支持ベルト4の素材は強度の大きい布地もしくは合成樹脂材が使用される。
該支持ベルト4A,4Bは、三角形状の空間部Aを形成するが、作業者の首を締め込まないように適宜の寸法に定められる。
緩衝帯5は、所定の広がり面を保持し、ベスト本体1に固定され、該ベスト本体1の内側の胴方向にほぼ全周にわたって配される。該緩衝帯5のベスト本体1に対する固定は全面、あるいは適宜間隔を保ってなされる。
該緩衝帯5は、落下時の衝撃を緩和するとともに、吊り上げられるときに該安全ベストVを着衣した作業者の腋の下に当接し、該安全ベストVが吊り上げによって抜け落ちることを防止するために設けられる。このため、該緩衝帯5の素材は、柔軟で衝撃緩和性があることが望ましく、また作業者を吊り上げるときに支持できるような強度を備えていることが必要である。緩衝帯5は、ベスト本体1の袖口11に隣接して、前記袖口11のほぼ直下に設けられており、引っ張り上げる場合にベスト本体1が通常の装着状態より上方に著しく移動しないようにしてある。
緩衝帯5は所定の幅及び厚さを採る。
連結部6は、剛性を有する金属体よりなり、支持ベルト4の三角形状の頂部に配され、該支持ベルト4を固定態様もしくは可動態様で把持するものであり、連結孔16(通常には円孔)を有する。
また、ロープRの先端の連結部17にも同じく連結孔18を有し、本安全ベストVの連結部6の連結孔16とロープRの連結部17の連結孔18との間にシャックル19を介装させて接続する。
なお、連結部6は剛性に限定されず、既述したように支持ベルト4をそのま利用した輪をもって形成してもよく、この場合は柔軟性をなす。
本安全ベストVの標準的寸法は、丈高が55cm、横幅が45cmとされ、また横・縦・支持ベルトの幅は4cmとされる。
更に、本安全ベストVはその機能を十全に果たすため、次の諸元を採ることが推奨される。
袖口部11の直径は、作業者が着脱し易いように、好ましくは20〜35cmとされる。該袖口部11が大きすぎると、引っ張り上げ時にベスト本体1が通常の装着状態より上方に著しく移動する事態を生じ、一方20cmより小さいと、装着が困難になる恐れがある。
支持ベルト4は、前記した三角形の空隙Aの高さを、好ましくは30〜60cmになるようにする。30cm未満であると、救助すべき作業者Pを引き上げるときに、大きな力が必要になり、一方60cmを越えると、救助すべき作業者の首が前記空隙Aに入り込む事態を生じる恐れがある。
緩衝帯5については、その幅は20cmを目安とし、その厚さは好ましくは10mm〜20mmであるのがよい。10mm未満であると、十分な衝撃緩和効果が得られない恐れがあり、また引っ張り上げて救助する場合に脇の下を痛める恐れがある。一方、20mmを越える場合には、作業時に邪魔になるおそれがある。
本安全ベストVは、人孔部内での作業において、人孔部に臨んで配された吊上げ・吊下げ装置を介して使用される。
図4はその一例を示し、Sはその吊上げ・吊下げ装置であって、下水道管渠Pへ通じる人孔Q内での作業(特には救出作業)への適用を示す。図において、Tは人孔Q内の足掛け、Wは下水道管渠P内の流水、Dは路面、Eは地盤を示す。 図に示すように、地上部において人孔Qの開口Oに臨んで本吊上げ・吊下げ装置Sが設置される。該吊上げ・吊下げ装置Sは少なくとも三脚部100、該三脚部100の脚部の1つに固定されるウインチ部110、該ウインチ部110の頂部に固定される滑車部120を備え、ロープRはこのウインチ部110に巻き取り、巻き戻されて、滑車部120を介して本安全ベストVの連結部6に連結される。
すなわち、横ベルト2のバックル13が開放された状態で、袖口部11に腕を通して、前身頃1a,1bをファスナーで閉鎖し、しかる後、横ベルト2のバックル13を閉めて、本安全ベルトVを装着する。
次いで、支持ベルト4の頂部の連結部6を介して吊上げ・吊下げ装置Sの吊上げロープRを接続する。
吊上げ・吊下げ装置Sのウインチ部110を巻取り・巻戻しによって、吊上げロープRの長さが調節可能になっている。また、該ウインチ部110をロックすることによって、吊上げロープRの長さは固定される。このようなウインチ部110の他、低速ではロープRを繰り出し可能で、急速に引き出されようとしたときには該ロープRの引き出しが停止されるリトラクタモータ(自動車の安全ベルトに使用されるようなモータ)を使用することができる。
なお、三脚部100は必ずしも必要ではなく、吊上げロープRを巻き取り、繰出可能なウインチ部110あるいはリトラクタモータを人孔Q外の他の定着物に固定してもよい。しかしながら、人孔Qの開口Oの中央部から吊上げロープRを吊り下げ可能な本三脚部100及び滑車部120を使用する方が、容易に作業者Mを救出可能であることは言うまでもない。
この作業中、作業者Mが足掛けTより足を踏み外したときには、ウインチ110をロックし、前記吊上げロープRをそれ以上繰り出されないように固定する。リトラクタモータを使用している場合には、急激なロープRの引き出しにより自動的にロックされる。このとき作業者Mは縦ベルト3と支持ベルト4の二点で衝撃を受けるため、落下の衝撃は緩和され、かつ胴回りに緩衝帯5が備えられているので、これによっても落下衝撃は緩和される。
すなわち、吊上げロープRを巻き上げることにより、支持ベルト4が緊張し、縦ベルト3の肩部より作業者Mを吊り上げる。すなわち、作業者Mは肩部より吊り上げられることになり、人孔Qが狭くても容易に救出可能である。このとき、作業者Mの頭部は前方あるいは後方に倒れた状態となるが、支持ベルト4で構成される空隙Aは該頭部が入り込まないように形成されているため、前記支持ベルト4によって、首部が圧迫されることはない。
また、吊り上げられる状態のとき、本安全ベストVは上方に引っ張り上げられるが、横ベルト2によって、本安全ベストVは作業者Mに固定され、かつ胴回りに設けられた緩衝帯5が作業者Mの脇の下を支持することになるため、作業者Mの重量によって本安全ベストVが作業Mから抜け出ることはない。また袖口部11の直径が所定値を採っているため、吊り下げ時の安全ベストVの上方への移動は抑制されたものとなり、この点においても安全ベストVの作業者Mからの抜出しは阻止される。
上記のことから明らかなとおり、本実施形態の安全ベストVによれば、その支持ベルト4は、人孔Q外にいる作業補助者が、作業者Mの高さに対応してウィンチ部110より繰り出される吊上げロープRに連結され、あるいは、例えば低速では吊上げロープRを繰り出し可能で、急速に引き出されようとしたときには該ロープRの引出しが停止されるリトラクタモータ(自動車の安全ベルトに使用されるようなモータ)に接続される。このため、作業者Mが足掛けTを踏み外したときなどは、該支持ベルト4に接続される吊上げロープRは、その高さに対応した長さに繰り出され固定されているため、衝撃は少ない。また、該支持ベルト4は2本の縦ベルト3の肩部分より伸長しているため、2点で衝撃を受けることになり、従来の1点で衝撃を受ける場合より格段に小さくなるという利点がある。更に、本安全ベストVは所定の幅の緩衝帯5が設けてあるため、該緩衝帯5によって衝撃を更に緩和する。
更に、作業者Mが動けない場合には、人孔Q外の作業補助者が該支持ベルト4に接続した吊上げロープRを吊り上げることにより、作業者Mを迅速に人孔Q外に引き上げることが可能である。このとき緩衝帯5は所定の広がりを有し、腋下の胴回りに設けられているため、安全ベストVを着用した作業者Mを支持ベルト4により引っ張り上げる場合、該胴回りに設けられた緩衝帯5が作業者Mの腋の下に当接することになるため、引っ張りによって安全ベストVが作業者Mより抜け落ちる必要がないという利点がある。
Claims (3)
- 下水道管渠等の人孔内での作業をなす作業者が着衣し、該作業者の安全及び救出を図る安全ベストであって、
首部及び袖口部の開口部を有し、下方に開口され、布地をもって前開き可能なベスト状に形成されてなるベスト本体と;前記ベスト本体の胴回りに複数にわたって水平に固定される所定幅の横ベルトと;前記横ベルトの前部に固定接続され、両方の肩部を介して前記横ベルトの背部に回り込んで固定される所定幅の縦ベルトと;前記縦ベルトの両方の肩部分に一端を固定され、所定長さを有する所定幅の支持ベルトと;を備え、
前記ベスト本体の内側で、かつ袖口に隣接するとともに、吊り上げられるときに着衣した作業者の腋の下に当接し、柔軟かつ強度のある広がり面を保持する緩衝帯を胴方向にほぼ全周にわたって固設してなる、
ことを特徴とする安全ベスト。 - 支持ベルトの他端は相互に接続され連結部を介して吊上げロープに接続可能な請求項1に記載の安全ベスト。
- 支持ベルトの他端が相互に接続されて形成される三角形の空隙の高さは30〜60cmである請求項2に記載の安全ベスト。
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